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父親の厳しい子育てが子供のメンタルヘルスに影響

 青年期における厳しい子育ては、抑うつ症状のリスクを高める可能性がある。しかし、その影響には個人差があり、リスクを増悪または軽減させる要因を明らかにする必要がある。睡眠の問題は、対処能力を低下させるだけでなく、厳しい子育てを増幅させる可能性もある。米国・ニューメキシコ大学のRyan J. Kelly氏らは、青年期の睡眠を調整因子として、青年期の厳しい子育てとその後の抑うつ症状の関係を調査した。Sleep Health誌オンライン版2025年9月17日号の報告。 9年間にわたる5wave(子供の年齢が16、17、18、23、25歳)研究を実施した。16歳で研究に参加した家族は245組(女性の割合:52%、白人/ヨーロッパ系米国人:67%、黒人/アフリカ系米国人:33%)、5waveすべてに参加した家族は132組であった。母親と父親は、16〜18歳までに子供に行った厳しい子育て(言葉による虐待および身体的な虐待)の頻度について報告した。16〜18歳までの子供の睡眠時間および睡眠の質(睡眠維持効率、長時間覚醒エピソード)の測定には、アクティグラフィーを用いた。抑うつ症状は、5waveのすべてで自己申告により評価した。 主な結果は以下のとおり。・自己回帰効果をコントロールした後、構造方程式モデルを用いて、青年期における父親の厳しい子育てと成人初期の抑うつ症状との関連を悪化させる因子は、青年期における睡眠時間の短縮、睡眠維持効率の低下、長時間覚醒エピソードの増加であることが明らかとなった。【青年期における睡眠時間の短縮】β=-0.16、p<0.03【睡眠維持効率の低下】β=-0.30、p<0.001【長時間覚醒エピソードの増加】β=0.24、p=0.004・母親の厳しい子育ては、青年期の睡眠状況に関わらず、リスク変化に影響しなかった。 著者らは「青年期における父親の厳しい子育てと睡眠障害との相互作用は、成人初期の抑うつ症状を予測する可能性が示された。これらの結果は、父親の厳しい子育てを受けた子供のメンタルヘルスを改善するうえで、睡眠を考慮することの重要性を示唆している」と結論付けている。

2.

寝たきり原因第1位「脳卒中」、最新治療アクセス改善と患者支援の最前線/日本脳卒中学会・日本脳卒中医療ケア従事者連合・日本脳卒中協会

 日本脳卒中学会、日本脳卒中医療ケア従事者連合、日本脳卒中協会の主催による「脳卒中メディアフォーラム」が10月15日に開催された。杏林大学医学部脳卒中医学 教授の平野 照之氏が司会を務めた。「脳卒中・循環器病対策基本法」および「脳卒中と循環器病克服5か年計画」に基づき、(1)脳卒中医療体制の整備、(2)地域多職種連携、(3)患者・家族支援と社会への啓発活動という3つの柱に沿って、各団体の理事長から最新の取り組みが報告された。1. 医療体制の整備:地域格差を埋める「遠隔医療」が鍵 最初に、日本脳卒中学会 理事長の藤本 茂氏(自治医科大学内科学講座神経内科学部門 教授)が「脳卒中・循環器病対策基本法と脳卒中と循環器病克服5か年計画に基づく脳卒中医療の整備」をテーマに発表した。 超高齢社会を迎えた日本において、脳卒中は死因の第4位、そして重度の要介護(要介護レベル4・5)に至る原因の第1位を占めている。年間で医療費約1.8兆円、介護費約1.9兆円が費やされており、社会全体で取り組むべき喫緊の課題となっている。 脳梗塞の超急性期治療は、時間との戦いとなる。発症から数時間以内に行われる血栓溶解薬(rt-PA)の投与や、カテーテルで血栓を回収する機械的血栓回収療法は、後遺症を大きく左右する。rt-PA静注療法を24時間365日提供できる体制を整えたのが「一次脳卒中センター(PSC:Primary Stroke Center)」であり、さらに高度な血栓回収療法まで常時対応可能なのが「PSCコア施設」である。 藤本氏の報告によると、これらの認定施設は全国に広がり、救急車で60分以内にPSCへ到達できる人口の割合は99%に達した。しかし、より高度な治療が可能なPSCコア施設へ30分以内に到達できる割合は82.8%に留まり、依然として地域による医療格差が存在する。とくに地方や僻地・離島では治療の機会を逃すケースが少なくない。 この課題の解決策として注目されているのが、遠隔医療(テレストローク)だ。専門医がいない地域の病院(スポーク施設)にいる患者を、専門医がいる中核病院(ハブ施設)から情報通信機器を通じて診断・支援する仕組みである。これにより、rt-PA投与の判断・実施や、血栓回収療法のための適応判断が迅速に行えるようになる。 令和6年度の診療報酬改定でもこの遠隔連携が評価されるようになり、超急性期脳卒中加算の見直しが行われ、脳血栓回収療法連携加算(5,000点)が新設された。今後、専門医がいない地域でも再灌流療法を受けられる体制の全国的な整備が加速すると期待される。学会は、現在15.8%にとどまる再灌流療法の施行率を、まずは20%以上に引き上げることを目標に掲げている。 また、急性期医療と並行して、患者・家族への支援体制の充実も図られている。その中核を担うのが、PSCコア施設などに設置されている「脳卒中相談窓口」だ。ここでは、多職種の専門スタッフが、急性期から退院後の生活までを見据え、リハビリテーションや介護、社会福祉サービスに関する情報提供や相談支援をワンストップで行う。活動の標準化のため『脳卒中相談窓口マニュアル』も作成された1)。相談件数は年々倍増しており、患者や家族の不安に寄り添う重要な拠点として全国的に活発化している。2. 地域多職種連携:「総合支援センター」をハブに、切れ目のない支援を 続いて、日本脳卒中医療ケア従事者連合 理事長の宮本 享氏(京都大学医学部附属病院特任病院教授 脳卒中療養支援センター長・もやもや病支援センター長)が、「脳卒中・心臓病等総合支援センターをハブとした地域多職種連携」をテーマに発表した。 脳卒中患者の支援は、急性期病院を退院して終わりではない。むしろ、その後の回復期、生活期におけるリハビリや再発予防、社会復帰支援こそが重要となる。宮本氏は、これを実現するためには、医師、看護師、理学療法士、医療ソーシャルワーカー(MSW)など、多様な専門職が組織的に連携する必要があると強調した。 その司令塔となるのが、各都道府県に設置が進む「脳卒中・心臓病等総合支援センター」だ。宮本氏は、同センターが脳卒中と心臓病という2つの循環器疾患を対象とすることを説明しつつ、とくに急性期後の回復期・生活期においては、両者で必要とされる医療システムが大きく異なるため、それぞれに特化した支援体制の構築が重要であると述べた。このセンターの役割は、個々の患者を直接支援するだけでなく、地域のハブとして、どの医療機関にかかっても標準化された質の高い情報提供や相談支援が受けられる体制を構築することにある。 先進的な事例として紹介された京都府では、総合支援センターが中心となり、以下のような多職種・地域連携のネットワークを構築している。・きょうとサンナイ会:「ならない(予防)・手遅れにならない(急性期治療)・まけない(リハビリ)」をコンセプトにした患者・家族向けの情報発信の場。府内の各病院がそれぞれの「サンナイ会」を持つことで、標準化された情報をニューズレターなどの形で広範な患者・家族に届けるネットワークを形成している。・脳卒中相談窓口連携会議:府内49の急性期・回復期病院のMSWが定期的に情報交換。患者が抱える共通の課題(例:「装具難民」問題、嚥下リハビリ外来の情報不足など)を共有し、地域全体の資源マップを作成・共有することで、どの病院でも同じ情報を提供できる体制を整えている。・かかりつけ医・薬局との連携:京都府医師会や薬剤師会と協力し、「脳卒中生活期かかりつけ医・かかりつけ薬局」の登録制度を開始。かかりつけ医やかかりつけ薬局が患者に最も身近な相談窓口となり、患者が退院後も地域で安心して療養を続けられるよう整備している。 しかし、この重要な役割を担う総合支援センターの運営は、都道府県の予算に大きく依存している。専従職員の雇用や諸活動費など事業継続に必要な年間1,000万円以上の予算が確保できているのは13都道県のみという厳しい現実も報告された。持続可能な支援体制の構築には、行政による安定した財政支援が不可欠だという。3. 啓発と患者支援:当事者の「声」を社会に届ける 最後に、日本脳卒中協会 理事長 峰松 一夫氏(医誠会国際総合病院 病院長)が「脳卒中に関する啓発・患者支援活動」について発表した。 日本脳卒中協会は、市民への啓発と、患者・家族に寄り添う支援活動の両輪で脳卒中対策に取り組んでいる。啓発活動の柱は、毎年10月の「脳卒中月間」だ。今年の標語「過信より 受診で防ぐ 脳卒中」を掲げ、全国でキャンペーンを展開する2)。10月29日の「世界脳卒中デー」には、東京都庁舎をはじめ全国50以上のランドマークを脳卒中のシンボルカラーであるインディゴブルーにライトアップし、市民の関心を呼び掛ける3)。 続いて峰松氏は、脳卒中の主要な後遺症の一つである「失語症」への社会的な理解の必要性について語った。失語症は、話す・聞く・読む・書くことが困難になる症状で、その多くが脳卒中に起因する。しかし、その存在や当事者が直面する困難(契約や法的手続きでの不利益など)は十分に知られておらず、「脳卒中・循環器病対策基本法」に対策が盛り込まれたものの具体的な支援はまだ始まっていない。協会は、まずこの症状への認知度を高めることが急務であると訴えた。 患者支援では、当事者の「孤立」を防ぎ、「声」を社会に届けるための取り組みが進んでいる。脳卒中サロンは、患者や家族が互いの経験を語り合い、支え合うピアサポートの場。会員の高齢化で患者会が減少する中、急性期病院と回復期病院が連携してサロンを立ち上げるモデル事業を全国5県で展開。そのノウハウをまとめた『脳卒中サロン 設立・運営マニュアル』をウェブで公開し、全国への普及を目指している4)。 続いて、自らも脳卒中経験者である日本脳卒中協会副理事長 川勝 弘之氏が、脳卒中スピーカーズバンクの活動について語った5)。この活動は、脳卒中経験者自身が「語り部」となり、自らの体験を学校や職場で伝える活動だ。2025年現在、30人のメンバーにより構成されている。内閣府の調査では、国民の95.7%が脳卒中を「怖い」と感じる一方で、若年層の半数以上が生活習慣を「改善するつもりはない」と回答している。専門家による難しい話ではなく、「当事者のリアルな言葉」こそが、人々の行動変容を促す力を持つ。しかし、メンバーの意欲は高まるものの、市民公開講座などの講演の機会はまだまだ少なく、活動の認知度向上が課題であるという。 フォーラムの最後には、今後も3団体が連携し、脳卒中という大きな課題に対し、医療の進歩だけでは不十分であり、地域社会全体で患者を支え、予防意識を高めていくという強いメッセージが示された。

