10.
<先週の動き> 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省厚生労働省は8月28日、インフルエンザが全国的な流行シーズンに入ったと発表した。8月17~23日の第34週に全国約3,000ヵ所の定点医療機関から報告された患者数は4,094人、定点当たり1.11人となり、流行開始の目安である1.00人を上回った。感染症法施行後の1999年以降では、前年から流行が継続していた2023年を除き、2009年に次いで2番目に早い流行入りで、昨年の第39週より5週早い。全国の定点当たり報告数は第30週0.24人、第31週0.37人、第32週0.52人、第33週0.69人、第34週1.11人と、7月下旬以降増加が加速している。都道府県別では沖縄県4.43人が最多で、岩手県2.10人、青森県2.08人、神奈川県1.99人、埼玉県1.83人、千葉県1.80人などで高かった。東京都は1.49人で、患者の5割弱を10歳未満、8割弱を20歳未満が占めており、夏休み明けの学校・家庭内での感染拡大が懸念される。その一方で、愛知県は0.74人と現時点では流行開始目安を下回っている。厚労省の資料によると、第34週には全国約500ヵ所の基幹定点からインフルエンザによる入院患者167人が報告され、うちICU入室9人、人工呼吸器使用5人だった。高齢者や基礎疾患のある人では重症化リスクが高く、医療機関受診時や高齢者施設訪問時などにはマスク着用が推奨される。手洗い、咳エチケットなど基本的感染対策も重要となる。インフルエンザワクチンには発症抑制および重症化予防の効果があり、とくに高齢者や基礎疾患保有者への接種が重要とされる。定期接種の対象は(1)65歳以上の高齢者、(2)60~64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能障害やHIVによる免疫機能障害など(日常生活が極度に制限される障害)を有する者であり、新型コロナワクチンとの同日接種も可能である。 専門家は10月以降の速やかなワクチン接種を推奨している。また、新型コロナも同週に定点当たり1.18人と前週(1.12人)から増加傾向にあり、医療機関においては例年より早いインフルエンザ対応と重複流行への備えが求められる。 参考 1) インフルエンザの発生状況をお知らせいたします(厚労省) 2) インフルエンザ、全国で流行入り 2009年に次ぎ2番目の早さ(産経新聞) 3) インフルエンザが流行入り、1999年以降で2番目に早く・沖縄が最多…専門家「ワクチンを受けにいって」(読売新聞) 4) 昨年より5週早く、インフル流行開始目安到達東京都(CB news) 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体2027年3月から、OTC医薬品と同一成分などの医療用医薬品「OTC類似薬」について、患者に薬剤費の25%を特別料金として求める一部保険外療養制度が始まる。対象は2026年8月時点で77成分1,042品目(解熱鎮痛薬ロキソプロフェン、抗アレルギー薬フェキソフェナジン、保湿剤ヘパリン類似物質など)。残る75%部分には従来通り保険給付と自己負担が適用される。中間とりまとめでは、がん患者、指定難病患者、公費負担医療の対象者、入院患者、一定の長期使用などは条件付きで特別負担の対象外とする方針。ただし、がん治療終了後の短期・中期使用は扱いが曖昧で、患者団体から見直しを求める声が出ている。全国がん患者団体連合会は、乳房切除後疼痛症候群、リンパ浮腫に伴う疼痛、薬物療法後の関節痛や末梢神経障害、皮膚障害など、治療終了後にも鎮痛薬や外用薬、保湿剤などが必要となるケースを提示した。とくに問題となるのが「年間おおむね50週以上」とされる長期使用の判定である。同じ病態でも頓用・間欠投与となる患者では基準を満たさず、追加負担となる可能性がある。また、皮膚科や整形外科、かかりつけ医など、がん診療医以外が処方する場合に「がん治療との関連性」を判断しにくい点も指摘されているほか、処方時点で将来の使用期間を予測することも困難である。小児がん経験者は、治療終了後も内分泌障害や神経障害、心腎機能障害などの晩期合併症を長期間抱え、頓用薬を生涯使用する例もある。患者団体は、50週という期間だけでなく、治療歴、臓器機能、医師管理下での使用、代替可能性などを総合的に判断するよう求めている。厚労省は9月中に対象外となる患者の範囲などを取りまとめる予定。医療現場では、対象判定に加え、患者説明、処方箋・レセプト対応、システム改修も必要となるため、実務上分かりやすい基準作りが求められる。 参考 1) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(厚労省) 2) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ(同) 3) 全国がん患者団体連合会提出資料(同) 4) 対象外の範囲設定で「柔軟運用」求める声 医療保険部会 OTC類似薬の一部保険外療養巡る議論で(CB news) 5) 「OTC類似薬を使用する場合、患者特別負担がいくらになるのか」の具体例提示し、国民の不安を軽減せよ-社保審・医療保険部会(Gem Med) 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省厚生労働省は、2025年度の概算医療費(速報値)が前年度比2.6%増の49兆2,000億円となり、5年連続で過去最高を更新したと発表した。