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慢性リンパ性白血病〔CLL : chronic lymphocytic leukemia〕

1 疾患概要■ 定義慢性の小型成熟Bリンパ球の単クローン性の腫瘍であり、末梢血、骨髄、リンパ節で増殖する。リンパ節外の病変はなく、末梢血では5,000/mm3以上の腫瘍細胞が観察される。通常腫瘍細胞はCD5とCD23との両者を発現する。■ 疫学欧米の成人の白血病のなかでは最も多く、10万人当たり3.9人の発症率であるが、東アジアでは少なく、日本では、およそ0.48人とする報告がある1)。欧米のアジア系移民でも少ないので、遺伝的素因が考えられている。■ 病因他の白血病、リンパ性腫瘍と同様、ゲノム異常によると考えられている。第13番染色体のmiR 15、16の欠失によるBCL2の活性化を始めとして、NOTCH1、MYD88、TP53、ATM、SF3B1などの遺伝子異常が複数関与している2)。■ 症状多くはまったく無症状であり、血液検査による異常値で発見される。一部、リンパ節腫脹、肝脾腫、体重減少、発熱、全身倦怠感、貧血症状を呈する例や繰り返す感染症から発見される例がある。また頻度は低いが、自己免疫性溶血性貧血、赤芽球癆、自己免疫性血小板減少症、無顆粒球症、低γグロブリン血症を合併することが知られている。■ 分類近縁疾患に、単クローン性B細胞リンパ球増加症(monoclonal B-cell lymphocytosis: MBL)と小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma : SLL)がある。MBLは、健常人に認められるモノクローナルなBリンパ球の増殖である。臨床症状はなく、Bリンパ球は、CLLと同様の細胞表面抗原を呈していることが多いが、5,000/μL以下であるのでCLLの定義は満たさない。CLLへ進行することが知られている。SLLは、末梢血や骨髄への浸潤がないCLLと同一の腫瘍と考えられ病期や治療は低悪性度B細胞リンパ腫として扱われる。■ 予後一般に緩徐な経過をたどることが知られているが、初回診断時からの生存期間は症例により2~20年と大きなばらつきがあり、生存期間中央値は約10年といわれている。そのため治療開始時期の決断が困難であり、病勢を評価し、予後を予測するための臨床病期分類がいくつか報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断基準末梢血中のリンパ球絶対数が3ヵ月以上にわたって、継続的に5,000/mm3を超えている。末梢血塗抹標本では、細胞質をほとんど持たない成熟小型リンパ球が一様に増加しており、フローサイトメトリーで、Bリンパ球がモノクローナルに増殖している。細胞表面抗原は、Tリンパ球抗原であるCD5およびBリンパ球抗原であるCD19、CD20、CD23が発現している。細胞表面免疫グロブリンやCD20の発現レベルは、正常Bリンパ球に比べて低いことが多い。免疫グロブリン軽鎖はκ型またはλ型のいずれかのみを発現している。■ 鑑別診断リンパ球数が増加する他の疾患との鑑別が問題となる。結核、梅毒、伝染性単核球症、百日咳、トキソプラズマ症などの感染症では、リンパ球増多を呈するが、いずれも反応性であり数週間で正常化する。CLL以外のリンパ増殖性疾患との鑑別も重要であり、hairy cell leukemia、prolymphocytic leukemia、large granular cell lymphocyte leukemia、mantle cell lymphomaを代表とする、リンパ腫の白血化などがある。■ 病期分類現在広く使われている病期分類には2種類ある。Rai分類(表1)は米国で、Binet分類(表2)は欧州で用いられており、リンパ節病変数および貧血、血小板減少の有無により分類する。画像を拡大する画像を拡大する■ その他の予後予測因子RaiおよびBinet分類により予後分類を行うが、low risk群に分類された症例のなかでも急速に進行する例がある。そのため、分子生物学的研究により、新たな予後因子も近年では提唱されている。(1)短いLymphocyte doubling time(LDT)(2)高い血清マーカー(LDH、β2 microglobulin、β2M)(3)免疫グロブリン重鎖変異(IgVH mutation)がない(4)CD38陽性(5)ZAP70(Zeta chain associated protein 70)が発現している(6)細胞遺伝学的検査での11q欠失・17p欠失が予後不良とされる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療開始時期Rai分類low risk群およびBinet分類A群の症例では、診断早期の治療が推奨されない。Rai分類intermediate・high risk群およびBinet分類B・C群の症例で治療開始が勧められる。ただし、intermediate risk群・B群においては、症状の出現まで経過観察が一般的である。一方で、リヒター症候群と呼ばれるトランスフォームを起こし、急速にリンパ節腫大を生じ、予後不良となることがある。無治療経過観察中に一転して、治療が無効となるので、患者説明の際に留意する。■ 治療薬剤現状ではCLLに対する標準治療は確立されていない。治療の選択肢が広がり、アルキル化剤に加えプリンアナログ、モノクローナル抗体が登場している。1)アルキル化剤クロラムブチルは、わが国では本疾患には未承認である。単剤治療について奏効率は40~60%で、完全寛解(complete response:CR)は4~10%であった3)。わが国では、シクロホスファミド(商品名: エンドキサン)が使用される。差違はほとんどないとされており、伝統的に併用療法中で用いられることが多いが、アントラサイクリンを加えるメリットはない4)。2)プリンアナログフルダラビンは(同: フルダラ)、わが国では静注薬に加え経口薬も承認されており、同等の効果が知られている。北米のintergroup studyでの、未治療CLLに対するフルダラビン単剤治療の第III相比較試験の結果5)では、奏効率60~70%であり、CR率も20~40%と良好なものであった。奏効率は有意差をもってクロラムブチルに優っており、無増悪生存期間(PFS)も有意に延長していた。しかし、クロスオーバーデザインであったためか、生存率の有意差は得られていない。3)モノクローナル抗体CD20に対する抗体のリツキシマブ(同: リツキサン)は、CLLに対しては単剤では奏効率10~15%と結果は乏しい6)。毒性として輸注関連反応が強く出現する可能性がある。オファツムマブ(同: アーゼラ)は、再発・難治性の場合に使用される。リツキシマブに比べてCD20エピトープに高い親和性で結合することと、結合後の解離速度が遅いことが特徴である7)。CD52に対するモノクローナル抗体であるアレムツズマブ(同:マブキャンパス)も再発・難治性の場合に用いられる。クロラムブチルとの第III相比較試験が行われ、奏効率83%、CR率24%でより高かったが、T細胞も抑制するためサイトメガロウイルスを始めとするウイルス感染の管理が重要である8)。4)併用療法フルダラビンとシクロホスファミドとの併用(FC療法)は、奏効率80~90%、CR率30~40%とフルダラビン単剤と比較して有効性が高い。PFSも有意に延長していたが、全生存期間(OS)については、観察期間が短い影響か、有意差は認められていない9)。フルダラビンとリツキシマブの併用(FR療法)も同様にフルダラビン単剤と比較して優れていることが示されている。リツキシマブとフルダラビンの同時投与法と連続的投与法の比較では、前者で奏効率90%(CR率47%)、後者で77%(CR率28%)であり、同時投与法が有意に優れていた10)。さらにフルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブの3剤併用(FCR療法)は、FC療法と比較され、CR率、OSで有意に優れていた11)。5)新規抗がん剤ベンダムスチン(同:トレアキシン)は、アルキル化剤とプリンアナログの両者の作用特徴を有する静注薬である。悪性リンパ腫に対する有効性が報告されているが、CLLに対しても第III相比較試験にてクロラムブチルよりも優れた有効性を示している12)。わが国でも、再発例に対して承認申請され認可待ちである(平成28年5月末現在)。BTKシグナルの抑制薬であるイブルチニブ(同:インブルビカ)が欧米だけではなく、わが国でも再発・難治例に対して承認され、米国ではPI3Kδを抑える idelalisibが認可されている。いずれも経口薬である。イブルチニブ13)は、オファツムマブに対して第III相比較試験で有効性のため中途終了、 idelalisibはリツキシマブ単独に比べて14)リツキシマブとの併用療法でPFSで優っていた。さらに高齢化などのために全身状態の悪い症例でchlorambucilとの併用で、あらたなCD20抗体であるobinutuzumab(GA101)は、リツキシマブよりPFSで有意に優っており15)、米国で承認されている。6)造血幹細胞移植若年者を主体に治癒を目指して同種造血幹細胞移植が行われ、40~50%の長期生存が報告されている。リツキシマブ、フルダラビン、ベンダムスチンを用いた骨髄非破壊的前処置を用いた移植成績は、第II相比較試験の結果ではきわめて良好であった16)。■ 合併症治療CLL患者では、正常リンパ球が低下しており、免疫不全状態にあることが多く、感染症の合併には常に注意を払う必要がある。P. jiroveciによるニューモシスチス肺炎、CMV感染、帯状疱疹を発症する危険性が高く、ST合剤や抗ウイルス薬の予防内服を検討する。4 今後の展望わが国でも米国発の経口薬である新薬が、使用できるように期待したい。5 主たる診療科血液内科、血液腫瘍科、血液・腫瘍科、造血器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)アメリカ国立がん研究所のCLLの総合情報のページ(医療従事者向けの情報)1)Tamura K, et al. Eur J Haematol.2001;67:152-157.2)Puente XS, et al. Nature.2011;475:101-105.3)Dighiero G, et al. N Engl J Med.1998;338:1506-1514.4)CLL Trialists' Collaborative Group. J Natl Cancer Inst.1999;91:861-868.5)Rai KR, et al. N Engl J Med.2000;343:1750-1757.6)O'Brien SM, et al. J Clin Oncol.2001;19:2165-2170.7)Cheson BD. J Clin Oncol.2010;28:3525-3530.8)Lemery SJ, et al. Clin Cancer Res.2010;16:4331-4338.9)Flinn IW, et al. J Clin Oncol.2007;25:793-798.10)Byrd JC, et al. Blood.2005;105:49-53.11)Tam CS, et al. Blood.2008;112:975-980.12)Hillmen P, et al. J Clin Oncol.2007;25:5616-5623.13)Byrd JC, et al. N Engl J Med.2013;369:32-42.14)Furman RR, et al. N Engl J Med.2014;370:997-1007.15)Goede V, et al. N Engl J Med.2014;370:1101-1110.16)Kahr WH, et al. Blood.2013;122:3349-3358.公開履歴初回2014年07月01日更新2016年06月21日

