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コルヒチン中毒の報告受け、添文の警告や副作用など改訂/厚労省

 コルヒチン(商品名:コルヒチン錠0.5mg「タカタ」)の添付文書への警告や重大な副作用の新設、用法及び用量などの改訂について、2026年2月24日、厚生労働省より改訂指示が発出された。 主な改訂内容として、用法及び用量に関連する注意の項では、「痛風発作の緩解への使用において、1日量1.5mgを超える高用量の投与は臨床上やむを得ない場合を除き避けること。1回量、1日量及び投与期間は国内の最新のガイドラインを参考にすること」「痛風発作の予防又は家族性地中海熱への使用において、承認された用量を超えて投与しないこと」の追記がなされた。 これまでの添付文書では、「1日量は1.8mgまでの投与にとどめることが望ましい」とされていたが、これまでに医薬品と事象との因果関係が否定できない死亡例が8例報告されており、それらの複数の症例において「1日量1.8mg超の投与」または「低用量投与であるが重度腎機能障害患者」であったことが確認されていた。 警告、副作用などの改訂は以下のとおり。―――<警告>(新設)本剤の1日量1.5mgを超える高用量を投与した患者及び重度腎機能障害患者において、重篤な中毒症状(胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害等)を発現し、死亡に至った症例が報告されている。1日量1.5mgを超える高用量の投与、又は重度腎機能障害患者への投与は、臨床上やむを得ない場合を除き避けること。また、悪心・嘔吐、腹部痛、下痢、咽頭部・胃・皮膚の灼熱感、血尿、乏尿、筋脱力等の中毒症状があらわれた場合には速やかに医療機関を受診するよう患者に指導すること。<用法及び用量に関連する注意>(一部抜粋)[効能共通]投与量の増加に伴い、下痢等の胃腸障害の発現が増加するため、以下の点に留意すること。1日量1.5mgを超える高用量投与により、重篤な中毒症状(胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害等)を発現し、死亡に至った症例が報告されている。・痛風発作の緩解への使用において、1日量1.5mgを超える高用量の投与は臨床上やむを得ない場合を除き避けること。1回量、1日量及び投与期間は国内の最新のガイドラインを参考にすること。 ・痛風発作の予防又は家族性地中海熱への使用において、承認された用量を超えて投与しないこと。<重要な基本的注意>(新設)高用量を投与した患者及び腎機能障害患者において、重篤な中毒症状を発現する可能性があるので、悪心・嘔吐、腹部痛、下痢、咽頭部・胃・皮膚の灼熱感、血尿、乏尿、筋脱力等の症状があらわれた場合には速やかに医療機関を受診するよう患者に指導すること。<腎機能障害患者>(新設)9.2.1に述べた併用薬を服用していない重度腎機能障害患者*臨床上やむを得ない場合を除き投与は避けること。投与する場合には、ごく少量から開始し、必要最小限の投与期間に留めるなど注意すること。重度腎機能障害患者において、重篤な中毒症状を発現し、死亡に至った症例が報告されている。*肝代謝酵素CYP3A4を強く阻害する薬剤又はP糖蛋白を阻害する薬剤を服用中の腎機能障害患者<重大な副作用>(新設)コルヒチンによる中毒症状承認された用法及び用量の範囲内であっても高用量を投与した患者及び腎機能障害患者等において、本剤の血中濃度が上昇し、重篤な中毒症状を発現する可能性がある。胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害等の中毒症状が認められた場合には、本剤の投与を中止し適切な処置を行うこと。 処置:脱水に対する補液、電解質補正、血球減少、感染症、凝固異常に対する対症療法、血圧、呼吸管理を行う。なお、本剤は強制利尿や血液透析では除去されない。――― なお、コルヒチンの高用量投与については、2月6日に高田製薬が適正使用のお願いを公表し、1日量として1.8mgを超えないよう注意を呼びかけていた。

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テゼペルマブ、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の適応追加/AZ

 アストラゼネカは2026年2月19日、テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア)について「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)」に対する適応追加の承認を取得したことを発表した。 本承認は、既存治療で効果不十分な18歳以上の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「WAYPOINT試験」の結果に基づくものである。WAYPOINT試験では、共主要評価項目の鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)が、いずれも有意に改善したことが報告されている。なお、NPSは投与4週時、NCSは投与2週時から改善が認められ、投与52週時まで改善が維持された。 電子化された添付文書の「効能又は効果」「効能又は効果に関連する注意」「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」「重要な基本的注意」の改訂箇所の記載は、以下のとおり(下線部が追記または変更箇所)。4. 効能又は効果○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)○鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)5. 効能又は効果に関連する注意〈気管支喘息〉5.1 最新のガイドライン等を参考に、中用量又は高用量の吸入ステロイド薬とその他の長期管理薬を併用しても、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪をきたす患者に本剤を追加して投与すること。5.2 本剤は既に起きている気管支喘息の発作や症状を速やかに軽減する薬剤ではないため、急性の発作に対しては使用しないこと。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉5.3 本剤は全身性ステロイド薬、手術等ではコントロールが不十分な患者に用いること。6. 用法及び用量〈気管支喘息〉通常、成人及び12歳以上の小児にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉通常、成人にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。7. 用法及び用量に関連する注意〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉本剤による治療反応は、通常投与開始から24週までには得られる。24週までに治療反応が得られない場合は、漫然と投与を続けないよう注意すること。8. 重要な基本的注意〈効能共通〉8.1 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。8.2 本剤の投与によって合併する他のアレルギー疾患の症状が変化する可能性があり、当該アレルギー疾患に対する適切な治療を怠った場合、症状が急激に悪化し、喘息等では死亡に至るおそれもある。本剤の投与中止後の疾患管理も含めて、本剤投与中から、合併するアレルギー疾患を担当する医師と適切に連携すること。患者に対して、医師の指示なく、それらの疾患に対する治療内容を変更しないよう指導すること。8.3 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。自己投与の適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理のもとで慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うと同時に、使用済みの注射器を廃棄する容器を提供すること。〈気管支喘息〉8.4 本剤の投与開始後に喘息症状がコントロール不良であったり、悪化した場合には、医師の診療を受けるように患者に指導すること。

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リツキサン、自己免疫性溶血性貧血の適応追加/全薬工業・中外

 全薬工業および中外製薬は、共同販売を行っている抗CD20モノクローナル抗体のリツキサン点滴静注100mg/同500mg(一般名:リツキシマブ(遺伝子組換え))について、2026年2月19日、「自己免疫性溶血性貧血」の適応追加の承認を取得したことを発表した。 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)に対する適応追加は、日本血液学会および日本小児血液・がん学会より開発要望が提出され、2025年7月4日の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の評価を経て、同年7月31日の薬事審議会医薬品第一部会で公知申請を行って差し支えないと正式に決定された。これを受け、全薬工業が同年8月29日に公知申請を行い、今回の承認取得に至った。なお、第一部会で決定された7月31日付けで薬事承認を待たずに保険適用となっている。 AIHAは、自己抗体が体温(37℃)近くで反応する温式AIHAと、体温以下の低温条件で反応する冷式AIHA(寒冷凝集素症および発作性寒冷ヘモグロビン尿症)に大別される。温式AIHAでは約80%で副腎皮質ステロイド薬で改善がみられるが、再発が多く、長期投与が必要であり、再発・難治例では脾臓摘出術が行われている。また、寒冷凝集素症では保温が最も基本的な治療法だが、貧血症状、輸血依存、末梢循環障害などの重篤な症状を伴う場合もある。これらの患者に対する治療選択肢の1つとして、国内外の診療ガイドラインではリツキシマブによる治療が推奨されている。 リツキシマブは、造血幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するCD20抗原に特異的に結合する抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を免疫系を用いて攻撃し細胞を傷害する。AIHAでの自己反応性B細胞の活性化や自己抗体の出現に至る病因は十分に解明されていないが、温式AIHAおよび冷式AIHAのいずれも自己抗体の出現が共通して認められることから、リツキシマブによるB細胞除去を介した治療効果が期待されるという。

