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1.

抗菌薬・PPI、NSCLCの術前ICI+化学療法への影響は?(CReGYT-04 Neo-Venus副次解析)

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)において、抗菌薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性の低下と関連する可能性が指摘されている。しかし、術前ICI+化学療法などの周術期治療に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、切除可能NSCLCに対する術前ICI+化学療法について、抗菌薬やPPIが及ぼす影響を多施設共同後ろ向き観察研究「CReGYT-04 Neo-Venus」の副次解析で評価した。その結果、抗菌薬やPPIの使用は、術前ICI+化学療法の奏効と有意な関連がみられなかった。本研究結果は、戸田 道仁氏(関西労災病院 呼吸器外科)らによって、Lung Cancer誌2026年4月号で報告された。 本研究は日本の29施設で実施された。対象は、2023年3月~2024年7月の期間に、ニボルマブ+化学療法による術前治療を開始した切除可能StageIIA~IIIBのNSCLC患者131例とした。根治的手術を受け、外科的転帰の解析対象となった113例について、治療開始前30日以内の抗菌薬やPPIの使用と奏効割合(ORR)、病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(MPR)などとの関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・抗菌薬の使用は4.4%(5例)、PPIの使用は20.4%(23例)にみられた。・抗菌薬の有無別にORR、pCR、MPRを評価した結果、抗菌薬の有無による差はみられなかった。詳細は以下のとおり(抗菌薬ありvs.なしの値を示す)。 ORR:80.0%vs.70.4%(p=1.000) pCR:40.0%vs.35.8%(p=1.000) MPR:60.0%vs.59.6%(p=1.000)・PPIの有無別にORR、pCR、MPRを評価しても、PPIの有無による差はみられなかった。詳細は以下のとおり(PPIありvs.なしの値を示す)。 ORR:78.3%vs.68.9%(p=0.532) pCR:43.5%vs.33.3%(p=0.507) MPR:60.9%vs.58.9%(p=1.000)・感度解析として、逆確率重み付け解析を実施しても抗菌薬やPPIの使用は、ORR、pCR、MPRに有意な影響を示さなかった。・多変量解析の結果、PD-L1 TPS 50%以上(オッズ比[OR]:9.660、95%信頼区間[CI]:3.493~30.405、p<0.05)およびStageII(OR:5.208、95%CI:1.895~16.075、p<0.05)がpCRの独立した予測因子であった 。・PD-L1 TPS 50%以上(OR:7.259、95%CI:2.650~23.628、p<0.05)は、MPRについても独立した予測因子であった。 本研究結果について、著者らは「切除可能NSCLC患者において、抗菌薬やPPIの使用は、術前ICI+化学療法の効果との有意な関連はみられなかった」とまとめた。また「より大規模なサンプルサイズで、長期フォローアップを伴う研究が必要である」と指摘している。

2.

介護施設心停止の救急搬送で救命できる条件は/新潟医療福祉大

 介護施設における院外心停止では、「心停止前通報(pre-arrest call)」と「心停止後通報(post-arrest call)」の違いが、その場に居合わせた人(バイスタンダー)による心肺蘇生や生存率にどのように影響するのかは不明なことが多い。このテーマについて、新潟医療福祉大学大学院救急救命学分野の外山 元氏らの研究グループは、介護施設で発生した院外心停止約2万7千例を解析した。その結果、「119通報のタイミング」や「発生時間帯」が救命に影響する可能性が示された。この結果はScientific Reports誌2026年2月9日号に掲載された。119通報後のフォローと夜勤体制が生存率に影響 研究グループは、介護施設で発生した「65歳以上・目撃あり・推定心原性の院外心停止」を条件に2万7,222例を解析する全国後ろ向きコホート研究を2017~22年に行った。 心停止目撃時刻が通報時刻より後のものを“pre-arrest call”、目撃時刻が通報時刻と同時またはそれ以前のものを“post-arrest call”と定義し、主要評価項目を1ヵ月生存率、副次評価項目をバイスタンダーによる心肺蘇生の実施率として検討した(傾向スコアマッチングおよびロジスティック回帰分析)。 主な結果は以下のとおり。・全体の39.6%(1万789例)がpre-arrest callだった。・その一方で、バイスタンダーによる心肺蘇生の実施率はpre-arrest callで有意に低く(43.3%)、post-arrest call(84.4%)より大きく下回った。・1ヵ月生存率は日中が最も高く(8.0%)、夜間が最も低い(3.3%)ことが示された。・多変量解析では、夜間発生(調整オッズ比0.44)とpre-arrest call(0.78)が、それぞれ独立して生存率低下と関連した。 この結果から研究グループは、「介護施設の心停止対応において、早期の救急要請だけでは転帰改善に十分でない可能性を示した。通報後も継続して消防指令員による口頭指導を受けられる運用と、夜勤帯の体制強化が、救命率向上の鍵となる可能性がある。心停止例では早期119番通報が重要と考えられがちだが、介護施設では通報のタイミングや夜間帯であることが救命に影響する可能性が示された。今後は、夜勤帯でも確実に心肺蘇生が開始される体制整備や、通報後の継続的な口頭指導を現場で実装できる仕組みの検討を進め、介護施設における心停止の転帰改善につなげたい」と示している。

3.

季節性インフルエンザとニパウイルス感染症の現状/感染症クォータリーレポート

 ケアネットライブにて4半期に1回実施している感染症クォータリーレポート。2026年第1クォーターの報告を期間限定で公開する。 感染症クォータリーレポートでは感染症専門医である国立国際医療研究センター 国際感染症センターの石金 正裕氏が、世界の病原微生物の流行状況を4半期ごとにレポートしている。 本年(2026年)の第1クォーターでは、季節性インフルエンザ(25/26)とニパウイルスを取り上げる。 前編は第2波が報告されている季節性インフルエンザの状況についての紹介。 例年と比較して早期に始まった結果、2回目の流行も例年より早期に始まっている。2回目の流行の型、現在までのワクチンの有効性などを解説いただいた。 後編はインド東部での感染例が確認されているニパウイルスについての紹介。 その死亡率の高さからマスコミで大きく取り上げられることが多い。実際のウイルスの特性や日本での感染発生の可能性などを解説いただいた。(ケアネット)番組はこちらから!CareNeTVアーカイブページ(3月11日21時~18日24時まで 前後編無料公開)

4.

片頭痛に対するCGRP関連抗体薬、2年間の長期治療継続の有用性評価

 スペイン・バルセロナ自治大学のEdoardo Caronna氏らは、片頭痛におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連抗体の長期的有効性と治療持続性および2年間の治療継続に関連するベースライン特性を明らかにするため、プロスペクティブコホート観察多施設レジストリ研究を実施した。Neurology誌2026年2月24日号の報告。 治療期間が24ヵ月に到達した群(ON群)における1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)の変化をベースラインと比較した。6、12、18、24ヵ月の4つの時点における治療反応パターンを解析した。持続的効果の定義は、4つの時点のうち3つ以上でMHDが50%以上減少した場合とした。ON群と、効果不十分のため中止した群(OFF群)のベースライン特性を比較した。 主な結果は以下のとおり。・ON群の患者は1,340例(年齢中央値:48.0歳[範囲:41.0〜55.0歳]、女性:81.7%)。・ベースラインにおけるMHD中央値は20.0(13.0〜28.0)日であった。・24ヵ月到達時点でMHDが50%以上減少した患者の割合は60.4%(1,340例中809例)。・24ヵ月到達時点で持続的効果が認められた患者の割合は53.8%(264例中142例)。・ON群(1,340例)と比較しOFF群(1,057例)は、ベースラインのMHD(20.0[13.0〜28.0]vs.25.0[16.0〜28.0])が統計学的に有意に高く、片頭痛の前兆(16.2%vs.22.9%)、うつ病(22.8%vs.37.9%)、肥満(7.2%vs.19.1%)を有する患者の割合が高かった(各々、p<0.001)。 著者らは「CGRP関連抗体によるMHDは、2年間で持続的に減少した。治療開始の遅延、片頭痛の前兆、うつ病、肥満は、治療継続に悪影響を及ぼす可能性がある」とまとめている。

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高次脳機能障害者支援法成立で期待される当事者へのメリット/サンバイオ

