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高リスクHER2+乳がんの術後補助療法、T-DM1+ペルツズマブの効果(KAITLIN)/ASCO2020

 高リスクのHER2陽性早期乳がんの術後補助療法で、アントラサイクリン投与後、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)+ペルツズマブは、標準治療であるトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサンに比べて、無浸潤疾患生存期間(IDFS)を延長しなかったことが、第III相無作為化非盲検試験であるKAITLIN試験で示された。ドイツ・ミュンヘン大学のNadia Harbeck氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。 HER2陽性早期乳がんの術後補助療法における標準治療である化学療法と1年間のHER2標的治療には、とくに高リスク患者における再発や化学療法関連有害事象などの課題がある。本試験では、タキサンとトラスツズマブをT-DM1に置き換えた場合の有効性と安全性を検討した。・対象:HER2陽性の早期乳がんで、リンパ節転移陽性またはリンパ節転移陰性かつホルモン感受性(HR)陰性かつ腫瘍径2cm超の患者・試験群:手術後9週間以内にアントラサイクリンを3~4サイクル投与後、T-DM1(3.6 mg/kg)+ペルツズマブ(420mg、初回840mg)を3週ごとに18サイクル(1年間)投与(AC-KP群)928例・対照群: 手術後9週間以内にアントラサイクリンを3~4サイクル投与後、タキサンを3~4サイクル投与と同時にトラスツズマブ(6mg/kg、初回8mg/kg)+ペルツズマブ(420mg、初回840mg)を3週ごとに18サイクル(1年)投与(AC-THP群)918例・評価項目:[主要評価項目]リンパ節転移陽性患者、ITT集団でのIDFS[副次評価項目]リンパ節転移陽性患者、ITT集団での全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2019年11月27日で、観察期間中央値はAC-THP群で57.1ヵ月、AC-THP群で57.0ヵ月であった。両群とも白人が約60%、アジア人が約30%であった。・主要評価項目であるリンパ節転移陽性患者におけるIDFSは、ハザード比(HR)が0.97(95%CI:0.71~1.32、p=0.8270)で有意差が認められなかった。3年IDFSはAC-KP群92.8%、AC-THP群94.1%であった。・ITT集団におけるIDFSにおいても同様でHRが0.98(95%CI:0.72~1.32)で、3年IDFSはAC-KP群93.1%、AC-THP群94.2%であった。・Grade 3以上の有害事象(AE)は、AC-KP群(51.8%)、AC-THP群(55.4%)と差はなかった。AEのためにT-DM1またはトラスツズマブを中止した割合は、AC-KP群(26.8%)がAC-THP群(4.0%)より高かった。

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tucatinib追加、HER2+乳がん脳転移例でOS改善(HER2CLIMB)/ASCO2020

 脳転移を有する既治療のHER2陽性乳がん患者に対し、トラスツズマブ+カペシタビンへのtucatinib追加投与はプラセボの追加投与と比較して、頭蓋内奏効率(ORR-IC)が2倍となり、CNS無増悪生存(CNS-PFS)および全生存(OS)アウトカムが良好であったことが示された。米国・ダナファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で第II相HER2CLIMB試験の探索的解析結果を発表した。tucatinib群で全死亡リスクが42%減少・対象:18歳以上、ベースライン時に脳転移を有し、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1による治療後に病勢進行が認められた、HER2陽性乳がん患者(ECOG PS 0/1) 291例・試験群:tucatinib(1日2回300mg、経口投与)+トラスツズマブ(21日ごとに6mg/kg[1サイクル目の1日目だけ8mg/kg])+カペシタビン(21日ごとに1日目から14日まで1日2回1,000mg/m2、経口投与) 191例・対照群:プラセボ+トラスツズマブ+カペシタビン 93例・評価項目:[脳転移を有する全患者]CNS-PFS、OS[測定可能な頭蓋内病変を有する患者]ORR-IC、頭蓋内奏効期間(DOR-IC)[CNSの局所治療を受け、孤立性CNS病変の進行後に本試験の治療を継続した患者] 無作為化から2回目の進行あるいは死亡までの期間、1回目の孤立性CNS病変の進行から2回目の進行あるいは死亡までの期間 tucatinib群と対照群を比較した主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は、平均年齢tucatinib群53歳 vs.プラセボ群52歳、ECOG PS 1が53.5% vs.59.1%、ホルモン(ERおよび/またはPR)陽性が54.0% vs.63.4%。・CNS進行あるいは死亡リスクは、tucatinib群で68%減少した(ハザード比[HR]:0.32、95%信頼区間[CI]:0.22~0.48、p<0.00001)。CNS-PFS中央値は、9.9ヵ月 vs. 4.2ヵ月。・全死亡リスクはtucatinib群で42%減少した(OS HR:0.58、95%CI:0.40~0.85、p = 0.005)。OS中央値は18.1ヵ月 vs.12.0ヵ月。・ORR-ICは47.3%(95%CI:33.7~61.2)vs.20.0%(95%CI:5.7~43.7)とtucatinib群で高かった。内訳は完全奏効(CR):3例(5.5%)vs.1例(5.0%)、部分奏効(PR):23例(41.8%)vs.3例(15.0%)。・DOR-IC中央値は6.8ヵ月(95%CI:5.5~16.4)vs.3.0ヵ月(95%CI:3.0~10.3)であった。・局所治療後も本試験の治療を継続した孤立性CNS病変を有する患者(30例)では、2回目の進行または死亡リスクがtucatinib群で67%減少し(HR:0.33、95%CI:0.13~0.85、p=0.02)、無作為化から2回目の進行または死亡までの期間中央値は 15.9ヵ月 vs.9.7ヵ月で、tucatinib群で優れていた。 ディスカッサントを務めたスペイン・Hospital Clinic de BarcelonaのAleix Prat氏は、「トラスツズマブ+カペシタビンへのtucatinib追加投与は、脳転移例を含む既治療のHER2陽性乳がん患者の新たな標準治療となるだろう」と話した。またtucatinibのCNS転移・進行の予防効果について評価されるべきとし、より早期の治療段階での投与の可能性についても言及した。

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トラスツズマブ デルクステカン、HER2変異陽性肺がんに有望な結果示す(DESTINY-Lung01)/ASCO2020