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結腸がん術後ctDNAによるde-escalation、リスク低減も非劣性は示されず(DYNAMIC-III)/ESMO2025

 術後のctDNA検査の結果をその後の治療選択に役立てる、という臨床試験が複数のがん種で進行している。DYNAMIC-IIIは結腸がん患者を対象に、術後のctDNA検査結果に基づいて、術後化学療法の強度変更を検討した試験である。今年6月の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)ではctDNA陽性の治療強化例の解析結果が発表され、治療強化は無再発生存期間(RFS)を改善しないことが示された。10月17~21日に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、Peter MacCallum Cancer Centre(オーストラリア・メルボルン)のJeanne Tie氏がctDNA陰性のde-escalation(治療減弱)の解析結果を発表した。ctDNA陽性例と合わせた本試験の結果は、Nature Medicine誌オンライン版2025年10月20日号に同時掲載された。・試験デザイン:多施設共同ランダム化第II/III相試験・対象:切除可能、StageIII結腸がん患者。術後5~6週でctDNA検査を受け、試験群と対照群に1:1の割合で割り付け・試験群:de-escalation群(6ヵ月のフルオロピリミジン[FP]単剤療法→経過観察または3ヵ月のFP単剤に変更、3ヵ月のオキサリプラチン+FP併用療法→3~6ヵ月のFP単剤に変更、6ヵ月の併用療法→3ヵ月の併用療法または6ヵ月のFP単剤に変更、から選択)353例・対照群:標準治療群(ctDNA検査の結果は非表示、医師選択による治療)349例・評価項目:[主要評価項目]3年RFS(片側97.5%信頼区間の下限が-7.5%を超えない場合、非劣性と判断)[副次評価項目]治療関連入院、ctDNA陰性化など 主な結果は以下のとおり。・参加者968例のうち、702例(72.5%)がctDNA陰性だった。353例がde-escalation群、349例が標準治療群に割り付けられた。追跡期間中央値47ヵ月中、90.4%(319/353例)がde-escalationを受けた。・de-escalation群は、標準治療群と比較してオキサリプラチンベースの化学療法の実施率が低く(34.8%対88.6%、p<0.001)、Grade3以上の有害事象(6.2%対10.6%、p=0.037)および治療関連入院(8.5%対13.2%、p=0.048)も少なかった。しかし、3年RFSはわずかに低下し、de-escalationの非劣性は示されなかった(3年RFS:85.3%対88.1%、差:-2.8%)。・サブグループ解析では、低リスク群(T1~3N1)においては、de-escalationが非劣性となる可能性が示唆された(3年RFS:91.0%対93.2%、差:-2.2%)。 Tie氏は「術後ctDNA陰性例の3年RFSは87%と高く、再発リスクは低かった。ctDNAによるde-escalationは対象者の9割で実行可能で、オキサリプラチン曝露量と有害事象を低減した。標準治療と比較した非劣性は示せなかったものの、低リスク例においては標準治療に近い結果が得られる可能性が示された。今後は個々の患者によるリスク・ベネフィットをさらに議論する必要があるだろう」とした。

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免疫療法の対象とならない進行TN乳がん1次治療、Dato-DXdがPFSとOSを延長(TROPION-Breast02)/ESMO2025

 免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)が化学療法に比べ有意に全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を延長したことが第III相TROPION-Breast02試験で示された。シンガポール・National Cancer Center SingaporeのRebecca Dent氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。・試験デザイン:国際共同ランダム化非盲検第III相試験・対象:免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない未治療の局所再発切除不能/転移TNBC・試験群:Dato-DXd(3週ごと6mg/kg点滴静注)323例・対照群:治験責任医師選択化学療法(ICC)(nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチンから選択)321例・評価項目:[主要評価項目]OS、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2025年8月25日)の追跡期間中央値は27.5ヵ月で、PFSイベントが63%に、OSイベントは54%で発生していた。被験者の再発までの期間(DFI)別の割合は、de novoが34%、0~12ヵ月が21%(0~6ヵ月は15%)、12ヵ月超が約45%であった。・BICRによるPFS中央値は、Dato-DXd群が10.8ヵ月とICC群(5.6ヵ月)より有意に延長した(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.47~0.69、p<0.0001)。この傾向は、臨床的に重要なサブグループで一貫していた。・OS中央値は、Dato-DXd群が23.7ヵ月でICC群18.7ヵ月より5ヵ月延長し、有意に延長した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、p=0.0291)。この傾向はほとんどのサブグループで一貫していた。・BICR評価によるORRは、Dato-DXd群が62.5%とICC群(29.3%)の2倍以上、完全奏効率(CR)は3倍以上であった。この傾向はすべてのサブグループで一貫していた。・DOR中央値は、Dato-DXd群12.3ヵ月、ICC群7.1ヵ月であった。・治療期間中央値は、Dato-DXd群(8.5ヵ月)がICC群(4.1ヵ月)の2倍以上だったが、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は両群で同程度であり、中止率はICC群より低かった。Dato-DXd群の主なTRAEはドライアイ、口内炎、悪心であった。 Rebecca Dent氏は「本試験の結果は、免疫療法の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるTNBC患者における新たな1次治療の標準治療としてDato-DXdを支持する」と結論した。

