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摂食障害に対する精神薬理学的介入~メタ解析

 神経性やせ症(AN)、神経性過食症(BN)、過食性障害(BED)といった、主な摂食障害の精神薬理学に関連する体重変化および感情の精神病理学的アウトカムを評価するため、イタリア・University of Naples Federico IIのMichele Fornaro氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、摂食障害ごとに薬剤の有効性が異なることが確認された。著者は、今後、体重以外のさまざまな精神病理学的および心臓代謝系のアウトカムを記録する研究、とくに確立された心理療法の介入を検証する研究が求められる、としている。Journal of Affective Disorders誌2023年10月1日号の報告。 対象は、検証済みの基準で診断された摂食障害に対するあらゆる精神薬理学的介入を文書化し、体重および精神病理学的変化を報告したRCT。キーワードを「神経性やせ症」「神経性過食症」「過食性障害」「抗うつ薬」「抗精神病薬」「気分安定薬」とし、2022年8月31日までに公表された研究をPubMed、Scopus、ClinicalTrials.govより検索した。言語制限は設けなかった。 主な結果は以下のとおり。・特定された5,122件のうち、203件の全文レビューを行った。・質的統合を行った62件(AN:22件、BN:23件、BED:17件)のうち、22件(AN:9件、BN:10件、BED:3件)をメタ解析に含めた。・ANにおけるBMIの増加について、オランザピンはプラセボよりも良好であったが(Hedges'g=0.283、95%CI=0.051~0.515、I2=0%、p=0.017)、fluoxetineでは効果が確認されなかった(Hedges'g=0.351、95%CI=-0.248~0.95、I2=63.37%、p=0.251)。・BNに対するfluoxetineの使用では、体重の有意な変化は認められず(Hedges'g=0.147、95%CI=-0.157~0.451、I2=0%、p=0.343)、過食(Hedges'g=0.203、95%CI=0.007~0.399、I2=0%、p=0.042)やパージングエピソード(Hedges'g=0.328、95%CI=-0.061~0.717、I2=58.97%、p=0.099)の減少が認められた。・BEDに対するリスデキサンフェタミンの使用では、体重(Hedges'g=0.259、95%CI=0.071~0.449、I2=0%、p=0.007)および過食(Hedges'g=0.571、95%CI=0.282~0.860、I2=53.84%、p<0.001)の減少が認められた。 著者は本研究の限界について、サンプル数の少なさ、短期間であること、信頼できる操作的定義の欠如が、本解析に含まれたスポンサードRCTへ影響を及ぼした可能性があると述べている。

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海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 1

今回のキーワード敏感期(臨界期)発音(発声)語彙(象徴)文法(統語)ダブルリミテッドバイリンガル(セミリンガル)生活言語能力(BICS)学習言語能力(CALP)言語理解IQ(VCI)「セサミストリート」と言えば、世界各国で放送されている幼児向けの英語の教育番組でしたね。シンボルキャラクターであるビッグバードをはじめ、たくさんのキャラクターが登場して、英語での日常会話のやり取りを見せてくれます。このような幼児向けの教育番組を語学教材として自分の子供に積極的に見せたり、幼いうちから英語教室に通わせるなど、なるべく英語に触れる環境にしていれば、子供がバイリンガルになるのではないかと私たちはつい期待してしまいます。実際は、どうなのでしょうか?実は、子供をバイリンガルにさせようとすると、ある「落とし穴」に落ちてしまう恐れがあります。それはいったい何でしょうか? 今回は、「セサミストリート」をヒントに、言語能力の本質に迫り、その答えである言語障害を説明します。なんで中学校からでは遅すぎるの?私たち親世代(1990年生まれ以前)のほとんどは、英語教育を中学校から受けました。そして、英語の読み書きについてはある程度できるものの、聞く・話すについては大変な苦労をしてきました。なぜなのでしょうか?そのヒントは、言葉の学習の敏感期です。敏感期とは、ある能力を発達させるための刺激に敏感な時期です。その時期を過ぎると、刺激に敏感ではなくなるため、その能力の発達が難しくなります。臨界期とも呼ばれますが、臨界期はある時を境に反応が急に落ちていくニュアンスが強いのに対して、敏感期はある時から反応が徐々に落ちていくニュアンスがあります。ただ、ほぼ同じ意味として使われることもあります。この記事では、敏感期を使用します。言葉の学習には、発音、語彙、文法の大きく3つがあります。これは、発声、象徴、統語という3つの言葉の機能に重なります。この言葉の3要素の詳細については、関連記事1をご覧ください。ここで、スペイン在住の中国系移民のスペイン語の習得状況の調査研究1)をご紹介します。この研究によると、3歳以降に移住した中国系移民は発音がスペイン人とは違ってきます。8歳以降に移住した場合はスペイン人ほど言い回しがうまくなくなり、12歳以降では文法の間違いも出てきて流暢ではなくなる結果となりました。つまり、それぞれの敏感期は、発音3歳まで、語彙8歳まで、文法12歳までということがわかります。これは、私たちが英語の学習を中学校(12歳)から始めたことで、読み書きは何とかできるものの、LとRなどの英語の発音の聞き分けや言い分け、英会話の聞き取りや話すことがなかなかスムーズにできないことを説明できます。つまり、英語教育が中学校からでは遅すぎる原因は、流暢に話す敏感期を過ぎてしまっているからです。なお、それぞれの敏感期が始まる時期については、発音は耳が聞こえるようになる生後まもなく、語彙は初語が出てくる1歳、文法は複文が出てくる4歳としました。発音の敏感期が3歳で終わることを考えると、3、4歳ごろは、脳の注力が語彙をメインとしつつ、発音から文法へと移行している時期と考えることができて、納得がいきます。また、語彙の敏感期が8歳で終わることを考えると、このころに基礎的な語彙(生活言語)から読み書きを通した抽象的な語彙(学習言語)へと脳の機能が移行すると考えることができます。ちなみに、この敏感期の段階的な移行は、音感の獲得のそれぞれの臨界期(敏感期)にも重なります。この詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 2

