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うつ病患者の疲労感を評価する新ツール

 疲労は、大うつ病性障害(MDD)における最も顕著な症状の1つである。米国・Evidera社のLouis S. Matza氏らは、MDD患者の疲労とその影響を評価する質問票「Fatigue Associated with Depression Questionnaire(FAsD)」およびその改訂版(FAsD-V2)の内容の妥当性を評価するため、検討を行った。その結果、概念を引き出すためのフォーカスグループ法、認知インタビューなどから、FAsDおよび FAsD-V2の内容の妥当性を支持する結果が得られたことを報告した。The Patient誌オンライン版2015年1月23日号の掲載報告。 研究グループは、MDD患者における疲労とその影響を評価するために開発されたFAsDおよびFAsDバージョン2(FAsD-V2)の妥当性について、質的研究を実施した。米国全土のクリニックから登録された患者を対象とした。質的研究は、3期で構成され、第I期では概念を引き出すためフォーカスグループ法を行い、続いて認知インタビューを実施。第II期では、より的を絞った対象で第I期と同様の方法で調査を行った。第III期では、第II期以降に加えられた細かい修正が質問票の包括性に変化をもたらすか否かを調査するため、認知インタビューを行った。概念抽出に際しては、患者の疲労とその影響に対する認識に焦点を当て、認知インタビューでは質問票における理解、明確性、妥当性、包括性に焦点を当てた。データは半構造的ディスカッションガイドを用いて収集。テーマ分析を行い、浸透度を検討した。 主な結果は以下のとおり。・MDD患者98例を対象とした。・第I期、第II期の概念抽出における患者の発言は、作成された項目とその内容を支持するものであった。・認知インタビューでは、的を絞った集団における質問票の妥当性が支持され、指示、項目、回答の選択肢、想起期間に対する患者の理解が良好であることが示された。・FAsD-V2に対する細かい指示の変更は質問票の解釈に影響しなかった。 ・今回の質的研究では、FAsDおよび FAsD-V2の内容の妥当性を支持する結果が示された。これまでの量的精神測定分析の結果を、さらに強めるものであった。関連医療ニュース うつ寛解のポイントは疲労感 うつ病治療、概念や診断方法の相違が課題 うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上  担当者へのご意見箱はこちら

4802.

睡眠指導でADHDの症状が改善/BMJ

 注意欠如・多動症(ADHD)の小児に対する簡易な睡眠衛生指導と行動療法的治療により、ADHDの症状が改善され、QOLや日常機能にも良好な効果がもたらされることが、オーストラリア・メルボルン大学のHarriet Hiscock氏らの検討で示された。ADHDの子供には睡眠行動障害がみられることが多く、その家族への影響が指摘されている。ADHD患児の睡眠への介入が、ADHDの症状や家族に及ぼす影響を無作為化試験で評価した研究はこれまでなかったという。BMJ誌オンライン版2015年1月20日号掲載の報告。症状や睡眠、親の精神的健康に及ぼす影響を評価 研究グループは、子供の睡眠障害に対する行動療法的治療による、ADHD患児の症状、行動、日常機能、作業記憶および保護者の精神的健康などの改善効果を検証する無作為化対照比較試験を実施した(Australian National Health and Medical Research Council[NHMRC]の助成による)。 被験者は、介入群または対照群(通常の治療を行う群)に無作為に割り付けられた。介入群は2週に1回の診察時(計2回)に、臨床心理士あるいは小児科医による睡眠衛生指導と標準化された行動療法的治療が行われた後、電話によるフォローアップが行われた。2010年8月~2012年6月に、ビクトリア州の21の一般小児病院の小児科医50人から、5~12歳の244例のADHD患児が登録された。 割り付け後3ヵ月と6ヵ月時に、ADHDの重症度(主要評価項目、保護者および教師によるADHD評価スケールIV)、睡眠障害、行動、QOL、日常機能、作業記憶および保護者の精神的健康(うつ・不安・ストレス評価スケール[DASS])、就業状況などの評価を行った。プライマリケアでの施行に適するアプローチ 介入群に122例(平均年齢:10.3歳、男児:84%、メチルフェニデート投与:76%)、対照群にも122例(9.9歳、86%、74%)が割り付けられた。3ヵ月時のフォローアップはそれぞれ86例、89例で行われ、6ヵ月時は106例、98例が完遂した。 3ヵ月、6ヵ月の両時点で、介入群は対照群に比べADHDの症状が有意に抑制された。症状の重症度変化の補正後平均差が、3ヵ月時は-2.9(95%信頼区間[CI]:-5.5~-0.3、p=0.03)、6ヵ月時は-3.7(95%CI:-6.1~-1.2、p=0.004)であった。 また、介入群では、不注意も3ヵ月時(p=0.01)、6ヵ月時(p=0.001)共に有意に改善し、多動/衝動的行動は3ヵ月時(p=0.13)には差はなかったものの、6ヵ月時(p=0.04)は有意な改善効果が認められた。 一方、介入群は対照群に比べ、中等度~高度の睡眠障害の頻度が3ヵ月の時点で有意に低く(30 vs. 56%、補正オッズ比[OR]:0.30、95%CI:0.16~0.59、p<0.001)、6ヵ月時も少ない傾向が認められた(34 vs. 46%、補正OR:0.58、95%CI:0.32~1.0、p=0.07)。3ヵ月時の介入群の絶対リスクの減少率は25.7%であり、治療必要数(NNT)は3.9であった。また、6ヵ月時の絶対リスク減少率は12.8%、NNTは7.8だった。 ADHD患児の症状に対する介入のベネフィットのうち、3ヵ月時の約2分の1、6ヵ月時の約3分の1は睡眠障害の改善によってもたらされた。また、介入群では、他のすべての患児のアウトカム、および精神的健康を除く保護者のアウトカムが改善される傾向がみられた。教師による評価では、患児の多動が3ヵ月および6ヵ月共に改善され、3ヵ月時には有意な改善効果が認められた(p=0.02)。 6ヵ月時の作業記憶は、対照群に比べ介入群の患児で良好であった。また、アクチグラフィによる睡眠時間の評価では、3ヵ月(平均差:10.9分、95%CI:-19.0〜40.8)および6ヵ月(平均差:9.9分、-16.3〜36.1)共に介入群で長い傾向がみられたものの有意な差はなく、いずれもサンプル数(3ヵ月時:54例、6ヵ月時:37例)が少なかったため補正解析は行われなかった。 著者は、「睡眠への簡易な行動療法的介入により、その多くが中枢神経刺激薬を処方されているADHD患児の症状が一定程度改善され、睡眠や行動、QOL、日常機能の改善効果も得られた。これらのベネフィットのほとんどは6ヵ月後も保持された」とまとめ、「このような介入法はプライマリケアでの使用に好適な可能性がある」と指摘している。

4803.

抗精神病薬の有害事象との関連因子は

 抗精神病薬は統合失調症およびその他の精神障害に広く処方されているが、一方で有害事象およびアドヒアランスへのネガティブな影響が共通して認められる。しかしこれまで、有害事象の発現率やマネジメントに注目した検討はほとんど行われていなかった。英国・エディンバラ大学のSu Ling Young氏らは、抗精神病薬の有害事象の発現率およびマネジメントについて系統的レビューを行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2014年12月16日号の掲載報告。 研究グループは本検討で、抗精神病薬の9種の臨床的に重要な有害事象の発現率とマネジメントについてレビューした。9種は、錐体外路症状、鎮静作用、体重増加、2型糖尿病、高プロラクチン血症、メタボリックシンドローム、脂質異常症、性機能障害、心血管への影響であった。事前に検索基準を特定し、3つのデータベースの検索と引用・参考文献の手動検索でシステマティックレビューを行った。2人の研究者が要約または全文をレビュー後、包含基準について合意を得た。包含した論文の質的評価は、事前に同意確認した基準を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・合計53試験が、包含基準を満たした。・有害事象の発現頻度の増大は、抗精神病薬の多剤投与と関連していた。・投与期間の長さは、有害事象の重症化(例:BMI値が高値)と関連していた。・クロザピンは、3試験におけるその他抗精神病薬との比較において、代謝障害との関連がより強かった。・オランザピンは、3試験で体重増加と最も関連していた。・高プロラクチン血症は、男性よりも女性で一般的であった。・性機能障害は男性が50%に対し女性は25~50%であった。・臨床ガイドラインの推奨にもかかわらず、脂質および血糖値のベースラインでの検査率は低率であった。・7試験で有害事象のマネジメント戦略が述べられていたが、その有効性について調べていたのは2試験のみであった。そのうち1試験は、非投薬の集団療法により体重の有意な減少を、もう1試験はスタチン療法により脂質異常の有意な減少を認めた。・総括すると、抗精神病薬の有害事象は多様でしばしばみられる。しかし、系統的評価は多くない。・有害事象マネジメントに関する科学的研究を、さらに行う必要性がある。関連医療ニュース 最新、抗精神病薬の体重増加リスクランキング 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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認知症、早期介入は予後改善につながるか

 これまで、アルツハイマー型認知症の進行速度に影響する因子についてほとんど知られていなかった。米国ジョンズ・ホプキンス大学のMatthew E. Peters氏らは、軽度アルツハイマー型認知症にみられる臨床的に重大な神経精神症状が、重度認知症への進行あるいは死亡に及ぼす影響について検討した。その結果、精神病症状、興奮 / 攻撃性、感情障害などが重度認知症への移行または死亡までの期間を早めることが判明したことを報告した。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年1月13日号の掲載報告。 研究グループは、Cache County Dementia Progression Studyのデータを用い、軽度アルツハイマー型認知症における臨床的に重大な神経精神症状と重度認知症への進行あるいは死亡との関連について検討した。Cache County Dementia Progression Studyは、新規に診断された症例において認知症の進行を調べる縦断的研究である。生存分析には未補正のKaplan-Meierプロットおよび多変量Cox比例ハザードモデルを用いた。推定ハザード比は、認知症発症時の年齢、ベースライン時における認知症罹病期間、性別、教育レベル、General Medical Health Rating、アポリポ蛋白Eε4(ApoE-ε4)遺伝子型を考慮して調整した。 主な結果は以下のとおり。・新規にアルツハイマー型認知症と診断された335例を対象とした。・68例(20%)が観察期間中に重度の認知症に至った。・精神病症状(ハザード比[HR]:2.007)、興奮 / 攻撃性(同:2.946)、すべての臨床的に重大な神経精神症状(ドメインスコア4以上、HR:2.682) は、重度認知症への急速な進行と関連していた。・精神病症状(HR:1.537)、感情障害(同:1.510)、 興奮 / 攻撃性(同:1.942)、軽度の神経精神症状(ドメインスコア1~3、HR:1.448)、臨床的に重大な神経精神症状(HR:1.951)は、早期の死亡と関連していた。・特異的な神経精神症状が、軽度アルツハイマー型認知症から重度認知症への進行や死亡に至るまでの期間短縮と関連することが明らかになった。 結果を踏まえて著者は、「重度認知症あるいは死亡までの期間を遅らせる可能性という観点から、軽度アルツハイマー型認知症における特異的な神経精神症状の治療について検討すべきである」とまとめている。関連医療ニュース アルツハイマーの早期発見が可能となるか 軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標 アルツハイマー病の早期ステージに対し、抗Aβ治療は支持されるか  担当者へのご意見箱はこちら

4805.