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中枢神経系作用薬による高齢者入院リスクは

 認知障害に対する中枢神経系(CNS)作用薬の効果を評価したほとんどの研究は、個々の薬剤使用に焦点を当ててきた。他のCNS作用薬を追加した際の認知機能への影響は、よくわかっていない。南オーストラリア大学のLisa M Kalisch Ellett氏らは、CNS作用薬の併用薬剤数および標準用量(1日用量)の増加と高齢患者における錯乱、せん妄、認知症による入院リスクとの関連を検討した。Journal of the American Medical Directors Association誌2016年6月1日号の報告。 2011年7月~2012年6月までのhealth claimsデータを用いた、後ろ向きコホート研究。対象は、試験開始前に少なくとも年1回はCNS作用薬を使用した、65歳以上のオーストラリア住民7万4,321例。錯乱、せん妄、認知症、緩和ケアを受けるための入院歴のある患者は除外された。主要アウトカムは、錯乱、せん妄、認知症による入院とした。 主な結果は以下のとおり。・1年間の研究期間中、401例が錯乱、せん妄、認知症のために入院した。・調整後の分析による入院リスクは、CNS作用薬未使用患者と比較し、2剤使用していた患者では、2.4倍(発生率比[IRR]:2.39、95%CI:1.79~3.19、p<0.001)、5剤以上使用していた患者で19倍以上(IRR:19.35、95%CI:11.10~33.72、p<0.001)であった。・同様に、入院リスクは、未使用患者と比較し、標準1日用量が1.0~1.9(IRR:2.64、95%CI:1.99~3.50、p<0.001)および2.0~2.9(IRR:3.43、95%CI:2.07~5.69、p<0.001)で有意に増加していた。 著者らは「CNS作用薬の多剤併用または高用量での使用は、錯乱、せん妄、認知症による入院リスク増加と関連していた。専門医は、錯乱やせん妄を呈した患者におけるCNS作用薬の影響を考慮し、治療負担を軽減しうる治療戦略を検討する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース せん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大 認知症者への抗精神病薬投与の現状は 注意が必要、高齢者への抗コリン作用

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ESS留置後のDAPT、6ヵ月と12ヵ月の比較

 薬剤溶出ステント(DES)留置後は、ステント血栓症を防ぐため、12ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)が推奨されている。近年の無作為化試験では、新世代のDES留置後のDAPTの3~6ヵ月投与は12ヵ月投与と同等の成績が得られることが報告されており、また新世代DESの死亡、心筋梗塞、ステント血栓症のリスクがベアメタルステントや第1世代のDESと比べて低いことも示唆されている。しかし、新世代のエベロリムス溶出ステント留置後のDAPTの最適な投与期間について、適切に計画、実施された試験は少ない。 今回、韓国の20施設で、エベロリムス溶出ステント(商品名:Xience Prime)留置後のDAPT 6ヵ月投与を12ヵ月投与と比較する医師主導型の前向き無作為化試験が実施され、JACC Cardiovascular Interventions誌オンライン版2016年5月11日号に発表された。主要評価項目に有意差なし 本試験では、2010年10月~2014年7月の間に、エベロリムス溶出ステントを留置した1,400例(平均ステント長45mm超)のうち、699例をDAPT(アスピリン100mg/日とクロピドグレル75mg/日)6ヵ月投与群に、701例を12ヵ月投与群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は1年後の心臓関連死亡、心筋梗塞、脳卒中、およびTIMI基準による大出血の複合とし、intention-to-treatを用いて解析を行った。 主要評価項目の発生は、6ヵ月群で15例(2.2%)、12ヵ月群で14例(2.1%)であった(HR:1.07、p=0.854)。definiteもしくはprobableのステント血栓症は6ヵ月群で2例(0.3%)、12ヵ月群でも2例(0.3%)発症した(HR:1.00、p=0.999)。686例の急性冠動脈症候群の患者(両群とも2.4%、HR:1.00、p=0.994)と糖尿病を有する506例(6ヵ月群 2.2% vs. 12ヵ月群 3.3%、HR:0.64、p=0.428)の間で、主要評価項目の有意な差は認められなかった。 2014年にThe New England Journal of Medicine誌に発表された大規模無作為化試験であるDAPT試験では、新世代のDES後でも12ヵ月を超えるDAPTの有用性が示されており、DAPTの最適な使用期間については答えが出ていない。報告者らは、今後、大規模な無作為化試験での1年超の追跡が必要であると結論付けている。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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未成年者の肥満、過去20年の動向/JAMA

 米国の小児・思春期青少年(2~19歳)の肥満の有病率は、2011~14年は17.0%であり、極度の肥満(extreme obesity:年齢性特異的BMI値が95パーセンタイル以上の120%以上)の割合は5.8%であることが、米国疾病予防管理センター(CDC)のCynthia L. Ogden氏らにより報告された。1988~94年から2013~14年の動向を調査した結果で、肥満の有病率は、2~5歳児では2003~04年までは上昇、以降は減少したことや、6~11歳児では2007~08年までは上昇し、以降は横ばい、12~19歳では調査期間中は上昇していたという。JAMA誌2016年6月7日号掲載の報告。1988~94年から2013~14年の米国民健康・栄養調査の2~19歳のデータを分析 調査は、1988~94年から2013~14年の米国民健康・栄養調査で体重と身長を測定した2~19歳の小児と思春期青少年を対象に行われた。2011~14年の肥満および極度の肥満の有病率を示すとともに、調査期間中の動向を明らかにすることが目的であった。 主要評価項目は、肥満で、性別にみたCDCの発育期BMI評価チャートで95パーセンタイル以上と定義した。極度の肥満は、同95パーセンタイルの120%以上と定義した。詳細推定値は2011~14年について算出し、有病率の線形・二次傾向の分析は、9つの調査対象期間(1988~94、1999~2000、2001~02、2003~04、2005~06、2007~08、2009~10、2011~12、2013~14年)で行った。また、2005~06年と2013~14年の間の動向も分析した。2011~14年の有病率は17.0%、極度の肥満5.8% 分析には、4万780人の小児・思春期青少年が含まれた。平均年齢は11.0歳、女子が48.8%であった。 2~19歳において、2011~14年の肥満有病率は17.0%(95%信頼区間[CI]:15.5~18.6)であり、極度の肥満は5.8%(同:4.9~6.8)であった。 2~5歳の有病率は、1988~94年の7.2%(同:5.8~8.8)から2003~04年は13.9%(同:10.7~17.7)に上昇し(p<0.001)、その後2013~14年の9.4%(同:6.8~12.6)へと減少(p=0.03)がみられた。 6~11歳では、1988~94年の11.3%(95%CI:9.4~13.4)から2007~08年19.6%(同:17.1~22.4)へと上昇したが(p<0.001)、その後は変化がみられず、2013~14年は17.4%(同:13.8~21.4)であった(p=0.44)。 12~19歳では、1988~94年10.5%(95%CI:8.8~12.5)から2013~14年20.6%(同:16.2~25.6%)まで上昇が認められた(p<0.001)。 極度の肥満については、6~11歳は1988~94年3.6%から2013~14年4.3%に上昇(p=0.02)、12~19歳は同2.6%から9.1%へと上昇(p<0.001)していた。 なお、2005~06年と2013~14年の間について有意な変化の傾向はみられなかった(p値範囲0.09~0.87)。

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131)暑い季節は減塩しなくてもOK?【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師暑くなってきましたね。夏バテとかしていませんか? 患者ありがとうございます。夏バテはしていないんですが、熱中症が心配で…。 医師普段はどうされているんですか? 患者普段、水分を摂るときに塩分には気を付けているんですが…テレビで「高齢者は熱中症になりやすいので、塩分を摂った方がいい」って言ってて…私の場合、どうしたらいいですか? 医師確かに、悩みますよね。夏は汗をよくかくので、水分が失われやすくなります。血圧が正常な人も、血圧が高い人も汗をよくかくときは、水分を十分に摂ってください。 患者塩分はどうしたらいいですか? 医師血圧が高い人は、夏でも減塩を続けてください。ただし、よく汗をかいたときには、水分とともにスポーツドリンクなどで塩分やミネラルも補給してください。 患者なるほど。まずは汗のかき具合をチェックですね。よくわかりました。●ポイント高血圧の人には、夏場に意識的に食塩摂取を増やす必要がないことを、「よく汗をかく」をキーワードにわかりやすく説明することで、理解が深まります。ただし、その際水分はしっかり摂るよう補足します参考資料1)夏の日常生活における水分と塩分の摂取について(日本高血圧学会:一般のみなさま向けの情報)

