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制吐目的のオランザピン、糖尿病患者にも厳格管理下で投与可能へ/日本治療学会

 2026年8月25日、日本治療学会制吐薬適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ(以下、WG)は、「制吐目的としてのオランザピン投与時の血糖管理」について、ガイドライン速報版として公開した。同日に厚生労働省から添付文書の改訂指示が発出され、経口薬のオランザピンについては、警告が新設されると同時に禁忌の項が改訂された。 同ワーキンググループの安部 正和氏(浜松医科大学医学部産婦人科)は、本公表に至る経緯や臨床現場への期待について、以下のように本稿へコメントを寄せている。  「私と国立がん研究センター中央病院薬剤部の橋本 浩伸先生、矢内 貴子先生が中心となってシスプラチンレジメンを対象に行ったJ-FORCE試験、乳がんのAC療法を対象に日本で行われたJTOP-B試験、米国で行われたALLIANCE試験の3試験によって、オランザピンを含む4剤併用療法は、日本・米国・欧州のガイドラインにて、高度催吐性化学療法に対する標準制吐療法になりました。これまで日本でのみ糖尿病患者への投与が禁忌であったことから、国内の糖尿病患者さんだけがオランザピンを含む制吐療法を受けることができませんでした。  この臨床課題について、私と橋本先生は2年前に、日本がんサポーティブケア学会のCINV部会のミッションとしてオランザピンの糖尿病患者への投与禁忌解除を掲げ、活動を開始しました。CINV部会および制吐薬適正使用ガイドラインの関係者からの協力もいただき、オランザピンの治験データ、国内で行われたオランザピン5mgを含む制吐療法を検証した第III相試験の血糖値データ、オランザピンを使用した国内外のランダム化比較試験の文献、海外のオランザピンの添付文書、教科書的記載などを調査し、厚生労働省医薬局医薬安全対策課と医薬品医療機器総合機構(PMDA)の方と安全な使用条件について検討を重ね、ようやく今回の添付文書に至りました。  抗がん剤に伴う悪心・嘔吐は患者さんがつらいだけではなく、コントロールが悪いと生命予後が短くなることが示されています。日本の糖尿病患者さんの制吐療法においてオランザピンが使用できることになったことは非常に喜ばしいことである一方で、安全に使用できることが非常に重要です。がん治療に関わる医療者の皆さまにおかれましては、WGが発出したガイドライン速報版の内容を十分確認の上、安全かつ適正な使用をお願いいたします」添付文書の改訂点【警告】<抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)>糖尿病又はその既往のある患者へ本剤を投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は投与しないこと。また、本剤投与前及び投与期間中は、毎日頻回に血糖値のモニタリングの管理を行い、本剤投与後も血糖値が安定するまではモニタリングを継続するなど患者の状態を継続的に観察するとともに、投与期間を通じて、緊急時に十分に対応できる体制を整えた上で投与すること。【禁忌】糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者↓<統合失調症、双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善>糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者厳格な血糖管理と入院管理の徹底 今回示された臨床管理の主なポイントは以下のとおり。・入院治療の適応:糖尿病またはその既往のある患者に制吐目的でオランザピンを投与する場合、血糖コントロールが安定していることを確認のうえ、入院管理で化学療法を行う。外来治療が可能な化学療法(AC療法や中等度催吐性化学療法など)であっても、高度催吐性リスクであるシスプラチンを含む化学療法と同様に入院管理で実施する。・事前コンサルト:化学療法前の検査で糖尿病が判明した場合や血糖コントロール不良例では、あらかじめ内分泌内科・糖尿病内科へコンサルトを行い、十分なコントロールを得た上で治療を開始する。・血糖管理:日常臨床で行われているスライディングスケール(毎食前±眠前の1日3〜4回の血糖測定)を用いた厳格な血糖管理を行う。・入院(投与)期間と退院基準:標準制吐療法のオランザピン投与日数(1〜4日目の4日間)を遵守し、追加投与が必要な場合も入院管理を継続して必要最低限にとどめる。オランザピンおよび併用するデキサメタゾンの投与期間・投与量に留意し、食前血糖値200mg/dL未満など血糖値が安定した状態を確認して退院を計画する。・退院後の外来管理・緊急対応:自己血糖測定(SMBG)患者での食前血糖値200mg/dL以上の継続・300mg/dL以上の高血糖時、SMBGが保険診療上できない患者での口渇・多尿・倦怠感などの発現時には、夜間・休日を問わず受診している医療機関に連絡・受診するよう指導を徹底する。カルテへの明確な記載や院内マニュアルを整備し、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の安全管理体制と同様に、多科・多職種による安全管理体制の構築を推奨する。禁忌解除の要望が実現 多元受容体拮抗薬(MARTA)で非定型抗精神病薬のオランザピンは、発売開始後の公知申請によって、2017年に抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)に対する効果的な制吐薬として承認されている。また、2023年10月に改訂された『制吐薬適正使用ガイドライン第3版』では急性期・遅発期ともに有効な新たな制吐薬として使用可能になった点などが反映されたことで、現在では臨床で広く浸透している。その一方で、重大な副作用として著しい血糖値の上昇や糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等が報告されていたことから、「糖尿病またはその既往のある患者には投与禁忌」とされ、糖尿病歴のある患者が化学療法を行う際に、制吐対策が限定される状況であった。しかし、これまで報告されている本薬の有効性を検証した臨床試験において、「重篤な高血糖関連事象は報告されていない」「本薬を含む4剤併用の制吐療法は、国内外のガイドラインにおいて高度催吐性リスクの化学療法に対する標準制吐療法になっているが、本邦のみ本薬が糖尿病患者に対して禁忌」であることを踏まえ、WGにより禁忌解除の要望書を2026年4月9日付けで厚生労働省に提出。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の評価でも支持を受け、今回、「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」の効能に対しては、禁忌を解除し、慎重投与可能と判断されるに至った。 今回の速報版は、ガイドライン上の既存の推奨内容を変更するものではないが、糖尿病またはその既往のある患者であっても、適切な厳格管理体制を整えることでオランザピンを制吐目的で安全に投与・活用できるようにするための具体的な管理手順および留意点を取りまとめたものである。薬物動態と臨床試験データ さらに速報版では、制吐目的での短期投与に関する薬理学的データや臨床試験成績も提示されている。オランザピンの半減期は約33時間であり、定常状態に達するには約1週間(約163時間)を要するため、標準的な4〜6日間の連続投与時点では血中濃度が上がり切っていない状態にある。また、日本国内で実施された各種ランダム化比較試験(J-FORCE試験、JTOP-B試験、肺がんカルボプラチン試験など)のデータにおいて、制吐薬としてオランザピンを短期間併用した群と対照群との間で、Grade3〜4の重篤な高血糖発現率に大きな差は認められていない。 制吐目的での短期投与における高血糖関連有害事象のエビデンスがまだ十分に集積されていない現状を踏まえ、本速報版では臨床現場でより安全にオランザピンを使用するための慎重なリスク管理体制が提示された形だ。

2.

LDL-C<55mg/dLでもMACE再発、リスク因子は?

動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防では、超高リスク患者においてLDL-C<1.4mmol/L(55mg/dL)の達成が推奨されている。一方で、LDL-Cを良好に管理しても動脈硬化の進展や心血管イベントの再発は起こりうる。今回、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後にLDL-C<1.4mmol/Lを達成した冠動脈疾患(CAD)患者におけるASCVD再発の臨床的特徴を検討した結果、主要心血管イベント(MACE)は6.2%に発生し、動脈硬化性疾患(polyvascular disease:PVD)がMACEと強く関連する一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/L(40mg/dL)の達成はMACEリスク低下と関連していたことが明らかになった。本研究結果は、国立循環器病研究センター 循環器内科の片岡 有氏が8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)の2次予防のセッションで発表、Journal of Clinical Lipidology誌2026年8月号にも掲載された。本研究は、2017年1月1日~2022年8月31日にPCIを受けたCAD患者を対象とした多施設共同後ろ向き観察研究である。PCI後2ヵ月時点のLDL-Cデータがない患者、3年時点の臨床フォローアップがない患者、PCI後2ヵ月以内にMACEを発症した患者、非動脈硬化性のCAD患者などを除外。PCI後2ヵ月時点でLDL-C<1.4mmol/Lを達成した患者を解析対象とし、MACE発生例と非発生例の臨床背景、脂質低下療法、リスク因子管理を比較した。主要評価項目は、心臓死、非致死的心筋梗塞、非責任病変に対する臨床的適応による冠動脈血行再建からなるMACEとした。主な結果は以下のとおり。・解析対象は780例で、平均年齢70.1歳、男性81.7%であった。高血圧は73.7%、脂質異常症は65.2%、2型糖尿病は37.1%、慢性腎疾患は50.3%に認められ、心筋梗塞既往は11.9%、多枝病変は31.0%であった。・観察期間中央値1,632日(四分位範囲[IQR]:1,011~2,502)で、MACEは48例(6.2%)に発生した。内訳は、心臓死1.1%、非致死的心筋梗塞1.4%、非責任病変に対する臨床的適応による冠動脈血行再建4.7%であった。・LDL-C<1.4mmol/L達成後に発生したMACEの81.2%(39/48例)は、PCI後2年以内に発生した。また、心臓死9例はすべてPCI後6ヵ月以内に発生した。・MACE発生例では、非発生例と比較してPVDの割合が高かった(72.9%vs.17.3%、p<0.001)。下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)もMACE発生例で多く(54.2%vs.4.0%、p<0.001)、CAD+脳血管疾患(CVD)+LEADの併存も高頻度であった(12.5%vs.1.6%、p<0.001)。一方、従来の冠危険因子および多枝病変などの臨床的特徴に有意差はみられなかった。・PCI後2ヵ月時点で、全体の94.8%がスタチン、73.3%が高強度スタチンで治療されていた。エゼチミブの使用はMACE発生例で非発生例より少なかった(45.8%vs.63.2%、p=0.023)。PCSK9阻害薬の使用割合は、MACE発生例4.1%、非発生例5.1%であった(p=0.770)。・PCI後2ヵ月時点で治療中LDL-C<1.0mmol/Lを達成していた割合は、MACE発生例で非発生例より低かった(16.7%vs.33.2%、p=0.018)。治療中LDL-CはMACE発生例で数値的に高かった(44.1±10.5 vs.41.6±9.3mg/dL、p=0.074)。・多変量Cox解析では、PVDがMACE発生と独立して関連していた(ハザード比[HR]:10.74、95%信頼区間[CI]:5.65~20.39、p<0.001)。一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/Lの達成はMACEリスク低下と独立して関連していた(HR:0.37、95%CI:0.17~0.80、p=0.010)。・脂質低下療法の強度を追加調整したモデルでも、PVD(HR:11.02、95%CI:5.80~20.93、p<0.001)およびLDL-C<1.0mmol/L(HR:0.39、95%CI:0.18~0.85、p=0.019)の関連は一貫していた。・PVDの表現型別では、CAD単独を基準とした場合、CVD併存はMACEリスク上昇と有意に関連しなかった(HR:1.63、95%CI:0.46~5.75、p=0.447)。一方、LEAD併存はMACEリスク上昇と強く関連し(HR:21.03、95%CI:10.74~41.17、p<0.001)、CVD+LEAD併存でも同様であった(HR:23.75、95%CI:8.51~66.26、p<0.001)。・PVDを有する162例では、32.1%がLDL-C<1.0mmol/Lを達成していた。PVD患者において、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/Lの達成はMACE発生頻度の低下と関連し(Log-rank p=0.032)、多変量解析でもMACEリスク低下と独立して関連していた(HR:0.36、95%CI:0.14~0.87、p=0.024)。本研究結果について著者らは、LDL-C<1.4mmol/Lを達成したCAD患者においても心血管リスクは残存しており、とくにPVDはMACE発生と独立して関連していたとまとめた。また、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/LがMACEリスク低下と関連していたことから、CAD患者におけるASCVD再発予防では、さらに低いLDL-C目標を考慮しうると結論付けた。