 2026年2月に行われたサンバイオのメディアラウンドテーブルにて、日本高次脳機能障害友の会理事長の片岡 保憲氏とサンバイオ代表取締役の森 敬太氏が、高次脳機能障害者が置かれた現状と、昨年(2025年)に成立した同支援法に対する期待について発表した。高次脳機能障害を取り巻く課題 高次脳機能障害として国内で診断を受けている当事者数は約23万例だが、未診断者を合わせると30万〜50万例に達する可能性もあるとされる。原因の8割は脳卒中などの脳血管疾患である。 高次脳機能障害では、主に注意障害(1つのことが続けられないなど)、記憶障害(新しい記憶が覚えられないなど)、遂行機能障害(計画が立てられないなど)、社会行動障害(些細なことでイライラしたり興奮するなど)などが現れる。 これらの障害は、社会から理解を得られず、「反省しない人」「仕事ができない人」といった人格的な言葉に変換されてしまう。 高次脳機能障害に対する社会的課題として、疾患啓発の不足、医療機関と地域・福祉の連携不足、診断できる医師の不足といったものが挙げられる。新法成立が当事者にもたらす期待 そのような中、高次脳機能障害者支援法が2025年12月に成立、2026年4月からの施行予定である。 同支援法は、国と地方公共団体に、体系的かつ計画的な支援計画の策定と、その実行状況の随時公表を義務付ける特徴的な法律であり、地域格差是正の礎となることが期待される。 従来の支援は、食事や排泄といった「やらなければ命に関わること」に偏りがちである。しかし、当事者・家族会の活動を通じて重要だと考えられるのは、旅行、趣味、スポーツ観戦といった「やらなくても命に関わらないこと」と片岡氏。同氏はまた「同支援法によって、障害があっても当事者が1人の人として人権が尊重され、暮らしたい場所で社会と繋がっていくこと、地域格差なく、障害当事者を支える仕組みが充実していくことを期待している」と訴える。高次脳機能障害も含めた周辺情報の提供 森氏は、外傷性脳損傷に関連して条件及び期限付承認されている、ヒト(他家)骨髄由来加工間葉系幹細胞治療薬の開発試験では、脳機能障害に対する多くの問い合わせを受けていると述べる。その多くは疾患理解の不足からくるものだという。 外傷性脳損傷も高次脳機能障害の原因の1つであることから、同社が運営する外傷性脳損傷の情報サイト「TBIナビ」を通して、周辺情報を提供していきたいとしている。

6.

わが国初の「男性性機能障害診療ガイドライン 2025年版」

 男性の勃起障害(ED)の患者は、約1,130万例と推定されていたが、近年の調査ではそれ以上の患者数と推定されている。また、若者の草食化が昨今言われているなかで「性欲低下」や「射精障害」を訴える人が多いことも、さまざまな調査でわかってきた。そこで、2018年に上梓された『ED診療ガイドライン 第3版』を拡大し、今回『男性性機能障害診療ガイドライン 2025年版』が発刊された。 本稿では、ガイドラインの作成委員長である辻村 晃氏(順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科 教授)にガイドライン作成の経緯や内容、ガイドラインの活用などについて聞いた。早漏へのドラッグ・ラグ問題を提起--今ガイドラインの領域拡大の狙いについて 男性の泌尿器科診療における性機能領域ではEDを主訴とする患者が圧倒的に多かった。そこで、2008年に『ED診療ガイドライン』が発刊され、2012、18年と第3版まで改訂された。そして、第4版を制作するかどうかという議論のなかで、2024年に『男性不妊症診療ガイドライン』(日本泌尿器科学会編、日本生殖医学会後援)が発刊され、少子化が進む現在、男性不妊症の原因として極めて増加している性機能障害の注目度が高まっていた。その一方で、日本性機能学会は、臨床研究促進委員会がシルデナフィル(商品名:バイアグラ)が発売された1998年から25年経った2023年、男性性機能障害の現状を明確にするため、6,000人超に全国調査を実施した。調査の結果、「性欲低下」や「射精の問題」で悩んでいる方や治療を希望する方がかなり多いことが判明した。こうした経緯から第4版とはせずに、さらに疾患領域を広く「男性性機能障害」と捉えて、今回のガイドラインを制作した。--ガイドラインの読み方:CQ、BQ、FQの使い分け 男性の性機能障害に関する研究論文やエビデンスは、他の疾患領域と比較して少ないものの、そのなかからエビデンスの比較的多い内容をクリニカルクエスション(CQ)、一般的な知識として共有しておくべき内容をバックグラウンドクエスション(BQ)とし、ここまでは教科書的な内容とした。そして、現時点では標準的ではなく、推奨を議論する段階ではないものの、最新情報として理解しておくべき内容をフューチャークエスション(FQ)として解説している。また、臨床的な知見のCQでは、エビデンスレベルと推奨グレードを入れているが、BQとFQは解説にとどめている。とくにFQは、今はまだわが国では臨床で応用するようなレベルではないが、たとえば海外で発表されたことや近い将来起こり得ることを特徴としている。そのほか、目次には推奨グレードとエビデンスレベルを記載することで、一目でわかるように表記も工夫している。--新項目(射精障害、性欲低下など)の具体的な内容について 「射精障害」について触れると、射精障害が世界的に非常に問題となっている。それは、「早漏か遅漏か」ということになる。「早漏」に関しては、世界的に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や三環系抗うつ薬の薬物治療が全世界でなされている一方で、それらの薬剤はわが国では保険適用になっていないため、早漏への薬物治療の選択肢がわれわれにはないのが現状。先述した臨床研究促進委員会の2023年のアンケート調査で「早漏が気になるか」「早漏の治療が気になる」「早漏に対する治療意欲があるか」などを聞いたが、早漏に対する治療意欲がかなり高い結果だった。回答者の約25%が早漏を自覚し、そのうち半分以上が治療を希望していた。ただ、そうした状況にもかかわらず治療選択肢がないのが今日のわが国の現状であり、本ガイドラインで示唆するとともに、今後さまざまなジャーナルなどでこの問題を提起していく。 「性欲低下」については、先に紹介した『男性不妊症診療ガイドライン』を制作したときの調べで、1997年に性機能障害が原因で不妊になっている方が約3%いた。その後、2015年の調査では4倍以上に急増し、約13%であった。同じく若年男性で「性機能障害のために子供ができない」と訴える方が、この20年ぐらいで増えた。その1つの原因にEDもあるが、配偶者や恋人などに対する性的な欲求をまったく感じないとか、性欲が低下しているというようなことも明確になってきた。こうした性欲低下の最大の原因としては、ウェブ社会における性的な動画の過剰な接触であり、動画や仮想現実のなかで十分になってしまっていることがある。これは将来のさらなる少子化の原因ともなり得ることであり、治療をしなければいけないということで今回追加を行った。--非専門医の活用法や今後の展望について 非専門の医師には、BQのところをとにかく最初に読んでいただき、性機能障害の基礎知識を付けてもらいたい。そのうえで、目の前の患者にどう診療していくのかは、CQを読んで対応していただきたい。 次回のガイドライン改訂は、5年後ぐらいをめどと考えている。その一方で、わが国は性機能分野の研究が諸外国と比較し、だいぶ遅れている。世界では、普通に行われている治療内容がわが国では保険適用になっていないなどのドラッグ・ラグがある。同様にMinds診療ガイドラインに準拠した作成を行いたいが、エビデンスレベル、エビデンスを持ったジャーナルなどが非常に少なく、今回は近い形で制作を行った。これからの5年で新しい治療薬、治療法の登場も期待されるので、5年後をめどに学会などでよく検討し、改訂することになる。【目次】第I章 性欲低下第II章 ED第III章 射精障害第IV章 ペロニー病第V章 持続勃起症索引【CQなどの項目総数】CQ:24項目BQ:19項目FQ:9項目

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切除可能な高リスク肝内胆管がん、術前補助療法GOLPが有効/NEJM

