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近未来のうつ病治療に、会話システム「Help4Mood」

 英国・アバディーン大学のChristopher Burton氏らは、インターネットのアバターを介して会話をするシステム「Help4Mood」の、うつ病患者に対する有用性を明らかにするため、パイロット無作為化比較試験(RCT)を行った。その結果、標準治療単独に比べ、Help4Moodの併用はうつ症状の改善に寄与する可能性があることを報告した。Journal of telemedicine and telecare誌オンライン版2015年10月9日号の掲載報告。 Help4Moodは、うつ病の治療を受けている患者のセルフモニタリングを援助するために開発された、双方向会話システムである。自己報告やバイオメトリックモニタリングをサポートし、認知行動療法の要素も含んでいる。 研究グループは、システムの活用と受容性を評価し、臨床試験登録の簡便性および継続率の探索、さらに将来的な治療手段としての活用を見据えてRCT実施の可能性について調べた。Help4MoodのパイロットRCTは、ルーマニア、スペイン、英国・スコットランドの3施設で実施した。うつ病(大うつ病性障害)と診断され、現在は軽度/中等度のうつ症状を有する患者を、標準治療に加えて同システムを4週間使用する群と、標準治療単独群に無作為化し評価した。 主な結果は以下のとおり。・27例が無作為化され、21例(Help4Mood群:12/13例、標準治療単独群:9/14例)で追跡データが得られた。・Help4Mood群の半数が、システムを定期的に利用していた(10回以上)。毎日の利用者はいなかった。・受容性は利用者間でさまざまであり、システムの感情的な反応を評価する者もいれば、ワンパターンだと評する者もいた。・intention to treat 解析により、ベックうつ評価尺度II(BDI-2)スコア変化に、わずかな差がみられた(Help4Mood群-5.7点、標準治療単独群-4.2点)。・治療に関する事後解析では、Help4Moodの定期利用者で、BDI-2スコアの中央値が-8ポイント変化していることが示された。・以上より、意図したほどの定期的利用者はいなかったものの、うつ病治療を受けている人の一部においてHelp4Moodの受容性があることが示された。・システムを定期的に使用している人のうつ症状の変化は、意味のあるレベルにまで達していた。関連医療ニュース これからのうつ病治療、どんな介入を行うべきか これからのうつ病治療はWebベース介入で変わるのか うつ病の精神療法、遠隔医療でも対面療法と同程度  担当者へのご意見箱はこちら

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抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体

 抗精神病薬誘発性の体重増加は、クロザピンやオランザピンなどの抗精神病薬治療で一般的にみられる副作用である。オレキシン遺伝子および受容体は、視床下部に局在し、エネルギー恒常性の維持と関連している。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのArun K Tiwari氏らは、オレキシン1および2受容体の一塩基変異多型(SNP)をターゲットとし、抗精神病薬誘発性体重増加との関連を解析した。The world journal of biological psychiatry誌オンライン版2015年10月8日号の報告。 対象は、主にクロザピンまたはオランザピンで治療(最大14週間)を行った統合失調症患者または統合失調感情障害218例。レプリケーションは、最大190日間オランザピンまたはリスペリドンで治療したCATIEサンプルのサブセットを用い、実施した。SNPと抗精神病薬誘発性体重増加との関連は、ベースラインの体重と治療期間を共変量として、共分散分析(ANCOVA)を用い評価した 主な結果は以下のとおり。・いくつかのオレキシン2受容体のSNPは、クロザピンまたはオランザピンのいずれかで治療したヨーロッパ系の患者において、抗精神病薬誘発性の体重増加との関連が認められた(p<0.05)。・レプリケーション分析では、2つのSNP rs3134701(p=0.043)、rs12662510(p=0.012)は、抗精神病薬誘発性の体重増加と関連していた。・オレキシン1受容体のSNPは、抗精神病薬誘発性の体重増加との関連が認められなかった。関連医療ニュース 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 クロザピン誘発性好中球減少症、アデニン併用で減少:桶狭間病院 オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学  担当者へのご意見箱はこちら

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双極性障害のうつ症状改善へ、グルタミン酸受容体モジュレータの有用性は

 グルタミン酸系経路の障害が、双極性うつ病の病態生理に重要な役割を果たしている可能性を示すエビデンスが新たに出てきている。英国・オックスフォード大学のTayla L McCloud氏らは、双極性障害のうつへのグルタミン酸受容体モジュレータの使用に着目し、その有用性についてレビューを行った。ケタミン、メマンチン、cytidineについて、それぞれプラセボを対照としたランダム化比較試験(RCT)についてレビューしたところ、ケタミン単回静脈内投与が、24時間後の反応率においてプラセボと比べ有意に良好な反応率を示したことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2015年9月29日号の掲載報告。 レビューは、(1)双極性障害患者の急性うつ症状軽減における、ケタミンおよびその他のグルタミン酸受容体モジュレータの影響を評価する、(2)急性うつ症状を認める双極性障害患者におけるケタミンおよびその他のグルタミン酸受容体モジュレータの忍容性をレビューすることを目的とした。Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Review Group's Specialised Register (CCDANCTR、2015年1月9日時点)を介して、Cochrane Library(すべての年)、MEDLINE(1950年~現在)、EMBASE(1974年~現在)、PsycINFO(1967年~現在)のデータベースからRCTを検索した。また、関連文献およびシステマティックレビューの引用文献リストも照合。日付、言語、公表形式に関する制限は設けなかった。検索では、成人双極性障害を対象にケタミン、メマンチン、その他のグルタミン酸受容体モジュレータと、他の精神病薬あるいは生理食塩水のプラセボを比較したRCTを対象とした。2人以上のレビュワーがそれぞれレビュー対象試験を選択し、試験の質を評価したうえでデータを抽出した。本レビューの主要アウトカムは、反応率と有害事象、副次アウトカムは寛解率、うつの重症度スコアの変化、自殺傾向、認知能、QOL、脱落率とした。さらなる情報を得るため、著者に問い合わせを行った。 主な結果は以下のとおり。・5件の試験 (被験者329例)がレビューの対象となった。・すべての試験がプラセボを対照とした2アーム試験で、グルタミン酸受容体モジュレータ(ケタミン:2試験、メマンチン:2試験、cytidine:1試験)を気分安定薬に併用して用いていた。治療期間は単回静脈内投与(ケタミンを用いたすべての試験)、メマンチンおよびcytidineの反復投与(それぞれ8~12週、12週)であった。・3試験は米国で実施され、台湾が1件、実施場所を特定できないものが1件あった。被験者の大半 (70.5%) は台湾からの参加であった。・全例がDSM-IVあるいはDSM-IV-TRにより最初に双極性障害と診断され、現在はうつ期にあった。・うつの重症度は、1件の試験を除き、すべて中等度以上であった。・レビューの対象としたグルタミン酸受容体モジュレータの中で、ケタミンだけがプラセボと比べ主要アウトカムである反応率(注射後24時間)において良好な結果を示した(オッズ比[OR]:11.61、95%信頼区間[CI]:1.25~107.74、p=0.03、I2=0%、2試験、33例)。この結果は、低いエビデンスの質に基づくものであった。・統計学的有意差は3日目で消滅したが、平均推定値ではケタミンの優位性が示された(OR:8.24、95%CI:0.84~80.61、2試験、33例、エビデンスの質は非常に低い)。・1週目において、ケタミンとプラセボ間で反応率における差異は認められなかった (同:4.00、0.33~48.66、p=0.28、1試験、18例、エビデンスの質は非常に低い)。・メマンチンとプラセボの反応率において、治療1週後(同:1.08、0.06~19.05、p=0.96、1試験、29例)、2週後(同:4.88、0.78~30.29、p=0.09、1試験、29例)、4週後(同:5.33、1.02~27.76、p=0.05、1試験、29例)、3ヵ月後(同:1.66、0.69~4.03、p=0.26、I2=36%、2試験、261例)に有意差は認められなかった。これらの結果は、非常に低いエビデンスの質に基づくものであった。・3ヵ月時点での反応率においてcytidineとプラセボ間で有意差は認められなかった(同:1.13、0.30~4.24、p=0.86、1試験、35例、エビデンスの質は非常に低い)。・副次アウトカムである寛解に関しては、ケタミンとプラセボ間、メマンチンとプラセボ間のいずれにおいても有意差は認められなかった。・副次アウトカムであるうつ重症度スコアのベースラインからの変化に関して、24時間時点でケタミンはプラセボに比べ高い有効性を示した(MD:-11.81、95%CI:-20.01~-3.61、p=0.005、2試験、32例)が、その効果は治療1~2週後には確認されなかった。また、メマンチンとプラセボ間で、本アウトカムに関する差異はみられなかった。・プラセボとケタミン、メマンチン、cytidineの間に有害事象に関する有意差は認められなかった。・ケタミンとプラセボ、メマンチンとプラセボあるいはcytidineとプラセボの間で、脱落例数に差はなかった。ケタミンあるいはcytidineの有害事象による脱落例について活用可能なデータはないが、メマンチンとプラセボ間に差はなかった。・本レビューで得られた結論は、解析可能なデータが少なく、非常に限定的なものとなる。・双極性障害におけるグルタミン酸受容体モジュレータに関するエビデンスは、単極性うつ病に関するものより少ない。・全体としては、ケタミンの単回静脈内投与(気分安定薬への追加薬として)において、24時間後の反応率という点でプラセボより良好という限定的なエビデンスが得られた。双極性うつの寛解という点では、ケタミンによる優れた効果は示されなかった。・ケタミンは迅速で短期的な抗うつ作用を有する可能性があるが、単回静脈内投与の効果は限られたものであると思われた。・ケタミンには精神異常発現様作用があるため、試験の盲検化に支障をきたす可能性があった。実薬を比較薬とした試験をレビューに含めなかったため、このことが本レビューにおける特別な論点となった。またそのため、不適正な盲検化過程によりもたらされるバイアスを排除することができていない。・ケタミンの有害事象を結論付けるエビデンスは見出せなかった。・より強力な結論を得るためには、ケタミンについて、反復投与など、抗うつ反応を維持するさまざまな方法を検討する、より詳細なRCT(適切な盲検化を伴う)が必要である。・他の2つのグルタミン酸受容体モジュレータ(メマンチンとcytidine)に関しては、有意義な結論を導く十分なエビデンスはなかった。・本レビューはエビデンスの完全性という面だけでなく、使用可能なエビデンスの質が非常に低かったという点で、限定的なものとなった。関連医療ニュース グルタミン酸受容体阻害薬、気分障害での可能性は 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所 ケタミンは難治性うつ病に使えるのか  担当者へのご意見箱はこちら

