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2.

双極症患者の食事の質、うつ病患者や健康対照者との違いは?

 双極症患者は、心血管疾患を発症するリスクが高いことが知られている。欧米型の食生活は、双極症患者における心血管疾患リスクを上昇させるという仮説が立てられている。しかし、双極症患者における食習慣については、これまで十分に研究されていなかった。オランダ・Leiden University Medical CentreのMirjam A. Riedinger氏らは、双極症患者、単極性うつ病患者、寛解期の単極性うつ病患者、健康対照者における食事の質を評価するため、大規模コホートによる検討を行った。Bipolar Disorders誌2026年5月号の報告。 オランダうつ病不安研究(NESDA)から合計1,358例を対象に実施した。参加者の分類は、双極症患者(100例、男性の割合:48.0%、平均年齢:50.9歳)、単極性うつ病患者(199例、男性の割合:28.0%、平均年齢:52.4歳)、寛解期の単極性うつ病患者(722例、男性の割合:29.8%、平均年齢:52.4歳)、健康対照者(337例、男性の割合:40.7%、平均年齢:51.2歳)。食事の評価は、238項目の食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて、「地中海食スコア」(MDS)を算出した。食事スコアは、社会人口統計学的因子、身体活動、喫煙を調整した多変量回帰分析を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・双極症患者は、寛解期の単極性うつ病患者および健康対照者と比較し、MDSが有意に低かった(各々、p=0.01、p=0.02)。しかし、単極性うつ病患者との差は認められなかった。・エフェクトサイズは、双極症患者と寛解期の単極性うつ病患者で0.24、双極症患者と健康対照者で0.25であった。・さらに、双極症患者は健康対照者と比較し、平均ウエスト周囲径(p=0.03)およびBMI(p=0.02)が有意に高かった。 著者らは「双極症患者の平均的な食事の質は、寛解期の単極性うつ病患者および健康対照者と比較して低かった。このことが、双極症患者にみられるウエスト周囲径の増加およびBMIの上昇、そしてそれに伴う健康への悪影響の一因となっている可能性がある」と結論付けている。

3.

日本の実臨床におけるCGRP関連抗体の長期有効性と治療順守

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連抗体は、片頭痛予防に有効である。しかし、実臨床における1年を超えるデータは限られている。獨協医科大学の鈴木 圭輔氏らは、日本における片頭痛患者における3つのCGRP関連抗体の長期有効性を評価するため、単施設レトロスペクティブ観察コホート研究を実施した。European Journal of Neurology誌2026年3月号の報告。 対象は、獨協医科大学病院の頭痛外来において、2022年4月~2025年2月にCGRP関連抗体(エレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブ)を3ヵ月以上投与した片頭痛患者307例。評価項目は、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、50%以上の奏効率、有害事象(AE)、治療継続率とした。患者は、非治療反応患者と治療反応患者(早期治療反応患者:3ヵ月目までにMMDが50%以上減少、後期治療反応患者:4~5ヵ月目、超後期治療反応患者:6ヵ月目以降)に分類し、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・CGRP関連抗体治療により、24ヵ月にわたるMMDの有意な減少が認められた。・50%以上の治療反応率は、3、6、12、24ヵ月時点でそれぞれ45.9%、57.0%、63.6%、71.0%であった。・AEの発生率は12.6%であり、重症度はおおむね軽度であった。・早期治療反応患者は、ベースラインのMMDおよび片頭痛障害評価(MIDAS)スコアが最も低かった。一方、非治療反応患者は、ベースラインのMMDおよびMIDASスコアが最も高く、薬剤乱用頭痛(MOH)および精神疾患の併存率が最も高かった。・早期治療反応患者と比較し、後期治療反応患者および超後期治療反応患者は、ベースラインのMMD、MIDASスコア、MOHの発現率が高く、過去に予防治療失敗を経験した患者が多かった。・さらに、超後期治療反応患者は、羞明および拍動性頭痛の発現率が最も高く、精神疾患の併存率は最も低かった。・CGRP関連抗体の有効性は、いずれの薬剤においても同程度であった。・12、18、24ヵ月時点での治療継続率は、それぞれ68.3%、58.0%、50.6%であった。 著者らは「日本人片頭痛患者に対するCGRP関連抗体による治療は、片頭痛発作頻度の長期的な減少および良好な忍容性を示す有用な治療選択肢である」と結論付けている。

4.

鼻腔ブラシ生検でアルツハイマー病が検出可能に?

 将来、嗅裂と呼ばれる鼻の奥の部位から採取した検体を用いた鼻腔ブラシ生検で、アルツハイマー病(AD)の初期兆候を検出できるようになるかもしれない。米デューク・ヘルスが特許を取得した実験段階にあるこのブラシ生検によって、思考力や記憶力の問題が現れる前に神経細胞や免疫細胞の初期の変化を捉えることができたとする研究結果が報告された。この小規模ながら有望な研究は、「Nature Communications」に3月18日掲載された。責任著者である米デューク大学医学部教授のBradley Goldstein氏は、「もし早い段階で診断できれば、臨床的なADの発症を防ぐ治療の開始につなげられる可能性がある」と述べている。 Goldstein氏によると、今回の研究の目的は、「脳にダメージが蓄積する前の極めて早い段階でADを確認できるようにすること」であった。ADは脳の疾患だが、生体内の脳組織を直接調べるのは難しい。一方で、嗅覚は初期から障害されることが多く、嗅覚の神経細胞は嗅裂から採取できる。そこで研究グループは、22人の参加者の嗅裂からブラシを使って嗅上皮の検体を採取し、単一細胞RNA解析により各細胞における遺伝子発現を調べた。参加者は、健常者、脳脊髄液(CSF)バイオマーカー検査でADと診断された人、認知機能は年齢相応だがCSFバイオマーカー検査でADの前臨床段階にあると判定された人で構成されていた。採取された検体から、約22万個の細胞のそれぞれについて数千の遺伝子発現を測定することができ、得られたデータは数百万に上った。 その結果、ADの前臨床段階にある人においても、炎症に関与するT細胞やミエロイド細胞、嗅覚神経細胞の変化が見つかり、また、CD8陽性T細胞の活性化亢進がフローサイトメトリーによって裏付けられた。さらに、これらの変化を組み合わせることで、臨床的ADと前臨床段階のADを区別する一定の性能(ROC曲線下面積〔AUC〕0.81)も示された。 研究グループによると、現行のADの血液検査では、病状が進行してからでないと確認できないマーカーを検出する。一方、今回の検査は、生きた神経や免疫の活動を捉えるため、より直接的に疾患に関連する変化を見つけ、より早期段階で介入できるようになる可能性がある。 論文の筆頭著者でデューク大学医学科学者養成プログラムの学生であるVincent D’Anniballe氏は、「これまでにADについて明らかにされていることの多くは、剖検で得られた組織の解析結果に基づいていた。しかし、生きた神経組織を調べることができるようになり、診断と治療に新たな可能性が生まれた」と述べている。 Mary Umsteadさんは、若年性ADで亡くなった姉のMariah Umsteadさんのために今回の研究に参加した。Mariahさんは57歳でADの診断を受けたが、家族はそれよりはるか以前から症状に気付いていたという。Maryさんは、「研究参加のチャンスが巡ってきたとき、私はすぐに飛びつきました。Mariahを失ったときのような悲しみを、他の家族に味わってほしくないし、どの患者にも私たちが経験したようなつらい思いをしてほしくないからです」と語った。 デューク大学の研究グループは、このブラシ生検が治療の経過を追跡するのに役立つかどうかを明らかにすることを目標に、デューク大学・ノースカロライナ大学アルツハイマー病研究センター(Duke-UNC ADRC)と共同で、研究対象をより大規模な集団に拡大している。なお、今回の研究は米国立衛生研究所(NIH)の助成を受けて実施された。

5.

