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国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」【下平博士のDIノート】第25回

国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」今回は、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アンタゴニスト製剤「レルゴリクス錠(商品名:レルミナ錠40mg)」を紹介します。本剤は、フレアアップ現象を生じることなく子宮筋腫に基づく諸症状を改善する国内初の経口薬です。<効能・効果>本剤は、子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月1日より発売されています。また、2021年12月に「子宮内膜症に基づく疼痛の改善」の適応が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはレルゴリクスとして40mgを1日1回食前に経口投与します。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行います。本剤の投与によって、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下がみられることがあるので、6ヵ月を超える投与は原則として行われません。<副作用>国内第III相試験で認められた主な副作用は、不正子宮出血(46.8%)、ほてり(43.0%)、月経異常(15.5%)、頭痛、多汗、骨吸収試験異常(各5%以上)などでした。なお、重大な副作用としてうつ状態(1%未満)、肝機能障害(頻度不明)、狭心症(1%未満)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、下垂体に作用して卵巣からの女性ホルモンの分泌を低下させることで、子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血などの症状を改善します。2.初回は、月経が始まった日から5日目までの間に服用を開始してください。3.食後の服用では薬の効き目が低下するため、食事の30分以上前に服用してください。4.この薬を服用している間はホルモン性避妊薬以外の方法で避妊をしてください。5.長期に使用すると骨塩量が低下することがあるため、日ごろから適度な運動を心がけ、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを含む食材を積極的に取りましょう。6.気分が憂鬱になる、悲観的になる、思考力が低下する、眠れないなど、うつ様の症状が現れた場合にはご連絡ください。7.女性ホルモンの低下によって、ほてり、頭痛、多汗などの症状が現れることがあります。症状がつらいときはご相談ください。<Shimo's eyes>従来、子宮筋腫の薬物療法としてGnRHアゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリン注)やブセレリン酢酸塩(同:スプレキュア皮下注/点鼻液)などが用いられています。GnRHアゴニストは、下垂体前葉にあるGnRH受容体を継続的に刺激することで本受容体を減少させ、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制させます。投与開始初期にはFSHやLH分泌が一過性に増加するため、不正性器出血や月経症状の増悪などのフレアアップ現象が生じやすいことが知られています。これに対しGnRHアンタゴニスト製剤である本剤は、GnRH受容体を選択的に阻害することでFSHとLHの分泌を抑制します。このため、投与開始初期であってもフレアアップ現象を生じることなく女性ホルモンであるエストラジオールおよびプロゲステロンの産生を低下させます。本剤は1日1回服用の経口薬であり、子宮筋腫に伴う諸症状に悩んでいる患者さんのアドヒアランスとQOLの向上が期待できます。投与に当たっては、妊娠中や授乳中でないかを確認するとともに、服用タイミングなどの指導をしっかり行ってこまめに経過を観察するようにしましょう。※2021年12月の添付文書改訂に伴い、一部内容の修正を行いました。

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応援歌で前向きに生きる乾癬の患者

 2019年4月9日、アッヴィ合同会社は、ミュージシャン・音楽プロデューサーとして人気を博すヒャダインこと前山田 健一氏とのコラボレーションにより完成した乾癬患者への応援ソング『晴れゆく道』の発表を記念し、都内においてメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、最新の乾癬診療の概要や今回の応援ソング制作の経緯などが説明された。なお、前山田氏も乾癬患者として現在、治療を受けている。患者は身体だけでなく心にもダメージ はじめに「乾癬を取り巻く社会問題と乾癬治療のパラダイムシフト」をテーマに多田 弥生氏(帝京大学医学部皮膚科学講座 主任教授)が乾癬の診療について説明した。 乾癬は、紅斑、皮膚の肥厚、鱗屑を主症状とする慢性の炎症性疾患で、時に皮膚の痒みや痛みを伴うほか、関節の腫れ、関節破壊を合併することもある。わが国には、約43万人の患者が推定され、初診時の平均年齢は56.7歳、男性に多いとされる。好発部位は、被髪頭部、四肢伸側、腰臀部で、紫外線が当たる顔面には症状が現れにくいとされる。また、本症は外見に関わる身体症状から多くの患者は、精神的なQOLの障害も抱えているという。 重症度の評価では、BSA(Body Surface Area)などの評価基準で重症度が判定され、治療が行われる。広く、長く効果が持続するリサンキズマブ 本症の治療では、活性型ビタミンD、ステロイドなどの外用療法を基本に、重症度に応じて光線療法、シクロスポリン(カルシニューリン阻害薬)、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、レチノイドなどの内服療法、インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブなど7つの生物学的製剤による注射・点滴薬の治療が現在行われている。その一方で、アドヒアランス不良、効果の持続性、経済的な負担などの問題から、安全に長期間効果が持続する治療薬の登場が患者から望まれていた。 そうした声をうけ、本年3月にリサンキズマブ(商品名:スキリージ皮下注)が登場した。リサンキズマブは、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症を対象に、1回150mgを初回に、4週後、以降12週間隔で皮下投与する治療薬である(患者の状態に応じて1回75mgを投与することができる)。広い対応疾患と長い効果、皮下注という短時間の治療という特徴をもつ。 その効果について国際共同第III相臨床試験(UltIMMa-2試験)でリサンキズマブ(n=294)、ウステキヌマブ(n=99)、プラセボ群(n=98)を16週と52週時のPASI(乾癬の活動性・重症度評価)90の達成率で比較した場合、16週時点でリサンキズマブでは75%、ウステキヌマブでは47%、プラセボ群では2%だった。また、52週ではリサンキズマブは81%、ウステキヌマブでは51%とリサンキズマブは有意に改善を示した。安全性につき有害事象として、上気道感染などがみられたが、死亡にいたる重篤なものは報告されなかった。 同氏は今後の乾癬治療について「PASIのさらなる達成を実現するともに、治療薬の用法の改善、患者の要望の実現を目指したい」と展望を語った。患者会が患者の孤立を救う 後半では、「患者からの声」ということで「乾癬患者さんの精神的負担とアンメットニーズ」をテーマに2名の患者が登壇し、乾癬発症から現在までの悩みや医療者への要望を語った。 乾癬にかかると「自己肯定感」が低くなり、前向きに人生を歩もうという気がなくなるという。しかし、こうした気持ちが改善されるきっかけとなったのが患者会であり、「診療情報の共有化や孤立しないことで、患者が前向きになれる」と語る。最後に今後の診療への要望として、生物学的製剤の副作用、治療抵抗性への対応、薬価改善などを挙げ、「とくにコストに見合った効果を望む」と希望を述べた。 つづいて前山田氏が乾癬患者さんから募集した「夢ツイート」を基に制作した、乾癬患者さん応援ソング『晴れゆく道』を発表し、自身の疾患の体験談や楽曲に込めた想いを語った。