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第283回 2026年度診療報酬改定に思う「ストラクチャー評価からプロセス・アウトカム評価へ」-医療AIが前提となる時代

「人を増やせば稼げる医療」の終焉2月13日に2026年度の診療報酬改定が、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で厚生労働大臣に答申がなされました。今回の改定は、わが国の医療提供体制における評価軸を根本から転換するものになると思われます。これまでの診療報酬は、看護配置や人員基準といった「構造(ストラクチャー)」、あるいは処置や実施内容に基づく「プロセス」を中心に設計されてきました。しかし、今回の改定では、「どのような医療を提供して、どのような成果(アウトカム)を出したのか」が明確に問われる内容になりました。急性期病院では、人件費比率がすでに50~60%に達し、賃上げや物価高の影響も重なって「人を増やすことで収益を確保するモデル」は限界に来ているといえます。中医協でも、生産年齢人口の急減を背景に、厳格な人員配置基準そのものが医療現場の持続性を損なっているとの認識が共有されており、限られた人材で成果を出す医療への転換が求められています。そのため設けられたAI導入による看護師の配置の基準緩和や新たな看護・多職種協働加算の取得が対策の肝となります。医療におけるアウトカムとは、退院時ADLの維持・改善、在宅復帰率、重症度評価、再入院率、紹介・逆紹介の質など、医療の「成果」です。これらを従来と同様に現場のマンパワーだけで対応しようとすれば、業務負荷の増大と疲弊は避けられないため、医療AIの導入が不可欠となってきます。医療AIは「省力化ツール」ではなく「思考支援基盤」医療現場で最も時間を消費しているのは診療・看護行為ではなく、おそらく「カルテ記録」や「報告」だと思われます。2026年の改定では、生成AIや音声入力を活用することで、医師事務作業補助者を1.3人換算できる方針が示されました。国が公式にAIによる省人化を評価対象とした点は大きな転換点です。しかし、医療AIの本質的な価値は、単なる時間短縮ではありません。診察や看護、リハビリテーションで得られた患者情報を抽出・構造化し、整理された形で診療録やサマリのドラフトを作成できるようになります。医師や看護師などのスタッフはそれらを確認・修正するだけでよくなり、残業の原因となっていた入力作業から解放されることになり、結果として記録業務が「思考を妨げる作業」から「思考を整理するプロセス」へと変わり得ることになります。病床マネジメントは経験則からデータへ今回の改定で病院経営上の最大の論点は、急性期病床の再編です。重症度・医療看護必要度の評価は厳格化され、救急車の受け入れ実績や手術件数など、より「急性期らしさ」が強く求められるようになっています。医療現場でAIを用いることで、在院日数の予測、転棟タイミングの提示、在宅復帰困難患者の早期抽出などが可能となり、従来は「空床を埋めるために調整」していたベッドコントロール会議が、「患者を最適なタイミングで最適な場に送るための戦略会議」へと変化することが予想されます。さらにAIが示す退院予測を基に、多職種カンファレンスで患者のゴールをシェアし、役割を分担することで、主治医単独型からチーム医療への移行も現実味を帯びてきます。記録業務をAIに委ね、現場を守る看護配置においても、AIのほか見守りセンサーなどの活用で要件の緩和が示されています。重要なのは、バイタル転記や必要度判定などの定型的な記録業務をAIに任せることです。これにより看護スタッフは、PCの前で記録業務に専念する必要がなくなり、ベッドサイドで看護業務に多くの時間を割けるようになります。労働人口が減少する中、医療・看護人材確保が今後ますます困難となる時代、医療・看護現場でのAI活用は単なるIT投資ではなく、現場スタッフの負担を減らし、バーンアウト(燃え尽き)を防ぐ「人材戦略」ともいえるのではないでしょうか。なぜ医師・看護師主導でなければ失敗するのか医療AIの導入でIT部門や事務部門任せにすると、現場で使われない仕組みになりやすいと思います。患者フローや医療の価値を理解しているのは、医師や看護師など医療スタッフであり、何が「アウトカムとして意味を持つか」を定義できるのも、現場スタッフの視点や意見です。これまで現場のスタッフが残業時間で行っていた診療録の作成、退院サマリなどの文書作成、委員会資料作成など、AIの適用範囲を医師や看護スタッフが導入について主導することで、「頑張っているのにあまり評価されない病院」から、「構造的に評価される病院」へと転換が可能になります。医療AIのリスク、無料版AIの安易な利用には注意が必要個人情報保護の観点から、一般商用の無料AIの安易な利用は極めてリスクが高いので注意が必要です。厚生労働省からはわが国の医療機関が遵守すべきルールとして「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が出されており、最新版(第6.0版)では、クラウドサービス(SaaS/PaaS/IaaS)の利用について厳格な規定があります。このガイドラインでは、データ保存先の所在地と法制度の把握が求められています。多くの無料AIはこれを満たさず、医療機関での利用には適しません。このため、医療機関はサービス提供者と、安全管理措置や責任範囲を明確にした契約を締結する必要があります。無料AIの場合、個別の契約ができず、運営側に免責事項が多い「利用規約」のみで運用されるため、ガイドライン違反となります。さらに無料版のAIツールの多くは、入力されたデータを「AIの性能向上(学習)」に2次利用することをデフォルトで設定しています。学習データへの利用リスク(オプトアウトの欠如)が存在しており、患者の病歴や氏名などの情報がいったんAIの学習データに取り込まれると、第三者が特定のプロンプトを入力した際に、その情報が回答の一部として出力されてしまうリスクがあります。これは意図しない「情報の拡散」であり、重大な情報漏洩事案となります。さらに患者の病歴は「要配慮個人情報」に該当し、より厳格な取り扱いが求められます。個人情報保護法では、本人の同意なしに個人データを第三者に提供することを禁じています。国外のAIサービスにデータを入力することは、国外の第三者への提供とみなされる可能性があり、厳格な法的要件(適切な体制の確認など)をクリアする必要があります。そして、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は、正当な理由なく業務上知り得た他人の秘密を漏らしてはならない守秘義務(刑法および各職能法)があり、国外の制御不能なクラウドサービスに患者情報を送信する行為は、セキュリティが担保されていない以上、守秘義務違反を問われる可能性が極めて高いため、医療機関では、ガイドラインに準拠した契約型AIを用い、学習機能の制御や入力ルールを明確にした運用が不可欠と考えます。結びに-2026年は「最初の一手」を打つ年2026年度の診療報酬改定は、病院業界にとっては黒船にあたるAIを組み込んだ医療提供体制を構築できた病院により成果報酬をもたらす改定ともいえます。診察や検査は医療スタッフが行い、判断をAIが支援する一種の有能な秘書となるでしょう。このシステムをなるべくスムーズに導入して現場スタッフの業務軽減に役立てるかどうかが、病院の将来を左右すると予想されます。医療AIは魔法の杖ではありません。しかし、2040年を見据え、人手不足にいつも悩まされている医療現場のスタッフが、専門性に誇りを持って働き続けるための「最初の一手」となります。 参考 1) 2026年度診療報酬改定、「人員配置中心の診療報酬評価」から「プロセス、アウトカムを重視した診療報酬評価」へ段階移行せよ-中医協(Gem Med) 2) 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(厚生労働省)

