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「新しいインフル薬は1回飲めば治るんですよね」の意図を探れ!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第19回

冬になるとインフルエンザ患者が多くなり、調剤や吸入指導で忙しくなる!…と身構えていたのに、今シーズンは意外とそうでもなかったかも?と思っている薬剤師さんも多いのではないでしょうか。昨シーズンまではインフルエンザといえば5日間の内服や吸入、もしくは薬局での吸入といった服薬・吸入指導が一般的でした。その中でも吸入薬は、家で吸入する場合であっても、薬局で吸入する場合であっても指導にかなりの時間を取られてきたのではないでしょうか。しかし、2018年3月に発売されたバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)によって、服薬・吸入指導の時間が一気に短縮されたように思います。バロキサビルがインフルエンザ患者の4割に処方されているとの報道もありますが、私の感覚としては半分以上がバロキサビルという印象です。そのバロキサビルに関して、早くも心配なニュースが報じられています。国立感染症研究所は、インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」を服用した患者から、薬が効きにくい耐性変異ウイルスが検出されたと発表した。厚生労働省によると、国の研究機関として実際の治療で検出を確認したのは初めて。(2019年1月26日付 時事通信社)「1回の服用で完結」という夢の新薬のように一般向けにメディアで特集されていますが、残念なことに早くも耐性ウイルスが検出されました。バロキサビルの処方が多いと、投薬カウンターに吸入薬の粉が舞ったり、吸入で苦しくなった子供が吐いたりといった「薬局あるある」が少なくなり、服薬指導が短時間で済むことはとても助かります。しかし、耐性ウイルスについて一般向けのメディアでは十分に報じられていないことに加えて、患者さんがバロキサビルに抱いている印象やその後の行動に多少不安を覚えています。その不安とは、「1回で効くんですよね?」と言う患者さんがとても多いことです。おそらく、「インフルエンザで1回だけ飲めばよい新薬が開発された」というニュースや記事を目にされたのでしょう。服薬が1回というのは事実ですが、1回飲めば翌日にはすっかり回復すると期待している患者さんが多い印象があります。また、ウイルスを排出する期間が短い=周りの人に感染させにくい=外出してOKと思っていることもあるようです。患者さんはキャッチーな言葉だけに注目しがちですし、入手した情報を都合の良いように解釈している可能性もあるため、意図を確認するなど注意が必要です。薬を服用した後や症状が軽快した後でも周りの人にウイルスを感染させる可能性があること、会社や学校は休んで外出を控えること、水分と休養を十分に取ることなどをしっかり伝える必要性を昨シーズン以上に感じています。一般向けのメディアがあおる期待やキャッチーな言葉を患者さんがどのように捉え、どのように行動しようとするのか。われわれ薬剤師がそれを想像し、先回りした服薬指導を行うことの重要性をあらためて感じました。

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会員医師の約6割が医師不足・偏在を実感(会員医師アンケート調査報告)

CareNet.comでは、過日、会員医師の方々に「現在・将来の医師不足、偏在について」をテーマにアンケートへのご協力をお願いしました。今回、その結果がまとまりましたので報告いたします。2019年2月20日にCareNet.comの会員医師を対象にインターネット上でアンケートを実施、回答者総数は340名でした。結果概要医師不足・偏在を実感している会員医師は約6割Q1 今回発表された医師不足や偏在、将来の推計の数字は実感できますか。(回答は1つ)1 実感できる2 実感できない「医師の都会志向」「医局人事」など複雑に絡み合う理由Q2で「実感できる」・「実感できない」の具体的理由についてお聞きしたところ、「実感できる」と回答した会員医師のコメントでは「医師の都会志向」、「へき地人口のさらなる減少」、「医局人事が厳しい」などのコメントがあった。また、「実感できない」と回答した会員医師のコメントでは、「医師の絶対数よりも偏在」、「厚生労働省の統計への信頼性」、「医師の頭数ではなく緊急対応の有無」などのコメントが寄せられた。Q2 「Q1」の回答の理由をお聞かせください。「1 実感できる」回答のコメント(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)●地域偏在の問題都市部への集中、へき地医療の衰退医師の将来設計が都会志向地方に医師が残らず、内科志望者も激減都会での勤務を希望する医師が多いという実感地方中核都市でさえ医師が不足している東京への一極集中が問題医師不足地域で勤務しているが、医師1人に対する負担は東京での勤務時とは比べものにならないくらい大変●診療科偏在の問題主要診療科のなり手が減ってきた外科、小児科、産婦人科では医師不足が進むと思う外科や産婦人科の医師がどんどん疲弊している新専門医制度により、さらに内科系が減る可能性近隣の産科が閉院している診療科によって忙しさが違いすぎる内科、とくに循環器、糖尿病内分泌、脳神経内科の医師が少ないように感じる当地域ではマイナー科も不足し、皮膚科受診をする際は予約が3日後になっている近隣の小児科開業医の高齢化が顕著休日、夜間の救急体制では、顕著に医師数が不足当直勤務後に引き続き勤務する先生方が多い都心部では、皮膚科や耳鼻科が非常に多い印象●医学教育、行政の問題医局人事が大変厳しい将来の見通しが立っていたのに、厚生労働省の対応が遅すぎる自分の医療圏では公的病院の医師がどんどん辞めていくどこの医療機関も医師確保に苦労している地域枠で入学した医師はまず不足地域で働くべき身近で医療崩壊が起こっている若い医師の派遣がない●医療そのものの問題医師の就業環境が劣悪すぎるしばらくは高齢者が増加するため、医師が必要になるのは明らか医師の絶対数がやはり不足「2 実感できない」回答のコメント偏在は実感できるが、医師の絶対数が不足しているとは思えない医療の現場で感じる実感と違うが、将来は不足すると思う医師の不足よりも、フリーアクセスや自己負担が少ないことによる過剰受診が問題表面上の数字よりも医師の雑用や勤務内容などの改善が先だと考える厚生労働省の統計はうのみにできない人口過疎地に医療だけ充実させても解決にはならない人口そのものも偏在があるのではないか医師不足県にいるが、実際周囲で医師が不足しているとの声は聞かれない産婦人科や小児科は頭数ではなく、当直や緊急対応ができるか否かが問題コンビニ出店並のクリニック密集地域に住んでいるので実感がない意外にも「内科」も医師不足Q3で「医師不足だと思う診療科」を尋ねたところ、多い順番で「産婦人科」(175)、「外科」(155)、「小児科」(139)、「内科」(136)、「救急科」(119)の順だった。「内科」の回答が多かった点、ひと頃問題になった「麻酔科」を挙げる会員医師が少なかった点から現場のニーズが垣間見られた。Q3 現在、医師が不足していると思う診療科をお選びください。(回答はいくつでも)1 内科2 小児科3 皮膚科4 精神科5 外科6 整形外科7 産婦人科8 眼科9 耳鼻咽喉科10 泌尿器科11 脳神経外科12 放射線科13 麻酔科14 病理科15 救急科16 形成外科17 リハビリテーション科18 その他19 不足していると思う診療科はない画像を拡大する必ずしも医師数増加だけでない解決策もあるQ4で「医師不足・偏在」への解決策について尋ねたところ、多い順に「病院・診療所・クリニックの適正配置」(155)、「診療報酬で地域差を設ける」(119)、「医師の就業の流動性」(107)の順だった。医師への待遇改善と偏在をなくすことで解決できる内容が多くを占めた。また、「8 その他」へ寄せられた提言として、「医師免許の全国区と地域区の2本立て化」、「女性医師の待遇改善」、「患者数の多い診療科の報酬減」、「患者の受診への意識改革と啓発」などの声が寄せられた。Q4 医師不足や偏在の解決には何が必要だと思われますか。(回答はいくつでも)1 医学部の定員増員2 医師の就業の流動性3 専門医制度の改革4 病院・診療所・クリニックの適正配置5 患者の診療抑制の実施6 診療報酬で地域差を設ける7 外国人医師や医師以外の医療者の活用8 その他画像を拡大する「8 その他」で寄せられたコメント(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)●医師や専門医資格への提言地方に魅力ある教育病院を設置し、若手医師を勤務させる地方医師の専門医更新の免除医師国家試験の合格基準を2段階とし、上位は全国区免許、下位は医師不足県限定免許とする。診療実績で全国区免許へ格上げする女性医師の待遇を改善する医師不足が指摘されている診療科へ進む医師へのメリットを増やす勤務医の所得を増やす医学部の地域合格枠の拡大と地域義務年限の引き上げ医師のボランティア的な仕事に対しての十分な報酬適切な人材を医師にすること●医療制度や診療報酬への提言地域枠への補助金制度を直接医師に支払う急性期病院の内科・外科の診療報酬を上げる患者数が多い診療科の診療報酬を削減する開業医を減らす方策、たとえば勤務医の給与控除を増やす医局制度の復活と強制的な医師のローテーション応召義務の廃止都会の大学医学部の統廃合または自治医大化医師の強制配置●社会への提言医師法など時代に合わせたフレキシブルな改正患者の受診への意識改革と啓発アンケート概要内容「現在・将来の医師不足、偏在についてお聞かせください」実施日2019年2月20日調査方法インターネット対象ケアネット会員医師340名アンケート調査にご協力いただき、ありがとうございました。関連記事推計1万6,226人の内科医が2030年に不足16県が医師少数、改正医療法で是正となるか?

