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第261回 ほぼほぼ生き残り確定の零売薬局(後編) 憲法違反の指摘や「処方箋医薬品以外はOTC医薬品とするシンプルな制度」導入の提案など零売規制への反対相次ぐ

衆議院厚生委員会の附帯決議で法律の方針が180度転換こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。前回、久しぶりに零売について書いたので、以前利用した零売薬局を久しぶりに訪れてみました(「第127回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(後編)」参照)。以前と同様、腰痛用にロコアテープを購入、ついでに「零売薬局が規制でなくなる、と聞いたのですが?」と店頭の薬剤師(女性)に聞いてみました。すると、「そういう話は我々も聞いていますが、法律やルールに則ってやっていますので、なくならないと思います。実際、ニーズも高く都内の店舗もここ数年で増やしていますし」との答え。国会での細かな議論については知らないようでしたが、最前線の薬剤師に規制への危機感は感じられませんでした。さて、厚生労働省が今回の薬機法等改正法案で「原則禁止」にしようと目論んでいた零売が、衆議院厚生委員会において「セルフメディケーション推進の政策方針に逆行することがないよう」「国民の医薬品へのアクセスを阻害しないよう」といった附帯決議が採択されたことで法律の方針が180度転換、生き残りに向けて光が見えてきました。その背景にはいったい何があったのでしょうか。「法改正が将来にわたり違憲のそしりを受けないか慎重に審議すべき」と立民議員まず考えられるのは「憲法違反」の可能性です。前回書いたように、今年1月、零売規制が薬剤師の権利を侵害するなどとして、薬剤師らが国を相手取り訴訟を起こしました。原告の薬剤師の一人は記者会見で、裁判で「これまで国から出された通知には法的根拠がないことの確認を求める。さらに、零売の規制は憲法上の『職業選択の自由』や『表現の自由』を侵害し、国民の医薬品アクセスも阻害するものと主張」するとしていました。担当弁護士も「当該改正法が憲法違反に該当すると考える余地がある」と説明しました。また、4月11日付の薬事日報によれば、4月9日の衆院厚労委員会において立憲民主党の早稲田 夕季議員は、零売は「緊急時の手段として非常に有益で、法制化してまで対処する必要があるのか疑問」と訴えるとともに、零売に関する行政訴訟を5月に控えていることを踏まえ、「法改正が将来にわたり違憲のそしりを受けないか慎重に審議すべき」と話したそうです。こうした意見に対して、福岡 資麿厚生労働相は「緊急時等のやむを得ない場合に薬剤師と相談した上で、必要最小量の数量を販売する本来の趣旨に則って経営している薬局はこれまで通り継続できる。必要最小限かつ合理的な規制措置で行っていきたい」、「施行に向けて関係者の意見を聞きながら、省令やガイドライン等の策定により周知を図りたい」、「零売は国民の緊急時に医薬品へのアクセスを確保するために必要な制度だ。改正法が成立した際にはこの考えのもとで運用し、求められる対応も分かりやすい形で示したい」などと答えたとのことです。法案提出時の「原則禁止」の“勢い”が完全に削がれた答弁と言えます。うがった見方をすれば、法案提出後に内閣法制局に再確認して、「憲法違反」の可能性を指摘されたのかもしれません。厚労省が処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売、いわゆる零売を公式に認めたのは2005年厚労省が処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売、いわゆる零売を公式に認めたのは、2005年とそんなに昔のことではありません。それ以前は法令上での明確な規定がなく、一部薬局では医療用医薬品の販売がごく普通に行われていました。零売を容認するきっかけとなったのが2005年4月の薬事法改正です。医薬品分類を現在の分類に刷新するとともに「処方箋医薬品以外」の医療用医薬品の薬局での販売を条件付きで認める通知を発出しました。同年3月30日の厚労省から発出された「処方せん医薬品等の取扱いについて」(薬食発第0330016号 厚生労働省医薬食品局長通知)は、「処方せん医薬品以外の医療用医薬品」は、「処方せんに基づく薬剤の交付を原則」とするものであるが、「一般用医薬品」の販売による対応を考慮したにもかかわらず、「やむを得ず販売せざるを得ない場合などにおいては、必要な受診勧奨を行った上で」、薬剤師が患者に対面販売できるとしました。零売に当たっては、1)必要最小限の数量に限定、2)調剤室での保管と分割、3)販売記録の作成、4)薬歴管理の実施、5)薬剤師による対面販売――の順守も求められることになりました。2005年4月施行の薬事法改正は、処方箋医薬品の零売を防ぐことも目的の一つでした。それまでの「要指示医薬品」と、全ての注射剤、麻薬、向精神薬など、医療用医薬の約半分以上が新たに「処方箋医薬品」に分類されたわけですが、逆に使用経験が豊富だったり副作用リスクが少なかったりなど、比較的安全性が高い残りの医薬品が「処方箋医薬品以外の医薬品」(ただし原則処方箋必要)に分類され、零売可能となったわけです。現在、日本で使われる医療用医薬品は約1万5,000種類あり、このうち半分の約7,500種類は処方箋なしでの零売が認められています。鎮痛剤、抗アレルギー薬、胃腸薬、便秘薬、ステロイド塗布剤、水虫薬など、コモンディジーズの薬剤が中心で、抗生剤や注射剤はありません。また、比較的新しい、薬効が強めの薬剤も含まれません(H2ブロッカーはあるがPPIはない等)。その後、通知によって不適切な広告・販売等で零売を行う薬局を牽制2005年の通知の内容は2014年3月18日に厚労省から発出された「薬局医薬品の取扱いについて」(薬食発0318第4号 厚生労働省医薬食品局長通知)に引き継がれました。しかし、本通知の趣旨を逸脱した不適切な広告・販売方法が散見されるとして、2022年8月5日、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売方法等の再周知について」(薬生発0805第23号 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)が発出され、「処方箋がなくても買える」、「病院や診療所に行かなくても買える」といった不適切な広告・販売方法等で零売を行う薬局を問題視、牽制してきました。その延長線にあるのが今回の薬機法等改正案というわけです。とはいうものの、そもそも明確な法規制がなく、昔から“既得権”として行われ、薬の販売方法として一定の役割を担っていた零売を、原則禁止としてしまうのは無理があるように感じます。厚労省もそのことは重々わかっていたからこそ、これまで法律ではなく通知による“緩い”コントロールに留めてきたのでしょう。重大な健康被害があったわけでもないのに、法規制は明らかに“行き過ぎ”の感は否めません。今年に入って零売規制への批判高まる零売生き残りの光が見えてきたもう一つの背景として考えられるのは、マスコミなど世間からの批判の声です。薬機法等改正案が国会に提出される直前の2月5日、日本総研は調査部主任研究員の成瀬 道紀氏によるレポート「零売規制の妥当性を問う」を公表しました。同レポートは、「零売は、病院や診療所を受診せずとも処方箋医薬品以外の医療用医薬品を入手でき、患者にとって利点がある。とりわけ、処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、OTC医薬品(市販薬)よりも費用対効果が高い製品が多い」とそのメリットを説く一方、「零売は販売時に医師の関与がないため、薬剤師による患者指導が不十分な場合は、患者の健康に悪影響を与え得る懸念が指摘されている」と問題点にも言及、その上で、「今求められるのは、第1に、薬剤師の職能の尊重である。もちろん、薬剤師自身が自己変革に取り組む努力も不可欠である。第2に、医療用医薬品というわが国特有の区分を廃止してダブルスタンダードを解消し、処方箋医薬品以外の医薬品はOTC医薬品として薬局で薬剤師が堂々と販売できるようにすることである」と提言しました。ちなみに、日本総研の成瀬氏は3月13日に開かれた参議院予算委員会公聴会に公述人として出席、「零売の原則禁止は改正案から削除すべき項目であり、改正すべきは関連通知」と述べています。「零売という言葉は明治時代には存在し、当時は薬局間での薬の売買の方法だった」3月17日付の日本経済新聞朝刊も、「自分の病は自分でも診よう」と題する大林 尚編集委員の記事を掲載、処方箋医薬品以外の医療用医薬品(いわゆる現在、零売可能な医薬品)について、「7千種類の類似薬は原則、処方箋不要にしてOTC薬にひっくるめる」という成瀬氏の改革案を紹介しています。それによって、「患者は安くて効き目のよい薬を身近に入手できる。これは、類似薬を健康保険の適用から外す保険制度改革と表裏の関係にある。最大の効用は年間1兆円の保険医療費の節約だ。医師はその資格にふさわしい病の治療に専念し、患者は処方箋目的の『お薬受診』をやめる。医療機関に入る初診・再診料や処方箋料、また調剤薬局に取られる技術料のムダも省ける」と書くとともに、「ところが厚労省は供給側重視を鮮明にしている。類似薬に処方箋を求める規制について行政指導から法で縛る制度への格上げをもくろみ、今国会に関連法案を出した。与野党を問わず、政治家がこの規制強化の不合理さを主体的に理解すれば法案修正は可能である。硬い岩盤をうがつべく、立法府の力をみせてほしい」と、零売規制が時代に逆行した政策だと指摘しています。さらにAERA DIGITALも3月20日、「『零売薬局』なら処方箋ナシで『病院の薬』が買える ニーズがあるのになぜ『規制強化』が進むのか」と題する記事を配信しています。同記事は零売が規制強化に向かう現状をリポートするとともに、「零売という言葉は明治時代には存在し、当時は薬局間での薬の売買の方法だった」という歴史についても言及、金城学院大薬学部の大嶋 耐之教授の「昔の薬剤師は、街のお医者さん的な存在で、薬だけではなく病気や健康に関するさまざまな相談を聞いてアドバイスをしてくれた。利用者のセルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な不調は自分で手当てすること)にも貢献していたんです。そうした関係が成り立っているなら、零売は『患者にとって良いこと』とも言えると思います」というコメントを紹介、「規制強化の動きの一方で、零売のメリットを訴える声もある。▽医療費削減につながる▽病院で処方される薬より安い場合があり、経済的負担が軽減する▽どうしても医療機関に行けないときに助けてもらえる、など」と零売擁護を訴えています。日本総研は「処方箋医薬品以外はOTC医薬品とするシンプルな制度」を提案こう見てくると、零売規制は、単に「薬局に処方箋医薬品以外の医療用医薬品を売らせるかどうか」という単純な問題ではなく、医師や薬剤師の役割分担、国民のセルフメディケーションの意識改革、無駄な医療費削減等にも関わる大きな問題だということがわかります。ことは、OTC類似薬の保険適用外しとも関連してきます。前述したように日本総研の成瀬氏は、レポート「零売規制の妥当性を問う」で医療用医薬品という日本特有の区分を廃止し、処方箋医薬品以外はOTC医薬品とする諸外国と同様のシンプルな制度とすることを提案、「医療用医薬品という区分が廃止され、ダブルスタンダードが解消されれば、零売という概念そのものがなくなる」と書いています。もっとも、それが実現した時に重要な役割を担うはずの薬剤師の団体、日本薬剤師会自体は薬機法等改正法案に賛成し、零売にも否定的で弱腰な点が気になりますが……。「処方箋医薬品以外はOTC医薬品とするシンプルな制度」は一見大胆なようですが、とても理にかなった提案だと思います。薬機法等改正案成立後の政省令や通知類、そして社会保障改革に関する自民党、公明党、日本維新の会の3党協議で検討が進められるOTC類似薬の保険外しなど(「第253回 石破首相・高額療養費に対する答弁大炎上で、制度見直しの“見直し”検討へ……。いよいよ始まる医療費大削減に向けたロシアン・ルーレット」参照)、医薬品を巡る今後の議論の行方に注目したいと思います。

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クローン病患者の便意切迫感を改善するミリキズマブ/リリー・持田製薬

