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1.

治療抵抗性統合失調症患者の脳構造はどうなっているのか

 治療抵抗性統合失調症(TRS)は、精神科医療において大きな課題となっており、患者の約10~60%が抗精神病薬に治療反応を示さない。TRSに対する早期治療は、臨床アウトカムの改善につながる可能性があるものの、客観的なバイオマーカーが欠如しているためタイムリーな介入の妨げとなっている。一般的な脳の構造変化がTRSと関連していることが示唆されているものの、大規模なTRS症例データを得ることが困難なため、明確かつ確固たる結論はいまだ得られていない。米国・Johns Hopkins University School of MedicineのSemra Etyemez氏らは、このギャップを埋めるため、ENIGMA(Enhancing Neuro Imaging Genetics through Meta-Analysis)コンソーシアムと共同で、TRSに関連する脳の構造変化を調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2026年3月28日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・複数の大陸および民族を対象とした複数の機関のデータを用いたメタ分析およびメガ分析により、十分な統計的検出力をもって、TRS患者では非TRS患者と比較し、両側被殻および両側海馬の体積、左上前頭回(SFG)表面積が有意に減少していることが明らかになった。・健康対照群(HC)のデータを取り入れたさらなる分析では、HCから非TRS患者、そしてTRS患者へと、両側海馬体積および左SFG表面積が減少傾向にあることが示された。・クロザピン投与量および抗精神病薬の累積曝露量は、両側海馬体積および左SFG表面積に有意な影響を及ぼさなかった。・一方、被殻体積は、非TRS患者でHCと比較して増加しており、TRS患者とHCとの間には有意な差は認められなかった。・抗精神病薬曝露量は、被殻体積と有意な相関関係を示したが、そのエフェクトサイズは小さかった。・結論として本研究は、海馬とSFGの体積がTRSの潜在的なバイオマーカーであることを示唆している。

2.

「MASLD診療ガイドライン」改訂、脂肪肝を全身疾患として再定義/日本消化器病学会

 2026年4月、「MASLD診療ガイドライン」が改訂された1)。2020年に発刊した前版の「NAFLD/NASH診療ガイドライン」から6年ぶりの改訂で、第3版となる。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、改訂ポイントを解説するパネルディスカッションが開催された。 今改訂の最大のトピックスは、疾患名の変更とその定義だ。従来、脂肪性肝疾患に用いられてきた「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」の疾患名は国際的コンセンサスに基づき、2023年に「MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」「MASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)」に変更された。日本でも日本消化器病学会・日本肝臓学会がこれに賛同し、2024年8月に「MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」「MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎」との日本語名を発表している。改訂版ガイドラインでは、これらの新たな疾患名・定義を踏まえた診断・診療体系が提唱された。疾患定義:世界的な名称変更 NAFLDという名称は1980年代に提唱され、その後40年以上にわたり使用されてきた。しかし「non-alcoholic(非アルコール性)」という否定形表現や、「fatty」という言葉が患者へのスティグマにつながるとの指摘が国際的に強まっていた。これを受け、脂肪性肝疾患「SLD(steatotic liver disease:脂肪性肝疾患)」という1つの大きな疾患群として捉え直し、そのなかで心代謝系危険因子(CMRF)の有無、飲酒量、その他(薬物、ウイルス、遺伝子など)の要因に応じて疾患を再分類したうえで、その中心的な病態としてMASLDが位置付けられた。従来のNAFLD/NASHとMASLD/MASHの臨床像や診断アルゴリズムはおおむね一致しており、従来のエビデンスは引き続き活用される。診断フローチャート:新たに「MetALD」を設定 新たな疾患分類では、SLDを認めた患者に対し、まず、CMRFの有無を評価する。ガイドラインではCMRFとして 1)肥満:BMI≧23kg/m2 or 腹囲男性>94cm・女性>80cm 2)血糖:空腹時≧100mg/dL or 食後2時間≧140mg/dL or HbA1c≧5.7% or 2型糖尿病 or その治療 3)血圧:収縮期≧130mmHg or 拡張期≧85mmHg or 降圧薬内服 4)中性脂肪:≧150mg/dL or 脂質異常症治療薬内服 5)HDL:男性≦40mg/dL、女性≦50mg/dL or 脂質異常症治療薬内服の5項目を採用している。これらのリスク因子が1つ以上あり、かつ飲酒量が基準未満(純エタノール量:男性30g/日未満・女性20g/日未満)であればMASLDと診断される。 今回のガイドラインでは、新たな疾患カテゴリとして、CMRFが1つ以上の中等量飲酒例(男性30~60g/日・女性20~50g/日)を「MetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)」として独立して規定した。これを超える飲酒量であれば「ALD(アルコール関連肝疾患)」となる。MetALDは従来ではNAFLDから除外されていた群だが、近年、代謝異常とアルコール双方が病態進展に関与すると示されたことを背景に設定され、MASLDよりも肝関連イベントリスクが高いことが報告されている。さらに心血管イベントも増加するとの報告もあることがFRQで示され(FRQ1-1)、今後はこれらの病態に応じた治療法やサーベイランス法の開発が重要となる。診断:肝生検が「必須」から外れる BQ4-1 MASLDの診断に肝生検は必須か? MASLDの診断に肝生検は必須ではない。 今回の改訂で大きな変更点が、確定診断にあたって「肝生検は必須ではない」とされた点だ。これは近年のNIT(非侵襲的検査)の発達によるもので、血液検査による肝線維化マーカー、年齢と検査値を組み合わせたスコアリングシステム(FIB-4 indexなど)、画像検査、そしてこれらの組み合わせがあり、非侵襲的かつ繰り返し評価できることが大きなメリットとなる。とくに複数の線維化マーカーが保険収載されているのは世界中で日本だけであり、この点に関するエビデンスを蓄積することも求められている。一方、肝生検を必要とするケースも依然として存在しており、高リスクMASHの確定診断、炎症の程度の把握が必要なケース、複数のNITの不一致例などが挙げられている。 今回、診断フローチャートのほかに「肝疾患高リスク症例の絞り込み・フォローアップのフローチャート」が作成された。これはNITと肝生検を組み合わせて高リスク症例を絞り込む手順と、その検査や重症度別の患者のフォローアップをかかりつけ医と専門医でどう分担すべきか、という2軸のマトリクスからなる。NITを使った2段階のハイリスク症例の絞り込み、2次リスク評価で使用できるNITのリストアップ、肝生検・超音波エラストグラフィ・MRエラストグラフィによる最終評価と治療方針の決定、その後のリスクに応じたフォローアップ体制など、診断の全体像と医師の役割分担の提唱が可視化されている。非専門医が押さえるべきポイント・従来、「飲酒歴を確認し、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害を除外した残り」としてNAFLDを診断していたが、MASLDにおいてはBMI、糖代謝異常、高血圧、脂質異常症などのCMRFの確認が診断プロセスの中心となる。・飲酒評価の重要性も増した。とくにMetALD概念の導入により、「少量飲酒であれば問題ない」と一律に扱うことは難しくなった。ガイドラインではMASLDを男性30g/日未満、女性20g/日未満、MetALDを男性30~60g/日、女性20~50g/日の飲酒群として整理しているが、実際にはMASLD基準内の少量飲酒でも線維化リスク上昇が報告されており、診療現場では飲酒量を細かく聴取することが重要になる。・「MASLD患者の消化器科へのコンサルテーション基準は?」という設問(BQ4-2)に対しては、「FIB-4 index>2.67(65歳以下の場合)」の高リスク群を紹介基準とし、同1.3~2.67の中間リスク群でも「血小板数<20万/μL」「AST値・ALT値が持続高値」「画像検査で肝硬変の所見を認める」場合には紹介が望ましいとされている。全身疾患としてのMASLD MASLDは多くの疾患と関連するが、診断基準となるCMRF関連4疾患である「2型糖尿病、脂質異常症、肥満、高血圧」についてはBQが設定され、相互補完関係にあることが示されている(BQ3-1~4)。さらに、慢性腎障害、内分泌異常、睡眠時無呼吸症候群など、多彩な合併症との関連も整理された(BQ3-5、3-6)。また、肝臓以外の悪性腫瘍リスク上昇についても大腸がんを中心に、胃がん、食道がん、婦人科がんとの関連が解説された(BQ3-7)。中でも心血管疾患はMASLD患者の主要死因の1つであり、大規模メタ解析では、MASLD患者の心不全新規発症リスクは一般人口の約1.5倍と報告されている。一方で、肝線維化が心血管リスクを上昇させる独立した因子であるかについては現時点ではまだ明確ではなく、今後探索していくべき課題とされた(FRQ3-1、3-2)。 治療面では、生活習慣介入が中心である点は従来と変わらないが、「単純性脂肪肝だから経過観察のみ」という従来型対応は見直されつつある。肥満、糖尿病の合併例、線維化進展を伴う例では、早期から積極的介入を行う方向性がより明確になっている。GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など代謝改善薬への期待も高まっており、今後のエビデンス蓄積が注目される。

3.

