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海外番組「セサミストリート」(続編・その1)【実はこだわりは能力だったの!?だから男の子に多いんだ!(自閉症の機能)】Part 2

なんで自閉症になるの?自閉症は、コミュニケーションがうまくできない、こだわりが強すぎるという症状があることがわかりました。それでは、なぜそうなるのでしょうか?その答えは、胎児期に男性ホルモンが多すぎていたからです。これは、胎児期アンドロゲン仮説と呼ばれる有力な原因仮説です2)。アンドロゲンとは、男性ホルモンの総称です。その代表が、テストステロンです。もともと胎児のデフォルトは女性です。遺伝的に男性の場合は、胎児期に自らのY染色体の発現によって精巣からこの男性ホルモンを分泌して(ホルモンシャワー)、体と心(脳)を男性化させていきます。その量が多すぎるのが自閉症の原因だということです。実際の研究では、妊娠6ヵ月時に採取した羊水中の男性ホルモン濃度が高ければ高いほど、4歳時と8歳時のそれぞれの共感性の指数が低くなり、システム化の指数が高くなるという結果が出ています2)。これは、自閉症形質の発現を意味します。また、薬指の長さに対する人差し指の長さの比較(指比)の研究では、一般女性→一般男性→自閉症の人(男女とも)の順に人差し指が短くなっていくことが確かめられています3)。これは、胎児期の男性ホルモン濃度が高くなっていく順番と同じです。なお、自閉症は男女とも人差し指が同じくらい短くなることから、自閉症の発症には胎児期の男性ホルモンが相当影響していることが示唆されます。実際の臨床でも、胎児期に先天的に男性ホルモン(厳密にはテストステロンではなくデヒドロエピアンドロステロン)濃度が高い病態(先天性副腎過形成症)では、男女ともに顕著に人差し指が短くなっていることが確かめられています。そして、システム化の指数が高くなるという結果が出ています4)逆に、胎児期に男性ホルモン(テストステロン)濃度が低い病態(クラインフェルター症候群、アンドロゲン不応症)の男性は、人差し指が長くなっていることも確かめられています。さらに、自閉症の男性の精通の時期は平均よりも早くなる一方、自閉症の女性の初潮は平均よりも遅くなることもわかっています2)。逆に、自閉症の人はオキシトシン濃度(女性ホルモン)が平均を下回っていることもわかっています2)。オキシトシンは「絆ホルモン」とも呼ばれ、これが少ないと人とのコミュニケーションへの動機づけ(共感性)が低くなります。さらに、脳の画像研究においては、一般的に女性よりも男性の方が脳の非対称性が大きいことがわかっていますが、自閉症の人はその非対称性がさらに大きくなっていることもわかっています5)。以上より、自閉症とは、男性的な脳機能が過剰になった状態、つまり超男性脳とも呼ばれています。そして、だからこそ自閉症は男の子(男性)に多いのです。実際に自閉症の80%は男性です。ちなみに、ジュリアは、女の子の設定になっています。この多様性の時代、発症率が低い女の子(女性)をあえて自閉症のキャラクターにしたのでしょう。定型発達においても、システム化は、明らかに女の子よりも男の子が高いです。たとえば、男の子(男性)は、乗り物、仕組み(ルール)、戦い(スポーツ)、勝ち負けなど、ものや結論(結果)への興味が強いです。そして、成長すると、理屈っぽくなる分、女性ほど察しようとしないです。一方で、共感性は、明らかに男の子よりも女の子が高いです。たとえば、女の子(女性)は、ぬいぐるみ集め、人形遊び、料理、おしゃべりなど、人や関係性(プロセス)への興味が強いです。そして、成長すると、情緒的になる分、男性ほど説明しようとしないです。つまり、システム化とは、とくに男性にもともと備わっている能力であると言えます。そして、その能力が高まりすぎた状態を自閉症と呼んでいると言えます。それでは、システム化が高くなると、なぜ連動して共感性が低くなってしまうのでしょうか? 言い換えれば、なぜ自閉症はコミュニケーションの障害とこだわりはセットなのでしょうか?(次回に続く)1)ザ・パターン・シーカーpp.93-95:サイモン・バロン・コーエン、化学同人、20222)自閉症スペクトラム入門pp.134-135:サイモン・バロン・コーエン、中央法規、20113)指からわかる男の能力と病p.31、pp.100-101:竹内久美子、講談社α新書、20134)共感する女脳、システム化する男脳pp.186-187:サイモン・バロン・コーエン、NHK出版、20055)脳からみた自閉症p.129:大隅典子、講談社、2016自閉症についての関連記事大人の自閉症への対応のコツ結婚できない男【空気を読まない】[改訂版]<< 前のページへ■関連記事海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 1伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子供は言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 2ガリレオ【システム化、共感性】

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暗記しやすい! 医療現場の言いかえ英単語

医療者と患者の架け橋に~一般用語と専門用語をつなぐ単語帳~英語に自信がない学生・医療者は多いものです。そのような中で、英語を学ぼう、学び直そうという学生や医療者が増えています。医療英語を学ぶには、まずは医療英単語から覚える必要がありますが、暗記しやすいよう、また医療現場で役立つよう、医療者同士の会話で用いるプロフェッショナルな単語と、患者さんに用いる一般用語を並列して掲載しました。本書を用いて効率よく英単語を頭に入れていきましょう!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する暗記しやすい! 医療現場の言いかえ英単語定価3,300円(税込)判型四六判頁数126頁発行2025年3月編著山田 悠史マウントサイナイ医科大学老年医学・緩和医療科アシスタント・プロフェッサー/Medical English Hub(めどはぶ)代表ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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「乳腺外科医事件」再度の無罪判決と医療現場への示唆

手術直後の女性患者への準強制わいせつ罪に問われた執刀医が、逮捕・勾留・起訴された事件。一審では無罪判決となったが、控訴審では懲役2年の実刑判決が東京高裁より言い渡され、執刀医側の上告を受けて出された最高裁判決は「東京高裁への差戻し」。3月12日、この差戻審の判決が出され、無罪とした一審の判決が支持された。担当弁護人の1人である水沼 直樹氏が、これまでの経緯および裁判での争点と、このような事件を防ぐために医療現場でできる対応について解説する。1.患者側の主張と医師の主張2016年5月、30代の女性が右胸部の良性腫瘍摘出術を受けた後、担当医師が病室を訪れ、健側(左胸部)を舐める等のわいせつ行為をしたとして、準強制わいせつの疑いで逮捕・起訴されました。患者の左胸部から医師のDNAとアミラーゼが検出されています。患者は、術後に2回、同様の行為を受けたと主張している一方で、医師は術後せん妄による性的幻覚の可能性を指摘しています。2.争点と裁判所の判断(1)東京地裁(無罪):2019年2月、1)患者が「せん妄状態に陥っていた可能性は十分にあり、また、せん妄に伴って性的幻覚を体験していた可能性も相応にある」、2)術前の触診や、上級医とのマーキング時等の唾液飛沫により胸部にDNAやアミラーゼが付着した可能性が否定できない、としました(「乳腺外科医事件」裁判の争点参照)。(2)東京高裁(有罪):2020年7月、1)「せん妄に伴う幻覚は生じていなかった」、2)科学捜査研究所の検査担当者によるワークシートの記載事項の消去、上書き、書き換えには「意図的に鑑定結果をねつ造したとはうかがえず」、「DNA定量検査の結果が信用できないとも断じ難い」としました(「乳腺外科医事件」控訴審、逆転有罪判決の裏側参照)。(3)最高裁判決(破棄差戻):2022年2月、1)検察側証人の「見解は医学的に一般的なものではないことが相当程度うかがわれる」、2)DNA定量検査の正確性についてさらに審理する必要がある、としました(「乳腺外科医事件」最高裁判決を受けて参照)。3.差戻後控訴審(無罪)差戻後の東京高裁は、1)複数の専門家の証言から、麻酔薬等により術後せん妄による性的幻覚の可能性があるとした第一審の判断は不合理ではなく、2)DNA定量検査の値は信頼できるが、触診行為自体や触診時等に飛散した医師の唾液飛沫が患者の胸部に付着した可能性を否定できないとしました。※2025年3月25日、検察官は上告を放棄し、医師の無罪が確定しました。4.医療現場への示唆本件は、患者の術後せん妄による性的幻覚の可能性が認められました。その点で、医療現場では、せん妄・術後せん妄対策が重要となります。(1)せん妄は見落としやすい医療従事者によるせん妄患者の見落としが多いことが報告されています1)。医療従事者への研修・教育が重要です。(2)スクリーニング・アセスメントの実施せん妄対策が患者の予後に影響します。せん妄のスクリーニング、アセスメントを実施し、早期に医療介入しましょう2)。(3)患者・家族への説明せん妄を体験した患者や、せん妄状態に陥った患者を目の当たりにした家族の焦燥感は計り知れません。患者や家族に対してもせん妄教育を行うと良いでしょう。YouTube等にも専門家が制作した多くの啓発動画が存在しています。(4)回診・訪室の際の注意単独での回診は、あらぬ疑いをかけられたり、逆に心ならぬ医療従事者に犯行の機会を与えたりします。他方、常に2名体制で回診・ラウンドすることは現実的に難しいでしょう。そこで、せめて、術後間もないうちだけでも単独回診・巡回を回避することが大切だと考えられます。 1)Inouye SK, et al. Arch Intern Med. 2001;161:2467-73.2)小川朝生. せん妄 適確にアセスメントをし、せん妄を予防する. 看護科学研究 2017;15:45-9.講師紹介