なんで幼児期からでは早すぎるの?先ほどの臨界期の違いの研究から、遅くとも3歳から英語教育を始めればバイリンガルになるのでしょうか? 残念ながら、なかなかそうはならないようです。なぜでしょうか?そのヒントは、言葉の学習の許容量です。そもそも敏感期に違いがある原因は、脳がその限られた資源(許容量)の中で、発音→語彙→文法という順番で効率的にエネルギーを注ぐためであるからと考えられています。つまり、言葉の学習において、脳にはもともと許容限度があるからこそ、敏感期が存在すると言い換えられます。敏感期が脳の発達の時期によって時間的に役割分担をしていると考えれば、脳の部位によって空間的に役割分担をしているのが側性化・局在化です。これらは、脳活動の効率化という点では同じです。脳の側性化・局在化にちなんで、敏感期は「脳の時限化」と名付けることができるでしょう。ちなみに、逆に発音の敏感期が3歳を超えてしばらく続いてしまう幼児は、一見発音の聞き分けの能力がまだ残っていて外国語の発音の学習にはメリットがあるように思われますが、その分その後の語彙や文法の学習が遅れることがわかっています1)。この許容量を踏まえて、ここから英語教育が幼児期からでは早すぎる理由を、限定的にやる場合と本格的にやる場合に分けて、それぞれ説明しましょう。(1)英語教育が限定的な場合これは、最初に触れたように、幼児期から「セサミストリート」のような語学番組を毎日見せて、英語教室に週に何回か通わせることです。これが限定的である理由は、私たちの子供のほとんどは、両親とも日本人で日本に住み、日本語の幼保育園に通っているからです。この状況は、日常的には日本語だけが飛び交っており、自然に英語が耳に入ってくることはほとんどありません。この場合、英語の刺激は、日本語に比べて、せいぜい1、2割でしょう。すると、どうなるでしょうか?簡単に言うと、英語の刺激が母語の日本語に負けてしまいます。私たちの脳は、できるだけサボって楽をするように最適化されています。英語教材や英語教室などで英語の発音を一時的に覚えてはいても、日常的に使う必要に迫られることはなく、困らないので、記憶の学習があまり進まないのです。実際に、日本の大学生への調査研究1)において、週4時間以下の英語の学習を幼少期(3歳)から小学校までに開始したグループと、中学校(12歳)から開始したグループの発音の聞き分けテストでは、わずかな違いしかないことが判明しています。つまり、幼少期の英語教育が限定的な場合、発音を聞き分けられる効果も限定的になることがわかります。言葉の学習を胃の栄養吸収に例えるなら、幼少期の消化酵素の量(言語能力)には限界があるため、メインディッシュ(日本語)の吸収に専念して、添え物(英語)まで吸収が回らなくなってしまうというわけです。時間とお金と労力かけたわりに効果があまり期待できないことから、限定的な英語教育はやるにしても、英語に興味を持たせたり親子で楽しむためと割り切った方が良いことがわかります。(2)英語教育が本格的な場合これは、「セサミストリート」を毎日見せるだけでなく、親が子供と英語でも会話して、幼児期からインターナショナルプレスクールに通わせることです。もはや英語圏に住んでいるのと同じ状況です。この場合、英語の刺激は、日本語と同等になるでしょう。すると、どうなるでしょうか? 2つの可能性があります。1つは、期待通り、バイリンガルになります。まさに、帰国子女の人たちが日本語も英語も流暢に話す憧れのイメージです。ただし、実はこれはもともとその子の言語能力が高い場合に限られます。先ほどの胃の栄養吸収に例えるなら、メインディッシュが2つ(日本語と英語の両方)でも、消化酵素の量が多い(もともとの言語能力が高い)ため、2つとも消化吸収できてしまうことです。もう1つは、不本意ながら、ダブルリミテッドバイリンガルになります。ダブルリミテッドとは、二重に制限されているという意味です。両言語とも、日常生活で使う具体的で実用的な言葉(生活言語)は使いこなせるのですが、抽象的で概念的な言葉(学習言語)は使いこなせなくなります。つまり、生活言語能力(BICS)は習得しているのですが、学習言語能力(CALP)は習得していない状態です。そのため、読解力や作文力が低く、ものごとの仕組みやルールをよく理解できず、将来的に言葉を使いこなす仕事に就くことが難しくなります。以前は、母語も第2言語も中途半端(セミ)な状態から、セミリンガルと呼ばれていました。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 3

なんでダブルリミテッドバイリンガルになるの?それでは、なぜダブルリミテッドバイリンガルになるのでしょうか? 現時点で、ダブルリミテッドバイリンガルに関する個別のケースは、国際結婚で生まれた子供でよく見かけますが、大規模な調査研究は見当たりません。ただ、語学力を含む言語能力の本質を捉えると、やはりその原因は、もともとその子の言語能力が高くない場合です。この言語能力を、知能検査(WPPSI-IIIやWISC-V)における言語理解IQ(VCI)から、2つの場合に分けて考えてみましょう。(1)言語能力がとても低い場合1つ目は、言語能力がとても低い場合です。この目安は、言語理解IQが85以下です。このような子供は、統計上約15%います。彼らのほとんどが日本語だけの学習でも問題を抱えています。この状況で、英語の学習を掛け持ちすると、ほぼ確実にダブルリミテッドバイリンガルになるのは容易に想像できるでしょう。先ほどの胃の栄養吸収に例えるなら、消化酵素の量が少ない(もともとの言語能力が低い)ため、メインディッシュが1つ(日本語だけ)でも消化不良を起こしているのに、メインディッシュが2つ(日本語と英語の両方)になることで、2つともますます吸収できなくなってしまうというわけです。なお、もともと全般的な知的能力は保たれている(トータルIQ[FSIQ]は低くない)のに、母語の語彙が少なく文法がおかしい(言語理解IQが極端に低い)場合は、言語障害(言語症)と診断します。また、もともと母語の滑舌が悪い(発音がうまくできない)場合は、語音障害(語音症)と診断します。そして、これらには言語療法のトレーニングが行われます。このように、言語能力には個人差があることも受け止める必要があります。(2)言語能力が高くはない場合2つ目は、言語能力が高くはない場合です。この目安は、言語理解IQが85~100です。このような子供は、統計上約35%います。彼らは、一見、日本語の学習に問題はなさそうです。しかし、言語能力としては平均以下ですので、余力があるとは言えません。この状況で、英語の学習を掛け持ちすると、単純に発音・語彙・文法が2倍になるわけですから、生活言語能力を習得する時期が遅れます。その分、学習言語能力が始まる時期が遅れ、十分な学習言語が習得できなくなる恐れがあることも想像できるでしょう。さらにこの状況は、ダブルリミテッドバイリンガルだけでなく、学習障害も引き起こすリスクがあります。これは、発音の敏感期が遅れて終わる子供はその分、その後の語彙の学習が遅れるという、先ほど紹介した現象に通じます。ちなみに、この言葉の学習の量(生活言語能力)と質(学習言語能力)のトレードオフの関係は、絶対音感を身に付けると相対音感が損なわれるという音感のトレードオフにも通じます。この詳細については、関連記事2をご覧ください。先ほどの胃の栄養吸収に例えるなら、消化酵素の量が多くない(もともとの言語能力が高くない)ため、メインディッシュが1つ(日本語だけ)でようやく消化しているのに、メインディッシュが2つ(日本語と英語の両方)になることで、2つとも吸収できなくなってしまうというわけです。私たちは、「子供は語学の天才である」などと根拠のない語学ビジネスの宣伝に振り回されず、この事実をもっと深刻に受け止める必要があります。もちろん、子供のためによかれと思ってという親心や憧れはよくわかります。また、国際結婚で生まれた子供の言語環境がどうしても多言語になってしまう状況は致し方ないです。しかし、子供のもともとの言語能力を見極められない幼少期から、モノリンガルの日本人の両親が日本国内で英語教育をあえて本格的にやろうとするのは、時間とお金と労力がかかるばかりでなく、子供をダブルリミテッドバイリンガルという言語障害にさせてしまう危うさもあるというわけです。これが、子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」なのです。1)英語学習は早いほど良いのかP71、P34、P140:バトラー後藤裕子、岩波新書、2015<< 前のページへ■関連記事NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(後編)【言葉は噂をするために生まれたの!?(統語機能)】NHK「おかあさんといっしょ」(後編)【絶対音感よりも○○!?才能よりも○○!?(幼児教育)】Part 1

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リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。 2012~17年に3回以上の抗精神病薬処方を行った成人統合失調症患者を国民健康データシステムより抽出した。主要評価項目は、実際の処方パターン、患者の特徴、医療利用、併存疾患、死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者45万6,003例のうち、経口抗精神病薬が96%、第1世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)が17.5%、第2世代抗精神病薬LAIが16.1%に処方されていた。・治療開始24ヵ月後の治療継続率は、経口抗精神病薬で23.9%、第1世代抗精神病薬LAIで11.5%、第2世代抗精神病薬LAIで20.8%であった。・治療継続期間の中央値は、経口抗精神病薬で5.0ヵ月、第1世代抗精神病薬LAIで3.3ヵ月、第2世代抗精神病薬LAIで6.1ヵ月であった。・全体として、抗不安薬併用が62.1%、抗うつ薬併用が45.7%、抗けいれん薬併用が28.5%でみられ、これらの薬剤の併用は、女性および50歳以上の患者でより多かった。・脂質異常症は最も頻度の高い代謝系併存疾患であったが(16.2%)、脂質モニタリングは不十分であった。・代謝系併存疾患は、女性でより頻繁に認められた。・標準化患者死亡率は、2013~15年の間は高いままであり(フランス一般集団の3.3~3.7倍)、平均余命は、男性で17年、女性で8年短縮されていた。・主な死亡原因は、がん(20.2%)と心血管疾患(17.2%)であり、18~34歳の死亡の25.4%は自殺であった。