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家庭血圧測定を指示通りに実施する患者は少ない

 高血圧の治療は継続的なモニタリングに基づいており、医師は、患者が自宅で定期的に測定した血圧値を基に治療方針を調整する。しかし、遠隔高血圧管理プログラムに参加した高血圧患者の約3分の2が、血圧計が無料で提供され、教育と個別支援が行われても、自宅で指示通りに血圧を測定しなかったことが、新たな研究で明らかになった。米マス・ジェネラル・ブリガム心血管研究所のOzan Unlu氏らによるこの研究結果は、「JAMA Cardiology」に1月21日掲載された。Unlu氏は、「現行のガイドラインでは、正確な測定値を得るために、頻回かつ厳密なタイミングでの血圧測定を求めているが、日常生活の中でそれを実現するのは困難な場合が多い」とニュースリリースで述べている。 研究グループによると、家庭血圧測定(HBPM)は診察室での測定よりも正確であることが多いという。このため、米国心臓協会(AHA)は現在、高血圧患者に対し、医師の診察前に、1分間隔で2回の測定を1日2回、最大7日間行い、その平均値を算出することを推奨している。論文の上席著者である米マス・ジェネラル・ブリガムの内分泌科医であるNaomi Fisher氏は、「診察室での単回の血圧測定は誤解を招く可能性がある。診察時のストレスや不安、直前の身体活動によって、血圧が一時的に高くなることがある。自宅で数日間にわたり1日複数回測定することで、患者の真の血圧をより正確に把握でき、治療をより適切に調整できる」と述べている。 今回の研究では、遠隔高血圧管理プログラムに参加した高血圧患者3,390人(年齢中央値61歳、女性57.8%)を対象に、患者のHBPMの実施状況を評価した。患者には、自動血圧計、HBPMの教育、ナビゲーターによる電話・メッセージでの個別支援が無料で提供された。参加者には、朝と夜の服薬前にそれぞれ2回ずつ血圧測定を行い、これを週6日以上継続することが求められた。これにより、測定回数は1週間当たり計24〜28回となる。測定値は自動的に医療スタッフへ送信された。 その結果、HBPMを指示通りに24〜28回実施したのは全体の34.8%(1,181人)に過ぎず、32.7%(1,107人)は1回も測定せず、14.3%(484人)は1〜11回の実施、18.2%(618人)は12〜23回の実施にとどまることが明らかになった。 研究グループは、「これらの結果は、糖尿病患者における持続血糖モニターのように、さらに簡便な血圧測定手段が必要であることを示している」と述べ、患者が毎週測定を忘れずに行う負担を減らすため、受動的に血圧を測定できるウェアラブルデバイスが有用である可能性があるとの見方を示している。Unlu氏は、「本研究で見られたギャップは、患者に日常生活の調整を強いることなく信頼性の高い血圧データを取得できる、負担の少ない技術の必要性を浮き彫りにしている」と述べている。

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初めて治療ゴールを示した「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン

 骨粗鬆症は、社会的認知も上がり、高齢者の診療では考慮しなければならない疾患となった。日本骨粗鬆症学会と日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団の3団体は2025年8月に『骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン 2025年版』(編集:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会)を10年ぶりに刊行した。 今回の改訂では「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」の作成方法を採用して作成され、新たにClinical Question(CQ)を設定してシステマティックレビューを行い、エビデンスの評価・統合をして推奨文が作成された。治療薬では新しい治療薬が追加されたほか、「治療アルゴリズム(初期治療選択)」が盛り込まれた。 本稿では、本ガイドラインの作成委員である萩野 浩氏(独立行政法人 労働者健康安全機構 山陰労災病院 院長)に改訂のポイントや骨粗鬆症予防の意義、今後の展望について聞いた。骨粗鬆症診療を充実させるリエゾンサービス——今回のガイドライン改訂でとくに読んでもらいたい点について 大きく3点ある。 1つ目は、新たにゾレドロン酸、アバロパラチド、ロモソズマブの治療薬が加わったことである。また、従来の薬剤の評価も新しくなったので、確認してもらいたい。 2つ目は、骨折のリスクについてである。骨折の既往やその既往の部位や回数、骨折からの期間でリスクが異なる。このリスクをどのように評価するかが加わり、骨折のリスクに応じて薬剤を選択することが示された。とくに「骨折リスクが高い患者には、骨形成促進薬を最初に投与する」という項目が新しく追加された。 3つ目は、「治療のゴールが設定された点」である。骨粗鬆症の治療において、薬物療法をどの程度まで継続するのか、治療薬を変更するのか、そして、休薬するのかが新たに記載された。——骨粗鬆症の予防について 骨粗鬆症の最終像としては大腿骨骨折や椎体骨折が起こり、寝たきりとなり生命予後に影響するリスクとなる。そのために、予防としては骨粗鬆症そのものを予防するとともに、骨粗鬆症の患者に骨折が起こることを予防すること、起きてしまった骨折箇所などが再度骨折することを予防する3つの予防が必要となる。 骨粗鬆症は、自覚症状や病状が少ない「沈黙の疾患」と呼ばれていて、「骨粗鬆症の検診」をきちんと実施しようということがガイドラインに記載されている。検診については、「健康日本21」の中で骨粗鬆症の検診率を15%(現在5%前後)まで引き上げようと目標が掲げられている。今後、そのためにガイドやマニュアルを整備し、検診を充実させて、早期発見・早期治療介入をしようという動きがある。 もう1つ今回のガイドラインでは、主な診療科である整形外科医へのつなぎとして骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)も明記された。これは骨粗鬆症に起因する骨折の治療と予防を含めて、看護師や理学療法士が骨粗鬆症の患者と医師の仲立ちをして、骨密度の検査や薬物療法を医師に依頼するサービスであり、より多くの医療者の目で骨粗鬆症の患者の診療を充実させようという狙いがある。1年に1回投与の新治療薬も登場——追加された新しい治療薬について 今回の改訂では「ゾレドロン酸」「アバロパラチド」「ロモソズマブ」の3つの治療薬が追加された。 ゾレドロン酸は点滴製剤で、1年に1回投与の骨吸収を抑える骨吸収抑制薬であり、経口での服用に問題のある患者やアドヒアランスに問題がある患者などにメリットとなる。 また、今回のガイドラインでは、「骨折リスクが非常に高い患者には、まず治療薬として骨形成促進薬を処方する」ということが明記され、新しい治療薬のアバロパラチドとロモソズマブは、この骨形成促進薬となる。この使い分けについては、まだ明確なコンセンサスがないので、今後臨床研究を積み上げていくこととなる。 そのほか既存薬のテリパラチドも「骨折リスクが非常に高い患者に使用すること」が示されている。その理由の1つとして何も治療していない患者のほうが、骨形成促進薬の治療効果が非常に高いというエビデンスがあり、国内外の専門家のコンセンサスも得られている。——次回のガイドラインへの課題や今後の展望について 今回のガイドライン改訂は2015年版のガイドラインから10年を要した。その理由としては、Minds診療ガイドラインに準拠した作成に変更したために、論文などの評価や解析に時間を要したからである。次回の改訂ではもう少し早くできるようにしたいが、新しい骨粗鬆症治療薬の発売などの予定がないので作成時期は今後検討されることになる。 また、今回のガイドラインは上梓してから、治療のゴール設定や治療薬の選択の目安などの記載が医師・医療者から評価された一方で、治療薬の選択が「推奨する」や「提案する」になり、少しわかりにくいという声もあった。 そのほか、米国骨代謝学会と米国骨粗鬆症財団が2024年に発表した「初期治療の治療アルゴリズム」が盛り込まれたが、「治療の目安ができた」という評価がある一方で、わが国の保険適用と異なる点もあるので、この点は気を付ける必要がある。主な改訂点と目次【今回の主な改訂点】・新たにCQを設定、システマティックレビューを行い、エビデンスの評価・統合をして推奨文を作成・新しい骨粗鬆症治療薬として、ゾレドロン酸、アバロパラチド、ロモソズマブを追加・「顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」「グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023」「癌治療関連骨減少症(CTIBL)診療マニュアル」を反映【目次】 第1章 骨粗鬆症の定義・疫学および成因 第2章 骨粗鬆症の診断とリスク評価 第3章 骨粗鬆症の予防 第4章 骨粗鬆症の管理および治療の基本方針 第5章 骨粗鬆症の薬物治療 第6章 続発性骨粗鬆症 第7章 骨粗鬆症管理の向上に向けた取組みとリエゾンサービス    資料/付表/QOL評価質問表/索引

