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血液検査で認知症診断をする深い理由(解説:岡村毅氏)-1273

 血漿リン酸化タウ217(血液検査)によりアルツハイマー型認知症の診断ができる可能性を報告している。ここではその臨床的背景について深掘りしよう。 そもそもアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症等は、症状は大きく異なるものである。教科書だけ見ていたら、こんなもの診断は簡単だろうと思うかもしれない。 一方、臨床は教科書通りにいかない。長い人生を歩んできた方はいろいろ複雑であるので、(1)脳梗塞などの血管性要因の併存、(2)たとえば特異な家族環境であるといった外的要因、(3)その人の生活歴やパーソナリティなどの内的要因、(4)いくつかの認知症性疾患の合併、(5)実は薬剤を飲んでいるが申告しない、といったことが起きる。するとアルツハイマー型なのに前頭側頭型的な症状が出る、みたいなことが起きる。 もちろん診断困難な事態は多くはないし、だいたいが専門病院に来る(紹介してよいです)。 かつては認知症の診断自体は、亡くなった後に脳を見ること(剖検)でしか確定できないとされてきた。だって脳は基本的に生検(一部取ってくること)ができないから。 しかし脳画像検査の進歩で、生きている人の脳内をのぞけるようになってきた。しかも、形→詳しい形→血の流れ→アミロイドやタウなどの原因的な物質の分布、とだんだん本質に迫っている。とはいえ、詳しい検査は高額なうえに、巨大な機械の中に長時間とどまるという体験をせねばならず、その結果何がわかるかというと臨床的には「○○の可能性が高まった(でも治るものではない)」ということなのである。 詳しい検査の存在意義は、研究のためと、鑑別診断が困難な場合であろう。たとえばアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症で使われるコリンエステラーゼ阻害薬は、基本的に脳を賦活する(元気にする)ので、興奮や妄想には油を注いでしまい、前頭側頭型認知症の方においては症状を悪化させることが多い(絶対にとは言えないが)。診断に困って、本人・家族も困って、次の一手にコリンエステラーゼ阻害薬が挙がったとき、詳しい検査は有意義だろう。 検査はあくまで補助的。ベテランの認知症専門医ほどやたらな検査には頼らないのはそういった背景がある(逆に若手は経験値の蓄積が少ないので頼るのは合理的だし責められまい)。いずれにせよ血液検査でわかれば、簡便なのでとても有意義であろう。 とはいえ、私も15年目の医師であるので、「若者よ、検査に頼ってばかりではだめだぞ」、という暑苦しい教訓を話してこのコラムを終えよう。 Aさん(80歳男性)が外来に来て、(1)毎日同じ時間に家の周りを散歩し、(2)自宅のみならず隣家の枝を切ってしまい、(3)止めるとひどく怒る、という場合を考えてみよう。学生さんから見れば「前頭側頭型認知症ですかね」となるだろう。時刻表的生活、脱抑制、易怒性…国試的には正解だ。現実世界ではそういう人の頭部CTで側頭葉内側の萎縮がかすかにあったりする。おかしいな…そこでこの論文にあるようなリン酸化タウなりを測定したら、なんとアルツハイマー型認知症だったりする。 どう考えればいいのだろう。 精神科医としては患者さんの歴史を深掘りすることに尽きる。本人、家族、(近しい家族は逆に視野狭窄も多いので客観的なことが言える)第三者などから複眼的に聞く。生活歴(生まれてから今までの80年のざっくりした経過)、現病歴(生活にかすかな不調が現れてからの10年間の詳しい経過)、家族の歴史、と3列で聞く。これを外来では15分でする。すると大体説明がつく。たとえば、(1)もともと植木屋さんで自宅周囲の木花のケアをしていた(が、できなくなった)、(2)家族とは植木屋さんを継ぐ継がないで葛藤があった、みたいな要因が出てくる。不思議なことに、こじれたBPSDの背景は「個人の生活史に根差した要因」×「家族内葛藤」が多いような気がする。すると、介入は心理的なものになろう。診断は、どうでもいいとは言わないが、このケースではあまり影響力はない。これが臨床の醍醐味である。 上記はいかにも精神科医っぽい意見かもしれないので、ついでに一言述べておこう。認知症に関して、神経内科、老年内科、精神科のいずれでも診ているが、どこがいいかとよく聞かれる。神経内科は鑑別診断が強く、老年内科は身体全体を見た加療が強く、精神科は本人の心理や家族の背景を踏まえたケアが強い。逆に言うと、得意分野以外は弱点であることが多い(本人や家族の話はよく聞いてとても感謝されているが残念ながら診断が間違っている精神科医とか…他の2科は敵を作りそうなのでやめておこう)。しかし、優れた専門家は大体が自分の専門外もよくできる。そして限界を知っているので、きちんと他科コンサルトする。優秀な人が多い病院ほど精神科と神経内科と老年内科は仲が良い気がする。逆にけんかしたり張り合ったりしている病院はやばいかもしれない。弱い犬ほどよく吠えるということである。

2862.

重度統合失調症に対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性~短期・長期研究の事後分析

 重度の統合失調症患者の治療は、複雑で費用がかかることがある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのNicole Meade氏らは、重度の統合失調症患者におけるブレクスピプラゾールの短期および長期的な影響について評価を行った。Journal of Psychopharmacology誌2020年8月号の報告。 6週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験3件、52週間のオープンラベル拡張試験2件よりデータをプールした。短期研究では、統合失調症患者1,405例を対象にブレクスピプラゾール2~4mg/日またはプラセボを投与し、そのうちブレクスピプラゾール治療患者の412例が長期研究へ移行し、ブレクスピプラゾール1~4mg/日を投与した。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコア95超(ベースライン時の中央値スコア)を、より重度な症状として定義した。アウトカムは、PANSS合計スコアおよび個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)スコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・より重度な統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール治療により、6週間にわたってPANSS合計スコアおよびPSPスコアの改善が認められた。プラセボに対する最小二乗平均差は、それぞれ以下のとおりであった。 ●PANSS:-6.76(95%信頼限界:-9.80~-3.72、p<0.0001、Cohen's d:0.43) ●PSP:4.38(95%信頼限界:2.14~6.62、p=0.0001、Cohen's d:0.38)・PSPは、「セルフケア」領域で最も大きく改善し、次いで「個人的・社会的関係」領域で改善が認められた。・重度でない統合失調症患者においても、ブレクスピプラゾール治療はプラセボと比較し、6週の時点でPANSS合計スコアおよびPSPスコアの改善が認められ、58週にわたって改善効果は維持された。・新たな安全性または忍容性に対する懸念は観察されなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾール治療は、症状の重症度にかかわらず、統合失調症患者に対し効果的かつ忍容性の高い治療法である」としている。

2863.