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下剤のルビプロストン、重大な副作用にアナフィラキシー追加/厚労省

 2025年10月22日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、下剤のルビプロストン(商品名:アミティーザカプセル)や帯状疱疹ワクチン(同:シングリックス筋注用)において、「重大な副作用」が追加された。 ルビプロストンについては、国内のアナフィラキシー関連症例12例を評価したところ、本剤との因果関係が否定できない症例を5例(死亡0例)認めたため、使用上の注意を改訂することが適切と判断され、「重大な副作用」の項にアナフィラキシーが追記された。 また、乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(チャイニーズハムスター卵巣細胞由来)では、ギラン・バレー症候群5例のうち因果関係が否定できない症例を1例認めたため、「重大な副作用」の項にギラン・バレー症候群が追記された。 そのほか、閉経期女性のホルモン補充療法(HRT)に用いられる15品目に対し、「臨床使用に基づく情報」の項に卵胞ホルモン製剤単剤使用における乳がんに関する注意喚起としてHRTと乳の危険性が追加された。

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腹部大手術時の周術期血圧管理、個別化vs.通常/JAMA

 腹部大手術を受ける術後合併症リスクが高い患者において、術前夜間平均動脈圧(MAP)に基づく個別周術期血圧管理は、MAP目標値65mmHg以上とする通常血圧管理と比較して、術後7日以内の急性腎障害、急性心筋障害、非致死的心停止または死亡の複合アウトカムを減少させなかった。ドイツ・University Medical Center Hamburg-EppendorfのBernd Saugel氏らIMPROVE-multi Trial Groupが、同国15の大学病院で実施した無作為化単盲検試験「IMPROVE-multi試験」の結果を報告した。手術中の低血圧は臓器損傷と関連しているが、手術中の血圧管理が臨床アウトカムを改善可能かについては不明であった。JAMA誌オンライン版2025年10月12日号掲載の報告。術後7日以内の複合アウトカムを評価 研究グループは、2023年2月26日~2024年4月25日に、全身麻酔下にて90分以上の手術時間が予定される腹部大手術を受ける45歳以上の患者で、少なくとも1つの高リスク基準を満たす患者を登録し、個別血圧管理群と通常血圧管理群に1対1の割合で無作為に割り付けた(最終追跡調査日2024年7月25日)。 全例、24時間血圧モニターを用いて術前血圧を1晩にわたり30分間隔で測定し、深夜0時~午前6時に測定されたMAPに基づき、各患者の術前夜間MAPを算出した。 個別血圧管理群では、全身麻酔導入開始時から術後2時間まで、術前夜間MAP値以上の保持を目標とした。術前夜間MAPが65mmHg未満の患者では65mmHg以上、110mmHg超の患者では110mmHg以上を周術期MAPの目標値とした。一方、通常血圧管理群では、目標MAPを65mmHg以上とした。 主要アウトカムは、術後7日以内の急性腎障害、急性心筋障害、非致死的心停止または死亡の複合アウトカムの発生率、副次アウトカムは、術後3~7日における主要アウトカムの構成項目の各発生率、術後7日以内の感染性合併症、術後30日および90日以内の腎代替療法、心筋梗塞、非致死的心停止または死亡の複合アウトカムなど、22項目であった。複合アウトカムの発生に有意差なし 7,621例がスクリーニングを受け、1,272例が登録された。このうち1,142例が無作為化され(各群571例)、手術中止または同意撤回の8例を除く1,134例が主要アウトカムおよび副次アウトカムの解析対象集団となった(年齢中央値66歳[四分位範囲:59~73]、女性34.1%)。 主要複合アウトカムは、個別血圧管理群で33.5%(190/567例)、通常血圧管理群で30.5%(173/567例)に発現した(相対リスク:1.10、95%信頼区間:0.93~1.30、p=0.31)。 副次アウトカムについては、22項目のいずれも有意差は認められなかった。術後7日以内の感染性合併症は、個別血圧管理群15.9%、通常血圧管理群17.1%(p=0.63)であり、術後90日以内の腎代替療法、心筋梗塞、非致死的心停止または死亡の複合アウトカムはそれぞれ5.7%と3.5%(p=0.12)であった。

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SGLT2阻害薬、自己免疫性リウマチ性疾患のリスクは?/BMJ

 韓国の大規模な2型糖尿病成人コホートにおいて、SGLT2阻害薬はスルホニル尿素(SU)薬と比較し自己免疫性リウマチ性疾患のリスクを11%低下させることが、韓国・成均館大学校のBin Hong氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で示された。SGLT2阻害薬は、その潜在的な免疫調節能により自己免疫疾患への転用候補の1つと考えられているが、自己免疫病態に関与する発症経路における重要な細胞や分子に対する阻害作用が臨床的に意味を有するかどうかは依然として不明であった。著者は、「今回の結果は、SGLT2阻害薬が自己免疫疾患のリスク低減に寄与する可能性を示唆しているが、潜在的な有益性は、既知の有害事象や忍容性に関する懸念と慎重に比較検討する必要があり、他の集団や状況における再現性の検証、ならびに自己免疫性リウマチ性疾患患者を対象とした研究が求められる」と述べている。BMJ誌2025年10月15日号掲載の報告。2型糖尿病成人約200万例を対象に解析 研究グループは、韓国の人口の98%をカバーする国民健康保険サービスのデータベース(2012~22年)を用い、2014年9月1日(韓国におけるSGLT2阻害薬の保険適用開始日)~2022年12月31日にSGLT2阻害薬またはSU薬を新規に投与された2型糖尿病成人(18歳以上)について解析した。 主要アウトカムは、自己免疫性リウマチ性疾患で、ICD-10診断コードおよび韓国の希少難治性疾患登録(RIDR)プログラムへの登録を用いて特定した。副次アウトカムは、炎症性関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎の複合)および結合組織疾患であった。また、残余交絡を評価するため、陽性対照アウトカムとして性器感染症、陰性対照アウトカムとして帯状疱疹を用いた。 傾向スコアに基づく正規化逆確率重み付けを用いて交絡因子を調整し、加重イベント数、発生率、10万人年当たりの発生率差とその95%信頼区間(CI)を算出するとともに、Cox比例ハザード回帰モデルを用いてハザード比(HR)とその95%CIを推定した。 自己免疫性リウマチ性疾患の診断歴がなくベースラインで研究対象薬剤を使用していないSGLT2阻害薬新規使用者55万2,065例、およびSU薬新規使用者148万92例が特定された。傾向スコア重み付け後、SGLT2阻害薬開始群103万88例(平均年齢58.5歳、男性59.9%)とSU薬開始群100万2,069例(平均年齢58.5歳、男性60.1%)が解析対象となった。SGLT2阻害薬群はSU薬群と比較しリスクが11%低下 追跡期間中央値は、SGLT2阻害薬開始群9.1ヵ月(四分位範囲:3.8~25.2)、SU薬開始群7.8ヵ月(3.1~23.5)であった 新たに自己免疫性リウマチ性疾患と診断された患者は、SGLT2阻害薬開始群で790例、SU薬開始群で840例確認された。加重発生率はそれぞれ51.90/10万人年と58.41/10万人年であり、率差は-6.50/10万人年(95%CI:-11.86~-1.14)、HRは0.89(95%CI:0.81~0.98)であった。 SGLT2阻害薬に関連する自己免疫性リウマチ性疾患のリスク低下は、年齢、性別、SGLT2阻害薬の種類、ベースラインの心血管疾患、およびBMIで層別化したサブグループ間でおおむね一貫していた。 副次アウトカムについては、炎症性関節炎のHRが0.86(95%CI:0.77~0.97)、結合組織疾患のHRは0.95(95%CI:0.79~1.14)であった。 対照アウトカムに関しては、性器感染症のHRは2.78(95%CI:2.72~2.83)、帯状疱疹のHRは1.03(95%CI:1.01~1.05)であった。