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第177回 「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医自殺・労災認定で感じた共通する“病根”(前編)

中日ドラゴンズで「令和の米騒動」勃発こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。2週間ほど前から日本のプロ野球で話題となっている「令和の米騒動」をご存知でしょうか。2023年8月23日、夕刊フジが「中日ドラゴンズ・立浪和義監督が、試合前の食事会場にて白米を食べることを突如禁止した」という内容の記事を掲載したことに端を発し、ネットの世界を中心にあることないことが乱れ飛び、異様な盛り上がりをみせている“事件”です。あの江川 卓氏もこの騒動に関してコメントを寄せたほどです。夕刊フジの報道によれば、きっかけとなったのは2023年8月3日の阪神戦です。この日、立浪 和義監督によるトップダウンで、突如試合前のケータリングから炊飯器による白米の提供がなくなりました。理由は、細川 成也選手が夏場に入り調子が落ちてきたのを、立浪監督が「ご飯の食べ過ぎで動きが鈍くなったからだ」と考え、同選手に白米制限を命じたところ調子が上向いたためだそうです。それを根拠に、立浪監督は連敗中のチーム状態を改善するため全選手にも白米制限を課したのです(投手は1日で解禁、8月31日現在野手は白米制限を続行中とのこと)。ミスタードラゴンズと呼ばれた立浪氏が中日ドラゴンズの監督となり指揮を執り始めたのは昨シーズンから。昨年は66勝75敗2分で6年ぶりの最下位、今年も9月4日現在借金25、勝率3割9分3厘と歴史的な低迷を続けています。昨シーズン終了後の2022年10月には、NHK BSで『逃げるな 泥にまみれても~中日ドラゴンズ監督 立浪和義~』というタイトルのドキュメンタリーが放送されました。番組では、PL学園時代からスター選手だった立浪監督が、若手の気持ちや考えをうまく掴みきれない中、前近代的とも言える厳しい指導や采配をするもチームは低迷・迷走を続け、監督自身も悩み孤立していく姿が生々しく描かれていました。今回の「米騒動」も、昨年来の迷走がまだ続いている表れと言えそうです。甲南医療センターの男性専攻医自殺を労災認定一部では、立浪監督の試合後のコメントが選手に手厳し過ぎる点も話題となっています。8月10日の日本経済新聞のスポーツ面のコラム「悠々球論」で野球評論家の権藤 博氏は、「セ・リーグの最下位、中日の立浪和義監督について気になるのは、試合後のコメントだ。選手に『反省』を求めることがある。1軍の試合に出す選手はチーム内の競争を勝ち抜き、監督も『合格』と認めた選手のはず。それで負けたら仕方がない、と割り切り、反省は求めない方がいい」と書いています。「名選手、名監督にあらず」とは昔からよく言われてきた言葉ですが、昨今の“Z世代”の選手の登場は、スポーツの監督業にも新たな変革を求めているのかもしれません。さて、今回は神戸市東灘区の公益財団法人甲南会・甲南医療センターで勤務していた男性専攻医が昨年5月に自殺したことについて、西宮労働基準監督署(兵庫県)が「長時間労働で精神障害を発症したのが原因」として労災認定したニュースを取り上げます。専攻医の労災認定の背景には、「令和の米騒動」にも共通する、世代間断絶という“病根”も存在している気がしてなりません。「先輩医師と同等の業務量を割り当てられ、指示された学会発表の準備も重なり長時間労働に」男性専攻医の自殺について労災認定していたことが判明したのは8月17日で、読売新聞はじめ全国紙、NHKなどが一斉に報じました。読売新聞等の報道によれば、労災が認められたのは、神戸大医学部卒業後2020年4月からセンターで研修医として勤務し、2022年4月から消化器内科の専攻医として働いていた男性医師です。同年5月17日の退勤後、神戸市の自宅で亡くなっているのを訪ねた家族が見つけ、兵庫県警が自殺と断定したとのことです。26歳でした。労災が認定されたのは2023年6月5日付で、認定によると、男性医師の死亡直前1ヵ月の時間外労働は207時間50分で、3ヵ月平均でも月185時間を超えており、いずれも国が定める精神障害の労災認定基準(月160時間以上、3ヵ月平均100時間以上)を大幅に上回っていたとのことです。労基署は「専攻医になったばかりで先輩医師と同等の業務量を割り当てられ、指示された学会発表の準備も重なり、長時間労働となった」と判断、長時間労働で精神障害を発症したことが自殺の原因、と結論付けています。病院は「過重な労働をさせた認識はまったくない」と長時間労働の指示を全面否定労災認定が明らかになった8月17日、甲南医療センターの具 英成(ぐ・えいせい)院長は記者会見し、「病院として過重な労働をさせた認識はまったくない」と長時間労働の指示を全面否定しました。甲南医療センターでは、タイムカードで出退勤時間を記録していましたが、労働時間は医師の自己申告に基づいて管理していたとのことです。労基署が認定した労働時間は207時間に対し、男性医師が甲南医療センターに申告した死亡前月の時間外労働は30.5時間だったそうです。具院長は記者会見で、労基署の認定には労働にあたらない自主的な「自己研鑽」の時間が含まれているとの見方を示し、「見解に相違がある」と述べたとのことです。なお、労基署が認定した労働時間に基づき、公益財団法人甲南会が未払い残業代130万円を遺族に支払ったことも明らかにしました。ただ、長時間労働はあくまでも認めず、「『解決金』という考え方で支払った」としています。医師の働き方改革を前に労働時間を極力減らしておきたい病院具院長は「見解の相違」と語ったようですが、その背景には、医師人件費をできるだけ抑えたいという経営方針に加え、来年度から始まる医師の働き方改革を前に、労働時間を極力減らしておきたい病院側の強い意向も働いていたと考えられます。8月19日付の読売新聞は、甲南医療センターでは「残業を申請しにくい雰囲気があった」とする勤務医の証言を報じています。さらに、甲南医療センターでは2020年6月頃、職員向けに「時間外労働の削減」を求める通知があり、具院長から業務と自己研鑽の時間を明確に分けるよう指示があったとも書いています。また同紙は、「『残業は2時間まで』という暗黙のルールがあった」、「上司から『今は自己研さんの時期で、仕事ができないのに残業を申請するのはおかしい』と言われ、申請しなかった」など、勤務医の証言も報じています。自己研鑽名目で長時間労働を余儀なくされる医師来年から始まる医師の働き方改革で、残業時間の罰則付き上限が導入され、原則年960時間、研修医などで特別に認められた場合は年1,860時間となります。自己研鑽の時間は労働時間には含まれませんが、その解釈・運用については病院によって大きな差があるようです。今回の甲南医療センターの専攻医自殺、労災認定の報道をきっかけとして、自己研鑽名目で長時間労働を余儀なくされている医師の実態を多くのメディアが報じています。たとえば8月28日付の読売新聞は、「医師『自己研さん』で疲弊 業務外100時間…「残業ゼロ」扱い」というタイトルの記事を掲載、関西地方の病院に勤務する20歳代の女性研修医の「病院や患者のためにヘトヘトになるまで仕事をしているのに、全て自己研さん扱い」、「自己研さんという言葉がいいように使われ、まじめな医師ほど心身ともに追い込まれていく」といった現場の言葉を紹介しています。男性医師勤務当時、甲南医療センターに自己研鑽の基準を明文化した指針なし自己研鑽と労働の区別については、厚生労働省が2019年7月に通知でその考え方を示しています1)。この通知では、上司の指示に基づく学習や練習は労働にあたるとしています。また、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されており実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、そして業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は労働時間に該当する、としています。この通知に則って、各医療機関が自己研鑽の基準を定めているわけですが、各紙報道等によれば、男性医師が勤務していた当時、甲南医療センターは自己研鑽の基準を明文化した指針はなく、男性医師が亡くなった約5ヵ月後の2022年10月に初めて示されたそうです。私も最近、病院の幹部クラスの医師を取材すると、「俺たちが若い頃は自己研鑽か労働かの区別もなく、残業代もなく遮二無二働いていた。それで腕を磨いたもんだ」といった言葉をよく聞きます。「働き方改革」とは真っ向から対立する意見ですが、甲南医療センターの経営幹部たちも、「医師の働き方改革」には表面的には賛成するポーズを示しながらも、そうした意識で若手医師たちを見ていたのかもしれません。中日ドラゴンズでは、世代間の断絶、上司の無理解、理不尽な押し付けはチームの成績低迷という目に見える形で表れました。しかし、病院ではそのしわ寄せは目に見える形ですぐには表れません。現場の医師や職員の疲弊を招き、それが医療事故につながる可能性もあります。しかし、たとえ事故が起こってもその責任を経営幹部が取ることは稀で、事故を起こした医師に責任を取らせて終わりとなってしまうケースは少なくありません。文春が甲南医療センターの自己研鑽の指針をすっぱ抜くところで、この甲南医療センターの自己研鑽の指針の詳しい内容については、8月21日付けの文春オンラインが「『院外持出厳禁』文書入手 病院が職員に配った「あれも業務外、これも自己研鑽」マニュアル」と題する記事で、詳細に報じています。指針には、「手術や処置等の予習や振り返りは自己研鑽」「(業務/自己研鑽は)最終的には上司が判断します」などの文言が並んでおり、自己研鑽名目で医師に長時間労働を強いる甲南医療センターの経営体質や幹部たちの本音がうかがい知れる内容となっています。(この項続く)参考1)「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」令和元年7月1日基発0701第9号/労働基準局長通知