受診延べ日数は0.7%減少した一方で、医療技術の高度化や抗がん剤など高額薬剤の使用増加が医療費を押し上げた。増加率2.6%の内訳は、医療技術の高度化など「それ以外の影響」が2.9%増、高齢化の影響が0.6%増、人口増の影響が0.5%減、診療報酬改定などの影響が0.39%減となった。診療種類別では、入院が2.3%増、入院外が1.6%増、歯科が3.5%増、調剤が3.9%増。歯科では貴金属価格上昇(歯科用貴金属医療費が10.1%増)、調剤では腫瘍用薬やホルモン剤などの使用増が影響した。年齢別では、75歳以上の医療費が20兆3,000億円(3.9%増)で全体の41.3%を占め、1人当たり医療費は98万9,000円と、75歳未満(26兆5,000億円、1人当たり26万1,000円)の3.8倍に達した。その一方で、2024年度の介護費は、高額介護サービス費などを含め12兆952億円となり、前年度比3.2%増加した。介護保険制度開始時の2000年度と比べると3.3倍の規模で、要介護・要支援認定者は720万7,000人に達した。介護給付費は居宅サービス3.4%増、地域密着型2.6%増、施設3.6%増となり、施設サービスの伸びも目立った。第1号被保険者の認定率は19.7%で、都道府県別では大阪府24.3%、茨城県16.5%と1.47倍の差がある。1人当たり介護給付費も29万6,300円と3.5%増えた。団塊世代が全員75歳以上となり、今後は85歳以上人口の比率上昇と現役世代の減少が同時に進む。医療・介護の複合ニーズが増す中、サービス確保や人材確保、質の向上に加え、給付の効率化と地域差の検証など、制度の持続可能性をどう確保するかが一段と重要になる。2027年度には介護報酬改定も予定されており、増大する需要と担い手不足をどう両立させるかが焦点となる。 参考 1) 医科医療費(電算処理分)の動向 ~令和7年度版~(厚労省) 2) 医療費総額49.2兆円、5年連続で過去最高を更新…高齢化・医療技術の高度化など要因(読売新聞) 3) 25年度の概算医療費、2.6%増49.2兆円 医療高度化で増加(日経新聞) 4) 2024年度の介護費、高額介護サービス費など含めれば12兆952億円で、前年度から3.2%の増加-介護保険事業状況報告(Gem Med) 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省厚生労働省は2027年度予算の概算要求として、2026年度当初予算比1兆5,370億円増の36兆5,803億円を計上した。要求段階では過去最大で、このうち年金・医療などの社会保障関係費は33兆6,872億円。高齢化などによる自然増として3,397億円を見込む。今回の特徴は、要求上限のない「『強く豊かな日本』投資枠」に1兆337億円を計上した点である。重点分野として、創薬・先端医療分野に約1,969億円(うち創薬スタートアップ支援・人材育成に355億円、治験・臨床試験体制強化に155億円、AI創薬環境整備に541億円)、感染症危機対応医薬品等の確保支援に2,129億円を要求した。医療DXの推進には934億円を要求し、標準仕様準拠の認証電子カルテの普及支援(604億円)やクラウドネイティブ化、全国的なデータ連携基盤整備を進める。さらに医療機関のサイバーセキュリティ対策や、医療・福祉分野におけるAI・ICTを活用した生産性向上・データ共有推進(829億円)などを盛り込んだ。その一方で、医療機関にとって最大の焦点となる物価・人件費高騰への対応は、診療報酬上の加算を含め金額を示さない「事項要求」とされた。2027年度の介護・障害福祉報酬改定も同様で、具体額は年末の予算編成で決まる。前年度の概算要求でも、物価高など重要政策は予算編成過程で検討する仕組みが示されており、病院経営が厳しさを増す中、年末にどこまで実効性ある財政支援が盛り込まれるかが注目される。 参考 1) 厚労省予算要求、最大の36兆円 創薬強化や福祉人材確保(共同通信) 2) 厚生労働省 概算要求で過去最大の36兆5,803億円を計上(NHK) 3) 厚労省概算要求、過去最大の36兆5千億円 投資枠で創薬力強化(朝日新聞) 4) 厚労省の概算要求は過去最大の33兆7,929億円に-『強く豊かな日本』投資枠に1兆337億円(日本医事新報) 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省厚生労働省は8月27日の社会保障審議会医療部会・医療保険部会を開き、医療DXの今後の工程を示す「医療情報化推進方針(案)」と電子カルテ情報共有サービスの進捗を報告した。第1期の対象期間は2026年10月1日~2030年3月31日までの3年半で、9月末までに厚生労働大臣が官報告示する予定。社会保険診療報酬支払基金は10月1日に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構)」へ改組され、同方針に基づく中期計画を策定する予定。電子カルテ情報共有サービスは現在、全国10地域でモデル事業を実施中で、2026年度冬をめどに全国運用を開始する。