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日本人の進行NSCLC患者に対するニボルマブ治療における転移臓器が治療奏効に与える影響

 これまで、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるニボルマブの効果予測因子として、臨床的に有意な転移部位についての詳細はわかっていなかった。今回、大阪国際がんセンターの田宮 基裕氏らにより、わが国の3施設において、2015年12月17日~2016年7月31日(フォロー期間は2017年3月31日まで)にニボルマブで治療された全症例が後ろ向きに抽出され、効果予測因子の検討が行われた。 その結果、ニボルマブによる治療を受けた進行NSCLC患者では、肝および肺への転移と全身状態(PS)不良の状態が、無増悪生存期間(PFS)中央値の短縮と関連していることが示唆された。PLoS ONE誌2018年2月22日号に掲載。 本試験では、大阪国際がんセンター、大阪はびきの医療センター、近畿中央胸部疾患センターから合計201例の患者が登録された。ニボルマブ投与時の年齢の中央値は68歳(27~87歳)で、135例が男性だった。全症例のうち、157例で喫煙歴があり、153例でPSが0か1、42例が扁平上皮がんで、37例がEGFR変異を有していた。この試験の追跡期間中央値は12.2ヵ月だった。 主な結果は以下のとおり。・全患者におけるPFS中央値は2.86ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.01〜3.62)だった。性別、喫煙状況、扁平上皮/非扁平上皮、胸部リンパ節・脳・骨転移の状況、および悪性胸水の状況による差はなかった。・ECOG PS 0〜1でのPFS中央値は3.25ヵ月(95%CI:2.47~4.64)、PS2以上では1.48ヵ月(同:1.12~3.12)だった(p<0.001)。・肝転移なし群でのPFS中央値は3.25ヵ月(95%CI:2.66~4.50)、肝転移群では1.15ヵ月(同:1.05~1.51)だった(p<0.001)。・肺転移なし群でのPFS中央値は3.52ヵ月(95%CI:2.47~5.92)、肺転移あり群では2.27ヵ月(同:1.61~3.32)だった(p<0.01)。・多変量解析の結果、PS2以上におけるハザード比[HR]は1.54(95%CI:1.05~2.25;p<0.05)、肝転移のHRは1.90(95%CI:1.21~2.98;p<0.01)、肺転移のHRは1.41(95%CI:1.00~1.99;p<0.05)であり、それぞれの因子は、統計学的に有意に短いPFSと、独立した相関が認められた。 以上の結果より、肝転移・肺転移・PS不良は、進行NSCLCがんに対するニボルマブ治療において、独立した効果予測因子である可能性が示唆された。

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日本人の雇用形態と教育水準、LDL-Cに関連

 食事によるコレステロール摂取と血清コレステロールにおける良好な関係は、最近の一連のコホート研究によって疑問視されている。滋賀医科大学アジア疫学研究センターの岡見 雪子氏らは横断研究(INTERLIPID)を実施し、日本人における雇用形態と教育年数が、食事によるコレステロール摂取と血清低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)濃度との関係に、どのように関連するかを調査した。その結果、被雇用者ではなく教育水準の低い男性で、食事によるコレステロール摂取量の増加が血清LDL-C濃度の上昇と関連していた。また、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関が見られたことが明らかになった。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2019年2月1日号掲載の報告。 本研究では、40〜59歳の日本人1,145人のうち、106人(特別食、脂質異常症などの治療薬を使用、ホルモン補充療法の実施、およびデータ不足のため除外)を除く1,039人(男性:533人、女性:506人)を対象とした。食物からのコレステロール摂取は4回の24時間思い出し法(24HR)で評価、血清LDL-Cは酵素的分析法によって自動分析装置で測定した。アンケートでは、雇用形態と教育年数について回答を得た。 主な結果は以下の通り。・男性では、食事によるコレステロール摂取の1標準偏差(SD)上昇は、血清LDL-C濃度3.16mg/dL低下と関連していた(P=0.009;調整前モデル)。・共変量で調整後、血清LDL-Cは、被雇用者ではない男性(自営業者、専業主夫、農家、漁師、および定年退職者)、教育水準の低い男性では、コレステロール摂取量の1SD上昇ごとに、血清LDL-C濃度の上昇が認められた(β:+9.08[95%信頼区間【CI】:+0.90~+17.27]、β:+4.46[−0.97~+9.90])。これに対し、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関がみられた(β:−3.02[−5.49~−0.54]、β:−3.66[−6.25~−1.07])。■参考INTERRIPD

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日本人学生のスマートフォン使用とうつ病リスク

 椙山女学園大学の西田 友子氏らは、高校生の男女ごとのスマートフォン使用とうつ病との関連性について評価を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2019年1月26日号の報告。 日本の15~19歳の高校生295人を対象に、自己管理質問票を用いて、横断的研究を実施した。うつ病は、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・女性は、男性と比較し、1日のスマートフォン使用時間が長かった。・スマートフォン使用時間が1日3時間であった割合は、女性で44.3%、男性で22.5%であった。・女性では、オンラインチャット、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、インターネット閲覧に長時間費やしていた。・長時間のオンラインチャット(オッズ比:1.74、95%CI:1.18~2.56)およびSNS(オッズ比:1.41、95%CI:1.04~1.92)使用は、うつ病との関連が認められた。・男性は、女性と比較し、ゲームに多くの時間を費やしていた。・男性では、スマートフォン使用とうつ病との関連は認められなかった。 著者らは「スマートフォン使用には性差があり、女性ではソーシャルコンタクト、男性では娯楽のためにより多くの時間を費やす傾向が認められた。女性がオンラインコミュニケーションを使い過ぎると、うつ病リスクが高まる可能性が示唆された」としている。■関連記事スマホ依存症になりやすい性格タイプ女子学生の摂食障害への有効な対処法日本人小中学生のインターネット利用とうつ病や健康関連QOLとの関連

20006.

研究助成の申請成功率、男女差の理由は/Lancet

 国や専門分野を超え、男性研究者は女性の同輩に比べ研究資金を得る機会が多いことを示す研究があるが、その多くは観察研究のため、この不均衡は女性研究者の力量によるのか、それとも提出された研究の質によるのかは明確でないという。カナダ・ラヴァル大学のHolly O. Witteman氏らは、同国の助成プログラムの審査基準が変更されたのを機に調査を行った。その結果、研究助成のジェンダーギャップは、主任研究者としての女性の力量の評価が好ましくないことに起因し、提出した研究の質の評価によるのではないことが示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年2月9日号に掲載された。2014年、カナダ健康研究所(CIHR)は、研究者主導の資金提供の申請を、主任研究者としての力量に重点を置く明確な評価の有無で、2つの新たな助成プログラムに分けた。2つの審査基準で、主任研究者の男女別の申請成功事例を比較 研究グループは、新たな助成プログラム導入の前後の2011~16年の期間に、CIHRによるすべての研究者主導の助成プログラムにおいて、主任研究者によって成された助成申請のうち、申請の成功事例について解析を行った(本研究は助成を受けていない)。 一般化推定方程式を用いて、同一申請者による複数の申請を評価し、異なる審査基準(旧プログラムと同様に主に研究計画を評価するものと、主に主任研究者の統率力や生産性などを評価するもの)の下で、男性と女性の主任研究者による申請の成功事例を比較した。 5年間に、2万5,706件の助成申請が行われた。このうち生年が1920年以前の主任研究者1,631人からの1,788件の申請を除外し、残りの7,093人の主任研究者(男性63%[申請時平均年齢52(SD 9)歳]、女性37%[50(SD 9)歳])による2万3,918件の助成申請を解析の対象とした。全体の成功率は15.8%、新旧とも研究の質に差はない 全体の助成申請の成功率は15.8%であった。年齢と研究領域で補正後の旧プログラムにおける予測成功率は、女性の申請が男性に比べ0.9ポイント低かった(95%信頼区間[CI]:2.0 lower~0.2 higher、オッズ比[OR]:0.934、95%CI:0.854~1.022)が、有意な差は認めなかった。 新たなプログラムにおける、提出された研究の質に重点を置いた審査では、旧プログラムと同様、成功率には0.9ポイントの差が維持されており(95%CI:3.2 lower~1.4 higher、OR:0.998、95%CI:0.794~1.229)、有意差はみられなかった。 これに対し、新プログラムの主任研究者の力量に重点を置いた審査では、女性の申請の成功率は男性に比べ4.0ポイント低く(95%CI:6.7 lower~1.3 lower、OR:0.705、95%CI:0.519~0.960)、この差は有意であった。 資金提供成功のオッズは、旧プログラムに比べ新プログラム、生物医学領域に比べ非生物医学領域、高齢申請者に比べ若年申請者で低い傾向がみられた。 著者は、「主任研究者として好ましくない評価が女性で生じる原因として、審査員側の意識的または無意識的なバイアスや、累積した不利益を反映した審査基準の形式上の体系的なバイアスの影響が考えられる。また、女性は自分の業績の説明に多くの言葉を費やさず、知的能力を自慢する傾向が低いことが報告されており、その影響があるかもしれない」と指摘し、「現在、好ましくない評価の原因の探索とともに、公正かつ厳格な査読(peer review)を育む戦略について議論を進めている」としている。