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ALK陽性進行NSCLCへのアレクチニブ、OS中央値81.1ヵ月(ALEX)/ESMO2025

 ALK融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するアレクチニブは、海外第III相無作為化比較試験「ALEX試験」において、全生存期間(OS)中央値81.1ヵ月、奏効期間(DOR)中央値42.3ヵ月と良好な治療成績を示した。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)において、Tony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が本試験のOSの最終解析結果を発表した。本試験は、ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLC患者を対象として、アレクチニブの有用性をクリゾチニブとの比較により検証する試験である。本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の最終解析結果はすでに報告されており、アレクチニブのクリゾチニブに対する優越性が示されている1,2)。今回は、PFSの最終解析時から約6年の追跡期間が追加された。なお、本結果はAnnals of Oncology誌オンライン版2025年10月17日号に同時掲載された3)。・試験デザイン:海外第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療のStageIIIB/IV(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回) 152例・対照群(クリゾチニブ群):クリゾチニブ(1回250mg、1日2回) 151例・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OS、DOR、安全性など 今回発表された主な結果は以下のとおり。・StageIII/IVの割合は、アレクチニブ群2.6%/97.4%、クリゾチニブ群4.0%/96.0%であった。中枢神経系(CNS)転移ありの割合は、それぞれ42.1%、38.4%であった。・OS中央値は、アレクチニブ群81.1ヵ月、クリゾチニブ54.2ヵ月であった(層別ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.56~1.08)。7年OS率は、それぞれ48.6%、38.2%であった。・CNS転移の有無別にみたアレクチニブ群とクリゾチニブ群のOS中央値は、以下のとおりであった。 【CNS転移あり】 63.4ヵ月vs.30.9ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.40~1.15) 【CNS転移なし】 94.0ヵ月vs.69.8ヵ月(HR:0.87、95%CI:0.58~1.32)・DOR中央値は、アレクチニブ群42.3ヵ月、クリゾチニブ群11.1ヵ月であった(HR:0.41、95%CI:0.30~0.56)。・治療期間中央値は、アレクチニブ群28.1ヵ月、クリゾチニブ群10.8ヵ月であった。・治療中止に至った有害事象の発現割合は、アレクチニブ群17.8%、クリゾチニブ群14.6%であった。減量に至った有害事象の発現割合は、それぞれ23.0%、19.9%であった。アレクチニブの中止または減量に至った主な有害事象は、血中ビリルビン増加(中止3.3%、減量5.3%)であった。クリゾチニブの中止または減量に至った主な有害事象は、ALT(6.6%、8.6%)であった。 本結果について、Mok氏は「アレクチニブは、ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLCに対する1次治療の標準治療であることを支持するものである」とまとめた。

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心筋梗塞の非責任病変は結局どうしたら良いのか?(解説:山地杏平氏)

 非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)症例で多枝冠動脈疾患を有する患者を対象に、責任病変のみを治療する群と、非責任病変に対してFFR(fractional flow reserve)を用いた評価に基づき完全血行再建を行う群を比較したSLIM試験が、ESC 2025で発表され、同日JAMA誌に掲載されました。 本試験は、欧州の9施設で実施された多施設共同無作為化比較試験であり、NSTEMIおよび多枝病変を有する478例が登録されました。主要評価項目は、1年後の複合エンドポイント(全死亡、非致死性心筋梗塞、任意再血行再建、脳卒中)であり、完全再建群では13例(5.5%)、責任病変群では32例(13.6%)に発生し、完全再建群で有意に低値でした(ハザード比:0.38、95%信頼区間:0.20~0.72、p=0.003)。とくに再血行再建の発生率は、完全再建群で3.0%、責任病変群で11.5%と大きな差が認められました。 本試験を考えるうえで重要なのは、非責任病変の扱いです。責任病変のみ治療群でも、イベントには含まれない形で、ハートチームの判断により13%(31例)に非責任病変へのPCIが施行されました。一方、完全再建群ではFFRに基づく評価が行われ、約47%(116例)で非責任病変へのPCIが実施されました。 この「ハートチームの判断」という点が本研究のやや曖昧な部分であり、実質的には「FFRによる機能的評価」と「ハートチームによる臨床的判断」の比較になっています。そのため、今回の結果をそのまま実臨床に適用する際には慎重な解釈が求められます。たとえば、目視でFFRを算出できる熟練者がハートチームに参加していた場合や、冠動脈造影ベースでFFR評価を行った場合には、本試験で観察された差は見られなかった可能性があります。 いずれにせよ、今回の研究結果を踏まえると、NSTEMI症例のような高リスク症例においては、FFRで治療適応と評価される病変に対して積極的に完全血行再建を行うことが、その後の再血行再建イベントの予防に有効であると考えられます。一方で、FFRで治療適応がないと評価された病変でも、不安定プラークを有する場合には将来のイベントリスクが高いとされます。心筋梗塞における非責任病変のリスク層別化は、引き続き検討が必要な課題です。

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女房にとっての三大ビックリ!【Dr. 中島の 新・徒然草】(603)

六百三の段 女房にとっての三大ビックリ!一雨ごとに秋の深まる今日この頃……というのは、今くらいの季節に使う台詞でしょうか。皆さま、お変わりなくお過ごしのことと思います。さて、先日の夜の幹線道路。車を運転していた私に、助手席の女房がふいに尋ねてきました。 女房 「この緑色のって、変更できるの?」 何のことかと思えば、車内のイルミネーションの色の話です。 中島 「もちろん! 何かリクエストある?」 女房 「もっと明るい色にできないかな」 そう言われて、私はタッチパネルを操作し、緑から黄色、ピンクと、次々と色を変えてみせました。 女房 「それにしても、ディーラーでこのイルミネーションの説明を聞いたとき『こんな嬉しげなものを欲しがる人がいるのか』と思ってたけど、まさかウチの亭主が付けるとはね」 中島 「な、なんてことを! こういう光に包まれてたらヤル気が出るやんか!」 そう言ったものの、あまり説得力はなかったようです。そういえば、この手の会話パターンは以前にもありました。昔、私がWikipediaに寄付していることがバレたときのことです。 女房 「こんなのに寄付する人がいるんだと思ってたら……ウチの亭主だったのね」 明らかにがっかりされました。でも、私は結構Wikipediaを愛用しているので、少しくらい寄付してもいいと思っているのです。私がこれまで利用してきた情報量を百科事典の値段に換算したら、100万円どころか1,000万円でも足りないはず。その恩恵への感謝として5,000円を数回寄付するくらいは安いものだと思うのですが。どうやら世の中の大半の人は、そうは考えないようです。極めつけは、ネットの天気予報です。「26分後に小雨が降り始める」とか「その1時間後にやむ」とか、最近の天気予報は本当に細かくなりました。中には現地の天気を視聴者が報告できるものもあります。「○○市の現在の天気:晴れ15人、雨3人、曇り28人」みたいな表示ですね。あるとき、私は自分の今の空模様に合わせて「曇り」のボタンをプチッと押しました。すると…… 女房 「お、押しよった!」 隣にいた女房が驚いていました。 女房 「こんなモノに投票する人間が……まさかここにいたとは!」 中島 「押すやろ、普通。一種の社会貢献やんか」 女房 「社会貢献って! それ、言葉の使い方が間違ってるでしょ」 いや、普通は押すと思うんですけど。多くの人が自分の今の天気を報告すれば、それだけ正確な現地の情報がわかるわけですから。とはいえ、そうは思わない人もいるみたいですね。というわけで、車のイルミネーション、Wikipediaへの寄付、そしてネット天気予報の投票。どうやらこれらが、女房にとっての三大ビックリらしいです。長い間、夫婦をやっていても、お互いに理解不能なところは残るもの。でも、それもまた一興。「みんな違って、みんないい」って……ちょっと違うか。たぶん、いずこも同じなのでしょう。では、また。最後に1句 秋雨や まだまだ仰天 夫婦でも