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HIV-1感染症、ARTからドラビリン+islatravir切り替えによる有効性・安全性を確認/Lancet

 HIV-1感染症治療においてドラビリン/islatravir配合錠は、有効かつ良好な忍容性を示す、初となる非インテグラーゼ阻害薬(INSTI)ベースの2剤併用療法として有望であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のChloe Orkin氏らによる第III相無作為化実薬対照非盲検非劣性試験で示された。すべての国際ガイドラインでは、INSTIを含むレジメンが第1選択薬として推奨されているが、INSTI耐性の出現を示すWHOのデータが示されたことから懸念が生じている。ドラビリン/islatravir配合錠は、2つの強力な抗ウイルス薬からなる開発中の1日1回投与の配合錠で、相補的な作用機序および耐性プロファイルを有する。著者は、「広範なINSTI耐性の出現に対する懸念が高まる中、抗レトロウイルス療法(ART)の変更を必要とするHIV-1感染者にとって、この1日1回の配合錠は有望な選択肢となりうるだろう」と述べている。Lancet誌2026年2月7日号掲載の報告。ドラビリン/islatravir固定用量配合錠への切り替え、有効性と安全性を評価 研究グループは、成人HIV-1感染者において錠剤経口ARTの切り替え薬として、ドラビリン(100mg)/islatravir(0.25mg)の固定用量配合錠の有効性と安全性を評価した。 試験は、8ヵ国(オーストラリア、カナダ、コロンビア、日本、南アフリカ共和国、スイス、英国、米国)53ヵ所の研究・地域・病院ベースのクリニックで行われた。対象は、18歳以上の成人で、2剤または3剤の経口ARTレジメンを3ヵ月以上受けており、ウイルス量がHIV-1 RNA 50コピー/mL未満、治療失敗歴なし、ドラビリンに対する既知の耐性なし、活動性B型慢性肝炎でないこととした。 被験者をコンピュータ生成無作為化スケジュール法(ブロックサイズは3)で、ドラビリン(100mg)/islatravir(0.25mg)配合錠を1日1回投与する群またはベースラインARTを継続する群に2対1の割合で無作為に割り付け、48週間投与した。無作為化では、ベースラインレジメンの中心となる抗レトロウイルス薬のクラス(INSTI、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬)によって層別化した。 主要エンドポイント(治療を受けたすべての被験者で評価)は、48週時点でウイルス量50コピー/mL以上の患者の割合であった。非劣性は、治療群間差の多重性補正後95%信頼区間(CI)の上限が4%未満の場合と定義した。安全性の解析は、無作為化され試験薬を少なくとも1回服用した被験者を対象に行われた。48週時のウイルス量50コピー/mL以上の患者割合で非劣性 2023年2月20日~10月24日に、614例が適格性についてスクリーニングされ、553例がドラビリン/islatravir群(368例)またはベースラインART群(185例)に無作為化された。551例が割り付け治療を少なくとも1回服用した(ドラビリン/islatravir群366例、ベースラインART群185例)。 551例のうち、出生時男性332例(60%)、出生時女性219例(40%)で、年齢中央値51歳(四分位範囲:41~59)、250例(45%)が自己申告に基づく黒人またはアフリカ系米国人などだった(アジア人は両群ともに5%)。 48週時点でウイルス量50コピー/mL以上の患者の割合は、ドラビリン/islatravir群1.4%(5/366例)、ベースラインART群4.9%(9/185例)で、ドラビリン/islatravir群の非劣性が示された(群間差:-3.6%、多重性補正後95%CI:-7.8~-0.8)。 治療関連有害事象は、ドラビリン/islatravir群(44/366例[12.0%])がベースラインART群(9/185例[4.9%])よりも多く観察された(群間差:7.2、95%CI:2.2~11.6)。両群(ドラビリン/islatravir群vs.ベースラインART群)の発現率は、あらゆる有害事象(79.5%[291/366例]vs.83.8%[155/185例]、群間差:-4.3[95%CI:-10.7~2.8])、重篤な有害事象(6.3%[23/366例]vs.4.9%[9/185例]、1.4[-3.2~5.2])、有害事象による試験中止(0.5%[2/366例]vs.2.2%[4/185例]、-1.6[-4.9~0.2])で同等であった。 死亡が1例報告されたが(ベースラインART群)、治療とは無関係と見なされた。プロトコールで規定されたCD4陽性細胞数または総リンパ球数の減少により治療を中止した被験者はいなかった。 著者は、「安全性および有効性の知見は、長期作用型の可能性のある薬剤としてのislatravirの開発を進めることを支持するものである」とまとめている。