3.

急性期うつ病に対する21種類の抗うつ薬の比較~ネットワークメタ解析

 うつ病は、成人の精神疾患において世界的に頻度が高く、負担が大きく、かつ多大なコストを要する疾患の1つである。うつ病の治療では薬物療法と非薬物療法の両方が利用可能である。しかし、リソースが不十分であるため、心理的介入よりも抗うつ薬が頻繁に使用されている。これらの抗うつ薬の処方は、利用可能な最良の科学的根拠に基づいて行われるべきである。英国・オックスフォード大学のAndrea Cipriani氏らは、成人単極性うつ病患者に対する急性期治療薬としての抗うつ薬を比較、順位付けしたこれまでの研究を更新、拡張することを目的とし、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Focus(American Psychiatric Publishing)誌2026年4月号の報告。 Cochrane Central Register of Controlled Trials、CINAHL、Embase、LILACSデータベース、MEDLINE、MEDLINE In-Process、PsycINFO、規制当局のウェブサイト、国際的な臨床試験登録データベースを検索した。各データベースの開始時から2016年1月8日までの期間における、公表済みおよび未公表の二重盲検ランダム化比較試験(RCT)を対象とした。標準的な操作的診断基準に基づきうつ病と診断された18歳以上の成人うつ病患者の急性期治療に用いられる抗うつ薬21種類について、プラセボ対照試験および薬剤間直接比較試験を解析対象に含めた。準ランダム化試験、不完全な試験、あるいは双極症、精神病性うつ病、治療抵抗性うつ病の参加者が20%以上含まれる試験および重篤な身体合併症を有する患者を含む試験は解析対象から除外した。事前に定めた優先順位に従い、データを抽出した。ネットワークメタ解析においては、群レベルのデータを使用した。介入に関するシステマティックレビューのコクランハンドブックに基づき各研究のバイアスリスクを評価した。また、エビデンスの確実性は、GRADEを用いて評価した。主要アウトカムは、有効性(治療反応率)および受容性(すべての原因による治療中止)とした。ランダム効果モデルを用いたペアワイズメタ解析およびネットワークメタ解析により、統合オッズ比(OR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・2万8,552件の文献を特定した。そのうち522件(11万6,477例)の試験を解析対象とした。・有効性に関しては、すべての抗うつ薬がプラセボよりも高い効果を示した。ORの範囲は、アミトリプチリンの2.13(95%信用区間[CrI]:1.89~2.41)からreboxetineの1.37(95%CrI:1.16~1.63)であった。・受容性に関しては、プラセボと比較して脱落が少なかったのはagomelatine(OR:0.84、95%CrI:0.72~0.97)とfluoxetine(OR:0.88、95%CrI:0.80~0.96)のみであり、クロミプラミンはプラセボよりも不良であった(OR:1.30、95%CrI:1.01~1.68)。・すべての試験を考慮した場合、抗うつ薬間のORの差は、有効性については1.15~1.55、受容性については0.64~0.83の範囲であったが、多くの比較分析においてCrIは広範囲に及んでいた。・直接比較試験において、agomelatine、アミトリプチリン、エスシタロプラム、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンは、他の抗うつ薬よりも高い有効性を示した(ORの範囲:1.19~1.96)。一方、fluoxetine、フルボキサミン、reboxetine、トラゾドンは有効性が低かった(ORの範囲:0.51~0.84)。・受容性に関しては、agomelatine、citalopram、エスシタロプラム、fluoxetine、セルトラリン、ボルチオキセチンが、他の抗うつ薬よりも良好であった(ORの範囲:0.43~0.77)。一方、アミトリプチリン、クロミプラミン、デュロキセチン、フルボキサミン、reboxetine、トラゾドン、ベンラファキシンは、脱落率が高かった(ORの範囲:1.30~2.32)。・バイアスリスクは、522件の試験のうち46件(9%)が「高」、380件(73%)が「中」、96件(18%)が「低」であった。・エビデンスの確実性は「中」から「きわめて低い」の範囲であった。 著者らは「成人うつ病において、すべての抗うつ薬はプラセボよりも高い有効性を示した。プラセボ対照試験を解析に含めた場合、実薬同士の比較では薬剤間の差は小さくなったが、直接比較試験では、有効性や受容性に大きなばらつきが認められた。これらの結果は、エビデンスに基づく診療に役立つとともに、患者、医師、ガイドライン策定者、政策立案者に対し、各抗うつ薬の相対的な利点に関する情報を提供するものである」としている。

4.

限局性前立腺がん治療、5分割SBRT vs.中程度寡分割IMRT/JAMA

 前立腺がんの治療では、近年、放射線治療の使用が増加し、照射の期間や毒性に対する社会的関心も高まっている。NRG Oncologyの研究グループは、期間を短縮した照射法の安全性と有効性を確立するために一連の無作為化試験を進めている。米国・サウスフロリダ大学のRodney J. Ellis氏らNRG-GU005 Collaborative Authorsは、その1つである「NRG-GU005試験」で、中間リスクの限局性前立腺がんの治療において、5分割の体幹部定位放射線治療(SBRT)は中程度寡分割強度変調放射線治療(MH-IMRT)と比較して、腸管症状の悪化が少なく、尿失禁や性機能は良好だが、尿路刺激/閉塞症状の悪化に差はなく、無病生存期間(DFS)に関しては有意に低いことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年8月13日号に掲載された。アジア、北米、欧州の無作為化第III相試験 NRG-GU005試験は、アジア、北米、欧州の136施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年11月~2022年6月の期間に参加者を登録した(米国国立がん研究所[NCI]の助成を受けた)。 対象は、臨床病期がT1~T2bの限局性前立腺がんと診断され、(1)Gleasonスコアが3+4(グレードグループ2)で前立腺特異抗原(PSA)値が20ng/mL未満、または(2)Gleasonスコアが3+3(グレードグループ1)でPSA値が10~20ng/mLの患者であった。 被験者698例(年齢中央値68歳、範囲:42~84)を、SBRT(総線量36.25Gy、5分割)を受ける群(353例)またはMH-IMRT(総線量70Gy、28分割または60Gy、20分割)を受ける群(345例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、2年時における泌尿生殖器系および消化器系の生活の質(QOL)の指標としての、Expanded Prostate Cancer Index Composite-26 Item(EPIC-26)の尿路刺激/閉塞症状および腸管症状の「臨床的に意義のある最小限の悪化(MCID)」に至った患者の割合(低いほうが良好)、および3年時のDFS率であった。腸管症状のMCID率、SBRT群34.9%vs.MH-IMRT群43.8% Gleasonスコア3+4/PSA値<10ng/mLの患者が73.5%と最も多く、81.7%がT1cであった。全身状態の指標であるZubrod performance statusは0が88.1%を占めた。SBRT群の96.6%が36.25Gy(5分割)の照射を完了し、MH-IMRT群では70.6%が28分割を、26.6%が20分割を完了した。追跡期間中央値は3.2年(範囲:0~6.5)だった。 治療後2年時で、尿路刺激/閉塞症状のMCID率は、SBRT群が35.4%、MH-IMRT群は33.7%と両群間に有意な差を認めなかった(群間差:-1.7%、95%信頼区間[CI]:-9.7~6.3、p=0.68)。 2年時の腸管症状のMCID率は、MH-IMRT群が43.8%であったのに対し、SBRT群は34.9%と有意に優れた(群間差:8.9%、95%CI:0.7~17.0、p=0.03)。 また、1年後および2年後の尿失禁のMCID率(1年後:SBRT群29.9%vs.MH-IMRT群34.5%[p=0.05]、2年後:25.9%vs.34.7%[p=0.02])、1年後の性機能のMCID率(34.3%vs.43.9%[p=0.03])は、いずれもSBRT群で良好だった。2年全生存率にも差はない DFS仮説(SBRT群で優れる)は退けられ、2年時点でDFS率はむしろMH-IMRT群で高く、3年DFS率も同様であった(88.6%vs.92.1%、層別log-rank検定のp=0.10、無益性のp<0.001)。また、2年全生存率は両群間に差がなかった(98.6%vs.97.8%、p=0.66)。 Grade3、4の泌尿生殖器系の有害事象の発現は、SBRT群がMH-IMRT群に比べ少なかった(0.6%vs.2.5%)。 著者は、「本研究は、限局性前立腺がんに対する短期間の放射線治療を検討している患者や医師に対し、ただちに影響を与えるものである」「DFSはSBRT群で数値的に劣るため、今後の調査でこの差が統計学的に有意となった場合、QOLへの悪影響が軽減される代償としてDFSが悪化する可能性が残ることになる」「2つの治療コホートとも、直腸スペーサーゲルの使用が腸管関連QOLの改善に有効な可能性が示唆された」としている。