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双極性障害患者の原因別死亡率~メタ解析

 双極性障害は、早期死亡と関連しているといわれている。双極性障害患者におけるすべての原因による死亡および特定の死亡リスクに関しては、十分明らかになっておらず、これらを理解し、双極性障害患者の死亡を予防する戦略を考えるうえでも、さらに多くの研究が必要とされる。ブラジル・サンパウロ大学医学部のTais Boeira Biazus氏らは、一般集団と比較した双極性障害患者の死亡リスクを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、双極性障害患者の早期死亡リスクは、自殺や不自然死によるものだけでなく、身体合併症とも関連していることが示唆された。著者らは、双極性障害患者の早期死亡率を改善するためには、自殺予防だけでなく、身体的な健康増進や身体合併症の予防も重要であるとしている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月25日号の報告。 主要アウトカムは、すべての原因による死亡率とし、副次的アウトカムは、自殺、自然死、不自然死、特定の原因による死亡の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・57件の研究(67万8,353例)をメタ解析に含めた。・双極性障害患者は、すべての原因による死亡率(RR:2.02、95%信頼区間[CI]:1.89~2.16、k=39)が高かった。・特定の原因による死亡率は、自殺(RR:11.69、95%CI:9.22~14.81、k=25)が最も高かった。・不自然死(RR:7.29、95%CI:6.41~8.28、k=17)および自然死(RR:1.90、95%CI:1.75~2.06、k=17)の死亡リスクも高かった。・分析された特定の自然死の中で、感染症による死亡(RR:4.38、95%CI:1.5~12.69、k=3)がより高かったが、研究数が少なく、限定的であった。・呼吸器疾患(RR:3.18、95%CI:2.55~3.96、k=6)、心血管疾患(RR:1.76、95%CI:1.53~2.01、k=27)、脳血管疾患(RR:1.57、95%CI:1.34~1.84、k=13)による死亡リスクも同様に高かった。・がんによる死亡リスク(RR:0.99、95%CI:0.88~1.11、k=16)に差は認められなかった。・サブグループ解析およびメタ回帰は、結果に影響を及ぼさなかった。

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記憶力に不安がある高齢者の運転はいかに危険か/長寿研ほか

 日本の高齢ドライバーを対象とした横断研究の結果、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高かったことを、国立長寿医療研究センターの栗田 智史氏らの研究グループが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 先行研究によって、MCRは処理速度や実行機能の低下などとの関連が報告されているが、MCRと自動車衝突事故との関連性に関する検討は十分ではない。簡便に実施できるMCR評価を行うことで衝突事故リスクに早期に気付くことができる可能性があるため、研究グループはMCR評価と衝突事故やヒヤリハットとの関連を検討した。 研究グループは、2015~18年に実施された同センターの大規模コホート研究(NCGG-SGS)のデータを用い、愛知県在住の65歳以上の高齢者の衝突事故やヒヤリハットの経験を調査した。運転しない人、認知障害がある人(ミニメンタルステート検査21点未満)、認知症の病歴のある人などは除外した。SMCは、老年期うつ病評価尺度(GDS)などを数種類の方法を用いて評価し、歩行速度低下は年齢や性別の平均値より-1.0SD以下とした。 参加者は、過去2年間の衝突事故と前年のヒヤリハットを対面で聴取され、(1)SMCも歩行速度低下も有さない群(対照群)、(2)SMCのみを有する群(SMC群)、(3)歩行速度低下のみを有する群(歩行速度低下群)、(4)MCRを有する群(MCR群)の4群に分けられた。ロジスティック回帰モデルを用いて、衝突事故またはヒヤリハットのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求めた。データは2023年2~3月に解析された。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万2,475人の平均年齢は72.6(SD 5.2)歳で、56.9%が男性であった。・対照群は3,856人(30.9%)、SMC群は6,889人(55.2%)、歩行速度低下群は557人(4.5%)、MCR群は1,173人(9.4%)であった。・SMC群とMCR群では、衝突事故およびヒヤリハットの割合が他の群よりも多かった(調整標準化残差>1.96、p<0.001)。・ロジスティック回帰分析の結果、対照群と比べて、SMC群とMCR群では衝突事故が有意に多かった(【SMC群】補正後OR:1.48、95%CI:1.27~1.72、p<0.001、【MCR群】補正後OR:1.73、95%CI:1.39~2.16、p<0.001)。・同様に、SMC群とMCR群ではヒヤリハットも有意に多かった(【SMC群】補正後OR:2.07、95%CI:1.91~2.25、p<0.001、【MCR群】補正後OR:2.13、95%CI:1.85~2.45、p<0.001)。・MCR評価を客観的認知障害で層別化した結果、客観的認知障害の有無に関係なくSMC群とMCR群で有意に衝突事故とヒヤリハットが増加していた。・これらの結果は、高齢ドライバーの過失割合が半分以下の衝突事故を除外しても同様であった。 これらの結果より、研究グループは「これらの知見の一般化可能性を高め、外的妥当性を検証するためには、異なる環境におけるさらなる研究が必要である。これらの関連性のメカニズムも今後の研究の課題となる」とまとめた。

1509.

