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SLEに待望の治療薬アニフロルマブが発売/アストラゼネカ

 アストラゼネカ株式会社は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬アニフロルマブ(商品名:サフネロー)点滴静注300mgを11月25日より販売開始した。アニフロルマブは、完全ヒト型モノクローナル抗体であり、I型インターフェロンα受容体のサブユニット1(IFNAR1)を標的とする治療薬。用量調整が不要で、4週間ごとに1回30分以上かけて投与する点滴静注製剤。アニフロルマブ投与者で観察期間52週間の全例調査を実施 SLEは、免疫系が体内の正常な組織を攻撃する自己免疫疾患。慢性的であり、さまざまな臨床症状を伴う複雑な疾患であるため、多くの臓器に影響を及ぼし、疼痛、発疹、倦怠感、関節の腫れ、発熱など幅広い症状の原因となる。SLE患者の50%以上は、本疾患自体あるいは既存の治療薬が原因の恒久的な臓器障害を引き起こし、症状が増悪や死亡リスクの上昇につながる。世界中に少なくとも500万人がある種のループス疾患に罹患していると推定されている。 今回発売されたアニフロルマブは、発売後600例にわたって観察期間52週間の全例調査を実施し、既存治療で効果不十分なSLE患者を対象に、アニフロルマブの製造販売後の使用実態下における長期の安全性および有効性に関する情報収集および評価を実施する予定。なお、アニフロルマブの投与を中止した場合(再来院しなくなった場合を含む)はその日付および理由を確認し、最終投与後8週間を目安に、可能な限り観察を行う。アニフロルマブの概要製品名:サフネロー点滴静注300mg一般名:アニフロルマブ(遺伝子組換え)剤形:注射剤(バイアル)効能または効果:既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス用法および用量:通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として、300mgを4週間ごとに30分以上かけて点滴静注製造販売承認:2021年9月27日発売日:2021年11月25日製造販売元:アストラゼネカ株式会社

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透析期の腎性貧血、ダプロデュスタットはESA薬に非劣性/NEJM

 透析治療を受けている貧血を有する慢性腎臓病(CKD)患者において、ダプロデュスタットは赤血球造血刺激因子薬(ESA)と比較し、ベースラインからのヘモグロビン値の変化および心血管アウトカムに関して、非劣性であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAjay K. Singh氏らが実施した、無作為化非盲検第III相試験「ASCEND-D試験」で示された。CKD患者において貧血治療として用いられる遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤およびその誘導体は、脳卒中、心筋梗塞などの有害事象のリスクを高める可能性があるが、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬(HIF-PH阻害薬)はヘモグロビン値の増加においてESAと同等の効果があることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2021年11月5日号掲載の報告。ヘモグロビン変化と初回MACE発生を評価 研究グループは、90日以上透析を受けているCKD患者で、ESAを6週間以上投与され、ヘモグロビン値が8.0~11.5g/dLの患者を、ダプロデュスタット群またはESA群(血液透析患者はエポエチン アルファ、腹膜透析患者はダルベポエチン アルファ)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ベースラインから主要評価期間(28週~52週)までの、ヘモグロビン値の平均変化量(非劣性マージン:-0.75g/dL)、および主要心血管イベント(MACE:全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初回発生(非劣性マージン:1.25)であった。主要評価項目についてESAに対する非劣性を確認 2016年11月23日~2018年8月10日に、35ヵ国431施設で計2,964例が無作為化された(ダプロデュスタット群1,487例、ESA群1,477例)。ベースラインのヘモグロビン値(平均±SD)は、全体で10.4±1.0g/dLであった。 ベースラインから28週~52週までのヘモグロビン値の平均変化量(平均±SE)は、ダプロデュスタット群0.28±0.02g/dL、ESA群0.10±0.02g/dLであり、群間差0.18g/dL(95%信頼区間[CI]:0.12~0.24)で、事前に規定したダプロデュスタットの非劣性マージン(-0.75g/dL)を満たした。 追跡期間中央値2.5年において、初回MACEはダプロデュスタット群で374/1,487例(25.2%)、ESA群で394/1,477例(26.7%)に発生し、ハザード比は0.93(95%CI:0.81~1.07)で、事前に規定したダプロデュスタットの非劣性マージンを満たした。 他の有害事象の発現頻度は、両群で類似していた。

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英語で「予防接種を受けましたか」は?【1分★医療英語】第3回

第3回 英語で「予防接種を受けましたか」は?Did you receive a measles shot as a child?(子供のころに麻疹の予防接種を受けましたか?)Yes, I did. And I think all my vaccines are fully up-to-date.(はい、受けました。必要なワクチンはすべて受けていると思います)《例文1》I’ll get vaccinated against the flu tomorrow.(明日、インフルエンザのワクチンを受けます)《例文2》The patient has just received the second COVID shot/jab.(その患者は2回目のコロナワクチンを接種したばかりだ)《解説》予防接種を受ける行為やプログラムのことを“vaccination”と表現します。日本でもよく聞く“vaccine”のほうは、予防接種時に投与する薬剤そのものを指します。また、簡易的な表現として米国では“shot”、英国では“jab”という表現もよく使われます。注射全般を指す“injection”も文脈次第でワクチンを意味することがあり、「予防」という意味の“protection”もワクチンを指すことがあります。また、抗体検査をしてワクチンの効果を確認したり、必要なワクチン接種を追加接種したりすることを“To update one’s vaccine status”ということがあります。“Which of my vaccines need to be updated?”(受け直したほうがいい予防接種はありますか?)などのように使います。講師紹介

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うつ病の寛解に対する夜型生活改善の影響

 夜型生活は、うつ病のより悪いアウトカムと関連している。時間生物学的治療による夜型生活の改善の可能性や、その結果がうつ病の長期アウトカムに及ぼす影響については、よくわかっていない。これらの影響を明らかにするため、香港中文大学のJoey Wy Chan氏らは、うつ病治療における夜型生活改善効果について検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2021年9月21日号の報告。 5週間の補助的光療法のランダム化比較試験に参加した非季節性単極性うつ病で夜型生活の成人患者91例を対象とし、そのデータを分析した。夜型生活の定義は、朝型夜型質問票(MEQ)スコア41以下とした。治療5週目でのMEQスコア41超を達成した場合を夜型生活の改善とし、治療後5ヵ月目までMEQスコア41超を維持した場合を夜型生活の持続的な改善と定義した。 主な結果は以下のとおり。・治療5週目に夜型生活の改善が認められた患者は33例(36%)であった。・一般化推定方程式モデルでは、治療5週目の夜型生活の改善は、5ヵ月後のうつ病寛解の2倍増を予測していた(OR:2.61、95%CI:1.20~5.71、p=0.016)。・夜型生活の持続的な改善が認められた患者は25例(75.7%)であり、5ヵ月後のうつ病寛解の可能性が高かった(OR:3.18、95%CI:1.35~7.50、p=0.008)。 著者らは「夜型生活のうつ病患者に対する5週間の時間生物学的治療は、約3分の1の患者で夜型生活を改善し、5ヵ月後の寛解の可能性が高まることが示唆された」としている。

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中等症~重症喘息へのitepekimabの有効性と安全性~第II相試験/NEJM

 中等症~重症の喘息患者において、抗IL-33モノクローナル抗体itepekimabはプラセボと比較し、喘息コントロール喪失を示すイベントの発生率を低下させ、肺機能を改善することが、米国・National Jewish HealthのMichael E. Wechsler氏らによる第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ比較対照試験で示された。itepekimabは、上流のアラーミンであるIL-33を標的とした新規開発中のモノクローナル抗体である。これまで、喘息患者におけるitepekimab単剤療法、あるいはデュピルマブとの併用療法の有効性と安全性は不明であった。NEJM誌2021年10月28日号掲載の報告。itepekimab単剤またはデュピルマブとの併用をプラセボと比較 研究グループは、吸入ステロイド薬と長時間作用性β刺激薬(LABA)の投与を受けている中等症~重症の成人喘息患者296例を、itepekimab(300mg)群、itepekimab+デュピルマブ併用療法(いずれも300mg)群、デュピルマブ(300mg)群、プラセボ群に、1対1対1対1の割合に無作為に割り付け、いずれも2週ごとに12週間皮下投与した。無作為化後、4週時にLABAを中止し、6~9週に吸入ステロイドを漸減した。 主要評価項目は、喘息コントロール喪失(Loss of asthma control:LOAC)を示すイベント(朝の最大呼気流量が2日連続でベースラインから30%以上減少、電子日誌で報告された短時間作用性β2刺激薬の追加吸入が2日連続でベースラインから6回以上増加、全身性ステロイド投与を要した喘息増悪、直近の吸入ステロイドの投与量が4倍以上増加、または喘息による入院または救急外来受診)で、itepekimab群または併用療法群をプラセボ群と比較した。 副次評価項目およびその他の評価項目は、肺機能、喘息コントロール、QOL、タイプ2バイオマーカー、安全性などであった。itepekimab単剤で喘息コントロール喪失のイベント発生率が低下し、肺機能が改善 12週間におけるLOACのイベント発生率は、itepekimab群22%、併用療法群27%、デュピルマブ群19%、プラセボ群41%であった。プラセボ群に対するオッズ比は、itepekimab群が0.42(95%信頼区間[CI]:0.20~0.88、p=0.02)、併用療法群が0.52(0.26~1.06、p=0.07)、デュピルマブ群が0.33(0.15~0.70)であった。 気管支拡張薬使用前の1秒量は、プラセボ群と比較しitepekimab群ならびにデュピルマブ群では増加したが、併用療法群では増加しなかった。itepekimabの投与により、プラセボ群と比較し喘息コントロールとQOLを改善し、平均血中好酸球数が著明に減少した。 有害事象の発現率は、itepekimab群70%、併用療法群70%、デュピルマブ群66%、プラセボ群70%と、4つの治療群で類似していた。

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ソトロビマブ、高リスクの軽~中等症COVID-19への第III相中間解析/NEJM