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AIによる酸素流量調整で入院患者のSpO2管理を改善

 入院患者の血中酸素飽和度(SpO2)は、AIを用いて酸素流量を自動調整することで、医療スタッフが手動で調節する場合よりも適切に維持できることが、新たなランダム化比較試験で示された。AIによる自動酸素流量調整を受けた患者では、SpO2が目標範囲内に維持されていた時間の割合が85%だったのに対し、通常ケアを受けた患者では63%だったという。米コロラド大学アンシュッツ医学校のAdit Ginde氏らによるこの研究は、8月3日付で「JAMA Internal Medicine」に掲載された。 Ginde氏は、「酸素投与は医療現場で最も広く行われている治療の一つであるにもかかわらず、2026年になった今も医療スタッフによる手動調整によって管理されていることが多い」とニュースリリースで指摘している。 今回の研究でGinde氏らは、AIがリアルタイムで酸素流量を調整するシステムにより酸素投与を受けている患者のSpO2が目標範囲内(90~96%)に維持される時間が増えるかどうかを調べた。対象は、急性呼吸器疾患、外傷、熱傷、または緊急手術のために入院した成人患者300人(年齢中央値66歳、女性54%)。これらの患者を、医療スタッフが酸素流量を管理する群(通常ケア群、148人)、またはAIが酸素流量を自動調整する群(AI管理群、152人)にランダムに割り付け、ランダム化後72時間のうちSpO2が目標範囲内に維持されていた時間の割合を比較した。 その結果、SpO2が目標範囲内に維持されていた時間の割合は、AI管理群では平均85%、通常ケア群では平均63%であり、AI管理群の方が有意に高かった(群間差21パーセントポイント、95%信頼区間18~25、P<0.001)。また、患者が低酸素血症(SpO2が88%未満)だった時間の割合は、AI管理群で平均2.0%、通常ケア群で平均3.6%であり、AI管理群の方が有意に低かった(群間差−1.3パーセントポイント、95%信頼区間−2.0~−0.5、P=0.002)。高酸素血症(SpO2が96%超)だった時間の割合は、AI管理群では平均9.2%で、通常ケア群の平均29.1%を大きく下回った。 Ginde氏は、「この研究結果は、AIによる酸素流量調整が患者のSpO2を目標範囲内にとどめることを可能にし、低酸素血症と高酸素血症の両方を減らせることを示している。この技術は、民間の医療現場と軍事医療現場の両方における酸素投与法を根本的に変える可能性がある」と述べている。研究グループはまた、AIによる酸素流量調整は看護師や呼吸療法士の業務負担の軽減につながり、医療従事者が患者ケアの他の側面により集中できる可能性があるとの考えを示している。 研究グループは、今後は救急搬送中や戦場などの院外環境でAIによる酸素流量調整を利用できるかを検証する予定であるとしている。論文の共著者であるコロラド大学アンシュッツ医学校救急医学部長のVikhyat Bebarta氏は、「病院から遠く離れた場所で負傷した兵士を治療する場合、酸素は不足し、衛生兵の注意力も低下していく。自動的に酸素流量を調整する装置があれば、緊急性の高い作業の一つから衛生兵が解放され、その分、患者に必要な他のあらゆる対応に集中できる」と話している。

6.

PM2.5曝露で関節リウマチの疾患活動性やフレアリスクが上昇か

 大気汚染物質である微小粒子状物質(PM2.5)への曝露は、関節リウマチ(RA)の疾患活動性の上昇や症状の急激な悪化(フレア)と関連する可能性が、新たな研究で示された。ソウル大学校(韓国)医学部のSung Cheol Jung氏らによるこの研究結果は、8月5日付で「Annals of the Rheumatic Diseases」に掲載された。 過去の研究では、大気汚染への曝露はRA発症リスクの上昇と関連することが示されていた。しかし、すでにRAに罹患している人において、大気汚染が疾患活動性やフレアに与える影響については十分なデータがなかった。研究グループによると、PM2.5のような微小粒子は肺から血流へ移行し、細胞ストレスやDNA損傷、炎症を引き起こす有害な分子の産生を誘発する可能性があるという。 Jung氏らは1,070人のRA患者を4年間追跡し、総計1万2,583回の外来受診時に記録されたRAの疾患活動性やフレアと大気汚染物質曝露との関連を調べた。大気汚染物質は、二酸化硫黄(SO2)、二酸化窒素(NO2)、オゾン(O3)、一酸化炭素(CO)、PM10、PM2.5の6種類を対象とした。 解析の結果、6種類の大気汚染物質のうち、PM2.5のみがフレアリスクの上昇と有意に関連することが示された。具体的には、PM2.5の月平均濃度が1標準偏差上昇するごとにRAフレアのオッズが上昇した(調整オッズ比1.113、95%信頼区間1.017~1.218)。また、PM2.5濃度の上昇は、関節の圧痛や腫脹など、複数の指標で評価したRAの疾患活動性の上昇とも関連していた。同一患者について、症状が悪化した時期と安定していた時期の大気汚染物質曝露量を比較する手法を用いて解析した結果、PM2.5への累積曝露が2週間を超えると、RAフレアのリスク上昇と関連することが示された。 研究グループは、大気汚染の改善によってRAの疾患活動性を低下させられるかどうかを明らかにするには、さらなる研究が必要だとしている。また、今回の結果を踏まえ、RA患者は長時間にわたる大気汚染物質への曝露を避け、特にPM2.5濃度が高いときには注意するよう呼びかけている。 この研究論文の付随論評を執筆した米マス・ジェネラル・ブリガム傘下のブリガム・アンド・ウイメンズ病院およびハーバード大学医学大学院のJeffrey Sparks氏は、「本研究は、大気汚染物質とRAの疾患活動性との関連を、信頼性の高い手法で検証した研究としては最大規模のものの一つだ」と述べている。さらに論評では、「大気汚染物質の濃度が上昇していることを考えると、今回の結果は臨床、生物学、公衆衛生の各面で重要な意味を持つ。また、吸入により体内に取り込まれる大気汚染物質がRAやその他の自己免疫疾患の発症リスクや病勢進行に広く影響を及ぼす可能性を改めて裏付けている」としている。