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複数の向精神薬の血中濃度を一度に測定する新手法

 向精神薬治療は薬物動態学的特性の個体差が大きいため十分な治療効果が得られない場合があるが、薬物血中濃度モニタリング(TDM)は、患者個々に投与された用量の効果を調べる有効な方法である。中国・昆明医科大学附属第一医院のJingjing Wang氏らは、TDM等に応用するため、抗精神病薬、抗うつ薬および抗認知症薬計17種の血漿中濃度を測定する、超高速液体クロマトグラフィー(UFLC)-タンデム質量分析法を開発し検証を行った。その結果、新しい測定法はTDMのすべての基準を満たしており、著者らの病院の日常診療において、抗精神病薬および抗うつ薬のTDMとして有用であったと報告している。Therapeutic Drug Monitoring誌2015年10月号の掲載報告。 研究グループは、従来の方法(0.1%ギ酸を含むメタノール/アセトニトリルで沈殿したたんぱく質の固相抽出)に代わる新たな方法として、0.1%ギ酸とアセトニトリルからなる移動相でSynergy 3u-Hydro-RP(2.0×50mm、3μm)カラムを使用するタンデム質量分析を組み合わせたUFLCを開発し、定量分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・新しい測定法により、一般的によく使用される抗精神病薬8種類(アリピプラゾール、クロルプロマジン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidone、クロザピン、オランザピン)、抗うつ薬8種類(citalopram、エスシタロプラム、ミルタザピン、fluoxetine、パロキセチン、セルトラリン、O-desmethylvenlafaxin+venlafaxine、フルボキサミン)および抗認知症薬1種類(ドネペジル)を同時に簡便かつ速やかに測定できた。・クロマトグラフィー分離の実行時間は計6分であった。・精度は0.90~14%、正確度は88.5~118%であった。・キャリブレーションには、臨床使用濃度をカバーし検出力のある6点標準曲線を使用した。・マトリックス効果によるイオン抑制と内部標準を調査した結果、回収率は89~110%であった。関連医療ニュース SSRIの薬物治療モニタリング、実施率は 不適切なベンゾジアゼピン処方、どうやって検出する 1万超の爪からの薬物検出分析、薬物乱用を見抜けるか  担当者へのご意見箱はこちら

