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第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)

アミロイドβを減少させることが認められた世界初の薬剤こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は久しぶりに東京・下北沢の駅前劇場という小劇場に演劇を観に行ってきました。年に1回公演をするかしないかの劇団「動物電気」2年ぶりの公演です。緊急事態宣言下、ただでさえ小さな劇場がソーシャルディスタンスで客席もかなり間引かれていて、採算は合うのだろうか、役者の取り分はあるのだろうかと心配になりました。もっともお客さんの入りは上々で、くだらなくて下品な笑いがこれまでと同じように劇場に溢れていたのには安心しました。さて、この1週間の個人的な大ニュースは大谷 翔平選手のアリゾナ・ダイアモンドバックス戦での2連続ボーク、ではなく、アルツハイマー治療薬アデュカヌマブのFDA承認です。米国バイオジェンとエーザイは日本時間6月8日、共同開発した「ADUHELM」(一般名:アデュカヌマブ)が、米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認を取得したと発表しました。アルツハイマー病の原因の一つと言われるアミロイドβプラークを減少させることが認められた世界初の薬剤となりました。知人のベテラン医薬専門記者も「マジか!」と深夜に叫んでしまったというアデュカヌマブ承認。私もいくつか気になった点がありますので、それについて書いてみたいと思います。迅速承認に至るまでは紆余曲折FDAがアデュカヌマブを迅速承認した根拠は、アルツハイマー病の臨床症状の悪化抑制の予測可能性が高いバイオマーカー、アミロイドβプラークの減少が臨床試験で実証されたため、とされています。これまでの治験の経緯から、アデュカヌマブがFDAで承認されるかどうかは、専門家の間では否定的見解のほうが多かった印象です。迅速承認に至るまでは紆余曲折がありました。臨床第III相試験は中止となり、 その結果も「1勝1敗」だったからです。第III相試験としては、アルツハイマー病初期段階の軽度認知障害(MCI)と軽度認知症の患者を対象とした1,600例規模の2つの試験が行われましたが、結果はお互いに矛盾したものでした。一方の臨床試験では、高用量を投与された被験者で、臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)をはじめとする臨床的有用性の評価指標がすべて改善していたのに対し、他方の臨床試験では、高用量を投与された群で臨床的有用性の評価指標が悪化するなど、矛盾する結果が得られたのです。その後、バイオジェンは改めて事後解析を行い、高用量群で評価項目が有意に改善したデータなどと共に、昨年7月にFDAに承認申請しました。有用性を示せない場合は承認取り消し薬剤の有用性評価を巡ってFDAの諮問委員会でも厳しい評価であったアデュカヌマブが承認に至った大きな理由の一つは、迅速承認(Accelerated Approval)という米国独自の仕組みにあります。迅速承認とは、「重篤で医療ニーズを満たす薬剤がない疾患については、 薬剤の臨床的有用性を完全に証明できていなくても、有用性を合理的に予測できる代替エンドポイントを根拠に、 早期に承認する仕組み」のことです。真の臨床的有用性については市販後臨床試験で実証することになります。FDAはリリースで「代替エンドポイントとしての脳内アミロイドβプラークの減少に基づく迅速承認である」と説明しています。市販後の検証的試験において臨床的有用性を示すことができない場合は、承認は取り消されることになります。サブ解析を繰り返し、なんとかCDR-SBが改善するという結果を導き承認申請したものの、FDAはCDR-SBの評価では厳しいと判断、脳内アミロイドβプラークの減少という代替エンドポイントで評価し、迅速承認という言わば“裏技”で承認までこぎつけた、というのが大まかな流れとなります。承認に否定的見解を示していたFDA諮問委員会の11人の専門家のうち3人が抗議のために辞任したとの報道もありました。 適応は「アルツハイマー病」「アミロイドβが神経細胞を死滅させることでアルツハイマー病になる」というのが依然として仮説であること、CDR-SBという当初の主要評価項目がどこかにいってしまい、アミロイドβの減少だけでFDAが承認したこと、迅速承認でありこれから市販後の検証的試験が行われることなど、医学的にも不確定要素が多く、批判も多いアデュカヌマブですが、気になるのはその使われ方です。臨床試験は軽度認知障害(MCI)と軽度認知症を対象に行われましたが、承認された適応は「アルツハイマー病」になりました。「アルツハイマー型認知症」ではなく、アルツハイマー病となったということは、米国で用いられているアルツハイマー病の診断基準(NINCDS-ADRDAの診断基準など/認知症の症状とアミロイドβなどのバイオマーカーの蓄積で診断する)さえクリアすれば、症状がごく軽微の段階から重度まで広く治療の対象になる、ということです。もっとも、報道によればその治療費は1回412ドル、年間5万6,000ドル(体重74キロの患者の場合)と高額なので、患者が契約する保険会社や、公的保険制度であるメディケア(高齢者向け)、メディケイド(低所得者向け)がそれぞれ、アデュカヌマブをどの段階のアルツハイマー病患者まで使用を許可するかで、対象者は大きく異なってくるでしょう。ロイターの報道では、米国の民間保険会社の幹部は「ほとんどの保険会社は、同薬への保険の適用を臨床試験に参加した患者と同じような患者に限定するだろう」と話したとしています。日本の皆保険制度で使える薬なのか?このアデュカヌマブ、日本国内でも2020年12月にバイオジェン・ジャパンが承認申請しています。田村 憲久厚生労働大臣は6月8日の閣議後の記者会見で、アデュカヌマブのFDA承認について「大きな一歩だ」と語り、国内での承認について「画期的な治療薬だ」と評価した上で「安全性、有効性をしっかりと確認させた上で対応する」と述べたとのことです。同じく6月8日の共同通信は、「厚生労働省が年内にも承認の可否を判断する可能性があると明らかにした」として、加藤 勝信官房長官の「日本でも実用化されれば、認知症施策推進大綱が掲げる共生と予防の推進にも資する」というコメントを報道しています。エーザイの株価も一時ストップ高となったようですが、果たしてこれは本当にそんなにおめでたい話なのでしょうか。日本で承認され使われる場合、米国と違って国民皆保険という大きなハードルがあります。米国のように各保険会社が独断で適応を絞る、ということが皆保険下ではできません。あと、ただでさえアルツハイマー病をはじめとする認知症を真面目に診る医師がいない状況下、中途半端な薬剤が市場に出ることは、現場の認知症診療やケアを逆に妨げてしまう可能性もあります。来週は、日本での承認の可能性と臨床現場への影響についてもう少し考えてみたいと思います(この項続く)。

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日本における統合失調症患者の早期再入院の減少につながる院内看護