肥満のアルコール使用障害、セマグルチドvs.プラセボ/Lancet

 肥満を有する中等度~重度のアルコール使用障害(AUD)患者において、セマグルチド週1回投与により、プラセボと比較してAUDに対する有意な治療効果が認められた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Bispebjerg and FrederiksbergのMette Kruse Klausen氏らが、コペンハーゲンの単施設で実施した26週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。AUDは、世界の年間死亡者の5%を占めており、新たな治療法の開発が急務となっている。GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドは前臨床試験および初期の臨床試験において、飲酒量を減少させる可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、GLP-1受容体作動薬がAUDの新たな治療選択肢となりうることを示唆するこれまでの知見を裏付けるものである」とまとめている。Lancet誌2026年5月2日号掲載の報告。主要エンドポイントは、26週時までの大量飲酒日数の変化 研究グループは、年齢が18~70歳で、『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』に基づきAUDと診断され、かつ国際疾病分類第10版(ICD-10)に従ってアルコール依存症と診断された、アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)スコアが15超、BMI値30以上の患者を対象とした。AUDに対する治療を希望する被験者を、セマグルチド群(0.25mgから開始し4週ごとに増量して2.4mgを週1回皮下投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、標準的な認知行動療法とともに26週間投与した。 主要エンドポイントは、飲酒量振り返りカレンダー(TLFB)法で推定されたベースラインから26週時までの大量飲酒日の割合の変化であった。ITT集団を対象として、欠測値を多重代入法により補完した反復測定共分散分析(ANCOVA)モデルを用いて評価した。副次エンドポイントは、ベースラインから26週時までの総アルコール摂取量(g)の変化、飲酒をしなかった日数、飲酒日当たりの飲酒量、AUDITスコアなどで、安全性についても評価した。認知行動療法+セマグルチドで大量飲酒が改善 2023年6月10日~2025年2月4日に302例が予備スクリーニングを受け、スクリーニング対象となった135例中108例が登録された(女性53例、男性55例)。全例、1回以上の治療を受け、最終解析に組み込まれた。108例中88例(81%)が試験を完遂した。 主要エンドポイントである大量飲酒日の割合の変化量は、セマグルチド群で平均-41.1%ポイント(95%信頼区間[CI]:-48.7~-33.5)、プラセボ群で-26.4%ポイント(95%CI:-34.1~-18.6)とセマグルチド群で有意に減少した(平均群間差:-13.7%ポイント、95%CI:-22.0~-5.4、p=0.0015)。 副次エンドポイントについても、総アルコール摂取量、飲酒日当たりの飲酒量、AUDITスコアなど複数の項目で、プラセボ群に対するセマグルチド群の有意な効果が示された。 最も多く発現した有害事象は胃腸障害で、悪心の発現割合はプラセボ群の7%に対しセマグルチド群では57%であった。多くの胃腸障害は軽度~中等度で、一過性であった。

4.

RAS変異陽性既治療膵管腺がん、daraxonrasibが有効か/NEJM

 RAS遺伝子変異を有する既治療膵管腺がん(PDAC)患者において、daraxonrasib(RMC-6236、GTP結合型変異および野生型RASを標的とする経口のRAS(ON)マルチ選択的阻害薬)は、300mg用量の投与により抗腫瘍活性が示され、Grade3以上の治療関連有害事象は約3割で認められた。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のBrian M. Wolpin氏らRMC-6236-001 Investigatorsが、同国の16施設で実施した第I/II相試験「RMC-6236-001試験」の結果を報告した。PDACに対する現行治療法は有効性が限定的である。PDACの90%以上で活性化RAS遺伝子変異が認められることから、これを治療標的とした新たな治療法が期待されていた。NEJM誌2026年5月7日号掲載の報告。米国16施設で第I/II相試験を実施 RMC-6236-001試験の対象は、コドン12、13または61でのKRAS、NRASまたはHRAS遺伝子変異を有する進行固形腫瘍の成人患者で、PDACについては、5-FUまたはゲムシタビンを含む化学療法後に病勢進行または許容できない有害事象が生じた患者が対象となった。 研究グループは、用量漸増期において固形腫瘍患者に10~400mgのdaraxonrasibを1日1回経口投与した。用量拡大期ではPDAC患者に120mg、200mgまたは300mgを投与した。 主要評価項目は安全性、副次評価項目は抗腫瘍効果および薬物動態であった。 本論では、PDAC患者を対象とした解析結果が報告された。第III相試験の推奨用量は300mg、Grade3以上の有害事象の発現は約30% 2022年6月22日~2025年6月30日に、RAS遺伝子変異を有する既治療のPDAC患者168例が登録され、daraxonrasibを投与された(300mg群83例、160~220mg群51例、120mg以下群34例)。 治療関連有害事象は、全Gradeについて168例中161例(96%)に認められ、Grade3以上の事象は50例(30%)で報告された。死亡に至った事象はなかった。 主な全Gradeの治療関連有害事象(発現割合20%以上)は発疹88%、下痢46%、悪心42%、口内炎または粘膜炎40%、嘔吐31%、疲労20%であった。 daraxonrasibの抗腫瘍効果は各用量で観察され、奏効率は総じて300mg群で高く、第III相試験の推奨用量として300mgを選択することが支持された。 2次治療としてdaraxonrasib 300mgの投与を受けたRAS G12変異を有する26例のサブグループ解析では、確定奏効率35%(95%信頼区間[CI]:17~56)、奏効期間中央値8.2ヵ月、無増悪生存期間(PFS)中央値8.5ヵ月、全生存期間(OS)中央値13.1ヵ月であった。 また、RAS G12、G13またはQ61変異を有し2次治療としてdaraxonrasib 300mgを投与された38例では、確定奏効率29%(95%CI:15~46)、奏効期間中央値8.2ヵ月(95%CI:3.8~8.8)、PFS中央値8.1ヵ月、OS中央値15.6ヵ月であった。

5.