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こうして私は追いつめられた【新型うつ病】

今回のキーワード非定型うつ病進化医学社会脳ただ乗り遺伝子(フリーライダー)疾病利得労働法制方リワーク「新型うつ病」とは?皆さんは、「新型うつ病」という言葉を聞いたことがありますか? うつ病はよく知られていますが、ここ10年くらいで、「新型うつ病」が職場を騒がせています。例えば、「新型うつ病」の彼らは休職中に海外旅行に行こうとします。従来のうつ病とは根本的に何が違うのでしょうか? なぜ医師は休職のための診断書を出すのでしょうか? 果たしてこれは病気なのでしょうか? その正体は? どうすれば良いのでしょうか?前回(9月号)の記事で、進化医学的な視点で従来型のうつ病の理解を深めました。これを踏まえて、今回、「新型うつ病」について同じように進化医学的な視点で、その理解を深め、アプローチのポイントを探っていきましょう。今回、取り上げるのは、2012年に放映されたNHKの実録ドラマ「こうして私は追いつめられた」です。15分の短編映像で分かりやすく見せるための割愛や演出はありますが、「新型うつ病」の心理を生々しく描いており、理解の助けになります。なお、このドラマは、「新型うつ病」の検索ワードによるインターネットの動画の視聴が可能です。「新型うつ病」にはどんな症状がある?―表1主人公の今井は27歳男性で、IT企業の社員です。若手として張り切っていましたが、上司の前田から、仕事のミスについて「何やってんだよ」「そろそろこれくらいのこと、できるようになってくれよ」とたびたび叱責されるようになります。やがて、今井は、買ってきた食べ物をむさぼり食べながら「眠れない」「落ち着かない」などの症状を自覚するようになります。そして、受診した医療機関で、医師にうつ病と診断され、「今後3か月の休養を必要とする」との診断書が渡されます。これだけで見ると、本人が苦しんでいるという点で、診察時には基本的に従来型のうつ病の症状と量的に同じに見えてしまいます。しかし、その後に質的な違いがあることに気付きます。それは、休職してから今井が「よーし、気分転換にグアム行っちゃいますか?」とはしゃいでいるように、休職中に海外旅行に行ってしまうことです。つまり、楽しい出来事には元気になれています(気分の反応性)。これは、前回の記事で紹介しました従来型のうつ病(大うつ病性障害)の診断基準の「ほとんど毎日(ほとんど1日中)」という病状の一貫性を満たさなくなっています。よって、厳密には、今井の病態は非定型うつ病(非定型の特徴を伴ううつ病)が当てはまります(表1)。この診断名が、世の中で「新型うつ病」と呼ばれているようです。なお、「新型うつ病」はあくまでマスコミが作り出した呼び名であり、正式な病名ではないです。詳細は、うつ病学会のホームページのQ&AのQ4.をご参照ください。ちなみに、その他の元気になれる楽しい出来事(気分の反応性)としてよく耳にするのは、同窓会の幹事、転職活動、引っ越し、熱心な趣味や習い事、マラソン完走などです。表1 非定型の特徴を伴ううつ病(非定型うつ病)の診断基準(DSM-5) 感情意欲思考項目◎気分の反応性(1)過食(2)過眠(3)体の重さ(鉛様の麻痺)(4)拒絶に敏感備考◎は必須(1)から(4)の4項目中2項目以上もともとうつ病(従来型)などの診断基準を満たしている(いた)「新型うつ病」の心理とは?―表2今井の言動に注目しながら、従来型のうつ病と比べた「新型うつ病」の心理を大きく3つあげてみましょう。(1)人(周り)のせいにしやすい―他罰今井は、「おれこんなにがんばってるのに」「あの言い方はひどい」「前田のやつ、バカにしやがって」「(今、自分が苦しんでいるのは)全部、あいつのせいだ」と心の中でつぶやいています。そして、「おれをうつ病に追い込んだ鬼畜上司・M田!」とブログで悪口を書き込み始めます。1つ目の心理は、困難(ストレス)を人(周り)のせいにしやすいことです(他責、他罰)。周りを責めることで自分を守る心理です。そのため、責任感が乏しく、迷惑を被っていると感じやすくなり(被害的)、その反撃として攻撃的になります。対照的に、従来型のうつ病の心理は、困難(ストレス)を自分のせいにしやすいことです(自責、自罰)。自分を責めることで周りを守る心理です。そのため、責任感が強くなりすぎて、周りに迷惑をかけていると感じやすくなり(罪責感、罪業妄想)、いたたまれなくなり自殺のリスクを高めます。また、「新型うつ病」では、うつ病と診断された今井が「ですよね~」と喜んで症状をさらに饒舌に語っているように、うつ病と診断されることを積極的に受け入れ、休みたがります。今井が「ほっとした」「おれは悪くない」と言っているように、うつ病と診断してもらえれば、うまく行かないことは病気のせいにできるからです。悪いのは、病気であり、自分ではない。自分は被害者であり犠牲者であるという発想になります。だからこそ、「うつ病になるくらい苦しんだんだから、もう休んでいいんだ」と言い、休職中に悪びれることもなく海外旅行に行くなどSNSで充実したプライベートを発信します。対照的に、従来型のうつ病は、うつ病と診断されることに抵抗的で(否認)、休みたがらないです。それは、うつ病になってしまったのは自分のせいだと思っているからです。(2)周りが自分に合わないと不安がる(「傷付き不安」)―拒絶に敏感今井は、「何か悩みがあるなら聞かせてください。連絡待ってます」との前田からのメールが来た時、「全然分かってねえのか、前田。あんなにおれをいじめといて」と腹を立てます。そして、ブログの「M田のここが許せないベスト10」への好意的な反響メールを読んで、「みんなおれの味方なんだ」「やっぱりおれは間違ってない」と安心します。今井は、叱責など自分が受け入れてもらえない状況に敏感になり落ち着かなくなっていた一方、賛同など自分を受け入れてもらえる状況で落ち着きを取り戻しています。2つ目の心理は、周りが自分の期待に合わない、つまり傷付くことへの不安が強いこと、「傷付き不安」です(拒絶に敏感)。これは、非定型うつ病の診断基準の1つでもあります(表1)。この不安からとても打たれ弱くなります(ストレス耐性の脆弱性)。困難に向き合うこと(直面化)が苦しくなります。逆に傷付かない状況では元気になります。だからこそ、職場ではうつでも、自宅では元気で海外旅行に行こうと思えるのです。さらに、その不安から受け身や逃げ込みの心理が働きます(逃避、回避)。例えば、今井は、自宅に訪ねてきた前田と鉢合わせそうになった時、こそこそしています。前田に不満があるわりに向き合おうとはしていません。最後に復職した時も、「復職したおれをどんなふうに迎えてくれるのだろうか?」と思い、前田に自分からは歩み寄らず、前田が来るのを待っています。ちなみに、この逃げ込み(逃避、回避)の心理が過剰に働いていれば、また傷付くおそれのある職場への復帰には逃げ腰になり、病態が慢性化します。対照的に、従来型のうつ病は、逆に自分が周りの期待に合わない、つまり「傷付ける(=迷惑をかける)」ことへの不安が強いため、我慢しようとして打たれ強くなります。そして、抱え込みの心理が働き(執着)、休職しても早期の復職を望みます。つまり、「新型うつ病」は打たれ弱いために我慢ができなくて「うつ病」になるのに対して、従来型のうつ病は打たれ強いために我慢しすぎてうつ病になるということです。(3)周りに目が向きにくい―共感性欠如今井は、実家で両親から「食欲もあるし顔色も良いんじゃない?」「お前ほんとに病気なのか?」といぶかしく思われます。すると、「病気だっつってんだろ?」と言い返します。周りの意見を気にしない様子がうかがえます。また、その後、今井のブログは世の中で批判を浴びて炎上します。それを知った前田は「これ以上会社を誹謗中傷すると解雇もあるから」との留守録のメッセージを今井の電話に残します。それを聞いた今井は「なんでおれがこんな目に遭うんだ!?」とパニックになります。今井は、周りからどう思われているのかをまだピンときていないのです。3つ目の心理は、自分に目が向きすぎて周りに目が向きにくいことです。周りへのアンテナ(他者配慮)をあまり張っていないのです。これは、「周りよりもまず自分が大事」との思いが強いため、結果的に、周りの人たちへの気遣いが乏しくなります(共感性欠如)。その気遣いとは、例えば、休職中に海外旅行に行ったことを同僚が知ったらどう思うか、悪口を書き込んだブログを上司が知ったらどう思うかということです。また、この心理から「周りが自分に何をしてくれるのか」という発想をしやすくなり、苦手な上司や同僚がいなくなるなどの環境の調整がなされない限り、病状は良くはなりにくくなります。つまり、「なりたい自分」になれないなら、あきらめるという現実には耐えられないので保留という暫定措置をとるため、できる限り休職し続けようとする場合があるわけです。対照的に、従来型のうつ病は、逆に周りに目が向きすぎて、自分に目が向きにくいです。「自分よりも周りが大事」「自分のことは二の次」との思いが強いため、周りに気を使いすぎて(過剰な他者配慮)、「自分が周りに何をするべきなのか」「なるべき自分」という発想をしやすくなります。休職中は診察での態度もとても協力的です。ただ、焦りから早く復職しようとする場合はよくあります。表2 「新型うつ病」と従来型のうつ病の違い 「新型うつ病」(=非定型うつ病など)従来型のうつ病年齢20、30歳代(青年)40歳代以上(中高年)性格(パーソナリティ)自分本位(自己愛)真面目で几帳面(執着器質)例責任感乏しい人(周り)のせいにしやすい(他罰)迷惑を被っていると感じやすい(被害的)強すぎる自分のせいにしやすい(自責)迷惑をかけていると感じやすい(罪責的)ストレス耐性弱い周りが自分に合わないと不安がる(拒絶に敏感)逃げ込み(逃避、回避)強すぎる自分が周りに合わないと不安がる抱え込み(過剰適応)他者配慮乏しい周りに目が向きにくい(共感性欠如)なりたい自分を目指す多すぎる周りに目が向きすぎる(過剰な他者配慮)なるべき自分を目指す治療反応性良好ではない比較的に良好例診断や休職積極的当初は抵抗的(否認)その後に協力的薬物療法効果は限定的多くは効果あり認知行動療法集団で効果あり効果あり予後多くは慢性化多くは軽快なぜ「新型うつ病」になるのか?―図1.これまで、「新型うつ病」には、人(周り)のせいにしやすい(他罰)、周りが自分に合わなと不安がる(拒絶に敏感)、周りに目が向きにくい(共感性欠如)という大きく3つの心理があることが分かりました。それでは、なぜこのような心理になるのでしょうか? なぜ「新型うつ病」になるのでしょうか? ここから、その原因を、社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けて探ってみましょう。(1)社員(個人)の要因―自己本位な性格(自己愛パーソナリティ)後半にブログのオフ会で登場する臨床心理士ののぞみんが、「現代型うつ(新型うつ病)を発症する大きな原因は、患者さんの精神的な幼さです」と指摘します。言い換えれば、3つの心理の根っこにあるのは、自己本位な性格(自己愛性パーソナリティ)です。これは、真面目で几帳面な従来型のうつ病の性格(執着器質)とは対照的です。つまり、「新型うつ病」の患者は「オンリー・ワン(唯一の存在)」でありたいという心理が根っこにあります。従来型のうつ病の患者がありたい心理である「ワン・オブ・ゼム(組織の歯車)」では納得しないのです。人は成長するにつれて、自分が大事という自己本位の心理(自己愛性)から周りが大事という他者配慮の心理(社会性)にシフトしていきます。例えば、「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン(1人はみんなのために、みんなは1人のために)」という言い回しがあります。本来は、相手や状況(環境)に応じて両者のバランスが取れていることが理想的ですが、「新型うつ病」は「ワン」(自己本位)の心理に偏りすぎてしまい、従来型のうつ病は「オール」(他者配慮)の心理に偏りすぎています。どちらにしても、そのバランスが失われています。両者は、うつ病になるという結果は同じなのですが、性格(パーソナリティ)としての原因は真反対であることが分かります。また、文化によってもこの自己本位と他者配慮の心理のバランスには偏りがあります。日本はもともと他者配慮の強い集団主義の文化であるのに対して、アメリカなどの欧米は自己本位の強い個人主義です。つまり、今、日本では社員(個人)が、集団主義から個人主義化してきているということです。(2)会社(社会)の要因―会社本位な社風前田は一緒に残業をしている他の部下たちに「昔はおれも上司に怒られてへこんで。でもその後、居酒屋に飲みに連れてってもらって。そこで教わったんだよ仕事の意味を。いっしょに客の喜ぶ顔見ようじゃないかって肩叩かれて。それでまた元気になって何とかやって行けたんだ」とこぼします。一方、オフ会でのぞみんは「今の不況では、昔のように十分な社員教育を行えないという悩みもあるんです」「そして会社にも今井さん育てる体制や今井さんへの理解が欠けていた」「そこに断絶が生まれ、お互いが苦しむことになったんです」と続けます。会社(社会)の要因として、会社本位な社風なってしまったことです。経済の低迷や国際競争の激化により、社員を育て成長を見守る余裕が経費的にも時間的にも職場になくなってきました。即戦力や成果を求めすぎて、社員(個人)よりも会社(社会)の利益に重きを置かざるを得なくなってしまったのです。つまり、社員(個人)だけでなく会社(社会)も、集団主義から個人主義化してきているということです。なぜ「新型うつ病」は増えているのか?―表3.「新型うつ病」になる原因は分かってきましたが、なぜこれほどまでに「新型うつ病」は増えているのでしょうか? 海外の状況と比べつつ、日本ならではの状況を社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けてまた探ってみましょう。(1)社員(個人)の要因―受け身で依存的な育ち方のぞみんは、「核家族やゆとり教育の世代に育って、大事に育てられてきて、人に怒られたり、ぶつかりあったりする経験が少ないから」と言います。ここから分かることは、葛藤(ストレス)の少ない育て方(生育環境)により、自己本位な育ち方に変わってきたのに、受け身で依存的な育ち方は相変わらず残っている、むしろ増えていることです。この世代は、ちょうど1980年代以降の生まれで、現在の20、30歳代ということになります。逆に、1970年代以前の生まれである現在の40歳代以降に「新型うつ病」は少なく、従来型のうつ病が多いです。家庭では、核家族化により祖父母がもともと家におらず、父親は単身赴任や出張で不在がちで、さらに一人っ子で兄弟がいなければ、母親との濃密な関係が増えて、過干渉で過保護に育てられます。母親が先回りするので、小さな失敗や挫折という貴重な経験をしにくくなります。学校では、「みんな仲良し」「ゆとり」という教育方針のもと、競い合いやぶつかり合いが好ましくないと教えられます。よって、友達や恋人との関係も、傷付け合わないために細心の注意を払った表面的な「やさしい」付き合いに留まります。例えば、ラインやメールの返事をいかに早くするかばかりを気にするようになります。言いたいこと言い合ってぶつかり合うような深い友情や恋愛感情の関係にはなりにくくなっているのです。本来、社会では人の価値観はそれぞれ違い、仕事においても恋愛においてもぶつかることは当たり前です。しかし、成人するまでに人間関係でぶつかり合う経験が少ないと、その葛藤を適切に対処する能力が磨かれていかないのです。結果的に、その葛藤(ストレス)を避けるために、逃げ込みの心理が働き、休職という手段を用いて、会社(社会)に依存してしまうのです。それでは、世界、特にアメリカではどうでしょうか? アメリカでは、会社でうまく行かないことがあれば、自分の能力が発揮できないと思い、あっさり辞めて他の会社に転職します。転職率が高いのもうなずけます。一貫したドライな個人主義です。一方、日本では、会社でうまく行かないことがあっても、その会社にしがみつきます。けっきょく集団的な帰属意識が根強いため、社員(個人)は、個人主義的な自己本位に変わってきたのに、集団主義的な依存は変わらないままなのです。これが、さきほどのぞみんが指摘した「幼さ」です。一貫しない「ウェット」な個人主義なのです。ちなみに、この依存的な育ち方として、「新型うつ病」と時期や特徴を同じくして注目されている社会現象が「ひきこもり」や「草食系」です。なかなか働こうとしない心理は、人間関係においてもなかなか働きかけようとしない心理につながっていきます。(2)会社(社会)の要因―保護的な労働法制今井の会社の社長は、前田に「うつ病とか言って単なる『怠け病』じゃないのか。そんなの気合いで何とでもなるんだよ。甘えだ甘え」と吐き捨てます。かつては「気合い」という言葉で、連帯意識を高め、それでも休職してしまう場合、その数少ない社員を手厚く抱え込んでいた時代がありました。当時からの就業規則では「新型うつ病」による休職を想定していません。会社の要因として、現在、「新型うつ病」によって休職する社員が急増しているにもかかわらず、その保護的な労働法制が残っていることです。それでは、世界、特にアメリカではどうでしょうか? アメリカでは、就職は基本的に社員(個人)と会社の契約です。よって、社員(個人)の能力が発揮されていなければ、契約への債務不履行となり、解雇の理由になります。雇用の流動性が高いのもうなずけます。会社も一貫したドライな個人主義です。一方、日本では、うまく行かない社員がいても、保護的な労働法制によって、もともとの給料の7、8割の傷病手当が1年半から3年くらい支給され、手厚く抱え込まれてしまうのです。特に、手厚くされる公務員や大企業の社員は、復職を先延ばしする傾向があります。けっきょく、社会の集団的な連帯意識が根強いため、会社は、利益追求する個人主義的な会社本位に変わってきたのに、手厚い集団主義的な労働法制は変わらないままなのです。これは、「新型うつ病」に戸惑い右往左往する社会の「幼さ」と言えます。日本の社会もまた一貫しない「ウェット」な個人主義なのです。表3 「新型うつ病」の増加の原因、結果、アプローチ 職員(個人)職場(社会)原因変化自己本位(個人主義的)会社本位(個人主義的)無変化依存的な育ち方(集団主義的)休職中の保護的な労働法制(集団主義的)結果逃げ込み抱え込みアプローチ自己本位の是正休職中の依存の脱却会社本位の是正休職中の過保護の脱却なぜ「新型うつ病」は「ある」のか?―グラフ1.これまで、「なぜ『新型うつ病』になるのか?」という疑問やその増加の原因を解き明かしてきました。それは、「かんばりすぎ脳」「上下関係脳」「つながり脳」「先読み脳」でした。それでは、そもそもなぜ「新型うつ病」は「ある」のでしょうか? その起源について、進化医学的な視点で、無意識的な心理と意識的な心理に2つに分けて探っていきましょう。