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レカネマブ、実臨床でも安全性は臨床試験とおおむね一致

 Sally Osmerさんは、最先端のアルツハイマー病治療薬レカネマブ(商品名:レケンビ)による治療を受ける機会があることを知り、迷わず受け入れた。Osmerさんはアルツハイマー病の家族歴があり、74歳のときに早期アルツハイマー病と診断された。診断当初、彼女は特に症状を自覚していなかったが、画像検査と遺伝子検査から診断が確定したという。Osmerさんは、「アルツハイマー病と診断されたときは、とてもショックを受けた。体は健康なのに脳はゆっくりと衰えていくと考えると、とても怖い。ただ、早期に発見できたのは幸運だったし、治療を開始できたことも嬉しく思っている」と話している。 実臨床でレカネマブによる治療を受けた患者を追跡した新たな研究で、同薬の使用によるアミロイド関連画像異常(amyloid-related imaging abnormalities;ARIA)の発生時期や発生頻度、有害事象の発生頻度は臨床試験とおおむね同様で、ARIAの有無による認知機能の変化にも有意差は認められなかったことが示された。Osmerさんも、そうした患者の1人である。専門家の間では、レカネマブによる治療に伴い、脳の腫れや出血を引き起こすのではないかと懸念する声もあった。研究グループは、「今回の実臨床で得られた結果から、この薬の安全性と有効性は臨床試験の結果とほぼ一致することが示された」と結論付けている。米デューク大学医学部神経学・病理学分野のAndrew Liu氏らによるこの研究結果は、8月7日付で「Neurology Open Access」に掲載された。 レカネマブの実臨床での使用が進み、その経験も複数報告されているが、ARIAの発生時期や重症度、患者背景による発生リスク、認知機能への影響などについては十分に明らかになっていない。Liu氏らは今回、2023年5月から2025年6月にかけてデューク大学でレカネマブによる治療を受けた患者のデータを後ろ向きに解析し、ARIAの発生とその経過、重篤な有害事象および死亡の発生状況を調べるとともに、認知機能への影響とその発生予測因子についても評価した。対象患者は230人(平均年齢73.6歳、女性50.9%)で、このうち68%は軽度認知障害(MCI)であり、67.4%はアポリポタンパク質E ε4アレル(APOE ε4)の保有者だった。 追跡期間の平均は396日で、その間に49人(21%)が治療を中止した。また、56人(24.3%)にARIAが認められた。ARIA-E(浮腫/滲出液貯留)とARIA-MH(微小出血)は治療開始の約10週後に発生のピークがあり、また中等度から重度のARIAは治療開始の12〜24週後に認められた。臨床的に重要な有害事象は72人(31.3%)に発生し、5人が死亡した。このうち2人の死亡はARIAに関連していた。12カ月間の認知機能の変化は、ARIAあり群となし群の間で有意差はなかったが、対象者全体で、MoCA(モントリオール認知評価)スコアは1カ月当たり0.107点低下していた。ARIA-Eの発生リスクは、APOE ε4非保有者と比べてAPOE ε4保有者で高く、特にε4を2コピー持つ患者ではオッズ比が4.81(P=0.014)に達した。また、男性でもリスクが高い傾向が見られたが、統計学的に有意ではなかった(オッズ比2.40、P=0.075)。 Osmerさんはレカネマブによる治療を1年以上受けているが、重篤な副作用は経験していない。Osmerさんは、「今の生活や将来について多くの不安を抱えてきたが、レカネマブによる治療を受けていることで、間違いなく希望を感じられるようになった。これまでアルツハイマー病について想定されていたよりも良い未来が待っているのではないかと思える」と話し、治療により日々の生活に大きな安心感を得ていることを報告している。 Liu氏は、「われわれが明らかにしたのは、実臨床においても、患者を慎重に選び、綿密にモニタリングすれば、約80%の患者が少なくとも1年間はレカネマブによる治療を継続できるということだ。重要なのは、治療に関連する副作用の大半は時間の経過とともに改善し、追加の薬剤投与や入院を必要としないことである」とニュースリリースで述べている。研究グループは現在、ARIAに関連する脳画像上のわずかな変化をより早期にかつ一貫して検出することを目的としたAI画像解析ツールの開発に取り組んでいる。

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チルゼパチド、2型糖尿病治療の負担軽減に寄与か――実臨床研究で示唆

 2型糖尿病では、複数の糖尿病治療薬の併用や複雑なインスリン療法が必要となり、患者の治療負担が増すことがある。こうした中、2型糖尿病患者を対象としたリアルワールド研究で、チルゼパチドは従来のGLP-1受容体作動薬と比べ、血糖コントロールや体重を改善しながら、糖尿病治療の負担軽減につながる可能性が示された。研究は、浅ノ川総合病院内科/金沢大学大学院未来型健康増進医学分野の澤村俊孝氏らによるもので、詳細は6月30日付の「Endocrine Practice」に掲載された。 複数の薬を服用する「ポリファーマシー(多剤併用)」や複雑なインスリン療法は、2型糖尿病患者の治療負担を増大させるだけでなく、低血糖や転倒、入院などのリスクとも関連する。このため、十分な血糖コントロールを維持しつつ、治療を簡略化することが重要な課題となっている。チルゼパチドはGIPとGLP-1という2つの消化管ホルモンの受容体に作用する2型糖尿病治療薬で、優れた血糖降下作用や体重減少作用を示すことが報告されているが、これまでの研究はHbA1cや体重への効果に焦点を当てたものが中心で、治療薬やインスリンの減量といった「治療簡略化」を評価した報告は限られていた。こうした背景から著者らは、2型糖尿病患者を対象に、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬の治療簡略化効果をリアルワールドデータで比較検討した。 著者らは、日本の2施設で2023年4月~2025年3月にチルゼパチドまたはGLP-1受容体作動薬を開始した2型糖尿病患者318人(チルゼパチド群153人、GLP-1受容体作動薬群165人)を対象に、後ろ向きのリアルワールド研究を実施した。患者を最大12カ月追跡し、糖尿病治療薬が1剤以上減少した場合、インスリン注射回数が減少した場合、または1日当たりの総インスリン投与量が50%以上減少した場合のいずれかを満たし、その状態が維持されていることを「治療簡略化」と定義して評価した。解析では患者背景の違いを考慮し、傾向スコアを用いた統計学的手法で調整した。 解析の結果、チルゼパチド群では55%が治療簡略化を達成したのに対し、GLP-1受容体作動薬群では25%で、チルゼパチド群の方が有意に高かった(オッズ比〔OR〕 3.69、95%信頼区間〔CI〕 2.21~6.16、P<0.001)。絶対リスク差は30%だった。 治療簡略化は主に糖尿病治療薬数の減少によるもので、その割合はチルゼパチド群で47%、GLP-1受容体作動薬群では10%だった(OR 7.96、95%CI 4.06~15.6、P<0.001)。インスリン注射回数や総インスリン投与量もチルゼパチド群で減少する傾向がみられたが、全体では有意差はなかった。 また、HbA1cと体重はいずれの群でも改善したが、その改善幅はチルゼパチド群でより大きかった。12カ月後のHbA1cはチルゼパチド群で1.34%、GLP-1受容体作動薬群で0.78%低下し、体重はそれぞれ4.75kg、2.86kg減少した。 本研究ではチルゼパチド使用患者の56%がGLP-1受容体作動薬からチルゼパチドへ切り替えられた患者であったが、GLP-1受容体作動薬からの切り替え患者を除外したサブグループ解析では、薬剤数に加えインスリン注射回数や総インスリン投与量をアウトカムとした解析でも、有意な減少が認められた。 著者らは、「チルゼパチドは、実臨床において血糖コントロールや体重減少効果を維持しながら、2型糖尿病治療の簡略化に寄与する可能性が示された」と結論付けている。また、治療レジメンの簡略化は服薬アドヒアランスや患者負担の軽減につながる可能性があり、チルゼパチドは日常診療における治療負担を軽減する新たな選択肢となり得るとしている。 一方で著者らは、本研究が後ろ向き観察研究であることや、患者のQOLや治療満足度を評価していないことなどを限界として挙げ、前向き研究による検証が必要としている。

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同種iPS細胞由来の心筋細胞と間質細胞から成るパッチ型心筋移植片BioVATは心不全治療に有望かも(解説:原田和昌氏)

 BioVATは同種iPS細胞由来の心筋細胞と間質細胞から成るパッチ型心筋移植片で、LVEFが低下した心不全患者における心筋再筋肉化を目的とする。ドイツ・ゲッチンゲン大学のZimmermann氏らはBioVAT-HF研究において、ドイツの2施設で非盲検第I/II相研究を実施し、外科的なBioVAT移植が3ヵ月の時点で有意な標的壁厚の増加とLVEFの上昇、健康状態の改善をもたらしたと報告した。 対象はLVEF 35%以下の症候性の重症心不全で、少なくとも1つの左室セグメントに壁運動の低下または異常を認め、ガイドラインに基づく薬物療法に抵抗性である年齢18~80歳の患者であった。被験者は、5、10、20単位の人工心筋から成るBioVAT移植片による治療を受け、全例に免疫抑制療法を行った。26例(平均年齢59歳、男性23例、平均罹患期間4.6年)を登録し、20例がBioVAT移植による治療を受けた。 全患者で有害事象が発現し、196件の有害事象のうち57件が重篤な有害事象であった。3例(5件)で心室性頻拍を認めたが、BioVAT移植と関連がない可能性が高かった。また、心室細動が発生した患者はいなかった。研究期間中に3例が死亡し(血管麻痺を伴うSIRS、新型コロナウイルス感染症、大動脈解離)、BioVAT移植と関連がないと判定された。また、1例が心臓移植を受けた。4例で免疫抑制療法が中止された。中止理由は、植込み型左室補助人工心臓(LVAD)の装着が2例、腎不全が1例、尿路上皮がんが1例であった。BioVATの安全な最大用量による治療を受けた16例のうち、12例が事前に規定された中間解析のための3ヵ月間の追跡調査を完了した。3つの有効性の主要エンドポイントは3ヵ月の時点でいずれも有意に改善した。標的壁厚の最小二乗平均の値は4.5mm(90%信頼区間:3.7~5.4、p<0.001)増加し、LVEFは3.9%ポイント(0.9~6.8、p=0.04)上昇した。また、KCCQ-OSSは6.7点(1.0~12.5、p=0.06)上昇した。 心筋再生医療において、自己の骨格筋芽細胞シートを用いた「ハートシート」は10年を経て有効性の基準を満たさず販売中止となった。しかし、同種iPS細胞由来の心筋細胞をシート状に加工した心筋細胞シート「リハート」が最近、条件および期限付き製造販売承認を取得した。これには短期間の免疫抑制療法を併用する。一方、同種iPS細胞由来の心筋細胞を球状の微小組織にした心筋球を移植する「ハートシード」(免疫抑制療法の併用が必要)を用いた第I/II相試験であるLAPiS試験の結果がESC2026で発表された。BioVATは同種iPS細胞由来の心筋細胞と間質細胞から成るパッチ型心筋移植片(オルガノイド)を用いたという新味はあるものの、小規模な単群試験であり有効性もサロゲートエンドポイントであることから、本試験にて効果の持続性や長期的安全性を判断することは難しい。

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第310回 インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省