認知症の病理を叩く「表街道」、脳を育む「援護射撃」――Lancetの14の危険因子を読み解く(その3)【外来で役立つ!認知症Topics】第40回

前回、私はLancet誌の提唱する認知症の修正可能な14の危険因子1)を、「疾患・障害リスク」と「生活・環境リスク」とに分ける考え方を述べた。前者は従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化などの病理から説明しやすいもので、糖尿病や高LDLコレステロール(LDL-C)が代表的だ。これはいわば、アルツハイマー病の病理進行をくい止めようという「表街道」の予防法である。一方、後者はアミロイド仮説とは異なり、脳内ネットワークや認知予備能といった考え方で説明される。健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという、側面からの「援護射撃」ともいえる。この考え方をイラストに示した。以下に示す個々の危険因子について、それが「表街道」と「援護射撃」のどちらに属するかを述べていく。画像を拡大する筆者作成若年期の教育:脳の「控え選手」を育てる援護射撃若年期の危険因子だが、これは「教育」が中心となる。ここで作る大脳の基礎力が十分でなかったとしても、後年これを育み続けることが予防につながると考えればいい。この考え方の基本は、以前から知られる「認知予備能」に関連する。ざっくり言えば、人は生まれ持った脳細胞の一部しか使わないうちに一生を終える。これまで使ってこなかった「控え選手の神経細胞(予備能)」に働きかけるのである。具体的な方法としては、新たな社会交流が勧められる。とくにインターネットリテラシーが低い人こそ、ここで情報を得る習慣を持てば大きな成果が期待できる。教育は、まさに一生続く「援護射撃」なのである。中年期の危険因子:再発とうっかり事故を防ぐ表街道中年期の危険因子のトップは、第38回で述べたとおり難聴と高LDL-Cだが、続いて「うつ病」に触れたい。うつ病経験者は、そうでない者と比べ認知症の危険性が2倍とされる。背景には、神経炎症や、脳由来栄養因子を介した神経の可塑性障害、コルチゾール過剰分泌による海馬体積の減少説などがある。臨床的に大切なのは、うつ病は何度も繰り返しやすく、その再発自体が認知症発症の危険性を高める点だ。だからこそ再発予防が重要であり、主治医と共にフォローを欠かさないことが、病理を抑える「表街道」の対策となる。次に「頭部外傷」については、中等度のもので認知症リスクを2.3倍、重度で4~4.5倍にも増大させる2)。ボクシングなどによる頭部外傷が、50年以上も後にリスクとして現れる。なお高齢者では「転落が脳挫傷原因の3分の2以上」とされるだけに、住環境への配慮が重要になる。照明の改善、手すりやレールの設置、段差の除去や滑りにくい床への改善などが望ましい。身体機能面からは、運動機能の維持、視力や聴力の調整も重要となる。そして、単純ながら基本となるのが「適切な履物」の着用だ。屋内でスリッパなど履かないほうがよい人は多い。これもまた、脳への物理的ダメージを回避する「表街道」の予防といえる。運動不足:座りっぱなしを解消する援護射撃運動不足という危険因子は、従来からいわれてきた運動の予防効果の裏返しである。最近は、単に「たくさん運動すればよい」というより、「身体活動をしない者が運動すれば効果が生まれる」という考え方に変化してきた。最近、老年医学の分野では「座りがちな」という意味の英語で「sedentary」という言葉をよく見かける。そこですべき運動は、有酸素運動の一辺倒ではなく、レジスタンス運動やバランス運動を組み合わせることが重要だ。腰や膝の障害で運動が難しい人の場合でも、皿洗いや掃除、洗濯物干しなどの家事労働を長時間行えば、運動不足をかなり補える。こうした活動の積み重ねが、脳を支える「援護射撃」となる。糖尿病と高血圧:血管から病理を断つ表街道の王道糖尿病は認知症リスクを60%高めるとされるが、アルツハイマー病以上に、血管性認知症の危険性を高める。生物学的メカニズムとしては、直接的な血管障害や神経障害のほかにインスリン分解酵素(IDE)の影響が指摘されている。インスリンとアミロイドβ(Aβ)は同じIDEで分解されるため、高インスリン血症になるとAβの分解が滞り、蓄積していくと考えられる。なお低血糖発作は深刻な危険因子だと強調されている。食事による対応では、地中海食、そこに減塩を超えたダッシュ食、低炭水化物が推奨される。運動では、有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動を組み合わせた「表街道」の包括的な管理が求められる。そして、高血圧こそ認知症発症における最重要な修正可能リスクだろう。40~65歳の中年期の高血圧は、認知症リスクを61~69%増加させるが、降圧薬による治療により、認知症全体で12%、アルツハイマー病で16%のリスクを低減できるとされる3)。高血圧が認知症の危険因子となる理由として複数の説がある。まず脳血管損傷経路、また酸化ストレスと神経炎症経路、血液脳関門破壊経路、さらに脳構造変化と脳萎縮などである。これらをみると、アルツハイマー病の病理が形成されていくプロセスに関わる仮説の多くが高血圧と関連すると改めてわかる。治療面では、とくに血流の改善と脳構造の保護が重要である。わが国のガイドラインでは、年齢別、個人差を考慮した段階的な血圧管理を推奨している。また、いわゆる白衣高血圧の多さを考慮してか、最近では家庭用血圧計における継続的な測定結果が重視される。診察室での血圧よりも、自宅でリラックスして測定した値こそ「真の値」と考えるからだ。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、全年齢の降圧目標が、「診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満」に定められている4)。なお言うまでもないが、血圧コントロールのみならず糖尿病や脂質異常症などの関連疾患の包括的な管理を通して、大きな予防効果が期待できる。これも「表街道」の予防法だ。認知症の修正可能な危険因子に関する今回の解説は以上である。14の危険因子のうちあと6つ、主にライフスタイルに関連するものが残っているが、これについては次回に述べることにしよう。参考文献・参考サイト1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.2)Gottlieb S. Head injury doubles the risk of Alzheimer's disease. BMJ. 2000;321:1100.3)Ding J, et al. Antihypertensive medications and risk for incident dementia and Alzheimer's disease: a meta-analysis of individual participant data from prospective cohort studies. Lancet Neurol. 2020;19:61-70.4)日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会編. 高血圧管理・治療ガイドライン2025. ライフサイエンス出版; 2025.

6.