幸いな術後管理への道(解説:今中和人氏)-1272

 せん妄、いわゆるICU症候群は実に頭が痛い。心を込めて説得してもダメ、抑制してももちろんダメ、あれこれ鎮静薬を使っても硬い表情に異様にギラギラしたまなざしは去ることなく、「あんなに苦労して入れたA-ラインが、こんなにもアッサリと…」と激しく萎えた経験は、多くの先生にとって一度や二度ではあるまい。幻覚で大暴れしている患者さんも気の毒には違いないが、医師もナースも負けず劣らず気の毒。もちろん、臨床経過にも悪影響が及ぶ。せん妄の克服こそは、幸いな術後管理の鍵を握っている。 せん妄の原因は、従来は不安、孤立感、不眠といった心理面が重視されていたが、近年は多種多様な病態の複合的結果と捉えられている。脳血管障害などの既往、高齢、大手術といった工夫のしようもない要因、低酸素、電解質異常(とくに低ナトリウム、低カルシウム)、アシドーシス、低血糖、低心拍出、低血圧、不十分な鎮痛など、完璧に制御するのは容易でない要因が「これでもか」と並び、薬剤では利尿剤、抗不整脈薬、β遮断薬、H2ブロッカーに、ステロイド、抗生剤、麻薬、ベンゾジアゼピン、三環系抗うつ薬とくれば、一定以上の頻度でせん妄に遭遇することは避けられそうにない。 これでは、「幸いな術後管理」のほうが幻覚になってしまう。何とかせん妄を予防できないものか? 本論文はCleveland clinicを中心とする7病院における人工心肺症例約800例に対する、二重盲検無作為化試験である。すべて米国の施設だが、オフポンプCABGに積極的に取り組んでいるのか、単独CABGは1.5%のみ。55%が弁か大動脈の単独手術、45%がCABGとの複合手術であった。この800例を、麻酔後・執刀時からデクスメデトミジンか生食を持続投与する2群、各々約400例に分け、術後の新規心房細動とせん妄の発生を1次エンドポイント、急性腎障害と90日後の創部痛を2次エンドポイントと定義して比較している。デクスメデトミジンの投与量は開始時が0.1μg/kg/h、人工心肺離脱後は0.2μg/kg/h、ICUで0.4μg/kg/hに増量して24時間継続、患者さんの状態に応じて増減可、というプロトコルであった。現在、本邦では医療安全の観点からもpre-filledシリンジが多く使用されており、当院採用の製品の含有量が4μg/mLなので、体重60kgの患者さんの場合、0.1μg/kg/hは1.5mL/hに相当する。するとICUでの投与速度は6mL/hとなり、普通はまずまずしっかり鎮静されていて、過量と言うほどでもない投与速度である。 結果は期待に反し、新規心房細動は対照群34%に対して30%と有意に減少せず、せん妄は対照群12%に対して17%に発生し、有意差はないがむしろ増加、という結果であった。急性腎障害、創部痛もほぼ同数であった。ICU滞在はむしろ長くなり、臨床的に有意な低血圧が増加した。著者らはこの低血圧が、無効という結論になった一因かもしれない、と考察し、詳述してはいないが、コスト的にむしろマイナスだと示唆している。 過去には観察研究やプロトコル不統一のメタ解析では、デクスメデトミジンの有効性がちらほら報告されたが、本RCTでは全医療従事者の期待がアッサリ裏切られてしまった。そうは言っても患者さんが静穏であれば、術後管理は取り敢えずはうまくいっているわけだから、希望は捨てずに類似研究の報告を待ちたいところである。 ただ、鎮静薬持続静注の状態では食事もリハビリも始めにくいわけで、幸いな術後管理への道は、やっぱり遠い。

2864.

日本人高齢者における認知症の生涯累積発症率

 日本のコミュニティ在住の高齢者における認知症の累積発症率とそのサブタイプを推定するため、九州大学の吉田 大悟氏らが検討を行った。Neurology誌オンライン版2020年7月7日号の報告。 コミュニティ在住で60歳以上の日本人高齢者1,193例を対象に、17年間プロスペクティブにフォローアップを行った。認知症の累積発症率は、ワイブル比例ハザードモデルを用いて算出した各年の死亡や認知症がない生存関数および認知症のハザード関数に基づいて推定した。認知症の生涯リスクは、母集団の生存確率が0.5%未満と推定された時点での認知症の累積発症率と定義した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、350例であった(アルツハイマー病[AD]:191例、血管性認知症[VaD]:117例)。・認知症の生涯リスクは、55%であった(95%CI:49~60%)。・女性の認知症の生涯リスクは、男性と比較し、約1.5倍であった。 ●女性:65%(95%CI:57~72%) ●男性:41%(95%CI:33~49%)・男女別のADおよびVaDの生涯リスクは、以下のとおりであった。 ●女性のAD生涯リスク:42%(95%CI:35~50%) ●女性のVaD生涯リスク:16%(95%CI:12~21%) ●男性のAD生涯リスク:20%(95%CI:7~34%) ●男性のVaD生涯リスク:18%(95%CI:13~23%) 著者らは「日本人高齢者の認知症の生涯リスクは、50%以上であり、非常に高かった。現在の日本のコミュニティにおいて、認知症に起因する生涯負担は、計り知れないことが示唆された」としている。

2865.

自殺予防介入とその後の自殺企図との関連~メタ解析

 自殺による死亡を予防するためには、救急医療機関において自殺リスクを有する患者へのメンタルヘルスへのアクセスを確保し、それまでの間、安全を継続できるツールが必要とされる。米国・ペンシルベニア大学のStephanie K. Doupnik氏らは、簡潔な急性期自殺予防介入とその後の自殺企図、フォローアップケア、フォローアップ時のうつ症状との関連について、調査を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年6月17日号の報告。 2000年1月~2019年5月に公表された自殺、予防関連研究の参考文献および関連文献を特定するための臨床試験をOvid MEDLINE、Scopus、CINAHL、PsychINFO、Embaseより検索した。単発の自殺予防介入の臨床研究を説明した研究を選択に含めた。2人の独立したレビュアーがすべての文献をレビューし、適格基準を判断した。また、PRISMAガイドラインに従ってデータを抽出し、Cochrane Risk of Bias toolを用いてバイアスリスクを評価した。各アウトカムのデータは、変量効果モデルを用いてプールした。出版バイアスを含む小規模研究効果は、Peter and Egger regression testを用いて評価した。自殺予防介入後の自殺企図、フォローアップケアとの関連、フォローアップ時のうつ症状の3つの主要アウトカムについて検討した。自殺企図およびフォローアップケアとの関連は、検証済みの自己報告指標と診療情報のレビューを用いて測定した(エフェクトサイズを推定するために、オッズ比とHedges g標準平均差をプールした)。うつ症状は、介入2~3ヵ月後に、検証済みの自己報告指標を用いて測定した(エフェクトサイズを推定するために、プールしたHedges g標準平均差を用いた)。 主な結果は以下のとおり。・14研究より4,270例を研究に含めた。・プールされた効果推定値では、簡潔な自殺予防介入は、その後の自殺企図の減少(プールされたオッズ比:0.69、95%CI:0.53~0.89)およびフォローアップケアへの参加の増加(プールされたオッズ比:3.04、95%CI:1.79~5.17)と関連していたが、抑うつ症状の軽減との関連は認められなかった(Hedges g:0.28、95%CI:-0.02~0.59)。 著者らは「簡潔な自殺予防介入は、その後の自殺企図の減少と関連していた。対面で行われる単発の自殺予防介入は、その後の自殺企図を減少させ、フォローアップ時のメンタルヘルスケアを行ううえで効果的であることが示唆された」としている。

2866.