共有対象はまず診療情報提供書、退院時サマリ、健診結果報告書の3文書と、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査、処方の6情報。モデル事業では、感染症情報を患者への説明前に共有する場合の扱いや、院内コードと共有用コードの対応などの課題を検証している。運用開始時には、全国721の地域医療支援病院を対象に、電子診療録等情報の提供・利用体制の整備を努力義務とする方針であり、冬までに省令で規定する。運用開始後は普及状況を踏まえて対象を拡大する考えで、医療部会では特定機能病院や災害拠点病院、救急病院などへの拡大を求める意見も出された。厚労省の資料でも、まず地域医療支援病院を指定し、その後、普及計画の効果を見ながら努力義務の対象拡大を検討するとしている。同時に電子カルテ自体の普及も加速する。2027年度から共有サービスなどに対応する「認証クラウドネイティブ型電子カルテ」および「標準型電子カルテ(導入版)」の導入を進め、2028年度までに療養病床等が中心の病院を除く200床以上病院で普及率約100%、2030年末までに全医療機関で普及率約100%を目指す。オンプレミス型からクラウド型への移行により、業務効率化、セキュリティ強化、データの二次利用を含めた共有を推進する。医療・介護情報の連携も段階的に拡大する。2026年度から介護情報基盤を標準化対応済み自治体から順次開始し、2028年度をめどに全自治体へ広げる。あわせて2028年度には医科・DPC向け共通算定モジュールの請求支援機能や労災版モジュールの運用開始、電子カルテ情報を創薬等に二次利用するデータベースの運用開始を目指す。電子カルテ情報共有サービスでは2027年度に訪問看護指示書・計画書・報告書等を共有対象に加え、2029年度には歯科情報にも拡大する予定である。その一方で、医療部会では電子カルテの新規導入・更新費、クラウド利用時の通信費、停電や回線断絶時の事業継続性などへの懸念が相次いだ。厚労省は2027年度予算概算要求で、新規導入だけでなく更新・買い替えも含む支援を盛り込む方針。医療DXは構想段階から全国実装へ移りつつあり、医療機関には今後数年間で、システム更新時期や費用、地域連携、災害・サイバー対策を一体的に見据えた対応が求められる。 参考 1) 医療情報化推進方針案等について(厚労省) 2) 医療DXの進捗状況等について(同) 3) 2028年度までに療養除く200床以上病院で、30年度までに全医療機関で「電子カルテ導入率100%」を目指す-社保審・医療部会等(Gem Med) 4) 電子カルテ情報共有、地域医療支援病院に努力義務運用開始後に対象拡大検討 厚労省方針(CB news) 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市東京都日野市は、市立病院で9月の給与支払いに必要な資金が不足するとして、緊急に1億円を貸し付ける。医師、看護師ら約700人の給与は約2億7,000万円。9月の5連休で給与支給が18日に前倒しされる一方で、診療収入の入金は24日となるため、一時的に資金がショートする見通しとなった。ただし、朝日新聞の報道で原因とされている連休は直接のきっかけにすぎず、背景には長年の経営悪化がある。日野市立病院は300床の地域医療支援病院で、二次救急、周産期、災害・感染症医療などを担う。2023年策定の経営強化プランでは、病床利用率を高めて経常黒字化を目指していた。しかし、2026年5月の経営再建支援報告書によると、コロナ禍では補助金により黒字を維持したものの、補助金終了と人件費増で2023年度の経常利益率はマイナス15.2%、2024年度はマイナス18.6%、約14億円の赤字に悪化した。医業収支の赤字も約17億7,200万円で、同規模病院と比べ下位4分の1を下回る水準だった。収益面では、2024年度の病床稼働率は62.0%、DPC症例の1日単価は5万8,453円。黒字化には、単価を維持したままなら稼働率89.5%、稼働率を維持するなら1日単価8万4,401円が必要と試算され、現状との差は大きい。救急応需率も2024年度55.2%にとどまり、東京消防庁からの搬送要請を約半分断っていた。さらに、2024年度の経常収益約77億円に対し、損益分岐点は約90億円で、黒字化には約13億円の増収が必要とされた。赤字の積み重ねで手元資金が細り、市は昨年度10億円を貸し付け、今年度も別途10億円を支援する方針だった。そこへ入出金の6日間のずれが重なり、追加融資が必要となった。今回の事例は、低い病床稼働率(62.0%)、低水準の救急応需率、診療単価の低迷と高い固定費により、短期の資金ギャップを吸収できない財務体質に陥っていた結果といえる。日野市立病院は2026年4月に地方公営企業法「全部適用」へ移行して経営強化を進めていたが、全国自治体病院協議会の2025年度決算調査でも自治体病院の84%(有効回答494病院中)が経常赤字に陥っている実態が示されており、公立病院の経営難が決算上の赤字にとどまらず、日々の運転資金や給与支払いに直結する危機的局面を迎えていることを示している。 参考 1) 日野市立病院経営強化プラン(日野市立病院) 2) 令和7年度日野市立病院 経営再建支援業務委託報告書(日野市) 3) 日野市立病院「9月の給与払えない」財政難に連休も影響、市が支援へ(朝日新聞)