温泉療法でうつや睡眠も改善

 12日間の温泉治療プログラムにより、健康な高齢者の疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態が有意に改善したことが示された。スペイン・ハエン大学のPedro Angel Latorre-Roman氏らが、52例の高齢者を対象に試験を行った結果、報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2014年12月16日号の掲載報告。 検討は、スペイン国内の複数の地域から高齢者52例を集め、政府機関Elderly and Social Services(IMSERSOとして知られる)が作成した水治療(hydrotherapy)プログラムに参加してもらい評価を行った。参加者に、12日間の温泉治療プログラムを提供し、疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態について評価した。疼痛は視覚的アナログスケールを用いて、気分状態はProfile of Mood Statusを用いて、睡眠はOviedo Sleep Questionnaire、抑うつ状態はGeriatric Depression Scaleを用いて評価した。 温泉治療プログラムは、スペイン・ハエンにある温泉付きホテルBalneario San Andresで行われた。同温泉は、スペインミネラル水ハンドブックによると、低温(20℃以上)に分類され、重炭酸塩、硫酸塩、ナトリウム、マグネシウムを豊富に含む中硬水のアルカリイオン水であった。 主な結果は以下のとおり。・参加者52例の内訳は、男性23例(年齢69.74±5.19歳)、女性29例(同:70.31±6.76歳)であった。・温泉療法は、全被験者のすべての変数(疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態)を有意に改善した(p<0.05)。・疼痛の改善については性差がみられた。治療後、男性では有意な改善(p<0.01)がみられたが、女性ではみられなかった。・気分状態の改善についても性差がみられた。女性では抑うつ症状と疲労感の両者で有意な改善(p<0.05)がみられたが男性ではみられなかった。・12日間の温泉治療プログラムは、健康高齢者の疼痛、気分、睡眠の質、抑うつ状態にポジティブな効果をもたらすことが示唆された。関連医療ニュース うつ病患者で重要な食事指導のポイント うつになったら、休むべきか働き続けるべきか ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか  担当者へのご意見箱はこちら

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いま一度、ハロペリドールを評価する

 ハロペリドールは世界中で最も高頻度に使用されている抗精神病薬の1つである。過去の解説的(narrative)非システマティックレビューにより、さまざまな第一世代(従来型、定型)抗精神病薬との間に有効性の差がないと報告され、それに基づき「各種第一世代抗精神病薬の有効性は同等である」という根拠のない精神薬理学的な仮説が確立され、テキストや治療ガイドラインに組み込まれている。しかし一方で、仮説は臨床で受ける印象と相反する面があり、質の高いシステマティックレビューの実施が強く求められていた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMarkus Dold氏らは、ハロペリドールの有効性、受容性、忍容性を他の第一世代抗精神病薬と比較するため、メタ解析を実施した。その結果、ハロペリドールにおいてアカシジアの発現が少なかったことを除き、統計学的な有意差は確認されなかった。ただし、「解析対象となった臨床試験はサンプルサイズが小さく、方法論的に質が低いものであった。明確な結論を得るには質の高い臨床試験が必要である」と指摘している。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2015年1月16日号の掲載報告。 本検討では、2011年10月、2012年7月に、CINAHL、BIOSIS、AMED、EMBASE、PubMed、MEDLINE、PsycINFOなどの標準的なデータベースに基づいてCochrane Schizophrenia Group's Trials Registerおよび臨床試験登録を検索。より関連の深い出版物を特定するため、該当する全試験の参考文献を選別し、ハロペリドールを販売している製薬会社に問い合わせ、より関連の深い試験や特定された研究における欠測データに関する情報を取得した。さらに、欠測データを調べるため全対象試験の筆頭著者に連絡を取った。検索対象は、統合失調症および統合失調症様精神病に対し、経口ハロペリドールと他の経口第一世代抗精神病薬(低力価の抗精神病薬、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、レボメプロマジン、メソリダジン、ペラジン、プロクロルプロマジン、チオリダジンを除く)を比較したすべての無作為化対照試験(RCT)とした。主要アウトカムは、治療に対する臨床的に重要な反応とした。副次的アウトカムは全身状態、精神状態、行動、全体的受容性(理由を問わず、早期に試験を脱落した被験者の人数により判定)、全体的有効性(治療無効による症例減少で判定)、全体的忍容性(有害事象による症例減少で判定)、特異的な有害事象とした。 主な結果は以下の通り。・63件のRCT、被験者3,675例がシステマティックレビューに組み込まれた。・ハロペリドールの比較薬として多かったのは、ブロムペリドール(9例)、ロキサピン(7例)、トリフロペラジン(6例)であった。・対象となった試験は1962~1993年に公表されたもので、サンプルサイズが小さく(平均被験者数58例、範囲:18~206例)、事前に規定されたアウトカムの報告が不完全なものが多数あった。・主要アウトカムの結果はすべて、質が非常に低い、あるいは質の低いデータに基づくものであった。・多くの試験において、ランダム化、割り付け、盲検化の手順が報告されていなかった。・短期試験(12週以内)において、ハロペリドールと他の第一世代抗精神病薬群との間に、主要アウトカム(治療に対する臨床的に重要な反応)に関する差は認められなかった(40件、2,132例、RR:0.93、CI:0.87~1.00)。・中期試験において、ハロペリドールの有効性は他の第一世代抗精神病薬群に比べ小さいものであったが、このエビデンスは1件の試験に基づくものであった(1件、80例、RR:0.51、CI:0.37~0.69)。・エビデンスは限られていたが、ハロペリドールは他の抗精神病薬に比べ陽性症状を軽減した。・全身状態、他の精神状態アウトカム、行動、理由を問わない試験からの早期脱落、無効による早期脱落、有害事象による早期脱落において群間差は認められなかった。・唯一認められた統計学的有意差は特異的な副作用で、ハロペリドールは中期試験においてアカシジアの発現が少なかった。・メタ解析による結果は、第一世代抗精神病薬と同等の有効性を示唆してきた過去の解説的な非システマティックレビューの見解を支持するものであった。・有効性関連のアウトカムにおいて、ハロペリドールと他の効果の高い第一世代抗精神病薬との間の差異を示す明らかなエビデンスはなかった。・ハロペリドールのリスクプロファイルは他の第一世代抗精神病薬と同様であった。関連医療ニュース 鎮静目的のハロペリドール単独使用のエビデンスは蓄積されたのか 急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は ブロナンセリンの薬理学的メカニズムを再考する  担当者へのご意見箱はこちら

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神経症傾向だと認知症リスクが高い

 パーソナリティ特性は認知症リスクと関連している。しかし、認知機能の推移との関連はほとんどわかっていない。イタリア・ボローニャ大学のMartina Luchetti氏らは、高齢者における主要なパーソナリティ特性と認知機能ならびにその低下との関連性を検討し、既報のメタアナリシスを行った。その結果、パーソナリティは高齢者における認知機能低下と関連しており、これはすでに確立している臨床因子やライフスタイル因子に匹敵することが明らかになった。The journals of gerontology. Series B, Psychological sciences and social sciences誌オンライン版2015年1月12日号の掲載報告。 著者らは、大規模全国サンプル(1万3,987例)の4年間のフォローアップから、パーソナリティ特性、客観的・主観的記憶、認知状態についての情報を収集した。各パーソナリティ特性について、パーソナリティと認知機能の変化を検討するため、5つの前向き研究からメタアナリシスを行った。 主な結果は以下のとおり。・神経症傾向(neuroticism)の高さは、すべての認知機能の低いパフォーマンスおよび記憶力低下と関連していた。一方で、統制性(conscientiousness)や開放性(openness)が高い高齢者は、同時記憶のパフォーマンスがより高く、継時的な記憶力低下がより少なかった。 ・すべての特性は、主観的記憶と関連していた。・統制性の高さと外向性(extraversion)の低さは、高い認知状態および認知機能低下の少なさと関連していた。・わずかではあるものの、これらの関連性は、高血圧、糖尿病、精神疾患の治療歴、肥満、喫煙、運動不足よりも概して大きかった。・本検討により、神経症傾向および統制性パーソナリティと認知機能低下との関連性が裏付けられた。【関連コンテンツ】 認知症タイプ別、各認知機能の経過を比較 抗コリン薬は高齢者の認知機能に悪影響 軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標

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アリピプラゾール持効性注射薬の安全性は

 米国・大塚製薬のArash Raoufinia氏らは、統合失調症患者に対するアリピプラゾール月1回投与(アリピプラゾール持効性注射薬400mg:AOM400)の導入について、薬物動態学的(PK)データ、PKシミュレーションおよび臨床試験を概説し発表した。すべてのデータ所見は、統合失調症患者へのAOM導入時の投与量は400mgとすることを支持するものであり、すでに経口アリピプラゾールを服用し症状が安定している患者への導入の有効性、安全性、忍容性が確認されていることなどを報告した。Current Medical Research & Opinion誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。 概説は、薬物動態学的(PK)試験データ、PKシミュレーションデータ、対照臨床試験および自然主義的研究のデータを対象としたものであった。 主な結果は以下の通り。・PKデータは、AOMの開始および維持用量について400mgを支持するものであった。・AOM400開始後のアリピプラゾールの血中濃度プロファイルは、経口アリピプラゾール10~30mg/日投与と一致していた。・PKシミュレーションおよび単剤投与臨床試験は、AOM400導入後7日間でアリピプラゾールの血中濃度が治療域に達することを示した。・患者間にばらつきがあったが、経口アリピプラゾールまたはその他抗精神病薬を服用時は、確実に治療域に達するのに必要と思われた重複期間は14日間であった。・臨床試験において、AOM400導入患者が経口アリピプラゾール(10~15mg/日で安定)を併用している場合、またはその他の抗精神病薬の継続服用が14日以内の場合は、4週間後に(平均血中濃度93~112ng/mL)、規定されているアリピプラゾールの治療濃度域(94.0~534.0ng/mL)に達した。・同じく臨床試験において、AOMの開始用量は400mgが有効であり忍容性が良好であった。・期間やデザインが異なる試験を包含して分析した結果、1,296/1,439例(90.1%)の患者がAOM400で開始し、用量の変更を必要としていなかった。・また同分析で、効果が認められず試験を中断したAOM400治療患者の割合は低かった(範囲:2.3~10.0%)。・自然主義的研究の事後解析では、AOM400開始前にその他経口抗精神病薬から経口アリピプラゾールに切り替える(cross-titration)場合、1週間超~4週間の期間が、1週間以内よりも忍容性が良好であった。このことは、切り替え期間中の有害事象発生による中断率の割合が低い(2.7%[7/239例] vs. 10.4%[5/48例])というエビデンスで支持されるものであった。・主要な維持療法試験におけるAOM400開始月の有効性および安全性は、経口アリピプラゾール10または30mg服用の患者集団と類似したものであった。・以上のように、PKデータ、PKシミュレーション、臨床試験からの所見はすべて、統合失調症患者への適切なAOM導入用量は400mgであることを示していた。・AOM導入前に経口アリピプラゾールに切り替える際、経口アリピプラゾール用量を漸増(目標用量10~30mg/日)する一方でそれまでの経口抗精神病薬を漸減するにあたっては、期間を1週間超~4週間とするのが有効な戦略と思われた。・AOM400の有効性、安全性、忍容性は、患者がすでに経口アリピプラゾール10または30mg/日服用もしくはその他の抗精神病治療で安定していたか否かにかかわらず、また同一の経口抗精神病薬をAOM400導入後14日間継続していた場合でも、類似したものであった。関連医療ニュース アリピプラゾール注射剤、維持療法の効果は アリピプラゾール経口剤⇒注射剤への切り替え、その安全性は 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