出生前母体ステロイド治療はルーチンで行うのではなく、症例ごとに合わせた早産リスクの判断を(解説:前田裕斗氏)-1268

 周産期診療における副腎皮質ステロイドの出生前投与は、前期破水や切迫早産の胎胞脱出症例など1週間以内に分娩が強く予想される症例に対して、胎児の臓器成熟を促す目的で行われる。この治療法自体は古くから行われておりデータの蓄積も多く、2017年のメタアナリシスでは妊娠34~35週未満の症例への投与により新生児呼吸窮迫症候群を有意に低減(相対リスク:0.66)するほか、脳室内出血(相対リスク:0.55)、壊死性腸炎(相対リスク:0.50)、さらには新生児死亡率(相対リスク:0.69)をも低減すると報告された。 ステロイドの出生前投与は元々妊娠34週(肺が完成するといわれる週数)未満での使用が推奨されていたが、近年は34週以降37週未満の症例への投与でも新生児における各種呼吸器合併症の発症低減などが報告されており、投与を推奨する国が出てきている。 ステロイド投与の合併症については母体でさほど目立ったものはなく、新生児の短期予後については出生後すぐの低血糖の報告がある(低中所得国での新生児死亡率上昇の報告もあるが、この原因は判然としていない)。一方長期予後については不明瞭な部分が多く、今回の論文はその1つとして神経学的予後への影響を確かめた大規模観察研究になる。 今回の論文を解釈するにおいてはまずステロイド投与が34週まで(2006~2009年)または34週6日まで(2009~2017年)に行われており、35週以降の投与による精神・行動障害のリスク増加への影響はこの論文からは判定できないことに注意が必要だ。ただし、生物学的には副腎皮質ステロイドが34~35週以降に投与された場合に悪影響を及ぼす可能性が示唆されている。34週〜満期において胎児の脳は急速に発達するが、その過程で内因性の副腎皮質ステロイドの分泌上昇が関与する可能性が示されている。胎児の脳は過剰な副腎皮質ステロイドを分解する酵素を持っているが、その酵素は治療に用いられるステロイドを分解することができないため、投与されたステロイドが胎児の脳でなんらかの影響を及ぼす可能性がある。 さらにステロイド投与後正期産で分娩となった症例だけでなく、ステロイド投与後の早産症例でも非投与群と比較して精神・行動障害の発生率については有意な増加を認めたことに注意が必要だ。多変量解析によるリスク比の増加こそ認められなかったものの、この結果からはステロイド投与後早期に分娩となった場合でも精神・行動障害へのリスクが増加する可能性は否定できない。 最後に日本におけるこの論文の適応を考えてみたい。ステロイド投与の期間は今回の研究と日本の現状であまり変わりはない(産科ガイドライン上は34週未満の1週間以内に分娩が予測される症例で投与が推奨されている)。ただし今回の研究はフィンランドで行われたものでアジア人の割合は低いと予想されることから、日本でも同様の研究を行う必要があるだろう。一方精神・行動障害へのリスク増加はこの論文以外の観察研究でも示されていることから可能性の確からしさが示唆されるが、ステロイドの母体投与は新生児死亡率の低減についてエビデンスの蓄積が多いことから、本当に早産になりそうだと臨床医が判断した症例へのステロイド投与はためらうべきではないだろう。「1週間以内に早産になる可能性が高い」と推測することは現在でも難しいが、今回の研究結果から、34週未満の切迫早産であるから取りあえずステロイド投与を行うというのではなく、不必要なステロイド投与を回避することを念頭に置いて診療に臨む必要があることが示唆された。

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高齢者の睡眠時間と認知症発症因子はどう関連するか?

 高齢者における生活習慣因子と皮質アミロイド負荷および脳グルコース代謝の関連を調べた研究において、総睡眠時間が軽度認知障害の高齢者の脳機能と関連することを示す結果が得られた。大分大学の木村 成志氏による報告で、JAMA Network Open誌2020年7月9日号に掲載された。 本研究は2015年に開始された前向きコホート研究であり、大分県臼杵市において、認知症既往のない65歳以上の成人を対象とした。データ収集は2015年8月~2017年12月、分析は2019年6月に行われた。被験者が装着したウエアラブルセンサーにより、歩数、会話時間、睡眠などのデータを収集し、PET検査によって皮質アミロイド負荷と脳グルコース代謝を調べることで、生活習慣因子とアルツハイマー型認知症発症因子との関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・基準に該当する855例(女性538例 [62.9%]、平均[SD]年齢73.8 [5.8]歳)のうち、軽度認知障害(MCI)と診断された118例(女性66例[55.9%]、平均[SD]年齢75.7[5.8]歳)に、carbon-11 labeled Pittsburgh compound B(PiB)-PET検査とfluorine-18 fluorodeoxyglucose(FDG)-PET検査を実施した。・変化点回帰分析において、総睡眠時間(TST)が325分(5.41時間)より長い場合、TSTと脳のグルコース代謝に逆相関がみられた(B=-0.0018、95%CI:-0.0031〜-0.0007)。・TSTとFDG取り込みも逆相関していた(β=-0.287、95%CI:-0.452〜-0.121、p<0.001)。・歩数、会話時間、睡眠効率とアミロイド取り込みの間には相関関係が認められなかった。 著者らは「本研究の最も興味深い結果は、TSTが脳のグルコース代謝と逆相関していたことだ」と述べ、長過ぎる睡眠時間が認知障害の危険因子になる可能性がある、と指摘した。また、さらに大規模研究を行うことによって、高齢者の認知機能障害を遅らせるためのエビデンスに基づく新しい介入の開発につながる可能性がある、としている。

2868.

精神疾患の疫学研究~大規模コホート

 中国は、ここ30年の間、過去にない経済的発展と社会的変化が起きており、政策立案者や医療専門家は、モニタリングすべき重要なポイントとして、メンタルヘルスへの注目が集まっている。中国・Guangdong Academy of Medical ScienceのWenyan Tan氏らは、過去10年間で2,000万件の実臨床フォローアップ記録を用いて、広東省における精神疾患の疫学研究を実施した。BMC Medical Informatics and Decision Making誌2020年7月9日号の報告。 2010~19年の広東省精神保健情報プラットフォームより、データを収集した。このプラットフォームは、6カテゴリの精神疾患患者約60万人と統合失調症患者40万人を対象とした疾患登録およびフォローアップが標準化されている。患者の疾患経過による臨床病期分類を行い、さまざまな因子でデータを分類した。疾患に関連性の高い指標を調査するため、定量分析を行った。地域分布分析のため、結果を地図に投影した。主な結果は以下のとおり。・精神疾患発症の多くは、15~29歳で認められた。ピーク年齢は、20~24歳であった。・罹病期間が5~10年の患者が最も多かった。・疾患経過に伴い、治療効果は徐々に減少し、リスクが上昇した。・影響因子分析では、経済状況の悪化はリスクスコアを上昇させ、適切な服薬アドヒアランスが治療効果の改善に効果的であることが示唆された。・より良い教育は、統合失調症リスクを低下させ、早期治療効果を高めた。・統合失調症の地域分布分析によると、経済状況の発展や医療資源の豊富な地域では、疾患リスクが低下し、経済状況が思わしくない地域では、疾患リスクが上昇した。 著者らは「経済状況や服薬アドヒアランスは、統合失調症の治療効果やリスクに影響を及ぼしていた。経済状況の発展とより良い医療資源は、精神疾患治療に有益である」としている。

2869.

COVID-19パンデミック時の不安やうつ症状の有症率とその予測因子

 COVID-19による世界的なパンデミックの効果的なマネジメントのため、厳格な移動制限の実施とソーシャルディスタンスを保つことが求められている。キプロス大学のIoulia Solomou氏らは、一般集団におけるCOVID-19パンデミックの心理社会学的影響を調査し、メンタルヘルスの変化を予測するリスク因子と保護因子の特定を試みた。また、ウイルス蔓延を阻止するための予防策の準拠についても調査を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2020年7月8日号の報告。 社会人口統計学的データ、予防策の準拠、QOL、全般性不安障害尺度(GAD-7)およびこころとからだの質問票(PHQ-9)を用いたメンタルヘルスの状態を、匿名のオンライン調査で収集した。 主な結果は以下のとおり。・調査を完了した参加者は、キプロス島在住の成人1,642人(女性の割合:71.6%)。・重大な経済上の懸念が報告されたのは48%、QOLの有意な低下が認められたのは66.7%であった。・不安に関連する症状は、軽度が約41%、中等度~重度が23.1%報告された。・うつ病に関連する症状は、軽度が48%、中等度~重度が9.2%報告された。・不安やうつ病のリスク因子は、女性、若年(18~29歳)、学生、失業、精神疾患の既往歴、QOLへの悪影響の大きさであった(p<0.05)。・予防策の準拠レベルは、最も若い年齢層および男性で低かった。・予防策の準拠レベルが高いほど、うつ病スコアの低下が認められたが(p<0.001)、個人的な衛生状態の維持に関する不安は増加した。 著者らは「本研究により、COVID-19アウトブレイクがメンタルヘルスやQOLに及ぼす影響が明らかとなった。政策立案者は、効果的なメンタルヘルスプログラムおよび公衆衛生戦略としての予防策を実施するためのガイドラインを検討する必要がある」としている。

2870.