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家族性アミロイドポリニューロパチー〔FAP: familial amyloid polyneuropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は、代表的な遺伝性全身性アミロイドーシスである1,2)。組織の細胞外に沈着したアミロイドは、コンゴレッド染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下でアップルグリーンの複屈折を生じる。電子顕微鏡で観察すると、直径8~15nmの枝分かれのない線維状の構造物として観察される。現在までに、36種類以上の蛋白質がヒトの体内でアミロイド沈着を形成する蛋白質として同定されている3)。FAPを生じるアミロイド前駆蛋白質として、トランスサイレチン(TTR)、ゲルソリン、アポリポ蛋白質A-Iが知られているが、大部分のFAP患者は、TTRの遺伝子変異によるため、以下はTTRを原因とするFAP(TTR-FAP)に関して概説する。近年、国際アミロイドーシス学会は、TTR-FAPに代わる病名として「遺伝性TTR(ATTRv)アミロイドーシス」の使用を推奨しているが3)、わが国ではFAPの病名が現在も使用される場合が多いため、本稿ではFAPの病名を用いて概説する。本疾患の原因分子であるTTRは、主に肝臓から産生され血中に分泌される血清蛋白質である。その他のTTR産生部位として、脳脈絡叢、眼の網膜色素上皮、膵臓ランゲルハンス島のα細胞が知られている。血中に分泌された本蛋白質は、127個のアミノ酸から構成されるが、豊富なβシート構造を持つことにより、アミロイド線維を形成しやすいと考えられている。TTR遺伝子には150種類以上の変異型が報告されており、その大部分がFAPの病原性変異として同定されてきた。TTRの30番目のアミノ酸であるバリンがメチオニンに変異するVal30Met型が、最も高頻度に認められる1,2)。生体内では、通常TTRは四量体として機能し、四量体の中心部には1分子のサイロキシン(T4)が強く結合し、T4の運搬を担っている。また、TTRはレチノール結合蛋白質との結合を介して、ビタミンAの輸送も担っている。■ 疫学以前はFAP ATTR Val30Metの大きな家系が、ポルトガル、スウェーデン、日本(熊本県と長野県)に限局して存在すると考えられていたが、近年、世界各国からFAP ATTR Val30Met患者の存在が確認されている1,2)。また、明確な家族歴がなく高齢発症のFAP が日本各地から報告されており4)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、糖尿病性ニューロパチー、手根管症候群、腰部脊柱管狭窄症などの非遺伝性末梢神経障害の鑑別疾患として本症を考えることが重要である。スウェーデンでは、FAP ATTR Val30Met遺伝子保因者の3~10%しか発症しないことが知られているが、わが国においても、TTR遺伝子に変異を持ちながら、終生FAPを発症しない症例も存在する。Val30Met以外の変異型TTRによるFAPもわが国から多く報告されている(図1)。わが国の疫学調査の結果では、国内の推定患者数は約600人であるが、的確に診断されていない症例が多く存在する可能性がある。画像を拡大する■ 病因TTRに遺伝子変異が生じると、TTR四量体が不安定化し、単量体へと解離することが、アミロイド形成過程に重要であると、in vitroの研究で示されている。しかし、アミロイドがなぜ特定の部位に沈着するのか、どのように細胞や臓器の機能を障害するのかは、明らかにされていない。アミロイド線維を形成するTTRの一部は断片化されており、アミロイド線維形成への関与が議論されている。■ 症状1)神経症状末梢神経障害は、軸索障害が主体で神経軸索が細胞体より最も遠い両下肢遠位部の症状が初発症状となる場合が多い。また、神経症状は一般に自律神経、感覚(温痛覚低下)、運動(両側末梢優位)の順で症状が出現することが多い。これは、アミロイド沈着により小径無髄線維から大径有髄線維の順に障害が進行するためと考えられている。病初期には、下肢末梢部である足首以下で、温痛覚の低下を認めるが触覚は正常である解離性感覚障害を認める場合が多い。温痛覚障害のため、足の火傷や怪我に患者本人が気付かない場合がある。筋萎縮、筋力低下など運動神経障害は、感覚障害より2~3年遅れて出現する場合が多いが、まれに運動神経障害が主体で感覚障害が軽い症例もある。進行期には、高度の末梢神経障害による四肢の感覚障害と筋力低下や呼吸筋麻痺などを呈する。アミロイド沈着による手根管症候群を呈する場合がある。とくに家族歴が明らかでない症例では、病初期にCIDP、糖尿病性ニューロパチー、腰部脊柱管狭窄症などと誤診されることが多く、注意が必要である。症例によっては、脳髄膜や脳血管のアミロイド沈着による意識障害や脳出血など中枢神経症候を呈する場合がある。2)消化器症状重度の交代性下痢便秘や嘔気などの消化管症状が出現する。末期には持続性の下痢となり、吸収障害や蛋白質の漏出も生じる。3)循環器系障害早期より自律神経障害による起立性低血圧や、アミロイド沈着による房室ブロック、洞不全症候群、心房細動などの不整脈が生じる。心筋へのアミロイド沈着により心不全を生じ、心室の拡張障害が収縮障害に先行すると考えられている。TTR変異型により心症候が主体で、末梢神経障害が目立たないタイプがある。4)眼症状変異型TTRは肝臓のみならず網膜からも産生されており、アミロイド沈着による硝子体混濁はFAP患者に多く認められる。硝子体混濁が本症の初発症状である症例もある。前眼部へのアミロイド沈着による緑内障を来し、進行すると失明の原因となる。また、涙液分泌低下によるドライアイも生じる。5)腎障害アミロイド沈着によるネフローゼ症候群や腎不全を呈するが、症例によりその程度は異なる。病初期には目立たない場合が多い。■ 分類TTR変異型により症候が異なる場合がある。アミロイドポリニューロパチー(末梢神経障害)が主体となるタイプ(Val30Metなど)、心アミロイドーシスにより不整脈や心不全が主体となるタイプ(Ser50Ile、Thr60Alaなど)、脳髄膜・眼アミロイドーシスにより一過性の意識障害や脳出血、白内障や緑内障が強く生じるタイプ(Ala25Thr、Tyr114Cysなど)がある。また、同じATTR Val30Metを持つFAP患者でも、ポルトガルでは若年発症(20~30代で発症)が多く、スウェーデンでは高齢発症(50歳以降)が多い。わが国でも、本疾患の集積地である熊本や長野のFAP患者は若年発症が多いが、他の地域では高齢発症で家族歴が確認できない症例が多く、70歳以降の発症も少なくない。■ 予後未治療の場合は、発症からの平均余命は若年発症のFAP ATTR Val30Metは約10~15年1)、高齢発症のFAP ATTR Val30Metは約7年4)である。進行期には、呼吸筋麻痺、重度の起立性低血圧、心不全、致死的な不整脈、ネフローゼ症候群、腎不全、蛋白漏出性胃腸症、重度の緑内障などを呈する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)本症の診断基準を表に示す。病初期に各治療法の効果が高いため、早期診断、早期治療が重要である。臨床症候や各種の臨床検査により本症が疑われる場合には、生検によりアミロイド沈着を検索すること、および専門施設に依頼し、免疫組織化学染色や質量分析法でTTRがアミロイドの構成成分であることを確認する必要がある(図2)。生検部位は、侵襲度の比較的低い消化管(胃、十二指腸、直腸)、腹壁脂肪、口唇の唾液腺、皮膚などが選択されるが、病初期にはアミロイド沈着が検出されない場合もある。本症の疑いが強い場合は、繰り返し複数部位からの生検を行うことが重要である。また、前述の部位からアミロイド沈着が確認できない場合は、障害臓器である末梢神経や心筋からの生検も考慮する必要がある。TTRがアミロイド原因蛋白質として同定された場合は、野生型TTRが非遺伝性に生じる老人性全身性アミロイドーシス(SSA)(野生型TTR[ATTRwt]アミロイドーシス)との鑑別のため、遺伝子検査や血液中TTRの質量分析によりTTR変異の解析を必ず行う(図3)。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPに対する治療は、近年、劇的に進歩している。長く実施されてきた肝移植療法に加えて、TTR四量体の安定化剤であるタファミジス(商品名: ビンダケル)が、国内でも2013年9月に希少疾病用医薬品として承認され、現在、本疾患に対し広く使用されている。また、核酸医薬によるTTR gene silencing療法の国際的な臨床試験が終了し、良好な結果が得られている。図4にFAPに対する治療法を研究中のものを含めて示した。画像を拡大する■ 肝移植療法本疾患の病原蛋白質である変異型TTRの95%以上が肝臓で産生されていることから、1990年にスウェーデンで本疾患に対する治療法として肝移植が初めて行われ、その有効性が示されてきた5)。FAP患者の血液中の変異型TTRは、正常肝が移植された後に速やかに検出感度以下まで低下する。しかし、肝移植で本疾患が完全に治癒するわけではなく、末梢神経障害を含めて、症候の大部分は移植後も残存する。また、発症から長期間経過し、病態が進行した症例や、高齢患者、BMIが低値(低栄養状態)であると、移植後の予後が不良であるため、肝移植が実施できない場合も少なくない。そして、症例によっては、肝移植後も症候(とくに心アミロイドーシス)が進行するケースもある。眼の網膜色素上皮細胞や脳脈絡叢からは、肝移植後も継続して変異型TTRが産生され続けているため、眼や脳・脊髄では、肝移植後も変異型TTRによるアミロイドが形成され、症候も悪化する症例が報告されている。他の治療法が開発されたことにより、本症に対する肝移植の実施数は減少傾向にある。■ TTR四量体安定化剤(タファミジス)TTR四量体が不安定となり単量体へと解離することが、TTRのアミロイド形成過程に重要な過程と考えられている。TTR四量体の安定化作用を持つ薬剤が、本症の新たな治療薬として研究開発されてきた。非ステロイド系抗炎症薬の1つであるジフルニサルなどにTTR四量体の安定化作用が確認され、本症の末梢神経障害に対する進行抑制効果が確認された6)。ジフルニサルには、非ステロイド系抗炎症薬が元来持つCOX阻害作用があり、腎障害などの副作用が出現する可能性が想定されたため、COX阻害作用を持たずにTTR四量体のより強い安定化作用を示す新規化合物としてタファミジスが新たに開発された。本薬剤の国際的な臨床治験が実施され、生体内でもTTR四量体を安定する作用が確認されるとともに、末梢神経障害の進行を抑制する効果が確認されている7)。また、心症候に対する効果も報告された8)。わが国では2013年9月に本症による末梢神経障害の進行抑制目的で承認されている。■ 核酸医薬(TTR gene silencing療法)9, 10)Small interfering RNA(siRNA)9) やアンチセンスオリゴ(ASO)10) を用いて、肝臓におけるTTRの発現抑制を目的としたgene silencing療法の開発が行われ、強いTTR発現抑制効果と良好な治療効果が確認されている9, 10)。これらのgene silencing療法では、変異型TTRに加えて、野生型TTRの発現抑制も標的としている。これらの治療法は、今後、本疾患に対する標準的な治療法となることが期待されている。■ その他の研究段階の治療法前述のごとく、肝移植療法の実施やTTR四量体安定化剤の臨床応用、gene silencing療法によるTTR発現抑制法の開発など、本疾患に対する治療法は近年急激に発展しているが、いずれもアミロイド原因蛋白質であるTTRの発現抑制および安定化を標的としており、沈着したアミロイドを除去する治療法は確立していない。さらなる治療法の改善を目指して、図4に示した方法をはじめとした多くの治療法の開発が精力的に行われている。■ 対症療法本症では、心伝導障害の進行は必発であるため、I度房室ブロックの段階でペースメーカーの植え込みを考慮する場合がある。致死的な不整脈が発生する場合には、植込み型除細動器を積極的に検討する必要がある。起立性低血圧に対して、弾性ストッキングや腹帯の使用を考慮する。手根管症候群に対しては、手術療法を考慮する。眼アミロイドーシスによる白内障や緑内障に対しても手術療法が必要となる。そのほかにも、自律神経症状や消化管症状、心不全などに対して内服薬による対症療法を試みるが、十分な効果が得られない場合が少なくない。4 今後の展望肝移植療法がFAPに対して実施され始めて28年以上が経過し、その有効性とともに治療法としての限界や関連する問題点が明らかになってきた。TTR四量体の安定化剤が臨床応用され、広く使用されるにつれて、本症に対する肝移植実施数は減少傾向にある。また、肝臓でのTTR発現抑制を目的とした核酸医薬によるgene silencing療法の臨床治験で良好な結果が得られ、わが国でも承認が待ち望まれる。これらの治療法の長期的な効果に関しては、まだ不明な点が多く残されているため、長期予後に関する調査が必要である。さらに、すでに組織に沈着したアミロイド線維を除去できる根治療法の研究開発が必要である。5 主たる診療科脳神経内科、循環器内科、眼科、移植外科、消化器内科、腎臓内科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報家族性アミロイドポリニューロパチーの診療ガイドライン(日本神経学会)(医療従事者向け診療情報)難病情報センター:全身性アミロイドーシス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)熊本大学 大学院生命科学研究部 脳神経内科学分野(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)熊本大学 医学部附属病院 アミロイドーシス診療センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)信州大学 医学部第3内科 アミロイドーシス診断支援サービス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews(Pub Med)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)GeneReviews(日本語版)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)FAP WTR(FAPに対する肝移植に関する国際的レジストリ)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)THAOS(TTRアミロイドーシスの自然経過に関する国際的調査)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)The Registry of Mutations of Amyloid Proteins(TTR変異の国際的レジストリ)(医療従事者向けの研究情報)OMIM(医療従事者向けの診療・研究のレビュー情報)日本アミロイドーシス学会(医療従事者向けの研究情報)国際アミロイドーシス学会(ISA)(医療従事者向けの研究情報)厚生労働省 難治性疾患政策研究事業「アミロイドーシスに関する調査研究」班(医療従事者向けの研究情報)患者会情報道しるべの会 second step あゆみ ブログ(患者のブログ)1)Ando Y, et al. Arch Neurol. 2005;62:1057-1062.2)Ueda M, et al. Transl Neurodegener. 2014;3:19.3)Benson MD, et al. Amyloid. 2019 [Epub ahead of print]4)Koike H, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012;83:152-158.5)Yamashita T, et al. Neurology. 2012;78:637-643.6)Berk JL, et al. JAMA. 2013;310:2658-2667.7)Coelho T, et al. Neurology. 2012;79:785-982.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med, 2018;379:1007-1016.9)Adams D, et al. N Engl J Med. 2018;379:11-21.10)Benson MD, et al. N Engl J Med. 2018;379:22-31.公開履歴初回2013年08月08日更新2019年04月23日

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大腸がん治療へのビタミンD補充、高用量 vs.標準用量/JAMA

