サイト内検索|page:1278

検索結果 合計:35172件 表示位置:25541 - 25560

25541.

事例69 腫瘍マーカーの査定【斬らレセプト】

解説事例では、前々月の病名開始日のまま実施したD009腫瘍マーカー4項目以上がD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの:算定要件誤り)にてすべて査定となった。医師は、「腫瘍マーカーの値が異常値を示しているために、頻回の検査を要した」とコメントしている。しかし、点数表の腫瘍マーカーの注1には、「診療及び腫瘍マーカー以外の検査の結果から悪性腫瘍の患者であることが強く疑われる者に対して、腫瘍マーカーの検査を行った場合に、1回に限り算定する」とある。審査支払機関では、コンピュータを使った過去6ヵ月間の縦覧点検も毎月行っている。その縦覧点検において、5月のレセプトに腫瘍マーカーの算定があり、7月のレセプトにも5月のレセプトと同じ疑い病名と同じ診療開始日、ならびに腫瘍マーカーの算定があることが指摘された。このため7月に算定された腫瘍マーカーは5月の診療開始日から2回目であると判断され、注1に掲げられた「転帰又は病名確定までの期間に1回のみ」との取り扱いが適用、査定となったのである。医学的には検査値を追うことが診断の補助になるが、保険診療では悪性腫瘍であることを強く疑った検査などの実施がないと、予防的検査として査定対象となる。注意して算定をしていただきたい。

25542.

エストロゲン受容体の遺伝子多型と肺がんは関係するのか?

 エストロゲン受容体(ER)遺伝子の一塩基多型(SNP)は、非喫煙女性における肺腺がんリスクと関係することを、国立台湾大学医学院附属病院のKuan-Yu Chen氏らが報告した。Journal of thoracic oncology誌オンライン版2015年8月21日号の掲載報告。 これまでERの遺伝子多型と肺がんのリスクとの関係は、ほとんど研究されてこなかった。本研究の目的は、非喫煙女性における肺腺がんと関係するERの遺伝子多型を見つけることである。 本研究の対象は肺腺がんに罹患している非喫煙女性532人と健常女性532人。ESR1とESR2のSNPのデータはゲノムワイド関連解析により収集し、多変量補正ロジスティック回帰分析により、ESR1、ESR2のSNPと肺腺がんリスクとの関係性を調べた。発現量的形質遺伝子座(eQTL)分析により、エストロゲン受容体(ER)のSNPの機能的な役割を検討した。 主な結果は以下のとおり。・ESR1では、7 種類のSNPが同定され、このうちrs7753153 と rs985192 が肺腺がんリスクと関係していた。それぞれ、rs7753153(オッズ比[OR]:1.509、95%CI:1.168~1.950)、rs985192(OR:1.309、95%CI:1.001~1.712)。・ESR2では、 rs3020450のみが肺腺がんリスクと関係していた(OR:2.110、95%CI:1.007~4.422)。・ホルモン補充療法を受けたことがなく、肺腺がんリスクの高い遺伝子型を有する患者は、ホルモン補充療法を受けたことがあり、同遺伝子型を持たない患者と比べて、肺腺がんリスクが有意に高かった。rs7753153 GG(OR:2.133、95%CI:1.415~3.216)、rs985192 AA/AC (1.752、95%CI:1.109~2.768)、rs3020450 AG/GG(7.162、95%CI:1.608~31.90)。・rs7753153とrs9479122のリスク遺伝子型はESR1発現の減少と関連していた(それぞれ、p=0.0248、p=0.0251) 本研究結果より、非喫煙女性ではER遺伝子のSNPと肺腺がんリスクが関連していることがわかった。肺腺がんの発症には、ER遺伝子のSNPとホルモン補充療法の2つの因子が複合的に影響しており、このことは肺がんの発症における遺伝子環境の相互影響の重要性を示唆している。

25543.

新生児ビタミンA補給によるアトピーのリスクは女児のみ?

 現在、新生児へのビタミンA補給は、欠乏症のリスクのある国では政策となりつつあるが、先行研究においてアトピーの増加と関連がある可能性が示唆されている。そこで、デンマーク・Statens Serum InstitutのSofie Aage氏らは、ギニアビサウで実施した無作為化比較試験後の長期追跡調査を行った。その結果、女児においてのみ新生児ビタミンA補給がアトピーならびに喘鳴のリスク増加と関連が認められたことを報告した。著者は、「新生児ビタミンA補給とアトピーに関するさらなる研究が必要」と提言している。Allergy誌2015年8月号(オンライン版2015年5月18日号)の掲載報告。 研究グループは、2002~2004年にギニアビサウの正常出生体重児4,345例を、BCG接種+ビタミンA補給(レチニルパルミテート50,000IU)群またはBCG接種+プラセボ補給群に無作為化し、2013年に長期追跡調査を行った。 長期追跡調査の対象は、試験を行った地域にまだ居住していた8~10歳の小児1,692例のうち自宅にいた1,478例(87%)であった。同意を得た後、皮膚プリックテストを行うとともに、アレルギー症状の既往歴について記録した。 皮膚プリックテスト陽性(3mm以上)をアトピーと定義し、ビタミンA補給との関連について解析した。 主な結果は以下のとおり。・皮膚プリックテストで評価し得た小児1,430例のうち、228例(16%)でアトピーが認められた。女児(12%)より男児(20%)が有意に多かった(p<0.0001)。・ビタミンA補給は、アトピーのリスクを増加させなかった(相対リスク[RR]:1.10、95%信頼区間[CI]:0.87~1.40)。・しかし性別にみると、男児ではビタミンA補給とアトピーリスク増加との関連はなかったが(RR 0.86、95%CI:0.64~1.15)、女児では有意な関連が認められた(同:1.78、1.17~2.72)(ビタミンA補給と性別の相互作用のp=0.005)。・同様に、男児ではビタミンA補給と喘鳴リスク増加との関連はみられなかったが、女児では関連が認められた(RR:1.80、95%CI:1.03~3.17)(相互作用のp=0.05)。

25544.

