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第41回 コロナ対応病床増、感染症法改正か医療法改正か…。そこ結構大事では?

菅⾸相、医療関係団体と会談こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。緊急事態宣言で、私自身も自粛生活が続いています。夜の街に飲みに出ることもなくなり、自宅でニュース番組やワイドショーのハシゴと、ニンテンドー3DSで20年以上前のゲーム「ゼルダの伝説 時のオカリナ」をプレイして時間を潰しています。ゼルダの世界には厄介なモンスターは出ますが、感染症はなく安全です。ただ3DSは中高年がプレイするには画面が小さ過ぎます。古いゲームですが、名作なだけにSwitchへの移植を切に願う今日この頃です。さて、政府は1月13日、大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木の7府県にも緊急事態宣言を発出しました。さらにコロナ対応病床の不足に関するさまざまな報道を受けてか、菅 義偉首相は翌14日、新型コロナウイルス感染症対策を巡る医療関係団体の各代表と会談し、「とくに新型コロナの患者に対応している医療機関が治療に必要な設備を整えて医療従事者を確保し、適切な診療を行うことができるよう、最大限の支援を実施する」と明言しました。この会談には、日本医師会の中川 俊男会長、日本病院会の相澤 孝夫会長、全日本病院協会の猪口 雄二会長、日本医療法人協会の加納 繁照会長、日本看護協会の福井 トシ子会長、全国医学部長病院長会議の湯澤 由紀夫会長の6人が出席。その姿はNHKニュース等のテレビでも大きく取り上げられました。この会談の後、日医と日病、全日病、医法協は、共同で対策組織を設置する方針も打ち出しました。先週のコラムでは「日本医師会をはじめとする医療関係団体が、具体的にどんなアクションを起こすのか、注視したいと思います」と書きましたが、「国民にお願いするだけで自分たちは何もやっていない!」といった報道を受け、医療関係団体が動き出しました。1月18日のNHKニュースでは、今週中にも日本医師会などの医療関係団体が対策会議の初会合を開くとのことです。地域の医療機関の役割分担も含めた連携強化が話し合われる予定だそうですが、どれだけ現場で実効性のある対策が打ち出されるかが注目されます。菅首相、医療法改正に言及実は、今回取り上げたかったのはこのニュースではなく、13日の緊急事態宣言追発出後の菅首相の記者会見です。最後の質問に指名された日本ビデオニュース社の記者が、医療法改正の意向があるかどうかについて、次のように質問しました。「(前略)日本は病床数は世界で、人口当たりの病床数は世界一多い国ですよね。今、感染者数はアメリカの100分の1くらいですよね。それで医療がひっ迫していて、緊急事態を迎えているという状況の総理の説明が、単に医療の体制が違うんですというので果たしていいのでしょうか。つまり、体制を作っているのは政治なのではないかと。政治が法制度を変えれば、それは変えられるではないですか。そこで質問です。もうすぐ国会が始まります。例えば医療法によって、今、政府は病院の病床の転換というのは病院任せにするしかない、お願いするしかない状況になっていますけれども、例えば医療法の改正というのは、ただ単にシステムが違いますではなくて、今の政府の中のアジェンダに入っていないのでしょうか。それから、同じく感染症法の改正、これもコロナが当初あまりどういう病気か分からない段階で2類相当にしてしまった。なので、軽症者や無症状者でも非常に厳重に扱わなければいけなくなっている。(中略)。国会が始まりますので、法制度の部分で2つの法律、今国会で改正されるおつもりがあるのか」この質問に対する菅首相の答えは以下のようなものでした。「(前略)医療機関でありますけれども、日本には今の法律がある中で、ひっ迫状況にならないように、政府としては、ベッドは数多くあるわけでありますから、それぞれの民間病院に一定数を出してほしいとか、そういう働きかけをずっと行ってきているということも事実であります。そして、この感染症については先ほど申し上げましたけれども、法律改正は行うわけでありますから、それと同時に医療法について、今のままで結果的にいいのかどうか、国民皆保険、そして多くの皆さんが診察を受けられる今の仕組みを続けていく中で、今回のコロナがあって、そうしたことも含めて、もう一度検証していく必要があると思っています。それによって必要であれば、そこは改正するというのは当然のことだと思います」(下線編集部)。事前質問にはなかったとみられ、この回答、菅首相本人も十分に理解して話しているかどうか、見ている側も不安になるような口調で話していました。案の定、「国民皆保険を見直す」と誤解する人も出て、ネット上でも一時話題となりました。普通に解釈すれば、「国民皆保険を堅持するためにも、医療法についても検討する必要がある」という意味だと想像できるのですが、あの話し方では誤解を招いても仕方ないですね。急転直下、感染症法での対応へ「病床確保へ医療法を検証」は、医療関係者にとっては大ニュースです。翌日、1月14日付けの日本経済新聞も「首相記者会見のポイント」として列挙するほどでした。この菅首相の会見を受け、加藤勝信官房長官は14日の記者会見で、「今回の感染症の対応を含め、医療制度のみならず幅広く検証し、必要な対応をとる必要がある。(首相は)医療法という言葉を述べたが、医療に関する法制度という広い意味ではないか」と説明、病床の確保に向けて医療法を含めた法制度全般を検証する考えを示しました。その直後、方針が急転します。当面は医療法ではなく感染症法を改正し、コロナ病床増に対応する方針が決まったのです。厚生労働省は15日、新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れる病床を確保するため、医療機関への協力要請を「勧告」に強めることなどを盛り込んだ感染症法の改正案を専門家でつくる部会に示し、了承されたのです。各紙もコロナ病床増は感染症法改正で対応することを大きく報じました。改正案では、「勧告」に正当な理由がなく応じない場合、厚労相や都道府県知事が機関名を公表できるようになります。また、入院措置に従わない人や保健所の疫学調査を拒否した人に対して同法で罰則を設ける方針も示されています。遅過ぎる法改正での対応この13日から15日の一連の流れを見ていて、いくつか「おや?」と思うことがありました。一番の謎は、菅首相が「当面のコロナ対応病床増を感染症法改正で対応する」ことを知らなかったことです。そんな大事なことを知らされていなかったのか、ただ忘れてしまっていたのか。いずれにせよ、結構大きな問題ではないでしょうか。ここからはまったくの想像です。厚生労働省の事務方は、かなり早い段階から、法的にコロナ対応病床を増やす方法を考えていたに違いありません。医療提供体制を規定するのは医療法ですが、今から医療法で医療計画などを改正しても、現場の体制をすぐに変えることはできません。そう考えると即効性があるのは感染症法改正ということになります。ただ、この2案を検討しながらも、菅首相に対して具体的な説明はしていなかったのではないでしょうか。加藤官房長官が「(首相は)医療法という言葉を述べたが、医療に関する法制度という広い意味ではないか」と説明したことからも、そう感じます。それにしても、第3波が本格的に到来してから法律改正を検討し始めるとは、政府も厚労官僚も一体これまで何をやっていたのでしょう? 厚労官僚はそうした具体策を菅首相(や安倍前首相)に上げることすら、怖かったのでしょうか…。医療法改正での対応も早急に今回の対応は感染症法による病床確保策ですが、医療法改正による対応も早急に必要と思われます。なぜなら、今回の病院間のコロナ対応の差は、医療法が規定する医療計画の中に「パンデミックを起こすような感染症への対応」について記載がないことも原因の一つだと考えられるからです。さらには、地区医師会や病院団体等が策定に積極的ではなかった地域医療構想策定の遅れも、医療機関の役割分担ができなかった原因でしょう。厚労省は次回の医療法改正で、医療計画の記載事項に「新興感染症の感染拡大時における医療」を追加する方針で見直しを進めています。あわせて、公立・公的・民間含め、地域の医療機関が機能分担を推し進めざるを得ないような、何らかの強制的な仕組みの導入も必要だと考えられます。今週、医療関係団体は対策会議の初会合を開くそうです。言うならばこれは「地域医療構想調整会議」の全国版と言えるでしょう。実際に各地で進められている地域医療構想調整会議を医療機関の利害だけを主張する場ではなく、有事を想定して強制的な役割(病床)配分ができるような場に生まれ変わらせることも、次期医療法改正では必要だと思います。

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COVID-19、重症患者で皮膚粘膜疾患が顕著

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の皮膚症状に関する報告が寄せられた。これまで皮膚粘膜疾患とCOVID-19の臨床経過との関連についての情報は限定的であったが、米国・Donald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/NorthwellのSergey Rekhtman氏らが、COVID-19入院成人患者296例における発疹症状と関連する臨床経過との関連を調べた結果、同患者で明らかな皮膚粘膜疾患のパターンが認められ、皮膚粘膜疾患があるとより重症の臨床経過をたどる可能性が示されたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年12月24日号掲載の報告。COVID-19入院成人患者296例のうち35例が少なくとも1つの疾患関連の発疹 研究グループは2020年5月11日~6月15日に、HMO組織Northwell Health傘下の2つの3次医療機能病院で前向きコホート研究を行い、COVID-19入院成人患者における、皮膚粘膜疾患の有病率を推算し、形態学的パターンを特徴付け、臨床経過との関連を描出した。ただし本検討では、皮膚生検は行われていない。 COVID-19入院成人患者の発疹症状と臨床経過との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・COVID-19入院成人患者296例のうち、35例(11.8%)が少なくとも1つの疾患関連の発疹を呈した。・形態学的パターンとして、潰瘍(13/35例、37.1%)、紫斑(9/35例、25.7%)、壊死(5/35例、14.3%)、非特異的紅斑(4/35例、11.4%)、麻疹様発疹(4/35例、11.4%)、紫斑様病変(4/35例、11.4%)、小水疱(1/35例、2.9%)などが認められた。・解剖学的部位特異性も認められ、潰瘍(13例)は顔・口唇または舌に、紫斑病変(9例)は四肢に、壊死(5例)は爪先に認められた。・皮膚粘膜症状を有する患者は有さない患者と比較して、人工呼吸器使用(61% vs.30%)、昇圧薬使用(77% vs.33%)、透析導入(31% vs.9%)、血栓症あり(17% vs.11%)、院内死亡(34% vs.12%)において、より割合が高かった。・皮膚粘膜疾患を有する患者は、人工呼吸器使用率が有意に高率であった(補正後有病率比[PR]:1.98、95%信頼区間[CI]:1.37~2.86、p<0.001)。・その他のアウトカムに関する差異は、共変量補正後は減弱し、統計的有意性は認められなかった。