 統合失調症は、精神症状の再発を特徴とする疾患である。統合失調症入院患者の15~30%は、退院後90日以内に自傷行為、他傷行為、セルフネグレクトにつながる症状の悪化により再入院している。椙山女学園大学の牧 茂義氏らは、統合失調症患者の早期再入院減少につながる院内看護の構造およびその予測因子を調査するため、横断的研究を行った。PLOS ONE誌2021年4月30日号の報告。 調査対象は、日本の精神科病棟に勤務する正看護師724人。統合失調症患者の早期再入院の減少につながる院内看護について評価するため、質問票を新たに作成した。質問票を用いて、項目分析、探索的因子分析を行い、早期再入院減少につながる院内看護の構造を調査した。 主な結果は以下のとおり。・早期再入院の減少につながる院内看護の因子は、以下の5つであった。 ●認知機能とセルフケアの促進 ●再入院の理由の特定 ●コミュニティーでの協力体制の確立 ●コミュニティー生活に関する目標共有 ●安らぎの空間・早期再入院の減少につながる院内看護を予測する因子は、以下の3つであった。 ●臨床実践における病棟看護師用尺度(nursing excellence scale)のスコア ●治療的な関心のスコア ●退院前カンファレンスへの地域ケア提供者の参加 著者らは「日本の精神科看護師は、早期入院の減少につながる5つの因子に基づいて看護を行っている。このような看護ケアは、看護師の優秀さだけでなく、看護師の環境的要因、とくに病棟の治療環境や退院前のカンファレンスへの地域ケア提供者の参加によってさらに促進されるであろう」としている。

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急性期統合失調症におけるルラシドンの有効性と安全性

 千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、日本および世界各国における急性期統合失調症に対するルラシドンの有効性を評価するため、検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年4月23日号の報告。 18~74歳の統合失調症患者483例を対象に、ルラシドン40mg/日(ルラシドン群)またはプラセボ群にランダムに割り付けた。有効性の主要エンドポイントは、6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とし、副次的エンドポイントは、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの変化とした。安全性のエンドポイントには、有害事象、検査値、心電図のパラメータを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者には、日本人が107例含まれた。・ベースラインから6週間後のPANSS合計スコアの平均変化量は、ルラシドン群で-19.3、プラセボ群で-12.7であった(治療による差:p<0.001、エフェクトサイズ:0.41)。・ベースラインから6週間後のCGI-Sスコアの変化量は、ルラシドン群で-1.0、プラセボ群で-0.7であった(治療による差:p<0.001、エフェクトサイズ:0.41)。・6週間でのすべての原因による中止率は、ルラシドン群で19.4%、プラセボ群で25.4%であった。有害事象による中止率は、ルラシドン群で5.7%、プラセボ群で6.4%であった。・ルラシドン群の2%以上で認められ、その発生率がプラセボ群の2倍以上であった主な有害事象は、アカシジア(4.0%)、めまい(2.8%)、傾眠(2.8%)、腹部不快感(2.0%)、疲労感(2.0%)であった。・体重および代謝パラメータに有意な変化は認められなかった。 著者らは「日本人を含む急性期統合失調症患者に対するルラシドン40mg 1日1回による治療は、有効性が確認され、一般的に安全かつ忍容性が良好な治療法である」としている。

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インサイド・ヘッド(続編・その3)【意識はなんで「ある」の? だから自分がやったと思うんだ!】Part 1

今回のキーワード社会脳向社会的行動反社会的行動決定論自由意志両立論なんで意識は「ある」の?脳の正体とは、舞台装置、モニター装置、解釈装置であることが分かりました。そして、これらの3つの装置によって生まれる私たちの意識は、現実の世界をそのまま認識し、自分が自分であり、そして自分の考えと行動は自分が決めている(自由意志はある)と思い込まされていることが分かりました。例えるなら、意識は、観客でありながら、バーチャルリアリティ(舞台装置)によって主役にお膳立てされ、ワイプ画面(モニター装置)によって主役を実感し、解説者(解釈装置)によって主役になりきって裏方(脳)の手柄を横取りしていると言えます。それでは、そもそもなぜこの意識は「ある」のでしょうか? ここから、意識の起源を3つの段階に分けて、その答えに進化心理学的に迫ってみましょう。そして、発達心理学的に補足してみましょう。 (1)舞台装置のみの原始的な意識今から10数億年前に太古の原始生物が誕生してから、臭いで獲物を察知したら、近づくように進化しました。5億年前に魚類が誕生してから、天敵の気配を察知したら逃げるように進化しました。この段階では、獲物や天敵がいるかどうかを感じる原始的なレベルの舞台装置です。さらに、2億年前に哺乳類が誕生してから、記憶の学習をするように進化しました。そして、手続き記憶とエピソード記憶が生まれました。こうして、舞台装置がレベルアップしていきました。1つ目の意識の段階は、舞台装置のみの原始的な意識です。この段階では、外界の刺激に対して、本能や習性(記憶の学習)で反射的に生きているだけです。自分と周りの区別はなく、ましてや自分とは何かという意識もありません。舞台装置によって、自分と世界が一体化した舞台の中にいるだけです。(2)モニター装置が加わった俯瞰的な意識2,000万年前に類人猿が誕生してから、群れをつくり、その競い合いの中で、相手の次の行動を察知(予測)するように進化しました(ミラーニューロン)。約700万年前に人類が誕生してから、約300万年前に部族をつくり、競い合いに加えて助け合いの中で、周りとうまくやっていく能力が進化しました(社会脳)。この能力は、相手の意図を察知する(読む)ことです(心の理論)。そして、相手の心(意識)の視点に立つだけでなく、自分から離れて自分自身を見る視点に立つことでもあります(自己覚知)。さらに、自分は、相手を見ていると同時に相手から見られているという2つの視点に立つことでもあります(メタ認知)。こうして、同時並行的にものごとを頭の中に留めるワーキングメモリーが生まれました。そして、モニター装置がレベルアップしていきました。2つ目の意識の段階は、モニター装置が加わった俯瞰的な意識です。この段階では、自分と周りは区別され、世界をより認識できるようになります。ただし、その多くが「今」に限定されます。つまり、今その瞬間の俯瞰的な意識があるだけで、過去を振り返ったり、未来に思いを馳せるという意識はまだありません。モニター装置によって、「今」の自分と世界を俯瞰しています。発達心理学的に言えば、この段階は2歳からになります。発達心理の実験において、生後10ヵ月から、相手の意図を察知することが指摘されています。そして、2歳前後から、鏡の中の自分が分かるようになります。ちなみに、鏡の中の自分が分かる動物は、まさに類人猿をはじめとする社会性のある動物であることが分かっています。(3)解釈装置も加わった観念的な意識20万年前に現生人類が誕生してから、言葉を話すように進化しました。そして、言葉によるエピソード記憶の積み重ねにより、意味記憶が生まれ、10万年前には貝の首飾りを信頼の証にするなどシンボルを使うようになりました(概念化)。そして、過去、現在、未来という時間の概念も分かるようになりました。こうして、解釈装置がレベルアップしていきました。3つ目の意識の段階は、解釈装置も加わった観念的な意識です。この段階では、世界の認識は、今だけでなく、連続的な時間軸の中で行われます。つまり、自分と相手(社会)を時間的一貫性があると観念的に考える意識が出てきます。解釈装置によって、自分と世界はどうつながりがあるかを解釈しています。発達心理学的に言えば、この段階は4歳からになります。4歳から時間の概念が分かるようになります。そして、10歳には、周りからどう見られているか、自分や集団のアイデンティティを意識するようになります。これは、同時に、いじめなどの同調の心理(解釈の共有)や非行(アイデンティティ危機)が始まることでもあり、11歳のライリーに重なります。なお、記憶のメカニズムの詳細については、関連記事1をご覧ください。 次のページへ >>