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、抗HER2抗体およびトポイソメラーゼI阻害薬の抗体薬物複合体である。 DESTINY-Lung01(NCT03505710)は、HER2過剰発現またはHER2遺伝子変異陽性の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)におけるT-DXdの多施設共同マルチコホートの第II相試験で現在進行中である。 米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)では、HER2変異患者に対する、追跡期間中央値8.0ヵ月の中間解析の結果が報告された。・対象:難治・再発で転移のある非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)。HER2発現またはHER2変異陽性で、pan-HER阻害薬を除くHER2標的療法未治療 42例(女性64.3%)[コホート1]HER2過剰発現患者[コホート2]HER2遺伝子変異陽性患者・介入:T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと投与・評価項目:[主要評価項目]独立中央委員会(ICR)評価による全奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は63.0歳。ECOG PSは0〜1。45.2%は中枢神経系転移があった。・HER2変異の90.5%はキナーゼドメインであった。・前治療ラインの中央値は2で、90.5%がプラチナベース化学療法を、54.8%がPD-(L)1阻害薬の治療を受けていた。・ ICR評価のORRは61.9%、疾患制御率は90.5%(CR:1例2.4%、PR:25例59.5%、SD:12例28.6%)であった。・追跡期間中央値8.0ヵ月の推定PFS中央値は14.0ヵ月、全生存期間(OS)は未到達であった。・治療関連有害事象(TEAE)の発現は100%(42例中42例)であったが、多くはGrade1/2であった。Grade3以上のTEAE発現は 64.3%(薬物関連は52.4%)で、頻度の高いものは好中球数減少、貧血などであった。間質性肺疾患(ILD)の発現は5例(11.9%)で、すべてGrade2であった。  この中間解析において、T-DXdは、重度の治療歴のあるHER2変異NSCLC患者に対して、高いORRと持続的効果を示す有望な臨床効果を示した。安全性プロファイルは、既報のものとおおむね一致していたが、発表者は、ILDについては重要なリスクであり、注意深い観察と管理が必要だとしている。

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T-DXd、HER2+乳がん脳転移例で良好な結果(DESTINY-Breast01)/ESMO BC2020

 CNS転移を有する既治療のHER2陽性乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)の有効性が示された。ベルギー・リエージュ大学のGuy Jerusalem氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)でDESTINY-Breast01試験のサブグループ解析結果を報告した。 DESTINY-Breast01試験は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相試験。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、PFS中央値は16.4ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。 この結果に基づき、本邦では2020年3月に「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を適応として、国内製造販売承認を取得。5月25日に発売された。・対象:切除不能または転移を有するHER2陽性乳がんで、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、T-DM1による治療歴のある患者。今回のサブグループ解析は、ベースライン時にCNS転移を有する患者が対象。・第1部では、5.4、6.4、7.4mg/kg(3週ごとに静脈内投与)の3つの用量に無作為に割り付けられ、推奨用量が決定された。第2部では、5.4mg/kg(3週ごとに静脈内投与)の用量で登録された184例を対象にT-DXdの有効性と安全性の評価が行われた。・評価項目:[主要評価項目]中央判定による奏効率(ORR、完全奏効[CR]+部分奏効[PR])[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])、臨床的有用率(CBR)、奏効期間、無増悪生存(PFS)期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に24例(13%)がCNS転移を有していた。・CNS転移を有する患者は全体集団と比較して、全身状態が良好で(ECOG PS 0がCNS転移有:62.5%、全体集団:55.4%)、ホルモン受容体陰性患者が多かった(58.3%、45.1%)。・治療歴数の中央値は全体集団と同じく6。CNS転移を有する患者の治療歴は、トラスツズマブ、T-DM1が100%、ペルツズマブ、HER2 TKIが62.5%、ホルモン療法が45.8%、その他の全身療法が100%、放射線療法が88.3%であった。・CNS転移を有する患者において、ORRは58.3%(95%信頼区間[CI]:36.6~77.9]。DCRは91.7%で、内訳はCR :4.2%、PR:54.2%、およびSD:33.3%であった。・PFS中央値は18.1ヵ月(95%CI:6.7~18.1)であった。・増悪がみられた部位は全体集団と同様の傾向がみられ、肺、肝臓、リンパ節などであった。CNS転移を有する患者のうち、脳において増悪がみられたのは2例(8.3%)。全体集団では4例(2.2%)であった。・脳における増悪は、CNS転移を有する患者では78日目と85日目に、CNS転移のない患者では323日目と498日目に発生した。・TEAEは、CNS転移を有する患者と全体集団の間で一致しており、主に消化器系または血液系であった。TEAEによる治療中止(2例以上みられたもの)は、全体集団で肺炎(11例)、ILD(5例)だったのに対し、CNS転移を有する患者では、肺炎とILD以外のTEAEにより2例が中止された。 発表では、HER2陽性(IHC3+)/ホルモン受容体陰性の転移を有する乳がん患者で、治療歴数17の48歳の女性が、T-DXd投与中に転移性脳病変の55%の退縮を示した症例についても報告された。 T-DXdについては、HER2陽性患者対象にT-DM1後の標準治療と有効性を比較するDESTINY-Breast02試験のほか、2つの第III相試験が進行中である。

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COVID-19に伴う乳がん診療トリアージについて/日本乳癌学会