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第33回 帯状疱疹ウイルスが脳を蝕む可能性? 1億人超のデータが示す結果と「ワクチン」という希望

多くの人が子供の頃にかかる「水ぼうそう」。その原因ウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が、治った後も体内に静かに潜み続け、数十年後に「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」として再活性化することはよく知られています。しかし、この身近なウイルスが、将来の認知症リスクと深く関わっているかもしれない。そんな可能性を示唆する大規模な研究結果が、権威ある医学誌Nature Medicine誌に発表されました1)。アメリカの1億人を超える医療記録を分析したこの研究は、帯状疱疹の発症やその予防ワクチンが、認知症リスクにどう影響するのかを、かつてない規模で明らかにしています。この記事では、その研究結果の内容と私たちの健康維持にどう活かせるのかを解説していきます。神経に潜むウイルス「VZV」と帯状疱疹水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、ほとんどの成人が体内に持っている非常に一般的なウイルスです。初めての感染では「水ぼうそう」として発症しますが、症状が治まった後もウイルスは神経節(神経細胞が集まる場所)に潜伏し、生涯にわたって体内に存在し続けます。そして、加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに、この潜んでいたウイルスが再び活性化することがあります。これが「帯状疱疹」で、体の片側に痛みを伴う水ぶくれが現れるのが特徴です。VZVは神経を好むウイルスであるため、帯状疱疹後神経痛のような長期的な痛みを引き起こすこともあります。近年、このVZVのような神経に入り込むウイルスが、認知症の発症に関与しているのではないかという証拠が集まりつつありました。VZVが脳内で炎症を引き起こしたり、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβのような異常タンパク質の蓄積を促したりする可能性が、実験室レベルの研究で示唆されていたのです。しかし、これが実際どれほどのリスクになるのかは、はっきりとはわかっていませんでした。1億人の記録が示す「帯状疱疹と認知症」の密接な関係今回の研究チームは、この疑問に答えるため、アメリカの巨大な電子カルテデータベースに着目しました。7,000以上の病院やクリニックから集められた、1億人以上の匿名化された個人の医療記録を、2007~23年にわたって追跡調査したのです。研究チームは、最新の機械学習技術を駆使し、年齢、性別、人種、持病、服用薬、生活習慣(喫煙など)、さらには医療機関へのアクセス頻度など、認知症リスクに影響しうる約400もの因子を厳密に調整しました。これにより、「帯状疱疹(VZVの再活性化)」という要因が、他の要因とは独立して認知症リスクにどれだけ影響するかを、高い精度で評価することを試みました。その結果、驚くべき関連性が次々と明らかになりました。まず、帯状疱疹を経験した人は、そうでない人と比べて、将来的に認知症と診断されるリスクが高いことが示されました。さらに興味深いことに、帯状疱疹を1回経験した人に比べ、2回以上繰り返した人では、認知症リスクが7〜9%も高かったのです。これは、ウイルスの再活性化による体への「負担」が大きいほど、認知症リスクも高まる可能性を示唆しています。しかし、この研究はリスクだけでなく、希望の光も示しています。帯状疱疹を予防するためのワクチンを接種した人は、接種していない人と比較して、認知症リスクが明らかに低かったのです。とくに、より効果の高い不活化ワクチン(商品名:シングリックス)を2回接種した場合では、認知症リスクが27%低減していました。とくに注目すべきは、過去に使用されていた生ワクチンの効果に関する分析です。このワクチンは帯状疱疹予防効果が時間とともに薄れることが知られていますが、研究チームがワクチン接種後15年間にわたって追跡したところ、帯状疱疹予防効果の低下と、認知症リスク低減効果の消失が、見事に相関していました。これは、「ワクチンでVZVの再活性化を抑えること」こそが、認知症リスク低減のメカニズムであることを裏付ける結果と言えます。加えて、帯状疱疹になりやすいとされる高齢者や女性においては、ワクチン接種による認知症リスクの低減効果が、全体集団よりもさらに大きい傾向が見られました。これらの結果は、さまざまな角度から帯状疱疹が認知症の進行に関わる「修正可能なリスク因子」である可能性を強く示唆しています。ただし、この研究は非常に大規模で説得力がありますが、いくつかの限界点も認識しておく必要があります。最大の点は、これが「観察研究」であるということです。つまり、「帯状疱疹の予防」と「認知症リスクの低減」の間に強い関連性を示しましたが、ワクチン接種が原因となって認知症を防いだ、という因果関係を完全に証明したわけではありません。研究チームは、考えうる他の要因の影響を統計的に最大限排除しようと試みていますが、未知の因子が影響している可能性はゼロではありません。また、電子カルテのデータに依存しているため、診断の精度や記録の網羅性にも限界があります。私たちの生活にどう活かす?この研究は、認知症予防の新たな可能性を提示するものです。認知症の原因は複雑で、遺伝や生活習慣など多くの要因が絡み合っていますが、帯状疱疹もその一つとして無視できない存在である可能性があるのです。今回の研究結果は、帯状疱疹ワクチンが認知症を「直接」予防すると断定するものではありませんが、ワクチンが帯状疱疹の発症を効果的に抑えることは明らかになっており、その結果として認知症リスクを低減する可能性が強く示唆されました。とくに日本でも現在主流となっている不活化ワクチン(シングリックス)は、高い予防効果が長期間持続すると明らかになっています。そのため、50歳以上の方は、帯状疱疹そのものの予防(さらに、厄介な神経痛の予防)という観点からも、認知症リスクを下げる観点からも、ワクチン接種について相談する価値があると言えるでしょう。また、過去に帯状疱疹を経験したことがある方は、この研究結果を踏まえ、他の認知症リスク因子(高血圧、糖尿病、喫煙、運動不足など)の管理にも、より一層注意を払うことが勧められるということなのかもしれません。 参考文献・参考サイト 1) Polisky V, et al. Varicella-zoster virus reactivation and the risk of dementia. Nat Med. 2025 Oct 6. [Epub ahead of print]

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初発統合失調症における性特異的プロラクチン異常と性腺ホルモンとの関連