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セリチニブ、用法・用量変更で奏効率と安全性が向上/ノバルティス

 ノバルティス ファーマ株式会社は、2019年2月21日、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの治療薬セリチニブ(商品名:ジカディア)について、用法・用量を「450mg、1日1回食後投与」に変更するための製造販売承認事項一部変更承認を取得した。 セリチニブの用法・用量は、これまで「750mg、1日1回空腹時投与」であったが、主な副作用である悪心、嘔吐、下痢といった消化器症状が、治療継続の課題となっていた。今回、用法・用量が「450mg、1日1回食後投与」に変更されたことで、このような消化器症状の低減が期待される。 今回の承認は、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺がん患者267例が参加したASCEND-8試験の結果に基づいている。独立中央画像評価機関の判定による奏効率は、450mg食後投与群で78.0%(95%CI:62.4~89.4)、750mg空腹時投与群で70.0%(95%CI:53.5~83.)であった。 450mg食後投与89例中74例(83.1%)で認められた主な副作用は、下痢(50.6%)、悪心(34.8%)、ALT(GPT)増加(32.6%)、AST(GOT)増加(25.8%)、γ-GTP増加 (25.8%)、嘔吐(24.7%)等であった。750mg空腹時投与90例中82例(91.1%)で認められた主な副作用は、下痢(70.0%)、嘔吐(46.7%)、悪心(45.6%)、ALT(GPT)増加(30.0%) AST(GOT)増加(27.8%)、腹痛(22.2%)、疲労(20.0%)等であった。■関連記事ALK-TKIセリチニブの450mg食後投与を国内申請セリチニブ、食事との服用で有効性維持と毒性低減を両立(ASCEND-8)/WCLC2017

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C型肝炎ウイルス感染症にエプクルーサ配合錠発売

 ギリアド・サイエンシズは、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の成人患者、および直接作用型抗ウイルス療法(DAA)の前治療歴を有する慢性肝炎又は代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の患者に対する1日1回投与の治療薬「エプクルーサ配合錠」(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル)を2月26日に発売した。 本剤は、核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤ソホスブビル(商品名:ソバルディ、2015年3月承認)とNS5A阻害作用を有する新有効成分ベルパタスビルを含有する新規配合剤。日本における非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の成人患者に対する最初の治療薬であり、また難治性患者に対して新たな治療選択肢を提供できることとなる。<エプクルーサ配合錠の概要>●効能・効果前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善●用法・用量1. 前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善リバビリンとの併用において、通常、成人には、1日1回1錠(ソホスブビルとして400mg 及びベルパタスビルとして100mg)を24週間経口投与する。2. C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善通常、成人には、1日1回1錠(ソホスブビルとして400mg及びベルパタスビルとして 100mg)を12週間経口投与する。●発売日2019年2月26日●薬価1錠 60,154.50円■関連記事非代償性肝硬変を伴うC型肝炎に初の承認

20009.

要するにLAD(解説:今中和人氏)-1008

 本邦の初回冠動脈バイパス術の在院死亡率は1%台で安定し、PCIなど他の治療との比較にしても、オフポンプ手術にしても、グラフト素材にしても、論点はもっぱら長期予後である。本論文は、英国を中心とする28施設での冠動脈バイパス3,102例を、内胸動脈を1本(片側)使うか2本(両側)使うかでランダム化した前向き試験の10年報告である。バイパスは平均3本で、内胸動脈はいずれも左冠動脈系に吻合された。検討項目は全死因死亡、心臓死、心筋梗塞、脳卒中、再血行再建、周術期の出血と創感染である。 2016年の5年報告*では差がつかなかったが、内胸動脈の真価は10年成績で発揮されるはず。今度こそ「両側内胸動脈は予後が良い」と証明されるとの期待のもと、“intention to treat”で解析すると、両群とも全死因死亡20%(心臓死は6%)、心筋梗塞5%弱、再血行再建10%で、5年報告同様にまったく差がなかった(創感染は両側群が3.5%と有意に多い)。 想定外だったためか、5年報告より随分掘り下げた議論が展開されている。 まず問題視されたのは、これは5年報告でも多少触れているが、クロスオーバー、つまり両側群の14%、約7例に1例が実際には内胸動脈を1本しか使っておらず(逆のクロスオーバーは2%台)、ランダム化が正しく機能しなくて術式同士の比較になっていないことである。 ところが、クロスオーバー症例を除いた“per-protocol”で比較しても、両群の予後はまったく同等だったのだ。大方の予測とも従来の観察研究とも真っ向から食い違う結果である。 そこで“as-treated”として示されたのが、橈骨動脈(RA)を内胸動脈と同等に扱ったデータ。両群とも約20%でRAを使用しているので、RAを使った症例は内胸動脈が1本でも2本でも動脈多用群とし、内胸動脈1本+静脈の症例と比較した。大いにbiasがありそうな、この“as-treated”の患者背景はわりと良くそろっており、予後も両群とも心筋梗塞や再血行再建はまったく差がなく、全死因死亡のみ有意差がついた(HR=0.81)。心臓死は明示されていない。わからなくもない群分けだが、RAについては内胸動脈に匹敵する成績の論文から静脈といいとこ勝負の論文まで幅広いので、同等扱いには違和感が残る。この件ではROMAという臨床研究が進行中だそうである。 ともかく当初の論点に戻ると、内胸動脈が片側でも両側でも冠動脈バイパスの10年予後に有意差はなかった。いろいろと考えさせてくれる論文である。 1つは冠動脈バイパスの良好な長期成績。術後も適切な内服加療を維持することで、1年以内の死亡(ほぼ心血管死であろう)2%程度を引くと、10年で心臓死が4%、再血行再建10%というのは、平均年齢63歳程度(白人が90%以上)、糖尿76%、心筋梗塞既往40%の患者群の予後として十分満足できると思われる。 もう1つは、今回は複数の観察研究と見解が異なるし、造影をしていない以上、推測の域を出ないが、10年経過して静脈グラフトはそれなりに閉塞しているはずでも、臨床的には差がなかったということは、要するにLADさえしっかり流れていれば、それ以外はあまりこだわっても仕方がないことを示唆している。とくに高齢者では、そうであろうと思われる。少なくともLADへのバイパスの質に影響しうるcompositeやsequential吻合は、できるだけ避けたほうが良いかもしれない。

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美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】