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重症うつ病と双極性障害の関係:徳島大

 重症うつ病は、双極性障害(BD)へと診断が変わるリスク因子の可能性がある。また精神病性うつ病(PD)は、BDと一貫した関連が認められる。徳島大学の中村 公哉氏らは、重症うつ病を有し初回入院した患者の、BDのリスクと精神病性特徴を調べ、重症うつ病診断の安定性、およびPDと非PDとの違い、さらに電気痙攣療法(ECT)の効果について検討した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2014年12月22日号の掲載報告。 2001~2010年に、重症うつ病(ICD-10に基づく)で入院した、精神病症状あり/なしの患者について、後ろ向き評価で検討した。被験者は89例で、平均年齢は55.6(SD 13.9)歳であった。 主な結果は以下の通り。・フォローアップ評価75ヵ月の間に、患者11例(12.4%)がBDを発症した。そのうち9例は、入院後1年以内の発症であった。・BD発症と有意に関連していたのは、閾値下の軽躁症状のみであった。・うつ病エピソード数や身体疾患歴は、PD患者との比較において非PD患者で有意に多かった。一方でECTの実施は、非PD患者よりもPD患者で有意に多かった。・入院期間の長さと、入院からECT実施までの日数には、有意な関連が認められた。・閾値下の軽躁症状は、とくに抗うつ薬の服用に慎重な高齢患者において、BDの前駆症状や顕性フェノタイプの指標となりうる可能性があった。・重症うつ病において、しばしば非PDは身体疾患が続いて起こり、PDを有する患者よりも再発が多く、それが“プライマリな”障害となり、ECTを要する頻度が高いと思われた。・ECTは、精神病性特徴を問わず重症うつ病には有効であった。ECTは早期であればあるほど、治療アウトカムが良好となることが予想された。関連医療ニュース うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける? 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか  担当者へのご意見箱はこちら

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学校での自殺予防介入は有効/Lancet

 学校ベースの自殺防止プログラムにより、生徒の自殺企図や重大な自殺念慮を減らすことができたことを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のDanuta Wasserman氏らが、多施設共同集団無作為化対照試験SEYLEの結果、報告した。若者の自殺は深刻な公衆衛生問題となっており、根拠に基づく予防プログラムへの期待が高まっている。今回の結果について著者は、「学校でのユニバーサルな自殺予防介入が有益であることが実証された」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年1月8日号掲載の報告より。QPR、YAM、ProfScreenの3つの介入群と対照群について検討 研究グループが行ったSEYLE(Saving and Empowering Young Lives in Europe)研究は、学校ベースの自殺行動予防介入の有効性について検討したもので、2009年11月1日~2010年12月14日の間に、欧州168校から年齢中央値15歳(IQR:14~15歳)、1万1,110例の生徒を集めて行われた。 学校単位で無作為に、3つの介入群の1つまたは対照群に割り付けた。各介入群には、(1)教師など学校関係者への質問・説得・照会(Question、Persuade、and Refer:QPR)のゲートキーパートレーニング、(2)生徒を対象とした気付きのためのメンタルプログラム(Youth Aware of Mental Health Programme:YAM)、(3)専門家によるリスクがある生徒のスクリーニング(ProfScreen)がそれぞれ行われた。 主要評価項目は、フォローアップ3ヵ月、12ヵ月間の自殺企図件数とした。分析には、これまでに自殺を企図した生徒や研究開始前2週間以内に重大な自殺念慮が認められた生徒を除き、全生徒のデータを含んで行われた。生徒を対象としたYAMプログラム群で有意な効果 被験者は、QPR群に40校(2,692例)、YAM群に45校(2,721例)、ProfScreen群に43校(2,764例)、対照群に40校(2,933例)が無作為に割り付けられた。 結果、フォローアップ3ヵ月時点では介入群と対照群に有意差は認められなかった。 12ヵ月時点ではYAM群で、対照群と比較して自殺企図発生(オッズ比[OR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.24~0.85、p=0.014)、および重大な自殺念慮発生(同:0.50、0.27~0.92、p=0.025)の有意な低下が認められた。それぞれの発生は、自殺企図がYAM群14件(0.70%)、対照群34件(1.51%)、重大な自殺念慮は15件(0.75%)と31件(1.37%)であった。 なお試験期間中、自殺に至った生徒はいずれの群でもいなかった。

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抗精神病薬は脳に委縮などのダメージを与えるのか

 最近のデータで、抗精神病薬治療と統合失調症患者における皮質灰白質減少との関連が示され、抗精神病薬の脳の構造・機能へのダメージに関する懸念が生じている。しかし、統合失調症患者個人の皮質機能を直接測定し、抗精神病薬に関連する灰白質の減少を示した研究はこれまで行われていなかった。米国・カリフォルニア大学のTyler A. Lesh氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象としたケースコントロール横断研究を実施し、抗精神病薬が脳の構造と機能に及ぼす影響を検討した。その結果、抗精神病薬による治療を行った患者は、行わなかった患者に比べ前頭葉皮質の有意な菲薄化が認められたが、前頭葉機能の活性亢進ならびに行動パフォーマンスの上昇がみられたことを報告。有害な影響ばかりではなく認知機能の改善に働く可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。抗精神病薬は脳委縮などのダメージと関連したが脳機能の活性とも関連した 研究グループは、初回エピソード統合失調症患者における抗精神薬の脳構造および脳機能に及ぼす影響について、皮質厚測定ならびに事象関連機能的MRIによるAXバージョンContinuous Performance Task(AX-CPT)を用いて検討した。2004年11月から2012年7月までに、カリフォルニア大学デービス校のImaging Research Centerにてケースコントロールによる横断的調査を実施。被験者は、初回エピソード統合失調症に特化した外来診療部Early Diagnosis and Preventive Treatment Clinicより収集した。 抗精神病薬を投与している初回エピソード統合失調症患者(抗精神病薬群)(23例)、抗精神病薬を投与していない患者(非抗精神病薬群)(22例)、健常対照群(37例)に対し、1.5-Tスキャナーを使用した機能的MRIを実施した。行動パフォーマンスを測定し(タスク実施の正確性、反応時間、d'-contextスコアによる)、またVoxelwise統計的パラメトリックマップによりAX-CPT実施中の脳機能活性の差異を検査し、皮質厚のvertexwiseマップにより全脳域にわたる皮質厚の差異を検査した。 抗精神薬の脳に及ぼすダメージについて検討した主な結果は以下の通り。・抗精神病薬群では、前頭葉(平均減少値[MR]:0.27mm、p<0.001)、側頭葉(同:0.34mm、p=0.02)、頭頂部(同:0.21mm、p=0.001)、後頭部(同:0.24mm、p=0.001)の大脳皮質各部において、対照群に比べ有意な皮質の菲薄化が確認された。・非抗精神病薬群と対照群の間で、クラスタ補正後の皮質厚に有意差は認められなかった。・抗精神病薬群は非抗精神病薬群と比べ、背外側前頭前皮質(DLPFC)(MR:0.26mm、p=0.001)、側頭皮質(同:0.33mm、p=0.047)において皮質の菲薄化が認められた。・抗精神病薬群、非抗精神病薬群とも、対照群と比べAX-CPT実施中DLPFC活性の減少が認められた(対抗精神病薬群p=0.02、対非抗精神病薬群p<0.001)。・ただし、抗精神病薬群は非抗精神病薬群と比べDLPFCの活性が高く(p=0.02)、行動パフォーマンスも高かった(p=0.02)。・抗精神病薬治療と脳の構造面、機能面、そして統合失調症に繰り返し認められる行動面での欠陥との関係が明らかになった。・抗精神病薬による短期治療は前頭葉の菲薄化と関連していたが、認知機能の改善および前頭葉の機能活性との関連も認められた。・本知見は、抗精神病薬の脳に及ぼす影響に関して増えている研究論文に重要な流れを与え、脳の神経解剖学的変化が脳機能に対し有害な影響を与える可能性があるという解釈への警告を示唆するものであった。関連医療ニュース 若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに 抗精神病薬が脳容積の減少に関与か 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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ペコロスの母に会いに行く【認知症】