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「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」改訂のポイント/日本胃学会

 2024年10月に「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」(日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会 編)が8年ぶりに改訂された。2000年の初版から4回の改訂を重ね、2024年版は第5版となる。2009年の改訂版ではH. pylori感染症の疾患概念が提起され、慢性胃炎患者に対する除菌が保険適用される契機となった。今回の2024年版は初めてMindsのガイドライン作成マニュアルに準拠して作成され、「1)総論、2)診断、3)治療、4)胃がん予防―成人、5)胃がん予防―未成年」という章立てで、CQ(クリニカル・クエスチョン)、BQ(バックグラウンド・クエスチョン)、FRQ(フューチャー・リサーチ・クエスチョン)から構成されている。 感染診断と除菌治療に関わる医師に向けた改訂ポイントとしては、「3)治療」の章の冒頭にフローチャートが追加され、通常の1~3次治療の流れとペニシリンアレルギーなどの特殊な除菌治療の流れが明確になった。また、 これまで標準的な1次除菌はプロトンポンプ阻害薬(PPI)もしくはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)にβ-ラクタム系抗菌薬アモキシシリンとクラリスロマイシンを加えた3剤併用療法だったが、 これまでにPPIベースの3剤併用療法に比してP-CABベースの3剤併用療法の除菌率が高いというエビデンスが集積したことを踏まえ、 本ガイドラインではP-CABであるボノプラザンを軸にした3剤併用療法が推奨となっている。 胃がん診療医や内科医が患者から聞かれることの多いH. pylori検査と胃がん予防効果の関連についてはどのように記載されているか。2025年3月12~14日に行われた第97回日本胃学会ではヘリコバクター学会との合同シンポジウムが行われ、本ガイドライン作成委員会委員長を務めた青森県総合健診センター所長の下山 克氏が胃がん診療医向けに「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版の『胃がん予防』」と題した発表を行い、「4)胃がん予防―成人」の項目を中心に改訂点やポイントを紹介した。CQ3-1 無症候一般住民への血清抗H. pylori抗体検査and(/or)ペプシノゲン(PG)検査は、胃がん予防に役立つか?A. 無症候一般住民への血清H. pylori抗体検査andペプシノゲン(PG)検査によるリスク層別化検査は胃がん予防効果が期待されるが、エビデンス不足のため現時点での推奨提示は困難である。――エビデンスが不十分な場合、CQ自体をなくすことが多いが、重要な設問であるためにあえてCQとして残し、現状を解説することとした。実際、韓国のガイドラインでは同様の内容がガイドラインに掲載されなかった。H. pylori感染未検査者を対象とし、血清H. pylori抗体検査と除菌の胃がん死亡抑制効果を長期にみた研究は少なく、現状では推奨は出せないという判断となった。CQ3-2 血清抗H. pylori抗体検査and(/orペプシノゲン)検査は胃がん予防のため毎年必要か?A. 胃がん予防のために血清抗H. pylori抗体検査およびペプシノゲン(PG)検査を毎年行うことは推奨しない。【推奨の強さ:強い、エビデンスの確実性:C】――職域の健診、人間ドックで毎年検査を受けているケースがしばしばあるが、多くの場合、H. pylori感染の確認・除菌が伴っておらず、正しい運用を徹底させることが基本となる。複数回測定することが胃がん予防につながるというエビデンスはなく、コスト面からも毎年の検査のような、繰り返すだけの実施は推奨されない。 また、血清抗体検査に関する注意点としては、測定キットの種類に違いがあることだ。少し前まではEIA法(Eプレート)が多く使われていたが、現在ではコストや利便性に勝るラテックス法が主流となっている。問題は測定法により抗体価の分布が異なることで、ラテックス法ではEプレートに比べてカットオフ以上の中に未感染者、既感染者が相当数含まれる。除菌後6年間の検査陽性率の推移を見ても、ラテックス法では6年後でも4割近くが陽性となるが、EIA法ではわずか2%程度だ。胃がんリスク検診においてはEIA法では分類基準となる抗体価として「陰性高値」を設定しているが、ラテックス法で陰性高値を設定することは誤りであることに留意してほしい。CQ3-3 一般住民への胃がん検診(X線、内視鏡検査)は胃がん診断だけでなく、一次予防に役立つか?A. 胃がん検診はH. pylori感染診断としても有用であり、一次予防効果が期待できるが、今後の検証が必要であり、現時点での推奨提示は困難である。――胃がん検診は、世界的に日本(X線、内視鏡検査)と韓国(内視鏡)でのみ行われている。胃がん検診が1次予防の役割も果たすのは、H. pylori感染胃炎患者を発見し、除菌治療につなげることである。H. pylori感染胃炎患者のほとんどが無症状で、H. pyloriの検査を受ける機会が少ないことから、健康な人が受ける胃がん検診とその画像は、感染の有無を知る貴重な機会となる。日本消化器がん検診学会では「胃X線検診のための読影判定区分」を公開しており、精検不要症例でもH. pylori感染が疑われる場合は「カテゴリー2」として区分し、必要に応じてH. pylori感染検査や除菌治療の情報提供などを行うよう推奨している1)。このように胃がん検診は一次予防効果が期待されるものの、現時点で胃がん死亡を減少させるというエビデンスは確立しておらず、今後の検証が必要な分野である。BQ1-4 内視鏡画像はH. pylori現感染の診断に有用か?A. 内視鏡画像によりH. pylori感染状態を分類できるため、現感染の診断に有用である。BQ1-5 胃X線画像はH. pylori現感染の診断に有用か?A. 胃X線画像はH. pylori現感染の診断に有用である。ただし、既感染胃の増加や、自己免疫性胃炎、PPI関連胃症の混在の可能性を考慮する必要がある。――H. pylori抗体検査の前提となる厚生労働省の指針では、胃がん検診の対象となるのは50歳以上(40歳以上も可)とされているにもかかわらず、一部の市町村や、少なくない企業健診では25~35歳から実施されている。胃がん罹患率が低い世代では、被曝をはじめとする検査のデメリットがメリットを上回ってしまう可能性がある。少なくとも胃がん検診がH. pylori感染の発見、除菌につながるものでなければならない。さらに内視鏡検査でH. pylori感染が診断されない、という問題もある。内視鏡検査で胃粘膜の状態を評価しない、要精査となった場合の内視鏡検査でもチェックされた部位のみを観察して胃粘膜を評価しない、といった意識での検査ではH. pylori感染が見落とされ、長い年月を経てからようやく診断されることもある。この点については内視鏡医の意識改革も期待したい。いずれにせよ、H. pylori感染の診断と除菌による慢性胃炎の治療と胃がんの一次予防が基本となる。BQ1-6 PPIやP-CABを使用している場合に感染診断・除菌判定は可能か?A. 尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ試験(RUT)、血清ペプシノゲン(PG)濃度はPPI、P-CABの影響を受けるので検査の2週間前から休薬して実施する。その他の診断法はPPI内服のまま実施できる。――以前はPPIを使用しているとほとんどの検査ができない状況だったが、その根拠となっていたエビデンスが古いもので、国内の現状に当てはまらない部分があった。PPIの影響を受けるエビデンスがある検査を挙げ、それ以外は実施可能であることを明記した。学会からの働きかけで、昨年10月には厚労省からガイドラインで実施可能とする検査についてはPPI内服中も検査の費用を算定できる旨の通達も出ている。 下山氏は「新ガイドラインでは、抗体検査に関するエビデンスなどの一般的な事項から、PPIと検査の関連など、新たなエビデンスを反映した項目までを網羅した。近年注目されているH. pylori以外のHelicobacteriについても触れている。ぜひガイドラインで最新の情報をキャッチアップしてほしい」とまとめた。

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ベネトクラクス、再発・難治マントル細胞リンパ腫に追加承認/アッヴィ

 アッヴィは、2025年3月27日、BCL-2阻害薬ベネトクラクス(商品名:ベネクレクスタ)について、再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫(MCL)に対する治療薬として国内における適応追加承認を取得した。 今回の承認は、再発難治MCLを対象としたベネトクラクスおよびイブルチニブの併用療法に関する海外第III相SYMPATICO試験1)および国内第II相M20-075試験2)の結果に基づいている。 MCLはリンパ節のマントル帯に由来するBリンパ球ががん化するB細胞リンパ腫の1つ。日本国内の患者数は約2,000例と報告されている。60歳代半で多く発症し、多くの場合、高齢者では2~3年、若齢者では約5年で、初回治療後の再発・再燃に至る。再発した場合、化学療法の効果は1次治療より劣り、急速な進行が認められることがある。