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インサイド・ヘッド(続編・その3)【意識はなんで「ある」の? だから自分がやったと思うんだ!】Part 2

なんで私たちは自由意志があると思ってしまうの?意識の起源は、舞台装置のみの原始的な意識、モニター装置が加わった俯瞰的な意識、そして解釈装置も加わった観念的な意識の3段階からなることが分かりました。そして、意識が「ある」のは、生存と生殖だけでなく、社会的関係にも必要だからであるということも分かりました。ここで、私たちに自由意志があると思ってしまう(思い込まされている)原因が見えてきます。それは、先ほどご紹介した、社会的関係によって進化した社会脳です。社会脳とは、社会的関係を維持するために必要な脳の働きであると説明しました。つまり、自由意志とは、その能力が実際にあるのではなく、この社会脳によってその能力があると思う(思い込まされている)「概念」です。つまり、自由意志があると思うこと(自由意志があるという概念)は、相互作用する社会的関係を維持する進化の歴史で適応的であったということです。これは、実際に心理実験で確かめられています。この実験では、被験者を2つのグループに分けます。1つのグループには、決定論を説いた文章(自由意志の否定)を読んでもらいます。もう1つのグループには、人生を前向きに展望する文章(自由意志の肯定)を読んでもらいます。そして、コンピュータによるテストを受けます。この時、ズルができるように意図的な細工をします。すると、自由意志の否定グループは、肯定グループよりズルする人が有意に多かったのでした。ここから、自由意志への不信感が「真面目に努力しても無駄」「ズルをしてもよい」という心理に影響を与えたと結論付けられました。つまり、自由意志は、あるかどうかの能力の問題ではなく、あると思うかどうかの信念(解釈装置による解釈)の問題であったということです。そして、その信念を持つように影響を受けることで(その能力があると思うことで)、私たちの人生は、より向社会的なものになっていくということです。たとえば、犯罪の責任として懲罰があることで、犯罪(反社会的行動)が抑止されます。また、認知行動療法やマインドフルネスなどのセラピーを自分で取り組むことで(取り組むという相互作用の影響を受けることで)、ストレス対策(向社会的行動)が促されるというわけです。結局、自由意志はないの?あるの?そもそも自由とは、不自由さ(制約するもの)があるからこそ生まれる相対的な概念です。自由意志の自由とは、どんな制約からの自由かを整理する必要があります。脳の働きから自由か不自由かと考えたとき、脳の働きは完全なアルゴリズム(決定論)によって成り立っています。この点で、私たちに自由意志はないです。一方、社会的関係の中で責任を伴う選択肢を選ぶ制約から自由か不自由かと考えたとき、その相互作用の中で向社会的な行動から反社会的な行動まで無数の選択肢を選ぶことができます。この点で、私たちに自由意志はあります。つまり、不自由さ(制約)の対象が違うということです。自由意志の二重解釈です。これは、決定論と自由意志を両立させる両立論と呼ばれています。たとえば、ライリーは、イカリという小人(脳のアルゴリズム)の暴走でママの財布からクレジットカードを盗みました。この解釈では、ライリーに自由意志はないです。しかし、ライリーは、あとでママに打ち明けて、ママからたしなめられることで、次から盗んだりしないように向社会的になっていくという相互作用が起きています。この解釈では、ライリーに自由意志はあります。“Inside out”(原題)とは?タイトルの「インサイドヘッド」とは、まさに「頭の中」という意味です。ただし、これは日本語のタイトルです。もともとのタイトルは、”Inside out”、つまり「裏返し」「ひっくり返している」という意味です。このタイトルに込められた制作者の裏メッセ-ジとは、「実は主役は心(意識)ではなく脳だよ」とまさに視点をひっくり返すことでした。それでも、私たちは、その脳をより良く理解することで、脳は、主役の座を奪う黒幕であると忌まわしく思うのではなく、より良く生きる実感を味わわせてくれる陰の立役者であるとありがたく思うことができるのではないでしょうか? そして、意識は実は観客であるという視点を持つことで、より俯瞰して自分自身を見ることができるのではないでしょうか? 1)意識はいつ生まれるのか:マルチェッロ・マッスィミーニ、ジュリオ・トノーニ、亜紀書房、20152)あなたの知らない脳:デイヴィッド・イーグルマン、早川書房、20163)<わたし>はどこにあるのか:マイケル・S・ガザニガ、紀伊國屋書店、20144)うぬぼれる脳 「鏡の中の顔」と自己認識:ジュリアン・ポール・キーナン、NHKブックス、20065)意識と自己:アントニオ・ダマシオ、講談社学術文庫、2018<< 前のページへ■関連記事ペコロスの母に会いに行く【認知症】

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アルツハイマー病に対する抗Aβ抗体の有効性と有害事象リスク~第III相RCTのメタ解析

 米国国立衛生研究所(NIH)のKonstantinos I. Avgerinos氏らは、アルツハイマー病におけるAβに対するモノクローナル抗体の認知、機能、アミロイドPET、その他のバイオマーカーへの影響およびアミロイド関連画像異常やその他の有害事象のリスクについて、調査を行った。Ageing Research Reviews誌オンライン版2021年4月5日号の報告。 PubMed、Web of Science、ClinicalTrials.govおよび灰色文献より第III相のRCTを検索し、ランダム効果メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・17件の研究(1万2,585例)をメタ解析に含めた。・抗体によるアルツハイマー病評価尺度の認知アウトカム(ADAS-Cog、SMD:-0.06、95%CI:-0.10~-0.02、I2=0%)およびミニメンタルステート検査(MMSE、SMD:0.05、95%CI:0.01~0.09、I2=0%)の統計学的に有意な改善が認められた(エフェクトサイズ:小)。一方、臨床的認知症重症度判定尺度の認知、機能測定では改善は認められなかった(CDR-SOB、SMD:-0.03、95%CI:-0.07~0.01、I2=18%)。・抗体によりアミロイドPET SUVR(SMD:-1.02、95%CI:-1.70~-0.34、I2=95%)およびCSF p181-tau(SMD:-0.87、95%CI:-1.32~-0.43、I2=89%)の減少が認められた(エフェクトサイズ:大)。・抗体によりアミロイド関連画像異常リスク(RR:4.30、95%CI:2.39~7.77、I2=86%)の増加が認められた(エフェクトサイズ:大)。・アミロイドPET SUVRの減少に対する抗体の影響は、ADAS-Cogの改善に対する抗体の影響と相関が認められた(r=+0.68、p=0.02)。・サブグループ解析による薬剤別の影響は、以下のとおりであった。 【aducanumab】 ●ADAS-Cog、CDR-SOB、ADCS-ADLの改善(エフェクトサイズ:小) ●アミロイドPET SUVR、CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:大) 【solanezumab】 ●ADAS-Cog、MMSEの改善(エフェクトサイズ:小) ●CSF Aβ1-40レベルの増加(エフェクトサイズ:中) 【bapineuzumab】 ●臨床アウトカムの改善なし ●CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:小) 【gantenerumab】 ●臨床アウトカムの改善なし ●CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:大) 【crenezumab】 ●臨床アウトカムの改善なし・solanezumabを除くすべての薬剤において、アミロイド関連画像異常リスクの増加が認められた。 著者らは「全体として、抗Aβモノクローナル抗体には、臨床アウトカムの改善(エフェクトサイズ::小)、バイオマーカーの改善(エフェクトサイズ:大)、アミロイド関連画像異常リスクの増加(エフェクトサイズ:大)が認められた。薬剤別では、aducanumabが最も有望であり、次いでsolanezumabが挙げられる」とし、「本結果は、アルツハイマー病治療薬としての抗Aβモノクローナル抗体の継続的な開発を支持するものである」としている。