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第43回 ブラジルで広まるコロナ変異株P.1の再感染しやすさの検討が必要/去年の新発見を疑問視

ブラジルで広まるコロナ変異株P.1の再感染しやすさの検討が必要ブラジルでは急速に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)が広まり、アマゾン地域の流行はとりわけ強烈でした。同地域の最大都市で200万人超が暮らすマナウスでは実に4人に3人(76%)が10月までにCOVID-19を経たと献血検体の抗体を調べた試験で推定されています1)。4人に3人が感染したとなれば感染増加を防ぐ集団免疫の想定水準を十分に満たします。しかしそれにもかかわらず最近になってマナウスでCOVID-19が再び増え始めたことは試験に携わった英国インペリアル大学(Imperial College London)のウイルス学者Nuno Faria氏を驚かせました2)。ウイルスが行き渡ったことと病院がCOVID-19患者で再び混雑することは同氏によれば両立し難いことだからです。マナウスの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム情報は乏しく、去年の春に採取されたものの記録しか存在しません3)。そこでFaria氏等は今どうなっているかを探るべく、COVID-19が再び急増し始めた時期と重なる去年12月中旬にマナウスで集めた検体のSARS-CoV-2ゲノムを読み取りました。その結果、31の検体の半数近い42%(13/31) から新たなSARS-CoV-2変異株が見つかり、P.1(descendent of B.1.1.28)と名付けられました3)。P.1は去年2020年の3月から11月にマナウスで採取された検体には存在せず、同市で先立って蔓延したSARS-CoV-2のおかげで備わった免疫を交わして感染しうる恐れがあり、すでに感染を経た人への再感染しやすさを調べる必要があるとFaria氏等は言っています2)。その問いを解くのにおそらく参考になる研究はすでに始まっています。サンパウロ大学の分子生物学者Ester Sabino氏はマナウスでの再感染の同定を開始しており、この1月からはマナウスでの検体のウイルス配列をより多く読んでP.1の広まりも追跡しています。英国で広まっていることが最初に判明してその後世界中に広まったSARS-CoV-2変異株B.1.1.7と同様にP.1もすでに国境をまたいでおり、ブラジルから日本への渡航者から見つかった変異株が後にP.1と判明しています2)。英国はSARS-CoV-2に発生する変異の影響を調べる取り組みG2P-UKを先週末15日に発表しました4)。世界保健機関(WHO)は変異株の監視や研究の協調を後押ししており、先週初めの12日の会議5)ではワクチンを接種した人や感染を経た人の血漿やウイルス検体を保管するバイオバンク体制を設けて試験に役立てる計画が話し合われています2)。本連載で紹介した新たな唾液腺発見の報告が疑問視されている新たな唾液腺(tubarial glands)を発見したという去年の報告を年初に本連載(第41回)で紹介しましたが、その報告を疑問視する意見がその出版雑誌Radiotherapy & Oncologyに複数寄せられているとわかりました。たとえば1つは新規性を疑うもので、tubarial glandsの特徴に見合う構造の存在は100年以上前から把握されていたとスタンフォード大学のAlbert Mudry氏等は指摘しています6,7)。また、唾液腺と分類することの妥当性も疑問視されています8)。その存在位置をみるに口腔に腺液は届きそうになく、唾液の生成には寄与していなさそうです。また、唾液の主成分アミラーゼもなく、唾液腺とみなすのは無理と指摘されています6)。臓器であれ技術であれ完全なる新発見を主張する報告をMudry氏はどれも疑ってかかります6)。というのも新規性の立証のために過去の報告を洗いざらい調べることを著者はたいてい怠るからです。Mudry氏によると1800年代に解剖学者2人や耳科医が既にtubarial glandsの領域の腺の存在を記録しています。新たな腺をひねり出そうとするのではなく別の観点を考察すればよかったのにとブラジルの口腔病理医Daniel Cohen Goldemberg氏は言っています。研究自体は優れているのだから撤回せずに訂正して残すべきと同氏は考えています6)。Cohen Goldemberg氏もRadiotherapy & Oncologyへの意見9)の投稿者の1人です。参考1)Buss LF, et al. Science. 2021 Jan 15;371:288-292.2)New coronavirus variants could cause more reinfections, require updated vaccines / Science3)Genomic characterisation of an emergent SARS-CoV-2 lineage in Manaus: preliminary findings / virological.org4)National consortium to study threats of new SARS-CoV-2 variants / UK Research and Innovation5)Global scientists double down on SARS-CoV-2 variants research at WHO-hosted forum / WHO6)Scientists Question Discovery of New Human Salivary Gland / TheScientist7)Mudry A, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 10:S0167-8140:31222-6. 8)Bikker FJ, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 10:S0167-8140:31224-X.9)Cohen Goldemberg D, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 11:S0167-8140:31223-8.

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診療所の新型コロナ感染対策、Web問診サービスを1年無償で提供/Ubie

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を受け、Ubie株式会社は「AI問診ユビー for クリニック」を、全国のクリニックに向けて利用料1年分(12万円相当)無償で緊急提供することをプレスリリースで発表した。2021年1月8日~2月26日までの契約開始を条件に、利用開始日から1年間の無償期間を設ける。 なお、内科系・整形外科・一般外科系のクリニックが対象とされ、タブレット導入費、電子カルテ連携費、通信費などの実費は、医療機関による負担となる。Web問診が支援する新型コロナ感染対策 「AI問診ユビー for クリニック」とは、問診業務とカルテ作成業務をデジタル化したWeb問診サービス。患者が診察前の待ち時間にタブレットを使って症状を入力すると、電子カルテに最適化された文章として問診内容が自動出力されるため、事務作業が大幅に削減できる。 医師やスタッフの業務効率化に加え、患者の滞在時間短縮により院内感染リスクの低減が図れるほか、医療機関の予約サイト上などに来院前問診機能を搭載すると、患者が自身の端末を用いて自宅で回答した内容をあらかじめ聴取した状態で診察可能となる。クリニックの負担軽減で、医療崩壊の抑制を目指す 「AI問診ユビー for クリニック」の導入により、これまで紙もしくは口頭で行っていた問診が、スマホやタブレットに置き換わることで、クリニックの負担軽減を支援する。すでに複数の医療機関で実証されたサービスを、今回全国のクリニックに緊急提供し、医療崩壊の抑制に寄与する考え。《申し込み方法》導入希望のクリニックは、下記専用ページ内のフォームから申し込み可能。専用ページ

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コロナ病床は簡単には増やせない、医療壊滅を防ぐために/日医

