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ウォーキングが健康に良いことが知られているが、具体的な歩数についてはさまざまな報告があり、明確な目標値は定まっていない。そこで、オーストラリア・シドニー大学のDing Ding氏らの研究グループは、成人の1日の歩数と死亡や疾患の発症、健康アウトカムとの関連を検討することを目的として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、1日7,000歩でも死亡リスクが低下し、心血管疾患や認知症などの疾患の発症リスクも低下することが示された。本研究結果は、Lancet Public Health誌2025年8月号で報告された。 研究グループは、PubMedおよびEBSCO CINAHLを用いて、2014年1月~2025年2月に発表された文献を検索した。そのなかで、1日の歩数と死亡、心血管疾患(発症・死亡)、がん(発症・死亡)、2型糖尿病発症、認知症発症、うつ症状、身体機能、転倒との関連を検討した前向き研究を抽出した。57研究(35コホート)が抽出され、そのうち31研究(24コホート)をメタ解析に組み入れた。1日2,000歩を対照とし、歩数増加に伴う各アウトカムのリスクの変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1日2,000歩を対照とした場合、1日7,000歩の歩行により、死亡やさまざまな疾患の発症、健康アウトカムのリスクが低下した。詳細は以下のとおり(ハザード比[95%信頼区間]、エビデンスの確実性を示す)。 死亡:0.53(0.46~0.60)、中程度 心血管疾患発症:0.75(0.67~0.85)、中程度 心血管死:0.53(0.37~0.77)、低い がん発症:0.94(0.87~1.01)、低い がん死亡:0.63(0.55~0.72)、中程度 2型糖尿病発症:0.86(0.74~0.99)、中程度 認知症発症:0.62(0.53~0.73)、中程度 うつ症状:0.78(0.73~0.83)、中程度 転倒:0.72(0.65~0.81)、非常に低い・死亡、心血管疾患(発症・死亡)、がん死亡、認知症発症、転倒のリスクと歩数の関連は非線形であり、歩数増加に伴うリスク低下の効果は、1日5,000~8,000歩程度で鈍化する傾向がみられた。・がん発症、2型糖尿病発症、うつ症状のリスクと歩数の関連は線形であった。 著者らは、本研究結果について「1日7,000歩という歩数は現実的な目標であり、調査したほとんどの健康アウトカムのリスク低下と関連した」とまとめた。