 切除不能大腸がんの治療における標準化学療法へのビタミンD3補充療法の併用では、高用量は標準用量と比較して無増悪生存を改善しないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のKimmie Ng氏らが行ったSUNSHINE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年4月9日号に掲載された。転移を有する大腸がんの前向き観察研究により、血漿25ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)値が高いほうが、生存は良好と報告されている。この知見を確証するための無作為化試験の実施が求められていた。高用量のPFS改善効果を評価する米国の無作為化第II相試験 本研究は、米国の11施設で行われた多施設共同二重盲検無作為化第II相試験であり、2012年3月~2016年11月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、病理学的に確認された切除不能な局所進行または転移を有する大腸腺がんの患者139例(平均年齢56歳、女性43%)であった。全例に、修正FOLFOX6(mFOLFOX6)+ベバシズマブが、14日(1サイクル)ごとに投与された。これらの患者が、ビタミンD3の高用量(69例)または標準用量(70例)を投与する群に無作為に割り付けられた。 高用量群には、1サイクル目に8,000IU/日(4,000IUカプセルを2つ)を投与し、その後のサイクルでは4,000IU/日を投与した。標準用量群には、全サイクルで400IU/日(400IUカプセル1つとプラセボカプセル1つ)を投与した。治療は、病勢進行、耐用不能な毒性、同意撤回のいずれかが発生するまで継続した。 主要エンドポイントは無増悪生存期間(PFS)とした。副次エンドポイントには、客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、血漿25(OH)D値の変化が含まれた。25(OH)D値は高用量群で有意に高い 全体のフォローアップ期間中央値は22.9ヵ月であった。両群とも、ビタミンD3の服用率の中央値は98%で、アドヒアランスは高かった。 PFS期間中央値は、高用量群が13.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.1~14.7)、標準用量群は11.0ヵ月(9.5~14.0)であり、有意な差は認めなかった(非補正log-rank検定p=0.07)。多変量ハザード比(HR)は0.64(0~0.90、p=0.02)であり、有意差が認められた。 ORR(高用量群58%vs.標準用量群63%、差:-5%、95%CI:-20~100、p=0.27)およびOS期間中央値(24.3 vs.24.3ヵ月、log-rank検定p=0.43)にも、両群に有意差はみられなかった。 ベースラインの25(OH)Dの中央値は、高用量群が16.1ng/mL、標準用量群は18.7ng/mLであり、有意差はなかった(差:-2.6ng/mL、95%CI:-6.6~1.4、p=0.30)。1回目の病期再評価時(4サイクル終了時、約8週後)には、高用量群で有意に高値となり(32.0ng/mL vs.18.7ng/mL、差:12.8ng/mL、95%CI:9.0~16.6、p<0.001)、2回目の病期再評価時(8サイクル終了時、約16週後、35.2ng/mL vs.18.5ng/mL、16.7ng/mL、10.9~22.5、p<0.001)および治療終了時(34.8ng/mL vs.18.7ng/mL、16.2ng/mL、9.9~22.4、p<0.001)も、高用量群で有意に高い値を示した。 化学療法+ビタミンD3による最も頻度の高いGrade 3以上の有害事象は、両群とも好中球減少(高用量群35% vs.標準用量群31%)と高血圧(13% vs.16%)であった。Grade 3以上の下痢は高用量群で少なかった(1% vs.12%)。ビタミンD3関連の可能性がある有害事象として、高リン血症(高用量群の1例)と腎臓結石(標準用量群の1例)がみられたが、高カルシウム血症は認めなかった。 著者は、「これらの知見は、より大規模な多施設共同無作為化臨床試験によって、さらに検討を進めることを正当化するものである」としている。

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消化管がんの2次予防にビタミンD補充は有効か/JAMA

 消化管がんの2次予防において、ビタミンD補充はプラセボと比較して、5年無再発生存率を改善しないことが、東京慈恵会医科大学の浦島 充佳氏らが実施したAMATERASU試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月9日号に掲載された。消化管がんの2次予防では、ビタミンD補充の有用性を示唆する観察研究の報告があり、無作為化試験の実施が求められていた。術後ビタミンD3補充の有用性を評価する日本の無作為化試験 本研究は、消化管がんにおける術後ビタミンD3補充療法の有用性の評価を目的に、単施設(国際医療福祉大学病院)で行われた二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(国際医療福祉大学病院と東京慈恵会医科大学の助成による)。 対象は、年齢30~90歳、Stage I~IIIの消化管がん(食道から直腸まで)の患者であった。被験者は、ビタミンDカプセル(2,000IU/日)またはプラセボを経口投与する群に、3対2の割合で無作為に割り付けられた。投与は、術後の初回外来受診時(術後2~4週)に開始され、試験終了まで継続された。 主要評価項目は、無再発生存期間(割り付けからがんの再発または全死因死亡までの期間)とした。また、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)値で3群(<20ng/mL、20~40ng/mL、>40ng/mL)に分けてサブグループ解析を行った。 患者登録は2010年1月~2016年4月に行われ、フォローアップは2018年2月に終了した。417例が登録され、ビタミンD群に251例、プラセボ群には166例が割り付けられた。5年無再発生存率:77% vs.69%、年齢で補正すると有意に良好 患者はすべて日本人であった。フォローアップ率は99.8%で、フォローアップ期間中央値は3.5年(四分位範囲[IQR]:2.3~5.3)、最長7.6年であった。ベースラインの全体の年齢中央値は66歳で、34%が女性であった。がんの部位は、食道が9.6%、胃が41.7%、小腸が0.5%、大腸が48.2%で、StageはIが44%、IIが26%、IIIは30%だった。 再発または死亡は、ビタミンD群が50例(20%)、プラセボ群は43例(26%)で発生し、死亡はそれぞれ37例(15%)、25例(15%)だった。 5年無再発生存率は、ビタミンD群が77%、プラセボ群は69%であり、両群に有意な差は認めなかった(再発または死亡のハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.50~1.14、p=0.18)。また、5年全生存率は、それぞれ82%、81%であり、有意差はなかった(死亡のHR:0.95、0.57~1.57、p=0.83)。 サブグループ解析では、ベースラインの25(OH)D値が20~40ng/mLの集団において、5年無再発生存率がプラセボ群に比べビタミンD群で有意に優れた(85% vs.71%、再発または死亡のHR:0.46、95%CI:0.24~0.86、p=0.02、交互作用のp=0.04)。 また、ベースラインの年齢中央値がビタミンD群で高かった(67歳vs.64歳)ため、事後解析として年齢の四分位でHRを補正したところ、再発または死亡の累積ハザードが、ビタミンD群で有意に良好だった(補正HR:0.66、95%CI:0.43~0.99、p=0.048)。 骨折が、ビタミンD群3例(1.3%)、プラセボ群5例(3.4%)で、尿路結石が、ビタミンD群2例(0.9%)で発現した。また、入院を要した有害事象はビタミンD群19例(8.4%)、プラセボ群9例(6.1%)で、原発がんの部位以外の臓器に新たに発現したがんは、それぞれ15例(6.6%)、8例(5.4%)で認められた。 著者は、「ビタミンD補充は、ベースライン25(OH)D値20~40ng/mLの集団で有効であったが、これは探索的な検討であるため解釈には注意を要する」と指摘し、「生存に関して、至適な25(OH)D値の範囲はがん種によって異なる可能性がある。また、2,000IU/日という用量は、低25(OH)D値のサブグループでは、ビタミンD値を十分に上昇させるには不十分だった可能性もある」と考察している。

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骨吸収抑制作用と骨形成促進作用を併せ持つ骨粗鬆症薬「イベニティ皮下注105mgシリンジ」【下平博士のDIノート】第22回

骨吸収抑制作用と骨形成促進作用を併せ持つ骨粗鬆症薬「イベニティ皮下注105mgシリンジ」今回は、世界に先駆けて日本で承認・発売されたヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体「ロモソズマブ(商品名:イベニティ皮下注105mgシリンジ)」を紹介します。本剤は、骨吸収抑制作用と骨形成促進作用の2つの作用で骨密度を高め、骨折の危険性が高い骨粗鬆症患者の骨折リスクを低減することが期待されています。<効能・効果>本剤は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月4日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはロモソズマブとして210mg(シリンジ2本分)を1ヵ月に1回、12ヵ月皮下投与します。なお、投与は病院、診療所などで行われます。<臨床効果>プラセボと比較した臨床試験では、閉経後骨粗鬆症患者7,180例(うち日本人492例)において、投与開始12ヵ月後に新規椎体骨折リスクを73%低減し、その効果は24ヵ月まで持続しました。<副作用>骨粗鬆症患者を対象としたプラセボ対照国際共同第III相試験で、本剤の投与を受けた3,744例中615例(16.4%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、関節痛(1.9%)、注射部位疼痛(1.3%)、注射部位紅斑(1.1%)、鼻咽頭炎(1.0%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として低カルシウム血症、顎骨壊死・骨髄炎(頻度不明)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、骨形成を促すとともに骨吸収を抑えることで、骨密度を高めて骨折を予防します。2.本剤を投与中は、ブラッシングなどで口腔内を清潔に保ち、定期的に歯科検診を受けてください。顎の痛み、歯の緩み、歯茎の腫れなどを感じた場合は、主治医に連絡してください。3.本剤を使用中に歯の診察を受ける場合は、この薬を使っていることを必ず歯科医師に伝えてください。4.この薬により、低カルシウム血症が現れることがあります。指先や唇のしびれ、痙攣などの症状が見られた場合、すぐに医師・薬剤師に相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、国内初の抗スクレロスチン抗体製剤です。スクレロスチンは、破骨細胞による骨吸収を促進し、骨芽細胞による骨形成を抑制する糖タンパク質です。本剤はこのスクレロスチンを阻害することで骨量を増加させ、骨折リスクを低下させます。本剤は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症に対して月1回皮下投与します。投与中は、副作用である低カルシウム血症の発現リスクを軽減するために、カルシウムおよびビタミンDの補給を行います。とくに重度の腎機能障害や透析を受けている患者さんでは、低カルシウム血症が発現しやすいので、積極的に検査値などを確認するようにしましょう。本剤による治療を終了・中止する場合、骨吸収が一過性に亢進する懸念があるため、原則として骨吸収抑制薬が使用されます。なお、海外で実施されたアレンドロン酸ナトリウムを対照とした比較試験では、本剤投与群における虚血性心疾患または脳血管障害の発現割合が高い傾向にありました。使用に関しては、脆弱性骨折の有無、骨密度値や原発性骨粗鬆症の診断基準などを目安として、投与が適切かどうか判断することが望ましいとされています。骨粗鬆症による高齢者の骨折は、要介護・要支援の原因となり、健康寿命の延伸、QOLの維持などを妨げることから、本人・家族だけでなく社会にも大きな影響を及ぼします。本剤は、著しく骨密度が低い場合やすでに骨折部位がある場合など、数年以内に骨折するリスクが高い患者さんの新たな治療選択肢となるでしょう。なお、2019年4月時点において、本剤は米国と欧州では審査中であり、海外で承認されている国および地域はありませんので、副作用に関しては継続的な情報収集が必要です。