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限局型小細胞肺がん、CRT後のデュルバルマブ承認/AZ

 アストラゼネカは2025年3月27日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について「限局型小細胞肺における根治的化学放射線療法後の維持療法」の適応で、厚生労働省より承認を取得したことを発表した。根治的化学放射線療法(CRT)後に病勢進行が認められない限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)を対象とした免疫療法では、本邦初の承認となる。 本承認は、LD-SCLC患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の結果1)に基づくものである。本試験において、デュルバルマブ群はプラセボ群と比較して有意に死亡リスクが低下し(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.93、p=0.0104)、全生存期間(OS)中央値はデュルバルマブ群55.9ヵ月、プラセボ群33.4ヵ月であった。3年OS率はそれぞれ57%、48%と推定された。 また、デュルバルマブ群はプラセボ群と比較して有意に無増悪生存期間(PFS)も改善し(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95、p=0.0161)、PFS中央値はデュルバルマブ群16.6ヵ月、プラセボ群9.2ヵ月であった。2年PFS率はそれぞれ46%、34%と推定された。<今回追加された「効能又は効果」「用法及び用量」>・効能又は効果限局型小細胞肺における根治的化学放射線療法後の維持療法・用法及び用量〈限局型小細胞肺における根治的化学放射線療法後の維持療法〉通常、成人にはデュルバルマブ(遺伝子組換え)として、1回1,500mgを4週間間隔で60分間以上かけて点滴静注する。投与期間は24ヵ月間までとする。ただし、体重30kg以下の場合の1回投与量は20mg/kg(体重)とする。

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ベンゾジアゼピンによる治療はアルツハイマー病の重大なリスク因子なのか

 アルツハイマー病は、最も頻度の高い認知症である。ベンゾジアゼピン(BZD)は、不眠症やその他の睡眠障害の治療に最も多く使用されている治療薬であるが、BZDの長期的な使用は、認知機能低下と関連していることがいくつかの報告で示唆されている。ポルトガル・University of Beira InteriorのFilipa Sofia Trigo氏らは、BZDによる治療とアルツハイマー病発症との関連性を評価するため、システマティックレビューを実施した。NeuroSci誌2025年2月1日号の報告。 対象研究は、MEDLINE、Embaseのデータベースよりシステマティックに検索し、結果のナラティブ統合は、PRISMA-P 2020方法論に基づき実施した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたコホート研究は、2件のみであった。・レトロスペクティブ研究では、BZDによる治療後にアルツハイマー病を発症する重大なリスクが認められた。・プロスペクティブ研究では、アルツハイマー病の有病率とBZDによる治療との関連は認められなかった。 著者らは「BZDによる治療がアルツハイマー病発症の重大なリスク因子であることは、最大規模の研究でのみ認められた。この関連性は、科学的根拠が乏しいことから、さらなる研究が必要である」と結論付けている。

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CEA中の超音波血栓溶解法、第III相試験の結果/BMJ

 頸動脈内膜剥離術(CEA)中の経頭蓋ドプラプローブを用いた超音波血栓溶解法(sonolysis)は、30日以内の虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作および死亡の複合エンドポイントの発生を有意に減少させたことが、欧州の16施設で実施された第III相無作為化二重盲検比較試験「SONOBIRDIE試験」の結果で示された。チェコ・ University of OstravaのDavid Skoloudik氏らSONOBIRDIE Trial Investigatorsが報告した。パイロット研究では、CEAを含むさまざまな治療中の脳卒中や脳梗塞のリスク軽減に、sonolysisは有用である可能性が示されていた。BMJ誌2025年3月19日号掲載の報告。内頸動脈狭窄70%以上の患者を対象に偽処置対照試験 研究グループは、NASCET法に基づきデュプレックス超音波検査で検出され、CT、MRIまたはデジタルサブトラクション血管造影により確認された、内頸動脈狭窄70%以上の患者を、sonolysis群または偽処置群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 sonolysisは、標準的な超音波装置と2MHz経頭蓋ドプラプローブを用いて行われ、超音波技師のみ非盲検下であった。 主要アウトカムは、無作為化後30日以内の虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作および死亡の複合とした。また、MRIサブスタディのエンドポイントは、CEA後24(±4)時間時点での脳スキャンにおける1つ以上の新たな虚血性病変の出現、新規虚血性病変の数などであった。安全性アウトカムには、有害事象、重篤な有害事象、およびCEA後30日以内の出血性脳卒中(くも膜下出血を含む)の発生率が含まれた。複合エンドポイントの発生は2.2%vs.7.6%、安全性も良好 2015年8月20日~2020年10月14日に1,004例(sonolysis群507例、対照群497例)が登録され、最初の登録患者1,000例の中間解析において有効性が認められたため、早期中止となった。1,004例の患者背景は、平均年齢67.9(SD 7.8)歳、女性312例(31%)で、450例(45%)が症候性頸動脈狭窄、平均頸動脈狭窄度は79.9(SD 8.9)%であった。 主要アウトカムのイベントは、sonolysis群で11例(2.2%)、対照群で38例(7.6%)に発生し、sonolysis群で有意に少なかった(リスク群間差:-5.5%、95%信頼区間[CI]:-8.3~-2.8、p<0.001)。 MRIサブスタディにおける新たな虚血性病変の検出率も、sonolysis群8.5%(20/236例)、対照群17.4%(39/224例)であり、sonolysis群で有意に低かった(リスク群間差:-8.9%、95%CI:-15~-2.8、p=0.004)。 感度分析の結果、30日以内の虚血性脳卒中に対するsonolysisのリスク比は0.25(95%CI:0.11~0.56)、一過性脳虚血発作に対するリスク比は0.23(0.07~0.73)であった。 sonolysisは安全性も良好であり、sonolysis群の94.4%の患者で術後30日以内に重篤な有害事象は認められなかった。

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局所進行頭頸部扁平上皮がんの維持療法、アテゾリズマブvs.プラセボ/JAMA

 高リスクの局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA SCCHN)で集学的な根治的治療により病勢進行が認められない患者において、維持療法としてのアテゾリズマブはプラセボと比較して予後を改善しなかった。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のRobert Haddad氏らが、23ヵ国128施設で実施された第III相無作為化二重盲検比較試験「IMvoke010試験」の結果を報告した。LA SCCHNに対しては、手術、放射線療法、化学療法のいずれかを組み合わせた治療後、局所再発または遠隔転移のモニタリングが行われるが、予後不良であることから治療の改善に対する臨床的ニーズは依然として高かった。JAMA誌オンライン版2025年3月13日号掲載の報告。主要評価項目は医師評価による無イベント生存期間 研究グループは、複数種類の根治的治療後に病勢進行のないLA SCCHN(IVa/IVb期の口腔、喉頭、下咽頭を含む頭頸部扁平上皮がんまたはHPV陰性中咽頭がん、III期のHPV陽性中咽頭がん[AJCC Cancer Staging Manual第8版])で、18歳以上、ECOG PSが0~1の患者を、アテゾリズマブ群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、1,200mgを3週間ごとに最長1年間、または再発、病勢進行、許容できない毒性の発現または同意撤回が認められるまで投与した。 主要評価項目は治験責任医師評価による無イベント生存期間(EFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)と安全性であった。無イベント生存期間中央値59.5ヵ月vs.52.7ヵ月で差はなし 2018年4月3日~2020年2月14日に計406例が無作為化された(アテゾリズマブ群203例、プラセボ群203例)。ベースラインの患者背景は両群で類似しており、アテゾリズマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ65歳未満が142例(70.0%)vs.155例(76.4%)、男性168例(82.8%)vs.174例(85.7%)、アジア人68例(35.6%)vs.61例(31.0%)、黒人1例(0.5%)vs.1例(0.5%)、白人121例(63.4%)vs.135例(68.5%)であった。 最終解析のクリニカルカットオフ日2023年9月27日(追跡期間中央値46.5ヵ月)において、治験責任医師評価によるEFS中央値は、アテゾリズマブ群59.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:46.8~推定不能)、プラセボ群52.7ヵ月(41.4~推定不能)であり、両群で差はなかった(ハザード比:0.94、95%CI:0.70~1.26、p=0.68)。 OSも両群で差はなく、24ヵ月OS率はアテゾリズマブ群82.0%、プラセボ群79.2%であった。 安全性については、新たな事象または予期せぬ事象は認められなかった。

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一人暮らしの認知症者は疎外されやすい?