 高リスクの軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体ソトロビマブは、疾患進行リスクを軽減することが示された。安全性シグナルは確認されなかった。カナダ・William Osler Health CentreのAnil Gupta氏らが、現在進行中の第III相多施設共同無作為化二重盲検試験「COMET-ICE試験」の、事前規定の中間解析の結果を報告した。COVID-19は、高齢および基礎疾患のある患者で入院・死亡リスクが高い。ソトロビマブは疾患早期に投与することで高リスク患者のCOVID-19の疾患進行を防ぐようデザインされた。NEJM誌オンライン版2021年10月27日号掲載の報告。24時間超入院・29日未満の死亡を比較 研究グループは、米国、カナダ、ブラジル、スペインの4ヵ国37ヵ所で、症状発症から5日以内で、疾患進行リスクが1つ以上認められた、入院前COVID-19患者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはソトロビマブ(500mg)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ静脈投与した。 有効性の主要アウトカムは、24時間超のあらゆる入院または無作為化後29日以内の死亡だった。 試験は、2020年8月27日に開始され、2021年3月4日まで追跡された。本報告は、事前規定の中間解析の結果である。入院・死亡リスクはソトロビマブ群で8割強低下 中間解析でITT解析の対象とした被験者は583例で、ソトロビマブ群が291例、プラセボ群が292例だった。そのうち、疾患進行により入院または死亡に至ったのは、プラセボ群21例(7%)だったのに対しソトロビマブ群は3例(1%)だった(相対リスクの低下:85%、97.24%信頼区間:44~96、p=0.002)。 プラセボ群のうち5例が、集中治療室(ICU)で治療を受け、うち1例は無作為化後29日までに死亡した。 安全性については、868例(ソトロビマブ群430例、プラセボ群438例)を対象に評価した。報告された有害イベントは、ソトロビマブ群17%、プラセボ群19%、重篤有害イベントはそれぞれ2%と6%で、プラセボ群よりソトロビマブ群で低率だった。

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週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係

 週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係を検討するため、韓国・延世大学校医科大学のKyung Min Kim氏らは、調査を行った。Sleep Medicine誌オンライン版2021年9月1日号の報告。週末のキャッチアップ睡眠が1~2時間の人においてうつ病リスクが低下 2016年の第7回韓国国民健康栄養調査のデータを用いて検討を行った。うつ病の定義は、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコア10以上とした。キャッチアップ睡眠の時間は、0時間以下、0~1時間、1~2時間、2時間以上で分類した。 週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係を検討した主な結果は以下のとおり。・全体の参加人数は、5,550人。キャッチアップ睡眠の時間別うつ病有病率は、以下のとおりであった。 ●0時間以下(3,286人):7.0% ●0~1時間(1,033人):4.2% ●1~2時間(723人):2.9% ●2時間以上(508人):6.0%・共変量を含む多変量回帰分析では、キャッチアップ睡眠の時間が1~2時間の人は、0時間以下の人と比較し、うつ病リスクの有意な低下が認められた(オッズ比[OR]:0.517、95%CI:0.309~0.865)。・キャッチアップ睡眠の時間が0~1時間の人(OR:0.731、95%CI:0.505~1.060)と2時間以上の人(OR:1.164、95%CI:0.718~1.886)では、うつ病リスクに有意な変化は認められなかった。 著者らは「週末のキャッチアップ睡眠の時間が1~2時間の人において、うつ病リスクの低下が認められた。このことは、より良いうつ病マネジメントのために役立つ可能性がある」としている。

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ブレークスルー感染、死亡・入院リスクが高い因子/BMJ

 英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、英国政府の委託で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行の第2波のデータを基に作成した、ワクチン接種後の死亡・入院のリスクを予測するアルゴリズム(QCovid3モデル)の有用性の検証を行った。その結果、ワクチンを接種しても、COVID-19関連の重症の転帰をもたらすいくつかの臨床的なリスク因子が同定され、このアルゴリズムは、接種後の死亡や入院のリスクが最も高い集団を、高度な判別能で特定することが示された。研究の成果は、BMJ誌2021年9月17日号に掲載された。アルゴリズムの妥当性を検証する英国の前向きコホート研究 本研究は、COVID-19ワクチンを1回または2回接種後のCOVID-19関連の死亡・入院のリスクを推定するリスク予測アルゴリズムの妥当性の検証を目的とする、英国の全国的な人口ベースの前向きコホート研究である(英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 解析にはQResearchデータベースが用いられた。このデータベースには、約1,200万例の臨床研究および薬剤の安全性研究に基づく個々の患者の臨床・薬剤に関するデータが含まれ、COVID-19ワクチン接種、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の検査結果、入院、全身性抗がん薬治療、放射線治療、全国的な死亡・がんのレジストリデータと関連付けられた。 2020年12月8日~2021年6月15日の期間に、COVID-19ワクチンを1回または2回接種した年齢19~100歳の集団(解析コホート)が対象となった。 主要アウトカムはCOVID-19関連死、副次アウトカムはCOVID-19関連入院とされ、ワクチンの初回および2回目の接種後14日から評価が行われた。また、解析コホートとは別の一般診療の検証コホートで、妥当性の評価が実施された。 ワクチンを接種した解析コホート695万2,440人(平均年齢[SD]52.46[17.73]歳、女性52.23%)のうち、515万310人(74.1%)が2回の接種を完了した。COVID-19関連死は2,031人、COVID-19関連入院は1,929人(最終的に446人[23.1%]が死亡)で認められ、2回目の接種後14日以降の発生はそれぞれ81人(4.0%)および71人(3.7%)だった。 最終的なCOVID-19関連死のリスク予測アルゴリズムには、年齢、性別、民族的出自、貧困状態(Townsend剥奪スコア[点数が高いほど貧困度が高い])、BMI、合併症の種類、SARS-CoV-2感染率が含まれた。早期介入の優先患者の選択に有用な可能性 COVID-19関連死の発生率は、年齢および貧困度が上がるに従って上昇し、男性、インド系とパキスタン系住民で高かった。COVID-19関連死のハザード比が最も高い原因別の因子として、ダウン症(12.7倍)、腎移植(慢性腎臓病[CKD]ステージ5、8.1倍)、鎌状赤血球症(7.7倍)、介護施設入居(4.1倍)、化学療法(4.3倍)、HIV/AIDS(3.3倍)、肝硬変(3.0倍)、神経疾患(2.6倍)、直近の骨髄移植または固形臓器移植の既往(2.5倍)、認知症(2.2倍)、パーキンソン病(2.2倍)が挙げられた。 また、これら以外の高リスクの病態(ハザード比で1.2~2.0倍)として、CKD、血液がん、てんかん、慢性閉塞性肺疾患、冠動脈性心疾患、脳卒中、心房細動、心不全、血栓塞栓症、末梢血管疾患、2型糖尿病が認められた。 一方、イベント数が少な過ぎて解析できなかった疾患を除き、COVID-19関連入院にも死亡と類似のパターンの関連性がみられた。 初回と2回目の接種後で、死亡・入院との関連性が異なるとのエビデンスは得られなかったが、2回目以降のほうが絶対リスクは低かった(初回接種のみと比較した2回目接種の死亡ハザード比[HR]:0.17[95%信頼区間[CI]:0.13~0.22]、入院HR:0.21[0.16~0.27])。 検証コホートでは、QCovid3アルゴリズムにより、COVID-19関連死までの期間の変動の74.1%(95%CI:71.1~77.0)が説明可能であった。D統計量は3.46(95%CI:3.19~3.73)、C統計量は92.5と、判別能も良好だった。このモデルの性能は、ワクチンの初回と2回目の接種後も同程度であった。また、COVID-19関連死のリスクが高い上位5%の集団では、70日以内のCOVID-19関連死を同定する感度は78.7%だった。 著者は、「このリスク層別化の方法は、公衆衛生上の施策の推進に役立ち、早期介入の対象となる患者の優先的な選択に有用となる可能性がある」としている。

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アニフロルマブがSLEに適応承認を取得/アストラゼネカ

 アストラゼネカ株式会社は、2021年9月27日付で既存治療にて効果不十分な全身性エリテマトーデス(SLE)の成人患者の治療薬としてI型インターフェロン受容体抗体アニフロルマブ(商品名:サフネロー点滴静注 300mg)がわが国で承認を取得したと発表した。SLEは女性に多く、幅広く全身症状を及ぼす自己免疫疾患 SLEは、免疫系が体内の正常な組織を攻撃する自己免疫疾患で、慢性的にさまざまな臨床症状を伴う複雑な疾患であるため、多くの臓器に影響を及ぼし、疼痛、発疹、倦怠感、関節の腫れ、発熱など幅広い症状の原因となる。SLE患者の50%以上は、本疾患自体あるいは既存の治療薬が原因の恒久的な臓器障害を引き起こし、症状が増悪や死亡リスクの上昇につながるとされる。わが国には約6万人のSLE患者が登録され、その大半は45歳までに診断された女性である。アニフロルマブは米国では中等~重症SLEの適応で承認済み アニフロルマブは、I型IFN受容体のサブユニット1に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体であり、I型IFNの活動を阻害する。I型IFNは、SLEに関与する炎症反応経路に関係するサイトカインで、患者の大多数に疾患活動性と重症度との関連性があるI型IFNのシグナルの増加がみられる。 今回の承認では、2つのTULIP第III相試験と第II相MUSE試験を含むアニフロルマブ臨床開発プログラムの有効性および安全性データに基づいて行われた。これらの試験では標準治療に加えて、アニフロルマブを投与した群の患者は、標準治療にプラセボを加えた群に比べ、皮膚および関節を含む臓器系全体にわたる疾患活動性の低下を示すとともに、経口ステロイド剤(OCS)使用量の持続的な減量を示した。また、TULIP-2試験に登録された日本人患者のサブ解析も、アニフロルマブの承認申請を裏付ける根拠となった。 有害事象として、複数の臨床試験でアニフロルマブ投与群の患者に発現した頻度の高いものは、鼻咽頭炎、上気道感染、気管支炎、注入に伴う反応、過敏症および帯状疱疹が報告されている。 今回のアニフロルマブの承認は、わが国におけるI型インターフェロン(I型IFN)受容体拮抗薬の初めての薬事承認となる。 アニフロルマブは、米国で中等症から重症SLEの適応で承認されており、EUでは薬事審査中。今後、複数の新たな第III試験が、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデスおよび筋炎を対象として計画されている。

