サイト内検索|page:71

検索結果 合計:1581件 表示位置:1401 - 1420

1401.

「身体のために禁煙しましょう」、さて先生ご自身は?医師の喫煙率2012

分煙化、禁煙エリアの拡大と、社会全体として嫌煙モードが高まる一方の昨今。もちろん院内も例外ではなく、全館禁煙という施設も増加している様子。2011年の「全国たばこ喫煙者率調査」(JT実施)によると、日本全体では21.1%。2010年10月の値上げの影響を受けて大幅に下がった2011年調査と比較すると、減少率は鈍化しているようです。そんな中、患者さんに禁煙を勧める立場にある先生方の喫煙率はどうなのか?ケアネットで2011年9月に実施したアンケートでは8.6%。さて約1年後の今回の結果はいかに?「医師の喫煙率2012」、前回と比較しながらご覧下さい。また、疾患リスクとの関係から少しずつ高まりつつある「喫煙者は医療の負担額を上げるべき」という考え方についても賛否をうかがってみました!結果概要はこちらコメントはこちら設問詳細タバコについてお尋ねします。JTが2012年5月に実施した「全国たばこ喫煙者率調査」によると、現在の全国の喫煙者率は21.1%でした。うち男性は32.7%(前年比-1.0ポイント)、女性は10.4%(同-0.2ポイント)と、男女とも漸減傾向にあります。なお対前年比で見ると、昨年調査時は2010年10月の値上げの影響を受け全体で2.8ポイント下がりましたが、今年度調査では0.6ポイントの減少に留まりました。そこで先生にお尋ねします。Q1. 先生は喫煙されていますか。喫煙している以前喫煙していた喫煙したことがないQ2. 「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。賛成反対どちらともいえないQ3. コメントをお願いします(ご自身の喫煙に関して、禁煙された方はそのきっかけ、院内の喫煙環境、禁煙外来を含め患者・家族からの要望や状況など、タバコに関わることでしたら何でも結構です)アンケート結果Q1. 先生は喫煙されていますか。Q2. 「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。2012年8月17日(金)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員結果概要医師の喫煙率は7.1%、国民全体での変化に比較し高い減少率調査対象者の喫煙率は7.1%、2011年9月に実施した同調査では8.6%であり、1.5ポイントの減少となった。国民全体では2012年21.1%(前年比-0.6ポイント)、2011年21.7%(同-2.8ポイント)と減少率の鈍化が見られる一方(JT実施「全国たばこ喫煙者率調査」より)、医師の喫煙者は着実に減りつつあることが見て取れる。なお「喫煙したことがない」医師は、前回と変わらず56.7%という結果となった。「喫煙者は医療の負担額を上げるべき」 、考え方には約6割が賛成"喫煙は医療費増につながるため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき"という考え方に対する賛否を尋ねたところ、賛成58.1%、反対15.5%となった。賛成医師からは「なぜ非喫煙者が喫煙による疾患の医療費も負担しなければならないのか」「疾患リスクが上昇することは証明されているため、応分の負担を求めるべき」といった意見が多く寄せられた。反対派からは、「飲酒・肥満・塩分過多など他の生活習慣や嗜好品の扱いはどうするのか」「喫煙者確認が困難」などのコメントが寄せられた。禁煙のきっかけ「患者からの視線」「子供のため」「院内の禁煙拡大」など様々以前吸っていたが禁煙に成功した医師は全体の36.2%。きっかけとしては、「自身が禁煙を勧める側にあるため」「COPDの患者を見て」など立場上の理由のほか、「子供ができたこと」「院内が完全禁煙となり、喫煙のたびに外出しては仕事にならない」など環境の変化によるものも多く挙がった。CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「結婚を機に禁煙しました。家族への影響を考えると喫煙を続けるという選択肢はなく、喫煙歴は10年でしたが、あっさり禁煙できました。 今では嫌煙家で海外のように禁煙者をもっと守るような環境に日本も早くなってほしいと切に願っています。」(30代,男性,耳鼻咽喉科)「もともと喫煙していないが、医療費の増大につながっていることは明らかで、喫煙者に応分の負担を求めるべき。」(50代,男性,消化器科)「自動車保険のようにリスク細分化するのも手かと思う。不健康な人の負担を上げるよりも、健康な人にメリットが出る制度が望まれる。」(30代,男性,呼吸器科)「禁煙のきっかけは子供が生まれたことでした。 精神科病院なので病棟の全面禁煙はできておりません。」(40代,男性,精神・神経科)「禁煙に一番影響を与えるのは周囲の環境変化だと思う。実際自分の場合も結婚や子供の誕生がきっかけであった。そういうきっかけを利用すると不思議と難なく禁煙できるのではないか?」(40代,男性,内科)「職員の反対があり、禁煙外来が開設できていません。抵抗勢力が身内に多いです。」(30代,男性,神経内科)「体に何もいいことがないのに、いつまでも販売して続ける国の考えがさっぱりわからない」(30代,男性,外科)「喫煙をするのであればそのリスクとコストをかぶる覚悟が必要な時代なのでしょうね」(30代,男性,産業医)「勤務時間に喫煙している医師を見かけるが1回10分としても6回で1日1時間となり、非喫煙者に比べ労働時間も少なくなっている。喫煙者については保険料、医療費、たばこ税の増額は当然のこと。」(40代,男性,血液内科)「喫煙は嗜好の問題なので、他人に迷惑をかけない限りは許容されるべきと考えます。医療費増につながっているのは喫煙の他にも過食やアルコール多飲などもあるわけですから、喫煙者のみ負担額を上げるというのはおかしな話です。わたし自身は運動を始めたため、必然的に禁煙に至りました。喫煙していると運動が苦しかったからです。」(50代,男性,外科)「自分では喫煙歴はありません。あそびで1回ふかしたことがある程度。 個人的には喫煙には非常に冷たい気持ちですが、喫煙したい人が喫煙する場所が全くなってしまっているのはちょっとかわいそうに思うと気もあります。私に迷惑がかからないところで勝手に吸うことまで制限して欲しいとは思いません。」(40代,男性,耳鼻咽喉科)「患者によくないという以上、医者が喫煙していたらまったく信頼が得られない。」(40代,男性,外科)「喫煙が健康に悪いことはわかっていても医師が喫煙しているケースは多い。現在病院敷地内は禁煙だが、入り口の外に出て並んで吸っている人を多数見かけ、非常に印象が悪いと常々思っている。」(40代,男性,基礎医学系)「喫煙は百害あって一利無しなのは一目瞭然のため、とにかく全国民を強制的に禁煙させるように強く働きかけるべきである」(30代,男性,循環器科)「たばこ1箱1,000円に」(40代,男性,小児科)「自分だけへの影響であれば自己責任だが、間接喫煙として周囲へ悪影響を及ぼすため、売られていること自体間違い。」(30代,男性,総合診療科)「マナーの悪い喫煙者はどこにでもいます。喫煙は百害あって一利なし、健康にも、環境にも、有害です。喫煙自体を法律で禁じてもらいたいくらいです。」(30代,女性,形成外科)「禁煙した人にメリットがあるよう示してあげることも大切である。」(50代,男性,循環器科)「本人以外にも多大な影響を与える以上、一定の制限は止むを得ないと思います。本人の喫煙する権利とのバランス考量は必要と思いますが、原則として新規に習慣喫煙者が登場しない方向へ政策的に誘導すべきだと考えます。」(40代,男性,呼吸器科)「自分自身は喫煙しないから喫煙者がどう扱われても影響ないが,何でも厳しくしようという風潮はいずれ自分の身にも及ぶと予想されるので,一種の防波堤として喫煙者にそう厳しく当たるな,と思っている,」(50代,男性,皮膚科)「婚約時期に禁煙し、その後1度も喫煙したことがない。健康のためだけの禁煙は難しいのでは。家族などの大切なひとのための禁煙であれば、うまくいく可能性が高いと思う。」(50代,男性,泌尿器科)「全面禁煙に賛成です、ある意味、周りの人に迷惑がかかると考えると麻薬より悪いかも」(40代,男性,循環器科)「中途半端な値上げではなく、海外並に価格をあげるべき」(40代,男性,小児科)「今は禁煙の場所が増えたので、自分の家以外で吸おうと思うと、院外や学外へ行かなければならず、そうなると仕事にならないので、医者の喫煙者も本当に少なくなったと思います。」(30代,女性,神経内科)「30年前医局で禁煙の風が吹き、外来の机から突然灰皿がなくなったことをきっかけにやめました。」(60代,男性,内科)「喫煙者はリスクが高いので当然。また、禁煙治療が保険で行われるのもどうかと思う。