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1.

コーヒーはなぜ脂肪肝を抑制するのか

 コーヒーは脂肪肝などの代謝性疾患リスクを減らすことがメタ解析で示唆されている。遊離脂肪酸や炭水化物を豊富に含む門脈血は脂肪肝の一因となるが、コーヒー摂取により上腸間膜動脈(SMA)とそれに続く門脈の血流が減少することが脂肪肝リスク抑制の一因となっている可能性がある。しかしながら、これまでコーヒー摂取でこれらの血流が減少するかどうか成人で検討した研究は見当たらない。今回、杏林大学の研究グループが若年男性の腹部血流を超音波検査で調べた結果、コーヒー摂取でSMAおよび門脈の血流が減少したことがわかった。Cancer Causes & Control誌2026年8月号に掲載。 本研究では、健康な若年男性32人(平均年齢:21±1歳)を対象に、コーヒーまたは水の摂取後の空腹状態におけるSMAおよび門脈の血行動態を調べた。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー摂取後30分時点の超音波検査では、SMAの血流量の減少(中央値:-13.4%、四分位範囲[IQR]:-18.6~-9.6、p<0.001)とともに、拍動指数の増加(中央値:9.0%、IQR:-1.1~14.5、p<0.001)および門脈血流量の減少(中央値:-11.3%、IQR:-14.5~-5.3、p<0.001)が認められた。・これらの現象はコーヒー摂取90分後も観察され、とくに普段カフェイン摂取量が少ない被験者で顕著であったが、水を飲んだ後にはほとんど認められなかった。 著者らは「コーヒーを摂取することで、食後に門脈を介して肝臓へ血液が急速に流入するのを抑制できる可能性がある。今回の結果は、コーヒーの効果の根底にあるメカニズムの1つを反映している」と考察している。

2.

高齢者のポリファーマシー対策啓発資材が完成/厚労省

 さまざまな疾患を併存していることが多い高齢の患者では、処方された治療薬の副作用や相互作用などが大きなリスクとなるケースもある。そこで、厚生労働省では2018年に『高齢者の医薬品適正使用の指針』を公開し、いわゆる「ポリファーマシー対策」を示した。今回、高齢者のポリファーマシー対策を進めるための医療従事者向けの普及啓発資材が完成。厚労省は6月24日より公開、配信を行っている。処方の一元管理がポリファーマシー対策の鍵 ポリファーマシー啓発資材の利用対象者は、医師、歯科医師、薬剤師、看護師などの多職種を対象とするもので理解しやすいように図表やイラストが多用されている。 主な目次と内容は以下のとおり。【1.ポリファーマシーの概念】 「ポリファーマシーの概念」として「多剤服用の中でも害をなすものをとくにポリファーマシーと呼び、本指針でも両者を使い分けた。ポリファーマシーは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態」と定義し、服用薬剤数が6種類以上で発生が多いことが示されている。【2.多剤服用の現状】 高齢になるに伴い服用薬剤数が多くなる傾向があること、有害事象が発生しやすくなることが示されている。また、処方が一元管理されていないとポリファーマシーが形成されやすいことが示されている。【3.薬剤見直しの基本的な考え方およびフローチャート】 処方見直しのフローチャートを示し、実施する際の考え方やポイント、注意点、他職種との連携の重要性などが記載されている。【4.多剤服用時に注意する有害事象と診断、処方見直しのきっかけ】 有害事象として、「ふらつき・転倒」「せん妄」「食欲低下」「排尿障害・尿失禁」「記憶障害」「抑うつ」「便秘」が示されている。【5.多剤服用の対策としての高齢者への薬物投与の留意事項】 多剤服用の対策では、加齢による腎機能などの低下を考慮し、「少量開始」「徐々に増量」などの注意が記載され、相互作用の影響や重複処方への注意、OTC医薬品などとの併用への注意、急性期・療養期・慢性期での見直しが示されている。【6.服薬支援】 服薬アドヒアランス低下の要因として「視力低下」「認知機能の低下」「独居」などの例示とともに、処方や服薬支援の工夫が記載されている。【7.多職種・医療機関および地域での協働】 多職種連携の重要性だけでなく、地域の薬局、介護サービスとの協働の必要性が示されている。【8.国民的理解の醸成】 薬剤の適正な使用法の啓発について記載されている。【9.参考資料】 薬剤別の高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意の詳細、とくに慎重な投与を要する薬物のリスト、加齢に伴う薬物動態および薬力学の変化などが詳細に記載されている。

3.

統合失調症患者に多い血液型は?

 中国・Wuxi Taihu UniversityのKangying Yu氏らは、統合失調症患者と健康対照者におけるABO式血液型の分布を調査した。Medicine誌2026年5月15日号の報告。 中国・無錫市の精神疾患患者6,772例(2003〜25年)の臨床データを対象に、レトロスペクティブ解析を行った。同時期に定期健康診断を受けた健康対照者871人を対照群とし、両群間のABO式血液型分布の違いを分析した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者における血液型の分布は、A型2,599例、AB型574例、B型1,646例、O型1,953例であった。・それぞれの血液型の割合は、A型38.4%、AB型8.5%、B型24.3%、O型28.8%であった。・対照群における血液型の分布は、A型277人、AB型85人、B型252人、O型257人であり、それぞれの割合は31.8%、9.8%、28.9%、29.5%であった。・年齢、性別、婚姻状況などの因子を調整した後、Firthロジスティック回帰分析では、統合失調症患者と対照群の間でABO式血液型分布に統計的に有意な差が認められた。・統合失調症群では対照群と比較し、A型の割合が高く、B型の割合が低いことが明らかになった。 著者らは「統合失調症患者においてA型の割合は一般集団よりも高く、B型の割合は一般集団よりも低いことが示された」としている。

4.

リファンピシン耐性肺結核、4~5剤併用6ヵ月投与が有用/NEJM

 リファンピシン耐性肺結核の治療では、最近まで最大7種の薬剤を含むレジメンの9~18ヵ月間の投与が行われてきた。2022年、WHOは治療ガイドラインを改訂し、ベダキリンやpretomanidなどの新薬を含むレジメンの6ヵ月間の投与を、推奨される標準治療として追加したが、現在、pretomanidは14歳未満の小児や妊娠中または授乳中の女性には禁忌とされる。南アフリカ共和国・University of the WitwatersrandのFrancesca Conradie氏らは、「BEAT Tuberculosis試験」において、小児や妊娠中・授乳中の女性を含む患者集団の治療では、ベダキリン、リネゾリド、デラマニド、レボフロキサシンまたはクロファジミンを含む新戦略の6ヵ月間投与は同国の標準治療の9ヵ月間投与に対し、有効性に関して非劣性であり、安全性プロファイルは同程度であることを示した。研究の成果は、NEJM誌2026年6月25日号に掲載された。ベダキリン、リネゾリド、デラマニド+レボフロキサシン/+クロファジミン併用投与 BEAT Tuberculosis試験は、南アフリカ共和国の2つの都市部地域で実施した実践的な非盲検無作為化対照比較第III相非劣性試験(米国国際開発庁などの助成を受けた)。2019年8月~2022年10月に、年齢6歳以上、リファンピシン耐性の肺結核で、イソニアジドやフルオロキノロン系抗菌薬への耐性の有無は問わず、妊娠中または授乳中の女性を含む患者を登録した。 被験者403例(年齢中央値35.0歳[四分位範囲[IQR]:28.0~43.0]、女性170例[42.2%]、BMI中央値19.2[IQR:17.1~22.2])を、ベダキリン、リネゾリド、デラマニドと、レボフロキサシンまたはクロファジミン(あるいはこれら両方)の投与を6ヵ月間受ける群(試験戦略群203例)、またはリファンピシン耐性結核に対する南アフリカ共和国の標準治療を9ヵ月間受ける群(対照群200例)に無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、治療終了時および無作為化から76週の時点における良好なアウトカム(治癒または治療完了)であった。治癒は、適格な治療アドヒアランス(投薬順守率≧80%)を達成し、治療終了前の14日以上の間隔を空けた2回の喀痰検査で陰性であること、治療完了は、適格な治療アドヒアランスを達成し、治療失敗の証拠がないことと定義した。非劣性マージンは10%ポイントとした。良好なアウトカム、試験戦略群86.1%vs.対照群86.0% ベースラインで30例(7.4%)が8~17歳、女性参加者のうち9例(5.3%)が妊婦で、205例(50.9%)がHIV感染者、167例(41.4%)がBMI値<18.5であった。 良好なアウトカムは、試験戦略群で202例中174例(86.1%)、対照群で200例中172例(86.0%)に認められた。両群間の補正後リスク差は-0.2%ポイント(95%信頼区間:-6.9~6.5)であり、対照群に対する試験戦略群の非劣性が確認された(非劣性のp=0.001)。 治療失敗は、試験戦略群で7例(3.5%)、対照群で10例(5.0%)にみられた。治療失敗が確認された時点で、試験戦略群の3例と対照群の5例にベダキリン耐性を認めた。また、14例が再発し、このうち10例(5.0%)は試験戦略群、4例(2.0%)は対照群であった。Grade3以上の有害事象31.2%vs.37.0%、すでにWHOガイドラインに反映 治療期間中に、Grade3以上の有害事象(安全性の主要エンドポイント)が試験戦略群の63例(31.2%)、対照群の74例(37.0%)で発生した。治療期間または追跡期間中に、各群10例(5.0%)が死亡した。すべての安全性エンドポイントに関して、両群間に意義のある差を認めなかった。 治療期間中の重篤な有害事象は、試験戦略群で38例(18.8%)、対照群で44例(22.0%)に発現した。治療期間中および治療後に発生した最も頻度の高い重篤な有害事象は、担当医によってリネゾリドが原因とされた貧血で、それぞれ33例(16.3%)および29例(14.5%)にみられた。これらは、数日の投薬中断と赤血球輸血で管理された。 著者は、「本試験の結果は、すでにWHOの薬剤耐性結核の治療ガイドラインに反映され、2024年6月の改訂で、この4剤または5剤の併用療法が推奨レジメンの1つとされている」としている。また、「得られた知見は、現在pretomanidの使用が禁忌とされる優先対象集団(小児や妊娠中、授乳中の女性など)に対する有効な治療戦略のエビデンスを示しており、リファンピシン耐性結核のすべての患者に対して、新たな治療選択肢を提供するものである」と指摘している。