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高齢者の減薬、EHRによる医師への通知が有効/JAMA

 高齢者に対する「潜在的に不適切な薬剤」、とくにベンゾジアゼピン系薬剤や抗コリン薬の処方は、転倒や入院のリスクを約30%増加させることが知られている。臨床ガイドラインは、これらの薬剤の使用制限を推奨しているが、多忙な診療現場における時間の制約や、患者の希望、現状維持バイアスなどが障壁となり、減薬(deprescribing)による処方の適正化は容易ではないという。米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学のJulie C. Lauffenburger氏らは「NUDGE-EHR-2試験」において、行動科学の知見に基づく電子健康記録(EHR)への介入ツール(ナッジ[nudge]と呼ばれる医師への通知システム)が、高齢患者における不適切な処方の削減にきわめて有効であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年1月29日号で報告された。201人のプライマリケア医(PCP)が参加した3群無作為化優越性試験 NUDGE-EHR-2試験は、米国ボストン市のマサチューセッツ総合病院で実施した実践的な3群並行無作為化優越性試験(米国国立老化研究所[NIA]の助成を受けた)。201人のプライマリケア医(PCP)を、2022年11月、3つの群にクラスター無作為化した。 対象は、無作為化されたPCPの患者で、年齢65歳以上、2022年11月10日~2024年3月15日にPCPを受診し、過去180日間に1種類以上のベンゾジアゼピン系薬剤または非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬、あるいは2種類以上の抗コリン薬の処方を受けた患者であった。 PCPは、介入を受けず通常ケアを行う群または次の2つのEHR介入を受ける群に割り付けられた。(1)事前コミットメント介入群:初回診察時にEHRメッセージを受信し、患者と投薬のリスクや減薬(薬剤の漸減・中止)について話し合いを開始するよう要請された。2回目およびそれ以降の診察時には、患者に不適切な可能性のある薬剤の減薬を促すよう要請するEHRメッセージをリマインダーとして受信した。(2)ブースター介入群:初回診察時にEHRメッセージを受信し、患者に減薬を促すよう要請された。PCPは、4週間後にリマインダーを送信するよう設定することができ、これを設定したPCPは受信箱でリマインダーを受け取った。 主要アウトカムは、初回診察時から追跡期間終了時までに行われた1種類以上の減薬とした。減薬は、EHRデータを用いて患者レベルで評価した医師の主導による薬剤の中止または漸減と定義した。減薬率の改善、事前コミットメント介入群40%、ブースター介入群26% 1,146例(平均年齢73.6[SD 6.4]歳、女性799例[69.7%]、平均追跡期間289.9[SD 141.0]日)が解析に含まれた。PCPは平均5.7(SD 4.7)例の患者を診察した。平均受診回数は、事前コミットメント介入群が2.6(SD 2.2)回、ブースター介入群が2.3(SD 1.6)回、通常ケア群が2.2(SD 1.6)回だった。 373例(32.5%)で、少なくとも1種類の薬剤の減薬が達成された。内訳は、事前コミットメント介入群が145例(36.8%)、ブースター介入群が122例(34.3%)、通常ケア群が106例(26.8%)であった。 通常ケア群と比較して、減薬の割合は事前コミットメント介入群で40%高く(相対リスク[RR]:1.40、95%信頼区間[CI]:1.14~1.73、絶対群間差:10.4%)、ブースター介入群で26%高かった(RR:1.26、95%CI:1.01~1.57、絶対群間差:6.5%)。 有害事象報告システムを通じた重篤な有害事象の報告はなかった。手動によるEHRレビューに基づく死亡の報告は、事前コミットメント介入群で1.4%、ブースター介入群で3.9%、通常ケア群で1.8%であった。累積投与量が減少しなかった原因は 主要アウトカムの結果とは異なり、通常ケアと比較して2つの介入法は、ベンゾジアゼピン系薬剤、非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬、強力な抗コリン作用を有する薬剤の、処方された累積投与量を有意に減少させなかった。 この原因として、著者は、症例数がもっと多ければ差を検出できた可能性とともに、一部の医師が、介入の通知を受けて、ベンゾジアゼピン系薬剤および非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬を、抗コリン薬に代替した可能性があること、1つの薬剤クラスの使用を減らす一方で別の薬剤クラスを増やした可能性があると指摘している。

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BRCA1/2病的バリアント保持者におけるリスク低減乳房切除術、生存率を改善するか/JCO

 BRCA1およびBRCA2遺伝子の病的バリアント(pvBRCA1/2)を保持する女性において、両側リスク低減乳房切除術(BRRM)により生存率は改善するのだろうか。今回、英国・マンチェスター大学のAshu Gandhi氏らが、pvBRCA1/2保持女性においてBRRMを選択した群と画像検査によるサーベイランスを選択した群の長期アウトカムを前向きコホート研究で比較したところ、生存率に差はなかったが、乳がん発症率はBRRM選択群が有意に低かったことが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年2月4日号に掲載。 本研究は、地域の家族歴・遺伝学サービスを受診しpvBRCA1/2遺伝子検査を受け、pvBRCA1/2を保持していた女性を対象とした前向きコホート研究である。参加者は英国のガイドラインに基づき、BRRMまたはサーベイランスのいずれかを選択した。評価項目は全生存期間、乳がん死亡率、乳がん発症率であった。 主な結果は以下のとおり。・460例がBRRM、745例がサーベイランスを選択し(年齢中央値:37.2歳/38.5歳、p=0.06)、BRRM後の追跡期間は計4,652人年であった。・乳がん年間発症率は全体で2.4%であったが、BRRM後は0.15%に減少し、サーベイランス単独と比較して94%低かった(log-rank検定 χ2=86.1、p<0.001)。・BRRMで診断された潜在性乳がんは9例(2%)であった。・乳がん死亡率はBRRM群とサーベイランス群で同等であった(死亡:2例/4例、p=0.36、追跡期間:4,634人年/5,419人年)。・両群において、乳がん死亡率は卵巣がん死亡率と同程度であった。 著者らは「本結果は、サーベイランスを選択した女性において生存期間が損なわれる可能性が低いことを示唆し、安心感を与えるかもしれない。ただし、BRRM群の乳がん発症率がサーベイランス群より有意に低いことは、BRRMを検討する女性に重要な情報となりうる」としている。

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未治療・再発肺MAC症、吸入アミカシン上乗せの有用性は?(ARISE)

 肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)のうち、Mycobacterium avium complex(MAC)を原因菌とするものが肺MAC症である。肺MAC症に対し、国際的なガイドラインではマクロライド系抗菌薬、エタンブトール、リファンピシンによる3剤併用療法が推奨されている1)。また、本邦の指針である『成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2023年改訂―』でも、空洞がなく重度の気管支拡張所見がない場合は、マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)、エタンブトール、リファンピシンの併用が標準治療とされている2)。ただし、この3剤併用療法には忍容性や治療成功率に課題も存在する。 そのような背景から、肺MAC症に対する新規治療薬としてアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS、商品名:アリケイス)が承認されているが、適応は「多剤併用療法による前治療において効果不十分な患者」に限定されている。そこで、米国・National Jewish HealthのCharles L. Daley氏らは、未治療または再発の非空洞性肺MAC症患者を対象に、アジスロマイシン+エタンブトールへALISを上乗せする治療の有用性を検討する国際共同第III相試験「ARISE試験」を実施した。その結果、ALIS併用群は対照群と比較して、6ヵ月時点および治療終了1ヵ月後の7ヵ月時点における排菌陰性化率が数値的に高く、より早期に排菌陰性化を達成することが示唆された。本研究結果は、Annals of the American Thoracic Society誌オンライン版2026年1月23日号で報告された。試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験対象:未治療または再発の非空洞性肺MAC症の成人患者99例試験群(ALIS群):アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+ALIS(590mg/日)を6ヵ月 48例対照群:アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+吸入プラセボを6ヵ月 51例評価項目:[主要評価項目]患者報告アウトカム(PRO)ツールの妥当性検証[副次評価項目]排菌陰性化率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は69歳で、女性の割合は77.8%、白人の割合は80.8%であった。・6ヵ月時点の排菌陰性化率(5ヵ月・6ヵ月時点の連続で陰性)は、ALIS群80.6%、対照群63.9%であった(群間差16.7%、95%信頼区間[CI]:-1.4~34.9、p=0.0712)。・治療終了1ヵ月後の7ヵ月時点における排菌陰性化率(6ヵ月・7ヵ月時点の連続で陰性)は、ALIS群78.8%、対照群47.1%であり、ALIS群が高かった(群間差31.7%、95%CI:12.9~50.5、p=0.0010)。・排菌陰性化達成までの期間中央値は、ALIS群1.0ヵ月に対し、対照群では2.0ヵ月であった。・排菌陰性化を達成した患者のうち、7ヵ月時点までに再発が確認された割合は、ALIS群12.8%(5例)に対し、対照群では50.0%(20例)と対照群が高かった。・PRO評価(QOL-B RDスコア)において、ALIS群では7ヵ月時点まで継続的な改善傾向がみられた一方、対照群では3ヵ月以降に改善が頭打ちとなり、その後低下した。・安全性について、有害事象はALIS群91.7%、対照群80.4%に発現した。ALIS群で多くみられた有害事象は、発声障害(41.7%)、下痢(27.1%)、咳嗽(27.1%)などであり、新たな安全性シグナルは認められなかった。 本研究結果について、著者らは「本試験は6ヵ月間という短期間の検討であり、ガイドライン推奨の治療期間を反映していないものの、早期介入における吸入アミカシンの有用性を示す重要なデータである」と述べている。現在、同様の集団を対象とした12ヵ月間の長期投与による検証試験「ENCORE試験」が進行中である。

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第300回 シン・高市政権が考える、医療に対するお金の使い道

INDEX自民党、316議席で歴史的大勝圧倒的優勢の高市政権の方向性、成否は?大型財政出動、成功の分かれ道自民党、316議席で歴史的大勝ここ2回(第298回、第299回)、衆議院議員総選挙(以下、衆院選)の各党の医療・社会保障政策を紹介してきたが、2月8日の投開票の結果は高市 早苗首相率いる自民党が316議席を獲得。参院で否決された法案の再可決や憲法改正の国民投票の発議などに必要な衆院議席の3分の2である310議席を上回る歴史的な大勝で終わった。対抗馬トップの位置にいた立憲民主党と公明党が結党した新党「中道改革連合」は、改選前議席の3分の1すら下回る49議席。このうち公明党出身者が28議席であり、立憲民主党出身者が21議席。改選前の立憲民主党出身者は148人で、実に7分の1までに激減。もはや党の消滅危機である。圧倒的優勢の高市政権の方向性、成否は?さてこの圧倒的優勢の高市政権がどのような方向性に進むのか? そしてそれが成功するのか? ご存じのように、高市氏は「危機管理投資」「経済安全保障」というキーワードで、日本の経済成長を実現する「日本列島を強く豊かに」を大目標に掲げている。そこで医療関連の中で最も「経済」という言葉に近い製薬産業関連で、自民党が衆院選で掲げた政策を基に考えてみたい。まず今回衆院選で自民党が提示した医薬品に関わる政策は以下のようになる。詳細は以下のとおり経済安全保障の確保の観点から、半導体、医薬品、蓄電池、重要鉱物、船体などの重要技術・物資のサプライチェーンの強靱化、サーキュラーエコノミーの推進、「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」の推進、経済的威圧への取組み、機微技術の管理やインテリジェンス体制強化を図る半導体、医薬品、蓄電池、レアアースを含む重要鉱物、船体などの特定重要物資について国内生産能力の強化や調達の多元化などに向けた支援を行う。併せて、重要な物資が本来期待される機能を発揮するために必要不可欠な役務を支援対象とするほか、幅広いサプライチェーンの関係者からの情報収集や必要な協力を得ることを可能とするなど、これまでの取組みの効果を踏まえたうえで、実効性のある措置を新たに講じるゲノムデータ・創薬基盤の充実、医薬品や医療機器などの開発、国際協力、人材育成などの取組みを進めるとともに、グローバルヘルス戦略に基づき、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を目指すわが国の創薬力を抜本的に強化し、その基盤となる産学官の研究力を向上させるとともに、特に将来の感染症流行に備えて、国産ワクチン・治療薬・診断薬については、研究基盤の整備や治験機能・体制、製造段階を含む生産能力を強化製薬産業をわが国の基幹産業と位置付け、創薬力の強化を図るため、創薬ベンチャーの実用化開発支援や抗体医薬品・再生医療など製品などのバイオ医薬品の生産体制の整備を推進未来社会の鍵となる、AI、量子、バイオ、健康医療、マテリアル、光電融合、ブロックチェーン技術や、宇宙・航空、次世代車、CCSなどの各種最先端分野について研究開発から社会実装までの取組みを進めるとともに、ムーンショット型研究開発制度を着実に推進します。また、これらの研究DXを推進します。革新的な医薬品を開発できる環境を整備し、後発医薬品の安定供給を確保することで、国民の命・健康を守る ざっと眺めまわすと、「支援」「強化」というキーワードが目立つ。この方向性を2025年度補正予算から見ていくと、まず創薬等支援に1,842億円が投じられている。この中でも最大の予算が投じられているのは、「後発医薬品製造基盤整備基金事業」の844億円である。端的に言えば、後発医薬品企業の品目統合や事業再編などを支援し、後発医薬品産業全体の構造的問題を解決することで後発医薬品の安定供給を実現することが目的である。これも含め備蓄、バイオシミラーの製造施設支援など国内で必要な医薬品の安定供給に約1,040億円が充てられている。前出の1,842億円の大部分が高市首相の唱える「経済安全保障」の分野である。一方、成長投資に当たる部分は、創薬支援強化として、「革新的医薬品等実用化支援基金の造成による創薬環境の整備」が241億円、「ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験実施体制の整備」が12億円、「産学連携による創薬ターゲット予測・シーズ探索AIプラットフォーム開発(創薬AI)」が2億円、「AI創薬指向型・患者還元型・リアルタイム情報プラットフォーム事業」が5.5億円、「再生医療等の臨床研究支援等に係る基盤の体制整備・強化」が3億円、「がん・難病の全ゲノム解析における情報基盤の構築、研究の推進」が115億円といった具合だ。大型財政出動、成功の分かれ道さてとくに後者の成長投資については予算規模の多寡はこの時点では棚上げして、今後の成否を占うファクターを考えてみる。まずその大前提として、現在の高市政権が掲げる「責任ある積極財政」の市場の評価は必ずしも良いものばかりではないことはすでに報じられている。詰まるところ、大型財政出動に見合った経済成長が得られず、政府債務が膨張する不安だ。しかも、昨今では金利が上昇しており、最悪の場合、政府債務は雪だるま式に増えることになる。実はこうした懸念から考えれば、高市政権が目論む“成長”が得られるかどうかの要因は、「構造転換ができるかどうか?」のほぼ1点に絞られる。日本で政府債務、すなわち赤字国債の発行が常態化するようになったきっかけは、高度経済成長期後の1970年代半ばのオイルショックによる景気後退である。戦後初のマイナス成長に陥った結果、税収不足を補うため、成長回復までの“つなぎ”として初めて赤字国債が発行され、今の今までこの状態がずるずると続いている。「高度経済成長の夢よ、もう一度」のまま、約半世紀も債務を垂れ流し、対外的にも国内的にも経済成長を実感できない状態になっている。こうした“前科”があるからこそ、マーケットは大型財政出動に懐疑的になっているのである。だが、ご存じのように、いまや少子高齢化まっしぐらで高度経済成長期のような生産人口の増加は起こりえず、さらに当時は最先端だった日本の技術力も今や中国の後塵を拝するなど、もはや前提条件が大幅に狂っている。つまり前提条件の大幅な変更を折り込んだ施策が必要であることは言うまでもない。この点で言えば、AI創薬への積極投資などを含んだ2025年度の補正予算は一定程度評価できるものとも言える。ただし、つぎ込んだ投資が回収できるサービス・製品の実用化とそれに伴う収益による経済成長と税収増まで実現しなければ、この大型財政出動は成功とは言えない。要は大型財政出動による出口までの整備、つまるところその過程での目詰まりポイントの解消が求められる。目詰まりポイントとは、必要な規制の整備と過度な規制の緩和である。たとえばAI創薬に関して言えば、昨年国内ではAI推進法が成立したが、今のところこの法律や薬機法の下で創薬AIの評価基準や安全性確保のガイドライン整備はまだ進んでいない。また、AI推進法はイノベーションの促進の観点から作られた法律だが、EUではリスクベースのAI規制が中核であり、こうした諸外国の法制度とのハーモナイズはこれからである。また、AI創薬だけでなく、今回の補正予算に盛り込まれたがん・難病の全ゲノム解析における情報基盤の構築などは、「仮名加工医療情報」の活用が必須である。次世代医療基盤法では、2024年に「仮名加工医療情報」の活用に向けた改正が進められたばかりである。ただ、仮名加工情報の作成・使用には認証が必要であり、その運用が課題になる可能性が指摘されている。このように大型財政出動の先にある課題に高市政権がどう取り組むのか? あるいは最悪、何も取り組まないのか? この点が戦後最強の同政権の今後を占うポイントである、と私は考えている。