 切除可能だが再発リスクの高い肝内胆管がん患者において、術前補助療法としてのGOLPレジメン(ゲムシタビン+オキサリプラチン+レンバチニブ+抗PD-1抗体[toripalimab])は、対照群(術前補助療法なし)と比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に延長し、有害事象は主として低Gradeであった。中国・復旦大学のGuo-Ming Shi氏らZSAB Study Groupが同国11病院で実施した第II/III相の研究者主導の非盲検無作為化試験の結果を報告した。切除可能だが再発リスクの高い肝内胆管がん患者に対して、標準療法として確立した術前補助療法はない。GOLPレジメンは、進行肝内胆管がんおよび胆道がんに対する有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルが示されていた。NEJM誌2026年3月5日号掲載の報告。術前補助療法群vs.対照(術前補助療法なし)群で評価 研究グループは、切除可能な高リスクの肝内胆管がん患者を、術前補助療法群(ゲムシタビン+オキサリプラチン+toripalimabの静脈内投与を3週ごと3サイクル、および経口レンバチニブを1日1回9週間、その後に治癒切除)、または対照群(術前補助療法なしで治癒切除)に1対1の割合で無作為に割り付けた。両群とも、術後補助療法としてのカペシタビン(2,500mg/m2/日、3週間サイクルの1~14日目に2回に分けて経口投与)を術後4~6週に開始し、8サイクル投与することが計画された。 主要評価項目はEFS、副次評価項目は全生存期間(OS)、安全性などであった。追跡期間中央値16.9ヵ月、EFS中央値は18.0ヵ月vs.8.7ヵ月で有意な差 2021年1月20日~2025年2月18日に、178例が無作為化された(術前補助療法群88例、対照群90例)。被験者の年齢中央値は59歳、60%が腫瘍径5cm超で、17%が多発性腫瘍を有し、72%に画像診断で血管浸潤が認められ、15%が肝門部リンパ節転移を有し、51%に術前の血清CA19-9値上昇が認められた。切除後、大部分の患者(97%)が肝内胆管がんの病理学的確定診断を受けた。 追跡期間中央値16.9ヵ月の時点(第III相試験の事前規定の中間解析)において、EFS中央値は術前補助療法群(18.0ヵ月、95%信頼区間[CI]:13.8~27.6)が対照群(8.7ヵ月、7.2~12.4)と比較して有意に延長した(p<0.001)。 24ヵ月OS率は、術前補助療法群79%(95%CI:70~90)、対照群61%(50~75)であった(死亡のハザード比:0.43、95%CI:0.23~0.79、p=0.005、有意水準[両側α:0.0019]未到達)。 あらゆる試験治療期間において、有害事象の発現は術前補助療法群97%、対照群70%で認められた。術前補助療法期間において、Grade3以上の有害事象は28%、またGrade3以上の治療関連有害事象は26%で発現が報告された。死亡に至った治療関連有害事象の報告はなかった。

8.

2型糖尿病、1日1回経口のorforglipron vs.セマグルチド/Lancet

 メトホルミンでコントロール不十分な2型糖尿病患者において、経口orforglipron 12mgおよび36mgは、経口セマグルチド7mgおよび14mgに対して、ベースラインから52週時のHbA1c値の平均変化量に関して非劣性および優越性を示した。米国・テキサス大学のJulio Rosenstock氏らACHIEVE-3 Investigatorsが行った国際共同第III相多施設非劣性非盲検無作為化試験「ACHIEVE-3試験」の結果で示された。安全性プロファイルは、両薬ともにGLP-1受容体作動薬の既知のプロファイルと一致していたが、消化器系イベント、有害事象による試験中止の頻度、平均脈拍数上昇が、経口orforglipron群のほうが経口セマグルチド群よりも高かったことも示された。orforglipronは、食品および飲水の制限を必要とせず1日1回の服用で済むようデザインされた新規の経口GLP-1受容体作動薬である。Lancet誌オンライン版2026年2月26日号掲載の報告。orforglipron(12mg/36mg)vs.セマグルチド(7mg/14mg)、52週時点の非劣性を評価 ACHIEVE-3試験は、アルゼンチン、中国、日本、メキシコ、米国の131の医学研究センターおよび病院にて、メトホルミン(1,500mg/日以上)でコントロール不十分(HbA1c値7.0~10.5%[53~91mmol/mol])な2型糖尿病かつBMI値25以上の成人(18歳以上)を登録して行われた。 被験者は、orforglipron(12mgまたは36mg)またはセマグルチド(7mgまたは14mg)の投与群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。全投与群に、最長4週間の導入期間と52週間の治療期間が設定され、試験薬は1日1回経口投与された。 主要評価項目はHbA1c値のベースラインから52週時の平均変化量で、orforglipron 36mg群のセマグルチド14mg群に対する非劣性、およびorforglipron 12mg群のセマグルチド7mg群に対する非劣性を評価した(ITT集団、非劣性マージン0.3%)。非劣性が示された場合、優越性に関する階層的解析を行うことが事前に規定された。 治療レジメン推定値は、試験中の有害事象発現の有無にかかわらず無作為化された全被験者から得られたデータに基づき、これを主要推定値とした。有効性の推定値は、補助的推定値と見なした。 安全性は、試験薬を少なくとも1回投与された被験者のデータを用いて評価した。orforglipron(12mg/36mg)のセマグルチド(7mg/14mg)に対する非劣性、優越性を検証 2023年9月22日~2025年8月22日に、1,698例が登録され、orforglipron群(12mg群424例、36mg群423例)またはセマグルチド群(7mg群426例、14mg群425例)に無作為化された(アジア人は各群12%)。 治療レジメン推定値について、ベースラインのHbA1c値8.3%からの52週時の平均変化量は、orforglipron 12mg群-1.71%(SE 0.07)、orforglipron 36mg群-1.91%(0.08)、セマグルチド7mg群-1.23%(0.05)、14mg群-1.47%(0.06)であった。 推定治療群間差は、orforglipron 12mg群vs.セマグルチド7mg群で-0.48%(95%信頼区間[CI]:-0.65~-0.31、p<0.0001)、orforglipron 36mg群vs.セマグルチド14mg群で-0.44%(95%CI:-0.62~-0.26、p<0.0001)、orforglipron 12mg群vs.セマグルチド14mg群で-0.24%(-0.41~-0.07、p=0.0050)、orforglipron 36mg群vs.セマグルチド7mg群で-0.68%(-0.85~-0.50、p<0.0001)であり、主要評価項目に関する非劣性が示され、orforglipron両用量のセマグルチド両用量に対する優越性も示された(orforglipron 12mg群vs.セマグルチド14mg群も含む)。orforglipron群は消化器系イベントや投与中止が多く、脈拍数上昇も大きい 最も多くみられた有害事象は消化器系イベントで、orforglipron 12mg群249/424例(59%)、36mg群245/423例(58%)、セマグルチド7mg群157/426例(37%)、14mg群193/425例(45%)であり、大半が軽度~中等度であった。 有害事象による試験薬投与中止は、orforglipron群(12mg群37例[9%]、36mg群41例[10%])のほうがセマグルチド群(7mg群19例[4%]、14mg群21例[5%])より多かった。 また、平均脈拍数の上昇は、orforglipron群(12mg群3.7bpm、36mg群4.7bpm)のほうが、セマグルチド群(7mg群1.0bpm、14mg群1.5bpm)よりも大きかった。 試験中に4例の死亡が報告された(orforglipron 12mg群1例、36mg群1例、セマグルチド7mg群2例)。

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4週ごとのFGF21アナログ製剤efimosfermin alfa皮下注射24週治療はMASH(F2/F3)の活動性および線維化ステージを改善する(解説:相澤良夫氏)

 FGF21アナログ製剤はMASHの治療薬として高い期待が寄せられている。すでにefruxiferminやpegozaferminは第III相試験で良好な治療効果と安全性が確認され、MASH代償性肝硬変に対しても線維化ステージの改善効果も示されている。わが国でも最近FGF21アナログ製剤の臨床治験が申請され、開始されている。 FGF21は多様な生理作用を有し、心臓代謝性疾患の危険因子である脂質異常症や糖尿病の改善効果が示され、FGF21アナログ製剤は単にMASHを改善するだけでなくMASHに合併して、その予後に影響を及ぼす代謝異常に対しても有用性が示されている。 efimosferminはFGF21のN端にIgGのFcを強固に結合し、さらに蛋白分解酵素の作用点に変異を導入して安定化させることにより血中半減期を著しく延長させたアナログで、月1回(4週ごと)の皮下投与で十分な薬理効果を発揮する薬剤である。従来製剤の週1回投与に比べて煩雑さが軽減されるという利点があり、他のFGF21アナログ製剤と同等以上のMASH治療効果を発揮する可能性がある。副作用は従来のFGF21アナログ製剤と同等で軽度から中等度の消化器症状が主体であり、安全性、忍容性が高い。 今回の第II相試験は短期間で症例数が少なく、より長期の安全性や代償性肝硬変に対する治療効果は確認されていない。efimosferminはefruxiferminなどの先行FGF21アナログ製剤に臨床試験で後れを取っているものの、注射回数が少なくて済み、先行薬よりも強力な治療効果を発揮する可能性がある薬剤と思われる。今後の臨床試験結果が大いに期待される。