 日本イーライリリーと持田製薬は、ミリキズマブ(商品名:オンボー)のクローン病(CD)に対する適応追加にあたり、4月10日にメディアセミナーを開催した。 今回適応拡大されたミリキズマブは、2023年6月に同じ炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎の治療薬として発売され、今回、中等症~重症の活動期CDの治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応が追加された。 セミナーでは、同社が行ったCD患者へのアンケート結果やミリキズマブの適応拡大における第III相臨床試験VIVID-1試験の概要が説明された。クローン病患者が苦しんでいる日常生活 「クローン病の疾患概要と課題、便意切迫感の影響と実態に関する調査結果について」をテーマに日比 紀文氏(慶應義塾大学医学部 名誉教授)が、病態などの説明と持田製薬が行った患者アンケートの概要を述べた。 CDは、免疫異常などの関与で起こる肉芽腫性炎症性疾患であり、わが国には約7万例の患者が推定され、男性に多く、わが国では10代後半からの発症が多いという。主な症状としては、下痢、腹痛、発熱などがある。また、潰瘍性大腸炎と異なり、大腸のほかにも胃や小腸でも病変が認められ、縦走潰瘍、敷石像などが内視鏡で観察される。また、全層性の炎症で、瘻孔や狭窄もあり、痔ろうなど腸管合併症も認められる。そして、CDの病型分類では、小腸大腸型で1番患者数が多く、小腸型と大腸型では同じ割合で患者がいる。 CDの症状に対する患者と医師の認識の差について、「QOLに最も影響を与える症状」では、患者が「便意切迫感」(65%)が1番多かったのに対し、医師では「腹痛」(82%)だった1)。 この患者が挙げる便意切迫感は、「突然かつ緊急に感じる排便の必要性」と定義され、患者のQOLを著しく悪化させている。そこで、日比氏と持田製薬は、2025年1~2月にアンケートを実施し、CDにおける便意切迫感の影響と実態に関する調査結果を発表した。 調査は、CD患者100人、一般人431人、医師106人にインターネットで実施された。質問で「便意切迫感に襲われた経験がある人(98人)に頻度」を聞いたところ、「1日1回以上」と回答した人が42.8%だった。また、CD患者100人に「便意切迫感にどの程度困っているか」を聞いたところ、「日常生活を普通に過ごせないくらい」が14.0%、「困っているが普通の生活を努力して維持できる」が62.0%と全体で約75%の患者が困っていると回答していた。そのほか、日常生活の便意切迫感で困っていることでは「トイレの待ち時間に不安を感じる」が54.0%、人生において便意切迫感で困っていることでは「仕事・学校を辞めた」が24.0%と患者に多大な影響を及ぼしていることがうかがえた。CDの症状や便意切迫感について、「どのように理解され、対応してほしいか」を患者に聞いたところ、「困るときがあるので、求められたら手を差し伸べてほしい」が45.0%で1番多い回答だった。 以上から「便意切迫感の課題」として、患者は日常生活だけでなく人生のイベントに影響を受けていること、日常生活の維持に患者の努力があること、本音では患者は「便意切迫感から解放されたい」と思っていること、この「便意切迫感」は、周囲には伝えきれていないことを示した。最後に日比氏は、「今後は日常生活の中で『便意切迫感』に不安にならない環境作りが大切だ」と指摘し、「その実現には、周囲の偏見や誤解をなくすことが重要だ」と語った。臨床試験でミリキズマブは便意切迫感を改善 「クローン病に対する新しい治療選択肢について」をテーマに、久松 理一氏(杏林大学医学部消化器内科学 教授)が、ミリキズマブの特徴と第III相臨床試験VIVID-1(AMAM)試験の概要について説明した。 「令和5年クローン病治療指針(内科)」2)では、軽症~中等症~重症まで3段階に分けて使用する薬剤が示されている。ミリキズマブは、既存治療で効果不十分な場合に、中等症以上の病変で使用することができる治療薬。 本剤は、抗IL-23p19モノクローナル抗体製剤として、腸管炎症の原因となるサイトカインを作る免疫細胞に指令を出すIL-23に付着し、指令を阻害することでサイトカイン産生を阻む機序を持つ。使用に際しては、治療開始時に寛解導入療法として点滴静注製剤1回900mgを4週間隔で3回投与し、その後は維持療法として皮下注製剤1回300mgを4週間隔で投与する。 そして、今回適応拡大で行われた第III相臨床試験VIVID-1(AMAM)試験では、CD患者を対象に(1)患者報告型アウトカム(PRO)による12週における臨床的改善かつ52週における内視鏡的改善、(2)PROによる12週における臨床的改善かつ52週におけるCrohn’s disease activity index(CDAI)による臨床的寛解の2つを主要評価項目として、プラセボに対するミリキズマブの優越性を評価した。 試験対象は、ステロイド系薬剤、免疫調節薬などに対し効果不十分、効果減弱または不耐の中等症~重症の活動性CD患者1,152例(日本人28例を含む)。 試験の結果、12週時点でPROによる臨床的改善かつ52週時点で内視鏡的改善を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)で38.0%に対し、プラセボ群(199例)で9.0%だった。また、12週時点でPROによる臨床的改善かつ52週時点でCDAIによる臨床的寛解を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)で45.4%に対し、プラセボ群(199例)で19.6%だった。 そのほか、52週時点の排便回数・腹痛スコアのベースラインからの変化量は、ミリキズマブ群(579例)は-3.28であったのに対し、プラセボ群(199例)は-1.39だった。腹痛スコアも52週のミリキズマブ群(579例)は-1.16だったのに対し、プラセボ群(199例)は-0.52だった。 では、既存の治療薬との効果の違いはあるのか。ウステキヌマブとの比較で、52週時点でのCDAIによる臨床的寛解を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群(579例)が54.1%でウステキヌマブ群(287例)の48.4%に対し非劣性であった。同じく52週時点での内視鏡的改善を達成した患者の割合は、ミリキズマブ群が48.4%、ウステキヌマブ群が46.3%だった。 安全性については、死亡事例はなく、主な有害事象としては、貧血、関節痛、頭痛などが報告された。 最後に久松氏は「ミリキズマブは、中等症~重症の活動期CD患者の臨床症状、粘膜炎症および患者報告アウトカムをいずれも改善したこと、排便回数、腹痛および便意切迫感の有意な改善が認められたこと、CD患者を対象とした臨床試験で新たな有害事象の懸念は認められなかったこと」に言及して講演をまとめた。

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DNRを救急車で運んだの?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第5回

DNRを救急車で運んだの?PointDNRは治療中止ではない。終末期医療の最終目標は、QOLの最大化。平易な言葉で理知的に共感的に話をしよう。適切な対症療法を知ろう。症例91歳男性。肺がんの多発転移がある終末期の方で、カルテには急変時DNRの方針と記載されている。ところが深夜、突如呼吸困難を訴えたため、慌てて家族が救急要請した。来院時、苦悶様の表情をみせるもののSpO2は97%(room air)だった。研修医が家族に説明するが、眠気のせいか、ついつい余計な言葉が出てしまう。「DNRってことは、何も治療を望まないんでしょ? こんな時間に救急車なんて呼んで、もし本物の呼吸不全だったら何を期待してたんですか? 大病院に来た以上、人工呼吸器につながれても文句はいえませんよ。かといって今回みたいな不定愁訴で来られるのもねぇ。なんにもやることがないんだから!」と、ここまでまくしたてたところで上級医につまみ出されてしまった。去り際に垣間見た奥さんの、その怒りやら哀しみやら悔しさやらがない交ぜになった表情ときたらもう…。おさえておきたい基本のアプローチDo Not Resuscitation(DNR)は治療中止ではない! DNRは意外と限定的な指示で、「心肺停止時に蘇生をするな」というものだ。ということはむしろ、心肺停止しない限りは昇圧薬から人工呼吸器、血液浄化法に至るまで、あらゆる医療を制限してはならないのだ。もしわれわれが自然に想像する終末期医療を表現したいなら、DNRではなくAllow Natural Death(AND)の語を用いるべきだろう。ANDとは、患者本人の意思を尊重しながら、医療チーム・患者・家族間の充分な話し合いを通じて、人生の最終段階における治療方針を具体的に計画することだ。それは単なる医療指示ではなく、患者のQuality of Life(QOL)を最大化するための人生設計なのである。落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「延命しますか? しませんか?」と最後通牒を患者・家族につきつけるのはダメ医療を提供する側だからこそ陥りやすい失敗ともいえるが、「延命治療を希望しますか? 希望しませんか?」などと、患者・家族に初っ端から治療の選択肢を突きつけてはならない。家族にしてみれば、まるで愛する身内に自分自身がとどめを刺すかどうかを決めるように強いられた心地にもなろう。患者は意識がないからといって、家族に選択を迫るなんて、恐ろしいことをしてはいないか? 「俺が親父の死を決めたら、遠くに住む姉貴が黙っているはずがない。俺が親父を殺すなんて、そんな責任追えないよぉ〜」と心中穏やかならぬ、明後日の方向を向いた葛藤を強いることになってしまうのだ。結果、余計な葛藤や恐怖心を抱かせ、得てして客観的にも不適切なケアを選択してしまいがちになる。家族が親の生死を決めるんじゃない。患者本人の希望を代弁するだけなのだ。徹頭徹尾忘れてはならないこと、それはANDの最終目標は患者のQOLの最大化だということだ。それさえ肝に銘じておけば、身体的な側面ばかりでなく、患者さんの心理的、社会的、精神的側面をも視野に入れた全人的ケアに思い至る。そして、治療選択よりも先にたずねるべきは、患者本人がどのような価値観で日々を過ごし、どのような死生観を抱いていたのかだということも自ずと明らかになろう。ANDを実践するからには、QOLを高めなければならないのだ。Point最終目標はQOLの最大化。ここから焦点をブレさせない「患者さんは現在、ショック状態にあり、昇圧剤および人工呼吸器を導入しなければ、予後は極めて厳しいといわざるを得ません」いきなりこんな説明をされても、家族は目を白黒させるばかりに違いない。情報提供の際は専門用語を避けて、できるだけ平易な言葉遣いで話すべきだ。また、人生の終末を目前に控えた患者・家族は、とにかく混乱している。恐怖、罪悪感、焦り、逃避反応などが入り組んだ複雑な心情に深く共感する姿勢も、人として大切なことだ。だが、同情するあまりにいつまでも話が進まないようでは口惜しい。実は、患者家族の満足度を高める方法としてエビデンスが示されているのは、意外にも理知的なアプローチなのだ。プロブレムを浮き彫りにするためにも、言葉は明確に、1つ1つの問題を解きほぐすように話し合おう。逆に、心情を慮り過ぎて言葉を濁したり、楽観的で誤った展望を抱かせたり、まして具体的な議論を避ける態度をとったりすると、かえって信頼を損なうことさえある。表現にも一工夫が必要だ。すがるような思いで病院にたどり着いた患者・家族に開口一番、「もはや手の施しようがありません」と言おうものなら地獄へ叩き落された心地さえしようというもの。何も根治を望んで来たわけではないのだから、「苦痛を和らげる方法なら、できることはまだありますよ」と、包括的ケアの余地があることを伝えられれば、どれだけ救いとなることだろう。以上のことを心がけて、初めて患者・家族との対話が始まるのだ。こちらにだって病状や治療方針など説明すべきことは山ほどあるのだが、終末期医療の目的がQOLの向上である以上、患者の信念や思いにしっかりと耳を傾けよう。もし、その過程で患者の嗜好を聞き出せたのならしめたもの。しかしそれも、「うわー、その考え方にはついていけないわ」などと邪推や偏見で拒絶してしまえば、それまでだ。患者の需要に応えられたときにQOLは高まる。むしろ理解と信頼関係を深める絶好の機会と捉えて、可能な限り患者本人の願いを実現するべく、家族との協力態勢を構築していこう。気持ちの整理がつくにつれ、受け入れがたい状況でも差し引きどうにか受容できるようになることもある。そうして徐々に歩み寄りつつ共通認識の形成を試みていこう。その積み重ねが、愛する人との静かな別れの時間を醸成し、ひいては別離から立ち直る助けともなるのだ。Point平易かつ明確な言葉で語り掛け、患者・家族の願いを見極めよう「DNRでしょ? ERでできることってないでしょ?」より穏やかな死の過程を実現させるためにも、是非とも対症療法の基本はおさえておこう。訴えに対してやみくもに薬剤投与と追加・増量を繰り返しているようでは、病因と戦っているのか副作用と戦っているのかわからなくなってしまうので、厳に慎みたい。その苦痛は身体的なものなのか、はたまた恐怖や不安など心理的な要因によるものなのか、包括的な視点できちんと原因を見極めるべきだ。対症療法は原則として非薬物的ケアから考慮する。もし薬剤を使用するなら、病因に対して適正に使用すること。また、患者さんの状態に合わせて、舌下錠やOD錠、座薬、貼付剤など適切な剤型を選択しよう。続くワンポイントレッスンと表で、使用頻度の高い薬剤などについてまとめてみた。ただし、終末期の薬物療法は概してエビデンスに乏しいため、あくまでも参考としていただけるとありがたい。表 終末期医療でよく使用する薬剤PointERでできることはたくさんある。適切な対症療法を学ぼうワンポイントレッスン呼吸困難呼吸困難は終末期の70%が経験するといわれている。自分では訴えられない患者も多いので、呼吸数や呼吸様式、聴診所見、SpO2などの客観的指標で評価したい。呼吸困難は不安などの心理的ストレスが誘因となることも多いため、まずは姿勢を変化させたり、軽い運動をしたり、扇風機で風を当てたりといった環境整備を試すとよいだろう。薬剤では、オピオイドに空気不足感を抑制する効果がある。経口モルヒネ30mg/日未満相当ならば安全に使用できる。もし不安に付随する症状であれば、ベンゾジアゼピンが著効する場合もある。口腔内分泌物口腔内の分泌物貯留による雑音は、終末期患者の23〜92%にみられる。実は患者本人にはほとんど害がないのだが、そのおぞましい不協和音は死のガラガラ(death rattle)とも呼ばれ、とくに家族の心理的苦痛となることが多い。まずは家族に対し、終末期に現れる自然な経過であることを前もって説明しておくことが重要だ。どうしても雑音を取り除く必要がある場合は、アトロピンの舌下滴下が分泌物抑制に著効することがある。ただし、すでに形成した分泌物には何の影響もないため、口腔内吸引および口腔内ケアも並行して実践しよう。せん妄せん妄も終末期患者の13〜88%に起こる頻発症状だ。ただし、30〜50%は感染症や排尿困難、疼痛などによる二次的なものである。まずは原因の検索とその除去に努めたい。薬剤投与が必要な場合は、ハロペリドールやリスペリドンなどの抗精神病薬を少量から使用するとよいだろう。睡眠障害睡眠障害はさまざまな要因が影響するため、慎重な評価と治療が不可欠である。まずは昼寝の制限や日中の運動、カフェインなどの刺激物を除去するといった環境の整備から取り掛かるべきだろう。また、睡眠に悪影響を及ぼす疼痛や呼吸困難などのコントロールも重要である。薬物は健忘、傾眠、リバウンドなどの副作用があるため、急性期に限定して使用する。一般的には非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロンやラメルテオンなどが推奨される。疼痛疼痛は終末期患者の50%が経験するといわれている。必ずしも身体的なものだけではなく、心理的、社会的、精神的苦痛の表出であることも多いため、常に包括的評価を心掛けるべきだ。このうち、身体的疼痛のみが薬物療法の適応であることに注意しよう。まずは潜在的な原因の検索から始め、その除去に努めよう。終末期の疼痛における環境整備やリハビリ、マッサージ、カウンセリングなどの効果は薬物療法に引けを取らないため、まずはこのような支持的療法から試みるとよいだろう。薬物療法の際は、軽度ならば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン、そうでなければオピオイドの使用を検討する。ちなみに、かの有名なWHOの三段階除痛ラダーは2018年の時点でガイドラインから削除されているから注意。現在では、患者ごとに詳細な評価を行ったうえで、痛みの強さに適した薬剤を選択することとなっている。たしかに、あの除痛ラダーだと、解釈次第ではNSAIDsと弱オピオイドに加えて強オピオイドといったようなポリファーマシーを招きかねない。末梢神経痛に対しては、プレガバリンやガバペンチン、デュロキセチンなどが候補にあがるだろう。勉強するための推奨文献日本集中治療医学会倫理委員会. 日集中医誌. 2017;24:210-215.Schlairet MC, Cohen RW. HEC Forum. 2013;25:161-171.Anderson RJ, et al. Palliat Med. 2019;33:926-941.Dy SM, et al. Med Clin North Am. 2017;101:1181-1196.Albert RH. Am Fam Physician. 2017;95:356-361.執筆

