非がん性慢性脊椎痛、効果的な治療はない?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/03/06

 

 非がん性(軸性または神経根性)慢性脊椎痛に対し、一般的に行われている関節注射、硬膜外注射、高周波治療などの介入手技は偽手技と比較して、ほとんどまたはまったく疼痛緩和をもたらさない可能性があることが、低~中のエビデンスの確実性をもって示された。カナダ・マクマスター大学のXiaoqin Wang氏らが無作為化比較試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。非がん性慢性脊椎痛は、世界的に大きな健康問題であり、社会経済的に大きな負担を伴う。ステロイドの硬膜外注射、神経ブロック、高周波神経焼灼術などの介入が行われるようになってきているが、現行ガイドラインではそれらの使用に関して相反する推奨事項が示されていた。BMJ誌2025年2月19日号掲載の報告。

介入手技と、偽手技等を比較した無作為化試験についてネットワークメタ解析

 研究グループは2023年1月24日までにMedline、Embase、CINAHL、CENTRAL、Web of Scienceに登録された文献を検索し、対象研究を特定した。選択基準は、軸性または神経根性の非がん性慢性脊椎痛(持続期間12週以上)を有する患者(18歳以上の成人患者を80%以上含む)を対象とし、10例以上の患者を介入群(関節注射、硬膜外注射、後根神経節への高周波治療、高周波除神経術、傍脊椎筋肉内注射)と対照群(代替手技、偽手技、または理学療法・運動療法・非ステロイド性抗炎症薬投与などの通常ケア)に無作為に割り付け、1ヵ月以上追跡した研究とした。がん関連痛を伴う患者や、感染症または炎症性脊椎関節炎の患者を登録した研究は除外した。

 評価者2人がそれぞれ適格研究の特定、データ抽出、バイアスリスクの評価を行った。ネットワークメタ解析は頻度論的ランダム効果モデルを用いて行い、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。

ほとんどの介入手技は偽手技と比べて疼痛緩和に差はない

 適格研究132件が特定され、このうち13の介入手技または手技の組み合わせを検討した81件、患者計7,977例がメタ解析に組み入れられた。

 慢性軸性脊椎痛の疼痛緩和に関して、局所麻酔薬の硬膜外注射(10cmの視覚的アナログスケールにおける加重平均差[WMD]:0.28cm、95%信頼区間[CI]:-1.18~1.75)、局所麻酔薬とステロイドの硬膜外注射(0.20cm、-1.11~1.51)、ステロイドの関節注射(0.83cm、-0.26~1.93)は、偽手技と比較してほとんどまたはまったく差がないと考えられることが示された(エビデンスの確実性:中)。

 また、局所麻酔薬の筋肉内注射(WMD:-0.53cm、95%CI:-1.97~0.92)、ステロイドの硬膜外注射(0.39cm、-0.94~1.71)、局所麻酔薬の関節注射(0.63cm、-0.57~1.83)、局所麻酔薬とステロイドの関節注射(0.22cm、-0.42~0.87)も、慢性軸性脊椎痛の疼痛緩和に関して偽手技と比較して、ほとんどまたはまったく差はない可能性が示された(エビデンスの確実性:低)。

 局所麻酔薬とステロイドの筋肉内注射は、慢性軸性脊椎痛の疼痛を増大する可能性が示された(WMD:1.82cm、95%CI:-0.29~3.93)(エビデンスの確実性:低)。

 慢性軸性脊椎痛に対する関節高周波焼灼術の有効性は、エビデンスの確実性が非常に低いことが示された。

 慢性神経根性脊椎痛の疼痛緩和に関して、局所麻酔薬とステロイドの硬膜外注射(WMD:-0.49cm、95%CI:-1.54~0.55)、ならびに後根神経節の高周波焼灼術(0.15cm、-0.98~1.28)は、偽手技と比較してほとんどまたはまったく差はない可能性が示された(エビデンスの確実性:中)。

 また、局所麻酔薬の硬膜外注射(WMD:-0.26cm、95%CI:-1.37~0.84)およびステロイドの硬膜外注射(-0.56cm、-1.30~0.17)も、慢性神経根性脊椎痛の疼痛緩和に関して偽手技と比較して、ほとんどまたはまったく差はない可能性が示された(エビデンスの確実性:低)。

(ケアネット)