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突発性発疹症【すぐに使える小児診療のヒント】第11回

突発性発疹症今回は、子育て世代のほとんどが経験する「突発性発疹症」についてです。小児科診療では非常によく遭遇する疾患ですが、解熱後も不機嫌が続くなど、保護者にとっては不安の連続です。非典型的な経過をたどることもあるため、少し踏み込んで学んでみましょう。症例生後8ヵ月、男児。保護者「40℃の発熱がもう3日も続いているんです。大丈夫なんでしょうか?」機嫌は良く全身状態は良好。咽頭所見で、口蓋垂の根元あたりに粟粒大の点状紅斑が集族している。医師「突発性発疹症かもしれませんね。」一般的な経過や症状突発性発疹症は、主にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、ときに7型(HHV-7)によって起こる乳幼児期の代表的なウイルス感染症です。生後6ヵ月頃から1歳台に好発し、2歳までにほとんどの児が感染するとされています。臨床経過はきわめて特徴的で、突然の高熱で発症し、39~40℃の発熱が3~5日持続します。それにもかかわらず、全身状態は比較的保たれていることが多く、「熱のわりに元気」という印象を受けることが少なくありません。咳や鼻汁などの上気道症状は軽度、あるいはほとんど目立たないこともあります。発熱期にはCRPが軽度上昇することがありますが、高値を示すことは多くありません。ただし、発熱3~5日目の時点では他疾患との鑑別が必要であり、安易に「突発性発疹症らしい」と決めつけることはできません。永山斑発熱初期にみられることがあるのが、いわゆる「永山斑」です。軟口蓋から口蓋垂基部にかけて出現する粟粒大の紅色小丘疹で、よく見ると点状に集まっています。頻度や特異度について具体的に記載された文献はほとんどありませんが、約3分の2の症例で認めるとの記載もあります。認めないからといって突発性発疹症を否定する根拠にはなりませんが、発疹が出る前の手がかりとなる数少ない身体所見の1つです。解熱後の皮疹と不機嫌突発性発疹症の診断を決定付けるのは、解熱とほぼ同時に出現する皮疹です。高熱がすっと下がった翌日、あるいはその日のうちに、体幹を中心に淡紅色の小丘疹が広がります。顔面は比較的軽く、四肢へ徐々に広がることもあります。全身にびっしり出るというよりは、やわらかく散在する印象です。この皮疹は通常1~3日で自然に消退し、色素沈着や落屑を残しません。強い掻痒を伴うこともまれです。一方で、この時期に特徴的なのが強い不機嫌です。解熱したにもかかわらず急にぐずりが強くなり、眠りが浅くなることがあります。そのため「不機嫌病」と呼ばれることもあります。冒頭の症例の男児は、2日後に再び来院しました。診察すると、体幹を中心に淡い紅色の発疹が広がっています。全身状態は安定しており、水分も摂れています。熱は下がったんですが、ぶつぶつが出てきて…しかも、とても不機嫌なんです。何か別の病気になってしまったのでしょうか?(ほっ。まさに教科書的な突発性発疹症の経過!)保護者にとっては数日続いた高熱がやっと下がって一安心…と思いきや、突然皮疹が出て不機嫌になり、不安になって受診されるご家庭は非常に多いです。発熱と解熱後皮疹以外の症状は?突発性発疹症では、発熱と皮疹以外にも注意すべき所見があります。発熱中に一過性の大泉門膨隆を認めることがあり、髄膜炎との鑑別が問題になることがあります。また、他のウイルス感染に比べて熱性けいれんを発症しやすいといわれており、発熱初期や解熱前後にけいれんを起こすことがあります。多くは典型的な単純型熱性けいれんですが、持続がやや長い例や、発熱のタイミングとずれる例もあり、「なんとなくすっきりしない」経過をたどることもあります。また、まれではありますが、HHV-6関連脳炎・脳症の報告もあり、意識障害や遷延する神経症状があれば慎重な評価が必要です。生涯に1度だけしか罹患しない?外来ではよく、「1度かかったら、もうなりませんよね?」と尋ねられます。HHV-6が突発性発疹症の代表的な原因ウイルスですが、HHV-7は異なるウイルスであり、それぞれに感染することで2度罹患することがあります。なお、HHV-7のほうが好発年齢はやや遅く、幼児期が多いです。したがって、「以前、突発性発疹症にかかっています」という情報だけで今回の可能性を完全に否定することはできません。突発性発疹症は、乳児期の子どもを育てる多くの家庭が経験するありふれた疾患です。しかし、発熱期には診断がまだ確定しておらず、尿路感染症や川崎病、細菌感染症などを念頭に置いた評価が欠かせません。なにより、その数日間を不安の中で過ごしているご家族がいます。解熱後に不機嫌が続くことで、不安がいっそう強まることも少なくありません。解熱後に発疹が出てきたとき、私たちは「やはり突発性発疹だった」と胸をなでおろします。その安心感を保護者と共有しつつ、不安だった日々に寄り添うことがこのありふれた疾患の診療に求められているのかもしれません。参考資料1)Up to date:Roseola infantum(exanthem subitum)2)Cherry J, et al. Roseola infantum(exanthem subitum). In:Cherry J, et al. Feigin and Cherry’s Textbook of Pediatric Infectious Diseases, 8th ed. Philadelphia:Elsevier;2018.p.559.3)Tanaka K, et al. J Pediatr. 1994;125:1-5.

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第306回 統合計画頓挫の室蘭市立病院が2027年度めどに閉院へ、市長は「財政再生団体」転落回避が理由と説明