5.

exa-cel細胞療法、小児の輸血依存性βサラセミア・鎌状赤血球症に有効/NEJM

 エクサガムグロゲン オートテムセル(exagamglogene autotemcel:exa-cel)は、体外でのCRISPR-Cas9法を用いた遺伝子編集により、BCL11A遺伝子の赤血球特異的エンハンサー領域で、胎児型ヘモグロビン合成を再活性化するように改変した自家CD34+造血幹細胞と前駆細胞を用いた細胞療法である。米国・Children’s Hospital at TriStar CentennialのHaydar Frangoul氏らは「CLIMB THAL-141試験」および「CLIMB SCD-151試験」において、exa-celの静脈内投与により、輸血依存性βサラセミアのすべての小児で輸血からの離脱が、鎌状赤血球症のすべての小児で重度の血管閉塞性発作の解消が達成され、その一方で全例にGrade3または4の有害事象が発現することを示した。研究の成果はNEJM誌オンライン版2026年6月11日号で報告された。5ヵ国の非盲検第III相試験 CLIMB THAL-141試験およびCLIMB SCD-151試験は、年齢5~11歳の小児患者を対象に、2022年5月に5ヵ国(カナダ、ドイツ、イタリア、米国、英国)の8施設で開始された進行中の非盲検第III相試験(Vertex PharmaceuticalsとCRISPR Therapeuticsの助成を受けている)。 CLIMB THAL-141試験の対象は、輸血依存性βサラセミアと診断され、スクリーニング前の2年間に、少なくとも100mL/kg体重/年の赤血球輸血を受けていた患者15例(平均年齢7.5[SD 2.2]歳、女児5例[33%])であった。CLIMB SCD-151試験の対象は、鎌状赤血球症と診断され、登録前の2年間に年2回以上の血管閉塞性発作を発症した患者11例(平均年齢8.5[SD 2.6]歳、女児6例[55%])だった。 被験者は、exa-cel投与前にブスルファンを用いた骨髄破壊的前処置を受けた。exa-celは、ブスルファン投与から2~7日目に、中心静脈カテーテルを介して1回、静脈内投与した。 主要エンドポイントは、輸血依存性βサラセミアでは12ヵ月以上持続する輸血からの離脱、鎌状赤血球症では12ヵ月以上持続する重度血管閉塞性発作の解消であった。全例で好中球の生着を達成、編集BCL11A遺伝子アレルも安定的に推移 exa-cel投与後の追跡期間中央値は、CLIMB THAL-141試験16.0ヵ月(範囲:2.2~32.1)、CLIMB SCD-151試験16.9ヵ月(7.6~33.1)であった。 CLIMB THAL-141試験では、全例で好中球の生着(生着までの期間中央値30日、範囲:19~38)が達成され、生着前に死亡した1例を除く全例で血小板の生着(51日、22~82)が得られた。また、CLIMB SCD-151試験では、全例で好中球の生着(28日、範囲:20~37)および血小板の生着(47日、24~78)が達成された。 16ヵ月以上追跡した輸血依存性βサラセミアの8例では、全例が12ヵ月以上持続する輸血からの離脱を達成した。残りの7例は評価不能であった。輸血非依存となった8例の平均輸血非依存期間は23.4ヵ月(範囲:13.3~28.5)で、輸血中止までの平均期間は1.3ヵ月(0.5~2.4)だった。 6ヵ月時の平均(±SD)胎児型ヘモグロビン濃度は10.8(±1.7)g/dLであった。編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は、3ヵ月以降は60%以上で維持されていた。6ヵ月時の骨髄のCD34+細胞における編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は77.4(±8.5)%で、これ以降は安定的に維持された。 一方、16ヵ月以上追跡した鎌状赤血球症の8例では、全例が12ヵ月以上持続する血管閉塞性発作の解消を達成し、残りの3例は評価不能だった。血管閉塞性発作が解消した8例の平均発作消失期間は19.0ヵ月(範囲:13.2~30.1)で、exa-cel投与後の連続する12ヵ月以上、本症による入院を認めなかった。 総ヘモグロビンに占める胎児型ヘモグロビンの割合の平均値は、3ヵ月時が38.1(±8.3)%、6ヵ月時は49.5(±6.4)%で、これ以降は45%以上で維持された。末梢血中の編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は、3ヵ月時が67.9(±7.3)%で、これ以降は66%以上で維持された。6ヵ月時の骨髄のCD34+細胞における編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は84.5(±4.9)%で、これ以降は安定的に維持された。2例に前処置関連の重度静脈閉塞性肝疾患 すべての小児患者で、少なくとも1件のGrade3または4の有害事象が発現した。輸血依存性βサラセミアの2例で重度の静脈閉塞性肝疾患を認めたが、いずれもブスルファンによる前処置に関連すると判定された。このうち1例が死亡した。 著者は、「この新しい自家遺伝子治療は、移植片対宿主病や移植片拒絶のリスクがないため移植後の免疫抑制療法を必要としない。これは、患者の約80%が適切な同種ドナーを持たない輸血依存性βサラセミアおよび鎌状赤血球症の小児にとって重要である」としている。

6.

前立腺がんの最小侵襲治療はロボット支援前立腺摘除術よりも術後回復が早い

 中間リスク前立腺がんに対する核磁気共鳴画像法(MRI)ガイド下経尿道的超音波アブレーション(TULSA)は、ロボット支援前立腺摘除術(RP)と比較して、周術期初期のアウトカムが良好であるという研究結果が、インターベンショナルラジオロジー学会年次学術集会(SIR 2026、4月11~15日、カナダ・トロント)で報告された。 米メイヨー・クリニックのDavid A. Woodrum氏らは、中間リスク限局性前立腺がんに対するTULSA(148人)とRP(64人)を比較したCAPTAINランダム化比較試験において、対象者のベースライン時の患者特性および治療特性、周術期初期のアウトカム、ならびにベースライン時の活動レベルへの回復について検討した。 その結果、TULSA群とRP群で、年齢中央値はそれぞれ63歳対65歳、前立腺特異抗原(PSA)値は6.5ng/mL対7.2ng/mL、前立腺体積は41cc対35ccであった。前立腺石灰化は、認められなかったものが64%対67%、3mm以下が19%対22%、3mm超が17%対11%であった。組織学的所見は、グレードグループ2および3の割合がTULSA群で76%、24%、RP群で77%、23%であった。TULSAの多くは、戦略的温存を伴う部分的アブレーションとして実施されており、術中MRIサーモメトリーによりアブレーション温度に達した前立腺体積の割合を算出したところ、中央値は78%であった。RP群の4分の3超(77%)で骨盤リンパ節郭清術が実施された。TULSA群はRP群と比較して、術中の出血量が有意に少なく(0mL対100mL)、入院期間も有意に短かった(0.29日対1.24日)。一方、カテーテル留置期間はTULSA群の方が長かった(13日対8日)。0~100で患者が評価したEQ-5D視覚的アナログ尺度における全体的な健康状態の低下は、術後30日間の全期間にわたり、TULSA群の方がRP群よりも有意に小さかった。 著者らは、「周術期初期のアウトカムをRPと比較すると、TULSAでは出血がなく、日をまたぐ入院を要さず、術後の疼痛が少なく、活動レベルおよび全体的な健康状態のベースラインへの回復も早いことを示している」と述べている。

7.