統合失調症患者の抗精神病薬治療反応を予測する最適な期間は

 治療開始後、早い段階で治療反応が不十分な統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を予測することは難しい。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYujun Long氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を適切に予測するための、治療初期段階におけるノンレスポンダーのカットオフ予測値を明らかにするため、多施設共同オープンラベルランダム化比較試験を実施した。その結果、治療開始2週間後の症状改善効果は、統合失調症患者に対する抗精神病薬のノンレスポンダーを予測可能であり、さらに正確に予測するには、ベースライン時の重症度や治療薬剤の違いを考慮する必要性があるとし、最初の2週間の後、さらに2週間の治療反応を評価することで抗精神病薬の変更が必要であるかを判断可能であるとしている。BMC Medicine誌2023年7月19日号の報告。 本研究は、中国の精神科センター19施設による8週間の多施設共同オープンラベルランダム化比較試験である。本研究に参加した統合失調症患者は、オランザピン、リスペリドン、amisulpride、アリピプラゾールのいずれかによる8週間の単剤治療にランダムに割り付けられた。ベースラインおよび2、4、8週目に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価を行った。主要アウトカムは、ノンレスポンダーの予測とした。ノンレスポンダーの定義は、ベースラインからエンドポイントまでのPANSS合計スコア減少率が20%未満とした。重症度は、ベースライン時のPANSS合計スコアで次のように定義した。軽度(PANSS合計スコア:58)、中等度(同:75)、重度(同:95)。 主な結果は以下のとおり。・2週目時点でのPANSS合計スコア5%未満の改善は、重度(総精度:75.0%)および軽度(同:80.8%)の統合失調症患者およびリスペリドン群(同:82.4%)、amisulpride群(同:78.2%)で、最も高精度でその後のノンレスポンダーを予測した。・中等度(同:84.0%)の統合失調症患者およびオランザピン群(同:79.2%)、アリピプラゾール群(同:77.4%)では、2週目でのPANSS合計スコア10%の減少が、ノンレスポンダーの最も高精度な予測因子であった。・4週目では、抗精神病薬の種類や疾患重症度とは無関係に、最良のノンレスポンダーのカットオフ予測値は、PANSS合計スコア20%未満の改善であった(同:89.8~92.1%)。

1510.

日本人のBMIと認知症リスク、男女間で異なる

 BMIと認知症リスクとの関連は、年齢によりばらつきがあり、性別の影響を受ける可能性がある。新潟大学のAlena Zakharova氏らは、地域在住の日本人を対象に、BMIと認知症リスクとの関連に対する性別の影響を明らかにするため、コホート研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年8月1日号の報告。 ベースライン時(2011~13年)に40~74歳であった地域在住の日本人1万3,802人を対象に8年間のフォローアップ期間を伴うコホート研究を実施した。直接測定により収集された身長、体重、腹囲を含む社会人口統計学的およびライフスタイル、病歴に関する情報を自己記入式アンケートで収集した。BMIに基づき参加者を次の6群に分類した。低体重群(<18.5kg/mm2)、低普通体重群(18.5~20.6kg/m2)、普通体重群(20.7~22.6kg/m2)、高普通体重群(22.7~24.9kg/m2)、過体重群(25.0~29.9kg/m2)、肥満群(≧30.0kg/m2)。認知症発症に関する情報は、介護保険データベースより収集した。多変量調整ハザード比(HR)の算出には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は、59.0歳であった。・男性では、BMIが高いほど認知症リスクが低かった(完全調整p for trend=0.0086)。・女性では、BMIと認知症リスクとの間にU字型の関連が認められ、低体重群(完全調整HR:2.12)、低普通体重群(同:2.08)、過体重群(同:1.78)は、対照群(高普通体重群)と比較し、認知症リスクが有意に高かった。・これらの所見は、フォローアップ期間の最初の4年間で認知症を発症した参加者を除外した場合でも、同様であった。 著者らは、これらの結果から、「過体重や肥満は、女性のみで認知症リスクを上昇させる可能性があり、肥満の性差が認知症リスクと関連していることが示唆された」と述べている。

1511.

退院後の統合失調症患者における経口剤と持効性注射剤の治療継続率

 退院後の統合失調症患者におけるその後の治療継続は、患者および医療関係者、医療システムにとって問題である。これまでの報告では、第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)は、経口非定型抗精神病薬(OAA)と比較し、治療アドヒアランスの改善や再入院リスクの軽減に有効である可能性が示唆されている。米国・Janssen Scientific AffairsのCharmi Patel氏らは、米国におけるSGA-LAIとOAAで治療を開始した統合失調症患者における、アドヒアランスと再入院リスクの比較検討を行った。その結果、統合失調症患者は、入院中に開始した抗精神病薬を退院後も継続する可能性が低かったが、SGA-LAI治療患者では、抗精神病薬の順守や外来通院を継続する可能性が高く、OAA治療患者よりも退院後ケアの継続性が向上する可能性が示唆された。Current Medical Research and Opinion誌8月号の報告。 統合失調症関連で入院中に、新たにSGA-LAIまたはOAAによる治療を開始した成人統合失調症患者を、HealthVerityデータベースより抽出した。期間は2015~20年、インデックス日は退院日とした。対象は、入院前および入院時から退院後6ヵ月間、健康保険に継続加入しており、入院前の6ヵ月間でSGA-LAIまたはOAA以外の抗精神病薬の処方データが1件以上の患者。抗精神病薬の使用とアドヒアランス、統合失調症関連の再入院と外来通院について、退院後6ヵ月間の比較を行った。コホート間の特性は、逆確率重み付けを用いて調整した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、SGA-LAI群は466例、OAA群は517例であった。・入院中に開始した抗精神病薬について、退院後に薬局または医療請求があった患者は、SGA-LAI群で36.9%、OAA群で40.7%であった。そのうち、SGA-LAI群は、OAA群と比較し、抗精神病薬を順守する可能性が4.4倍高かった(20.0% vs.5.4%、p<0.001)。・SGA-LAI群は、OAA群と比較し、薬局または医療請求を行う可能性が2.3倍高く(82.7% vs.67.9%、p<0.001)、いずれかの抗精神病薬を順守する可能性が3.0倍高かった(41.5% vs.19.1%、p<0.001)。・SGA-LAI群とOAA群の再入院率は、退院7日後で1.7% vs.4.1%、退院30日以内で13.0% vs.12.6%であった。・SGA-LAI群は、OAA群と比較し、外来受診する可能性が51%高かった(36.3% vs.27.4%、p=0.044)。

1512.

コロナ後遺症、1年後は約半数、急性期から持続は16%/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関する多施設共同研究において、COVID-19に罹患した人の約16%が、感染から12ヵ月後も何らかの症状が持続していると報告した。また、感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人を含めると、感染から12ヵ月時点での有病率は約半数にも上った。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年8月11日号に掲載された。コロナ後遺症で何らかの症状が発症/再発した人は1年後で約半数に上った 本研究では、前向き多施設コホート研究であるInnovative Support for Patients with SARS-CoV-2 Infections Registry(INSPIRE)の2020年12月~2023年3月のデータが用いられた。米国8施設において、研究登録時に新型コロナ様症状を発症した18歳以上の1,296例(SARS-CoV-2検査陽性1,017例と検査陰性279例)を対象に、長期症状および転帰を評価した。ベースライン調査、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月時点の追跡調査を行い、継続する症状と、新たに発症/再発した症状を区別した。アウトカムは自己申告による8カテゴリーの症状:(1)頭、目、耳、鼻、喉(HEENT)、(2)体質、(3)肺、(4)筋骨格系、(5)消化器、(6)循環器、(7)認知障害、(8)極度の疲労。検査陽性群と検査陰性群の統計学的比較はχ2検定を用いて評価した。追跡期間中にSARS-CoV-2検査結果が陽性になった参加者は解析から除外した。 コロナ後遺症に関する多施設共同研究の主な結果は以下のとおり。・6,075例が登録され、12ヵ月間のすべての調査を完了し、追跡期間中にコロナに再感染しなかった参加者は1,296例。女性67.4%(842例)。非ヒスパニック系白人72%(905例)。年齢の比率は、18~34歳39.3%、35~49歳31.1%、50~64歳20.7%、65歳以上8.7%。・検査陽性群では、検査陰性群と比べて女性の割合が低く(陽性群:65.2% vs.陰性群75.2%、p<0.01)、既婚またはパートナーと同居(60.3% vs.48.9%、p<0.01)、コロナ急性期症状での入院(5.6% vs.0.4%、p<0.01)の割合が高かった。・症状の持続について、ベースライン時では陽性群のほうが陰性群よりも各症状カテゴリーの有病率が高く、3ヵ月時点で大幅に減少し、6~12ヵ月にかけて徐々に減少し続けた。・12ヵ月時点で、何らかの症状が急性期から持続していると報告したのは、陽性群18.3%、陰性群16.1%で、統計学的な有意差は認められなかった。・12ヵ月時点での「極度の疲労」の持続は、陰性群が有意に高かった(陽性群3.5% vs.陰性群6.8%)。・感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人は、陽性群と陰性群共に、12ヵ月時点で約半数に上った。・感染から一定期間後の症状の発症/再発について、症状カテゴリー別の有病率は、陽性群と陰性群共に、「極度の疲労」以外は各検査時点で同程度であった。・「極度の疲労」の有病率は、9ヵ月と12ヵ月時点において、陽性群よりも陰性群のほうが高かった。 著者は本結果について、「陽性群と陰性群を評価した本調査において、多くの参加者は急性期から6ヵ月以上経て新たな症状を経験しており、コロナ後遺症の有病率は相当なものである可能性が示唆された。認知障害と極度の疲労は、6ヵ月後に出現する一般的な症状だ。時間の経過とともに消失する症状と出現する症状を区別することは、コロナ後遺症を特徴付けるのに役立つ。一方、単一時点での測定は、疾病の真の影響を過小評価したり、誤った特徴付けをしてしまうことを示唆している」としている。