 統合失調症患者では、高プロラクチン血症やプロラクチン(PRL)値の上昇が頻繁に認められる。しかし、初回エピソード統合失調症患者におけるPRL調節不全の有病率に関する性差を検討した研究は非常に少ない。中国・Second People's Hospital of LishuiのAnle Pan氏らは、初回エピソード統合失調症患者における性別特異的なPRL調節不全と性腺ホルモンとの相互作用について検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2025年10月1日号の報告。 対象は、2週間以内の最小限の治療を行った初回エピソード統合失調症患者189例(男性:96例、女性:93例)。すべての対象患者においてPRL値と性腺ホルモンを測定した。 主な結果は以下のとおり。・男性は、女性と比較し、PRL値異常の有病率が有意に高かった(32.3%vs.8.6%、χ2=16.2、p<0.001)。・PRL高値群(39例)とPRL正常群(150例)の性腺ホルモンの比較解析では、高プロラクチン血症群において卵胞刺激ホルモン(Z=2.7、p=0.007)およびテストステロン(Z=3.7、p<0.001)の上昇が認められた。・PRL高値群では、PRLはプロゲステロンおよびテストステロンと正の相関が認められた。一方、PRL正常群では、PRLはエストラジオールおよび黄体形成ホルモンと正の相関を示したものの、プロゲステロンとは負の相関を示した。 著者らは「初回エピソード統合失調症患者におけるPRL調節不全の複雑かつ性別特異的な異常およびそれが性腺ホルモンと関連していることが強く示唆された」としている。

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蕁麻疹に外用薬は非推奨、再確認したい治療の3ステップ

 かゆみを伴う赤みを帯びた膨らみ(膨疹)が一時的に現れて、しばらくすると跡形もなく消える蕁麻疹は、診察時には消えていることも多く、医師は症状を直接みて対応することが難しい。そのため、医師と患者の間には認識ギャップが生まれやすく、適切な診断・治療が選択されない要因となっている。サノフィは9月25日、慢性特発性蕁麻疹についてメディアセミナーを開催し、福永 淳氏(大阪医科薬科大学皮膚科学/アレルギーセンター)がその診療課題と治療進展について講演した。 なお、蕁麻疹の診療ガイドラインは現在改訂作業が進められており、次改訂版では病型分類における慢性(あるいは急性)蕁麻疹について、原因が特定できないという意味を表す“特発性”という言葉を加え、“慢性(急性)特発性蕁麻疹”に名称変更が予定されている。蕁麻疹の第1選択は経口の抗ヒスタミン薬、外用薬は非推奨 慢性特発性蕁麻疹は「原因が特定されず、症状(かゆみを伴う赤みを帯びた膨らみが現れて消える状態)が6週間以上続く蕁麻疹」と定義され、蕁麻疹患者全体の約6割を占める1)。幅広い世代でみられ40代に患者数のピークがあり1)、女性が約6割と報告されている2)。医療情報データベースを用いた最新の研究では、慢性特発性蕁麻疹の推定有病割合は1.6%、推定患者数は約200万人、1年間の新規発症者数は約100万人と推計されている3)。 蕁麻疹診療ガイドライン4)で推奨されている治療ステップは以下のとおりで、内服の抗ヒスタミン薬が治療の基本だが、臨床現場では蕁麻疹に対してステロイド外用薬が使われている事例も多くみられる。福永氏は「蕁麻疹に対するステロイド外用薬はガイドラインでは推奨されておらず、エビデンスもない」と指摘した。[治療の3ステップ]Step 1 抗ヒスタミン薬Step 2 状態に応じてH2拮抗薬*1、抗ロイコトリエン薬*1を追加Step 3 分子標的薬、免疫抑制薬*1、経口ステロイド薬*2を追加または変更*1:蕁麻疹、*2:慢性例に対しては保険適用外だが、炎症やかゆみを抑えることを目的に、慢性特発性蕁麻疹の治療にも使われることがある分子標的薬の登場で、Step 3の治療選択肢も広がる 一方で、Step 1の標準用量の第2世代抗ヒスタミン薬による治療では、コントロール不十分な患者が60%以上いると推定されている5,6)。Step 2の治療薬はエビデンスレベルとしては低く、国際的なガイドラインでは推奨度が低い。エビデンスレベルとしてはStep 3に位置付けられている分子標的薬のほうが高く、今後の日本のガイドラインでの位置付けについては検討されていくと福永氏は説明した。 原因が特定されない疾患ではあるが、薬剤の開発により病態の解明が進んでいる。福永氏は、「かゆみの原因となるヒスタミンを抑えるという出口戦略としての治療に頼る状況から、アレルギー反応を引き起こす物質をターゲットとした分子標的薬が使えるようになったことは大きい」とした。約4割が10年以上症状継続と回答、医師と患者の間に生じている認識ギャップ 症状コントロールが不十分(蕁麻疹コントロールテスト[UCT]スコア12点未満)な慢性特発性蕁麻疹患者277人を対象に、サノフィが実施した「慢性特発性じんましんの治療実態調査(2025年)」によると、39.0%が最初に症状が出てから現在までの期間が「10年以上」と回答し、うち27.8%は現在も「ほぼ毎日症状が出続けている」と回答した。福永氏は、「蕁麻疹は誰にでも起こりうるありふれた病気として、時間が経てば治ると思っている患者さんは多い。しかしなかには慢性化して、長期間症状に悩まされる患者さんもいる」とし、診療のなかでその可能性についても説明できるとよいが、現状なかなかできていないケースも多いのではないかと指摘した。 また、慢性特発性蕁麻疹をどのような疾患だと思うかという問いに対しては、「治療で完治を目指せる病気」との回答は5.1%にとどまり、コントロール不十分な慢性特発性蕁麻疹患者の多くが完治を目指せるとは思っていないことが明らかになった。福永氏は、「治療をしてもすぐには完治しないが、症状が出ていないときも治療を継続することが重要」とした。 原因を知りたいから検査をしてほしいという患者側のニーズと、蕁麻疹との関連が疑われる病歴や身体的所見がある場合に検査が推奨される医療者側にもギャップが生じることがある。福永氏は、「必ず原因がわかる病気ではなく、原因究明よりも治療が重要ということを説明する必要がある」と話し、丁寧な対話に加え、患部の写真撮影をお願いする、UCTスコアを活用するといった、ギャップを埋めるため・見えないものを見える化するための診療上の工夫の重要性を強調して講演を締めくくった。■参考文献1)Saito R, et al. J Dermatol. 2022;49:1255-1262.2)Fukunaga A, et al. J Clin Med. 2024;13:2967.3)Fukunaga A, et al. J Dermatol. 2025 Sep 8. [Epub ahead of print]4)秀 道広ほか. 蕁麻疹診療ガイドライン 2018. 日皮会誌. 128:2503-2624;2018.5)Guillen-Aguinaga S, et al. Br J Dermatol. 2016;175:1153-1165.6)Min TK, et al. Allergy Asthma Immunol Res. 2019;11:470-481.