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第61回 アデュカヌマブのFDA承認は薄氷を踏むが如し、次に待ち受けるのは…

「進むも地獄退くも地獄」。あるニュースを見て、ふとそんな言葉が頭をよぎった。6月7日夜から日本中を駆け巡った米国食品医薬品局(FDA)によるアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブ承認の件だ。アメリカでのアルツハイマー病治療薬の承認は18年ぶり。現在、同薬を承認申請中の日本も2011年7月以来、10年もアルツハイマー病治療薬は登場していない。厚生労働省の推計では2025年の国内の認知症患者推計は700万人前後。認知症の約6割がアルツハイマー病とされ、これだけでも400万人以上。加えてこの前駆段階の軽度認知障害(MCI)の患者が同じく約400万人いると推計されている。この総計約800万人の患者がいる市場でこれほど長期間、新薬が登場しなかったことは極めてまれだ。その原因は新薬開発が極めて困難な領域であるという点に尽きる。そのことを表す数字がある。米国研究製薬工業協会(PhRMA)が2016年7月に公表したアルツハイマー病治療薬開発に関する報告書である。同協会会員の製薬企業が1998~2014年に臨床試験を行ったアルツハイマー病の新薬候補127成分のうち、規制当局から製造承認取得を得るに至ったのはわずか4成分、確率にして3.1%に過ぎない。この4成分とは、エーザイが1999年に世界初のアルツハイマー病治療薬として世に送り出したアリセプトを含む、現在ある4種類の治療薬そのものだ。一般的にヒトでの臨床試験に入ったもののうち10%強が実用化に至るといわれる新薬開発の現状からすれば、かなりの低確率だ。新薬開発が難しい最大の理由はアルツハイマー病の原因がいまも仮説の域を超えていないからである。今回承認されたアデュカヌマブは、脳内に蓄積するタンパク質「アミロイドβ(Aβ)」が神経細胞を死滅させることでアルツハイマー病になる、という仮説に基づき開発されたAβを除去する抗体医薬品。だが、Aβの蓄積の結果として神経細胞が死滅するのか、それとも別の原因で神経細胞が死滅した結果としてAβの蓄積が起こるのかは判別ができていない。そして過去15年ほどはこのAβを標的に、その前駆タンパク質からAβが作り出される際に働く酵素のβセクレターゼ(BACE)の阻害薬、アデュカヌマブと同じ脳内に沈着したAβを排除する抗Aβ抗体の2つの流れで新薬開発が進められてきたが、ロシュ、ファイザー、イーライリリー、メルク、ノバルティスといった名だたるメガファーマが最終段階の第III相試験で次々に開発中止に追い込まれた。その数は2012年以降これまで実に7件、まさに死屍累々と言っていいほどで、特定領域でここまで開発失敗が続くのは異例だ。実はアデュカヌマブもこの7件に含まれている。2019年3月に独立データモニタリング委員会の勧告により進行中の2件の第III相試験が中止。しかし、その後、新たな症例を加えて解析した結果、うち1件では高用量群でプラセボ群と比較し、臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)の有意な低下が認められ、一転して承認申請に踏み切った。そして提出されたデータに対するFDA諮問委員会の評決では、ほぼ一貫して否定的な評価を下されていたものの、最終判断で新たな無作為化比較試験の追加実施を条件に、その結果次第では後日承認を取り消しができるという条件付き承認となった。まさに薄氷を踏むような事態を繰り返し、ようやく承認にこぎつけたのである。今後、日本での審査がどのようになるかはまだわからないが、「FDAが風邪を引けば、厚労省はくしゃみをする」とも揶揄される中で、日本で承認が得られないと思っている人はまずいないだろう。今回のニュースはアルツハイマー病患者・家族団体の関係者のインタビューでも報じられているように、これまで何度も落胆し続けてきた当事者にとって大きな光明だ。とはいえ、これからも薄氷を踏む状況は変わらない。ご承知のように現時点でアデュカヌマブの有効性が示唆されているのは軽度のアルツハイマー病あるいはMCIのみである。ただし、添付文書上では「アルツハイマー病」という全般的な適応表記である。アデュカヌマブの登場は医学的観点から「使える人」と「使えない人」という患者・家族の分断を生む危険性をはらんでいる。また、追加試験を要求されている以上、製薬企業もリアルワールドデータも含めて今後ネガティブな評価やデータが浮上してくるのは避けたいはずで、彼らもまた有効性が担保できそうな厳格な症例基準を持ち出してくるだろう。さらに現時点で標準用量の年間薬剤費が600万円と報じられているように、経済的に「使える人」と「使えない人」の分断も顕在化させる可能性がある。これは高額療養費制度を持つ日本で承認された場合でも大なり小なり同じ問題は浮かび上がってくるだろう。また、このことは同時に「患者数の多い巨大市場×高薬価」という社会保障制度をコントロールする側からすればもっとも歓迎できないファクターも抱えている。いずれにせよ、今後アデュカヌマブが乗り越えなければならない壁はいくつもある。かくいう私自身、MCIの父親を抱える立場として、「父親には使えるだろうか?」「もし使えるとしても父親は納得してくれるだろうか?」「母親は何と考えるだろうか?」「経済的負担は?」「もし有効性が示せなかったら?」「そもそも使うのが本当に良いことなの?」などなどの疑問や思いがぐるぐる脳内を駆け巡っている。