音楽療法が不眠症に有用

 不眠症は、現代社会において一般的な睡眠障害であり、生活の質の低下を引き起こし、身体的および精神的健康を損なう。音楽鑑賞が睡眠を助ける手段として広く用いられているが、それが成人の不眠症を実際に改善しうるか否かは依然不明確であった。デンマーク・オーフス大学のKira V Jespersen氏らは、成人の不眠症に対する音楽療法の有効性を明らかにするため、メタ解析を行った。その結果、音楽療法は通常の治療法に比べ、睡眠の質の改善に有効であることを示唆するエビデンスが得られたことを報告した。今回の結果を踏まえて著者らは、「音楽療法は安全で、その導入は簡便である。さらなる研究により、音楽鑑賞等の睡眠の側面に対する効果や、不眠症に起因する日中の症状に対する効果を確立することが求められる」とまとめている。Cochrane Database Systematic Reviews誌オンライン版2015年8月13日号の掲載報告。 研究グループは、音楽鑑賞が成人の不眠症に及ぼす効果と、その効果を減じる可能性がある特定の事象の影響について評価した。2015年5月にCENTRAL、PubMed、Embase、その他の9つのデータベース、2件の試験登録を検索した。さらに、音楽療法に特化した雑誌、試験に掲載されている参考文献リストを手動検索したり、未発表あるいは進行中の試験を含めて包含に適格な追加試験を特定するため、公表されている著者への問い合わせなども行った。試験の選択基準は、成人の不眠症において、音楽療法単独と未治療または通常の治療法の効果とを比較しているランダム化対照試験および準ランダム化対照試験とした。著者2人が個別に抄録をスクリーニングして試験を選択し、バイアスリスクを評価して、適格基準を満たすすべての試験からデータを抽出した。2件以上の試験で一貫した報告がなされていた場合は、事前に規定されたアウトカムのデータについてメタ解析を行った。メタ解析は固定効果モデルとランダム効果モデルの両方を用いて実施した。試験間における不均質性はI2検定で検証した。 主な結果は以下のとおり。・6試験、被験者計314例が解析対象例となった。・試験では、事前に録音された音楽を毎日25~60分間、3日間~5週間聴くことの効果を検討していた。・音楽鑑賞が睡眠の質に及ぼす効果を評価している5試験のエビデンスについて、Grades of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation(GRADE)アプローチに基づき判定した結果、中等度の質と判断された。・睡眠の別の側面(下記参照)を検討した1試験のエビデンスについては、質が低いと判定した。・試験デザインの限界や公表されている唯一の試験であることなどを主な理由とし、エビデンスレベルのダウングレードを行った。・バイアスリスクに関しては、大半の試験で1項目以上に高いバイアスリスクを認めた。 ●選択バイアスのリスクが高い試験が1件、同試験のリスクは不明と判断された。 ●施行バイアスのリスクが高い試験が6件。 ●検出バイアスのリスクが高い試験が3件。 ●症例減少バイアスのリスクが高い試験が1件、同試験のリスクは不明と判断された。 ●報告バイアスのリスクが不明確と判断された試験が2件。 ●その他のバイアスリスクが高い試験が4件。・メタ解析には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて睡眠の質を評価した5試験(264例)を包含した。・ランダム効果を用いたメタ解析により、音楽療法に優位な結果が示された(平均差[MD]:-2.80、95%信頼区間[CI]:-3.42~-2.17、Z=8.77、p<0.00001、エビデンスの質は中等度)。・エフェクトサイズから、未治療または通常の治療に比べ、介入(音楽療法)は睡眠の質向上において、約1標準偏差、優れることが示唆された。・睡眠潜時、総睡眠時間、中途覚醒、睡眠効率のデータを報告した試験が1件(50例、エビデンスの質は低い)のみあった。それらのアウトカムに介入が有益であることを示唆するエビデンスは認められなかった。・いずれの試験においても、有害事象の報告はなかった。関連医療ニュース 不眠症併存患者に対する非薬物療法の有効性 睡眠薬使用は自動車事故を増加させているのか 温泉療法でうつや睡眠も改善  担当者へのご意見箱はこちら

25545.

肺高血圧症への併用療法、初期治療にも有効/NEJM

 肺動脈肺高血圧症(PAH)に対する初期治療として、アンブリセンタン(商品名:ヴォリブリス)+タダラフィル(同:アドシルカ)の併用療法は、それぞれの単独療法と比較して、臨床的に失敗のイベントリスクが有意に低いことが示された。イタリア・ボローニャ大学のN. Galie氏らAMBITION研究グループが報告した。PAHに対する併用療法の有効性については、アドオン療法としての評価はされていたが、初期治療の長期転帰については検討されていなかった。NEJM誌2015年8月27日号掲載の報告より。治療歴のないPAH患者を対象に二重盲検無作為化試験 AMBITION試験は、2010年10月18日~2014年7月31日に、14ヵ国120施設で被験者を登録して行われた。イベント主導型二重盲検法にて、WHO機能分類II度またはIII度の治療歴のないPAH患者を対象とし、被験者を、併用療法(アンブリセンタン10mg+タダラフィル40mg)、アンブリセンタン単独(アンブリセンタン10mg+プラセボ)、タダラフィル単独(タダラフィル40mg+プラセボ)のいずれかの初期治療を受ける群に、無作為に2対1対1の割合で割り付けて追跡評価した。いずれも1日1回投与した。 主要エンドポイントは、時間イベント分析で評価した、臨床的な失敗の初回イベント発生で、死亡、PAH悪化による入院、病勢進行、長期的臨床反応が不十分のいずれかの初回発生と定義した。併用群の主要複合エンドポイント発生ハザード比0.50 610例が無作為化を受け、主要解析には500例(併用群253例、アンブリセンタン単独群126例、タダラフィル単独群121例)が組み込まれた。 主要エンドポイントの発生は、併用群18%、アンブリセンタン単独群34%、タダラフィル単独群28%であった。単独群複合では31%で、併用群vs. プール単独群の主要エンドポイントに関するハザード比は、0.50(95%信頼区間[CI]:0.35~0.72、p<0.001)であった。 また、ベースラインから24週時点のNT-proBNP値の変化について、併用群の低下が単独群よりも有意に大きかった(平均変化:-67.2% vs.-50.4%、p<0.001)。同様に、十分な臨床的反応を呈した患者の割合も有意に高値であり(39% vs.29%、オッズ比:1.56、95%CI:1.05~2.32、p=0.03)、6分間歩行距離の改善もより大きかった(ベースラインからの変化中央値:48.98m vs.23.80m、p<0.001)。 有害事象の発生頻度は、併用群がいずれの単独群よりも高かった。発生事象は、末梢性浮腫、頭痛、鼻閉、貧血などであった。

25546.