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血小板減少症/血栓症リスク、コロナワクチン接種後vs. 感染後/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca製)の初回接種後には血小板減少症や静脈血栓塞栓症、まれな動脈血栓症のリスクが上昇し、BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)初回接種後には動脈血栓塞栓症や虚血性脳卒中のリスクの増加が認められるが、これらのイベントのリスクは、ワクチン接種後と比較して同一集団における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後のほうがはるかに高く、長期に及ぶことが、英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らの調査で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2021年8月26日号で報告された。イングランドの自己対照ケースシリーズ研究 本研究は、イングランドにおけるCOVID-19ワクチンと血液学的/血管系イベントとの関連の評価を目的とする自己対照ケースシリーズ研究であり、2020年12月1日~2021年4月24日の期間に実施された(英国研究技術革新機構[UKRI]の助成による)。 研究グループは、期間中にイングランドでワクチン接種を受けた個々の接種者レベルのデータを入手した。接種者の電子健康記録が、国家統計局(ONS)の死亡データ、SARS-CoV-2検査データ、英国の国民保健サービス(NHS)の入院データと関連付けられた。 2,912万1,633人がワクチンの初回接種を受け(ChAdOx1 nCoV-19ワクチン:1,960万8,008人[平均年齢55.5歳、女性50.1%]、BNT162b2 mRNAワクチン:951万3,625人[61.5歳、57.2%])、175万8,095人(51.7歳、56.7%)がSARS-CoV-2検査陽性であった。初回ワクチン接種を受け、アウトカムのデータが得られた16歳以上の集団が解析に含まれた。mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は接種者数がきわめて少なかったため除外された。 主要アウトカムは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種、BNT162b2 mRNAワクチン接種、SARS-CoV-2検査陽性という3つの曝露から28日以内における、血小板減少症、静脈血栓塞栓症、動脈血栓塞栓症に伴う入院または死亡とされた。主要アウトカムの構成要素である脳静脈洞血栓症(CVST)、虚血性脳卒中、心筋梗塞、その他のまれな動脈塞栓症の評価も行われた。CVSTのみ2つのワクチンともリスク増加 血小板減少症のリスク上昇は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日の罹患率比[IRR]:1.33[95%信頼区間[CI]:1.19~1.47])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日14.04[12.08~16.31]、8~14日5.27[4.34~6.40]、15~21日1.91[1.44~2.54]、22~28日1.50[1.10~2.05])に認められた。 また、静脈血栓塞栓症のリスク増加は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:1.10[95%CI:1.02~1.18])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日13.78[12.66~14.99]、8~14日13.86[12.76~15.05]、15~21日7.88[7.18~8.64]、22~28日3.38[3.00~3.81])に、動脈血栓塞栓症のリスク増加は、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.06[1.01~1.10])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日6.55[6.12~7.02]、8~14日4.52[4.19~4.88]、15~21日2.02[1.82~2.24]、22~28日1.26[1.11~1.43])にみられた。 さらに、CVSTのリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:4.01[95%CI:2.08~7.71])と、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日3.58[1.39~9.27])、およびSARS-CoV-2検査陽性後(1~7日12.90[1.86~89.64]、8~14日13.43[1.99~90.59])に上昇し、虚血性脳卒中のリスクは、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.12[1.04~1.20])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日3.94[3.46~4.47]、8~14日3.25[2.83~3.72]、15~21日2.00[1.70~2.35]、22~28日1.26[1.04~1.53])に増加した。 一方、心筋梗塞のリスクは、2つのワクチンとの関連はなかったが、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日のIRR:7.95[95%CI:7.32~8.63]、8~14日4.94[4.50~5.43]、15~21日1.95[1.71~2.22])に上昇し、まれな動脈塞栓症のリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日1.21[1.02~1.43])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日5.35[3.90~7.32]、8~14日5.61[4.13~7.61]、15~21日2.97[2.03~4.36]、22~28日2.66[1.79~3.94])に増加した。 著者は、「2つのワクチンの初回接種後にCVSTのリスクが上昇しており、これは潜在的な前兆の可能性があるが、数が少ないためさらなる確認が必要である。重要な点は、ワクチン接種後のこれらのアウトカムのリスクは、同一集団のSARS-CoV-2感染後に比べはるかに低いことである」と指摘している。

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米国の10代で糖尿病の有病率が増加/JAMA

 米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)のJean M. Lawrence氏らSEARCH for Diabetes in Youth Studyの研究グループは、2001~17年に、米国の20歳未満における糖尿病の推定有病率がどう推移したかを調査した。その結果、この16年間に19歳以下では1型糖尿病の有病率が1,000人当たり1.48から2.15へ、10~19歳では2型糖尿病の有病率が1,000人当たり0.34から0.67へと、それぞれ統計学的に有意に増加したことが明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌2021年8月24・31日号で報告された。6地域の2001、2009、2017年のデータを解析 本研究は、米国の青少年における、2001~17年の糖尿病有病率の推移の調査を目的とする横断的観察研究である(米国・Kaiser Permanente Southern California’s Marilyn Owsley Clinical Research Centerなどによる助成を受けた)。 解析には、米国の6地域(コロラド、オハイオ、サウスカロライナ、ワシントンの4州と、カリフォルニア州のカイザーパーマネンテ南カリフォルニア会員、アリゾナ州とニューメキシコ州のアメリカインディアン居留地)において、医師によって糖尿病と診断された20歳未満の人口の2001、2009、2017年のデータが用いられた。 2001、2009、2017年の1,000人当たりの1型および2型糖尿病の有病率を推定し、95%信頼区間(CI)を算出した。人種/民族別、年齢別、性別の解析も行った。増加率:1型45.1%、2型95.3%、1,000人当たりで0.67、0.32 19歳以下では、1型糖尿病が、2001年に335万人中4,958人、2009年に346万人中6,672人、2017年には361万人中7,759人で認められた。また、10~19歳では、2型糖尿病が、2001年に173万人中588人、2009年に185万人中814人、2017年には185万人中1,230人でみられた。 19歳以下における1,000人当たりの1型糖尿病の推定有病率は、2001年の1.48(95%CI:1.44~1.52)から、2009年には1.93(1.88~1.98)へ、2017年には2.15(2.10~2.20)へと有意に増加し、16年間に絶対値で0.67/1,000人(0.64~0.70)、相対値で45.1%(40.0~50.4)の増加が確認された。 また、この推定有病率の絶対値の増加は、非ヒスパニック系白人(0.93/1,000人、95%CI:0.88~0.98)と非ヒスパニック系黒人(0.89/1,000人、0.88~0.98)が他の人種/民族よりも高く、男性(0.71、0.66~0.75)は女性(0.63、0.58~0.67)よりも高く、年齢が進むに従って高くなる傾向がみられた。 一方、10~19歳における1,000人当たりの2型糖尿病の推定有病率は、2001年の0.34(95%CI:0.31~0.37)から、2009年には0.46(0.43~0.49)へ、2017年には0.67(0.63~0.70)へと有意に増加し、16年間に絶対値で0.32/1,000人(0.30~0.35)、相対値で95.3%(77.0~115.4)の増加が認められた。 この推定有病率の絶対値の増加は、非ヒスパニック系黒人(0.85/1,000人、95%CI:0.74~0.97)とヒスパニック系(0.57/1,000人、0.51~0.64)が他の人種/民族よりも高く、女性(0.40、0.36~0.44)は男性(0.25、0.22~0.28)よりも高く、年齢が進むに従って高くなる傾向がみられた。 著者は、「有病率の増加率は、2型糖尿病が1型よりも大きかったが、有病率の絶対値の増加は1型糖尿病のほうが大きく、青少年では依然として2型よりも多くみられた。また、2型糖尿病は、人種/民族的に少数派の青少年に多くみられ、有病率の絶対値の増加は黒人とヒスパニック系で大きかった」とまとめている。

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倦怠感は日中の過度な眠気と独立して抑うつ症状と関連

 一般集団における倦怠感に対する睡眠障害や併存疾患の影響について、韓国・ソウル大学校病院のJun-Sang Sunwoo氏らが、調査を行った。Sleep & Breathing誌オンライン版2021年7月22日号の報告。 2018年に実施された韓国の横断調査より得られたデータを用いて、分析を行った。倦怠感の評価には、Fatigue Severity Scaleを用いた。就業日の睡眠時間、クロノタイプ、休日の睡眠不足を解消するための睡眠、日中の過度な眠気などの睡眠習慣および抑うつ症状、その他の併存疾患について調査した。倦怠感を従属変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、19~92歳の成人2,493人(男性の割合:50%、平均年齢:47.9±16.4歳)であった。・就業日の平均睡眠時間は、7.1±1.1時間であり、倦怠感の有病率は、31%であった。・潜在的な交絡因子で調整した後、倦怠感は以下の因子との関連が認められた。 ●日中の過度な眠気(オッズ比[OR]:3.751、95%信頼区間[CI]:2.928~4.805) ●抑うつ症状(OR:3.736、95%CI:2.701~5.169) ●睡眠不足の認識(OR:1.516、95%CI:1.249~1.839) ●休日の睡眠不足を解消するための睡眠(OR:1.123、95%CI:1.020~1.235) ●アルコール摂取の少なさ(OR:0.570、95%CI:0.432~0.752) ●運動不足(OR:0.737、95%CI:0.573~0.948)・サブグループ解析では、日中の過度な眠気が認められない人において、倦怠感と就労日の睡眠時間の短さとの関連が認められた(OR:0.899、95%CI:0.810~0.997)。・日中の過度な眠気が認められる人において、倦怠感と関連が認められた因子は、抑うつ症状(OR:2.842、95%CI:1.511~5.343)とアルコール摂取の少なさ(OR:0.476、95%CI:0.247~0.915)であった。 著者らは「日中の過度な眠気と独立して、倦怠感と抑うつ症状の有意な関連が認められた。倦怠感、抑うつ症状、睡眠の病態生理学的関連を明らかにするためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