卵の早期導入で乳児の卵アレルギーが減少

 乳児期の早い段階に卵を与え始めることで、卵アレルギーの発症を減らせる可能性があることが、新たな研究で示された。この効果は、特に湿疹のある乳児で顕著であったという。クイーンズランド大学(オーストラリア)小児アレルギー学・疫学分野のJennifer Koplin氏らによるこの研究結果は、「JAMA Pediatrics」に6月8日掲載された。 卵アレルギーは、多くの国で幼児に最も多く認められるIgE介在性食物アレルギーである。研究グループによると、2016年に発表されたメタアナリシスでは、複数のランダム化比較試験の統合解析により、生後6カ月までに卵を導入した場合、それ以降に導入した場合と比べて卵アレルギー発症リスクが約44%低いことが示された(リスク比0.56)。この結果を受けて、複数の国・地域のアレルギー予防ガイドラインは生後6カ月頃からの卵の導入を推奨するようになったという。これは、「食物アレルギーの原因となる卵などの食物の摂取は1~3歳頃まで避けるべき」としてきた1990年代~2000年代初頭の考え方とは大きく異なる。 オーストラリアでは2016年にアレルギー予防ガイドラインが改訂され、卵を含む主要なアレルゲンを生後1年以内に導入することが推奨された。今回の研究では、このガイドライン改訂の前後で、卵アレルギーの有病率がどのように変化したのかが検討された。対象は、メルボルンの予防接種センターで12カ月時の予防接種を受けた月齢11~15カ月の乳児で、ガイドライン改訂前(2007~2011年)と改訂後(2018~2019年)に同一の方法で募集された。最終的に、改訂前コホート5,276人(月齢中央値12.4カ月、男児50.8%)と改訂後コホート1,933人(月齢中央値12.5カ月、男児51.8%)を解析対象とした。 卵の導入時期の中央値は、改訂前コホートで生後8カ月、改訂後コホートで生後6カ月であった。既知のアレルギーのリスク因子を調整して解析した結果、卵アレルギーの有病率は、改訂前コホートで9.2%であったのが、改訂後コホートでは7.6%に低下していた(調整絶対差−1.6パーセントポイント、95%信頼区間−3.3~−0.005)。このような有病率の低下は、特に乳児期早期に湿疹を発症した児で顕著であり、卵アレルギーの有病率は34.6%から21.9%へ低下していた(調整絶対差−12.7パーセントポイント、95%信頼区間−20.0~−5.4)。 Koplin氏は、「本研究結果は、卵の早期導入を推奨する乳児栄養ガイドラインの改訂が乳児における卵アレルギー有病率の明確な低下につながったことを示すエビデンスである」と結論付けている。さらに研究チームは、「ランダム化比較試験の結果に基づいて改訂されたガイドラインは、適切に実施されれば、食物アレルギーの有病率低下につながる可能性があることを示唆する結果でもある」との見方も示している。 本研究には関与していない米ノースウェル・ヘルスのアレルギー・免疫学専門医であるGina Coscia氏はニュースリリースの中で、「免疫系に関して分かっていることは、アレルゲンが最初に皮膚を介して体内に入ると、体がアレルギー反応を起こすということだ。一方、食物アレルゲンが最初に口から摂取される場合には、そのアレルゲンに対して保護的な免疫応答が誘導される。これが、アレルギーを起こしやすい固形食品の早期導入が広く推奨されるようになった科学的根拠である。バリア機能が損なわれた皮膚に食物が接触する前に口から食物を摂取すれば、食物アレルギーを予防できる可能性がある」と説明している。 Coscia氏はまた、湿疹のある乳児でより大きな効果が見られたことは、この考え方をさらに裏付けるものだとしている。同氏は、「湿疹のある乳児は皮膚のバリア機能が低下しているため、食物アレルギーに対して特に脆弱であることが分かっている。このような乳児で食物アレルギー有病率の低下がより顕著に認められたことは極めて重要であり、アレルゲンの早期導入の重要性について、保護者への啓発をより強く後押しする根拠となる」と述べている。

8.

大気汚染物質への長期曝露は冠動脈疾患の進行と関連

 大気汚染への長期曝露は、たとえ曝露レベルが中等度であっても冠動脈疾患(CAD)の進行と関連することが、新たな研究で示された。大気汚染物質であるPM2.5および二酸化窒素(NO2)への曝露レベルが高い人ほど、心臓のCT画像で評価した冠動脈石灰化スコア(CACS)とプラーク負荷が高かったという。トロント大学(カナダ)医療画像学分野のKate Hanneman氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月9日掲載された。 Hanneman氏によると、本研究の対象者における大気汚染物質への10年間の曝露量中央値は、カナダの現行の空気質基準を大きく下回っていたという。同氏は、「現行の空気質基準値を下回る曝露レベルであっても、大気汚染物質への長期曝露はCADの進行と独立して関連していた。このことは、現行の規制では必ずしもCADの発症や進行を十分に防げない可能性を示している。大気汚染は、血圧、コレステロール値、喫煙と並ぶ、修正可能な心血管リスク因子として位置付けられるべきだ」と述べている。 研究グループによると、過去の研究では、大気汚染物質が心血管疾患の主要な環境リスク因子であることが示されている。今回の研究では、2012年から2023年の間にトロントの3つの主要な病院で心臓CT検査を受けた成人1万1,128人(平均年齢59.1歳、男性51.7%)のCT画像を用いて、大気汚染物質への長期曝露とCAD進行との関連を性別ごとに評価した。対象者のうち7,313人が冠動脈造影検査を受けていた。CAD進行は、CT画像からCACS、プラーク総負荷、および70%以上の狭窄(閉塞性CAD)の有無により評価した。大気汚染曝露は、過去10年間の居住地ベースでのPM2.5およびNO2の平均曝露量として推定した。 10年間の大気汚染物質曝露の中央値は、PM2.5が7.5μg/m3、NO2が13.4ppbだった。解析の結果、PM2.5曝露量が1μg/m3増加するごとにCACSが10.7%上昇し、プラーク総負荷のカテゴリーが1段階上がるオッズが12.5%増加し、閉塞性CADのオッズが22.6%増加することが示された。また、NO2が1ppb増加するごとに、CACSが1.5%上昇し、プラーク総負荷のカテゴリーが1段階上がるオッズは2.2%、閉塞性CADのオッズは3.6%増加した。性別ごとに解析すると、大気汚染物質への長期曝露は、女性では閉塞性CADリスクの有意な上昇と関連していた(PM2.5:オッズ比1.81、P=0.048、NO2:オッズ比1.06、P=0.04)。一方、男性では、大気汚染物質への長期曝露とCAD進行との間に有意な関連は認められなかった。 Hanneman氏は、「本研究は、高所得国に典型的な中程度の大気汚染曝露レベルの集団を対象に、心臓CTを用いて大気汚染物質への曝露とCAD進行との関連を示した最大規模の研究の一つである。評価にはCACSだけでなく、プラーク総負荷や閉塞性CADも含まれていた」と述べている。 Hanneman氏は、「冠動脈アテローム性動脈硬化において、このような低い曝露レベルでも測定可能なシグナルが検出されるという事実は、大気汚染物質による心血管系への有害な影響に明確な安全閾値が存在しない可能性を示唆している。また、比較的空気がきれいとされる国々の住民であっても、環境曝露による心血管リスクは無視できない水準にある可能性がある」と述べている。

9.

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)