(1)「助けて(休ませて)」という無意識的な心理―「助けて脳」前回(9月号)の記事では、従来型のうつ病の起源として4つの心理の進化をご紹介しました。その中で、3番目の「つながり脳」(社会脳)に着目してみましょう。社会脳とは、助け合い(協力)を好む心理でもあります(利他性)。例えば、困っている人がいたら、私たちは自然と助けたくなります。これは、そうなるように私たちの心が進化してきたと考えられています。この心理が働く遺伝子をより持っている種の共同体(社会)が、生存率や生殖率を高め、子孫をより多く残してきたからです(包括適応度)。この社会脳の中でさらに新しく進化した心理が考えられています。それは、周りの「助けたい」という心理を逆手に取った「助けて」という無意識的な心理です。例えば、身の危険を感じるなどの自分では対処できない困難(ストレス)を感じた時、腰や膝が抜けたり(転換性障害)、気を失い記憶がなくなること(解離性障害)があります。この反応は、単独で行動している場合は生存に不利です。しかし、集団で行動している場合、周りに助けてもらえる可能性が高く、生存に有利であることから進化したと考えられています。ここで、私たちは、「助けて」と言葉で伝えれば済むのに、なぜわざわざ体の反応で示さなくてはならないのかと思うでしょう。その理由は、言葉を使うようになったのは喉の構造が進化したごく最近の20万年前だからです。社会脳は300万年前から進化し始めており、その間の280万年間に、私たちの祖先は、言葉ではなく、主に表情、身振り手振り、態度でコミュニケーションをとっていました(サイン言語)。だからこそ、現代でも、言語的コミュニケーションよりも非言語的コミュニケーションの影響力の方が圧倒的に大きいのです(メラビアンの法則)。つまり、「新型うつ病」の1つ目の起源は、困難(ストレス)を感じた時、うつという反応(抑うつ反応)を周りに見せることで(信号)、周りから援助(互恵的利他行動)を引き出す心理であると言えます(社会的ナビゲーション仮説)。腰抜けや膝抜け、記憶喪失がわざとではないのと同じように、抑うつ反応は、本人が意図せず意識せずに起こります。現代の日本では、社員(個人)のストレス耐性が弱まってきているにもかかわらず、会社(社会)のストレス負荷は増してきています。この状況で、この抑うつ反応が、先史時代の瀬戸際の捨て身の心理戦略から、高度に社会化した現代を生き抜く新たな心理戦略として引き継がれ広がってきているように思われます。そう考えれば、職場ではうつでも自宅では元気であったり、休職中に元気で復職してまたうつになるという現象も、周りの支援を引き出すための一時的なもので一貫性がない点から納得がいきます。また、うつ病の治療としての薬物療法や休養が、従来型のうつ病に効果があるのに対して、「新型うつ病」にはほとんど効果がない現状も、会社の苦手な上司や同僚というストレス因子が変わらない点から、納得がいきます。(2)「どうせならもっと助けて(休ませて)」という意識的な心理―「怠け脳」今井の会社の社長は「怠け」と言い放っています。休職する前、今井は本人なりに一生懸命で、「怠け」の意図や意識ははっきりとは見受けられません。ところが、休職した後、海外旅行に行けるくらい元気になっているにもかかわらず、なかなか復職しようとしない点では、「怠け」の意図や意識が見受けられます。「怠け」もまた、社会脳の中でさらに新しく進化し心理戦略と考えられます。それは、助け合い(協力)の心理を出し抜いた「働かなくても良いなら働かない」、今井に当てはめれば「どうせならもっと助けて(休ませて)」という意識的な心理です。先史時代、私たちの祖先は、助け合い(協力)によって得た共同体(集団)の食糧(資源)を平等に分配してきました。ところが、その平等意識に乗じることで、その資源を楽して手に入れようとする心理もまた進化したのです。これを駆り立てるのは、「ただ乗り遺伝子(フリーライダー)」と呼ばれます。みんながお金を払って乗り物に乗っているのに自分だけただで乗ろうとする、言い換えれば、みんなが働いているのに自分だけは休もうとすることです。実際に、社会主義国家であったかつてのソビエト連邦や、国民を厚遇した政策のギリシアでは、働かない人が増えすぎて、国の運営が破綻しました。つまり、「新型うつ病」の2つ目の起源は、うつによって周りから援助が得られた時に、うつが治らないことを主張することで、その援助の継続を引き出す心理であると言えます(疾病利得)。これは、休めることに味を占めて、自分の権利として就業規則による休職可能な期間を目一杯に休もうとする点で、損得勘定が働いており、意図して意識して起こっていると言えます。「新型うつ病」は、経過の途中で、無意識的な心理から意識的な心理にシフトしていると言えます。「『新型うつ病』は怠けか病気か?」という議論の難しい点は、この無意識と意識の心理の偏りが、患者によっても、また病期によっても違うため、一概に言えないことです。さらに、本人は「おれは悪くない」という心理が強いため、「怠け」の要素を認めたがらないです。ここで言えることは、「新型うつ病」に「怠け」の要素はあると私たちは理解しつつも、臨床の場面で「怠け」という価値判断を含む言葉を使うことは治療的ではないということです。なぜ医師は休職診断書を作成してしまうの?―医師の心理.今井がうつ病と診断されて「ですよね~」と喜んでいる様子に、医師は「はい?」とけげんな表情をしています。実際に、ほとんどの医師は、初診の段階で「新型うつ病」を疑ってはいるのですが、なぜ休職のための診断書を作成してしまうのでしょうか? その理由は、大きく3つあります。(1)訴えを重くとる―見逃しはだめ1つ目の理由は、医師は基本的に症状を重くとることです。今井は「おれこんなにがんばってるのに」と思っており、それを医師は聞いています。患者が本人なりにはがんばっている点で(過剰適応)、「新型うつ病」に従来型のうつ病の要素も混じっていることが実際の臨床でよくあります。つまり、少なくとも初診時の診察室の中だけでは一概に「新型」か従来型かとはっきり言い切れないということです。このような病態に対して、「新型うつ病」と決め付けて、訴えを過小評価して休養を指示せずに後に従来型のうつ病の要素で症状が悪化して自殺されるなどの重大な事態を招くと問題があります。逆に、「新型うつ病」と決め付けず、むしろ訴えを過大評価して安全策として休養を指示して、実は後から休養するほどではなかったと分かっても問題はないです。つまり、医療において重要視されるのは、「空振りはありだけど見逃しはだめ」ということです。(2)訴えを受け止める―信頼関係が大事2つ目の理由は、医師は基本的に訴えを受け止めることです(受容)。医師は今井の饒舌な訴えに耳を傾けています。医師は、この受容によって信頼関係(ラポール)を築くことを優先します。これは医師の倫理観でもあります。逆に言えば、上から目線で疑いの目を向けていたら(パターナリズム)、治療が始まらないということです。たとえ「新型うつ病」を見抜いていたとしても、少なくとも訴えを受け止めているふりをして、暴くことはためらいます。(3)訴えを覆せない―客観性がない3つ目の理由は、医師は基本的に訴えを覆せないことです。今井の饒舌な様子(表出)から症状が誇張されていることが推測されます。実際の臨床では、「『うつ』でもう職場に行けない」と言い張ったり、「このままだとどうにかなってしまう」とほのめかす患者も多いです。うつ病の診断や治療方針は、このような診察室での患者の主観的な訴えを根拠としており、それが疑わしいと思っても、それを覆すだけの客観的な事実や検査データが医師側にはないのが現実です。患者は、診断書をもらう時点では海外旅行に行くとは言いません。多くのうつ病の心理検査も、患者の主観が反映されてしまい、客観性には限界があります。このような状況で、もし十分な根拠なく訴えを突っぱねれば、逆に医師の判断に客観性がないことになり、医師によるいやがらせ(ドクターハラスメント)だと受け取られる危険性もあります。さらに、患者によっては、休養診断書を手に入れるために、医療機関を渡り歩く場合もあります。最初のうちは休職するほどの状態ではないと医師から判断されるのですが、納得が行かず、セカンドオピニオンの名のもとに受診を繰り返すうちに、やがて訴え方が誇張的で誘導的になり、最終的に休職診断書を手に入れることができるのです。「新型うつ病」にどうすれば良いの?―表3、表4.これまで、「新型うつ病」の理解を深めてきました。治療反応性としては、従来型のうつ病が良好であるのに比べて、「新型うつ病」はもともと良好ではないことが分かります。それでは、どうすれば良いのでしょうか?「新型うつ病」の原因は主に4つであることを解き明かしてきました。それは、社員(個人)が自己本位(個人主義的)になったこと、社員(個人)が依存的なまま(集団主義的)であること、会社(社会)が会社本位(個人主義的)になったこと、会社(社会)が労働法制によって休職中に保護的なまま(集団主義的)であることです。ということは、その4つの原因に対して、それぞれ4つのアプローチをすれば良いのです。それは、社員(個人)の自己本位の是正、社員(個人)の休職中の依存の脱却、会社(社会)の会社本位の是正、会社(社会)の休職中の過保護の脱却です。ここから、社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けて、さらにそれぞれの側面で2つのアプローチのポイントをご紹介します。社員(個人)にどうすれば良いのか?.(1)周りに目を向けさせる―認知行動療法オフ会でのぞみんは「つらそうですね」と今井に共感します。しかし、間を置いて「M田さんも」と付け加えると、今井は「はっ?」「のぞみん、M田の味方なの?」とびっくりして言います。そして、他の参加者は「なんでM田の気持ちなんて分かるわけ?」と質問してきます。1つ目のアプローチのポイントは、自己本位の是正と依存の脱却のために、周りの視点に立たせて周りに目を向けさせることです(認知行動療法)。これは、一方的に説教をすることではないです。自分に目が向いてばかりで自分のことでいっぱいになっている本人に、周りがどう思っているかなどを具体的に問いかけ多面的に想像させます。例えば、本人が休職中に海外旅行に行ったことを知った同僚の気持ち、自分が悪口を書き込んだブログを見た上司の気持ち、そして今井を叱っていた時の上司の気持ちなどです。また、過去・現在・未来の時間軸の視点に立たせて将来に目を向けさせることです(メタ認知)。今この瞬間に目が向いて逃げ込もうとしている本人に、本人に「新型うつ病」の特性の理解を促し、このままだと将来どうなるかなどの見通しを伝えます。例えば、本人の物事のとらえ方(認知)に主な原因があること、原因からして従来型のうつ病ではないこと、薬の効果は限定的であること、休職が長引けば長引くほど対人スキル(社会性)が低まり逆に復職が困難になること、部署移動や転職により職場の環境を変えるだけでは同じ症状がまた出る可能性が高いことなどです。(2)周りが自分に合わなくても不安がらなくさせる―集団の復職訓練(リワーク)オフ会の参加者の男性の1人が「(妻が)『今夜は出かけるんだ。気分転換も大事だよね。いってらっしゃい」って嫌味を言うんだよ」「あいつ(妻)は内心じゃおれのこと働きもせず遊び歩いちゃってと思ってるんだよ」と嘆きます。すると、他の参加者たちは「それって」「単に思い込みなんじゃ・・・」とぼそっと指摘します。このやり取りを見た今井は、自分が独りよがりだったことに気付き、復職を決意するのです。ここから分かることは、自分独りでは気付かなかったことが、集団の中では気付くことができることです。昔から「人の振り見て我が振り直せ」とはよく言ったものです。2つ目のアプローチのポイントは、自己本位の是正と依存の脱却のために、休職しているうつ病の患者が集まった集団で復職訓練を行うことです(リワーク)。昨今では、このリワークを行う医療機関や企業が増えてきています。「新型うつ病」の患者は、医師や臨床心理士などの医療職(権威)からの個別の指摘に対しては、「傷付き不安」から身構えてしまい、自分の偏った考え方(認知の偏り)を認めようとしなかったり(否認)、反発するケースがあります(抵抗)。ところが、自分と似たメンバーからの指摘であれば、仲間意識による親近感から「傷付き」も最小限になります。こうして、安心感のある集団の中で、小さな「傷付き」体験を積み重ねることで、物事のとらえ方(認知)の偏りが修正され、周りが自分に合わなくても不安がらなくなり、「傷付き不安」を克服して、打たれ弱くはなくなります(人間的成長)。言い換えれば、リワークとは、仲間といっしょに小さく傷付け合うことで、人間関係とは何かを学ぶ大人の学校です。リワークによって、「自分の周りには相手がいる」「自分はたくさんの中の1人なんだ」という現実をより意識するようになります。すると徐々に、「自分にばかり目が向いていた」「上司や会社のせいにしてばかりだった」「嫌なことから逃げていた」という自分のもともとの考え方(認知)に気付くようになります。そして、「もっと周りにも目を向けよう」「自分にも悪い所があった」「嫌なことでも仕事だからやろう」と考えるようになります。こうして、自分も大事だけど周りも大事と思うようになり、「なりたい自分」と「なるべき自分」のバランスがよりとれるようになっていきます。会社(社会)はどうすれば良いのか?.(1)社員(個人)を育て見守る取り組みを行う―アサーショントレーニング上司の前田は一緒に残業をしている他の部下たちに「おれだって好きで今井を叱ってたわけじゃないよ」「早く一人前になってもらわなきゃ困るから必死だったんだよ」とこぼします。すると、ある部下が「今井も必死だったんじゃないですか?」「毎日あわただしすぎて、とにかく失敗しないように必死で、そればっかりで分かんなくなっちゃったじゃないですかね」と進言します。思い直した前田は、いよいよ今井が復職した日に「ありがとう。待ってたよ」「これからはもっとコミュニケーションをとって、いっしょに成長していけたらと思っている」と同じ目線で真摯に向き合います。すると、今井も「ありがとうございます」と素直に答えることができるのです。1つの目のアプローチのポイントは、会社本位の是正のために、そして長期的な会社の利益のためにも、社員(個人)を育て見守る取り組みを行うことです。これは、昔ながらの「気合い」や「精神力」などの抽象的な言葉で一方的に押し付けることではありません。例えば、それは感謝し合うポジティブなコミュニケーションのスキルを会社全体で推し進めることです(アサーショントレーニング)。また、「こうしろ!」「ああしろ!」という指示命令ではなく、「あなたはどうしたい?」「何ができるの?」「私たちは何をしてあげられる?」という問いかけによる双方向のかかわり方です。さらには、入社研修で新人社員たちに今回紹介しているこのドラマを流して、休職中に海外旅行に行く社員の問題点や上司が一方的に叱責する会社の問題点などについてグループワークをして、コミュニケーションの大切さをお互いの共通認識とすることです。「新型うつ病」のなり方を学ぶことは、「新型うつ病」にならないやり方を学ぶことでもあるからです。(2)休職中の傷病手当を最低限の設定に引き下げる―限界設定上司の前田は、部下たちに「(休職している)今井の担当分は同じチームのみんなに肩代わりしてもらう」と伝えます。すると、部下たちは「そんなあ、おれたちもう今の作業量でいっぱいいっぱいですよ」と嘆きます。一方、今井は休職中に傷病手当で海外旅行に行っています。これは、明らかに不公平です。このドラマでは、幸運なことに、オフ会でのやり取りのおかげで、今井は考え直し、早めに復職することができました。しかし、実際は、休職中の手厚い保障に安住することで、なかなか復職できないケースが多いです。2つ目のアプローチのポイントは、休職中の過保護の脱却と公平性のために、休職中の傷病手当を生活費と医療費を加味した最低限の設定に引き下げることです。つまり、保障の線引きを見極めるということです(限界設定)。これには、日本の労働法制が変わらなければならないです。そうすることで、本人に早期の復職が動機付けられます。そもそも、「傷病」の期間は、休養の期間であり、海外旅行などの交遊費にお金がかかることはないはずです。交遊費にお金をかけるくらい活動性が高いなら、早期に復職するタイミングであると言えます。また、自宅では元気で職場でうつになるという状態なら、それは本人にその職場が合っていないわけで、退職や転職のタイミングであると言えます。ただ、ここで誤解がないようにしたいのは、先ほど紹介したアメリカのような完全な契約社会が望ましいというわけではないです。それは、全くセーフティネットがないことはホームレスや犯罪などの別の社会問題を引き起こすリスクが高まるからです。かと言って、先ほど紹介したかつてのソビエト連邦や現在のギリシアのような生活が過剰に保障された社会もまた望ましくないです。それは、働かない人たち(フリーライダー)が増えすぎてしまい、国の財政(資源)を食い潰して、国家(集団)が破綻するリスクが高まるからです。現在の日本は、正規労働が昔ながらの労働法制で過剰に保障されています。その過剰になった保障の費用を抑えようとして、会社は全く保障のない非正規労働を増やし続けています。格差がますます開き、アンバランスになっています。望ましいのは、非正規労働を減らし正規労働を増やすことはもちろんですが、同時に正規労働の過剰な保障を是正することです。大事なことは、「切り捨て」の社会も「抱え込み」の社会も同じくらいの危うさがあり、私たちは、そのバランスをとる必要があるということです。表4 「新型うつ病」へのアプローチのポイント アプローチポイント職員(個人)自己本位の是正休職中の依存の脱却周りの視点に立たせて周りに目を向けさせる(認知行動療法)過去・現在・未来の時間軸の視点に立たせて将来に目を向けさせる集団で復職訓練を行う(リワーク)職場(社会)会社本位の是正職員(個人)を育て見守る取り組みを行う休職中の過保護の脱却休職中の傷病手当を最低限の設定に引き下げる(限界設定)「新型うつ病」はどこに行くの?.「新型うつ病」は、現在の日本の文化が作り出した要素が大きいことが分かります。それは、もともとの集団主義的な文化から新しい個人主義の文化に変わりゆく時代の流れの中で起きています。つまり、「新型うつ病」は、「助けて脳」と「怠け脳」という社会脳の進化の代償であるだけでなく、現在の日本の一貫しないウェットな個人主義という「文化の代償」とも言えます。今ここで、「新型うつ病」の正体が見えてきました。そして、どうすれば良いのかも分かってきました。これから社員(個人)も会社(社会)も私たち全員が、「新型うつ病」をより良く理解していけば、そして、バランスのとれた新たな労働の文化を生み出していけば、「新型うつ病」という現象はなくなっていく可能性があるのではないでしょうか?1)吉野聡:「現代型うつ」はサボりなのか、平凡社新書、20132)NHK取材班:職場を襲う「新型うつ」、文藝春秋、20133)アンソニー・スティーブンズほか:進化精神医学、世論時報社、20114)大平英樹:感情心理学・入門、有斐閣アルマ、2010