 認知症者に対する社会的距離は、認知症の行動および心理的症状(BPSD)を有する一人暮らしの患者でより大きくなることが示唆された。この研究は東京都健康長寿医療センター研究所の井藤佳恵氏らによるもので、研究結果の詳細は「PLOS One」に1月22日掲載された。 認知症者とその介護者は、疾患へのスティグマ(「先入観に基づいてレッテルをはり、偏見をもち、差別する」という、一連の心と行動)による社会的排除に直面している。スティグマは、病気そのものが引き起こす苦痛よりもさらに大きな苦痛をもたらすことがあり、深刻な人権侵害であると言われている。 スティグマの研究では、スティグマを社会的距離(他の個人との望ましい親密さ、または距離の程度)で測定する方法がある。今回の井藤氏らの研究では、地域住民の認知症者に対する社会的距離がどのような要因によって変化するのかを検討した。 参加者は、オンライン調査会社に登録している国内、地域在住の40歳から90歳までの男女2,589人(平均年齢62.0±10.5歳、女性49.8%)である。この調査では、世帯形態、BPSDの有無の組み合わせが異なる4種類のビネットがあり、それぞれ80代の女性が正常老化から認知症を診断され、軽度、中等度、重度と進行していく様子が描かれていた(A〔家族と同居、BPSDなし〕、B〔家族と同居、BPSDあり〕、C〔独居、BPSDなし〕、D〔独居、BPSDあり〕)。参加者はいずれかひとつのビネットを受け取り、それぞれの病期で、社会的距離を測定するための質問に回答した。 その結果、全てのビネットで、認知症が進行するほど社会的距離が大きくなることが示された。また、すべての病期を通して、ビネットA「家族と同居、BPSDなし」の場合の社会的距離がもっとも小さく、ビネットD「独居、BPSDあり」の場合の社会的距離が最も大きかった。 社会的距離の差が最も大きかったビネットA「家族と同居、BPSDなし」とD「独居、BPSDあり」について、社会的距離に影響を与える要因を探索した。世帯収入、居住地域、認知症に関する知識、認知症患者との接触などを変数とする多変量分析を行った結果、軽度認知症段階では、「認知症に関する知識が多いこと」が社会的距離の縮小と関連していた(ビネットA〔95%信頼区間-0.28~-0.01、p=0.036〕、D〔同-0.26~-0.02、p=0.026〕)。「認知症患者との接触経験があること」は、認知症の全病期を通して、社会的距離の縮小と関連していた(ビネットA〔p=0.001~0.007〕、D〔p<0.001~p=0.006〕)。 井藤氏らは本研究について、「今回の結果は、スティグマに対する介入としての教育の有効性を示すと同時に、その限界をも示すものである。中等度以上の認知症者に対するスティグマに対しては、教育だけではなく適切な準備状況がある社会的接触が必要であり、特に、社会的排除のハイリスク群である、独居でBPSDを示す者に対する方策が重要」と述べている。また、著者らは本研究の限界について、「社会的望ましさのバイアスが働いた結果、参加者はスティグマを過小に報告した可能性がある」と付け加えている。

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極端な暑さは高齢者の生物学的な老化を早める

 極端な暑さは高齢者の生物学的な老化を加速させる可能性があるようだ。暑い日が多い地域に住む高齢者では、涼しい地域に住む高齢者に比べて、生物学的年齢が高いことが明らかになった。米南カリフォルニア大学(USC)老年医学分野のEunyoung Choi氏とJennifer Ailshire氏によるこの研究の詳細は、「Science Advances」に2月26日掲載された。 Choi氏は、「アリゾナ州フェニックスのような、厳重警戒レベルを超える暑さの日(90℉〔32℃〕以上)が年間の半分を占める地域に住む試験参加者は、暑い日が年に10日未満の地域に住む試験参加者と比較して、生物学的年齢が最大14カ月も進んでいた」とUSCのニュースリリースの中で述べている。 生物学的年齢とは、生年月日に基づく暦年齢とは異なり、体の細胞やシステムに基づく年齢であり、体が分子、細胞、システムレベルでどの程度うまく機能しているかを知るための指標となると研究グループは説明する。生物学的年齢が暦年齢より高いことは生物学的老化が進んでいることを意味し、死亡や病気のリスクが高くなるという。 この研究では、健康と退職に関する研究に参加した56歳以上の成人3,686人を対象に、居住地の暑さと生物学的な老化との関係が調査された。Choi氏らは、米国全土に居住している参加者からさまざまな時点で採取された血液検体を用いてDNAメチル化のパターンを解析し、それぞれの採血時点での生物学的年齢を推定した。また、米国立気象局(NWS)のデータから参加者の居住地近隣の「暑い日」の発生頻度を調べた。「暑い日」は、NWSの定める暑さ指数である、「警戒」(80〜90℉〔約27〜32℃〕)、「厳重警戒」(90〜103℉〔約32〜39℃〕)、「危険」(103〜124℉〔約39〜51℃〕)のいずれかに該当する日とした。生物学的年齢は、PCPhenoAge、PCGrimAge、DunedinPACEの3種類を用いた。 その結果、暑い日の日数は、短期(採血当日から過去7日間)、中期(採血当日から過去30〜60日間)、および長期(採血当日から過去1〜6年)の全ての時間枠と暑さ指数のレベルにおいて、PCPhenoAgeに基づく生物学的老化の加速と関連していることが明らかになった。例えば、採血当日から過去7日間における警戒レベルの暑い日の1単位増加は、PCPhenoAgeの1.15年分の加速と関連していた。警戒レベルの暑い日の1単位増加とは、ある時間枠において、警戒レベルの暑い日が0%(0日)から100%(全ての日)に増加することを意味する。同様に、採血当日から過去30日間、60日間、1年間、6年間での警戒レベルの暑い日の1単位増加は、それぞれPCPhenoAgeの1.08年、0.98年、1.66年、1.87年分の加速と関連しており、暑い日にさらされる期間が長くなるほど、生物学的老化の加速が進むことが示唆された。厳重警戒レベルの暑い日についても同様の関連が認められ、6年間での厳重警戒レベルの暑い日の1単位増加はPCPheoAgeの2.88年分の加速と関連していた。一方、PCGrimAgeとDunedinPACEについては、1年以上の長期的な時間枠でのみ、生物学的老化の加速との間に関連が認められた。 Ailshire氏は、「特に高齢者にとっては、暑さと湿気の組み合わせが問題だ。高齢になると汗のかき方が変化し、汗の蒸発による皮膚の冷却機能が低下していく」と説明する。同氏は、湿度の高い場所ではそのような皮膚の冷却効果が低くなることを指摘し、「自分の地域の気温と湿度を調べて、リスクがどの程度なのかを理解する必要がある」と述べている。 Ailshire氏らは今後、暑さに関連した生物学的老化を早める可能性のある他の要因や、この生物学的老化の加速が全体的な健康にどのように影響するのかを調査する予定だと話している。

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SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は女性と高齢者に対しても有効か?(解説:住谷哲氏)

 SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬が、心不全や慢性腎臓病を合併した2型糖尿病患者の予後を改善することは多数のRCTおよびそのメタ解析の結果から明らかにされている1)。しかし、その有効性が性別および年齢によって異なるのかはこれまで明らかではなかった。そこで本論文では既報のRCTの結果を基に、MACEとHbA1cとを主要評価項目として、年齢×治療、性別×治療の交互作用interactionsの有無をネットワークメタ解析により推定した。 592試験がHbA1cの解析対象となり、そのうちでGLP-1受容体作動薬の9試験、SGLT2阻害薬の8試験がMACEの解析対象となった。性別でみると男性の比率が最も高かったのはSGLT2阻害薬エンパグリフロジンのEMPA-REG OUTCOME試験で71.5%であり、最も低かったのはGLP-1受容体作動薬デュラグルチドのREWIND試験で53.7%であった。また年齢でみると、SGLT1/2阻害薬sotagliflozin(国内未発売)のSOLOIST-WHF試験で68.7歳が最高齢であり、SGLT2阻害薬カナグリフロジンのCREDENCE試験が56.4歳で最も若かった。 結果は、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の両薬剤ともに、HbA1cの低下およびMACEの減少に性別は有意な影響を及ぼさなかった。つまり性別を問わず両薬剤は有効であった。しかし年齢に関しては、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬とは異なる交互作用が認められた。HbA1cの低下については、SGLT2阻害薬では高齢者は若年者に比較して有意に小さく、逆にGLP-1受容体作動薬では高齢者は若年者に比較して有意に大きかった。MACEの減少については、SGLT2阻害薬では高齢者は若年者に比較して有意に大きく、逆にGLP-1受容体作動薬では高齢者は若年者に比較して有意に小さかった。これから考えると両薬剤のMACE減少効果とHbA1c低下作用とは関連がないことがわかる。 以上の結果から、MACE減少を期待するならば高齢者にはSGLT2阻害薬を、若年者にはGLP-1受容体作動薬の投与を積極的に考慮すべきだろうか? 注意すべきは、解析対象となった試験はすべて心血管イベントリスクのきわめて高い患者を対象としたCVOTであり、80歳以上の高齢者はほとんど対象に含まれていない点だろう。高齢者ではフレイルの有無が薬剤選択に影響することが少なくない。両薬剤ともに体重減少を伴うことが多い点は十分に考慮する必要がある。

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第255回 遺伝子検査会社の倒産に米加州・司法長官が警告、いったい何ごと?