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各種非定型抗精神病薬、プロラクチンへの影響を比較

 非定型抗精神病薬がマクロプロラクチンとプロラクチンの血清レベルを上昇させるか、またマクロプロラクチンレベルは非定型抗精神病薬の種類により異なるのかを、韓国・仁済大学のYoung-Min Park氏らが検討を行った。Psychiatry research誌2016年5月30日号の報告。 6病院より、連続登録方式で合計245例が抽出された。血清プロラクチンおよびマクロプロラクチンレベルは、抗精神病薬単独療法の単一ポイントで測定した。 主な結果は以下のとおり。・マクロプロラクチンレベルを含めた平均総血清プロラクチン値は、アリピプラゾール11.91ng/mL、ブロナンセリン20.73 ng/mL、オランザピン16.41 ng/mL、パリペリドン50.83 ng/mL、クエチアピン12.84 ng/mL、リスペリドン59.1 ng/mLであった。・マクロプロラクチンは、アリピプラゾール1.71ng/mL、ブロナンセリン3.86 ng/mL、オランザピン3.73 ng/mL、パリペリドン7.28 ng/mL、クエチアピン2.77 ng/mL、リスペリドン8.0 ng/mLであった。・パリペリドンおよびリスペリドンの総プロラクチン、マクロプロラクチンレベルは、他の抗精神病薬の中央値と比較し、有意に高かった(p<0.01)。・プロラクチンとマクロプロラクチンの血清レベルとの間に強い正の相関が認められた。・性機能不全は、全体の35.5%(87/245例)で認められた。・しかし、総プロラクチンレベルは、女性化乳房を除く性機能不全の有無との間に有意な差はなかった。関連医療ニュース リスペリドン誘発性高プロラクチン血症への補助療法 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症、乳がんリスクとの関連は プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか

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未成年者への抗うつ薬は有益か?14薬剤のメタ解析/Lancet

 大うつ病急性期治療における抗うつ薬のリスク・ベネフィットを考えた場合、小児および思春期青少年には明らかな利点はないようだとの見解を、英国・オックスフォード大学のAndrea Cipriani氏らが、ネットワークメタ解析の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「薬物治療が必要な場合のベスト選択肢は、おそらくfluoxetineだろう」と述べている。大うつ病は、小児・思春期青少年において最もよくみられる精神疾患であるが、同集団に薬物治療による介入を行うべきかどうか、どのような薬物を処方すべきかは、なお議論の的となっている。研究グループは、プラセボとの比較による抗うつ薬のランク付けを意図し本検討を行った。Lancet誌オンライン版2016年6月7日号掲載の報告より。ネットワークメタ解析で、14の抗うつ薬に関するプラセボ比較試験結果を分析 検討は、関連試験から直接比較および間接比較によるエビデンスを集約するためネットワークメタ解析法を用いた。PubMed、Cochrane Library、Web of Science、Embase、CINAHL、PsycINFO、LiLACSなどを介して、公表・未公表両者を含む二重盲検無作為化対照試験を検索した。2015年5月31日時点で、小児および思春期青少年における大うつ病急性期治療について評価した、アミトリプチリン、citalopram、クロミプラミン、desipramine、デュロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、イミプラミン、ミルタザピン、nefazodone、ノルトリプチリン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシンに関する試験を適格とした。難治性うつ病、治療期間が4週未満、被験者10例未満の試験は除外した。 事前規定のデータ抽出シートを用いて発表された報告から情報を入手し、バイアスリスクは、Cochraneバイアスリスクツールを用いて評価した。 主要アウトカムは、有効性(うつ症状の変化)および忍容性(有害事象による治療中断)であった。ランダム効果モデルを用いてペアワイズメタ解析を行い、その後にベイズ法でランダム効果ネットワークメタ解析を行った。それぞれのネットワークに関連したエビデンスの質はGRADEフレームワークを用いて推算した。統計的に有効性が有意であったのはfluoxetine 34試験が適格基準を満たし、被験者5,260例、14の抗うつ薬治療に関するデータを包含した。質的エビデンスは、大半の比較で「非常に低い」と判定された。 有効性に関しては、fluoxetineのみがプラセボと比較して統計的に有意な効果が認められた(標準化平均差:-0.51、95%信用区間[CrI]:-0.99~-0.03)。 忍容性に関しても、fluoxetineは統計的に良好であることが示された。デュロキセチンと比較してのオッズ比(OR)0.31(95%CrI:0.13~0.95)、イミプラミンとの同0.23(0.04~0.78)。 イミプラミン、ベンラファキシン、デュロキセチンを投与されていた患者は、プラセボを投与されていた患者との比較において、有害事象による治療中断が有意に高率であった。それぞれ5.49(1.96~20.86)、3.19(1.01~18.70)、2.80(1.20~9.42)。 不均一性に関しては、全体的に有効性のI2値は33.21%、忍容性は0%であった。

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米国医師の年収格差、男女間で1千万円強/BMJ

 米国医師の年収について、男性医師では人種間(白人と黒人)に有意な格差がみられる一方、女性医師では人種間に有意差はみられないが、全体的に男性医師よりも有意に低いことが、米国ハーバード・メディカル・スクールのDan P Ly氏らによる断面サーベイ調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「さらなる検討を行い、これらの格差が、就業機会の格差によって生じているのかを調べる必要がある」と提言している。米国社会では、黒人と白人の経済格差がみられるが、医師に関する人種間格差については限定的な推察にとどまっていたという。BMJ誌オンライン版2016年6月7日号掲載の報告より。全米医師を対象にした2つのサーベイで分析 調査は、全米の代表的なサンプル医師を含んだ2000~13年全米コミュニティ・サーベイ(American Community Survey:ACS)の対象者で、白人男性医師4万3,213人、黒人男性医師1,698人、白人女性医師1万5,164人、黒人女性医師1,252人。また、2000~08年保健制度改革研究センター(Center for Studying. Health System Change:HSC)のサーベイ対象医師で、白人男性医師1万2,843人、黒人男性医師518人、白人女性医師3,880人、黒人女性医師342人であった。 主要評価項目は年収で、ACS対象者については年齢、労働時間、調査年、居住状況を補正して算出。HSC医師サーベイ対象者については、年齢、専門分野、労働時間、調査年、診療経験、診療タイプ、メディケア/メディケイドからの収入が占める割合を補正して算出し、評価した。白人と黒人の男性医師の年収差は6万ドル、男性と女性の年収差は10万ドル 白人男性医師は、黒人男性医師よりも、年収中央値が有意に高かった。一方で、女性医師の収入中央値について、人種との関連性は一貫して認められなかった。 具体的には、ACS対象者では、白人男性医師の補正後年収中央値は25万3,042ドル(95%信頼区間[CI]:24万8,670~25万7,413ドル)であったのに対し、黒人男性医師は18万8,230ドル(同:17万844~20万5,616ドル)であった(差:6万4,812ドル、p<0.001)。 一方、白人女性医師は16万3,234ドル(95%CI:15万9,912~16万6,557ドル)で、黒人女性医師は15万2,784ドル(同:13万7,927~16万7,641ドル)であり、有意な差はなかった(差:1万450ドル、p=0.17)。 10万ドルは、換算すると約6万9,000ポンド(8万9,000ユーロ)である。格差のパターンについて、HSC医師サーベイ対象者で専門性や診療特性で補正して調べたが、変化はみられなかった。

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乾癬とうつ病はどう関連する?

 乾癬は、うつ病のリスク因子である。うつ病もまた、乾癬のトリガーや悪化要因となる可能性があるが、乾癬とうつ病との関係は、いまだ完全には明らかにされていない。そこで米国・ニューヨーク大学のCohen BE氏らでは、米国民における乾癬と大うつ病の関係性を調査した。JAMA Dermatology誌2016年1月号に掲載の報告。 本研究は2009~12年の米国国民健康栄養調査(NHANES)への参加者を対象とした集団ベース研究である。大うつ病の診断はPatient Health Questionnaire-9(PHQ-9)を用いた。  主な結果は以下のとおり。・研究対象となった米国市民1万2,382人のうち、351例(2.8%)が乾癬、968例(7.8%)が大うつ病と診断された。・351例の乾癬患者のうち58例(16.5%)が大うつ病の診断基準を満たした。・乾癬の既往患者は、乾癬の既往がない患者と比較して平均PHQ-9スコアが有意に高かった(4.54 [5.7] vs.3.22 [4.3]、p<0.001)。・性別、年齢、人種、BMI、身体活動、喫煙歴、アルコール摂取、心筋梗塞(MI)の既往、脳梗塞の既往、糖尿病の既往の調整後においても、乾癬と大うつ病との間に有意な関連性があることが認められた(オッズ比[OR] 2.09 [95%CI:1.41~3.11]、p<0.001)。・乾癬の既往と心血管イベントの既往(とくにMIまたは脳梗塞)を有する患者との相互作用項を含む解析においては、相乗的な大うつ病のリスク上昇は示されなかった(乾癬とMI: OR 1.09 [95 % CI:0.28~3.60]、p=0.91;乾癬と脳卒中:OR 0.67 [95%CI:0.12~3.66]、p=0.63)。・多変量調整モデルにおける大うつ病のリスクは、限局型の乾癬と汎発型の乾癬の患者間で有意差は認められなかった(OR 0.66 [95%CI:0.18~2.44]、p=0.53)。 以上の結果より、自己申告に基づく乾癬の既往は、併存疾患による差の調整後においても、評価ツール(PHQ-9)による大うつ病の診断との間に独立した相関関係が認められた。ただし、心血管イベントの既往は乾癬患者の大うつ病リスクを増加させなかった。また、乾癬の重症度は、大うつ病のリスクとは無関係であった。したがって重症度に関係なく、乾癬を有するすべての患者は、大うつ病のリスクを有する可能性があると考えられる。