 日本乳癌学会は5月25日、COVID-19に伴う乳がん診療トリアージについて指針を公開した。欧米の診療トリアージを参考に、日本における現在の診療に即した形となるようまとめたもの。外来診療、画像診断、外科療法、放射線療法、薬物療法それぞれについて、緊急度を高優先度/中優先度/低優先度の3つに分けて指針を示している。本稿では、外科療法、放射線療法、薬物療法について抜粋して下記紹介する。【外科療法】A)高優先度(できるかぎり通常通りの迅速な対応を要する)1)膿瘍の切開排膿2)術後合併症に対するサルベージ手術(血腫除去術や血流不全の皮弁に対する処置など)3)自家再建組織の血行再建術・修復術4)急速に増大する葉状腫瘍B)中優先度(治療の遅延が後に生存に影響を与える可能性がある)1)StageI・IIホルモン受容体陽性症例*に対しては、術前内分泌療法を施行して手術を延期することは可能である。*ルミナルAタイプや小葉がんの症例に対する6~12ヵ月の術前内分泌療法は、安全性および有効性が示されている。2)術前化学療法中の症例の方針変更T2またはN1のホルモン受容体陽性HER2陰性症例:状況によっては術前内分泌療法へ変更できる。トリプルネガティブまたはHER2陽性症例:施設環境などの状況によるが、易感染性の症例は手術に切り替えてもよい。3)局所再発の腫瘤切除術4)再建を伴う手術は、人工物再建として自家組織再建は極力行わない。C)低優先度(緊急性はなくパンデミックの期間中は延期することができる)1)良性疾患2)予防的切除3)非浸潤がんが確実な症例4)追加切除術5)術前内分泌療法が奏効している症例**中優先度の外科治療の項参照【放射線療法】A)高優先度1)他に有効な手段がない出血を伴う腫瘍2)術後照射中および再発巣に対する治療中の症例3)脊髄圧迫や脳転移、その他致命的な転移性病変を有する症例B)中優先度1)高リスク症例に対する照射炎症性乳がん、リンパ節転移陽性およびトリプルネガティブ乳がん、術前化学療法後に残存病変がある症例、若年(40歳未満)などの高リスク症例は、手術・化学療法終了後から20週以内に照射を行う。2)低〜中間リスク症例に対する照射65歳未満のStage I、Stage IIのホルモン受容体陽性乳がんなど低〜中間リスク症例は、手術・化学療法終了後から6ヵ月以内に照射を行う。また来院回数を減らすために寡分割照射も考慮する。C)低優先度1)65~70歳以上のホルモン受容体陽性/HER2陰性のStage I症例では、術後内分泌療法が行われている場合、生存率に影響を与えずに放射線照射を延期または省略できる。2)非浸潤がん症例では、術後内分泌療法を行われている場合、放射線照射は生存率に影響を与えないので省略できる。【薬物療法】A)高優先度1)トリプルネガティブまたはHER2陽性症例に対する術前・術後化学療法2)すでに開始されている術前・術後治療*の継続3)予後改善が見込まれる転移再発乳がんの初期化学療法[考慮すべき事項]・術前・術後治療*でも内分泌療法中の高齢者や、5年以上経過している症例などでは一時的な休薬も考慮する。・来院回数を減らすため、用量用法または投与間隔を調整する。・発熱性好中球減少症を避けるため、PEG-GCSF製剤は積極的に投与する。・免疫機能を考慮してデキサメタゾンの使用は適切な範囲で制限する。・トラスツズマブ・ペルツズマブやフルベストラントは免疫機能に影響を与えない。・LHRHアゴニストは長期製剤を使用する。B)中優先度1)緩和的化学療法[考慮すべき事項]・術後トラスツヅマブ治療中の症例では、12ヵ月間から7ヵ月間に短縮することは可能である。・転移再発例に対する抗HER2療法は、投与間隔の延長は可能である。・HER2陽性転移再発症例で、抗HER2療法が2年以上奏効している症例では、進展がなければ抗HER2療法の休止を考慮してもよい。・内分泌療法単独で治療可能な症例や奏効している症例に対しては、CDK4/6阻害薬や mTOR阻害薬の追加を延期する。C)低優先度1)骨転移に対する骨吸収抑制薬2)ポートフラッシュ

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HER2陽性乳がんに、トラスツズマブ デルクステカン発売/第一三共

 第一三共は、トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)について、2020年5月25日、国内で新発売したと発表。 同剤は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者を対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01、北米、欧州及び日本を含むアジアで実施)の結果に基づき、2020年3月に「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を適応として、国内製造販売承認を取得した。 製品概要・販売名:エンハーツ点滴静注用100mg・一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)・効能又は効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)・用法及び用量:通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回5.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。・薬価:エンハーツ点滴静注用100mg :100mg 1瓶 165,074円

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DS-8201のHER2陽性胃がん、FDAブレークスルーセラピー指定に/第一三共

 第一三共とアストラゼネカは、2020年5月11日、トラスツズマブ デルクステカン(開発コード:DS-8201)が、米国食品医薬品局(FDA)よりHER2陽性の再発あるいは転移のある胃がん治療を対象としてブレークスルーセラピー指定を受けたと発表した。 今回の指定は、トラスツズマブを含む2つ以上の前治療を受けたHER2陽性の進行・再発胃腺がん患者または胃食道接合部腺がん患者を対象とした第II相臨床試験(DESTINY-Gastric01)および日米共同第I相臨床試験の解析結果に基づくもの。第II相臨床試験(DESTINY-Gastric01)の結果は、本年5月下旬に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表予定である。参考DESTINY-Gastric01試験(Clinical Trials.gov) 国内では、2018年3月に厚生労働省よりHER2過剰発現の治癒切除不能な進行・再発の胃がん治療を対象として、先駆け審査指定を受けており、本年(2020年)4月に胃がんに係る効能又は効果追加の製造販売承認事項一部変更承認申請を行っている。

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COVID-19と乳がん診療ガイドライン―欧米学会発表まとめ(吉村吾郎氏)