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新「内科専門医」と「総合内科専門医」、年代・診療科別の取得予定は?医師1,000人に聞きました

 9月に実施が予定されていた「総合内科専門医」試験は来年度に延期となったが、新「内科専門医」試験は2021年7月に初めて実施され、従来の「認定内科医」試験は6月が最後の試験となった。今後の取得予定について、医師たちはどのように考えているのか? CareNet.comの内科系診療科の会員医師1,000人を対象にアンケートを行った(2021年度総合内科専門医試験について延期発表前の2021年8月12日~13日実施)。新「内科専門医」は約27%が取得予定と回答 回答者の属性としては、30代が35.6%と最も多く、40代(26.6%)、50代(20.5%)と続いた。既取得の認定医・専門医・指導医資格としては「内科認定医」が最も多く、60%以上が取得していた。総合内科専門医についても約36%の医師が既取得であり、約14%が内科指導医資格を有していた。 今年初めて試験が実施され、機構認定の内科系のサブスぺシャリティ領域専門医の基本領域資格となる新「内科専門医」については、26.6%の医師が取得予定(受験済も含む)と回答。年代別にみると20代は78.7%、30代では29.3%、40代では26.6%が取得予定と回答した。また、20~50代の各年代でそれぞれ10%ほどが「迷っている」と回答している。 母数等が異なるため厳密な比較はできないが、診療科別にみると、血液内科(37.5%)、腎臓内科(36.7%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(35.1%)などで取得予定と答えた医師が多い傾向がみられた。「総合内科専門医」は取得済・取得予定を合わせると半数以上 「総合内科専門医」を取得予定と答えたのは17.0%で、取得済の36.1%と合わせると過半数となった。年代別では、40代(58.1%)、50代(50.2%)で既取得の医師が多かった一方、20代で取得予定と回答したのは17.6%に留まり、新「内科専門医」と比較すると低かった。 診療科別にみると、腎臓内科(46.7%)や呼吸器内科(46.3%)で既取得の医師が多く、取得予定と合わせると6~7割を占める一方、総合診療科(既取得:16.7%、取得予定:23.3%)や膠原病・リウマチ科(既取得:21.4%、取得予定:32.1%)では低い傾向がみられた。J-OSLERへのリアルな悲鳴、制度の複雑さ嘆く声など 新専門医制度に対する疑問や困っている点について自由記述で尋ねた問いに対しては、さまざまな回答が寄せられた。20~30代の医師からは、「J-OSLERにより取得過程の負担が増加している(20代、神経内科)」、「J-OSLERの登録を臨床を行いながら行うのは非常に難しい(30代、神経内科)」など、専攻医登録評価システム(J-OSLER)の煩雑さを指摘する声のほか、「コロナ禍で剖検症例が圧倒的に不足している(20代、糖尿病・代謝・内分泌内科)」、「試験の延期も対応が中途半端で内科学会に振り回されている(30代、呼吸器内科)」などの声が上がった。また、サブスぺ領域がどうなるのかの正式な発表が遅れていることを指摘する声も多くみられた。 40~60代の医師からは、「正直わけがわからなくなっています(50代、内科)」、「複雑すぎる。提唱している水準は担保されているのか? お金集めだけにもみえる(60代、内科)」といった率直な声のほか、「旧制度、新制度両方に言えるが、職場からは取得して欲しいと頼まれるが、それに対する金銭的なサポートが全くない。専門医更新にもお金がかかる(40代、糖尿病・代謝・内分泌内科)」など、取得のメリットとそのサポート体制の不足を指摘する声が多くみられた。 アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新「内科専門医」・「総合内科専門医」の取得予定は?-会員1,000人アンケート

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事例031 股関節症でのヒアルロン酸Na関節注の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説両変形性股関節症の患者に、ヒアルロン酸Na関節注 25mgシリンジを使用して股関節腔内に注入を行い、関節腔内注射で算定したところ、薬剤のみC事由(医学的理由による不適当)により査定となりました。査定理由を調べるために、まずはカルテを確認しました。「強くなった痛みに対して効果があるとして、股関節へのヒアルロン酸注入を選択した」ことが記載されていました。選択の参考とされた文献のコピーも添付されていました。医学的有効性としてその内容がレセプトに記載されていました。ヒアルロン酸Na関節注の添付文書による適応症を参照したところ、「変形性膝関節症、肩関節周囲炎」と記載され、股関節への適応はありませんでした。また、「股関節へのヒアルロン酸注入は、生理食塩液と効果の差が認められなかったため、保険診療が認められていない」とする診療ガイドラインがありました。以上の理由から、薬剤のみが医学的に保険診療上適当でないとC事由にて査定になったものと推測できます。診察した医師にはこれらの資料を示して伝え、再審査はできないことを説明しました。当該医師には最近のコンピュータ審査の状況を説明し、できる限り添付文書の範囲内に収まる診療をお願いしました。

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ASCO2021 レポート 消化器がん(肝胆膵がん)