消費者向け遺伝子検査の草分けとも言える米国・23andMeが3月23日、連邦破産法第11章の適用を申請したことを公表した。単純に言えば、倒産である。一時期はこの業界でもっとも脚光を浴び、同社が匿名化したデータを創薬に利用することを目的にグラクソ・スミスクラインと提携するなど新たな動きも創出していたが、最終的には今回のような結果となった。同社の創業自体は2006年で、2021年には米・ナスダックに上場も果たし、上場直後の株価は最高値で1株14.94ドル、時価総額は日本円で約9,000億円を記録したが、その後、金利上昇により資金調達が困難になったことなどから業績は低迷。株価はひたすら右肩下がりの下落を続け、2025年の2月段階では1株2ドルにまで落ち込んでいた。今回の発表によりすでに1株1ドル未満という状況である。以前の本連載でも触れたが、私も取材のために昨年、消費者向け遺伝子検査を初めて受けた。その時にすでに「これが継続的なビジネスになり得るのか」との疑問は感じていた。ざっくりいえば、個々人の遺伝子情報は生涯ほぼ変わらない。だから消費者にとって検査は一生に一度受ければ終わりで、食品や日用品と違い、リピート消費はあり得ないからだ。価格は安いものでは5,000円程度で受けられるものもあるが、多くは1万円以上である。こうなると比較的意識が高く経済的にも余裕がある人たちの中で一巡すればビジネスとしては終了である。23andMeの場合は、当初は自身の人種的先祖を知るサービスがウケて、かなり業績を伸ばした。移民国家で人種間を超えた婚姻が日常的なアメリカならではのサービスとも言える。しかし、日本のようにアメリカほど多民族ではない地域では、こうしたサービスの需要も見込みにくい。これを回避するならば、サブスク*ビジネス的に検査結果を基に消費者の健康管理に資するさまざまな付帯サービスを開発して提供することになるが、これは容易ではない。*:サブスクリプション:定額料金を支払うことで、一定期間、商品やサービスを利用できる仕組みご存じのように、こうした消費者向け遺伝子検査が調べているのは、遺伝子そのものではなく、「一塩基多型(SNP、スニップ)」である。これと疾患や健康に関する相関を調べた研究を基に疾患・健康リスクの判定している。そのため示された結果が天気予報ほどの信頼性もなく、必然的に付帯サービスも不確実性を含むことは避けられない。これでは幅広い消費者に魅力的なサービスを提供することはできないだろう。その意味では単に一般消費者を対象にした需要は、アメリカだけでなく日本でも先細りするのは必定である。実際に国内では当初、ヤフーやDeNA、DHCなどの大企業がこの領域に参入したが、2020年以降、相次いで撤退した。さて今回の23andMeの倒産により、同社は売却先の検討に入っているが、同社最大の資産は約1,400万人分とも言われる検査データであり、これがまったく異なる業態の企業に移管される可能性が現実味を帯びている。同社のプライバシーポリシーでは「ユーザーが同意しない限り個人を特定できるデータは第三者に販売しない」を謳ってきたが、今回のようなケースでは、これが貫けるわけではない。しかも、このプライバシーポリシーには「方針は予告なく変更される可能性がある」との記載もある。すでに23andMeが本社を置くカリフォルニア州の司法長官ロブ・ボンタ氏は、同社のサービス利用者に利用規約に基づくデータ削除を促す警告を発しているほどだ。そして同じリスクは、前述のような消費者向け遺伝子検査業界の低迷を考えれば、日本でも今後、現実のものになる可能性は否定できない。一応、日本国内ではこうした消費者向け遺伝子検査業者は、個人情報保護法を基に経済産業省が定めた「経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン」1)を遵守することが求められている。同ガイドラインでは匿名化した場合でも遺伝情報の第三者利用には同意が必要なことなどが定められてはいる。そして業者の多くは、検査申し込み利用者の個人情報と検査部門が有する匿名化された検査結果を別個管理し、利用者本人がID、パスワードをウェブ上で入力した時のみ両データが紐付けされるシステムを構築するなど、安全対策は講じている。とはいえ、23andMeの状況を見るにつけ、検査を受けたことがある私自身もやや不安には感じ始めている。参考1)経済産業省:経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン(平成 29 年3月 29 日[令和6年3月1日一部改正])

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botulism(ボツリヌス症)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第23回

言葉の由来「ボツリヌス症」は英語で“botulism”といいます。この病名の語源はラテン語の“botulus”に由来し、これはなんと「ソーセージ」を意味する言葉です。病名に食品名とは奇妙な印象ですが、この名前は1820年代にドイツ南部で発生した「ソーセージ中毒」の集団発生に関連しています。当時はソーセージ製品の保存技術が未熟だったため、毒素が産生されやすい環境が整っていたのです。ドイツの医師ユスティヌス・ケルナーが、ソーセージを食べた後の中毒症状を詳細に記述し、これが最初の臨床的なボツリヌス中毒の記述となりました。ボツリヌス中毒の原因菌であるClostridium botulinumが同定されたのは、約80年後の1895年のことでした。ベルギーの小さな村で発生した葬儀の夕食会での集団食中毒をきっかけに、ゲント大学の細菌学教授、エルメンゲムが発見しました。なお、近代以前にも、ボツリヌス中毒が認識されていた可能性はあります。たとえば、10世紀のビザンチン帝国の皇帝レオ6世が血のソーセージの製造を禁止する勅令を出していたという記録があり、これは古代からこの種の食中毒の危険性が認識されていた可能性を示唆しています。また、現代でもこの食中毒は定期的に発生しており、日本では辛子蓮根や小豆ばっとう(小豆汁にうどんが入った東北地方の郷土料理)など、真空パック製品などを原因とするボツリヌス食中毒が報告されています。併せて覚えよう! 周辺単語神経毒neurotoxin食中毒food poisoning麻痺paralysis嫌気性菌anaerobesこの病気、英語で説明できますか?Botulism is a rare but serious illness caused by a toxin that attacks the body's nerves. It causes difficulty breathing, muscle paralysis, and can be fatal. The toxin is produced by bacteria called Clostridium botulinum bacteria, which can grow in improperly preserved food.講師紹介

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臨床背景で違いが出る手技、過失を問われるポイントは?【医療訴訟の争点】第10回