新型コロナウイルス (COVID-19) パンデミック下での乳がん診療の優先順位をどう考えるべきか。欧米関連学会が発表したガイドラインを市立岸和田市民病院 乳腺外科部長 吉村 吾郎氏が解説する。新型コロナウイルス (COVID-19) パンデミック下での乳がん診療について、欧州臨床腫瘍学会 European Society for Medical Oncology Cancer (ESMO) 1) と米国乳がん関連学会2)がガイドラインを作成している。いずれのガイドラインも COVID-19 リスクの最小化と診療利益の最大化を目的とする、乳がん患者の優先順位付けを推奨している。その内容に大差はなく、診療内容別に高優先度/中優先度/低優先度に分類し、米国ガイドラインは中および低優先度をさらに3段階に細分している。本邦の臨床事情に合わせて若干改変した両ガイドラインの概略を以下に記載する。【外来診療】○高優先度感染や血腫などで病状が不安定な術後患者発熱性好中球減少症や難治性疼痛など腫瘍学的緊急事態浸潤性乳がんの新規診断○中優先度非浸潤性乳がんの新規診断化学療法や放射線療法中の患者病状が安定している術後患者○低優先度良性疾患の定期診察経口アジュバント剤投与中、あるいは治療を受けていない乳がん患者の定期診察生存確認を目的とする乳がん患者の定期診察【診断】○高優先度重症乳房膿瘍や深刻な術後合併症評価目的の診断しこりやその他乳がんが疑われる自覚症状を有する症例に対する診断臨床的に明らかな局所再発で、根治切除が可能な病変に対する診断○中優先度マンモグラフィ検診で BI-RADS カテゴリ4または5病変の診断転移再発が疑われ、生検が必要とされる乳がん患者への診断○低優先度マンモグラフィ検診BRCAキャリアなど高リスク例に対する検診マンモグラフィ検診で BI-RADS カテゴリ3病変の診断無症状の初期乳がん患者に対するフォローアップ診断【手術療法】○高優先度緊急で切開ドレナージを要する乳房膿瘍および乳房血腫自家組織乳房再建の全層虚血術前化学療法を終了した、あるいは術前化学療法中に病状が進行した乳がん患者トリプルネガティブ乳がん、あるいはHER2陽性乳がん患者で、術前化学療法を選択しない場合○中優先度ホルモンレセプター陽性/HER2陰性/低グレード/低増殖性のがんで、術前ホルモン療法の適応となる乳がん患者臨床診断と針生検結果が不一致で、浸潤性乳がんの可能性が高い病変に対する外科生検○低優先度良性病変に対する外科切除広範囲高グレード非浸潤性乳管がんを除く、非浸潤性乳がん臨床診断と針生検結果が不一致で、良性の可能性が高い病変に対する外科生検二次乳房再建手術乳がん高リスク例に対するリスク軽減手術【放射線療法】○高優先度出血や疼痛を伴う手術適応のない局所領域病変に対する緩和照射急性脊髄圧迫、症候性脳転移、その他の腫瘍学的緊急事態症例に対する緩和照射高リスク乳がん症例に対する術後照射 (炎症性乳がん/リンパ節転移陽性/トリプルネガティブ乳がん/HER2陽性乳がん/術前化学療法後に残存病変あり/40歳未満)○中優先度65歳未満でホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性の中間リスク乳がんに対する術後照射○低優先度非浸潤性乳がんに対する術後照射65歳以上でホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性の低リスク乳がんに対する術後照射【初期乳がんに対する薬物療法】○高優先度トリプルネガティブ乳がんに対する術前および術後化学療法HER2 陽性乳がん患者に対する抗 HER2 療法併用の術前および術後化学療法炎症性乳がん患者に対する術前化学療法すでに開始された術前/術後化学療法高リスクのホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性乳がんに対する術前および術後ホルモン療法±化学療法術前ホルモン療法○具体的推奨事項化学療法と放射線療法の適応となるホルモンレセプター陽性症例において、放射線療法の先行は許容されるホルモンレセプター陽性かつHER2 陰性で臨床ステージI-II乳がんでは、6~12ヶ月間の術前ホルモン療法がオプションとなるホルモンレセプター陽性かつHER2 陰性で化学療法の適応となる乳がん症例では、術前化学療法がオプションとなる通院回数を減らす目的での化学療法スケジュール変更 (毎週投与を2週間または3週間毎投与に変更) は許容される。好中球減少症リスクを最小限とするため、G-CSF 製剤を併用し、抗生剤投与も行うべきである。免疫抑制を避けるため、デキサメタゾンは必要に応じて制限すべきである低リスク、あるいは心大血管疾患やその他の合併症を有する HER2 陽性乳がん症例では、術後の抗 HER2 療法の期間を6ヵ月に短縮することはオプションとなるLHRH アナログ製剤を、通院回数を減らすために長時間作用型へ変更すること、患者自身または訪問看護師による在宅投与することを、ケースバイケースで相談するアロマターゼ阻害剤を投与されている症例では、骨量検査を中止する (ベースラインおよびフォローアップとも)可能であれば、自宅の近くの医療機関で画像検査や血液検査を実施する可能であれば、遠隔医療による副作用のモニタリングを実施する【進行再発乳がんに対する薬物療法】○高優先度高カルシウム血症、耐えられない痛み、有症状の胸水貯留、脳転移など、腫瘍学的緊急事態症例に対する薬物療法重篤内蔵転移に対する薬物療法予後を改善する可能性の高い一次治療ラインでの化学療法、内分泌療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬○中優先度予後を改善する可能性のある二次、三次以降の治療ラインでの薬物療法○低優先度緊急性の低い高Ca血症や疼痛コントロール目的での骨修飾薬 (ゾレドロン酸、デノスマブ)○具体的推奨事項化学療法が推奨される場合、通院回数を減らす目的での経口薬治療は許容される通院回数を減らす目的での化学療法スケジュール変更 (毎週投与を2週間または3週間毎投与に変更) は許容される発熱性好中球減少症リスクの低いレジメンを選択することは許容される化学療法による好中球減少症リスクを最小限とするため、G-CSF 製剤を併用し、抗生剤投与も行うべきである。免疫抑制を避けるため、デキサメタゾンは必要に応じて制限すべきであるトラスツズマブとペルツズマブの投与間隔を延長することは許容される (例:4週毎投与)腫瘍量の少ない HER2 陽性転移性乳がんでトラスツズマブやペルツズマブによる治療が2年間以上にわたり行われている症例では、病状経過を3〜6ヵ月ごとにモニターしながら抗 HER2 療法の中止を考慮する耐容性を最適化し、有害事象を最小化するため、標的治療剤を減量投与することは許容される転移再発乳がん一次治療としての標的治療剤 (CDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、PIK3CA 阻害剤) とホルモン療法の併用を、ホルモン療法単独とすることは許容されるCDK4/6阻害剤による好中球減少症と COVID-19 発症リスクの関連は明らかではなく、感染徴候を注意深く観察し、COVID-19 を疑い症状が出現した場合は速やかに治療を中止する免疫チェックポイント阻害剤とCOVID-19 発症リスクの関連は明らかではなく、感染徴候を注意深く観察し、COVID-19 を疑い症状が出現した場合は速やかに治療を中止するLHRH アナログ製剤を、通院回数を減らすために長時間作用型へ変更すること、患者自身または訪問看護師による在宅投与することを、ケースバイケースで相談する多職種キャンサーボードでの議論と患者の希望を踏まえて、晩期治療ラインにおける休薬、最善支持療法、投与間隔の拡大、低容量維持療法は許容される骨転移患者に対する骨修飾薬は、通院回数を最小限にして投与されるべきである病状が安定している転移性乳がん症例では、ステージング目的の定期診察や画像検査の間隔を空ける抗 HER2療法中の心機能モニター検査は、臨床的に安定していれば遅らせることが許容される可能であれば、自宅の近くの医療機関で画像検査や血液検査を実施する可能であれば、遠隔医療による副作用のモニタリングを実施する1.ESMO magagement and treastment adapeted recommentaions in the COVID-19 ERA: Breast cancer. 2.Recommendations for prioritization, treatment, and triage of breast cancer patients during the COVID‐19 pandemic. the COVID‐19 pandemic breast cancer consortium.

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DS-8201をHER2陽性胃がんに国内申請/第一三共

 第一三共株式会社は、2020年5月7日、トラスツズマブ デルクステカン(開発コード:DS-8201、商品名:エンハーツ)について、HER2陽性の胃がんに係る効能又は効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請を国内において行った。 この申請は、トラスツズマブを含む2つ以上の前治療を受けたHER2陽性の進行・再発胃がん患者または胃食道接合部腺がん患者を対象とした第2相臨床試験(DESTINY-Gastric01)および日米共同第I相臨床試験の結果に基づくもの。 同剤は、厚生労働省よりがん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する治療として、先駆け審査指定を受けている。

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トラスツズマブ デルクステカン、HER2陽性乳がんに国内承認/第一三共