年度末、赤字公立病院のニュース続々こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年度末も近づき、全国各地で都道府県議会、市町村議会が開かれていることから、公立・公的病院の窮状を伝える地方ニュースが続々と入ってきます。2月中旬以降の記事の見出しをアトランダムに拾い上げるだけでも、こんな状況です。「旭川市予算案 市立病院事業会計への繰り入れ19億円 4年連続過去最大、コスト高要因」北海道新聞「大館市長、扇田病院は『無床診療所化が最善』と認識」秋田魁新報「伊那中央病院、2025年度は赤字7億2000万円見通し 赤字は9期連続」信濃毎日新聞「魚津市、富山労災病院に3億円の財政支援へ 『急性期から回復期まで切れ目のない医療』目指す新年度予算案」富山放送「富山県立中央病院、経営改善へ病床41減 過去10年で最大規模」北國新聞「経営厳しい市立(敦賀)病院、市が121億円支援へ『医療レベル維持するために必要な措置』…市職員の削減計画も」読売新聞「開院遅れる新病院、地域医療の体制窮地 統合前に一方が診療休止、異例の事態に 伊丹」神戸新聞「兵庫県 県立病院の高額医療機器整備など30億円余凍結へ」NHK「広島県府中市、湯が丘病院建て替え『困難』長寿命化図る改修へ」中国新聞「【山口】光市の市立2病院、2025年度も11億円の赤字」中国新聞「高知医療センター9年連続赤字予算 病院企業団議会で可決、給与や材料費膨らむ」高知新聞「高知県立2病院『2026年度までに黒字化』困難 県があき総合、幡多けんみん病院の経営目標見直し」高知新聞「公立八女総合病院の移転新築『棚上げ』経営が悪化、計画再開の見通し立たず」西日本新聞「宮崎県内の県立3病院 21億円超の赤字見通し 抜本的な経営改善策を公表」宮崎放送「経営難が続く串間市民病院 串間市が新たに1億2,000万円貸し付けの方針」宮崎放送各自治体は、断腸の思いで赤字の公立病院への財政支援を決定したり、新築移転を諦めたり、高額医療機器導入を凍結したり、病院規模の縮小や診療所化を敢行しています。魚津市のように赤字の公的病院に対して財政支援を行っているところも少なくありません。当然これらのニュースは氷山の一角で、全国に約850ある公立病院、約830ある公的病院の多くが似たような状況と思われます。そんな中、「閉院」という思い切った決断をした自治体があります。本連載の「第288回 『会社の寿命は30年』、では病院の“寿命”は?(前編)」「第289回 同(中編)」でも取り上げた市立室蘭総合病院を運営する室蘭市です。2027年度をめどに市立室蘭総合病院を閉院する方針を明らかに北海道室蘭市の青山 剛市長は2月25日の市議会で、2027年度をめどに市立室蘭総合病院の事業会計を閉鎖し、閉院する方針を明らかにしました。2月25日付の北海道新聞等の報道によれば、青山市長は市政方針説明で「市が数年後には財政再生団体に転落する危機的な水準にある」と病院事業会計の赤字が市の財政を悪化させている主要原因であると説明、「市立病院開設者として熟考した結果、病院事業会計を閉じる決断をした」と語りました。「財政再生団体」とは、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づき、実質赤字額が基準(標準財政規模の一定割合)を超えた場合に、総務大臣に指定される地方自治体のことです。いわゆる「倒産した自治体」で、2007年に指定された北海道夕張市が全国唯一の例です。国の管理下で「財政再建計画」を策定し、職員給与の大幅削減、医療機関などの施設廃止、住民サービス縮小などの厳しい再建策が強制されます。地域の医療体制を確保するために病院を存続させた挙げ句、財政再生団体になってしまったのでは元も子もないため、室蘭市も苦渋の決断をしたと考えられます。「市立室蘭総合病院の閉院方針は、道内自治体の動向に影響を及ぼす可能性」市立室蘭総合病院は20診療科、517床を有する病院で、2024年度末の負債は計85億円でした。室蘭市は毎年度、一般会計から病院事業会計へ多額の繰り出しをしており、2025年度は約26億円、2026年度は約23億円を支出する方針です。市は昨年の市議会で、このままの状態が続けば2029年度には全会計合わせた決算で財政再生団体に転落する見通しであることを示していました。北海道新聞は「医師不足などで04年に帯広市立病院が廃院となったが、北海道などによると赤字経営を理由とした市立病院の閉院は道内で珍しい。公立病院は人件費や資材高騰で厳しい経営状況にあり、市立室蘭病院の閉院方針は、道内自治体の動向に影響を及ぼす可能性がある」と書いています。日鋼記念病院の徳洲会傘下入りが市立病院の閉院早めるかつて鉄鋼業で栄えた室蘭市の人口は1980年には15万人を数えましたが、2026年2月末時点ではその半分以下、約7万3,000人まで減っています。市内には社会医療法人母恋・日鋼記念病院、市立室蘭総合病院(517床)、社会医療法人・製鉄記念室蘭病院(347床)の3つの基幹病院がありますが、人口7万人に1,200床はさすがに多過ぎます。そんな中、以前の回で詳しく書いたように、3病院の将来を話し合う協議会が2018年に発足、再編に向けて検討が行われてきました。昨年11月には「高度急性期・急性期医療」を製鉄記念室蘭病院に集約し、「軽度な急性期医療や回復期、慢性期」を日鋼記念病院と市立室蘭総合病院で分担する方向性が示されました。その後、今年4月に病院の事業再生で実績のある官民ファンド「地域経済活性化支援機構(REVIC)」が、日鋼記念病院と市立室蘭総合病院が対等に合併し、日鋼病院の建物に新病院「蘭西医療センター」(仮称)を開設する案を提示しました。しかし、運営体制などを巡って意見の隔たりは大きく、協議は進展しませんでした。統合協議の中でREVICが提示した統合案について、母恋の有賀 正理事長(当時)は、「(母恋から)ガバナンスが取り上げられ、人員削減も行われると読み取った。従えなかった」と述べていました。昨年10月31日、最終的に母恋は統合ではなく、一般社団法人徳洲会(東京都千代田区)の傘下に入ることとなり、日鋼記念病院は単独で経営改革を進めることになりました。交渉相手を失った市立室蘭総合病院は今年1月以降、実質的な交渉先を製鉄記念室蘭病院に切り替え、統合などの協議を進めていましたが、結局「閉院」という結論に至ったわけです。なお、脳神経外科など高度急性期の機能の一部は製鉄記念室蘭病院へ統合する方向で調整するとしています。本連載でも、「日鋼記念病院の徳洲会傘下入りによって、市立室蘭総合病院は一転、廃院の可能性が極めて高くなったと言えるかもしれません」と書きましたが、予想どおりになってしまったわけです。公立の急性期病院を“温存”してきた自治体は、大胆なリストラが必要に人口減少、自治体の財政悪化、医業経営の困難化などを背景に、地方の病院、とくに公立・公的病院の経営はますます難しくなっていくことは必至です。2027年度から始まる「新たな地域医療構想」では、急性期拠点機能の病院は、人口の少ない地域においては1つ、地方都市型や大都市型の地域においては人口20~30万人単位で1つ確保することが基本的な考え方とされています。人口減少が続いているにもかかわらず、公立の急性期病院を“温存”してきた自治体は、室蘭市のような公立病院の閉院や診療所化、民間病院との統合といった大胆なリストラが必要になってくるでしょう。北海道新聞は「道内自治体の動向に影響を及ぼす」と書きましたが、市立室蘭総合病院の閉院は、全国の自治体病院にも少なからぬ影響を及ぼしそうです。

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インフルへのバロキサビル、感受性低下の割合は?

 キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ、以下バロキサビル)は2018年2月に承認され、臨床で使用されている。国立感染症研究所の高下 恵美氏らの研究グループは、最初の7シーズン(2017/18~2023/24シーズン)におけるインフルエンザウイルスのバロキサビル感受性を調査した。その結果、感受性低下の割合は1.7%であった。本研究結果は、Eurosurveillance誌2026年1月8日号に掲載された。 研究グループは、WHOのFluNetに報告された国内のインフルエンザウイルス3万7,137件のうち、約500の定点医療機関から収集した検体から週ごとに加重無作為抽出した3,671件について、インフルエンザウイルスの表現型および遺伝子型の解析を実施した。また、インフルエンザウイルスのPAタンパク質におけるアミノ酸置換を特定し、バロキサビルに対する感受性との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象のインフルエンザウイルスの内訳は、A(H1N1)pdm09が1,378件、A(H3N2)が1,399件、B(ビクトリア系統)が608件、B(山形系統)が286件であった。・バロキサビルへの感受性低下が認められたウイルスの割合は、調査期間全体で1.7%(62/3,671件)であった。・シーズン別にみると、A(H3N2)が流行した2018/19シーズン(4.6%)および2022/23シーズン(3.2%)に高かった。なお、2018/19シーズンはバロキサビルの供給量が最も多いシーズンであった。シーズン別の詳細は以下のとおり。 2017/18:0%(0/833件) 2018/19:4.6%(41/900件) 2019/20:0.2%(1/612件) 2020/21:0%(0/6件) 2021/22:0%(0/23件) 2022/23:3.2%(15/465件) 2023/24:0.6%(5/832件)・ウイルスの種類別にみると、A(H3N2)が3.6%(50/1,399件)と最も高かった。次点がA(H1N1)pdm09で0.9%(12/1,378件)であった。B型では感受性低下は検出されなかった。・感受性低下に関連する主なPAタンパク質のアミノ酸置換として、E23K、Y24C、I38M/N/S/T/V、E199G/Kが特定された。・感受性低下株は、バロキサビル投与歴のある患者だけでなく、未投与の患者からも検出されており、ヒトからヒトへの伝播の可能性が示唆された。・年齢層別にみると、A(H3N2)における感受性低下株の検出頻度は、6~11歳および65歳以上で共に4.4%と最も高かった。詳細は以下のとおり。 0~5歳:3.2%(11/349件) 6~11歳:4.4%(19/427件) 12~64歳:3.1%(17/551件) 65歳以上:4.4%(3/68件) 不明:0%(0/4件) 本研究結果について、著者らは「バロキサビルの使用量の増加と感受性低下株の出現との間に関連があることが示唆された。感受性低下株は比較的少ないものの、伝播しうる変異株が存在することが示された」と指摘している。また「バロキサビルの使用量と感受性低下株出現との関連が示唆されることから、適切な治療戦略の構築や耐性株の拡散防止のためには、今後も表現型および遺伝子型に基づく継続的な監視が必要である」と述べている。

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HFpEF診療で期待のフィネレノン、適格患者と注意点とは/バイエル