今回のキーワード社会脳社会的認知進化心理学・進化精神医学DSM-5デフォルトモードネットワークヒューマンセンタードケア「認知症の人はなんで無邪気なの?」 皆さんは、認知症になった人が無邪気になっていくのを不思議に思ったことはありませんか? 単にもの忘れをするだけでなく、ちょっとずつ無邪気に幼くなっていきます。 今回は、その原因とかかわり方のコツを、進化心理学・進化精神医学のメインテーマである社会脳(社会的認知)という視点から、いっしょに考えていきましょう。また、2013年にDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引第5版)への改定に伴い、認知症の診断基準が変わりました。その内容とその理由も解説します。 取り上げるのは、2013年の映画「ペコロスの母に会いに行く」です。ペコロスとは、小さい西洋玉ねぎのことで、この映画の原作者である主人公の頭をユーモラスに表した愛称です。彼の母親が認知症を発症してからの介護生活の様子が、ありのままにそしてほのぼのと描かれています。もの忘れ―学習と記憶の障害 主人公の男やもめのゆういちは、認知症の母のみつえの介護をしながら、息子のまさきと3人で暮らしています。日常生活でゆういちとみつえの間で交わされる会話のワンシーンをみてみましょう。ゆういちが「また!母ちゃん!」(電話の)受話器ば外しっぱなしにしとったらいかんて言うたろうが」「なんかあった時に連絡のつかんやろが」と注意します。すると、みつえは「また親ばわるもん(悪者)にする、もう」と言い返します。 このやり取りが、日々の挨拶のように繰り返されます。みつえは、電話の受話器を戻すよう言われた体験を丸ごと忘れており、忘れたことに自覚がないのです。つまり、「忘れたことを忘れている」のです(メタ記憶の障害)。 これは、典型的な認知症のもの忘れの症状です(健忘)。この記憶障害は、従来の診断基準では、全ての認知症において絶対的な項目でした。しかし、新しい診断基準(DSM-5)では、アルツハイマー病を除く認知症において、6項目の診断基準の中の「学習と記憶の障害」の1項目として格下げされています。 その理由として、他の3つの認知症の特徴があげられます(表1)。1つ目として、脳血管性認知症はまだら認知症であり、必ずしも記憶障害が目立たないからです。2つ目として、レビー小体型認知症は認知症状が動揺性であり、記憶障害が固定されていないからです。3つ目はとして、前頭側頭型認知症は前頭葉症状が主であり、記憶障害が初期に目立たないからです。 表1 それぞれの認知症の記憶障害の特徴   アルツハイマー病 脳血管性認知症 レビー小体型認知症 前頭側頭型認知症 記憶生涯 必ず目立つ 必ずしも目立たず 目立ったり目立たなかったりと揺れ動く 初期に目立たず 言い間違え、言葉数が少ない―言語の障害 認知症の進行に伴い、自宅介護が難しくなったため、ゆういちはみつえをグループホーム(介護施設)に入所させます。ゆういちが訊ねてきた時のワンシーンです。みつえは「ゆういち、どこにおったん?」「フリーターの仕事や(か)?」と訊ねます。ゆういちはすかさず「フリーライター!」と言い返します。これは言葉の言い間違え(音韻性錯語)です。このようなボケとツッコミのユーモアがこの映画には溢れています。その後、みつえは問いかけに対して言葉が出なかったり言葉数が少なくなっていきますが(無言症)、そんなみつえをゆういちは温かく見守ります。 これらの言葉の症状も、認知症の診断基準の1つです(言語の障害)。従来の診断基準の失語に当たります。顔が分からない― 知覚―運動の障害 ゆういちがグループホームからみつえを散歩に連れ出そうとするシーン。みつえは「この盗人(ぬすっと)、嘘つき!」「ああっ!悪者(わるもん)がおる。誰か誰かー!」と叫び出します。すぐにゆういちは「母ちゃん、ほら!」とゆういちが、帽子をとって薄毛の頭を目の前に向けると、「アハッ、なっ、ゆういちやったとか、あ~ハハハッ」と薄毛の頭を撫で回し、「えいえいえい」と叩き、「はげちゃび~ん!」と無邪気に騒ぎます(タイトル画像)。薄毛を確認してようやく息子のゆういちであると認識しています。しかし、ゆういちが帽子をかぶると、すぐに「誰ね?」と言い、息子の顔が分からなくなっています(相貌失認)。 みつえが大正琴を弾くシーン。「どげんやったかいな?ハハハッ」と弾き方を忘れたことを笑い飛ばしています。本来、長年体に染みついていた動きはなかなか忘れないものです。楽器の弾き方を忘れるのは症状とまでは言えません。しかし、その後にみつえは、読めない字を書くようになります。字が書けなくなるのは、認知症の症状と言えます(構成失書)。着替えや歯磨きなどの日常生活の動作ができなくなると(更衣失行、観念失行)、介護がさらに必要になってきます。 このようにものごとが認識できなくなる症状と、ものや体の動かし方が分からなくなる症状を合わせたものが、新しい認知症の診断基準の1つになっています(知覚―運動の障害)。これは、従来の診断基準の失認と失行に当たります。段取りが立てられない―実行機能障害 みつえがまだ家にいる時のワンシーン。ゆういちとまさきは夕食に弁当を買って食べています。みつえが料理できなくなっていることを間接的に描いています。料理は、献立を考え多くの段取りを経て作る必要があります。 このように、段取りを立てて計画的に行動できなくなる症状も、認知症の診断基準の1つです(実行機能障害)。これは従来と同じ診断基準です。実行機能とは、意志→計画→実行→評価(フィードバック)という一連の手順を踏んで、ものごとを実行していく脳の働きです。気付きにくい―複雑性注意の障害 さきほどの電話の受話器を戻すことをみつえが忘れているワンシーンでは、電話のそばに「受話器ば絶対にもどすこと」というメモが貼られています。しかし、みつえは、毎回、電話の対応でいっぱいいっぱいになっており、そのメモに気付かないのです。さきほどのゆういちの顔が分からなかったシーンでは、ゆういちはみつえの背後から「母ちゃん」と声をかけています。そして、みつえがゆういちを確認する前に、車イスを後ろに引いています。みつえは、目の前に見えていないゆういちの声に注意を向けることができずに混乱しています。また、みつえが夜遅くまでゆういちの帰りを駐車場で待っているワンシーンでは、ゆういちの車が間近まで迫ってきても、ゆういちを出迎える気持ちでいっぱいであるため、全く危機意識がありません。「ゆういち、お帰り~」と笑顔で迎えます。ゆういちは「母親ばひいたらシャレならんやろがっ!」「あやうくひいてしまうとこやった」と肝を冷やします。 これは、一度に複数の対象に注意を向ける力が落ちて、ものごとの変化や危機に気付きにくい症状で、新しく追加された認知症の診断基準です(複雑性注意の障害)。無邪気になる―社会的認知の障害 みつえが家で留守番をしている時に電話がかかってくるワンシーン。みつえが電話に答えます。「えっ?オレって誰ね?」「アハハッ、まさき(孫)か?」「まさき、どげんしとると?」「こっちには帰ってこんとね?」「ええっ?事故ば起こしたけん帰れんて!?」「示談?」「金ば払えば良かて」「そげん大きな金、持っとらんやろ?」「それ、ばあちゃんが払うてやる」と涙ぐみます。これは、おれおれ詐欺(振り込め詐欺)に引っかかっている典型的なパターンです。電話の相手を信用し切ってしまい、言われたことにあっさりと応じています。相手から出し抜かれないようにしようと相手の気持ちを推し量る警戒心(心の理論)が鈍くなり、だまされやすくなっています。 さきほどのゆういちの頭をみつえが撫で回し叩くシーン。ゆういちが痛がっているのになかなか叩くのを止めず、「はげちゃび~ん!」とふざけています。微笑ましく見える一方、見方を変えれば、みつえはゆういちの気持ちを感じ取ること(共感、情動認知)が弱くなり、無神経で無遠慮で一方的になっています。認知症が進むにつれて、表情を読み取る能力(表情認知)も弱くなり、同時に本人も徐々に無表情になっていきます。 みつえは「父ちゃん(夫)もたかよ(子どもの時に亡くなった妹)も死んでからの方がようウチに会いに来てくれたとよ」と言います。ゆういちが「死んでるって知っとっと?」と聞くと、「何ば言うとるね!父ちゃんもたかよも死んどろうもん」と笑顔で答えます。過去にみつえの脳に紡(つむ)がれた人生の「模様」が映る記憶の「織物」が解(ほど)けていき、現在の現実世界に混じり合っています。相手(社会)との共通の時間感覚や論理性が揺らぎ、自分を適切に振り返ること(自己認識、メタ認知)が難しくなっています。 みつえは、だまされやすくなり、相手の気持ちが分かりにくくなり、自分を振り返りにくくなっています。しかし、裏を返せば、素直で天真爛漫なお人好し、つまり無邪気になっていると言えます。 これらは、人とうまくやっていくための社会的な能力が低くなっていく症状で、新しく追加された認知症の診断基準です(社会的認知の障害)。従来は「理解力の低下」という曖昧な用語を使っていました。社会的認知とは、精神医学用語で、相手の気持ちを察して相手(社会)に対して適切に振る舞うという意味で、社会的能力とも呼ばれます(表2)。日常用語の社会的認知は「広く世間(社会)に知れ渡っている(認められている)」という意味ですので、この違いに注意が必要です。 表2 社会的認知   意味 心の理論 相手の気持ちを推し量る 共感性 相手の気持ちを感じ取る 表情認知 相手の表情を読み取る 社会性 相手(社会)にうまく合わせる 理性的抑制 相手(社会)のために我慢する 自己認識 自分(の気持ち)を振り返る(推し量る) 私たちはなぜ無邪気ではないのか?―新しい診断基準(DSM-5)のポイント ゆういちが、営業の仕事をサボって、出先の公園で趣味のギターの練習をしている時に、上司から電話がかかってくるシーン。何をしているかと聞かれて、「せっかくこっちに来たけんですね、いくつか広告ば取ろうと思って何件も回っとっとですよ」「えっ、どこばどげん回っとかってですか?」「いや~あの何件も回り過ぎてよう確認しとらんですね」とうまく取り繕うとしています。また、ゆういちは、みつえを自宅で介護することに限界を感じている時、施設に入所させるか思い悩んでいます。さらに、ゆういちは、認知症のみつえに冗談を交えて接しています。 このようなその場をしのぐウソ、気遣いによる苦悩、そして場を和ませるユーモアなどは、私たちがより良い人間関係を築き、立ち振る舞おうとするズルさであり賢さでもあります(社会的認知)。これは、「人間性」「人間らしさ」そのものです。これが、社会生活を送る私たちが決して無邪気ではない答えでもあります。 対照的に、みつえは無邪気です。その無邪気さとは、ウソもつけないですが、先読みや裏読みもできず、お世辞や冗談も思い付かず、悩みや葛藤がなくなるということです。 新しい診断基準では、認知症の中心的な症状のとらえ方が、従来の記憶障害から、社会的認知の障害へとシフトしていると言えます。なぜなら、そもそも認知症にまつわる困難は、物忘れそのものよりも、周囲の人の気持ちや自分の状況を分からなくなることだからです。 表3 認知症の診断基準 DSM-IV-TR DSM-5 映画のエピソード例 記憶障害 →学習と記憶の障害 電話の受話器を戻し忘れることを繰り返す 失語 →言語の障害 言葉の言い間違え、言葉数が少なくなる 失認 知覚―運動の障害 薄毛を見ないとゆういちの顔が分からなくなる字の書き方が分からなくなる 失行 実行機能障害 料理ができない ― 複雑性注意の障害 すぐそばのメモや車の動きに気付かない ― 社会的認知の障害 振り込め詐欺にだまされるゆういちが痛がっている様子が分からないすでに死んでいる夫や妹に会えると考えている 認知症の行動・心理症状(BPSD) これまで紹介してきた6項目の診断基準は、認知症状(中核症状)と呼ばれます。ここから二次的に現れる症状は、認知症の行動・心理症状(BPSD、周辺症状)と呼ばれます。これらをいくつか見てみましょう。 (1)幻覚 みつえがゆういちに「なあ、さっきたかよ(子どもの時に亡くなった妹)が来て、天草にいっしょに行こうて言うてくれたとばい」「そのあと父ちゃん(すでに亡くなった夫)が来て」「ウチの手ばずーとしっかりと握ってくれらしたと」「ごめんな~ごめんな~ヘヘヘヘッ」と楽しげにのろけます。みつえは見えないものが見えていることになります(幻覚)。この症状は、過去の記憶と現在の現実世界が区別しにくくなり(社会的認知の障害)、記憶を現実のものと認識し知覚してしまうことで起こります。 