 2020年3月25日、第一三共株式会社は「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の効能・効果で、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ点滴静注用100mg)の製造販売承認を取得した。 トラスツズマブ デルクステカンの有効性と安全性は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01、北米、欧州および日本を含むアジアで実施)の結果により確認された。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、奏効期間中央値は14.8ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。トラスツズマブ デルクステカンを条件付き早期承認制度のもとで迅速承認、使用上の留意事項発出 トラスツズマブ デルクステカンは、日本において医薬品条件付き早期承認制度のもと優先審査品目に指定され、2019年9月に製造販売承認を申請していた。米国では、米国食品医薬品局(FDA)より迅速審査のもとで2019年12月に「転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移性乳がん」を適応として承認され、2020年1月より販売を開始している。 なお、厚生労働省では、トラスツズマブ デルクステカンは臨床試験において間質性肺疾患があらわれ、死亡例が報告されていること、国内での臨床試験症例が限定的であることから、同日(2020年3月25日)付で使用にあたっての留意事項を発出。適正使用を求めている。・製品名:エンハーツ点滴静注用100mg・一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)・効能・効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)・用法・用量:通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回5.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。・承認条件:1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。2. 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌患者を対象に実施中の第III相試験における本剤の有効性及び安全性について、医療現場に適切に情報提供すること。3. 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。・製造販売承認取得日:2020年3月25日・製造販売元:第一三共株式会社

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日本人HER2+早期乳がんへのトラスツズマブ、長期予後解析(JBCRG-cohort study 01)

 日本人のHER2陽性早期乳がん患者に対する、周術期のトラスツズマブ療法による5年および10年時の予後への影響が評価された。大規模試験において予後改善が示されてきたが、日本人患者における長期的有効性は明らかではない。また、新たな抗HER2薬などが登場する中で、治療を強化すべき患者と、軽減すべき患者の判断基準が課題となっている。そのため、治療選択のための再発予測モデルの構築が試みられた。天理よろづ相談所病院の山城 大泰氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年2月14日号掲載の報告より。 本研究は、浸潤性HER2陽性乳がんStageI~IIICと組織学的に診断され、周術期にトラスツズマブによる治療を少なくとも10ヵ月以上受けた20歳以上の患者を対象とした観察研究。主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・2009年7月~2016年6月の間に、国内56施設から2,024例を登録。適格基準を満たさなかった43例を除き、1,981例が解析対象とされた。・ベースライン時の治療歴は、術前化学療法を35.4%、術後化学療法を99.6%が受けていた。トラスツズマブ投与は術前のみが1.3%、術前および術後が22.2%、術後のみが76.5%であった。乳房温存術を51.6%、乳房切除術を48.4%が受けていた。また、術後ホルモン療法は48.2%、術後放射線療法は57.5%が受けていた。・追跡期間中央値は80.9ヵ月(5.0~132.2ヵ月、平均80.2ヵ月)。・5年DFS率は88.9%(95%信頼区間[CI]:87.5~90.3%)、10年DFS率は82.4%(95%CI:79.2~85.6%)。・5年OS率は96%(95%CI:95.1~96.9%)、10年OS率は92.7%(95%CI:91.1~94.3%)。・多変量解析により、再発のリスク因子は≧70歳、≧T2、臨床的に認められたリンパ節転移、組織学的腫瘍径>1cm、組織学的に認められたリンパ節転移(≧n2)、および術前治療の実施であった。・標準治療下での5年再発率は、構築された再発予測モデルでスコアが3以上の患者で10%超と推定された。 著者らは、単群の観察研究データに基づくことの限界に触れたうえで、この再発予測モデルがStageI~IIICの患者の治療選択を改善する可能性があると結んでいる。

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HER2陽性転移乳がんに対するカペシタビン+トラスツズマブに対するtucatinibの上乗せ(HER2CLIMB試験):無増悪生存期間においてプラセボと比較して有意に良好(7.8ヵ月vs.5.6ヵ月)(解説:下村 昭彦 氏)-1185

 本試験は、経口チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるtucatinibのカペシタビン+トラスツズマブへの上乗せを検討した二重盲検第III相比較試験である。主要評価項目は最初に登録された480例における独立中央判定委員会による無増悪生存期間(PFS)で、RECIST v1.1を用いて評価された。PFS中央値は7.8ヵ月vs.5.6ヵ月(ハザード比:0.54、95%CI:0.42~0.71、p<0.001)でありtucatinib群で有意に良好であった。副次評価項目である全登録症例におけるOS中央値は21.9ヵ月vs.17.4ヵ月(ハザード比:0.66、95%CI:0.5~0.88、p=0.005)であり、こちらもtucatinib群で有意に良好であった。 OSの延長を認めたことから、学会発表の場でも非常にインパクトが大きく、同日NEJM誌へ論文掲載された。同日に発表されたT-DXdとも対象が重なっており、今後の臨床での使用については議論が活発になるであろう。異なった試験間で単純な比較をすることはできないが、T-DXdのPFS中央値が16.4ヵ月であることを考えると、T-DXdが好んで使われる可能性は高いだろう。 現在、HER2陽性転移乳がんに対して使うことのできるTKIとしてラパチニブがあるが、本剤が承認された際にはTKIとしてはtucatinibが優先的に使われるであろう。その理由としては、(1)現在標準治療の1つであるカペシタビン+トラスツズマブへの上乗せ効果を証明した試験であること、(2)本試験の対象がトラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ エムタンシンによる治療歴を対象としており現在の実臨床に即していること、である。 残念なことに、この試験には日本からは参加できておらず、現時点でtucatinibが国内で承認される見込みは低い。米国食品医薬品安全局への申請は進められており、Breakthrough Therapyに指定されている。

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トラスツズマブ エムタンシン既治療のHER2陽性転移乳がんに対するtrastuzumab deruxtecan(DESTINY-Breast01):単アームの第II相試験で奏効率は60.9%(解説:下村 昭彦 氏)-1184

 本試験は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)既治療のHER2陽性乳がんにおけるtrastuzumab deruxtecan(DS-8201a, T-DXd)の有効性を検討した単アーム第II相試験である。主要評価項目である独立中央判定委員会による奏効率(objective response rate:ORR)は60.9%と非常に高い効果を示した。病勢制御率(disease control rate:DCR)は97.3%、6ヵ月以上の臨床的有用率(clinical benefit rate:CBR)は76.1%であった。 ご存じのように、2018年のASCOで第I相試験の拡大コホートの結果が発表され、HER2陽性乳がんにおいて奏効率が54.5%、病勢制御率が93.9%と非常に高い効果が報告され、治療効果が期待されていた薬剤の1つである。T-DXdは抗HER2抗体であるトラスツズマブにトポイソメラーゼ阻害剤であるexatecanの誘導体を結合した新しい抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)製剤である。1抗体当たりおよそ8分子の殺細胞性薬剤が結合しており、高比率に結合されている。 HER2陽性転移乳がんの標準治療は、1次治療でペルツズマブ+トラスツズマブ+タキサン療法、2次治療でT-DM1が行われていることが多い。3次治療以降はトラスツズマブ+化学療法もしくはラパチニブ+化学療法などが行われることが多く、治療効果は限定的であった。こういった日本を含む世界の現状から、T-DXdは非常に期待されている薬剤であり、2019年12月には米国食品医薬品安全局による承認を受けている。国内でもすでに承認申請が行われており、早期の承認が待たれている。また、T-DXdは国内企業が開発しており、学会発表や論文の筆頭・共著に国内の研究者が多数参加していることが特徴である。 一方で注意も必要である。Grade3以上の有害事象は50%以上の症例で確認されている。血液毒性や悪心嘔吐が頻度の高い有害事象であるが、13.6%で薬剤性肺障害が報告されている(Grade3は1例のみ)。薬剤の特性として肺障害が起きやすいことは指摘されていたが、実際に投与された症例でも薬剤性肺障害の頻度が高いことが示されている。治療関連死のリスクもあるため、今後実臨床下で使用する際には十分薬物療法の経験を積んだ専門医が治療に関わる必要があるだろう。 現在、T-DM1後の症例を対象として抗HER2薬+化学療法と直接比較を行う第III相試験、T-DM1との直接比較を行う第III相試験が行われており、目を離せない薬剤である。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)レポート