今回のキーワードDVモラルハラスメント恐怖罪悪感同情同調性ストックホルム症候群課題の分離みなさんは、交際相手や妻(または夫)から、ラインやメールの返事が遅いと毎回怒られますか? 居場所や行動を全て事前に伝えるというルールが強いられていますか? 携帯やパソコンを覗かれるのを許していますか? 実は、これらの束縛は全てDVやモラルハラスメントの可能性があります。とくに交際中の場合は、デートDVと呼ばれます。なぜ束縛するのでしょうか? 逆に、なぜ従ってしまうのでしょうか? そして、どうすれば良いでしょうか? これらの疑問を解き明かすために、今回は、従う心理をテーマに、映画「美女と野獣」を取り上げます。この映画を通して、「真実の愛」の裏に隠された教訓を知り、従う心理と従える心理を進化心理的に掘り下げ、より良いパートナーシップ、仕事関係、家族関係をいっしょに考えていきましょう。ストーリーで説かれた真実の愛の教訓は?ある美しくも薄情な王子が、罰として魔女の魔法によって野獣の姿に変えられてしまいます。その魔法が解かれるのは、バラの花びらが全て落ちる前に、誰かを心から愛し、そして愛されることでした。しかし、彼は、野獣の姿をした自分を愛する人などいるわけがないと嘆き、自分のこれまでの薄情な行いを悔やみます。そして、心を閉ざし、城にこもります。月日が流れ、やがて、ベルという美しい女性が城に迷い込みます。彼女は、城から逃げ出しますが、狼に襲われそうになったところに、野獣が身を挺(てい)して彼女を救います。その後、彼女は、野獣の優しく繊細な心の美しさに心惹かれていきます。同時に彼も彼女の聡明な心の美しさに惹かれていきます。そんな中、ガストンというベルに好意を寄せる村一番のハンサムで腕っぷしのある男性が、城に押しかけます。彼は、野獣を退治してベルを自分のものにしようとしていたのでした。しかし、ガストンがうぬぼれ屋で自分勝手なことをベルは見透かしていました。最後に、ガストンはいなくなり、ベルと野獣は結ばれます。すると、呪いは解けて、ベルの前には美しい王子が現れます。真実の愛が実ったという、とてもドラマチックな古典的名作です。それでは、まず、このストーリーのナレーションで説かれた真実の愛の教訓を、3つあげてみましょう。(1)見かけにだまされない1つ目は、「見かけにだまされない」ことです。野獣になる前の王子は、寒さをしのがせてくれと乞う、やつれた老女を見て冷たく突き放しています。また、ガストンは、ベルを手に入れるため、ベルの父親を見殺しにしようとしたり、平然とうそをついています。つまり、見かけの美しさによって、心の美しさを磨くことをおろそかにしてしまうということでもあります。(2)美しさは心にある2つ目は、「美しさは心にある」ことです。野獣は、見た目は怖いですが、心は優しく知的です。ベルは、読書家で村では変わり者で浮いた存在でしたが、とても賢く行動力があります。2人は相性が良いのです。お互いにその本質を見極めています。(3)心から愛し愛される3つ目は、「心から愛し愛される」ことです。ガストンは、ベルを自分の思い通りの女性にしようと一方的です。対照的に、野獣は、村にいる父親の身を心配するベルに「すぐに行ってやれ」と言います。ベルがいなくなると、もとの人間に戻れなくなることを野獣は覚悟しています。野獣は、ベルを愛しているからこそ、彼女を手放したのでした。その後に、城に戻ってきたベルは、ガストンに銃で撃たれようとする野獣を守ろうとします。野獣とベルは、自分のことよりも相手のことを考えています。なぜ従うの? ―「真実の愛」の裏に隠れた教訓このストーリーから、真実の愛とは、見かけではなく、心の美しさによって、愛し愛されることであるという教訓を学びました。ただし、メンタルヘルスの視点からは、さらに「真実の愛」の裏に隠れた教訓があります。つまり、このストーリーで説かれる「真実の愛」には、良さと同時に危うさもあります。それは、従う心理です。なぜ従うのでしょうか? ここから、その心理を3つに分けて、掘り下げてみましょう。(1)恐怖ベルの父親が城のバラを1本摘んだことを理由に、野獣は、盗みの罪として父親に終身刑を一方的に言い渡し、城に監禁します。それを知ったベルが自ら申し出て、父親の身代わりとして監禁されます。その後、ベルは野獣と一緒に食事をすることを拒むと、野獣は「私を拒むなら何も食わすな」と怒って召使いに言い放ち、ベルを脅しています。1つ目の従う心理は、最初、ベルが野獣に恐怖を抱いていることです。それは、殺されるかもしれないというレベルの恐怖です。風貌が野獣だからといって、このような振る舞いは人間として決して許されません。もともとのファンタジー仕立てが私たちの目を曇らせていますが、現実的に考えると、野獣がやっていることは、明らかに理不尽で不当です。法律的には、逮捕・監禁罪、強要罪、脅迫罪などが成立します。心理学的に言えば、この恐怖によって、服従の心理が意識的にも無意識的にも発動されると言えます。顔色をうかがい、腫れ物に触るようにビクビクして接したり、ご機嫌取りになります。なぜなら、そのほうが生き残る確率が高まるからです。逆に言えば、従わせる心理は、相手に恐怖を植え付ける怒りっぽさです。たとえば、殴る、蹴るなどの身体的な暴力、怒鳴る、叫ぶ、金切り声を上げる、些細なことで急に怒り出す、脅すなどの心理的な暴力、そして行動制限です。(2)罪悪感ベルは、父親の盗みの罪については申し訳なく思っています。また、自分が逃げ出したことで、結果的に野獣が大けがをしたため、負い目を感じて、野獣を連れて城に引き返しています。そして、野獣から「(自分が大けがしたのは)おまえが逃げたせいだ」と責められながら、献身的に野獣を看病します。ベルは「脅すから逃げたのよ」と言い返しますが、「(脅したのは、行くなと言った)西の塔へ行くからだ」とさらに責められます。最終的に、ベルは命がけで狼から救ってくれた野獣に感謝します。その後に、ベルは父親に会うため村に帰る許しを得て、野獣にまた感謝します。2つ目の従う心理は、その後、ベルが野獣に誤った罪悪感を抱いていることです。たとえどんなにひどい言いがかりだとしても、潜在的な恐怖によって、それを受け入れやすくなります。すると、罪悪感が芽生えてきます。よくよく考えると、自分を監禁していた野獣が痛手を負っているわけなので、実は逃げ切れる最大のチャンスでした。そうしないで、わざわざ引き返しています。さらに、野獣の看病までしています。また、ベルは野獣に感謝していますが、よくよく考えると、野獣はもとの人間に戻るためにベルに気に入られることが必要なので、ベルを救ったのは当然のことです。ベルがそれを知っていれば素直に感謝はできません。また、監禁がもともと不当であるため、それが解かれても感謝する必要は本来ありません。心理学的に言えば、この罪悪感によって、誤った感謝の心理が意識的にも無意識的にも発動されると言えます。たとえば、「ごめん」と「ありがとう」を同じ状況で使うことがあるように、罪悪感と感謝は背中合わせの心理とも言えます。逆に言えば、従わせる心理は、相手に罪悪感を植え付けるひがみっぽさです。たとえば、「あなたのせいだ」と責任を押し付けたり、「謝罪が足りない」「感謝が足りない」「あなたはだめな人だ」とけなすことです。(3)同情ベルは、日用品に姿を変えられた召使いたちから、「(最後の花びらが落ちると)ご主人様(野獣)はずっと野獣のまま、おれたちはアンティークになる」と教えられます。ベルは「助けてあげたい」「魔法を解く方法は?」と尋ねますが、「心配しなくていい」「自分たちの問題は自分たちで解決する」と言われ、神妙な顔になります。また、ベルが城から去る時、野獣は「時々、自分を思い出してほしい」と言って、願ったものが映る魔法の鏡を渡します。3つ目の従う心理は、やがてベルが野獣に行き過ぎた同情を抱くことです。野獣がけがで瀕死になって弱っている姿と相まって、「かわいそう」「気の毒だ」という気持ちが芽生えています。また、城に監禁していること以外については、野獣は、城の図書館を案内するなど、ベルに優しく接しています。やがて野獣がベルを城から解放したのも、ベルを愛していたからという見方もできますが、このままだとベルに心から愛されないと諦めたからという見方もできます。逆に、そうしたことで、ベルは野獣に心を許すようになります。さらに、野獣は、わざわざ魔法の鏡を渡して、自分のこれからも見てもらおうとあわよくばの同情を誘っています。心理学的に言えば、この同情によって、誤った好意の心理が意識的にも無意識的にも発動されると言えます。また、同情という共感により、監禁という身体的な近さだけでなく、心理的な近さも増していると言えます。これは、身体的にも心理的にも近ければ近いほどより親しみがより沸いてくる心理(社会的交換理論)につながります。逆に言えば、従わせる心理は、相手に同情を引き出す卑屈さです。たとえば、「自分はだめだ」「どうせ自分なんか」と自己否定したり、「自分はキレやすいから」「自分は不器用だから」「自分は弱いから」「自分は心配性だから」と言い訳がましいことです。これは、下手(したて)に出れば好感が持たれる心理(アンダードッグ効果)や、「寝てないアピール」「体調不良アピール」など自分から不利な状況を公言して同情や理解を得る心理(セルフハンディキャッピング)につながります。さらには、「自分はそういう人間」「あなたならそれを分かってくれるはず」と依存的になれば、相手から「自分なら助けられる」という心理を引き出せます(共依存)。従う心理 ―ストックホルム症候群王子は、魔女の魔法によって、野獣に姿を変えられました。そして、野獣とベルが結ばれたことで、魔法が解けました。ただ、先ほどの「真実の愛」の裏の従う心理は、もう1つの「魔法」とも言えそうです。これは、精神医学的には、ストックホルム症候群と呼ばれます。ストックホルム症候群は、1970年代にスウェーデンの首都ストックホルムで実際に起きた銀行強盗の人質立てこもり事件を語源としています。当時、2人の男性の銀行強盗が、4人の銀行員の人質とともに約40m2の金庫室の一室に6日近く立てこもりました。人質たちは無事に解放されましたが、奇妙なことに、その後に彼らが強盗たちをかばおうとして警察に非協力的になったのです。さらに驚くべきことに、人質の1人の女性は、もともとの婚約を破棄してまで、刑務所にいた犯人との関係を続けました。このように、ストックホルム症候群とは、誘拐や人質事件で監禁された被害者が加害者に連帯感や好感を持つ状態であると定義されます。その後、FBIは、ストックホルム症候群が生じる4つの前提条件を示しています。それは、(1)人質と監禁者が、狭い場所でほかから隔離されて長時間を過ごすこと、(2)人質が殺されるかもしれないという恐怖を抱くこと、(3)命が助かったのは監禁者のおかげだと感じること(感謝)、(4)監禁する点を除いては、監禁者が人質を優しく扱っていること(共感)です。(1)は、「美女と野獣」のストーリーの設定に重なります。(2)(3)(4)は、先ほどの「真実の愛」の裏の3つの危うい心理に重なります。また、FBIの調査によれば、ストックホルム症候群が生じるのは人質事件の被害者の8%であることが分かっています。人質事件などによる監禁自体がまれな状況であることを踏まえると、一般人の発症率や有病率としてはさらに低くなります。よって、ストックホルム症候群は、単独の病名として、WHOの診断マニュアル(ICD-11)やアメリカ精神医学会の診断マニュアル(DSM-5)には記載がありません。分類するとしたら、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の「向こう見ずな自己破壊的行動」、または解離性障害の「威圧的説得による同一性の混乱」などの診断基準が当てはまります。ただし、監禁という特殊な状況に限定しないと、実はとてもありふれた心理状態です。あまりにもありふれているので、逆に病的な状態であると本人たちに自覚されにくくなります。たとえば、夫からDVを受けている妻が、「本当は良い人」との理由で警察に協力することを拒むことです。さらには、DV容疑で拘留された夫のために、妻が保釈金を用意することです。また、親から虐待を受けている幼い子どもが、「ママ(パパ)が好きだから」との理由で親をかばうことです。高齢の親からモラハラを受けながら介護する家族(主に子ども)が、「見放したらかわいそう」との理由で、変わらず献身的に介護を続けることです。上司からパワハラを受けている部下が、「仕返しが怖い」「どうせ変わらない」との理由で、ハラスメントの窓口に行かないことです。