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MESA Air試験:批判しづらい研究?(解説:野間 重孝 氏)-551

 この研究は、大都市圏(ボルチモア、シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、セントポール、ウィンストン・セーレムの6都市)において、一定量のPM2.5とNOxに曝露し続けることが、冠動脈の石灰化をもたらす可能性があることを、約7,000例を対象とした10年間にわたる追跡調査によって明らかにした研究として、環境問題を取り上げる運動家の間で話題になっているようだ。もっともこの研究では、冠動脈硬化と比較的相関性が高いといわれる内頸動脈内膜の肥厚については明確な結果を出すことができなかったため、こういった調査研究に懐疑的な向きからは、また状況証拠を1つ追加しただけだ、と冷ややかな反応があることも事実であるようだ。加えて、冠動脈CTが普及するにつれて、CT上の冠動脈石灰化はある一定年齢以上の患者にとっては必ずしも珍しい所見ではなく、その多くがイベントと結び付かないことが次第に明らかになってきていることも、彼らには不利に働いているのだろう。 まず、粒状物質の定義から振り返っておくと、第一は浮遊粒状物質(suspended particulate matter)という考え方で、この場合「大気中に比較的長く浮遊し、呼吸器系に吸入される粒径10μm以下の粒子」と定義される。最近問題になっているPM2.5というのは、これに対して微小粒子状物質と呼ばれ、粒子状物質の中でも粒径2.5μm以下の微小なものを指し、「呼吸器系の深部まで到達しやすく、粒子表面にさまざまな有害成分が吸収・吸着されていることなどから健康被害が懸念される」とされている。前者の場合は、植物粒子や火山灰なども含まれるが、後者では純粋に公害物質を指していると理解すれば良いだろう。 わが国では、PM2.5といえばもっぱら中国から黄砂に乗ってやってくる汚染物質と認識されて有名になったが、米国ではすでに90年代に相次いで報告されたコホート研究によって注目されており、幅広い健康エンドポイントによる研究結果が報告されている。ただ、評者などが疑問に思うのは、呼吸器系疾患のように汚染物質の吸引と疾病の発生の因果関係が明らかなものだけでなく、こういった研究の最初の段階から動脈硬化や虚血性心疾患に対する影響が検討されていることである。 こうした研究の幾つかを紐解いてみると、PM2.5の心血管系に対する作用経路は3つ考えられているようである。第一は肺から全身への炎症を介する経路、第二は自律神経のバランスを崩すことによる経路、第三が直接血液に移行する経路である。実際PM2.5の濃度上昇により、心拍数の増加、心拍変動の低下、安静時血圧の上昇、不整脈の発生などがみられると主張する研究者たちがいるのだが、重要なことはこれらの事実は実験的に確かめられてはいないし、もちろんそのメカニズムも不明であるということである。 そのような眼で今回の研究を見直したとき、確かに大変に手間暇のかかった研究ではあるが、そういった根本部分には何一つ迫っていないことに気付かざるを得ない。 私たち日本人は、高度成長時代を駆け抜ける中で、大量のじん肺患者の発生、阿賀野川、水俣の水質汚染、川崎の大気汚染と呼吸器疾患の大量発生など、多くの環境汚染問題を経験してきた。それだけに、今回の研究のように大気汚染に対して警鐘を鳴らす研究には、つい一票を投じたくなるのであるが、私たち科学者は情緒に流されない批判精神を保持しなければならないのではないかと思う。 歯に衣を着せずに申し上げて、今回の研究は疫学調査研究として大変によくできた研究とはいえないと思う。それでも大気汚染問題といった、誰もが反対、無視しづらい問題が取り上げられることにより論文が話題になることに、評者はいささか反発を感じるのだが、これは評者の感じ方が特別なせいなのだろうか。

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喫煙者は被害者!?

喫煙者は被害者?! 禁煙化が進む欧米では、喫煙者をタバコの被害者と見なし、その救済に社会全体で取り組む姿勢を見せています。 ニコチン依存症は、社会が責任を持って治療支援すべき疾患であるという考えの下、政府が無料の電話相談窓口、クイットライン(Quitline)を設け、禁煙の支援を受けるよう促しています。タバコ販売店舗ではクイットラインの案内板表示が義務付けられている(オーストラリア)禁煙は治療です。積極的に支援を受け、禁煙に取り組みましょう!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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Vol. 4 No. 4 心房細動患者におけるDAPTを考える

掃本 誠治 氏熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学はじめに高齢化で増加している心房細動には、抗凝固薬が必須である。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行症例、心筋梗塞、それぞれに合併する心房細動頻度は、海外では約10%、本邦では6~8%程度と報告されている1-3)。心房細動とステントを伴うPCIを合併すれば、DAPT+抗凝固薬の3剤併用と考えるが、出血リスクが上昇する4-6)。心房細動合併PCIあるいは急性冠症候群(ACS)患者に対する抗凝固薬と抗血小板薬の組み合わせは、原疾患による血栓塞栓症リスクと抗血栓薬による出血リスクの有効性と安全性を考慮することが重要である。WOEST試験WOEST試験7)は、心房細動や機械弁留置後に抗凝固薬を服用する患者で、冠動脈ステント挿入後、クロピドグレルと抗凝固薬の2剤併用群[経口抗凝固薬(ワルファリン)+クロピドグレル284例]と、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と抗凝固薬の3剤併用群(ワルファリン+クロピドグレル+アスピリン289例)で、安全性と有効性を比較した試験で、平均年齢70歳、男性80%、抗凝固薬投与の理由として、心房細動が2剤併用群で69.5%、3剤併用群では69.2%、機械弁はそれぞれ10.2%と10.7%だった。結果として、1年間の出血イベントは、3剤併用群が有意に高値だった(3剤44.4% vs. 2剤19.4%)。また心血管イベントは、2剤併用群が有意に低かった(複合エンドポイント;1次エンドポイント+脳卒中+全死亡+心筋梗塞+ステント血栓症+標的血管再血行再建術;3剤併用群17.6% vs. 2剤併用群11.1%)。抗凝固薬を服用している患者でステント留置術を受けたとき、アスピリンを止めてチエノピリジン系抗血小板薬単剤と抗凝固薬の合計2剤にするというこれまでの発想とは異なることが不可能ではないことを示した意義は大きい。また、心房細動合併のステント留置術後の患者において、CREDO-Kyoto PCI/CABG Registryコホート2が日本の実情を表している3)。2005年~2007年、26施設、1,057例、退院時ワルファリン群506例(48%)、非ワルファリン群551例(52%)を5年間フォローし、脳卒中(虚血性、出血性)、全死亡、心筋梗塞、大出血を評価。非ワルファリン群は、高齢、急性心筋梗塞、頭蓋内出血、貧血が多く、男性、薬剤溶出性ステント(DES)、末梢動脈疾患(PAD)が少なかった。そもそも、心房細動があってもDAPTで上記の因子が複数あれば、臨床現場においてはワルファリンを躊躇するのかもしれない。脳卒中は、ワルファリン群と非ワルファリン群で有意差がなく、虚血性、出血性でも有意差はみられず、心筋梗塞は、ワルファリン群で少なかった。プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)治療域内時間(TTR)が65%以上群では、65%未満群に比し脳卒中発症率が低値だった。非弁膜症性心房細動(NVAF)ACSやPCI直後ではない非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象として、本邦からJAST試験においてNVAF患者へのアスピリン150~200mg/日投与は、大出血が多く、無効と報告されている8)。海外では、ACTIVE W試験において、脳卒中リスクの高い心房細動患者に対し(17.4%に心筋梗塞既往)、DAPT(クロピドグレル+アスピリン)は、OAC(経口抗凝固薬)に比し心血管イベント抑制効果を示せなかった9)。さらに、NVAFでワルファリン不適合者に対するアスピリンとクロピドグレルのDAPTはアスピリン単独に比し脳梗塞抑制効果がみられたが、心筋梗塞死、血管死は差がなく、大出血イベントが多かった10)。以上の結果は、心房細動には抗血小板薬より抗凝固薬が必要であることを示している。ワルファリンのエビデンス冠動脈疾患には低用量アスピリンを終生投与するのが現在のガイドラインであるが、ワルファリンは50年以上日常臨床で使用されている薬剤で、急性心筋梗塞後のワルファリン vs. プラセボの大規模臨床研究でワルファリンの有効性が示されている11)。さらに心筋梗塞後、アスピリン vs. ワルファリン vs. アスピリン+ワルファリンの3群での比較研究では、アスピリン+ワルファリン併用群、ワルファリン群、アスピリン群の順に心血管イベント抑制効果が優れていた12)。しかし、この試験でのPT-INRは2.8~4.2と現在の実臨床より高値で設定されており、出血合併症が多かったこともあり推奨されなかった。安定冠動脈疾患を合併した心房細動患者のデンマークでのコホート研究では、ワルファリンに抗血小板薬を追加しても心血管イベントリスクは減少せずに出血リスクが増加した13)。以上は、出血リスクが低ければ、抗凝固薬が冠動脈疾患にも有効であることを示唆するものである。実臨床においては、本来抗凝固療法の適応でありながら、あえてコントロール不要の抗血小板薬を投与して、ワルファリンが躊躇される症例が存在した。そのようななかで、脳出血が少なく、PT-INRのコントロールが不要なNOACの登場は実臨床においては魅力的である。心房細動患者におけるACS合併またはステント留置時のガイドライン欧州心臓病学会からACS合併あるいはPCI施行の心房細動患者での抗血栓薬のjoint consensus documentが2014年に発表された14)。(1)脳卒中リスク CHA2DS2-VAScスコア(2)出血リスク HAS-BLEDスコア(3)病態 安定冠動脈疾患か急性冠症候群(待機的か緊急か)(4)抗血栓療法 どの抗血栓薬をどのくらい使用するか基本的には、出血リスクの高い3剤併用(DAPT+抗凝固薬)の期間を上記の条件にしたがって層別化し、可能なら抗血小板薬単剤+抗凝固薬に減量し、12か月以上では、左冠動脈主幹部病変などを除き可能なら抗凝固薬単剤への切り替えが推奨されている。また、VKAはTTR70%以上が推奨されており、VKAとクロピドグレルand/orアスピリンの症例ではINRは2.0~2.5が推奨されている。また、アクセス部位は橈骨動脈穿刺が推奨されている。AHA/ACC/HRSの心房細動ガイドライン2014でも、PCI後CHA2DS2-VAScスコアが2点以上では、慢性期にはアスピリンを除いて、抗凝固薬+抗血小板薬単剤が合理的であると記載されている15)。現在進行中の試験ACSあるいはPCIを受けた心房細動患者に対するNOACの臨床試験が進行中である(本誌p16の表を参照)16)。 RE-DUAL PCI試験は、ステント留置を伴うPCIを受けた非弁膜性心房細動患者を対象に、ダビガトランの有効性および安全性を評価する試験である。PIONEER AF-PCI試験は、ACS合併心房細動患者において、抗血小板薬に追加するリバーロキサバンの用量を検討する試験で、アピキサバンでも同様の試験が進行している。これらはステント留置術後急性期からの試験だが、本邦ではステント留置術後慢性安定期の心房細動合併患者を対象としたOAC-ALONE試験やAFIRE試験が進行しており、結果が待たれるところである。今後現在進行中の試験から新たなエビデンスが創出されるが、個々の患者において最適な治療法を見つけ出す努力は常に必要とされる(表)。表 ステント留置AF患者における抗血栓療法画像を拡大する文献1)Kirchhof P et al. Management of atrial fibrillation in seven European countries after the publication of the 2010 ESC Guidelines on atrial fibrillation: primary results of the PREvention oF thromboemolic events--European Registry in Atrial Fibrillation (PREFER in AF). Europace 2014; 16: 6-14.2)Akao M et al. Current status of clinical background of patients with atrial fibrillation in a community-based survey: the Fushimi AF Registry. J Cardiol 2013; 61: 260-266.3)Goto K et al. Anticoagulant and antiplatelet therapy in patients with atrial fibrillation undergoing percutaneous coronary intervention. Am J Cardiol 2014; 114: 70-78.4)Toyoda K et al. Dual antithrombotic therapy increases severe bleeding events in patients with stroke and cardiovascular disease: a prospective, multicenter, observational study. Stroke 2008; 39: 1740-1745.5)Uchida Y et al. Impact of anticoagulant therapy with dual antiplatelet therapy on prognosis after treatment with drug-eluting coronary stents. J Cardiol 2010; 55: 362-369.6)Sørensen R et al. Risk of bleeding in patients with acute myocardial infarction treated with different combinations of aspirin, clopidogrel, and vitamin K antagonists in Denmark: a retrospective analysis of nationwide registry data. Lancet 2009; 374: 1967-1974.7)Dewilde WJ et al. Use of clopidogrel with or without aspir in in patients taking oral anticoagulant therapy and under going percutaneous coronary intervention: an openlabel, randomised, controlled trial. Lancet 2013; 381: 1107-1115.8)Sato H et al. Low-dose aspirin for prevention of stroke in low-risk patients with atrial fibrillation: Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial. Stroke 2006; 37: 447-451.9)Connolly S et al. Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomised controlled trial. Lancet 2006; 367: 1903-1912.10)Connolly SJ et al. Effect of clopidogrel added to aspirin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 360: 2066-2078.11)Smith P et al. The effect of warfarin on mortality and reinfarction after myocardial infarction. N Engl J Med 1990; 323: 147-152.12)Hurlen M et al. Warfarin, aspirin, or both after myocardial infarction. N Engl J Med 2002; 347: 969-974.13)Lamberts M et al. Antiplatelet therapy for stable coronary artery disease in atrial fibrillation patients taking an oral anticoagulant: a nationwide cohort study. Circulation 2014; 129: 1577-1585.14)Lip GY et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-3179.15)January CT et al. 2014 AHA/ACC/HRS Guideline for the Management of Patients With Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society. Circulation 2014; 130: 2071-2104.16)Capodanno D et al. Triple antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients with acute coronary syndromes or undergoing percutaneous coronary intervention or transcatheter aortic valve replacement. EuroIntervention 2015; 10: 1015-1021.