座っている時間が1日何時間以上でうつ病リスクが上昇するか

 これまでの研究では、1日の座位時間と抑うつ症状との関連性が検討されてきた。しかし、具体的な用量反応関係は依然として明らかになっていなかった。中国・Shenzhen Second People's HospitalのZhimao Cai氏らは、1日の座位時間と抑うつ症状との用量反応関係を調査した。Behavioural Neurology誌2026年号の報告。 本研究では、2007~18年に実施された米国国民健康栄養調査(NHANES)の参加者2万9,691例のデータを分析した。1日の座位時間とうつ病との非線形関連の可能性を探るため、平滑曲線フィッティングと閾値効果分析を用いた。1日の座位時間は、質問票を用いて収集し、うつ病の症状は、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・完全調整モデル3では、座位時間が1時間増加するごとに、抑うつ症状リスクが5%増加することが示された(95%信頼区間[CI]:1.02~1.07、p=0.0002)。・1日の座位時間で分類したところ、1日8時間以上座っている人は、すべてのモデルにおいてうつ病リスクが有意に高いことが示唆された。・モデル3では、1日8時間以上座っている人のオッズ比(OR)は、1日4時間未満の人と比較し、1.37(95%CI:1.12~1.69、p=0.0039)であった。・閾値効果分析では、7時間が変曲点であることが特定された。この閾値以下では、有意な相関は認められなかった。・一方、1日の座位時間が閾値を超えると、うつ病リスクの有意な増加が認められた(OR:1.07、95%CI:1.01~1.12、p=0.0184)。 著者らは「米国成人において、1日の座位時間とうつ病リスクの間に非線形な関連が認められた。これらの知見をさらに検証するためには、追加の研究が必要とされる」としている。

7.

動かない衛生委員会に産業医はどう関わるか?~権限なきファシリテーターとしての役割~【実践!産業医のしごと】

衛生委員会とは、労働安全衛生法に基づき、職場の健康障害・安全対策を労使で調査・審議する機関です。常時50人以上の労働者を使用する事業場で設置が義務付けられており、産業医が所属する企業であればほぼ必ず設置されています。この衛生委員会、形だけはきちんと回っていることが多いものです。毎月開催され、出席者もそろい、資料も配られる。健診受診率、長時間労働者数、巡視報告が順番に読み上げられ、最後に「何かございますか」との問いに何の質問も出ずに終わる。法令上の体裁は整っていますが、委員会を経て職場が良くなったという実感は誰もが持てないことが多い。産業医も、この「流れ」に乗りがちです。季節ごとの健康講話を数分行い、意見を求められれば無難にコメントをして終わる。嘱託産業医であれば月に一度の訪問で、衛生委員会に出るだけが仕事になることも珍しくありません。漫然と過ごせばすぐに終わってしまう時間ですが、それで職場が良くなるかといえば心もとないのが実情です。企業の出席者側にも事情があります。委員会での発言がそのまま自分の仕事に跳ね返ることがあります。ある部署の負荷に踏み込めば部署との調整が必要になり、設備の不備を指摘すれば予算の話になる。そうした調整に時間を割いても、自身の業績評価には反映されないことが大半です。誰しも職場を良くしたい気持ちがないわけではありませんが、面倒を引き受ける動機付けが弱いのです。衛生委員会が形骸化するのは、議題が足りないだけではなく、議題に踏み込んだときのコストを誰も引き受けたがらないためなのです。では、産業医に何ができるのでしょうか。産業医にできるのは、問いを通じて議論の向きを変えること産業医として、衛生委員会で医学的に正しいことを述べるのは当然ですが、正しいことを言うだけでは会議は動きません。「過重労働には注意が必要です」「職場環境の改善が大切です」……。誰も反対しませんが、誰も自分の問題として受け止めてもいません。産業医は衛生委員会の必須の参加者ですが、人事や予算の権限はありません。だからこそ、できるのは、参加者に自分たちの職場の問題を考えてもらうための「問い」を投げ掛けることです。「過重労働対策は実施していますか?」と聞けば、「はい」で終わります。しかし、「先月80時間超の方が3名いて、いずれも同じ課ですが、業務の偏りは課内で把握されていますか?」と問えば、話の向きが変わります。「職場環境に問題はありませんか?」ではなく、「巡視の時、あの現場は午後かなり室温が上がっていましたが、熱中症はどのように対策していますか?」と尋ねれば、議論は一般論からその職場の現実に移ります。月に一度の訪問でそんな問いが立てられるのか、と思われるかもしれません。しかし、限られた訪問だからこそ、巡視で目にした光景、面談で繰り返し出てくる訴え、健診事後措置で感じた違和感は印象に残ります。「これは個人の問題ではなく、職場の仕組みの問題ではないか」と感じたものをメモしておけば、委員会で投げ掛ける問いの材料になります。ただし、問いを立てても「いい指摘ですね、今後検討します」で終わってしまったら、一般論を述べたのと変わりません。空調の話であれば、判断するのは総務か施設管理か。長時間労働の偏りであれば、課長レベルで見直せるのか部長判断が要るのか。委員会の出席者の中でその話を引き取れる人は誰か。そこまで見えたうえで問いを投げ掛ければ、「では次回までに確認します」という、変化の動きが生まれやすくなります。小さな動きの積み重ねが、委員会を変えるこうして生まれる変化は、いずれも小さな一歩です。巡視で指摘した点が次回までに確認される。心の健康づくり計画の策定が始まる。熱中症発生時の連絡経路が見直される。どれも一つひとつは大きな変化ではありません。しかし、こうした動きが積み重なることで、委員会の位置付けは少しずつ変わっていきます。報告を聞いて終わる場ではなく、報告を基に考え、次の対応につなげる場へと変わっていくのです。職場の課題について、担当者が事前に現場の状況を確認したうえで委員会に臨むようになれば、議論の質もおのずと高まります。産業医が問いを投げ掛け、委員会で考え、担当者が持ち帰って次回に報告する。そうした小さなサイクルが回り始めれば、委員会はもはや形だけの場ではなくなっていくはずです。産業医だからこそできるのは、現場で拾った問いを、届くべき相手に届く形で投げ掛けることです。地味な作業ではありますが、それがあるかないかで、衛生委員会の雰囲気も、果たす役割も、かなり違ったものになるのではないでしょうか。

8.