TN乳がん1次治療のDato-DXd、QOL悪化までの期間を延長(TROPION-Breast02)/ESMO BREAST 2026

 免疫チェックポイント阻害薬の適応とならない局所進行切除不能または転移を有する未治療のトリプルネガティブ乳がんを対象とした第III相TROPION-Breast02試験において、抗TROP2抗体薬物複合体であるダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)は、化学療法と比較してQOL悪化までの期間を延長したことを、英国・Barts Cancer InstituteのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2026、5月6~8日)で報告した。 これまでの解析では、Dato-DXdが治験責任医師選択化学療法(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチン)と比較して、主要評価項目である全生存期間および無増悪生存期間において統計的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことが報告されている。今回報告された患者報告アウトカム(PRO)解析では、全般的健康状態/QOL(GHS/QoL)、身体機能、疼痛、乳房症状、上肢症状について、初回悪化までの期間(time to first deterioration:TTFD)および悪化が確認されるまでの期間(time to confirmed deterioration:TTCD)などを評価した。PROは主としてEORTC QLQ-C30、EORTC Item Library(IL146、IL116)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・合計644例がDato-DXd群または化学療法群に1対1で無作為に割り付けられた。・GHS/QOL悪化までの期間は、Dato-DXd群のほうが化学療法群よりも有意に長かった。中央値とハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -TTFD 23.5ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.46~0.88]) -TTCD 未到達vs.29.0ヵ月(HR:0.61[95%CI:0.41~0.91])・身体機能についてもDato-DXd群で悪化リスクの有意な低下が認められた。 -TTFD 10.4ヵ月vs.4.1ヵ月(HR:0.67[95%CI:0.51~0.90]) -TTCD 24.9ヵ月vs.9.0ヵ月(HR:0.59[95%CI:0.42~0.83])・上肢症状についてもDato-DXd群で悪化リスクの有意な低下が認められた。 -TTFD 未到達vs.12.5ヵ月(HR:0.51[95%CI:0.35~0.75]) -TTCD 両群とも未到達(HR:0.48[95%CI:0.30~0.76])・疼痛および乳房症状についてもDato-DXd群で悪化リスクの低下傾向がみられたものの、統計学的有意差は認められなかった。・患者報告による症候性有害事象および治療忍容性は、主解析における医師報告の安全性プロファイルとおおむね一致していた。

6.

睡眠時無呼吸症候群、日ごとの重症度変動も心血管リスクに影響

 睡眠時無呼吸症候群(OSA)は心疾患、高血圧、脳卒中のリスクを高めることが知られているが、その重症度が日ごとに大きく異なることも、リスクに影響する可能性がある。新たな研究で、OSAの重症度の日ごとの変動が大きい人では、小さい人に比べて、非致死的な主要心血管・脳血管イベント(MACCE)のオッズが34%高いことが示された。フリンダース大学(オーストラリア)のBastien Lechat氏らによるこの研究の詳細は、「Sleep」に3月26日掲載された。 OSAでは、睡眠中の呼吸停止とそれに伴う覚醒が一晩中繰り返され、睡眠の質に悪影響を及ぼすことが知られている。Lechat氏は、「多くの人は、OSAの症状は一定していると考えがちであるが、実際は、ある夜は他の夜よりも著しく悪化するなど日ごとに大きく異なる。このような重症度の上下の繰り返しは心臓にさらなる負荷をかける可能性がある」とニュースリリースで述べている。 本研究では、米食品医薬品局(FDA)承認の市販のマットレス下センサーを用いてOSAの重症度を連日測定した3,159人の成人(女性19%、平均年齢49±13歳)のデータが解析された。OSAの重症度は、1時間当たりに起こる無呼吸と低呼吸の回数を示す指標である無呼吸低呼吸指数(AHI)で評価された。非致死的なMACCE(心筋梗塞、脳卒中、狭心症、うっ血性心不全など)の診断の有無について質問票により確認し、これらとOSAの重症度およびその変動との関連を検討した。 その結果、中等度から重度のOSAを有する人は、OSAのない人と比較して、MACCE発生のオッズが45%高い傾向が認められた(オッズ比1.45、95%信頼区間0.93~2.25)。また、OSAの重症度の変動が大きい人(AHIの75パーセンタイル:8.0回/時)は小さい人(AHIの25パーセンタイル:2.8回/時)と比較して、OSAの重症度や他の交絡因子とは独立して、MACCE発生のオッズが34%高かった(オッズ比1.34、95%信頼区間1.04~1.72)。 研究グループによると、OSAの検査は多くの場合、1晩のみの呼吸測定で行われる。Lechat氏は、「1晩の睡眠検査だけでは一部の患者に誤った安心感を与える可能性がある。平均的には軽症であっても、日ごとの変動が大きい場合にはリスクが高い可能性があるためだ」と指摘している。 研究グループは、OSA患者における心血管リスクの予測が困難である理由の一端は、本結果により一部説明可能であるとの見方を示している。論文の上席著者である同大学のDanny Eckert氏は、「身体は酸素レベルの変動や睡眠の分断の繰り返しに適応することが困難である可能性がある。こうした日ごとの変動は、標準的な検査では捉えられないまま、時間をかけて心臓や血管に徐々に負荷をかける」とニュースリリースで述べている。その上で同氏は、医師が糖尿病や血圧と同様に、OSAについても継時的に評価することを検討すべきだと主張している。 一方、Lechat氏は、OSAには対処法が存在することを強調する。「いびきをかく、あるいは睡眠後も疲労感が残る場合には、医療専門職に相談することで、心血管リスクが見つかる可能性がある。そうしたリスクに対する治療の選択肢は多数存在する」と述べている。

7.

歯の減少や噛み合わせの低下は体重増加につながる?

 歯を失うと体重が増える可能性がある――そんな研究結果が報告された。歯の本数が少ないこと、噛み合わせ(咬合機能)や歯周の状態が悪いことは体重増加と有意に関連していることが示されたという。研究グループは、歯の喪失が咀嚼能力に影響し、それが健康的な食事の選択を制限する可能性があると指摘している。ペロタス連邦大学(ブラジル)のNatalia Pola氏らによるこの研究結果は、「Journal of Periodontology」に3月6日掲載された。 この研究では、ペンシルベニア州ピッツバーグとテネシー州メンフィスを拠点とする長期健康調査プロジェクト(Health ABC)の参加者903人を追跡して、口腔状態と体重の変化との関連が検討された。参加者は研究開始時に口腔検査を受け、歯の本数、咬合機能、歯周状態が評価された。咬合機能は機能歯ユニット(Functional Tooth Unit;FTU)により、歯周状態は、プロービングデプス(歯肉辺縁から歯周ポケット底部までの距離)または臨床的アタッチメントレベル(Clinical Attachment Level;CAL)により評価された。 参加者は、2年時点と6年時点の体重の変化により、変化なし(568人、62.9%)、5%以上の体重減少(231人、25.6%)、5%以上の体重増加(104人、11.5%)の3群に分類された。解析の結果、体重減少については、歯の本数、咬合機能、歯周状態のいずれの指標とも有意な関連は認められなかった。一方、体重増加については、歯の本数が少ないこと、咬合機能が悪いこと、歯周の状態が悪いことが体重増加と有意に関連していた。特に、咀嚼に重要な役割を果たす臼歯が失われた場合には、体重増加のリスクが17%高かった。 こうした結果について研究グループは、「歯の喪失は、果物や野菜などの食物繊維が豊富で健康的な食品を避け、柔らかくて高カロリーな食品を選ぶ傾向につながる可能性がある」と指摘している。また、Pola氏は、「特に臼歯など、機能的な歯の単位の喪失は、高齢者において4年間の体重増加リスクの上昇と関連していた」と結論付けている。 本研究には関与していない、米国歯周病学会会長で歯周病専門医であるAna Becil Giglio氏は、「これらの結果は、特に高齢期においては、歯周の健康が全身の健康に重要な役割を果たすという、これまでの知見をさらに裏付けるものだ。健康な歯と歯茎を維持することは、より良い栄養状態や生活習慣、高齢期の生活の質(QOL)の向上をサポートする」とニュースリリースで述べた。 研究グループは、健康的な体重の維持や減量を目指す人にとっても、口腔の健康管理は重要な要素となり得ると示唆している。ただし、歯の欠損と体重増加の関係をより正確に理解するためには、さらなる研究が必要だとも付け加えている。

8.