1513.

統合失調症患者の認知機能を含む症状に対するメトホルミンの影響~メタ解析

 統合失調症または統合失調感情障害患者の抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム(MetS)のマネジメントに対し、メトホルミンは優れた有効性を示す薬剤である。メトホルミンによる抗うつ効果や認知機能改善への影響も検討されているものの、これらの情報はシステマティックに評価されていなかった。イタリア・ミラノ大学のVera Battini氏らは、抗精神病薬治療中の統合失調症患者における認知機能およびその他の症状に対するメトホルミンの影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症の認知機能やその他の症状に対し、メトホルミンのある程度の効果が確認された。メトホルミンの潜在的な薬理学的効果を明らかにするためには、適切な尺度を用いた長期にわたる研究が必要であるとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年7月12日号の報告。 2022年2月までに公表された、統合失調症および統合失調感情障害と診断された後、体重増加の治療のために抗精神病薬の追加療法としてメトホルミン治療を実施した患者を対象に、精神症状および認知機能の変化を評価したランダム化比較試験(RCT)をPubMed、ClinicalTrials.gov、Embase、PsycINFO、WHO ICTRPのデータベースより検索した。 主な結果は以下のとおり。・該当したRCT19件のうち、適格基準を満たした12件をメタ解析に含めた。・安定期統合失調症患者において、24週間のメトホルミン治療により、良好な傾向が認められた(標準化平均差:-0.40[95%信頼区間[CI]:-0.82~0.01]、オッズ比:0.5[-2.4~3.4])。・統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価は、研究間の不均一性が低く、より良い影響が確認された。・1つの研究では、プラセボにおいてBACSの言語記憶サブドメインの好ましい変化が報告されていた(平均差:-16.3[95%CI:-23.65~8.42])。・最も報告された副作用は、胃腸障害、口腔乾燥症、錐体外路症状であった。・精神医学的有害事象、とくに統合失調症の再発に起因する症状も報告されていた。

1514.

日本人成人強迫症患者におけるADHD併発の影響

 これまでの研究において、小児および青年における強迫症と注意欠如多動症(ADHD)との関連が報告されている。しかし、成人における強迫症とADHDとの生涯併発率との関連を調査した研究は、ほとんどなかった。兵庫医科大学の宮内 雅弘氏らは、日本人成人強迫症患者におけるADHDの併発に関連する臨床的および精神病理学的特徴を調査した。Comprehensive Psychiatry誌2023年8月号の報告。強迫症患者93例のADHD生涯併発率は16.1%と推定された 日本人成人強迫症患者93例を対象に、ADHDの生涯併発率を評価した。ADHDの特徴および重症度の評価には、コナーズ成人ADHD 評価スケール(CAARS)日本語版を用いた。ADHDではないがADHD特性レベルが上昇した患者は、調査結果から除外した。ADHDを伴う強迫症患者とADHD特性が認められない強迫症患者における背景プロファイルおよび強迫症状や心理学的検査結果などの臨床的特徴を比較した。さらに、6ヵ月間の治療結果を、両群間でプロスペクティブに比較した。 日本人成人強迫症患者におけるADHD併発に関連する臨床的および精神病理学的特徴を調査した主な結果は以下のとおり。・強迫症患者93例のADHD生涯併発率は、16.1%と推定された。・ADHDを伴う強迫症患者は、ADHD特性が認められない強迫症患者と比較し、以下の特徴が確認された。 ●強迫症の発症年齢が低い ●ためこみ症(hoarding symptom)の頻度が高い ●抑うつ症状や不安症状レベルが高い ●QOL低下 ●衝動性レベルが高い ●物質依存症や行動依存症の割合が高い ●うつ病の割合が高い・ADHDを伴う強迫症患者は、ADHD特性が認められない強迫症患者よりも、強迫症に対する標準的治療6ヵ月後の Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale(Y-BOCS)平均改善率が有意に低かった(16.1% vs. 44.6%)。 著者らはこの結果から、「ADHDの併発は、成人強迫症患者の臨床的特徴や治療アウトカムに重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。強迫症患者の全体的な臨床症状の重症化や治療抵抗性を引き起こす因子として、ADHDの根底にある病理学的特徴が関与している可能性があることを考慮することが重要である。このような患者の治療戦略を検討するには、さらなる研究が必要である」と述べている。

1515.

頻繁な入浴で長期的な抑うつリスク低減

 湯に浸かる入浴(浴槽入浴)の頻度と長期的な抑うつ発症との関連を調査した6年にわたるコホート研究の結果、冬に浴槽入浴を頻繁に行う高齢者では新たな抑うつの発症が有意に少ないことを、東京都市大学の早坂 信哉氏らの研究グループが明らかにした。日本温泉気候物理医学会雑誌2023年オンライン版7月24日号掲載の報告。 これまでの研究において、頻繁な浴槽入浴が高い自己評価と関連していることや、介護保険が必要になる可能性が低いことなどが報告されているが、生活習慣としての浴槽入浴が健康にどのような影響を及ぼすかについてはまだ十分に解明されていない。 そこで、研究グループは、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の2010年および2016年調査の対象となった65歳以上の1万1,882人のうち、夏の入浴頻度の記録がある6,452人と冬の入浴頻度の記録がある6,465人をそれぞれ解析した。すべての解析対象者は要介護認定を受けておらず、老年期うつ病評価尺度スコアが4点以下でうつ病ではなかった。 浴槽入浴が0~6回/週のグループと、7回以上/週のグループの6年後のGDSによる抑うつの発症割合を求めた。浴槽入浴と抑うつの関連をロジスティック回帰分析によって年齢、性別、治療中の病気の有無、飲酒の有無、喫煙の有無、婚姻状況、教育年数、所得を調整して多変量解析を行い、オッズ比(OR)を求めた。 主な結果は以下のとおり。・夏の浴槽入浴が0~6回/週のグループの抑うつ新規発症率は12.9%、7回以上/週のグループは11.2%であった(p=0.192)。・冬の浴槽入浴が0~6回/週のグループの抑うつ新規発症率は13.9%、7回以上/週のグループは10.6%で有意差が認められた(p=0.007)。・共変量で調整した多変量解析において、夏の浴槽入浴が0~6回/週のグループを基準とした場合、7回以上/週のグループの抑うつ新規発症のORは0.84(95%信頼区間[CI]:0.64~1.10)で、浴槽入浴の頻度が高いほど抑うつの新規発症が少ない傾向にあった(p=0.213)。・冬の浴槽入浴では、7回以上/週のグループの抑うつ新規発症のORは0.76(95%CI:0.59~0.98)で、統計学的に有意に少なかった(p=0.033)。 これらの結果より、研究グループは「習慣的な浴槽入浴の温熱作用を介した自律神経のバランス調整などによる抑うつ予防作用による結果の可能性があり、健康維持のため高齢者へ浴槽入浴が勧められることが示唆された」とまとめた。

1516.