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免疫療法の対象とならない進行TN乳がんの1次治療、SGがPFS延長(ASCENT-03)/ESMO2025

 PD-1/PD-L1阻害薬の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、サシツズマブ ゴビテカン(SG)が化学療法より有意な無増悪生存期間(PFS)の延長と持続的な奏効をもたらしたことが、第III相ASCENT-03試験で示された。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。なお、本結果はNEJM誌オンライン版2025年10月18日号に掲載された。・試験デザイン:国際共同ランダム化非盲検第III相試験・対象:PD-1/PD-L1阻害薬投与対象外(PD-L1陰性、PD-L1陽性でPD-1/PD-L1阻害薬の治療歴あり、併存疾患により不適格)で未治療(治療歴がある場合は6ヵ月以上無治療)の局所進行切除不能/転移TNBC患者・試験群:SG(21日サイクルの1日目と8日目に10mg/kg点滴静注)279例・対照群:化学療法(パクリタキセルもしくはnab-パクリタキセルもしくはゲムシタビン+カルボプラチン)279例、病勢進行後クロスオーバー可・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)・奏効期間(DOR)・奏効までの期間、安全性、QOL 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2025年4月2日)時における追跡期間中央値は13.2ヵ月、349例にPFSイベントが発生していた。患者の地域別の構成は米国/カナダ/西ヨーロッパが32%、その他が68%であった。・主要評価項目であるBICRによるPFSは、SG群が化学療法群に比べて有意に改善した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.50~0.77、p<0.0001、中央値:9.7ヵ月vs.6.9ヵ月)。このベネフィットは、事前に規定された主要なサブグループで一貫して認められた。・ORRは、SG群が48%、化学療法群が46%と同程度であったが、DOR中央値はSG群(12.2ヵ月)が化学療法群(7.2ヵ月)より長かった。・OSは今回の解析ではimmatureであった。HRは0.98で、中央値はSG群で21.5ヵ月、化学療法群で20.2ヵ月であった。・PFS2(ランダム化から後続治療後の病勢進行/死亡までの期間)中央値は、SG群(18.2ヵ月)が化学療法群(14ヵ月)より長く、HRは0.70(95%CI:0.55~0.90)であった。・Grade3以上の治療関連TEAEは、SG群61%、化学療法群53%であった。TEAEによる治療中止割合は、SG群4%、化学療法群12%、減量に至った割合は、SG群で37%、化学療法群で45%であった。治療関連死はSG群で6例(すべて感染症による死亡)、化学療法群で1例報告された。・SGの有害事象は既知の安全性プロファイルと一致しており、Grade3以上の発現割合は好中球減少が43%、下痢が9%であった。 Javier Cortes氏は「本試験のデータは、PD-1/PD-L1阻害薬を投与できない未治療の転移TNBC患者における新たな標準治療の可能性としてSGを支持する」と結論した。

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ALK陽性非小細胞肺がんにおけるアレクチニブ後ブリグチニブの有効性/ESMO2025

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療にはアレクチニブが広く使われるが、後治療については確立されていない。ALK陽性NSCLCに対する第2世代ALK-TKIブリグチニブの前向き多施設共同観察研究であるWJOG11919L/ABRAID試験が行われている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、アレクチニブ直後治療として同剤を評価したコホートAの初回解析結果が発表された。 対象はStageIIIB/IIIC/IVまたは再発のALK陽性NSCLC、主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、CNS病変症例におけるPFS(CNS-PFS)、安全性である。 主な結果は以下のとおり。・登録対象から102例が有効性評価対象となった。患者の年齢中央値は66.5歳、PS 0~1が89%を占め、CNS転移は36%に認められた。アレクチニブ中止の理由は94%が疾患進行であった。・ブリグチニブのPFS中央値は6.5ヵ月で95%信頼区間は4.83〜8.84ヵ月、12ヵ月PFS割合は33.3%、24ヵ月PFS割合は20.5%であった。事前に特定した95%信頼区間の下限値4.0ヵ月を達成した。・ORRは31.4%、DCRは70.6%であった。・CNS-PFS中央値は10.8ヵ月であった。・ctDNAを解析した87例中16例(18.3%)でALK変異が検出され、ALK変異陽性例と陰性例のPFS中央値は同程度であった(7.3ヵ月対6.9ヵ月)。・TP53変異は87例中19例(21.8%)で検出され、TP53変異陽性例では陰性例に比べPFS中央値が短い傾向が見られた(5.8ヵ月対8.3ヵ月)。・安全性は従来の知見と一貫していた。頻度が高い有害事象は、CPK上昇(48.1%)、AST上昇(34.6%)、ALT上昇(26.9%)など。肺臓炎/ILDは10.6%(Grade3は4.8%)に発現した。

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世界の死亡パターン、過去30年の傾向と特徴/Lancet

 米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Causes of Death Collaboratorsは、過去30年の世界における死亡のパターンを、改善された推定法を用いて調査し、COVID-19パンデミックのような重大イベントの影響、さらには低所得地域での非感染性疾患(NCD)の増加といった世界で疫学的転換が進んでいることを反映した、より広範な分野にわたる傾向を明らかにした。死因の定量化は、人々の健康を改善する効果的な戦略開発に向けた基礎的な段階である。GBDは、世界の死因を時代を超えて包括的かつ体系的に解析した結果を提供するものであり、GBD 2023では年齢と死因の関連の理解を深めることを目的として、70歳未満で死亡する確率(70q0)と死因別および性別の平均死亡年齢の定量化が行われた。Lancet誌2025年10月18日号掲載の報告。1990~2023年の292の死因について定量化 GBD 2023では、1990~2023年の各年について、204の国と地域および660のサブナショナル(地方政府)地域における年齢・性別・居住地・暦年ごとに分類した292の死因の推定値を算出した。 ほとんどの死因別死亡率の算出には、GBDのために開発されたモデリングツール「Cause of Death Ensemble model:CODEm」が用いられた。また、損失生存年数(YLL)、死亡確率、死亡時平均年齢、死亡時観測年齢および推定平均年齢も算出した。結果は件数と年齢標準化率で報告された。 GBD 2023における死因推定法の改善点は、COVID-19による死亡の誤分類の修正、COVID-19推定法のアップデート、CODEmモデリングフレームワークのアップデートなどであった。 解析には5万5,761のデータソースが用いられ、人口動態登録および口頭剖検データとともに、サーベイ、国勢調査、サーベイランスシステム、がん登録などのデータが含まれている。GBD 2023では、以前のGBDに使用されたデータに加えて、新たに312ヵ国年の人口動態登録の死因データ、3ヵ国年のサーベイランスデータ、51ヵ国年の口頭剖検データ、144ヵ国年のその他のタイプのデータが追加された。死因トップは2021年のみCOVID-19、時系列的には虚血性心疾患と脳卒中が上位2つ COVID-19パンデミックの初期数年は、長年にわたる世界の主要な死因順位に入れ替わりが起き、2021年にはCOVID-19が、世界の主要なレベル3のGBD死因分類の第1位であった。2023年には、COVID-19は同20位に落ち込み、上位2つの主要な死因は時系列的には典型的な順位(すなわち虚血性心疾患と脳卒中)に戻っていた。 虚血性心疾患と脳卒中は主要な死因のままであるが、世界的に年齢標準化死亡率の低下が進んでいた。他の4つの主要な死因(下痢性疾患、結核、胃がん、麻疹)も本研究対象の30年間で世界的に年齢標準化死亡率が大きく低下していた。その他の死因、とくに一部の地域では紛争やテロによる死因について、男女間で異なるパターンがみられた。 年齢標準化率でみたYLLは、新生児疾患についてかなりの減少が起きていた。それにもかかわらず、COVID-19が一時的に主要な死因になった2021年を除き、新生児疾患は世界のYLLの主要な要因であった。1990年と比較して、多くのワクチンで予防可能な疾患、とりわけジフテリア、百日咳、破傷風、麻疹で、総YLLは著しく低下していた。死亡時平均年齢、70q0は、性別や地域で大きくばらつき 加えて本研究では、全死因死亡率と死因別死亡率の平均死亡年齢を定量化し、性別および地域によって注目すべき違いがあることが判明した。 世界全体の全死因死亡時平均年齢は、1990年の46.8歳(95%不確実性区間[UI]:46.6~47.0)から2023年には63.4歳(63.1~63.7)に上昇した。男性では、1990年45.4歳(45.1~45.7)から2023年61.2歳(60.7~61.6)に、女性は同48.5歳(48.1~48.8)から65.9歳(65.5~66.3)に上昇した。2023年の全死因死亡平均年齢が最も高かったのは高所得super-regionで、女性は80.9歳(80.9~81.0)、男性は74.8歳(74.8~74.9)に達していた。対照的に、全死因死亡時平均年齢が最も低かったのはサハラ以南のアフリカ諸国で、2023年において女性は38.0歳(37.5~38.4)、男性は35.6歳(35.2~35.9)だった。 全死因70q0は、2000年から2023年にかけて、すべてのGBD super-region・region全体で低下していたが、それらの間で大きなばらつきがあることが認められた。 女性は、薬物使用障害、紛争およびテロリズムにより70q0が著しく上昇していることが明らかになった。男性の70q0上昇の主要な要因には、薬物使用障害とともに糖尿病も含まれていた。サハラ以南のアフリカ諸国では、多くのNCDについて70q0の上昇がみられた。また、NCDによる死亡時平均年齢は、全体では予測値よりも低かった。対象的に高所得super-regionでは薬物使用障害による70q0の上昇がみられたが、観測された死亡時平均年齢は予測値よりも低年齢であった。

