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キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ、以下バロキサビル)は2018年2月に承認され、臨床で使用されている。国立感染症研究所の高下 恵美氏らの研究グループは、最初の7シーズン(2017/18~2023/24シーズン)におけるインフルエンザウイルスのバロキサビル感受性を調査した。その結果、感受性低下の割合は1.7%であった。本研究結果は、Eurosurveillance誌2026年1月8日号に掲載された。 研究グループは、WHOのFluNetに報告された国内のインフルエンザウイルス3万7,137件のうち、約500の定点医療機関から収集した検体から週ごとに加重無作為抽出した3,671件について、インフルエンザウイルスの表現型および遺伝子型の解析を実施した。また、インフルエンザウイルスのPAタンパク質におけるアミノ酸置換を特定し、バロキサビルに対する感受性との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象のインフルエンザウイルスの内訳は、A(H1N1)pdm09が1,378件、A(H3N2)が1,399件、B(ビクトリア系統)が608件、B(山形系統)が286件であった。・バロキサビルへの感受性低下が認められたウイルスの割合は、調査期間全体で1.7%(62/3,671件)であった。・シーズン別にみると、A(H3N2)が流行した2018/19シーズン(4.6%)および2022/23シーズン(3.2%)に高かった。なお、2018/19シーズンはバロキサビルの供給量が最も多いシーズンであった。シーズン別の詳細は以下のとおり。 2017/18:0%(0/833件) 2018/19:4.6%(41/900件) 2019/20:0.2%(1/612件) 2020/21:0%(0/6件) 2021/22:0%(0/23件) 2022/23:3.2%(15/465件) 2023/24:0.6%(5/832件)・ウイルスの種類別にみると、A(H3N2)が3.6%(50/1,399件)と最も高かった。次点がA(H1N1)pdm09で0.9%(12/1,378件)であった。B型では感受性低下は検出されなかった。・感受性低下に関連する主なPAタンパク質のアミノ酸置換として、E23K、Y24C、I38M/N/S/T/V、E199G/Kが特定された。・感受性低下株は、バロキサビル投与歴のある患者だけでなく、未投与の患者からも検出されており、ヒトからヒトへの伝播の可能性が示唆された。・年齢層別にみると、A(H3N2)における感受性低下株の検出頻度は、6~11歳および65歳以上で共に4.4%と最も高かった。詳細は以下のとおり。 0~5歳:3.2%(11/349件) 6~11歳:4.4%(19/427件) 12~64歳:3.1%(17/551件) 65歳以上:4.4%(3/68件) 不明:0%(0/4件) 本研究結果について、著者らは「バロキサビルの使用量の増加と感受性低下株の出現との間に関連があることが示唆された。感受性低下株は比較的少ないものの、伝播しうる変異株が存在することが示された」と指摘している。また「バロキサビルの使用量と感受性低下株出現との関連が示唆されることから、適切な治療戦略の構築や耐性株の拡散防止のためには、今後も表現型および遺伝子型に基づく継続的な監視が必要である」と述べている。