 感染者数の増加が続き、各地で医療体制のひっ迫が叫ばれる中、日本の医療体制の在り方についても様々な意見が報道・発信されている。1月13日の日本医師会定例記者会見において、中川 俊男会長は改めて国民に対し協力を要請するとともに、日本の医療提供体制の現状を説明し、日医として引き続き行っていく働きかけ、施策について説明した。民間病院の新型コロナ患者受け入れが約20%である背景 公立・公的等病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)受け入れ割合が約70~80%である一方、民間病院が約20%というデータに対し、より多くの民間病院が新型コロナ患者を受け入れるべきという意見がある。中川氏は、「医療を必要とするのは新型コロナ患者だけではない。民間病院の多くは、新型コロナ以外の救急・入院が必要な患者への医療を、それぞれの地域で担っている」と民間病院が新型コロナ診療を含む地域医療を面で支えていることを強調した。 加えて、新型コロナ患者向けの病床を大幅に増やせない要因として、民間病院は、三次救急を担う公立・公的等に比べてICU等の設置数が少なく、専門の医療従事者がおらず、病床数が数床規模の場合がほとんどで動線の分離が難しいことなどを挙げた。 このまま感染者数の増加が続けば、必要な時に適切な医療を提供できない「医療崩壊」から必要な時に医療自体を提供できない「医療壊滅」に至るとし、「地域の医療提供体制は、新型コロナウイルス感染症の医療とそれ以外の通常の医療が両立してこそ機能していると言える」と強調。首都圏などにおいて、心筋梗塞や脳卒中患者の受け入れ先が見つからず、がんの手術が延期されるなどが現実化しており、一部ではすでに医療崩壊の状態であるとした。宿泊療養・自宅療養者のフォローアップに注力が必要 日本医師会としては、「必要な地域で1床でも多くの新型コロナ病床の確保が可能となるよう努力していくことには変わりない」と話し、加えて、宿泊療養・自宅療養者の健康フォローアップがより重要となってきているとした。 昨年4月以降、日本医師会では各地の医師会が組織する新型コロナウイルス感染症版の災害医療チーム「COVID19-JMAT」(1月12日現在、医師10,191名をはじめ延べ27,291名)を、宿泊療養施設や地域外来・検査センター等へ派遣しているほか、行政などからの求めに応じ電話やオンラインを利用した、宿泊療養・自宅療養者の健康フォローアップへの協力を行っている。中川氏はこれを改めて働きかけていくと話した。医師がコーディネーターとして機能、保健所の負担軽減が実現した好事例も 続いて登壇した釜萢 敏常任理事は、「年末年始の医療提供体制等に関する調査」の結果について報告。同調査は、年末年始における各地の医療提供体制の構築状況や問題点を把握するために都道府県/群市区医師会に対し昨年末時点で実施したもの。年末年始の医療提供体制の構築状況について聞いたところ、都道府県医師会では約80%、郡市区医師会では約60%、構築されているとの回答であった。 具体的な対応としては、各医療機関が「診療・検査医療機関」として機能するよう準備・調整、休日診療所や急患センターの人員増強や発熱外来の設置、休日当番医の拡充、PCR検査センターの設置、年末年始に従事する人員の増強、初期救急の実施、検査機器の導入、公立病院への応援医師の派遣などが挙げられた。 年末年始に限らない今後の課題として、釜萢氏は人材不足が主要因となり、「医療機関および保健所において、相談・受診をした患者への適切なトリアージが滞っている」「保健所・行政と医師会との連携がうまくいっていない」ケースがあることを挙げた。また、患者の宿泊療養施設が確保されていない地域が少なくないことに触れ、「厚生労働省と課題を共有し、きめ細かい対応に努めていく」と話した。 一方で同調査には、呼吸器感染症の専門医(民間大学教授)にコーディネーター(キーマン)役を依頼し、全患者の各医療機関と宿泊療養施設間の振り分けを依頼することで患者の状態に応じた転院がスムーズに行われているといった好事例の報告もあった。

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第38回 新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール2.医師免許のマイナンバーカード搭載、2024年度から運用開始3.処方箋も紙から電子へ、2022年夏までにシステムを構築4.特別措置法と感染症法改正、通常国会に向けた尾身分科会長の基本方針5.今季のインフルエンザ141例、過去5年で最小/JMIRI6.コロナウイルスの猛威、老人福祉・介護事業者を直撃1.新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール厚生労働省は、各都道府県に対し、通知「医療従事者等への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を行う体制の構築について」を発出した。医療従事者へのワクチンは、一般の接種と同様に市町村が主体となり、契約を締結した医療機関などにおいて実施されることとなった。対象となる「医療従事者等」には、以下が含まれる見込みである。1)病院、診療所において、新型コロナウイルス感染症患者(疑い患者を含む、以下同様)に頻繁に接する機会のある医師、その他の職員。2)薬局において、新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する機会のある薬剤師その他の職員(登録販売者を含む)。3)新型コロナウイルス感染症患者を搬送する救急隊員など、海上保安庁職員、自衛隊職員。4)自治体などの新型コロナウイルス感染症対策業務において、新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する業務を行う者。なお、(1)(2)は医療関係団体が、(3)(4)は都道府県が取りまとめを行う。接種場所については、全国で1,500施設に2月末までにディープフリーザーを配置するとされ、その配置先を「基本型接種施設」として接種を実施するほか、近隣に所在し、当該施設から冷蔵でワクチンの移送を受ける「連携型接種施設」において接種を実施することとなる。在庫管理などには、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)が用いられる。接種開始に向けた具体的な作業期限も1月末~2月上旬に定められ、各自治体や医師会、歯科医師会、薬剤師会、病院団体など地域の医療関係団体は体制整備を急ぐ必要がある。(参考)医療従事者等への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を行う体制の構築について(健健発0108第1号 令和3年1月8日)(厚労省)「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に係る手引き(初版)」(同)ワクチン接種、全国1万か所拠点に…氷点下75度の超低温冷凍庫を配備(読売新聞)2.医師免許のマイナンバーカード搭載、2024年度から運用開始厚労省は「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」の報告書を公表した。社会保障に係る31資格におけるマイナンバー制度の利活用に関して、届出の簡素化およびオンライン化、マイナポータルを活用した資格保有の証明、提示、人材活用などについてこれまでの議論をまとめている。今後、新規資格取得者については、各資格団体や事業者団体の協力を得て、免許証など申請書の提出時にマイナンバーの提供を求める呼び掛けが行われることになる。なお、実際の運用はデジタル・ガバメント実行計画に基づいて、2024年度に開始される見込み。(参考)「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会 報告書」を公表します(厚労省)医師免許もマイナンバーカードに デジタル改革関連6法案の全容判明(産経新聞)3.処方箋も紙から電子へ、2022年夏までにシステム構築1月13日に開催された、第139回社会保障審議会医療保険部会において、電子処方箋の仕組みの構築について討論された。電子処方箋については、現在、導入を進めているオンライン資格確認の基盤を活用して2022年夏頃を目処に構築する。これにより、待ち時間の短縮や直近の処方・調剤情報の参照、重複投薬防止などメリットが期待される。運営主体は社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険中央会があたり、すべての機能が稼働する2023年度でおよそ9.8億円の運用費用が見込まれている。一方、医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の普及状況は、顔認証付きカードリーダー申し込み数が22万8,321施設中4万8,866施設(21.4%)であり、病院が29.4%に対して、医科診療所は14.5%と、クリニックなどで申請が遅れていることが明らかとなった。なお、公的医療機関などにおける申込率は、国立病院機構97.1%、労働者健康安全機構100%、JCHO98.2%と対照的であった。これに対して、周知が不十分であることや、マイナンバーカードの普及率が伸び悩んでいる現状での様子見、新型コロナウイルス感染症の影響もあるとし、追加的な財政支援策を周知するために、全医療機関などに対してリーフレットを再送付するなど働きかけを実施する予定。(参考)電子処方箋の仕組みの構築について(厚労省)オンライン資格確認導入に向けた準備作業の手引き(医療機関・薬局の方々へ)(同)4.特別措置法と感染症法改正、通常国会に向けた尾身分科会長の基本方針18日に召集される通常国会で、政府は、新型コロナウイルス対策の実効性を高めるための特別措置法や感染症法の改正案を提出する見通しとなっている。これに先立ち、15日の新型コロナウイルス感染症対策分科会で、尾身分科会長から提言について基本方針が示された。コロナウイルス患者の急増に対して、直ちに取り組むべき課題として、基本原則の維持を大前提としつつ、特別措置法は、都道府県知事からの要請にも十分な協力を得られるように早期に結論を出すことなどを求めた。感染症法でも、医療提供体制に関して、病床確保や入院調整については都道府県が総合調整の役割を果たすべきであり、入院の総合調整は都道府県の役割であることを法律上明確にするほか、クラスター発生時の人材派遣のあり方についてもより効率的・効果的な仕組みを検討する必要があるとした。(参考)新型インフルエンザ等対策特別措置法及び感染症法の改正に関しての基本的な考え(案)(尾身分科会長 提出資料)政府 通常国会にコロナ特別措置法改正案など63法案提出へ(NHK)5.今季のインフルエンザ141例、過去5年で最小/JMIRI今シーズンのインフルエンザの患者数は202年12月時点で2019年12月と比較して338分の1の141例と、過去5年で最小であることが明らかとなった。調剤薬局の処方データを元に処方箋データベースを運用、解析している医療情報総合研究所(通称JMIRI)が14日に発表した調査結果によると、とくに10歳未満のインフルエンザ患者数が激減していることからも、手洗いうがいなどの推奨により、保育園や幼稚園などで感染拡大が抑えられていることがわかる。例年インフルエンザは1~2月にかけて感染のピークを迎えるため、引き続き注意が必要であるが、コロナウイルス感染対策によって、この傾向が続くと見られる。(参考)インフルエンザ患者数は前年同月比 338 分の1 未成年、特に10歳未満のインフルエンザ患者数が大幅に減少~JMIRI 処方情報データベースにおける調査より~(医療情報総合研究所)20年12月 インフルエンザの流行みられず 患者数、直近5年間平均の169分の1 JMIRI調べ(ミクスオンライン)6.老人福祉・介護事業者の倒産件数、2000年以降最多2020年の老人福祉・介護事業の倒産件数が118件と、2000年の介護保険法施行以降で過去最多であることが明らかとなった。新型コロナウイルス感染拡大で、サービス利用者が減少し、さらに人手不足などによる経営状況の悪化が引き金となったとみられる。業種別では、「訪問介護事業」が56件と半数近く、負債総額はほとんどが1億円未満であり、経営基盤が脆弱なところが多かった。厚労省は2021年度の介護報酬を0.7%引き上げ、介護サービス事業者の経営を支援する方針だが、今年に入ってもコロナウイルス感染拡大が続き、経営の見通しは決して明るくない。今後、介護サービス提供の現場では、さらなる支援を求める声が上がると思われる。(参考)2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況(東京商工リサーチ)東京商工リサーチ、2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況調査結果を発表(日経新聞)

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パンデミック再び、ICUで苦悩するコロナ治療【臨床留学通信 from NY】第16回