働き過ぎは、脳卒中のリスク!(解説:桑島 巌 氏)-408

 長時間労働と心血管疾患発生との関連を調べたメタ解析研究は数多い。しかし、メタ解析にはネガティブな結果は出版されないために、結果にバイアスがかかるという大きな短所がある。また、疾病の存在そのものが労働時間に影響する逆因果関係や、そして追跡研究では避けられない交絡因子を除くことも難しいなどの欠点も有している。とくに、職場でのポストは交絡因子として結果に影響する可能性は少なくない。 本研究は、そのようなメタ解析のlimitationを極力排除するべく、未発表データも加えた分析や、追跡3年以内の発症の除外などを行っている。また、社会的地位に関しては層別の解析を行い、地位による交絡因子の除外を試みている。 ベースライン時に冠動脈心疾患のない約60万例、脳卒中に関しては、ベースライン時に脳卒中のない約53万例を対象としたメタ解析である。 結果は、週45時間以上の長時間労働は、35~40時間の標準時間労働者に比べて、冠動脈心疾患を13%、脳卒中を33%と、いずれのリスクも上昇させるが、冠動脈心疾患よりも、脳卒中のリスクの方がはるかに大きいことが示された。 長時間労働が脳卒中のリスクになる原因として、職種にもよるが、運動不足、食事の不摂生、アルコール過飲、健康チェックに対する時間がない、などが考えられる。しかし、これらは冠動脈心疾患、脳卒中のいずれにもリスクになりうるものであり、脳卒中がより大きなリスクであるとの説明はできない。 むしろ、隠れ高血圧としての職場高血圧によるストレス性高血圧がリスクになる可能性を指摘したい。本研究では、血圧など脳卒中に影響する危険因子の分析まで行っておらず、また、ベースライン時の高血圧の有無にも踏み込んだ検討はできていない。われわれの検討では、たとえベースライン時の検診時血圧が正常であったとしても、職場でのストレス性高血圧の存在は、隠れ高血圧として血管障害をもたらす可能性が非常に大きいことが知られている。 いずれにしても、長時間労働が心血管疾患、とくに、わが国に多い脳卒中発症の大きなリスクになることは注目されるべきである。

25549.

ナベちゃん先生のだれでも撮れる心エコー

第1回 基本的な走査法 第2回 心エコーの基本断面第3回 体型別 心エコーの撮り方第4回 ドプラ法 心エコーは視覚的に心臓を捉えることができるとても有用な検査ですが、きちんとした像を映し出せないということが最初のハードルになっています。しかし、基本さえ身に付けていれば実はそれほど難しくありません。本DVDでは、患者さんの姿勢コントロールから基本像の出し方、体型別の撮像方法まで、心エコー走査の基本を余すことなくお伝えします。ナベちゃん先生こと渡辺弘之先生の親切丁寧なレクチャーを見ると、「よし、やってみよう!」という気持ちになること間違いなしです。第1回 基本的な走査法 心エコー走査でなんとなく持っている苦手意識は、実はちょっとしたことを知るだけで、克服することができます。装置に触る前にやるべきこと、プローブの固定の仕方や、患者さんの呼吸と体の向きをコントロールする方法など。きちんとした像を映し出すために必要な心エコーの走査方法を、基本中の基本から解説していきます。第2回 心エコーの基本断面心エコー図には傍胸骨長軸像を始めとするさまざまな断面がありますが、基本的な断面はたったの5つです。その基本5断面をうまく映し出せるようになるためのノウハウをわかりやすくレクチャーします。重要なのは、軸。軸を基本とした断面の構造をしっかりと理解していきましょう。実演しながらの解説は、まるで走査を“体験”しているかのようです。心エコーの基本5断面が撮れるようになると、左室や右室のサイズや関係性、弁膜症の有無などがわかるようになります。ぜひ試してみてください。第3回 体型別 心エコーの撮り方今回は体型別の撮像方法についてレクチャーします。痩せている人、太っている人など、さまざまな体型の患者さんがいます。そういった方々の情報を漏れなくエコーで得るためには、それぞれに異なるアプローチが必要となります。どこがどのように違うのか、撮れないときはどうするべきか?ぜひ学んで患者さんをサポートしてください。第4回 ドプラ法 最終回はドプラ法についてです。これまでの心エコーの撮像方法で心臓の動きが見えるようになったら、次は血流の動きがわかるドプラ法を学びましょう。心臓の基本的な評価に必要となるカラードプラ法、パルスドプラ法、連続波ドプラ法の3つの描出法、意味、使い方をしっかり押さえます。

25550.