受診ごとのBMI変動、とくに女性で認知症リスクと関連

 これまでの研究では、認知症リスクを検討する際に、BMIのスロープや変動を別の概念として区別することは一般的ではなかった。東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らは、スロープ調整済み受診ごとのBMI変動と認知症リスクとの関連性を評価した。International Journal of Obesity誌オンライン版2026年3月13日号の報告。 5年間の年次健康診断を受けた50~74歳を対象に、日本の国民健康保険データ(2015~23年)を用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。BMI変動は、経時的な傾向を考慮するため、スロープ調整済み標準偏差(SD)を用いて評価した。抗認知症薬の投与開始を認知症の代理指標とし、死亡を競合リスクとして考慮したFine-Gray競合リスクモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・参加者30万3,042例(平均年齢:66.6歳、男性の割合:38.6%)を平均2.17±1.19年間フォローアップした結果、665例に抗認知症薬(主にドネペジル:67.4%)の投与が開始され、2,394例に死亡が認められた。・ベースライン時のBMIおよび年間BMI変化量を含む共変量を調整した後、スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群(0.50kg/m2以上)は、最低三分位群(0.31kg/m2以下)と比較して、認知症リスクの増加と有意な関連が認められた。・年間BMI変化量は、認知症リスクとU字型の関連を示し、とくに第1三分位群(BMI減少率が-0.31%以下)で顕著な上昇が認められた(ハザード比:1.60、95%信頼区間:1.32~1.93)。・ベースライン時のBMIを除くベースライン共変量を含む基本モデルでは、ベースライン時のBMIを追加した場合とスロープ調整済みBMI-SDを追加した場合で、C統計量の改善に有意な差は認められなかった(+0.0147 vs.+0.0146)。一方、BMI低下-0.31%以下を追加した場合、C統計量の改善が最大であった。・スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群と認知症リスクとの関連は、男性よりも女性のほうが強かった(p for interaction=0.0039)。 著者らは「スロープ調整済みBMIの変動は、とくに女性において認知症リスクと独立して関連しており、BMI低下パターンは認知症の強力なリスク因子であることが示唆された。ルーチンの認知症スクリーニングに、受診ごとのBMI変動の縦断的モニタリングを組み込むことは有益な可能性がある」と結論付けている。

9.

医療に伴う負債は医療の後回しと関連

 医療に伴う負債がある人は、将来の疾病予防に必要な医療を後回しにしがちであることが、新たな研究で明らかになった。この傾向は、特に歯科とメンタルヘルス領域で顕著であったという。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCatherine Ettman氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of General Internal Medicine」に3月10日掲載された。 Ettman氏は、「定期的なケアや予防医療を受けないことは、患者の健康状態を悪化させ、結果として医療費の増加につながる。その負担は、患者だけでなく、保険者や米国の医療費の多くを負担している納税者にも及ぶ」とニュースリリースで述べている。 この研究では2023年に実施された米国国民健康面接調査(National Health Interview Survey;NHIS)のデータを用いて、医療に伴う負債が一般診療、メンタルヘルス医療、歯科医療の後回しと関連するのかを検討した。 データが揃った2万8,699人の参加者のうち、10.7%に当たる2,835人が過去12カ月間に医療に伴う負債があったことを報告した。負債は保険未加入者で最も多く(19.5%)、次いでメディケイド加入者(12.6%)、民間保険加入者(9.3%)、メディケア加入者(8.1%)の順だった。医療に伴う負債がある人の33.3%が費用を理由に医療受診を後回しにしていたのに対し、負債のない人での割合は5.3%だった。メンタルヘルスの受診を後回しにした人は、医療に伴う負債がある場合は20.3%、ない場合は5.1%、歯科受診ではそれぞれ53.2%と17.3%だった。社会人口統計学的特徴を調整して解析した結果、医療に伴う負債は受診を後回しにする可能性の増大と関連し、その増加幅は歯科受診で24.6パーセントポイントと最も大きく、次いで医療受診で17.6パーセントポイント、メンタルヘルス受診で9.3パーセントポイントであった。 研究グループは、必要な医療を後回しにすることは、早期に発見できたはずの健康問題のリスクを高めると指摘している。こうした未治療の問題は、別の疾患を引き起こす可能性もある。例えば、口腔の健康状態の悪化は、心疾患や認知機能の低下などと関連していることが報告されている。論文の筆頭著者である同大学のKyle Moon氏は、「医療費を患者が無理なく支払えるようにする政策や、医療に伴う負債が連鎖的にもたらす影響に対処する政策は、受診の遅れが健康や経済に及ぼす影響を軽減する上で極めて重要だ」と述べている。

11.

1日1~2杯のお茶でうつ病リスクが低下?

 うつ病は、社会と健康の両方に大きな影響を及ぼす一般的な精神疾患である。お茶の摂取による潜在的な健康効果が示唆されているが、お茶の種類、摂取頻度、摂取量といった飲用パターンがうつ病のリスクと関連しているかどうかは不明であり、とくに異なる集団においては、これまでよくわかっていなかった。台湾・高雄医学大学のSi-Meng Chang氏らは、台湾バイオバンクの登録者2万7,119例のデータを用いて、自己申告による生涯うつ病歴の有病率とお茶の種類、摂取頻度、1日当たりの摂取量との関連性を評価した。Nutrients誌2026年3月5日号の報告。 お茶の種類(完全発酵茶、半発酵茶、非発酵茶)、摂取頻度、1日当たりの摂取量により分類した。自己申告による生涯うつ病歴のデータは、自己記入式質問票を用いて収集した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、お茶の摂取と自己申告による生涯うつ病歴との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、お茶の摂取量は、自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さとの有意な関連が認められた(オッズ比[OR]:0.736)。・この関連性は、半発酵茶および非発酵茶で認められた(OR:0.674)。しかし、完全発酵茶では認められなかった。・1日1~2杯(350~700mL)のお茶の摂取は、自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さと有意に関連していたが、1日3杯以上の摂取では関連性が認められなかった。・さらに、お茶の摂取頻度に関して、毎日お茶を飲む人は自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さと有意に関連していたが、週に1回または月に1回しかお茶を飲まない人ではそのような関連が認められなかった。・サブグループ解析では、65歳以上の高齢者、糖尿病患者、喫煙者、飲酒者においては、お茶の摂取と自己申告による生涯うつ病歴の有病率低下との関連は認められなかった。・これは、健康状態や生活習慣が、お茶の摂取とうつ病との関連に影響を及ぼす可能性を示唆している。・ただし、交互作用分析では、有意な差は認められなかった。 著者らは「正式な交互作用検定において統計的に有意な差が認められなかったため、これらの結果は探索的なものと見なすべきである」としたうえで、「半発酵茶および非発酵茶を毎日1~2杯摂取することは、自己申告による生涯うつ病歴の有病率低下と関連していた。この関連性には、摂取量や摂取頻度が影響を及ぼすことが示唆された。さまざまな種類のお茶の生物学的メカニズムを解明し、高リスク集団に対する介入戦略を開発するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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がん治療中のケモブレイン、運動療法に抑制効果?