<先週の動き> 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省厚生労働省は8月28日、インフルエンザが全国的な流行シーズンに入ったと発表した。8月17~23日の第34週に全国約3,000ヵ所の定点医療機関から報告された患者数は4,094人、定点当たり1.11人となり、流行開始の目安である1.00人を上回った。感染症法施行後の1999年以降では、前年から流行が継続していた2023年を除き、2009年に次いで2番目に早い流行入りで、昨年の第39週より5週早い。全国の定点当たり報告数は第30週0.24人、第31週0.37人、第32週0.52人、第33週0.69人、第34週1.11人と、7月下旬以降増加が加速している。都道府県別では沖縄県4.43人が最多で、岩手県2.10人、青森県2.08人、神奈川県1.99人、埼玉県1.83人、千葉県1.80人などで高かった。東京都は1.49人で、患者の5割弱を10歳未満、8割弱を20歳未満が占めており、夏休み明けの学校・家庭内での感染拡大が懸念される。その一方で、愛知県は0.74人と現時点では流行開始目安を下回っている。厚労省の資料によると、第34週には全国約500ヵ所の基幹定点からインフルエンザによる入院患者167人が報告され、うちICU入室9人、人工呼吸器使用5人だった。高齢者や基礎疾患のある人では重症化リスクが高く、医療機関受診時や高齢者施設訪問時などにはマスク着用が推奨される。手洗い、咳エチケットなど基本的感染対策も重要となる。インフルエンザワクチンには発症抑制および重症化予防の効果があり、とくに高齢者や基礎疾患保有者への接種が重要とされる。定期接種の対象は(1)65歳以上の高齢者、(2)60~64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能障害やHIVによる免疫機能障害など(日常生活が極度に制限される障害)を有する者であり、新型コロナワクチンとの同日接種も可能である。 専門家は10月以降の速やかなワクチン接種を推奨している。また、新型コロナも同週に定点当たり1.18人と前週(1.12人)から増加傾向にあり、医療機関においては例年より早いインフルエンザ対応と重複流行への備えが求められる。 参考 1) インフルエンザの発生状況をお知らせいたします(厚労省) 2) インフルエンザ、全国で流行入り 2009年に次ぎ2番目の早さ(産経新聞) 3) インフルエンザが流行入り、1999年以降で2番目に早く・沖縄が最多…専門家「ワクチンを受けにいって」(読売新聞) 4) 昨年より5週早く、インフル流行開始目安到達東京都(CB news) 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体2027年3月から、OTC医薬品と同一成分などの医療用医薬品「OTC類似薬」について、患者に薬剤費の25%を特別料金として求める一部保険外療養制度が始まる。対象は2026年8月時点で77成分1,042品目(解熱鎮痛薬ロキソプロフェン、抗アレルギー薬フェキソフェナジン、保湿剤ヘパリン類似物質など)。残る75%部分には従来通り保険給付と自己負担が適用される。中間とりまとめでは、がん患者、指定難病患者、公費負担医療の対象者、入院患者、一定の長期使用などは条件付きで特別負担の対象外とする方針。ただし、がん治療終了後の短期・中期使用は扱いが曖昧で、患者団体から見直しを求める声が出ている。全国がん患者団体連合会は、乳房切除後疼痛症候群、リンパ浮腫に伴う疼痛、薬物療法後の関節痛や末梢神経障害、皮膚障害など、治療終了後にも鎮痛薬や外用薬、保湿剤などが必要となるケースを提示した。とくに問題となるのが「年間おおむね50週以上」とされる長期使用の判定である。同じ病態でも頓用・間欠投与となる患者では基準を満たさず、追加負担となる可能性がある。また、皮膚科や整形外科、かかりつけ医など、がん診療医以外が処方する場合に「がん治療との関連性」を判断しにくい点も指摘されているほか、処方時点で将来の使用期間を予測することも困難である。小児がん経験者は、治療終了後も内分泌障害や神経障害、心腎機能障害などの晩期合併症を長期間抱え、頓用薬を生涯使用する例もある。患者団体は、50週という期間だけでなく、治療歴、臓器機能、医師管理下での使用、代替可能性などを総合的に判断するよう求めている。厚労省は9月中に対象外となる患者の範囲などを取りまとめる予定。医療現場では、対象判定に加え、患者説明、処方箋・レセプト対応、システム改修も必要となるため、実務上分かりやすい基準作りが求められる。 参考 1) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(厚労省) 2) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ(同) 3) 全国がん患者団体連合会提出資料(同) 4) 対象外の範囲設定で「柔軟運用」求める声 医療保険部会 OTC類似薬の一部保険外療養巡る議論で(CB news) 5) 「OTC類似薬を使用する場合、患者特別負担がいくらになるのか」の具体例提示し、国民の不安を軽減せよ-社保審・医療保険部会(Gem Med) 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省厚生労働省は、2025年度の概算医療費(速報値)が前年度比2.6%増の49兆2,000億円となり、5年連続で過去最高を更新したと発表した。受診延べ日数は0.7%減少した一方で、医療技術の高度化や抗がん剤など高額薬剤の使用増加が医療費を押し上げた。増加率2.6%の内訳は、医療技術の高度化など「それ以外の影響」が2.9%増、高齢化の影響が0.6%増、人口増の影響が0.5%減、診療報酬改定などの影響が0.39%減となった。診療種類別では、入院が2.3%増、入院外が1.6%増、歯科が3.5%増、調剤が3.9%増。歯科では貴金属価格上昇(歯科用貴金属医療費が10.1%増)、調剤では腫瘍用薬やホルモン剤などの使用増が影響した。年齢別では、75歳以上の医療費が20兆3,000億円(3.9%増)で全体の41.3%を占め、1人当たり医療費は98万9,000円と、75歳未満(26兆5,000億円、1人当たり26万1,000円)の3.8倍に達した。その一方で、2024年度の介護費は、高額介護サービス費などを含め12兆952億円となり、前年度比3.2%増加した。介護保険制度開始時の2000年度と比べると3.3倍の規模で、要介護・要支援認定者は720万7,000人に達した。介護給付費は居宅サービス3.4%増、地域密着型2.6%増、施設3.6%増となり、施設サービスの伸びも目立った。第1号被保険者の認定率は19.7%で、都道府県別では大阪府24.3%、茨城県16.5%と1.47倍の差がある。1人当たり介護給付費も29万6,300円と3.5%増えた。団塊世代が全員75歳以上となり、今後は85歳以上人口の比率上昇と現役世代の減少が同時に進む。医療・介護の複合ニーズが増す中、サービス確保や人材確保、質の向上に加え、給付の効率化と地域差の検証など、制度の持続可能性をどう確保するかが一段と重要になる。2027年度には介護報酬改定も予定されており、増大する需要と担い手不足をどう両立させるかが焦点となる。 参考 1) 医科医療費(電算処理分)の動向 ~令和7年度版~(厚労省) 2) 医療費総額49.2兆円、5年連続で過去最高を更新…高齢化・医療技術の高度化など要因(読売新聞) 3) 25年度の概算医療費、2.6%増49.2兆円 医療高度化で増加(日経新聞) 4) 2024年度の介護費、高額介護サービス費など含めれば12兆952億円で、前年度から3.2%の増加-介護保険事業状況報告(Gem Med) 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省厚生労働省は2027年度予算の概算要求として、2026年度当初予算比1兆5,370億円増の36兆5,803億円を計上した。要求段階では過去最大で、このうち年金・医療などの社会保障関係費は33兆6,872億円。高齢化などによる自然増として3,397億円を見込む。今回の特徴は、要求上限のない「『強く豊かな日本』投資枠」に1兆337億円を計上した点である。重点分野として、創薬・先端医療分野に約1,969億円(うち創薬スタートアップ支援・人材育成に355億円、治験・臨床試験体制強化に155億円、AI創薬環境整備に541億円)、感染症危機対応医薬品等の確保支援に2,129億円を要求した。医療DXの推進には934億円を要求し、標準仕様準拠の認証電子カルテの普及支援(604億円)やクラウドネイティブ化、全国的なデータ連携基盤整備を進める。さらに医療機関のサイバーセキュリティ対策や、医療・福祉分野におけるAI・ICTを活用した生産性向上・データ共有推進(829億円)などを盛り込んだ。その一方で、医療機関にとって最大の焦点となる物価・人件費高騰への対応は、診療報酬上の加算を含め金額を示さない「事項要求」とされた。2027年度の介護・障害福祉報酬改定も同様で、具体額は年末の予算編成で決まる。前年度の概算要求でも、物価高など重要政策は予算編成過程で検討する仕組みが示されており、病院経営が厳しさを増す中、年末にどこまで実効性ある財政支援が盛り込まれるかが注目される。 参考 1) 厚労省予算要求、最大の36兆円 創薬強化や福祉人材確保(共同通信) 2) 厚生労働省 概算要求で過去最大の36兆5,803億円を計上(NHK) 3) 厚労省概算要求、過去最大の36兆5千億円 投資枠で創薬力強化(朝日新聞) 4) 厚労省の概算要求は過去最大の33兆7,929億円に-『強く豊かな日本』投資枠に1兆337億円(日本医事新報) 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省厚生労働省は8月27日の社会保障審議会医療部会・医療保険部会を開き、医療DXの今後の工程を示す「医療情報化推進方針(案)」と電子カルテ情報共有サービスの進捗を報告した。第1期の対象期間は2026年10月1日~2030年3月31日までの3年半で、9月末までに厚生労働大臣が官報告示する予定。社会保険診療報酬支払基金は10月1日に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構)」へ改組され、同方針に基づく中期計画を策定する予定。電子カルテ情報共有サービスは現在、全国10地域でモデル事業を実施中で、2026年度冬をめどに全国運用を開始する。共有対象はまず診療情報提供書、退院時サマリ、健診結果報告書の3文書と、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査、処方の6情報。モデル事業では、感染症情報を患者への説明前に共有する場合の扱いや、院内コードと共有用コードの対応などの課題を検証している。運用開始時には、全国721の地域医療支援病院を対象に、電子診療録等情報の提供・利用体制の整備を努力義務とする方針であり、冬までに省令で規定する。運用開始後は普及状況を踏まえて対象を拡大する考えで、医療部会では特定機能病院や災害拠点病院、救急病院などへの拡大を求める意見も出された。厚労省の資料でも、まず地域医療支援病院を指定し、その後、普及計画の効果を見ながら努力義務の対象拡大を検討するとしている。同時に電子カルテ自体の普及も加速する。2027年度から共有サービスなどに対応する「認証クラウドネイティブ型電子カルテ」および「標準型電子カルテ(導入版)」の導入を進め、2028年度までに療養病床等が中心の病院を除く200床以上病院で普及率約100%、2030年末までに全医療機関で普及率約100%を目指す。オンプレミス型からクラウド型への移行により、業務効率化、セキュリティ強化、データの二次利用を含めた共有を推進する。医療・介護情報の連携も段階的に拡大する。2026年度から介護情報基盤を標準化対応済み自治体から順次開始し、2028年度をめどに全自治体へ広げる。あわせて2028年度には医科・DPC向け共通算定モジュールの請求支援機能や労災版モジュールの運用開始、電子カルテ情報を創薬等に二次利用するデータベースの運用開始を目指す。電子カルテ情報共有サービスでは2027年度に訪問看護指示書・計画書・報告書等を共有対象に加え、2029年度には歯科情報にも拡大する予定である。その一方で、医療部会では電子カルテの新規導入・更新費、クラウド利用時の通信費、停電や回線断絶時の事業継続性などへの懸念が相次いだ。厚労省は2027年度予算概算要求で、新規導入だけでなく更新・買い替えも含む支援を盛り込む方針。医療DXは構想段階から全国実装へ移りつつあり、医療機関には今後数年間で、システム更新時期や費用、地域連携、災害・サイバー対策を一体的に見据えた対応が求められる。 参考 1) 医療情報化推進方針案等について(厚労省) 2) 医療DXの進捗状況等について(同) 3) 2028年度までに療養除く200床以上病院で、30年度までに全医療機関で「電子カルテ導入率100%」を目指す-社保審・医療部会等(Gem Med) 4) 電子カルテ情報共有、地域医療支援病院に努力義務運用開始後に対象拡大検討 厚労省方針(CB news) 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市東京都日野市は、市立病院で9月の給与支払いに必要な資金が不足するとして、緊急に1億円を貸し付ける。医師、看護師ら約700人の給与は約2億7,000万円。9月の5連休で給与支給が18日に前倒しされる一方で、診療収入の入金は24日となるため、一時的に資金がショートする見通しとなった。ただし、朝日新聞の報道で原因とされている連休は直接のきっかけにすぎず、背景には長年の経営悪化がある。日野市立病院は300床の地域医療支援病院で、二次救急、周産期、災害・感染症医療などを担う。2023年策定の経営強化プランでは、病床利用率を高めて経常黒字化を目指していた。しかし、2026年5月の経営再建支援報告書によると、コロナ禍では補助金により黒字を維持したものの、補助金終了と人件費増で2023年度の経常利益率はマイナス15.2%、2024年度はマイナス18.6%、約14億円の赤字に悪化した。医業収支の赤字も約17億7,200万円で、同規模病院と比べ下位4分の1を下回る水準だった。収益面では、2024年度の病床稼働率は62.0%、DPC症例の1日単価は5万8,453円。黒字化には、単価を維持したままなら稼働率89.5%、稼働率を維持するなら1日単価8万4,401円が必要と試算され、現状との差は大きい。救急応需率も2024年度55.2%にとどまり、東京消防庁からの搬送要請を約半分断っていた。さらに、2024年度の経常収益約77億円に対し、損益分岐点は約90億円で、黒字化には約13億円の増収が必要とされた。赤字の積み重ねで手元資金が細り、市は昨年度10億円を貸し付け、今年度も別途10億円を支援する方針だった。そこへ入出金の6日間のずれが重なり、追加融資が必要となった。今回の事例は、低い病床稼働率(62.0%)、低水準の救急応需率、診療単価の低迷と高い固定費により、短期の資金ギャップを吸収できない財務体質に陥っていた結果といえる。日野市立病院は2026年4月に地方公営企業法「全部適用」へ移行して経営強化を進めていたが、全国自治体病院協議会の2025年度決算調査でも自治体病院の84%(有効回答494病院中)が経常赤字に陥っている実態が示されており、公立病院の経営難が決算上の赤字にとどまらず、日々の運転資金や給与支払いに直結する危機的局面を迎えていることを示している。 参考 1) 日野市立病院経営強化プラン(日野市立病院) 2) 令和7年度日野市立病院 経営再建支援業務委託報告書(日野市) 3) 日野市立病院「9月の給与払えない」財政難に連休も影響、市が支援へ(朝日新聞)