デング熱に気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。 本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。前回は「国内デング熱は、またいつ発生してもおかしくない」というお話をいたしましたが、今回はどのようなときにデング熱を疑えば良いのか、また診断・治療や予防について考えたいと思います。血液検査で疑うデング熱前回お話ししたように、デング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることで感染します。おおむね蚊に刺された3~7日後に発熱、頭痛、関節痛といった症状で発症します。嘔気や下痢がみられることもあります。こうした症状は、デング熱に特徴的というよりも、さまざまな感染症でみられる非特異的な症状ですので、臨床症状だけでデング熱を疑うことはかなり難しいと言わざるを得ません。身体所見でも通常これといった特徴的な所見はありません。ちなみにデング熱というと皮疹を想起されるかもしれませんが、デング熱の皮疹は典型的には、解熱する前後の時期に出現しますので、発熱しているときには皮疹はないことのほうが多い点は、注意が必要です。デング熱の皮疹はいわゆる「斑状丘疹」であり、次第に癒合しますが正常の皮膚が「島」のように残るのが特徴で、「White islands in the sea of red」と呼ばれます(図1)。画像を拡大する身体所見ではなかなか診断が難しいため、血液検査で「デング熱らしさ」を疑っていくことになります。デング熱の特徴は「白血球減少」「血小板減少」「CRPがあまり高くない」の3点です1)。ただし、白血球と血小板は、発症して数日は正常値であることもありますので、発症間もない時期では白血球と血小板が正常だからといって、デング熱を除外することはできません。血漿漏出、出血症状には要注意!診断は主に(1)PCR法によるデングウイルスの検出、(2)非構造蛋白(NS1)抗原の検出、(3)IgM抗体の検出(ペア血清による抗体陽転または有意な上昇)の3つのいずれかによって行います。これらの項目は、デング熱発症からの日数によって陽性となる時期が異なる点で注意が必要です(図2)2)。今年の6月からNS1抗原検査が保険収載されましたが、検査要件や検査機器の問題のため、自施設で検査できる医療機関は限られているのが実情です。このような場合は、保健所に相談して(1)~(3)のいずれかで診断をする必要があります。画像を拡大するデング熱の鑑別診断は多岐にわたりますが、輸入感染症としてのデング熱の鑑別診断で問題となるのは、同じく輸入感染症として頻度の高いマラリア、腸チフス、レプトスピラ症、リケッチア症などです。また、チクングニア熱(第5・7回でも扱いましたね)・ジカ熱という2つの蚊媒介性感染症は、臨床像が非常に似ており、また流行地域も重複しているため輸入感染症としてデング熱を考える際には、これらの感染症も候補に入れる必要があります。国内デング熱としての鑑別診断では、白血球減少・血小板減少を来す発熱疾患、皮疹を呈する感染症というところから、パルボウイルスB19感染症、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)、急性HIV症候群などが挙げられます。デング熱に特異的な治療は、まだありません。したがって輸液を中心とした支持療法が治療の柱となります。デング熱は大半が後遺症を残さず自然治癒する疾患ですが、まれに重症デング、デングショック症候群といった重篤な病態に移行することがあります。この病態に移行する重症化の徴候である、腹痛または圧痛、繰り返す嘔吐、体液貯留所見、粘膜出血、昏睡・不穏、2cm以上の肝腫大、血液検査上のHCTの上昇、急激な血小板の減少といった、いわゆる警告徴候に注意しつつ、経過観察を行う必要があります。とくに解熱する発症5~7日目に血漿漏出、出血症状という症状が出現しやすいため(図3)3)、とくにこの時期は注意しましょう。画像を拡大するやはり大事な防蚊対策デング熱の予防は、チクングニア熱の場合と同様、防蚊対策の徹底です。詳細は第7回「チクングニア熱に気を付けろッ その2」をご参照ください。デングウイルスには4種類あり、一度デング熱に感染しても、違うタイプのデングウイルスに感染することもあります。疫学的に2回目以降は、1回目よりも重症化することが知られていますので、とくに1度感染したことがある患者さんには、防蚊対策の指導を徹底しましょう!というわけで、2回にわたりデング熱の気を付け方についてお送りいたしました。この原稿を執筆中の9月1日時点では、2015年度の国内デング熱症例は報告されていませんが、昨年も8月下旬から症例が報告されていますので、まだまだ油断はできない状況ですッ! 流行を広げないためには早期診断が重要ですので、今年の夏~秋シーズンもデング熱を警戒しておきましょう!さて、次回は「エボラ出血熱の今」について取り上げたいと思います。エボラ出血熱の流行はまだ終わっていませんッ!! 再度エボラ出血熱の情報をアップデートして、万が一の事態に備えておきましょう!1)Kutsuna S, et al. Am J Trop Med Hyg. 2014;90:444-448.2)Simmons CP, et al. N Engl J Med. 2012;366:1423-1432.3)World Health Organization. Dengue: guidelines for diagnosis, treatment, prevention and control - new edition, Geneva 2009.

25551.

106)外食の上手な断り方教えます【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者先生、検査結果はどうですか? 悪くなっているんじゃないですか? 患者そうなんです。頭ではわかっているんですが、もらいものが多くて、それに……。 患者ランチに誘われることも多くて……。 患者やっぱり、体重も血糖も増えています。外で食べると、やっぱり食べ過ぎてしまうみたいで……。 患者いえいえ。少しランチの回数を減らしたいと思っています。けど、お誘いを上手に断れるかしら!? 患者よろしくお願いします(ロールプレイをする)。●ポイントロールプレイを通じて、上手な断り方を練習します

25552.