 がんやがん治療に伴い生じる認知機能障害を総称して、CRCI(cancer-related cognitive impairment)という。抗がん剤による治療中や治療後の患者に生じる記憶力や集中力、作業能力の一時的な低下を表す「ケモブレイン」は、CRCIの一種である。このほど、新たな研究において、運動ががん患者のCRCIを防ぎ、認知機能を保ちながら日常生活を円滑に送るのに役立つ可能性が示された。英ロチェスター大学医療センター、ウィルモットがん研究所のがん予防・制御研究プログラムで共同リーダーを務めるKaren Mustian氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Comprehensive Cancer Network」3月号に掲載された。 今回の研究では、米国内で2、3、4週サイクルで初回の化学療法を受ける予定だった687人の遠隔転移のないがん患者を対象に、CRCIおよび精神的疲労に対する運動の効果がランダム化比較試験で検討された。参加者は、6週間の自宅ベースの個別化された運動療法を受ける群(354人)と標準治療を受ける群(333人)にランダムに割り付けられた。参加者の認知機能をFunctional Assessment of Cancer Therapy-Cognitive Function(FACT-Cog)、精神的疲労を多次元疲労症状調査票(Multidimensional Fatigue Symptom Inventory;MFSI)で評価するとともに、血液サンプルからIL-1βやIL-6など6種類の炎症関連マーカーを測定した。547人が介入の前後で完全なFACT-Cogデータを提供し、うち348人は血液サンプルも提供した。 介入前後で、全ての参加者で認知機能の低下と精神的疲労の増加が見られた。解析の結果、2週サイクルで化学療法を受けている運動療法群では、標準治療群と比較して、全般的な認知機能低下の程度が有意に低く、また、自覚的な認知機能障害や他者が認識する認知機能障害の程度も低かった。一方、3週または4週サイクルで化学療法を受けている運動療法群では、標準治療群との間に有意差は認められなかった。 精神的疲労についても介入の前後で、全ての参加者において有意に悪化した。しかし、運動療法群は標準治療群と比較して、介入後の精神的疲労が有意に軽度であった。特に2週サイクルの化学療法を受けている患者では、運動療法群では精神的疲労の悪化が認められなかったのに対し、標準治療群では有意な悪化が認められた。3週および4週サイクルで化学療法を受けている患者では、両群間に有意差は認められなかった。さらに、1日当たりの歩数についても、運動療法群では介入前後でほぼ維持されていたのに対し、標準治療群では介入前と比べて歩数が有意に53%減少した。 Mustian氏は、「安全でシンプルな運動プログラムが、化学療法を受ける患者にとって重要な支持療法の一部となり得ることを示している」とニュースリリースで述べている。また研究グループは、運動療法の効果を得るには、2週サイクルの化学療法が「最適なタイミング(スイートスポット)」である可能性も指摘している。 本研究をレビューした、米ワシントン大学医学部の腫瘍内科医であるLindsay Peterson氏は、多くの患者がケモブレインを心配していると述べた上で、「今回の研究結果は有望だ。化学療法中の認知機能低下のリスクを減らすために患者自身ができることが運動である可能性を示している」とコメントしている。同氏はさらに、「多くの患者にとって、思考の明瞭さを保ち、記憶力を維持し、治療中も精神的に活動的でいることは、自立した生活の維持や就労の継続、家族のケア、さらに全体的な生活の質(QOL)を保つ上で極めて重要だ」と付け加えている。

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片頭痛が短期記憶とワーキングメモリに及ぼす影響は

 片頭痛は、世界人口の最大15%が罹患する一般的な神経疾患である。片頭痛は、頭痛、悪心、嘔吐、光や音への過敏症などの身体症状を伴う疾患である。また、視覚性前兆の有無など、特定の症状に基づいて分類されるさまざまな亜型が存在する。さらに、報告頻度の高い認知症状として「ブレインフォグ」がある。これは、主に注意力や記憶力に関連する日常生活における認知機能の低下を表す状態である。片頭痛における記憶機能に関する実証研究の結果は、一貫性が認められていない。一部の研究では、明らかな認知機能低下が報告されている。その一方で、他の研究では軽微あるいはまったく障害がないことが報告されている。さらに、これまでの研究では、特定の記憶領域の検討が限定的であり、片頭痛の特徴に対する影響が一貫して考慮されていなかった。オーストラリア・La Trobe UniversityのKenya McKay氏らは、片頭痛患者の短期記憶およびワーキングメモリのパフォーマンスを、健康対照者と比較して調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Neurology誌2026年3月17日号の報告。 Embase、CINAHL、MEDLINE、PsycINFO、Web of Science Core Collectionよりシステマティックに検索した。片頭痛患者の短期記憶およびワーキングメモリのパフォーマンスを評価した研究を目的に関連する包含基準を用いて、2段階(タイトルや抄録および全文)でスクリーニングを行った。抽出された3,880件の研究のうち、16件が包含基準を満たした。主要アウトカムは、短期記憶およびワーキングメモリとし、片頭痛患者と健康対照者との比較を行った。副次的アウトカムとして、前兆のある片頭痛患者と前兆のない片頭痛患者における記憶パフォーマンスの調査および片頭痛が視覚記憶および言語記憶のパフォーマンスに及ぼす影響を評価した。JASPを用いてランダム効果モデルによる解析を行い、エフェクトサイズとしてHedges’gを用いた評価を行った。異質性は、Q統計量およびI2統計量を用いて評価した。出版バイアスの評価には、Eggerの回帰検定とファンネルプロットを用いた。 主な結果は以下のとおり。・短期記憶において、片頭痛患者と健康対照者との間に有意差は認められなかった。・具体的には、前兆のある片頭痛患者と健康対照者、前兆のない片頭痛患者と健康対照者、あるいは前兆のある片頭痛患者と前兆のない片頭痛患者の間で、短期記憶に有意差は認められなかった。・同様に、短期視覚記憶および短期言語記憶能力においても有意差は認められなかった。・一方、ワーキングメモリにおいては有意差が認められ、片頭痛患者は健康対照者と比較し、作業記憶の低下が認められた。 著者らは「成人片頭痛患者では、短期記憶は維持されているものの、ワーキングメモリは選択的に障害されていることが、本システマティックレビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。このパターンは、片頭痛が全般的な記憶障害と関連しているのではなく、むしろ能動的な操作や認知制御を必要とする高次記憶プロセスにおける脆弱性と関連していることを示唆している。これらの結果は、客観的な認知機能所見と一般的に報告されるブレインフォグの症状を整合させるのに役立っている。また、片頭痛に関連する認知機能の訴えは、発作間欠期における根本的な記憶維持障害ではなく、認知効率の低下を反映している可能性を示唆していると考えられる」と結論付けている。