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妊娠に伴ううつ病、効果的なメンタルヘルス活用法

 スクリーニングでうつ病と診断された妊娠中あるいは分娩後の女性について、スクリーニング単独の場合はメンタルヘルスの活用は22%にとどまったが、周産期外来部門への介入や、本人へのリソース提供を行うことで、周産期うつ女性のメンタルヘルス活用は、2~4倍増大するという。米国・マサチューセッツ大学医学部のNancy Byatt氏らがシステマティックレビューの結果、示した。Obstetrics & Gynecology誌オンライン版2015年11月号の掲載報告。 レビューは、PubMed、CINAHL、PsycINFO、ClinicalTrials.gov、Scopus(EMBASE)を検索し、1999~2014年に発表された、周産期医療時におけるうつ病スクリーニング後のメンタルヘルスケアの活用を評価した研究を特定して行われた。研究の選択基準は、1)英語で発表、2)スクリーニングでうつ病と診断された妊娠中あるいは分娩後の女性が被験者、3)周産期外来で有効性の認められているうつ病スクリーニングを実施、4)メンタルヘルスケアの活用をアウトカムに含む、とした。392件の論文が検索され、このうち42件がフルテキストレビューであり、17件が選択基準を満たした。modified Downs and Black scaleを用いて研究の質を評価。2人の研究者が個別に論文をレビューし、コンセンサスを得ながら、試験デザイン、介入の内容、メンタルヘルスケアの活用を明らかにし、分類した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化対照試験1件、クラスター無作為化対照試験1件を含む、さまざまな試験デザインの研究論文17件をレビューに包含した。研究論文の質に関する平均支持率は61%(31.0~90.0%)であった。・周産期外来部門へ介入が行われなかった場合、周産期うつ女性が1回以上メンタルヘルス外来を受診していた割合は平均22%(13.8~33.0%)だった。・しかし、患者への関与戦略(44%、29.0~90.0%)、実地アセスメント(49%、25.2~90.0%)、また周産期医療従事者へのトレーニング(54%、1.0~90.0%)といった介入を行うことで、外来受診の頻度は倍増した。・さらに、女性に対するリソースの提供、周産期医療従事者へのトレーニング、実地アセスメント、および周産期医療従事者対象のメンタルヘルスコンサルテーションという介入を行うことで、メンタルヘルスケアの活用はより高率となることが示唆された(81%、72.0~90.0%)。・詳細で正確なさらなる研究が必要ではあるが、スクリーニングに加えて本人および医療従事者を対象とした介入、また実地臨床レベルの障壁に対する介入を行うことは、うつ病の検出、評価、専門医への紹介、さらに周産期医療を改善すると思われた。関連医療ニュース 妊娠初期のSSRI曝露、胎児への影響は 妊娠初期のうつ・不安へどう対処する ヨガの呼吸法や瞑想、産前うつ軽減によい