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夏生まれは初潮が早い【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第69回

夏生まれは初潮が早い >FREEIMAGESより使用 女性の初潮が具体的にいつごろ起こるものなのか、医学部を卒業したわりにはあまり知らない人が多いと思います。小学生のころ、女子だけ体育館に集められて講義を受けていたような記憶が…。 Klis K, et al. Season of birth influences the timing of first menstruation. Am J Hum Biol. 2016 4;28:226-232. この論文は、生まれた季節が初潮開始時期に影響を与えるかどうか調べたポルトガルの研究です。コホートは2つの時期に設定しました。最初のコホートには1,008人の中高生の女子、次のコホートには671人の大学生の女子を登録しました。それぞれに誕生日、社会経済的ステータス、初潮年齢についてアンケートを実施しました。登録者は、春夏秋冬の4群に分けられました。すなわち、春生まれ群、夏生まれ群、秋生まれ群、冬生まれ群です。解析の結果、いずれのコホートでも夏生まれが他の季節よりも初潮が早くなることがわかりました。初潮の時期については、2014年のあるシステマティックレビューによれば実にさまざまな因子が影響しているようです1)。たとえば、家族内での問題。シングルマザーであったり、母親が抑うつ状態であったり、経済的に困窮していたり…。そういった家庭環境で育つと、初潮が早くなるとされています。また、出生体重が低い場合や、ビタミンD不足・早期の大豆摂取などの栄養面の影響についても報告されています。かといって、夏生まれが何かしら外的ストレスを受けているとは考えにくいと思いますが。参考文献1)Yermachenko A, et al. Biomed Res Int. 2014;2014:371583.インデックスページへ戻る

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子供の運動能力とADHDは相関するのか

 運動能力と過体重/肥満との重要な関連が示唆されている。運動困難な多くの子供たちは、ADHD症状を経験し、それは過体重/肥満と関連している。これまでの研究では、過体重/肥満との関連を調査する際、ADHDと運動能力の両方について考えられていなかった。ブラジル・サンパウロ大学のJuliana B Goulardins氏らは、子供の運動能力とADHD症状、肥満との関連を調査した。Research in developmental disabilities誌オンライン版2016年5月20日号の報告。 6~10歳児189例について、横断的研究を行った。ADHD症状は、SNAP-IV評価尺度を用いて評価した。運動障害(MI)は、Movement Assessment Battery for Children-2(M-ABC-2)を用いて評価した。身体組成は、WHOのChild Growth Standardsに基づいたBMIから推定した。 主な結果は以下のとおり。・性別やADHDで調整した後、BMIと関連した唯一の運動技術はバランスであった。・グループ間比較では、過体重ADHD児の割合は、過体重コントロール群や過体重MI群と比較し有意に低かった。また、低体重ADHD児の割合は、低体重MI児の割合より有意に高かった。 結果を踏まえ、著者らは「ADHD症状と運動困難の両方を考慮し、ADHDや運動問題を有する子供たちの身体健康アウトカムに対する評価や介入を行うことが重要である」としている。関連医療ニュース 日本でのADHDスクリーニング精度の評価:弘前大学 子供はよく遊ばせておいたほうがよい 小児ADHD、食事パターンで予防可能か

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急性期脳出血に対する積極的降圧療法は有効か?/NEJM

 超急性期脳出血患者において、ニカルジピンによる収縮期血圧140mmHg以下への積極的降圧療法は、140~179mmHgを目標とした標準降圧療法と比較し、死亡や高度障害は減少しなかった。米国・ミネソタ大学のAdnan I. Qureshi氏らが、多施設共同無作為化非盲検比較試験ATACH-2(Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral HemorrhageII)の結果、報告した。脳出血急性期の収縮期血圧の降圧目標については、INTERACT-2試験にて、発症後1時間以内に140mmHg未満に下げることで3ヵ月後の転帰を改善する傾向が示されたが(急性脳内出血後の降圧治療、積極的降圧vs.ガイドライン推奨/NEJM)、これまで推奨の根拠となるデータには限りがあった。NEJM誌オンライン版2016年6月8日号掲載の報告より。脳出血急性期の降圧、収縮期血圧110~139mmHgと140~179mmHgを比較 ATACH-2試験は2011年5月~2015年9月に、米国・日本・中国・台湾・韓国・ドイツの110施設で実施された。 対象は、発症後4.5時間以内に治療開始可能で、出血量60cm3未満、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS:3~15、数値が低いほど状態は不良)5点以上、発症~治療開始までの測定時の収縮期血圧が180mmHg以上の脳出血患者であった。 積極的降圧群(無作為化後24時間以内に収縮期血圧値目標110~139mmHg)と標準降圧群(同140~179mmHg)に無作為化し、速やかに(発症後4.5時間以内)ニカルジピンを静脈投与した(5mg/時から開始し、15分ごとに2.5mg/時増量、最大量15mg/時)。 主要評価項目は、評価者盲検下における無作為化後3ヵ月時の死亡および重度の障害(修正Rankinスケール[0:無症状、6:死亡]で4~6)とした。3ヵ月後の死亡・重度の障害に差はない 1,000例が登録され(積極的降圧群500例、標準降圧群500例)、ベースラインの収縮期血圧(平均±SD)値は200.6±27.0mmHg、平均年齢は61.9歳、56.2%がアジア人であった。 主要評価項目である死亡・重度の障害の割合は、積極的降圧群38.7%(186/481例)、標準降圧群37.7%(181/480例)で、年齢・ベースラインのGCSスコア・脳室内出血の有無で調整後の相対リスクは1.04(95%信頼区間:0.85~1.27)であった。 治療に関連した重篤な有害事象の発現頻度(無作為化後72時間以内)は、積極的降圧群1.6%、標準降圧群1.2%であった。また、無作為化後7日以内の腎臓の有害事象の発現頻度は、それぞれ9.0%および4.0%で、積極的降圧群が有意に高値であった(p=0.002)。 なお、本試験は事前に計画された中間解析において無益性が認められたため、その後の登録は中止となっている。