第16回:パンデミック再び、ICUで苦悩するコロナ治療ご存じの通り、こちら米国ニューヨークは2020年4月に最もひどいパンデミックの中心地となりました。痛い目に逢った教訓から、人々はマスクを着け、ソーシャルディスタンスを保とうと努めていました。欧米においては、もともと日常的にマスクを着ける文化はないため、マスクを着けていること自体に抵抗があるようなのですが、第2波への恐れもあり、ニューヨークの人々は米国の他の州よりもマスクをきちんと着けていた印象です。ところが、9月下旬より学校が再開され、レストランも外ではなく店内での食事が許可されました。さらに、11月下旬のサンクスギビングの週で人々の動きが活発となり、12月上~中旬に新型コロナ第2波が急にやって来ました。人々の行動変化に加え、われわれの以前のデータが示す通り、寒さも関係していると見られます1)。私は、レジデントとしてさまざまな部署をローテートしている最中ですが、12月中旬よりICUに配属され、最前線でコロナ治療に当たりました。16床がほぼ満床、そのうち半分弱がコロナ患者で占められています。残念ながら亡くなる人も多いのですが、空いたベッドには容赦なくすぐに次の患者が入ってくるという状況です。また、医療崩壊が起きていたと見られるクイーンズ地区やブルックリン地区など、マンハッタンの外側の地域からも挿管された患者さんの転院搬送が多く、何とか捌いているという印象です。4月は当初の5倍までベッド数を増やしたICUですが、いまは2~3倍というところに抑えてられています。しかしながら通常のICUではないため、看護師の配置等はどうしても少なめになってしまうのが実情です。治療法は依然、第1波のころからほとんど進歩はなく、抗凝固療法、ステロイドをベースに人工呼吸器管理をするというものです。また、どれほど意味があるのかは不明ですが、酸素化が悪い場合は腹臥位にして無気肺の改善を図ります。やはり、ひとたび人工呼吸器に乗ってしまうと死亡率は非常に高く、われわれの施設のデータから報告されたICUでの死亡率は55%でした2)。サンクスギビングが感染契機となった人もおり、未然に防ぐこともできただけに、とても残念です。サンクスギビングが長らく文化として根付き、家族で集う大事な時だといっても、生命のリスクを追うほどものとは考えられません。抗凝固療法に関しては、Mount Sinai groupから出された観察研究のデータで肯定的な結果3)であったため、わたしの勤務病院でも使用していましたが、すべての人に経験的に使うというのは否定的になりつつあり4)、Dダイマーの数値を基に、経験的に調整している程度です。ステロイドもメタ解析で効果が期待されています5)が、もはや人工呼吸器が必要なほど肺が損傷すると、目に見えて効果を感じることができず6)、われわれのデータが示している通り、長期化すると真菌感染が全面に出てきています。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32762336/2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32720702/3)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32860872/4)https://www.hematology.org/covid-19/covid-19-and-pulmonary-embolism5)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32876694/6)https://www.jstage.jst.go.jp/article/yoken/advpub/0/advpub_JJID.2020.884/_articleColumn画像を拡大する最前線でレジデントは働いているわけですが、2020年12月14日より、米国ではワクチンの使用が許可され、医療従事者を優先に投与が始まりました。私もICU勤務であることから、他の人より若干早い12月17日にPfizer/BioNTech社のワクチンを受け、今年1月8日に2回目を接種しました。とくにアレルギー等の副反応はなく、筋注なので上腕の筋肉痛が2~3日ありましたが、それもインフルエンザワクチンと同程度でした。

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インフルエンザ【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第6回

今回は、ワクチンで予防できる疾患、VPD(vaccine preventable disease)として、「インフルエンザ」を取り上げる。ワクチンで予防できる疾患インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる急性呼吸器感染症であり、わが国では毎年12月〜3月頃に流行する。感染経路は飛沫感染や接触感染であり、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛や関節痛が出現し、鼻汁や咳などの呼吸器症状が続くが、いわゆるかぜ症候群と比較して、全身状態が強いことが特徴である。多くは自然回復するが、肺炎、気管支炎、中耳炎、急性脳症などを合併し重症化することもある。免疫が不十分な乳幼児や高齢者、基礎疾患のある場合は、特に重症化しやすいため注意が必要である。手洗いや咳エチケットによる感染対策に加え、ワクチンによる予防が重要な疾患である。ワクチンの概要インフルエンザワクチンの概要を表1に示す。インフルエンザは毎年流行する株が異なることから、WHO(世界保健機関)が推奨する株の中から、期待される有効性や供給可能量などを踏まえた上で、A型2亜型とB型2系統による4価ワクチンが製造されている。表1 インフルエンザワクチン画像を拡大する1)ワクチンの効果インフルエンザウイルスが体内に侵入し(感染)、体内でウイルスが増殖することによって一定の潜伏期間を経た後に症状が出現(発病)する。多くは自然回復するが一部は重い合併症を起こし死亡する場合もある(重症化)。インフルエンザワクチンは、ウイルスの“感染”を完全に抑えることは難しく、“発病”については一定の効果が認められているが麻疹風疹ワクチンのような高い効果はない。最も大きな効果は“重症化”を予防することである。国内の研究では、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者において34〜55%の発病を予防し、82%の死亡を阻止する効果があるとされており、6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効性は約60%と報告されている1)。2)集団免疫による効果図1はある集団における感染症の広がりを示している2)。青は免疫を持っていなくて健康な人、黄は免疫を持っていて健康な人、赤は免疫を持っていなくて感染してしまい感染力のある人である。すべての人が免疫を持っていない集団では、感染力のある人が加わるとあっという間に感染は拡大してしまう(上段)。数名しか免疫を持っていない集団では、感染症は免疫を持っていない人を介して拡大する(中央)。しかし、免疫を持っている人が大多数を占める集団では、感染は広がりにくく、免疫を持っていない少数の人にも感染しにくくなる(下段)。この効果を“集団免疫”という。インフルエンザワクチンには個々の感染、発病予防に対する効果は限定的であるが、多くの人がワクチン接種を行うことにより、集団における感染拡大、重症化予防につながるのである。図1 集団免疫による効果画像を拡大する3)接種対象者生後6ヵ月以上のすべての人が接種対象となるが、乳幼児、高齢者、基礎疾患のある人は重症化リスクが高いため特に推奨される。また、これらの人にうつす可能性がある人(家族、医療従事者、介護者、保育士など)に対しても接種が推奨される。わが国においては、65歳以上の高齢者、もしくは60〜64歳未満で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能障害があって身の回りの生活が極度に制限される人、あるいはヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に障害があって日常生活がほとんど不可能な人は、予防接種法に基づく定期接種の対象となっている。4)接種禁忌と卵アレルギーへの対応インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの既往がある場合を除いて、ほとんどの人が問題なく接種可能である。ワクチンの製造過程で卵白成分が使用されていたため、以前は卵アレルギーがある場合には要注意とされていたが、卵アレルギーのある人に重度のアレルギー反応が起こる可能性が低いことがわかっており、現在では軽度の卵アレルギーでは通常通り接種でき、重症卵アレルギーのある場合でもアレルギー対応可能な医療機関であれば接種可能とされている3)。接種スケジュール(接種時期・接種回数)インフルエンザワクチンの効果持続期間は2週間〜5ヵ月程度である。毎年流行するピークの時期は異なるが、おおよそ12月〜3月に流行するため、10月〜11月頃に接種することが望ましい。わが国におけるインフルエンザワクチン接種量と接種回数については表2の通りである。6ヵ月〜13歳未満は2回接種、13歳以上は1回接種が基本とされているが、諸外国における接種方法とは異なっている。世界保健機関(WHO)においては9歳以上の小児および健康成人では1回接種が適切である旨の見解が示されており、米国予防接種諮問委員会(ACIP)も、9歳以上は1回接種とし、生後6ヵ月〜8歳未満の乳幼児についても前年度2回接種していれば、次年度は1回のみの接種で良いとされている4)。なお、接種回数と効果に関しては、日本のインフルエンザワクチン添付文書において、6ヵ月〜3歳未満では2回接種による抗体価の上昇が認められたものの、3〜13歳未満では1回接種と2回接種とで免疫にほぼ差がなかったというデータが示されている(図2)。表2 わが国におけるインフルエンザワクチン接種量と接種回数画像を拡大する図2 年齢別中和抗体陽転率画像を拡大する日常診療で役立つポイント「ワクチン接種してもインフルエンザにかかったため、効果がないのではないか?」「一度もインフルエンザにかかったことがないから自分は大丈夫」などという理由で、ワクチン接種を希望しないケースも少なくない。前述のように個人免疫としての効果は限定的であるが、重症化しやすい集団を守るためにも、集団免疫の効果について丁寧に説明してワクチン接種につなげていきたい。接種回数については意見が分かれるところであるが、9歳以上は1回接種でも問題がなく、9歳未満の小児においても、3歳以上の場合には前年2回接種していれば1回接種でも良いかもしれない。このあたりについては、本人および家族の希望に加えて、ワクチンの需要と供給のバランスをふまえて、できるだけ多くの人がワクチン接種を受けられるように個々での判断が求められる。今後の課題・展望2020/21シーズンにおいては、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症との同時流行が危惧されており、発熱患者の判断について困難が生じてくるものと予想される。現時点において新型コロナウイルス感染症はワクチンでの予防が難しいため、ワクチンのあるインフルエンザの流行をできる限り抑えることが重要である。インフルエンザの感染拡大、重症化予防のためにも、できるだけ多くの人に対して積極的にワクチン接種を行い、地域における集団免疫を獲得できるようにして頂きたい。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト予防接種に関するQ&A集.日本ワクチン産業協会1)インフルエンザQ&A.厚生労働省2)Building Trust in Vaccines.NIH(アメリカ国立衛生研究所).3)Flu Vaccine and People with egg allergies.CDC(米国疾病管理予防センター).4)Grohskopf LA,et al. MMWR Recomm Rep.2020;69:1-24.5)インフルエンザHAワクチン(商品名:ビケンHA)添付文書講師紹介