レポーター紹介今年のASCOもCOVID-19の影響でVirtual meetingとなり、2年連続Web開催となった。2021年6月4日から始まったが、いつものようなワクワク感がない。今年は、肝胆膵領域でそこまで面白い演題がなかったこともあるのだが、海外の先生と接する機会もなく質問もできないので、演題を生で聞かなきゃという気持ちに焦りもなく、あとでon demandで見ようという感じになる。また、ASCO期間中に集中して行われていたmeetingも数少なくなり、ASCOが終わって1ヵ月たってもだらだらと行われている感じである。そして、気が付いたらESMO-GI(WCGC)まで終わっているという状況であり、ASCOだという華やかさがなく、寂しさを感じた。やはり顔を見ながら、お互いの意見を突き付けてdiscussionする機会が欲しい。いろんな先生と交流の機会があることで、やる気も高まってくるものである。しかも、昨年、ASCO memberは参加費が不要だったので、今年も不要になることを信じて事前登録もしていなかったため、ASCO当日、慌てて全額を支払い、Virtual meetingに参加することとなった。当日参加は1,395ドルもかかり、非常に痛い出費である。「くっそー、COVIDの野郎め」と八つ当たりしながら、ChicagoでDeep-Dish Pizzaを食べている自分をイメージして、いつものDomino’s Pizzaを食べつつ、今年のASCOを振り返りたいと思う。肝臓がんさて、本題です。まずは肝臓がんから解説します。今年の肝胆膵領域はあまり面白い演題がなかったなというのが本音である。肝細胞がん領域では、Oral presentationに2演題が選ばれていたが、Poster discussionでは1演題も採択されていなかった。また、今年発表されるであろうと期待されていたデュルバルマブ+tremelimumabの第III相試験(HIMALAYA)やペムブロリズマブ+レンバチニブの第III相試験(LEAP-002)、tislelizumabの第III相試験(RATIONALE-301)などの大規模試験の結果を期待していたのだが、報告されなかった。そして、今年も中国からFOLFOX肝動注化学療法の第III相試験が2演題であり、中国1国のみでいくつもの第III相試験を発表しており、どんなに肝細胞がんの患者さんがいるのだろうかと感じずにはいられなかった。進行肝細胞がんに対するオキサリプラチン+フルオロウラシル併用肝動注療法とソラフェニブ療法の比較:ランダム化第III相試験(The FOHAIC-1 study)著者:Ning Lyu, et al.、Oral presentation本試験は、肝内腫瘍量が多い進行肝細胞がん症例に対する1次薬物療法として、FOLFOX肝動注療法の有効性を、ソラフェニブをコントロールとして検証するランダム化第III相試験(FOHAIC-1試験)である。主な適格基準はBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)Stage BまたはC、Child-Pugh分類A~B7、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)-Performance Status(PS)0~2などで、肝動注群とソラフェニブ群に1:1で割り付けられた。FOLFOX肝動注療法は、オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン(LV)200mg/m2、5-フルオロウラシル(5-FU)400mg/m2および5-FU 2,400mg/m2 46時間持続投与を3週間ごとに行い、ソラフェニブ群はソラフェニブ1回400mgを1日2回内服した。ソラフェニブ群の全生存期間(OS)の中央値を8.0ヵ月、肝動注群を14ヵ月、検出力90%、両側α=0.05として、36ヵ月間の登録期間、最大60ヵ月の追跡期間として、247例の登録が必要となり、260例の登録を目標症例数として設定された。登録患者は肝動注群(130例)とソラフェニブ群(132例)に割り付けられた。患者背景は両群において有意な差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。主要評価項目であるOSは、ソラフェニブ群と比べて肝動注群で有意に良好であった。薬物療法によるダウンステージングは、肝動注群で16例(12.3%)、ソラフェニブ群で1例(0.8%)に認めた。また、腫瘍の肝占拠割合が50%以上または門脈本幹に腫瘍栓を有する高リスク群のOSも肝動注群で有意に良好であった。RECISTv1.1による客観的奏効割合(ORR)は肝動注群で有意に良好だった(p<0.001)。薬剤に関連したGrade3以上の有害事象はむしろソラフェニブ群で有意に多く、主な有害事象は、肝動注群のオキサリプラチン投与に伴う腹痛(40.6%)であったが、投与による有害事象で肝動注療法を中止した患者はいなかった。画像を拡大するこのように、肝内病変が進行した肝細胞がん患者を対象として、FOLFOX肝動注療法はソラフェニブと比較した第III相試験において、有意に良好なOSとORRが示された。かなり予後の厳しい肝腫瘍量が50%以上の症例や門脈本幹に腫瘍栓を有する症例でも有効であり、ダウンステージできた症例、局所療法にコンバージョンできた症例も高率に認められ、有害事象も低頻度であり、今後が期待される結果であった。しかし、本試験は中国単施設の結果で、B型肝炎の患者が90%前後を占める対象で行われた試験であり、解釈には注意が必要であることや、現在の標準治療であるアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法と比較してどうなのかなど疑問点も残っており、この試験の結果に基づきFOLFOX肝動注療法が標準治療と位置付けられるまでには至っていない。術前補助療法としてのFOLFOX肝動注療法は、ミラノ基準外の切除可能BCLC Stage A/Bの肝細胞がん患者の予後を改善させた:多施設共同ランダム化第III相試験の中間解析著者:Li S, et al.、Oral presentationミラノ基準外のBCLC Stage A/Bの切除可能肝細胞がんに対して、術前補助療法FOLFOX肝動注療法を行った患者と肝動注療法は行わずに切除した患者の有効性と安全性を、多施設共同ランダム化第III相試験にて検討した。ミラノ基準外の切除可能BCLC Stage A/Bの肝細胞がん患者に対して、術前補助療法としてFOLFOX肝動注療法を施行した群と、術前補助療法を行わずに直接手術を行う群に1:1でランダムに割り付けられた。術前肝動注群は2サイクルのFOLFOX肝動注療法を施行し、忍容性があれば抗腫瘍効果を確認し、完全奏効/部分奏効が得られていれば切除、安定であれば追加の2サイクルの肝動注療法を行い、増悪の場合には次治療へ移行した。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、無再発生存期間(RFS)と安全性とした。切除可能肝細胞がん患者208例が登録され、術前化療群99例、切除先行群100例が解析対象となった。患者背景において、両群間に差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。術前化療群では、ORR 63.6%、病勢制御割合(DCR)96.0%で、88例(88.9%)で肝切除が施行された。術前化療群は、脈管浸潤の割合が11.4%であり、切除先行群(39.0%)と比べて低値であった。OSとPFSは術前化療群で有意に良好であったが、RFSは両群間に有意差はなかった。FOLFOX肝動注療法群の有害事象は、Grade1を59.6%、Grade2を26.3%に認めたが、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。なお、OSとPFSのサブグループ解析では、50歳以下の若い患者や腫瘍が単発である患者、AFPが400ng/mL以上と高い患者、HBV-DNAが低い患者においてより良好な結果が示された。画像を拡大する著者らは、FOLFOXによる肝動注療法は、肝細胞がんに対して効果的で安全であること、ミラノ基準外の切除可能BCLC A/Bの肝細胞がん患者に対して生存期間の延長効果が見込まれることを結論付けた。本試験の結果、肝細胞がんの術前補助療法として、FOLFOX肝動注療法の有用性が示された。この演題のDiscussantは、39%の症例が多発例であり、通常、切除しないような症例が多数含まれていることや中国の5施設の結果であり、B型肝炎の患者が中心である点については注意して解釈すべきであり、日常診療に取り入れる前に世界規模または欧米での検証が必要であろうとコメントしていた。このように、中国からFOLFOX肝動注療法に関連する2演題が発表された。ともに、中国1ヵ国での第III相試験であり、全世界で受け入れられるには、さらなる試験が必要である。しかし、これだけの試験を中国だけで、症例集積できることが驚きである。しかも、この試験のほかにも、昨年、sintilimab+ベバシズマブ-バイオシミラーの第III相試験(ORIENT-32)、donafenibの第III相試験、apatinibの第III相試験など、進行がんでも中国1ヵ国で行った試験の結果が報告されており、計り知れないほど患者さんがいて、臨床試験に参加してくれる環境ができていることを考慮すると、今後の肝細胞がんの薬物療法の開発において、中国の存在が重要になってくることが改めて予想された。また、この数年、アジアを中心に肝細胞がんに対する肝動注療法の有用性を示唆する結果が報告されてきており、肝細胞がんの薬物療法において、肝動注療法が再度、見直される日が来る可能性も十分にあることが示された。余談であるが、Q&Aセッションで、抗がん剤の投与方法についてDiscussionがあった。通常、米国では肝動注を行う場合に抗がん剤が100mL程度注入できるポンプを皮下に埋め込んで投与を行うことが多い(ポンプは結構な大きさで、皮下に埋められる米国人患者もすごいのではあるが…)。中国ではポンプの合併症はどうかという質問があり、演者らはポンプを使用していないことを説明し、腫瘍の多いところにカテーテルを挿入して投与しているとのことであった。柔軟に対応が可能で、より効率よく抗がん剤が投与できることを解説していたが、では、カテーテルを留置せず、どうやって2日間のFOLFOXを投与しているのか、私には謎であった。質問できる知り合いの先生が中国にはいなかったため答えはわからないのであるが、おそらく3週に1回、血管造影を行い、カテーテルを挿入した後は2日間、動かずに安静にして投与しているのかなと勝手に想像しているところである。胆道がん胆道がんでは、ナノリポソーマルイリノテカン(Nal-IRI)+5-フルオロウラシル(5-FU)+ロイコボリン(LV)と5-FU/LVを比較したランダム化第II相試験がOral presentationで1演題、取り上げられていた。非常に期待できる2次治療のレジメンが報告されたが、遺伝子異常に基づく分子標的治療薬の開発に移行していた胆道がんが、また細胞障害性抗がん剤の開発に戻るのかなと、少し不安も隠せなかった。ゲムシタビン+シスプラチン併用療法後の転移性胆道がん患者に対するリポソーム型イリノテカンとフルオロウラシル、ロイコボリンの併用療法:多施設ランダム化比較第IIb相試験(NIFTY試験)著者:Yoo C, et al.、Oral presentation切除不能・転移性胆道がんに対してゲムシタビン+シスプラチン療法(GC)後に進行した症例の2次治療の標準治療は確立していない。ABC-06試験によって、2次治療としてFOLFOX療法を行うことで、積極的な症状コントロールのみを行った患者と比べて、OSが延長したことが示されたが、まだその治療成績は十分とは言い難い。ゲムシタビン耐性の膵がんに対するナノリポソーマルイリノテカン(Nal-IRI)+5-FU/ロイコボリン(LV)療法は、NAPOLI-1試験の結果、プラセボと比較してPFSとOSの延長が示された。胆道がんでも本レジメンによる治療が有効である可能性がある。1次治療でGC療法を行った転移性胆道がん患者を対象として、2次治療としてNal-IRI+5-FU/LVと5FU/LVを比較した多施設共同非盲検ランダム化比較第IIb相試験(NIFTY試験)が行われた。対象は、1次治療でGC療法を行って病勢の進行が確認された胆道がん患者174例であった。患者は、Nal-IRI(70mg/m2、90分)+5-FU(2400mg/m2、46時間)/LV(400mg/m2、30分)を2週に1回投与する群と、5-FU(2400mg/m2、46時間)/LV(400mg/m2、30分)を2週に1回投与する群に、1:1でランダムに割り付けられた。主要評価項目は盲検下の独立中央判定委員会によるPFSとして、副次評価項目は担当医師によるPFS、OS、ORR、安全性などであった。症例数設定は、Nal-IRI+5-FU/LV群のPFS中央値を3.3ヵ月、5-FU/LV群の中央値を2ヵ月、検出力80%、両側α=5%、ハザード比0.6で有意差が検出できるように設定し、総数174例が必要と判断された。患者背景において、両群に差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。主要評価項目である独立中央判定委員会によるPFSはNal-IRI+5-FU/LV群で有意に良好であった。副次評価項目である担当医師によるPFSやOSもNal-IRI+5-FU/LV群で有意に良好であった。独立中央判定委員会によるORRは両群で有意差を認めなかったが、担当医師判定では統計学的な有意差を認めた。安全性について、好中球減少症と疲労は、5-FU/LV群と比較してNal-IRI+5-FU/LV群に多く認められたが、膵がんに対して行われたNAPOLI-1試験の結果と同様の結果であった。画像を拡大するNal-IRI+5FU/LV療法は、1次治療でGC療法を行った転移性胆道がん患者に対してPFS、OS、ORRを有意に改善させた。Nal-IRI+5-FU/LV療法の有害事象は十分に管理可能で、膵がんに対するNAPOLI-1試験で示された安全性と同様の結果であった。