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医師のアルバイト、10年で「していない」が激減、収入は増加傾向/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人(男性883人、女性117人)を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。その結果、医師のアルバイト事情において、10年前の調査と比較して顕著な変化が生じていることが明らかとなった。「アルバイトをしていない医師」は10年前から半減 今回の調査で最も際立ったのは、「アルバイトをしていない」と回答した医師が大幅に減少した点である。「アルバイトをしていない」医師は2016年の調査では52%だったのが、2026年調査では29%と10年間で約半数にまで減少しており、現在、医師にとってアルバイトがきわめて一般的な収入源となっていることが示された。アルバイト収入の分布:二極化と底上げ 2025年度のアルバイト年収は、全体として上昇傾向にあった。最多層は「200万円未満」の28%だが、これは2016年の16%から増加しており、少額でもアルバイトを行う医師の裾野が広がっていることを示している。一方で、アルバイト収入が「1,200万円以上」の層も5%存在し、2016年の2%から倍増した。大学病院勤務者の9割以上がアルバイトに従事 勤務形態別の分析では、大学病院勤務者の実態が顕著であった。大学病院などで働く医師のうち、アルバイトをしていない割合はわずか8%にすぎなかった。大学病院勤務者ではアルバイト年収が「1,000万円以上」に達する割合が23%(1,000~1,200万円未満:11%、1,200万円以上:12%)であり、ほかの勤務先(一般診療所・一般病院)に比べて圧倒的に高い傾向にあった。年代・診療科・地域によっても格差 年代別では、最も積極的にアルバイトを行っているのは「46~55歳」(「していない」割合が23%)であった。対して66歳以上では38%が「していない」との回答だった。 地域別では、北海道・東北では約半数(49%)が「200万円未満」の収入帯に属し、従事者は多いものの単価が低い傾向にあった。一方、九州・沖縄では約半数(49%)が「していない」という結果だった。 診療科別では、アルバイトに従事している医師の割合が最も高かったのは放射線科(「していない」割合が16%)であり、次いで整形外科、精神科、糖尿病・代謝・内分泌科などが続いた。総所得とアルバイト収入の相関 総所得が高い医師ほど、高額のアルバイトに従事している傾向も確認された。総所得2,500万円以上の層では、アルバイト収入だけで「1,200万円以上」を得ている割合が4分の1に達しており、高所得医師においてはアルバイトが所得を押し上げる大きな要因となっていることが裏付けられた。アンケート概要対象:ケアネット会員医師1,000人(男性883人、女性117人)実施日:2026年3月2〜9日手法:インターネット調査 その他、詳細な結果については、以下のページに掲載している。医師の年収に関するアンケート2026【第2回】アルバイト代

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第57回 「住む場所」が脳の老化を加速させる。環境と認知症の知られざる関係

2026年4月のNature Medicine誌に、私たちの脳の老化について非常に興味深い研究が発表されました1)。34ヵ国・約1万8,700人の脳画像データを解析し、大気汚染や気温、緑地の多さといった「物理的環境」と、貧困や民主主義の成熟度、ジェンダー平等といった「社会的環境」が、脳の老化速度にどう影響するかを包括的に調べたものです。認知症の原因といえば、加齢や遺伝的素因を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかしこの研究は、私たちが「どこに住み、どのような環境で暮らしているか」が、脳の老化に想像以上に大きな影響を与えていることを示唆しています。「脳年齢」というモノサシこの研究で用いられている核心的な概念が「脳年齢ギャップ(BAG)」です。これは、MRIや脳波などの神経画像データからAIが予測した「脳の見た目の年齢」と実際の年齢の差を表します。たとえば実年齢60歳の人のAI予測脳年齢が65歳であれば、BAGは「+5」、すなわち脳が実年齢より5歳分老けていることを意味します。このBAGは、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症などの病気で大きくなることが知られています。研究チームは、構造的MRI(脳の形態)と機能的MRI・脳波(脳の働き)の両方からBAGを算出し、これに対して73項目の「エクスポソーム(環境因子)」を結びつけました。73項目には、大気汚染や気温、降水量、緑地などの物理的環境要因33項目と、GDP、失業率、民主主義指標、ジェンダー平等などの社会的環境要因40項目が含まれています。環境因子の「総体」が、個別のリスクの15倍以上の影響力を持つ研究の最も重要な知見の一つは、環境因子を「まとめて」評価することの重要性です。73の環境要因を統合したモデルは、個々の要因を単独で評価した場合と比べて、最大で15.5倍も多くの脳老化のばらつきを説明しました。これは、大気汚染だけ、あるいは貧困だけといった単一の要因ではなく、複数の環境ストレスが「積み重なる」ことで、脳へのダメージが加速することを示唆しています。さらに、環境因子の負荷が高い人では、脳の老化が加速するリスクが3.3〜9.1倍に達し、これはアルツハイマー病のような病気が脳の老化に与える影響をも上回るものでした。つまり、「どのような環境に住んでいるか」が、病気の有無以上に脳の老い方を左右しうるということです。物理的環境は「脳の形」を、社会的環境は「脳の働き」を蝕む興味深いのは、物理的環境と社会的環境で、脳への影響の「経路」が異なるという点です。大気汚染(とくにPM2.5)、極端な気温、緑地へのアクセス不足、水質汚染といった物理的環境要因は、主に「構造的」な脳の老化、すなわち、脳の形態そのものの萎縮と結びついていました。とくに海馬や小脳といった、記憶や運動に重要な領域が影響を受けやすいことが示されています。一方、社会経済的格差、民主主義の成熟度の低さ、政治参加の不足といった社会的環境要因は、「機能的」な脳の老化、すなわち、脳のネットワーク接続の劣化とより強く関連していました。社会的なストレスが、視床下部-下垂体-副腎という「ストレス応答系」のネットワークを介して、脳の機能的なつながりを乱す可能性が示唆されています。日本に住む私たちにとっての意味この研究は34ヵ国のデータが解析されたものですが、それらの国々の中で日本は高所得国であり、社会的環境指標は比較的良好です。しかし、この研究が示す教訓は決して他人事ではありません。まず、物理的環境について、日本では都市部の大気汚染、毎年の猛暑や豪雨といった極端な気象、そして緑地へのアクセスの地域差が存在します。これらはいずれも、この研究で脳の構造的老化を促進する主要因子として同定されたものです。とくに、近年の気候変動による熱波や経験したことのない規模の自然災害が、長期的に脳の健康に影響を及ぼしうるという視点は、超高齢社会を迎える日本にとって重要な警告といえるでしょう。また、社会的環境の側面でも、高齢者の社会的孤立や経済的困窮、地方の過疎化によるサービスへのアクセス低下など、「社会的環境の悪化」は日本国内でも進行しています。これらが脳の機能的な老化を促進しうるという今回の知見は、認知症予防を「個人の努力」だけでなく「社会の課題」として捉え直す必要性を示しているともいえるかもしれません。もちろん、この研究にも限界はあります。まず、主に横断研究デザインであるため、「環境が脳老化を引き起こした」という因果関係を直接証明するものではありません。また、環境要因は「国レベル」のデータであり、同じ国の中でも都市と農村では環境が大きく異なります。より細かい地域単位の解析が今後求められるでしょう。認知症予防は「社会のデザイン」から始まる認知症の予防というと、運動や食事、知的活動といった「個人の行動変容」が注目されがちです。それらはもちろん大切ですが、この研究は、それだけでは不十分であることを示唆しています。きれいな空気、十分な緑地、安全な水、そして社会的安定や平等といった「社会のデザイン」が、脳の健康を守る土台をつくるのです。研究者らは、大気汚染の削減だけでも世界の認知症を約3%予防できる可能性があると述べています。私たちが健康に老いるためには、自分自身の生活習慣を見直すと同時に、「住みやすいまちづくり」や「社会的孤立を防ぐ仕組み」といった、より広い視野での取り組みが求められています。脳の健康は、個人と社会の双方が守るものなのです。1)Legaz A, et al. The exposome of brain aging across 34 countries. Nat Med. 2026 Apr 3. [Epub ahead of print]

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魚を週1、2回食べると認知機能が維持される?