症例前回、患者の病態により左右されることの少ない定型化された機械的所作の手技の過失の有無等が争われた事案を紹介した。今回は、患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度など)に応じて手技内容が異なる手技の過失の有無が争われた東京地裁平成24年6月21日判決を紹介する。本件では、肝細胞がんに対するラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)の手技の過失が争われている。RFAについては、本件判決において、以下のものと整理されている。〔ラジオ波焼灼療法(RFA)〕腫瘍に穿刺した電極針から発生する高周波電流(ラジオ波)によって生ずる熱によって腫瘍を凝固壊死させる治療法。RFA装置は超音波画像上、穿刺状況を確認できるようになっているとともに、焼灼が進むと水分が蒸発して、インピーダンス(抵抗)値が上昇する。インピーダンス値により、焼灼がどの程度進んでいるのかを把握し、ロール・オフ(熱凝固が進むことにより水分が蒸発し、ラジオ波通電性が失われ電気抵抗値が最大になった状態)を判断し、ロール・オフになると自動的に出力がゼロになるように設計されている。局所再発を減らすためには、焼灼範囲に腫瘍の周囲5mmのセーフティ・マージンを確保する必要があり、そのため症例によっては複数回穿刺を行う。<登場人物>患者59歳(本件手術時)・男性他の医療機関にて肝内に腫瘍があるとの診断を受け、紹介により被告病院を受診。原告患者配偶者被告総合病院(大学病院)事案の概要は以下の通りである。平成14年(2002年)8月7日他の医療機関にて肝内に腫瘍があるとの診断を受け、紹介により被告病院を受診。肝細胞がんと診断された。9月4日肝細胞がん治療のためRFAを実施。平成15年(2003年)12月12日肝動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)実施平成16年(2004年)12月13日TAE実施平成17年(2005年)10月17日TAE実施10月25日動注化学療法実施11月22日動注化学療法実施平成18年(2006年)3月22日被告病院に入院3月23日S6およびS8領域の肝細胞がん治療のため、RFA(本件手術)実施。3月27日腹部CT検査実施3月29日上記CT検査の結果につき、放射線科医師より、遊離ガスが認められ、大腸穿孔が起きていると考えられる旨が消化器内科医師に報告された。午後11時頃、本件患者より腹痛が続いているとの訴えがあり、診察した医師は、腹膜炎を起こした可能性が高いと診断。3月30日腹膜炎治療のため開腹手術。4月21日肝不全により死亡。〔本件手術中の経過〕~〔司法解剖の結果(解剖所見)〕〔本件手術中の経過〕本件手術当時、患者の肝臓に残存していた腫瘍(肝細胞がん)は、S6領域に長径30mm(30mm×18mm)程度、S8領域に長径23mm(23mm×13mm)程度のものであった。執刀医は、局所麻酔の後、S8領域の肝細胞がんを焼灼するため、超音波画像下で展開時4cmなるRTC針を皮膚から約7cm穿刺し、半展開してロール・オフするまで3分22秒間焼灼した。その後、同箇所にて針を全展開してロール・オフするまで6分2秒間焼灼した。そして、熱凝固範囲を広げるため、針を閉じて約1cm引き抜き、再度針を全展開してロール・オフするまで5分40秒間焼灼した。続いて、S6領域の肝細胞がんを焼灼するため、超音波画像下で皮膚から約7cm穿刺し、RTC針を半展開してロール・オフするまで4分8秒間焼灼した。その後、同箇所にて針を全展開してロール・オフするまで5分1秒間焼灼し、熱凝固範囲を広げるため、針を閉じて約1cm引き抜き、針を全展開してロール・オフするまで5分51秒間焼灼した。そして、針を閉じて皮膚から1度抜き、再びS6領域の肝細胞がんに対して、先ほどとは別の位置から穿刺し、全展開して焼灼を試みたものの、5分経過時にエラーとなって停止したため、同箇所で再度ロール・オフするまで4分31秒間焼灼した。〔本件手術4日後(3月27日)撮影CT画像〕総焼灼部の長径は約90mmに及び、焼灼部全体の形は円形ではなくいびつであった。〔司法解剖の結果(解剖所見)〕『主要所見』欄の内部所見欄に「肝臓は黄色硬化著明で、肝硬変末期を呈する。右葉外側に球形の壊死巣を2ヵ所認め、底面において横行結腸が壊死巣の一つに開放されている。」『考察』欄に「医療行為そのものが直接的に死亡に結びついたとは考えにくい。」「熱凝固法で問題となった結腸への同治療法の波及による穿孔形成も、解剖において確認できる。ただし、この穿孔部は肝臓底面に接する壊死巣にほぼ連続しており、誤ってラジオ波を結腸に当てたというよりは、肝臓のがん組織に照射したものが辺縁部において一部結腸を巻き込んだ様相を呈している」との記載。実際の裁判結果本件裁判では、穿刺箇所の過誤または穿刺経路の過焼灼の有無について争われたが、裁判所は、以下のとおり、いずれも過誤は認められないと判断した。1. 穿刺箇所の過誤について原告は、本件手術で使用された器具の構造上、焼灼範囲は4cm程度にしかならず、また、ほかに焼灼範囲が広範囲となる原因は見当たらないのであるから、焼灼範囲が広範囲となった原因は、穿刺箇所の過誤以外には考え難い旨主張した。しかし、裁判所は、RFA装置は手技者が超音波画像において腫瘍と針の位置を常に視認することが可能であることを指摘し、「手技者は、位置断面図を映し出す超音波画像上、腫瘍(目的部位)と針の両方を確認でき、手技者はその画像上でリアルタイムに針の肝臓への刺入から腫瘍までの到達を視認することが可能なのであるから、目的部位以外を穿刺することは通常は考え難い」とした。また、本件では、本件手術4日後(3月27日)撮影CT画像において、総焼灼部の長径は約90mmに及び、焼灼部全体の形は円形ではなくいびつであったという事情があり、本件手術に使用された器具の構造上、通常は、焼灼範囲は4cm程度にしかならないのに、焼灼範囲が広範囲に及んでいるという事情があった。原告はこの点を指摘し、穿刺箇所に過誤があったと主張した。しかし、裁判所は、焼灼範囲について球形に近い凝固形状を形成することからすると、本件のような広くいびつな焼灼範囲が生じたことは説明できないこと、長径30mmあるS6領域の腫瘍の最下辺部または腫瘍の存在しない箇所に穿刺しない限りは、焼灼部位が大腸(または肝臓の最下端)にまで広がることは考え難く、そのような極めて重大、明白な過誤を犯すことは、特段の事情がない限り想定し難いことを指摘し、過誤を否定した。2. 穿刺経路の過焼灼の有無について原告は、患部から針を抜く際に焼灼し過ぎれば、焼灼範囲が広範囲となるのであるから、本件において焼灼範囲が広範囲となったと主張した。これに対し、裁判所は、RFA装置は、超音波画像上、穿刺状況を確認できるようになっているとともに、インピーダンス値が表示され、この値により、焼灼がどの程度進んでいるのかを把握し、ロール・オフを判断し、ロール・オフになると自動的に出力がゼロになるように設計されているのであるから、その構造上、過焼灼が生ずる可能性は認め難いとした。注意ポイント解説本件は、患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に応じて手技内容が異なる手技の過失の有無が争われた事案である。裁判所は、上記のとおり、治療対象の腫瘍の位置や大きさ、術後の画像所見、司法解剖の結果などから、原告の主張するとおりの手技の過誤が認められるかを判断している。そして、本件では、使用されたRFA装置が、RTC針が刺入される角度と同じ角度で超音波画像上にニードルマークを表示させることができ、実際にRTC針がニードルマークに沿って目的部位(腫瘍)に向かって進んでいるかどうか、針先が目的部位に到達しているかどうかといった穿刺状況を、超音波画像上で確認することができるものであったため、「目的部位以外を穿刺することは通常は考え難い」とされた。しかしながら現状では、このような装置を用いての手技や術中画像が存在するケースは多くなく、一般的には、患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に照らして過誤を来たしやすい手技か、手術記録や術後の経過・検査結果等が過誤のあった場合のものと整合するか等の点から、過誤の有無が判断されることとなる。このため、本件では過誤は否定されているが、注意を怠れば過誤を来たしやすい手技である場合(注意を尽くしていても不可避の合併症と説明できない場合)や、術後の画像所見が手技に過誤があった場合に生じるものと整合する場合などには、過誤があるとの判断がなされることとなる。なお、本件では、術後CT画像等において焼灼範囲が広範囲に及んでいた原因を特定できないこととなるが、これに関し、裁判所は、以下の点を指摘し、「焼灼範囲が広範囲に及んだ原因が特定できないことを理由に、穿刺箇所の過誤があったものと推認することは、やはり許されないというべき」とした。焼灼対象となる肝臓の状況によって例外があり得ないものとまで考えることはできないこと。たとえば、RFAやTAEによる血流の低下や熱伝導の抵抗の低下が原因である可能性も否定はできないこと。本件の司法解剖の結果によっても、穿刺箇所の過誤を示唆するような点は見当たらず、むしろ、「誤ってラジオ波を結腸に当てたというよりは、肝臓のがん組織に照射したものが辺縁部において一部結腸を巻き込んだ様相を呈している」と指摘されていること。上記は、過誤以外の原因により、このような術後所見を来たしうることを、過誤の有無の判断における一つの考慮要素としているものといえる。医療者の視点本件のように、医療手技の適切性が問われるケースでは、手技の選択や実施において、医療者がどのような判断を行い、どのようにリスクを管理していたかが重要になります。手技には、標準的なプロトコルがあるものの、患者ごとの病態に応じて適応や実施方法を調整する必要があります。そのため、術前の計画立案、手技中の慎重な対応、術後の経過観察が不可欠となります。とくに、侵襲的な手技では、術者の経験や技術だけでなく、使用する機器の特性、術中のモニタリング、患者の解剖学的特徴など、多くの要因が結果に影響を与えます。たとえば、穿刺系の手技では、解剖学的な個人差や病態による組織の変化が予期しない合併症の要因となることがあり、慎重な画像評価とリアルタイムのフィードバックが求められます。また、医療機器を用いる治療では、隣接組織への影響を十分に考慮し、適切な出力設定やエネルギー制御を行うことが重要です。さらに、医療訴訟の観点からは、手技前のリスク説明と手技後のフォローアップも重要です。とくに、偶発的な合併症が発生しうる手技では、患者や家族に対し、そのリスクや対応策を明確に説明し、納得を得るプロセスが不可欠です。また、術後に異常所見が見られた場合、その原因を正確に特定し、適切な対応を迅速に行うことが求められます。本件の裁判では、手技自体の過誤は認められませんでしたが、医療者としては、手技の安全性を高めるための努力を継続することが重要です。事前の十分な準備、術中の精度の高い対応、術後の適切なフォローアップにより、医療の質を向上させ、患者の安全を確保することが、臨床医に求められる役割といえます。Take home message行われた手技が患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に照らして過誤を来たしやすいものか、術後の経過・検査結果等が過誤のあった場合のものと整合するか(過誤以外の原因による症状・経過であるか)等から、手技の過誤の有無が判断される。不可避の合併症であること、または、過誤以外の原因による術後経過であることを説明できるかがポイントとなる。キーワード病理解剖・AI(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)患者の死亡事案においては、司法解剖が行われるケース以外にも、家族の同意を得て、病理解剖やAIが行われることがある。それらが行われている場合、その結果は、死因の究明、病態進行の確認、他の原因疾患の有無などの確認で活用されるものであるが、医療紛争となった場合においては、過失や因果関係の判断でも用いられる。