ちなみに、東北地方に伝わる「座敷わらし」は、認知症の幻覚、特にレビー小体型認知症の「幻の同居人(小人幻視)」の症状である可能性があります。「座敷わらしが出てくるとその家は栄えて、いなくなるとその家は傾き落ちぶれる」という言い伝えは、裏を返せば、経済的に恵まれている家は、認知症の人を養う余裕があり、結果的にその認知症の人が座敷わらし(幻覚)を見ることになります。逆に、貧しい家は、認知症の人を養う余裕がなく、座敷わらし(幻覚)を見てしまう認知症の人がいないということです。つまり、正確には「座敷わらしは、栄えている家には出てくるが、落ちぶれた家には出てこない」ということです。 (2)妄想 さきほどの電話の受話器の戻し忘れのシーンで、みつえは「また親ばわるもん(悪者)にする、もう」と言い返しています。ここから分かることは、みつえは自分に非があるという認識ができず(社会的認知の障害)、叱られた理由の辻褄を合わせようとして(合理化)、「息子が親を悪く言うようになった」とひがみっぽくなっています(被害念慮)。 さらに、ひがみっぽさから、家族からいじめられていると思い込むことがあります(被害妄想)。例えば、お金をどこかに隠した後、隠したこと自体を忘れてしまった場合、お金がないことに気付くと「(家族の誰かに)お金を盗られた」という思い込みに発展します(もの盗られ妄想)。 (3)誤認 みつえは、ちいちゃん(すでに亡くなった幼馴染み)に書いた手紙の返事が来ないと郵便配達員にたずねた過去を、グループホームで思い出しているシーン。その直後にやって来たまさき(孫)を見て、「ちょっと待っとって、郵便屋さん」「書いてますけん」と言います。これは、過去の記憶と現在の現実が区別しにくくなることに加えて(社会的認知の障害)、孫の顔の認識ができなくなっていることで(知覚―運動の障害)、目の前にいる孫を郵便配達員と人違いしています(人物誤認)。 また、グループホームの別の認知症の女性は、ゆういちの薄毛を見て、女学校時代に憧れだった教師と人違いしています。 (4)逸脱行動、感情失禁 入所中の認知症の男性が、若い女性スタッフの胸を次々と触るシーンがあります。ゆういちは思わず「あの子も触られるっとですか?」と思わずうらやましそうに言ってしまいます。これは、ルールを守るために欲求を抑える心の働き(理性的抑制)が弱まっていることで(社会的認知の障害)、性的にみだらになってしまう症状です(性的逸脱行動)。その後、この男性は叱られますが、感情を抑える心の働き(理性的抑制)が弱いことで、簡単に泣き出してもいます(感情失禁)。 社会的認知の障害はなぜ目立つのか? 「認知症の人はなんで無邪気なの?」という最初の疑問への答えは、これまで紹介してきた社会的認知の障害による症状が出てくるからであると言えます。それでは、そもそもなぜ社会的認知の障害は目立つのでしょか? このさらなる疑問を、進化心理学・進化精神医学の視点で探ってみましょう。 人間の脳において、意識的な活動のエネルギーは5%しか消費されていません。修復と維持に20%が消費されます。そして、実は残りの75%は、無意識的な活動のエネルギーに消費されていることが最近の研究で分かってきました(デフォルトモードネットワーク)。この脳活動は、何もせずに頭を働かせていないと高まり、課題などで意識的に頭を働かせると低まります。それにしても、あまりにもエネルギーを使い過ぎているようにも思えるこの無意識的な脳活動とは一体何でしょうか? それは、はっきりしたことはまだ解明されていませんが、ぼんやりと思い浮かべること(記憶の検索)、自分がいつどこにいるかなどの自分の状況を把握すること(見当識)、自分を振り返ること(自己認識)などの活動が考えらえています。これは、ちょうど世界(相手、社会)に対して自分をうまく関係付け、位置づけていくための高度な脳活動です。さらには、社会的認知につながる能力というふうにも考えられます。 例えるなら、脳という「コンピュータ」は、世界(相手、社会)という「キーボードタッチ」や新奇な状況という「コンピュータウィルス」への察知のために、脳活動全体の75%の「電力」を使い、常に「待機状態」になっているということです。そして、この「待機状態」の脳活動は、最も「電力」が費やされて動かされているため、いち早く「故障」しやすいということが考えられます。実際に、この脳活動の部位は、アルツハイマー病で脳血流が低下する部分にほぼ一致しています。これが、「認知症ではなぜ社会的認知の障害が目立つのか?」という疑問への答えです。実行機能の正体は? 実行機能障害は、認知症のもともとある診断基準の1つであるとさきほどご紹介しました。実は、この実行機能は、社会的認知につながっていると言えます。これはどういうことでしょうか? 社会的認知(社会脳)の進化の流れを説明します。その出発点は、原始の時代、私たちの祖先が、競争と協力をうまく使い分けるため、相手の心の視点に立つ能力を得たことです(心の理論)。すると、自分を離れて外から自分自身を見る視点が得られます(自己認識)。これは、自分は、相手を見ていると同時に相手から見られているという2つの視点に立つことでもあります(メタ認知)。さらには、同時並行的にものごとを考え記憶することができるようになります(ワーキングメモリー、作動記憶)。 複数の視点(メタ認知)を持つことで、連続的な時間軸の中で、過去・現在・未来を別々の時間帯(視点)として認識できるようにもなります。だからこそ、過去の振り返りを現在に行い、未来に生かすことができます。こうして、計画を立ててものごとをうまく成し遂げることができるようになるのです(実行機能)。 実行機能は社会的認知がつながっているという説明を端的にすると、社会的認知が相手(人)の心に視点が置かれているのに対して、実行機能は時間軸に視点が置かれているというだけの違いであるということです。複雑性注意の正体は? 複雑性注意の障害は、認知症の新しい診断基準の1つであるとさきほどご紹介しました。実は、この複雑性注意も、社会的認知につながっていると言えます。これはどういうことでしょうか? それは、社会的認知を源とするさきほどの同時並行的にものごとを考え記憶すること(ワーキングメモリー)とは、一度に複数の注意を向けることでもあるということです(複雑性注意)。いわゆる「ながら行動」です。 その「メモリー容量」は、数字なら約7個、文字なら約6個、単語なら約5個であることが分かっています(マジカルナンバー7±2)。この数は、注意(認知)し行動する内容の複雑さによって変わってきます。例えば、食事会で皆がいっしょに話せる人数は4人が限界ではないでしょうか? 5人以上だと、自然と4人以下の少人数に分かれていきます。また、会議での積極的な発言者は4、5人までが一般的ではないでしょうか? 残りの人たちは、「観客」と化していることが多いです。なぜなら、これが人間の脳の「メモリー容量」の限界だからです。それ以上の人数の人たちがそれぞれ違う発言をする場合、多くの人が混乱してストレスになるからです。それをみんな無意識に理解していると言えます。だからでしょうか? 暗証番号は、皆が余裕を持って覚えられる4桁が通常です。クレジットカード番号も4桁ごとに分けられています。 複雑性注意は社会的認知につながっているという説明を端的にすると、社会的認知が認知の質に力点が置かれているのに対して、複雑性注意は注意(認知)の量(数)に力点が置かれているというだけの違いであるということです。なぜ良い思い出の方が残りやすいのか? みつえは、亡くなった夫が現れたと楽しげにのろけています。しかし、かつてはその夫は酒癖が悪く、みつえは大変に苦労していたのでした。良い思い出ばかりを思い出し、悪い思い出は忘れてしまっているようです。なぜ良い思い出の方が残りやすいのでしょうか? 一般的にも、これは「記憶美人」と呼ばれます。 その理由は、悪い思い出は、社会的認知に関わる記憶が多いからであることが考えられます。例えば、人間関係においての苦労や後悔などです。一方、良い思い出は、より原始的な欲求に関わる記憶なので、比較的残りやすいことが考えられます。例えば、満足や愛情(愛着)などです(ドパミン系)。 認知症で悪い思い出は忘れてしまうとは、まさに「邪気」(悪意、悪感情)がなくなり、無邪気になるということです。社会的認知から考える認知症のリハビリテーションは? 認知症の問題が単なる記憶の問題だけではないことを知った今、単に記憶力のトレーニングをしても効果は限られていることに気付きます。ここからは、社会的認知を踏まえて、認知症のリハビリテーションを3つご紹介しましょう。それは、役割を担うこと、自尊心を保つこと、配慮することです(表4)。役割を担う (1)お年寄りはなぜ昔話をしたがるのか?―回想法 ゆういちがみつえに注意するシーン。ゆういちが「よかね、セールスやら来たら追い払わないかんばい」「話しやら聞かんでよかけんね」と言うと、みつえは「分かっとるて」「分かっとらんけん言いよったい」「あんましわめくと夜声八丁(夜の声が八丁先まで響く妖怪)が来っぞー!」と、子どもの時のゆういちに接しているように脅します。ゆういちは「こん頃の事ば忘れて昔の事ばっか言うとさね」と嘆いています。 認知症のあるなしにかかわらず、お年寄りは昔話をよくします。もちろん認知機能の低下により、最近のもの覚えが悪くなり(短期記憶の障害)、比較的残っている昔の思い出を代わりに話していると説明することはできます(長期記憶の保持)。しかし、それだけでしょうか? むしろ、多くのお年寄りはあえて昔話をしており、この現象には普遍性がありそうです。長期記憶が保持されることに意味があるのではないかということです。ここから考えられることとして、お年寄りが昔話をすることで心の健康がより保たれる可能性があります。この理由を進化心理学的に考えてみましょう。 私たちの祖先が言葉を話すようになった20万年前からの原始の時代、文字はまだありませんでした。文字が発明されたのはたかだか数千年前です。ましてや、現代のようなインターネットもありません。そんな中、私たちの祖先は、共同体の生存の確率を高めるため、遠い昔に起こった自然災害や部族間の戦争の記憶を、生きる知恵や戒めとして次世代に語り継ぎました。一部は、伝説や神話に形を変えたでしょう。このような言い伝えを好む遺伝子を持つ種の末裔が私たちです。そして、生き字引としての語り部の役割を担ったのが、経験豊富なお年寄りだったのではないでしょうか? そういうお年寄りは、今でも発展途上国などの未開の地では、長老として敬(うやま)われています。つまり、お年寄りが昔話をするのを好むのは、遺伝子にプログラムされている可能性があるということです。この遺伝子によって、共同体の子孫の生存率(包括適応度)は高められたのでしょう。 現代の高度な情報化社会では、お年寄りが昔話をする必要はなくなってしまいました。しかし、お年寄りが昔話をしようとする原始の時代からの心理は残ったままです。つまり、進化論的に考えれば、原始の時代の環境に適応していた心身に近付けるため、私たちが運動をして心身の健康を保っているのと同じように、お年寄り、特に認知症の人に昔話をあえてしてもらうことで、心の健康をより保つことができるということです(回想法、思い出ノート)。 (2)お年寄りはなぜ孫を見たいのか?―おばあちゃん仮説 みつえは、認知症が進む前、孫のまさきをよく気にかけています。祖父母が孫の幸せを願うのは普遍性があり、当たり前であると皆さんは思うでしょう。さらには、特に祖母が、母親を支えて孫を見ることで、心の健康が保たれるという研究仮説があります。それは、「おばあちゃん仮説」「祖母効果」と呼ばれています。 そもそもほとんどの動物は、繁殖が終わる年齢と寿命はだいたい一致しています。つまり、繁殖力がなくなった時が寿命の尽きる時です。しかし、私たち人間の女性は違います。50歳前後で閉経を迎えて繁殖力がなくなった女性が長生きすることには進化論的な意味があるということです。 その意味とは、1つには、50歳以上で出産しなくなるのは、子どもの生存率を下げない理由があるということです。たとえば、50歳以上の高齢出産では母子ともに死亡するリスクが高まります。すると、すでに生まれている子どもたちの生存が危うくなります。たとえ出産が成功しても、その子どもがぎりぎり独り立ちできる10歳になるまでに、子育てをする母親が当時の寿命(60歳くらい?)を迎えると、子どもの生存が危うくなります。