精神病性うつ病に対する最も効果的な薬物治療は

 精神病性うつ病に対する最も効果的な薬物治療(抗うつ薬と抗精神病薬の併用、抗うつ薬単独療法、または抗精神病薬単独療法)に関するエビデンスは限られている。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJaap Wijkstra氏らは、急性の精神病性うつ病患者に対する薬物治療について、抗うつ薬単独療法、抗精神病薬単独療法、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法を比較することを目的にレビューを行った。その結果、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法は、抗うつ薬単独療法、抗精神病薬単独療法、プラセボのいずれと比較しても高い有効性を示すことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年7月30日号の掲載報告。  本報告は2005~2009年までの報告に関するレビューのアップデートで、以下の2点について検討した。(1)急性の精神病性うつ病患者に対する薬物治療の臨床効果を比較する(抗うつ薬単独療法、抗精神病薬単独療法、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法について、それぞれおよび/またはプラセボと比較)。(2)現在のエピソードにおける治療反応性の差が前治療への無反応と関連するか否かを評価する。 2013年4月12日時点で、Cochrane Central Register of Controlled Trials and the Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Group Register(CCDANCTR)を検索し、分析評価した。 主な結果は以下のとおり。・検索アブストラクト3,659件のうち、レビュー対象の適格基準を満たしたRCTは12件(929例)のみであった。・臨床的不均一性のため、メタ解析はほとんど実施できなかった。・主要アウトカムは、精神病ではなく抑うつの重症度(反応性)の軽減とした。分析の結果、抗うつ薬あるいは抗精神病薬による単独療法において、有効性を示すエビデンスは認められなかった。・しかし、抗うつ薬+抗精神病薬の併用療法は、抗うつ薬単独療法(3件のRCT; リスク比[RR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.12~1.98、p=0.006)、抗精神病薬単独療法(4件、1.83、1.40~2.38、p=0.00001)、プラセボ(2件の関連するRC、1.86、1.23~2.82、p=0.003)のいずれと比較してもより効果的であることが示唆された。・バイアスリスクは非常に大きかった。その要因は、診断に関する試験間の差異、ランダム化および割り付けが不確実、治療介入の差異(抗うつ薬および抗精神病薬の種類による薬理学的差異)、異なるアウトカム基準などであった。・導き出された結論に対する信頼性に限界があり、精神病性うつ病に関しては研究の余地が大きかった。・抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法が、それぞれの単独療法あるいはプラセボと比較して有効であることを示すエビデンスはあったが、抗うつ薬単独、抗精神病薬単独治療に関するエビデンスは限定的であった。関連医療ニュース 難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か 治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬の比較 統合失調症患者への抗うつ薬併用、効果はどの程度か  担当者へのご意見箱はこちら

25553.

難治性多発性骨髄腫、新規CD38標的薬が有望/NEJM

 有効な治療選択肢がほとんどなく治療がきわめて困難な難治性の多発性骨髄腫の患者に対して、daratumumabは単剤で良好な安全性プロファイルを示し、有望な効果を発揮することが、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのHenk M Lokhorst氏らの検討で明らかとなった。プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬は多発性骨髄腫の転帰を改善するが、多くの患者が再発し、再発後の予後はきわめて不良である。一方、多発性骨髄腫細胞で過剰発現がみられるCD38は、本疾患の治療標的となる可能性が示唆されている。daratumumabは、CD38を標的とするヒトIgG1κモノクローナル抗体で、前臨床試験では多彩な機序を介してCD38発現腫瘍細胞の標的細胞死を誘導することが確認されていた。NEJM誌オンライン版2015年8月26日号掲載の報告。用量漸増試験30例と用量拡大試験72例で評価 研究グループは、難治性多発性骨髄腫患者に対するdaratumumabの有用性を検討する第I/II相試験を行った(Janssen Research and Development社などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、ECOG PSが0~2で、免疫調整薬やプロテアソーム阻害薬、化学療法薬、自家造血幹細胞移植などによる治療後に再発またはこれらのうち2つ以上の前治療歴のある難治性の多発性骨髄腫患者であった。 用量漸増試験では、daratumumabの0.005~24mg/kgまでの10種の用量を設定し、最も低い2種の用量は1+3デザインで、それ以外の8種の用量は3+3デザインで評価した。初回投与後、安全性と薬物動態の評価を行うために3週間のウォッシュアウト期間を置き、その後は週1回、合計6回の投与を行った(治療期間8週)。 用量拡大試験では、8mg/kgが3種、16mg/kgが2種の合計5種の投与スケジュールの評価を行った。8mg/kg投与群は、週1回で8回、月2回で8回、その後は月1回投与した。16mg/kg投与群は、初回投与後、薬物動態データの収集のために3週間のウォッシュアウト期間を置き、週1回で7回、月2回で7回、その後は月1回投与した。治療期間はいずれも最長で24ヵ月であった。 2008年3月27日~2015年1月9日までに登録された患者のデータを解析した。用量漸増試験には32例が、用量拡大試験には72例が登録された。MTDは同定されず、16mg/kg投与で全奏効率36%、PFSは5.6ヵ月 用量漸増試験では、用量制限毒性(DLT)が0.1mg/kgで1例(Grade 3の貧血)、1mg/kgで1例(Grade 3のAST上昇)に発現したが、24mg/kgまで安全に増量され、最大耐用量(MTD)は同定されなかった。 用量拡大試験の72例のうち、8mg/kg投与群が30例(年齢中央値59歳、女性9例)、16mg/kg投与群は42例(64歳、15例)であった。診断後の経過期間中央値は5.7年、前治療数の中央値は4(範囲:3~10)だった。 このうち難治性病変の患者は79%であり、プロテアソーム阻害薬と免疫調節薬に不応性の患者は64%、ボルテゾミブとレナリドミドに不応性の患者も64%含まれ、76%は自家造血幹細胞移植を受けていた。 用量拡大試験における注射関連反応の発現率は71%であったが、Grade 3の1例を除きGrade 1~2であり、注射関連反応による治療中止例はなかった。また、用量依存性の有害事象は認めなかった。 Grade 3/4の有害事象は、8mg/kg投与群の53%、16mg/kg投与群の26%にみられ、肺炎が5例、血小板減少が4例で、好中球減少、白血球減少、貧血、高血糖が各2例に認められた。重篤な有害事象はそれぞれ40%、33%にみられ、感染症関連イベントが17%、10%と最も高頻度であった。 用量漸増試験の4~24mg/kg投与の12例中4例で部分奏効(PR)が達成され、持続的な臨床的奏効が観察された。また、用量拡大試験では、8mg/kg投与群はPRが3例で全奏効率は10%であり、16mg/kg投与群は完全奏効(CR)が2例、最良部分奏効(very good PR)が2例、PRが11例で得られ、全奏効率は36%であった。 16mg/kg投与群の無増悪生存期間(PFS)中央値は5.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~8.1)であり、奏効例のうち12ヵ月時に病勢が進行していなかった患者の割合は65%(95%CI:28~86)だった。 著者は、「daratumumab(16mg/kg)単剤療法は、標準治療に不応となった患者が多く含まれる集団で、経時的に深まる持続的な奏効をもたらし、奏効例の1年PFSは65%に達した。また、PR以上の患者では全般に骨髄中の形質細胞が著明に低下した」とまとめ、「本薬の治療標的や作用機序は既存の治療法とは異なるものである」としている。

25554.