タバコを吸わない人がなぜ喫煙者の禁煙にともなう治療費を払わないといけないのか」(50代,男性,呼吸器科)「30年前になりますが、病院の勤めが昼夜問わずで忙しすぎて、このままでは、恐らく健康を害してしまうと判断し、禁煙をしました。以後は全く吸っていません。喫煙する人の気持ちもわかりますし、喫煙したことのない人の気持ちもわかります。ただ、今の風潮ではやはり喫煙環境が悪くなるのは致し方ないことかと思います。」(60代,男性,小児科)「COPDの患者さんから「先生、俺みたいになりたくないなら、タバコはやめたほうがいいよ」と言われたのがきっかけで、ニコチンパッチやガムを使ってやめました。」(40代,男性,麻酔科)「受動喫煙による疾病リスクの増加の問題も有り,この厳しい財政状況の中では,喫煙者に多くの財政負担を求めるのは必然の流れ.」(40代,男性,内科)「喫煙は明らかに癌やCOPD、心血管疾患のリスク上げることが証明されているので、自己負担を上げ、責任を取らせるべき。非喫煙者が喫煙者の負担を強いられるのは問題。」(30代,男性,循環器科)「高校生の頃タバコ吸ってましたが、医学部に入って辞めました。あのころは運動していたんで、禁煙で成績が良くなったのが励みでした。禁煙は減塩と同じで個々人への働きかけとともに社会への働きかけも必要です。製薬メーカーももっと禁煙に力を入れてほしいです。MRさんでタバコを吸っているのは論外でしょう。 タバコはひと箱2000円でもいいと思います。」(40代,男性,代謝・内分泌科)「『タバコは嗜好品ではなく薬物』 『喫煙者は病気であり治療が必要』 『その害を国が率先してお墨付きを与え国民にまき散らしている』 という啓発が必要」(30代,男性,神経内科)「喫煙する人が疾患にかかりやすいのだから、受益者負担で高くすべきだと思う。父は吸っているから肺気腫のような症状が出ているが、自業自得であるし、医療費が高くても仕方がないと感じる。私自身はそれを見ているので吸いたくもないし周囲ですっているのも嫌である。」(40代,男性,神経内科)「喫煙者かどうか正しく申告するはずがないので、タバコの販売価格に上乗せする形で徴収し医療費へ回すべきだと思いますね。」(50代,男性,耳鼻咽喉科)「医療に従事する者として禁煙は早くしたかった。が、なかなかできなかった。子供ができたことで一念発起し、自分のためでなく、子供のために、とやめた。 現在院内では看護師と事務職の喫煙率が高い。喫煙後うがいなどをしているようだが、時々においが残り、そのまま患者さんのところに行くので、患者さんがどう思っているのか、気になる。」(40代,男性,産業医)「個人の嗜好なので、条例・法律規制しないかぎり個人の自由。副流煙・受動喫煙に対する配慮は必要。」(40代,男性,整形外科)「税金をたくさん払っているのだから、そこは考慮してほしい。やはり分煙。 喫煙者を悪者にするなら販売自体をやめてほしい」(40代,男性,泌尿器科)「禁煙外来の充実が望ましいが、労力の割には点数が少ないように感じられ、余裕のある医療施設でないと普及が難しいと思います。」(40代,男性,内科)「10数年間1日20本吸っていましたが30歳代後半に不整脈を自覚したのをきっかけに禁煙しました。当時は禁煙補助薬もなく、禁煙の最初の1-2週間がとてもつらかったのを今でも覚えています。」(50代,男性,内科)「禁煙外来をしたいが,保険で診療ではCO測定を必須としているが測定器は10万円以上もするため断念している。また,喫煙を止めた者の割合等を、社会保険事務局長に報告しなければならないなど敷居を高くしすぎている。当局は医師を全く信用していない。」(50代,男性,循環器科)「生活保護を受けている人が、明らかにタバコが原因になっているCOPDの治療を受けつつもタバコを吸い続けているのをみると、今の医療制度はおかしいんじゃないかと思う。」(30代,女性,外科)「保険料の設定において、各個人のリスクを勘案するのは現実的でない。 それよりもタバコが健康にすごい害をもたらす、タバコから市民権を奪うような風潮になってほしい。そのためにはマスコミの力が必要であるが、マスコミは大スポンサーであるJTに遠慮してタバコの真実の姿を視聴者に伝えられないところに大きな問題がある。」(30代,男性,呼吸器科)「受益者負担を考えると喫煙は医療費を押し上げているのだから押し上げている分は喫煙者に負担してもらうのが合理的。」(40代,男性,腎臓内科)「入院患者が職員の自転車置き場などでたむろしてたばこを吸っているのは何とかならないのかなぁと思います。小児の患者に付き添っている患者の母親が、患児を連れて他の人たちといっしょに吸っているのを見ると、受動喫煙の知識とかもないのかと唖然とします。」(40代,男性,その他)「まず、歩きタバコは傷害罪にしたほうがいい。」(40代,男性,精神・神経科)「健診学会、ドック学会のデータを見ても、喫煙の害は明らかです。健康を害して国民総生産を押し下げているものと思います。国の対応も甘くもっと積極的に禁煙キャンペーンをはるべきと思います。」(50代,男性,その他)「喫煙していたのは若いころだけで、特に抵抗なく禁煙しました。院内は室内禁煙で、喫煙所が1か所のみあります。医療費(保険診療)はリスクのある人にも平等に負担される仕組みが日本での前提ですから、これを崩せばいくらでもリスクを考えた負担(あるいは加入拒否)がまかり通るように思います。保険者に加入者の健康維持を働きかけさせるという観点からは、喫煙者が加入したら保険者に補助をして、そのかわり禁煙にどれだけ導いたかを評価してもよいかもしれません。」(50代,男性,小児科)「保険料や医療費をどのくらいにするのかを決めるのが大変でしょうし、現場も大変でしょう。「私は喫煙者です」という自己申告制ですね。 それよりもタバコの値段を上げる。 喫煙のきっかけは何だったのでしょうか。好奇心・大人ぶりたいなどではないでしょうか?」(70代以上,男性,産婦人科)「喫煙したことで医療費の増加に影響しているかもしれないが、1日1本の人と1日0本の人では程度が変わってくると思います。喫煙量に関係なくでは不満が出るでしょうし、その際にその人個人の喫煙量がどのくらいかを証明することができないでしょうし、難しいと思います。喫煙した結果の医療費を上げるよりも、喫煙する際のたばこ税を相当額上げることの方がいいと思います。」(30代,男性,救急医療科)「医師になった時に禁煙しました 喫煙が法律で禁止されているわけではないので、負担増については少し疑問です 喫煙だけでなく飲酒も問題ですし」(50代,男性,内科)「タバコや副流炎の害悪をアピールすることや分煙,禁煙の徹底が大切なのであって,喫煙者の医療費を上げることは当然,患者が嘘をつくことにつながるため反対である.金銭的に負のインセンティブをつけるならたばこ税を調整・増額すればよい.」(40代,男性,神経内科)「喫煙は中毒(依存症)です。誰かが適切に指導すれば禁煙もその継続も可能です。個人的には、あの臭いはもう受け付けないです。」(40代,男性,内科)「喫煙者のマナーの悪さ(道端でたばこを吸って吸殻はそのままポイ・・・など)は耐え難いものがある。たばこ税はもっともっと上げるべきだし喫煙者の医療費負担を上げてもいいぐらいだと思う。」(40代,男性,小児科)「自分は健康にかなり気を遣っているが、喫煙者と同じ保険料、医療費を払うのは解せない。喫煙者の負担を増やすべきである。たばこ関連税は全て医療保険に回すべきである。 目の前で吸わなくても、外で吸ってから部屋に入られると、それだけで部屋の中がタバコ臭くなり、迷惑である。」(40代,男性,放射線科)「禁煙してみると生活があまりに快適になるので、他人にも勧めたくなります。」(60代,男性,神経内科)「明らかな発ガン物質を"堂々と""合法的に""PRまでして"売っているなんて信じられない。」(50代,男性,産業医)「喫煙する医師は患者からどう見られているか考えた事が無いのだろうか?また人に迷惑をかけてはいないという言い訳は成立しない。」(40代,男性,代謝・内分泌科)「85歳です。40年ほど前完全禁煙しました。 小児科は忙しく余り吸う暇がありませんでしたが、当時タバコを吸うことは男のステイタスであったような気がします。まだ煙草の害が余り説かれていなかったころでしたが、医師の中にたばこの害を説く熱心な方がいて禁煙を勧めていました。その方の影響を受けました。それから強引に、喫煙する方の子供は診察しません。と張り紙をして禁煙運動をしてきました。3,40年も前ことです。少しは効き目があったようです。」(70代以上,男性,小児科)「全ての疾患をタバコにつなげる風潮がある。実際診療していてタバコはそれほどrisk factorになっているのか疑問をもつことが少なくない。今のところ健康寿命も世界一だがこの世代の人々は喫煙率は非常に高かった。日本の医療レベルが制度・技術ともに抜きんでていたから、と言えばそれまでだが果たしてそれが全てなのだろうか?」(40代,男性,外科)「咳が止まらないと受診した患者さんが喫煙を続けていることがよくあります。咳止め薬を希望されますが無駄だと思います。」(40代,男性,循環器科)