 非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノン(商品名:ケレンディア)は、これまで2型糖尿病かつ慢性腎臓病患者の心不全発生予防に対し有効性が示されていたが、2025年12月22日、新たに「慢性心不全」の適応を取得した。 これを受け、バイエル薬品は2月19日にプレセミナーを開催。昨年の第89回日本循環器学会学術集会で本剤の研究結果や日本人サブ解析データを発表した絹川 弘一郎氏(富山大学第二内科 教授/日本心不全学会理事長)と佐藤 直樹氏(かわぐち心臓呼吸器病院 副院長/循環器内科)が登壇し、心不全治療の課題やフィネレノン処方時の注意点などについて解説した。HFpEFに投与を考慮すべき、異例のスピードでガイドライン推奨 2025年3月発刊の『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』において、フィネレノンの位置付けは大きく変貌を遂げた。従来の適応に加え、左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)や左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)における薬物治療の推奨とエビデンスが加わった(症候性のHFpEFに対して、心血管死または心不全増悪イベントの抑制を目的としてMRA(フィネレノン)の投与を考慮する[推奨クラスIIa・エビデンスレベルB-R])。この適応拡大に至った背景について、絹川氏は「FINEARTS-HF試験で予後改善効果が示された」と説明し、適応取得前にガイドラインに掲載された異例のスピード感について、「それだけ現場の期待が大きかったことの表れ」と述べた。非ステロイド骨格による炎症/線維化抑制への期待 上記を踏まえ、絹川氏は「心不全診療の現状と課題:左室駆出率の保たれた心不全とは?」と題し、HFpEF診療におけるフィネレノンの可能性を解説。これまで心不全診療の中心はHFrEFであり、心不全~全身臓器の機能低下や各種ホルモンの上昇といった多臓器連関をブロックするため、近年ではARNI(ACE阻害薬/ARB)、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬の4剤を併用するファンタスティック・フォーが基本治療とされてきた。その一方で、この20年で増加傾向にあるHFpEFには、HFrEFに準じた治療で有効性が見いだせていなかった。 また以前より、HFpEFの背景にある生活習慣病などのリスク因子を有する患者では、ミネラルコルチコイド受容体(MR)が過剰活性化を起こし、これが心不全の増悪・進行の原因であることは示されていたため、これまで、MRAの1つでステロイド骨格を有するスピロノラクトンでHFpEFに対する有効性が試験されるも、予後改善のエビデンスを得るには至らなかった。これに対して、非ステロイド骨格のフィネレノンは、FINEARTS-HF試験で有効性を示したのである。その理由について同氏は「ステロイド骨格の有無による効果の違いは現時点では明らかではないが、非ステロイド骨格のMRAは、炎症/線維化遺伝子発現を誘導するcofactor(共役因子)と結合しない点が大きいのではないか」と見解を示した。1年予後改善のため、安易な中止は逆効果に 続いて佐藤氏は、「心不全治療はケレンディアによってどう変わるのか?―ケレンディアの対象となる患者像は?―」と題し、フィネレノンのガイドラインでの推奨根拠となったFINEARTS-HF試験に基づき、日本人の適格患者を以下のように示した。<適格患者>―――――――――――――・年齢≧40歳・NYHA心機能分類 II~IV・左室駆出率≧40%・eGFR≧25mL/min/1.73m2・血清カリウム値≦5.5(5.0mmol/L)・SGLT2阻害薬併用可――――――――――――――――――― フィネレノンは、上述のようにガイドラインにおいて“投与を推奨すべき”という位置付けが示されたものの、腎機能やカリウム値のモニタリングが不可欠である。同氏は「除外基準としてeGFR、血清カリウム値について考慮する必要がある」と前置きし、「非ステロイド性MRAを開始できない、あるいはすぐに中止してしまうといった処方医の過度な慎重さが逆に患者の不利益につながりかねない」と注意喚起し、処方医らの不安を払拭する材料として、AHA2024で発表された知見に触れ、血清カリウム値が一時的に5.5mmol/Lを超えた症例においても、フィネレノンの臨床的効果が維持されていたデータを示した。また、FINEARTS-HF試験サブグループ解析結果から、フィネレノンをSGLT2阻害薬服用患者にアドオンすることによる利点、有効性・安全性についても言及した。 最後に同氏は「予後改善目的でフィネレノンを投与することを常に念頭に置いて処方検討を行うことが重要」とし、「フィネレノンは血清カリウム5.5mmol/Lまでは投与可能だが、フィネレノン、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬で血清クレアチニン値の急な上昇がみられることがある。ただし、これは必ずしも腎機能悪化を示すものではなく、これらの治療は腎機能改善と関連している。そして、心不全診療において、安易な反射的中止が課題になっており、診療ガイドラインに基づく薬物療法(GDMT)の中止が心不全の転帰悪化に影響する」と患者の利益を最優先した基準の順守ならびにモニタリングの実施をHFpEF診断にあたる医師に向けて訴えた。 

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薬剤性パーキンソニズムリスク、8つの抗精神病薬比較

 薬剤性パーキンソニズムは、主に抗精神病薬によるドパミンD2受容体阻害により引き起こされる。しかし、in vitro試験では、実臨床における臨床転帰の変動性を十分に反映できないケースが多くみられる。韓国・Gachon UniversityのWoo-Taek Lim氏らは、in vitroの薬理学的指標が抗精神病薬使用に伴う薬剤性パーキンソニズムの実臨床リスクと一致するかどうかを評価するため、本研究を実施した。JMIR Public Health and Surveillance誌2026年1月28日号の報告。 一般的に使用される8種類の抗精神病薬について、D2受容体およびセロトニン2A受容体の阻害定数(Ki)、D2受容体の解離速度(Kr)、血液脳関門(BBB)通過速度など、主要なin vitroパラメーターを集計し、6つの複合薬剤性パーキンソニズムリスク指標を構築した。Seoul National University Hospital共通データモデル(2002~21年)を用いて、実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクを評価した。抗精神病薬使用者と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)使用者は、傾向スコアマッチングを用いて1:1でマッチングし、Cox比例ハザード回帰分析を用いて薬剤性パーキンソニズムリスクのハザード比(HR)を推定した。各in vitro指標と実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクとの相関は、対数回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・8つのマッチングコホートから4万4,664例の患者を抽出した。・薬剤性パーキンソニズムリスクが最も高かった薬剤はハロペリドール(HR:4.56、95%信頼区間[CI]:2.29~9.07)、最も低かった薬剤はアリピプラゾール(HR:2.11、95%CI:1.56~2.86)であった。・実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクと最も強い相関を示した指標はpKr×BBB透過率であった(R2=0.95)。・この相関は、D2受容体パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールを解析に含めると低下が認められた(R2=0.58)。 著者らは「受容体結合動態とBBB透過を統合することで、D2受容体阻害作用を有する抗精神病薬の実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクの変動を反映するin vitroフレームワークを構築できる可能性が示唆された。これらの知見は、早期安全性評価において薬物動態パラメーターと中枢神経系曝露パラメーターを組み合わせることの重要性を裏付けている」と結論付けている。

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テコビリマト、エムポックス感染者の臨床転帰を改善せず/NEJM

 成人のクレードIIエムポックスウイルス感染者において、p37エンベロープタンパク質を標的とする抗ウイルス薬テコビリマトは、プラセボと比較して臨床的回復までの期間を短縮せず、疼痛の軽減やウイルス除去の促進にも寄与しないことが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのJason Zucker氏らSTOMP/A5418 Investigatorsが行った「STOMP/A5418試験」で示された。テコビリマトは、天然痘の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているが、前臨床試験などの結果に基づきエムポックスの治療薬候補として注目を集めていた。研究の成果は、NEJM誌2026年2月26日号で発表された。7ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 STOMP/A5418試験は、日本を含む7ヵ国の49施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(米国国立アレルギー感染症研究所[NIAID]の助成を受けた)。2022年9月~2024年10月に、年齢18歳以上、検査で確認されたクレードIIエムポックスウイルス感染者344例(年齢中央値34歳[四分位範囲[IQR]:28~40]、男性339例[99%])を登録した。 被験者は、テコビリマト(232例)またはプラセボ(112例)を、14日間経口投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、time-to-event解析で評価した臨床的回復とし、すべての皮膚病変がかさぶたを形成し落屑して治癒に至り、すべての肉眼的な粘膜病変が治癒するまでの期間と定義した。主要・副次アウトカムに差はない 336例が活動性の皮膚または粘膜病変を有しており、主解析の対象となった。症状発現から試験登録までの日数中央値は8日(IQR:6~10)、登録時の病変数中央値は9個(IQR:4~18)であった。122例(35%)が直腸炎を、116例(34%)が重度の疼痛を有しており、HIV陽性の337例のうち117例(35%)が「HIVと共に生きる(living with HIV)」の状態で、78例(23%)は少なくとも1回の天然痘またはエムポックスワクチンの接種を受けていた。 29日目までの、臨床的回復の推定累積達成率は、テコビリマト群が83%、プラセボ群は84%であった。臨床的回復の競合リスクハザード比(HR)は0.98(95%信頼区間[CI]:0.74~1.31)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.89)。 副次アウトカムについては、ベースラインで重度疼痛を有していた患者における5日間の治療後の疼痛強度の軽減(群間差:0.1ポイント、95%CI:-0.8~1.0)、29日目までの病変の完全治癒(競合リスクHR:0.97、95%CI:0.75~1.26)、皮膚病変分泌物中のウイルスDNA消失(8日目の群間差:12%ポイント[95%CI:-2~26]、15日目の群間差:1%ポイント[95%CI:-10~13])のいずれにも、両群間に有意な差はなかった。Grade3以上の有害事象:4%vs.3% Grade3以上の有害事象は、テコビリマト群で4%(12/275例)、プラセボ群で3%(4/136例)に発現し、両群間に実質的な差はみられなかった(群間差:1%ポイント、95%CI:−5~5)。重篤な有害事象はそれぞれ6例(2%)および2例(1%)に発生した。死亡例の報告はなかった。 著者は、「本研究の結果は、クレードIエムポックスを対象としたPALM007試験の知見と一致する。これらの知見を統合すると、テコビリマトはクレードIおよびIIエムポックスに対する臨床的有効性を欠くことが示唆され、エムポックス治療のための治験薬を評価する無作為化対照比較試験の必要性を強調すべき状況にあると考えられる」としている。