ベムラフェニブ、悪性黒色腫以外のBRAF V600変異陽性がんにも有効/NEJM

 ベムラフェニブ(商品名:ゼルボラフ)はBRAF V600キナーゼの選択的阻害薬で、BRAF V600変異陽性の転移性悪性黒色腫の標準治療である。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDavid M. Hyman氏らは、今回、本薬はBRAF V600変異陽性の他のがん腫にも有効であることを確認しことを報告した。近年、BRAF V600変異は悪性黒色腫以外のさまざまながん腫で発現していることがわかっているが、半数以上は変異陽性率が5%未満であるため疾患特異的な試験を行うのは困難だという。本研究では、「basket試験」と呼ばれる新たな試験デザインが用いられている。このアプローチでは、同じバイオマーカーの発現がみられる組織型の異なる多彩ながん腫において、抗腫瘍活性のシグナル伝達の検出と薬剤感受性の評価が同時に可能で、生物統計学的デザインの柔軟性が高いため希少がんでの抗腫瘍活性の同定に有用であり、新たな治療法を迅速に評価できるとされる。NEJM誌2015年8月20日号掲載の報告より。大腸がん、NSCLC、脳腫瘍などへの効果を第II相basket試験で評価 研究グループは、悪性黒色腫以外のBRAF V600変異陽性がんに対するベムラフェニブの有用性を評価する第II相試験を行った(F. Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、ECOG PSが0~2のBRAF V600変異陽性がん患者とし、悪性黒色腫のほか、全般に変異陽性率が高く疾患特異的な試験が可能と考えられる甲状腺乳頭がんや有毛細胞白血病は除外した。 被験者は、ベムラフェニブ960mgを1日2回経口投与された。大腸がんのうち、ベムラフェニブ単剤では効果が不十分と予測される患者には、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬セツキシマブを併用投与した。 主要評価項目は8週時の奏効率とし、副次評価項目には無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などが含まれた。 2012年4月11日~2014年6月10日までに、欧米の23施設に122例が登録された。内訳は、症例数が多い順に、大腸がんが37例(単剤:10例、併用:27例)、非小細胞肺がん(NSCLC)が20例、エルドハイム・チェスター病(ECD)/ランゲルハンス細胞性組織球症(LCH)が18例、原発性脳腫瘍が13例、胆管がんが8例、甲状腺未分化がんが7例、多発性骨髄腫が5例などであった。NSCLC、ECD/LCHで40%以上の奏効率、希少ながん腫にも奏効 NSCLCの評価可能19例のうち8例で部分奏効(PR)、8例で安定(SD)が得られ、8週時の奏効率は42%(95%信頼区間[CI]:20~67)であった。また、PFS中央値は7.3ヵ月(95%CI:3.5~10.8)、1年PFSは23%であった。OS中央値には未到達であったが、初期データに基づく1年OSは66%だった。 ECD/LCHの評価可能14例では、完全奏効(CR)が1例で達成され、PRが5例、SDが8例で、奏効率は43%であった。12例に病変の退縮が認められ、いずれの症例でも疾患関連症状が改善した。治療期間中央値は5.9ヵ月(範囲:0.6~18.6)で、治療中に病勢が進行した症例はなかった。また、PFS中央値には未到達で、初期データによる1年PFSは91%(95%CI:51~99)、1年OSは100%だった。 大腸がんのベムラフェニブ単剤の10例では奏効例はなく、PFS中央値は4.5ヵ月(95%CI:1.0~5.5)、OS中央値は9.3ヵ月(95%CI:5.6~未到達)であった。ベムラフェニブ+セツキシマブ併用の評価可能26例ではPRが1例で得られ、SDが18例であり、奏効率は4%(95%CI:<1~20)だった。PFS中央値は3.7ヵ月(95%CI:1.8~5.1)、OS中央値は7.1ヵ月(4.4~未到達)であった。 甲状腺未分化がんの7例中、CRが1例、PRが1例で得られた。また、未分化型の多形黄色星状細胞腫の4例中3例でPRが得られたほか、胆管がん、唾液腺導管がん、軟部組織肉腫、卵巣がんで1例ずつ奏効例が認められた。甲状腺未分化がん、胆管がん、卵巣がんの各1例は奏効期間が1年以上持続した。さらに、膠芽腫、未分化型上衣腫、膵がんなどで奏効基準を満たさない腫瘍の退縮がみられたが、解析の時点で多発性骨髄腫には奏効例は確認されなかった。 ベムラフェニブ単剤の安全性は、悪性黒色腫の既報のデータと類似していたが、症例数が少ないため比較はできない。最も高頻度に発現した有害事象は、皮疹(68%)、疲労(56%)、関節痛(40%)だった。 著者は、「BRAF V600変異は、すべてではないがいくつかのがん腫で治療標的となるがん遺伝子であることが示された」とし、「組織型にかかわらず、バイオマーカーに基づいて患者を選択するbasket試験は実行可能であり、がんの分子標的治療の開発ツールとして役立つ可能性があるが、多くの場合、同定された有望な抗腫瘍活性を確証するためにさらなる試験を要すると考えられる」と指摘している。

25555.