レポーター紹介2019年12月10日~14日まで5日間にわたり、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)が開催された。乳がんだけを取り扱う世界最大の学会である。1977年より開催されており、90ヵ国を超える国々から研究者や医師、医療従事者が参加する。臨床試験のみならず、トランスレーショナルリサーチや基礎研究の演題も口演として聴講できるのが特徴である。ここ数年は欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で大きな演題が発表されるようになった影響もあり、SABCSでは臨床試験についてはサブグループ解析や追跡調査の結果が取り上げられることが多かったが、2019年は今後の日常臨床に大きく影響を及ぼす演題が複数取り上げられた。とくにHER2陽性転移乳がんの演題は非常に重要なものが2題発表された。後に取り上げるDS-8201aの第II相試験の結果は、国内で開発された薬剤であるということもあり、ほぼ半数の演者が国内の研究者であった。すべての演題が興味深いものであったが、なかでも興味深かった6演題を紹介する。T-DM1既治療HER2陽性乳がんにおけるtrastuzumab deruxtecan(DESTINY-Breast01試験)trastuzumab deruxtecan(DS-8201a、T-DXd)は抗HER2抗体であるトラスツズマブにトポイソメラーゼ阻害薬であるexatecanの誘導体を結合した新しい抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)製剤である。1抗体当たりおよそ8分子の殺細胞性薬剤が結合しており、高比率に結合されている。すでに第I相試験の結果は発表・論文化されており、高い有効性が示されていて、期待されている薬剤の1つである。本試験はT-DM1既治療のHER2陽性進行乳がんを対象として行われた単群第II相試験である。第I相試験ではDLTを認めなかったものの、毒性の懸念からPART 1では用量の再設定が行われ、5.4mg/kgが至適投与量とされた。主要評価項目は独立中央判定委員会によるRECIST v1.1を用いた奏効率、副次評価項目として病勢制御率や臨床的有用率、無増悪生存期間、全生存期間、安全性などが置かれた。184例が5.4mg/kgで投与され、全員が女性であった。ホルモン受容体陽性が52.7%、HER2ステータスはIHC3+が83.7%、IHC2+または1+でISH陽性が16.3%であった。全例がトラスツズマブおよびT-DM1による治療歴を有した。主要評価項目である独立中央判定委員会による奏効率(objective response rate:ORR)は60.9%と非常に高い効果を示した。病勢制御率(disease control rate:DCR)は97.3%、6ヵ月以上の臨床的有用率(clinical benefit rate:CBR)は76.1%であった。奏効期間の中央値は14.8ヵ月であり、3次治療以降としては非常に長い奏効期間を有した。65.8%がペルツズマブによる治療歴を有し、ペルツズマブ治療歴のない症例でより奏効率が高い傾向を示した。無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の中央値は16.4ヵ月、全生存期間(overall survival:OS)の中央値は未到達であった。有害事象(adverse event:AE)はGrade3以上の治療関連AEが57.1%(薬剤との因果関係ありが48.8%)、SAEが22.8%(同12.5%)、治療関連死は4.9%(同1.1%)であった。とくに注目されているAEである肺障害は全Gradeで13.6%と高頻度に発生していた。多くはGrade1または2であったが、2.2%がGrade5であり、やはり注意が必要なAEであるといえよう。総じて毒性が強く、とくに肺障害に注意が必要なものの、非常に高い奏効率と奏効期間を有する薬剤であるといえる。本試験の結果は同日New England Journal of Medicine(NEJM)誌オンライン版に掲載された。筆者は本薬剤の開発の初期段階から関わってきたが、実際に自分が使って感じている実感と本臨床試験の結果は合致している。米国食品医薬品局(FDA)は本試験の結果をもって、2019年12月20日にT-DXdを迅速承認した。国内でも2019年9月に承認申請がなされており、早期に承認されて日本の患者さんに本薬剤が早く届くことを期待している。HER2陽性乳がんにおけるカペシタビン+トラスツズマブに対するtucatinibもしくはプラセボの上乗せ効果を比較する第III相試験(HER2CLIMB試験)tucatinibは経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)でHER2のキナーゼドメインを阻害する。ラパチニブはEGFRも阻害するが、tucatinibはHER2特異性が高い。本試験は、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびT-DM1による治療歴を有するHER2陽性転移乳がんを対象とした第III相試験でtucatinibまたはプラセボをカペシタビン+トラスツズマブ療法に併用した。ベースラインでの脳MRIが必須とされており、脳転移があっても治療後で落ち着いている、もしくは早急な局所治療を必要としない場合は登録可能とされた。2対1の割合で割り付けが行われ、tucatinib群に410例、プラセボ群に202例が登録された。主要評価項目は最初に登録された480例における独立中央判定委員会によるPFSで、RECIST v1.1を用いて評価された。副次評価項目としてOS、脳転移のある症例のPFS、測定可能病変を有する症例でのORRとされた。脳転移症例は両群で50%弱の割合であった。主要評価項目評価対象症例におけるPFS中央値は7.8ヵ月vs.5.6ヵ月(ハザード比:0.51、95%CI:0.42~0.71、p<0.00001)でありtucatinib群で有意に良好であった。全登録症例におけるOS中央値は21.9ヵ月vs.17.4ヵ月(ハザード比:0.66、95%CI:0.5~0.88、p=0.0048)であり、こちらもtucatinib群で有意に良好であった。脳転移症例におけるPFS中央値は7.6ヵ月vs.5.4ヵ月(ハザード比:0.48、95%CI:0.34~0.69、p<0.00001)であり、脳転移症例においても同様の有効性を示した。奏効率は41% vs.23%でこちらもtucatinib群で有意に良好であり、すべての副次評価項目でtucatinib群が良好な結果であった。Grade3以上のAEはtucatinib群で55%に対しプラセボ群で49%であり、両群間で大きな差は認められなかった。頻度の高いAEは下痢、手足症候群、悪心、倦怠感、嘔吐などであり、HER2-TKIやカペシタビンでよくみられるAEが多かった。本試験の結果は同日NEJM誌オンライン版に掲載された。本試験はペルツズマブ、T-DM1既治療例を対象として行われた初めてのHER2-TKIの試験である。本試験ではPFSのみならずOSにおいても有意に良好であった。また、脳転移に特化したエンドポイントでも有効性を示しており、HER2陽性乳がんで多い脳転移症例に対しても期待される薬剤である。ただ、残念ながら日本からは本試験には参加していない。アロマターゼ阻害薬で進行したホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するパルボシクリブ+内分泌療法vs.カペシタビンの第III相試験(PEARL試験)2019年のASCOで韓国のグループより閉経前ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するエキセメスタン+パルボシクリブ+LHRHa vs.カペシタビンの第II相試験結果(KCSG-BR 15-10)が発表されたことは記憶に新しい。PEARL試験は閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんの2次治療としてホルモン療法+パルボシクリブをカペシタビンと比較した第III相試験である。