今回の検討は韓国のみで行われた臨床試験であり、全世界に一般化できる結果ではないが、この試験の統計学的事項は十分な検出力があり、PFSやORRも中央判定で行われており、抗腫瘍効果も十分に評価できる。この試験の結果から、Nal-IRI+5-FU/LV療法はGC療法で増悪した進行胆道がん患者に対する標準治療の1つとして考慮されるべきであると著者らは結論していた。確かに、本試験の結果はNal-IRI+5-FU/LV療法は、GC療法の2次治療としてABC-06試験で優越性が示されたFOLFOXレジメンよりも良好なPFS、OS、ORRが示されており、かなり期待できるレジメンである。また、ランダム化第II相試験ではあるが、第III相試験と遜色のない試験デザインで行われている。演者であるYoo先生は知り合いなので、直接、試験デザインについて聞いてみたところ、症例数設定は第III相試験としても十分であるが、主要評価項目としてPFSを選択したので、第IIb相試験としたとコメントがあった。なるほど、第IIb相試験というあまり聞き慣れない相にしているのはそういうことであったか、と。そして、Yoo先生は、第III相試験と宣言して行えばよかったなと後悔されていた。しかし、仮に本試験が第III相試験であったとしても、韓国1ヵ国の試験であり、アジアの結果を米国のFDAや欧州のEMEAが受け入れるかどうかは微妙である。また、本試験でOSでも有意差があるといっても、PFSが主要評価項目であるランダム化第II相試験であり、OSを主解析として行った試験ではないため、この試験結果をもって標準治療とするには時期尚早と考える。今後、Nal-IRI+5-FU/LVとFOLFOXのどちらが良いのかを明らかにする検討も必要であり、IDH1変異に対するIDH阻害剤、FGFR変異に対するFGFR阻害剤など、actionableな遺伝子変異を有する患者において、どちらを先行して治療すべきかなども明らかにする必要があると思われる。膵がん膵がんでは、Oral presentationに1演題も取り上げられていなかったが、Poster discussionでは6演題、取り上げられていた。膵がんにおいては薬物療法も停滞期で、なかなか次の良い薬剤が登場してこない状況である。今回のASCO2021で何らかの目を見張る結果が報告されることを期待したが、まだ突破口が見えていない現状であった。その中でも、やはり日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)からの発表などいくつか知っておいてほしい結果があるので、取り上げて解説する。局所進行膵がんに対するmodified FOLFIRINOXとゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の無作為化比較第II相試験(JCOG1407)著者:Ozaka M, et al.、Poster discussionFOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法(GEM+nab-PTX療法)は、それぞれProdige4-ACCORD11試験およびMPACT試験においてゲムシタビン単剤と比較して優越性を示したレジメンである。どちらも遠隔転移膵がんのみを対象とした試験であり、局所進行膵がんに対する評価はこれまで十分に行われていない。今回、局所進行膵がん患者を対象として、FOLFIRINOX療法の5-FUの静注とイリノテカンの投与量を150mg/m2に減量し、有害事象を軽減させたmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)療法とGEM+nab-PTX療法の有効性と安全性を検討し、より有望な治療法を選択することを目的としてランダム化第II相試験(JCOG1407)が行われた。本試験の対象は、全身化学療法歴のない局所進行膵がん患者であり、mFOLFIRINOX療法群とGEM+nab-PTX療法群に1:1でランダムに割り付けられた。主要評価項目はOS(1年生存割合)、副次的評価項目はPFS、無遠隔転移生存期間、ORR、CA19-9奏効割合、有害事象発生割合などであった。症例数設定は、2つの試験治療群のうち、1年生存割合が良好な群を53%、不良な群を63%と仮定し、良好な試験治療を正しく選択できる確率が85%以上となるように算出した。また、2つの試験治療群のうち、良好な群の期待1年生存割合を70%と仮定し、閾値1年生存割合を53%、片側有意水準α=5%、検出力80%とし、必要症例数は120例と算出された。mFOLFIRINOX療法群に62例、GEM+nab-PTX療法群に64例で、計126例が登録された。患者背景では、両群に大きな偏りは見られなかった。JCOG1407試験の結果を表に示す。1年生存割合はGEM+nab-PTX療法群で良好だったが、2年生存割合はmFOLFIRINOX療法群で良好であり、ハザード比は1.162(95%CI:0.737~1.831)であった。PFSと無遠隔転移生存期間は有意差を認めなかったが、mFOLFIRINOX療法群で良好な傾向であった。ORRは有意差を認めなかったが、GEM+nab-PTX療法群で良好であった。CA19-9奏効割合はGEM+nab-PTX療法群で有意に良好であった。有害事象において、Grade3~4の好中球減少/白血球減少はGEM+nab-PTX療法群で高率、全Gradeの悪心/嘔吐や下痢はmFOLFIRINOX療法群で高率に認められたが、治療関連死は見られなかった。画像を拡大する本試験は、局所進行膵がんに対する2つのレジメンを比較した最初のランダム化試験であった。GEM+nab-PTX療法群の1年生存割合はmFOLFIRINOX療法群より良好であったが、mFOLFIRINOX療法群は2年生存割合が高く、その他の項目では良かったり悪かったりとなっており、どちらが良好とは言い難い結果であった。局所進行膵がんに対しては、『膵癌診療ガイドライン2019年版』でも転移性膵がんのエビデンスに基づき、mFOLFIRINOXとGem+nab-PTXが提案されているが、しっかりしたランダム化比較試験は行われていない。今回はJCOG肝胆膵グループで行われたmFOLFIRINOXとGem+nab-PTXを比較するランダム化第II相試験の結果は、主要評価項目である1年生存割合では、Gem+nab-PTXが良好であったが、全体の生存曲線や2年生存割合ではmFOLFIRINOXが優勢であった。下痢、悪心、嘔吐などの消化器毒性はmFOLFIRINOX群で高頻度に認められたが、骨髄抑制や神経障害はGem+nab-PTX群で高頻度に認められており、優劣はつけ難い結果であった。今後、長期間の追跡調査を行い、どちらを選択すべきかを明らかにしていくことが必要である。NRG1融合遺伝子陽性の膵がんや他の固形がんに対するzenocutuzumabの有効性と安全性著者:Schram AM, et al.、Oral presentation膵がんに対するNRG1融合遺伝子に対するzenocutuzumabのpreliminaryな結果が報告されていた。zenocutuzumab(MCLA-128)はADCC活性を持つHER2、HER3を阻害する二重特異性抗体で、HER3にNRG1 fusionのEGF-likeドメインの結合を阻害することで、HER2/HER3の二量体形成を阻害し、下流のPI3K/AKT/mTORシグナルによる腫瘍増殖を阻害する抗体製剤である。NRG1融合遺伝子を有する患者に有効性が期待され、開発が進んでいる。膵がんパートに登録された12例のうち5例(42%)に奏効が得られており、11例中11例全例でCA19-9の50%以上の低下が認められ、7例(64%)においては正常値まで低下したことが報告された。有害事象はGrade1~2であり、重篤な消化器や皮膚、心毒性は認めなかったことが報告され、期待されている薬剤である。膵がんにおけるNRG1融合遺伝子の頻度は1%未満といわれており、非常にまれではあるが、60歳以下の若年者やKRAS wildの患者に多く認められることを手掛かりとして、聖マリアンナ医大と国立がん研究センター東病院を中心に、NRG1のスクリーニングが行われている。術前化学放射線療法が膵がん患者の生存期間を改善させる:多施設共同第III相試験(PREOPANC)の長期治療成績著者:Van Eijck C, et al.、Poster discussion切除可能膵がんまたは切除可能境界膵がんに対して、ゲムシタビンによる術前化学放射線療法は、切除先行と比べて、R0切除割合や無病生存期間を改善させた。生存期間においては良好な傾向は示されていたが、有意な差を認めていなかった。今回、この試験を長期フォローアップすることで、生存期間への効果が検討された。結果を表に示す。R0切除割合やN0切除割合、Intention to treatによるOS、切除できた患者のOS、補助療法を受けた患者のOSにおいて、化学放射線療法群で有意に良好な結果が示された。切除可能膵がんまたは切除可能境界膵がんに対する術前治療の有効性が示されたことにより、日本ではすでに術前治療が標準治療であるが、海外でも術前治療へよりシフトすることが推測された。画像を拡大するまとめ今年のASCO2021では、肝細胞がんでは初回薬物療法として肝動注化学療法、胆道がんでは2次治療としてNal-IRI+5-FU/LV、膵がんでは局所進行膵がんの1次治療としてmFOLFIRINOX/Gem+nab-PTX、切除可能/切除可能境界膵がんに対する術前化学放射線療法など、少し昔の時代に戻ったかのように、主要演題には細胞障害性抗がん剤による治療が席巻していた。しかし、肝胆膵がんでは分子標的治療や免疫チェックポイント阻害薬を中心に治療開発が進んでおり、今後、新たなエビデンスはこれらの治療から生まれてくると思われる。今年のASCOでは世の中を大きく変えるような結果は出てこなかったが、世界的にも注目される重要な学会であり、Web開催であろうと、みんなが参加する学会である。ぜひ来年は、COVID-19が落ち着いて、現地でみんなと一緒にFace to Faceで談笑しながら、肝胆膵のOncologyについて語り合いたいものである。1)Ning Lyu, Ming Zhao. Hepatic arterial infusion chemotherapy of oxaliplatin plus fluorouracil versus sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma: A biomolecular exploratory, randomized, phase 3 trial (The FOHAIC-1 study). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4007)2)Shaohua Li, Chong Zhong, Qiang Li, et al. Neoadjuvant transarterial infusion chemotherapy with FOLFOX could improve outcomes of resectable BCLC stage A/B hepatocellular carcinoma patients beyond Milan criteria: An interim analysis of a multi-center, phase 3, randomized, controlled clinical trial. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4008)3)Changhoon Yoo, Kyu-Pyo Kim, Ilhwan Kim, et al. Liposomal irinotecan (nal-IRI) in combination with fluorouracil (5-FU) and leucovorin (LV) for patients with metastatic biliary tract cancer (BTC) after progression on gemcitabine plus cisplatin (GemCis): Multicenter comparative randomized phase 2b study (NIFTY). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4006)4)Masato Ozaka, Makoto Ueno, Hiroshi Ishii, et al. Randomized phase II study of modified FOLFIRINOX versus gemcitabine plus nab-paclitaxel combination therapy for locally advanced pancreatic cancer (JCOG1407). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4017)5)Alison M. Schram, Eileen Mary O'Reilly, Grainne M. O'Kane, et al. Efficacy and safety of zenocutuzumab in advanced pancreas cancer and other solid tumors harboring NRG1 fusions. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 3003)6)Casper H.J. Van Eijck, Eva Versteijne, Mustafa Suker, et al. Preoperative chemoradiotherapy to improve overall survival in pancreatic cancer: Long-term results of the multicenter randomized phase III PREOPANC trial. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4016)