さらには、ダウン症などのように高齢出産で生まれた子どもは生存率が低いため、その育児の負担(コスト)が高まることで、すでに生まれている子どもたちの生存が危うくなります もう1つには、繁殖を終えるのと引き換えに、まだ体力のある祖母が、子育てをする次世代の自分の娘(母親)を助けることで、娘の繁殖力を高め、孫の生存率を高めることです(包括適応度)。いわゆる「おばあちゃん子」の存在も、「祖母効果」の延長線上にあるものと考えられます。 都市化、核家族化、少子化した現代では、お年寄りが孫を見る機会はぐっと減りました。しかし、お年寄りが孫を見たいという原始の時代からの心理は残ったままです。つまり、お年寄り、特に祖母が孫や地域の子どもたちを見ることで、心の健康をより保つことができるのではないかということです。例えば、最近では、グループホームなどの「託老所」(介護施設) と託児所を併設し、お年寄りと子どもがお互いに交流する仕組みがつくられています(幼老統合ケア)。また、お年寄りが、小学校の校門で挨拶をしたり通学路の信号機前で安全確保をするなど、地域の子どもを見守るボランティに参加する取り組みも行われています。自尊心を保つ―お年寄りはなぜ敬(うやま)われるべきなのか? ゆういちは息子のまさきに「ばあちゃんの下着ば買うても買うても無くなるとばってんさあ」と不思議がっていました。その後、開けたタンスの引き出しから、大量の汚れた下着があふれ出てきたのでした。ゆういちは「タンスから噴き出した!」と思わず叫びます。 お年寄りは、認知機能の低下に伴い、排泄などのセルフケアに困難が出てきます。汚れた下着を洗おうにも洗濯機の使い方が分からなくなります(知覚―運動の障害)。そして、それを恥じらう自尊心は残っているため、隠すのです。しかし、うまく隠し切ることはできないのです(社会的認知の障害)。このような時、どう接するのが認知症のリハビリテーションとして望ましいでしょうか? 認知症の人は、症状が進むにつれてどんどん無邪気な子どものようになります。そんな人に、私たちはつい子ども扱いしてしまいがちです。しかし、ここで注意することは、認知症の人は子どもではないということです。認知症介護と育児について、その共通点と相違点をそれぞれ整理してみましょう。 共通点は、両者ともに自尊心を大切にすることです。これは、頼られたり、ほめられたり、ありがたがられたりすることで高まります。一方、相違点は、育児では叱ることはありますが、高齢者介護では叱ることは望ましくないです。その理由は、3つあります。1つ目は、子どもは叱られることで禁止の学習効果を得ることができますが、認知症の人は記憶の障害により学習効果が得られないからです。2つ目は、ネズミの実験結果で確かめられていることですが、叱られるなど恐怖の心理的ストレスによって、海馬領域(記憶中枢)の神経細胞の新生が抑制され、認知症状がさらに進んでしまうからです。3つ目は、認知症の人は、叱られると、自尊心が傷付けられ、BPSDが出やすくなるからです。これは、叱られた時、叱られた理由は忘れてしまっているのに、叱られた悲しみや叱った相手の記憶は比較的残っているので、理不尽に感じるからです。叱られた理由についての記憶は理性的で複雑であるため残りにくく、叱られた時の気持ちや叱った相手の記憶は感情的で単純であるため残りやすいのです(リボーの法則)。 以上より、認知症のリハビリテーションとして望ましい対応は、敬意を持って親切に接すること、決して叱らないことです。さらには、できることはさせてほめまくること、できないことはさせないことです(満点主義)。つまり、お年寄りは、敬(うやま)われることで心の健康が保たれるのです。配慮する―お年寄りはなぜ恭(うやうや)しくもてなされるべきか? さきほどのグループホームでみつえが「この盗人(ぬすっと)、嘘つき!」「ああっ!悪者(わるもん)がおる。誰か誰かー!」と叫び騒ぐシーンを振り返ってみましょう。みつえのような認知症の人は、目の前に見えているものと聞こえてくる声や音とに同時に注意を向けることが難しいです(複雑性注意の障害)。それでは、この点を踏まえて、みつえが騒がなくても済む方法はなかったでしょうか?  それは、注意を高めてもらうため、視覚、聴覚、触覚を総動員して丁寧に接することです(ユマニチュード)。例えば、話しかける時、少し遠くから相手の視界に入り、近付いて、視線を合わせて(視覚)、間を置いて、なるべく肩や腕へのスキンタッチをして(触覚)、ようやく声をかけることです(聴覚)。 また、その人をよく観察して行動パターンを先読みして気遣うことです(先回り)。例えば、喉の渇きやトイレなどをうまく言葉で伝えられない場合、その人の行動パターンから、「お茶をどうぞ」「トイレに行きましょうか?」などと汲み取ることです。 さらには、トイレや入浴などの介助をするとき、たとえその人の反応が乏しくても、かかわる時は話しかけ続けることです(実況生中継)。その人が大人しいから、こちらが話しかけても無言でも変わらないとみなさんは思われるかもしれません。その時は問題ないかもしれません。しかし、その後に問題が起こる可能性が高まります。理由として、自分が何をされたか分からないことでストレスがたまり、後に混乱することが考えられるからです。また、人として扱われていないように感じられて、本人の自尊心が傷付けられることが考えられるからです。つまり、こちらからどんどん働きかけることが大切なのです。 表4 社会的認知から考える認知症のリハビリテーション   例 役割を担う 昔話をしてもらう(回想法) お年寄りが子どもを見守る環境をつくる(幼老統合ケア) 自尊心を保つ 敬意を持って親切に接する決して叱らないできることはさせてほめまくり、できないことはさせない(満点主義) 配慮する 視覚、聴覚、触覚を総動員して丁寧に接する(ユマニチュード)よく観察して行動パターンを先読みして気遣う(先回り)かかわる時は話しかけ続ける(実況生中継) なぜ認知症の症状に地域差があるのか?―敬老思想 映画の舞台は長崎です。ほのぼのとした長崎弁が交わされ、とてものどかな土地柄です。東京のようなせわしない大都市とは対照的です。実は、疫学調査から、長崎のような地方と東京のような大都市とでは、認知症の症状の出方に違いがあることが分かっています。記憶障害などの認知症状は同じなのですが、行動・心理症状(BPSD)については、地方では目立たず、大都市では目立つのです。つまり、行動・心理症状の出現率に地域差があるといことです。これはどういうことなのでしょうか? そもそも原始の時代から、お年寄りは、生き字引としての指導的立場を担い、周りから敬(うやま)われ、恭(うやうや)しくもてなされてきました。「老馬の智」「亀の甲より年の功」「おばあちゃんの知恵袋」などの言い回しはまさにこれを言い当てています。つまり、共同体のメンバー全員がお年寄りをありがたがり、大事にするという敬老思想はもともとごく当たり前のことだったのです。私たちには、もともとそうすることを望ましく感じる心理が遺伝子に組み込まれている可能性があります。 ところが、近代化し情報化した現代はどうでしょうか? 特に、大都市は、スピード、生産性、効率性、競争力、結果がとても重視されます。すると、その価値観に合わない人、つまり役に立たない人はいてはならないという発想が生まれやすくなります。それは、「ボケ」が出てきたら、早く認知症と診断してもらって、早く施設に入るべきであるという発想です。そのような人がい続ければ、敬(うやま)われるどころか、迷惑で困った人として貶(おとし)められ、蔑(さげす)まれてしまいます。こうして、認知症の人は、現代では、そして特に大都市では、より自尊心を傷付けられて、行動・心理症状をより引き起こしています。まるで、現代の価値観が、認知症の患者をつくり出し、そして追いやっているようにも思えてしまいます。これは、現代の価値観の負の側面です。 一方、助け合いや敬老の精神が比較的に残っているコミュニティがある地方では、お年寄りが認知症になっても、家族や近所の人たちが協力して温かく面倒を見るので、自尊心が保たれ、行動・心理症状(BPSD)が出にくくなるというわけです。その人らしさを支える介護とは?―パーソンセンタードケア みつえは、認知症が進むにつれて、現在の現実と過去の記憶が交錯していきます。そこには、家族の歴史や絆が描かれています。まさにこの映画の醍醐味です。認知症の介護とは、症状を見るのではなく、その人の人生、つまりその人らしさを見ることであるということに私たちは気付かされます。そして、目の前のお年寄りの人たちがどういう人生を経て今ここにいるのかという物語に思いを馳せ、その人たちの心に寄り添う気持ちにさせられます。その人のことをよく知ることで、その人らしさやその人らしい生活を支えることができます(パーソンセンタードケア)。 このような介護により、お年寄りの心は満たされ、認知症の行動・心理症状(BPSD)を減らしたり、出てくるのを防ぐことができます。また、認知症状の進行を遅らせる可能性もあります。さらには、私たちの心も満たされ、楽しさやりがいを感じることができるようになります。介護する側の心のあり方とは?―かかわり方と薬のバランス ゆういちは、行きつけの喫茶店のマスターから「(介護施設に)預けると?」「はあ、そがんことするったい」「親ば捨てるやらおれはようしきらん(とてもできない)」と言われてします。ゆういちは「おれもどげんしたらよかか分からん」と苦悩します。 世間体や後ろめたさから、家族が介護を抱え込み、「介護疲れ」(適応障害)になることはよくあります。この映画では、最終的にゆういちがみつえをグループホームに入所させ、抱え込まないモデルとして描かれています。 入所後は、ゆういちの心には余裕ができて、みつえに怒鳴ることはなくなっています。そもそも家族によって介護力には限界があります。それを踏まえて、デイケアへの通所やグループホームへの入所を見極める必要があります。ポイントは、家族の介護者が介護への負担(ストレス)からやりがいを見失っていないか?「介護疲れ」に陥っていないか?ということです。 この介護者のメンタルヘルスは、家族だけでなく、私たち医療関係者(特に介護士)にも当てはまります。これまで説明しました認知症の人へのかかわり方はもちろん重要なのですが、そのかかわり方をしたからと言って必ずしも行動・心理症状(BPSD)が全く出ないというわけではありません。 介護者がやりがいを感じ続けるためには、認知症の人にうまくかかわっていくことと合わせて薬をうまく使っていく必要があります。例えば、毎夜どうしても騒ぐ場合(夜間せん妄)、夕食後に精神科薬を飲んでもらうようにすることです。また、日中にどうしても手が出てしまう場合(暴力)、日中に精神科薬を飲む必要があります。このように、かかわり方の工夫と薬の適応のバランスをとることです。認知症の人が無邪気であることとは? ラストシーンでは、車いすに乗ったみつえとベビーカーに乗った赤ちゃんがすれ違います。みつえも赤ちゃんも、無邪気で幸せそうです。そして、ゆういちは「ボケるとも、悪か事ばっかりじゃなかかもな」とつぶやきます。 かつて孫のまさきが伸び盛ったように、これからそのまさきとさとさん(グループホームの介護士)の恋が燃え盛ろうとするように、みつえが熟し衰えていくのは自然なことであると私たちは思えてきます。 認知症は、障害という特別な状態になるというよりは、老いという自然の流れの中で見られるその人らしさであるとも言えます。そもそも私たちが年を取るとはこういうことであると受け入れることが出発点です。今、私たちが身近で見ている認知症の人は、私たちの数十年後の姿かもしれません。私たちもいずれ同じようになるかもしれません。 そう考えると、その時に私たちはどんなふうにされていたいのだろうかと現在の認知症の介護のあり方を見つめ直すことができるのではないでしょうか?そして、長生きすることが幸せであると心から思える社会にしていくことができるのではないでしょうか?1)岡野雄一:ペコロスの母に会いに行く、西日本新聞社、20122)岡野雄一:「ペコロスの母に学ぶ」ボケて幸せな生き方、小学館新書、20143)山口晴保:認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント、協同医書出版社、20144)伊古田俊夫:社会脳からみた認知症、講談社、20145)村井俊哉:社会化した脳、エクスナレッジ、20076)DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引第5版)、医学書院、20147)本田美和子ほか:ユマニチュード入門、医学書院、2014