1 疾患概念■ 定義発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)は、glycosylphosphatidylinositol(GPI)アンカー生合成に関わるPIGA遺伝子などに後天的変異を獲得した造血幹細胞が、クローン性に拡大することで発症するまれな造血幹細胞疾患である1)。GPIアンカー型タンパク質の欠損により、赤血球表面の補体制御因子であるCD55およびCD59の発現が低下・欠損し、補体による血管内溶血を来す。PNHは単なる溶血性貧血ではなく、血管内溶血、血栓症、造血不全を三主徴とする疾患として理解する必要がある。■ 疫学PNHは希少疾患であり、わが国では指定難病に含まれる。2024(令和6)年度の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は1,264人であり、人口10万人当たり約1.0人に相当する。ただし、これは医療費助成制度に基づく患者数であり、軽症例、未申請例、subclinical PNH、骨髄不全に伴う微小PNHクローンなどは含まれにくいため、実際の有病者数を過小評価している可能性がある。PNHは若年から中年期の成人に多いが、小児から高齢者まで幅広く発症しうる。わが国での診断時年齢中央値は45歳で、20~60代と均等に分布する。欧米では溶血や血栓症を主体とする古典的PNHが多いのに対し、わが国を含むアジアでは、再生不良性貧血など骨髄不全を背景とするPNHが比較的多いとされる2)。■ 病因PNHの直接的な原因は、PIGA遺伝子などGPIアンカー生合成関連遺伝子の後天的変異である。ただし、PIGA変異を有する微小なPNHクローンは健康な人にも検出されることがあり、変異の獲得だけでは臨床的PNHの発症を十分に説明できない。PNHクローンの拡大には、再生不良性貧血に代表される免疫学的骨髄不全の環境が重要と考えられている。すなわち、免疫学的機序により正常造血が抑制される一方で、GPIアンカー欠損造血幹細胞が相対的に生存優位性を獲得し、PNHクローンとして拡大する。このためPNHは、補体介在性溶血と骨髄不全が併存する疾患である(図1)。図1 補体活性化経路とPNH古典経路、レクチン経路、第2経路の3つの活性化経路はいずれもC3の活性化を経て、C5から始まる終末補体経路の活性化に至る。健康な人では、CD55によりC3転換酵素(C4b2b、 C3bBb)とC5転換酵素(C4b2b3bとC3bBb3b)の形成が抑制、崩壊が促進され、CD59によりC5b-9(MAC)の形成が阻害され、過剰な補体活性化が抑制されているが、これらを欠損したPNH型赤血球では、補体による溶血が進行する。画像を拡大する■ 症状PNHの症状は多彩である。典型的には、貧血に伴う倦怠感、息切れ、動悸、黄疸、ヘモグロビン尿を認める。血管内溶血により遊離ヘモグロビンが血中に放出されると、平滑筋弛緩作用を持つ一酸化窒素が消費され、平滑筋攣縮に伴う腹痛、嚥下困難がしばしばみられるほか、勃起障害、肺高血圧症などを来すことがある。また、遊離ヘム、破壊された赤血球に由来する膜成分、血小板活性化、血管内皮障害、組織因子発現、好中球細胞外トラップ形成などが複合的に関与し、血栓傾向をもたらす3)。血栓症はPNHの生命予後を左右する重要な合併症であり、肝静脈、門脈、脳静脈洞など非典型部位に生じることがある。慢性のヘモグロビン尿により鉄欠乏、尿細管障害、慢性腎臓病を来すこともある。■ 分類PNHは、臨床像により(1)溶血を主体とする古典的PNH、(2)再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などに合併する骨髄不全型PNH、(3)両者の性質を併せ持つ混合型PNHの3つに分類される。ただし実臨床では、溶血と造血不全の要素を併せ持つ症例が多く、分類名にこだわるよりも、個々の患者で溶血、血栓症、造血不全のどれが臨床的に問題となっているかを評価することが重要である。■ 予後PNHの予後は、C5阻害薬の登場により大きく改善した。エクリズマブおよびラブリズマブは、血管内溶血を強力に抑制し、血栓症リスクを低下させ、PNH患者の生命予後を、健康な人に近い程度にまで改善した。その一方で、貧血の改善が十分でない症例や、骨髄不全や腎障害の合併、血栓症の既往のほか、抗補体薬治療中の溶血(breakthrough hemolysis:BTH)の問題は、長期予後や生活の質に影響する。したがって、現在のPNH診療では、生命予後の改善に加え、貧血、倦怠感、輸血依存、治療負担をどこまで改善できるかが重要な課題となっている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)PNHは、溶血性貧血を疑う所見(血清LDH値高値、ハプトグロビン低下、網赤血球増加、間接ビリルビン上昇)があり、Coombs陰性の場合にまず鑑別疾患に挙がる。また、ヘモグロビン尿、原因不明の血栓症、あるいは再生不良性貧血や低リスク骨髄異形成症候群に伴うPNH血球の検出を契機に疑う。確定診断には、フローサイトメトリーによるGPIアンカー型タンパク質欠損血球の検出と定量が必須である。『発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版』では、臨床的PNHの基準として、PNHタイプ赤血球(II型+III型)が1%以上、かつ血清LDH値が正常上限の1.5倍以上であることが明確化された。赤血球ではCD55、CD59の欠損を評価し、type II、type III赤血球の割合を確認する。顆粒球や単球ではFLAERを用いた高感度解析が有用であり、輸血の影響を受けにくい。鑑別診断としては、自己免疫性溶血性貧血、遺伝性球状赤血球症をはじめとする先天性溶血性貧血、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、血栓性微小血管症(TTP、HUS、補体介在性TMAなど)、機械弁関連溶血などが挙げられる。また、骨髄不全を伴う場合には、再生不良性貧血、低形成性MDS、MDS/AMLへの進展を鑑別する必要があり、骨髄検査、染色体検査、遺伝子検査を併用する。3 治療(図2)図2 補体活性化経路とPNH治療薬C5阻害薬は、補体終末経路を阻害することで血管内溶血を速やかかつ持続的に抑制し、貧血を改善し、血栓症リスクも低下させる。しかし、補体活性化経路の上流に位置する補体成分C3がPNH型赤血球上に蓄積し(オプソニン化)、肝臓や脾臓のマクロファージに貪食される(血管外溶血)ことで、貧血が残存する患者が存在する。こうした患者に対しては、補体上流(近位補体)を阻害する薬剤であるペグセタコプラン(C3阻害薬)、イプタコパン(B因子阻害薬)、ダニコパン(D因子阻害薬、ただしC5阻害薬と併用)が適応となる。画像を拡大する治療は溶血、血栓症、骨髄不全のそれぞれに対する対症療法が中心となる。骨髄不全の治療は、再生不良性貧血に準じて行う。軽症例では経過観察、葉酸補充、鉄欠乏への対応などを行い、subclinical PNHでは背景にある骨髄不全の評価・管理を行う。慢性溶血に対する長期ステロイド投与は推奨されない。鉄欠乏を伴う場合、抗補体療法が導入されていない症例では、鉄補充によりPNH型赤血球の産生が増加し、溶血が増悪することがあるため注意を要する。高度貧血には赤血球輸血を行うが、通常、洗浄赤血球を用いる必要はない。臨床的に問題となる溶血、輸血依存、血栓症またはその既往、腎障害、平滑筋攣縮症状を有する例では、抗補体療法を検討する。わが国では初回治療として、C5阻害薬であるエクリズマブ(商品名:ソリリス)およびラブリズマブ(同:ユルトミリス)、クロバリマブ(同:ピアスカイ)が使用可能である。これらのC5阻害薬は、終末保体経路を阻害することで血管内溶血を速やかかつ持続的に抑制する。これにより、貧血症状や輸血依存の改善に加えて、PNHの重大な合併症である血栓症リスクの低減にもつながる。ラブリズマブは長時間作用型であり、8週に1度の点滴投与、クロバリマブは、リサイクリング抗体技術を用いたC5阻害薬であり、4週ごとの皮下投与が可能である。エクリズマブ、ラブリズマブからクロバリマブに切り替える、あるいはその逆の場合、drug-target-drug complexに関連する一過性の免疫反応に注意する必要がある。C5阻害薬によりLDHが十分抑制されても、C3沈着に伴う血管外溶血、骨髄不全、腎性貧血などにより貧血や倦怠感が残存することがある。C5阻害薬による適切な治療でも十分な効果が得られないPNHに対し、近位補体阻害薬が適応となっている。C3阻害薬ペグセタコプラン(同:エムパベリ)は、C5阻害薬で効果不十分な症例においてHb改善、輸血回避、倦怠感改善を示した。D因子阻害薬ダニコパン(同:ボイデヤ)は、C5阻害薬に併用する経口薬であり、血管外溶血が残存する症例で貧血改善が期待される。B因子阻害薬イプタコパン(同:ファビハルタ)は、補体第2経路を阻害する経口単剤治療薬であり、血管外溶血を引き起こさずに血管内溶血を阻害する。骨髄不全型PNHでは、抗補体薬のみでは血球減少が十分改善しないため、再生不良性貧血に準じた免疫抑制療法を検討する。ATG投与時には補体活性化により溶血発作を来す可能性があり、溶血が強い症例では抗補体療法を先行または併用することが望ましい。同種造血幹細胞移植は根治療法であるが、治療関連死亡や合併症のリスクが高いため、抗補体療法後も反復する血栓症、重症造血不全、MDS/AMLへの進展例などに限って慎重に検討する。4 今後の展望PNH治療は、C5阻害薬による血管内溶血の制御を基盤としつつ、残存貧血、血管外溶血、倦怠感、輸血依存、治療負担を改善する方向へ進展している。今後は、LDHを正常上限の1.5倍未満に抑えることに加え、Hb値の改善、輸血回避、QOL改善、BTH予防を含めた総合的な治療目標が求められる。その一方で、近位補体阻害薬単剤では、感染、ワクチン接種、手術、服薬アドヒアランス不良などを契機としたBTHに注意が必要である4,5)。とくに経口薬では、飲み忘れや中断が生じた場合に補体制御が不十分となり、溶血が再燃する可能性がある。また、感染対策は薬剤ごとの電子添付文書に従う。C5阻害薬では髄膜炎菌、近位補体阻害薬では髄膜炎菌に加えて肺炎球菌、インフルエンザ菌b型などへの感染対策が必要となる。治験中の薬剤としては、抗C5抗体pozelimabと、肝臓でのC5産生を抑制するsiRNA製剤cemdisiranを組み合わせた治療が挙げられる。わが国でも活動性PNH患者を対象とした第III相臨床試験が実施されており、血中C5の直接阻害とC5産生抑制を組み合わせることで、持続的なC5制御と治療負担の軽減が期待される。その一方で、抗C5抗体に補体制御因子Factor Hの機能を組み合わせたKP104のような二重機能性薬剤も海外で開発が進められているが、現時点でわが国におけるPNH治験の実施は確認できない。MASP-3阻害抗体zaltenibart(OMS906)は、pro-factor Dからfactor Dへの成熟を阻害し、補体第2経路を抑制する薬剤で、海外では第III相開発が進められている。今後は、このような新規薬剤に加え、既存薬間のスイッチ、併用療法、妊娠・周術期管理、長期安全性、医療経済性に関する実臨床データの蓄積が重要となる。診断面では、PNHクローンサイズ、赤血球C3沈着、補体活性、BTHリスク、骨髄不全の程度を組み合わせた評価により、患者ごとに最適な抗補体薬を選択する個別化医療が進むと考えられる。PNHは希少疾患であるが、補体制御異常、骨髄不全、クローン性造血が交差する疾患であり、その診療の進歩は他の補体関連疾患の理解にも波及することが期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 発作性夜間ヘモグロビン尿症(指定難病62)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版(医療従事者向けのまとまった情報)一般社団法人日本PNH研究会(医療従事者向けのまとまった情報) 1) Hill A, et al. Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17028. 2) 三谷絹子ほか. 発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班 2023. 3) Rother RP, et al. JAMA. 2005;293:1653-1662. 4) Notaro R, et al. N Eng J Med. 2022;387:160-166. 5) Fattizzo B, et al. Blood. 2025;146:411-421. 公開履歴初回2026年7月10日

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第321回 糖尿病予防ワクチンの開発支援は患者の寄付、国はどう見る?