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第19回 スタチンに片頭痛の予防効果はあるか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 スタチン系薬はコレステロールを降下させるための薬であることは言うまでもありませんが、片頭痛の予防にも有効なのではないかという説があります。脂質異常症も片頭痛も有病率が高いため、意図して、もしくは意図せずコレステロール値の高い片頭痛患者さんにスタチンが処方されていることもあるのではないかと思います。慢性頭痛の診療ガイドライン2013には、片頭痛発作が月に2回以上あるいは6日以上ある場合は片頭痛の予防療法を検討するという記載があり、第1選択薬としてバルプロ酸やトピラマートなどの抗てんかん薬、プロプラノロールやメトプロロールなどのβ遮断薬、アミトリプチリンなどの抗うつ薬が推奨されています(保険適用外含む)。予防療法の効果判定には少なくとも2ヵ月を要し、有害事象がなければ3〜6ヵ月継続し、コントロールが良好になれば薬を漸減・中止するというのがガイドラインの推奨です。私が調査した限りにおいては、現時点で日米英のガイドラインにスタチンについて特段の言及はありません。実際のところ、スタチンは片頭痛に有用なのでしょうか? 片頭痛が月6回以上生じる女性を対象に、プロプラノロール60mg群またはシンバスタチン20mg群に割り付け、比較したオープンラベルの試験では、いずれの群においても有効性が示されています。プラセボ効果が寄与した可能性も考慮しなければなりませんが、50%の頭痛発作減少のアウトカムを達成したのはプロプラノロール群で88%、シンバスタチン群で83%といずれも高率でした1)。またアトルバスタチンとプロプラノロールのランダム化比較試験でも、反復性片頭痛の予防効果は同等でした2)。二重盲検ランダム化比較試験もありますので紹介します。月に4日以上、反復性片頭痛がある成人患者57例をシンバスタチン20mg1日2回+ビタミンD3(コレカルシフェロール)1000IU群(実薬群)またはプラセボ群に割り付け、24週間フォローアップした研究です3)。なお、ビタミンDが併用されているのは、血漿中ビタミンD濃度が高いほうが、重度頭痛または片頭痛発作の発生が少ないという報告があるためです4)。この試験では、プライマリアウトカムとして、1ヵ月間に片頭痛を認めた日数のベースラインからの変化を観察しています。実薬群では、服用12週時点では8例(25%)で50%の頭痛発作減少のアウトカムが達成され、24週時点では9例(29%)で同様の結果が得られています。対して、プラセボ群ではそれぞれ1名(3%)のみでした。なお、以前から用いている片頭痛予防薬の使用は制限しておらず、有意差はなかったものの実薬群で予防薬の使用が多い傾向にあるので解釈に注意が必要です。また、24週以降は検討外であることから、長期的効果については判断できません。当初予定したサンプルサイズを下回る症例数で試験されていますが、実際の試験どおり介入群28例、プラセボ群29例の事後分析で85%の検出力(α=5%)ですので、症例数が増えればより確かなことが言えそうです。スタチンの抗酸化作用や抗炎症作用が片頭痛に影響かスタチンで頭痛が改善しうる理由の仮説として、スタチンのプレイオトロピック効果が挙げられています。スタチンには本来の脂質低下作用とは別に、抗酸化作用、血管内皮機能改善、血小板凝集抑制、血管の緊張や炎症の抑制など多面的な作用があるのではないかと考えられており、それがなんらかの形で片頭痛発作の減少に寄与したのかもしれないというものです。私が調査した限りにおいては、スタチンの種類によって効果が異なるのか、十分な根拠は見つけることができませんでした。いずれにしても、ビタミンD欠乏症だと片頭痛頻度が多いという説もありますから5)、まず十分な血清ビタミンD濃度が確保されているか確認することも大切です。あくまでもスタチンは片頭痛への効果を期待して処方されるものではありませんが、片頭痛の頻度に影響があるかもしれないということを知っていると、服薬指導で役に立つかもしれません。1)Medeiros FL, et al. Headache. 2007;47:855-856.2)Marfil-Rivera A, et al. Neurology. 2016;86:P2.2163)Buettner C, et al. Ann Neurol. 2015;78:970-981.4)Buettner C, et al. Cephalalgia. 2015;35:757-766.5)Song TJ, et al. J Clin Neurol. 2018;14:366-373.

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日本人の食事摂取基準2020年版、フレイルが追加/厚労省

 2019年3月22日、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の報告書とりまとめを了承した。昨年4月より策定検討会にて議論が重ねられた今回の食事摂取基準は、2020年~2024年までの使用が予定されている。策定検討会の構成員には、日本糖尿病学会の理事を務める宇都宮 一典氏や日本腎臓学会理事長の柏原 直樹氏らが含まれている。日本人の食事摂取基準(2020年版)の主な改定ポイントは? 日本人の食事摂取基準(2020年版)の改定では、2015年版をベースとしつつ、『社会生活を営むために必要な機能の維持および向上』を策定方針とし、これまでの生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病)の重症化予防に加え、高齢者の低栄養・フレイル防止を視野に入れて検討がなされた。主な改定点として、・高齢者を65~74歳、75歳以上の2つに区分・生活習慣病における発症予防の観点からナトリウムの目標量引き下げ・重症化予防を目的としてナトリウム量やコレステロール量を新たに記載・フレイル予防の観点から高齢者のタンパク質の目標量を見直しなどが挙げられる。日本人の食事摂取基準(2020年版)、まずは総論を読むべし 報告書やガイドラインなどを活用する際には、まず、総論にしっかり目を通してから、各論や数値を理解することが求められる。しかし、メディアなどは総論を理解しないまま数値のみを抜粋して取り上げ、問題となることがしばしばあるという。これに対し、策定検討会のメンバーらは「各分野のポイントが総論だけに記載されていると、それが読まれずに数値のみが独り歩きし、歪んだ情報が流布されるのではないか」と懸念。これを受け、日本人の食事摂取基準(2020年版)の総論には、“同じ指標であっても、栄養素の間でその設定方法および活用方法が異なる場合があるので注意を要する”と記載し、総論以外にも各項目の目標量などがどのように概算されたのかがわかるように『各論』を設ける。メンバーらは「各指標の定義や注意点はすべて総論で述べられているため、これらを熟知したうえで各論を理解し、活用することが重要である」と、活用方法を強調した。 以下に日本人の食事摂取基準(2020年版)の各論で取り上げられる具体的な内容を抜粋する。タンパク質:高齢者におけるフレイルの発症予防を目的とした量を算定することは難しいため、少なくとも推奨量以上とし、高齢者については摂取実態とタンパク質の栄養素としての重要性を鑑みて、ほかの年齢区分よりも引き上げた。また、耐容上限量は、最も関連が深いと考えられる腎機能への影響を考慮すべきではあるが、基準を設定し得る明確な根拠となる報告が十分ではないことから、設定しなかった。脂質:コレステロールは、体内でも合成される。そのために目標量を設定することは難しいが、脂質異常症および循環器疾患予防の観点から過剰摂取とならないように算定が必要である。一方、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。炭水化物:炭水化物の目標量は、炭水化物(とくに糖質)がエネルギー源として重要な役割を担っていることから、アルコールを含む合計量として、タンパク質および脂質の残余として目標量(範囲)を設定した。ただし、食物繊維の摂取量が少なくならないように、炭水化物の質に留意が必要である。脂溶性ビタミン:ビタミンDは、多くの日本人で欠乏または不足している可能性があるが、摂取量の日間変動が非常に大きく、摂取量の約8割が魚介類に由来し、日照でも産生されるという点で、必要量を算出するのが難しい。このため、ビタミンDの必要量として、アメリカ・カナダの食事摂取基準で示されている推奨量から日照による産生量を差し引いた上で、摂取実態を踏まえた目安量を設定した。ビタミンDは日照により産生されるため、フレイル予防を図る者を含めて全年齢区分を通じて可能な範囲内での適度な日照を心がけるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である。日本人の食事摂取基準(2020年版)改定の後には高齢化問題が深刻さを増す 日本では、2020年の栄養サミット(東京)開催を皮切りに、第22回国際栄養学会議(東京)や第8回アジア栄養士会議(横浜)などの国際的な栄養学会の開催が控えている。また、日本人の食事摂取基準(2020年版)改定の後には団塊世代が75歳以上になるなど、高齢化問題が深刻さを増していく。 このような背景を踏まえながら1年間にも及ぶ検討を振り返り、佐々木 敏氏(ワーキンググループ長、東京大学大学院医学系研究科教授)は、「理解なくして活用なし。つまり、どう活用するかではなく、どう理解するかのための普及教育が大事。食事摂取基準ばかりがほかの食事のガイドラインよりエビデンスレベルが上がると、使いづらくなるのではないか。そうならないためにも、ほかのレベルを上げて食事摂取基準との繋がり・連携を強化するのが次のステージ」とコメントした。また、摂取基準の利用拡大を求めた意見もみられ、「もっと疾患を広げるべき。次回の改定では、心不全やCOPDも栄養が大事な要素なので入れていったほうがいい。今回の改定では悪性腫瘍が入っていないが、がんとともに長生きする時代なので、実際の現場に合わせると病気を抱えている方を栄養の面でサポートすることも重要(名古屋大学大学院医学系研究科教授 葛谷 雅文氏)」、「保健指導の対象となる高血糖の方と糖尿病患者の食事療法のギャップが、少し埋まるのではと期待している。若年女性のやせ、骨粗鬆症も栄養が非常に影響する疾患なので、次の版では目を向けていけるといい(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲氏)」、など、期待や2025年以降の改定に対して思いを寄せた。座長の伊藤 貞嘉氏(東北大学大学院医学系研究科教授)は、「構成員のアクティブな発言によって良い会・良いものができた」と、安堵の表情を浮かべた。 なお、厚労省による報告書(案)については3月末、パブリックコメントは2019年度早期に公表を予定している。

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偽性副甲状腺機能低下症〔PHP:pseudohypoparathyroidism〕