アポ蛋白C3のアンチセンス療法による難治性高トリグリセライド血症治療の新たな可能性(解説:山下 静也 氏)-407

 血清アポリポ蛋白(アポ)C3は、トリグリセライド(TG)リッチリポ蛋白、とくに動脈硬化惹起性の強いレムナントリポ蛋白の構成成分の1つで、主に肝臓で合成される。カイロミクロン、VLDLなどに含まれるTGは、リポ蛋白リパーゼ(LPL)により分解され、遊離脂肪酸を放出してレムナントリポ蛋白となる。この過程はアポC2により活性化されるが、逆にアポC3はLPLによる分解を阻害し、血清TG値を上昇させる1)。また、中間比重リポ蛋白(IDL)をLDLに変換する肝性リパーゼ(HL)の活性やHDLのremodelingを、高濃度のアポC3が抑制する2)。さらに、アポC3はTGリッチレムナントリポ蛋白の肝臓での取り込みを抑制することも報告されており3)、アポC3の過剰は高TG血症、高レムナント血症、食後高脂血症を引き起こす。さらに、アポC3は細胞内でTG合成を促進し、肝臓でのVLDLの合成と分泌を増加させる4)。したがって、アポC3濃度の上昇はTGリッチリポ蛋白の分解のみならず、血中からのクリアランスの抑制を惹起し、動脈硬化惹起性であるVLDLやカイロミクロンレムナントの血中蓄積を引き起こす。 APOC3遺伝子欠損マウスでは、血清TGが低下し、食後高脂血症が防御される5)。ヒトではLancaster Amish の約5%がAPOC3遺伝子の欠失変異であるR19Xのヘテロ接合体であり、これらではアポC3濃度が半減し、空腹時および食後のTG値が有意に低く、冠動脈石灰化の頻度が60%も低い6)。Jorgensen氏らは、デンマークの2つの地域住民を対象とした前向き調査である、Copenhagen City Heart StudyとCopenhagen General Population Studyに参加した7万5,725例のデータを前向きに解析し、APOC3遺伝子変異を保因するため生涯にわたりTGが低値の集団において虚血性心血管疾患のリスクが低いか否かを検討した7)。その結果、虚血性血管疾患および虚血性心疾患のリスクは、ベースラインの非空腹時TG値の低下に伴って減少し、<90mg/dLの被験者は≧350mg/dLの場合に比べ、発症率が有意に低かった。また、APOC3遺伝子の3つのヘテロ接合体の機能欠失変異(R19X、IVS2+1G→A、A43T)の保有者では、変異のない被験者よりも非空腹時TGが平均44%低値であり、虚血性血管疾患および虚血性心疾患の発症は有意に少なかった。したがって、APOC3遺伝子の機能欠失型変異はTG値の低下、虚血性血管疾患のリスク減少と関連し、APOC3は心血管リスクの低減を目的とする薬剤の有望な新たな標的と考えられた。APOC3遺伝子の変異に関する同様の論文も発表されている8)。 このように、動脈硬化性疾患の発症抑制を目指したアポC3の制御による高TG血症の治療は、最近のトピックスとなっている。一方、家族性LPL欠損症等に起因する1,000mg/dLを超える高カイロミクロン血症は、難治性膵炎、発疹性黄色腫の原因となり、厳重な脂肪摂取の制限が必須である。しかしながら、治療にはきわめて抵抗性であり、フィブラート、ニコチン酸誘導体、ω3脂肪酸製剤を併用しても治療効果が十分ではなく、新たな治療法の開発が模索されていた。その中で、海外ではAAVベクターを用いたLPL遺伝子治療が試みられてきたが、膵炎の頻度は減らせるものの、TG値の顕著な低下は認められていない9)。 今回のアポC3アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた試験では、空腹時TG値が350~2,000mg/dL(単独療法群)、225~2,000mg/dL(フィブラート併用群)の患者に対して、APOC3遺伝子の発現を新規アンチセンスオリゴヌクレオチド製剤(ISIS 304801)の週1回投与で抑制し、用量依存性にアポC3とTG値の有意な低下が認められた。副作用についても、顕著なものは認められていない。ISIS 304801は第2世代のアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤で、ヒトAPOC3 mRNAと選択的に結合し、ribonuclease H を介したmRNA分解により、APOC3 mRNA を減少させることで血中アポC3濃度を低下させる。すでに健常volunteerの第I相および家族性LPL欠損症の少数例での成績10)が報告されている。本報告は、さらにこれを発展させて、単独投与群、フィブラート併用群の2群において、用量についても検討した無作為、プラセボ対照、用量変更した第II相試験で、一部LPL欠損症ヘテロ接合体が含まれている。ISIS 304801投与により、アポC3が低下し、TGも顕著に低下したことは、本アンチセンス療法の有望性を示唆している。高カイロミクロン血症における膵炎の予防だけでなく、中等度高TG血症の症例では心血管イベント抑制につながる可能性もある11)。興味ある成果は、高TG血症の改善に伴ってHDL-C値が増加し、またLDL-C値も増加したことである。LPL抑制状態ではカイロミクロン由来の脂質のHDLへの転送が障害されており、HDL-C増加はC3減少によるLPL活性増加を反映していると考えられる。LDL-Cの増加は、おそらくVLDL→IDL→LDLへ変換が促進された結果であろうが、これが長期的に心血管イベントリスクの増悪につながるか否かは注意深く観察する必要があろう。また、アポC3の低下がLPL活性の増加につながったのか、あるいはTGの低下がTGリッチリポ蛋白の肝臓でのクリアランスの増加によるものなのか、あるいはアポC3アンチセンスオリゴヌクレオチドによるアポC3合成の減少が、肝細胞内でVLDLの分泌値低下を起こしたのかは、本研究では明らかにされていない。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドの注射による局所の変化以外に、長期的な副作用について、今後慎重な解析が必要であろう。【参考文献】1)Ginsberg HN, et al. J Clin Invest. 1986;78:1287-1295. 2)Kinnunen PK, et al. FEBS Lett. 1976;65:354-357. 3)Windler E, et al. J Lipid Res. 1985;26:556-565. 4)Qin W, et al. J Biol Chem. 2011;286:27769-27780. 5)Maeda N, et al. J Biol Chem. 1994;269:23610-23616. 6)Pollin TI, et al. Science. 2008;322:1702-1705. 7)Jorgensen AB, et al. N Engl J Med. 2014;371:32-41. 8)TG and HDL Working Group of the Exome Sequencing Project, National Heart, Lung, and Blood Institute, et al. N Engl J Med. 2014;371:22-31.9)Burnett JR, et al. Curr Opin Mol Ther. 2009;11:681-691. 10)Gaudet D, et al. N Engl J Med. 2014;371:2200-2206. 11)Christian JB, et al. Am J Med. 2014;127:36-44.e1.