INDEX患者団体から大学への寄付IDDMの原因と研究背景佐賀大学での研究成果と日本IDDMネットワークの思い患者が身銭を切る現実、医療者は、政府はどう感じるか患者団体から大学への寄付世の中とはまだまだ知らないことにあふれている。最近、そう思わされることがあった。それはネットで流れてきた「糖尿病予防ワクチン開発へ1,000万円助成 佐賀大学が2029年完成目指し研究」というニュースだ。関係者には申し訳ないが、最初はネットニュースなどでありがちなin vitroのデータを基に「〇〇が××に効く」的に大げさに報じられたレベルのニュースかと思ったが、よく記事を読み、その内容を調べてみると、なかなかに面白い。糖尿病専門医ならばもはや周知のことなのかもしれないが、私自身は初耳だった。ニュースの概略は、1型糖尿病(IDDM)の発症に関与する可能性があるウイルスの感染を予防するワクチン研究に取り組んでいる佐賀大学の研究に対し、IDDMの患者団体である認定NPO法人・日本IDDMネットワークが1,000万円の研究助成金を提供したというものだ。患者団体が研究機関や研究者を支援するために、寄付を行うことは日本でも珍しいとまでは言えないが、私が知る範囲では、寄付金額は高くとも百万円単位。ちなみに寄付文化が日本より盛んな欧米などでは、患者団体が億単位の研究助成金を提供することもある。その意味では今回のケースは珍しい部類に入るだろう。IDDMの原因と研究背景さてIDDMとウイルス感染との関連だが、その端緒は半世紀以上前の1969年、英国からの研究報告1)である。余談ながら、同年は私が生まれた年である。この研究は、0~19歳のIDDMの新規発症が夏から秋・冬にかけて増加し、10月頃に緩やかなピークを迎えた後、翌夏にかけて減少していくパターンを示し、四半期単位でみると、統計学的に有意な変動があったというもの。研究者側は発症に季節性がある疾患は感染症に起因することが多いとの仮説に基づき、IDDM新規発症数の季節変動・年次推移と当時の英国公衆衛生研究所(現・英国健康安全保障庁)のウイルスの流行データを調べ、コクサッキーB群ウイルス(B1〜B5型)のB4型ウイルスの流行と若年のIDDMの年間新規発症数との間に有意な正の相関が認められたと報告した。もっともこの時点で論文に記述された結論は「私たちは、今回の結果が感染症と若年性糖尿病との関連性を示すさらなる証拠を提供するものであると結論付けるが、これらの知見の病因論的な(因果関係における)重要性については、いまだ不確実なままである」というものだった。そして同じ研究者が1973年に発表した研究2)はさらに一歩進んでおり、IDDM新規発症患者と非糖尿病かつ直近でウイルス感染症に罹患歴がない対照群との比較で、IDDM患者ではコクサッキーB4型ウイルスに対する中和抗体値が有意に高いと報告した。この件がより確信度が高くなったのは、さらに6年後の1979年に米国からもたらされた報告である。これは糖尿病性ケトアシドーシスで亡くなった10歳男児の膵臓ホモジネートを培養細胞に接種したところ、細胞へのウイルス感染が確認され、解析結果からそのウイルスがコクサッキーB4型ウイルスだと判明したとの症例報告である。コクサッキーB4型ウイルスが膵臓に感染している事実が判明したということだ。これが1症例の報告にもかかわらず、NEJM誌に掲載された3)という事実からも、その衝撃度は当時としても相当なものだったことが窺い知れる。その後、小児を対象にした複数の前向きコホート研究からコクサッキーB群ウイルスによる感染が、IDDMの発症に関与する自己抗体の陽性化に先行して起こることも確認された。後に、とくに発症への関与度が強いのは「コクサッキーB1型ウイルス」であることも判明している。佐賀大学での研究成果と日本IDDMネットワークの思いこうしたさまざまな研究から、現在推定されているコクサッキーB群ウイルスによるIDDM発症の機序は、ヒトに感染したコクサッキーB群ウイルスが膵β細胞に感染・増殖すると、β細胞で炎症が起き、β細胞のタンパク質が免疫細胞に提示され、自己反応性T細胞が活性化することで自己免疫反応が慢性化して発症に至るというものである。もっとも、現状でもコクサッキーB群ウイルスは、IDDMの原因と証明されたわけではなく、有力な環境因子ということでコンセンサスを得ている。そこで、今回の本丸である「日本IDDMネットワークが研究助成金を提供した研究」だが、佐賀大学医学部肝臓・糖尿病・内分泌内科特任教授(九州大学名誉教授)の永淵 正法氏らが取り組んでいるものである。永淵氏らは、ヒトのコクサッキーB群ウイルスが感染できる特殊な遺伝子改変マウスの作製に成功した。また、前述のようにコクサッキーB群ウイルスは、あくまで有力な環境因子という位置付けだが、永淵氏らはコクサッキーB群ウイルス感染でIDDMを発症しやすいのは、ウイルス感染時に感染拡大を食い止めるインターフェロンにかかわるインターフェロン受容体関連シグナル伝達分子のチロシンキナーゼ2遺伝子(TYK2)に変異がある場合であることを突き止めている。今後はコクサッキーB群ウイルス内でさらに糖尿病発症に関与度が高いウイルスの特定やワクチンデザインと動物実験での効果検証を経て臨床試験開始を目指しているという。そしてさらに驚いたのが、日本IDDMネットワークがこの研究に助成したのは、これが9回目で、提供した研究助成金は累計1億770万円。それほどまでに患者の期待は高いということだ。患者が身銭を切る現実、医療者は、政府はどう感じるか今回、この件で私がふと思い出したのが、記者になりたての1990年代後半、ある新聞で読んだ海外の糖尿病患者団体トップのインタビューである。記事でこのトップが語っていた「私たちが本当に望んでいるのは、良好なコントロールが得られることではなく治癒」という言葉に私は相当な衝撃を受けた。当時の私は、周囲の人間より医学知識が増えていたがゆえに、どこか得意になっていたところがある。たとえば、医学的な知識に乏しい人々が「〇〇の水を飲んだら、がんが消えたらしい」という話などをしていると、「がんが水ごときで治るはずはないだろう」と得意げに反論していた。当時、同じようなケースを糖尿病患者で目の当たりにしていれば、「糖尿病は一生治らないよ」と上から目線で話していたに違いない。前述の糖尿病患者団体トップの記事はそんな自分の慢心に冷や水を浴びせたものだった。たとえ医学的に不可能と言われようと、患者とは常に治癒を願うもの。以来、それを前提にどう報じるかが自分のミッションだと考えてきた。しかしだ、冒頭の書き出しを読めばわかる通り、私は再びそのことを忘れかけていたようである。そのうえであえて不遜な物言いをすれば、これは医療者にも少なからず共通することとは言えないだろうか?一方、今回の件を通じてもう1つ考えさせられたのは、一日千秋の思いで、より良い治療を待つ患者が身銭を切って研究者を支える現実である。本来これは公がやるべきことではないだろうか? 幸い(?)にも首相の高市 早苗氏は「責任ある積極財政」「先端技術を花開かせる成長投資を大胆かつ戦略的に進める」「攻めの予防医療」などを政権公約に掲げている。この言葉通りなら、ぜひとも全国津々浦々で行われている今回のような地道な研究にも目を向け、支援をしてもらいたいものである。参考1)Gamble DR, et al. Br Med J. 1969;3:631-633.2)Gamble DR, et al. Br Med J. 1973;4:260-262.3)Yoon JW, et al. N Engl J Med. 1979;300:1173-1179.

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日本人が「うつ病」と一緒に最も検索する臨床症状は?

 うつ病患者は、自殺や就労障害のリスクが高いため、発症後できるだけ早期に適切な治療を提供することがきわめて重要である。これまでのオンライン検索動向に基づくうつ病への関心に関する研究は、時間的変化や地域差に焦点を当てたものがほとんどで、検索クエリの内容に焦点を当てた分析は限られていた。横浜市立大学のRikako Shimizu氏らは、日本におけるうつ病に関するオンライン検索動向を明らかにし、うつ病に対する社会的な認識と臨床診断における症状構成概念との関連性を調査することを目的とし、本研究を実施した。PloS One誌2026年5月12日号の報告。 Yahoo! JAPANより入手したデータを用い、2022年1月〜2024年12月における「うつ病」を含む検索クエリの検索ボリュームに関する記述的観察研究を実施した。毎年うつ病に関する上位500件の検索クエリの検索量およびうつ病と併記された症状に関する検索クエリの検索量を比較した。これらの症状は、国際プライマリケア分類第2版(ICPC-2)の「第1成分:症状と愁訴」に基づいて分類した。さらに、ICPC-2に基づいて分類された症状は、精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5-TR)におけるうつ病の診断基準に合致するかどうかで分類した。 主な内容は以下のとおり。・「うつ病の症状」の検索量は、「うつ病」単独の検索量よりも多かった。・うつ病と併記された症状の多くは、DSM-5-TRにおけるうつ病の診断基準と合致していた。・とくに、臨床現場でもよくみられる睡眠障害が、最も頻繁に併記された症状であった。 著者らは「オンライン上でのうつ病の症状に対する一般の認識は、臨床診断の概念とある程度一致している可能性が示唆された。オンライン検索データは、プライマリケアの現場において、患者がうつ病の症状をどのように認識し、どのように捉えているかを臨床医が理解するのに役立つ可能性がある」としている。