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MetSリスクの高い抗うつ薬は

 メタボリックシンドローム(MetS)は双極性障害患者でよくみられ、一般集団と比較し相対リスクは1.6~2倍といわれている。このリスク増加は、不健康なライフスタイルや薬物治療に起因すると考えられている。これまで、抗精神病薬や気分安定薬は、体重増加やMetSと関連付けられてきたが、抗うつ薬の影響については総合的に評価されていなかった。イタリア・トリノ大学のVirginio Salvi氏らは、抗うつ薬の種類とMetSリスクとの関連を評価するため検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2015年9月26日号の報告。 本横断的研究では、双極性障害患者294例を連続登録した。MetS診断には、修正NCEP ATP-III診断基準を用いた。患者に使用された抗うつ薬は、一般的な分類名(SSRI、TCA、SNRI、その他の抗うつ薬)、およびヒスタミン1(H1)受容体との親和性を考慮した薬理学的作用に従って分類した。 主な結果は以下のとおり。・全般的には、抗うつ薬の使用はMetSと関連していなかった(有病率[PR]:1.08、95%CI:0.73~1.62、p=0.70)。・ヒスタミン1受容体への高い親和性を有する抗うつ薬を使用した患者(15例)では、MetSの有病率の大幅な増加が認められた(PR:2.17、95%CI:1.24~3.80、p=0.007)。・連続共変量モデルとして阻害定数(Ki)を含めた場合、KiとMetS有病率との間に逆相関を認めた(p=0.004)。 結果を踏まえ、著者らは「本研究は、双極性障害患者のMetSリスクを予測するためには、抗うつ薬の古典的な分類よりも薬理学に基づいた分類のほうがより有用であることを、臨床現場で初めて示した報告であり、臨床経過に関連する可能性がある。しかし、これらの知見が一般化できるかどうかを検討する、より大規模な研究が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 難治性うつ病発症に肥満が関連か 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学  担当者へのご意見箱はこちら

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腰痛と精神障害の併存、障害年金支給リスクを16~20倍に

 腰痛と神経症性障害やストレス関連障害などとの相乗的な影響について、オーストリア・ウィーン大学のThomas. E. Dorner氏らは障害年金の観点からコホート研究を行った。その結果、両者の併存はそれぞれ一方の場合より、障害年金支給のリスクを相乗的に高めることが明らかになった。結果を踏まえて著者は、「さらなる障害と労働市場からの排除を防ぐことが臨床的に重要」とまとめている。Psychological Medicine誌オンライン版2015年10月15日号の掲載報告。 本コホート研究の登録者は、2004年12月にスウェーデンに在住しており、2005年は年金非支給期間で、2004~05年にまたがった病欠のない16~64歳の482万3,069例であった。 2006年~10年の障害年金に関するハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算定した。曝露変数は、腰痛(ICD-10のM54:背部痛)[2005年における病欠、入院または専門外来受診]と、一般的な精神障害(ICD-10のF40-F48:神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害)[2005年の病欠、入院、専門外来受診、または抗うつ薬(ATC分類N06a)]とした。 主な結果は以下のとおり。・障害年金に関するHRは、腰痛を有する女性で4.03(95%CI:3.87~4.21)、同男性で3.86(同:3.68~4.04)、一般的な精神障害を有する女性で4.98(同:4.88~5.08)、同男性で6.05(同:5.90~6.21)であった。・腰痛と一般的な精神障害の両方を有する場合、障害年金に関するHRは女性で15.62(95%CI:14.40~16.94)、男性で19.84(同:17.94~21.94)であった。・女性において、相乗指数(synergy index)は1.24(95%CI:1.13~1.36)、相互作用による過剰相対リスクは0.18(同:0.11~0.25)、寄与割合は2.08(同:1.09~3.06)であった。同様に男性ではそれぞれ1.45(同:1.29~1.62)、0.29(同:0.22~0.36)および4.21(同:2.71~5.70)であった。

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統合失調症薬物治療、LAIは早く使うべきなのか

 一貫性がある抗精神病治療は治療の重大な部分を占めるが、統合失調症治療では、治療アライアンスの確立および継続、患者中心のアプローチがあらゆるケアの面で基本となることを、米国・Partners in Aging & Long-Term CaregivingのGeorgia L. Stevens氏らは文献レビューの結果、報告した。すなわち、意思決定やアドヒアランス共有の強化、長期にわたる回復を達成しうるなどの点においてである。臨床試験の結果は、早期または初回エピソードの統合失調症患者の治療について、経口抗精神病薬による治療を支持している。研究グループは文献レビューによって、統合失調症における早期治療開始の優位性と、持効性注射薬(LAI)の早期使用の臨床ベネフィットを調べた。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2015年9月25日号の掲載報告。 統合文献レビューにて、統合失調症治療におけるLAI早期使用に関する公表文献を特定し、検討した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症初回エピソードに対する抗精神病薬治療導入への反応率は、それ以降の抗精神病薬治療と比べて非常に高かったが、この問題について研究グループは事実上、取り組むことはなかった。・不良な治療アドヒアランスが、次年度以降の再発や再入院の主要因であり、これは多大な影響と大幅な経済負荷に結び付く高い再発率と関連していた。・アドヒアランス不良のコストは、14億8千万ドルと推算された。統合失調症の治療における大きな課題は、抗精神病薬治療を持続的なものとするため、アドヒアランス不良を変えることであった。・LAIは、少なくとも抗精神病薬と同等の治療効果があることは知られているが、理解は十分ではなかった。・一方で、LAIは、経口治療のアドヒアランスに関連する多くの問題に対応するものであった。・LAIは、統合失調症の初回エピソードの治療および早期導入の効果があるという直近のエビデンスが示された。関連医療ニュース 2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは 初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る 持効性注射剤と経口薬の比較分析、どんなメリットがあるか  担当者へのご意見箱はこちら

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軽度認知障害に対するγ-セクレターゼ阻害薬の可能性は

 アルツハイマー病(AD)の早期診断は臨床管理において重要であり、早期段階の患者を臨床試験に組み込むことで、疾患修飾薬の評価を行うことができる。米国・ブリストル・マイヤーズ スクイブ社のVladimir Coric氏らは、軽度認知障害(MCI)期の症候性前認知症期(prodromal AD:PDAD)における、γ-セクレターゼ阻害薬avagacestatの安全性を評価するとともに、脳脊髄液(CSF)バイオマーカーが認知症と臨床診断される前にPDADを特定できるかどうかを検討した。その結果、avagacestatの有効性は認められず、用量制限有害作用と関連していることが示された。また、PDAD患者はCSF陰性のMCI患者と比較すると、臨床的に認知症への進行率および脳萎縮率が高いことが明らかとなった。著者らは「CSFバイオマーカーとアミロイドPET所見は相関しており、いずれの方法も脳内アミロイドパチーの存在を確認したりPDADの鑑別に利用できる」とまとめている。JAMA Neurology誌オンライン版2015年9月28日号掲載報告。 研究グループは、2009年5月26日~2013年7月9日に、外来患者1,358例をスクリーニングして、MCIおよびCSFバイオマーカーの基準を満たしたPDAD患者263例を、avagacestat群(132例)とプラセボ群(131例)に無作為化し、avagacestatの安全性および忍容性について、無作為化プラセボ対照比較試験(第II相試験)を実施した。また、バイオマーカーの分析感度を評価するため、MCI基準を満たすがCSFバイオマーカー陰性の患者102例を、非無作為化観察コホートとして同様に観察した。 主な結果は以下のとおり。・avagacestat 50mg/日群は、中断率は19.6%と低く、忍容性は比較的良好であった。・avagacestat 125mg/日群は、主に消化管の有害事象のため中断率が43%と高かった。・avagacestat群では、非黒色腫皮膚がんおよび非進行性の可逆的な尿細管作用の増加が観察された。・重篤有害事象の発現頻度は、avagacestat群(49例、37.1%)がプラセボ群(31例、23.7%)より高かった。これは非黒色腫皮膚がんが高率に発現したためと考えられた。・2年後に認知症へ進行していた患者の割合は、観察コホート(6.5%)よりPDADコホート(30.7%)で高かった。・PDADコホートにおける脳萎縮率は、観察コホートの約2倍であった。・PETでの異常なアミロイド蓄積とCSF所見との一致率は約87%であった(κ=0.68、95%信頼区間:0.48~0.87)。・重要な臨床評価項目において、avagacestat群とプラセボ群とで有意な治療の差は観察されなかった。関連医療ニュース 早期アルツハイマー病診断に有用な方法は 認知症、早期介入は予後改善につながるか 軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標  担当者へのご意見箱はこちら

4551.

1万超の爪からの薬物検出分析、薬物乱用を見抜けるか

 米国・United States Drug Testing Laboratories社の Irene Shu氏らは、薬物の蓄積リスクが高いと考えられる1万を超える爪のサンプルを用いて、ELISA法またはLC-MS-MS法により薬物の検出を試みた。その結果、さまざまな薬物が検出され、薬物の長期使用および乱用を評価するうえで、爪の分析が有用な可能性を示唆した。Journal of Analytical Toxicology誌2015年10月号の掲載報告。 爪(手と足爪)はケラチンでできている。爪の成長に伴い、薬物はケラチン線維に取り込まれ、使用3~6ヵ月後にそのケラチン線維内から検出される。その特性を生かして本研究では、ハイリスク症例から3年間にわたり採取した1万349サンプルについて薬物テストを実施した。全指の爪2~3mmを切り取ってサンプルを採取した(100mg)。得られたサンプルについて、有効とされる方法を用いて分析を行った。最初のテストは主に酵素免疫吸着測定法(ELIZA)により行ったが、一部は液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS-MS)によって行った。陽性と推定されるサンプルについて、薬物の種類ごとに適した洗浄、微粉砕、分解、抽出などの過程を経て確認試験を行った。 主な結果は以下のとおり。・合計サンプル7,799例を用いてアンフェタミンに関する分析を行った。・すべてのアンフェタミン分析において、濃度は40~57万2,865pg/mg(中央値100~3,687)の範囲にあった。・サンプルの14%で、アンフェタミンとメタンフェタミンが認められ、22例で3,4メチレンジオキシメタンフェタミン陽性(0.3%)、7例でメチレンジオキシアンフェタミン陽性(0.09%)、4サンプルで3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン陽性(0.05%)であった。・サンプルの5%(合計7,787例における)で、コカインとその関連分析物が検出された。濃度は20~26万5,063pg/mg(中央値84~1,768)の範囲にあった。・オピオイド濃度は40~11万8,229pg/mg(中央値123~830)の範囲にあった。・オキシコドン(15.1%)、ヒドロコドン(11.4%)は、モルヒネ、コデイン、ヒドロモルフォン、メタドン、2-エチリデン-1,5-ジメチル‐3,3-ジフェニルピロリジン、オキシモルホンなど他のオピオイド(1.0~3.6%)に比べ高率で検出された。・カルボキシ-Δ-9-テトラヒドロカンナビノールカルボン酸の陽性率は18.1%(0.04~262pg/mg、中央値6.41)であった。・サンプル3,039例のうち756例(24.9%)が、エチルグルクロニド陽性(20~3,754pg/mg、中央値88)であった。・爪の中に認められる他の薬物にはバルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、ケタミン、メペリジン、トラマドール、ゾルピデム、プロポキシフェン、ナルトレキソン、ブプレノルフィンがあった。・高感度分析機器、主にLC-MS-MSが、爪における薬物をフェムトグラム(10-15g)単位での検出を可能にしている。本研究では、ハイリスク集団からサンプルを採取しているため、陽性率は非常に高かった。関連医療ニュース 薬物過剰摂取のリスクを高める薬物は 薬物依存合併の初発統合失調症患者、精神症状の程度に違いがあるか 日本人薬物乱用者の自殺リスクファクターは