ある種の抗うつ薬がLong-COVIDの疲労改善に有効か

 抗うつ薬の一種が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後に持続する疲労の改善に有効な可能性が報告された。マクマスター大学(カナダ)のEdward Mills氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に3月31日掲載された。同時に評価された血糖降下薬のメトホルミンに関しては、有効性が示されなかったという。 COVID-19の急性期以降にさまざまな症状が遷延化する、いわゆる「Long COVID」は、いまだ世界中の多くの人の生活の質(QOL)を低下させている。特に疲労は、最も一般的で生活機能に大きな影響を及ぼす症状とされる。Long COVIDの治療手段としてこれまでに、抗うつ薬のフルボキサミンと血糖降下薬のメトホルミンが有効な可能性が、観察研究などで示唆されている。ただし、ランダム化比較試験(RCT)による確固たるエビデンスは確立されていない。これを背景にMills氏らは、Long COVIDに伴う代表的な症状である疲労に焦点を当てRCTを実施した。 研究参加者は、ブラジル国内の医療機関の外来患者のうち、新型コロナウイルスに感染後90日以上経過しても疲労が持続している成人399人だった。フルボキサミン群、メトホルミン群、およびプラセボ群の3群にランダムに割り付けて、各薬剤を60日間投与した。 その結果、フルボキサミン群では、60日後の疲労がプラセボ群より改善しており(疲労重症度尺度〔FSS〕の平均差-0.43〔95%信用区間-0.80~-0.07〕)、優越性の事後確率(プラセボより優れている可能性)は99.0%と計算された。また90日後にもその効果が持続しており(同-0.58〔-0.98~-0.16〕)、優越性の事後確率は99.7%と計算された。 一方、メトホルミンに関しては、60日後のFSSの平均差が-0.03(-0.42~0.37)で優越性の事後確率が56.0%、90日後は-0.04(-0.47~0.38)で同57.8%であり、プラセボとの差が示されなかった。なお、フルボキサミン群の有害事象の発生率は20.0%であり、メトホルミン群の28.8%やプラセボ群の29.7%より低かった。 論文の上席著者であるMills氏は、「本研究はエビデンスに基づく治療法につながる重要な前進だ。フルボキサミンとメトホルミンは、どちらも比較的安価で入手しやすく、かつLong COVIDによる疲労に有効な可能性が報告されていたが、その有効性の検証を目的とした厳格な臨床試験はこれまで行われていなかった」と述べている。 また、論文の責任著者であるブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のJamie Forrest氏は、「今回の試験結果はLong COVIDに伴う疲労を軽減する薬物治療に関する初めての有力なエビデンスと言える。患者は今すぐに試すことのできる薬剤を求めており、われわれの発見によってその実現に近づいた」としている。 なお、研究者らは、フルボキサミンが最も有効と考えられる患者の特徴を明らかにすること、および、疲労改善のメカニズムを理解するために、今後のさらなる研究の必要性を強調している。

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下落時こそ絶好の仕込み時!インフレ時代に医師が取るべき資産形成の最適解とは?【医師のためのお金の話】第104回

2026年2月28日。米国とイスラエルによるイランへの軍事介入という衝撃的なニュースとともに、世界経済は新たな激動のフェーズに突入しました。この地政学リスクは、原油価格の急騰という形でダイレクトに私たちの家計や市場を直撃しています。戦況の推移に一喜一憂して、原油価格が乱高下を繰り返す中で、株式市場もまたボラティリティ(変動率)がきわめて高い状況です。医師風に言うと、バイタルサインがきわめて不安定な状態でしょうか。このような先行きの見えない不透明な状況下で、私たち投資家、とりわけ多忙をきわめる医師は、株式投資でどう振る舞うべきなのでしょうか。日本経済の構造的変化から、株式投資の最適解を導き出してみたいと思います。デフレという長い冬の戦術を振り返るかつて、私たちが長く経験してきたデフレ時代。この局面において、株価は一定のレンジを行き来する「ボックス圏」での動きが定石でした。実際に、2000年代の日本市場はこの傾向が顕著であり、投資戦略もそれに準じたものでした。デフレ下では、現金の価値が相対的に維持、あるいは上昇します。消費者の心理としては「今日買うよりも、明日、明後日のほうが安くなっているかもしれない」という期待がはたらくため、積極的な消費や投資を抑制して、現金を抱え込むようになります。このマインドが社会全体に蔓延すると、景気は停滞して、株価も低迷を余儀なくされます。こうしたデフレ経済下では、安値で拾い、ある程度上がったところで利益を確定させる出口戦略(売却)を前提とした短期・中期の戦術がきわめて合理的でした。インフレ経済という「新しい日常」しかし、コロナ禍という世界的なパラダイムシフトを経て、日本は明確にインフレ経済へと舵を切りました。今回のイラン情勢に伴う原油高は、このインフレ傾向をさらに加速させる強力なアクセルとなる可能性があります。歴史を紐解けば、インフレ局面における株価は、長期的には右肩上がりの軌跡を描きます。インフレとは、裏を返せば「現金の価値が目減りしていくこと」にほかなりません。資産価値を維持するには、現金を株式などにシフトさせるインフレヘッジが不可欠です。また、通貨価値が下落し続ける局面では「今、この瞬間が最も現金の価値が高い」ことになります。そのため、貯蓄から消費・投資へという心理的バイアスが働き、経済全体が活性化しやすくなります。このような経済構造下では、株価が長期的に上昇していきます。私たち個人投資家が取るべき最も確実性の高い戦略は、短期的な値幅取りではなく、どっしりと構えたバイ&ホールドだと言えるでしょう。多忙な医師こそバイ&ホールドもちろん、短期のチャート分析と売買を繰り返して、資産を爆発的に増やす才能を持った人もまれに存在します。しかし、現実にそのような特殊な技能を持ち合わせている人は、投資人口の数パーセントにも満たないでしょう。何より、私たち医師は、毎日のように患者さんの生命や健康と向き合う、きわめて多忙な職種です。日々の外来、手術や検査、病棟管理、そして絶え間ない自己研鑽。株式市場の細かなノイズに一喜一憂して、貴重な時間を投資に割き続けることは、現実的ではありません。だからこそ、多忙な医師は投資戦略を吟味しなければいけません。今回のような一時的な急落時に優良資産を仕込み、あとは忘れて持ち続けるバイ&ホールド戦略が最も合理的でストレスの少ない最適解ではないでしょうか。機会損失という最大のリスクを診断するデフレ時代は、いかに上手く売るかという出口戦略が重要でした。しかし、インフレ時代では、必ずしも売却を急ぐ必要はありません。むしろ、長期的な上昇トレンドの中で、一時的なショックによる下落は、後から振り返れば千載一遇の好機であることが多いです。今の状況において、あえてリスクを指摘するならば、株価の下落そのものではありません。下落を恐れるあまり、投資の判断を先延ばしにして、結局何も買えないまま好機が過ぎ去ってしまう機会損失こそが、長期的な資産形成における最大のリスクと言えます。勇気を振り絞って、安値になった株式を購入して長期保有する。これこそが、インフレ時代を生き抜くための最も効果的な投資戦略だと私は信じています。

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第315回 医療業界の贈収賄事件に変化の予兆(前編) がんセンター東病院の贈収賄事件、きわめて異例の全面無罪判決