1 疾患概要■ 概念・定義副甲状腺ホルモン(PTH)に対する不応性のために、低カルシウム血症、高リン血症などの副甲状腺機能低下症と同様な症状を呈する疾患である。血中PTH濃度は異常高値となる。ホルモン受容機構を構成するオルブライト遺伝性骨ジストロフィー(Albright’s hereditary osteodystrophy:AHO)と呼ばれる症候を合併する病型をIa型、合併しないものをIb型と呼ぶ。■ 疫学わが国における本症の患者数は約400人と推計されている。性差はない。■ 病因PTH受容体はG蛋白カップリング型受容体である。その細胞内シグナルはα、β、γのサブユニットから構成されるGsタンパク質を介して、アデニル酸シクラーゼの活性化によりサイクリックAMP(cAMP)を生成する系に伝えられる。偽性副甲状腺機能低下症のPTH不応性の原因はGsαタンパク質の機能低下である。Gsαタンパク質の発現は組織特異的インプリンティングを受けており、腎近位尿細管、下垂体、甲状腺、性腺などでは母由来アレル優位となっている。一方、骨、脂肪組織を含む他の大部分の組織では、父由来アレルと母由来アレルから同量のGsαタンパク質が産生される。Gsαタンパク質はGNAS遺伝子によってコードされている。組織特異的インプリンティングの維持にはGNAS遺伝子の転写調節領域のCpGメチル化状態が重要であり、アレルの親由来によってその状態が異なっていることが知られている。Ia型は、母由来のGNAS遺伝子アレルに変異が生じて正常なタンパク質が産生されない場合に起こる、常染色体顕性の母系遺伝である。すなわち、PTHの主たる標的組織である腎近位尿細管では、母由来の変異が主に発現するためにPTH不応となって低カルシウム血症、高リン血症を呈している。同様に、母由来アレル優位である甲状腺、下垂体、性腺においても甲状腺刺激ホルモン(TSH)不応による原発性甲状腺機能低下症、ゴナドトロピン不応による原発性性腺機能障害、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)不応による成長ホルモン分泌不全などが発症することがある。AHOは骨や脂肪組織などの非インプリンティング組織の異常であるが、正常Gsαタンパク質発現量の半減(ハプロ不全)によるものと考えられる。実際、父由来のGNAS遺伝子アレル変異の場合、血清カルシウム濃度は正常であるが、AHOを呈し、偽性偽性副甲状腺機能低下症と呼ばれている。Ib型では、組織特異的インプリンティングに重要なGNAS遺伝子の転写調節領域のメチル化状態における異常(エピジェネティック変異)が関連している。母由来アレルにこの異常が生じると、インプリンティング組織ではGsαタンパク質発現が減少するが、非インプリンティング組織ではこの影響を受けないので、AHOを合併しない。■ 症状1)低カルシウム血症に伴う症状口周囲や手足のしびれ、テタニー、痙攣、意識障害を呈することがある。これらの症状は、小児期以降から成人期に出現することが多く、Ib型の主訴として受診することが多い。2)AHOIa型では、低身長、円形顔貌、肥満、短指趾症、軟部組織の異所性骨化、歯牙低形成、知的障害を特徴とするAHOを認める症例が多く、診断のきっかけになる。3)他のホルモン異常TSH不応性は最も多く認められるホルモン異常で、Ia型の80~90%、Ib型の約40%にみられる。先天性甲状腺機能低下症として、偽性副甲状腺機能低下症より先に診断されることがある。ゴナドトロピン不応性による月経異常、不妊症、GHRH不応性による成長ホルモン分泌不全を呈することがある。以上のホルモン異常は、Ia型での報告が多いが、Ib型でも認められる。■ 予後基本的に低カルシウム血症の治療は、生涯、活性型ビタミンD製剤の服用を必要とする。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)本症は指定難病に認定されており、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究」班によって作成された診断基準と重症度分類(表)が使用されている。表 診断基準と重症度分類A.症状1.口周囲や手足などのしびれ、錯感覚2.テタニー3.全身痙攣B.検査所見1.低カルシウム血症、正または高リン血症2.eGFR 30mL/min/1.73m2以上3.Intact PTH 30pg/mL以上C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。ビタミンD欠乏症*血清25水酸化ビタミンD(25[OH]D)が15ng/mL以上であってもBの検査所見であること。25(OH)Dが15ng/mL未満の場合には、ビタミンDの補充などによりビタミンDを充足させた後に再検査を行う。D.遺伝学的検査1.GNAS遺伝子の変異2.GNAS遺伝子の転写調節領域のDNAメチル化異常<診断のカテゴリー>Definite:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外し、Dのいずれかを満たすもの。Probable:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。Possible:Aのうち1項目以上+Bのすべてを満たすもの。<重症度分類>下記を用いて重症を対象とする。重症:PTH抵抗性による低カルシウム血症に対して薬物療法を必要とすることに加え、異所性皮下骨化、短指趾症、知能障害により日常生活に制約があるもの。中等症:PTH抵抗性による低カルシウム血症に対して薬物療法を必要とするもの。軽症:とくに治療を必要としないもの。※診断基準および重症度分類の適応における留意事項1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見などに関して、診断基準上に特段の規定がない合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状などであって、確認可能なものに限る)。2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。3.なお、症状の程度が上記の重症度分類などで一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。原発性副甲状腺機能低下症との鑑別が必要な場合や、ビタミンD欠乏症との鑑別が困難な場合にはEllsworth-Howard試験を行う。同試験はPTHに対する腎の反応性(尿中リン酸増加反応とcAMP増加反応)を指標にするものである。尿中cAMP増加反応が正常にもかかわらず尿中リン酸増加反応の低下がある場合、Gタンパク質より下流のシグナル伝達障害に起因するII型偽性副甲状腺機能低下症とする考えがあるが、ビタミンD欠乏症、尿細管障害でも同様の所見がみられるため論議のあるところである。Ia型でAHOを欠いたり、Ib型でもAHOを認めたりする症例があるので、臨床像のみから分子遺伝的異常を断定することは困難である。遺伝学的検査は、指定難病の認定に必須ではないが、両者の分子生物学的診断にはきわめて有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法低カルシウム血症に対しては、Ca補充と活性型ビタミンD製剤投与を行う。血清カルシウム正常化と高カルシウム尿症を来さないようにする。TSH不応性による甲状腺機能低下症を合併する場合には甲状腺ホルモン薬の補充療法、ゴナドトロピン不応症には性ホルモン補充療法、GHRH不応性による成長ホルモン分泌不全を合併する場合には成長ホルモン投与を行う。■ 手術療法異所性皮下骨化は運動制限、生活制限の原因となる場合、外科的切除の適応になることがあるが、同一部位に再発することもある。4 今後の展望臨床的にも分子遺伝学的にも大変興味深い疾患である。インプリンティングの組織特異性を規定する因子、機序は不明である。また、GNAS遺伝子メチル化異常を来す孤発例のエピジェネティック変異の大部分は原因が不明である。さらに、II型の実態は不明で概念的なものにとどまっている。以上の課題に関して、今後の研究の進展が期待される。5 主たる診療科小児科、内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 偽性副甲状腺機能低下症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)皆川真規. 最新医学. 2016;71:1930-1935.2)佐野伸一朗. 医学のあゆみ. 2017;263:307-312.公開履歴初回2019年3月26日

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日本人うつ病に対するω3脂肪酸と心理学的介入

 勤労者における軽度~中等度のうつ病に対し、心理教育とω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の併用療法が有用であるかについて、長崎大学の田山 淳氏らが検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2019年2月15日号の報告。 二重盲検並行群間ランダム化比較試験として実施した。対象患者は、ω3脂肪酸を投与する介入群またはプラセボを投与する対照群に割り付けられた。介入群には、15×300mgカプセル/日を12週間投与した。ω3PUFAの1日の総投与量は、ドコサヘキサエン酸(DHA)500mg、エイコサペンタエン酸(EPA)1,000mgであった。治療後のうつ病重症度評価には、ベック抑うつ質問票(BDI-II)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・治療12週間後のBDI-IIスコアは、介入群(t=-7.3、p<0.01)および対照群(t=-4.6、p<0.01)のいずれにおいてもベースラインと比較し有意に低かった。・しかし、両群間の有意な差は認められなかった(0.7、95%CI:-0.7~2.1、p=0.30)。・本研究の限界として、血中ω3脂肪酸濃度が測定されておらず、脱落率も高かった。また、他の地域で一般化できない可能性があった。 著者らは「軽度~中等度のうつ病に対する心理教育とω3脂肪酸の併用療法は、症状改善に寄与するものの、心理教育単独療法と比較し、うつ症状の改善に違いが認められなかった」としている。■関連記事EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすかうつ病にEPAやDHAは有用なのかうつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」

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第11回 風邪を予防する5ヵ条【実践型!食事指導スライド】

第11回 風邪を予防する5ヵ条医療者向けワンポイント解説風邪やインフルエンザについての流行時期や感染経路などがニュースになる時期です。食生活への意識は、これらに対する予防効果として期待できますし、体調管理にもつながります。そこで、風邪を予防するための5つのポイントをまとめました。1)喉などの粘膜を保護するためにビタミンAを摂取するビタミンAは、体内で免疫機能、視覚、生殖、細胞情報伝達に関与している栄養素です。皮膚や粘膜の保護、健康を維持する働きがあるため、ウイルスや菌の予防に対しても効果があると考えられています。ビタミンAは2種類あり、肉や魚、乳製品、卵などに含まれるレチノールなどの既成ビタミンAと、野菜や果物などに含まれるβ−カロテンなどのプロビタミンAカロテノイドがあります。多く含まれる食品として、牛乳やチーズなどの乳製品、緑黄色野菜(色の濃い野菜:ニンジン、パセリ、ほうれん草、春菊、ブロッコリー、水菜など)があります。脂溶性ビタミンなので、「油で炒める」、「ドレッシングをかける」、「肉や魚と一緒に食べる」ことで効率的な吸収が期待できます。2)免疫を高めるためにビタミンDを摂取するビタミンDは、骨を丈夫にする働き、免疫機能を調整する働きがあり、ウイルスや菌などに対して予防効果が期待されています。ビタミンDは、サケ、イワシ、サバなどの魚類、キクラゲ、干し椎茸などのキノコ類に多く含まれます。なかでも、イワシ缶やサバ缶は手軽にとれる食品です。また、キクラゲや干し椎茸を意識して料理に加えるのも良いでしょう。ビタミンDは、太陽光に含まれる紫外線を浴びることで、皮膚で生合成されるビタミンです。しかし、最近では、日焼け止めクリーム、UVカットガラスの普及に伴い、30歳以上の約半数がビタミンD不足の状態であるという報告もあります。また、冬場は日照時間も少なくなるため、食べ物からのビタミンD摂取を意識することが大切です。3)果物や葉物野菜からビタミンCを摂取するビタミンCは、コラーゲンの生成、抗酸化作用、栄養素の吸収など様々な働きがあるため、免疫力を高め、風邪予防に対しても効果が期待されます。ただし、一度に大量摂取しても、尿へ排泄されてしまいます。こまめに摂取しましょう。ビタミンCは、レモンやオレンジ、みかんなどの果物からの摂取が一般的ですが、実は野菜に多く含まれ、赤ピーマン、かいわれ大根、カリフラワー、ミニトマト、キャベツなどに豊富に含まれます。熱に弱く、水溶性ビタミンのため、生での摂取が効率的です。ただし、オレンジジュースなどの大量摂取は、ビタミンCよりも糖の摂取過多が懸念されるので、野菜からのビタミンC摂取をすすめすると良いでしょう。4)のど飴や温かい飲み物で口の乾燥を予防する冬は、室内、野外ともに乾燥していることがほとんどです。乾燥により粘膜が乾燥すると、ウイルスや菌が侵入しやすくなるため、口腔内の保湿が重要です。口の中にのど飴などを入れておくと、唾液が出て乾燥予防になります。温かい飲み物は、水分補給によりカラダ全体の乾燥を予防するだけではなく、カラダを直接温め、胃腸の動きを活性化し、代謝を高める働きが期待できます。5)肉や魚などのタンパク質を摂取して体力を増強する免疫力を高めるためには、体力の増強が大切です。肉や魚をはじめとする動物性タンパク質は、筋肉になりやすく、日常的に意識して摂取することが大切です。大豆製品などの植物性タンパク質は、脂質が少なく、食欲がないときにも摂取しやすい良質なタンパク源です。しっかりと噛んで食べることは、胃腸への負担を減らし、消化の助けになります。また、噛むことは副交感神経を刺激します。副交感神経が優位になると、リンパ球が増え、免疫力の強化も期待できます。