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StageII/IIIのHR+HER2-乳がんの術後内分泌療法後、リアルワールドでの再発リスクと治療成績

 術後内分泌療法を受けたStageII/IIIのHR+HER2-早期乳がん患者における再発リスクをリアルワールドで検討した米国・Sarah Cannon Research InstituteのJoyce O'Shaughnessy氏らの後ろ向き研究の結果、リンパ節転移陰性患者も含め、再発リスクが依然として高いままであることが示された。Breast誌2025年6月号に掲載。 本研究では、ConcertAI Patient360データベース(1995年1月~2021年4月)を用いて、手術を受け術後内分泌療法を受けた18歳以上のStageII/IIIのHR+HER2-早期乳がん患者を後ろ向きに解析した。再発リスクは、改良されたSTEEP基準による無浸潤疾患生存(iDFS)を用いて評価した。サブ解析で、術後内分泌療法として非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)を投与された患者とタモキシフェンを投与された患者のiDFS、遠隔無病生存、全生存を評価した。なお、CDK4/6阻害薬については、アベマシクリブが術後補助療法に承認されたのが2021年10月であり、本解析のデータベースのカットオフ日以後のため、投与された患者はいなかった。 主な結果は以下のとおり。・全解析コホート(3,133例)において、iDFSイベントリスクは5年時点で26.1%であり、10年時点で45.0%に上昇した。・StageIIの患者の5年時点および10年時点のiDFSイベントリスクは22.7%および40.5%、StageIIIの患者では40.4%および62.9%であった。また、リンパ節転移陰性患者では22.1%および36.9%、リンパ節転移陽性患者では28.9%および49.4%であった。 ・サブ解析において、NSAI±卵巣機能抑制療法がタモキシフェン±卵巣機能抑制療法に比べてiDFSの改善が認められ(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.69~0.98、p=0.031)、この傾向は閉経状態に関係なくみられた。 著者らは、「このリアルワールドエビデンス研究は、StageIIまたはIIIのHR+HER2-早期乳がん患者の再発リスクが、標準的な術後補助全身療法にもかかわらず、リンパ節転移陰性患者を含めて容認できないほど高いままであることを示しており、この患者集団に対する新たな治療戦略の開発を正当化する」と結論している。

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フィネレノン、CKD有するHFmrEF/HFpEFに有効~3RCT統合解析(FINE-HEART)/日本循環器学会

 心不全患者のほぼ半数が慢性腎臓病(CKD)を合併している。心不全とCKDは、高血圧、肥満、糖尿病といった共通のリスク因子を持ち、とくに左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者ではその関連がより顕著である。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)や交感神経系の活性化、炎症、内皮機能障害、線維化、酸化ストレスといった共通の病態生理学的経路を有する。したがって、心不全患者、とくにHFpEF患者において、腎保護が治療成功の鍵となっている。 心不全とCKDを合併した約1万9,000例の患者におけるフィネレノンの効果を評価するため、3件の大規模無作為化比較試験(RCT)の統合解析「FINE-HEART試験」が実施され、2024年の欧州心臓病学会で発表された。その結果、心不全とCKDを合併した患者において、原因不明死を含めると、フィネレノンは心血管死を12%有意に減少させることが示され、腎疾患の進行、全死因死亡、心不全による入院などが有意に減少したことが示された。3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 1にて、富山大学の絹川 弘一郎氏によりアンコール発表された。 本試験では、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノンの効果を検証した以下の3件のRCTのデータが統合された。・FINEARTS-HF試験:2型糖尿病を含む左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)/HFpEF患者6,001例を対象とした試験。・FIDELIO-DKD試験:糖尿病性腎臓病患者5,662例を対象とした腎アウトカム試験(左室駆出率が低下した心不全[HFrEF]患者は除外)。・FIGARO-DKD試験:糖尿病性腎臓病患者7,328例を対象とした心血管アウトカム試験(HFrEF患者は除外)。 FINE-HEART試験の対象者の90%以上が、心不全、CKD、2型糖尿病の1つ以上を有する高リスクCKM(心血管・腎・代謝)背景を持っていた。本試験の主要評価項目は心血管死であり、副次評価項目は複合心血管イベント、心不全による初回入院、全死因死亡などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・FINE-HEART試験は、1万8,991例(平均年齢67±10歳、女性35%)で構成された。参加者の約90%が、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下および/またはアルブミン尿のいずれかを伴うCKD進行リスクが高かった。・心血管死について、プラセボ群と比較して、フィネレノン群は、原因不明死を除くと、心血管死の有意ではない減少と関連していた(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.78~1.01、p=0.076)。ただし、原因不明死を含めると、フィネレノン群は心血管死を12%有意に減少させた(HR:0.88、95%CI:0.79~0.98、p=0.025)。・原因不明死を含めた場合の心血管死に対するフィネレノンの効果は、患者のCKM負担の程度かかわらず一貫していた。また、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬といったベースラインの併用薬の有無にかかわらず、フィネレノンの効果は一貫していた。・フィネレノンは、複合腎アウトカム、心不全による初回入院、心血管死または全死因死亡、心房細動の新規発症を有意に減少させた。・HFmrEF/HFpEF患者7,008例(36.9%)を解析した結果、フィネレノン群ではプラセボ群と比較して、心血管死または心不全による入院が有意に減少した(HR:0.87、95%CI:0.78~0.98、p=0.008)。また、心不全による入院(HR:0.84、95%CI:0.74~0.94、p=0.003)、心房細動の新規発症(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97、p=0.030)を有意に減少させた。・フィネレノンは忍容性が良好であり、プラセボ群より重篤な有害事象の発現率が低かった。MRAの性質上、フィネレノン群で高カリウム血症が多くみられたが、高カリウム血症に関連する死亡は認められなかった。低カリウム血症は少なかった。収縮期血圧低下がよくみられ、血圧への影響は今後さらに検討が必要とされている。急性腎障害の増加は認められなかった。 フィネレノンは、CKMリスクを有する患者に対して、心血管・腎アウトカムを改善し、安全性も高い有望な治療選択肢であることが本試験により示された。絹川氏は「フィネレノンは心血管死を12%有意に減少させた。FIDELIO試験とFIGARO試験では、心血管死は有意に減少しなかったため、これはFINE-HEART試験で新たに得られた知見だ。また、FIDELIO試験とFIGARO試験では、フィネレノンによるeGFRの初期低下が観察されたが、これも今後の検討課題となる」と述べた。(ケアネット 古賀 公子)そのほかのJCS2025記事はこちら