ホルモン療法としてはエキセメスタンとフルベストラントが選択され、それぞれ別のコホートとして試験が行われた。コホート1(エキセメスタン)、コホート2(フルベストラント)でそれぞれ300例が1対1の割合でホルモン療法+パルボシクリブもしくはカペシタビンに割り付けられた。主要評価項目はコホート2におけるフルベストラント+パルボシクリブのカペシタビンに対するPFSの優越性(ESR1の変異の有無によらない)、およびESR1変異のない症例におけるホルモン療法(エキセメスタン/フルベストラント)+パルボシクリブのカペシタビンに対するPFSの優越性の2つであった。1つ目の主要評価項目であるフルベストラント+パルボシクリブの優越性については、PFS中央値が7.5ヵ月vs.10ヵ月(ハザード比:1.09、95%CI:0.83~1.44、p=0.537)であり、優越性は示されなかった。2つ目の主要評価項目であるESR1変異のない症例におけるホルモン療法+パルボシクリブの優越性についても、PFS中央値が8.0ヵ月vs.10.6ヵ月(ハザード比:1.08、95%CI:0.85~1.36、p=0.526)であり、優越性は示されなかった。KCSG-BR 15-10試験ではエキセメスタン+パルボシクリブ+LHRHaはカペシタビンに対して良好なPFSを示した。KCSG-BR 15-10試験は第II相試験であるため単純に比較することはできないが、本試験が閉経後かつアロマターゼ阻害薬で進行した症例を対象にしているのに対し、KCSG-BR 15-10試験ではTAMの治療歴がある症例しか含まれておらずホルモン感受性が異なっていると考えられること、1次治療と2次治療の違い、などが結果の違いの原因となっていると考察できる。転移乳がんに対するデュルバルマブvs.化学療法のランダム化第II相試験(SAFIR02-IMMUNO試験)デュルバルマブは免疫チェックポイント阻害薬の1つで、PD-L1を阻害する。局所進行肺がんの化学放射線治療後の維持療法として使用されている。抗PD-L1抗体ではアテゾリズマブがアルブミン結合パクリタキセルとの併用において、PD-L1発現のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回治療としての有効性を示し標準治療となっている。本試験ではHER2陰性転移乳がんを対象として化学療法に対する維持療法としてのデュルバルマブの有効性を検討した第II相試験である。3コース目の化学療法前に腫瘍検体を採取し、その後CR/PR/SDを達成した症例が対象となった。腫瘍検体で標的分子が検出されている際には分子標的治療の臨床試験に参加し、検出されなかった症例が本試験の対象となった。主要評価項目はPFSであった。デュルバルマブ維持療法へスイッチする群と、治療を変更せずに化学療法を行う群に199例が2対1の割合で割り付けられた。PD-L1発現についてSP142抗体を用いて評価され、TNBCでは52.4%、ホルモン受容体陽性では14.9%が陽性であった。PFS中央値は2.7ヵ月vs.4.6ヵ月(ハザード比:1.40、95%CI:1.00~1.96、p=0.047)であり、化学療法群で良好な傾向であった。また、サブグループ解析ではホルモン受容体陽性で化学療法群が良好であった。OS期間においては21.7ヵ月vs.17.9ヵ月(ハザード比:0.84、95%CI:0.54~1.29、p=0.42)であり両群間に差を認めなかった。一方、サブグループ解析ではTNBCで21ヵ月 vs.14ヵ月、PD-L1陽性で26ヵ月vs.12ヵ月と、デュルバルマブで良好な傾向を認めた。乳がんに対しても活発に免疫チェックポイント阻害薬の開発が行われており、本試験もその1つである。All comerで行われた試験であったが、今後の開発はホルモン受容体ステータスやPD-L1の発現など、バイオマーカーでの絞り込みが必須と考えられる。また、ホルモン受容体陽性乳がんではこれまで免疫チェックポイント阻害薬の開発は成功しておらず、その生物学的背景の解明も重要である。ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんの術後ホルモン療法に対するS-1の追加効果を検証した第III相試験(POTENT試験)2017年のSABCSで日本と韓国のグループから術前化学療法で残存腫瘍があった症例に対するカペシタビンの上乗せ効果が示され(CREATE-X試験)、日本の研究者にとって大きな自信につながったことは記憶に新しい。POTENT試験はホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんを対象として、低リスク症例を除いた症例群に対してS-1の上乗せ効果をみた第III相試験である。本試験ではStageIからIIIBを対象とし、リンパ節転移陽性もしくはリンパ節転移陰性かつ中間リスクもしくは高リスクの症例を対象とした。1,959例がホルモン療法+S-1群とホルモン療法単独群に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は無浸潤疾患生存(invasive disease-free survival:IDFS)とされた。5年IDFSにおいて、S-1群で86.9%に対し、ホルモン療法単独群では81.6%(ハザード比:0.63、95%CI:0.49~0.81、p<0.001)であり、S-1群で良好な結果であった。本試験は中間解析で有効性の閾値を超えたため、早期有効中止となっている。AEについては、S-1群で増加傾向にあり、Grade3以上のものとしては好中球減少(7.5%)や下痢(1.9%)に注意が必要であるが、総じてコントロールは可能と考えられた。本試験は先進医療Bとして行われており、今後は保険承認の手続きを目指していくと思われる。2017年にはCREATE-X試験、2018年にはAERAS試験、そして本試験と、ここのところSABCSでは毎年日本から口演が発表されている。日本の研究者として大変誇らしいとともに、少しでも日本からのエビデンス発信に貢献していきたい。APHINITY試験全生存期間の中間解析APHINITY試験はHER2陽性乳がんの術後化学療法におけるトラスツズマブ療法へのペルツズマブの上乗せを検証した第III相試験である。4,805例のHER2陽性乳がん患者が登録され、ペルツズマブ群(2,400例)とプラセボ群(2,405例)に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目はIDFSであり、OSは副次評価項目に含められた。4年IDFSは92.3% vs.90.6%(ハザード比:0.81、95%CI:0.66~1.00、p=0.045)であり、絶対リスク減少は2%に満たないもののペルツズマブ群で良好であった。また、本試験は当初リンパ節転移のない症例も登録されていたが、イベントが少ないことから途中でプロトコールが改訂され、リンパ節転移陽性症例のみが適格となった。今回のOS期間の2回目の中間解析では、6年生存率は94.8% vs.93.9%(ハザード比:0.85、95%CI:0.67~1.07、p=1.07)であり、両群間に差を認めなかった。IDFSのフォローアップデータは、6年IDFSで90.6% vs.87.8%(ハザード比:0.76、95%CI:0.64~0.91)とペルツズマブ群で良好であったが、リンパ節転移の有無(すなわちベースラインリスクの違い)でサブグループ解析を行うと、リンパ節転移陽性では6年IDFSで87.9% vs.83.4%(ハザード比:0.72、95%CI:0.59~0.87)とペルツズマブの上乗せ効果を認めたのに対し、リンパ節転移陰性では95.0% vs.94.9%(ハザード比:1.02、95%CI:0.69~1.53)と上乗せ効果は認めなかった。ホルモン受容体ステータスによらずペルツズマブの上乗せ効果が認められた。トラスツズマブの登場によりHER2陽性乳がんの予後は劇的に改善しており、術後ペルツズマブの追加によりリンパ節転移陽性例に対してはIDFSの改善が期待される。ただし、中間解析時点ではOSの上乗せ効果は認めないため、最終解析の結果が待たれる。リンパ節転移陰性例に対しては原則として術後ペルツズマブの上乗せは不要であろう。