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抗コリン薬は高齢者の認知機能に悪影響

 高齢者、とくに認知症を有している場合は抗コリン薬の有害な影響を受けやすい。オーストラリア・ニューカッスル大学のKaren E. Mate氏らは、高齢者における抗コリン薬処方の実態とそれに関連する患者背景因子を調査した。その結果、認知症を有する例は、認知症を有していない例に比べて薬剤数が有意に多く、抗コリン薬負荷が有意に高いことを報告した。そのうえで著者は、「抗コリン薬の有害な影響を考慮すると、認知症患者に対する抗コリン薬処方について改善の余地がある」と示唆した。Drugs & Aging誌オンライン版2015年1月8日号の掲載報告。 本研究では、オーストラリアの地域在住高齢患者(75歳以上)を対象に抗コリン薬の処方頻度、ならびに抗コリン薬負荷状況とその予測因子を調査した。リサーチナースが被験者1,044例それぞれの自宅を訪問し、服用中の薬剤リストを作成し、改訂版Cambridge Examination for Mental Disorders of the Elderly(CAMCOG-R)を用いて認知機能を評価した。各患者の抗コリン薬負荷状況はAnticholinergic Drug Scale(ADS)により判定した。主な結果は以下の通り。・多変量解析により、抗コリン薬高負荷に関連する患者背景因子として、多剤併用(5種類以上の薬剤服用)(p<0.001)、加齢(p=0.018)、CAMCOG-Rによる認知症の判定(p=0.003)、うつ病(p=0.003)、身体的QOL低下(p<0.001)などが特定された。・認知症グループ(86例)は、認知症を有していないグループ(958例)に比べ薬剤数が有意に多く(4.6 vs. 3.9、p=0.04)、抗コリン薬負荷が有意に高かった(1.5 vs. 0.8、p=0.002)。 ・認知症グループの約60%、認知症を有していないグループの約40%が、少なくとも1種類の抗コリン薬の投与を受けていた。この差は認知症を有するグループが、抗コリン薬の作用強度がレベル1(潜在的抗コリン作用)(p=0.002)とレベル3(著しい抗コリン作用)(p=0.005)の薬剤を服用していた割合が高かったことによるものであった。・高齢者、とくに認知症を有する例では、薬剤処方に際し改善の余地が大きいことが判明した。・著者は、「重要なことは、レベル1の抗コリン薬が認知症患者の抗コリン薬負荷に寄与する重大な因子であることが判明したことである。認知症患者における抗コリン薬負荷の増減が認知機能、および他の臨床的アウトカムに与える影響を明らかにするため長期的な調査が必要である」とまとめている。関連医療ニュース認知症高齢者5人に1人が抗コリン薬を使用統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は適切な認知症薬物療法を行うために

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SSRIの薬物治療モニタリング、実施率は

 SSRIの薬物治療モニタリング(TDM)の実施について、高齢患者を対象とするものが若年患者を対象としたものと比べて非常に少ないことが、ノルウェー・オスロ大学のM. Hermann氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「TDMは高齢患者になるほど重要だとするガイドラインと対照的な状況である」と指摘している。Therapeutic Drug Monitoring誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。 高齢患者では、SSRI治療薬の血清濃度が上昇するリスクが知られている。研究グループは、高齢患者(60歳以上)のSSRIのTDM実施状況を若年患者(60歳未満)との比較において調べた。対象は、2011年に著者らのラボで測定されたSSRI(エスシタロプラム、シタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン)の全血清濃度であった。ノルウェー処方データベースを用いて、同一地域および同一期間の処方でSSRI投与を受けた患者数を参照値とした。また、60歳以上患者と60歳未満患者で推奨参照上限値以上であった患者を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1つのSSRIのTDMが行われていた患者は6,333例であった。・すべてのSSRIのTDMの実施率は、60歳未満の患者と比較して60歳以上の患者で有意に低かった(p<0.001)。シタロプラムは8.2% vs. 10.6%、エスシタロプラム10.0% vs. 13.8%、フルオキセチン8.6% vs. 17.0%、パロキセチン5.6% vs. 10.3%、セルトラリン8.1% vs. 15.0%であった。・TDMの実施は、高齢になるほど徐々に低下し、最も若い(10~19歳)患者群と最も高齢(90歳以上)の患者群では、3倍の差があった(p<0.0001)。・推奨参照上限値以上であった患者の割合は、60歳以上(6.7%)が60歳未満(3.4%)と比べて2倍高かった。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 SSRI依存による悪影響を検証 認知症への新規抗精神病薬、有害事象のモニタリングが不十分  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症の慢性化に関連する遺伝子か

 米国・ピッツバーグ大学のD Arion氏らは、統合失調症患者では背外側前頭前皮質 (DLPFC)に存在する錐体細胞の活性に依存する作業記憶(ワーキングメモリー)の異常が生じていることに着目し、錐体細胞特異的な遺伝子発現の状況について検討を行った。その結果、統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的な遺伝子の発現が低下していること、これらは統合失調感情障害ではみられないことを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。 統合失調症はDLPFC回路の不全を反映する作業記憶の異常と関連する。作業記憶はDLPFCの第3層および第5層に存在する興奮性錐体細胞(第5層中には第3層よりも少なく分布)の活性に依存する。統合失調症患者のDLPFC灰白質の遺伝子発現プロファイルは複数の研究で示されているが、第3層および第5層に錐体細胞を認める2つのポピュレーションにおける細胞タイプ特異的なDNAからの転写産物発現に関してはほとんど知られていない。 そこで研究グループは、とくにDLPFCの第3層および第5層における遺伝子発現の情報は、統合失調症とそれに関連する疾患との相違について新しい、かつ明確な知見を提供するであろうと仮説を立てた。また、錐体細胞機能不全の自然史に関する新たな情報になるのではないかと考え、統合失調感情障害の診断、あるいは死亡時の薬物使用など、その他の因子が錐体ニューロンにおける遺伝子発現パターンに及ぼす影響の解明を試みた。検討は、統合失調症または統合失調感情障害を有する36例、および比較対照としてマッチさせた健常人を対象とし、各被験者のDLPFCの第3層または第5層における錐体細胞をレーザーマイクロダイセクション法により採取。同細胞のmRNAについて、マイクロアレイおよび定量PCRによりトランスクリプトーム解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・患者群では、ミトコンドリア(MT)内またはユビキチン-プロテアソーム系(UPS)機能における遺伝子発現が著しくダウンレギュレートされていた(MT関連経路およびUPS関連経路に対するp値はそれぞれ<10-7、<10-5)。・MT関連の遺伝子変異は第3層の錐体細胞で顕著に認められ、UPS関連の遺伝子変異は第5層の錐体細胞で顕著にみられた。・同じ被験者のDLPFC灰白質サンプルでは、これら変異の多くは発現が認められない、または発現程度が小さく、変異は錐体細胞特異的な所見であることが示唆された。・さらに、統合失調症患者における変異を反映する所見は、統合失調感情障害を有する被験者では発現がみられない、または発現程度が小さく(最も有意な共変数、p<10-6)、頻繁な統合失調症併存に寄与する因子ではなかった。・所見を踏まえて著者は「統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的なMTおよびUPS関連遺伝子の発現が低下していることが明らかとなった。これら細胞タイプ特異的なトランスクリプトームシグネチャーは、統合失調感情障害を特徴付けるものではないことから、分子細胞学を基盤とした臨床表現型の相違が生ずる可能性がある」と述べている。関連医療ニュース 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大  担当者へのご意見箱はこちら