 魚の摂取量が多いほど認知機能の低下速度が遅くなり、認知症の発症率が低くなることが、これまでの疫学研究において一貫して示されている。イタリア・カターニア大学のJustyna Godos氏らは、高齢者の魚の摂取と認知機能との関連性を調査したこれまでの観察研究をシステマティックにレビューした。GeroScience誌オンライン版2026年3月15日号の報告。 レビューの対象となった研究は25件(横断的研究:8件、プロスペクティブ研究:17件)。対象は、主に健康な高齢者(年齢範囲:プロスペクティブ研究のベースライン時18~30歳、65~91歳[年齢スペクトルの上限を網羅])。現在までに発表されているほとんどの研究で調査されている認知機能には、全般的認知機能、記憶(エピソード記憶、ワーキングメモリ)、実行機能(計画、抑制、柔軟性)、注意、処理速度など、さまざまな領域が含まれていた。 主な内容は以下のとおり。・これまでの研究は、研究デザイン(横断的研究とプロスペクティブ研究)、対象地域、対象者数、評価指標として用いられたツールに関して、大きな違いが認められた。・研究結果全体を通して、主な知見は一様ではなく、魚の摂取と各認知機能領域との関連性をより強く示唆する研究がある一方で、関連性が認められなかった研究もあった。・魚の摂取が週1回以上の高齢者において、最も一貫して関連性が認められた認知機能領域は、処理速度、実行機能、意味記憶、全般的認知機能であった。これらは、神経変性疾患および血管性疾患の両方において認知機能障害と密接に関連していた。・言語記憶および全般的記憶についても正の関連性が認められたが、これらの関連性は一貫性に欠け、多くは多変量調整後に弱まった。・対照的に、反応時間、言語数的推論、総合スコアとの関連性では一貫性が認められず、複数の完全調整モデルにおいて有意な結果が得られなかった。 著者らは「週1~2回以上の定期的な魚の摂取は、認知機能の維持と関連していることが示唆された。しかし、矛盾する結果もいくつか見られるため、さらなる調査が求められる」と結論付けている。

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初発精神疾患の女性に推奨される抗精神病薬に関する初の臨床診療ガイドライン

 抗精神病薬は、初回エピソード精神疾患の早期介入において主要な治療選択肢の1つであり、長期予後の重要なポイントとなる。女性患者における抗精神病薬治療は、副作用に対して特有の脆弱性を示すにもかかわらず、既存の臨床診療ガイドラインでは性別に応じた推奨事項が提供されていなかった。とくに高プロラクチン血症や心血管代謝系の副作用は、生殖年齢女性において著しい主観的な苦痛や長期の身体的健康リスクに影響を及ぼす可能性がある。アイルランド・St John of God University HospitalのCaroline Hynes-Ryan氏らは、初回エピソード精神疾患の女性患者に推奨される抗精神病薬に関する臨床診療ガイドラインの作成を目的に本検討を実施した。Schizophrenia Bulletin誌2026年3月7日号の報告。 経験豊富な専門家を含む国際的な多職種パネルにより、GRADE-ADOLOPMENTプロセスとAGREE IIフレームワークを用いて、成人および青年向けの既存の初回エピソード精神疾患ガイドラインを改訂した。主な健康上の疑問点については、関係者との協議および文献レビューを通じて策定した。なお、きわめて重要な患者アウトカムを優先し、副作用プロファイルに関するエビデンスを統合し、合意に基づく推奨事項を策定した。ガイドラインのアルゴリズムについては、現場での検証と専門家による外部レビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・女性における抗精神病薬の選択においては、プロラクチン上昇と心血管代謝系の副作用が優先的に考慮された。・高リスクの薬剤である第1世代抗精神病薬、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、パリペリドン、amisulprideは、第1選択薬としては推奨されない。・アリピプラゾールは、プロラクチン上昇および心血管代謝系プロファイルが一貫して良好である。そのため、第1選択薬として推奨される。・成人および青年に対しては、低または低~中程度リスクの代替薬が、共同意思決定ツールにより推奨された。 著者らは「本ガイドラインは、初回エピソード精神疾患を発症した女性に対する抗精神病薬の選択について取り上げた初の臨床診療ガイドラインである。本ガイドラインにより、きわめて重要な患者アウトカムと患者体験を優先することで、女性に対するより安全で性別に配慮した処方を支援し、精神病治療における治療受容性、アドヒアランス、公平性の向上につながる可能性がある」と結論付けている。

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アルツハイマー病への抗アミロイドβ抗体薬、日本での導入実態は?/長寿研

 アルツハイマー病(AD)の病態に直接作用する抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬であるレカネマブとドナネマブが、日本でも2023~24年にかけて実臨床に導入された。東京都健康長寿医療センター研究所の井原 涼子氏らの研究グループは、日本の国民皆保険制度下におけるこれら薬剤の導入実態と、患者の意思決定要因に関する調査を実施した。その結果、本治療を希望して受診した患者のうち、実際に投与を開始したのは約20%にとどまり、高額療養費制度によって経済的障壁が低い環境下でも、治療適格性や副作用への懸念が大きなハードルとなっている現状が浮き彫りになった。Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring誌オンライン版2026年3月24日号に掲載。 本研究では、2023年12月~2025年5月に東京都健康長寿医療センターを受診した患者のデータを解析した。同センターでは、「もの忘れ外来」「疾患修飾療法(DMT)外来」を設置し、2段階のスクリーニング体制を構築している。(第1段階:「もの忘れ外来」での鑑別・重症度評価[MMSEを含む]、第2段階:「DMT外来」でのインフォームドコンセントとMRIによる禁忌確認、アミロイドPETまたは脳脊髄液検査)。抗Aβ抗体薬による治療を希望して「もの忘れ外来」を受診した456例、および「DMT外来」を受診した312例を対象に、抗Aβ抗体薬治療開始に至った割合と、至らなかった理由を解析した。 主な結果は以下のとおり。・自ら抗Aβ抗体薬治療を希望して受診した人(「もの忘れ外来」受診者456例)のうち、実際に投与を開始したのは87例(19.1%)であった。・「DMT外来」受診者312例のうち、自ら抗Aβ抗体薬治療を希望して受診した人は205例、医師の紹介で受診した人は107例であった。そのうち抗Aβ抗体薬治療を開始したのは131例(42.0%)であった。・「もの忘れ外来」での抗Aβ抗体薬治療の除外理由で最も多かったのは「疾患の進行(中等度以上の認知症)」であった。・「DMT外来」では、93例が説明後の同意段階で除外された。このうち86.0%は「本人・家族の希望による辞退」であり、主な理由は「副作用(ARIA)への懸念」や「通院負担」であった。・精密検査の結果、「アミロイド陰性」(44例)や「MRIでの禁忌所見」(33例)により不適格となるケースも多くみられた。・多変量解析の結果、以下の因子が独立して治療開始率の低さと関連していた。75歳以上(オッズ比:0.25、95%信頼区間:0.15~0.43)、男性(0.56、0.33~0.95)、MMSEスコア27〜30点の軽微な層(0.33、0.18~0.60)。・75歳以上では副作用への懸念やアミロイド陰性率の高さ、男性ではMRIでの多発微小出血などの禁忌事項に該当する割合が高いことが影響していた。 本研究により、日本独自の「高額療養費制度」によって薬剤費の自己負担が抑えられている環境下でも、非経済的な要因が治療導入の大きな障壁となっている実態が確認された。著者らは、最も効果が期待される「超早期」の患者を適切に治療へつなげるためには、より安全で負担の少ない治療法の開発や、Shared Decision Making(共同意思決定)を支援する体制の構築、さらには早期治療の重要性に関する啓発が必要だと指摘している。