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不妊治療中、男性はコーヒーの飲み過ぎに注意

 不妊治療中カップルの男性におけるコーヒー、紅茶、蒸留酒の摂取量と生児出生確率が逆相関していた一方、ビールでは正相関がみられたことが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のAlbert Salas-Huetos氏らの研究で示された。Andrology誌2025年3月号に掲載。 これまでの飲料と生殖に関する健康との関係を調べた研究は相反する結果が得られている。今回、男性343人から採取した精液896サンプルについて、女性が妊娠する前の男性の飲料摂取量と精液の質との関係を調べた。714周期(子宮内人工授精306周期、体外受精408周期)の生殖補助医療を受けた296人の男性とそのパートナーの女性を対象に、飲料摂取量と生殖補助医療によるアウトカム(受精、着床、臨床的妊娠、全/臨床的流産、生児出生)との関係を評価した。 主な結果は以下のとおり。・カフェイン入り飲料、アルコール入り飲料、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料の摂取は、精液の質パラメータや、生殖補助医療を受けたカップルにおける受精、着床、臨床的妊娠、生児出生とは関連していなかった。・飲料別に検討したところ、体外受精サイクルを受けたカップルにおいて、カフェイン入りコーヒー/紅茶の摂取量と生児出生確率が逆相関していた。摂取量の最低三分位と最高三分位における調整生児出生確率(95%信頼区間[CI])は、カフェイン入りコーヒーで0.49(0.38~0.61)と0.33(0.24~0.43)、カフェイン入り紅茶で0.49(0.33~0.51)と0.31(0.22~0.41)であった。蒸留酒でも0.45(0.37~0.53)と0.32(0.25~0.41)と同様の傾向がみられた。・一方、ビールでは摂取量が多いほど生児出生確率が高く、最低四分位と最高四分位における調整生児出生確率(95%CI)は、0.32(0.23~0.42)と0.51(0.39~0.62)であった。

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Lp(a)測定の国際標準化、新薬登場までに解決か/日本動脈硬化学会

 60年前に初めて発見され、LDLコレステロール(LDL-C)と独立して動脈硬化を促進させる血清リポプロテイン(a)(以下「Lp(a)」)。その存在自体は医師にも知られているが、「一生に一度測定すればよい」との勧告や治療薬が存在しないことも相まって、測定する意義や基準値に関する理解が今ひとつ進んでいないのが実情である。しかし、数年後にLp(a)を低下させる新薬が登場すると期待されている今、これらの解決が急務とされている。そこで、日本動脈硬化学会が「Lp(a)と測定値の標準化について」と題し、プレスセミナーを開催。三井田 孝氏(順天堂大学医療科学部 臨床検査科)がLp(a)測定を推進していく中で問題となる測定値の標準化にフォーカスして解説した。 Lp(a)とは、そもそも何か Lp(a)とは、低比重リポ蛋白(LDL)を形成しているapoB-100にapo(a)が結合して形成されるリポ蛋白粒子である。apo(a)にはクリングルと呼ばれる領域があり、なかでもクリングルIV(KIV、KIV1~10のサブタイプあり)のうちKIV2の繰り返し数がLp(a)濃度を決定付ける。「この繰り返しは遺伝子によって決まるが、それが少ないほどLp(a)濃度が高くなる」と、三井田氏は遺伝子レベルで個人差があることを説明した。さらに、Lp(a)は酸化リン脂質と結合するとLDLと独立した動脈硬化リスク因子となり、心筋梗塞や虚血性脳卒中、大動脈弁狭窄症の発症との関連性も明らかになってきている1)。Lp(a)測定の意義 このLp(a)に対し、医師の本音として“数値の解釈が難しい”、“検査キットによって数値のばらつきがあるから測定したくない…”といった声も挙がっているようだが、強力なLDL低下療法を行っているにもかかわらず思うようにコントロールできない残余リスクのある患者では、Lp(a)の影響が高い可能性がある。そのためLp(a)を測定し、高値であれば冠動脈疾患高リスク患者と捉え、LDL-Cをはじめとする介入可能な危険因子管理をより厳格に行う2,3)ことが求められる。「既存薬で避けられなかった残余リスクを低下させられる可能性があるため、2次予防の観点からもLp(a)の測定は重要」と述べた。また、近い将来に核酸医薬や経口薬といったラインナップの薬剤が上市されることを見越して、「今のうちから高リスク患者だけでも測定しておく意義はある」ともコメントした。測定基準、国際標準化の必要性 このように新薬の上市が期待される中で、Lp(a)の検査をオーダーする医師が少ない以前に解決すべき問題がある。それはLp(a)測定値は30年以上前から測定キットによってばらつきがある点だ。これについて同氏は「Lp(a)測定値は世界的に見ても施設や試薬によって大きく異なり、国際的な標準化が急務。過去に標準化の試みがあったものの、標準物質の入手困難などで頓挫してしまった」と説明した。「各国のガイドラインでハイリスク群のカットオフ値が決められているが、検査に用いる測定キットにより実際の値に2倍もの乖離が生じている。実は30年前に一度、国際臨床化学連合(IFCC)がワーキンググループを設立して一次標準物質としてSRM-2B*を選定したが、残念ながら標準化は達成できなかった。それ以来、各社バラバラの測定値を報告してしまっている。しかし、IFCCは新たなワーキンググループを設立し、2023年には質量分析装置を用いたLp(a)の基準測定法を発表して、ようやく測定基準の標準化に向けて一歩を踏み出した」とコメントした。*SRM:Standard Reference Material<現時点での各ガイドラインにおけるLp(a)の取り扱い>●米国・AHA/ACCガイドライン(2019年) <30mg/dL 有意なアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクなし ≧50mg/dL ASCVDのリスク増強因子●欧州・ESC/ ESAガイドライン(2020年) ≧50mg/dL ASCVDのハイリスク群●日本・JASガイドライン(2022年) その他の考慮すべき危険因子・バイオマーカー今、日本で進められていること そして残るは測定値の国際標準化だが、三井田氏らが世界をリードして国内からカットオフ値を発信していく取り組みを行っている。それを推し進める理由として「Lp(a)の分子量はapo(a)のアイソフォームにより異なるため、正確に知ることができず、mg/dLで表示することは計量学的な誤りがある。標準化に際し、各キットの値をすべて変更しなければ臨床現場で大きな混乱を招く恐れがあり、標準化値(SI単位)へ移行すれば過去のデータも有効活用することができる」と説明した。 このようにLp(a)は混乱の渦中にあるため、現行の国内ガイドライン2,3)には測定の推奨や基準がまだ明確にされてはいない。同氏は「2027年の改訂時には標準化されたLp(a)値が記載されることが期待される」と述べ、「臨床系の学会への啓発が不足していたこれまでの反省を胸に、各学会や一般市民、世界を巻き込んで標準化を進めていかなければならない」と意気込みをみせた。

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化学療法誘発性末梢神経障害の克服に向けた包括的マネジメントの最前線/日本臨床腫瘍学会