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低ホスファターゼ症〔Hypophosphatasia〕

低ホスファターゼ症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義低ホスファターゼ症は、組織非特異的アルカリホスファターゼ(ALP)の欠損により引き起こされる疾患である。1948年、カナダのRathbun博士により、最初に報告された。骨X線検査で骨の低石灰化、くる病様変化がみられ、血液検査でビタミンD欠乏性くる病では血清ALP値が高値となるのに対して、本症では低下するのが特徴である。ALPの基質であるphosphoethanolamine、inorganic pyrophosphate(ピロリン酸)、 pyridoxal 5'-phosphateの上昇がみられる。通常、常染色体劣性遺伝性であるが、まれに常染色体優性遺伝性もある。低ホスファターゼ症の中心的な病態は、骨石灰化障害であるが、ALPの活性低下が、低石灰化を引き起こす機序については、まだ完全には理解されていない。骨はI型コラーゲン・オステオカルシンなどからなる骨基質にカルシウム、リンを中心とするミネラル(骨塩)が沈着してできている。骨芽細胞より放出された基質小胞中において、カルシウム、リンは濃縮される一方で、石灰化阻害物質であるピロリン酸は分解されることで、ハイドロキシアパタイトとして結晶化した後、コラーゲン線維上に沈着する。骨基質である類骨の量が増加する疾患が、くる病・骨軟化症であり、骨端線の閉鎖以前に石灰化障害が起きた場合をくる病、閉鎖以後に起こった場合を骨軟化症と呼ぶ。したがって、本症ではALPの活性低下に伴い蓄積するピロリン酸が石灰化を障害することや、局所のリン濃度の低下が低石灰化の原因と考えられている。■ 疫学周産期型低ホスファターゼ症は、10万人出生に1人程度の頻度でみられるまれな疾患である。わが国で最も頻度の高い変異であるc.1559delT変異は、一般人口の480分の1の頻度でみられ、ホモ接合体となって周産期重症型として発症する確率は92万分の1であると計算される。c.1559delTのホモ接合体以外で重症型となる比率を勘案すると、重症型は15万人に1人程度の発症となる。他の病型の頻度は知られていないが、周産期型より多い可能性がある。フランスでは30万人に1人程度と少ない。一方、カナダのメノー派(Mennonites)では、創始者効果でGly334Aspという変異が2,500人に1人の頻度でホモ接合体となる。■ 病因組織非特異型ALPをコードするALPL遺伝子異常により、ALPの酵素活性が低下することにより発症する。今までに350以上の変異が報告され、登録されている(The Tissue Nonspecific Alkaline Phosphatase Gene Mutations Database)。■ 症状骨のくる病様変化が特徴的であるが、症状は多彩で、病型ごとに異なるので、次項を参照してほしい。■ 分類6病型に分類され、173例にも及ぶ本症の症例が報告されている。1)周産期重症型低ホスファターゼ症最も重症なのが、周産期型で、通常致死的である。羊水過多を伴うことが多く、出生時には、四肢短縮、頭囲の相対的拡大、狭胸郭が認められる。全身X線検査像で、全身骨の低石灰化、長管骨の変形、骨幹端不整などがみられる。肺の低形成に伴う呼吸不全で生後早期に死亡することが多い。しかしながら、最近の新生児医療の進歩により、長期生存している例もある。痙攣を伴うことがあり、本症においてはALP活性低下によるPLP代謝異常が引き起こされるので、痙攣はビタミンB6依存性とされる。2)周産期軽症型低ホスファターゼ症骨変形により胎児期に診断された低ホスファターゼ症患児の中に、石灰化不良がほとんどなく、予後良好で通常の生活が営める例があり、本症の中で独立した病型として新たに確立された。日本人例ではF327L変異と本病型の相関性が高い。低身長を呈することもある。遺伝相談などにおいて、本症の致死性の判定については、この病型の存在を念頭に置くべきである。3)乳児型生後6ヵ月までに発症するタイプが乳児型である。発育は最初順調であるが、徐々に体重増加不良、筋力低下がみられ、大泉門は大きく開いている。くる病様変化は次第に明瞭となる。血清および尿中カルシウム値の上昇を伴い、腎石灰化を来す場合がある。呼吸器感染症から呼吸不全で死亡する例が多く、乳児型の予後も良好とはいえない。骨X線検査像は細い肋骨とくる病に特徴的な著しい骨幹端のカッピングがみられる。乳児型では、しばしば高カルシウム血症がみられ、そのため、多尿、腎尿路結石、体重増加不良などがみられる。頭蓋縫合の早期癒合も問題となる。4)小児型小児期に発症するタイプが小児型で、重症度はさまざまである。乳歯の早期喪失(4歳以前)を伴い、食事摂取において問題となることがある。くる病様変化のみられる骨幹端から骨幹に向かってX線透過性の舌様の突出がみられることがあり、本疾患に特徴的である。5)成人型成人になってから発症するタイプが成人型で、病的骨折、骨痛などで気付かれる。小児期にくる病や乳歯の早期喪失などの病歴を持つこともある。X線所見ではLooser zoneがみられることがある。6)歯限局型骨には症状がなく、歯に異常が限局するタイプである。乳歯の早期脱落が、多数の乳歯で起こった場合、見かけの問題に加えて機能的にも残存歯にかかる圧力がさらに他の乳歯の脱落を促進するため、小児用の義歯の装着が必要となる。■ 予後予後は病型により異なる。前項を参考にしてほしい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)骨X線検査上はくる病様変化、病的骨折がみられ、一般の血液検査では、血清ALP活性およびALPアイソザイム活性が低下する。尿中phosphoethanolamineの上昇は、尿中アミノ酸分析で証明される。これらの所見があれば、低ホスファターゼ症と診断されるが、家族歴も参考となる。通常両親は、異常遺伝子のキャリアで、血清ALP活性は中等度に低下している。さらに診断を確実にするには、遺伝子変異を検索するとよい。筆者らは厚生労働省 難治性疾患克服研究事業において、本症の診断指針を作成したので参考にしていただきたい(表)。表 低ホスファターゼ症の診断指針主症状1.骨石灰化障害骨単純X線所見として骨の低石灰化、長管骨の変形、くる病様の骨幹端不整像2.乳歯の早期脱落(4歳未満の脱落)主検査所見1.血清アルカリホスファターゼ(ALP)値が低い(年齢別の正常値に注意)参考症状1.ビタミンB6依存性痙攣2.四肢短縮、変形参考検査所見1.尿中ホスフォエタノールアミンの上昇(尿中アミノ酸分析の項目にあり)2.血清ピロリン酸値の上昇3.乳児における高カルシウム血症遺伝子検査1.確定診断、病型診断のために組織非特異的ALP(ALPL)遺伝子検査を行うことが望ましい参考所見1.家族歴2.両親の血清ALP値の低下診断基準主症状1つ以上と血清ALP値低値があれば遺伝子検査を行う。参考症状、参考検査所見、参考所見があれば、より確実である。(厚生労働省 難治疾患克服研究事業「低フォスファターゼ症」研究班作成)骨幹端の変化(不整像)を呈する疾患としては、ビタミンD欠乏性くる病、低リン血症性くる病、骨幹端異形成症が挙げられる。本症に特異的な臨床検査と必要に応じ遺伝子検査を行うことで診断可能である。■ 遺伝子診断ヒトのALPL遺伝子は1番染色体に位置し、50kb以上からなり、12のエクソンから構成される。変異は全エクソンにわたってみられる。多くはミスセンス変異であるが、1塩基欠失によるframe shiftおよび3塩基欠失も存在する。また、変異の位置が2つのアレルによって異なるヘテロ接合体が比較的多い。このことから、ALPL変異アレルの頻度は比較的まれではないと推定される。ただ、多くの症例で両親が変異遺伝子のキャリアであることが証明され、いわゆるde novoの変異の頻度は低いものと考えられる。本症の日本人では、310番目のフェニルアラニンがロイシンに置換されるF327Lと1559番目の塩基Tの欠失(1559delT)が比較的多くみられる。1559delTは周産期重症型との相関性が高く、F327Lは周産期軽症型に多い。酵素活性の検討では、F327Lは野生型の約70%の酵素活性が残存するのに対して、1559delTはほぼ完全に酵素活性を喪失している。常染色体優性遺伝を示す症例では、変異型TNSALPは野生型TNSALPの活性を阻害するような、いわゆる優性阻害効果を示すために発症するとされる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症では、確立された根本的な治療法はまだない。ビタミンD欠乏によるくる病様変化ではないので、ビタミンD投与は適応とならない。むしろ、高カルシウム尿症および血症の増悪を来すので避けるべきである。重症型における痙攣はビタミンB6依存性である可能性が高いので、まずビタミンB6の投与を試みる。乳児型ではしばしば高カルシウム血症がみられ、これに対しては低カルシウムミルクを使用する。現在は、酵素製剤アスホターゼアルファが使用可能となったので詳細を述べる。■ 酵素補充療法最近、ALP酵素補充療法が可能となった。ALP酵素製剤は、骨への移行を良くするために(骨標的)、ALPのC末端にL-Aspが10個つながっている(D10)。D10の構造を持つために、骨への親和性が腎臓に比べて100倍程度高まっている。さらにTNSALPとD10の間にIgG1 Fc portionが挿入されている。製剤は、最初Enobia社が開発し、その後アレクシオンファーマ社に引き継がれた。疾患モデルマウスを用いた非臨床試験では骨病変の改善と、長期生存が可能となることが示された。北米では本症に対し、この高骨親和性ALP組換え蛋白質(アスホターゼ アルファ、〔商品名: ストレンジック〕)を使用した酵素補充療法の治験が行われており、良好な成績が発表された。それによると11例の周産期型および乳児型の本症患者を対象としたオープンラベルの治験で、1例は最初の酵素静注時の反応で治療に入らなかった。もう1例も、肺炎により死亡したので、9例に関し、酵素補充療法の有効性、安全性が報告された。治験薬を初回のみ経静脈投与し、その後、週3回経皮投与するという方法で行われ、血清のALP値は中央値で5,000IU/Lを超え、投与法に問題はなかった(注:これは最終的に承認された投与法ではない、下記参照)。骨X線所見による石灰化の判定では、くる病様変化が著明に改善された。さらに、国際共同治験の最終報告もなされた。アスホターゼ アルファを投与された5歳時の全生存率は84%であった。一方、本症の自然歴調査では27%であり、アスホターゼ アルファは低ホスファターゼ症全生存率を改善した。骨の石灰化障害の改善も、定量的に示された。有害事象としては肺炎、呼吸障害、痙攣などを認めたが、治療との因果関係は乏しいと判定された。局所反応もわずかにみられたが、治療を中止する程ではなかった。国内外で実施された臨床試験における総投与症例71例中60例に副作用が認められ、その主なものは注射部位反応であった。わが国においても医師主導治験が行われ、国際共同治験と同様の結果であった。また、重要な注意点として、アスホターゼ アルファの投与により、カルシウムの代謝が促進されるため、低カルシウム血症が現れることがある。定期的に血清カルシウム値をモニターし、必要に応じて、カルシウムやビタミンDの補充を行う。頭蓋早期癒合症も有害事象として記載されている。アスホターゼ アルファは、ストレンジックとして、2015年8月にわが国においてアレクシオンファーマ社より世界に先駆け承認・発売され、その後、欧州、北米でも承認された。ストレンジックの効能・効果は本症で、1回1mg/kgを週6回、または1回2mg/kgを週3回、皮下投与して行う酵素補充療法である。わが国において本酵素療法の保険診療は始まっており、PMS(post-marketing survey)などを通じて、本製剤の有効性、安全性がより詳細に判明していくと思われる。4 今後の展望今後は、酵素補充療法の有効性、安全性をより長期に検討していく必要がある。また、諸外国に比べ、わが国では本症の成人例が少ないように思われる。診断に至っていないのか、実際に少ないのか、これから解明していかなければならない課題である。5 主たる診療科小児科、整形外科、歯科、産科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報The Tissue Nonspecific Alkaline Phosphatase Gene Mutations Database(遺伝子変異のデータベースサイト;医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 低ホスファターゼ症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報低フォスファターゼ症の会(患者と患者家族向けのまとまった情報)1)大薗恵一. 日本臨牀 別冊 先天代謝異常症候群(第2版)下. 日本臨牀社;2012;20: 695-699.2)Mornet E. Best Pract Res Clin Rheumatol. 2008;22:113-127.3)Ozono K, et al. J Hum Genet. 2011;56:174-176.4)Michigami T, et al. Eur J Pediatr. 2005;164:277-282.5)Whyte MP, et al. Bone. 2015;75:229-239.6)Whyte MP, et al. N Engl J Med. 2012;366:904-913.7)Whyte MP, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2016;101:334-342.8)Kitaoka T, et al. Clin Endocrinol (Oxf). 2017;87:10-19.9)Kishnani PS, et al. Mol Genet Metab. 2017;122:4-17.公開履歴初回2014年12月11日更新2019年1月29日