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COVID-19の家庭内感染のリスク因子~54研究のメタ解析

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の家庭(同居世帯)内の感染リスクは、他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV)より2~4倍高く、「初発患者が症状あり」「接触者が18歳以上」「初発患者の配偶者」「家庭内の接触人数が1人」がリスク因子であることが、米国・フロリダ大学のZachary J. Madewell氏らのメタ解析で示された。JAMA Network Open誌2020年12月14日号に掲載。 著者らは、PubMedにおいて2020年10月19日までの論文を検索し、系統的レビューおよびメタ解析を行った。主要評価項目は、SARS-CoV-2および他のコロナウイルスにおける、共変量(接触者が家庭もしくは別居家族を含めた家族、初発患者の症状の有無、初発患者が18歳以上もしくは18歳未満、接触者の性別、初発患者との関係、初発患者が成人もしくは子供、初発患者の性別、家庭内の接触人数)で分類し推定した2次発症率。 主な結果は以下のとおり。・家庭内2次発症者7万7,758例を報告した54研究を特定した。・SARS-CoV-2の推定家庭内2次発症率(95%信頼区間)は16.6%(14.0~19.3)で、SARS-CoVの7.5%(4.8~10.7)およびMERS-CoVの4.7%(0.9~10.7)より高かった。・家庭内2次発症率(95%信頼区間)に差がみられた共変量は以下のとおり。 - 初発患者の症状:あり 18.0%(14.2~22.1)、なし 0.7%(0~4.9) - 接触者の年齢:18歳以上 28.3%(20.2~37.1)、18歳未満 16.8%(12.3~21.7) - 初発患者との関係:配偶者 37.8%(25.8~50.5)、他の家族 17.8%(11.7~24.8) - 家庭内の接触人数:1人 41.5%(31.7~51.7)、3人以上 22.8%(13.6〜33.5) 著者らは「感染が疑われる、または確認された人が自宅隔離されていることを考えると、家庭がSARS-CoV-2感染の重要な場となり続けることが示唆される」としている。

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コロナワクチンが来る前に読め!【Dr.倉原の“俺の本棚”】第38回

【第38回】コロナワクチンが来る前に読め!峰先生は、アメリカの国立研究機関で博士研究員を務める病理医で、ウイルス研究者です。Twitterをやっている人にとって、通称「ばぶ」先生の愛称で親しまれています。赤ちゃんっぽい感じですが、ウイルス学に関してはオリンピックアスリートくらい強いです。『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』峰 宗太郎・山中 浩之/著. 日本経済新聞出版. 2020年この本は、一般向けと医療従事者向けのちょうど間くらいの温度の内容で、新型コロナウイルスの核酸ワクチンについてあまり知らない人は必読です。私も、既存のワクチンとどう違うのかがわかっておらず、とりあえず冷凍が必要だという知識しかありませんでした。後半はワクチンから少し離れて、PCR検査について触れられています。とくに、名古屋市立大学大学院医学研究科教授の鈴木 貞夫先生との対談では、PCR検査を広く行うことについて鋭い指摘あります。間違った解釈がなぜ生まれるのか、ということを「アイスクリーム理論」とともに丁寧に説明しています。「医療従事者には白黒をつけるのが好きな人がたくさんいて、検査をすれば白か黒か分かると思っている」というご批判はその通りであろうと思います。あれだけ医学部で勉強したのに、いまだに電子カルテに表示される「異常値の色」に振り回されている医師がいるのですから。ケアネットは間違った情報を載せることはまずないと思いますが、世の中にはトンデモ医師が馬にまたがって似非ナポレオンのごとく先導して、おかしな持論を展開するという現象が存在します。私はこういう誤った情報に何かしら罰則を設けるべきだと思っています。世の中には「金と命」(YMYL:Your Money or Your Life)をテーマにして荒稼ぎしているあくどい連中がいますが、悪気がなく本気でトンデモ理論に漬かってしまった医師もいます。これが一番タチが悪い。ところで、峰先生の一番嫌いな言葉は「免疫力」です。曰く、「複雑な免疫システムを単純なものだと誤解させてしまうところもあるし、実際にはできないことをできるかのように誤認させるから」です。私がもし「免疫力を高める10の呼吸法」なんていう本を出したら、エライコッチャです。気を付けねば!『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』峰 宗太郎・山中 浩之 /著出版社名日本経済新聞出版定価本体850円+税サイズ新書判刊行年2020年

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第40回 専門家のコメントに嫌気も、飲食業界の苦痛と叫びの“真意”

この連載の前号が公開された1月8日、東京都と隣接する神奈川県、千葉県、埼玉県の一都三県に新型インフルエンザ等特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言が発出されたが、1月14日には感染者増加が伝えられる栃木県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県へと宣言対象地域が拡大された。これにより該当地域では2月7日まで飲食店の営業時間短縮要請(以下、時短要請)を柱に、テレワークによる出勤者7割減、午後8時以降の外出自粛とする感染防止対策が実行に移された。2度目の緊急事態宣言発出後、私は夜8時過ぎの自分の最寄駅周辺を歩いてみた。実は1度目の緊急事態宣言時、8月3日からの東京都独自による飲食店への午後10時までの時短要請(当初8月31日までの予定だったが、9月15日まで延長)、11月28日からの東京都独自の2度目の午後10時までの時短要請(当初12月17日までの予定だったが、2021年1月11日まで延長)も同様に時短要請を超えた時間前後の町の様子を定点観測している。なお、「不要不急の外出自粛なのにけしからん」というご意見もあろうかとは思うが、こうした町の様子を確認することも私の仕事なのでご理解いただきたいと思う。まず1回目の緊急事態宣言時、私が最寄り駅から半径1km圏を地図上でプロットし、それを基に徒歩で確認(雑居ビルの場合は2、3階も実際に踏破。ただし、店で飲食はしない)した範囲では、営業を確認できたのは9軒だった。その内訳は居酒屋、カラオケバー、ガールズバーが各2軒、焼肉店、ショットバー、洋食店が各1軒である。東京都独自の1回目の時短でも緊急事態宣言時とまったく同じ9軒が営業を続け、東京都独自の2回目の時短要請時には居酒屋が1軒増えて計10軒となった。この1軒の増加の際は「さすがに自粛疲れなのだろう」と勝手に推測していた。このため1都3県の知事が国に緊急事態宣言の発出を要請した際にも、自宅最寄駅周辺の飲食店の営業状況は宣言が出ても変わらないか、下手をすると逆に増えてしまうのではないかとすら思っていた。さて実際、1月8日午後9時ごろに町を歩いた様子はどのようなものだったのか?カラオケバー1軒、ガールズバー2軒を除き、すべて店を閉めていた。うち居酒屋1軒は緊急事態宣言中の完全休業となった。そのうち1軒の居酒屋の店主は顔見知り程度ではあるのだが、たまたま街中で出くわした時に立ち話程度だったが、今回はなぜ時短要請に応じたのかとストレートに聞いてみた。その答えは次のようなものだった。「簡単に言えば1日6万円と言う協力金はある程度は魅力でしたね。そもそも1回目の緊急事態宣言以後、何度も時短要請があった影響で、時短要請がなくとも昔と比べて徐々に夜遅くの客足が減少していたのは事実。実際には東京都による2度目の時短要請時にはそれに応じた場合の協力金は時短時間分の売上をそこそこに補填できるレベルに近づいていました。でも仕入れ先のこともあるので続けていました。今回は協力金も高いうえに、連日1,000人超の感染者が報告されるとやっぱり営業していていいのかとなりました」さもありなんではあるのだが、いまひとつすっきりしない。これは何のエビデンスもない、四半世紀超の記者経験のカンなのだが、これまである意味意地を張って時短に従わずにやってきた割に答えがキレイすぎる感じがしてならないのだ。とはいえ、立ち話程度の時間しかなく、また突っ込んで聞けるほどの関係もないので、これ以上は聞くことはできなかった。そこで多少は話を聞ける飲食店経営者数人(地域は東京都以外の地方都市もあり)に電話やオンラインでこの件について意見を聞いてみた。ちなみに話を聞いたこれらの人はいずれも緊急事態宣言や自治体独自の要請による時短営業は守ってきている人たちである。時短に応じない判断をした飲食店経営者の心理については推測が中心となる。彼らがほぼ一様に示した反応はやはり今回の東京都の場合の協力金の高さである。また、初耳の話としては従業員対策という話があった。どういうことか。地方の政令指定都市で焼肉店を営むAさんが語ってくれた。「いまは飲食業界も人手不足。アルバイトを募集すれば応募はありますが、短期間で辞めてしまうなど継続的な働き手の確保が難しい。このような状況下で、従業員やアルバイトが『コロナが怖い』と逃げ出したならば、店を開けることすらままならなくなる。時短に応じれば、従業員やアルバイトも経営者が感染対策に配慮しているとも感じます。彼らに逃げられないためにも時短に応じる必要はあるわけです。実際にそうした話は聞きますよ」先日、大相撲の序二段力士・琴貫鐵(ことかんてつ)が新型コロナ感染が怖いため休場を申し出たものの、日本相撲協会側が認めなかったことで本人が引退を表明したと報じられたが、それとほぼ同様のものと言える。この琴貫鐵の一件については賛否両論あるようだが、人によって何が怖いかは異なるため、私個人は琴貫鐵に同情的な立場だ。さてこの数人に聞いた時に驚くほど一致した意見もあった。ただ、これはエビデンスもない各人の推測に過ぎない。ただ、その推測がこちらから誘導することもなく、話を聞いた全員から出てきたことには驚いた。それはただ単に「もうここまでくると心が折れちゃったんじゃないかな」というものだった。地方のある県庁所在地で居酒屋を営むBさんは次のように語る。「今回の新型コロナのニュースで感染経路について、ことあるごとに飲食店、飲食店って言われちゃうでしょう。とくに医療の最前線にいる専門家の人たちが『会食は控えて欲しい』って何度も繰り返し言いますよね。それは確かに医学的には、飲食店が感染のポータルではあるんでしょう。でもね、じゃあ私たちはウイルスばらまいているんですか? 料理にウイルス振りかけて出しているわけでも、換気扇のそばにウイルスを設置して店内にばらまいているわけでもないですよ。むしろ毎回、客が退店したら、そのたびにテーブルや座席を消毒して最大限注意を払っていますよ。うちの店で感染が発生したら、それは客が店に持ち込んでいる可能性が高いとすらいえます。ですが今の国や自治体の発信、専門家のメッセージ、報道での伝えられ方を聞いていると、私たちはもはや社会の敵であるかのように聞こえてしまいます。そんな中で時短を要請されれば、半ばやけっぱちで『ああ、そうですか』と従ってしまいますね」Bさんは最近、テレビでコロナ関連ニュースを確認することは止め、新聞を読むようにしているという。それはテレビのニュースで発せられる「飲食店」というキーワードを耳にするのが苦痛でたまらないからだという。時短営業を強いられ業績が悪化する飲食店は紛れもないコロナ禍の被害者である。しかし、このコロナ禍を抑えるために私たちをはじめ多くの人が発している悪気はないメッセージにも彼らの多くが傷ついている。新年早々の1回目の本連載で、社会の分断を危惧する旨を執筆したが、この飲食店経営者の人たちとのやり取りでまだまだ自分が鈍感だったことに改めて気づかされている。