1402.

〔CLEAR! ジャーナル四天王(8)〕 結果は正しいが・・・

無作為化試験のメタ解析で得られたエビデンスのレベルは最も高いとされるが、どの試験を解析対象とするかといった点に解析者の作為が入る余地があることからより注意深い批判的吟味(Critical Appraisal)が必要である。しかしCTT Collaborationは公平、中立な解析を行うグループであり、その点では安心してよい(高血圧領域ではBPLTTCが有名)。 CTT Collaborationは、2010年にもメタ解析を行っており(Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration, et al. Lancet. 2010; 376: 1670-1681.)、スタチンでLDL-Cを1mmol/L低下させることによりMVEが22%減少し、その減少効果は、冠動脈疾患の既往、糖尿病、高血圧治療、年齢、性別、肥満、喫煙習慣、CKDといった患者背景の影響を受けないこと、また試験開始時のLDL-C値にも影響されないことを明確に示している。したがって今回のメタ解析の結果は予想された結果である。 MVEを減少させるベネフィットが有害性を上回る治療はすべて行うべきであろうか?スタチンの1日の単価を100円とする。5年間1,000人に使用すると100×365×5×1,000=1億8,250万円かかり、これでMVEの5年発症リスクが10%未満の低リスク群では11人の血管イベントを予防するのだから約1,660万円で1人の血管イベントを減らすことになる。高リスク群と低リスク群の相対リスク減少効果がほぼ同じということは、絶対リスク減少効果は高リスク群の方が大きいことになり高リスク群で1人の血管イベントを減らすために必要な費用は少なくて済む。無尽蔵に医療費を使ってよいのならこういった医療経済評価は不要かもしれないが、限られた費用で最大幸福を得るためにはスタチン服用の優先順位を決める必要があろう。実は、改訂された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」はこういった絶対リスクを考慮する姿勢を強く打ち出している。

1403.

糖尿病発症時に正常体重の人、過体重・肥満の人に比べ死亡リスクが約2倍

 2型糖尿病発症時の体重が正常範囲(BMI 25未満)の人は、過体重や肥満の人に比べ、長期死亡リスクは約2倍に増大することが示された。米国・ノースウェスタン大学のMercedes R. Carnethon氏らが、5つのコホート試験を基に分析を行い明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月8日号で発表した。2型糖尿病発症時に正常体重の人は、いわゆる「隠れ肥満(metabolically obese normal-weight)」の代表と考えられている。しかしこれまで2型糖尿病発症時の体重と死亡との関連に関して、心不全や慢性腎臓病、高血圧などの慢性疾患でみられた「肥満パラドックス(obesity paradox:BMIが大きいほうが予後が良好)」が認められるかどうか、明らかでなかった。糖尿病発症の2,625人について、延べ2万7,125人・年追跡研究グループは、「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)study」(1990~2006)、「Cardiovascular Health Study(CHS)」(1992~2008)、「Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)」(1987~2011)、「Framingham Offspring Study(FOS)」(1979~2007)、「Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)」(2002~2011)の5つのコホート試験についてプール解析を行い、糖尿病患者の死亡と体重の関連を調べた。被験者のうち、40歳超で2型糖尿病を発症したのは2,625人で、追跡期間は延べ2万7,125人・年だった。被験者を、BMIが18.5~24.99を正常体重、BMIが25以上を過体重・肥満にそれぞれ分類し検討。主要アウトカムは、全死亡、心血管死、非心血管死だった。全死亡リスク2.08倍、心血管死1.52倍、非心血管死2.32倍2型糖尿病発症時に正常体重だった人の割合は、9%(ARIC)から21%(CHS)にわたった(全体では12%)。追跡期間中に死亡したのは449人で、そのうち原因が明らかだった人の中で心血管死は178人、非心血管死は253人だった。全死亡、心血管死、非心血管死の発症率は、いずれも、正常体重群が過体重・肥満群より高率だった。正常体重群の全死亡率は1万人・年当たり284.8、心血管死亡率は同99.8、非心血管死亡率は198.1だったのに対し、過体重・肥満群はそれぞれ、152.1、67.8、87.9だった。人口統計的特性や血圧、脂質値、喫煙などについて補正を行った後、過体重・肥満群に対する正常体重群の死亡に関するハザード比は、全死亡が2.08(95%信頼区間:1.52~2.85)、心血管死が1.52(同:0.89~2.58)、非心血管死が2.32(同:1.55~3.48)だった。著者は、今回の分析では、なぜ2型糖尿病発症時に正常体重の人の死亡率が高いのかは解明できなかったとしたうえで、先行研究で報告されている、2型糖尿病患者で正常体重の人と過体重・肥満の人との遺伝子プロファイルの違いに言及した。仮に、2型糖尿病患者で正常体重の遺伝子プロファイルが、糖尿病以外の疾患リスク増大を促すとすれば、そうした人の死亡率は遺伝的に高くなるのかもしれない、と考察している。そのため今後の研究では、そうした遺伝的素因による死亡率増大の可能性についても追究すべきだとした。そのうえで今回の結果は、米国民のうち、正常体重で2型糖尿病になりやすい、高齢者や非白人(アジア人、黒人など)といった人々にとって、重要な知見であるとまとめている。

1404.