血漿中P-tau217、アルツハイマー病を高精度に識別/JAMA

 血漿中P-tau217(plasma tau phosphorylated at threonine 217)は、アルツハイマー病(AD)と他の神経変性疾患を高い精度で識別できることが明らかにされた。従来の血漿中P-tau181やニューロフィラメント軽鎖(NfL)および画像診断のMRIよりもその精度は有意に高かったが、一方で脳脊髄液(CSF)・P-tau217、CSF・P-tau181やtau-PETとは有意差は示されなかった。スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らが、3つのコホート、被験者総数1,402例を対象に行った試験で明らかにしたもので、ADの診断検査について、現行のアプローチでは限界があると指摘されていることから、著者は「さらなる検討を行い、このアッセイを最適化し、非選択の多様な集団で検証を行い、臨床ケアにおける潜在的な役割を確立する必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年7月28日号掲載の報告。血漿中P-tau217のAD識別能を3つの断面研究を基に検証 研究グループは、3つの断面研究について分析を行い、血漿中P-tau217のAD識別能について検証した。対象としたコホートは、アリゾナ州ベースの神経病理学コホート(コホート1:2007年5月~2019年1月、AD群34例、非AD群47例)、スウェーデン「BioFINDER-2」コホート(コホート2:2017年4月~2019年9月、非認知機能障害301例、臨床的に診断された軽度認知機能障害[MCI]178例、アルツハイマー型認知症121例、神経変性障害99例)、コロンビア常染色体優性アルツハイマー病レジストリ(コホート3:2013年12月~2017年2月、PSEN1 E280A遺伝子変異保有者365例、非保有者257例)。 主要アウトカムは、血漿中P-tau217のAD識別精度(臨床的または神経病理学的診断による)、副次アウトカムは、タウの病理(神経病理学的またはPETにより確認)との関連だった。PSEN1変異保有者の血漿中P-tau217値、MCI発症20年前にすでに上昇 被験者の平均年齢は、コホート1が83.5(SD 8.5)歳、2が69.1(10.3)歳、3が35.8(10.7)歳で、女性の割合はそれぞれ38%、51%、57%だった。 コホート1において、被験者存命中の血漿中P-tau217は、神経病理学的にADと非ADを高精度で識別し(曲線下面積[AUC]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.81~0.97)、血漿中P-tau181やNfLによる識別能に比べ、有意に精度が高かった(p<0.05)。 コホート2でも、血漿中P-tau217の臨床的ADとその他の神経変性疾患との識別精度は高かった(AUC:0.96、95%CI:0.93~0.98)。ただし血漿中P-tau217の識別精度は血漿中P-tau181や血漿中NfL、MRIよりも有意に高かったものの(AUCの範囲:0.50~0.81、p<0.001)、CSF・P-tau217、CSF・P-tau181、tau-PETとは有意差はなかった(0.90~0.99、p>0.15)。 コホート3では、おおよそ25歳以上のPSEN1変異保有者の血漿中P-tau217の値は、非保有者と比べて高く、MCIを発症する約20年前にすでに漿中P-tau217の増加が始まっていた。 コホート1において、血漿中P-tau217値のβアミロイドプラーク有無による相関がみられ、あり群では有意な関連性がみられたが(Spearmanのp=0.64、p<0.001)、なし群では関連性はみられなかった(Spearmanのp=0.15、p=0.33)。 コホート2では、血漿中P-tau217はtau-PETの異常と正常の識別能が高く(AUC:0.93、95%CI:0.91~0.96)、血漿中P-tau181や血漿中NfL、CSF・P-tau181、CSF・Aβ42:Aβ40比、MRIよりも精度が高かったが(AUC範囲:0.67~0.90、p<0.05)、CSF・P-tau217とは有意差はなかった(AUC:0.96、p=0.22)。

2871.

ラメルテオンの術後せん妄予防効果~胃切除後高齢者を対象とした第II相試験

 高齢患者における胃がん症例数は増加しており、術後せん妄を予防する重要性は高まっている。静岡県立静岡がんセンターの本田 晋策氏らは、胃切除後の高齢患者における術後せん妄の予防に対するラメルテオンの有効性を評価するため、単施設プロスペクティブ第II相試験を実施した。Surgery Today誌オンライン版2020年7月8日号の報告。 対象は、75歳以上の高齢患者。手術の8日前から退院までラメルテオン8mg/日を投与した。術後せん妄の評価には、集中治療室におけるせん妄評価法(CAM-ICU)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・2015年9月~2017年7月までに83例が登録された。そのうち、適格基準を満たした76例を分析に含めた。・術後せん妄は、4例(5%)で認められた(60%信頼区間:3.0~8.7)。・信頼区間の上部マージンは閾値の13%よりも低く、帰無仮説は否定された。 著者らは「ラメルテオンの周術期投与は、胃切除後の高齢患者における術後せん妄の予防に、安全かつ実現可能であることが示唆された」としている。

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M-1グランプリ(続編・その2)【ツッコミから学ぶこれからのセラピーとは?】Part 1