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最新の鼻アレルギー診療ガイドラインの読むべき点とは

 今春のスギ・ヒノキの花粉総飛散量は、2024年の春より増加した地域が多く、天候の乱高下により、飛散が長期に及んでいる。そのため、外来などで季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)を診療する機会も多いと予想される。花粉症診療で指針となる『鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症- 2024年 改訂第10版』(編集:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)が、昨年2024年3月に上梓され、現在診療で広く活用されている。 本稿では、本ガイドラインの作成委員長である大久保 公裕氏(日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授)に改訂のポイントや今春の花粉症の終息の見通し、今秋以降の花粉飛散を前にできる対策などを聞いた。医療者は知っておきたいLAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎の概念 今回の改訂では、全体のエビデンスなどの更新とともに、皮膚テストや血清特異的IgE検査に反応しない「LAR(local allergic rhinitis)血清IgE陰性アレルギー性鼻炎」が加わった。また、図示では、アレルギー性鼻炎の発症機序、種々発売されている治療薬について、その作用機序が追加されている。そのほか、「口腔アレルギー症候群」の記載を詳記するなど内容の充実が図られている。それらの中でもとくに医療者に読んでもらいたい箇所として次の2点を大久保氏は挙げた。(1)LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎の概念の導入: このLAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎は、皮膚反応や血清特異的IgE抗体が陰性であるにもかかわらず、鼻粘膜表層ではアレルギー反応が起こっている疾患であり、従来の検査や所見でみつからなくても、将来的にアレルギー性鼻炎や気管支喘息に進展する可能性が示唆される。患者さんが来院し、花粉症の症状を訴えているにもかかわらず、検査で抗体がなかったとしても、もう少し踏み込んで診療をする必要がある。もし不明な点があれば専門医へ紹介する、問い合わせるなどが必要。(2)治療法の選択の簡便化: さまざまな治療薬が登場しており、処方した治療薬がアレルギー反応のどの部分に作用しているのか、図表で示している。これは治療薬の作用機序の理解に役立つと期待している。また、治療で効果減弱の場合、薬量を追加するのか、薬剤を変更するのか検討する際の参考に読んでもらいたい。 実際、本ガイドラインが発刊され、医療者からは、「診断が簡単に理解でき、診療ができるようになった」「『LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎』の所見をみたことがあり、今後は自信をもって診療できる」などの声があったという。今春の飛散終息は5月中~下旬頃の見通し 今春の花粉症の特徴と終息の見通しでは、「今年はスギ花粉の飛散が1月から確認され、例年より早かった一方で、寒い日が続いたため、飛散が後ろ倒しになっている。そのために温暖な日が続くとかなりの数の花粉が飛散することが予測され、症状がつらい患者さんも出てくる。また、今月からヒノキの花粉飛散も始まるので、ダブルパンチとなる可能性もある」と特徴を振り返った。そして、終息については、「例年通り、5月連休以降に東北以外のスギ花粉は収まると予測される。また、東北ではヒノキがないので、スギ花粉の飛散動向だけに注意を払ってもらいたい。5月中~下旬に飛散は終わると考えている」と見通しを語った。 今秋・来春(2026年)の花粉症への備えについては、「今後の見通しは夏の気温によって変わってくる。暑ければ、ブタクサなどの花粉は大量飛散する可能性がある。とくに今春の花粉症で治療薬の効果が弱かった人は、スギ花粉の舌下免疫療法を開始する、冬季に鼻の粘膜を痛めないためにも風邪に気を付けることなどが肝要。マスクをせずむやみに人混みに行くことなど避けることが大事」と指摘した。 最後に次回のガイドラインの課題や展望については、「改訂第11版では、方式としてMinds方式のCQを追加する準備を進める。内容については、花粉症があることで食物アレルギー、口腔アレルギー症候群(OAS)、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)など複雑に交錯する疾患があり、これが今問題となっているので医療者は知っておく必要がある。とくに複数のアレルゲンによる感作が進んでいる小児へのアプローチについて、エビデンスは少ないが記載を検討していきたい」と展望を語った。主な改訂点と目次〔改訂第10版の主な改訂点〕【第1章 定義・分類】・鼻炎を「感染性」「アレルギー性」「非アレルギー性」に分類・LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎を追加【第2章 疫学】・スギ花粉症の有病率は38.8%・マスクが発症予防になる可能性の示唆【第3章 発症のメカニズム】・前段階として感作と鼻粘膜の過敏性亢進が重要・アレルギー鼻炎(AR)はタイプ2炎症【第4章 検査・診断法】・典型的な症状と鼻粘膜所見で臨床的にARと診断し早期治療開始・皮膚テストに際し各種薬剤の中止期間を提示【第5章 治療】・各治療薬の作用機序図、免疫療法の作用機序図、スギ舌下免疫療法(SLIT)の効果を追加〔改訂第10版の目次〕第1章 定義・分類第2章 疫学第3章 発症のメカニズム第4章 検査・診断第5章 治療・Clinical Question & Answer(1)重症季節性アレルギー性鼻炎の症状改善に抗IgE抗体製剤は有効か(2)アレルギー性鼻炎患者に点鼻用血管収縮薬は鼻噴霧用ステロイド薬と併用すると有効か(3)抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎のくしゃみ・鼻漏・鼻閉の症状に有効か(4)抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランジンD2(PGD2)・トロンボキサンA2(TXA2薬)はアレルギー性鼻炎の鼻閉に有効か(5)漢方薬はアレルギー性鼻炎に有効か(6)アレルギー性鼻炎に対する複数の治療薬の併用は有効か(7)スギ花粉症に対して花粉飛散前からの治療は有効か(8)アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法の効果は持続するか(9)小児アレルギー性鼻炎に対するSLITは有効か(10)妊婦におけるアレルゲン免疫療法は安全か(11)職業性アレルギー性鼻炎の診断に血清特異的IgE検査は有用か(12)アレルギー性鼻炎の症状改善にプロバイオティクスは有効か第6章 その他Web版エビデンス集ほかのご紹介

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第259回 脳老化を遅らせうる薬やサプリメント13種を同定

脳老化を遅らせうる薬やサプリメント13種を同定脳がとりわけ早く老化することと7つの遺伝子がどうやら強く関連し、それらの影響を抑制しうる薬やサプリメントが見出されました。生まれてからどれだけの月日が過ぎたかを示す実年齢とMRI写真を人工知能(AI)技術で解析して推定しうる脳年齢の乖離、すなわち脳年齢のぶれ(brain age gap)は、脳がどれだけ健康かを示す指標として有望視されています。中国の浙江大学のZhengxing Huang氏とそのチームは、脳年齢のぶれを指標にして脳老化の原因となりうる遺伝子を見つけ、それら遺伝子を標的として抗老化作用を発揮しうる薬やサプリメント13種を同定しました1)。Huang氏らはUK Biobankの3万人弱(2万9,097人)のMRI情報を利用してAI技術の一種である深層学習の最新版7つをまず比較し、それらの1つの3D-ViTが脳年齢をより正確に推定しうることを確認しました。3D-ViTが同定しうる脳年齢加速兆候はレンズ核と内包後脚にとくに表れやすく、脳年齢のぶれが大きくなるほど被験者の認知機能検査の点数も低下しました。レンズ核は注意や作業記憶などの認知機能に携わり、内包後脚は大脳皮質の種々の領域と繋がっています。続いて脳年齢のぶれと関連する遺伝子を探したところ、手出しできそうな64の遺伝子が見つかり、それらのうちの7つは脳の老化の原因として最も確からしいと示唆されました。先立つ臨床試験を調べたところ、薬やサプリメントの13種がそれら7つの遺伝子の相手をして抗老化作用を発揮しうることが判明しました。ビタミンD不足へのサプリメントのコレカルシフェロール、ステロイド性抗炎症薬のヒドロコルチゾン、非ステロイド性抗炎症薬のジクロフェナク、オメガ3脂肪酸のドコサヘキサエン酸(doconexent)、ホルモン補充療法として使われるエストラジオールやテストステロン、子宮頸管熟化薬のprasterone、降圧薬のmecamylamine、赤ワインの有益成分として知られるレスベラトロール、免疫抑制に使われるシロリムス、禁煙で使われるニコチンがそれら13種に含まれます2)。特筆すべきことに、サプリメントとして売られているケルセチンと白血病治療に使われる経口薬ダサチニブも含まれます。ダサチニブとケルセチンといえば、その組み合わせで老化細胞を除去しうることが知られており、軽度認知障害があってアルツハイマー病を生じる恐れが大きい高齢者12例が参加したSTAMINAという名称の予備調査(pilot study)では有望な結果が得られています。結果はこの2月にeBioMedicine誌に掲載され、ダサチニブとケルセチンが安全に投与しうることが示されました3)。また、遂行機能や認知機能の改善が示唆されました。結果は有望ですが、あくまでも極少人数の試験結果であって、たまたま良い結果が得られただけかもしれません。その結果の確かさや老化細胞除去治療の可能性のさらなる検討が必要と著者は言っています4)。参考1)Yi F, et al. Sci Adv. 2025 Mar 14;11:eadr3757.2)The 13 drugs and supplements that could slow brain ageing / NewScientist 3)Millar CL, et al. eBioMedicine. 2025;113:105612. 4)Pilot study hints at treatment that may improve cognition in older adults at risk for Alzheimer’s disease / Eurekalert

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レブリキズマブ、日本人アトピー患者におけるリアルワールドでの有効性・安全性

 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者に対する治療薬として、2024年5月に発売された抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブについて、日本の実臨床における良好な有効性と安全性が示された。日本医科大学千葉北総病院の萩野 哲平氏らによるDermatitis誌オンライン版2月20日号への報告より。 本研究は2施設の共同研究であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者126例が対象。患者はレブリキズマブに外用コルチコステロイド薬を併用する16週間の治療を受けた。治療期間中に、以下の各指標が評価された:Eczema Area and Severity Index(EASI)/Investigator's Global Assessment(IGA)/Peak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)/睡眠障害NRS/Atopic Dermatitis Control Tool(ADCT)/Dermatology Life Quality Index(DLQI)/Patient Oriented Eczema Measure(POEM)/IgE抗体/Thymus and Activation-Regulated Chemokine(TARC)/乳酸脱水素酵素(LDH)/末梢血好酸球数(TEC) 主な結果は以下のとおり。・レブリキズマブは4週時点ですべての臨床指標を改善し、その効果は16週まで維持された。・16週時点のEASI-50、75、90、100、IGA 0/1の達成率はそれぞれ83.1%、57.1%、27.3%、11.7%、33.3%であった。・16週時点のPP-NRS、睡眠障害NRS、DLQIの≧4ポイントの改善、ADCT<7ポイント、POEM≦7ポイントの達成率は、それぞれ75.9%、68.8%、65.9%、76.9%、80.4%であった。・検査指標については、治療期間中にIgE、TARC、LDHは減少したが、TECは増加した。・新たな安全性上の懸念は認められなかった。

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腹部膨満感への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第96回

腹部膨満感への対応緩和ケア領域では、「お腹が張る」という主訴は「腹部膨満感」として議論されます。腹水が原因となることが多いですが、ほかにも便秘や消化管閉塞など、さまざまな要因が考えられます。腹部膨満感を訴える患者に対して、どのようなアプローチをすると良いのでしょうか?今回の質問終末期の肝臓がん患者の訪問診療を担当しています。先日、「お腹が張って苦しい」と相談を受けました。腹水が溜まり緊満していたので、腹水を抜いたのですが、それでもすっきりしないようです。「少しはラクになった」と言うのですが、ほかにどのようなことができるでしょうか?「腹水を抜いたが、すっきりしない腹部膨満感」。私も同じような症例を経験したことがあります。腹水を抜くと腹部膨満感が和らぐことも多いだけに、「きちんと抜けたのになぁ…」と患者さんと一緒にがっかりしました。こうした場合、腹部膨満感の“原因”に立ち返ることが重要です。冒頭でも述べたとおり、腹部膨満感は腹水だけでなく、消化管閉塞、便秘、腸管ガス貯留といった腸内容物の貯留、腹腔内腫瘍の増大といった多くの原因から生じます。そして、さらに腹水の原因を検討すると、がん患者であればがん性腹膜炎が多いものの、肝不全や腎不全などの併存症からも生じます。腹部膨満感の原因が腹水であれば、腹腔穿刺や利尿剤といった対応で解消されるはずですが、そのほかの原因によるものであれば腹水を抜いただけではラクになりません。すべての原因に対するアプローチを説明すると大変な分量になるので、私が「あまり知られていないけれど、試す価値がある」と考える対応法をいくつか紹介しましょう。1)トリアムシノロンの腹腔内注入トリアムシノロンはステロイドの注射薬です。腹水を抜いた後、腹腔内に注入することで腹腔穿刺の間隔が延長したという報告があります1)。腹部膨満が主に腹水によるもので、頻回に腹腔穿刺を要する患者の際は考慮すると良いでしょう。2)消化管閉塞への対応悪性腫瘍の場合は物理的な閉塞を解除することが難しいですが、消化管の分泌抑制効果を期待してオクトレオチドを使ってみるケースがあります。ブチルスコポラミンといった抗コリン薬での代用も可能です。ただ、必ず効果があるわけではないので、期待する効果が得られなければ中止しましょう。3)腹部の筋緊張への対応腹腔内の腫瘤が増大して刺激している、などの原因による、腹部の筋緊張を伴う腹部膨満感です。難治性になりやすく、対応が難しいのですが、腹部の緊張を取る目的でジアゼパムのようなベンゾジアゼピン系や、腹膜への刺激に対する鎮痛補助薬としてリドカインを用いることを検討します。在宅診療の場合、上記に述べたすべてに対応するのは難しいかもしれません。各施設の体制に合わせ、可能な範囲で検討いただければと思います。いずれにせよ、腹部膨満感の“原因”をしっかり考えることが重要です。今回のTips今回のTips腹部膨満感は原因を考え、原因に応じたアプローチをしましょう。1)Mackey JR, et al. J Pain Symptom Manage. 2000;19:193-199.