メチルフェニデート使用で“喫煙”が加速

 注意欠陥多動性障害(ADHD)患者は一般人と比較して喫煙率が高く、低年齢から喫煙を開始しており、禁煙が困難な場合が多い。そして、メチルフェニデートを使用することで喫煙の増加が短期的にみられることも、実験データから明らかになっている。しかし、長期的な影響に関してはまだわかっていない。Bron氏らは、メチルフェニデートにナイーブなADHD患者に対するメチルフェニデートの使用が、喫煙に与える短・長期的な影響、およびニコチンへの欲求に与える影響に関して調査を行った。Eur Neuropsychopharmacol誌オンライン版2012年7月17日号の報告。 対象はメチルフェニデートにナイーブなADHD患者325例。対象患者はベースライン時、メチルフェニデートによる治療開始後2週間目、3ヵ月目に喫煙に関する質問票(SQ)を記入した。SQの質問項目には、人口統計学的な属性データ、たばこの消費、ニコチンへの欲求、生活でのイベント、精神科診断、薬の使用が含まれていた。主な結果は以下のとおり。・ADHD患者におけるベースライン時の喫煙率は一般人の2倍であった(50.2% vs 25.6%、p

1405.

運動不足の解消で寿命が0.68年延長

冠動脈心疾患や糖尿病、がんなどの主な非伝染性疾患の6~10%が運動不足に起因し、運動不足が解消されれば寿命が0.68年(約8ヵ月)延長することが、米国ハーバード大学医学校ブリガム・アンド・ウェイメンズ病院のI-Min Lee氏らLancet Physical Activity Series Working Groupの調査で明らかとなった。運動不足は、冠動脈心疾患、2型糖尿病、乳がん、結腸がんなどの非伝染性疾患のリスクを増大させ、余命を短縮することを示す高度なエビデンスが存在する。多くの国では国民の運動不足が指摘されているため、運動不足と非伝染性疾患の関連は保健医療上の重要な課題となっている。Lancet誌2012年7月21日号(オンライン版2012年7月18日号)掲載の報告。運動不足の影響を定量的に評価研究グループは、運動不足の集団が運動を行った場合に、どの程度疾患が回避され、余命の延長が得られるかを予測することで、主な非伝染性疾患に及ぼす運動不足の影響を定量的に評価した。疾病負担の解析では、運動不足が解消した場合の疾患回避率を予測するために、個々の非伝染性疾患に関する標準的な条件を用いて運動不足と関連する人口寄与割合(PAF)を国ごとに算出した。生命表分析を行って余命の延長を推算した。健康リスクは喫煙や肥満と同等冠動脈心疾患の疾病負担の6%(最低値は東南アジア地域の3.2%、最高値は地中海東部地域の7.8%)が運動不足に起因すると推定された。運動不足の2型糖尿病への寄与は7%(範囲:3.9~9.6%)、乳がんへの寄与は10%(5.6~14.1%)、結腸がんへの寄与は10%(5.7~13.8%)と推察された。2008年に世界で発生した若年死の9%(5.1~12.5%)、すなわち5,700万件の若年死のうち530万件が運動不足に起因していた。運動不足が、完全ではないまでも10%解消されれば年間に53万3,000件以上、25%解消された場合は130万件以上の死亡が回避されると推定された。運動不足が完全に解消されれば、世界の余命は中央値で0.68年(0.41~0.95年)延長すると予測された(ちなみに、日本は0.91年の延長)。著者は、「世界的に、運動不足の健康への影響は大きい。不健康な行動の低減や除去により、健康は実質的に改善される可能性がある」と結論づけ、「運動不足の健康リスクは、確立されたリスク因子である喫煙や肥満と同等なことがわかった。1日15~30分の早歩きなどの適度な運動が健康効果をもたらすことが知られており、運動不足の低減に向けたあらゆる尽力を支援すべきである」と指摘している。

1406.

日本語版COPDアセスメントテスト(CAT)は普及するか?

「日本語版COPDアセスメントテスト(CAT)は、高い信頼性と妥当性を有する、短く簡単な質問表として、COPD患者の健康状態を的確に評価するうえで役立つ可能性がある」と霧ヶ丘つだ病院の津田氏らが報告した。CATはCOPD患者の健康状態を評価したり、心理特性を確認するために用いられる質問票であり、近年、海外で普及が進んでいる。Respiratory investigation誌2012年6月号(オンライン版2012年6月19日号)掲載の報告。言語的検証を加えながら翻訳された日本語版のCATが、信頼性や妥当性を有するかを評価するため、40歳以上で喫煙歴を有する日本人のCOPD患者301例を対象にインターネットによる調査が行われた。 主な結果は以下の通り。 ・日本語版のCATは高い内部一貫性を示した(クロンバックのα信頼性係数:0.891)・COPDにおける疾患特異的な健康関連QOLの評価指標であるSGRQ(the COPD-specific St. George’s Respiratory Questionnaire)と高い相関関係がみられた(相関係数:0.820)。・日本で広く用いられている健康関連QOLの質問票であるSF-12v2との相関関係も認められた。 (ケアネット 鎌滝 真次)〔関連情報〕  呼吸器疾患治療を考える第2回(医師限定)

1407.

統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当?

近年、統合失調症患者では骨粗鬆症の罹患率が高いことが明らかになってきているが、著しい骨密度(BMD)の減少にいたる機序や臨床的意味はまだわかっていない。慶応義塾大学の岸本氏(Zucker Hillside Hospital留学中)らは統合失調症患者における骨粗鬆症と骨折リスク、さらに抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症の骨代謝への影響について、最近の知見をもとにレビューを行った。Curr Opin Psychiatry誌オンライン版2012年6月30日付の報告。主な結果は以下のとおり。 ・16報告中15件(15/16:93.8%)において、統合失調症患者は対照群と比較して、低BMDまたは骨粗鬆症の高い罹患率のうち、少なくともいずれかと相関していた。ただし、全体の一貫性はなかった。・高い骨折リスクは、統合失調症と関係し(2/2)、抗精神病薬投与とも関係していた(3/4)。・これらの要因として、運動不足、栄養不足、喫煙、アルコール摂取、ビタミンD不足が示唆された。・抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症とBMD低下との関係を調べた報告(9/15:60.0%)では、高プロラクチン血症の影響が少なからず認められた。・本結果は、サンプルが少なく効果の小さなものが含まれており、またプロスペクティブ研究は2報だけであった。・高プロラクチン血症や不健康な生活による影響はまだ明らかになっていないが、統合失調症患者ではBMD低下や骨折リスクとの関係が示唆されることから、予防や早期発見、早期介入が必要であると考えられる。(ケアネット 鷹野 敦夫)関連医療ニュース ・肥満や糖尿病だけじゃない!脂質異常症になりやすい統合失調症患者 ・せん妄対策に「光療法」が有効! ・厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ

1408.