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コロナワクチンのアナフィラキシー、患者さんに予防策を聞かれたら?

 7月に入り、新型コロナワクチン接種が65歳未満でも本格化している。厚生労働省の副反応報告1)によると、現時点では「ワクチンの接種体制に直ちに影響を与える程度の重大な懸念は認められない」との見解が示されており、アナフィラキシーやその他副反応のリスクよりも新型コロナの重症化予防/無症状感染対策というベネフィットが上回るため、12歳以上へのワクチン接種は推奨される。 しかし、接種対象者の年齢範囲が広がることで問題となるのが、SNS上での根拠のないワクチン批判である。その要因の1つが「アナフィラキシー」だが、患者自身で出来る予防策はあるのだろうかー。今回、日本アレルギー学会のCOVID-19ワクチンに関するアナウンスメントワーキンググループのひとりである中村 陽一氏(横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター センター長)に話を聞いた。ワクチンだけを恐れる矛盾を指摘 まず、中村氏はワクチン不安に陥る前に、あらかじめ知っておくべきこととして2点を提示した。一つは「腕の痛みなどの注射部位反応や筋肉痛、頭痛、寒気、倦怠感、発熱などの反応は、ワクチンに対する身体の正常な免疫反応を反映している」ということで、それらは数日以内に消失する。もう一つは「わが国における新型コロナワクチン接種後に起こったアナフィラキシーの報告で信頼に足るものは100万回あたり7件と報告されており、医療機関で使用される造影剤(100万回あたり約400件)や肺炎などの感染症で使用される抗生物質(100万回あたり100~500件)に比べると極めて少ない」という事実である。今回の新型コロナワクチンに限らず一般にワクチンはほかの医薬品に比べてアナフィラキシーが少ないと言われているにもかかわらず、接種を怖がる人が多いのは、「一部マスコミの注意喚起が強調され過ぎたのかもしれない。ただし、ごく稀とはいえ誰にでも新型コロナワクチンによるアナフィラキシーがあり得るのは事実であり、個人的にできる予防策があればそれに越したことはない」とも話した。 アナフィラキシーを増強させる促進要因(飲酒、運動、月経前状態など)2)はいくつか明らかになっているものの、実際にアナフィラキシーが発症する際にはさまざまな要因が絡み合うため、「これという確かな予防策は存在しない」と同氏はコメント。しかし、予防策が断定できなくとも患者が心得ておくべきは、「ワクチン接種日の数日前から体調を整えておくこと」であり、医療者の役割は「自分の患者からワクチン接種の可否について相談された場合にリスク因子の有無を正確に見極めること」と話した。その際に参考になるのは、アナフィラキシーの主な原因が新型コロナワクチンの主成分ではなく添加物(ポリエチレングリコール[PEG]やポリソルベートなど)との報告である。実際にファイザー製やモデルナ製にはPEGが、アストラゼネカ製にはPEGに交差反応性のあるポリソルベート80が添加されている。 一方、これらの賦形剤は多くの医薬品(注射薬、錠剤、外用薬、など)や化粧品に(PEGはマクロゴールの名称で)広く含有されており、同氏は「私の所属する医療機関で扱っている医薬品4,000種類以上に含まれている。そして、多くの患者は普段から定期的にこれらを体内に取り込んでいることになる。もちろん、その接種経路により症状誘発の程度が異なることはあり得るが、自分が担当する患者さんにワクチン接種の可否を訊ねられた際には、定期処方薬にそれらが含有されていることを確認した上で、『あなたは一般に新型コロナワクチンの原因と言われている成分を毎日服用しているのに普段何ともないのですから、そんなに心配することはないですよ』とアドバイスをして安心していただくようにしている」と、添加物の実状と患者の不安を払拭させるような声掛け方法を例示した。 現在、PEGは日本薬局方には医薬品添加物として、分子量200、300、400、600、1000、1500、1540、4000、6000、20000が登録されており、添付文書ではマクロゴール◯◯や下記のようにPEG◯◯などと記載されていることが多い(◯◯は分子量)。<各ワクチンに含有される主な添加物>・コミナティ筋注(ファイザー):2-[(ポリエチレングリコール)-2000]- N,N-ジテトラデシルアセトアミド・COVID-19ワクチンモデルナ筋注(モデルナ):λ1, 2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メチルポ リオキシエチレン(PEG2000-DMG)、トロメタモール(アナフィラキシー報告あり)・バキスゼブリア筋注(アストラゼネカ):ポリソルベート80アナフィラキシーの“既往なし”でも注意したい患者 加えて、PEGやポリソルベートに対するアレルギーが考えにくい場合でも、ワクチン前に受診を薦めたい患者として「喘息患者のなかでもコントロール不良な人、そして、“かくれ喘息”の人」を挙げた。喘息はアナフィラキシーの重症化リスクの1つであるため、「喘息治療をしていないが、ゼーゼー、ヒューヒューと喘息様の症状を有する人、治療を続けていても発作が多かったりコントロールが不良だったりする人は、ワクチン前にしっかり診断と治療を受け、コントロールしておくことも重要」とし、接種後には「通常の2倍の時間、30分間は経過観察が必要」とも話した。 これらを踏まえ、アナフィラキシー発症リスクの高い例と注意すべき患者像を以下のように示す。<アナフィラキシーに注意すべき患者像>( )内は主な可能性・高齢者(薬剤に過敏歴がある場合、化粧品使用とその経験が長い)・女性(化粧品の使用率が高く、PEGへの経皮感作の可能性がある)・喘息の既往(コントロール不良、発作が多い)、かくれ喘息<アナフィラキシーの発生リスクを探る>(優先順)1)アナフィラキシーに最もリスクがある患者は“PEGやポリソルベートによるアナフィラキシー歴あるいは1回目のワクチン接種でアナフィラキシーがあった”人。その場合には接種を見送る/2回目接種を見送る必要がある。2)次に注意すべきは、“原因不明あるいは不特定多数の医薬品などによるアナフィラキシー歴(PEGやポリソルベートに対するアレルギーの可能性を有する)”がある人。この人は可能な限り主治医に事前相談し、集団接種会場ではなく医療機関での個別接種が望ましい。3)“アナフィラキシー歴はあるが、PEG・ポリソルベートなどの賦形剤以外の物質(食物、金属など)が原因として確定している”人は通常通りワクチン接種を行っても差し支えないと言える。 アレルギー反応にはアナフィラキシーや花粉症、食物アレルギーなどを引き起こすI型、II型(血小板減少症など)、III型(SLEや関節リウマチなど)、IV型(接触皮膚炎など)が存在するが、食物アレルギーはアナフィラキシーと同型に分類されるため、食物アレルギーを抱える患者は接種に不安を抱え、ためらうこともあるかもしれない。これについては、日本アレルギー学会が今年3月に公開したアナウンスメント3)にも「少なくとも現時点では花粉、食物などの特定の抗原に対する I 型アレルギーや、アナフィラキシー症状を伴わない喘息、アトピー性皮膚炎などのアトピー疾患であることが、新型コロナウイルスワクチンに対する過敏性を予測するものではないことを意味する」と示されている、と強調した。医療者としての声掛けー新型コロナワクチンに不安な被接種者へ 新型コロナに罹患した際の症状は死に至る場合もある。感染から回復しても長引く後遺症(疲労感・倦怠感や息切れ…)に悩まされることになり、それらの症状からいつ完全回復を遂げられるかはまだ明らかにされていない。ワクチン接種時の一時的な副反応症状(発熱、倦怠感など)と発症率が低く適切な治療により致命的になることがほとんどないアナフィラキシー、どちらのリスクが自分にとって危険であるのかを天秤にかけた場合、「ワクチンを接種せずに新型コロナに罹患することだけは避けるべきであるのは自明」と同氏は繰り返した。 最後に、ワクチン接種に関し医療者が患者にできることとして、「今後の変異株の拡大などにより若い人でも重症化することが懸念されている現状では、患者にワクチンを諦めさせるのではなく、推奨することが大切なのではないか」とワクチン接種が患者の命を救う最善の手立ての1つであることを強く訴えた。中村 陽一(なかむら よういち)氏横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター長1955年香川県生まれ。81年徳島大卒。91年医学博士取得および米国ネブラスカ大学留学。2000年国立病院機構高知病院臨床研究部長を経て05年より現職および昭和大学医学部客員教授。日本アレルギー学会功労会員。同学会アナフィラキシー対策委員会委員長。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 膠原病

第1回 関節リウマチ 乾癬性関節炎第2回 痛風 成人スチル病 ベーチェット病第3回 全身性エリテマトーデス シェーグレン症候群第4回 全身性強皮症 混合性結合組織疾患 皮膚筋炎・多発性筋炎第5回 大型血管炎第6回 ANCA関連血管炎 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。膠原病については、杏林大学医学部付属病院の岸本暢將先生がレクチャー。多彩な疾患に分類される膠原病。問題文に散りばめられた症状や検査所見などの膨大な情報の中から、診断のポイントを拾い上げるスキルを学びます。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 関節リウマチ 乾癬性関節炎膠原病の問題では、膨大に提示された症状や検査所見の数値から、素早く異常を見つけるスキルが問われます。読み解くポイントについて、疾患別に例題を使って解説します。第1回は、国内に70万人以上の患者がいるとされ、日常診療でもよくみられる関節リウマチ。各治療薬と副作用の組み合わせや、症状別に禁忌の薬剤について確認します。乾癬性関節炎は、付着部炎など関節周囲から炎症が起きる点が関節リウマチと異なります。第2回 痛風 成人スチル病 ベーチェット病赤く腫れる症状が特徴的な自然免疫系の疾患を取り上げます。痛風は、急性期に尿酸降下薬を使用すると急性発作を誘発することがあるので注意。発作を誘発する食品や薬剤を押さえましょう。ピンク色の皮疹が現れる成人スチル病は、悪性腫瘍、感染症、薬剤アレルギーとの除外診断がポイント。白血球増多に注目します。20~30代に多いベーチェット病。症状として、口内炎やざ瘡様皮疹、結節性紅斑、ぶどう膜炎が現れます。第3回 全身性エリテマトーデス シェーグレン症候群リンパ球に関わる獲得免疫系の疾患を取り上げます。全身性エリテマトーデスSLEを発症するのはほとんどが女性で、多彩な症状を呈します。血小板数、白血球数、赤血球数の低下、CH50、C3、C4の低下が非常に特徴的な所見です。疾患と関連する抗核抗体も試験に出やすいポイント。ループス腎炎はSLEに起因する糸球体腎炎です。口腔乾燥やドライアイを呈するシェーグレン症候群。悪性リンパ腫のリスクにもなります。第4回 全身性強皮症 混合性結合組織疾患 皮膚筋炎・多発性筋炎皮膚や内臓が硬化、線維化する全身性強皮症SSc。限局皮膚型とびまん皮膚型に分けられ、手指にレイノー現象がみられます。抗体の種類によって合併する臓器障害が異なる点が試験でもよく問われます。混合性結合組織疾患MCTDの診断のポイントは、抗U1-RNP抗体と肺高血圧症。皮膚筋炎・多発性筋炎PM/DMでは、悪性腫瘍と急速進行性の間質性肺炎に要注意。肘や膝などにみられるゴットロン徴候が特異的な皮疹です。第5回 大型血管炎血管炎のうち大型血管炎に分類される高安動脈炎と巨細胞性動脈炎について解説します。小型血管炎に比べて症状が出にくい大型血管炎。間欠性跛行や大動脈解離など深刻な症状が起きる前に見つけるには、不明熱、倦怠感、体重減少、関節痛などの症状で疑うことが重要です。高安動脈炎の9割が女性、発症年齢は20歳前後がピーク。X線、CT、MRIの画像検査がメインです。巨細胞性動脈炎は高齢者にみられ、側頭動脈の生検がポイント。第6回 ANCA関連血管炎ANCA関連血管炎は、国内では高齢者が多いため顕微鏡的多発血管炎MPAが多く、対して海外では多発血管炎性肉芽腫GPA、好酸球性多発血管炎性肉芽腫EGPAの比率が多くなっています。小血管が破れるか詰まるため、紫斑や爪下出血など目に見える症状が出やすいのが特徴的。薬剤誘発ANCA関連疾患も頻出ポイント。MPA、GPA、EGPAを鑑別できるように、症状の似た他疾患の除外と、各診断基準を押さえます。