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鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、depemokimabの年2回追加投与が有効/Lancet

 depemokimabは、インターロイキン(IL)-5を標的とするモノクローナル抗体であり、IL-5への高度な結合親和性と高い効力を有し、半減期の長い初の超長時間作用型の生物学的製剤で、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)患者において2型炎症の持続的な抑制と年2回の投与が可能であることが確かめられている。ベルギー・Ghent UniversityのPhilippe Gevaert氏らANCHOR-1 and ANCHOR-2 trial investigatorsは「ANCHOR-1試験」および「ANCHOR-2試験」において、depemokimabの年2回投与はCRSwNP患者における標準治療への追加薬として、プラセボと比較し内視鏡的鼻茸総スコアと鼻閉スコアの変化量を有意に改善し忍容性も良好であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年3月15日号に掲載された。16ヵ国の無作為化プラセボ対照反復第III相試験 ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験は、CRSwNPの治療におけるdepemokimab追加の有益性の評価を目的とする同一デザインの二重盲検無作為化プラセボ対照並行群間比較反復第III相試験であり、2022年4月~2023年8月に日本を含む16ヵ国190施設で患者を登録した(GSKの助成を受けた)。 年齢18歳以上、コントロール不良のCRSwNP(両側鼻腔の内視鏡的鼻茸スコア[片側鼻腔当たり0点:鼻茸なし~4点:鼻茸により完全閉塞、両側で合計8点]が5点以上[片側2点以上])で、重篤な症状がみられ、CRSwNPに対する手術歴または全身性コルチコステロイド治療・不耐の少なくとも1つを有する患者を対象とした。 これらの患者を、26週ごとにdepemokimab(100mg)またはプラセボを皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 複合主要エンドポイントは、最大の解析対象集団(FAS)における内視鏡的鼻茸総スコアのベースラインから52週時までの変化量と、鼻閉スコア(言語式評価スケール[0~3点、リッカート尺度])のベースラインから49~52週の平均値までの変化量とした。個々の試験、統合解析とも良好な結果 ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験に合計540例を登録し、528例がFASとなった。depemokimab群272例(平均年齢[SD]52.4[13.27]歳、男性69%)、プラセボ群256例(51.6[13.27]歳、70%)。depemokimab群はANCHOR-1試験143例、ANCHOR-2試験129例、プラセボ群はそれぞれ128例および128例であった。 複合主要エンドポイントのベースラインからの変化量は、以下のとおり、プラセボ群に比べdepemokimab群で統計学的に有意な改善を示した。 内視鏡的鼻茸総スコアの群間差は、ANCHOR-1試験で-0.7(95%信頼区間[CI]:-1.1~-0.3、p<0.001)、ANCHOR-2試験で-0.6(-1.0~-0.2、p=0.004)、2つの試験の統合解析で-0.7(-0.9~-0.4、名目上のp<0.001)であった。また、言語式評価スケールによる鼻閉スコアの群間差は、ANCHOR-1試験で-0.23(-0.46~0.00、p=0.047)、ANCHOR-2試験で-0.25(-0.46~-0.03、p=0.025)、2つの試験の統合解析で-0.24(-0.39~-0.08、名目上のp=0.003)であった。有害事象、重篤な有害事象の頻度は同程度 投与期間中および投与後の有害事象の頻度は、depemokimab群(ANCHOR-1試験74%[106例]、ANCHOR-2試験76%[98例])とプラセボ群(79%[101例]、80%[102例])で同程度であった。また、重篤な有害事象の頻度も、depemokimab群(3%[5例]、5%[6例])とプラセボ群(5%[6例]、8%[10例])で類似していた。死亡例は、2つの試験とも両群で報告はなかった。 52週の投与期間中に、ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験のdepemokimab群で、それぞれ7%(10例)および9%(11例)に抗薬物抗体の発現を認めた。プラセボ群の1例が、中和抗体陽性であった。 著者は、「これらの知見は、depemokimabがCRSwNP患者にとって有益な治療選択肢であることを支持するものである」「年2回の投与により、投与スケジュールが簡素化されるため、アドヒアランスが改善し治療負担が軽減する可能性がある」としている。

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新たな時代に向けた白血病診療の在り方と展開/日本臨床腫瘍学会

 自己複製能と多分化能を備える造血幹細胞は、複数の過程を経てさまざまな血液細胞に分化し、体内の造血系を恒常的に維持している。一方、この分化過程の各段階で生じるがん化は、白血病やリンパ腫、骨髄腫を引き起こす。 2025年3月6〜8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、教育講演の1つとして「本邦における白血病診療」と題した講演が行われた。演者の藥師神 公和氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科)は、「白血病に特異的な症状はない。多くの場合、血液検査で異常が指摘されると、造血の場である骨髄の検査が実施され、診断に至る」と説明し、白血病が急性または慢性、ならびに骨髄性またはリンパ性の違いで一般的に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および慢性リンパ性白血病(CLL)の4つに分類されることから、「本講演では、日本血液学会より2024年に公開された『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』に沿って、各白血病の総論やアルゴリズム、クリニカルクエスチョン(CQ)の改訂点を紹介するとともに、今後の展望にも触れたい」とした。AMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について 従来のAMLの診断は、骨髄における白血病細胞がFAB分類では30%以上、WHO分類では20%以上とされてきたが、今回のガイドライン改訂版ではEuropean Leukemia Net(ELN)が2022年の改訂で採用した分類を引用している。すなわち、AMLを定義付けるような遺伝子異常(PML::RARA、CBFB::MYH11、RUNX1::RUNX1T1など)があれば、芽球比率が10%以上でAMLと診断することになった。ただし、BCR::ABL1については、CML移行期との混乱を避けるため20%以上とされた。 分類に関するほかの重要な変更点の1つとして、病歴よりも遺伝学的特徴のほうが生物学的AMLの分類に関連していることから、従来のAML-MRC(骨髄異形成関連変化を伴うAML)と治療関連骨髄性腫瘍の病型が削除された。 なお、遺伝子変異と染色体核型に基づく予後因子を組み合わせた予後層別化システムについては、2022年のELN改訂版でFLT3-ITD変異がアレル比やNPM1変異の有無にかかわらず、すべてIntermediate群に分類された点が今回のガイドライン改訂版に記載された(ただし、FLT3阻害薬が初回治療から使用できることが前提)。このほかにも、細かい遺伝子異常が予後層別化に追加された。 急性前骨髄球性白血病(APL)以外の若年者AMLにおける治療アルゴリズムとして、今回のガイドライン改訂版ではFLT3遺伝子変異の情報を診断時に取得することが明記された。また、高齢者AMLにおいてもFLT3遺伝子変異情報の取得が記載され、藥師神氏は「基本的に初発時からFLT3遺伝子変異検査を行うことになる。なお、強力化学療法非適応症例への寛解導入療法は、CQ8『強力化学療法が適応とならない高齢者(65歳以上)AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)を参照すること」と述べた。 これ以外の注目すべきCQとして、同氏はCQ3『若年者(65歳未満)初発AMLに対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ13『治療関連・二次性AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2Aおよび2B)を挙げた。一方、APLにおいては、CQ2『初発APLの寛解導入療法におけるDIC(播種性血管内凝固)対策として何が勧められるか』で、遺伝子組換えトロンボモジュリンによる治療が推奨グレード・カテゴリー3からカテゴリー2Bにアップグレードされた点を挙げた。CMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について CMLの診断時に評価すべき予後スコアは、SokalスコアやELTS(EUTOS long-term survival)スコアを使用し、治療効果はELN 2020の判定規準に従い、血液学的奏効(血液・骨髄検査所見および臨床所見で判定)、細胞遺伝学的奏効(骨髄細胞中のPhiladelphia[Ph]染色体割合で判定)、分子遺伝学的奏効(PCRによる血液細胞中のBCR::ABL1遺伝子発現量で判定)の3つのレベルで判定する。加えて、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療効果のモニタリングと戦略が、同氏より解説された。 また、注目すべきCQとして、CQ1『初発CML-CP(慢性期)に対する治療として何が勧められるか』で、TKI阻害薬が新たに1剤追加されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ3『ELNの効果判定規準によりWarningやFailureとされた症例に対する二次治療、三次治療以降は何が勧められるか』で、三次治療以降にSTAMP(specifically targeting the ABL myristoyl pocket)阻害薬が追記されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ5『同種造血幹細胞移植はCMLの治療中どのようなときに考慮すべきか』で、さまざまな状況に応じた移植の検討が推奨されること(推奨グレード・カテゴリー2A)を挙げた。 さらに、CQ6『DMR(分子遺伝学的に深い奏効)を達成しMRD(微小残存病変)が検出されなければTKI中止は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ7『CMLに対するTKI治療中にTKIの減量は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1、2Aおよび2B)、CQ8『CML患者もしくはそのパートナーの妊娠にはどのような対応が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2B)の改訂点が紹介された。ALLおよびCLLの主なCQの改訂点について ALLの注目すべきCQとして、CQ4『寛解期成人ALLにおけるMRDは、どのような評価方法、評価時期、閾値の判定が勧められるか』で、定量PCRによる白血病特異的融合遺伝子測定および免疫グロブリン重鎖(Ig)/T細胞受容体(TCR)遺伝子再構成測定が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、ならびに1回目のMRD測定は寛解導入療法後が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)が紹介された。同氏は、そのほかにCQ6『第一寛解期ALLの同種造血幹細胞移植には骨髄破壊的前処置と減弱前処置のどちらが勧められるか』で、適切な前処置に関する推奨(推奨グレード・カテゴリー2B)が明記された点や、CQ7『Ph陽性ALLに対する移植後TKIの維持療法は勧められるか』で、MRD陰性の時点で開始する予防的なTKI維持療法は推奨されない(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが記載された点を紹介。CQ9『再発ALLに対する再寛解導入療法の選択肢としてどのような治療が勧められるか、CAR-T細胞療法はどのようなときに考慮すべきか』で、新たな治療選択肢(推奨グレード・カテゴリー1)やCAR-T細胞療法(推奨グレード・カテゴリー2A)が追記された点についても言及した。 CLLの注目すべきCQとして、初回治療としてBTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)阻害薬が推奨され(CQ2『CLL初回治療としてBTK阻害薬療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])、免疫化学療法は初回治療として推奨されない(CQ3『CLL初回治療として免疫化学療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])ことが紹介された。二次治療における治療方針の推奨(CQ4『イブルチニブ初回治療に治療抵抗性もしくは再発CLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』およびCQ5『イブルチニブ初回治療に治療不耐容のCLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』)が、ともにカテゴリー1として明記された点も紹介し、CQ7『自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症を合併したCLLに対してステロイド治療は勧められるか』では、無症候性・非活動性CLLであればステロイド治療が推奨される(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが説明された。これからの白血病診療の展望 造血器腫瘍の診断および治療について、ゲノム情報に基づく診療がWHOなどから提唱される中、つい最近、わが国においても造血器腫瘍を対象とした遺伝子パネル検査が登場した。「本邦での造血器腫瘍におけるがんゲノム医療の導入は喫緊の課題」と語る藥師神氏は、「日本血液学会が発行する『造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2023年度版』で遺伝子パネル検査の基盤となる情報が提供されている。そのため、新規治療薬の導入とともに、白血病診療が今後さらに前進していくことが期待される」と締めくくった。

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免疫チェックポイント阻害薬治療中の生存率にインスリン分泌能が独立して関連