新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。新規予測モデルの予測能を後ろ向き統合解析で検証研究グループは、有病率の低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の評価に有用な予測モデルを開発するために、個々の患者データのレトロスペクティブな統合解析を行った。ヨーロッパおよび米国の18施設から、冠動脈疾患の既往歴のない安定胸痛患者が登録された。CTあるいはカテーテルベースの冠動脈造影所見に基づき、低有病率または高有病率の集団に分類した。主要評価項目は閉塞性冠動脈疾患(カテーテル冠動脈造影で1つ以上の血管に≧50%の狭窄)とした。予測モデルは、基本モデル(年齢、性別、症状、有病率の高低)、臨床モデル(基本モデルの因子、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙)および拡張モデル(臨床モデルの因子、CT冠動脈造影によるカルシウムスコア)で構成された。低有病率の集団のデータセットを用いて、交差検証法(cross validation)による解析を行い、識別能(C統計量)、キャリブレーション、純再分類改善度(net reclassification improvement; NRI)ついて評価した。冠動脈カルシウムスコアを加えると予測能がさらに改善解析の対象となった5,677例(男性3,283例[平均年齢58歳]、女性2,394例[同:60歳])のうち、5,190例(91%)でCT冠動脈造影が施行され、1,634例(31%)が閉塞性冠動脈疾患と診断された。このうち1,083例(66%)にカテーテル冠動脈造影が施行され、886例(82%)に閉塞性冠動脈疾患が確認された。CT冠動脈造影で閉塞性冠動脈疾患がみられなかった3,556例のうち、526例にカテーテル冠動脈造影が施行され、閉塞性冠動脈疾患が否定されたのは498例(95%)だった。全体として、カテーテル冠動脈血管造影が施行されたのは2,062例(36%)で、そのうち閉塞性冠動脈疾患と診断されたのは1,176例(57%)であった。単変量および多変量解析では、すべての予測因子が疾患の発現と有意に関連した。臨床モデルの予測能は、基本モデルに比べ優れていた(交差検証されたc統計量が0.77から0.79に改善、NRI:35%)。拡張モデルの冠動脈カルシウムスコアは主要な予測因子であった(同:0.79から0.88に改善、102%)。著者は、「年齢、性別、症状、心血管リスクなどから成る新たな予測モデルにより、有病率が低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の正確な予測が可能となった。この予測モデルに冠動脈カルシウムスコアを加えると、予測能がさらに改善された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

1409.

新たな脂質マーカーによる心血管疾患リスクの予測能改善はわずか

心血管疾患発症の予測因子として、総コレステロール、HDLコレステロール、年齢や性別、喫煙の有無など従来リスク因子に、アポリポ蛋白B/A-Iといった脂質マーカーの情報を加味しても、同発症リスクの予測能はごくわずかな改善であったことが示された。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らが、約17万人を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月20日号で発表した。初回心血管疾患イベント発生予測に、様々な脂質マーカーの測定がどれほど役立つかという点については議論が分かれていた。中央値10年追跡、その間の心血管疾患イベントは約1万5,000件研究グループは、1968~2007年に行われた37の前向きコホート試験のデータを用い、試験開始時点で心血管疾患のない16万5,544人について、従来のリスク因子に脂質マーカーを加えることによる、心血管疾患リスク予測の改善について分析した。追跡期間の中央値は10.4年(四分位範囲:7.6~14)、その間に発生した心血管疾患イベントは1万5,126件(冠動脈性心疾患1万132件、脳卒中4,994件)だった。主要アウトカムは、心血管疾患イベント発生の判定と、10年発生リスクについて低リスク群(10%未満)、中間リスク群(10~20%)、高リスク群(20%以上)の3群への再分類改善率だった。新たな脂質マーカー追加、ネット再分類改善率は1%未満結果、新たな各脂質マーカーの追加による判別モデルの改善はわずかで、アポリポ蛋白B/A-Iの追加によるC統計量の変化は0.0006(95%信頼区間:0.0002~0.0009)、リポ蛋白(a)は0.0016(同:0.0009~0.0023)、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2は0.0018(同:0.0010~0.0026)だった。新たな各脂質マーカーの追加による、心血管疾患発生リスクのネット再分類改善率についても、いずれも1%未満に留まった。従来リスク因子のみで分類した結果、40歳以上成人10万につき1万5,436人が、10%未満および10~20%のリスク階層群に分類されると推定された。そのうち、米国高脂血症治療ガイドライン(Adult Treatment Panel III)に基づきスタチン治療が推奨される人を除外して残った1万3,622人について、アポリポ蛋白B/A-Iの検査値を加えた場合に20%以上の高リスク群へと再分類された割合は1.1%だった。リポ蛋白(a)を加えた場合は4.1%、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2を加えた場合は2.7%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

1410.

安定COPD患者における運動中の交感神経活性に対するチオトロピウムの効果

チオトロピウムはオキシトロピウムに比べ、運動時の交感神経活性を抑制することが国立病院機構 刀根山病院の好村氏らによって報告された。好村氏らは「交感神経活性の抑制効果は呼吸機能、運動耐容能の改善や労作時の息切れを減少させる要因となると考えられ、呼吸数や心拍数の減少、動脈のアシドーシスの進展抑制とも関連していることが示唆された」と結論している。これまでチオトロピウムがCOPD患者の労作時の息切れを改善することや、うっ血性心不全のリスクを低下させることが知られていたが、運動時の交感神経活性に対する効果については知られていなかった。Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 誌2012年5月22日(オンライン版2012年5月2日)掲載の報告。本試験の対象は10pack-years以上の喫煙歴※をもつ40歳以上のCOPD患者17例(女性3例、男性14例)。ベースライン時の数値はFVC(努力肺活量)

1411.

統合失調症の高感度スクリーニング検査 「眼球運動検査」

統合失調症は早期診断、早期治療を行うことで予後改善が期待できる。Benson氏らは統合失調症の高感度スクリーニング検査として眼球運動を測定することが有用であることを報告した。Biol Psychiatry 2012年5月22日オンライン版に掲載の報告。統合失調症患者88例とコントロール群88例の眼球運動の範囲を記録し、9ヵ月の再試験症例とコントロール群の34例、および新規統合失調症患者36例とコントロール群52例から得られた眼球運動データにより試験の予測的妥当性を評価した。眼球運動は円滑追跡などを測定し、単変量分析と多変量分析にて解析を行った。主な結果は以下のとおり。 ・統合失調症患者ではほとんどすべての眼球運動試験でコントロール群と異なった。中でも、free viewingの固定分散は最も独立した因子であった。・性別、薬物、喫煙の有無とは独立していた。・統合失調症患者とコントロール群は完全に識別された。再試験症例とコントロール群における予測的妥当性は87.8%であった。・全298データにおける識別率は98.3%とほぼ完全に近い精度で識別可能であった。(ケアネット 鷹野 敦夫)

1412.