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新型コロナ、再入院しやすい患者の特徴は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初発感染で入退院した患者のうち、9%が退院後2ヵ月以内に同じ病院に再入院していたことが明らかになった。また、複数の病院で患者の1.6%が再入院していた。再入院の危険因子には、65歳以上、特定の慢性疾患の既往、COVID-19による初回入院以前の3ヵ月以内の入院、高度看護施設(SNF:skilled nursing facility)への退院または在宅医療への切り替えが含まれていた。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)11月13日号での報告。 CDC研究班は、Premier Healthcare Database の電子健康記録と管理データを使用し、退院、再入院のパターン、およびCOVID-19による初回入退院後の再入院に関連する人口統計学的および臨床的特徴を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2020年3~7月の期間にCOVID-19で初回入院した12万6,137例のうち、15%が初回入院中に死亡した。・生存患者10万6,543例(85%)のうち、9,504例(9%)は、2020年8月までの退院から2ヵ月以内に同じ病院に再入院していた。・初回入院後に退院した患者の1.6%で、複数回の再入院が発生した。・再入院は、自宅退院した患者(7%)よりも、SNFへ退院した患者(15%)、または在宅医療を要する患者(12%)でより頻繁に発生した。・65歳以上、特定の慢性疾患の既往、初回入院以前の3ヵ月以内の入院、および初回入院からの退院がSNFまたは在宅診療を要する退院であった場合、再入院の確率は年齢とともに増加した。 研究者らは、再入院の頻度とその危険因子を理解することで、臨床診療、退院の決定、およびCOVID-19患者の急性およびフォローアップケアに必要なリソースを確保するためのヘルスケア計画など、公衆衛生における優先順位を知ることができるとしている。

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COPD急性増悪、入院患者の約6%が肺塞栓症/JAMA

 呼吸器症状の急性増悪で入院した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、あらかじめ定めた診断アルゴリズムを用いると、5.9%の患者に肺塞栓症が検出された。フランス・Centre Hospitalo-Universitaire de BrestのFrancis Couturaud氏らが、同国内の病院7施設で実施した前向き多施設共同横断研究「prevalence of symptomatic Pulmonary Embolism in Patients With an Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease study:PEP研究」の結果を報告した。COPDで呼吸器症状が急性増悪した患者における肺塞栓症の有病率はこれまで明らかになっておらず、COPDの急性増悪で入院した患者に対していつどのように肺塞栓症のスクリーニングをするかが課題であった。JAMA誌2021年1月5日号掲載の報告。COPD急性増悪による入院患者を肺塞栓症診断アルゴリズムで評価 研究グループは、2014年1月~2017年5月の間に呼吸器症状の急性増悪のため入院したCOPD患者を対象に、あらかじめ定めた肺塞栓症診断アルゴリズム(改訂ジュネーブスコアによる検査前確率判定、Dダイマー検査、スパイラルCT肺血管造影+下肢圧迫超音波検査)を入院48時間以内に適用し、3ヵ月間追跡調査した(追跡調査最終日は2017年8月22日)。 主要評価項目は、入院48時間以内に診断された肺塞栓症であった。主な副次評価項目は、入院時に静脈血栓塞栓症を有していないとして抗凝固療法を受けなかった患者における3ヵ月間の肺塞栓症とした。その他の評価項目は、入院時および3ヵ月間の静脈血栓塞栓症(肺塞栓症または深部静脈血栓症)、ならびに3ヵ月間の死亡(静脈血栓塞栓症が臨床的に疑われるかどうかにかかわらない)とした。COPD急性増悪で入院後、2日以内に約6%で肺塞栓症が確認 COPD急性増悪のため入院した患者の計740例(平均[±SD]年齢68.2±10.9歳、女性274例[37.0%])が登録された。このうち、入院48時間以内に肺塞栓症が確認されたのは44例(5.9%、95%信頼区間[CI]:4.5~7.9%)であった。 COPD急性増悪による入院時に静脈血栓塞栓症を有していないと判定され抗凝固療法を受けなかった患者670例において、3ヵ月間の追跡期間中に肺塞栓症が確認されたのは5例(0.7%、95%CI:0.3~1.7%)で、このうち3例は肺塞栓症に関連して死亡した。 全例における3ヵ月死亡率は、6.8%であった(50/740例、95%CI:5.2~8.8%)。追跡期間中に死亡した患者の割合は、入院時静脈血栓塞栓症有病者が非有病者と比較して高かった(25.9%[14/54例]vs.5.2%[36/686例]、リスク差:20.7%、95%CI:10.7~33.8%、p<0.001)。 静脈血栓塞栓症の有病率は、肺塞栓症が疑われた患者(299例)で11.7%(95%CI:8.6~15.9%)、肺塞栓症が疑われなかった患者(441例)で4.3%(95%CI:2.8~6.6%)であった。 著者は、研究の限界として、呼吸器症状の急性増悪が軽度であった患者や重度呼吸不全患者は過小評価されている可能性があること、17.6%の患者は肺塞栓症の初回評価を完遂できていないことなどを挙げたうえで、「COPD患者における肺塞栓症の体系的なスクリーニングが果たしうる役割について、さらなる研究により理解する必要がある」とまとめている。

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高齢COVID-19患者、72時間以内の回復期血漿投与で重症化半減/NEJM

 重症化リスクの高い65歳以上の軽症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、発症後早期の高力価回復期血漿療法により、COVID-19の重症化が抑制されることが明らかとなった。アルゼンチン・Fundacion INFANTのRomina Libster氏らが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)特異的IgG抗体価の高い回復期血漿の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。COVID-19の進行を抑える治療はまだ見つかっておらず、これまで入院患者への回復期血漿の投与は成功していない。研究グループは、抗体は疾患の経過の早期に投与される必要があるのではと考え、軽度の症状発症後72時間以内に回復期血漿療法を開始する検討を行った。NEJM誌オンライン版2021年1月6日号掲載の報告。発症後72時間以内に回復期血漿またはプラセボを投与し、重症化を比較 研究グループは、軽度のCOVID-19症状を発症してから72時間以内の高齢患者(75歳以上、または1つ以上の合併症を有する65~74歳)を、回復期血漿(SARS-CoV-2スパイク蛋白に対するIgG力価が1:1,000以上の高IgG抗体価250mL)投与群とプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、重症呼吸器症状(呼吸数30回/分以上、または室内気酸素飽和度93%未満、あるいはその両方)の発症とした。 本試験は、試験地域のCOVID-19患者が減少して安定した被験者登録が事実上不可能となったため、計画症例数の76%の時点で早期中止となった(試験期間:2020年6月4日~10月25日)。重症化率は、回復期血漿療法16%、プラセボ31% 合計160例が回復期血漿群(80例)とプラセボ群(80例)に割り付けられた。 intention-to-treat集団において、重症呼吸器症状を発症した患者の割合は、回復期血漿群が16%(13/80例)、プラセボ群が31%(25/80例)であり、回復期血漿群ではプラセボ群に比べて重症呼吸器症状の発症リスクが48%減少した(相対リスク:0.52、95%信頼区間[CI]:0.29~0.94、p=0.03)。 回復期血漿またはプラセボを投与する前に主要評価項目のイベントが確認された6例を除いた修正intention-to-treat集団では、回復期血漿群でより大きな効果が示唆された(相対リスク:0.40、95%CI:0.20~0.81)。 安全性については、非自発的な有害事象は観察されなかった。