今回のキーワード文化心理学主流秩序上下関係裏メッセージ「セラピーハラスメント」「癒畜」その1では、なぜツッコミするのかという疑問にお答えしました。それでは、なぜツッコミは日本にあって欧米にないのでしょうか? そして、ツッコミから何を学べるでしょうか? その2では、ツッコミを歴史的に、そして文化心理学的に掘り下げ、これからのセラピーのあり方を一緒に考えていきましょう。なぜツッコミは「ある」の?それでは、そもそも、なぜツッコミは「ある」のでしょうか? すでに笑う心理の起源については、前回(M-1グランプリ【実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!】)で進化心理学的に探りました。さらに、ここからは、ツッコミの起源を、3つの段階に分けて、歴史的に探ってみましょう。(1)笑い話約20万年前に現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生し、喉の進化によって、複雑な発声ができるようになり、言葉が誕生しました。やがて、生活の知恵や戒めを神話などのストーリーとして次世代に語り継ぎました。紀元前8世紀以降に、宗教的祭祀から演劇が誕生し、古代ギリシアでは悲劇と並んで喜劇も発展しました。これが、世界の笑い話の起源と言われています。一方、日本では、8世紀にできた古事記に、女神が全裸で滑稽な踊りを披露するという記載が残っており、これが日本の笑い話の起源と言われています。1つ目の段階は、笑い話です。この段階で、笑いの構造ができましたが、まだはっきりとしたツッコミは存在しません。ツッコミは見る人や読む人に委ねられています。(2)落語14世紀以降に、中世ヨーロッパの王様が小人症、奇形、知的障害などの障害者を魔除け目的に抱えるようになりました。彼らは、その特性から何をしても何を言っても許される存在でした。逆に、彼らを演じることで、民衆の真実を笑いに包んでうまく王様に伝える人が現れるようになりました。これが、ピエロの起源と考えられます。一方、日本では、16世紀の室町時代に、おとぎ衆と呼ばれる人たちが、戦国大名に仕え、滑稽なオチのつく世情を伝えるようになりました。これが、落語の起源と言われています。2つ目は、落語です。この段階で、ピエロやおとぎ衆がボケとツッコミを同時に演じています。(3)漫才20世紀以降に、欧米では、1人舞台(スタンダップ・コメディ)やお笑いドラマ(シチュエーション・コメディ)が主流になっていきました。なお、20世紀前半のアメリカでは、一時期にコンビによる漫才(ダブルアクト)が流行りました。しかし、現在は廃れています。一方、日本では、江戸時代以降、特に商業が栄えた大阪では笑い(同調)を商売に利用するようになりました(商人文化)。また、寄席も誕生しました。やがて、昭和初期以降に、おどけ役(ボケ)が鼓を打ち、語り部(ツッコミ)が歌を歌いながら舞うコンビによる祝福芸が広がりました。これが、漫才の起源です。3つ目は、まさに漫才です。この段階で、日本では、ボケとツッコミの役割が確立しました。なぜツッコミは「ある」の?これまで、なぜツッコミは「ある」のかという疑問を歴史的に探りました。しかし、厳密には、ツッコミは日本独特のものです。一方の欧米には、はっきりとしたツッコミがないです。なぜツッコミは日本にあって欧米にないのでしょうか? その理由を文化心理学的に3つ挙げてみましょう。(1)「なんでやねん」と見抜く―主流秩序1つ目は、日本は主流秩序がはっきりしていることです。主流秩序とは、集団主義によって「こうあるべき」という多数派の価値観です(均一性)。その価値観から少しでも外れた振る舞いは、すべてボケ(異常)として「なんでやねん」と鋭く見抜くツッコミをすることで、多くの人が気付かされて共感します。「あるあるネタ」とは、まさにその共感です。逆に言えば、政治などの社会派ネタは、政権という主流秩序へのツッコミ(批判)になるため、共感は得られず、ほとんどお笑いネタとして成り立たないというわけです。一方、欧米は、個人主義によって「人それぞれ」という多様性の価値観です。移民政策による多民族国家が多く、人種や宗教などの価値観もさまざまです。よって、そもそも多数派(主流秩序)が形成しにくく、ツッコミをしても必ずしも多くの人が共感するわけではないので、ツッコミをする意味がないというわけです。代わりに、人種、宗教、階層、政党、セクシャリティなどのそれぞれのターゲット層に狙いを絞った社会派ネタや下ネタは多いです。このように、欧米のお笑い(コメディ)は、細分化されて成り立っています。(2)「あほか」と見下す―上下関係2つ目は、日本は上下関係がはっきりしていることです。上下関係とは、集団主義によって家庭での親子や兄弟、職場での上司・部下や師匠・弟子、学校での先輩・後輩という支配服従の関係を重んじる価値観です。その価値観に守られているため、「あほか」と見下すツッコミをしても、「愛がある」「いじりであっていじめではない」という言い訳が成り立ちます。一方、欧米は、個人主義によって対等関係の価値観です。よって、ツッコミは、「偉そうだ」「ハラスメントだ」「かわいそうだ」という反感を買ってしまうので、ツッコミは逆効果になるというわけです。(3)「もうええわ」と見限る―裏メッセージ3つ目は、日本は裏メッセージが多いことです。裏メッセージとは、集団主義によって以心伝心しているからこそ否定的な表のメッセージを発しても真逆の肯定的な本心が伝わるという価値観です(ダブルバインド)。その価値観によって、たとえ「もうええわ」と相手を突き放して見限るツッコミをしても、それは本心ではないということを多くの人が理解できて、緊張緩和から共感する笑いが生まれます。先ほどの「あほか」というツッコミも、この裏メッセージとしてとらえることもできます。一方、欧米は、個人主義によって表メッセージのみの価値観です。はっきりと言ったことのみがそのまま伝わります。逆に言えば、曖昧な表現や、否定表現に裏メッセージなどを込めても通じません。よって、「おもしろくていいね」という肯定的なツッコミをするとしても、それはそもそも観客に委ねることができるので、ツッコミは邪魔になるというわけです。次のページへ >>

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M-1グランプリ(続編・その2)【ツッコミから学ぶこれからのセラピーとは?】Part 2

ツッコミから何を学べる?―セラピーの二面性日本のツッコミのユニークさについて、文化心理学的に考えました。ただし、現代の日本社会の変化と同じように、ツッコミも個人主義化してきています。そして、より受け入れられるスタイルに変化しています。この変化は、セラピーも同じです。この点を踏まえて、ここから、ツッコミのスタイルと同じようにセラピーのスタイルを3つに分けて、それぞれのセラピーのプラス面とマイナス面を整理してみましょう。(1)教えるスタイルのセラピーa. プラス面このセラピーのプラス面は、望ましい行動が増えることです。例えば、行動療法は、特に子どもや発達障害の人にルールを教えます。心理教育は、病気へのかかわり方を教えます。アサーションはコミュニケーションの仕方を教えます。これは、まさに教師と生徒の関係です。b. マイナス面一方で、そのマイナス面は、クライエントが受け身で依存的になることです。例えば、メンタル症状の原因を掘り下げるセラピーでは、そのおおもとを過去の親との関係に結び付けることが多いです。昨今よく耳にする「毒親」という言葉が、まさにこれです。確かに、親子関係を見つめ直すきっかけをつくることはあります。しかし、メンタル症状の原因は、複数の要因が複雑に絡み合っています。親との関係は、要因の1つであってもすべてではないです。そもそも人間の心は、原因が分かれば直る単純な機械ではないです。もっともらしい「犯人」(スケープゴート)が見つかり、分かった気にはなりますが、そうなることで「こんなにつらいのはすべて親のせいだ」と決め付けてしまい、親に責任転嫁して、自分で症状を良くしていこうとはしなくなるリスクがあります。もう1つのマイナス面として、セラピストが独りよがりで権威的になることです。例えば、教えるスタイルのセラピストの中には「泣かしてなんぼ」と言う人がいます。確かに、泣いてしまったクライエントを受け止めることはよくあります。これは、セラピーの基本です。しかし、大の大人を泣くように仕向けるやり方は明らかに子ども扱いしており、一般的なコミュニケーションでは、はばかられます。にもかかわらず、セラピストは「これで心の中のわだかまりを吐き出してすっきりしたはず」「落ち着かなくなったのは、これから良くなる証拠」と解釈します。「カタルシス(浄化)」というワードを都合良く使い、治療的な意義を見いだします。逆に、「泣かないのは、無意識にセラピーに『抵抗』している」と解釈します。こうして、セラピストは、救世主のような気分になり、その万能感を得るために、ますます独りよがりになっていくリスクがあります。セラピストは決め付けたい、クライエントは決めてもらいたいというそれぞれの心理が根っこある場合は、彼らの相性は抜群です。これは、まさに教祖と信者の関係です。時代の流れから、こてこてのどつき漫才が笑えなくなってきているのと同じように、こてこての教えるスタイルのセラピーは曲がり角に来ています。今や、医師が説教するのが「ドクターハラスメント」になるのと同じように、教えるスタイルのセラピーは、「セラピーハラスメント」になるリスクがあると言えるでしょう。(2)支えるスタイルのセラピーa. プラス面このセラピーのプラス面は、寄り添って安心感があることです。例えば、それが支持療法や集団療法であることをすでにご説明しました。また、精神科デイケアや認知症デイケアなども基本的にそうです。これは、親と子どもの関係です。b. マイナス面一方で、そのマイナス面は、クライエントが居着いて幼くなることです。例えば、このセラピーでは、決して否定されないので、居心地が良いです。確かに、それだけで自尊心が安定して、症状が良くなることはあります。しかし、同時に、居心地が良いことに味を占めたり、セラピーを受けていること自体に満足して、居着いてしまうおそれがあります。すると、セラピーは、症状を良くする手段ではなく、目的そのものになってしまいます。これは、結婚相談所や英会話教室にも当てはまります。そこに所属していること自体で安心してしまうのです。もう1つのマイナス面は、居着くクライエントをセラピストが抱え込んで飼い馴らすようになることです。例えば、それが「居場所ビジネス」です。セラピーが「治療」という衣を着たビジネスに成り下がるリスクがあります。もちろん、重い精神障害や認知症の人には、この「居場所」が必要です。しかし、セラピストがもともと一時的に弱っていただけの一般のクライエントを金づるとしてセラピーを終了させないように仕向けていたとしたら、どうでしょうか? これは、もはや飼い主とペットの関係です。家畜、社畜ならぬ、「癒畜」(ゆちく)と言えるでしょう。(3)考えさせるスタイルのセラピーa. プラス面このセラピーのプラス面は、自己成長を促すことです。例えば、それが認知行動療法であることをすでにご説明しました。また、ブリーフセラピーもそうです。ブリーフセラピーとは、できるだけ前向きに考えさせることによって短期間(=ブリーフ)で困りごとを解決するセラピーです。これは、大人と大人の関係です。なお、このブリーフセラピーは、大人と大人の関係でありながら(むしろ大人と大人の関係だからこそ)、スクールカウンセリングでよく行われます。一方で、一般のカウンセリングルームではあまり広がっていないようです。その理由は、スクールカウンセリングは、生徒(クライエント)が卒業するまでというカウンセリングの期限があらかじめ決まっていること、カウンセラーの報酬が固定給であることが考えられます。一方の一般カウンセリングは、期限がないこと、歩合給であるため回数を重ねた方が儲かることから、ビジネスの観点に立つとブリーフセラピーが好まれないことが分かるでしょう。b. マイナス面一方で、そのマイナス面は、クライエントがもともと受け身であったり、幼い場合は効果がないことです。言い換えれば、自分で考える意思や能力がない場合は、考えさせることができないというわけです。この場合は、先ほどにも触れた教えるスタイルや支えるスタイルのセラピーが有効でしょう。 これからのセラピーのあり方とは?ツッコミのスタイルに重ね合わせながら、セラピーを分類し、そのプラス面とマイナス面を整理しました。セラピーは、これまで集団主義と相性の良い教えるスタイルと支えるスタイルでした。これからは個人主義的な考えさせるスタイルにシフトしていくでしょう。そのために必要なセラピーのあり方とは何でしょうか? それは、クライエントにセラピーのゴールを考えさせることです。どうなるのがゴールなのか? いつまでにゴールしたいのか? ゴールのために何を自分はするのか? このゴール設定は、主体性を促します。一方のセラピストのゴールは何でしょうか? それは、クライエントが自分で考えることができるようになること、つまりセルフセラピーをするようになり、セラピーを必要としなくなることでしょう。この覚悟こそ、セラピーだけでなく、家庭での子育て、学校での教育、職場でのリーダーシップにも通じる心のあり方と言えるのではないでしょうか?<< 前のページへ■関連記事M-1グランプリ【実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!】Part 13年B組金八先生(前編)【令和の金八先生になるには? 子どもにも大人にも使える!(叱るスキル)】Part 1