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統合失調症における血清脂質と自殺リスク~メタ解析

 統合失調症スペクトラム障害患者における血清脂質と自殺リスクとの関連を明らかにするため、オーストラリア・ウェスタンシドニー大学のAnoop Sankaranarayanan氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年4月9日号の報告。 2020年9月2日までに公表された成人の統合失調症スペクトラム障害患者(18~65歳)における血清脂質と自殺リスクとの関連を調査した研究を、複数のデータベースよりシステマティックに検索した。定性分析には、米国国立衛生研究所(NIH)スケールを用いた。標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)は、各研究で算出し、相対的に標準化した。調整されたp値、Z検定、不均一性を算出し、出版バイアスのテストも行った。 主な結果は以下のとおり。・抽出された1,262件中17件(3,113例)がシステマティックレビューに含まれ、そのうち11件をメタ解析に含めた。・大部分の研究(11件)は、定性分析で公正と評価された。・7件の研究データ(1,597例)より、総コレステロールの低さと自殺企図との関連が認められた(エフェクトサイズ:中程度、SMD:-0.560、95%CI:-0.949~-0.170、p=0.005)。・自殺企図の既往歴のある患者の平均コレステロール値は、自殺企図のない患者と比較し、0.56SD低かった。・自殺企図の定義に違いがあり、異質性が高かった(I2=83.3%)。・血清脂質パラメータと自殺念慮との間に、有意な関連は認められなかった。・ファンネルプロット分析では、出版バイアスに伴う小さな影響が認められた。 著者らは「統合失調症スペクトラム障害患者における自殺企図は、平均総コレステロール値の低下と関連している」としている。

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てんかん症候群(第6版)―乳幼児・小児・青年期のてんかん学

てんかん学の“ブルーガイド”が7年振りの改訂7年振りの改訂!てんかん学の“ブルーガイド”として世界的に普及している“Epileptic Syndromes in Infancy, Childhood and Adolescence”(6th edition)の日本語翻訳版。国際抗てんかん連盟(ILAE)の新しい分類図式(2017年)を取り入れ、症候群アプローチの最新情報を盛り込む。豊富な動画(109本)を日本語訳の解説と共に視聴できるVIDEO付録付き。今回も静岡てんかん・神経医療センターのスタッフが総力をあげて翻訳。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    てんかん症候群(第6版)―乳幼児・小児・青年期のてんかん学定価3万1,900円(税込)判型B5変型判頁数720頁発行2021年5月監訳井上有史(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 名誉院長)

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うつ、不安、気分症状に対するカカオ製品の影響~メタ解析

 チョコレートのようなカカオ由来の製品は、気分や感情などの問題を緩和させることが期待されるが、この効果についてはまだ解明されていない。イタリア・カターニア大学のLaura Fusar-Poli氏らは、カカオ由来製品が抑うつ症状、不安症状、ポジティブ感情、ネガティブ感情に及ぼす影響を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Critical Reviews in Food Science and Nutrition誌オンライン版2021年5月10日号の報告。 本システマティックレビューおよびメタ解析は、PRISMAガイドラインに従って実施された。2020年4月3日までに公表された文献を、Web of KnowledgeTMおよびPsycINFOより検索した。 主な結果は以下のとおり。・761件の文献をスクリーニングした後、9件をメタ解析に含めた。・研究の内訳は、以下のとおりであった。 ●カカオ製品による長期的(1週間超)な効果:2件 ●カカオ製品による短期的(3日)な効果:2件 ●カカオ製品による急性期(単回投与)効果:5件・変量効果メタ解析では、カカオが豊富な製品による抑うつ症状(Hedge's g:-0.42、95%CI:-0.67~-0.17)および不安症状(Hedge's g:-0.49、95%CI:-0.78~-0.19)への有意な効果が認められた。・さらに、ポジティブ感情(Hedge's g:0.41、95%CI:0.06~0.77)およびネガティブ感情(Hedge's g:-0.47、95%CI:-0.91~-0.03)の有意な改善も認められた。・すべてのメタ解析において、エフェクトサイズは中程度であったが、不均一性は低かった。 著者らは「カカオが豊富な製品は、短期的に感情および気分の問題を改善する可能性が示唆された。しかし、いずれも試験期間が短く、カカオ由来の製品の長期摂取の影響は、明らかではない。また、メタ解析に含まれる対象者数や研究数が十分ではないため、慎重な解釈が求められる」としている。

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PTSD患者に対するSSRIの治療反応と予測因子

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)治療に対しFDAより承認を受けている薬剤は、パロキセチンとセルトラリンである。両剤共にプラセボと比較し、有用性が示されているものの、すべてのPTSD患者にベネフィットをもたらすわけではない。デンマーク・コペンハーゲン大学のAnne Krogh Nohr氏らは、PTSD患者に対するSSRIによる治療反応の予測因子の調査および潜在クラス分析を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2021年4月26日号の報告。 対象は、PTSD患者390例。オープンラベルのセルトラリンまたはパロキセチンと二重盲検のプラセボによる治療を実施し、症状の重症度を12週間測定した。まず、治療反応に対する集団レベルの予測因子を推定するため、成長曲線モデリング(GCM)を用いた。次に、成長混合モデル(GMM)を用いて、治療反応の経過に基づき患者を潜在クラスに分類し、潜在クラスの予測因子を調査した。 主な結果は以下のとおり。・GCMを用いた集団レベルの治療反応は、性別、小児期の性的トラウマや性的暴行により緩和された。・GMMを用いた分析により、以下の3つのクラスが特定された。 ●早い治療反応者 ●治療前の症状重症度が低い治療反応者 ●治療前の症状重症度が高い治療反応者・クラスの予測因子は、トラウマから発症までの期間、うつ症状の重症度、不安の重症度であった。 著者らは「本結果は、併存疾患の重症度が治療反応の低下に影響を及ぼさないことを示唆しており、とくにトラウマから発症までの期間が長い患者では、セルトラリンまたはパロキセチンによる治療ベネフィットが高い可能性がある」としている。

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アルツハイマー病治療薬aducanumab、FDAが迅速承認/バイオジェン・エーザイ

 国内で承認申請中(2020年12月申請)のaducanumabについて、脳内のアミロイドβプラークを減少させることによりアルツハイマー病(AD)の病理に作用する初めてかつ唯一のAD治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)が迅速承認した。バイオジェンとエーザイが6月8日に発表した。この迅速承認は、臨床的有用性(臨床症状の悪化抑制)の予測可能性が高いバイオマーカーであるアミロイドβプラークの減少に対するaducanumabの効果を実証した臨床試験のデータに基づくもの。なお、今回の迅速承認の要件として、今後検証試験による臨床的有用性の確認が必要とされており、もし、臨床的有用性を確認できなかった場合、承認取り消しの手続きが行われる。 本剤の有効性については、アミロイドの蓄積が確認されたADの初期段階(軽度認知障害および軽度認知症)の患者を対象とした第III相試験であるEMERGE試験とENGAGE試験の2つの試験で評価された。また、本剤の効果は、プラセボ対照無作為化二重盲検用量設定第Ib相試験であるPRIME試験においても評価された。これらの試験において、一貫してアミロイドβプラークの減少に対する用量依存的かつ投与期間依存的な効果を示し、ENGAGE試験では59%の減少(p<0.0001)、EMERGE試験では71%の減少(p<0.0001)、PRIME試験では61%の減少(p<0.0001)を示したという。 安全性プロファイルについては、1回以上投与を受けた3,000例以上で確認された。最も多く報告された有害事象は、MRIで観察されるアミロイド関連画像異常(ARIA)だった。ARIA(ARIA-Eおよび/またはARIA-H)は、aducanumab 10mg/kg投与群の41%で、プラセボ群では10%で観察された。ARIAを生じた患者のうち、aducanumab 10mg/kg投与群では24%、プラセボ群では5%が症候性であり、最も多い症状は頭痛だった。ARIAに関連するその他の症状としては、錯乱、めまい、視覚障害、吐き気などであった。アデュカヌマブ治療を受けた患者の少なくとも2%で報告され、かつプラセボ投与群よりも2%以上高い頻度で報告された有害反応は、ARIA-E、頭痛、脳表ヘモジデリン沈着、ARIA-H関連表在性せん妄、転倒、下痢、錯乱/せん妄/精神状態の変化/見当識障害が報告されている。 バイオジェンとエーザイは全世界的にaducanumabの開発ならびに製品化を共同で実施している。