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パーキンソン病〔PD:Parkinson's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義1817年、英国の外科医であり地質学者であったJames Parkinsonは“Essay on The Shaking Palsy”として6症例のパーキンソン病患者の症状を詳細に報告した。その後、神経学の祖であるJean-Martin Charcotがこのエッセイに着目し「パーキンソン病」と名付け、疾患概念が確立された。本疾患はドパミン神経細胞が脱落するため、動作緩慢、振戦、筋強剛などが出現する。進行すると姿勢保持障害、歩行障害なども顕著になり、転倒のリスクが高まる。さらに、運動症状以外にも睡眠障害、嗅覚低下、自律神経障害、認知症、精神症状など多彩な非運動症状を合併する。そのため日常生活動作が低下し、介護度が高くなり、患者本人の生活の質を悪化させるのみならず、介護者にも多大な影響が及ぶ疾患である。病理学的所見としては、黒質緻密部を中心としたドパミン神経細胞の変性・脱落とレビー小体の形成が特徴である。■ 疫学有病率は10万人当たり100~180人とされているが、65歳以上では1,000人程度存在するといわれている。海外で行われた年齢別有病率を調査した研究では、40~49歳では10万人当たり約40人であるのに対し、80歳以上では約1,900人と報告されており、加齢に伴い急激に増加することがわかる。発症頻度には地域差があり、欧州や北米では高く、アジアやアフリカでは低い傾向がある。また、海外では男性に多いとされる一方で、わが国では女性の有病率が高いと報告されている。■ 病因本疾患の病因は長らく不明とされてきたが、近年の分子病理学的・遺伝学的研究の進展により、その中核にはαシヌクレインの異常凝集と蓄積があることが明らかとなっている。αシヌクレインは、本来シナプス前終末に豊富に存在する可溶性タンパク質であるが、異常構造へ変化するとオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルへと段階的に凝集し、神経毒性を獲得する。これらの凝集体は、神経細胞内でレビー小体やレビー神経突起を形成し、ドパミン神経を中心とした神経変性を引き起こすと考えられている。さらに、病的αシヌクレインは細胞間を伝播する性質を有し、特定の神経回路に沿って病理が拡大することが示唆されている。その一方で、パーキンソン病は単一の原因で発症する疾患ではなく、遺伝的要因と環境要因が複雑に絡む多因子疾患である。αシヌクレインをコードするSNCAは最初に発見された家族性パーキンソン病の原因遺伝子である。さらに常染色体顕性遺伝性パーキンソン病に頻度が高いLRRK2、重大なリスク遺伝子であるGBAなどが同定されており、これらはαシヌクレインの凝集に関与している。また、孤発例においても、複数の感受性遺伝子が発症リスクに寄与することが明らかとなっており、遺伝的背景が病態形成に重要な役割を果たす。そのほか農薬曝露、頭部外傷、腸内細菌叢などの環境因子も発症リスクとして報告されており、遺伝要因と環境要因の相互作用が発症の引き金となる可能性が考えられている。さらに近年では、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレス、神経炎症、タンパク質分解系の破綻など、複数の細胞内異常が相互に関連しながら神経変性を進行させることが示唆されている。とくにリソソーム・オートファジー系の障害は、異常αシヌクレインの蓄積を促進し、分解不能になるという悪循環を形成する重要な病態基盤と考えられている。このようにパーキンソン病の病因は、αシヌクレイン凝集を中心とした分子病態を軸に、多層的・連続的な異常が重なり合うことで発症すると考えられる。2 診断臨床診断は主に症候学的所見に基づいて行われる。2015年に国際パーキンソン病・運動障害学会が診断基準を策定した(表)。この診断基準では、寡動を中心に、振戦と筋強剛のどちらか1つがあるとパーキンソン症状があると判断し、特異的な所見である、レボドパ製剤に対する良好な反応性、レボドパ誘発性ジスキネジア、四肢の静止時振戦、嗅覚低下および123I-MIBG心筋シンチグラフィによる心臓交感神経脱落の証明を支持的診断基準としている。除外基準のみならず、パーキンソン病でも認められるが非典型的な症状や経過をレッドフラッグとして挙げている。支持的基準を2つ以上満たし、除外基準およびレッドフラッグが認められない場合は“clinically established”であり、支持的基準を満たしていてもレッドフラッグを認める場合や、レッドフラッグがなくても十分に支持的基準を満たさない場合は“probable”と診断される。診断基準の特異度は高いが感度は低く、類縁疾患である多系統萎縮症や進行性核上性麻痺といったParkinson-like disorderとの鑑別は難しい。また、運動症状が発症する前より、便秘、嗅覚低下、レム睡眠行動異常症が認められる場合がある。ビデオ睡眠ポリグラフでレム睡眠行動異常障害認められる場合、パーキンソン病を発症するリスクが高まる。採血や画像診断は補助的な診断である。採血では特異的な変化はないが、パーキンソン症状を来す疾患(甲状腺機能亢進症や低下症、ウィルソン病、抗リン脂質抗体症候群など)の鑑別は必要である。神経画像は診断に有用であり、頭部MRIやCTなどの構造画像は除外診断目的で行われる。とくにMRIは被殻の萎縮と被殻外側のスリット、脳梁の萎縮、中脳背側(中脳被蓋部)の萎縮、上/中小脳脚の萎縮、橋の萎縮などに注目し、Parkinson-like disorderと鑑別する。また、DATスキャンを行うことで、パーキンソン症状が黒質線条体のドパミン機能障害により引き起こされていることが確認できる。