「賄賂の趣旨があった」にもかかわらず贈賄罪には問われずこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウィークの後半は、山仲間と福島県の山に行ってきました。3泊4日で安達太良山、西吾妻山、磐梯山の百名山三座を登ろうという少々欲張った計画でした。しかし、初日は雨で停滞、2日目は強風で安達太良山を途中撤退、3日目の西吾妻山は、白布峠からの西大巓(西吾妻山の南西に隣接する山)登山で雪渓を踏み抜き谷に1mほど転落、左ひざを傷めて再び撤退となりました。最終日に予定していた磐梯山も諦め、結局、一座も頂上を踏めず、会津の酒をしこたま飲んだだけの山行となりました。連休明けに近所の整形外科クリニック(大混雑でした)を受診したところ、「内側側副靭帯の損傷。半月板も傷めているかもしれないので病院でMRIを」と言われてしまいました。前回、父親の電動自転車での転倒が心配だと書きましたが、自分自身の春山登山の心配が先だったかもしれません。さて今回は、近年摘発が増える医療界の贈収賄事件について書いてみたいと思います。本連載でも三重大臨床麻酔部事件や、昨年から世間を騒がせている東大病院の贈収賄事件など、数多くの事件について書いてきましたが、収賄側、贈賄側の双方が「無罪」となったケースはありませんでした。しかし、先頃、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で起きた贈収賄事件について、収賄側、贈賄側、双方の無罪が確定するケースがありました。贈賄側とされた企業の元社長については「賄賂の趣旨があった」とされたものの、贈賄罪には問われませんでした。警視庁捜査2課が関与した贈収賄事件としては極めて異例とも言える全面無罪の理由はいったい何だったのでしょうか。国立がん研究センター東病院での胆管用ステント採用を巡る事件国立がん研究センター東病院での医療機器の選定・使用を巡り、医師に便宜を図ってもらう見返りに金銭を渡したとして贈賄罪に問われた医療機器メーカー・ゼオンメディカル(東京都千代田区)の元社長(69)に対し、東京地裁(中川 正隆裁判長)は4月16日、無罪(求刑・懲役1年)とする判決を言い渡しました。元社長は、2021年5月、同病院の肝胆膵内科医長(当時)に対し、カテーテル治療で用いる胆管用ステントの自社製品を他社製よりも多く使った謝礼などとして168万円を送金したとして起訴されていました。契約自体はゼオンメディカルの胆管用ステントの安全性などについて医師に調査を依頼する内容となっていたものの、検察側は送金について「調査に実態がなく、医師に自社製品をより多く使ってもらうことに対する謝礼だった」などと主張、これに対して元社長は公判で賄賂性を否定していました。4月17日付の朝日新聞等の報道によれば、判決では「会社側は調査結果を社内で広く共有しておらず、送金には賄賂の趣旨があった」と認めました。しかし一方で、元医長が調査結果を会社側に報告していたことを踏まえ、「元医長は送金について契約に基づく報酬だと認識していた」として賄賂の認識がなかったと指摘しました。贈収賄の罪が成立するには、受け取る側と贈る側の両方が賄賂だと認識していた必要があるため、賄賂の趣旨があったとしても裁判所は被告の贈賄罪は成立しない、と判断したわけです。なお、この判決に対して東京地検は控訴せず、5月1日に無罪判決が確定しました。収賄罪に問われた元医長は今年2月に無罪確定この事件に関連しては、東京地裁(向井 香津子裁判長)は元社長から金銭を受け取ったとして収賄罪に問われた肝胆膵内科の元医長(49)について、無罪(求刑・懲役2年6ヵ月、追徴金約315万円)とする判決を今年2月6日にすでに言い渡しています。元医長は、ゼオンメディカルのステントを多用するなどの謝礼として、同社元社長らから2020年に約146万円、2021年に約168万円をそれぞれ受け取ったとする2つの収賄容疑で2023年9~10月に警視庁に逮捕され、その後、東京地検に起訴されました。公判で元医長は受け取った金銭について「賄賂ではない」と起訴事実を否認。弁護側は元医長と同社は製品の安全性などを確認する「市販後使用成績調査」の契約を結んでおり、受け取った金銭を調査報酬と考えた被告には「収賄の故意がない」と訴えていました。2月7日付の読売新聞等の報道によれば、判決では、2020年の金銭については「被告が契約に基づく調査を実際に行い、結果を同社側に伝えていたことから『被告は調査報酬と認識していた』と認定。同社側にも当初は調査結果を利用する意思があり、『便宜を図った謝礼とみること自体が困難で、収賄の客観的事実も故意もない』」と結論付けました。2021年の金銭に関しては、「同社側には調査結果を利用する意思は一切なく、『贈賄の趣旨で支払ったものだ』と指摘。ただ、被告は同社側の事情を知らず、同様の契約があると信じて行動していたとして、賄賂ではなく調査の報酬と考えて受け取った」としました。収賄罪の成立を認めなかったこの判決に対し、東京地検は控訴せず、4月21日に無罪判決が確定しています。「奨学寄附金」のように名目が曖昧な報酬は、贈賄も収賄も成立しやすい贈賄側に自社製品を有利に使ってもらう「賄賂の趣旨」があったにもかかわらず双方無罪となった最大のポイントは、収賄側の元医長に「賄賂を受け取る認識」がなく、「調査協力の報酬」だと理解していたため贈賄罪そのものが成立しなかった点です。2月に収賄側の元医長の無罪が確定しており、流れとして4月の贈賄側の無罪もほぼ予想されていたとはいえ、贈収賄事件で収賄側、贈賄側双方が無罪となるのは非常に珍しいことと言えるでしょう。今回の判決からわかるのは、医療機器メーカーなどが、医師になんらかの医療機器等を優先的に使ってもらう等の目的で調査やデータ集めを依頼し、実際にデータ等を収集してその成果物を作り活用すれば、報酬を支払ったとしても贈賄には該当しない可能性が高い、ということです。もちろん、調査やデータ集めの内容や報酬額にもよるとは思いますが、「調査やデータ集め」という医師側の行為と、支払われる「報酬」が「データ1件当たり◯円」というようにきちんと対応していることがポイントになりそうです。逆に言えば、「奨学寄附金」のようにその名目が曖昧な報酬の場合や、対価と考えられるものが風俗や高級クラブなど高額な接待の場合は、贈賄も収賄も成立しやすいと言えそうです。かつて業界関係者から、「警視庁捜査2課には医師や医療機器メーカーが関係する贈収賄のタレコミが相当数あり、その中から取捨選択してより悪質なものを捜査対象にしている」と聞いたことがあります。国立がん研究センター東病院のケースもそうであったとすれば、捜査2課は今回は下手を打ってしまったのかもしれません。今後は贈収賄が確実に成立するケースをターゲットにしてくると思われます。一方、贈収賄事件の頻発を背景に、医療機器メーカーや製薬企業の業界団体は医師や医療機関との関係を適正化するため、これまで以上に厳格な自主規制の動きも出てきています。次回は最近の業界団体の規制の動きについて書いてみます。(この項続く)

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市中肺炎への抗菌薬、3~4日vs.5日以上

 市中肺炎(CAP)に対する治療において、抗菌薬投与期間の短縮により有害事象や薬剤耐性リスクが抑制される可能性がある。一方、入院患者における3~4日間の短期治療を支持する実臨床データは限られている。そこで、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのGeorge Doumat氏らの研究グループは、CAPで入院し、抗菌薬投与3日目までに臨床的安定が得られた患者を対象として、3~4日間の抗菌薬治療と5日間以上の抗菌薬治療をtarget trial emulationの手法を用いて比較した。その結果、短期抗菌薬治療の適格基準を満たした患者は全体の10.1%にとどまっていた。また、この集団では3~4日間と5日間以上の治療で30日死亡や再入院などの評価項目に明確な差はみられなかった。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2026年4月14日号に掲載された。 研究グループは、米国ミシガン州の67施設のデータを用い、2017年2月23日~2024年7月31日にCAPで入院した成人患者5万5,517例を対象として、観察研究を実施した。対象患者のうち、入院1~2日目に抗菌薬治療を受けて抗菌薬投与3日目までに解熱し、臨床的に安定した短期抗菌薬治療の適格患者について解析した。解析対象患者を抗菌薬投与3日目以降に0~1日追加された短期治療群(総治療期間3~4日)、2日以上追加された長期治療群(総治療期間5日以上)に分類した。両群の比較には、target trial emulationの手法を用いた。主要評価項目は30日死亡とした。その他の評価項目として、30日以内の再入院、救急外来・緊急受診、Clostridioides difficile感染症を評価した。 主な結果は以下のとおり。・CAPで入院した5万5,517例のうち、短期抗菌薬治療の適格基準を満たしたのは5,620例(10.1%)であった。・適格患者5,620例の年齢中央値は68.2歳、男性の割合は54.3%であった。Charlson併存疾患指数の中央値は2、CURB-65スコアの中央値は2であり、中等度の重症度を有する集団であった。・適格患者における抗菌薬総投与期間の中央値は7日であり、3~4日間の短期治療を受けた患者は444例(7.9%[3日間4.4%、4日間3.5%])にとどまった。・エンピリック治療として多く使用された抗菌薬は、セフトリアキソン(89.3%)、アジスロマイシン(76.9%)であった。退院時に抗菌薬が処方された患者は80.8%で、退院時処方薬として多かったのは、経口セファロスポリン系薬(39.4%)、アジスロマイシン(34.2%)、アモキシシリン・クラブラン酸(19.9%)などであった。・30日死亡は短期治療群で3例(0.7%)、長期治療群で37例(0.7%)に発生した。短期治療群の長期治療群に対する30日死亡の調整リスク比(aRR)は0.89(95%信頼区間[CI]:0.01~2.25)であった。・30日以内の再入院は短期治療群40例(8.8%)、長期治療群417例(8.1%)に認められた(aRR:1.07、95%CI:0.81~1.42)。・緊急受診は短期治療群37例(8.1%)、長期治療群458例(8.8%)であった(aRR:0.94、95%CI:0.70~1.28)。・Clostridioides difficile感染症は、短期治療群1例(0.2%)、長期治療群11例(0.2%)に認められた(aRR:1.01、95%CI:0.18~5.68)。・抗菌薬に関連する有害事象は全体で131例(2.3%)に発現し、各群の発現割合は短期治療群3.3%、長期治療群2.2%であった。 本研究結果について、著者らは「CAPで入院した患者のうち、短期治療の適格基準を満たしたのは10.1%にとどまった。この集団では、死亡率は短期治療群、長期治療群のいずれにおいても低く、その他のアウトカムについても、短期治療と長期治療の間に差は認められなかった」とまとめた。