なぜ従う心理は「ある」の?これまで、従う心理になぜなるのかというメカニズムをご紹介しました。それでは、そもそも従う心理はなぜ「ある」のでしょうか?それと対になる、従える心理と合わせて、その答えを進化心理学的に探ってみましょう。約6,500万年前に霊長類が誕生し、約2,000万年前には類人猿が誕生し、群れをつくりました。当時から、体格が良くて腕力のあるオスがボスとして偉そうに振る舞い、そうではないオスはヒラとしてかしこまって振る舞い、序列関係を維持する行動が進化しました(社会性)。約700万年前に人類が誕生して、男性(父親)は狩りをして、女性(母親)は子育てをして、助け合うことで家族をつくりました。300~400万年前にはアフリカの森からサバンナに出て、猛獣から身を守り、より大きな獲物を捕まえるために、家族同士が血縁関係で助け合うことで村をつくりました。当時から、夫婦、親子、親戚などの人間関係において、それぞれの相手とうまくやっていこうとする心理が進化しました(社会脳)。その1つが、周りに合わせようとする心理です(同調性)。これが、従う心理の起源です。従う心理とは弱いほうが強いほうに従うことであり、逆に従える心理は強いほうが弱いほうを従えることです。現代でも、同調圧力という言葉があるように、私達は、何となく強く言う相手に、振る舞いや考え方を意識的にも無意識的にも合わせようとします。そして、そのほうが、心地良く感じてしまいます。「長いものには巻かれろ」「勝ち馬に乗る」「勝てば官軍」という言い回しが分かりやすいです。とくに男女間の親密で閉じた二者関係において、従う心理と従える心理は高まりやすくなります。たとえば、従う心理としては、「尽くすのが愛」「何でも聞いてあげるのが愛」「まず相手が第一」「相手の気持ちを分かってあげて当然」「自分は何があっても付いていくべき」「自分の秘密を知らせる義務がある」などが挙げられます。一方、従える心理としては、「尽くされるのが愛」「何でも聞いてもらうのが愛」「まず自分が第一」「自分の気持ちを分かってくれて当然」「相手は何があっても付いてくるべき」「相手の秘密を知る権利がある」などが挙げられます。このように、進化的にも文化的にも、従う心理と従える心理は共に、男女をより結び付け、生存と生殖に有利に働く無意識の心理戦略になっていたと言えるでしょう。ただし、約200年前の産業革命により、個人主義や平等主義が広がりました。さらに、1990年以降の情報革命により、従う心理が強い人はDV、ハラスメント、ストーカーの被害者として社会的に認知され、本人に自覚されるようになりました。最近ではMeToo運動として注目もされています。一方、従える心理が強い人は、その加害者としての自覚がなかなか追い付いていないのが現状です。彼らが「そんなつもりはなかった」「愛があるから良いと思っていた」とよく言うように、従える心理が無意識的に強く発動していたとも言えるでしょう。これは、「逆ストックホルム症候群」と言えるかもしれません。どうすれば良いの?ストーリーは、ベルがお姫様になるというハッピーエンドです。ハッピーエンドだから、ベルがストックホルム症候群であろうとなかろうと良いじゃないかとも思われます。ただ、結末は本当にハッピーでしょうか? 問題は、さらに先の結末です。もともとベルを監禁していた王子(野獣)が、そのままでベルを大切にできるでしょうか? つまり、裏の結末は、ベルがDVやモラハラのリスクのある相手と結婚生活を送ることです。それでは、ベルと王子は、どうすれば良いでしょうか? ここから、従う心理を踏まえて、DVやモラハラを予防するために、パートナーシップとしてお互いが守るべきルールを3つ挙げてみましょう。(1)安全 ―相手を脅かさない野獣は、ベルを監禁した上に、会食を拒否されると、食事を与えないと理不尽に怒り、ベルを脅していました。そして、ベルは、恐怖を抱いていました。1つ目のルールは、相手を脅かさない、つまり安全です。相手が思い通りにならないことをはじめ、どんなことが理由でも、相手の安全を脅かすことは暴力です。そうならないためには、ベルが会食をすることと野獣が脅すことを切り離すことです。そして、ベルが会食に応じてくれるために、野獣は脅しではない別の対応をすることです。みなさんの中に、ベルは身代わりとして自分から監禁されることを望んだわけだから野獣は悪くないと考える人はいますでしょうか? ここで、最も強調したいのは、そもそもどんな理由であっても、たとえベルがどんなことをしても、ベルの安全を脅かすことをしてはいけないということです。つまり、相手の行動と自分の行動は別と考えることです(課題の分離)。相手のアクション(行動)は相手の課題です。相手のアクションに対して、自分がどういうリアクション(行動)をするかは自分の課題です。誰の課題かを分けることで、その行動の責任を誰がとるのかをはっきりさせることができます。たとえば、「手を上げたのは相手が自分を怒らせたからだ」、または「自分を怒らせた相手も悪い。悪いのは自分だけじゃない」と言う人がいます。この理屈は成り立つでしょうか? まったく成り立たないです。なぜなら、暴力を振るうか振るわないかは100%自分の課題だからです。自分の課題は、暴力じゃないリアクションをすることです。その刺激となった相手の行動については、相手の課題として、また別に話し合いをすることが必要です。また、別れを切り出された時に、「別れるなら殺すよ」と言う人も同じです。以上のように、相手を脅かすことは、殴る、蹴るなどの身体的な暴力だけでなく、怒鳴る、叫ぶ、金切り声を上げる、些細なことで急に怒り出す、脅すなどの心理的な暴力も挙げられます。よって、自分が従わせる心理を抑えるためには、怒りっぽさをまず自覚することです。逆に、自分が従う心理を抑えるためには、まず恐怖を自覚して、「あなたが怖いです」「それはDVです」と相手に理性的に伝え、やめてもらうことです。(2)自尊心 ―相手をけなさない野獣は、自分が大けがをしたのは、ベルが脱走したからだとひがみっぽく責めていました。そして、ベルは罪悪感を抱いていました。2つ目のルールは、相手をけなさない、つまり自尊心です。自分がうまくいかなかったことを理不尽に相手のせいにしたり、そもそも相手の欠点をけなすことはモラハラです。よって、そうならないためには、野獣が大けがをしたこととベルが脱走した意図を切り離すことです。野獣が大けがをしたのは、野獣が狼からベルを守るという行動を自ら選んだからです。それ自体はすばらしいことです。確かに、ベルの脱走は野獣が大けがをするきっかけにはなりましたが、ベルは頼んでいないですし、ましてや仕向けてもいないです。野獣に大けがをさせるつもりは、ベルにまったくないです。つまり、相手の行動と相手の気持ちは別と考えることです。たとえば、「大丈夫って言ったけど、本当は大丈夫じゃなかった。それを察しなかったあなたが悪い」と言う人がいます。この理屈は成り立つでしょうか? 成り立たないです。なぜなら、大丈夫ではなかった責任は、大丈夫と言って助けを不要とした自分自身にあるからです。自分の言動は自分の責任です。そのほかとしては、「気が利かない」「察してくれない」「その努力が足りない」と繰り返し相手をなじることです。また、「俺がこんなにしてあげてるのに」「私がこんなにあなたのことを思ってるのに」と恩着せがましく見返りを求めることです。さらに、「俺のことを大事にしていない」「あなたの私を好きっていう気持ちに心がこもっていない気がする」と、抽象的なことについて問い詰めることです。ちなみに、別れる時には「今までの時間とお金を返して」と迫ることです。気が利くか、察するか、大事に思うか、心をこめるかなどの相手の気持ちは、相手の「持ちもの」です。相手が感じることを、自分が指図することはできません。相手の気持ちを支配しようとすることはモラハラです。「気持ちをくんでくれたらうれしい」と自分の気持ちを伝えることはできますが、相手がそれをするかしないか、できるかできないかは相手の課題であり、自分の課題ではないです。自分の課題としては、相手にしてほしい行動があるなら、まず具体的に説明してお願いすることです。それをどう感じるか、どうするか決めるのは相手の課題です。以上のように、相手をけなすことは、「あなたのせいだ」と理不尽に責任を押し付けるだけでなく、「申し訳なさが感じられない」「感謝が足りない」「あなたはだめな人だ」とおとしめることも挙げられます。よって、自分が従わせる心理を抑えるためには、まずひがみっぽさを自覚することです。逆に、自分が従う心理を抑えるためには、まず謝った罪悪感を自覚して、「それは理不尽です」「それはモラハラです」と相手に理性的に伝え、やめてもらうことです。(3)自由 ―相手を縛らない野獣は、自分の境遇に卑屈になっていました。そんな野獣に、ベルは同情を寄せて城にとどまっていました。しかし、野獣の愛の告白に対して、ベルは「自由がないのに幸せになれる?」と漏らしています。3つ目のルールは、相手を縛らない、つまり自由です。自分を愛してもらうために、相手の自由を縛ることは、束縛というDVです。確かに、野獣はやがてベルに親切で優しくしており、安全は守られるようになりました。しかし、監禁を続けている点では自由が侵害されています。そうならないためには、自分を愛してもらうことと相手の自由を縛ることを切り離すことです。そして、野獣は最初からベルの自由を侵害しない別の形で、気に入ってもらうアプローチをすることです。つまり、自分の行動と自分の気持ちは別と考えることです。たとえば、「私は心配性。あなたのことが心配だから、私はあなたのLINEの履歴を全部見る権利がある」と言う人がいます。この理屈は成り立つでしょうか? 成り立たないです。なぜなら、いくら心配だからと言って、相手のプライバシーを侵害することはDVに当てはまるからです。また、自由の侵害に抵抗された場合、「私の気持ちはどうなるの?」「そう考える私の自由はないの?」とさらに言う人もいます。もちろん、自分にどんなことでも考える自由はあります。ただし、相手の自由を縛る行動をしてしまうこととは別にするということです。相手には相手自身の行動を自己決定する自由があります。別れを切り出された時に、「俺は納得していない」「俺の気持ちはどうなるんだ?」と言う人も同じです。これは、ストーカーの心理です。そして、その後に相手から無視された場合は、「俺に逆らうのか?」とストーカー殺人に発展することすらあります。また、「別れると死ぬよ」「それくらい私はあなたを愛している」と言う人も同じです。これは、いわゆる「狂言自殺」の心理です。自分が納得できないことをはじめ、どんな理由があろうとも、相手の気持ちが離れているなら関係は終わりであるということです。そのほかとしては、冒頭にも触れましたが、LINEやメールの返事が遅いと怒る、居場所や行動を全て事前に伝えるというルールを押し付ける、携帯やパソコンをのぞくなどです。さらには、スマホにGPSアプリを入れるよう迫る、交友関係や服装に口出しなどもあります。以上のように、相手を縛ることは、「自分はだめだ」「どうせ自分なんか」との自己否定や、「自分はキレやすいから」「自分は不器用だから」「自分は弱いから」「自分は心配性だから」と言い訳がましいことから始まります。よって、自分が従わせる心理を抑えるためには、まず卑屈さを自覚することです。逆に、自分が従う心理を抑えるためには、まず行き過ぎた同情を自覚して、「それは束縛というDVです」と相手に理性的に伝え、やめてもらうことです。「真実の愛」とは?このストーリーで説かれる真実の愛の教訓は、それ自体はすばらしいです。最後に、今回ご紹介したその裏に隠された教訓を重ねてみましょう。それは、怒りっぽさ、ひがみっぽさ、卑屈さの「見かけにだまされない」ことです。恐怖、誤った罪悪感、行き過ぎた同情という従う心理をよく理解した上で「心から愛し愛される」ことです。そして、安全、自尊心、自由をお互いに守る「美しさは心にある」ということです。この映画を通して、「真実の愛」をよく理解することで、古典的名作の奥深さを知るだけでなく、より良いパートナーシップ、さらにはより良い仕事関係や家族関係も築くことができるのではないでしょうか?1)みんなが知らない美女と野獣:セレナ・ヴァレンティーノ、講談社、20172)デートDV予防学:伊田広行、かもがわ出版、20183)あなたも心理学者!:ジョエル・レヴィー、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2015