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睡眠時無呼吸症候群の検査、英語でどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第73回

睡眠ポリグラフ検査 polysomnographypolysomnographyは「睡眠ポリグラフ検査」を意味する医学用語です。睡眠時無呼吸症候群などを評価するために行われる、いわゆる「睡眠検査」の1つです。では、患者さんに説明するときは、どのように伝えたらよいでしょうか?講師紹介

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卵巣予備能がHR+/HER2-乳がんの術後化学療法ベネフィットを予測/Ann Oncol

 21遺伝子アッセイ(オンコタイプDX)の再発スコアが25以下のHR+/HER2-乳がん患者を対象に、術後の内分泌療法と内分泌療法+化学療法(化学内分泌療法)を比較した第III相RxPONDER試験の55歳未満を対象とするバイオマーカー解析の結果、超高感度アッセイを用いて測定した卵巣予備能の指標である抗ミュラー管ホルモン(AMH)が化学療法追加のベネフィットを予測し、AMHが低値の患者では化学療法追加によるベネフィットが認められなかったことを、米国・エモリー大学のKevin Kalinsky氏らが示した。Annals of Oncology誌2026年9月号掲載の報告。 RxPONDER試験では、リンパ節転移1~3個、再発スコアが25以下のHR+/HER2-乳がん患者を、術後に内分泌療法単独を受ける群または化学内分泌療法を受ける群に無作為に割り付けた。その結果、閉経後患者においては化学療法追加のベネフィットは認められなかった一方、閉経前患者ではベネフィットが示されている。しかし、同試験では閉経前患者における卵巣機能抑制の併用率が低く、化学療法によるベネフィットのかなりの部分が化学療法そのものの抗腫瘍作用ではなく、化学療法に伴う卵巣機能抑制を介した内分泌学的作用によるのではないかと示唆されている。そこで本解析では、化学療法追加によるベネフィットを予測する因子をさらに検討するため、卵巣予備能に関連するホルモンを評価した。 解析対象は、55歳未満で治療前の血清検体が利用可能であった1,556例とした。治療前の血清エストラジオール、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、AMH、インヒビンB(INHB)を盲検下で評価した。評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)とし、再発スコアで調整したCox回帰モデルを用いて、治療割り付けと各ホルモン指標の交互作用を検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象1,556例のうち、閉経前は1,221例、閉経後は335例であった。追跡期間中央値は8.0年。・解析対象全体では、内分泌療法単独群と比較して、化学内分泌療法群ではiDFSが有意に改善した。年齢別では、50歳未満では化学内分泌療法の有意なベネフィットが認められたが、50~54歳では有意ではなかった。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -解析対象全体 HR:0.65、95%CI:0.50~0.85、調整後のp=0.0066 -50歳未満 HR:0.47、95%CI:0.33~0.67、調整後のp=0.0004 -50~54歳 HR:1.02、95%CI:0.68~1.54、調整後のp=0.95・閉経前患者では化学内分泌療法によるiDFSのベネフィットが認められたが、閉経後患者では認められなかった。 -閉経前 HR:0.55、95%CI:0.41~0.75、調整後のp=0.0009 -閉経後 HR:1.18、95%CI:0.67~2.07、調整後のp=0.72・AMH値と治療割り付けの交互作用は有意であり(調整後のp=0.0034)、AMH値によって化学療法追加による治療効果が異なることが示された。・AMH値10pg/mL以上の群では、化学内分泌療法によりiDFSが有意に改善し、5年iDFSの絶対利益は8.5%であった。AMH値10pg/mL未満の群では化学療法の追加による有意なベネフィットは認められなかった。 -AMH値10pg/mL以上 HR:0.46、95%CI:0.33~0.65、調整後のp=0.00012 -AMH値10pg/mL未満 HR:1.27、95%CI:0.81~1.99、調整後のp=0.47・DRFSについても同様であり、AMH値10pg/mL以上の群では化学内分泌療法のベネフィットが認められ、AMH値10pg/mL未満の群では認められなかった。・INHB値12pg/mL以上の群ではiDFSで化学療法追加のベネフィットが認められ、DRFSでも同様の傾向がみられた。一方、INHB値12pg/mL未満群ではiDFSのベネフィットは認められなかった。・エストラジオール、プロゲステロン、FSH値は化学内分泌療法のベネフィットを予測する因子ではなく、LH値は弱い予測能を示すにとどまった。 研究グループは「55歳未満の患者を対象とする本解析において、ベースラインのAMH値が10pg/mL未満の参加者は化学内分泌療法による恩恵を受けなかった。AMH値は、閉経状態、年齢、その他のホルモン値よりも、化学内分泌療法の有効性を示す有意に優れた指標であった。適切な超高感度アッセイを用いた卵巣予備能の測定は、閉経状態が不明確な患者において、化学療法を安全に省略できる患者の特定に役立つ可能性がある」とまとめた。

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イサツキシマブ皮下注製剤発売、投与時間の短縮と患者・医療者の負担軽減に/サノフィ