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早期リウマチへのトシリズマブ、単独・MTX併用でも寛解維持2倍/Lancet

 新たに関節リウマチ(RA)と診断された患者において、メトトレキサート(商品名:リウマトレックスほか、MTX)併用の有無を問わず、ただちにトシリズマブ(商品名:アクテムラ)の投与を開始し寛解維持を目指す治療戦略は、より効果的であることが示された。安全性プロファイルは現在の標準治療であるMTXと類似していた。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのJohannes W J Bijilsma氏らが、トシリズマブの単独またはMTXとの併用療法の有効性と安全性を、MTX単独療法と比較したU-Act-Early試験の結果、報告した。早期RA患者にとって、治療の目標は速やかな持続的寛解を得ることだが、目標達成に向けた治療戦略の検討はされていなかった。Lancet誌オンライン版2016年6月7日号掲載の報告。トシリズマブの単独またはMTX併用療法とMTX単独療法の寛解維持達成を比較 U-Act-Early試験は、MTXとの併用または単独でのトシリズマブの有効性と安全性を、MTX単独療法と比較する、2年間の多施設共同無作為化二重盲検比較試験。オランダのリウマチ外来21施設で実施された。 対象は、1年以内にRAと診断され、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の治療歴がなく、疾患活動性スコア(DAS28)が最低2.6の18歳以上の患者であった。 被験者は、トシリズマブ+MTX(併用)群、トシリズマブ+プラセボ(トシリズマブ)群、プラセボ+MTX(MTX)群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。トシリズマブは4週ごとに8mg/kg(最大800mg)静脈投与、MTXは10mg/週経口投与より開始し、4週ごとに5mgずつ、最大30mg/週まで増量し、寛解または用量制限毒性が現れるまで継続した。割り付けた治療で寛解に至らない場合は、プラセボは実薬に、併用群は標準治療(MTX+TNF阻害薬併用)に変更した。 主要評価項目は、寛解維持(腫脹関節数≦4かつDAS28<2.6が最低24週持続)を得られた患者の割合であった。寛解維持達成はトシリズマブ単独84%、併用86%、MTX単独44% 2010年1月13日~2012年7月30日に適格とされた患者317例が登録された(併用群106例、トシリズマブ群103例、MTX群108例)。試験を完了した患者の割合は72~78%で、3群間で類似していた。中途脱落理由で最も多かったのは、有害事象または他疾患を併発27例(34%)、効果不十分26例(33%)であった。 最初の割り付け治療での寛解維持達成は、併用群91例(86%)、トシリズマブ群86例(84%)、MTX群48例(44%)で得られた。相対リスクは、併用群 vs.MTX群が2.00(95%信頼区間[CI]:1.59~2.51、p<0.0001)、トシリズマブ群 vs.MTX群1.86(同:1.48~2.32、p<0.0001)であった。 また、全治療における寛解維持達成は、併用群91例(86%)、トシリズマブ群91例(88%)、MTX群83例(77%)であった。相対リスクは、併用群 vs.MTX群1.13(95%CI:1.00~1.29、p=0.06)、トシリズマブ群 vs.MTX群1.14(同:1.01~1.29、p=0.356)、併用群 vs.トシリズマブ群p=0.59であった。 全体で最も発現頻度の高い有害事象は鼻咽頭炎で、併用群38例(36%)、トシリズマブ群40例(39%)、MTX群37例(34%)であった。重篤な有害事象の発症に治療群間で差はなく(併用群17例[16%] vs.トシリズマブ群19例[18%]、MTX群13例[12%])、試験期間中に死亡例の報告はなかった。

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皮膚有棘細胞がんになりやすい職業

 皮膚有棘細胞がん(皮膚扁平上皮がん、以下cSCC)の職種間の相対危険度の差は社会経済的要因に関連し、職業性曝露にある程度関連する可能性があることが、ノルウェー・National Institute of Occupational HealthのJose Hernan Alfonso氏らによるフィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンでの45年間の追跡調査で明らかになった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年6月1日号に掲載。 北欧諸国におけるcSCCの年齢調整罹患率は過去60年間で増加しており、職種間のcSCCの相対リスクの違いの同定は、予防的な意味合いを持つ可能性がある。 この研究は、1961~2005年の1,290万人の国勢調査データとがん登録データを結合した記録に基づいた歴史的前向きコホート研究である。各国の国民全体のcSCC罹患率を基準として用い、53職種におけるcSCCの標準化罹患比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、8万7,619例のcSCC発症が国のがん登録に報告された。・参加したすべての国で、船員、軍人、保安職業従事者、技術者、教師、輸送関連労働者、医師、歯科医師、看護師、その他の医療従事者、宗教関連労働者、事務従事者、管理者、販売代理人において、標準化罹患比の有意な増加が認められた(1.08~1.77)。

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アミオダロンは効く?効かない?よくわからない?(解説:香坂 俊 氏)-550

アミオダロンの登場10年以上前にさかのぼるが、アミオダロンが心肺蘇生の現場に登場したときは画期的であった。何しろエビデンスのエの字もなかった心肺蘇生の領域で、自分が知る限りでは初めての本格的ランダム化試験が行われたのだ。その試験の名前はALIVEといった(NEJM誌2002年掲載)。当時、心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(pulseless VT)といった致死性不整脈には、種々様々な薬剤が使用されていた。主要なものとしては、昔からあったリドカイン、I群抗不整脈薬の雄ブレチリウム(現在米国では製造中止)、さらに抗狭心症薬からくら替えしてきたアミオダロンなどが選択肢として存在したが、ALIVE試験ではこのうちリドカインとアミオダロンが比較された。その結果はといえば、アミオダロンのほうが、蘇生されて病院に到達する率が抜群によく出たため(22.8% vs.12.0%)、これ以降ACLSのプロトコルにも採用され、アミオ(アミオダロンの米国での通称)は、救急医や循環器内科医にとってなじみ深い抗不整脈薬となった。ただ、ALIVEは300例程度の試験であったため、退院時の生死に関しては明確な結論が得られないままとなっていた(どちらの群でも80%以上の患者さんが最終的には死亡された)。アミオダロンの退場(?)前置きが長くなったが、今回のRCTはその「生存退院」というところにターゲットを合わせ、ALIVEのおおよそ10倍の規模で行われた臨床試験である(n=3,026)。さらに、アミオダロン、リドカインに加えて、ご丁寧に生理食塩水を使うコントロール群まで設定されるという徹底ぶりである。結果についての詳細は他稿(院外心停止に対するアミオダロン vs.リドカイン vs.プラセボ/NEJM)に譲るが、驚くべきことにアミオダロン群とリドカイン群の間に生存退院率の差は認められず(絶対値の差が0.7%、p=0.70)、さらに2つの薬剤投与群とコントロール群との差もわずかなものであった[アミオダロン群との差が3.2%(p=0.08)、リドカイン群との差が2.6%(p=0.16)]。この結果は衝撃的なものであり、今後アミオダロンのガイドライン上での扱いがどうなるか注目される(おそらく、今ほど絶対的な地位にとどまることはなかろうかと思われる)。よくわからないところよくわからないのが、アミオダロンとリドカインの2剤共「目撃されていた(witnessed)」心肺停止例に限れば、優れた効果を発揮できていた、というところだ。目撃者のいなかった心肺停止例は、いくらVFやVTといった波形を呈していたとしても、薬剤を使用するタイミングを逸してしまっていたということなのか? あるいは、きちんとバイスタンダーによる蘇生行為が行われていなければ、こうした薬剤は効果を発揮できないのか?自分はしばらくはアミオダロンを使い続けるつもりでいる。ただ、アミオダロンは有害事象(血圧の低下や徐脈)もある程度想定しなくてはならない薬剤なので(注)、もしもこちらをリドカインに切り替えて支障がないというのであれば、それは助かる。さらに、「目撃された」心肺停止例という群を別枠で考えなくてはならないかということについては、現場視点から考えると難しいのではないかと思う。このあたり、今後議論が深まっていくのではないだろうか?注)今回の試験でも、アミオダロン群では5%程度の症例で一時的なペーシングが必要となっている。

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私 結婚できないんじゃなくて、しないんです【コミュニケーション能力】