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急性期脳梗塞、再灌流後のアルテプラーゼ投与は有益?/JAMA

 前方循環の主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中を呈し、機械的血栓除去術による血管内再灌流を達成した患者において、アルテプラーゼ動脈内投与は90日時点で優れたアウトカムを示す可能性が高いことを、中国・中山大学のXinguang Yang氏らPEARL Investigatorsが無作為化試験の結果で示した。アルテプラーゼ動脈内投与群では、全死因死亡率および頭蓋内出血の発現率が高かったが、統計学的有意差は認められなかった。主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中を呈し、血栓除去術を受けた患者における機能的アウトカムは、依然として最適とはいえず、血栓除去術後のアルテプラーゼ動脈内投与の有益性は不明のままであった。JAMA誌オンライン版2025年10月13日号掲載の報告。中国の28病院で無作為化試験、アルテプラーゼ動脈内投与vs.標準治療 研究グループは、前方循環の主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中を呈し、発症後24時間以内に血栓除去術を受け、再灌流を達成した患者(expanded Thrombolysis in Cerebral Infarction[eTICI]スケールスコア≧2b50)を対象に、多施設共同無作為化試験を行った。 試験は2023年8月1日~2024年10月16日に中国の28病院で行われた。被験者は、アルテプラーゼ動脈内投与(0.225mg/kg、最大用量20mg)群または標準治療群に無作為に割り付けられ追跡評価を受けた。最終フォローアップは2025年1月7日。 主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡]、0または1が最良のアウトカムを示す)が0または1の患者の割合であった。安全性アウトカムは、無作為化後36時間以内に発現した症候性頭蓋内出血、90日以内の全死因死亡率および36時間以内のあらゆる頭蓋内出血などであった。90日時点の修正Rankinスケールスコア0/1達成割合で有意差 324例がアルテプラーゼ動脈内投与群(164例)または標準治療群(160例)に無作為化された(年齢中央値68歳[四分位範囲:58~75]、女性99例[30.6%])。各群1例がフォローアップを受けなかった。 90日時点で修正Rankinスケールスコアが0または1の患者の割合は、アルテプラーゼ動脈内投与群44.8%(73/163例)、標準治療群30.2%(48/159例)であった(補正後リスク比[RR]:1.45、95%信頼区間[CI]:1.08~1.96、p=0.01)。 36時間以内に症候性頭蓋内出血が発現した患者の割合は、アルテプラーゼ動脈内投与群4.3%(7/164例)、標準治療群5.0%(8/160例)であった(補正後RR:0.85、95%CI:0.43~1.69、p=0.67)。90日以内の全死因死亡率は、それぞれ17.1%(28/164例)と11.3%(18/160例)であり(1.60、0.88~2.89、p=0.12)、36時間以内のあらゆる頭蓋内出血は32.9%(54/164例)と26.9%(43/160例)だった(1.22、0.92~1.63、p=0.17)。

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PSMA陽性mHSPC、177Lu-PSMA-617追加でrPFS改善(PSMAddition)/ESMO2025

 PSMA陽性の転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)患者において、アンドロゲン除去療法(ADT)+アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)への[177Lu]Lu-PSMA-617(177Lu-PSMA-617)追加が画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善した。米国・Weill Cornell MedicineのScott T. Tagawa氏が、第III相PSMAddition試験の2回目の中間解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。・対象:全身治療歴なしまたは全身治療歴の短い(術前/術後ADTおよび/または転移疾患に対する最大45日までのADT/ARPIは許容)PSMA陽性mHSPC患者(ECOG PS 0~2、ADT+ARPIに対する適格性あり)・試験群(177Lu-PSMA-617群):177Lu-PSMA-617(7.4GBq±10%を6週ごとに6サイクル)+標準治療(ADT+ARPI) 572例・対照群:標準治療(ADT+ARPI) 572例※盲検下独立評価委員会(BIRC)の評価により画像上の進行(rPD)が認められた患者は試験群にクロスオーバー可能・評価項目:[主要評価項目]PCWG3/RECIST v1.1に基づくBIRC判定によるrPFS[重要な副次評価項目]OS[その他の副次評価項目]RECIST v1.1に基づくBIRC判定による奏効率(ORR)、転移去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)/PSA progression/症候性骨関連事象発生までの期間、安全性、QOLなど・層別化因子:CHAARTED基準に基づく腫瘍量(高vs.低)、年齢(≧70歳vs.<70歳)、原発巣に対する照射あるいは手術歴(ありvs.なし)・観察期間中央値23.6ヵ月(データカットオフ:2025年1月13日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はともに68.0歳、PSA中央値は177Lu-PSMA-617群12.06ng/mL vs.対照群11.64ng/mL、高腫瘍量の患者が68.0%vs.68.2%、ECOG PS 0の患者が69.4%vs.71.2%を占めた。・対照群の15.9%が177Lu-PSMA-617群にクロスオーバーした。・BIRC判定によるrPFS中央値は177Lu-PSMA-617群NR(95%信頼区間[CI]:NE~NE)vs.対照群NR(95%CI:29.7~NE)で、177Lu-PSMA-617群で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.58~0.90、p=0.002)。・177Lu-PSMA-617群におけるrPFSベネフィットはすべてのサブグループで一貫していた。・OS中央値は、未成熟なデータではあるがともにNR(95%CI:NE~NE)で、177Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられた(HR:0.84、95%CI:0.63~1.13、p=0.125)。・BIRC判定によるORRは177Lu-PSMA-617群85.3%(95%CI:79.9~89.6)vs.対照群80.8%(95%CI:74.8~85.8)、完全奏功(CR)は57.1%vs.42.3%であった。・PSA progressionまでの期間(HR:0.42、95%CI:0.30~0.59)、症候性骨関連事象発生までの期間(HR:0.89、95%CI:0.62~1.26)、mCRPCまでの期間(HR:0.70、95%CI:0.58~0.84)はいずれも177Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられた。・Grade3以上の重篤な有害事象は177Lu-PSMA-617群26.6%vs.対照群22.8%で発現し、177Lu-PSMA-617群におけるGrade3以上の177Lu-PSMA-617関連有害事象は13.8%であった。Grade3以上の血球減少症が、177Lu-PSMA-617群でより多く認められた(14.4%vs.5.0%)。・患者報告評価(FACT-P、BPI-SF)における、健康関連QOLと痛みの悪化までの期間に両群間で臨床的に意味のある差は認められなかった。 Tagawa氏は「これらの結果は、177Lu-PSMA-617とADT+ARPIの併用が、PSMA陽性mHSPC患者において臨床的に意義のあるベネフィットをもたらすことを示しているとし、安全性についても177Lu-PSMA-617の既知のプロファイルと一致しており、ADT+ARPIとの併用に関する新たな懸念は認められていない」とまとめた。OS解析は進行中となっている。

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