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けているがん患者において、インスリン分泌能が良好であることが、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)の延長に独立して関連しているとする研究結果が報告された。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科の渡邉真由氏、江口潤氏らが行った前向きコホート研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に12月11日掲載された。 ICIは種々のがんに対してしばしば著効を示すが、従来の抗がん剤とは異なる副作用があり、糖尿病を有する場合はインスリン分泌能低下リスクのあることが知られている。ただし、糖尿病でないがん患者に関しては、まれに劇症1型糖尿病を引き起こすリスクがあることを除き、糖代謝へどのような影響が生じるのかという点の知見は限られている。 渡邉氏らはこの点について、同大学病院の患者を対象とする前向きコホート研究により検討した。解析対象は、2017年6月~2019年8月に進行がんと診断され、ICIによる初回治療が行われた87人。ベースライン以前および研究期間中に糖尿病と診断・治療された患者、および糖代謝に影響を及ぼし得るステロイドが処方された患者などは除外されている。 主な特徴は、年齢中央値(以下、連続変数は全て中央値)が65歳(四分位範囲56~72)、男性67.8%、BMI19.2。がん種は頭頸部がん52人、胃がん19人、その他16人であり、全身状態を0~4で表すECOG PSは0~1(比較的良好なパフォーマンス)が80.5%を占めていた。糖代謝に関しては、HbA1c5.6%、空腹時血糖値97mg/dL、インスリン分泌能を表すHOMA-βが59.4(四分位範囲37.1~85.3)、Cペプチドが1.52ng/dL(同1.01~2.24)、インスリン抵抗性を表すHOMA-IRが1.11(0.72~2.34)であり、腎機能(eGFR)は70.9mL/分/1.73m2(63.5~87.2)と良好だった。投与されたICIは、ニボルマブが78人、ペムブロリズマブが10人、イピリムマブが1人だった(2人は2剤併用)。 ICI投与開始1カ月後、HbA1cの有意な低下(P=0.018)とCペプチドの有意な上昇(P=0.022)が観察され、ICIは非糖尿病患者の糖代謝にも影響を及ぼし得ることが示唆された。 観察期間中に82人(94.3%)が死亡し、OSは中央値7カ月、PFSは同3カ月だった。OSの中央値で2群に分けて比較すると、HOMA-βはベースラインおよび投与1カ月後の両時点で有意差があり、OSが7カ月以上の群のほうが高値だった。その他の糖代謝関連指標の群間差は非有意だった。ROC解析により、OSが7カ月以上であることを予測するHOMA-βの最適なカットオフ値は64.24と計算され、AUCは0.665だった。また、PFSが3カ月以上であることを予測するHOMA-βの最適なカットオフ値は66.43、AUCは0.582だった。 次に、年齢、性別、BMI(最適なカットオフ値である18.58以上)、eGFRおよびHOMA-β(64.24以上)を独立変数、OSの短縮(中央値である7カ月未満)を従属変数とする多変量ロジスティック回帰分析を施行。その結果、BMI(ハザード比〔HR〕0.481〔95%信頼区間0.299~0.772〕)とHOMA-β(HR0.623〔同0.393~0.989〕)の2項目が、OS延長に独立して関連していることが明らかになった。続いて行ったPFSの短縮(中央値である3カ月未満)を従属変数とする解析からは、HOMA-β(66.43以上の場合にHR0.557〔0.339~0.916〕)のみが、PFS延長に独立して関連していることが明らかになった。 著者らは本研究が単施設の患者データに基づく解析であり、サンプルサイズも十分でないことなどを限界点として挙げた上で、「得られた結果は、ICI治療を受ける非糖尿病患者において、インスリン分泌能の高さがOSやPFSの延長に独立して関連することを示している。HOMA-βは、ICI投与が予定されるがん患者の予後予測指標となり得るのではないか」と結論。また、「ICIが膵β細胞機能に影響を及ぼすメカニズムの解明が期待される」と付け加えている。

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認知症の急速悪化、服用中の薬剤が引き金に?【外来で役立つ!認知症Topics】第27回

認知症の急速進行性患者(Rapid Decliner)少なからぬ認知症の患者さん、とくにアルツハイマー病(AD)患者の外来治療は長期にわたりがちで、2年や3年はざら、時には10年ということもある。そうした中で、この病気が進行していくスピード感というものがだんだんとわかってくる。ところが、「なぜこんなにも急速に悪化するのか」という驚きと、主治医としての後ろめたさを感じてしまうような症例を少なからず経験する。こうした患者さんは、医学的には急速進行性患者(Rapid Decliner:RD)と呼ばれる。急速進行性認知症とは、本来プリオン病をプロトタイプとするが、プリオン病との鑑別で最も多いのは急速進行性のADだとされる。このようなケースでは、本人というよりも主たる介護者が、そのことを嘆かれ、治療の変更や転医などを相談されることもある。しかし担当医として容易にはお答えができず、忸怩たる思いを経験する。また新薬の治験のようにADの経過を評価する際にもRDはしばしば問題になる。というのは、こうした新薬の効果は、多くの場合、わずかなものである。そこに一般的な患者の経過から飛び抜けて悪化を示すケースがあると、「結果解析ではこうしたRDを例外として対象から除外するのか?」などの統計解析上の取り扱いが問題になると聞く。急速進行性アルツハイマー病(RD AD)の定義さて急速進行性AD(RD AD)の定義では、MMSEのような認知機能評価尺度の点数悪化や発症から死亡に至るまでの時間により示されることが多い。RD ADの定義として、MMSEの年間点の得点低下が6点以上とするものが多い1)。一般的には年間低下率は、2~3点とされるから、その倍以上である。また普通は7~8年とされるADの生存期間だが、RD ADでは、それが2年以内とされることも多い2)。つまり約3~4分の1程度も短命である。このようなRD ADを予測する要因としては、合併症として、血管性要因、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満などがある。また慢性的な心不全や閉塞性肺疾患の関与も注目されてきた。しかしいずれも確立していない。さらに一般的には若年性が悪いと思われがちだが、必ずしもそうではない。バイオマーカーでは、脳脊髄液中の総タウ、リン酸化タウの高値は予測要因の可能性があるとされる。多くの遺伝子多型も研究報告されてきた。最もよく知られた遺伝子多型のAPOEだが、この役割については賛否両論ある。以上をまとめると、RD ADの予測要因として確立したものはなさそうである。RD ADの症状:体力低下、BPSD、IADLの障害もっとも実臨床の場面でRD ADが持つ意味は上記のような医学的な定義とは少し異なる。つまり体力低下、認知症にみられる行動および神経心理学的な症状(BPSD)や道具的ADL(Instrumental Activity of Daily Living:IADL)の障害などが急速に進んで日常生活の維持が困難になって、急速進行が事例化するケースが多いと思う。たとえば、大腿骨頸部骨折や各種の肺炎後に衰弱が急に進むという訴えがある。IADLでは、排泄の後始末ができない・汚れたおむつで便器を詰まらせる、着衣失行など衣類が着られなくなった、などが多い。またBPSDでは、多くの介護者にとって、幻視や幻聴、そして妄想の出現はショックが大きい。つまり家族介護者は、認知機能の低下というよりは、衰弱やIADLの低下、衰弱や幻覚妄想による言動のように、目に見える変化が急速な悪化と感じやすい。服用中の薬剤が急速悪化の引き金にさて問題は、こうしたケースへの対応である。これには2つのポイントがある。まず診断の見直しという基本の確認である。ここでは必要に応じてセカンドピニオンも考慮すべきである。次にRDの危険因子とされた要因を点検することである。とくに注目すべきは、服用薬剤の副作用だろう。診断の見直しでは、まずビタミンB群、梅毒やHIVを含む血液検査はしておきたい。新たな脳血管障害などが加わった可能性もあるからCTやMRI等の脳画像の再検査も考慮する。また脳脊髄液検査や脳波検査も、感染症やプリオン病などの可能性を踏まえてやっておきたい。高度検査では、遺伝学的な検査、また悪性腫瘍の合併を考慮してWhole body PET-CTが必要になるケースもあるだろう。さらに炎症系の関りも視野に入れて、専門医との相談に基づいて、抗炎症治療による治療的診断として、イムノグロブリン、高用量ステロイドなどの投与もありうる。いずれにせよこれらでは、躊躇なくセカンドオピニオンが求められる。危険視の中でも、服用薬剤が重要である。まず向精神薬がある程以上に長期間にわたって投与されていれば、これらが心身の機能にも生命予後にも悪影響を及ぼす可能性がある。なお向精神薬には、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬のほかに、抗てんかん薬、抗パーキンソン薬などが含まれる。とりわけ、他科から処方されている薬剤は案外盲点かもしれない。他科の担当医はご自分の領域の治療薬に精通されていても、それが認知症に及ぼす影響まではあまり注意されていないかもしれない。それだけに「おくすり手帳」などを見せてもらう必要がある。さまざまな薬剤の中でも、とくに抗コリン薬は要注意である。これは過活動性膀胱の治療薬など泌尿器科用薬剤、循環器用薬剤に多い。またヒスタミンH2受容体拮抗薬、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、循環器系治療薬、抗菌薬などにも目配りが求められる。参考1)Soto ME, et al. Rapid cognitive decline in Alzheimer's disease. Consensus paper. J Nutr Health Aging. 2008;12:703-713. 2)Harmann P, Zerr I. Rapidly progressive dementias – aetiologies, diagnosis. Nat Rev Neurol. 2022;18:363-376.

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asthma(喘息)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第22回

言葉の由来「喘息」は英語で“asthma”ですが、この言葉の起源をたどると、古代ギリシャ語の“aazein”という動詞に由来するそうです。この動詞は、「激しく息をする」という意味合いを持つ言葉です。14世紀後半に英語に導入され、「息苦しい発作や胸の圧迫感を伴う呼吸障害」を表す医学用語として使用され始めました。この当時は、まだ現在のように病名として定義されておらず、呼吸困難がある患者全般に対する呼称として“asthma”あるいは、“asthmatic”という形容詞が使われてきたようです。なお、後者の“asthmatic”は、喘息患者をラベリングする(=患者を病気そのもので定義付けてしまう)使い方をされることが多いので、現在は使用を避けるのが好ましいといわれています。現代の医学では、喘息は慢性炎症性気道疾患の病名として用いられていますが、このような病気としての言葉の定義付けがされたのは、19世紀に入ってからのようです。併せて覚えよう! 周辺単語呼吸困難dyspnea喘鳴wheeze急性増悪acute exacerbation吸入ステロイドinhaled corticosteroids気管支拡張薬bronchodilatorsこの病気、英語で説明できますか?Asthma is a chronic inflammatory disease of the airways characterized by episodes of wheezing, shortness of breath, chest tightness, and coughing. These episodes can be triggered by allergens, physical activity, or respiratory infections.講師紹介

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標準治療+アニフロルマブが全身性エリテマトーデス患者の臓器障害の進行を抑制

 全身性エリテマトーデス(SLE)は、炎症を通じて肺、腎臓、心臓、肝臓、その他の重要な臓器にさまざまな障害を起こす疾患であり、臓器障害が不可逆的となることもある。しかし、新たな研究で、標準治療へのSLE治療薬アニフロルマブ(商品名サフネロー)の追加が、中等症から重症の活動性SLE患者での臓器障害の発症予防や進行抑制に寄与する可能性のあることが示された。サフネローを製造販売するアストラゼネカ社の資金提供を受けてトロント大学(カナダ)医学部のZahi Touma氏らが実施したこの研究は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に2月1日掲載された。 SLEの標準治療は、ステロイド薬、抗マラリア薬、免疫抑制薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを組み合わせて炎症を抑制するのが一般的である。しかし、このような標準治療でSLEによる臓器障害を防ぐことは難しく、場合によっては障害を悪化させる可能性もあると研究グループは指摘する。 アニフロルマブは、炎症亢進に重要な役割を果たす1型インターフェロン(IFN-1)受容体を標的とするモノクローナル抗体であり、2021年に米食品医薬品局(FDA)によりSLE治療薬として承認された。今回の研究では、標準治療にアニフロルマブを追加することで、標準治療単独の場合と比べて中等症から重症の活動性SLE患者での臓器障害発生を抑制できるのかが検討された。対象者は、標準治療(糖質コルチコイド、抗マラリア薬、免疫抑制薬)に加え、アニフロルマブ300mgの4週間ごとの静脈内投与を受けたTULIP試験参加者354人(アニフロルマブ群)と、トロント大学ループスクリニックで標準治療のみを受けた外部コホート561人(対照群)とした。 主要評価項目は、ベースラインから208週目までのSLE蓄積障害指数(Systemic Lupus International Collaborating Clinics/American College of Rheumatology Damage Index;SDI)の変化量、副次評価項目は、最初にSDIが上昇するまでの期間であった。SDIは0〜46点で算出され、スコアが高いほど臓器障害が進行していることを意味する。なお、過去の研究では、SDIの1点の上昇は死亡リスクの34%の上昇と関連付けられているという。 その結果、ベースラインから208週目までのSDIの平均変化量はアニフロルマブ群で対照群に比べて0.416点有意に低いことが明らかになった(P<0.001)。また、208週目までにSDIが上昇するリスクは、アニフロルマブ群で対照群よりも59.9%低いことも示された(ハザード比0.401、P=0.005)。 こうした結果を受けてTouma氏は、「アニフロルマブと標準治療の併用は、4年間にわたって標準治療のみを行う場合と比較して、臓器障害の蓄積を抑制し、臓器障害の進行までの時間を延ばすのに効果的である」と結論付けている。

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第252回 定期接種が目前の帯状疱疹ワクチン、3つの悪条件とは