20011.

第27回 特養での配薬与薬ミスを防ぐ9つの鉄則【週刊・川添ラヂオ】

動画解説多くの高齢者が入所する特別養護老人ホームでは薬の配り間違いや、飲み間違いが少なくありません。今回から3週にわたり特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドラインをもとに、配薬与薬ミスの予防についてお話しします。まずは特養での投薬時、薬を与える患者さんの顔を一人ひとりちゃんと見ていますか?看護師さんと処方せんだけを確認してダンボールで届けるだけなんて言語道断です!

20012.

Dr.倉原の呼吸にまつわる数字のはなし

意味がわかる、使いこなせる、「なるほど!」になる誰かに話したくなる呼吸のプチトーク44。ちょっと意外で、でもナットクの数字たちを紹介します。日常のケア・診療で身近な「呼吸不全診断のためのPaO2値」から、考えたこともなかった「呼吸器疾患で長い病名の文字数」まで、Dr.倉原が繰り出す呼吸の“数字学”。あなたはどこまで知っていますか? 日々の臨床に役立つ知識が自然に身につく一冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    ナース・研修医のためのDr.倉原の呼吸にまつわる数字のはなし定価2,000円 + 税判型A5判頁数176頁発行2019年2月著者倉原 優(国立病院機構 近畿中央呼吸器センター 内科)Amazonでご購入の場合はこちら