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AIスクライブ技術の導入、EHR対応の負担軽減に/JAMA

 臨床医は、電子健康記録(EHR)の記録作成に患者ケア8時間当たり2.3時間を費やし、とくに入力作業が勤務時間外の場合は燃え尽き症候群と関連するとの報告があり、EHRの負担は診療能力や患者の受診機会、医療の質を損なう可能性が指摘されている。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLisa S. Rotenstein氏らは、拡張性の高い代替手段とされる人工知能(AI)を活用した環境型記録補助ツール(AIスクライブ)の導入により、わずかとはいえEHRの操作時間および文書作成時間が短縮し、週当たりの診察件数が増加することを示した。研究の成果はJAMA誌オンライン版2026年4月1日号に掲載された。米国5施設の外来医を導入の有無で比較 研究グループは、AIスクライブの導入と、EHRへの時間の負担および診察件数の変化との関連を評価する目的で、縦断的コホート研究を実施した(Advancing a Healthier Wisconsin Endowmentの助成を受けた)。 2023年6月~2025年8月に、臨床医向けにAIスクライブを導入した米国の5つの学術的医療機関で外来診療に従事する臨床医を対象とした。 AIスクライブの導入とは、AIスクライブへのアクセス権の取得を意味し、導入の可否は5施設のうち4施設で、対象となる医師による事前承認に基づき決定した。 EHRの操作に費やした時間、文書作成に費やした時間、および勤務時間外または勤務日以外にEHRの操作に費やした時間を、予定された患者の診察時間8時間当たりに標準化し、週当たりの受診件数を評価した。勤務時間外のEHR操作時間には変化がない 8,581人の臨床医を対象とした。AIスクライブ導入者は1,809人、非導入者は6,772人だった。参加者の57.1%が女性であった。専門分野の内訳は、プライマリケアが24.4%、内科系が62.4%、外科系が13.2%であった。また、74.1%が指導医(フェローを含む)、18.1%がAPC(Advanced Practice Clinicians)、7.8%が研修医だった。 差分の差分法による解析の結果、予定された患者の診察時間8時間当たりに標準化すると、AIスクライブ導入により、EHRの操作時間が13.4分(95%信頼区間[CI]:9.1~17.7)短縮し、文書作成時間は16.0分(95%CI:13.7~18.3)短縮しており、週当たりの受診件数は0.49(95%CI:0.17~0.81)増加した。 一方、勤務時間外のEHR操作時間は3.1分(95%CI:-0.50~6.80)短縮したが、この変化は有意ではなかった。また、AIスクライブ導入による変化が最も顕著だったのは、プライマリケア医、上級医、女性臨床医のほか、診察の50%以上でAIスクライブを利用した医師であった。 さらに、AIスクライブの導入は、医師1人当たり月に167.37ドル(95%CI:86.52~248.21)の収益の増加をもたらした。節約時間を他の患者ケア活動に振り向けた可能性 著者は、「診療時間の半分以上をAIスクライブの使用に費やした医師は格段に大きな利益を得たものの、これほど頻繁に利用した導入者は約32%にとどまっており、導入者に対する充実した研修と支援の必要性が明らかとなった」「今後は、本試験の結果の持続性と再現性の評価とともに、この技術の利点を高めることができる具体的な診療の手順と支援策について検討すべきと考えられる」としている。 また、「注目すべきは、AIスクライブの導入による文書作成時間の短縮が、EHRの総所要時間の短縮を上回ったこと、および最終的に勤務時間外の業務に有意な変化をもたらさなかった点である。これは、医師が、節約できた時間を他の患者ケア活動に振り向けた可能性を示唆する。AIスクライブはEHRに費やす時間を大幅には削減しない可能性があるが、この技術が燃え尽き症候群の軽減に有効とのエビデンスを考慮すると、医師は文書作成から解放された時間の再配分を価値あるものと捉え、これが医師の満足度の向上に寄与している可能性がある」と指摘している。

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帯状疱疹、50歳未満でも罹患リスクが高くなる6つの併存疾患

 50歳以上および免疫不全を有する成人では、帯状疱疹の罹患リスクが高いが、18~49歳の併存疾患を有する患者における帯状疱疹罹患リスクについてのエビデンスは不足している。グラクソ・スミスクラインのRachel A. Cohen氏らによる米国の医療保険請求データを用いた大規模後ろ向き研究の結果、特定の併存疾患を有する若年成人(30歳以上)では、50~59歳の併存疾患および免疫不全のない成人と比較して帯状疱疹の罹患リスクが高いことが示された。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2026年3月27日号掲載の報告。 本後ろ向きコホート研究では、2015~22年の米国におけるMerative MarketScan CommercialおよびMedicare Supplementalのデータが用いられた。併存疾患(喘息、慢性腎臓病[CKD]、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、うつ病、糖尿病、ストレス、および外傷)を有する免疫不全のない若年成人(18~49歳)における帯状疱疹罹患率(IR)を、併存疾患および免疫不全のない成人(50~59歳)と比較した。 併存疾患および免疫不全のない50~59歳と比較した調整罹患率比(aIRR)について、非劣性マージン(95%信頼区間[CI]の下限:0.62)があらかじめ設定された。aIRRは、同等(aIRRの95%CIの下限>0.62かつ≦1.0)、有意に高い(同>1.0)、または結論不能(それ以外の結果)に分類した。帯状疱疹罹患の定義は、診断コードに加え、±7日以内の経口抗ウイルス薬の処方とした。感度分析として、併存疾患の数(1、2、または3以上)別に帯状疱疹の罹患率を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象集団は、帯状疱疹罹患歴または帯状疱疹ワクチンの接種歴がなく18歳以上の2,067万3,677人。免疫不全症および自己免疫疾患を有する成人を除外後、併存疾患を有する成人は316万45人であった。・全体として、併存疾患を有する成人において3万1,995件の帯状疱疹発症が報告された。・帯状疱疹罹患率は、気管支喘息(aIRR:1.19[95%CI:1.10~1.29])、COPD(1.31[1.22~1.40])、うつ病(1.31[1.22~1.40])、糖尿病(1.18[1.06~1.32])、ストレス(1.28[1.11~1.47])、および外傷(1.25[1.17~1.34])を有する集団では30~39歳において、またCKD(1.50[1.28~1.77])を有する集団では50~59歳において、50~59歳の併存疾患および免疫不全のない成人と比較して有意に高かった(aIRRの95%CIの下限>1.0)。・感度分析の結果、帯状疱疹罹患率は併存疾患数の増加および年齢の上昇に伴って増加する傾向がみられた。

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