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精神疾患に対する向精神薬の投与回数と臨床アウトカム~メタ解析

 慶應義塾大学の菊地 悠平氏らは、精神疾患に対する向精神薬の1日1回投与と分割投与の有効性および安全性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年2月23日号の報告。 投与レジメンおよび向精神薬に関連するキーワードを用いて、2019年12月30日までに公表された文献を、MEDLINEおよびEmbaseよりシステマティックに検索した。精神疾患患者に対する向精神薬の1日1回投与と分割投与の臨床アウトカムを比較したランダム化比較試験を選択した。研究の中止、精神病理、治療による有害事象(TEAE)に関するデータを抽出した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした32研究(34件の比較検討、3,142例)をメタ解析に含めた。・向精神薬別の比較検討の内訳は、以下のとおりであった。 ●抗うつ薬:22件 ●抗精神病薬:7件 ●ベンゾジアゼピン:2件 ●気分安定薬:2件 ●抗うつ薬とベンゾジアゼピンの併用:1件・向精神薬の1日1回投与と分割投与における研究の中止では、有意な差は認められなかった。 ●すべての原因による中止(30件、2,883例、リスク比(RR):1.01、95%CI:0.94~1.09、p=0.77) ●効果不十分による中止(22件、2,307例、RR:1.06、95%CI:0.84~1.33、p=0.62) ●有害事象による中止(25件、2,571例、RR:0.93、95%CI:0.75~1.14、p=0.47)・精神病理に関しても、両群間に有意な差は認められなかった。 ●精神病理(8件、1,337例、標準化平均差:0.00、95%CI:-0.11~0.11、p=0.99)・これらの結果は、いずれの向精神薬においても同様であった。・TEAEに関しては、1日1回投与のほうが不安症状および眠気の頻度が低かった。 ●不安症状(4件、347例、RR:0.53、95%CI:0.33~0.84、p=0.007) ●眠気(3件、934例、RR:0.82、95%CI:0.68~0.99、p=0.04) 著者らは「本結果より、精神疾患に対する向精神薬の投与は、向精神薬の種類にかかわらず、臨床的に1日1回投与が採用可能であると考えられる」としている。

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片頭痛患者の頭痛日数が不安やうつに及ぼす影響

 片頭痛のマネジメントを行ううえで、高度な障害を有する患者または精神医学的併存疾患リスクの高い患者を特定することは重要である。片頭痛による苦痛は、頭痛の頻度と共に増加するが、1ヵ月当たりの頭痛日数がどの程度になると、障害の重症度が高まるのか、不安や抑うつ症状のリスクが上昇するのかは、よくわかっていない。スペイン・Clinica Universidad de NavarraのP. Irimia氏らは、片頭痛患者における不安や抑うつ症状、障害重症度、QOL低下などのリスクに影響を及ぼす1ヵ月当たりの頭痛日数を推定するため、検討を行った。Scientific Reports誌2021年4月15日号の報告。 片頭痛患者468例(平均年齢:36.8±10.7歳、女性の割合:90.2%)を対象に分析を行った。対象患者のうち、1ヵ月当たりの頭痛日数が15日以上であった患者の割合は、38.5%であった。 主な結果は以下のとおり。・1ヵ月当たりの頭痛日数と不安症状(r=0.273、p<0.001)、抑うつ症状(r=0.337、p<0.001)、障害重症度(r=0.519、p<0.001)との間に正の相関が認められた。・不安症状リスクは、1ヵ月当たりの頭痛日数が3日以上の患者で高かった。・抑うつ症状リスクは、1ヵ月当たりの頭痛日数が19日以上の患者で高かった。・1ヵ月当たりの頭痛日数が10日以上の患者では、障害重症度が非常に高かった。 著者らは「1ヵ月当たりの頭痛日数が10日以上の片頭痛患者では、非常に重度の障害を有しており、1ヵ月当たりの頭痛日数が3日以上の片頭痛患者では、不安症状に関するスクリーニングを行うべきであることを示唆している」としている。

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日本における認知症高齢者に対するエビデンスベースの作業療法の実践と影響要因

 日本では、認知症患者数が急速に増加しており、エビデンスベースの作業療法(EBOT)に対するニーズが高まっている。このEBOTについて、認知症に対する臨床的改善効果が報告されている。北海道大学の長谷川 愛氏らは、日本の認知症患者に対するEBOTの現在の実践状況を調査し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、検討を行った。Hong Kong Journal of Occupational Therapy誌2020年12月号の報告。 認知症患者の治療を行っている作業療法士432人を対象に、郵送にて匿名の自己報告アンケートを実施した。記述統計データを整理し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、重回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・アンケート回収率は、31.3%(135人)であった。・EBOTの実践頻度に関する質問に対し、頻繁(7段階のスケールで5以上)に実施していると回答した作業療法士の割合は、46.3%であった。・ステップワイズ法による重回帰分析を用いて、最もフィットしたモデルを選択した。・このモデルにより、β値の高い(影響力の強い)以下の3つの因子が抽出された。 ●科学的論文を理解する能力:β=0.419 ●情報取得方法の十分さ:β=0.214 ●アドバイスの利用可能性:β=0.158 著者らは「日本の認知症患者に対するEBOTの実践には、3つの因子が重要となる。作業療法士は、科学的論文の質を評価することのできる読解力の習得が求められる。また、さまざまな論文にアクセス可能な環境を整備し、上司や同僚などとの議論をする場を設けることが必要である」としている。

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統合失調症患者における末梢炎症レベルの再定義~FACE-SZコホート研究

 統合失調症の予後には、末梢炎症が関連しているといわれている。高感度C反応性蛋白(hs-CRP)は、日常的に最も使用されている炎症性バイオマーカーである。しかし、末梢炎症の有無を区分するための合意に基づくカットオフ値は、これまで明確に定義されていなかった。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、1mg/L未満の患者と比較し、治療転帰が不良であるかを検討した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年4月29日号の報告。 対象は、2010~18年にフランス国内の専門学術センター10施設が参加したFACE-SZコホート研究より抽出したhs-CRP 3mg/L未満の統合失調症患者。炎症の潜在的な原因、社会人口統計、疾患の特徴、現在の疾患重症度、機能、QOLを、FACE-SZ標準化プロトコールに従って収集した。 主な結果は以下のとおり。・580例が抽出され、そのうち226例に軽度の炎症(hs-CRP 1~3mg/L)が認められた。・炎症の潜在的な原因として、過体重と歯科治療の欠如が特定された。・これらの因子で調整した後、炎症の認められた患者は、検出値(hs-CRP 1mg/L)未満の患者と比較し、より重度の精神症状、抑うつ症状、攻撃性、機能障害を有していた。・喫煙や身体活動レベルとの関連は認められなかった。 著者らは「hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、炎症関連障害のリスクがあると考える必要がある。末梢炎症の原因をコントロールするうえで、減量や積極的な歯科治療の実施が、有用な戦略である可能性が示唆された。カットオフ値hs-CRP 1mg/L超は、統合失調症患者の末梢炎症の検出において、信頼できるマーカーであると考えられる」としている。