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日本初のMASH治療薬、MASLD/MASH診療は新たな局面に/ノボ

 代謝機能障害関連脂肪肝疾患(MASLD)および代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の診療は、近年病名変更や非侵襲的診断法(NIT)の進歩によって様変わりした。一方で、肝線維化の進展を抑制する薬物療法は長らく存在せず、生活習慣改善が治療の中心であった。そのような中、2026年6月、すでに肥満症治療薬として広く用いられているGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:ウゴービ)が、日本で初めてMASHを適応症とする追加承認を取得し、国内のMASLD/MASH診療は新たな局面を迎えた。 ノボ ノルディスク ファーマは6月30日にプレスセミナーを開催し、国際医療福祉大学 消化器内科統括教授の中島 淳氏が「日本初MASH治療薬がもたらす未来」をテーマに講演を行った。同氏は「これまでMASH患者が肝硬変や肝細胞がんへ進展していくのをみているしかなかったが、ようやく治療薬を手にすることができた」と述べた。「脂肪量」ではなく「線維化」が予後を決める MASLDは、かつてNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれていた疾患概念で、2023年に国際的なコンセンサスを得て名称が変更された。現在では代謝異常を背景とする脂肪性肝疾患として位置付けられ、その中で肝炎を伴う病態がMASHと定義されている。 日本ではMASLD患者は約2,500万例に達すると推定され、MASH患者も100万例規模に上ると考えられている。健康診断データでは脂肪肝の有病率は25.8%と4人に1人を超え、さらに進行線維化が疑われる症例も約1%存在するなど、肝疾患の中で患者数が最も多い疾患となっている。 MASLDは自覚症状に乏しい「サイレントキラー」である。線維化はF0からF4(肝硬変)へと数十年かけて進行するが、その速度は線維化の進展とともに加速する。F0~F1から肝硬変までは30年以上を要する一方、F2では約20年、F3では約6年で肝硬変に至るとされる。さらに肝硬変へ進展すると肝細胞がんや非代償性肝硬変のリスクが急激に高まる。 中島氏は、「疾患が悪化するかは脂肪肝であること自体ではなく、線維化がどこまで進んでいるかによるところが大きい」と説明した。実際、約9,700例を20年間追跡した解析では、脂肪量や炎症よりも線維化の有無が無イベント生存期間を最も強く規定する因子であることが示されている。 また、日本人MASLD患者を対象としたCLIONE試験では、線維化ステージの進展に伴い全死亡、肝関連イベント、肝細胞がんの発症率が段階的に上昇することも報告されている。死亡原因は肝疾患だけでなく、心血管疾患や他臓器がんも多く認められ、MASLDが全身性疾患であることも改めて示されている。診療のカギはF2以上のハイリスク患者をいかに拾い上げるか 一方で、近年は診断法も大きく進歩した。従来の肝生検に代わり、FIB-4 indexやM2BPGi、ELFスコアなどの血液バイオマーカーに加え、VCTE(FibroScan)やMRエラストグラフィなど非侵襲的検査が普及している。 2026年4月に改訂された「MASLD診療ガイドライン」では、FIB-4 indexを用いた1次リスク評価を起点とし、中間・高リスク例ではエラストグラフィや線維化マーカーを組み合わせて評価する診療アルゴリズムが推奨された。中島氏は、「最も重要なのはF2以上の患者を早期に見つけることであり、かかりつけ医と肝臓専門医との連携が不可欠になる」と述べた。 さらに同氏は、近年の肝細胞がんの原因も大きく変化していると指摘した。C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬の普及によりC型肝炎由来の肝細胞がんは減少した一方、MASLD/MASH由来の肝細胞がんは増加を続けている。「都市部では肝切除症例の大部分がMASLD由来となっている」と述べ、今後の肝臓診療ではMASLD対策が重要課題になるとの認識を示した。ESSENCE試験で2つの主要評価項目を達成 今回の適応追加の根拠となったのは、F2またはF3線維化を有するMASH患者800例(日本人116例を含む)を対象とした国際共同第III相ESSENCE試験である。 被験者は標準治療+セマグルチド2.4mgまたはプラセボに2対1で無作為化され、72週時点で肝生検による組織学的評価が行われた。主要評価項目は、「線維化悪化を伴わないMASH消失」と「MASH悪化を伴わない線維化改善」の2項目であった。 その結果、「線維化悪化を伴わないMASH消失」はセマグルチド群62.9%、プラセボ群34.3%で達成され、「MASH悪化を伴わない線維化改善」もそれぞれ36.8%、22.4%となり、いずれも統計学的有意差を示した。 また、副次評価項目ではALT、AST、γ-GTPの改善に加え、CAPによる肝脂肪量、VCTEによる肝硬度、線維化関連バイオマーカーの改善も確認された。組織学的にも脂肪化や炎症、肝細胞風船様変性の改善が認められ、線維化改善を示唆する結果となった。 安全性については、新たな重大な懸念は認められなかったものの、悪心、下痢、便秘などGLP-1受容体作動薬に特徴的な消化器症状はプラセボ群より高頻度で認められた。実臨床では漸増投与や副作用マネジメントが重要となる。早期診断・早期介入の時代へ 中島氏は、「これまでは薬がなかったため、糖尿病医やかかりつけ医から専門医へ紹介されない患者も多く、腹水や巨大肝がんを契機に初めて紹介されるケースも少なくなかった」と振り返る。その上で、「今後はF2~F3の段階で患者を拾い上げ、治療介入することで、肝硬変や肝細胞がんへの進展を防げる可能性がある」と述べ、今回の適応追加を「MASLD/MASH診療におけるゲームチェンジャー」と位置付けた。 薬物療法の選択肢が加わったことで、MASLD診療は「経過観察」から「積極的治療」へと大きく転換しつつある。今後はFIB-4 indexをはじめとする非侵襲的評価を活用したハイリスク患者の早期抽出と、適切な専門医紹介、薬物療法を含めた包括的な管理体制の構築が、国内のMASH診療における重要な課題となりそうだ。【最適使用推進ガイドライン抜粋】・適応:「肝硬変を伴わないMASH。ただし、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る」→肝線維化ステージがF2又はF3に線維化が進行した患者であることを、生検によって確認すること。なお、「肝生検ガイダンス」(日本肝臓学会編)19の禁忌の項を参考に、生検の実施が適切ではないと判断された場合には、非侵襲的検査(NIT)に基づき判定すること。・用法及び用量:成人には0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。・施設要件:消化器内科、肝臓内科、内科のいずれかを標榜している保険医療機関・医師要件: MASH又はNASHの診療を5年以上行っていること

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再発・難治性B細胞NHL、CAR-T細胞療法の10年追跡結果/NEJM

 再発または難治性のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)患者において、チサゲンレクルユーセルの単回投与により、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者では約3分の1、濾胞性リンパ腫(FL)患者では約半数が、10年に及ぶ寛解(リンパ腫無再発生存)を得たという。米国・ペンシルベニア大学のMarco Ruella氏らが、同大学で実施した第II相試験の10年追跡調査の結果を報告した。抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、再発・難治性B細胞NHLに対する標準治療であるが、長期アウトカムや治癒の可能性は依然として不明であった。NEJM誌2026年6月25日号掲載の報告。チサゲンレクルユーセル投与の患者38例を10年追跡 研究グループは、CD19を標的とし、4-1BB共刺激ドメインを有するキメラ抗原受容体を発現する自家T細胞であるCTL019(現在のチサゲンレクルユーセル)の投与を受けた、再発または難治性のB細胞NHL患者について、10年の長期アウトカムを評価した。 49例が登録され、このうち38例(LBCL患者24例、FL患者14例)がチサゲンレクルユーセルの投与を受け、長期有効性および安全性の評価対象となった。 評価項目のリンパ腫無再発生存期間は、チサゲンレクルユーセル注入からリンパ腫の再発またはリンパ腫関連死亡までの期間と定義した。非再発死亡および2次原発がんの発生率は、Aalen-Johansen法を用いて推定した。 本研究は2014年1月~2019年9月に実施され、長期追跡調査のデータカットオフ日は2025年10月1日であった。10年リンパ腫無再発生存率はLBCL32%、FL47%、奏効例の半数以上は奏効が持続 追跡期間中央値10.1年(範囲:7.9~11.5)の時点で、患者の約3分の1が寛解を維持しており、LBCLでは5.4年を超えて、FLでは2.7年を超えての再発は認められなかった。 10年リンパ腫無再発生存率は、LBCL患者で32%(95%信頼区間[CI]:14~51)、FL患者で47%(95%CI:20~71)であった。 全死因死亡を含めた10年無増悪生存率は、LBCL患者で17%(95%CI:5~34)、FL患者で29%(95%CI:9~52)、10年全生存率はそれぞれ17%(95%CI:5~34)および50%(95%CI:23~72)と推定された。 奏効例における10年時点での奏効持続率は、全患者では57%(95%CI:35~74)、 LBCL患者で54%(95%CI:25~77)、FL患者で60%(95%CI:25~83)であった。 長期的な造血機能の回復を評価したところ、慢性貧血または血小板減少は認められず、38例中36例で好中球数の回復が安定しており、2例(5%)でGrade2または3の好中球減少症が持続していた。 9例に2次原発がんが発生し(10年累積発生率21%)、2次がん診断までの期間の中央値は4.7年(範囲:0.7~10.8)であった。 非再発関連死の10年累積発生率は18%(新型コロナウイルス感染症関連死を除外した場合は14%)であった。 CAR導入遺伝子の持続性が、長期的な奏効に関連していると考えられた。長期奏効例の44%において、B細胞無形成が持続していた。