労働安全衛生法改正法案は本当にメンタルヘルス対策の充実・強化になるのか

井上法律事務所 弁護士井上 清成 2012年6月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 1. メンタルヘルス対策の充実・強化 労働安全衛生法の一部を改正する法律案が政府より提出され、国会で審議中である。今は、受動喫煙対策の充実・強化の一環として打ち出された「職場の全面禁煙、空間分煙」の事業者への義務付けが議論の中心となっているらしい。しかし、その法律案の真の問題点は、むしろ「メンタルヘルス対策の充実・強化」というもう一つの柱の方にあるように思う。メンタルヘルス対策の充実・強化については、「労働者の安全と健康の一層の確保を図るため、労働者の精神的健康の保持増進のための措置を充実する」必要があることが、その法律案の提出理由とされている。確かに、自殺者が毎年3万人を超えている現状においては、メンタルヘルス対策の充実・強化は喫緊の課題であろう。しかし、法律案を読む限り、本当にメンタルヘルス対策の充実・強化になっているのか、疑問が拭えない。2. 精神的健康の状況を把握するための検査法律案は、現行の労働安全衛生法で第66条から第66条の9までの10ヶ条に「健康診断」として規定されている条文の後ろに、「精神的健康の状況を把握するための検査等」という1ヶ条を、第66条の10として追加するものである。現行法に1ヶ条追加するのであるから、その程度はともかく、少なくとも充実・強化にはなるように、一見すると思えよう。新設の第66条の10の概要は、次のようなものである。「○医師又は保健師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査を行うことを事業者に義務付ける。○労働者は、事業者が行う当該検査を受けなければならないこととする。○検査の結果は、検査を行った医師又は保健師から、労働者に対し通知されるようにする。医師又は保健師は、労働者の同意を得ないで検査の結果を事業者に提供してはならないこととする。○検査の結果を通知された労働者が面接指導の申出をしたときは、医師による面接指導を実施することを事業者に義務付ける。○面接指導の申出をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないこととする。○事業者は、面接指導の結果、医師の意見を聴き、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な就業上の措置を講じなければならないこととする。」3. 健康診断からメンタルヘルス検査に縮減現行の労働安全衛生法は、その第66条第1項において、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」と規定していた。この「健康診断」には、問診その他の方法により心身の状況を把握することも含まれていると思われる。つまり、法的には、「精神的健康の状況を把握する」ことも包含されていたと言えよう。しかし、法律案は、メンタルヘルス検査などとして第66条の10を単に追加したのではない。併せて、第66条第1項にも修正を加えようとしている。「医師による健康診断」から「精神的健康の状況に係るものを除く。」とした。つまり、現行の労働安全衛生法上の「健康診断」から「精神的健康の状況を把握する」ことを除外し、「健康診断」の内容を縮減してしまおうとしているように思う。いわば「健康診断」から単なる「検査」への縮減である。そうだとすれば到底、メンタルヘルス対策の「充実・強化」とは評しえない。現に、日本産業衛生学会の産業医部会幹事会による2012年1月13日付け「“労働安全衛生法の一部を改正する法律案”のうち、『メンタルヘルス対策の充実・強化』の部分が、労働者のためにならないことが明らかなために、廃案または一旦保留として大幅な修正を求めます」との要望(ただし、現在は、改訂により廃止されたらしい。)では、「医師による健康診断で心の健康面は診ないことを求め」「心身の健康を分離して健康診断を行うことを強いる施策」として批判されていた。4. 医師の意見から労働者の自己申告に縮減健康診断からメンタルヘルス検査への縮減と共に、医師の意見から労働者の自己申告への縮減という問題点もある。それは、現行の健康診断が「医師による」となっていたのを、メンタルヘルス検査を「医師又は保健師による」としたことに伴う。典型的には、今までは事業所の産業医が健康診断の結果を知っていたので、事業者に意見を申し述べることができた。ところが、今後は産業医自らが担当するとは限らないので、メンタルヘルス検査の結果を事業所の産業医が知りえるとは限らない。検査の結果を通知された労働者が自発的に医師による面接指導を受けることを「希望する旨を申し出」ない限り、事業所の産業医は精神的健康の状況を知りえないかもしれないのである。いわば医師の主導的な意見による改善から、今後は労働者の自発的な自己申告による改善へと、システムが一気に変更してしまいかねない。少なくとも、医師の指導中心から労働者の自己責任中心へと、大なり小なり考え方がシフトしていくように思う。果たしてそれが本当にメンタルヘルス対策の充実・強化と言えるのかどうか、十分な議論が必要である。5. 技巧的な仕切りより全面的な助成を今回の労働安全衛生法改正法案は、健康診断と検査とに仕分け、保健指導と自己申告とを仕切り、それらをもってメンタルヘルス対策の「充実・強化」だと称しているにすぎないと思う。本当の「充実・強化」につなげるためには、むしろ、技巧的な仕分けや仕切りは要らない。プライバシー保護を十分に踏まえつつも、健康診断・保健指導・面接指導を充実させ、産業医と精神科医・心療内科医との連携を強化させるなど、諸施策を総合的に推進していくべきである。そして、そこにおいて政府の果たすべき役割は、技巧的な仕分けや仕切りなどでなく、諸施策推進のための全面的な支援や助成に徹し切ることであろう。

1413.

喫煙歴のある男性の約半数は、咳・痰、息切れの原因が喫煙だと知っていても喫煙を継続している

ノバルティス ファーマは28日、全国の40歳以上で喫煙歴がある咳・痰の症状を持つ未受診男性868名に対して行った、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease、以下:COPD)に関する調査結果を発表した。今回の調査は、40歳以上で喫煙歴があり、咳や痰の症状がありながらも病院を受診していない男性868名に対して、COPDに罹患する可能性が高い人の咳や痰、息切れに対する認識を明らかにする目的で行われたもの。インターネット上にて同社が2012年3月に実施した。調査の結果、COPDに対する認知率は33%、肺気腫や慢性気管支炎に対する認知率はそれぞれ71%であるのと比較して低く、新しい概念の普及度合いが低いことがわかった。また、「咳・痰」や「息切れ」は「肺の病気である」と認識している人は、約4割弱(それぞれ40%、33%)と少ないこともわかった。さらに、約半数は「咳・痰」や「息切れ」は「タバコを減らす、または止めれば抑えられる」(それぞれ57%、47%)と認識していながらも喫煙を継続していることも明らかになった。また、「咳」や「痰」が「深刻である」と回答した人と「深刻でない」と回答した方の喫煙歴をその指標であるパックイヤー(Pack-Year)※で比較してみると、それぞれその差は5パックイヤー(43パックイヤー、38パックイヤー)と6パックイヤー(43パックイヤー、37パックイヤー)で、「深刻さ」はパックイヤーと相関していることが明らかになりました。パックイヤー:長期間にわたって、ある人が吸ったタバコの量を測定する方法。たとえば、20パックイヤーは、1日1箱を20年間、または1日2箱を10年間吸った量に相当する。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2012/pr20120528.html

1414.

コーヒー摂取と原因別死亡との関連

米国立衛生研究所(NIH)のNeal D. Freedman氏らによる、50~71歳の男女約40万人を対象に、コーヒー摂取とその後の全死亡および死因別死亡との関連を調べた結果、逆相関の関連が認められたことが報告された。ただし、その結果がコーヒー摂取によるものなのかどうか、あるいはコーヒー摂取が関連しているのかどうかは今回のデータからは判然としなかったと補足しまとめている。コーヒーは広く消費されている飲料の1つであり、抗酸化作用や生理活性作用の源となる物質を豊富に含むことが知られているが、死亡リスクとの関連は明らかとなっていない。NEJM誌2012年5月17日号掲載報告より。50歳以上の40万人を13年間追跡Freedman氏らは、NIH-AARP食事健康調査に参加した、基線50~71歳の男性22万9,119人および女性17万3,141人を対象に、コーヒー摂取とその後の全死亡および死因別死亡との関連を調べた。がん、心疾患、脳卒中に罹患した参加者は除外された。コーヒー摂取についての評価は基線で1回行われた。1995~2008年のフォローアップ期間中、514万8,760人・年のうち死亡は、男性3万3,731人、女性1万8,784人だった。年齢補正モデルにおいて、コーヒー摂取者での死亡リスク増加が認められた。しかし、コーヒー摂取者では喫煙者も多く、喫煙状態と他の潜在的交絡因子で補正したところ、コーヒー摂取と死亡率の間には有意な逆相関が認められた。がんによる死亡では逆相関みられずコーヒーを飲む男性について、飲まない男性と比較した死亡補正ハザード比は以下のとおりであった。1日当たり1杯未満摂取では0.99(95%信頼区間:0.95~1.04)、1杯0.94(同:0.90~0.99)、2~3杯0.90(同:0.86~0.93)、4~5杯0.88(同:0.84~0.93)、6杯以上0.90(同:0.85~0.96)(傾向のP<0.001)。女性のハザード比はそれぞれ、1.01(同:0.96~1.07)、0.95(同:0.90~1.01)、0.87(同:0.83~0.92)、0.84(同:0.79~0.90)、0.85(同:0.78~0.93)だった(傾向のP<0.001)。なお疾患別にみると、心疾患、呼吸器疾患、脳卒中、外傷、事故、糖尿病、感染症による死亡では逆相関がみられたが、がんによる死亡では同関連はみられなかった。これらの結果は、喫煙歴がない人、基線の健康状態が良好ないしは特に良好と報告した人のサブグループでも同様だった。(朝田哲明:医療ライター)

1415.