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強直性脊椎炎に新たな治療薬

 2019年1月30日、ノバルティスファーマ株式会社は、同社が製造販売(共同販売:マルホ株式会社)するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が、昨年12月21日に指定難病である強直性脊椎炎への効能効果の追加承認を取得したことから都内でメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、強直性脊椎炎の概要のほか、患者を交えてパネルディスカッションが行われ、医療者、患者双方から診療の課題などが語られた。強直性脊椎炎の付着部炎症への治療に注目 はじめに「強直性脊椎炎(AS)の病態と新たな治療選択肢~IL-17阻害薬~」をテーマに亀田 秀人氏(東邦大学医学部 内科学講座 膠原病学分野 教授)を講師に迎え、ASの診療概要とセクキヌマブの効果について解説が行われた。 ASは、脊椎関節炎の中でも体軸関節の炎症が主体となる代表疾患であり、リウマチなどと比較しても、若年での発症が多いとされている。また、「本症はHLA-B24の白血球の型が関係していると推定され、この陽性者はわが国で3万人程度と推計されているが、本症の指定難病受給者証所持者は3千人程度にとどまっている。陽性者イコール発症するわけではないが、見過ごされている患者もいる」と亀田氏は指摘する。 診断では、1984年の改訂ニューヨーク基準が使用され、3つの臨床基準とX線検査基準とでASを確定診断する1)。日常診療では、炎症性背部痛とくに腰痛の兆候が重要所見であり、画像診断ではX線とMRIで行うが、MRIの方が仙腸骨の描出が優れていると診断でのポイントを語った。また、ASでは腱や靭帯の付着部の炎症が起こるとされ、痛みを伴い、患者のQOLを著しく低下させ、こうした痛みの管理も必要とされる。 ASの治療目標としては、根治療法が現在ない以上、疾患との共生にむけ、「病状のコントロール、構造破壊の予防、身体機能の正常化を通じて、健康に関連したQOLと社会参加を最大にする」ことが挙げられる。 治療では、薬物療法と運動・理学療法が主体となり、痛みにはNSAIDsが、体軸の炎症には生物学的製剤であるTNF阻害薬などが使用される。また、患者には、疾患への教育と運動の励行、そして、禁煙なども指導される。 とくに薬物療法では、付着部炎症への治療が注目され、IL-17Aが炎症反応に関与する免疫応答に関わることから抗IL-17A抗体製剤の開発が行われてきた。開発されたセクキヌマブは、当初、乾癬の適応から始まり、海外と国内で2つの第III相二重盲検比較試験(MEASURE1およびMEASURE2)が行われ、今回適応に強直性脊椎炎が追加された。 MEASURE1は、活動性AS患者を対象に有効性と安全性を評価する2年間の多施設共同、ランダム化、プラセボ対照、第III相臨床試験。主要評価項目は、ASAS20反応基準で20%以上の改善を達成した患者の割合を指標とし、16週時点のプラセボに対するセクキヌマブの優越性を評価(プラセボ群に割付けられた患者は、16週時点のASAS20反応率に基づき、非反応例は16週、反応例は24週目にセクキヌマブ75mgまたは150mg投与に再割付)。 その結果、16週の時点での ASAS20達成率は,セクキヌマブ皮下投与 150mg群、75mg群、プラセボ群でそれぞれ 61%、60%、29%であった(P<0.001)ほか、患者の約80%で、208週間の治療を通して投与開始時と比較し、脊椎にX線像上の骨所見の進行を示されないことが示唆された(modified Stoke Ankylosing Spondylitis Spinal Score[mSASSS]X線評価尺度を指標)。安全性は良好で、重篤な有害事象では心筋梗塞、胆石症、腹部リンパ節膨脹などが報告されたが、薬剤と関連する死亡例は報告されなかった。また、MEASURE2もASAS20反応基準で20%以上の改善率、安全性ともにほぼ同様の結果が得られ、薬剤に起因する死亡例はなかった。 以上から、亀田氏は「ASは早期診断が難しい脊椎関節炎であり、画像検査の適切な活用が重要となる」と語るとともに、ASの病態では付着部炎が中心的な役割を果たしていることを指摘し、「付着部炎を誘導するIL-17Aを阻害するセクキヌマブのような新しい生物学的製剤は治療への有用性が高い」と述べ、講演を終えた。強直性脊椎炎への関心が高まることを期待 続いて町 亞聖氏をファシリテーターに、強直性脊椎炎患者の銭谷 有基氏、多田 久里守氏(順天堂大学 膠原病・リウマチ内科学 准教授)の3人が登壇し、同社が2018年9月に行ったアンケート調査結果などを基にパネルディスカッションが行われた。 はじめにアンケート調査結果が多田氏から報告され、7割以上の患者が確定診断まで2ヵ所以上の複数医療機関を受診していること、誤診として「ヘルニア」「腰痛症」などが多いこと、半数以上の患者が医師に症状を伝えるうえで(症状が一定化しないため)言葉にするのが難しいと感じていること、また半数の患者がASと診断されてほっとしていることなどが報告された(回答者はASと診断された男女103例/インターネット調査)。 この内容を受けて多田氏は「X線に変化が出づらく診断がつかないのが問題で、腰の痛みが指標となる。特徴的な腰痛と眼病変、皮膚の痛みから本症を疑うことができるかがカギとなる。患者は、痛みの量化、場所、表現の難しさから発信が難しいと思われるので『痛み日記』などをつけることで医療者に身体の状態を理解してもらう工夫ができる」と診療でのポイントを述べた。 また、強直性脊椎炎患者である銭谷氏からは、患者の思いとして周囲の友人や関係者へ自分の痛みを理解してもらうのが難しかったことで、精神的につらい思いをしたこと、患者・患者家族がよく病気を理解することが大切であることなどが語られた。 最後に多田氏からは「ASの診断ができるように医療者への啓発が大事。セクキヌマブの登場で本症への関心が高くなればと思う。誤診や過重診断がないように、迷ったら専門医へ紹介していただきたい」とコメントし、銭谷氏は「痛みと付き合っていき、同じ患者のために何かできればと思う」と抱負を述べ、パネルディスカッションを終えた。■参考文献1)van der Linden S, et al. Arthritis Rheum .1984;27:361-368.

20017.

血圧レベル別の脳卒中・冠動脈疾患死亡の生涯リスク~EPOCH-JAPAN

 生涯リスク(lifetime risk、以下LTR)は、生涯に対象疾患を罹患する確率であり、長期的な絶対リスクを示す。アジア人集団において、詳細な血圧分類別の脳卒中死亡および冠動脈疾患(coronary heart disease、以下CHD)死亡のLTRを算出した研究は存在しない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の個人レベルのデータを統合した大規模統合データベースEPOCH-JAPANを用いたことにより、血圧レベル別の脳卒中死亡およびCHD死亡のLTRが明らかになったことを、東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らが報告した。本研究で算出されたLTRは、とくに10年間の循環器疾患死亡率が低い若年の高血圧患者に対して、早期の生活習慣是正と降圧治療開始の動機付けに役立つだろう、と結論している。Hypertension誌2019年1月号に掲載。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、13コホート、10万7,737人の日本人(男性42.4%、平均年齢55.1歳)が含まれた。・平均追跡期間15.2±5.3年(155万9,136人年)の間に、脳卒中で1,922人が死亡し、CHDで913人が死亡した。・アウトカム以外の死亡を競合リスクとして調整後、35歳時点の脳卒中死亡およびCHD死亡の10年リスクは、それぞれ1.9%以下および0.3%以下であった。・35歳時点の脳卒中死亡LTR(男性/女性)は、至適血圧群で6.1%/4.8%、正常血圧群で5.7%/6.3%、正常高値血圧群で6.6%/6.0%、I度高血圧群で9.1%/7.9、II度高血圧群で14.5%/10.3%、III度高血圧群で14.6%/14.3%であった。・CHD死亡LTRも、血圧の上昇とともに高値を示したが、脳卒中死亡LTRよりも低かった(7.2%以下)。・脳卒中またはCHDによる死亡のLTRは、基準年齢が若年ほど高値を示した。

20018.