今回のキーワード生涯未婚率「仮氏理論」「ライフ・イズ・ビューティフル理論」「ツッコミマスター」進化心理学・進化精神医学社会的知能(SQ)社会的コミュニケーション障害(DSM-5)なぜ結婚しなくなったの?みなさんは、もう結婚しているでしょうか? またはこれから結婚するでしょうか? 1990年までの日本では、結婚する人が、男女ともに変わらず95%以上でした。ところが、現在はどうでしょうか? 統計的には、男女とも90%近くが、「いずれ結婚するつもり」と考えています。しかし、2010年の生涯未婚率は男性20%超、女性10%超で、急激に上がってきています。このまま行けば、2035年には男性30%、女性20%と予測されています。また、離婚率も生涯未婚率と同じく上がってきています。一体、何が起きているのでしょうか? どうしてこうなったのでしょうか? そして結婚するにはどうしたら良いでしょうか? さらには結婚を続ける、つまり離婚しないにはどうしたら良いでしょうか? これらの問いに答えるためのキーワードは、コミュニケーション能力です。このコミュニケーション能力の理解のために、今回、ドラマ「私 結婚できないじゃなくて、しないんです」を取り上げます。主人公の39歳女医のみやびが、恋愛スペシャリストを自称する十倉からスパルタ指導の下で、独身アラフォーを抜け出そうとするラブコメディーです。このドラマでは、十倉が「仮氏理論」「ライフ・イズ・ビューティフル理論」「ツッコミマスター」という3つの独自理論を説いています。これらを通して、コミュニケーション能力を高めるやり方やあり方をアカデミックに解説します。また、現代の結婚をしない心理について、進化心理学・進化精神医学の視点で探っていきます。さらに、DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引第5版)への改定に伴い、新しく登場した「社会的コミュニケーション障害」も解説します。仮氏理論―誰でも良いから彼氏をつくるみやびは、「好きになれる人じゃないと」「好きになれる人がいない」と言います。そして、これまでずっと仕事を優先してきました。理想の相手がいないことと時間がないことを理由に、長期間「彼氏がいない状態」になっています。そんなみやびに対して、十倉は「仮氏理論」を説きます。「仮氏」とは仮の彼氏という造語で、仮氏理論とはどんな男でも良いからまず彼氏をつくり、「彼氏がいない状態」から抜け出すことです。この仮氏は、かつての「キープ君」に似ています。この仮氏をつくることによって、労力や時間を注ぐデメリットを上回って得られるメリットが3つあると十倉は説きます。1つ目は、心の余裕です。十倉は、「最悪あいつがいると思える」と言います。これは、「仮氏」というバックアップがある(いる)からこそ、心の余裕が生まれ、焦らなくなるというわけです。余裕とは、うまく行かなくなっても、いざという時の保険があるということです。2つ目は、魅力の水増しです。十倉は「彼氏はいるんだけど・・・と含みを持たせて」「彼氏を踏み台に本命の男にジャンプ」と言います。女性は誰かのものであるというだけで、男性にとって魅力が増すという心理を利用しています。3つ目は、トレーニングになることです。十倉は、「理想の結婚相手はエベレスト」であり、「仮氏は高地トレーニング」であると言います。つまり、恋愛を含むコミュニケーションには、トレーニングが必要であるということです。これは、最も重要なことです。なぜなら、実際に理想の彼氏ができるというチャンスが巡ってきても彼氏いない歴が長すぎれば、「何をして良いか分からない」「何から始めれば良いか分からない」という事態が起きてしまうからいです。つまり、もったいないのは、本命じゃない相手とのデートの時間ではなく、逆に大本命に絞って一本釣りするデートの時間であるということです。コミュニケーションはダンスと同じです。練習すれば、リズムに合わせてキレのある動きができて、だんだん上手になります。逆に、止めてしまうと、リズムに合わずキレのない動きになり、だんだん下手になります。しかも、恋愛は、仕事、友人、家族などの他のコミュニケーションと比べて、より高い能力と経験が求められます。つまり、本命の彼氏を射止めるために、「仮氏」はダンスの練習台であり踏み台であるということです。そして、それは男女お互い様であるということです。ちなみに、この「仮氏理論」の発想は、心理療法の1つであるブリーフセラピーのスケーリング・クエスチョンによる目標設定に当てはまります。ライフ・イズ・ビューティフル理論―デートを楽しむみやびは、本命の桜井君とのデートで張り切りますが、うまく行きません。その後、十倉の教えに従って、「仮氏」とデートをしますが、楽しくありません。そして、その相手のイケてないところを女子会のガールズトークでこき下ろして盛り上がります。みやびは「デートが楽しくない」と言っています。なぜでしょうか? 原因が3つあります。1つ目は、自分の良いところばかりを見せようとして緊張していることです。その心理は、結婚という目的に囚われ、デートがその手段となり、仕事となり、苦行となっています。2つ目は、相手の悪いところばかりを見てしまい幻滅することです。その心理は、結婚という目的に囚われ、相手の値踏みばかりをして、婚活の面接官になっています。3つ目は、デートを楽しむ経験を積んでいないことです。そもそもデートを楽しんだことがあまりないと、その楽しみ方が分からないということです。みやびは、美人で医師という最高のキャリアを持っており、デートを楽しんでいそうなイメージがあります。しかし、だからこそ彼女は「恋愛弱者だ」と十倉は言います。そのわけは、勉強や仕事、友人関係で自分の思い通りになってきた人は、逆に必ずしも自分の思い通りにならない恋愛には免疫力がなく、弱いということです。自分だけでなく、結婚や相手にも完璧さを求めて、そうならないことへのいら立ちや不安をつのらせるばかりで、楽しむのが下手だということです。そんなみやびに十倉は、「ライフ・イズ・ビューティフル理論」を説きます。「ライフ・イズ・ビューティフル」とは、主人公の父親が最愛の幼い息子に、戦争による過酷な運命をポジティブに伝え続けるという感動の映画です。まさにこの映画のように、十倉は「全ての物事にはプラス面とマイナス面がある」「物事の二面性をみろ」「デートは常にプラス思考」「デートを楽しめ」「魔法の言葉は『逆に楽しい』」と言います。何があっても、「逆に楽しい」面を見つけ出すことです。たとえ結婚したとして、その後の結婚生活で、必ずしも相手の欠点がないわけではありません。相手の欠点に目が行ってしまった時、その良さ(プラス面)に目を向け、バランスをとり、トータルで相手を見ることができるかが大切になります。みやびのような女性の言い分は「好きじゃないと楽しめない」です。逆です。「楽しめていないから好きになれない」です。つまり、どんな相手でも状況でも楽しめるということは、それ自体がとても大事なコミュニケーション能力であるということです。さらには、このコミュニケーション能力を高めるには、ダンスと同じように、普段から楽しんでいることです。楽しむことで相手を好きになります。つまり、人を好きになるのも、それ自体がとても大事なコミュニケーション能力であるということです。もう1つ魔法の言葉をご紹介しましょう。これは、特に失恋など結果的にうまくいかなかった時点で役立ちます。それは、「良い勉強になった」「経験値が上がった」です。失恋は、避けて通りたいと多くの人は思いがちです。よくよく考えると、失恋のようにうまく行かない相手や状況は、コミュニケーション能力を高めるためには必要なことです。失敗は成長の肥やしです。そして失恋は結婚の肥やしです。うまく行かないことは、マイレージのようなもので、どんどん経験値として貯まっていくことで、将来的にその経験値が生かされ、その後により遠くへ、より高みへ飛べるようになります。ちなみに、この「ライフ・イズ・ビューティフル理論」の発想は、心理療法の1つである認知行動療法の二面性による認知再構築やナラティブセラピーのオルタナティブストーリーに当てはまります。ツッコミマスター―相手を楽しませるみやびは、本命の桜井君とのデートで張り切りますが、全て裏目に出てしまいます。挙句の果てに、捨身の告白をしてフラれます。その理由は、「私を選んで」と自分が気に入られることばかりに必死になり、ぎこちなくて気持ち悪かったからでした。そして、みやび自身はもちろん楽しんでいないですし、何より相手を楽しませてもいなかったからでした。そんなみやびに十倉は、「ツッコミマスターになれ」を説きます。ツッコミマスターとは、相手の言動に盛り上がるツッコミを入れることです。会話が、楽しいキャッチボールになることです。みやびがやっていたのは、言いなりのイエスマンです。会話は、受け身で退屈な一方通行です。ツッコミマスターになるには、3つの力を鍛える必要です。1つ目は観察力です。これは、興味を持ち相手をよく観察するだけでなく、普段から世の中のことをよく観察して、相手と結び付けることです。良い例は「例えツッコミ」です。2つ目は、行動力です。これは、ツッコミという本音や毒を会話に投げ込むリスクを負う行動を積極的にすることです。ツッコミには、デメリットとして予定調和を崩すことで相手の気を悪くさせるリスクがあります。そこには、安心感はありません。しかし、それを上回るメリットとして、予定調和を崩すことで生まれる笑いがあり、楽しさがあります。気まずくならないための保険として、「思い切って言っちゃうけど」などの前置きをして、相手がツッコミされる心の準備をしてもらうこともできます。3つ目は、包容力です。これは、相手を心から楽しませたいと思うことです。たとえそのツッコミがどぎつくなったとしても、悪気はないと思われるほど、声のトーンや表情などの雰囲気(非言語的コミュニケーション)は温かみがあるのがポイントです。コミュニケーションとは、ダンスと同じように、自分がわがままで相手を疲れさせず、自分が言いなりで相手を飽きさせず、息を合わせて自分も楽しみ相手も楽しませることであると言えます。そして、このコミュニケーション能力を高めるには、普段から相手を楽しませていることです。その相手が、恋人だけでなく、友人や家族やご近所などのプライベートな関係から、同僚や部下、さらには上司などの仕事関係、さらにはエレベーターで乗り合わせた人などの何でもない関係まで広がれば広がるほど、それが積み重なれば積み重なるほど、この能力は高まります。