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血栓回収療法成功後のtirofiban、機能的自立を改善/Lancet

 前方循環系の大血管閉塞による急性虚血性脳卒中を発症し血栓除去術(EVT)による再灌流が成功した患者において、糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬であるtirofibanの投与は、プラセボと比較し機能的自立を改善し、症候性頭蓋内出血の発生割合に有意差はなかったことが示された。中国・Tongji Medical CollegeのHao Huang氏らATTRACTION Investigatorsが、同国82施設で実施した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATTRACTION試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中でEVTにより再灌流に成功しても、必ずしも機能的自立が得られるわけではない。tirofibanは、静脈内血栓溶解療法後の急性虚血性脳卒中における補助的な抗血小板療法として検討されているが、EVT後の投与を支持する研究結果が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年6月24日号掲載の報告。EVTで再灌流に成功した虚血性脳卒中患者を対象、tirofiban群vs.プラセボ群 研究グループは、18歳以上、最終健常確認時から24時間以内で、前方循環系の大血管閉塞に起因する急性虚血性脳卒中を発症しEVTにより再灌流が成功した患者を、施設で層別化した固定ブロック法を用い、tirofiban群(5μg/kgを動脈内ボーラス投与後0.1μg/kg/分で持続静脈内投与を最長24時間継続)、またはプラセボ群(同様の用量および投与)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 試験薬投与終了後の抗血栓療法およびその他の脳卒中治療は、最新のガイドラインに従って行われた。 有効性の主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア:0~2点)の患者割合で、無作為化されたすべての患者(ITT集団)を解析対象集団とした。 安全性のアウトカムは、無作為化後48時間以内の症候性頭蓋内出血および画像診断による頭蓋内出血所見、ならびに90日全死亡率などで、試験治療を受け少なくとも1回の安全性評価が行われた患者を解析対象集団とした。90日時の機能的自立、tirofiban群49%vs.プラセボ群43% 2024年4月9日~2025年9月29日に、1,686例がスクリーニングを受け、このうち1,380例がtirofiban群(689例)またはプラセボ群(691例)に無作為に割り付けられた。 患者背景は、年齢中央値71歳(四分位範囲:62~77)、女性が591例(43%)、男性が789例(57%)、漢民族が1,367例(99%)であり、90日時の追跡不能例は認められなかった。 90日時の機能的自立は、tirofiban群で340/689例(49%)、プラセボ群で299/691例(43%)に認められた(絶対リスク群間差:6.1%ポイント[95%信頼区間[CI]:0.8~11.3、p=0.023]、補正後リスク比:1.15[95%CI:1.03~1.27、p=0.0092])。 48時間以内の症候性頭蓋内出血は、tirofiban群で12%(82/687例)、プラセボ群で9%(65/691例)、48時間以内のあらゆる頭蓋内出血はそれぞれ34%(235例)、32%(219例)に認められ、90日死亡率はそれぞれ18%(126例)、19%(131例)であり、いずれも両群間に差はなかった。

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高パフ数の電子タバコでアルデヒド類が増加

 吸引回数の多い電子タバコは、使用が進むにつれて健康リスクを高める可能性があるようだ。高パフ数の電子タバコは、長期間の使用を想定してリキッドの容量が多めに設計されており、数千回の吸引が可能とされている。しかし新たな研究で、こうした電子タバコでは、リキッドが繰り返し加熱される過程でメチルグリオキサール(MGO)やグリオキサール(GO)などの有毒なアルデヒド類が有意に増加することが示された。米カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)分子細胞・システム生物学教授のPrue Talbot氏らによるこの研究結果は、「ACS Omega」に5月28日掲載された。 Talbot氏はニュースリリースで、「今回の研究結果は、繰り返し使用された電子タバコ内に残っているリキッドは未使用のリキッドとは大きく異なり、測定可能なレベルでより有害な化学組成となっていることを示している。化学物質の濃度はブランドによって異なっていたが、総じて、高パフ数の使い捨て電子タバコを長期間使用すると、有害な副生成物がより多く蓄積する可能性があることが示された」と語っている。 この研究では、20ブランドに属する77本の使用済み電子タバコからリキッドを回収して分析した。これらの電子タバコのニコチン濃度は5~5.5%、リキッド容量は1.3~13mL、吸引回数は300~6,000回であった。研究グループは、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を用いて、リキッド中に含まれるフレーバー成分(178種類)、合成冷感剤(2種類)、ニコチン、溶媒、アルデヒド類の測定を行った。アルデヒド類は、MGO、GO、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、プロパナール、および5-ヒドロキシメチルフルフラールを対象とした。 その結果、使用済みリキッドでは未使用のリキッドと比べて、MGO、GO、およびホルムアルデヒドの濃度が有意に上昇していた一方で、アセトアルデヒドとアクロレインは減少していたことが示された。また、グリセルアルデヒドとジヒドロキシアセトンは使用済みリキッドでのみ検出された。さらに、培養したヒト気管支上皮細胞(BEAS-2B細胞)をMGOとアセトアルデヒドに曝露させる細胞毒性試験では、いずれの物質も濃度依存的にBEAS-2B細胞の形態を著しく破壊し、活性酸素の産生を増加させることが示された。MGOは、アセトアルデヒドの約10~100分の1の濃度で、アセトアルデヒドと同程度の細胞形態変化を引き起こした。 論文の筆頭著者であるUCRのEsther Omaiye氏は、「ホルムアルデヒドは発がん物質として知られている。また、MGOとGOは、分析した一部の電子タバコリキッドではmg/mLレベルの濃度で存在していた。これは微量とはいえない量だ。実際、アルデヒド類の一部をヒトの肺細胞に投与すると、測定可能な損傷を引き起こした」と説明している。 こうした結果から研究グループは、電子タバコ利用者に対し、特にリキッドが残り少なくなった高パフ数の電子タバコ製品の使用には注意が必要だと注意を促している。Omaiye氏は、「規制当局が製品の使用開始から終了までの全使用期間を通じた安全性試験を義務付けるようになるまでは、消費者は製品寿命の終盤に何を実際に吸入しているのかを知る手段がない」と述べた。一方、Talbot氏は、「吸引回数は単なるマーケティング上の数値ではない。化学物質への曝露量に直接影響する要因であり、安全性評価に組み込む必要がある」と強調している。

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一般的な降圧薬、2型糖尿病患者の腎障害リスク上昇と関連

 高血圧に対して広く処方されている降圧薬が、2型糖尿病患者の腎障害リスクを高める可能性を示唆するデータが報告された。ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル拮抗薬(DCCB)が処方されている患者では、腎障害の発生リスクが、同薬が処方されていない患者に比べて33%高いという。ラビン医療センター(イスラエル)のTimna Agur氏らが、第63回欧州腎臓学会学術集会(63rd ERA Congress、6月3~6日、英・グラスゴー)で発表した。 DCCBに該当する具体的な薬剤名としては、アムロジピンやニフェジピンなどが挙げられる。研究者らによると、これらの薬剤は血管を弛緩させることで血圧を低下させるように作用し、糖尿病性腎臓病(DKD)患者に対する追加の降圧治療薬として広く処方されている。しかしAgur氏らの研究から、DCCBが処方されている患者では、腎臓保護作用のあるほかの薬剤を服用していても腎障害リスクが高まることが示唆された。同氏は、「われわれの研究結果は、最新の腎保護療法をすでに受けている患者にとって、DCCBの併用が常に最良の選択肢なのかという、重要な疑問を提起するものだ」と述べている。 今回、Agur氏らは、2016~2021年に収集された成人2型糖尿病患者3万1,031人のデータを解析した。全ての患者に、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)とナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2-i)という、DKDの治療を大きく進歩させた2種類の薬剤が処方されていた。1万2,172人(39.2%)にはさらにDCCBが処方され、1万8,859人(60.8%)にはDCCB以外の降圧薬が処方されていた。 約3年半(中央値)追跡し、主要腎イベント(推定糸球体濾過量〔eGFR〕が40%以上低下、または透析や移植を要する末期腎不全への進行)の発生リスクをDCCB処方の有無で比較した。結果に影響を及ぼし得る交絡因子を調整後、DCCBが処方されていた患者は主要腎イベントの発生リスクが33%高いことが明らかになった(ハザード比 1.33、95%信頼区間 1.03~1.73)。 研究者らによると、DCCBは腎臓に血液を送り込む血管を拡張させる一方、腎臓から血液を送り出す血管の拡張作用は弱く、その結果として糸球体内圧が上昇し、腎障害につながる可能性があるという。Agur氏は「データを解析する前は、SGLT2-iなどの腎保護効果がDCCBの潜在的な悪影響を相殺するのではないかと考えていた。しかし、そのような保護効果によってもリスク上昇は打ち消されないことが示された」と語っている。 ただし同氏らは、「今回の研究は観察研究であり、直接的な因果関係は検証できない」と解釈に注意を促しながらも、「DCCBがこの患者集団で非常に広く処方されていることを踏まえると、今回の結果は臨床的に重要な意味を持つ」としている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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乳がん・子宮頸がん検診、働く女性の受診行動と性格特性に関連か