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肥満患者への減量介入がQOLに及ぼす影響

 肥満患者への減量介入は健康関連QOL(HRQOL)にどのような影響を及ぼすであろうか。このテーマについて、米国・ペニントン・バイオメディカル研究センターのKara D. Denstel氏らの研究グループは、プライマリケアのクリニックの肥満患者803例を対象に減量介入を2年にわたり行った。その結果、減量はHRQOLの改善と関連していることがわかった。Obesity誌2026年5月号に掲載。 研究グループは、減量とHRQOLの変化との関連性と減量介入を受けた患者間における治療反応の違いを明らかにすることを目的に、18のプライマリケアのクリニックで、24ヵ月間の集中的なライフスタイル介入群または通常ケア群に無作為に割り付け検討した。一般的なHRQOLおよび体重関連のQOLを、ベースライン時および6、12、24ヵ月時点で評価し、関連性は反復測定線形多重レベルモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象の肥満患者は803例だった。・全般的HRQOLの変化は人種や性別による差はなく、体重関連QOLも性別による差はなかった。・その一方で、黒人の患者では他の人種と比較し、体重関連QOLの改善度が低かった。・ベースラインから24ヵ月までの体重減少量と体重関連QOLの改善度との間には、次の段階的な関連が認められた。初期体重の5%未満の減量群では7.4(95%信頼区間[CI]:5.1~9.7)、5%以上10%未満の減量群では15.0(95%CI:11.4~18.5)、10%以上の減量群では18.9(95%CI:15.4~22.4)だった。・減量幅が大きいほど、ほとんどの一般的なHRQOL領域における改善度も高かった。 これらの結果から研究グループは、「減量はHRQOLの改善と関連し、体重関連QOLの変化には人種間の差異が認められた。このことは、減量に対する精密医療へのアプローチの必要性を示唆している」と結論付けている。

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うつ病治療戦略、第2世代抗精神病薬増強療法はどのタイミングで検討すべきか

 重篤な疾患を有する患者では、うつ病が頻繁に認められる。重篤な疾患に合併するうつ病は、日常生活に支障を来し、多くの場合、迅速な改善が求められる。従来の抗うつ薬では、効果が現れるまでに数週間かかることが課題となっていたが、第2世代抗精神病薬(SGA)は、一般的な精神疾患患者において、より迅速な効果発現と強力な増強効果を示すことが示唆されている。米国・エモリー大学のGregg Robbins-Welty氏らは、一般的な精神疾患および重篤な疾患を有する患者のうつ病に対するSGAの単剤療法および増強療法としての使用に関するエビデンスのレビューを実施した。Journal of Pain and Symptom Management誌オンライン版2026年3月21日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・精神医学的エビデンスでは、SGAの増強療法は、奏効率および寛解率を改善し(オッズ比:1.34~2.93、治療必要数:7~13)、その効果は1~2週間以内に認められた。・単剤療法は、忍容性が低く、ガイドラインでは推奨されていなかった。・重篤な疾患を有する患者におけるうつ病に対するSGAの有効性を特異的に評価したランダム化比較試験は存在しなかった。しかし、多くの悪性腫瘍の臨床試験において、悪心、食欲不振、その他の症状に対するSGAの安全性が支持されていた。・重篤な疾患に特化した精神医学的臨床試験は実施されていなかった。しかし、SGAは増強療法の中で最も強力なエビデンスを有しており、予後や症状の重症度から迅速な改善が求められる場合には、好影響をもたらす可能性が示唆された。 著者らは「SGAの増強療法は、複数の抗うつ薬が無効であった場合だけでなく、早期に低用量での導入を検討すべきである。とくに、SGAは緩和ケアに関連して併発する身体症状にも効果を発揮する可能性がある」としている。

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AI耐性HR+進行乳がんへのカピバセルチブ上乗せ、最終OS結果(CAPItello-291)/ESMO BREAST 2026

 アロマターゼ阻害薬(AI)治療中または治療後に再発または進行したホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対するフルベストラントへのカピバセルチブの上乗せ効果を検討した国際第III相CAPItello-291試験において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はPIK3CA、AKT1、PTENのいずれかの遺伝子変異を有する患者および全体集団で有意に改善したことが報告されている。今回、副次評価項目である全生存期間(OS)の最終解析で、PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団および全体集団のいずれにおいても統計学的に有意な改善は認められなかったことを、米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2026、5月6~8日)で発表した。しかしながら、PFS2および初回化学療法開始/死亡までの期間(TFSC)が延長し、臨床的に意義のある効果が示されたという。・対象:男性もしくは閉経前/後の女性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)・試験群(C+F群):カピバセルチブ(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg)355例・対照群(P+F群):プラセボ+フルベストラント 353例・評価項目:[主要評価項目]全体集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団におけるPFS[副次評価項目]全体集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団におけるOS、PFS2など[探索的評価項目]TFSC 主な結果は以下のとおり。・PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団におけるOS中央値は、C+F群28.5ヵ月、P+F群30.4ヵ月で、P+F群のほうが長かった。一方、ハザード比(HR)は0.83(95%信頼区間[CI]:0.63~1.10、p=0.201)でC+F群で良好だったが、有意な差は認められなかった。・全体集団におけるOS中央値は、C+F群29.4ヵ月、P+F群28.6ヵ月、HRは1.00(95%CI:0.83~1.19)で差は認められなかった。・病勢進行後に3ライン以上の後治療を受けた割合はP+F群で多く、分子標的薬の使用割合はC+F群25.8%、P+F群42.5%であった。・PFS2中央値は、PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団ではC+F群15.9ヵ月、P+F群11.1ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.53~0.88)であり、全体集団ではC+F群15.4ヵ月、P+F群12.7ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.72~1.00)であった。・TFSC中央値は、PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団ではC+F群11.0ヵ月、P+F群6.0ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.48~0.80)であり、全体集団ではC+F群11.0ヵ月、P+F群7.0ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.63~0.87)であった。・追跡期間の延長によって、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。 Rugo氏は、OSに有意な改善が認められなかったことについて、両群における後続治療や病勢進行後の治療の不均衡がOSの差の検出力を低下させた可能性を指摘した。

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MYC/BCL2二重発現DLBCL、ツシジノスタット追加でEFS改善/JAMA