レビー小体型認知症のパーキンソニズムに対するゾニサミド補助療法

 レビー小体型認知症(DLB)患者のパーキンソニズムに対してレボドパで効果不十分な場合、レボドパの増量とゾニサミド併用の効果および安全性の違いについては、よくわかっていない。大阪大学の池田 学氏らは、レボドパ300mg/日以下で治療されたパーキンソニズムを伴うDLB患者を対象に、ゾニサミド25mg/日併用療法とレボドパ100mg/日増量療法の比較を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年7月20日号の報告。 本DUEL研究は、多施設共同ランダム化非盲検並行群間非劣性試験として実施された。観察期間中、レボドパ300mg/日以下で4週間投与を行った。その後患者は、ゾニサミド25mg/日併用群またはレボドパ100mg/日増量群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの平均変化とした。 主な結果は以下のとおり。・16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの調整平均変化は以下のとおりであった。【ゾニサミド併用群】16週目:-6.3、24週目:-4.4【レボドパ増量群】16週目:-0.8、24週目:2.0・24週目の調整平均差は、-6.4(95%信頼区間:-13.5~0.7)であり、信頼区間の上限値は、非劣性マージン(3.0)よりも低かった。・MDS-UPDRS Part II、Eating Questionnaire、EuroQol-5 dimension-5 level (EQ-5D-5L)、Zarit介護負担尺度、その他の副次的評価項目の総スコアは、両群間で差は認められなかった。・有害事象の発生率は、両群間で差は認められなかった。 その結果を踏まえて著者らは、「レボドパで効果不十分な場合、ゾニサミド25mg/日を併用することで、DLB患者の運動症状に中程度の効果が期待できる。しかし、本研究では、レボドパ増量が想定されているほどの効果が得られなかったため、ゾニサミド25mg/日併用がレボドパ100mg/日と同程度の効果があるかは、検証できなかった」としている。

1517.

看護師による簡易型睡眠制限療法が、不眠症に有効/Lancet

 プライマリケアでの不眠症の治療において、看護師による簡易型の睡眠制限療法は、これを行わない場合と比較して、不眠症状を軽減し、費用対効果が優れる可能性があることが、英国・オックスフォード大学のSimon D. Kyle氏らが実施した「HABIT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年8月10日号で報告された。イングランドの実践的無作為化対照比較試験 HABIT試験は、イングランドの35の総合診療施設で実施された優越性を検証する実践的な非盲検無作為化対照比較試験であり、2018年8月~2020年3月に参加者の登録を行った(英国国立健康研究所[NIHR]の医療技術評価プログラムによる助成を受けた)。 DSM-5の不眠の判定基準を満たした成人を、看護師による睡眠制限療法4セッション+睡眠衛生に関する小冊子を提供する群、または睡眠衛生小冊子の提供のみの群に1対1の割合で無作為化に割り付けた。両群とも通常ケアに対する制限はなかった。 アウトカムを3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月時点で評価。主要エンドポイントは、不眠重症度指数(ISI)で測定した6ヵ月後の自己申告による不眠の重症度であった。ISIは、夜間および日中の不眠を評価するための7つの項目から成り、スコアの範囲は0~28点で、点数が高いほど症状が重症であることを示す。 642例を登録し、睡眠制限療法群に321例、睡眠衛生療法群に321例を割り付けた。全体の平均年齢は55.4(SD 15.9)歳で、489例(76.2%)が女性、624例(97.2%)が白人であった。段階的治療アプローチの一環となる可能性も ベースラインの平均ISIスコアは17.5(SD 4.1)点、不眠の罹患期間中央値は10.0年(四分位範囲[IQR]:4.5~20.0)であり、486例(76%)はすでに不眠に関して医師の診察を受け、163例(25%)は最近、睡眠薬を処方されていた。少なくとも1つのアウトカムのデータが得られた580例(90.3%、睡眠制限療法群275例、睡眠衛生療法群305例)を主解析に含めた。 6ヵ月の時点での平均ISIスコアは、睡眠衛生療法群が13.9(SD 5.2)点であったのに対し、睡眠制限療法群は10.9(SD 5.5)点と有意に低く(補正後平均群間差:-3.05点、95%信頼区間[CI]:-3.83~-2.28、p<0.0001、Cohen’s d:-0.74)、不眠症の重症度を改善することが示された。また、抑うつ症状、精神的健康関連および睡眠関連のQOL、仕事の生産性についても、睡眠制限療法群で有意な治療効果を認めた。 睡眠衛生療法と比較した睡眠制限療法に関連する費用の増分は43.59ポンド(95%CI:-18.41~105.59)、質調整生存年(QALY)の増分は0.021(95%CI:0.0002~0.042)であった。獲得QALY当たりの増分費用効果比(ICER)の平均値は2,075.71ポンドで、睡眠制限療法が英国国立医療技術評価機構(NICE)の費用対効果の閾値である2万ポンド/QALYを達成する確率は95.3%であり、金銭的な純益の平均値は377.84ポンドだった。 事前に定義した有害事象の発現については、両群間に差はなかった。また、重篤な有害事象は各群とも8例で発生したが、介入に関連すると判定されたものはなかった。 著者は、「睡眠制限療法は、不眠症の第1選択の治療法として広く実施される可能性がある。また、不眠症の段階的治療(stepped-care)アプローチの一環となる可能性があり、国際的なガイドラインの実践を促進し、エビデンスに基づく介入の利用機会を増加させるのに役立つと考えられる」としている。

1518.

治療前の統合失調症患者におけるメタボリックシンドローム有病率

 メタボリックシンドローム(MetS)は、性別により臨床パターンの異なるさまざまな病理学的状態を伴う臨床症候群である。統合失調症患者では、MetS有病率が有意に高いことが知られている。中国・Wuhan Mental Health CenterのKuan Zeng氏らは、初回治療および未治療の統合失調症患者におけるMetS有病率とそれに関連する要因、重症度に影響を及ぼす要因についての性差を調査した。その結果、統合失調症患者のMetS有病率とその要因には、男女間で違いが認められた。女性のほうがMetS有病率は高く、影響を及ぼす要因もより広範であることを報告した。Annals of General Psychiatry誌2023年6月28日号の報告。 対象は、初回治療および未治療の統合失調症患者668例。社会人口統計学的情報および一般的な臨床情報を収集し、代謝パラメータおよび生化学的指標を測定・評価した。精神症状の重症度評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者のMetS有病率は、男性で6.56%(244例中16例)、女性で13.44%(424例中57例)であり、男性よりも女性において有意に高かった。・MetsSのリスク因子は、男性では腹囲、空腹時血糖、拡張期血圧、トリグリセライド、女性では、収縮期血圧、トリグリセライド、総コレステロール、LDLコレステロール、血小板数であった。・女性では、年齢、LDLコレステロール、PANSSスコア、血清クレアチニン値がMetSスコア上昇のリスク因子であり、発症年齢、ヘモグロビン値が防御因子であることが発見された。