 サノフィは2026年8月27日、イサツキシマブの皮下注製剤「サークリサ皮下注1400mg」を発売した。本製剤は、多発性骨髄腫に対するポマリドミド・デキサメタゾン併用療法(Pd)、カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法(Kd)、ボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用療法(VRd)が適応となる。点滴静注に加えて皮下注による投与が可能となることで、患者や医療者のニーズに応じて投与方法を選択できるようになった。 イサツキシマブは2020年8月、再発または難治性の多発性骨髄腫治療薬として日本で発売されているが、今回の皮下注製剤の追加により、静脈内投与と比べ、投与時間の大幅な短縮が可能になった。治療における身体的・時間的な負担軽減のほか、診療業務の効率化による医療者の負担軽減も期待される。<製品概要>販売名:サークリサ皮下注1400mg一般名:イサツキシマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:多発性骨髄腫用法及び用量:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはイサツキシマブ(遺伝子組換え)として1回1400mgを、併用する抗悪性腫瘍剤の投与サイクルを考慮して、以下のA法又はB法の投与間隔で皮下投与する。A法:1週間間隔、2週間間隔の順で投与する。B法:1週間間隔、2週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。薬価:270,495円(1400mg/10mL 1瓶)製造販売承認日:2026年6月19日薬価収載日:2026年8月13日発売日:2026年8月27日製造販売元:サノフィ株式会社

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スタチンとARBの併用で認知症リスクは低下するのか

 高血圧と脂質異常症は、認知症の修正可能な危険因子であり、スタチンと降圧薬の併用は保護的な効果をもたらす可能性がある。しかし、特定の薬剤の組み合わせに関するエビデンスは依然として限られている。オーストラリア・タスマニア大学のEyayaw Ashete Belachew氏らは、アンジオテンシンII(Ang-II)産生を増加させる降圧薬(Ang-II産生促進薬)とスタチンの併用と、Ang-II産生を減少させる降圧薬(Ang-II産生抑制薬)とスタチンの併用を、認知症リスクとの関連について比較検討した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2026年8月号の報告。 オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の大規模な地域住民コホートである45 and Up Studyのデータを用いて、プロスペクティブに検討を行った。対象は、高血圧および脂質異常症を有し、スタチンと降圧薬を併用している45歳以上の患者であった。対象患者を、スタチンとAng-II産生促進薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、サイアザイド系利尿薬、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬[DHP-CCB])の併用群と、スタチンとAng-II産生抑制薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬[ACEI]、β遮断薬[BB]、非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬[非DHP-CCB])の併用群に分類した。薬剤への曝露は、服薬期間割合(PDC、80%以上)に基づき判定した。1対1の傾向スコアマッチングを用いて、両群のベースライン特性をマッチングさせた。食事、身体活動、併存疾患、併用薬で調整したハザード比(HR)を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・マッチングを行った3万4,610例(各群1万7,305例、平均年齢65.8±8.8歳、平均フォローアップ期間12.4±5.1年)を対象とした解析において、スタチンとAng-II産生促進薬の併用群は、スタチンとAng-II産生抑制薬の併用群と比較し、認知症リスクの12%低下(HR:0.88、95%信頼区間[CI]:0.79~0.98)および全死亡リスクの13%低下(HR:0.87、95%CI:0.82~0.93)との関連が認められた。・ロスバスタチンまたはアトルバスタチンとAng-II産生促進薬の併用は、シンバスタチンとAng-II産生促進薬の併用と比較し、より大きな有益性を示した(各々、HR:0.43[95%CI:0.36~0.50]、HR:0.74[95%CI:0.64~0.84])。・これらの効果は男女ともに一貫して認められた。しかし、保護的な関連は65~74歳の年齢層でのみ観察された。また、ARBを含む併用療法は、ACEIを含む併用療法と比較し、より優れた有益性を示した。・死亡を競合リスクとして考慮したモデルを含む感度分析においても、これらの結果は頑健であった。 著者らは「スタチンとAng-II産生促進薬の併用は、認知症リスクの低下と関連していた。とくに、ロスバスタチンまたはアトルバスタチンとARBの併用で、より大きな有益性が確認された。このことは、認知機能への有益性が治療選択の判断材料となりうることを示唆している。今後は、ランダム化比較試験によってこれらの知見を検証し、その根底にあるメカニズムを解明する必要がある」としている。

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オピオイド処方率、抜き打ち審査が影響/BMJ

 米国では1996年、「痛みは第5のバイタルサイン」との概念が導入され、それ以降、疼痛を測定・治療するための体系的な取り組みが、オピオイドの処方行動にどの程度の影響を及ぼすかについて議論がなされてきたが、これを実証的に研究することは困難とされる。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid C. Cron氏らは、病院医療の質と安全に関する認証機関であるThe Joint Commission(TJC)による、抜き打ち訪問審査の期間中に教育病院に入院した患者では、退院時のオピオイド処方率が、同審査のない期間に比べて高いのに対し、非教育病院ではこのような差は生じないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月19日号に掲載された。米国の準実験的解析 研究グループは、TJCが2~3年ごとに予告せずに行う幅広く厳密な訪問審査(入院患者の疼痛管理の実践に関する体系的な評価を含む)と、退院時のオピオイド処方との関連を評価する目的で準実験的解析を実施した(米国医療研究品質庁[AHRQ]の助成を受けた)。 TJCによる訪問審査日に近い時期に入院し、入院前の90日間にメディケア・パートDにオピオイドの支払請求履歴がないメディケア受給者23万3,744件(2,490病院)の入院記録を解析の対象とした。 主要評価項目は、訪問審査期間中のオピオイド処方(入院日から退院後7日目まで)とした。退院時のオピオイド処方率(受給者1例当たりの週ごとの処方)を、審査前後の±3週間の処方率と比較することで、入院患者の疼痛管理の実践が精査される審査週に、退院時のオピオイド処方が増加したか否かを評価した。教育病院のオピオイド処方率、審査週9.6%vs.非審査週8.2%で有意差 2008~18年の、90の教育病院への2万1,156件(審査週3,190件、非審査週1万7,966件)の入院と、2,400の非教育病院への21万2,588件(審査週3万1,118件、非審査週18万1,470件)の入院を分析した。 教育病院の入院患者(平均年齢65.6歳、女性50.1%)では、退院時のオピオイド新規処方率は、審査週のほうが非審査週と比較して高かった(9.6%vs.8.2%、補正後群間差:1.3%、95%信頼区間[CI]:0.3~2.2)。補正後オッズ比(OR)は1.19(95%CI:1.05~1.34)であり、有意差を認めた(p=0.01)。 一方、非教育病院の入院では、退院時のオピオイド新規処方率(7.9%vs.7.7%、補正後群間差:0.1%、95%CI:-0.2~0.4)に有意な差はみられなかった(OR:1.02、95%CI:0.98~1.07、p=0.36)。 また、TJCによる訪問審査の効果は、教育病院のほうが非教育病院よりも有意に大きかった(交互作用の補正後OR:1.18、95%CI:1.03~1.35、p=0.01)。積極的な疼痛治療は、ホーソーン効果による可能性 著者は、「TJCによる審査期間中は、疼痛管理の実践が厳しく精査され、患者の疼痛評価や治療満足度の評価が強化されており、これが教育病院の医師に、通常よりも積極的な疼痛治療を行わせた可能性がある(ホーソーン効果:観察されることで引き起こされる行動の変化)」「他のいくつかの薬剤クラスでは処方量の増加はみられないことから、オピオイド処方の増加は一時的な変化の可能性がある」としている。 また、「教育病院で処方量が増加した理由として、(1)すでに認証を受けている可能性が高く、その教育使命や研修基準、さらに学術的評価を維持したいとの強い意向があり、認証取得と連邦政府からの資金提供との関連もあるため、認証を優先している可能性がある、(2)医療の質の改善への投資が多い、(3)研修医(審査期間中に最良の医療が確実に遂行されるよう病院管理者が講じる措置の影響を受けやすい)の存在などが挙げられる」「審査期間中の処方が過剰な治療であったのか、それとも、これまで治療が不十分だった疼痛への適切に強化した対応であったのかを判断することはできないが、これらの知見は医療機関が疼痛管理を重視することが、オピオイド処方の測定可能な差異につながる可能性を示している」と指摘している。

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心臓手術時の血小板輸血、長期冷蔵保存血液でも止血効果/JAMA