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せん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大

 藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らは、2007年に報告した、せん妄治療に対する抗精神病薬のメタ解析のアップデートを行った。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌オンライン版2015年9月4日号の報告。 本メタ解析には、せん妄の成人患者を対象とし、対照(プラセボまたは通常ケア)と比較した抗精神病薬の無作為化比較試験を用いた。主要評価項目は、試験終了時の反応率とした。副次評価項目は、せん妄の重症度改善、臨床全般印象・重症度尺度(CGI-S)、無作為化から奏効までの期間(time to response : TTR)、中断率、個々の有害事象とした。リスク比(RR)、治療必要数(NNT)および有害必要数(NNH)、95%CI、標準化平均差(SMD)が計算された。 主な結果は以下のとおり。・15件の系統的レビュー(平均期間9.8日、総症例数949例、amisulpride 20例、アリピプラゾール8例、クロルプロマジン13例、ハロペリドール316例、オランザピン筋注またはハロペリドール注62例、オランザピン144例、プラセボ75例、クエチアピン125例、リスペリドン124例、通常ケア30例、ziprasidone32例)、4件の学会抄録と未発表研究を同定した。・抗精神病薬治療群全体でまとめると、プラセボや通常ケアと比較し、反応率(RR:0.22、NNT:2)、せん妄の重症度スコア(SMD:-1.27)、CGI-S(SMD:-1.57)、TTR(SMD:-1.22)の点で優れていた。・また、抗精神病薬治療群はプラセボや通常ケアと比較し、口渇(RR:13.0、NNH:5)、鎮静(RR:4.59、NNH:5)の発生率が高かった。・第2世代抗精神病薬群でまとめると、ハロペリドールと比較し、TTRが短く(SMD:-0.27)、錐体外路症状の発生率が低かった(RR:0.31、NNH:7)。・第2世代抗精神病薬は、ハロペリドールと比較し、有効性・安全性の面でせん妄治療に有用であることが示唆された。ただし、より大規模なサンプルを用いた、さらなる研究が必要である。関連医療ニュース せん妄患者への抗精神病薬、その安全性は せん妄管理における各抗精神病薬の違いは 定型vs.非定型、せん妄治療における抗精神病薬

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うつ病への呼吸リラクゼーション併用療法

 うつ病は患者本人だけでなく、家族、仕事や社会的関係にも多大な影響を及ぼす慢性疾患である。Mackay Memorial Hospital のHui-Ching Chien氏らは、大うつ病患者に対し、認知行動療法に呼吸リラクゼーション・エクササイズを併用した場合の、睡眠の質および心拍変動に及ぼす影響を検討した。その結果、睡眠の質および心拍変動が共に改善したことを報告した。認知行動療法は大うつ病に有効な治療法と考えられているが、これまで、大うつ病患者に対して、認知行動療法と呼吸リラクゼーションを併用した場合の効果を包括的に検討した研究はほとんどないという。Journal of Clinical Nursing誌2015年11月号の掲載報告。 反復実験的研究デザイン法により実施された本検討は、認知行動療法と呼吸リラクゼーション・エクササイズを4週間施行した試験群(43例)と、非介入対照群(46例)の計89例を対象に行われた。睡眠の質および心拍変動について、ベースライン時、1回目の試験後、2回目の試験後、フォローアップ時に測定した。データについて、χ2検定、t検定、一般化推定方式を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、社会経済的状況、疾患の重症度、精神疾患歴を調整した後、試験群において睡眠の質の改善が示され、試験後の結果に有意差が認められた。・心拍変動パラメータも、有意な改善が認められた。・上記のように、認知行動療法と呼吸リラクゼーション・エクササイズの併用が大うつ病患者における睡眠の質と心拍変動を改善しうるという仮説を支持するものであり、その効果は持続的であった。・筋弛緩、深呼吸、睡眠衛生を含む呼吸リラクゼーション・エクササイズと認知行動療法は、入院中の大うつ病患者に提供可能であるものと思われる。・グループでのエクササイズや体験の共有を通してリラックスすることにより、心拍変動の調節、良質な睡眠という感覚が共有できるものと考えられた。関連医療ニュース 音楽療法が不眠症に有用 テクノロジーを用いた不眠症治療、改善の余地あり ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は  担当者へのご意見箱はこちら

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高齢てんかん患者への外科的切除術は行うべきか

 これまで、発作から解放される可能性があるにもかかわらず、60歳以上のてんかん患者に外科的切除術(RES)はほとんど施行されていない。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のSandra Dewar氏らは、60歳以上のてんかん患者に対するRESの有用性を検討した。その結果、90%以上が手術により良好なアウトカムを示し、大半の患者が1つ以上の合併症を有しているにもかかわらず、50%の患者が発作の寛解を達成したことを報告した。今回の結果を踏まえて、著者らは「60歳以上のてんかん患者においてRESは安全かつ有効である。本研究のデータは、加齢を理由にRES施行の回避を考慮すべきでないことを示唆している」とまとめている。Journal of Neurosurgery誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。 研究グループは、QOL改善を含む良好なアウトカムを示すことで、これまで専門的評価の対象とならなかった本集団において、手術のアドバンテージに関する認識を高められる可能性があるとして、RESを施行した60歳以上の患者におけるアウトカムおよび生活満足度の改善状況を検討した。研究グループの施設において、薬物治療抵抗性の焦点発作に対しRESを施行した60歳以上の全患者12例を対象とした。術後に、改訂版Liverpool Life Fulfillment(LLF)ツール(最大スコア32)を適用し、発作に関するアウトカムはEngel分類システムに基づいて評価した。なお、施行患者の大半(12例中9例[75%])が、てんかん発作のほかに1つ以上の合併症を有していた。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間は3.1±2.1年であった。・最終追跡時点において、12例中11例(91.7%)で術後のアウトカムが良好で(Engel Class I-II)、半数(12例中6例)で発作の寛解が認められた(Engel Class IA)。・LLFデータによる評価可能症例は11例で、術後平均LLFスコアは 26.7±6であった。・8例(72.7%)がRES施行に対し高い満足度を示し、そのうち5例(45.5%)は健康全般において手術による改善を示した。関連医療ニュース 高齢者焦点てんかん、治療継続率が高い薬剤は てんかん患者への精神療法、その効果は てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか

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認知症患者と介護者のコミュニケーションスキル向上のために

 看護師と認知症患者との効果的なコミュニケーションにより、患者ニーズの理解が促進し、コミュニケーションのミスに関連した患者または看護師におけるフラストレーションが軽減するため、患者ケアの質が高まる。台湾・国立成功大学のHui-Chen Chao氏らは、最新の革新的インターネットベースコミュニケーション教育(AIICE)プログラムが、認知症患者に対する看護師のコミュニケーションスキルおよび認知症患者の記憶・行動関連の症状およびうつ症状に及ぼす影響を検討した。その結果、AIICEプログラムは看護師のコミュニケーション知識、患者とのコミュニケーション能力評価の頻度、コミュニケーション実行能力を向上させ、患者の記憶・行動関連の問題およびうつ症状を軽減させることが示された。著者らは、「AIICEプログラムを用いた看護師の継続的なコミュニケーション訓練が推奨される」と述べている。Journal of Nursing Research誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。 研究グループは、認知症患者ケアにおける看護師のコミュニケーション知識、態度、患者とのコミュニケーション能力評価の頻度、そしてコミュニケーション実行能力に対する、最新の革新的インターネットベースコミュニケーション教育(AIICE)プログラムの効果を評価した。さらに、認知症患者の記憶・行動関連の問題およびうつ症状などのアウトカムに対する本プログラムの間接的な効果についても評価した。1つのグループを反復測定する準実験的リサーチ法を実施。南台湾にある複数の長期ケア施設から便宜的抽出法を用いて看護師をサンプリングし、一般的な推定式を用いてデータを分析し、ベースライン時、試験4週間後、試験16週間後の3つの時点にわたる経時的変化を比較した。看護師105人がALICEプログラムと試験後の調査を完了した。 主な結果は以下のとおり。・看護師のコミュニケーション知識、患者コミュニケーション能力評価の頻度、コミュニケーション実行能力は、ベースラインと比較し試験4週間後または16週間後に有意な改善が認められた(p<0.01)。・しかし、コミュニケーション態度については有意な改善を認めなかった(p=0.40)。・さらに、患者の記憶・行動関連の問題およびうつ症状は、試験16週間後に有意に軽減した(p=0.05)。関連医療ニュース 介護施設での任天堂Wiiを用いたメンタルヘルス 認知症と介護、望まれる生活環境は 認知症に対する回想法、そのメリットは  担当者へのご意見箱はこちら