重度の精神疾患患者における脂質異常症と抗精神病薬に関するメタ解析

 重度の精神疾患患者は、抗精神病薬の悪影響に関連している可能性のある代謝系の問題への罹患率やそれに伴う死亡率の上昇を来す。第2世代抗精神病薬(SGA)は、第1世代抗精神病薬(FGA)と比較し、脂質代謝異常とより関連が強いと考えられているが、このことに対するエビデンスは、システマティックレビューされていなかった。英国・East London NHS Foundation TrustのKurt Buhagiar氏らは、重度の精神疾患患者における脂質異常症リスクについて、SGAとFGAの評価を行った。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2019年1月24日号の報告。 主要な電子データベースより2018年11月までの研究を検索した。対象研究は、重度の精神疾患患者に対するSGAとFGAを直接比較し、脂質代謝異常を主要アウトカムまたは第2次アウトカムとして評価した横断研究、コホート研究、症例対照研究、介入研究のいずれかとした。エビデンスは、PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)ガイドラインに従ってレビュー、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・18件の研究が抽出された。・SGAとFGAにおける脂質異常症の報告は矛盾しており、研究間のばらつきが大きく、完全な定性的合成のみが実行可能であった。・クロザピン、オランザピン、リスペリドンについては、限られたメタ解析を実施するに十分なデータがあった。各薬剤ともに、FGAと比較し、脂質異常症の事例性(caseness)との関連が少し高かったが、異質性の高さが認められた(すべてI2>50%、p<0.05)。 ●クロザピン(オッズ比:1.26、95%信頼区間[CI]:1.16~1.38) ●オランザピン(オッズ比:1.29、95%CI:0.89~1.87) ●リスペリドン(オッズ比:1.05、95%CI:0.80~1.37)・クロザピンは、トリグリセリド増加とも関連が認められたが(標準平均差:0.51、95%CI:0.21~0.81、I2>=5.74%)、コレステロールとの関連は認められなかった。・オランザピンとリスペリドンは、ハロペリドールと比較し、コレステロールまたはトリグリセリドの統計学的に有意な増加との関連が認められなかった。 著者らは「研究デザインや方法論には、かなりの違いが認められた。抗精神病薬による脂質代謝異常への影響におけるSGAとFGAの相対リスクを決定するには、薬剤ごとにさまざまな悪影響を引き起こす可能性があるため、臨床的に明らかにすることは難しい可能性がある。したがって、SGAかFGAかの焦点を当てるよりも、特定の抗精神病薬の脂質代謝リスクを考慮することが重要である」としている。■関連記事非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析

20019.

心不全は非心臓手術後の死亡リスクを増大/JAMA

 待機的非心臓手術を受けた心不全患者は、症状の有無にかかわらず、同様の手術を受けた非心不全患者に比べ術後90日死亡リスクが有意に高いことが、米国・スタンフォード大学のBenjamin J. Lerman氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年2月12日号に掲載された。心不全は、術後死亡の確立されたリスク因子であるが、左室駆出率(LVEF)や心不全の症状が手術アウトカムに及ぼす影響は、いまだ十分には知られていないという。後ろ向きコホート研究の約61万例のデータを解析 研究グループは、さまざまな心エコー所見(左室収縮機能不全)および臨床上(症状)の重症度を呈する心不全患者の非心臓手術後の死亡リスクを非心不全患者と比較し、手術の複雑さの程度でリスクに差があるかについて検討を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 米国のVeterans Affairs Surgical Quality Improvement Projectのデータベース(2009~16年)を用いて、待機的非心臓手術を受ける成人患者を対象とした後ろ向きコホート研究のデータを収集した。 合計60万9,735例の診療記録を同定し、術後1年間のフォローアップのデータを解析した。主要アウトカムは術後90日死亡とした。 心不全の病歴を有する患者は4万7,997例(7.9%、平均年齢68.6[SD 10.1]歳、1,391例[2.9%]が女性)であり、非心不全患者は56万1,738例(92.1%、59.4[13.4]歳、5万862例[9.1%])であった。粗死亡率:非心不全1.22%、心不全5.49%、有症状10.11%、無症状4.84% 術後90日時の粗死亡率は、心不全患者が5.49%(2,635例)、非心不全患者は1.22%(6,881例)であり、多変量で補正した術後90日死亡率は心不全患者が有意に高かった(補正後絶対リスク差[RD]:1.03%、95%信頼区間[CI]:0.91~1.15%、補正後オッズ比[OR]:1.67、95%CI:1.57~1.76)。 非心不全患者と比較した心不全症状の有無別の術後90日死亡リスクは、症状を呈する心不全患者(粗死亡率:10.11%[597/5,906例]、補正後絶対RD:2.37%、95%CI:2.06~2.57%、補正後OR:2.37、95%CI:2.14~2.63)、および無症状の心不全患者(4.84%[2,038/4万2,091例]、0.74%、0.63~0.87%、1.53、1.44~1.63)のいずれにおいても有意に高かった。 また、非心不全患者に比べ、無症状で左室収縮機能が保たれた(LVEF≧50%)心不全患者(粗死亡率:4.42%、補正後絶対RD:0.66%、95%CI:0.54~0.79%、補正後OR:1.46、95%CI:1.35~1.57)、および心不全症状がみられ、重度左室収縮機能不全(LVEF<30%)の心不全患者(14.91%、5.87%、5.30~6.44%、3.67、2.98~4.52)でも、術後90日死亡リスクが上昇していた。心不全と術後死亡率の関連は、30日、90日、1年の時点でほぼ同様であった。 一方、粗死亡率および心不全-死亡関連の双方には、手術の複雑度の違いによって有意な差が認められた。心不全患者の術後90日時の粗死亡率は、手術の複雑度が標準の場合は4.62%、中等度では6.26%、高度では10.34%であり、非心不全患者ではそれぞれ0.66%、1.89%、6.19%であった。心不全患者と非心不全患者の補正後絶対RDは、複雑度が標準の手術では1.29(95%CI:1.22~1.37)、中等度では1.69(1.48~1.94)、高度では1.80(0.08~3.60)だった。 著者は、「これらのデータは、非心臓手術を受ける心不全患者との術前の話し合いの際に有益となる可能性がある」としている。

20020.

性差の記述、生物医学研究で依然少ない/Lancet

 臨床医学や公衆衛生学では性差関連報告を含む論文が増えているが、生物医学研究の分野では依然として少なく、筆頭および最終著者が女性の論文は性差関連の記述を含む確率が高いことが、米国・インディアナ大学のCassidy R. Sugimoto氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2019年2月9日号に掲載された。性差は、遺伝学、細胞学、生化学、生理学的なレベルで存在することが、臨床および前臨床研究で示されているが、医学研究の対象への女性の組み入れは不十分とする多くの調査結果がある。医学研究への組み入れの男女間の格差は、その研究結果の、集団全体における効用性を著しく低下させる。一方、女性研究者の不足も指摘されているが、科学における女性の不足が、研究への組み入れや研究報告における男女格差と関連するかを評価した調査はほとんどないという。性差関連報告の推移、その著者のジェンダーとの関係性を検討 研究グループは、生物医学研究から臨床医学、さらに公衆衛生学に及ぶ健康科学全般の論文において、性差に関連する報告(sex-related reporting)はどの程度行われているか、および性差関連報告において著者のジェンダーはどのような役割を担っているかについて、学際的な計量書誌学的解析を行った(Canada Research Chairsの助成による)。 1980~2016年の期間にWeb of ScienceとPubMedにインデックスが作成された1,150万件以上の論文を調査した。特定の性差関連のMedical Subject Headings(MeSH)を含む研究を抽出するためのキーワードとして、“sex-related reporting”を使用した。 さらに、2008~16年に発表された論文について、ジェンダー割り当てアルゴリズムを用い、筆頭著者および最終著者のジェンダーを、その氏名に基づいて割り当てた。筆頭著者および最終著者のいずれかのジェンダーが決定できない論文は除外した。論文は3つの専門分野(生物医学研究、臨床医学、公衆衛生学)に分類された。 記述統計および回帰分析を用いて、著者のジェンダーと性差関連報告の関係性を評価した。インパクトファクターの低い学術雑誌への掲載が多い 1980年1月1日~2016年12月31日の期間に、性差に関連する記述を含む論文は、臨床医学では59%から67%に、公衆衛生学では36%から69%に増加した。これに対し、生物医学研究では大幅に少ないままであり、2016年でも31%だった。 性差関連報告が最も多い専門分野は、生殖医学(97%)、産婦人科学(96%)、泌尿器科学(83%)であり、最も少ないのは血液学(49%)、免疫学(42%)、薬学(24%)などの細胞や生化学に重点的に取り組む臨床医学の分野であった。 筆頭著者または最終著者が女性であることと、性差関連報告には正の相関がみられ、いずれの著者も女性の論文は性差の記述の確率が最も高く、オッズ比(OR)は1.26(95%信頼区間[CI]:1.24~1.27)であった。著者数も性差の記述と関連し、著者が2倍になると性差関連報告のORは1.96(1.94〜1.97)となった。 また、性差関連の記述のある論文は記述のない論文に比べ、インパクトファクターの低い学術雑誌に掲載される傾向が強かった。たとえば、2016年の出版物では、女性と男性の双方の記述がある論文は、掲載された学術雑誌のインパクトファクターが-0.51(95%CI:-0.54~-0.47)と低かった。 著者は、「科学の現場におけるジェンダー格差や、学術雑誌および組織レベルの性差関連報告に関する施策の欠如は、基礎研究から臨床研究への効率的な橋渡し(translation)を阻害する可能性がある」とし、「厳格かつ有効性の高い医学研究を生み出すには、科学の現場および研究対象集団(細胞株からげっ歯類、そしてヒトまで)における多様性がきわめて重要である」と指摘している。

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