 人工心肺装置(CPB)の使用を伴う心臓手術を受ける患者は、出血に対する血小板輸血を要することが多いという。血小板は通常、室温(20~24℃)で最長5~7日間保存されるが、冷蔵保存(1~6℃)により、止血機能を損なわずに保存期間を延長できる可能性が示唆されている。米国・ピッツバーグ大学のPhilip C. Spinella氏らCHIPS Investigator Groupは「CHIPS試験」において、心臓手術を受ける患者では、手術中の活動性出血の制御に関して、最長21日間保存された冷蔵保存血小板(CSP)は、室温保存血小板(RTP)と同程度の止血効果が期待できることを示した。研究の成果はJAMA誌オンライン版2026年8月17日号で報告された。2ヵ国の無作為化非劣性試験 CHIPS試験は、米国とオーストラリアの27施設で実施した部分盲検無作為化適応型非劣性試験であり、2021年12月~2025年3月に、生後28日以上85歳未満で、CPBの使用を伴う複雑な心臓手術が予定され、血小板輸血を要する出血が予測される患者を登録した(Defense Health Agency Operational Medical Systemsの助成を受けた)。 被験者1,000例を、最長21日間保存したCSPの投与を受ける群(660例)、または最長7日間保存したRTPの投与を受ける群(340例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、止血有効性スコア(1~5点、点数が大きいほど出血量が多い)とし、非劣性マージンは1点に設定した。7日以上の冷蔵保存期間が少なくとも1回あり、その際の非劣性の事後確率が97.5%以上の場合に、成功基準を満たしたと判定した。胸腔ドレナージ排出量も同程度 血小板輸血を受けた1,000例のうち678例(67.8%)が男性で、1歳未満がCSP群で79例(12.0%)、RTP群で54例(15.9%)含まれた。主解析の対象となったのは989例(CSP群650例、RTP群339例)で、年齢中央値は55.5歳(四分位範囲[IQR]:4.8~68.8)であった。CPBの施行時間中央値は164.0分(IQR:114.0~219.0)であった。 主要評価項目に関して、CSP群はRTP群に対し非劣性を示し、すべての冷蔵保存期間(1~21日)においてその確率は99.9%を超えた。保存期間を統合して分析したところ、止血有効性スコアはCSP群が3.08点(95%信用区間[CrI]:2.99~3.17)、RTP群は2.99点(95%CrI:2.88~3.11)であり、平均群間差は0.09(95%CrI:-0.06~0.23)であった。 また、事後解析では、すべての保存期間で非劣性であったためCSP群を単一の群と見なすと、止血有効性スコアの平均値はCSP群が3.08(SD 1.15)点、RTP群は2.99(SD 1.10)点と両群でほぼ同等であった。 副次評価項目である24時間後の胸腔ドレナージ排出量中央値は、CSP群で8.9mL/kg(IQR:5.2~15.4)、RTP群で8.4mL/kg(IQR:5.5~15.9)であり、中央値の群間差は0.4mL/kg(95%CrI:-1.0~1.5)と両群間に統計学的な有意差を認めなかった(p=0.83)。安全性アウトカムに大きな差はない 安全性アウトカムについては、初回血小板輸血後24時間以内の出血に対する再手術がCSP群で多かった(4.2%vs.1.8%、群間差:2.5%[95%CrI:0.4~4.6])ことを除くと、同7日以内の静脈血栓イベント(2.6%vs.1.8%)、動脈血栓イベント(2.6%vs.3.8%)、輸血関連有害事象(0.2%vs.0%)などに両群間で差はなく、28日死亡率(3.2%vs.1.8%)も同程度であった。 著者は、「この結果は、活動性出血に対する、最長で21日間冷蔵保存された血小板の使用を支持するものである」としている。 また、「これによって、血小板の廃棄を減らし、供給量を増やすことができ、従来の5~7日間室温保存された血小板は投与できなかった患者での使用も可能になると考えられる」と指摘している。

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2~5歳児にインフルワクチンが有効、米国では秋生まれに感染が少ない

 2~5歳児において、秋生まれの小児はインフルエンザワクチンの接種を受ける可能性が高く、インフルエンザと診断される可能性が低いという研究結果が、「JAMA Pediatrics」に6月1日掲載された。 米マサチューセッツ総合病院のChristopher M. Worsham氏らは、2016~2023年の各インフルエンザシーズンについて、秋生まれと夏生まれの2~5歳児におけるインフルエンザワクチン接種の有効性を検討した。 その結果、対象となった各インフルエンザシーズンにおいて、秋生まれの小児はインフルエンザワクチンの接種を受ける可能性が高く、インフルエンザと診断される可能性が低いことが分かった。秋生まれの小児では夏生まれの小児に比べて、インフルエンザワクチン接種率がシーズンにより絶対値で8.6~12.5パーセントポイント高く、インフルエンザ診断率は1.0~1.4パーセントポイント低かった。インフルエンザ以外のウイルス感染症の診断率に差は認められなかった。誕生日の時期の健診をきっかけにワクチン接種を受けた小児100人当たり、インフルエンザの診断例はシーズンにより9~14例少なかった。 上席著者で米ハーバード大学医学大学院のAnupam B. Jena氏は、「知りたいこと、理解したいことの全てについてランダム化比較試験を行うことは不可能である。しかし、世の中には膨大なデータがあり、今回のようなランダム化比較試験に近い状況がそのデータの中に埋もれ、発見されるのを待っている」と述べている。 なお、1人の著者がヘルスケア関連企業との、2人の著者が出版・メディア関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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生活リズムが規則的な高齢者は痛みや抑うつ症状が少ない傾向

 規則正しい生活リズムを維持することは、心身の健康維持につながるかもしれない。毎日の睡眠や食事、社会的交流などの行動や社会生活のリズム(以下、生活リズム)が規則的な人は、痛みや抑うつ症状が少ない傾向にあることが、新たな研究で示された。また、このような生活リズムの規則性と健康との関連は、不眠症状の有無に関わりなく認められたという。米ミズーリ大学人間発達学分野のEunjin Tracy氏らによるこの研究結果は、「Journal of Behavioral Medicine」6月号に掲載された。 Tracy氏は結果について、「毎日ほぼ同じ時間に起床し、食事をし、仕事や勉強をし、人と交流し、就寝することで、それらの時間的な手がかりが体内時計の同調を助ける。長期的には、それが健康状態の改善につながる可能性がある」と説明している。 この研究では、高齢者67人(平均年齢68.3歳)を対象に、1)不眠症状の有無により、生活リズム、痛み、BMI、抑うつ症状に違いがあるか、2)生活リズムの規則性は痛み、BMI、および抑うつ症状と関連するのか、3)不眠症状の有無によってこれらの関連は変わるのか、が検討された。対象者のうち、37人は不眠症状を抱えていた。生活リズム、BMI、抑うつ症状、痛みは対象者の自己申告により評価された。 その結果、生活リズムが規則的な人ほど、BMIが低く、痛みや抑うつ症状も少なかった。この関連は、不眠症状の有無にかかわらず認められた。 Tracy氏は、「生活リズムのわずかな乱れでも、体内時計に影響することがある。このような体内時計と生活時間のずれは、『社会的時差ぼけ』と呼ばれている」と説明する。例えば、平日は規則正しい生活を送っていても週末に夜更かしをすることは、体内時計にとって好ましくない可能性があるという。 Tracy氏は、「私自身も、毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝ているが、このような日々の生活リズムはあらゆる年代の人に役立つと思う」と述べるとともに、「平日と週末で起床時間と就寝時刻が異なる社会的時差ぼけという概念、さらにそれが概日リズムを乱すという認識は広がりつつある。今回の研究が、規則正しい生活リズムが健康にもたらす利点について、多くの人が考えるきっかけになることを願っている」としている。 最後にTracy氏は、「人生の約3分の1は睡眠に費やされる。健康やウェルビーイングの研究では、起きている時間だけでなく、24時間全体を通して健康を捉える視点が重要である」との見解を示している。

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細菌性腟症の女性、性感染症の検査陽性と関連

 細菌性腟症(BV)がある女性では、BVがない女性と比べて性感染症(STI)の検査で陽性となる可能性が約3倍高いことが、米Quest Diagnostics社のDamian Alagia氏らの研究で示された。研究グループは、BVの治療を受けている女性は、類似した症状が現れることのあるSTIについても検査を受けるべきだとする米疾病対策センター(CDC)の指針を裏付ける研究結果だとしている。詳細は、7月23日付で「O&G Open」に掲載された。 Alagia氏は、「今回の研究から得られたデータが、この臨床分野で大いに必要とされているさらなる研究を促すことを期待している。また、BV患者に対するSTI検査を含む包括的な診断アプローチの重要性を臨床医や政策立案者に改めて認識してもらう契機にもなってほしい」と述べている。 Alagia氏らによると、BVは最も頻度の高い婦人科疾患の一つで、女性の約30%が生涯のどこかの時点でこの疾患を経験するという。主な症状は、腟分泌物、悪臭、かゆみ、排尿時の灼熱感などである。研究グループは、BVは性生活のある女性でよく見られるが、STIリスク上昇との関連については十分に検討されてこなかったと説明している。 今回の研究では、2022~2024年に、BV、外陰腟カンジダ症(VVC)、性器クラミジア感染症、淋菌感染症、腟トリコモナス症のいずれかの分子検査を受けた15歳以上の女性150万人超のデータを解析し、BVや外陰腟カンジダ症(VVC)とSTIとの関連を評価した。このうち3万7,000人以上はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症の検査も受けていた。 その結果、対象者全体では38.7%がBV陽性、28.5%がVVC陽性であり、10.8%はBVとVVCの両方が陽性だった。1種類以上のSTIが認められた割合はBV陽性者では12.0%だったのに対し、BV陰性者では3.8%であり、BV陽性者ではBV陰性者に比べてSTIの検査で陽性となる可能性が約3.2倍高かった。年齢や居住地域、VVC検査結果で調整して解析した結果、BV陽性であることは、淋菌感染症のオッズが3.8倍、性器クラミジア感染症のオッズが2.8倍、腟トリコモナス症のオッズが3.6倍、マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症のオッズが1.9倍に上昇することと関連していた。一方、VVCについては、BVほど一貫したSTI陽性との関連を示さなかった。 論文の筆頭著者で、Quest Diagnostics社感染症部門のエグゼクティブディレクターであるElizabeth Marlowe氏はニュースリリースの中で、「今回の研究は、BVの女性はSTIのリスクも高いことを示した先行研究の結果を裏付けるとともに、その知見を拡大するものである。本研究の強みは、結論を導き出すためのデータセットが先行研究よりもはるかに大規模である点だ」と述べている。 さらにMarlowe氏は、「この大規模研究は、臨床的に適応がある場合には包括的な分子検査を行うことに価値があることを浮き彫りにしている。それによって臨床医は単一の検体から重複感染を検出したり、患者の管理を最適化したり、エビデンスに基づいた医療を強化したりすることが可能になる」と述べている。

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