バレニクリン、心血管重大有害イベントの有意な増大との関連認められず:メタ解析

米国・カリフォルニア大学のJudith J Prochaska氏らによるメタ解析の結果、禁煙補助薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)服用による、心血管系の重大有害イベントの有意な増大は認められなかったとの報告が発表された。解析にはこれまで発表された全データが含まれ、服用中に起きたイベントに焦点を絞り、4つの要約推定値(summary estimates)を用いて行われた。バレニクリンをめぐっては、心血管系の深刻な有害事象リスクが議論になっているが、その解析手法が適切ではないのではとの指摘があり、米国FDAがさらなる解析を行うことを求めていた。BMJ誌2012年5月12日号(オンライン版2012年5月4日号)掲載報告より。二重盲検プラセボ比較対照試験22試験をメタ解析Prochaska氏らは、Medline、Cochrane Library、オンライン臨床試験レジストリならびに特定論文参照リストをデータソースとして、メタ解析を行った。試験適格としたのは、現に喫煙中の成人を対象にバレニクリン投与と非投与を比較し、有害事象について報告をしていた無作為化試験とした。試験治療下での心血管系の重大有害事象の発現との定義は、薬物療法中または中断後30日以内に起きたもので、虚血性または不整脈性の有害な心血管イベント(心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血管再生、冠動脈疾患、不整脈、一過性脳虚血発作、脳卒中、突然死または心血管関連死、うっ血性心不全)とした。解析対象となったのは22試験で、すべてが二重盲検プラセボ比較対照試験だった。そのうち2試験は現に心血管疾患を有する被験者を対象としたもので、また11試験は心血管疾患の既往があり登録された被験者を含んでいた。イベント発生率の差、臨床的にも統計学的にも有意ではない結果、試験治療下での発現率、心血管重大有害イベントは、バレニクリン群0.63%(34/5,431)、プラセボ群0.47%(18/3,801)だった。全22試験に基づくリスク差の要約推定値は0.27%(95%信頼区間:-0.10~0.63、P=0.15)で、臨床的にも統計学的にも有意ではなかった。1つ以上のイベント発生が認められた14試験に基づく、相対リスク比(1.40、0.82~2.39、P=0.22)、マンテル-ヘンツェル・オッズ比(1.41、0.82~2.42、P=0.22)、ピート・オッズ比(1.58、0.90~2.76、P=0.11)の結果も、バレニクリン群とプラセボ群に有意差は認められなかった。Prochaska氏は、これまで発表された全試験を含み、服薬曝露期間中に起きたイベントに焦点を絞り、4つの要約推定値を使用した所見を分析したメタ解析の結果、バレニクリン服用による心血管系の重大有害イベントと有意な増大は認められなかったと結論した上で、希少アウトカムには絶対効果に基づく要約推定値が推奨され、ピート・オッズ比に基づく推定は無効とすべきであると述べた。

1416.

双極性障害患者の「うつ症状」は心血管イベントリスクを高める

Slomka氏らは双極性障害患者の気分症状と心血管イベント(CVD)リスクとの関係を調査し、「双極性障害患者のうつ症状は10年後のCVDによる死亡リスクと関連する」ことを報告した。この論文は、J Affect Disord誌2012年5月号(オンライン版2月21日付)に掲載された。VA クリニック の外来を受診している退役軍人 のうち、CVD危険因子を有する双極性障害患者118例を対象にコホート研究をおこなった。本研究では気分症状(抑うつ症状、躁症状)とフラミンガムリスクスコアとの関係および精神症状とCVDリスクファクター(脂質、血圧、体重、喫煙、空腹時血糖)との関係を調査した。主な結果は以下のとおり。 ・対象者は平均年齢53歳(標準偏差:9.9)、男女比=82:17、BMI 30以上が約70%、脂質異常症合併が84%、高血圧合併が70%、糖尿病合併が25%、フラミンガムスコア(10年以内の心血管イベントリスクを示すスコア)が20%を超える割合が19%であった。・うつ 症状を有する患者ではフラミンガムスコアが20%を超える割合が6倍であった(オッズ比:6.1、p=0.03)が、躁症状を有する患者ではフラミンガムスコアとの関係は認められなかった(オッズ比:0.6、p=0.03)。・うつ症状はBMI高値 、空腹時血糖、血圧の上昇との関連が認められた。(ケアネット 鷹野 敦夫)

1417.

日本人でも早食いは2型糖尿病のリスクに

食べるスピードと日本人男性2型糖尿病発症率との関連を調べた研究結果が発表された。対象は、金属製品工場に勤務する中年層の日本人男性2,050名。参加者を自己申告による食べるスピード別に分類し、評価した。糖尿病発症率は7年間にわたって毎年実施される健康診断の結果を用いて評価した。食べるスピードと糖尿病発症率との関連は、年齢、糖尿病の家族歴、喫煙、飲酒、運動習慣、高血圧・高脂血症の有無といった複数因子の調整を行ったうえで、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。結果、食べるスピードと糖尿病発症率とに関連がみられた。ただし、BMI調整後はこの関連に有意差がなかったことから、早食いが引き起こす体重への影響が関与している可能性が示唆された。食べるスピードは比較的コントロール可能な危険因子であり、ゆっくりと食べることが糖尿病予防にも有用な可能性があるといえる。主な結果は以下のとおり。 ・食べるスピード別に「ゆっくり、普通、早い」の3カテゴリーに分類・BMI 25以上の肥満者の割合は「ゆっくり」で14.6%、「普通」で23.3%、「早い」で34.8%と、食べるスピードが速いほど高い肥満有病率を示した。・試験期間中、177人の参加者が糖尿病を発症した。・各カテゴリーにおける糖尿病発症率(1,000人・年あたり)は「ゆっくり」で9.9、「普通」で15.6、「早い」で17.3であった。・多変量調整ハザード比(95%信頼区間)でみると、「ゆっくり」を1.00とした場合、「普通」で1.68(0.93~3.02)、「早い」で1.97(1.10~3.55)と、食べるスピードは糖尿病発症と関連していた(p= 0.030)。・ただし、BMI調整後、有意な相関は認められなかった。(ケアネット 佐藤 寿美)

1418.