 MYC/BCL2二重発現リンパ腫(DEL)は、MYCおよびBCL2の共発現で定義されるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の高リスクの一形態で、標準治療であるR-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、prednisone)療法による免疫化学療法後の予後が不良とされる。中国・上海交通大学医学院附属瑞金医院のPeng-Peng Xu氏らは「DEB試験」において、DELの1次治療では選択的ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬ツシジノスタット+R-CHOP併用療法は、R-CHOP療法単独と比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に改善し、毒性作用は全般に管理可能であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月22日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照比較第III相試験、主要エンドポイントはEFS DEB試験は、中国の40施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第III相試験(Shenzhen Chipscreen Biosciencesの助成を受けた)。2020年5月~2022年7月に、年齢18~80歳、未治療のCD20陽性DEL(免疫組織化学検査で、MYC発現≧40%かつBCL2発現≧50%と定義)患者423例(年齢中央値63歳、男性47.5%)を登録した。 被験者を、ツシジノスタット(20mg/日、21日を1サイクルとし1日目、4日目、8日目、11日目に経口投与)群(211例)またはプラセボ群(212例)に無作為に割り付けた。加えて、全例にR-CHOP療法を6サイクル施行した。これらの併用療法で完全奏効を達成した患者は、それぞれツシジノスタットまたはプラセボによる維持療法(最長24週間)を受けた。 主要エンドポイントはEFSで、無作為化から病勢進行までの期間、完全奏効後の再発、全死因死亡、残存病変に対する新たな治療の開始で定義した。副次エンドポイントは、完全奏効割合、病勢進行、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)および忍容性などとした。EFSはツシジノスタット群が有意に優れる、完全奏効割合も ツシジノスタット群の80.6%が6サイクルのツシジノスタット+R-CHOPを完遂し、プラセボ群の77.8%が6サイクルのプラセボ+R-CHOPを完遂した。追跡期間中央値は41.3ヵ月(四分位範囲[IQR]:16.4~48.4)だった。 EFS中央値は、ツシジノスタット群が未到達(95%信頼区間[CI]:35.3~未到達)、プラセボ群は26.4ヵ月(95%CI:10.1~未到達)であった。層別ハザード比(HR)は0.72(95%CI:0.54~0.96)であり、ツシジノスタット群で有意に優れた(p=0.02)。また、2年EFS率は、それぞれ60.3%および50.5%だった(群間差:9.8%、95%CI:0.4~19.2)。 併用療法後の完全奏効割合は、ツシジノスタット群で73.0%、プラセボ群で61.8%であった(群間差:11.1%、95%CI:2.3~20.0)。2年無増悪生存期間(PFS)率はツシジノスタット群69.3%、プラセボ群62.8%(HR:0.78、95%CI:0.56~1.09)、2年DFS率はそれぞれ76.9%および72.8%(HR:0.79、95%CI:0.51~1.20)、2年OS率は81.4%および73.6%(HR:0.77、95%CI:0.53~1.13)であり、いずれも数値上はツシジノスタット群のほうが良好だった。PFS、DFS、OSの中央値には、両群とも未到達であった。治療関連の重篤な有害事象は47.9%vs.28.3% 併用療法中のGrade3以上の有害事象は、ツシジノスタット群で85.8%、プラセボ群で72.6%に発生した。維持療法中のGrade3以上の有害事象は、それぞれ77.4%および39.1%に認めた。 治療関連の重篤な有害事象は、プラセボ群の28.3%に比べツシジノスタット群は47.9%と頻度が高かったが、全般に支持療法により管理可能であった。治療関連有害事象による死亡は、ツシジノスタット群で6例(2.8%)、プラセボ群で7例(3.3%)に発生した。エピジェネティック調節薬の有益性を初めて実証 著者は、「本試験は、DLBCLにおけるエピジェネティック調節薬の有益性を初めて実証した研究であり、この高リスク患者群に、MYCおよびBCL2発がんタンパク質を二重の標的とする新たな1次治療法をもたらすものである」としている。 また、「DLBCL患者では、1次治療における完全奏効の達成が長期の治癒に結びつくことが先行研究で確認されている。本試験では、R-CHOPへのツシジノスタットの追加により、R-CHOP単独に比べ完全奏効割合が11.1%向上し、OSなどで数値上の改善を認めた」と考察している。

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持続性心房細動の1次治療、PFAが抗不整脈薬を上回る/NEJM

 持続性心房細動の初期治療として、非熱性アブレーション技術を用いたパルスフィールドアブレーション(PFA)を受けた患者は、抗不整脈薬療法を受けた患者と比較して、心房性不整脈の再発リスクが有意に低く、重篤な有害事象のリスクは同程度であることが示された。米国・クリーブランドクリニックのOussama M. Wazni氏らAVANT GUARD Study Investigatorsが「AVANT GUARD試験」の結果を報告した。持続性心房細動患者では、著しい電気的、構造的なリモデリングが高頻度に発生するため、発作性心房細動患者に比べて従来の熱性アブレーションの治療成績が劣る傾向にあった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年4月25日号に掲載された。国際的な無作為化対照比較試験 AVANT GUARD試験は、国際的な無作為化対照比較試験であり、2023年12月~2025年2月に、年齢18歳以上で症候性の持続性心房細動(持続期間:7~365日)と診断された未治療の患者310例(無作為化の対象)と、安全性のエンドポイントの評価に限定してPFAを受ける患者100例を登録した(Boston Scientificの助成を受けた)。 被験者を、先端が5本の枝(電極)に分かれたカテーテル(pentaspline catheter)を用いたPFAを受ける群(207例)または抗不整脈薬療法を受ける群(103例)に無作為に割り付けた。心拍を継続的に監視するために、すべての患者に植込み型心臓モニターを埋設した。 有効性の主要エンドポイントは、12ヵ月時点での治療の成功(短期的成功と長期的成功から成る)であった。短期的成功は、PFA群では手技の成功、抗不整脈薬群ではブランキング期間(治療開始から90日)中のアブレーション非施行とした。長期的成功は、PFA群では治療開始後90日~12ヵ月の期間に、心房性不整脈の再発や再アブレーションがなく、抗不整脈薬の必要性を認めないこと、抗不整脈薬群ではどの時点でもアミオダロン使用の必要性が生じないこととした。 安全性の主要エンドポイントは、デバイスまたは手技関連の重篤な有害事象であった。12ヵ月時の治療成功率、PFA群56%vs.抗不整脈薬群30% PFA群の207例(平均[±SD]年齢68.1[±8.5]歳、女性31%)、抗不整脈薬群の102例(67.4[±8.7]歳、25%)、安全性PFA群の78例(67.2[±9.6]歳、29%)を解析の対象とした。PFAの平均施術時間は85(±32)分、左房における平均カテーテル操作時間は51(±20)分(20分の待機時間を含む)であった。 12ヵ月時点での治療成功は、PFA群では207例中128例(Kaplan-Meier推定値:56%、95%信頼区間[CI]:48~63)で達成され、抗不整脈薬群の103例中40例(30%、95%CI:21~40)に対し有意に優れた(ハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.33~0.65、p<0.001)。 1年後の心房性不整脈負担中央値は、PFA群が0.0%(四分位範囲[IQR]:0.0~0.4)、抗不整脈薬群は0.2%(IQR:0.0~4.5)であった(群間差中央値:-0.2%ポイント、IQR:-0.3~0.0)。安全性の主要エンドポイント発生率は5.1% PFA群(無作為化群と安全性群を合わせた患者)において、安全性の主要エンドポイントは257例中13例(5.1%)に発生した。この値は、事前に規定された安全性の性能目標(12%)を満たした。また、12ヵ月時点で、重篤な有害事象はPFA群の45例(25%)、抗不整脈薬群の20例(21%)に発現した。 6件の神経学的イベントが、手技関連の脳卒中の基準を満たすと判定された。また、すべての脳卒中関連イベントは、NIHSSの4点以下(軽度)であり、追跡調査により全例で臨床的改善または完全回復を確認した。 著者は、「これらの知見は、より進行した心房細動を有する患者集団の初期治療において、5本枝のPFAカテーテルを用いたアブレーションは、抗不整脈薬よりもリズムコントロールに有効な治療法であることを示すものである」としている。