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スマホによる介入、不健康な飲酒を抑制/BMJ

 不健康なアルコール使用を自己申告した大学生において、アルコール使用に対する介入としてスマートフォンのアプリケーションへのアクセスを提供することは、12ヵ月の追跡期間を通して平均飲酒量の抑制に有効であることが、スイス・ローザンヌ大学のNicolas Bertholet氏らが実施した無作為化比較試験の結果で示された。若年成人、とくに学生において、不健康なアルコール使用は発病や死亡の主な原因となっている。不健康なアルコール使用者に対する早期の公衆衛生的アプローチとして、世界保健機関(WHO)はスクリーニングと短期的介入を推奨しているが、スマートフォンによる介入の有効性については明らかではなかった。BMJ誌2023年8月16日号掲載の報告。スイスの大学生1,770例を介入群と対照群に無作為化 研究グループは、スイスの4つの高等教育機関(ローザンヌ大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、エコール・オテリエール・ド・ローザンヌ、University of Applied Sciences and Arts Western Switzerland’s School of Health)において参加者を募集した。アルコール使用障害特定テスト-簡易版(AUDIT-C)によるスクリーニングで不健康なアルコール使用が陽性(スコアが男性4点以上、女性3点以上)と判定され、試験への参加に同意した18歳以上の学生1,770例を、ブロック法で介入群(884例)と対照群(886例)に1対1の割合で無作為に割り付けた(盲検化)。介入群では、スマートフォンを用いたアルコール使用に対する簡単な介入(アプリケーションの提供)を行った。 主要アウトカムは、6ヵ月後における標準アルコール飲料(基準飲酒量[ドリンク]、スイスの1ドリンクは純粋エタノール10~12g相当)の1週間の飲酒数量。副次アウトカムは過去30日間の大量飲酒日数(男性5ドリンク以上、女性4ドリンク以上)、その他のアウトカムは、1回の最大飲酒量、アルコール関連事象、学業成績。それぞれ3ヵ月後、6ヵ月後および12ヵ月後に評価した。スマホによる介入で、1週間の基準飲酒量、大量飲酒日数、1回の最大飲酒量が低下 2021年4月26日~2022年5月30日の間に、1,770例が無作為化された(介入群884例、対照群886例)。平均年齢は22.4歳(SD 3.07)、女性が958例(54.1%)、学部生1,169例(66.0%)、修士課程533例(30.1%)、博士課程43例(2.4%)、その他の高等教育課程25例(1.4%)で、ベースラインの1週間の平均基準飲酒量は8.59ドリンク(SD 8.18)、大量飲酒日数は3.53日(同4.02)であった。 1,770例の追跡率は、3ヵ月後96.4%(1,706例)、6ヵ月後95.9%(1,697例)、12ヵ月後93.8%(1,660例)であった。 介入群の学生884例のうち、738例(83.5%)がアプリケーションをダウンロードした。介入は、1週間の基準飲酒量(発生率比:0.90、95%信頼区間[CI]:0.85~0.96)、大量飲酒日数(0.89、0.83~0.96)、1回の最大飲酒量(0.96、0.93~1.00)に関して有意な全体的効果を示し、追跡期間中の飲酒アウトカムは介入群で対照群より有意に低かった。一方、介入はアルコール関連事象や学業成績には影響しなかった。

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第174回 レカネマブ承認へ、医療者を待ち受ける5つの関門

ついにアルツハイマー病(AD)に対する抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬が、日本の臨床現場に登場することが確定的となった。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は8月21日、エーザイと米国・バイオジェンが共同開発したlecanemabの承認を了承した。これにより年内には保険適用となる見込みだ。思えば2012年の米国のファイザーとジョンソン&ジョンソンによる抗Aβ抗体の静脈注射製剤bapineuzumabの開発中止に始まり、死屍累々だったAβ標的の新薬開発は、ようやく一つの成果を得た形だ。一方で、ADの治療現場では患者・家族の期待値と現実とのギャップが原因で、今後は患者・家族とのコミュニケーションで疲弊させられる可能性も増してくる。大雑把に言えば、疲弊させられる“関門”は5つある。まず、ADは認知症の6~7割を占める原因疾患だが、そのほかに脳血管性認知症、レビー小体型認知症があるが、一般人はこれらの個別の疾患よりもざっくりとした「認知症」というキーワードで認識している人のほうが多数派だろう。それゆえにlecanemabが実際に登場した段階では、ADかどうかにかかわらず「私も」「うちの家族も」という誤解した期待の声に医療従事者は振り回されることになる。ここが第1の関門である。さらに、lecanemabはご存じのように軽度ADと軽度認知障害(MCI)を総称した早期ADのみが適応だ。ここで中等度AD以上の患者・家族は落胆するはずだ。第2の関門である。そして第2関門まで通過した早期ADの患者・家族を待ち受けている第3の関門、それが検査方法である。今回の医薬品第一部会ではlecanemabの承認了承に合わせ、Aβを可視化する陽電子放出断層撮影(PET)用の放射性診断薬であるフルテメタモル(18F、商品名:ビザミル)、フロルベタピル(18F、同:アミヴィッド)の効能追加も了承され、検査面で地ならしも行われた。現在、Aβの蓄積を確認するためには、このアミロイドPETか脳脊髄液検査(CSF検査)という手段になる。しかし、前者は放射性物質の半減期が極めて短いため、地域によっては身近な医療機関では物理的に受けられないことが起こり得る。加えて十分なアミロイドPETの読影訓練を受けた医療従事者がいる医療機関も限られる。さらに保険適用になっても患者は数万円の自己負担が必要になる見込みである。一方で脳脊髄液検査は侵襲性の高い腰痛穿刺が必要になり、現在の保険適用されている体液バイオマーカーは脳脊髄液リン酸化タウ値のみ。ADの診断により適した脳脊髄液アミロイドβ42は保険適用となっていない。昨今では島津製作所が開発している簡易血液検査が注目されてもいるが、おそらくこれが承認されても、第一段階のスクリーニングのみの使用になり、最終的な確認のためにアミロイドPETという流れになる可能性は十分ある。いずれにせよこの第3の関門で、経済的、物理的な理由で検査を躊躇する、あるいは受けられない一部の患者・家族の苦悩と医療従事者は向き合わねばならない。さらにこれら3つの関門を通過して晴れて投与対象になったとしても、第4の関門として、年間数百万円の薬剤費という現実に多くの患者が直面する。たとえ高額療養費制度を使ったとしても、かなりの経済的な負担になることは確実で、その金額に尻込みをする患者・家族が少なからず発生することになるだろう。そして最後の関門は、投与を始めたものの効果を“実感”できない患者・家族から不満が出る可能性である。第III相試験「Clarity AD」で示されたlecanemabの有効性とは、臨床的認知症尺度(CDR:Clinical Dementia Rating)の合計点数(CDR-SB、18点満点)から見ると、プラセボに比べ、進行が27%抑制されていたというもの。一般人からすれば、数字だけを聞くと、劇的な効果と思う人もいるだろうが、この効果は患者・家族はおろか医療従事者ですら見た目で実感できるものではない。そもそも一般人の多くが「薬=病気を治すもの」と考えている中では、投与前に入念な説明をしても、この薬でADによる物忘れが以前よりも少なくなるのではないかなどの誤解交じりの期待を抱く人は残るはずだ。もしかしたら、医療従事者が患者・家族とのコミュニケーションで最も疲弊させられるのはこの点かもしれない。そして何より、実はこれらとは別の非常に大きな問題が浮上してくる可能性がある。それはlecanemabの投与対象のうちMCIは本人や周囲も気付かないことも多いため、後々に「もう少し早くlecanemabを使えていれば…」という事態が生じることだ。lecanemabというイノベーションは、これ以外にも予想もしなかった新たな課題を生むかもしれない。今回の承認にやや興奮しながらも、それと同じくらい不安も感じている。

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