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双極性障害エピソードと脂肪酸の関連を検証

 血漿中イコサペンタエン酸(EPA)濃度比低下は、双極性障害(BD)エピソードと関連しており、血漿中オメガ(n)-3値は、治療によって変化可能であることを、米国・ペンシルバニア州立大学のErika FH Saunders氏らが明らかにした。症候性BDにおいて血漿中EPA比の低下は、気分の脆弱性に関する重要な因子の可能性があり、血漿中n-3値の変化が多価不飽和脂肪酸(PUFA)代謝の変化および症状改善を示唆しうるという。著者らは、「所見は、前臨床データや事後分析データと整合しており、n-3を増量またはn-6を減量した食事性PUFAの介入試験の検討を示唆するものである」と述べている。Bipolar Disorders誌2015年11月号の掲載報告。 研究グループは、n-3 PUFAおよびn-6 PUFAは、神経伝達物質および炎症のモジュレータ分子であることに着目し、次の仮説を立て検証試験を行った。すなわち「双極性障害(BD)患者は健常対照(HC)と比較して、血漿n-3 PUFA値が低く、同n-6 PUFA値が高い」、「n-3 PUFA値等がBD患者の重症度と相関している」、「n-3 PUFA値の増大およびn-6 PUFA値の低下により治療効果が認められる」との仮説である。さらに、臨床的相関性と飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の血漿値の群間差について調べた。 BD群27例、HC群31例を対象に観察的並行群間比較試験にて、症状増悪時と回復後(フォローアップ)に、5つの血漿中PUFA値(リノール酸[LA]、アラキドン酸[AA]、α-リノレン酸[ALA]、ドコサヘキサエン酸[DHA]、EPA)、2つの飽和脂肪酸値(パルミチン酸、ステアリン酸)、2つの不飽和脂肪酸値(パルミトオレイン酸、オレイン酸)を測定(エステル[E]および非エステル[UE]形状による)し、評価を行った。また、5つのPUFA値のUE対E比を算出し、またn-3PUFA比(DHA対ALA、EPA対ALA、EPA対DHA)、n-6対n-3比、AA対EPA比を算出して評価した。BD群とHC群の血漿中脂肪酸値および対比の比較はt検定を、BD群のベースラインとフォローアップ時の比較はペアt-検定を、分類変数の比較はカイ二乗検定を用いて行った。また、ピアソン相関係数rを用いて、抑うつ、躁症状、パニック発作、精神病の臨床値に関する二変量比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・UE EPA値は、BD患者でHCと比べて有意に低かった。そのエフェクトサイズは大きかったが(Cohen's d=0.86、p<0.002)、多重比較検定後には統計的有意差はみられなかった。・あらゆる血漿中PUFA値について、40の比較についてBonferroni補正後、BD患者群とHC群で統計的有意差はみられなかった。・抑うつ重症度および躁病重症度と相関性がみられたPUFA値はなかった。・探索的比較において、HC群よりもBD群で、UE対E EPA比が有意に低かった(p<0.0001)。・BD群のフォローアップ時に、UE、E DHA対ALA、UE EPA対ALAの有意な低下がみられた(p<0.002)。・臨床変数の相関に関する探索的検討において、躁病重症度と自殺傾向が、UE対E EPA比と正の関連があることが認められた。そのほかにも、いくつかの血漿濃度や対比が、パニック障害および精神病と関連していることが示された。・抑うつ重症度と関連している対比はなかった。・血漿中脂肪酸値や濃度は、自己報告のn-3PUFAを含有する食事や薬物服用との関連はみられなかった。関連医療ニュース ラピッドサイクラー双極性障害、抗うつ薬は中止すべきか EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか 統合失調症の再発予防、ω-3脂肪酸+α-LAは有用か  担当者へのご意見箱はこちら

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教師のADHD児サポートプログラム、その評価は

 注意欠如・多動症(ADHD)の小学生を担当する教師のためのWebベースの介入について、利用可能性、満足度、有効性を評価するため、カナダ・ダルハウジー大学のPenny Corkum氏らは試験を行った。Journal of attention disorders誌オンライン版2015年9月11日号の報告。 小学校の担任教師58人は、ADHD小学生と共に無作為化対照試験に参加した。プログラムは、教室内でのADHD症状や障害を軽減するためのエビデンスに基づいた介入戦略を含む6つのセッションから構成された。教師は、ウェブ上で管理されている掲示板へのアクセスや ADHDコーチとのオンラインでのやり取りが可能だった。教師および保護者に、介入前、介入後(6週後)、6週間のフォローアップ後(12週後)にアンケートを行い、コンピュータを通じて収集した。 主な結果は以下のとおり。・ITT解析の結果、教師報告では、治療群においてADHDの中核症状や教師のサポートを有する障害について有意な改善が認められた。ただし、保護者報告では認められなかった。・教師の報告した利用可能性、および満足度は高いレベルであった。・WebベースのADHD介入は、学校でのADHD介入でよくみられる問題である治療利用や実用化の障壁を減少させる可能性がある。関連医療ニュース 2つのADHD治療薬、安全性の違いは 小児ADHD、食事パターンで予防可能か ADHD児に対するスポーツプログラムの評価は  担当者へのご意見箱はこちら

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アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし

 世界中で何百万人もの高齢者がアルツハイマー病(AD)で苦しんでいる。治療薬にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあるが、その臨床効果は限られており、早期に薬物療法を開始することが長期的に良好な予後につながるかどうかも不明である。そこで、中国・香港中文大学のKelvin K.F. Tsoi氏らは、AD患者に対する早期治療の有効性について、前向き無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、約6ヵ月早くAD治療薬の投与を開始しても投与開始が遅れた場合と比較して、認知機能、身体機能、行動問題および臨床症状に有意差は認められなかった。この結果について著者らは、「追跡期間が2年未満の早期AD患者の割合が比較的高かったためと考えられる」と指摘したうえで、「長期に追跡した場合の有効性について、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。 研究グループは、OVIDデータベースを用いて2000年から2010年の間に発表された前向き無作為化比較試験を検索し、ADと診断された患者を早期投与開始群と投与開始遅延群(約6ヵ月間はプラセボを投与)に無作為化した試験を適格とした。主要評価項目は、認知機能(Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive Subscale:ADAS-cog)、身体機能(Alzheimer's Disease Cooperative Study Activities of Daily Living Inventory:ADCS-ADL)、問題行動(Neuropsychiatric Inventory:NPI)、および全般的な臨床症状(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC plus)、副次評価項目はあらゆる有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・10件の無作為化試験がメタ解析に組み込まれた(計3,092例、平均年齢75.8歳)。・主要評価項目に関して、早期投与開始群が投与開始遅延群と比較して、有意な効果が認められた項目はなかった。 認知機能;ADAS-cogの平均差(MD)=-0.49、95%信頼区間(CI):-1.67~0.69 身体機能;ADCS-ADLのMD=0.47、95% CI:-1.44~2.39 行動問題;NPIのMD=-0.26、95% CI:-2.70~2.18 臨床症状;CIBIC plusのMD=0.02、95% CI:-0.23~0.27・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、最も頻度の高い有害事象は悪心であった。・メマンチンではプラセボと比べ、発現頻度の高い副作用はなかった。・両薬とも、早期投与開始群と投与開始遅延群の有害事象は同等であった。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 認知症患者の精神症状に対し、抗不安薬の使用は有用か 早期アルツハイマー病診断に有用な方法は  担当者へのご意見箱はこちら

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ラピッドサイクラー双極性障害、抗うつ薬は中止すべきか

 急速交代型(rapid-cycling:RC)双極性障害における抗うつ薬の使用は論争の的となっているが、米国・ルイビル大学のRif S. El-Mallakh氏らは、このトピックについて初となる無作為化試験を行った。その結果、アプリオリな分析で、良好な抗うつ薬反応と気分安定薬の使用にもかかわらず、RCにおいて抗うつ薬使用を継続することは、中断した場合と比べて、維持アウトカムの悪化、とくに抑うつ罹患と関連することが明らかにされた。Journal of Affective Disorders誌2015年9月15日号の掲載報告。 検討は、Systematic Treatment Enhancement Program for Bipolar Disorder(STEP-BD)試験の一部として行われた。急性大うつ病エピソードの最初の反応後、抗うつ薬治療継続群と中断群に無作為に割り付けた患者68例について、STEP-BD試験のアプリオリな副次アウトカムであった反応予測としてのRCを分析した。アウトカムは、エピソードの時間割合および総エピソード数を評価した。なお全患者が、標準的な気分安定薬を服用していた。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬継続群において、RC患者は非RC患者と比べて、総気分エピソード/年は268%超(3.14/1.17)、うつ病エピソード/年は293%超(1.29/0.44)経験した。・RC群 vs.非RC群のうつ病エピソード/年の平均差(SE)は0.85±0.37であった(df=28、p=0.03)。・また、抗うつ薬継続群において、RC患者は非RC患者よりも寛解期が28.8%(95%信頼区間:9.9~46.5)短かった(p=0.04)。・RC群と非RC群のこうした差は、抗うつ薬中断群ではみられなかった。・サブグループ解析では、維持期の抗うつ薬治療で層別化した場合にのみ同様の結果がみられた。ただし、サンプルサイズに限界はあった。関連医療ニュース 双極性障害ラピッドサイクラーの特徴は 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか 双極性障害への非定型抗精神病薬、選択基準は

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青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か

 青年から成人への移行期には、身体的、感情的および社会的な変化が大きいが、この発達期における慢性症状と精神疾患との関連について調べた研究はほとんどない。カナダ・マックマスター大学のM. A. Ferro氏は、青年から成人への移行期(emerging adulthood)に該当する15~30歳成人の疫学的サンプル調査により、慢性症状の有無別に性特異的な生涯精神疾患の有病率を調べた。結果、同年代では、身体的症状と精神的症状の併存は一般的であり、それらが相乗的に増大するという関連はみられなかったが、障害や痛みのレベルによっては関連する可能性があることを明らかにした。そのうえで、慢性症状を有するこの年代の成人の精神疾患の予防・減少を促進するために、行政は健康、教育、社会的サービスを統合・調整していくことが重要であると報告した。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2015年9月8日号の掲載報告。 研究グループは、慢性症状の有無を問わず15~30歳成人の疫学的サンプルを用いて、生涯精神障害の性特異的有病率を調べた。社会人口統計学的因子、健康因子で補正後、慢性症状と精神障害の関連を定量化し、また、性別、障害および痛みのレベルによる調節・媒介の可能性を調べた。Canadian Community Health Survey-Mental Healthの回答者で、慢性症状について自己報告していた15~30歳5,947例のデータを用いて分析を行った。慢性症状は、呼吸器系、筋骨格/関節組織、心血管、神経学的、内分泌/消化器系で分類。WHOの統合国際診断面談(Composite International Diagnostic Interview ; CIDI)3.0版を用いて、精神疾患(うつ病、自殺行為、双極性障害、全般性不安症)の有無を評価した。 主な結果は以下のとおり。・生涯精神疾患有病率は、慢性症状あり群が健康対照と比べて有意に高率だった。・精神疾患の有病率は、女性では認められなかったが男性では、かなりの不均一性が認められた。・社会人口統計学的および健康因子で補正後のロジスティック回帰モデルにおいて、慢性症状がある人は、精神疾患リスクが高いことが示された。・障害や痛みのレベルが、慢性症状と精神疾患との関連を調整するというエビデンスは認められなかった。・性別は、筋骨格/関節組織症状と双極性障害の関連を調整することが認められた(β=1.71、p=0.002)。・探索的分析においては、障害と痛みのレベルが慢性症状と精神疾患との関連を媒介することが示唆された。関連医療ニュース 青年期うつは自助予防可能か 若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき  担当者へのご意見箱はこちら

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