25557.

Dr.林の笑劇的救急問答11 心臓以外の胸痛編

第1回 肺塞栓(診断編)「突き刺すような胸痛を訴える47歳男性」第2回 肺塞栓(Massive)「胸痛と息切れの70歳男性」第3回 食道破裂 「嘔吐後に突然発症の胸背部痛の50歳男性」第4回 自然気胸 「ランニング中 息苦しくなった25歳男性」 Dr.林による救急シリーズも第11作目に突入!ますますパワーアップの今作は心臓以外の胸痛編とショック編の2部構成。心臓以外の胸痛編では肺塞栓、食道破裂、気胸を取り上げます。「検査のしすぎは悪いことはあってもいいことはない。」救急診療の場面で、どうやって必要な検査を選択し、診断を絞り込んでいくのか。Dr.林の愛があふれる講義で身につけていきましょう。笑いあり、涙ありの爆笑症例ドラマにもヒントがいっぱい!笑いながら楽しく学んでください。第1回 肺塞栓(診断編)「突き刺すような胸痛を訴える47歳男性」胸痛の3大疾患の1つである肺塞栓の診断についてみていきます。ここでは軽症の肺塞栓を取り上げます。軽症の場合は、「数日かかって発症」、「下肢のDVTがない」、「呼吸困難、頻呼吸、胸膜痛がない」こともあります。その上、バイタルサインが安定してもPEがあるこことも・・・。こうやって騙されていくのです、そう安易に除外してはダメなのです。それでは、どうすればよいのでしょうか?全例CT?D-dimerも?「検査のし過ぎは悪いことはあってもいいことはない」。面倒くさがらないでリスク評価を行いましょう。第2回 肺塞栓(Massive) 「胸痛と息切れの70歳男性」今回は肺塞栓の中でも広範型、亜広範型、つまり高リスクな肺塞栓について解説します。広範型の肺塞栓は素早い判断と処置が求められます。そのために必要な検査は?どうやって診断を絞るのか?そして、その治療方法は?たくさんの選択肢の中から、本当に必要なこと、その優先順位を明確にお教えします!第3回 食道破裂 「嘔吐後に突然発症の胸背部痛の50歳男性」胸痛といえば、心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓が3大疾患となりますが、それらが否定できたとき、鑑別に上げるべき疾患を考えてきましょう。今回は「食道破裂」です。食道破裂は、非常にまれな疾患ですが、見逃すと命にかかわる重篤な疾患です。めったに診ることのないこの疾患に出会ったときに見逃さないためのポイントをDr.林が徹底的にお教えします。臨床像、疫学、症状、病、身体所見、そして有用な検査まで、しっかりと学んでください。第4回 自然気胸 「ランニング中 息苦しくなった25歳男性」今回は、自然気胸を中心に解説します。小さな気胸は見落としやすく、なかなか診断がつかないことも。今回はすぐにできて侵襲の少ない検査、超音波で見つけ出す方法を詳しくお教えします。Aライン、Bライン、バットマン、Sliding sign、Lung pointなど、肺エコーの肝を学びましょう。そして、気胸⇒胸腔ドレナージ・・・ちょっと待って!それはきちんと気胸を評価してから行うかどうかを考えましょう。その他、心臓由来以外の胸痛で、ちょっと覚えておくべき疾患もチェック!

25558.

タバコの原材料は輸入品ばかり?!

タバコの原材料は輸入品ばかり?! 国内で流通しているタバコの日本のタバコ産業6割を占める国産タバコです国内の葉タバコ生産輸入の葉タバコが、原材料の2/3は輸入した(平成26年度)(平成26年度)葉タバコを使用しています。(平成26年度) たばこ規制枠組み条約(FCTC)17条では、政府によるタバコ農家の転業支援を義務付けています。 タバコ農家の生活守りたいのであれば、タバコの購入・喫煙を続けるのではなく、輸入制限と転業・転作支援を推進しましょう。耕作者:5,911戸生産高:約1.9万t輸入量:約5.8万t国産タバコ(JTによる製造独占)販売数量国内シェア1,074億本(平成26年度)59.9% (平成26年度)財務省資料より一部改変社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

25559.

タバコとPM2.5

タバコとPM2.5PM2.5(μg/m3)【タバコによるPM2.5の汚染度合】1600… タバコは国内最大級のPM2.5発生源です700自由喫煙の居酒屋喫煙室不完全分煙の居酒屋(喫煙席)600 喫煙居酒屋のPM2.5濃度はもっとも数値が高かったときの北京なみタクシー内喫煙2人喫茶店500喫煙室緊急事態駅喫煙コーナー不完全分煙の居酒屋(禁煙席)400場外券売所 さらに、タバコの煙には人体に有害なガス成分が含まれています。完全分煙のファストフード店(喫煙席)300ファストフード店200大いに危険パチンコ店喫茶店PM2.5+有毒ガス100危険完全分煙のファストフード店(禁煙席)全面禁煙のコーヒー店日本禁煙学会資料より一部改変0社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

25560.

「受動喫煙は有害ではない」その論文、本当?

「受動喫煙は有害ではない」その論文、本当?タバコ産業から金をもらっている研究者タバコ産業から金をもらっていない研究者受動喫煙は有害だという論文2編(6%)65編(87%)受動喫煙は有害とはいえないという論文29編(94%)10編(13%)調査期間 1980年~1995年Barnes DE, et al. JAMA.1998;279:1566-1570.タバコ産業から研究資金をもらっている学者が受動喫煙の害を否定する論文を書いている!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

検索結果 合計:35172件 表示位置:25541 - 25560