また、たとえ結婚したとして、その後の結婚生活で、必ずしも相手とうまく行くことばかりではありません。うまく行かない時、意見が合わなかったりケンカになりかけた時、わがまま(攻撃)でもなく言いなり(非主張)でもない、折り合いを付けるツッコミが良い関係を保つ大きな力になるということです。コミュニケーション能力とは、我慢してけんかしない能力ではなく、たとえけんかしても仲直りできる能力であると言えます。ちなみに、この「ツッコミマスター」の発想は、心理療法の1つであるアサーションとユーモアに当てはまります。結婚をしない心理とは?これまで、「仮氏理論」「ライフ・イズ・ビューティフル理論」「ツッコミマスター」を通して、コミュニケーション能力を高めるやり方やあり方をアカデミックに解き明かしてきました。しかし、それにしても、現在、なぜ結婚しない人がこれほど急に増えたのでしょうか?そもそも、なぜデートもしない人が増えたのでしょうか?その謎を解くために、私たちが人間となり体と心(脳)を適応させていった数百万年前の原始の時代の狩猟採集社会に目を向けてみましょう。なぜなら、この時代に私たちの心(脳)の原型が形作られたからです。一方、現代の農耕牧畜社会から始まる文明社会は、たかだか1万数千年の歴史しかなく、体や心(脳)が進化するにはあまりにも短いからです。原始の時代、男性(父親)は日々食糧を確保し、女性(母親)は日々子育てをして、性別で役割を分担し、家族をつくりました。さらに、これらの家族が血縁によっていくつも集まって100人から150人の大家族の生活共同体(村)をつくり、つながって協力しました。そして、そうする種が生き残りました。その子孫が現在の私たちです。逆に、そうしない種は、子孫を残さないわけですから、理屈の上ではこの世にほぼ存在しないと言えます。それが、日本で1990年までの結婚する人が、男女ともに変わらず95%以上であったことを表しています。ところが、1990年代以降の現代はどうでしょうか? 実は、原始の時代と違う現代の社会構造こそが、結婚をしない心理を生み出していると言えます。その主な3つの心理を探ってみましょう。(1)「自由がなくなる」―個人主義化―自己愛の心理1つ目は、「自由がなくなる」という心理です。高度経済成長期を過ぎた1970年代から、世の中は物質的には豊かになっていきました。生活の余裕ができて、個人の選択の自由が重んじられるようになり、個人主義化していきました。女性も社会参加するようになりました。女性は仕事を持つ、男女ともに余暇活動を楽しむ、自分の趣味や習い事をするなど生き方の選択肢が増えていきました。いわゆる「自分磨き」「リア充(リアル生活充実)」「意識高い系」という流行り言葉がそれを表しています。また、結婚についても、お見合いなどによって親(社会)が決めるやり方から、恋愛によって個人同士が決める自由が重んじられるようになりました。本人の意思が尊重されることで、周り(社会)よりも自分を大切にする気持ちが高まります(自己愛)。一見、結婚を選ぶ自由があることは良いように見えますが、ここには落とし穴があります。それは、相手を選ぶ自由があるということは、一方で、相手から必ずしも選ばれない「不自由さ」という責任があるということです。自分が相手を好きだからと言ってどんなに努力しても、必ずしも相手が自分を好きになるという保証がないということです。ここが仕事や友人関係との大きな違いです。恋愛は理不尽なのです。そして、「面倒は嫌だ」「時間がもったいない」という理由付けによって、拒絶されたり裏切られることがない仕事や趣味、友達関係やペットで、人生を満たそうとします。または、アイドルの追っかけをしたり、二次元(仮想現実)の恋人をつくることで、思い通りになる擬似的な恋愛で欲求を満たそうとします。つまり、「自由であり続けたい」「我慢したくない」ということです。こうして、自分の自由さに目が行くばかりで、恋愛のコミュニケーションの機会が減り、その能力が高まらないままなのです。これが、「自由がなくなる」という心理の根っこにあるものです。(2)「コスパが悪い」―効率化―損得勘定の心理2つ目は、「コスパ(コストパフォーマンス)が悪い」という心理です。世の中は、さらにとても便利で効率化していきました。女性は経済的に自立するようになり、男性も家事労働的に自立できるようになりました。そして、個人主義化と相まって、それまでの三世帯の大家族よりも、未婚の男性や女性がその親と同居するのみの核家族や独り暮らしが増えていきました。もはや、女性が必ずしも結婚して経済的に男性に依存する必要がなく、男性も必ずしも結婚して女性の家事労働に依存する必要がなくなりました。いわゆる男女の役割のフラット化です。逆に、結婚すると、親と別居することになるため、男性も女性も自分の親の経済や家事労働に依存できなくなり、さらに女性が離職して家事労働や子育てに専念する場合は男性が自分の経済を女性や子どもと共有することになり、結果的に生活水準は下がってしまいます。効率化という社会の価値観によって、「自由がなくなる上に損をする」という損得勘定の発想(外発的動機付け)が強まり、つながる必要がないという心理に陥ってしまいます。そこには、「相手を楽しませたい」「幸せにしたい」というコミュニケーション本来の発想(内発的動機付け)が貧しくなっています。こうして、結婚して失うものばかりに目が向き、得るものには目が向かないため、恋愛のコミュニケーションの機会が減り、その能力が高まらないままなのです。これが、「コスパが悪い」という心理の根っこにあるものです。(3)「好きな人がいない」―情報化―受け身の心理3つ目は、「好きな人がいない」という心理です。1990年代から、インターネットの普及により情報化が一気に加速しました。物だけでなく、情報までも人と直接かかわらなくても手に入るようになりました。つまり、生きていくために、苦労して人とコミュニケーションをして何かを手に入れる体験を子どもの頃からしなくても良くなってきたのです。言い換えれば、より受け身でも生きてはいけるということです。そして、この受け身の心理で恋愛をするようになったのです。デートをしても、男女がお互い受け身なので、楽しくなくて盛り上がらず、好きになれないので、次につながらないのです。つまり、厳密には、「好きな人がいない」のではなく、「好きになる経験を積んでいない」ということです。また、人と深くかかわり好き好かれるコミュニケーションの体験を積み重ねていないので、人からどう思われるか不安になりやすく、「人見知り」「対人恐怖」に陥りやすくなります。そして、ますます恋愛に臆病になります。悪循環です。情報が溢れる中、不安をなくそうと情報収集ばかりして、頭でっかちになり、ますます不安になっています。とても「結婚は勢い」というふうには思えなくなっています。さらに、情報化は、相手を商品のように細かくランク付け(価値付け)する意識を強めます。いわゆる「スペック」です。この心理によって、相手のだめなところばかりに目が行きやすくなり、好きになれないのです。好きになるのは、スペックなどの情報によるものではなく、生身のコミュニケーションそのものによるものです。つまり、「好きな人がいない」というのは、相手の問題ではなく、自分の心の問題であるといことです。こうして、相手の欠点に目が行くばかりで、恋愛感情を深めるコミュニケーションの機会が減り、その能力が高まらないままなのです。これが、「好きな人がいない」という心理の根っこにあるものです。なぜコミュニケーション能力が注目されるの?結婚をしない心理の3つの要素のどれも、コミュニケーション能力が絡んでいます。実際に、結婚における魅力について、男性は経済力で女性は容姿であるのは昔からではありますが、昨今はコミュニケーション能力のウェートがますます高まっています。なぜでしょうか? もう一度、進化心理学・進化精神医学の視点で考えてみましょう。生きていくために必要な能力は、狩猟採集社会の原始の時代や農耕牧畜社会の近代までは主に身体能力でした。ところが、産業革命が起きた19世紀以降、身体能力を必要とする肉体労働は、機械が代わりにやってくれるようになりました。むしろ、その機械を操作するための記憶力や分析能力などの知的能力(IQ)が重要視されるようになりました。ところが、情報化が進んだ1990年以降、記憶力や分析力を必要とする頭脳労働はコンピューターが代わりにやってくれるようになりました。そして、むしろ機械やコンピューターができないコミュニケーション能力が重要視されるようになったのです。つまり、魅力とは、その時代を生きていくために必要な能力であるといえます。そして現在では、このコミュニケーション能力は、いかに人とうまくやっていけるかという社会的知能(SQ:social quotient)として注目されています。だからこそ、逆にコミュニケーション能力が低い人も目立つようになっていきました。そして、精神障害の1つとして認知されるようになったのです。それが、2013年のDSM-5への改定で新しく登場した社会的コミュニケーション障害です。もともと、軽症の自閉症やアスペルガー障害と診断されていましたが、あまりに増えてしまったため、新しい疾患概念として提唱されたのです。精神障害が、いかにその時代の社会構造によって決められてしまうのかがよく分かります。極端な話、未来の時代に、歌唱力やダンスが生きるために必要な能力と見なされたら、「歌唱障害」や「ダンス障害」という病名が存在しうるということです。コミュニケーション能力を高めるには?このドラマは、女性向けの恋愛指南のスタイルをとっています。いわば「男たらし」になる術です。ただ、恋愛とは、コミュニケーション能力が最も発揮される瞬間であることを踏まえると、このドラマで説かれた「仮氏理論」「ライフ・イズ・ビューティフル理論」「ツッコミマスター」は、女性だけでなく男性にも、そして恋愛だけでなく、仕事、友人、家族、子育てなど広く人間関係に使える理論であるとも言えます。つまり、私たちは、このドラマから学んだ理論を通して、よりよいコミュニケーションをする「人たらし」になることができるのではないでしょうか?1)水野敬也:スパルタ婚活塾、文響者、20142)週間東洋経済「生涯未婚」、東洋経済新報社、2016年5/143)山田昌弘:家族難民、朝日新聞出版社、20144)岡田尊司:夫婦という病、河出書房新社、2016

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