生殖医療技術後の先天異常リスク増大に、母胎要因がどこまで関わっているのか

個々のレジストリ研究やメタ解析など研究成果から、体外受精(IVF)や卵細胞質内精子注入法(ICSI)は先天異常リスクを増大するというエビデンスは一貫して認められている。オーストラリア・アデレード大学のMichael J. Davies氏らは、これまで検討されていなかった、そうした生殖補助医療技術を受けた後に増大が認められる先天異常リスクが、親の特性とどこまで関連しているかについて調査した。NEJM誌2012年5月10日号(オンライン版2012年5月5日号)掲載報告より。約31万例の出産を対象に、先天異常リスク増大について母親の背景因子別に比較調査研究グループは、南オーストラリア州の生殖補助技術治療の実態調査結果と、妊娠20週以上または出生時体重400g以上での出産と死産に関する登録記録、および先天異常に関するレジストリ(脳性麻痺、全妊娠期間中での異常による中絶を含む)との関連づけを行った。5歳の誕生日までに診断された先天異常のリスクについて、母親が(1)生殖補助医療技術の治療を受けた妊娠のケース、(2)過去に生殖補助医療を受けたことがあるが自然妊娠であったケース(すなわち生殖補助医療を受けたケースではない)、(3)不妊症の既往はあるが生殖補助医療技術の治療を受けていない妊娠のケース、(4)不妊症の既往がない妊娠のケース、で比較検討した。オッズ比は、未補正解析と、多変量補正後解析(母胎年齢、胎児の性別、母親の人種、妊娠中の喫煙など)を算出して検討した。体外受精、卵細胞質内精子注入法後のリスク増大は?調査対象となった出産件数は30万8,974例で、そのうち6,163例が生殖補助医療を受けての妊娠だった。生殖補助医療を受けての分娩例における先天異常は513例(8.3%)で、受けていない分娩での先天異常1万7,546例(5.8%)と比べて、有意なリスク増大が認められた(未補正オッズ比:1.47、95%信頼区間:1.33~1.62)。同リスクについて多変量補正後のオッズ比は1.28(95%信頼区間:1.16~1.41)で、リスクは減弱したが有意なままであった。体外受精での分娩例における先天異常は165例(7.2%)で、未補正オッズ比1.26(95%信頼区間:1.07~1.48)、多変量補正後オッズ比は1.07(同:0.90~1.26)であった。一方、卵細胞質内精子注入法での分娩例における先天異常は139例(9.9%)で、未補正オッズ比1.77(同:1.47~2.12)、多変量補正後オッズ比は1.57(同:1.30~1.90)だった。不妊症の既往がある場合は、生殖補助医療を受けたか否かにかかわらず、先天異常との有意な関連が認められた。これら結果を踏まえてDavies氏は生殖補助医療技術と先天異常リスク増大に関して、「体外受精後の先天異常リスクの増大は、親の背景因子で補正後は減弱し有意ではなくなった。一方、ICSIに関しては、補正後もリスクは増大したままだった。ただしその関連の継続については残余交絡の可能性が排除できない」とまとめている。(朝田哲明:医療ライター)

1419.

精神疾患患者におけるメタボリックシンドローム発症要因は?

精神疾患患者における心血管イベント発症要因の一つとして葉酸が関与しているといわれている。特にメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)やカテコール-o-メチルトランスフェラーゼ(COMT)の異常がリスクを増大させると考えられる。Ellingrod氏らはこれら遺伝子異型が抗精神病薬とメタボリックシンドロームとの関係にどのような影響を及ぼすのかを分析した。抗精神病薬による治療を少なくとも6ヵ月以上受けている統合失調症および双極性障害患者237例をメタボリックシンドロームの有無、MTHFR677C/T、MTHFR1298A/C、COMTVal158Metの各遺伝子型でスクリーニングを行った。主な結果は以下の通り。 1)平均年齢44.7歳(標準偏差:11.7)、男:女=51:49、平均BMI32.6kg/m(標準偏差:8.2)、非定型抗精神病薬投与患者は61%で各遺伝子型間に違いはなかった。2)メタボリックシンドロームの基準を満たした患者98例(41%)。3)メタボリックシンドロームの発症は年齢、喫煙、MTHFR677C/T、COMTVal158allelesとの関連が認められた(χ=34.4、p

1420.

「ACC/AHA末梢動脈疾患診療ガイドライン2011」改訂のポイント

米国心臓病学会財団(ACC)と米国心臓協会(AHA)は、2005年に策定した末梢動脈疾患(PAD)の診療ガイドラインを見直し、2011改訂版を公表した。5年間で集積されたエビデンスを基に下記についての見直しが図られ、患者管理と予防の新たな臨床判断の指標とすることを促している。足関節上腕血圧比(ABI)、足趾腕血圧比(TBI)検査にかかる勧告見直し禁煙指導に関する勧告見直し抗血小板療法に関する勧告見直し重症肢虚血に対する勧告見直し腹部大動脈瘤に対する勧告見直しガイドライン2011の特徴は、下肢PAD予防と早期発見の重要性がさらに強調されたことである。まず、PADの過少診断を防ぐため、足関節上腕血圧比(ABI)実施対象患者の見直しが行われた。具体的には、2005年版では、対象者のひとつに「70歳以上」があったが、2011年版では、「65歳以上」に改訂された(クラスI、エビデンスレベルB)。その上で、ABI値について、正常値は1.0~1.4、異常値は0.9以下とし、0.91~0.99は境界値と明確に定義した(クラスI、エビデンスレベルB)。また、治療においては、禁煙指導と抗血小板薬に対する変更があった。禁煙指導については、下肢PAD患者に対する心血管イベントの抑制効果のエビデンスは乏しかったものの、医師の介入による禁煙率の上昇という点を評価し、プライマリ・ケア医による積極的な禁煙プログラムの推奨強化を図っている(表1)。薬物療法については、アスピリンおよびクロピドグレルのクラスIとしての位置づけに変更はなかったが、文言の明確化が図られた。新たな推奨項目として、クラスIIaとIIbが加えられた(表2)。重症肢虚血や腹部大動脈瘤に対する、手術とバルーン血管形成術のアウトカムについては、その一方の優位性を示す長期試験結果がないため、患者の個別の状態に応じ、最も適切な動脈瘤修復の方法を選択すべきであるとされた。なお今回の改定では、腎・腸間膜動脈疾患については、新たなエビデンスが乏しいため、同分野における見直しは行われなかった。表1 禁煙指導に関する勧告【2011年勧告の主な変更ポイント】●クラスⅠ1.喫煙者または喫煙歴のある患者は、毎回の診察時にタバコ使用に関する現状について問診を受けるべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>2.(喫煙者の)患者には、禁煙のために、薬物療法や(または)禁煙プログラムへの紹介を含む禁煙のための計画策定やカウンセリングを行うべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>3.下肢PADの患者で、タバコや他の種類のタバコを使用する人は、診察を受けるすべての医師から禁煙を勧められ、行動療法や薬物療法の提供を受けるべきである。(エビデンスレベルC)<以前の勧告の変更。文言を明確化し、エビデンスレベルをBからCに変更>4.患者に禁忌や他のやむにやまれぬ臨床適応がない限り、バレニクリン、ブプロピオン、ニコチン置換療法のうち、1つ以上の薬物療法を提供するべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>表2 抗血小板薬と抗血栓薬に関する勧告【2011年勧告の主な変更ポイント】●クラスⅠ1.抗血小板療法は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する。(エビデンスレベルA)<以前の勧告の変更。文言を明確化>2.アスピリン(一般的には75~325mg/日)は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する、安全で効果的な抗血小板療法として推奨される。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。文言を明確化し、エビデンスレベルをAからBに変更>3.クロピドグレル(75mg/日)は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や虚血性脳卒中、血管死リスクを減少するための、アスピリンの代替となる安全で効果的な抗血小板療法として推奨される。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。文言を明確化>●クラスIIa1.抗血小板療法は、ABIが0.90以下の無症候性の人に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少させる可能性がある。(エビデンスレベルC)<新たな勧告>●クラスIIb1.ABIが0.91~0.99の、ボーダーラインの無症候性の人に対する抗血小板療法が、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する効果があるかどうかについては、まだ立証されていない。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>2.アスピリンとクロピドグレルの併用は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人で、出血リスクの増大がなく、既知の心血管リスクの高い人を含む、症候性アテローム性下肢PAD患者に対して、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクの減少を目的に考慮しても良い。(エビデンスレベルB)<新たな勧告>●クラスIII(利益なし)1.アテローム性下肢PADの患者に対し、有害心血管虚血イベントのリスク減少を目的に、ワルファリンを抗血小板療法へ追加投与することは、利益がなく、大出血リスクの増大のために、潜在的に有害となる。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。エビデンスレベルをCからBに変更>参照Rooke TW, et al. 2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for theManagement of Patients With Peripheral Artery Disease (updating the 2005 guideline):a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart AssociationTask Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol. 2011; 58: 2020-2045.

検索結果 合計:1581件 表示位置:1401 - 1420