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日本のトラック運転手の不眠症に関連する因子

 トラック運転手の不眠症は、交通事故リスクの増加につながる重大な問題である。秋田大学の宮地 貴士氏らは、日本のトラック運転手における不眠症の有病率を調査し、不眠症に関連する因子を特定するため、検討を行った。Nature and Science of Sleep誌2021年5月18日号の報告。 対象は、65歳未満の男性トラック運転手2,927人。自己記入式質問票を用いて、不眠症状、状態-特性不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)、飲酒・喫煙習慣、BMI、カフェイン摂取量、毎日の運転時間、連続して自宅から離れた日数、走行距離に関する情報を収集した。不眠症状には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒を含め、これらいずれかの症状が毎日観察された場合を不眠症と定義した。 主な結果は以下のとおり。・不眠症有病率は、13.3%(356例)であった。不眠症のタイプ別の割合は、中途覚醒が最も多く78%、次いで早朝覚醒26.4%、入眠障害13.5%であった。・共変量で調整した後、不眠症と有意かつ直線的な関連が認められた因子は、飲酒習慣、毎日の運転時間、STAIスコアであった。 【飲酒習慣】非飲酒者と比較した調整オッズ比(aOR):1.74、95%信頼区間(CI):1.23~2.47、trend p<0.001 【毎日の運転時間】1日8時間未満と比較した12時間以上のaOR:1.87、95%CI:1.00~3.49、trend p<0.001 【STAIスコア】最低四分位と比較した最高四分位のaOR:5.30、95%CI:3.66~7.67、trend p<0.001 著者らは「日本のトラック運転手では、不眠症が蔓延している。そのリスク因子として、飲酒習慣、毎日の運転時間、不安症状が関連していることが示唆された」としている。

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新型コロナワクチン後、乳房インプラント施行例でみられた免疫反応

 COVID-19ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、まれに痛みや腫脹などの反応が報告されている。皮膚充填剤のような異物は、免疫系が刺激されることで何らかの反応を引き起こす可能性があるという。ドイツ・Marienhospital StuttgartのLaurenzWeitgasser氏らは、COVID-19ワクチン接種後1~3日の間に乳房インプラント施行歴のある4例で注目すべき反応がみられたとし、その臨床的特徴や経過をThe Breast誌オンライン版2021年6月18日号に報告した。ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入部位に腫脹 これまでに、モデルナ製ワクチンの1回目および/または2回目の投与直後に、美容目的でのヒアルロン酸注入の経験がある症例で、軟部組織の腫脹や顔面浮腫が報告されている1)。これらはモデルナ製ワクチンの第III相試験中に観察された。ワクチン接種後1~2日の間に報告され、ヒアルロン酸注入の時期はワクチン接種の2週間前から2年前までの範囲であった。また、過去にはインフルエンザワクチン接種後にも、同様の反応が報告されている2)。乳房インプラントや人工関節などについても、さまざまな種類のワクチン接種後に炎症反応を起こす可能性があるという。 ワクチン接種後にヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、注目すべき反応がみられた4例についての詳細は以下のとおり。[症例1(76歳)]手術歴:美容的豊胸手術(64ヵ月前)症状:痛み、腫脹(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製ワクチン、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後2日で解消[症例2(52歳)]手術歴:美容的豊胸手術(17ヵ月前)症状:痛み、発赤(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(抗菌薬・NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後まもなく解消[症例3(52歳)]手術歴:インプラントベースの再建のためのエキスパンダー挿入(9ヵ月前~、最後の挿入は4週間前)症状:痛み(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:Johnson & Johnson製、接種3日後治療経過:保存的治療(オピオイド・メタミゾール経口投与)→数日中に解消[症例4(53歳)]手術歴:インプラントベースの再建(2ヵ月前)症状:痛み、炎症、血清腫(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:AstraZeneca製、初回接種1日後治療経過:外科的治療(インプラント除去と自家乳房再建、抗生物質静脈投与)→術後の経過は順調、数日後に退院 著者らは、世界中で数百万回の新型コロナワクチン接種が行われた後、インプラント施行歴のあるごく少数で観察されたものであり、大きな懸念はないだろうとしたうえで、ワクチン接種後のインプラントに関連する免疫反応を注意深く観察するよう患者に助言する必要があるのではないかと指摘。同時に、インプラントに対するワクチン接種後の反応は治療により管理可能で、COVID-19感染に伴うリスクがこれらの非常にまれにしか観察されない反応によってもたらされるリスクをはるかに上回っていると伝えるべきだと結んでいる。

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患者が訴えるこの「めまい」症状は危険なサインか!? 【Dr.山中の攻める!問診3step】第1回

第1回 患者が訴えるこの「めまい」症状は危険なサインか!?―Key Point―回転性めまい、前失神、平衡障害、めまい感の分類は重要でない患者の訴えは経過中に変化する「めまい」を訴える患者はとても多いです。起床後にトイレに行く途中、天井が回り出しびっくりして救急車をコールする人がいます。雲の上を歩いているような浮遊性めまいが続くと内科外来を訪れる人もいます。小脳梗塞などの重大な中枢性めまいは見逃したくないですね。椎骨脳底動脈領域の障害を示唆するめまい以外の症状や心血管系リスクファクターを考慮すると、鑑別診断をかなり絞り込むことができます。症状や神経所見から脳梗塞を強く疑う場合には、当日のMRI検査で異常がなくても経過観察入院で経過を確認する慎重な姿勢が大切です。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。シャーロックホームズのような鋭い推理ができればカッコいいですよね。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!【中枢性めまいを起こす疾患】椎骨脳底動脈領域の脳梗塞(小脳梗塞、脳幹梗塞)、片頭痛、中枢神経感染症、脱髄疾患(多発性硬化症)が鑑別診断となる片頭痛に伴うめまい(前庭性片頭痛)の頻度はかなり高い。めまいの持続は数分から数日。片頭痛の既往や家族歴、光過敏、スピンする運動が苦手である【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】中枢性めまいを見逃さないめまいを訴える患者の約10%は中枢性めまいである心血管系リスクを評価し、めまい以外の脳神経症状が出ていないかを確認する。しかしながら、椎骨脳底動脈系の脳梗塞を起こした患者の20%はめまい症状だけであるHINTS(Head Impulse test、Nystagmus、Test of Skew)で中枢性めまいか末梢性めまいかを確認する1)垂直性眼振、方向交代性眼振は中枢性めまいを示唆する歩くことがまったくできなければ中枢性めまいの可能性が高い【STEP3】中枢性めまいではなさそうなら、末梢性めまいの診察へ頭位変換(寝返り、臥床)でめまいが誘発され、持続時間が1分程度なら、良性発作性頭位めまい症(BPPV: benign paroxysmal positional vertigo)の可能性が高い。耳鳴と聴力低下はない。末梢性めまいで最多の原因Dix-Hallpike法で誘発し、Epley法で治療を行う(85%に有効)2)末梢性めまいの他の原因として前庭神経炎、内耳炎、メニエール病、Ramsay-Hunt症候群、薬剤性がある前庭神経炎ではウイルス感染が先行することが多い。めまいは数日続き、眼振は方向固定性かつ急速相は健常側へ向かう水平性である。耳鳴なし。難聴なし内耳炎は前庭神経炎と症状が似ている。聴力低下ありメニエール病の3徴は回転性めまい、耳鳴、聴力低下である。症状は発作的に何度か繰り返す。めまいの持続は数分~数時間。聴力検査は重要である。メニエール病を疑えば、専門的な治療が必要なので耳鼻科へ紹介するRamsey-Hunt症候群では水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)により顔面神経麻痺と耳介の発赤・水疱、めまい、難聴、耳痛を起こすめまいに伴う症状(嘔気嘔吐、不安神経症など)を改善するための治療薬(抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン系薬、制吐薬)は、めまいに対する代償作用を損なうので漫然と使ってはいけない <参考文献・資料>1)ステップ ビヨンド レジデント6. 羊土社. 2016. p.55.2)BPPV(良性発作性頭位めまい症)に対するエプリー法(YouTube)プライマリ・ケア 外来診療目利き術50. 南山堂. 2020. p.10-11.MKSAP18. General Internal Medicine. 2018.p.55-59.Kim J-S, et al. N Engl J Med. 2014;370:1138-1147.Kaski D, et al. BMJ. 2019;366:I5215.

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