 乳がんや子宮頸がんの早期発見には定期的な検診が重要だが、働く女性の受診率向上は課題となっている。今回、日本の就業女性を対象とした研究で、一般に健康管理と結びつきやすいとされる誠実性や不安と関連する神経症傾向が高い女性ほど、乳がんおよび子宮頸がん検診の受診率が低い傾向にあることが示された。研究は横浜市立大学医学部看護学科の佐藤みほ氏と、福島県立医科大学看護学部の佐藤菜保子氏によるもので、詳細は4月28日付の「JMIR Cancer」に掲載された。 日本では乳がん・子宮頸がんの罹患率および死亡率が高い一方、検診受診率は他のOECD加盟国と比べて低い。女性の就業率上昇に伴い働く女性の受診率向上が課題となる中、時間的制約に加え、心理社会的要因も健康行動に影響する可能性が指摘されている。こうした背景から著者らは、就業女性における乳がん・子宮頸がん検診受診と性格特性やリスク認知との関連を検討した。 著者らは、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターが実施する日本家計パネル調査(JHPS)および慶應義塾家計パネル調査(KHPS)のデータを用いた二次解析を行った。対象は70歳以下の就業女性1,142人で、2019~2022年の縦断データを解析した。乳がん検診(マンモグラフィ)および子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)の受診有無を評価し、性格特性は日本語版Ten-Item Personality Inventory(TIPI-J)で測定した。また、リスク回避傾向、主観的健康状態、精神的健康、婚姻状況、子どもの有無、介護役割の有無、学歴、雇用状態(正規・非正規)、居住地域などもあわせて解析した。少なくとも2回の回答が得られた参加者を対象に、一般化線形混合モデルを用いて乳がん・子宮頸がん検診受診と各因子との関連を検討した。 解析の結果、乳がん検診および子宮頸がん検診のいずれにおいても、誠実性と神経症傾向が高い女性ほど受診率が低かった。乳がん検診では、誠実性(オッズ比〔OR〕 0.86、95%信頼区間〔CI〕 0.77~0.97、P=0.01)、神経症傾向(OR 0.87、95%CI 0.77~0.98、P=0.02)が関連し、子宮頸がん検診でも同様の傾向がみられた(誠実性:OR 0.88、95%CI 0.79~0.98、P=0.02、神経症傾向:OR 0.88、95%CI 0.78~0.99、P=0.04)。 著者らは、一般に自己管理能力の高さと結びつく誠実性が高い女性ほど乳がん・子宮頸がん検診の受診率が低かった点について、仕事に加えて家庭でも多くの役割を担う日本人女性では、がんの予防行動よりも仕事や家族を優先する可能性があると考察した。また、神経症傾向が高い女性では、がんと診断される可能性に対する不安が強く、検診受診をためらう可能性が示唆された。 本研究の限界として、自己記入式質問票による想起バイアスや社会的望ましさバイアスの可能性、欠測データ除外による選択バイアス、がん特異的ではなく一般的なリスク回避傾向を評価した点、医療への信頼や受診アクセス障壁に関する情報が含まれていない点などを挙げた。今後は、がん検診受診に影響する構造的要因および心理社会的要因について、さらなる検討が必要だとしている。

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震災後の住まい、6年後の孤立リスクに差

 災害後の生活再建では、住まいの確保が重要な課題となる。今回、東日本大震災後の東北地域住民を対象とした大規模研究により、震災から6年後の住居形態が社会的孤立と関連していたことが分かった。特に男性では、賃貸住宅で孤立リスク上昇、被災地で住宅再建した場合にはリスク低下との関連が示された。研究は、岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座(いわて東北メディカル・メガバンク機構兼務)の事崎由佳氏らによるもので、詳細は5月13日付の「BMJ Public Health」に掲載された。 東日本大震災では、多くの住民が家屋被害や転居を経験し、慣れ親しんだ地域や人間関係の喪失による社会的孤立が懸念されてきた。社会的孤立は、社会的ネットワークの縮小や他者との接触不足を示す指標であり、心血管疾患、抑うつ症状、認知機能低下などとの関連が報告されている。震災後の研究でも、孤立が抑うつ症状や死亡リスク上昇と関連することが示されている一方、被災後の住居形態と孤立の関係を長期的に検討した研究は限られていた。こうした背景から、著者らはいわて東北メディカル・メガバンク機構の地域住民コホート調査を用い、震災6年後の住居形態と社会的孤立との関連を検討した。 著者らは、いわて東北メディカル・メガバンク機構の地域住民コホート調査(TMM CommCohort Study)に参加した人のうち、岩手県住民1万6,610人(男性5,828人、女性1万782人、平均年齢59.4±11.1歳)を対象に解析を行った。震災6年後の住居形態を、震災前からの自宅、仮設・みなし仮設住宅、賃貸住宅など8種類に分類した。社会的孤立はLubben Social Network Scale-6(LSNS-6)を用いて評価し、12点未満を孤立と定義した。住居形態と社会的孤立との関連について、性別および65歳未満/65歳以上で層別化した上で、多変量ロジスティック回帰分析により調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。解析では、喫煙、飲酒、既往歴、就労状況、抑うつ症状に加え、ベースライン時点の社会的孤立も調整因子として考慮した。 震災6年後の時点で、社会的孤立の割合は男女とも賃貸住宅居住者で高く、男性48.0%、女性36.0%だった。男性では、仮設・みなし仮設住宅や災害公営住宅でも社会的孤立が多くみられた。 多変量解析の結果、男性では賃貸住宅に住む人で社会的孤立リスク上昇との関連が認められ、特に65歳未満で顕著だった(OR 1.87、95%CI 1.06~3.28)。一方、65歳未満で被災地に住宅を再建した男性では、社会的孤立リスク低下との関連が示された(OR 0.41、95%CI 0.20~0.86)。 また、65歳以上の男性では、仮設・みなし仮設住宅居住者で社会的孤立リスク上昇との関連がみられたが、この関連はベースライン時点の社会的孤立を調整すると有意ではなくなった。女性では、65歳以上で親族・知人宅に住む人を除き、住居形態と社会的孤立との有意な関連は認められなかった。 著者らは、災害後の住居形態が社会的孤立の重要な決定因子となる可能性があり、その影響は性別や年齢によって異なると結論付けている。その上で、災害復興時の住宅政策では、住居確保だけでなく、地域のつながりやコミュニティの維持、脆弱な集団への配慮といった社会的側面を組み込む重要性を強調している。 なお、著者らは本研究の限界点として、住居形態と社会的孤立を同時点で評価しており因果関係を断定できないこと、観察研究であるため残余交絡を否定できないこと、さらに東日本大震災特有の状況であり他災害への一般化に限界があることなどを挙げている。

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革新的B型肝炎治療薬bepirovirsenの第III相試験結果―bepirovirsenはB型肝炎の臨床的治癒を促進する(解説:相澤良夫氏)

 B型肝炎治療は核酸アナログ製剤の登場を契機に驚異的な進歩を遂げ、血中HBV-DNAは著減し肝炎の活動性はほぼ完全に制御される時代となっている。しかしながら、ひとたび肝臓に感染したB型肝炎ウイルスは肝細胞核内に潜伏し、この潜在化したHBV-DNAを完全に排除することは現在のところ不可能とされている。 したがって、B型肝炎の最終的な治療目標は臨床的な治癒(機能的治癒:すなわち血中HBV-DNAの陰性化とHBs抗原の消失)を達成することである。しかし、現行の核酸アナログ製剤の治療ではHBs抗原の減少はきわめて遅々としたもので、インターフェロン治療を組み合わせても臨床的治癒の達成は困難である。そのため、臨床的治癒という最終目標達成には事実上核酸アナログ製剤を半永久的に服用する必要があった。 この終わりの見えない治療に終止符を打つ可能性のあるbepirovirsenは、従来の核酸アナログ製剤が逆転写酵素によるHBV-DNAの伸長反応を阻害して治療効果を発揮するのとは異なり、HBVのRNAに結合してその作用を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオシドの注射薬で、核酸アナログ製剤との併用によりわずか6ヵ月の治療で約1/5の症例に臨床的治癒がもたらされることが示された。また、核酸アナログ製剤単独治療とは異なりbepirovirsen上乗せ治療終了後に核酸アナログを中止してもHBVが再燃する確率はきわめて低いという優れた薬理効果が認められている。 bepirovirsen上乗せ治療には、現在の終わりが見えない核酸アナログ単独治療に比べて驚くべき治療効果がみられることから医療経費の面からも利点があり、わが国においては先駆的医薬品に指定され世界に先駆けて保険適用に向けた優先審査が行われている。そのため、本年度の秋ごろには保険適用が認可され広く使用可能になるものと考えられている。 ただし、bepirovirsenは毎週筋注する必要があり局所反応やALT上昇などの有害事象にも注意を要することから、従来の核酸アナログ治療と同様に肝臓専門医の管理の下で慎重に治療する必要があると考えられる。 bepirovirsenはB型肝炎治療の最終目標とされている臨床的治癒の達成が期待できる画期的な治療薬であり、わが国では保険適用に向けた優先審査が進んでいる。保険適用が認められれば世界に先駆けて大規模な治療経験が集積され、本薬の真価を正しく評価した臨床情報が、わが国から発信されることが期待される。

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