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CKDの早期診断・早期介入の重要性と「協力医」への期待/ベーリンガーインゲルハイム

 腎臓病の早期発見と治療の重要性を啓発することを目的として、毎年3月の第2木曜日は「世界腎臓デー(World Kidney Day)」に制定されている。3月12日の本年の世界腎臓デーに先立ち、日本ベーリンガーインゲルハイムは3月5日に慢性腎臓病(CKD)の啓発を目的としたプレスセミナーを開催した。柏原 直樹氏(川崎医科大学 高齢者医療センター/日本腎臓病協会 理事長)が登壇し、CKDの早期診断・早期介入の意義について解説した。血清クレアチニン検査が健康診断の必須項目に わが国には約2,000万例のCKD患者がいると推定されており、新たな国民病ともいわれている。腎機能が低下しても自覚症状が乏しいため、多くの患者は気付かないまま生活している。しかし、病状が進行すると透析などの腎代替療法が必要となる。さらに、心不全・心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患の発症リスクも高く、寝たきりの原因にもなることから、早期診断・早期介入が非常に重要である。 CKDは、(1)蛋白尿やアルブミン尿などの尿異常、画像診断や病理所見などで腎障害が認められる状態、(2)血清クレアチニン値から算出した推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満の状態のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続することで診断される。柏原氏は、「企業などの健康診断で尿検査は実施されているものの、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の必須項目に血清クレアチニン検査は含まれていない。クレアチニンを測定するか尿検査を行わなければCKDは発見できないため、これは大きな問題であった」と、これまでの早期診断の障壁を指摘した。そのうえで、「厚生労働省へ腎臓病のスクリーニングには尿検査と血清クレアチニン検査の両方が必要であることを説明・協議した結果、血清クレアチニン検査を来年度から必須項目にする方向で検討が進められている」と述べ、今後は早期診断の機会がより増えることに期待を寄せた。慢性透析患者数は減少傾向 CKDを早期に発見して適切に介入することで、透析導入を遅らせたり回避したりできる可能性があり、国の経済負担の軽減にもつながる。こうした背景のもと、2018年に厚生労働省に腎疾患対策検討会が設置され、日本の保険医療体制を維持するため、2018年以降の新規透析患者数を10%減らすという目標が掲げられた。目標達成のための活動が功を奏し、これまで増加を続けてきた慢性透析患者数は近年では減少傾向に転じている。 これは腎臓病の重症化が抑制でき、透析患者が減り始めているという世界でも珍しい例であり、柏原氏は「普及啓発や医療提供体制の整備などを草の根的に全国で続けてきたことに加え、腎臓病の進行を抑制する薬剤が登場してきたことなど多くの要因が相まって、当初は不可能だと思った新規透析患者の10%減という目標が2028年までに達成可能になってきた。これが日本の医療の力だと思っている」と早期診断・早期介入の成果と重要性を強調した。今後のCKD診療はかかりつけ医と協力医が中心 柏原氏は最後に、現在の腎臓病診療に関する課題について言及した。とくに問題となっているのが腎臓専門医の地域偏在で、腎臓専門医は6,578人(2025年6月30日時点)いるものの、CKD患者1万例当たりの腎臓専門医数は最も多い東京都と最も少ない県で4倍以上の差があるという。 こうした状況を踏まえ、日本腎臓病協会ではCKDの普及啓発や医療提供体制の整備を進めるとともに、専門医とかかりつけ医をつなぐ「協力医」を新たに設ける方針であり、すでに先行して始まっている地域もある。協力医はセミナーなどを受講することで、かかりつけ医以上の知識を習得することが求められる。現在では腎臓の難病の治療薬が増え、一部の腎疾患では治療薬の進歩により寛解が期待できるようになってきたことから、柏原氏は「CKD患者の多くをかかりつけ医と協力医が診ることにより、腎臓専門医は腎臓難病の診療に集中することができる」と今後の腎臓病診療の発展に期待を寄せ、講演を終えた。患者の立場からの早期介入の重要性 本プレスセミナーでは、CKD患者であり全国腎臓病協議会専務理事も務める宮本 陽子氏が登壇し、自身の経験やCKD患者の抱える困難について紹介した。透析導入に当たり、患者は違う世界に放り出されたような孤独感に陥ることに加え、仕事や生活への不安から現実から逃避してしまうことがあるという。宮本氏は、正しい知識を得ることの重要性とともに、早い段階で合併症の話をするなど専門医・かかりつけ医との連携の重要性を強調した。

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超加工食品の大量摂取でがんサバイバーの死亡リスクが上昇か

 がんを克服することは容易ではないが、超加工食品を多く含む食事は、がんサバイバーの将来的な健康を損なう可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。超加工食品の摂取量が最も多いがんサバイバーは、最も少ないがんサバイバーに比べて、がんによる死亡リスクが57%高いことが示されたという。IRCCS Neuromed(イタリア)の疫学・予防研究者であるMarialaura Bonaccio氏らによるこの研究結果は、「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」に2月4日掲載された。 Bonaccio氏は、「がんと診断された後に何を食べるかは生存に影響を与える可能性があるが、これまでの研究は主に栄養素に焦点を当てており、食品の加工度には注目していなかった。食品の工業的加工に関わる物質は代謝プロセスに干渉し、腸内細菌叢を乱し、炎症を促進する可能性がある。そのため、表示上はカロリーや栄養組成が同じでも、超加工食品は加工が最小限の食品やほぼ未加工の“自然な”食品よりも体に有害な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。 超加工食品は、天然食品から抽出された飽和脂肪酸、でんぷん、添加糖などの原材料を主成分とし、味や見た目、保存性を高めるための多くの添加物も含まれている。超加工食品の例としては、包装された焼き菓子、砂糖入りシリアル、調理済みまたは加熱するだけの食品、デリのハムやソーセージなどが挙げられる。 今回の研究では、2005年から2010年の間にMoli-sani研究に登録されたがんサバイバー患者802人を対象に、がん診断後の超加工食品の摂取と死亡リスクとの関連を検討した。超加工食品の摂取状況はベースライン時と、がんの診断から平均8.4年後に評価された。 追跡期間の中央値は14.6年で、その間に281人が死亡した。解析の結果、超加工食品の摂取量が最も多い群では最も少ない群と比較して、全死因死亡リスクが48%(ハザード比1.48、95%信頼区間1.07〜2.03)、がんによる死亡リスクが57%(同1.57、1.00〜2.47)高いことが明らかになった。さらに、超加工食品の摂取と死亡リスクとのこうした関連の約40%は、炎症マーカーや安静時心拍数の変化によって説明できることも示された。 Bonaccio氏は、「これらの結果は、炎症亢進や安静時心拍数の上昇が、超加工食品の摂取量増加と死亡リスク上昇の関連の一部を説明する可能性を示しており、食品の加工そのものががんサバイバーの予後悪化にどのように関与し得るかを明らかにする助けとなる」と述べている。 研究者らは、超加工食品の摂取量を減らしてホールフードに置き換えることが、健康改善に役立つとしている。Bonaccio氏は、「一般の人々への主なメッセージは、個々の食品よりも、超加工食品の全体的な摂取量の方がはるかに重要だということだ。食事全体に着目し、超加工食品を減らし、新鮮で加工度の低い家庭料理中心の食事に移行することが、健康にとって最も意味があり、有益なアプローチである」と話す。さらに同氏は、製品が超加工食品に該当するかどうかを見分ける方法として、「ラベルを確認することだ。原材料が5つ以上、あるいは食品添加物を1つでも含む食品は、超加工食品である可能性が高い」とアドバイスしている。