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統合失調症患者のメタボリックシンドロームに対するオメガ3脂肪酸の影響

 統合失調症患者は、ライフスタイルや抗精神病薬の影響によりメタボリックシンドローム(MetS)を発症するリスクが高いと言われている。中国・上海交通大学のFeikang Xu氏らによるこれまでの研究では、MetSを合併した統合失調症患者では、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現や産生が増加することが示唆されていた。今回著者らは、TNF-αの抑制には、ω3脂肪酸が関連していると言われていることから、MetSを合併した統合失調症患者において、ω3脂肪酸が炎症を緩和し、代謝異常を改善することに役立つかどうかについて検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年12月5日号の報告。 本研究では、統合失調症患者のMetsに対するω3脂肪酸の効果を調査するため、無作為化プラセボ対照試験を実施した。対象は、長期オランザピン治療を行ったMetSを合併した統合失調症患者80例。対象患者は、ω3群(40例)またはプラセボ群(40例)にランダムに割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・MetSを合併した統合失調症患者では、対照群よりもTNF-αレベルが有意に高かった(Z=-4.37、p<0.01)。・本研究完了時、ω3脂肪酸治療とトリグリセライド(TG)レベル減少との間に有意な相関が認められた(F群×時間=13.42、df=1,66、p<0.01)。・ω3脂肪酸治療は、12週間後に、代謝改善とともにTNF-αレベルを減少させた(F群×時間=6.71、df=1,66、p=0.012)。・TNF-αレベルの減少とTG減少には有意な相関が認められた(r=0.38、p=0.001)。 著者らは「MetSを合併した統合失調症患者に対するω3脂肪酸治療は、炎症レベルの低下とともに、TG代謝に有用であることが示唆された」としている。■関連記事統合失調症とω3脂肪酸:和歌山県立医大初回エピソード統合失調症の灰白質に対するω-3脂肪酸の影響EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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オステオペニアへのゾレドロン酸、骨折リスクを低減/NEJM

 オステオペニアの高齢女性に対して、ゾレドロン酸の18ヵ月ごと投与はプラセボと比較して、長期の非脊椎・脊椎脆弱性骨折リスクを有意に低減することが示された。ニュージーランド・オークランド大学のIan R. Reid氏らが、2,000例を対象に行った6年間にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で、NEJM誌2018年12月20日号で発表した。閉経後女性における骨折の大半が、オステオペニアを有する女性で発生するため、そうした女性に対する効果的な治療法が必要とされている。ビスホスホネートは、骨粗鬆症患者の骨折を予防するが、オステオペニアの女性における有効性は不明だった。ゾレドロン酸5mgを18ヵ月ごと4回投与 研究グループは、股関節全体または左右どちらかの大腿骨頸部Tスコアが-1.0~-2.5のオステオペニアが認められる、65歳以上の高齢女性2,000例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはゾレドロン酸5mgを、もう一方には生理食塩水(プラセボ)を、それぞれ18ヵ月ごとに4回静注投与した。 両群被験者に対し、食事性カルシウムを1日1g量摂取するよう助言する一方、カルシウムサプリメントは投与しなかった。ビタミンDサプリメントを摂取していなかった被験者には、コレカルシフェロールを、試験開始前(2.5mg単回投与)と試験期間中(1.25mg/月)に投与した。 主要評価項目は、非脊椎・脊椎の脆弱性骨折の初回発生までの期間だった。1例の骨折予防の治療必要数は15 被験者のベースラインでの平均年齢(±SD)は71±5歳、大腿骨頸部の平均Tスコアは-1.6±0.5、股関節骨折10年リスクの中央値は2.3%だった。 脆弱性骨折の発生が認められたのは、プラセボ群190例に対し、ゾレドロン酸群は122例だった(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.50~0.79、p<0.001)。1例の骨折を予防するための治療必要数は15だった。 プラセボ群に比べゾレドロン酸群は、脊椎以外の脆弱性骨折(HR:0.66、p=0.001)、症候性骨折(HR:0.73、p=0.003)、脊椎骨折(オッズ比:0.45、p=0.002)、身長低下(p<0.001)について、リスクの低下が認められた。

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ビタミンD受容体作動薬、透析患者の心血管リスク改善示せず/JAMA

 二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を伴わない維持血液透析患者において、経口ビタミンD受容体作動薬(VDRA)アルファカルシドールは、心血管イベントのリスクを低減しないことが、大阪市立大学大学院医学研究科の庄司 哲雄氏らが行った「J-DAVID試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月11日号に掲載された。慢性腎臓病患者は、ビタミンD活性化が障害されるため心血管リスクが増大する。血液透析患者の観察研究では、活性型ビタミンDステロールは、副甲状腺ホルモン(PTH)値にかかわらず、全死因死亡のリスクを抑制することが報告されている。VDRAの有効性を評価する日本の無作為化試験 J-DAVIDは、維持血液透析を受けているSHPTを伴わない患者における、VDRAの心血管イベントおよび総死亡の改善効果の評価を目的とする日本の多施設共同非盲検エンドポイント盲検化無作為化試験である(日本腎臓財団の助成による)。 対象は、年齢20~80歳の維持血液透析を受けている患者であった。血清インタクトPTH値は180pg/mL以下とした。 被験者は、アルファカルシドール0.5μgを毎日経口投与する介入群または非投与(対照)群に無作為に割り付けられた。全例が、診療ガイドラインで推奨される標準的な薬物療法を受けた。 主要アウトカムは、48ヵ月のフォローアップ期間中に発生した、(1)致死的または非致死的心血管イベント(心筋梗塞、うっ血性心不全による入院、脳卒中、大動脈解離/破裂、虚血による下肢切断、心臓突然死)、(2)冠動脈血行再建(バルーン血管形成術、ステント留置)またはバイパス移植術、(3)下肢動脈血行再建(バルーン血管形成術、ステント留置)またはバイパス移植術の複合とした。副次アウトカムは全死因死亡であった。心血管イベント、全死因死亡とも有意差なし 2008年8月18日~2011年1月26日の期間に、全国の108の透析施設で976例が登録された。964例(年齢中央値65歳、女性386例[40.0%])がintention-to-treat解析に含まれ、944例(97.9%)が試験を完遂した。フォローアップ期間中央値は4.0年だった。 心血管イベントの主要複合アウトカムは、介入群では488例中103例(21.1%)に発生し、対照群の476例中85例(17.9%)に比べむしろ高率であったが、両群間に有意な差は認めなかった(絶対差:3.25%、95%信頼区間[CI]:-1.75~8.24%、ハザード比[HR]:1.25、95%CI:0.94~1.67、p=0.13)。 全死因死亡の発生率は、介入群が18.2%と、対照群の16.8%よりも高かったが、有意差はみられなかった(HR:1.12、95%CI:0.83~1.52、p=0.46)。 主要複合アウトカムのうち、心血管イベント(HR:1.26、95%CI:0.88~1.79)、冠動脈血行再建/バイパス移植術(1.20、0.64~2.25)、下肢動脈血行再建/バイパス移植術(1.40、0.64~3.05)のいずれにも有意な差はなかった。また、主要複合アウトカムのHRは、per-protocol解析では1.32(0.96~1.82、p=0.09)、修正per-protocol解析では1.34(0.97~1.83、0.07)に上昇したが、いずれも有意差はなかった。 重篤な有害事象は、介入群では心血管関連が199例(40.8%)、感染症関連が64例(13.1%)、悪性腫瘍関連が22例(4.5%)に、対照群ではそれぞれ191例(40.1%)、63例(13.2%)、21例(4.4%)に認められた。 著者は、「これらの知見は、SHPTを伴わない維持血液透析患者におけるVDRAの使用を支持しない」と結論したうえで、既報の観察研究と異なる結果となった理由の1つとして、副甲状腺機能や骨代謝回転がVDRAの心血管作用を修飾する可能性に言及し、「VDRAは副甲状腺機能亢進症や骨代謝回転が亢進した患者に処方されるのに対し、本研究ではインタクトPTH≦180pg/mLの患者を対象としていることから、VDRAは骨からのリン/カルシウムの動員を抑制することでSHPTの患者にのみ便益をもたらしている可能性がある」と指摘している。