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ハワイの認知症入院患者、日系人高齢者が多い

 ハワイで認知症と診断され入院している患者を調べたところ、ネイティブ・ハワイアンと日系人の高齢者が多いことが、米国・ハワイ大学のTetine L. Sentell氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「ネイティブ・ハワイアンと日系人高齢者集団に対する公衆衛生および臨床ケアにおいて、重要な意味がある」と指摘している。認知症入院患者はそうではない入院患者と比べて、コスト、入院期間、また死亡率が高いが、米国においてこれまでネイティブ・ハワイアンおよびアジア系サブグループの認知症に関するデータは限定的であった。Journal of the American Geriatrics Society誌2015年1月号(オンライン版2014年12月23日号)の掲載報告。 研究グループは、2006年12月~2010年12月にハワイで入院した全成人を対象に、認知症と診断された入院患者について、年齢階層別(18~59歳、60~69歳、70~79歳、80~89歳、90歳以上)にアジア系住民および太平洋諸島系の原住民(ネイティブ・ハワイアン、中国系、日系、フィリピン系)の割合を調べ、白人の割合と比較した。認知症診断はICD-9コードを用いて特定した。集団分母は、米国国勢調査を利用した。 主な結果は以下のとおり。・認知症診断歴のある入院患者1万3,465例を特定し分析した。・全年齢階層群で、ネイティブ・ハワイアンの認知症入院患者の割合(未補正)が最も高く、その他の人種よりも年齢は若い傾向がみられた。・補正後モデル(性別、居住地、加入保険)において、白人と比べてネイティブ・ハワイアンの認知症入院患者は90歳以上群を除き有意に高率であった。18~59歳群(aRR:1.50、95%信頼区間[CI]:0.84~2.69)、60~69歳群(同2.53、1.74~3.68)、70~79歳群(同2.19、1.78~2.69)、80~89歳群(同2.53、1.24~1.71)。・日系人では高齢者群で有意に高率であった。70~79歳群(aRR:1.30、95%CI:1.01~1.67)、80~89歳群(同1.29、1.05~1.57)、90歳以上群(同1.51、1.24~1.85)。・日系人の若い年齢群(18~59歳)は、白人よりも認知症患者は有意に少ないと思われた(aRR:0.40、95%CI:0.17~0.94)。関連医療ニュース アルツハイマー病への薬物治療は平均余命の延長に寄与しているのか:東北大学 低緯度地域では発揚気質が増強される可能性あり:大分大学 冬季うつ病、注意が必要な地域は  担当者へのご意見箱はこちら

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なぜSSRIの投与量は増えてしまうのか

 抗うつ薬の処方は上昇の一途をたどっており、その原因として長期投与や高用量投与の増加が挙げられる。しかし、高用量処方に関連する患者背景因子については不明のままである。英国・NHS Greater Glasgow and ClydeのChris F Johnson氏らは、うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の1日投与量と関連する患者背景因子を明らかにするため、プライマリケアにおける横断的研究を行った。その結果、SSRI高用量処方と関連する因子の1つとして、同一抗うつ薬の2年以上の処方が明らかとなったことを報告した。結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬の長期使用の増加に伴い、高用量処方の使用はさらに処方の増大に寄与する可能性がある」とまとめている。BMC Family Practice誌オンライン版2014年12月15日号の掲載報告。 本研究の目的は、一般診療でうつ病治療に処方されるSSRIの1日投与量と関連する患者背景因子について調査することであった。調査は、低~高用量処方の層別化サンプルを用いて行った。2009年9月~2011年1月の間の、1診療における各患者のデータを抽出。SSRIが処方された18歳以上のうつ病患者を解析に組み込んだ。SSRIはうつ病治療においてフラットな用量反応曲線を示すが、本研究ではロジスティック回帰分析により、標準治療による1日投与量と高用量投与との比較からSSRIの1日投与量の予測変数を評価した。予測変数は、年齢、性別、貧困、併存疾患、喫煙状況、同じSSRIの2年以上の処方、患者の一般診療であった。ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(もしくはその両方)の長期投与(B&Z)を、患者サブグループに対する第2サブグループ分析の予測変数として加えた。 主な結果は以下のとおり。・診療間でSSRI処方に有意な相違が認められた。18歳以上患者集団の診療時点有病率(practice point prevalence)は、2.5%(94/3,697例)から11.9%(359/3,007例)にわたった。中央値は7.3%(250/3,421)(χ2=2277.2、df=10、p<0.001)であった。・全点有病率(overall point prevalence)は6.3%(3,518/5万2,575例)であり、うつ病に対してSSRIが処方された患者は5.8%(3,066/5万2,575例)、うち84.7%(2,596/3,066例)から回帰分析のデータが得られた。・SSRIの高用量処方と有意に関連していたのは、影響の大きかった順に、患者が受けた診療、同一SSRIの2年以上処方(オッズ比[OR]:1.80、95%信頼区間[CI]:1.49~2.17、p<0.001)、貧しい地域に居住(同:1.55、1.11~2.16、p=0.009)であった。・B&ZサブグループにおけるSSRI高用量と有意に関連していたのは、患者が受けた診療、長期のB&Z処方(OR:2.05、95%CI:1.47~2.86、p<0.001)、同一SSRIの2年以上処方(同:1.94、1.53~2.47、p<0.001)であった。関連医療ニュース SSRI/SNRIへの増強療法、コストパフォーマンスが良いのは 抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か SSRI依存による悪影響を検証  担当者へのご意見箱はこちら

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境界性パーソナリティ障害+過食症女性の自殺リスクは

 神経性過食症(BN)を併発する境界性パーソナリティ障害(BPD)の女性患者では、自傷行為や自殺未遂との特異的かつ有意な関連がみられることが、Deborah L. Reas氏らによる検討の結果、明らかにされた。結果を踏まえて著者は、「治療期間中の自殺行為に対するさらなる警戒やモニタリングの重要性、定期的なBNスクリーニングが必要である」と指摘している。BPDにおいて、BNが自傷行為や自殺行為といった生命に関わる行為のリスクをもたらすかどうか、調査した研究はほとんどなかった。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌オンライン版2014年12月15日号の掲載報告。 検討は、DSMI-IV II軸パーソナリティ障害のための構造化臨床面接(SCID-II;First, Gibbon, Spitzer, Williams, & Benjamin, 1997; Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th ed.; APA, 1994)によりBPDと診断され、1996~2009年にNorwegian Network of Psychotherapeutic Day Hospitalsに入院した、治療を望む女性患者483例を対象として行われた。57例(11.8%)が、精神疾患簡易構造化面接法(M.I.N.I.; Sheehan et al., 1998)により、DSM-IVの BPD診断基準を満たし、BPDおよび他のAXIS I障害の女性と比較された。 主な結果は以下のとおり。・BPD治療中の女性において、BNの併発は特異的かつ有意に自殺行為リスクの増大と関連した。・BNの併発が、すでにハイリスクにある患者がさらに生命に関わる行為へと向かう(これは社会的重大問題である)有意なマーカーとなっていることが判明し、BPD治療中女性におけるBNの定期的なスクリーニングの重要性が強く示唆された。・BNを併発しているBPD患者では、摂食時における自殺念慮の報告(過去7日間における)、治療期間中における頻繁な自傷行為や自殺未遂の割合が有意に高かった。・気分、不安、物質関連障害で調整後のロジスティック回帰モデルにおいて、すべての二変数の相関関係は有意であった。関連医療ニュース 境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為を減少させるには パニック障害+境界性パーソナリティ障害、自殺への影響は 過食性障害薬物治療の新たな可能性とは

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抗うつ薬の新たな可能性、あけび主要成分

 中国・南方医科大学のBao-Fang Liang氏らは、ヘデラゲニン(hederagenin)の抗うつ様効果におけるノルエピネフリンとセロトニンシステムの関与を、予測不可慢性軽度ストレス誘発性(UCMS)うつ病のラットモデルで調べた。その結果、同モデルでの抗うつ効果を確認し、モノアミン神経伝達物質とセロトニン・トランスポーター(5-HTT)mRNA発現を伴う可能性がみられたことを報告した。Pharmaceutical Biology誌オンライン版2014年12月4日号の掲載報告。 研究グループは先行研究のラボ試験にて、あけび(Fructus Akebiae)エキスの急性および亜慢性投与が、動物実験で抗うつ様効果を示すことを報告していた。あけびは、主要化学成分としてヘデラゲニンを約70%含む。 本検討では、マウス試験にて、あけびとヘデラゲニンの抗うつ効果を比較し、UCMSうつ病ラットモデルでヘデラゲニンの抗うつ様効果と潜在的機序を調べた。マウスに、胃内投与(i.g.)であけび(50mg/kg)またはヘデラゲニン(20mg/kg)を1日1回3週間投与した。抗不安および抗うつ活性を、高架式十字迷路検査や、尾懸垂試験法、強制水泳試験などを行い比較した。また、ヘデラゲニン(5mg/kg)の抗うつ効果を、UCMSうつラットモデルを用いて評価。さらに、UCMSラットの海馬におけるモノアミン神経伝達物質レベルと遺伝子発現を、高性能リキッドクロマトグラフィとリアルタイムPCR法を用いて確認した。 主な結果は以下のとおり。・尾懸垂試験法および強制水泳試験のいずれにおいても、ヘデラゲニン(20mg/kg)は有意に不動性を減じたが、あけび(50mg/kg)はそうではなかった。・しかし、ヘデラゲニン群とあけび群で有意差は示されなかった。・ヘデラゲニンの慢性投与は、高架式十字迷路検査における移所行動量や立ち上がり行動、open armにおける滞在時間やclosed armへの進入回数について、増大傾向はみられたものの有意に改善しなかった。しかし、ヘデラゲニンはショ糖嗜好検査で嗜好行動を有意に増大し、強制水泳試験の不動性を有意に減じた。・ヘデラゲニン群では、ノルエピネフリンとセロトニン値の有意な増大が示された。5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)1A受容体mRNAの発現が増加し、5-HTTのmRNA発現が有意に減少する傾向が示された。・しかしながら、脳由来神経栄養因子の発現における有意差はみられなかった。関連医療ニュース うつ病治療の新展開、ミトコンドリア生体エネルギー 新たなアルツハイマー病薬へ、天然アルカロイドに脚光 過食性障害薬物治療の新たな可能性とは  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症患者のEPSと認知機能の関連は

 カナダ・トロント大学のGagan Fervaha氏らは、統合失調症患者における錐体外路症状(EPS)と、認知障害との関連を調べた。結果、EPSの重症度と認知テストの低スコアとが強く結び付いていることを実証した。EPSは統合失調症における最も一般的な運動障害である。同患者の運動障害は、抗精神病薬を服用していない患者でも認められるが、認知といった疾患のその他の特性との関連については十分に解明されていなかった。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年12月1日号の掲載報告。 検討は、統合失調症患者で、あらゆる抗精神病薬または抗コリン薬の投与を受けていない325例を対象に行われた。被験者は、Clinical Antipsychotic Treatment of Intervention Effectiveness試験のベースライン訪問に関与していた患者であった。EPSの評価には、Simpson-Angus尺度が用いられ、認知の評価は、総合的な神経心理学的テストにて行われた。EPSと認知テスト結果との関連性について、数的および分類学的両面から評価した。 主な結果は以下のとおり。・EPSの重症度がより大きいと、複合スコア評価による認知テストの結果は、より悪化するという有意な関連が認められた。・86例の患者はパーキンソン症候群を有していることが特定された。これらの患者は非パーキンソン症候群患者と比べて認知テストの結果は悪かった。・同所見は、精神病理、鎮静、アカシジア、ジスキネジアなどの重症度といった変数で補正後も有意なままであった。・これらの結果は、神経筋および神経認知の障害の基礎を成す病態生理が共通していることを示す。ただし、パーキンソン症候群がテストを受ける能力を障害している可能性もある。・いずれにせよ機序に関係なく、認知障害に関する推論は、EPSの存在を考慮すべきであることを示唆するものであり、認知試験の所見を媒介するその他の変数と同様の示唆を与えるものと思われた。関連医療ニュース 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は 統合失調症患者の認知機能低下への関連因子は 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学  担当者へのご意見箱はこちら

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