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小児期の神経発達症に伴う入眠困難を改善する「メラトベル顆粒小児用0.2%」【下平博士のDIノート】第55回

小児期の神経発達症に伴う入眠困難を改善する「メラトベル顆粒小児用0.2%」今回は、メラトニン受容体作動性入眠改善薬「メラトニン(商品名:メラトベル顆粒小児用0.2%、製造販売元:ノーベルファーマ)」を紹介します。本剤は、小児期の神経発達症に伴う入眠困難、睡眠相後退型などの睡眠障害の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年6月23日より発売されています。<用法・用量>通常、小児にはメラトニンとして1日1回1mgを就寝前に経口投与します。症状により、1日1回4mgを超えない範囲で適宜増減することができますが、増量する際は睡眠状況を観察しながら1週間以上の間隔を空けて行います。なお、投与開始3ヵ月後をめどに入眠困難に対する有効性および安全性を評価し、有効性を認めない場合には投与中止を考慮します。<安全性>国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象308例中32例(10.4%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、傾眠13例(4.2%)、頭痛8例(2.6%)、肝機能検査値上昇3例(1.0%)などでした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、体内時計のリズムを整え、自然な睡眠を促すことで寝つきを改善します。2.1日1回、就寝直前に飲んでください。食事と同時や食事のすぐ後に飲むと、効果が弱くなる可能性があります。就寝後に起きて作業などを行う必要があるときは飲まないでください。3.昼間の強い眠気、めまいなどが現れることがあるので、高いところに登ったり、自転車などに乗ったりする際は注意しましょう。普段と違う様子が認められた場合は医師・薬剤師に相談してください。4.良い睡眠を取るために、毎日できるだけ同じ時間に就寝するなど、規則正しく生活しましょう。眠りやすくするために、日中の活動量を高めることなども有効です。<Shimo's eyes>本剤は、わが国で初めて、内因性ホルモンと同一の化学構造式を持つメラトニンを有効成分とした入眠改善薬です。メラトニン受容体に作用する既存薬剤としてはラメルテオン(商品名:ロゼレム)がありますが、小児での安全性は確認されていません。本剤は、小児期の自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)などを含む神経発達症の患児に用いることができます。眠れないことによって、「こだわりが強い」「落ち着きがない」「不注意」などの発達特性が強まり、日常生活に支障を来たしている場合などが本剤の適応の典型例と考えられます。相互作用については、抗うつ薬のフルボキサミン(同:デプロメール、ルボックス)を併用すると、本剤の主要な代謝酵素であるCYP1A2やCYP2C19が阻害され、本剤の血中濃度が上昇する恐れがあるので併用禁忌となっています。服薬指導では、「朝、日の光を浴びる」「朝ごはんを食べる」「昼間はなるべく体を動かす」「夜は部屋を暗くして早く眠る」など、生活リズムの改善を指導しましょう。カフェインを含む飲料は、眠りを妨げるだけでなく、本剤の作用に影響する場合があるため、寝る前は飲まないようにする必要もあります。また、急に服薬を中止すると、昼間の問題行動や睡眠障害の悪化が生じることがあるため、症状が改善された場合も自己判断で中止せずに必ず相談するように伝えましょう。本剤の登場により、患者さんの睡眠と日常生活が改善されて、ご家族の負担軽減にもつながることが期待されます。参考1)PMDA 添付文書 メラトベル顆粒小児用0.2%

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周産期うつ病の日本における有病率~メタ解析

 周産期うつ病は、女性で問題となる重大な精神疾患の1つである。しかし、十分なレビューが行われておらず、日本人女性の周産期うつ病の有病率については、一定のコンセンサスが得られていない。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人女性の周産期うつ病の信頼できる有病率の推定を試みた。Annals of General Psychiatry誌2020年6月26日号の報告。産後うつ病の有病率は1ヵ月時点で14.3% 1994~2017年に発表された出産前または産後うつ病の有病率に関するデータを含む研究を、2つのデータベース(PubMed、ICHUSHI)より特定した。公開されたレポートよりデータを抽出した。 周産期うつ病の有病率を推定した主な結果は以下のとおり。・1,317件のアブストラクトをレビューし、301件の文献を特定。研究には123件を含めた。・日本人女性10万8,431例中、1ヵ月時点での産後うつ病の有病率は14.3%であった。・妊娠中のうつ病有病率は、妊娠第2三半期で14.0%、妊娠第3三半期で16.3%であった。・産後うつ病の期間ごとの有病率は以下のとおりであった。 ●産後1ヵ月以内:15.1% ●1~3ヵ月:11.6% ●3~6ヵ月:11.5% ●6~12ヵ月:11.5%・初産婦は、経産婦(2回以上の出産を経験した女性)と比較し、産後うつ病の有病率が有意に上昇した(調整相対リスク:1.76)。 著者らは「出産に伴ううつ病の有病率は、出産が近づくにつれ増加し、産後の時間とともに減少すると考えられる。また、初産婦では産後うつ病リスクが高かったことから、医療従事者は初産婦により注意を払う必要がある」としている。