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日本においてアルツハイマー病の重症度が介護費用などに及ぼす影響

 アルツハイマー病は、社会的費用を増加させ、患者のADLやQOLを低下させる。東京大学の芦澤 匠氏らは、日本の高齢者施設におけるアルツハイマー病の重症度がADL、QOL、介護費用にどのような影響を及ぼすかについて、検討を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌2021年号の報告。 対象は、47の高齢者施設に入所しているアルツハイマー病患者3,461例。患者のADL、QOL、アルツハイマー病の重症度は、それぞれBarthel Index(BI)、EuroQoL-5D-5L(EQ-5D-5L)、ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて評価した。年間介護費用は、患者のレセプトデータを用いて推定した。対象患者は、MMSEスコアに従って、軽度(MMSE:21~30)、中等度(MMSE:11~20)、高度(MMSE:0~10)の3群に分類した。3群間の違いは、Jonckheere-Terpstraテストを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・401例が抗アルツハイマー病薬を使用しており、そのうち287例が調査票に回答を行った(年齢:86.1±6.4歳、女性の割合:76.7%)。287例の重症度別内訳は、以下のとおりであった。 ●軽度:53例(年齢:84.0±6.9歳、女性の割合:71.7%) ●中等度:118例(年齢:86.6±5.9歳、女性の割合:76.3%) ●高度:116例(年齢:86.6±6.5歳、女性の割合:79.3%)・各群のBIスコア、EQ-5D-5Lスコア、介護費用の平均値は、以下のとおりであった。 ●軽度:53例(BI:83.6、EQ-5D-5L:0.801、介護費用:211万1千円) ●中等度:118例(BI:65.1、EQ-5D-5L:0.662、介護費用:247万円) ●高度:116例(BI:32.8、EQ-5D-5L:0.436、介護費用:280万9千円)・アルツハイマー病が重症化すると、BIスコアおよびEQ-5D-5Lスコアが有意に低下し、年間介護費用の有意な増加が認められた。 著者らは「アルツハイマー病の重症度は、ADL、QOL、介護費用などさまざまな影響を及ぼすことが示唆された」としている。

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日本の小児期自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対するアリピプラゾールの52週間市販後調査結果

 大塚製薬のYuna Sugimoto氏らは、日本の実臨床現場における小児自閉スペクトラム症(ASD)患者の易刺激性に対するアリピプラゾールの安全性および有効性について、市販後調査のデータを用いて評価した。BMC Psychiatry誌2021年4月22日号の報告。 本市販後調査は、52週間の多施設プロスペクティブ非介入観察研究として実施された。6~17歳のASD患者に対し、実臨床下でアリピプラゾール1~15mg/日を投与した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者510例におけるアリピプラゾールの治療継続率は、168日(24週)目で84.6%、364日(52週)目で78.1%であった。・副作用が認められた患者は、116例(22.7%)であり、主な副作用は、傾眠(9.4%)、体重増加(3.3%)であった。・4週目における異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)の過敏症サブスケールスコアのベースラインからの変化量は-5.7±6.8(288例)であった。・重回帰分析では、注意欠如多動症の症状を併発した患者においても、エンドポイントのABC-J過敏症サブスケールスコアに影響は認められなかった。・24週目における子供の強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire:SDQ)の総合的困難さスコアのベースラインからの変化量は-3.3±4.9(215例)、SDQの向社会的な行動スコアのベースラインからの変化量は0.6±1.7(217例)であった。 著者らは「実臨床下において、日本人小児ASD患者の易刺激性に対するアリピプラゾール治療は、長期的に忍容性が高く、有効な治療法であることが示唆された」としている。

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インサイド・ヘッド(続編・その2)【意識はどうやって生まれるの?】Part 1