 2025年3月6~8日に第22回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催され、8日の緩和ケアに関するシンポジウムでは、「化学療法誘発性末梢神経障害のマネジメント」をテーマに5つの講演が行われた。化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy:CIPN)は、抗がん剤投与中から投与終了後、長期にわたって患者のQOLに影響を及ぼすものの、いまだ有効な治療の確立に至っていない。そこで、司会の柳原 一広氏(関西電力病院 腫瘍内科)と乾 友浩氏(徳島大学病院 がん診療連携センター)の進行の下、患者のサバイバーシップ支援につなげることを目的としたトピックスが紹介された。CIPN予防戦略の現状と今後の研究開発への期待 まず、CIPNの予防に関する最新エビデンスが、華井 明子氏(千葉大学大学院 情報学研究院)より紹介された。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』には、CIPNを誘起する化学療法薬の使用に際し、予防として推奨できるものはないと記載されている。また、抗がん剤の種類によっては投与しないことを推奨する薬剤もあり、状況に応じて運動や冷却の実施が推奨されるものの、強く推奨できる治療法はない。そのため、多くの患者が苦しんでいる現状が指摘された。 こうした中、手足を冷却または圧迫して局所の循環血流量を低下させることで、抗がん剤をがん細胞に到達させつつ、手足には到達させない戦略がCIPN予防に有効とのエビデンスが散見されており、冷却がやや優位との成績が最近示された。「ただし、冷却の効果は抗がん剤投与中に最大限発揮されるので、投与後数時間経過して出現する症状には効果がない」と、同氏は説明した。 なお、がん治療中の運動は、心肺機能や筋力、患者報告アウトカムなどを改善するとのエビデンスが確立しているため、有酸素運動や筋力トレーニングが推奨されている。一方、CIPN予防における運動の実施は、本ガイドラインでは推奨の強さ・エビデンスの確実性ともに弱い。同氏は、「それでも治療前のプレハビリテーションにより体力・予備力を高めておくことは有効」とした。また、予防ではなく、CIPN発現例に対する治療であるが、バランス運動、筋力トレーニングおよびストレッチは、いずれも長期的には実施のメリットが大きいとの研究成果が紹介された。 「CIPNの頻度は抗がん剤の種類はもちろん、評価の時期・指標によっても異なり、患者の生活状況や主観が大きく影響する。そのため、評価方法の標準化がCIPN予防/治療戦略の開発につながるだろう。また、運動プログラムのエビデンスは増え続けていることから、ガイドラインの次期改訂では推奨が変わる可能性もある」と、同氏は期待を示した。CIPN治療戦略と実臨床への橋渡しに向けた取り組み 次に、CIPNの治療に関する動向が吉田 陽一郎氏(福岡大学病院 医療情報・データサイエンスセンター 消化器外科)より解説された。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン 2023年版』で薬物療法として推奨されている薬剤は1剤のみであり、予防ではなく治療のみでの使用が可能となっている。同氏はその根拠となった論文と共に、最新のシステマティックレビュー論文に触れ、「エビデンスが不十分で、本ガイドラインにおける推奨の強さは弱い。CIPNの予防や治療の領域では、プラセボが心理的な影響だけでなく、生理的な変化をもたらすことが知られているため、プラセボ効果を含めたデザインの下で臨床試験を実施することが望まれる」と述べた。 こうした中、わが国ではCIPN症状が出現した際に投与する薬剤のアンケート調査が、『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き 2017年版』の公表前後(2015年および2019年)に実施され、使用薬剤の変化が報告されている。近く再調査が行われる予定で、より現実的なマネジメントの理解につながるとのことである。さらに同氏は、わが国の臨床試験の状況や課題点などを説明するとともに、日本がんサポーティブケア学会 神経障害部会が取り組んでいるCIPNに関する教育動画について、「詳細は日本がんサポーティブケア学会のホームページに近日掲載予定で、2025年5月に開催される同学会の学術集会でも告知予定」と紹介した。がんサバイバーのCIPNに対する鍼灸治療の可能性 わが国では年間100万例ががんに罹患し、治療後も慢性疼痛、とくにCIPNを訴える患者が増えている。石木 寛人氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)は、「乳がんの場合、年間9万例の発症者のうち、5年生存率が90%で、その半数が痛みを抱えているとすれば、毎年約4万例の慢性疼痛患者が発生する。現状では各種鎮痛薬による薬物療法が推奨されているが、痛みの原因を根本的に解決する治療ではないため、非薬物療法のニーズは高まっている」と指摘。 このような背景もあり、同氏が所属する診療科では1980年代から鍼灸治療を緩和ケアの一環として提供してきた。治療は刺入鍼、非刺入鍼、台座灸、ホットパックを組み合わせ、標治法(症状部位の循環改善を促す局所治療)と本治法(体力賦活を図る全身調整)により、CIPNでは週1回30分、3ヵ月間の施術を基本とし、施術後に患者が自宅で行うセルフケア指導も治療に含まれる。 同院では、こうした鍼灸治療の乳がん患者における有用性を検証する前向き介入試験を2022年より実施しており、「結果は2025年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表予定」と、同氏は紹介した。さらに現在、多施設ランダム化比較試験を準備中で、乳がん診療科と鍼灸治療提供施設とのネットワーク作りとして、各施設や学会、企業などと月1回のオンラインミーティングを実施。「円滑な共同研究のためには、まずは互いの人となりや専門性を理解し、強固な連携体制を築いていくことが重要」と強調した。また、鍼灸師が医療機関に出向いて技術交流を行うなど、現場レベルでの連携も進んでいるという。 これに加え、学会やWebセミナーでの交流会、学術団体同士の相互理解を深める取り組みなど、さまざまな普及活動を進めており、「CIPNに苦しむ患者への新たな治療選択肢を提供できる日は近づいている」と、同氏は意欲を示した。CIPNマネジメントにおける医療機器の現状と課題 久保 絵美氏(国立がんセンター東病院 緩和医療科)によると、CIPNのマネジメントには医療機器の活用が重要になるという。ただし、「日・米・欧のガイドラインでCIPN予防/治療における冷却療法や圧迫療法、その他治療法の推奨の強さやエビデンスの質は異なる」と指摘。米国食品医薬品局(FDA)に承認されている機器が紹介されるも一定の評価は得られず、今後も引き続き検証が必要とされた。 一方、内因性疼痛抑制系の賦活や神経成長因子の調整、抗炎症作用などにより複合的に鎮痛をもたらす交番磁界治療器の有効性が、前臨床試験と共に、同氏が研究責任医師として担当した臨床試験で検討されている。それによると、CIPNの原因となる抗がん剤投与終了後1年以上経過した症状固定患者のtingling(ピリピリ・チクチク)やnumbness(感覚の低下)に関して、一定の効果が示唆され保険収載に至っている。 同氏は、「医療機器によるCIPNマネジメントは発展途上で、エビデンス不足が課題である。そのため、前臨床データの拡充と共に、治療効果のさらなる検証は必須」と強調した。脳の神経回路の変化に起因する“痛覚変調性疼痛”の理解と治療戦略 痛みには侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛に加え、これまで心因性疼痛や非器質的疼痛と呼ばれていた痛覚変調性疼痛がある。川居 利有氏(がん研究会 有明病院 腫瘍精神科)は、「痛覚変調性疼痛はCIPNに付随するものである。たとえば、3ヵ月を超えるような抗がん剤投与後からの手足のしびれ、強い倦怠感、浅眠、めまい・耳鳴り、食欲低下や、抗がん剤投与終了後も症状が改善せずに遷延・悪化すること、また、不安が強くなり、症状に執着し訴えが執拗になることがある。このような患者に遭遇したことはないだろうか」と問い掛けた。 これは脳神経の可塑的変化により発症、維持される慢性痛で、痛み過敏、睡眠障害、疲労、集中困難、破局思考などを伴う。神経可塑性とは、脳の神経が外部刺激により伝達効率を変化させる能力で、学習や記憶に深く関わる一方、慢性痛では脳の感覚-識別系が抑制され、情動-報酬系、認知-制御系が活性化する。この状態が進むと痛みに対する不安や苦痛が増すばかりか、痛みを軽減する下行性制御系、いわゆるプラセボ回路の機能が低下し、痛みへの自己調節が困難となる。これが不安症や強迫症、治療への期待感の喪失、医療への不信感などにつながるという。 同氏は、「CIPNは長期間に持続し、そこに神経の可塑的変化による痛覚変調性疼痛が追加されることで、痛みはもとより、うつ病や不安症、自律神経症状も加わり、感情調節機能不全に陥る」と説明。また、「CIPNの慢性化では過敏症状の併発に注意し、急激な症状変化の有無についての詳細な問診が大切である。この状態は単なる“気のせい”ではなく、長期間の心理社会的問題などの蓄積による機能障害が原因」とし、「治療には患者との信頼関係の構築が不可欠で、とくに慢性化したケースでは患者の背景や過去の経験に配慮する必要がある。睡眠や心理的ケアは治療上重要なため、心療内科や精神科への適切な紹介が推奨される。CIPNそのものは治らないが、QOL改善には過敏症状のマネジメントが大切」と結んだ。

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CKDの貧血治療、ダプロデュスタットvs.ダルベポエチン アルファ~メタ解析

 貧血を伴う慢性腎臓病(CKD)患者を対象として、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファの有効性と安全性を比較したメタ解析の結果、ヘモグロビン(Hb)値、トランスフェリン飽和度、血清鉄の変化、有害事象の発現率は両群間で有意差を認めなかったものの、ダプロデュスタットはダルベポエチン アルファよりもフェリチン値の変化が小さく、総鉄結合能を改善したことを、中国・長春中医薬大学のShuyue Pang氏らが明らかにした。Journal of Pharmacological Sciences誌2025年5月号掲載の報告。 貧血はCKDの一般的な合併症であり、心血管イベントおよびCKD進行の危険因子である。近年は腎性貧血治療薬も増えているが、貧血を伴うCKD患者に対する治療戦略と有効性の最適化は早急に取り組むべき重要な課題として残されたままである。そこで研究グループは、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファの有効性と安全性を比較することを目的として、系統的レビューとメタ解析を行った。 PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceをデータベース開設から2023年8月1日まで体系的に検索し、透析の有無にかかわらずCKDおよび貧血と診断された患者の治療として、ダプロデュスタット(試験群)とダルベポエチン アルファ(対照群)を比較したランダム化比較試験を抽出した。主要アウトカムはHb値、トランスフェリン飽和度、フェリチン値の変化で、副次アウトカムは総鉄結合能、血清鉄の変化、有害事象の発現率であった。 主な結果は以下のとおり。・4件のランダム化比較試験の7,419例が解析対象となった。ダプロデュスタット群は3,717例、ダルベポエチン アルファ群は3,702例であった。・Hb値の変化(標準化平均差[SMD]:3.23、95%信頼区間[CI]:-0.25~6.70)、トランスフェリン飽和度の変化(SMD:-0.07、95%CI:-0.31~0.17)、血清鉄の変化(SMD:0.24、95%CI:−0.05~0.53)は両群間で有意差を認めなかった。・ダプロデュスタット群はダルベポエチン アルファ群よりもフェリチン値の変化が有意に小さく(SMD:-0.05、95%CI:-0.10~-0.01)、総鉄結合能が改善した(SMD:0.57、95%CI:0.46~0.68)。・有害事象の発現率は両群間で同等であった(リスク比:1.02、95%CI:0.98~1.06)。 研究グループは「これらの結果は、Hb値の維持と安全性プロファイルの点でダプロデュスタットが劣っていないことを裏付けると同時に、鉄代謝における潜在的な利点を強調している」とまとめた。

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