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片頭痛や激しい頭痛の有病率~米国での調査

 片頭痛や激しい頭痛による負荷に関して最新かつ正確に推定することは、働く人のニーズや健康資源を考える際のエビデンスに基づく意思決定において重要となる。米国・ハーバード大学医学大学院のRebecca Burch氏らは、米国政府の健康調査データを用いて、片頭痛や激しい頭痛の有病率、傾向および年齢、性別、経済状態による影響について調査を行った。Headache誌オンライン版2020年12月21日号の報告。 公開されている最新の統計情報をNational Hospital Ambulatory Medical Care Survey、National Ambulatory Medical Care Survey、National Health Interview Surveyより特定した。性別、年齢、経済状況の統計データに重点を置き、各研究より関連情報を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・米国における片頭痛や激しい頭痛の年齢調整有病率は、何年にもわたり安定していた。・2018年の成人における片頭痛や激しい頭痛の年齢調整有病率は、15.9%であった。・性別比も安定しており、男性で10.7%、女性で21.0%であった。・片頭痛は公衆衛生上の重要な問題であり、2016年には約400万人が救急科を受診していた。頭痛は、救急受診理由の5番目に位置しており、15~64歳の女性に至っては、受診理由の3番目であった。・片頭痛は、外来診療において430万人以上の受診があった。・片頭痛や激しい頭痛を有する成人の多くは、不利益を被っていた。・たとえば、2018年には、片頭痛を有する米国成人の約40%は失業しており、同様の割合が、貧困または貧困に近い層として分類された。・約5人に1人は健康保険に加入しておらず、約3人に1人は高等教育以下であった。 著者らは「片頭痛や激しい頭痛は、米国における公衆衛生上の重大な問題であり、出産可能年齢の女性や社会経済的地位の低い女性では、最も大きな影響を及ぼす。そして、頭痛患者の多くは、社会経済的に不利益を被っていた。現在の新型コロナウイルスまん延による経済への影響は、これらの問題を悪化させる可能性がある。影響の大きな慢性疼痛に対する注目が集まり、治療提供や研究のための資金が見直されることは、将来の疾患負荷を軽減するために重要である」としている。

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Moderna社mRNAワクチン、3万例超で94.1%の有効性/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する、Modernaのワクチン「mRNA-1273」の有効性(重症化を含む発症の予防効果)は94.1%に上ることが、3万例超を対象にした第III相無作為化プラセボ対照試験で明らかになった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLindsey R. Baden氏らが報告した。安全性に対する懸念は、一過性の局所および全身性の反応以外に認められなかったという。mRNA-1273ワクチンは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の膜融合前安定化スパイクタンパク質をコードする脂質ナノ粒子カプセル化mRNAベースのワクチンで、2020年12月に米国では緊急使用の承認が発表されている。NEJM誌オンライン版2020年12月30日号掲載の報告。投与2回目から2週間以降の感染予防効果を検証 試験は全米99ヵ所の医療機関を通じて、18歳以上でSARS-CoV-2感染や同感染による合併症の高リスク者を対象に、観察者ブラインド化にて行われた。 研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはmRNA-1273(100μg)を、もう一方にはプラセボを、28日間隔で2回筋肉注射した。初回接種は2020年7月27日~10月23日に行われた。 主要エンドポイントは、2回目投与から14日以降のCOVID-19発症の予防で、SARS-CoV-2感染歴のない被験者を対象に評価した。mRNA-1273群の症候性COVID-19発生率、3.3件/1,000人年 ボランティア被験者数は3万420例で、mRNA-1273群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた(各群1万5,210例)。ベースラインでSARS-CoV-2感染のエビデンスが認められたのは2.2%。被験者の96%超が2回接種を受けた。 2回目投与から14日以降に症候性COVID-19が認められたのは、プラセボ群185例(56.5件/1,000人年、95%信頼区間[CI]:48.7~65.3)に対し、mRNA-1273群では11例(3.3件/1,000人年、1.7~6.0)で、ワクチン有効率は94.1%(95%CI:89.3~96.8、p<0.001)だった。 1回目投与から14日以降の症候性COVID-19など主な副次解析や、ベースラインでSARS-CoV-2感染のエビデンスが認められた者を含めた評価、65歳以上に限定した評価でも、有効性は同等であることが認められた。 重症COVID-19の発生は30例(うち1例が死亡)で、全例がプラセボ群だった。接種後の中等度で一過性の反応原性が発現する頻度は、mRNA-1273群で高率だった。重篤な有害イベントはまれで、発現頻度は両群で同程度だった。

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第40回 三重大元教授逮捕で感じた医師の「プロフェッショナル・オートノミー」の脆弱さ

重症者病床1床あたり1,950万円で民間は動くか?こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。緊急事態宣⾔を機に、政府はやっと民間病院に対して、コロナ病床確保の協力を要請する姿勢を明確に打ち出し始めました。国は、緊急事態宣⾔が再発令された1都3県で医療機関が新型コロナの対応病床を新たに増やした場合、従来の補助⾦に1床当たり450万円を追加。それ以外の道府県での増床に関しては1床当たり300万円を上乗せすることを決めました。これで、重症者病床1床あたりの補助額は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県では1,950万円に、それ以外の道府県では1,800万円になります。こうした経済的誘導の施策を踏まえ、⽥村 憲久厚⽣労働大臣は、8⽇の閣議後の記者会⾒で「今までコロナの患者に対応していない医療機関も新たに対応いただければありがたい」と話しました。さらに田村厚労大臣は、出演した10日のフジテレビの「日曜報道 THE PRIME」において、「医療経営には、不安をなるべく持っていただかないようにという、こういうもの(補助金)も用意しながら、厚労省、また自治体、協力して民間病院の皆さま方に、なんとか力を貸していただきたいというお願いをさせていただいて、なんとかコロナ病床を増やしていこうと努力をしている」と話し、コロナ患者用の病床を確保するために、民間病院に協力を求めることを明言しました。現状、有事であっても民間病院に対しては“お願い”ベースでしか病床確保を要請できないのが、日本の医療提供体制の一つのネックだと言われています。こうした要請を受け、年末に国民に感染防止対策に協力を呼びかけた日本医師会をはじめとする医療関係団体が、具体的にどんなアクションを起こすのか、注視したいと思います。お騒がせの三重大病院臨床麻酔部さて、今回はまたまた三重大臨床麻酔部の話を取り上げます。三重大臨床麻酔部についてはこの連載でも、「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」でランジオロール塩酸塩の不正請求が発覚し、医局崩壊が再び始まるであろうことについて、「第36回 元准教授逮捕の三重大・臨床麻酔部不正請求事件 法律上の罪より重い麻酔科崩壊の罪」では、48歳の元准教授の男が公電磁的記録不正作出・同供用の疑いで津地方検察庁に逮捕されたことについて書きました。今回、54歳の元教授(先に逮捕された元准教授の上司)が、別件の贈収賄事件でとうとう逮捕されました。しかも、昨年問題となったランジオロール塩酸塩の不正請求関連ではなく、医療機器の納入に便宜を図る見返りとして、業者に現金を元教授が代表を務める法人の口座に振り込ませた疑いによる逮捕です。別件の捜査をしっかりと進めていた愛知・三重の両県警朝日新聞や日本経済新聞などの報道によると、愛知・三重の両県警は1月6日、三重大病院臨床麻酔部の元教授ら医師2人を第三者供賄の疑いで逮捕しました。同時に贈賄容疑で日本光電工業の中部支店の社員3人も逮捕しました。元教授の逮捕容疑は2019年8月、病院で用いる生体情報モニターを日本光電製に順次入れ替えるよう取り計らう見返りに、自身が代表理事を務める一般社団法人の口座に200万円を振り込ませた疑いです。逮捕されたもう一人の医師は臨床麻酔部の元講師であり、一般社団法人の監事を務めていました。元教授には入札の技術審査の権限があり、大学に日本光電の機器が確実に受注できるような仕様書を提出。その結果、2019年以降に3回あった生体情報モニターの一般競争入札に参加したのは同社製を扱う業者1社のみだったとのこと。各紙報道によれば、三重大病院は6年間で約1億7,000万円をかけてモニターを入れ替える計画で、日本光電の製品は2019年1月~2020年7月にかけて合計約3,800万円分を落札した、ということです。逮捕された日本光電社員については、落札業者に依頼し、モニターの落札当日に200万円を一般社団法人の口座へ入金した疑いが持たれています。忘れていた頃に、話題となった薬剤の不正請求ではなく、まったくの別件、医療機器導入に関する贈収賄で逮捕されるとは、この元教授、なかなかの“やり手”だったようです。ランジオロール塩酸塩の不正請求で捜査を進めていたのは三重県警ですが、今回の事件では愛知県警との合同捜査本部が設けられ、逮捕も両県警によるものです(贈賄側の日本光電の中部支店が名古屋だからでしょう)。ランジオロール塩酸塩の不正請求事件を機に捜査が始まったのか、それ以前からさまざまな情報が警察に寄せられ、立件できる事案のみ捜査が進められたかは不明ですが、このコロナ禍の中、正月明け早々に逮捕に踏み切ったことに捜査本部の意気込みが感じられます。元教授が問われた「第三者供賄罪」とは?1月7日付の日本経済新聞は、元教授が賄賂の受け皿のために一般社団法人を設立した疑いがある、と書いています。同紙によれば、「法人は『地域医療を担う麻酔科医に高度な専門性を与えること』を目的に、19年5月末に設立された。翌6月に口座を開設し、別の企業からの入金も含め計400万円が振り込まれた。このうち約250万円は同容疑者が臨床麻酔部の同僚らとの飲食代に充てたとみられる」とのこと。さらに、「ほかの複数の業者にも同じような発言で現金提供を求めていた。両県警は法人を受け皿にすることで使途が自由な資金を集める狙いがあったとみている」とのことです。元教授の逮捕容疑は「第三者供賄」です。これは公務員が職務に関して請託(依頼)を受け、自分以外の第三者、この場合は一般社団法人を受領者として金品などの賄賂を供与させた場合に成立する罪です。元教授は国立大学の職員、つまり公務員であったため、同罪に問われることになったわけです。整形外科医巨額リベート事件との違いそう言えば本連載の「第35回 著名病院の整形外科医に巨額リベート、朝日スクープを他紙が追わない理由とは?」では、米国の医療機器メーカー・グローバスメディカルの日本法人が、同社の機器を購入した病院の医師に対し、売上の10%前後をキックバックしていた事件を取り上げました。この事件でも、医師本人ではなく、各医師や親族らが設立した会社に振り込むかたちでキックバックが行われていました。しかし、彼らのケースで警察は動いていません。報道等によれば、金銭を受け取った医師らは東京慈恵会医科大学病院や岡山済生会病院など民間の医療機関の所属であり、第三者供賄などの贈収賄の罪が成立しないからだとみられます。そう考えると、グローバスメディカルの日本法人は、公務員の医師を対象から除き、民間の大病院の医師だけをターゲットとしてキックバックのスキームを活用していたのかもしれません。国公立病院なら逮捕され、民間病院なら逮捕されないという不公平は、刑法の決めごとなので仕方ありません。ただ、第35回でも書いたように、公民限らず医療機関は購入した医療機器や医療器具を保険診療で使用することで診療報酬を得て、採算を取り、利益を得ます。その利益をまた機器購入の代金に回すわけですが、もし機器の価格にリベートが予め含まれているとしたら、それは大きな問題でしょう。麻酔科学会が理事長声明ところで、今回の元教授に逮捕に関連して、日本麻酔科学会は理事長名で「本学会会員の逮捕報道に関する理事長声明」を1月6日にサイトで公表しました。それは、以下のような内容です。本日、本学会会員の医師を含む4名が贈収賄の疑いにより逮捕されたと報道されました。この会員の所属施設ではすでに同僚が公電磁的記録不正作出・同供用容疑で逮捕されております。被疑事実の真偽については、今後の捜査及び裁判の進捗を待つことになりますが、そのことが真実であるとすれば、そのような行為は到底許されるものではなく、まことに残念というほかありません。会員の皆様におかれましては、あらためて高い倫理観を持ち、各人が責任ある行動をとっていただけますようお願いいたします。医師が起こした刑事事件で学会が声明を出すのは異例のことだと言えます。「高い倫理観を持ち、各人が責任ある行動を」とのことですが、三重大病院の一連の事件は、医師の「プロフェッショナル・オートノミー(専門職自律)」がいかに頼りなく、脆弱なものかを改めて感じさせるものでした。