帯状疱疹という病気を知る人は、医療者に限らず神経痛でのたうち回るイメージを持つ人が多いだろう。周囲でこの病気を体験した人からはよく聞く話である。身近なところで言うと、私の父は今から10年ほど前に帯状疱疹の痛みがあまりにひどく、夜中に救急車で病院に運ばれたことがある。私自身は現在50代半ばだが、実は18歳という極めて若年期に帯状疱疹を経験している。当時はアシクロビル(商品名:ゾビラックスほか)さえなかった時代だ。ただ、私の場合は軽い痛みはあったものの騒ぐほどではなかった。おそらく非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方されたと思うのだが、それを服用するとその軽い痛みすらなくなった。受診した皮膚科の看護師からは「痛くない帯状疱疹、いいね」と謎のお褒めをいただいた。さて、帯状疱疹については1990年代以降、アシクロビルをはじめとする抗ウイルス薬や帯状疱疹の神経障害性疼痛治療薬のプレガバリン(商品名:リリカほか)などが徐々に登場し、薬物治療上は進歩を遂げている。加えて2020年には帯状疱疹専用の乾燥組換えタンパクワクチン・シングリックスが登場した。シングリックス登場以前は水痘の生ワクチンも帯状疱疹予防として使用されていたが、極端に免疫が低下しているケースなどには使えないので、この点でも進歩である。ちなみに新型コロナウイルスワクチンも含め21種類のワクチンを接種し、従来からワクチンマニアを自称する私は、2020年の発売後すぐにシングリックスの接種を終えている。それまで接種部位疼痛ぐらいしか副反応を経験していなかったが、シングリックスの1回目接種時は38℃を超える発熱を経験した。全身症状の副反応を経験した唯一のワクチンでもある。そして今春からはこの帯状疱疹ワクチンが定期接種化する。私自身はワクチンで防げる感染症は、積極的に接種を推進すべきとの考えであるため、これ自体も喜ばしいことである。だが、この帯状疱疹ワクチンの定期接種化がやや面倒なスキームであることはすでに多くの医療者がご存じかと思う。とにかく対応がややこしいB類疾病今回の帯状疱疹ワクチンの定期接種は、「個人の発症・重症化予防を前提に対象者内で希望者が接種する」という予防接種法に定めるB類疾病に位置付けられた。疾患特性上、この扱いは妥当と言えるだろう。季節性インフルエンザや肺炎球菌感染症などが該当するB類疾病はあくまで法的に接種の努力義務はなく、接種費用の一部公費負担はあるものの、接種希望者にも自己負担が生じる。まあ、これはこれで仕方がない。しかし、私見ながら国が定期接種と定めながら、市区町村による接種勧奨義務がないのはいただけない。自治体の対応は任意のため、地域によっては勧奨パンフレットなどを個々人に郵送しているケースもある。もちろんそこまではしていなくとも、個別配布される市区町村報などに接種のお知らせが掲載されている事例は多い。とはいえ、市区町村報は制作担当者の努力にもかかわらず、案外読まれないものである。集合住宅に居住する人ならば、郵便ポスト脇に設置されたポスティングチラシ廃棄用のゴミ箱に市区町村報が直行しているのを目にした経験はあるはずだ。しかも、今回の帯状疱疹ワクチンの定期接種スキームは、一般人はおろか医療者にとってもわかりにくい高齢者向け肺炎球菌ワクチンの接種スキームに酷似している。具体的には開始から5年間の経過措置を設け、2025年度に65歳となる人とそこから5歳刻みの年齢(70、75、80、85、90、95、100歳)の人が定期接種対象者になり、2025年度は特例として現時点で100歳以上の人はすべて対象者とする。今後、毎年この65歳とそこから5歳刻みの人が対象となるのだ。これ以外には60~64歳でヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害があり、日常生活がほとんど不可能な人も対象である。この肺炎球菌ワクチンや帯状疱疹ワクチンの定期接種での対象者の5歳刻みは、私の知る限り医師からの評判はあまりよろしくない。「それだったら65歳以上の高齢者を一律接種可能にすべき」という声はたびたび聞くが、この措置はおそらくは公費負担分の予算確保の問題があるからとみられる。とりわけ今回の帯状疱疹ワクチンの場合の予算確保は、国や市区町村担当者にとってかなりの負担だろう。というのも、定期接種では水痘生ワクチンとシングリックスが使われる予定だが、前者は1回接種で全額自己負担の場合は約8,000円、後者は2ヵ月間隔の2回接種で計約4万円。後者は安めの居酒屋で何回たらふく飲み食いできるのだろうという価格である。すでに知られていることだが、今回の定期接種化決定以前に帯状疱疹ワクチンの接種に対して独自の助成を行っている自治体もあり、その多くは接種費用の5割助成、つまり自己負担割合は接種費用の5割である。今回の定期接種化で対象者の自己負担割合がどの程度になるかはまだ明らかになってはいないが、一説には接種費用の3割程度と言われている。この場合、より安価な接種が可能になるが、3割だとしてもシングリックスならば患者自己負担額は2回合計で約1万2,000円と決して安くはない。この(1)5歳刻みの複雑な接種スケジュール、(2)自治体の接種勧奨格差、(3)自己負担額、の3つの“悪”条件は、定期接種という決断を「絵に描いた餅」にしてしまう、いわゆる接種率が一向に高まらないとの懸念を大きくさせるものだ。実際、(1)~(3)がそのまま当てはまる肺炎球菌ワクチンの2019~21年の接種率は13.7~15.8%。この接種率の分母(推計対象人口)には、2019年以前の接種者を含んでいるため、現実の接種率よりは低い数字と言われているものの、結局、累積接種率は5割に満たないとの推計がある。接種率の低さゆえに2014年の定期接種化から設けられた5年間の経過措置は1度延長されたが、事実上対象者の接種率が5割に満たないまま、経過措置は今年度末で終了予定である。接種率向上がメーカーと現場の裁量に任されている?今回の帯状疱疹ワクチンをこの二の舞にしないためには、関係各方面の相当な努力が必要になる。接種率の貢献において一番期待されるのは現場の医師だが、かかりつけの患者であっても全員の年齢を正確に記憶しているわけではないだろうし、多忙な日常診療の中で、まるでA類疾病の自治体配布資料に当たるような説明に時間を割くのは容易ではないだろう。そんな中で先日、シングリックスの製造販売元であるグラクソ・スミスクライン(GSK)が帯状疱疹ワクチンに関するメディアセミナーを開催した。そこで質疑応答の際にこの懸念について、登壇した岩田 敏氏(熊本大学 特任教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授)、永井 英明氏(国立病院機構東京病院 感染症科部長)、國富 太郎氏(GSK執行役員・ガバメントアフェアーズ&マーケットアクセス本部 本部長)に尋ねてみた。各氏の回答の要旨は以下の通りだ。「われわれ、アカデミアが積極的に情報発信していくことと、かかりつけ医は専門性によってかなり温度差はあると思うが、やはりワクチンはかかりつけ医が勧めるのが一番有効と言われているので、そこの点をもう少し攻めていく必要があると思う」(岩田氏)「肺炎球菌ワクチンの場合は、啓発活動が十分ではなかったのかもしれない。肺炎球菌ワクチンではテレビCMなども流れていたが、やはり私たち医師や自治体がワクチンのことを知ってもらうツールを考えなければならない。その点で言うと私案だが、帯状疱疹ワクチンも含め高齢者に必要なワクチンの種類と接種スケジュールが記載された高齢者用ワクチン手帳のようなものを作成し、それを積極的に配布するぐらいのことをしないとなかなかこの状況(肺炎球菌ワクチンで現実となったB類疾病での低接種率)を打開でないのではないかと思っている」(永井氏)「疾患啓発、ワクチン啓発、予防の大切さを引き続きさまざまなメディアを使って情報発信を継続していきたい。一方、実施主体となる自治体も難しい内容をどう伝えたらよいか非常に苦慮し、限られた資材の中で住民にいかにわかりやすく伝えるかの相談を受けることも非常に多い。その場合に弊社が有するさまざまな資材を提供することもある」(國富氏)また、永井氏が講演の中で示した別の懸念がある。それは前述のように現時点では自治体が帯状疱疹ワクチンの接種に公費助成を行っているケースのこと。現在、その数は全国で700自治体を超える。そしてこの公費助成はワクチンの適応である50歳以上の場合がほとんどだ。ところが今回の定期接種化により、この公費助成をやめる自治体もある。となると、こうした自治体では今後50~64歳の人は完全自己負担の任意接種となるため、永井氏は「助成がなくなった年齢層の接種率は下がるのではないか?」と語る。もっともな指摘である。定期接種化により接種率が下がるというあべこべな現象がおきる可能性があるのだ。昨今は高額療養費制度の改正が大きな問題となっているが、たとえばその渦中で危惧の念を抱いているがん患者などは、抗がん剤治療などにより帯状疱疹を発症しやすいことはよく知られている。自治体の公費助成がなくなれば、該当する自治体で治療中の中年層のがん患者は、帯状疱疹ワクチンで身を守ろうとしても、これまた自己負担である。これでさらに高額療養費が引き上げられたら、たまったものではないはずだ。もちろん国や市区町村の財布も無尽蔵であるわけではないことは百も承知だ。しかし、今回の帯状疱疹ワクチンの定期接種化は喜ばしい反面、穴も目立つ。せめてB類疾病の自治体による接種勧奨の義務化くらい何とかならないものか?

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新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬オザニモド、その特徴は?/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2024年12月27日にオザニモド(商品名:ゼポジア)について、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得した。そこで潰瘍性大腸炎およびオザニモドへの理解を深めることを目的として、2025年2月25日にメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、仲瀬 裕志氏(札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 教授)が、潰瘍性大腸炎の概要、潰瘍性大腸炎患者を対象としたアンケート調査の結果、オザニモドの特徴や臨床成績などについて解説した。再燃への不安が大きな負担 指定難病として認定される潰瘍性大腸炎は、若年で発症することも多く、患者数が年々増加傾向にある。難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班が2014年に実施した調査では、潰瘍性大腸炎の患者数は約22万例と推計されており、令和5年度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は14万6,702例となっている。 潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返すことが特徴であり、仲瀬氏は「再燃があると思うだけで患者はすごく不安になり、日常生活にも大きな影響を及ぼす」と述べる。そこで、30代以上の潰瘍性大腸炎患者106例を対象に、インターネットによるアンケート調査が実施された。本調査の対象患者は、罹病期間5年以上の割合が71%、中等症から重症の割合が63%であった。再燃に関して、再燃経験を有する患者の割合は71%であり、再燃に対する不安を有する患者の割合は89%にのぼった。これについて、仲瀬氏は「さまざまな治療薬が使用可能となった時代においても、患者の89%が再燃の不安を感じているというのは、非常に重要なデータである。こうした不安を取り除くために、医療者は治療に取り組む必要がある」と述べた。S1P受容体調節薬オザニモドの登場 仲瀬氏は「潰瘍性大腸炎はヘテロな疾患である」と述べる。つまり、潰瘍性大腸炎の病態にはさまざまなサイトカインが関与するため、個々の患者で炎症のパターンが異なり、治療への反応も異なる。そのため、さまざまな作用機序の治療薬が開発されているが、それでも治療効果が不十分な患者が存在するのが現状であり、アンメットメディカルニーズが存在するといえる。 そこで新たに登場したのがオザニモドである。オザニモドは、S1P(スフィンゴシン-1-リン酸)受容体を調節するという新しい作用機序を有する※。オザニモドの特徴は、リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し、内在化および分解を誘導することにより、リンパ球がリンパ節から循環血中へ移動するのを抑制することで、結果的に大腸内の炎症を抑制するという点にある。また、1日1回投与の経口薬であることから、患者の負担を軽減することも期待される。※同様の作用機序を有する薬剤として、多発性硬化症治療薬のシポニモドが存在する日本人患者198例を対象とした臨床試験で有用性を検証 オザニモドは、欧米では中等症から重症の潰瘍性大腸炎を適応として2021年に承認を取得しているが、本邦では未承認であった。そこで、日本人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者198例を対象とした国内第II/III相試験「J-True North試験」が実施された。 本試験の主要評価項目である投与12週時の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、プラセボ群が32.3%であったのに対し、オザニモド0.92mg群は61.5%であり、オザニモド0.92mg群が有意に改善し(p=0.0006)、プラセボ群に対する優越性が検証された。オザニモド0.92mg群の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は長期にわたって維持され、投与52週時ではプラセボ群16.9%、オザニモド0.92mg群49.2%であった(名目上のp値=0.0001)。 副次評価項目の臨床的寛解率、内視鏡的改善率、粘膜治癒率もオザニモド0.92mg群がプラセボ群と比べて改善する傾向にあり、いずれの項目も投与52週時のほうが投与12週時よりも良好な傾向にあった。 安全性について、投与52週時までの副作用発現割合は、プラセボ群が13.8%、オザニモド0.46mg群が20.6%、オザニモド0.92mg群が32.3%であった。オザニモド0.92mg群の主な副作用は、ALT増加(4.6%)、γ-GTP増加、AST増加、肝機能検査値上昇、肝機能異常、帯状疱疹、回転性めまい(各3.1%)であった。また、オザニモド0.92mg群の投与中止に至った副作用は4例に発現した(ALT増加・AST増加2例、薬剤性肝障害1例、黄斑浮腫1例)。死亡に至った副作用は報告されなかった。副作用報告数としては少ないが、帯状疱疹をはじめとする感染症や黄斑浮腫には注意を払う必要がある。 また、オザニモドの特徴としてリンパ球数の減少がある。これについて、仲瀬氏は「減少が大きければ休薬を考えないといけないが、リンパ球数の減少と治療効果は相関するという側面もあるため、リンパ球数の絶対値をフォローしながら、上手に使っていく必要がある」と述べた。<J-True North試験の概要>・対象:経口5-アミノサリチル酸製剤またはステロイドの投与歴がある中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎患者198例・方法:プラセボ群、オザニモド0.46mg群、オザニモド0.92mg群に1:1:1の割合で無作為に割り付け、オザニモド0.92mg群には1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、以降は0.92mgを1日1回12週まで経口投与。12週時点のレスポンダーは維持期に移行し、導入期と同じ治験薬を52週まで1日1回経口投与・評価項目[主要評価項目]投与12週時の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率(完全Mayoスコアがベースラインから3ポイント以上かつ30%以上低下、かつ直腸出血サブスコアがベースラインから1ポイント以上低下または絶対値が1ポイント以下)[副次評価項目]投与12週、52週時の臨床的寛解率(直腸出血サブスコアが0ポイントで、排便回数サブスコアが1ポイント以下で[かつ排便回数サブスコアがベースラインから1ポイント以上低下]、かつ内視鏡所見サブスコアが1ポイント以下)、内視鏡的改善率、粘膜治癒率など<製品概要>販売名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg一般名:オザニモド塩酸塩製造販売承認取得日:2024年12月27日効能又は効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)用法及び用量:通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する。製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

