重症外傷患者、ヘリ搬送で生存率改善

提供元:ケアネット

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公開日:2012/05/08

 



重症外傷患者は、ヘリコプター搬送の方が地上搬送に比べ、退院生存率が約15%改善することが報告された。また、退院後にリハビリ施設に入所する割合も、ヘリコプター搬送のほうが高率だった。米国・メリーランド大学のSamuel M. Galvagno氏らが、22万人超のデータを分析して明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月18日号で発表した。

死亡率はヘリコプター搬送12.6%、地上搬送11%




研究グループは、米国外科学会2007-2009年版の「全米外傷データバンク」を基に、米国で15歳超の重傷外傷患者22万3,475人について、後ろ向きコホート試験を行い、ヘリコプター搬送と地上搬送のアウトカムを比較した。

主要アウトカムは、退院までの生存と退院処置とした。

被験者は、損傷重症度スコアは15以上で、鈍傷または穿通性損傷があり、レベルIまたはII外傷センターへの搬送を要した患者で、ヘリコプター搬送6万1,909人、地上搬送16万1,566人だった。

解析の結果、死亡は、ヘリコプター搬送患者7,813人(12.6%)、地上搬送1万7,775人(11%)だった。
ヘリ搬送は地上搬送に比べ生存率1.15~1.16倍




傾向スコアでマッチングした重回帰分析の結果、レベルI外傷センターに搬送した人のうち、ヘリコプター搬送患者は地上搬送患者に比べ、退院生存率の有意な向上が認められた(オッズ比:1.16、95%信頼区間:1.14~1.17、p<0.001、絶対リスク低下:1.5%)。

また、レベルII外傷センターに搬送した人についても、ヘリコプター搬送のほうが地上搬送よりも退院生存率が有意に向上した(同:1.15、1.13~1.17、p<0.001、1.4%)。

さらに、レベルI外傷センターに搬送された人のうち、退院後、リハビリ施設に入所した人の割合についてみたところ、ヘリコプター搬送群が18.2%と、地上搬送群の12.7%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。

退院後、中間ケア施設へ入所した割合も、ヘリコプター搬送群が9.3%と、地上搬送群の6.5%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。メディカルアドバイスに反したレベルII外傷センターへの搬送患者はヘリコプター搬送群のほうが少なかった(0.5%対1.0%、P<0.001)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)