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trastuzumab deruxtecan(DS-8201)、米国で乳がんの承認取得/第一三共

 第一三共とアストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ)は、2019年12月23日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)trastuzumab deruxtecanについて、米国食品医薬品局(FDA)より「転移乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移乳がん」を適応として販売承認を取得したと発表。 本適応は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発・転移乳がんを対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01)の奏効率および奏効期間の結果に基づき、迅速審査のもとで承認された。本適応での承認取得は条件付きであり、第III相臨床試験における臨床的有用性の検証が必要となる。同剤については、2019年10月にFDAより承認申請が受理されていた。

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新規ADC薬のDS-8201、既治療HER2+乳がんで腫瘍縮小効果/NEJM

 多くの前治療歴(レジメン数中央値6)のある転移を有するHER2陽性乳がんの治療において、trastuzumab deruxtecan(DS-8201)は持続的な腫瘍縮小効果(奏効率60.9%、奏効期間中央値14.8ヵ月)をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏らが行った「DESTINY-Breast01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号に掲載された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。trastuzumab deruxtecanは、トラスツズマブと同じアミノ酸配列を持ち、HER2を特異的な標的とするヒト化モノクローナル抗体と、細胞傷害性薬剤(ペイロード)である強力なトポイソメラーゼI阻害薬を、開裂可能なテトラペプチドベースのリンカーを介して結合した抗体薬物複合体(ADC)。既治療のHER2陽性進行乳がんの第I相用量設定試験(DS8201-A-J101試験)では、奏効率59.5%、奏効期間中央値20.7ヵ月と報告されている。trastuzumab deruxtecan(DS-8201)の有効性を2部構成の単群第II相試験で評価 本研究は、北米、日本を含むアジア、欧州の8ヵ国72施設が参加した2部構成の多施設共同非盲検単群第II相試験であり、2017年10月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(Daiichi SankyoとAstraZenecaの助成による)。 対象は、年齢18歳以上(日本と韓国は20歳以上)の切除不能または転移を有するHER2陽性乳がんで、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)による治療歴のある患者であった。 試験の第1部では、被験者はtrastuzumab deruxtecanの3つの用量(5.4、6.4、7.4mg/kg、3週ごとに静脈内投与)に無作為に割り付けられ、推奨用量が決定された。第2部では、推奨用量による治療の有効性と安全性の評価が行われた。 主要評価項目は、中央判定による奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])とし、主な副次評価項目は病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])、臨床的有用率(CBR、CR+PR+6ヵ月以上持続するSD)、奏効期間、無増悪生存(PFS)期間、安全性などであった。trastuzumab deruxtecan投与でDCR 97.3%、CBR 76.1% 第1部では、trastuzumab deruxtecanの第2部での推奨用量が5.4mg/kgと決定された。 5.4mg/kg群(184例)の年齢中央値は55.0歳(範囲:28.0~96.0)で、23.9%が65歳以上であり、97例(52.7%)がホルモン受容体陽性腫瘍であった。前治療レジメン数中央値は6(2~27)で、全例にT-DM1とトラスツズマブの治療歴があり、121例(65.8%)がペルツズマブ、100例(54.3%)がその他の抗HER2療法を受けていた。 治療期間中央値は10.0ヵ月(範囲0.7~20.5)で、追跡期間中央値は11.1ヵ月(範囲0.7~19.9)であり、128例(69.6%)が6ヵ月以上の治療を受けていた。 第2部では、184例中112例で奏効が得られ、奏効率は60.9%(95%信頼区間[CI]:53.4~68.0)であった。内訳はCRが6.0%、PRは54.9%であった。DCRは97.3%、CBRは76.1%だった。 T-DM1投与中または投与後に増悪した180例のうち、奏効が確認されたのは61.1%であった。また、T-DM1投与の直後にtrastuzumab deruxtecanの投与を受けた56例中36例(64%)で奏効が得られた。 奏効期間中央値は14.8ヵ月(95%CI:13.8~16.9)、PFS期間中央値は16.4ヵ月(12.7~未到達)であった。また、6ヵ月の時点での全生存(OS)率の推定値は93.9%(89.3~96.6)、1年OS率は86.2%(79.8~90.7)であり、OS期間中央値には未到達であった。 trastuzumab deruxtecan投与による最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数の減少(基本語として好中球数減少[neutrophil count decreased]と好中球減少[neutropenia]を含む)であり、20.7%(38/184例)に認められた。次いで、貧血が8.7%(16例)、悪心が7.6%(14例)にみられた。発熱性好中球減少は3例で発現した。独立判定委員会により、13.6%(25例)が試験薬関連の間質性肺疾患(Grade1/2:10.9%、Grade3/4:0.5%、Grade5:2.2%)と判定された。 著者は、「間質性肺疾患のリスクを考慮し、肺症状への配慮と注意深いモニタリングが求められる」としている。

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