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双子の認知症リスク

 認知症発症の根底には、性差によるホルモンの影響が関与している可能性がある。米国・南カリフォルニア大学のJing Luo氏らは、同性および異性の二卵性双生児における認知症発症率を比較し、推定される出生前のホルモン環境が認知症リスクと関連しているかを検討した。Alzheimer's & Dementia(Amsterdam, Netherlands)誌2020年6月21日号の報告。 対象は、Swedish Twin Registryより抽出された60歳以上の二卵性双生児ペア4万3,254例。男女別に生存分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・異性ペアの女性は、同性ペアの女性と比較し、認知症リスクが有意に低かったが、その差は70歳以降で認められた(ハザード比:0.64、p=0.004)。・結果は認知症の出生後のリスク因子では説明されず、双子のタイプとアポリポ蛋白E(APOE)ε4との相互作用は認められなかった。・男性では、同性ペアと異性ペアの間で有意な差は認められなかった。 著者らは「本結果は、出生前の男性的なホルモン環境が、女性の認知症リスクの低下と相関していることを示唆するものである」としている。

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双極性障害患者における片頭痛の有病率

 成人の双極性障害(BD)では、片頭痛の有病率が高く、片頭痛と精神医学的症状との負の相関が報告されている。これらの関係が思春期BD患者でもみられるかは、よくわかっていない。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのSara Z. Mehrhof氏らは、思春期BD患者における片頭痛の有病率および相関について、大規模サンプルを用いて調査を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年7月1日号の報告。 対象は、小児の精神疾患の半構造化面接(K-SADS-PL)により、双極I型障害(BD-I)、双極II型障害(BD-II)、特定不能の双極性障害(BDNOS)と診断された思春期BD患者165例と健康な対照者(HC)89例。頭痛(非片頭痛)と片頭痛は、検証済みの片頭痛スクリーナー(ID-Migraine 3-item screener)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・頭痛の有病率は、HC(32.6%)とBD(24.2%)で違いはなかった(p=0.15)。・片頭痛の有病率は、HC(3.4%)と比較し、BD(38.2%)で有意に高かった(調整オッズ比:14.76、95%CI:4.39~49.57、p<0.001)。・思春期BD患者において片頭痛との関連が認められた因子は以下のとおりであった。 ●女性 ●BD-IIまたはBDNOS ●最も重症な機能障害の少なさ ●うつ症状の重症度の高さ ●自己申告による感情的不安定性の強さ ●BMIの高さ ●リチウムや第2世代抗精神病薬使用の少なさ 著者らは「思春期BD患者はHCと比較し、片頭痛の有病率が高かった。これは、成人BD患者での報告を超えるものである。BDと片頭痛の相関は、うつ病相との関連も含め、思春期と成人期で類似していた。今後のプロスペクティブ研究により、片頭痛と気分症状との関連を評価し、これらの関連の神経生物学的および心血管系への影響を評価する必要がある」としている。

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デクスメデトミジン、心臓手術後の心房細動やせん妄を抑制せず/Lancet

 麻酔導入時から24時間継続するデクスメデトミジンの持続注入は、心臓手術の回復過程にある患者の術後の心房細動やせん妄を減少しないことが明らかになった。米国・クリーブランドクリニックのAlparslan Turan氏らが、多施設共同無作為化プラセボ対照試験「DECADE試験」の結果を報告した。心房細動とせん妄は心臓手術後の一般的な合併症であり、デクスメデトミジンは鎮静剤としてユニークな特性を有しており、これら合併症のリスクを減少させる可能性があった。著者は、「デクスメデトミジンは、心臓手術を受ける患者の心房細動やせん妄の減少のために投与すべきではない」とまとめている。Lancet誌2020年7月18日号掲載の報告。術後の心房細動とせん妄の発生率を、デクスメデトミジンとプラセボで比較 研究グループは、米国の大学病院6施設において、心拍数が50回/分以上で人工心肺を用いた心臓手術を予定している18~85歳の患者を登録し、デクスメデトミジン群またはプラセボ(生理食塩水)群のいずれかに、1対1の割合に施設で層別化し無作為に割り付けた。 患者、看護に携わる者、評価者は治療に関してすべて盲検化され、治験薬は薬局または本試験に参加していない他の研究協力者が準備し、治験責任医師および担当医師は割付について完全に盲検化された。 投与は、0.1μg/kg/時で外科切開前に開始し、人工心肺終了時に0.2μg/kg/時へ増量した後、術後は0.4μg/kg/時で術後24時間まで維持投与とした。 主要評価項目は、集中治療室入室から術後5日または退院のどちらか早いほうまでの期間における心房細動およびせん妄の発生で、intention-to-treat解析を実施した。有意差はないが、心房細動をわずかに減らすもせん妄はわずかに増加 2013年4月17日~2018年12月6日の期間に患者が登録された。予定患者の83%が登録された時点で実施した5回目の中間解析で無益性(futility)が認められたため、本試験は早期中止となった。798例が無作為化を受けたが(デクスメデトミジン群400例、プラセボ群398例)、各群2例が同意を撤回したため解析対象は794例となった。 心房細動の発生率は、デクスメデトミジン群30%(121/397例)、プラセボ群34%(134/395例)であり、有意差はなかった(相対リスク[RR]:0.90、97.8%信頼区間[CI]:0.72~1.15、p=0.34)。また、せん妄の発生率は、プラセボ群12%に対し、デクスメデトミジン群で17%と増加したが、有意差は認められなかった(1.48、0.99~2.23)。 安全性の評価項目は、治療を要する臨床的に重要な徐脈と低血圧症、心筋梗塞、脳卒中、創部感染、肺塞栓症、深部静脈血栓症、および死亡であった。デクスメデトミジン群で394例中21例(5%)、プラセボ群で396例中8例(2%)に重篤な有害事象が報告され、死亡はデクスメデトミジン群1例(<1%)、プラセボ群1例(<1%)であった。

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幼児期の睡眠問題とその後の精神疾患との関係

 小児期の悪夢は、思春期の精神疾患および境界性パーソナリティ障害(BPD)とプロスペクティブに関連している。しかし、この関連が睡眠行動問題にも当てはまるかは不明であり、潜在的なメカニズムもよくわかっていない。英国・バーミンガム大学のIsabel Morales-Munoz氏らは、親から報告された幼児期の睡眠関連問題と11~13歳時の精神疾患およびBPD症状、10歳時のうつ症状に関連する潜在的な影響について調査を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年7月1日号の報告。 13年以上フォローアップを行ったAvon Longitudinal Study of Parents and Children birth cohortに参加した1万3,488人を対象に評価を行った。1991年4月1日~1992年12月31日に出産予定日であった英国・エイボン州出身の女性に対し、研究への参加を依頼した。データ分析は、2019年5月1日~12月31日に実施した。12~13歳の精神疾患症状は、Psychosis-Like Symptom Interviewを用いて評価し、11~12歳のBPD症状は、UK Childhood Interview for DSM-IV Borderline Personality Disorderを用いて評価した。親から報告された、子供の月齢および年齢が6、18、30ヵ月、3.5歳、4.8歳、5.8歳時における、夜間の睡眠時間、中途覚醒頻度、就寝時間、睡眠習慣の規則性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・精神疾患症状を報告したのは7,155人(女児:3,718人[52%])、BPD症状を報告したのは6,333人(男児:3,280人[52%])であった。・思春期の精神疾患症状およびBPD症状と有意に関連していた睡眠関連問題は、それぞれ以下のとおりであった。【精神疾患症状】 ●18ヵ月時の中途覚醒頻度の高さ(オッズ比[OR]:1.13、95%CI:1.01~1.26) ●6ヵ月時の睡眠習慣の不規則さ(OR:0.68、95%CI:0.50~0.93) ●30ヵ月時の睡眠習慣の不規則さ(OR:0.64、95%CI:0.44~0.95) ●5.8歳時の睡眠習慣の不規則さ(OR:0.32、95%CI:0.19~0.53)【BPD症状】 ●3.5歳時の睡眠時間の短さ(OR:0.78、95%CI:0.66~0.92) ●3.5歳時の就寝時間の遅さ(OR:1.32、95%CI:1.09~1.60)・媒介分析では、思春期のBPD症状と3.5歳時の就寝時間の遅さとの関連を除き、上記の関連性は一致していた。・10歳時のうつ症状は、18ヵ月時の中途覚醒頻度の高さ(バイアス補正推定:-0.005、95%CI:-0.008~-0.002、p=0.002)と5.8歳時の睡眠習慣の不規則さ(バイアス補正推定:-0.006、95%CI:-0.010~-0.003、p=0.003)の精神疾患を伴う関連を媒介していた。 著者らは「小児期のいくつかの睡眠行動問題は、思春期の精神疾患およびBPD発症と関連していることが示唆された。10歳時のうつ症状は、精神疾患を伴う関連のみを媒介する可能性がある。本結果より、精神疾患とBPDへのより個別化された介入の設計が求められる」としている。