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食事療法の見直しへ日本糖尿病学会が動き出す

 食の欧米化や糖質制限の流行、高齢者の低栄養が問題となる昨今、日本人における食事療法の見直しが迫られている。2018年11月5日、日本糖尿病学会が主催する「食事療法に関するシンポジウム」が、5年ぶりに開催された。講演には、座長に羽田 勝計氏(「糖尿病診療ガイドライン2016」策定に関する委員会委員長)と荒木 栄一氏(「糖尿病診療ガイドライン2019」策定に関する委員会委員長)を迎え、5名の糖尿病専門医らが登壇した。 また、パネルディスカッションには、さまざまな観点からの意見を求めるべく、5つの団体(日本老年医学会、日本腎臓学会、日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本病態栄養学会、日本糖尿病協会)の代表が参加した。 本稿では講演の概要をお届けする。糖尿病食事療法でのBMI 22を基準としたエネルギー設定の問題点 宇都宮 一典氏(食事療法に関する委員会委員長)は「総エネルギー摂取量設定法をめぐる課題」をテーマに講演を行った。宇都宮氏は、食事療法の目的は、糖尿病の代謝異常の是正による合併症の抑制にあるとし「患者の条件を考慮した個別化の検討が必要」と述べた。なかでも、エネルギー設定が最も重要であることから、「これまで、標準体重を基に一律に総エネルギー摂取量を設定してきたが、エネルギー必要量には個人差が著しく、個々のさまざまなデータ(脂質、血圧など)の改善度を評価し、順守性もみながら設定すべき」と、改めて強調した。 また、死亡率の低いBMI 22を、標準体重としてエネルギー設定することの問題点として、海外と日本のデータを基にコメント。1)患者の死亡率が低いBMIは20~25の幅があり、また、75歳以上の後期高齢者の場合、そのBMIは25以上2)体重が増えるほど消費エネルギーは増加し、肥満者ほどエネルギー設定との乖離が増す3)国際的には実体重当たりで表記されており、比較することが難しいなどを挙げた。ただし、日本ではBMI 22を標準体重とすることが広く普及しており、十分なコンセンサスの形成が必要、と結んだ。糖尿病患者の食事療法におけるエネルギー必要量は? 勝川 史憲氏(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター)は「糖尿病患者のエネルギー必要量:エビデンスと歴史的経緯について」を講演した。 糖尿病患者の体重当たりの総エネルギー必要量に対して、「根拠となるデータが公表されていない」と指摘する勝川氏は、エネルギー消費量の計算においてゴールデンスタンダードな二重標識水法について解説。この方法は、自由行動下のエネルギー消費量を精度高く測定する方法であるが、コストが高く多人数の測定が困難であるという。 同氏がこの方法を用いた海外を含む4つの文献データを基に、総エネルギー消費量とBMIをプロットしたところ、「糖尿病患者のエネルギー必要量は健康な人と差がない、もしくは5~6%程度高め」という結果となった。これを踏まえ、食事療法における過少なエネルギー処方が、減量の不良や高齢者の虚弱に繋がることを指摘した。また、種々の食事調査と二重標識水法による総エネルギー消費量を評価した研究結果を挙げ、「太った人の食事調査ほど当てにならない」とコメントした。 最後に、時代変遷と食品の変化について語った同氏は、「昭和から平成にかけて食事のポーションサイズが大きくなっている」と述べ、「戦後間もない時代はMサイズの卵が80kcal/個だったのが、現在は同サイズが100kcal/個へと大きくなっている」と現状に適したわかりやすいエネルギー単位の検討について訴えた。高齢者糖尿病の食事療法の目的にフレイル・サルコペニアの予防 荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター/日本老年医学会)は「健康寿命を目指した高齢者糖尿病の食事療法」について、J-EDIT試験を中心に講演を行った。 高齢者糖尿病の食事療法の目的は、過剰摂取だけではなく、合併症予防やQOLの維持・向上、そして、これからは老年症候群と言われる認知症やサルコペニア、フレイルなどの予防が重要となる。荒木氏はさまざまな国内外の文献を示しながら、糖尿病患者のフレイル・サルコペニアのリスクを提示し、筋肉量、筋力や歩行速度の低下を指摘。同氏は、「ビタミンD低下はサルコペニア、ビタミンB2やカロチン摂取低下は認知機能低下、タンパク質摂取低下は筋肉量および下肢機能低下などのフレイルに関連する」と述べ、「タンパク質1.0g~1.5g/kg体重の摂取がサルコペニアの予防に大切である」と解説した。このほか、ロイシンを考慮した食事療法も推奨した。 J-EDIT試験の結果を踏まえ同氏は、「後期高齢者はタンパク質摂取が低い群で死亡リスクが高くなる。さらに、「緑黄色野菜の摂取量がHbA1cや中性脂肪値にも影響する」と、栄養成分ごとのリスクについて訴えた。糖尿病の食事療法で肥満患者以外へのカロリー制限を中止 “現在の糖尿病診療ガイドラインの食事法は根拠がない”と訴える山田 悟氏(北里大学北里研究所病院糖尿病センター)は「エビデンスで考える(日本人)2型糖尿病の食事療法」をテーマに講演した。 かつて、同氏が所属する病院でも、カロリー制限や脂質制限を推奨してきた。しかし、2016年にカロリー食によるサルコペニアリスクを示す論文報告を受けたのを機に、肥満患者以外へのカロリー制限を中止したという。 そもそも、欧米の糖尿病患者は太っていることが多い。一方で、日本人の糖尿病患者はBMI 24前後の患者が多く、体重管理のためのエネルギー処方は不要と考えられる。同氏は、「現在の治療法は、高血糖ではなく肥満の治療法である。非肥満患者に肥満治療食が提供されていてナンセンスである」とコメント。また、カロリー制限では脂質・タンパク質摂取によるインクレチン分泌を利用できないため、血糖管理には向かない。「理論的意義も実際の有効性も安全性も担保されていない」と、指摘した。 現在、ハーバード大学におけるメタボリックドミノの新モデルでは、糖質の過剰摂取が最上流として着目されており、実際、日本国内外で糖質制限食のエビデンスはそろっている。今後の糖尿病診療ガイドライン改訂に向けて同氏は、「日本人の糖尿病食事療法にエビデンスのある、多様な食事法の導入を目指していくべき」と提言した。糖尿病食事療法のための食品交換表は食事の実態と乖離 綿田 裕孝氏(「食品交換表」編集委員会委員長)が「糖尿病食事療法の指導状況の調査ー食品交換表の使用実態を中心にー」をテーマに講演した。 2013年11月に改訂された「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」は、現在の食品成分を緻密に反映した内容となっており、患者が摂取した食品を正確に把握すれば食事療法の実践に有効である。一方で、「現代社会において簡単に使いやすい、いろいろな食習慣・環境の人が使えるという定義どおりのものになっているかどうかは疑問が残る」と同氏は指摘。 この食品交換表の活用における実態を把握するために、今年6月に日本糖尿病学会に所属する管理栄養士らを対象にアンケート調査が行われた。その結果、食品交換表をあまり使用しない、まったく使用しないと回答した人が約40%に上り、その理由として、食事療法の対象となる患者のうち、調理する習慣がない、調理ができなくなった、中食・外食・コンビニ利用者が約90%占めるなど、現代の患者背景を考えると、調理を基盤とした食品交換表を使用するのが困難である、といった問題が浮き彫りとなった。 この結果より、同氏は、「食品交換表が食事の実態や指導したい内容と乖離している点が問題である。一方、写真が多い表は好まれて使用されているので、これらの結果を踏まえて検討していきたい」と締めくくった。■関連記事糖尿病発症や最適な食事療法を個別提示糖尿病食事療法の選択肢を増やす「緩やかな糖質制限」ハンドブック

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海洋由来オメガ3脂肪酸サプリの心血管疾患・がん1次予防効果に厳しい判定?(解説:島田俊夫氏)-978

 n-3脂肪酸(PUFAs)の摂取は心血管疾患・がん予防に好ましいとされてきたが、エビデンスに関しては必ずしもコンセンサスが得られていたわけでなく、議論の多いところである。この根拠の発端になったのが、グリーンランドのイヌイットに心筋梗塞が少ないとの報告1)である。これによりPUFA信仰が世界的に広がり、魚油、とくにその成分であるEPA、DHAなどがサプリとして広く普及し多くの人々に愛用されている。ところが、最近その効果に関して雲行きが怪しくなってきている。最近のビッグジャーナルに掲載された論文には、その効果に否定的な見解も多く見られるようになり、戸惑いが世の中に広がっている2)。2018年11月10日のNEJM誌に掲載された米国・Brigham and Women’s病院のManson JE氏らの論文は、無作為化二重盲検n-3脂肪酸群とプラセボ群との比較試験「VITAL試験」の結果報告であり、関心も高く時宜にかなっており私見をコメントする。研究要約 研究対象は米国の成人で参加者総数2万5,871例(n-3脂肪酸群:1万2,933例、プラセボ群:1万2,938例)であり、参加資格年齢は男性50歳以上、女性55歳以上とした。参加者平均年齢67.1歳、女性が51%で、5,105例(19.7%)の黒人参加者が含まれた。 ビタミンD3(2,000 IU/日)と魚介類由来のn-3脂肪酸(1g/日:EPA 460mg、DHA 380mg)を含む米国心臓病協会による心保護推奨用量(2次予防集団ですでに有効性確認されている用量)で介入が行われた。 研究は無作為化二重盲検デザインの「VITAL試験」として実施された。主要エンドポイント 心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死の複合)およびタイプを問わない浸潤がん。副次エンドポイント 複合心血管イベントの各項目、複合心血管イベント+血行再建(拡大心血管イベント)、部位別がん、がん死など。 安全性も併せて評価した。 本論文は、n-3脂肪酸群とプラセボ群の比較結果を報告した。追跡期間は5.3年で主要血管イベント発生は、n-3脂肪酸群386例、プラセボ群419例(ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.8~1.06)。浸潤がんは、n-3脂肪酸群820例、プラセボ群797例(HR:1.03、95%CI:0.93~1.13)と有意差は認めなかった。 主要なすべての副次エンドポイントのHRは、心筋梗塞以外すべてで有意差を認めなかった。 心筋梗塞のみHR:0.72(0.59~0.90)で有意であった。 全死因死亡(全体で978例)の解析では、HRは1.02(95%CI:0.90~1.15)と有意差を認めたが影響力は軽微。出血やそれ以外の有害事象に関しても両群間に差はなかった。執筆者コメント 本研究は明らかな病気がない50~55歳以上の成人を対象として、n-3脂肪酸サプリを1次予防に有効用量投与しメディアン5.3年追跡したが、少なくともこれまで言われていた好ましい効果を裏付ける結果を得ることができなかった。50~55歳の年齢集団を約5年間追跡したのは、追跡期間として評価するに十分な期間であったか多少疑問が残る。これまでも1次予防へのn-3脂肪酸の効果については議論の多いところであり、今回の本研究も有効性を認めなかったとの結果を素直に受け入れるべきではないか。投与量については十分量と言えるのか多少問題が残る。また、キーポイントはn-3脂肪酸の利用状況が酸化防止できていたか否かも気にかかる。n-3脂肪酸は不安定で酸化されやすいため、酸素との接触には特別注意が必要。結果がばらつく理由の中に酸化防止対策の問題はきわめて重要で見逃すわけにはいかない。 本論文の結果は、1次予防に関する研究成果に関しては失望を禁じ得ないと考える。しかし研究デザインのうえで多少検討の余地があると考える。

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オメガ3脂肪酸、心血管疾患・がんの1次予防効果なし?/NEJM

 n-3脂肪酸サプリメントはプラセボとの比較において、主要心血管イベントやがん発症の低下に結びつかないことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoAnn E. Manson氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VITAL試験」の結果、示された。魚介類に含まれるn-3(オメガ3とも呼ぶ)脂肪酸は、心血管疾患やがんリスクを抑制することが、いくつかの観察試験で示されている。しかし、これらリスクが通常の一般集団において、n-3脂肪酸サプリメントにそのような効果があるのかは明らかではなかった。NEJM誌オンライン版2018年11月10日号掲載の報告。米国人男性50歳以上、女性55歳以上の計2万5,871例を対象に検討 VITAL試験は2×2要因法が用いられ、ビタミンD3(2,000 IU/日量)と魚介類由来のn-3脂肪酸(1g/日量)の、心血管疾患およびがんの1次予防効果が検討された。対象は、米国人の50歳以上男性と55歳以上女性。n-3脂肪酸用量1g/日(n-3脂肪酸840mgの魚油カプセルでEPA460mgとDHA380mgを含む)は、米国心臓協会(AHA)による心保護のための推奨用量で、2次予防集団では有益であることが示されているものだった。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死の複合)とタイプを問わない浸潤がんとした。副次評価項目は、複合心血管イベントの各項目、複合心血管イベント+血行再建(拡大複合心血管イベント)、部位別がん、がん死などであった。また、安全性も評価した。 本論では、n-3脂肪酸とプラセボを比較した結果が報告された。無作為化を受けたのは、合計2万5,871例(n-3脂肪酸群:1万2,933例、プラセボ群:1万2,938例)であった。追跡期間中央値5.3年、有効性・安全性ともにプラセボ群と有意差なし 合計2万5,871例の平均年齢は67.1歳、女性は51%を占めた。また、黒人参加者5,106例を含んだ。 追跡期間中央値5.3年間で、主要心血管イベントの発生は、n-3脂肪酸群386例、プラセボ群419例であった(ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.80~1.06、p=0.24)。浸潤がんは、n-3脂肪酸群820例、プラセボ群797例であった(HR:1.03、95%CI:0.93~1.13、p=0.56)。 主な副次評価項目の解析におけるHRは、拡大複合心血管イベントが0.93(95%CI:0.82~1.04)、総心筋梗塞0.72(0.59~0.90)、総脳卒中1.04(0.83~1.31)、総心血管死0.96(0.76~1.21)、そしてがん死(341例)は0.97(0.79~1.20)であった。 全死因死亡(全体で978例)の解析では、HRは1.02(95%CI:0.90~1.15)であった。出血やその他の重篤有害事象の過剰リスクは観察されなかった。

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