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硬膜外ステロイド注射は慢性腰痛に効果あり?

 特定のタイプの慢性腰痛患者において、痛みや障害の軽減を目的とした硬膜外ステロイド注射(epidural steroid injection;ESI)の効果は限定的であることが、米国神経学会(AAN)が発表した新たなシステマティックレビューにより明らかになった。このレビュー結果は、「Neurology」に2月12日掲載された。 ESIは、脊柱の硬膜外腔と呼ばれる部分にステロイド薬や局所麻酔薬を注入して炎症を抑え、痛みを軽減する治療法である。このレビューの筆頭著者である米ロマリンダ大学医学部のCarmel Armon氏は、「慢性腰痛は一般的だが、動作や睡眠、日常的な活動を困難にして、生活の質(QOL)に悪影響を及ぼし得る」とAANのニュースリリースで述べている。 今回のシステマティックレビューでは、2005年1月から2021年1月の間に発表された90件のESIに関するランダム化比較試験を対象に、神経根症および脊柱管狭窄症に対するESIの痛み軽減効果に焦点を当てて分析が行われた。神経根症は、主に頸椎や腰椎の変性により神経根が圧迫されることで、脊柱管狭窄症は脊柱管(背骨の中の神経の通り道)が狭くなって脊髄や神経が圧迫されることで生じ、いずれも痛みやしびれなどが生じる。分析結果は、研究ごとに有効性の指標が大きく異なるため、短期的(治療後3カ月まで)および長期的(治療後6カ月以上)に見て、ESIを受けた患者(ESI群)において治療により良好な転帰を達成した割合がESIを受けていない対照群と比べてどの程度多いか(success rate difference;SRD)に基づき報告された。 その結果、頸部または腰部神経根症の場合、ESI群では対照群と比較して短期的に痛みが軽減した人の割合が24%(SRD −24.0%、95%信頼区間−34.9〜−12.6)、障害が軽減した人の割合が16%(同−16.0%、−26.6〜−5)多いことが示された。また長期的に見ても、ESI群では障害が軽減した人の割合が対照群より約11%多い可能性が示された(同−11.1%、−25.3〜3.6)。ただし、対象研究の多くは腰部神経根症の人が中心であり、頸部の疾患に対する治療については十分な研究がなかった。そのため、頸部の神経根症に対するESIの効果は不明であるという。 一方、脊柱管狭窄症の場合、ESI群では対照群と比較して、短期的にも長期的にも障害が軽減した人の割合が、それぞれ26%(SRD −26.2%、95%信頼区間−52.4〜3.6)と12%(同−11.8%、−26.9〜3.8)多い可能性が示唆されたが、統計学的な有意性は確認されなかった。また、短期的に痛みを軽減する効果については、統計学的に有意な差は確認されず(同−3.5%、−12.6〜5.6)、長期的に痛みを軽減する効果については、エビデンスが十分ではなく不明とされた。全ての研究が腰部脊柱管狭窄症の人を対象にしていたため、頸部脊柱管狭窄症に対するESIの効果は不明であった。 共著者の1人である、米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのPushpa Narayanaswami氏は、「われわれの研究は、特定の慢性腰痛に対するESIの短期的な効果は限定的であることを裏付けている」とニュースリリースで述べている。同氏はまた、「治療を繰り返すことの有効性や、治療が日常生活や仕事復帰に及ぼす影響について検討した研究は見当たらなかった。今後の研究では、こうしたギャップを解消する必要がある」と付言している。

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非がん性慢性脊椎痛、効果的な治療はない?/BMJ

 非がん性(軸性または神経根性)慢性脊椎痛に対し、一般的に行われている関節注射、硬膜外注射、高周波治療などの介入手技は偽手技と比較して、ほとんどまたはまったく疼痛緩和をもたらさない可能性があることが、低~中のエビデンスの確実性をもって示された。カナダ・マクマスター大学のXiaoqin Wang氏らが無作為化比較試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。非がん性慢性脊椎痛は、世界的に大きな健康問題であり、社会経済的に大きな負担を伴う。ステロイドの硬膜外注射、神経ブロック、高周波神経焼灼術などの介入が行われるようになってきているが、現行ガイドラインではそれらの使用に関して相反する推奨事項が示されていた。BMJ誌2025年2月19日号掲載の報告。介入手技と、偽手技等を比較した無作為化試験についてネットワークメタ解析 研究グループは2023年1月24日までにMedline、Embase、CINAHL、CENTRAL、Web of Scienceに登録された文献を検索し、対象研究を特定した。選択基準は、軸性または神経根性の非がん性慢性脊椎痛(持続期間12週以上)を有する患者(18歳以上の成人患者を80%以上含む)を対象とし、10例以上の患者を介入群(関節注射、硬膜外注射、後根神経節への高周波治療、高周波除神経術、傍脊椎筋肉内注射)と対照群(代替手技、偽手技、または理学療法・運動療法・非ステロイド性抗炎症薬投与などの通常ケア)に無作為に割り付け、1ヵ月以上追跡した研究とした。がん関連痛を伴う患者や、感染症または炎症性脊椎関節炎の患者を登録した研究は除外した。 評価者2人がそれぞれ適格研究の特定、データ抽出、バイアスリスクの評価を行った。ネットワークメタ解析は頻度論的ランダム効果モデルを用いて行い、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。ほとんどの介入手技は偽手技と比べて疼痛緩和に差はない 適格研究132件が特定され、このうち13の介入手技または手技の組み合わせを検討した81件、患者計7,977例がメタ解析に組み入れられた。 慢性軸性脊椎痛の疼痛緩和に関して、局所麻酔薬の硬膜外注射(10cmの視覚的アナログスケールにおける加重平均差[WMD]:0.28cm、95%信頼区間[CI]:-1.18~1.75)、局所麻酔薬とステロイドの硬膜外注射(0.20cm、-1.11~1.51)、ステロイドの関節注射(0.83cm、-0.26~1.93)は、偽手技と比較してほとんどまたはまったく差がないと考えられることが示された(エビデンスの確実性:中)。 また、局所麻酔薬の筋肉内注射(WMD:-0.53cm、95%CI:-1.97~0.92)、ステロイドの硬膜外注射(0.39cm、-0.94~1.71)、局所麻酔薬の関節注射(0.63cm、-0.57~1.83)、局所麻酔薬とステロイドの関節注射(0.22cm、-0.42~0.87)も、慢性軸性脊椎痛の疼痛緩和に関して偽手技と比較して、ほとんどまたはまったく差はない可能性が示された(エビデンスの確実性:低)。 局所麻酔薬とステロイドの筋肉内注射は、慢性軸性脊椎痛の疼痛を増大する可能性が示された(WMD:1.82cm、95%CI:-0.29~3.93)(エビデンスの確実性:低)。 慢性軸性脊椎痛に対する関節高周波焼灼術の有効性は、エビデンスの確実性が非常に低いことが示された。 慢性神経根性脊椎痛の疼痛緩和に関して、局所麻酔薬とステロイドの硬膜外注射(WMD:-0.49cm、95%CI:-1.54~0.55)、ならびに後根神経節の高周波焼灼術(0.15cm、-0.98~1.28)は、偽手技と比較してほとんどまたはまったく差はない可能性が示された(エビデンスの確実性:中)。 また、局所麻酔薬の硬膜外注射(WMD:-0.26cm、95%CI:-1.37~0.84)およびステロイドの硬膜外注射(-0.56cm、-1.30~0.17)も、慢性神経根性脊椎痛の疼痛緩和に関して偽手技と比較して、ほとんどまたはまったく差はない可能性が示された(エビデンスの確実性:低)。

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市中肺炎、ステロイドを検討すべき患者は?

 市中肺炎(CAP)は、過剰な炎症反応が死亡と関連することから、ステロイドの併用が有効である可能性が指摘されている。そこで、複数の無作為化比較試験(RCT)やシステマティックレビュー・メタ解析が実施されているが、ステロイドの併用による死亡率への影響については議論が続いている。そのような背景から、オランダ・エラスムス大学医療センターのJim M. Smit氏らの研究グループは、CAPによる入院患者を対象としたRCTの個別患者データ(IPD)を用いたメタ解析を実施し、ステロイドの併用の30日死亡率への影響を評価した。その結果、ステロイドの併用により30日死亡率が低下し、とくにCRP高値の患者集団で有用である可能性が示された。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2025年1月29日号に掲載された。 CAPにより入院した患者を対象に、ステロイド併用の有用性を検討した8つのRCTを抽出した。これらのRCTのIPDを用いてメタ解析を実施した。主要評価項目は30日死亡率とし、抗菌薬にステロイドを併用した群(ステロイド群)と抗菌薬にプラセボを併用した群(プラセボ群)を比較した。CRPや肺炎重症度(PSI)スコアなどによる治療効果の異質性も検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、8つのRCTの対象患者3,224例であった。・30日死亡率は、ステロイド群6.6%(106/1,618例)、プラセボ群8.7%(140/1,606例)であり、ステロイド群が有意に低かった(オッズ比[OR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.94)。・CRP 204mg/L以下の集団における30日死亡率は、ステロイド群13.0%(46/355例)、プラセボ群13.2%(49/370例)であり、両群間に差はみられなかった(OR:0.98、95%CI:0.63~1.50)。・CRP 204mg/L超の集団における30日死亡率は、ステロイド群6.1%(20/329例)、プラセボ群13.0%(39/301例)であり、ステロイド群が低かった(OR:0.43、95%CI:0.25~0.76)。・PSIスコア(クラスI~III vs.クラスIV/V)による治療効果の差はみられなかった。・ステロイド群では、高血糖の発現(OR:2.50、95%CI:1.63~3.83、p<0.0001)、再入院(OR:1.95、95%CI:1.24~3.07、p=0.0038)が多かった。 本研究結果について、著者らは「CAPによる入院患者において、CRP高値の場合はステロイドの併用を考慮すべきであることが示唆された」と考察した。

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