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地中海食が女性の脳卒中予防に有効か

 地中海食の実践は、脳卒中リスクの低下と関係している可能性があるようだ。新たな研究で、食生活が地中海食に最も近い女性では、あらゆる種類の脳卒中のリスクが18%低いことが示された。米City of Hope総合がんセンターのSophia Wang氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology Open Access」に2月4日掲載された。Wang氏は、「今回の結果は、健康的な食生活が脳卒中予防に極めて重要であるという、増え続けているエビデンスを支持するものだ」と話している。 地中海食は、新鮮な果物や野菜、全粒穀物、種子類、ナッツ類、豆類、オリーブオイルを中心に摂取する食生活である。魚介類は週に2回以上、乳製品や赤身以外のタンパク質は少量を毎日摂取する一方で、赤肉や加工食品の摂取は最小限に抑え、砂糖入り飲料は摂取しないことが推奨される。 この研究では、カリフォルニア州の女性教職員13万3,477人を対象とした長期追跡研究のデータを用いて、地中海食と脳卒中との関連が検討された。対象者は1995〜1996年に試験に登録されていた。カリフォルニア州の入院記録と死亡記録を用いて1996年から2020年までの間の脳卒中の発症について調べるとともに、ベースライン時の食事調査の結果に基づき地中海食遵守スコアを算出した。地中海食遵守スコアは0〜9点の範囲で採点され、点数が高いほど遵守度が高いことを意味する。 最終的に10万5,614人(平均年齢52.5±13.8歳)が解析対象とされた。地中海食の遵守度が最も高かった(6〜9点)のは全体の30%(3万1,638人)、最も低かった(0〜2点)は12.5%(1万3,204人)であった。平均20.5年の追跡期間中に4,083件(虚血性3,358件、出血性725件)の脳卒中が発生した。解析の結果、地中海食の遵守度が最も高い群では最も低い群に比べて、あらゆる脳卒中のリスクが18%(ハザード比0.82、95%信頼区間0.74〜0.92)、虚血性脳卒中リスクが16%(同0.84、0.75〜0.95)、出血性脳卒中リスクが25%(同0.75、0.58〜0.97)、有意に低いことが示された。 Wang氏は、「特に出血性脳卒中について、この結果が当てはまることは興味深かった。大規模研究でこのタイプの脳卒中を対象にしたものは少ないからだ」とニュースリリースで述べている。 さらにWang氏は、「脳卒中は、死亡と障害の主な原因であるため、食生活を改善することで、この深刻な病気のリスクを減らせる可能性があると考えると、大きな希望を感じる。今回の結果を確認し、背後にあるメカニズムを理解するために、さらなる研究が必要だ。それにより、新たな脳卒中予防法を見つけられる可能性がある」と述べている。

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性格は仕事のやる気より“燃え尽きやすさ”に関係か

 仕事への「やる気」や「燃え尽き」は、個人の性格によってどの程度左右されるのか。今回、日本の企業で働く正社員を1年間追跡した研究から、性格特性はワーク・エンゲージメント(やる気)とは関連しなかった一方で、バーンアウト(燃え尽き)とは有意に関連することが示された。研究は、鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学講座の福崎俊貴氏、獨協医科大学大学院看護学研究科の岩田昇氏によるもので、詳細は1月7日付で「PLOS One」に掲載された。 近年、労働者のメンタルヘルスでは、仕事への前向きさを高め、健康障害を防ぐ「ポジティブな心理状態」が重視されており、その理論的枠組みとして仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)が用いられている。このモデルでは、仕事の資源(職場のサポートや報酬)がワーク・エンゲージメントを高める一方、仕事の要求がバーンアウトを引き起こすとされる。また、職場環境だけでなく、自己効力感やレジリエンス、性格といった個人要因も重要と考えられている。中でも性格特性は、ワーク・エンゲージメントやバーンアウトとの関連が示唆されてきたが、多くは横断研究にとどまり、職場要因を同時に考慮した縦断的検証は行われていない。さらに、従来のバーンアウト尺度には測定上の課題がある。 そこで本研究では、新たなバーンアウト評価尺度(Burnout Assessment Tool:BAT)を用い、日本の労働者を対象に、性格特性とワーク・エンゲージメントおよびバーンアウトとの関連を、職場要因を調整した上で縦断的に検討した。 本研究では、楽天インサイト株式会社に登録された約220万人のモニターパネルのうち、国内の企業・組織に勤務する正社員を対象に、1年の間隔をあけてオンライン調査を2回実施した(ベースライン調査:2022年11~12月、追跡調査:2023年11~12月)。両調査に回答した500人(男性299人、女性201人、追跡率33.3%)のデータを解析に用いた。性別や年齢などの人口統計学的変数に加え、仕事の要求度・裁量、上司や同僚の支援、外在的報酬といった職場要因を質問票で評価した。ワーク・エンゲージメントとバーンアウトは日本語版尺度を用いてベースラインおよび追跡調査で測定し、性格特性(ビッグファイブ)はベースライン時に評価した。解析には階層的重回帰分析を用い、ベースライン時のワーク・エンゲージメントとバーンアウトおよび人口統計学的変数を調整した。 本研究の参加者の平均年齢は45.9歳で約60%が男性であった。1年間追跡した解析の結果、ワーク・エンゲージメントは低下した一方で、バーンアウトの程度には大きな変化はみられなかった。 ワーク・エンゲージメントについては、性格の違いによる影響はほとんど認められず、年齢に加えて、高い外在的報酬(標準化回帰係数〔β〕=0.15、P<0.001)や同僚からの支援(β=0.12、P<0.05)といった仕事の資源の要因が強く関係していた。これに対し、バーンアウトについては、仕事の要求度が大きいほど(β=0.10、P<0.01)、また神経症傾向が高いほど(β=0.08、P<0.05)高く、誠実性が高い人ほど(β=-0.08、P<0.05)低い傾向が認められた。 著者らは、「今回の結果は、ワーク・エンゲージメントを高めるには性格よりも資源の豊富な職場環境の整備が、バーンアウトを防ぐには仕事の負担や個人特性への配慮が重要であることが示唆された」と述べている。 本研究の限界として、参加者はオンライン調査パネルの登録者に限られていた点、職務要因(仕事の負荷や職場環境)は一部しか評価していない点などを挙げている。加えて、因果関係の向きや日本特有の文化的背景も考慮に入れる必要があるとしている。

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アナフィラキシー補助治療薬、2つの選択肢

アナフィラキシー発現時の補助治療薬、2つの選択肢投与経路用量設定有効性アドレナリン点鼻液(商品名:ネフィー)アドレナリン自己注射製剤(商品名:エピペン)経鼻投与筋肉内注射(太もも前外側)・1mg:体重15〜30kg未満・0.15mg:体重15〜30kg未満・2mg:体重30kg以上(成人含む)・0.3mg :体重30kg以上(成人含む)・試験において、全患者が1回投与で初期症状を改善・改善までの時間(中央値)は16分・アナフィラキシー時の循環動態を改善し、入院リスクを減少・改善までの時間は約10分主な利点針がない、携帯しやすいアナフィラキシー治療の第1選択薬として、使用実績が豊富特徴的な副作用咳嗽、鼻粘膜紅斑、鼻部不快感、口の感覚鈍麻など動悸、頭痛、めまい、不安、注射部位疼痛など使用上の注意・鼻茸、鼻骨折や鼻損傷の既往歴、鼻の手術歴等を有する患者では、本剤の吸収が十分ではない可能性・点鼻後には必ず医療機関を受診することその他臨床データが不足している(⾷物経口負荷試験[OFC]データのみ)・手指への誤注射に注意が必要・注射後には必ず医療機関を受診すること長年の歴史と臨床上の使用経験データが豊富監修:海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院臨床研究センター センター長)参考:ネフィー、エピペン各添付文書、Ebisawa M, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2025;13:2787-2794.Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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