depemokimabは、インターロイキン(IL)-5を標的とするモノクローナル抗体であり、IL-5への高度な結合親和性と高い効力を有し、半減期の長い初の超長時間作用型の生物学的製剤で、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)患者において2型炎症の持続的な抑制と年2回の投与が可能であることが確かめられている。ベルギー・Ghent UniversityのPhilippe Gevaert氏らANCHOR-1 and ANCHOR-2 trial investigatorsは「ANCHOR-1試験」および「ANCHOR-2試験」において、depemokimabの年2回投与はCRSwNP患者における標準治療への追加薬として、プラセボと比較し内視鏡的鼻茸総スコアと鼻閉スコアの変化量を有意に改善し忍容性も良好であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年3月15日号に掲載された。
16ヵ国の無作為化プラセボ対照反復第III相試験
ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験は、CRSwNPの治療におけるdepemokimab追加の有益性の評価を目的とする同一デザインの二重盲検無作為化プラセボ対照並行群間比較反復第III相試験であり、2022年4月~2023年8月に日本を含む16ヵ国190施設で患者を登録した(GSKの助成を受けた)。
年齢18歳以上、コントロール不良のCRSwNP(両側鼻腔の内視鏡的鼻茸スコア[片側鼻腔当たり0点:鼻茸なし~4点:鼻茸により完全閉塞、両側で合計8点]が5点以上[片側2点以上])で、重篤な症状がみられ、CRSwNPに対する手術歴または全身性コルチコステロイド治療・不耐の少なくとも1つを有する患者を対象とした。
これらの患者を、26週ごとにdepemokimab(100mg)またはプラセボを皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
複合主要エンドポイントは、最大の解析対象集団(FAS)における内視鏡的鼻茸総スコアのベースラインから52週時までの変化量と、鼻閉スコア(言語式評価スケール[0~3点、リッカート尺度])のベースラインから49~52週の平均値までの変化量とした。
個々の試験、統合解析とも良好な結果
ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験に合計540例を登録し、528例がFASとなった。depemokimab群272例(平均年齢[SD]52.4[13.27]歳、男性69%)、プラセボ群256例(51.6[13.27]歳、70%)。depemokimab群はANCHOR-1試験143例、ANCHOR-2試験129例、プラセボ群はそれぞれ128例および128例であった。
複合主要エンドポイントのベースラインからの変化量は、以下のとおり、プラセボ群に比べdepemokimab群で統計学的に有意な改善を示した。
内視鏡的鼻茸総スコアの群間差は、ANCHOR-1試験で-0.7(95%信頼区間[CI]:-1.1~-0.3、p<0.001)、ANCHOR-2試験で-0.6(-1.0~-0.2、p=0.004)、2つの試験の統合解析で-0.7(-0.9~-0.4、名目上のp<0.001)であった。また、言語式評価スケールによる鼻閉スコアの群間差は、ANCHOR-1試験で-0.23(-0.46~0.00、p=0.047)、ANCHOR-2試験で-0.25(-0.46~-0.03、p=0.025)、2つの試験の統合解析で-0.24(-0.39~-0.08、名目上のp=0.003)であった。
有害事象、重篤な有害事象の頻度は同程度
投与期間中および投与後の有害事象の頻度は、depemokimab群(ANCHOR-1試験74%[106例]、ANCHOR-2試験76%[98例])とプラセボ群(79%[101例]、80%[102例])で同程度であった。また、重篤な有害事象の頻度も、depemokimab群(3%[5例]、5%[6例])とプラセボ群(5%[6例]、8%[10例])で類似していた。死亡例は、2つの試験とも両群で報告はなかった。
52週の投与期間中に、ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験のdepemokimab群で、それぞれ7%(10例)および9%(11例)に抗薬物抗体の発現を認めた。プラセボ群の1例が、中和抗体陽性であった。
著者は、「これらの知見は、depemokimabがCRSwNP患者にとって有益な治療選択肢であることを支持するものである」「年2回の投与により、投与スケジュールが簡素化されるため、アドヒアランスが改善し治療負担が軽減する可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)