7.
英国・オックスフォード大学のPaul McGale氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究の結果、早期浸潤性乳がん治療を受けた女性の2次原発がんリスクは一般集団の女性よりわずかに高いものの、リスク増加全体の約6割は対側乳がんであり、術後補助療法に伴うリスクは低いことを報告した。乳がんサバイバーは2次原発がんを発症するリスクが高いが、そのリスクの推定方法は一貫しておらず、2次原発がんのリスクと患者・腫瘍特性、および治療との関係は明確にはなっていない。BMJ誌2025年8月27日号掲載の報告。早期浸潤性乳がん女性約47万6,000例について解析 研究グループは、英国・NCRASのデータを用い1993年1月~2016年12月に登録された、最初の浸潤がんとして早期乳がん(乳房のみ、または腋窩リンパ節陽性であるが遠隔転移なし)の診断を受け乳房温存術または乳房切除術を受けた女性を特定し、2021年10月まで追跡調査を行った。 診断時年齢が20歳未満または75歳超、追跡期間3ヵ月未満、初回乳がん診断後3ヵ月以内に他の種類の浸潤がん発症、術前補助療法を受けた患者等は除外し、47万6,373例を評価対象とした。 主要評価項目は、2次原発がんの発生率および累積リスクで、一般集団と比較するとともに、患者特性、初発腫瘍の特徴、術後補助療法との関連性を評価した。2次がんリスクは20年で一般集団よりわずかに増加 評価対象47万6,373例のうち、22%が1993~99年に、21%が2000~04年に、24%が2005~09年に、33%が2010~16年に診断を受けた。初回乳がん診断時の年齢は、20~39歳が7%、40~49歳が20%、50~59歳が31%、60~69歳が30%、70~75歳が12%であった。 2次浸潤性原発がんは6万7,064例に確認され、このうち同側新規乳がんは新規原発がんか初回がんの再発かを区別することが困難であるため解析から除外し、6万4,747例を解析対象集団とした。 これら2次原発がんを発症した計6万4,747例の女性は、一般集団と比較した過剰絶対リスクは小さかった。 初回乳がん診断後20年間で、乳がん以外のがんを発症した女性は13.6%(95%信頼区間[CI]:13.5~13.7)で、英国一般集団の予測値より2.1%(95%CI:2.0~2.3)高かった。 対側乳がんの発症率は5.6%(95%CI:5.5~5.6)で、予測値より3.1%(95%CI:3.0~3.2)高く、過剰絶対リスクは若年女性のほうが高齢女性より高かった。 乳がん以外のがんで20年間の過剰絶対リスクが最も高かったのは、子宮体がんと肺がんであった。子宮体がん、軟部組織がん、骨・関節がん、唾液腺がん、および急性白血病については、標準化罹患比が一般集団の1.5倍以上であったものの、20年間の過剰絶対リスクはいずれも1%未満であった。 術後補助療法別の解析では、放射線療法は対側乳がんおよび肺がんの増加、内分泌療法は子宮体がんの増加(ただし対側乳がんは減少)、化学療法は急性白血病の増加と関連していた。これらは無作為化試験の報告と一致していたが、今回の検討で新たに軟部組織、頭頸部、卵巣および胃がんとの正の関連性が認められた。 これらの結果から、2次がんコホート6万4,747例のうち約2%が、また過剰2次がんコホート1万5,813例のうち7%が、術後補助療法に起因する可能性があることが示唆された。