今回のキーワード舞台装置(バーチャルリアリティ)クオリア統合情報理論モニター装置(ワイプ画面)自己意識身体失認解釈装置(解説者)概念化意識はどうやって生まれるの?-脳の正体意識とは、主役ではなく観客であり、意思決定は脳活動の多数決であるという衝撃の事実が分かりました。それにしても、私たちはなかなかそう思えません。なぜなら、私たちの意識は、まさに自分が現実の世界を感じて、自分が自分であり、自分が決めている(自由意志はある)と確信してしまっているからです。それでは、私たちの意識はどうやって脳にそう思い込まされているのでしょうか?ここから、ライリーの頭の中の3つの装置から、脳の正体を解き明かし、意識がどうやって生まれるのかを見てみましょう。(1)舞台装置-「バーチャルリアリティ」によって現実の世界をそのまま認識していると思い込ませる5人の小人たちが常に見てるのは、感情操縦デスクの目の前にあるスクリーンです。よくよく見ると、まぶたの形をしています。また、小人たちは、ライリーに思い出してほしい記憶をそのつど思い出ボールからスクリーンに映し出し、重ね合わせます。つまり、ライリーが見ているのは、まぶたを通した外の現実そのものではなく、小人たちによってつくられた脳内のスクリーン(バーチャルリアリティ)であるということです。1つ目は、舞台装置です。意識が見ているのは、現実そのものではなく、脳がつくった舞台(バーチャルリアリティ)であるということです。この舞台装置によって、現実の世界をそのまま認識していると思い込まされています。つまり、私たちが、現実であると思って見ている世界は、実は脳がつくり出しているということです。私たちは、目でものをそのまま見ているのではなく、脳内の視覚野(後頭葉)の小さな小人たち(ニューラルネットワーク)が反応することで、すでにモデル化(学習)されたもの(脳内モデル)と同じ「コピー」を見ています。これは、実際に、さまざまな現象で実感することができます。たとえば、私たちは、夜に色鮮やかな夢を見ることがあります。その間は、あたかも現実の世界にいるように感じていますが、その世界は、完全に脳がつくり上げた疑似的な世界(バーチャルリアリティ)です。だまし絵(錯覚)もそうです。これは、「遠くのものは小さいはず」という遠近法の脳内モデルに影響されています。また、盲点は、月が17個分入るほどの大きさであるにもかかわらず、普段まったく気づかないのは、そのバーチャルリアリティ(VR)を、あたかも拡張現実(AR)のように補完して、盲点を埋め合わせる脳内モデルが働いていることが考えられています。ちなみに、色について言えば、赤と紫は、目に見える光波長の上限(赤外線)と下限(紫外線)の両極端です。しかし、この2つの色は私たちには近い色として感じられます。そのわけは、このどちらの色の果ての光波長にも網膜の細胞(錐体細胞)が反応しなくなるという生理的な特性としては共通しているからであると考えられています。この点で、色は、あくまで脳がつくりだしたものであることが分かります。逆に言えば、脳内モデルを学習していなければ、目に問題がなくても、脳で見えないという現象が起きます。これは、子ネコを縦縞の環境で育てる実験で確かめられています。子ネコを生後からずっと縦縞の模様の円筒の部屋に入れて育てます。首にはエリザベスカラーを付けて、ネコが自分の体を見えないようにします。すると、5ヵ月後に、さまざまな角度の線分に対しての脳内の視覚野の神経細胞の反応を調べたところ、垂直の角度に近ければ近いほどより多く反応する一方、水平の角度にはまったく反応しないという結果が出ました。そして、実際に、その子ネコは、横向きに置かれた棒切れにつまずいてしまうことから、縦長のものは見えても、横長のものは見ることができないことが考えられました。この点で、人間の赤ちゃんも、生まれたばかりだと、目の前のものがほとんど見えず、ほとんど聞こえず、痛みなどもほとんど感じないということが言えるでしょう。脳はどうやって見るか、どうやって聞くか、そしてどうやって痛がるかを学習する必要があると考えられています。なお、映画の演出上、ライリーは、生まれたてでも、ママとパパが見えて聞こえているように描かれています。一方で、たとえばデートで夕日を眺めるような生き生きとした感覚(クオリア)を体験する状況を考えてみましょう。これは、そのような現実を実際に体験しているのではなく、学習済みの脳(舞台装置)によってつくられたバーチャルリアリティにドキドキ感(新奇希求性)が追加された体験をさせられているだけであると言えるでしょう。逆に、この脳内の舞台装置は誤作動を起こす可能性があると考えれば、逆に生き生きとしていない、つまり現実感がない感覚(離人症)があるのも納得が行きます。そして、言葉に色や味を感じる共感覚、誰もいないのに声が聞こえてくる幻聴(統合失調症)、見えている世界が揺らぐ意識変容(せん妄)などの精神症状も、それほど不思議な現象ではないことが分かります。さらに、痛みは皮膚ではなく脳で感じていると考えれば、原因不明の痛みを訴える慢性疼痛(身体症状症)や、下肢切断後に下肢の痛みを訴える幻肢痛(ファントムリム)などの身体症状も不思議でないでしょう。ちなみに、先ほどご説明した脳の反応から意識に上がるまで0.3秒のタイムラグがあるのは、この脳内バーチャルリアリティという意識をつくるために、ニューラルネットワークがいったんつながり切るまでに時間がかかるからであると考えられています。これは、意識とは視床と大脳皮質の間のニューラルネットワークの情報が統合される状態であるからと考えられています(統合情報理論)。つまり、現実の世界を感じさせる舞台装置は、脳のある部位で生まれるのではなく、脳全体のネットワークで生まれるということです。なお、夢の詳細については、関連記事1をご覧ください。 次のページへ >>

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インサイド・ヘッド(続編・その2)【意識はどうやって生まれるの?】Part 2

(2)モニター装置-「ワイプ画面」によって自分は自分であると思い込ませる5人の小人たちは、スクリーンを通してライリーを見ています。一方、ライリーは小人たちが見えるようには描かれていません。その理由は、おそらく、この映画の演出上、頭の中を小人たちに擬人化させているため、ライリーに小人たちが見えてしまうと、視聴者が混乱するからでしょう。実際は、11歳であれば、何となくぼんやりと頭の中の小人たちのせめぎ合いが、スクリーンに映し出されるワイプ画面に「見えて」います。たとえば、ライリーが転校先の教室で自己紹介をしている時に急に泣き出すシーンで、小人たちは右往左往していますが、ライリーは、周りの生徒たちを見ながら、きっと「さっきまでミネソタの楽しい思い出を話していたのに、急に悲しくなっちゃった」と「見えて」(思って)いるでしょう。ライリーのママやパパなら、もっとはっきりとしたワイプ画面に小人たちの会議が「見えて」いるでしょう。つまり、大人になればなるほど、テレビのワイプ画面を見るように、小人たちの働きぶりを自分の意識の中で俯瞰(モニター)するようになります。2つ目は、モニター装置です。意識が見ているのは、自分の心と体そのものではなく、脳がつくったモニター(ワイプ画面)ということです。このモニター装置によって、自分と周り(他人)の違いに注意が向き(自他境界)、自分は周り(他人)とは違う存在である(自己覚知)、つまり自分は自分であると思い込まされています(自己意識)。これは、このモニター装置の「故障」によって、確認することができます。たとえば、脳血管障害により片側の大脳半球(主に右半球)が機能しなくなった場合、麻痺している反対側(左側)の手足の認識(身体感覚)に注意が向かなくなり(無視するようになり)、その半側でぶつかったり転びやすくなります(半側空間無視)。中には、注意を向けられないという病識自体がなかったり、麻痺していること自体が分からなくなり、麻痺していないと言い張るようになることもあります(病態失認)。さらには、麻痺しているその手足が自分のものであると分からなくなり、自分のものではないと言い張るようになることもあります(身体失認)。つまり、片側(主に右側)の大脳半球が働かなくなると、その大脳半球が支配していた手足はモニターされず、そもそも存在しないことになってしまうのです。また、前頭葉(主に右前頭葉)の障害で、我慢ができなくなる脱抑制がみられます。これは、自分の行動をモニターできないために、脳が短絡的になっていると考えられます。逆に、このモニター装置が過剰に作動すれば、誰かに見られているという感覚(被注察感)や誰かに操られているという感覚(統合失調症の作為体験)になるでしょう。このモニター装置が分離して作動すれば、頭の中に複数の人格が共存している多重人格(解離性同一性障害)になるでしょう。そう考えれば、これらの精神症状は、それほど不思議な現象ではないことも分かります。実際に、自己の顔認知の実験によって、このモニター装置(自己を感じる脳活動)の部位が判明しています。この実験では、「私は考える」という言葉が添えられた自分の顔写真と、「彼は考える」という言葉が添えられた有名人の顔写真を見比べた時の、fMRIにおける脳の部位の活動性の違いを評価しました。すると、自分の顔写真を見た時に、より高い活動性が見られたのは、右前頭葉でした。この結果は、先ほどの半側空間無視、病態失認、身体失認、そして脱抑制が右半球の障害で多いことに合致します。つまり、自分が自分であると思わせるモニター装置は、主に右前頭葉で生まれるということです。ちなみに、このモニター装置を心理療法に応用したのが、マインドフルネスです。これは、自分の体感や五感を意識的に研ぎ澄ますことで、モニター装置をフルに作動させます。そうすることで、さらに舞台装置もフルに作動させて、意識レベル(覚醒度)を上げるという取り組みです。なお、マインドフルネスの詳細については、関連記事2をご覧ください。 << 前のページへ | 次のページへ >>

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