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COVID-19流行下における緩和ケア、各施設の苦闘と工夫

 日本がんサポーティブケア学会、日本サイコオンコロジー学会、日本緩和医療学会は8月9~10日にオンライン形式で合同学術集会を予定している。これに先立って、7月上旬に特別企画として「COVID19と緩和ケア・支持療法・心のケア」と題するオンラインセミナーが行われた。3学会から立場の異なるメンバーが集まり、COVID-19が緩和ケアに与える影響とその対処法について、それぞれの経験を語り合った。COVID-19が緩和ケアにどのような影響を与えたかアンケートを分析【司会】・里見 絵理子氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科科長)・林 ゑり子氏(藤沢湘南台病院 がん看護専門看護師)【登壇者】・廣橋 猛氏(永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長)・柏木 秀行氏(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科部長)・秋月 伸哉氏(がん・感染症センター駒込病院 精神腫瘍科科長)・渡邊 清高氏(帝京大学医学部内科学 腫瘍内科准教授) 冒頭に、日本緩和医療学会COVID-19関連特別ワーキンググループらが5月上旬に行った「新型コロナウイルス感染症に対する対応に関するアンケート」の結果1)が共有された。これはCOVID-19が、全国の専門緩和ケアサービスにどのような影響を与えたかを調べる目的で実施されたもので、654件の回答のうち重複を除く598件を分析対象とした。 専門的緩和ケアの提供形態別に「A:ホスピス・緩和ケア病棟(PCU)のみ/109施設」「B:緩和ケアチーム(PCT)のみ/303施設」「C:PCUとPCTの両方/186施設」に分類したうえで、「A+C:緩和ケア病棟群/295施設」「B+C:緩和ケアチーム群/489施設」に分けて分析が行われた。これは全国の緩和ケア病棟の約70%、緩和ケアチームの約50%を占めるという。 緩和ケア病棟群では、「新型コロナウイルス感染症の流行後、緩和ケア病棟の患者受け入れ方針に変化があった」と回答した施設が55%(161施設)あり、うち22施設では緩和ケア病棟がCOVID-19患者用の専門病棟に変更されていた。 続いて、「新型コロナウイルス感染症の流行後、緩和ケア病棟での面会制限はあるか」という質問に対して、緩和ケア病棟群の98%にあたる289施設が「ある」と回答。ここでは、予測される患者の予後によって段階的な対応をする施設が多く、末期近いことが予測される患者には面会制限を緩めるケースが多かった。 面会制限を行っているあいだ、面会以外でのコミュニケーション支援をはかる医療機関もあり、「テレビ電話などでのコミュニケーション支援」が55%と最も多く、「Wi-Fi使用可」が15%、「院内にPC・タブレットを用意」が6%と続いた(複数回答可)。ただ、「とくに何もしていない」という回答が87%と大きな割合を占めており、支援にあたって設備や人員確保の難しさも見える結果となっている。COVID-19感染対策下の面会のため緩和ケア病棟にタブレット 続けて、アンケートの結果も踏まえつつ、登壇者が自施設でのこれまでの対策と現況について情報をシェアした。―COVID-19に対する自施設の対応は? 渡邊氏「流行が懸念される早めの時期から、院内・診療科・部門ごとに感染対策を立て、実行した。通常診療に対しても感染予防策を取り、がん患者さんに対しては個別にリスクの評価を行った上で、治療継続、手術予定の延期、経口の抗がん剤やホルモン薬の使用等の検討を行っている。感染流行の長期化を踏まえ、息の長い対策にしていくことが肝要だ」 秋月氏「患者と同時にスタッフのケアが必要だと考えた。COVID-19感染症病棟のスタッフが孤立しないようリエゾンチームとして感染症病棟を巡回するだけでなく、緩和ケアチームなどを含む院内組織を立ち上げ、院内向けの情報発信にも力を入れた」 廣橋氏「3月に院内でのCOVID-19感染が発生し、これまでに200名以上の感染者を出してしまった。緩和ケア病棟も閉鎖を余儀なくされていたが、5月下旬から診療を再開した。緩和ケアのカギとなる多職種チームの活動も制限せざるを得ず忸怩たる思いだが、現状では感染防止を最優先せざるを得ない状況が続いている」―緩和ケアで重要となる、在宅医療など他施設との連携はどうしていたか? 柏木氏「これまで、電話とFAXと対面で行っていた医療連携だが、対面が使えなくなり、手間がかかるようになったことは事実だ」 廣橋氏「確かに大変にはなったが、以前から『顔の見える連携』をしてきたことが生きている。緩和ケア病棟の事前面談をオンラインで行う試みも開始した」 林氏「対面の機会が限られ、退院前のカンファレンスや家族への介護指導ができないことは痛い。その患者様の安楽な移動方法や介助方法、人工肛門やいろいろな装具を直接見て頂く機会が少ないため、電話で時間をかけてイメージできるまで説明したり、訪問看護に助けて頂いたりするなど、できることを工夫しながら行っている」―患者・スタッフの心のケアをどう行っていたか? 秋月氏「強い呼吸困難を経験した感染患者は、症状が収まってからも強い恐怖感を訴えるケースがある。また、家族や同僚を感染させてしまった、という自責の念に捉われる方もいた。また、異なる視点として、高齢者施設内のクラスターにおいては認知症患者がいる。そうした方はゾーニングを理解できず歩き回ったり、家族と会えずにパニックになったりなど、異なるケアが必要となった」 柏木氏「軽症でホテルに隔離されている患者に対応したが、特殊な環境下で不安を抱える方が多かった。入院されていればすぐに対応できるのだが、やりとりは電話に限られており、診療には限界があった」 秋月氏「スタッフに関しては、感染患者に直接対応しているか、そうでないかで置かれた状況が大きく異なる。直接対応するスタッフは自分や家族への感染リスクに不安を持っており、急ごしらえの対応チームでコミュニケーションミスも起きやすい。直接対応していないスタッフは、対応チームに人員を割かれており、情報のシェアがないと不満がたまりやすい。ストレスチェックやアンケートだけでは現場の実態が把握できないため、『対応策をヒアリングする』と言って個別面接を行った。『声を上げれば、何らかのフィードバックがある』とスタッフに感じてもらえる仕組みづくりが大切だ」―家族へのケア、面会制限はどのように行ったか? 廣橋氏「COVID-19感染対策下におけるご家族との関わりにおいては、日本緩和医療学会の普及啓発ワーキンググループで作成した『感染症対策下における入院患者さんのご家族向けリーフレット』を役立ててもらいたい。面会制限中は、家族に写真やメッセージを持ってきてもらったり、スマートフォンやタブレットのビデオ通話を使った面会を支援したりなど、少しでもコミュニケーションがとれるように工夫している。私を中心に行ったクラウドファンディングでは多くの支援が集まり、今後は希望する緩和ケア病棟にタブレット配置などの環境整備をしていくことができそうだ」 各施設でスタッフ間や患者と家族のコミュニケーション支援においてIT機器やオンラインを使った各種の試みが行われていることが共有され、「今後に活かしていきたい」という声が上がっていた。本セミナーの動画は、合同学術集会の開催時に、参加者に対して公開される予定となっている。

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