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COVID-19外来患者、中和抗体カクテルでウイルス量低減/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の中和抗体カクテル「REGN-COV2」は、ウイルス量を低減する効果があることが示された。免疫反応が起きる前の患者、あるいはベースラインのウイルス量が高い患者でより大きな効果が認められ、安全性アウトカムは、REGN-COV2投与群とプラセボ投与群で類似していたという。米国・Regeneron PharmaceuticalsのDavid M. Weinreich氏らが、COVID-19外来患者を対象とした進行中の第I~III相臨床試験の中間解析の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2020年12月17日号掲載の報告。多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照で、ウイルス量の変化を評価 COVID-19の合併症や死亡は、高ウイルス量に関連している可能性が示唆されている。REGN-COV2はウイルス負荷を減らす治療アプローチとして開発が進められている抗体カクテルで、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)スパイクタンパク質の受容体結合ドメインをターゲットとする2つの非競合の中和ヒトIgG1抗体から成り、ウイルスがACE2受容体を介してヒトの細胞へ侵入するのを阻止する。“カクテル”のアプローチは、呼吸器合胞体ウイルスへの単一抗体投与で治療抵抗性変異ウイルスの出現を経験したことによるもので、REGN-COV2の前臨床試験では、変異ウイルスの急速出現は回避されたことが確認されている。 第I~III相試験は多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照にて、COVID-19外来患者を対象にREGN-COV2の有効性と安全性の評価などを目的として現在も進行中である。 被験者は、無作為に1対1対1の割合で3群に割り付けられ、それぞれプラセボ、REGN-COV2 2.4g、同8.0gの投与を受けた。また、SARS-CoV-2に対する内因性免疫反応(血清抗体陽性または同陰性)について、ベースラインで前向きに特徴付けがされた。 キーエンドポイントは、ベースラインから1~7日目までのウイルス量の時間加重平均変化、29日目までに1回以上COVID-19関連で受診した患者の割合などであった。安全性は、全被験者を対象に評価した。ベースライン血清抗体陰性群で-0.56 log10/mL、全試験集団で-0.41 log10/mL 今回の中間解析は、第I~II相試験中に登録された275例(REGN-COV2 2.4g群92例、同8.0g群90例、プラセボ群93例)について、2020年9月4日時点で評価したものである。 ベースラインから1~7日目までのウイルス量の時間加重平均変化の最小二乗平均差は、ベースライン血清抗体陰性群で-0.56 log10/mL(95%信頼区間[CI]:-1.02~-0.11)、全試験集団で-0.41 log10/mL(95%CI:-0.71~-0.10)であった。 全試験集団で、1回以上COVID-19関連で受診した患者の割合は、プラセボ群6%、REGN-COV2投与統合群3%であった。ベースライン血清抗体陰性群では、プラセボ群15%、REGN-COV2投与統合群6%であった(群間差:-9ポイント、95%CI:-29~11)。 過敏反応、輸液関連反応、その他有害事象の発現頻度は、REGN-COV2投与統合群とプラセボ群で同程度であった。

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人工呼吸器未装着COVID-19入院患者、トシリズマブで重症化を抑制/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎入院患者(人工呼吸器は未装着)において、トシリズマブは人工呼吸器装着または死亡の複合アウトカムへの進行を減らす可能性が示されたが、生存率は改善しなかった。また、新たな安全性シグナルは確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のCarlos Salama氏らが389例を対象に行った無作為化試験の結果で、NEJM誌2021年1月7日号で発表された。COVID-19肺炎ではしばしば強い炎症状態が認められる。COVID-19の発生率には、十分な医療サービスが受けられない人種および民族のマイノリティ集団における不均衡がみられるが、これらの集団のCOVID-19肺炎入院患者について、IL-6受容体モノクローナル抗体トシリズマブの安全性と有効性は確認されていなかった。高リスク・マイノリティ対象に、安全性と有効性をプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、COVID-19肺炎で入院する人工呼吸器未装着の患者を対象に、トシリズマブの安全性と有効性を評価する無作為化試験を行った。 患者を2対1の割合で、標準治療に加えてトシリズマブ(8mg/kg体重を静脈内投与)またはプラセボのいずれかを1回または2回投与する群に、無作為に割り付け追跡評価した。主要アウトカムは、28日目までの人工呼吸器装着または死亡であった。 試験地の選択では、高リスクおよびマイノリティ集団が登録されるように注意が払われた。28日目までの人工呼吸器装着または死亡、トシリズマブ群12.0%、プラセボ群19.3% 389例が無作為化を受け、修正intention-to-treat集団にはトシリズマブ群249例、プラセボ群128例が含まれた。56.0%がヒスパニックまたはラテン系で、14.9%が黒人、12.7%がネイティブ・アメリカンまたはアラスカ・ネイティブ、12.7%が非ヒスパニック系白人、3.7%がその他または人種/民族不明であった。 28日目までの人工呼吸器装着または死亡患者の累積割合は、トシリズマブ群12.0%(95%信頼区間[CI]:8.5~16.9)、プラセボ群19.3%(13.3~27.4)であった(人工呼吸器装着または死亡のハザード比[HR]:0.56、95%CI:0.33~0.97、log-rank検定のp=0.04)。 time-to-event解析で評価した臨床的失敗は、プラセボ群よりもトシリズマブ群で良好であった(HR:0.55、95%CI:0.33~0.93)。 一方で28日目までの全死因死亡の発生は、トシリズマブ群10.4%、プラセボ群8.6%であった(加重群間差:2.0ポイント、95%CI:-5.2~7.8)。 安全性評価集団における重篤な有害事象の発生率は、トシリズマブ群15.2%(38/250例)、プラセボ群19.7%(25/127例)であった。

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