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コントロール不良の高血圧、チームベースの介入は有効か

 チームによる集中的な治療によって、コントロール不良の高血圧患者の血圧が大幅に低下する可能性があることが、米テュレーン大学疫学教授のKatherine Mills氏らによる新たな臨床試験で示された。高血圧患者のうち、チームベースの多角的な治療を1年半にわたって受けた患者では、収縮期血圧が平均で約16mmHg低下したという。この臨床試験の結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に4月8日掲載された。 研究グループによると、米国では成人の半数以上が130/80mmHg超で定義される高血圧に該当する。さらに問題なのは、高血圧患者の約78%で血圧が適切にコントロールされていないことだ。コントロール不良の高血圧は、心疾患や脳卒中、腎不全、認知症、早期死亡のリスク上昇と関連している。 今回の臨床試験では、コントロール不良の高血圧患者1,272人(平均年齢58.8歳、女性56.7%)を対象に、チームベースの多角的な高血圧治療の効果が検討された。対象者は、多角的なアプローチで血圧管理を受ける介入群(642人)と、強化された標準ケアを受ける対照群(630人)にランダムに割り付けられた。多角的なアプローチは、医師や看護師などによるチーム医療、プロトコルに基づく厳格な血圧管理、血圧管理の評価とフィードバック、生活習慣・服薬のコーチング、家庭血圧測定で構成されていた。一方、標準ケアの強化として、医師に対して高血圧の診療ガイドラインに関する教育が実施された。 18カ月後、介入群の収縮期血圧はベースラインから平均で15.5mmHg低下したのに対し、対照群では9.1mmHgの低下にとどまった。両群間の差は統計学的に有意であった(P<0.001)。研究グループによると、この収縮期血圧の差は、心筋梗塞や脳卒中、心不全といった心血管イベントの約10%の減少につながる可能性があるという。また、介入群では、収縮期血圧130mmHg未満の達成率が47.7%、120mmHg未満の達成率が21.8%だったのに対し、対照群の達成率は、それぞれ36.4%、15.1%にとどまっていた。 筆頭著者のMills氏は、「高血圧を治療するためのツールは既に複数あるが、難しいのは、こうしたツールをプライマリケアに効果的に取り入れ、患者の薬物療法や生活習慣の改善の遵守につなげることだ。本試験では、農村部と都市部の低所得地域において、コントロール不良の高血圧患者を支援し、治療するチームによるアプローチが、血圧を効果的に低下させ得ることが示された」とニュースリリースの中で述べている。 共著者でテュレーン大学医学部プライマリケア医学部門長のMarie Krousel-Wood氏は、「臨床試験に参加した患者の多くは長年にわたって高血圧の治療を受けてきた患者であった。このことから、臨床現場のような困難を伴う状況においてもこのアプローチが血圧低下に有効であることが示されたといえる」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、全米の約1,400施設に上る連邦政府認定保健センターや、人々がプライマリケアを受けるあらゆる場所に、こうしたチームベースのアプローチが導入されることを望んでいるという。論文の上席著者で米テキサス大学サウスウェスタン医療センター公衆衛生大学院疫学部門長のJiang He氏は、「コントロール不良の高血圧は、臨床および公衆衛生における重大な課題である。血圧コントロールを向上させるため、この効果的で持続可能かつ拡張可能な導入戦略を米国で広く採用すべきだ」と、ニュースリリースで主張している。

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アルツハイマー病の脳変化に性差

 アルツハイマー病の進行に伴う脳の変化には性差があり、通常の診断で用いられている認知機能評価ツールでは、女性の変化が見逃される可能性があるようだ。健常者、軽度認知障害(MCI)患者、アルツハイマー病患者の脳MRI画像を用いた研究において、男性は健常からMCIにかけての初期段階から灰白質体積(GMV)が緩やかに減少し、その後も比較的緩やかに推移するのに対し、女性では初期段階ではGMVが保たれているものの、その後、アルツハイマー病発症までの段階で急激に減少する傾向が示された。米ジョージア州立大学物理学・天文学分野のMukesh Dhamala氏らによるこの研究の詳細は、「Brain Communications」に4月3日掲載された。 研究グループは、「標準的なスクリーニング検査ツールであるMMSE(ミニメンタルステート検査)は、万人に同一の基準が該当することを前提としており、脳の変化の仕方が男女で異なることを考慮していない」と指摘している。 この研究では、332人の脳の高解像度MRI画像を用いて、脳を82の領域に分けて解析し、健常状態からMCI、さらにアルツハイマー病へ至る過程における脳の変化を、GMVに着目して男女間で比較した。画像は、健常者(160人;男性77人、女性83人)、MCI患者(112人;男性55人、女性57人)、アルツハイマー病患者(60人;男性34人、女性26人)から取得されたものだった。 その結果、アルツハイマー病へ至る過程で脳に生じる変化は、男女間で有意に異なることが確認された。女性では、健常とMCIとの間ではGMVに有意な変化は認められなかったが(P=1.000)、MCIとアルツハイマー病との間ではGMVが大きく減少した(P<0.001)。これに対し、男性では健常とMCIとの間でGMVが有意に減少し(P<0.001)、健常とアルツハイマー病との間でもGMVが有意に減少したものの、MCIとアルツハイマー病との間では有意な差は認められなかった(P=1.000)。MCIの女性では男性と比べてGMVが有意に大きかったが、アルツハイマー病ではこのパターンが逆転し、女性のGMVは男性と比べて有意に小さかった(P=0.015)。 次に、MMSEと日常生活動作の評価尺度であるFunctional Activities Questionnaire(FAQ)に焦点を当てて脳の変化との関連を検討した。その結果、左上側頭回のGMVはMMSEと正の相関を、FAQとは負の相関を示し、GMVが大きいほど認知機能が高く、日常生活動作も維持されていることが示唆された。さらに女性では、GMVとMMSEおよびFAQとの関連が男性より広範な脳領域で認められた。 以上の結果から、女性ではMMSEスコアが低下し始める頃には、すでに脳の損傷がかなり進んでいる可能性が示唆された。この「見かけ上の正常さ」は、受診や治療開始の遅れにつながる恐れがある。Dhamala氏は、「MCI段階でMMSEスコアが良好な女性でも、そのスコアだけでは捉えきれない脳の変化が進行している可能性がある」と述べている。 研究グループは、今回の知見が個別化医療の実現に向けた基盤になると期待している。Dhamala氏は、「こうした研究の積み重ねにより、将来的には性別ごとの適切なスクリーニング時期が明らかになり、より早期で精度の高い介入につながることが期待される」と述べている。女性の場合、ホルモン変化が脳の健康に大きく影響する中年期や閉経後が、その重要な時期となる可能性がある。また、脳の健康を守るためには、知的・身体的に活動的でいること、血管リスクを管理すること、認知症や関連疾患の家族歴や遺伝的リスクについて医師に相談することが重要だとしている。

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高血圧患者、MACE予防と1日の歩数

1日の歩数が1,000歩増えるごとに高血圧患者の心不全や脳卒中などのリスクが低下1日1,000歩増加で減少する発症リスク歩行速度とMACEリスク(2,344歩/日における発症リスクを1とした場合)117.1%減22.4%減9.3%減(1日で最も速い30分間の平均歩行速度)24.5%減30%減発症リスクMACE※心不全心筋梗塞脳卒中0MACE※心不全心筋梗塞脳卒中※MACE(主要心血管イベント):心血管疾患による死亡、心不全・心筋梗塞・脳卒中38.3歩/分76.6歩/分1日の歩数が10,000歩に満たなくても、より多く、より速く歩くことで、心血管病リスクを減少させる可能性があります対象:英国の高血圧患者3万6,192例(平均年齢64歳、男性48%)方法:1日の歩数と歩行強度、MACEおよびその構成要素である心不全・心筋梗塞・脳卒中の発症を平均7.8年追跡Cheng SWM, et al. Eur J Prev Cardiol. 2025 Aug 6. [Epub ahead of print]Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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