薬剤性パーキンソニズム、本態性振戦、ジストニア、錐体路障害などによるパーキンソン様症状は正常であり除外できる。123I-MIBG心筋シンチグラフィは心臓交感神経の脱落を確認できるが、認める場合はパーキンソン病に特異的な所見であり、重要な診断の手掛かりとなる。最近、髄液に存在する微量な凝集型αシヌクレインを増幅することで診断できる可能性が示されているが、研究レベルであり実用化はされていない。表 国際パーキンソン病・運動障害学会の診断基準画像を拡大する診断のフローを以下に示す。【パーキンソン病の診断基準(MDS)】■臨床的に確実なパーキンソン病(clinically established Parkinson's Disease)パーキンソニズムが存在し、さらに、1)絶対的な除外基準に抵触しない。2)少なくとも2つの支持的基準に合致する。3)相対的除外基準に抵触しない。■臨床的にほぼ確実なパーキンソン病(clinically probable Parkinson's Disease)パーキンソニズムが存在しさらに、1)絶対的除外基準に抵触しない。2)相対的除外基準と同数以上の支持基準がみられる。ただし、2つを超える相対的除外基準がみられてはならない。■支持的基準(Supportive criteria)1)明白で劇的なドパミン補充療法に対する反応性がみられる。この場合、初期治療の段階では正常かそれに近いレベルまで改善がみられる必要がある。もし、初期治療に対する反応性が評価できない場合は以下のいずれかで判断する。用量の増減により、顕著な症状の変動(UPDRS partIIIでのスコアが30%を超える)がみられる。または患者または介護者より治療により顕著な改善がみられたことが確認できる明らかに顕著なオン/オフ現象がみられる2)L-ドパ誘発性のジスキネジアがみられる。3)四肢の静止時振戦が診察上確認できる。4)ほかのパーキンソニズムを示す疾患との鑑別診断上、80%を超える特異度を示す検査法が陽性である。現在この基準を満たす検査として以下の2つが挙げられる。嗅覚喪失または年齢・性を考慮したうえで明らかな嗅覚低下の存在MIBG心筋シンチグラフィによる心筋交感神経系の脱神経所見■絶対的除外基準(Absolute exclusion criteria)1)小脳症候がみられる。2)下方への核上性眼球運動障害がみられる。3)発症5年以内に前頭側頭型認知症や原発性進行性失語症の診断基準を満たす症状がみられる。4)下肢に限局したパーキンソニズムが3年を超えてみられる。5)薬剤性パーキンソニズムとして矛盾のないドパミン遮断薬の使用歴がある。6)中等度以上の重症度にもかかわらず、高用量(>600mg)のL-ドパによる症状の改善がみられない。7)明らかな皮質性感覚障害、肢節観念運動失行や進行性失語がみられる。8)シナプス前性のドパミン系が機能画像検査により正常と評価される。9)パーキンソニズムを来す可能性のある他疾患の可能性が高いと考えられる。■相対的除外基準(Red flags)1)5年以内に車椅子利用となるような急速な歩行障害の進展がみられる。2)5年以上の経過で運動症状の増悪がみられない。3)発症5年以内に重度の構音障害や嚥下障害などの球症状がみられる。4)日中または夜間の吸気性喘鳴や頻繁に生じる深い吸気*注など、吸気性の呼吸障害がみられる。5)発症から5年以内に以下のような重度の自律神経障害がみられる。起立性低血圧:立位3分以内に少なくとも収縮期で30mmHgまたは拡張期で15mmHgの血圧低下がみられる発症から5年以内に重度の尿失禁や尿閉がみられる6)年1回を超える頻度で繰り返す発症3年以内の転倒。7)発症から10年以内に、顕著な首下がり(anterocollis)や手足の関節拘縮がみられる。8)5年の罹病期間の中で以下のようなよくみられる非運動症候を認めない。睡眠障害:睡眠の維持障害による不眠、日中の過剰な傾眠、レム睡眠行動障害の症状自律神経障害:便秘、日中の頻尿、症状を伴う起立性低血圧嗅覚障害精神症状:うつ状態、不安、幻覚9)他では説明のできない錐体路症状がみられる。10)経過中一貫して左右対称性のパーキンソニズムがみられる。*注:inspiratory sighs;多系統萎縮症で時にみられる呼吸障害の1つで、しばしば突然不規則に生じる深いため息様の吸気。(文献1より引用)3 治療本疾患はドパミン神経変性により運動症状および多彩な非運動症状を呈するため、ドパミン補充療法が治療の中心である。L-ドパ製剤は最も有効性が高く中心的薬剤であるが、吸収に食事の影響を受けやすいこと、phasicな刺激によりL-ドパ誘発性ジスキネジアが生じやすく、半減期が短いためウェアリングオフを誘発することが課題となる。MAO-B阻害薬はドパミン分解を抑制することで効果を発揮する。すくみ足に効果があることが示されている。ドパミン受容体作動薬は半減期が長く、continuous dopaminergic stimulation(CDS)に近い刺激が可能で、ジスキネジア発現を遅らせる一方、眠気、衝動制御障害、精神症状に注意を要する。ウェアリングオフ出現時には、L-ドパ頻回投与やCOMT阻害薬併用により血中濃度の安定化を図る。また、アマンタジンを早期から始めることで、ジスキネジアの発現抑制が可能であることが示されている。経口治療で調整困難な場合にはデバイス補助療法を考慮する。経腸的L-ドパ持続療法や皮下持続投与製剤はオフ時間を短縮し、運動の日内変動を大きく改善する。さらに、L-ドパ製剤への反応性を有し、重度の認知症や精神症状を伴わない症例では脳深部刺激療法(DBS)も考慮される。主なターゲットは視床下核(STN)と淡蒼球内節(GPi)であり、STN刺激は薬剤減量効果が期待できる一方、GPi刺激はL-ドパ誘発性ジスキネジアの抑制に有効である。効果は同等とされるが、薬剤減量ができるSTNがfirst choiceである。強い振戦が主体の場合には視床Vim核が選択される。DBSは運動症状を安定化させ、薬物治療の限界を補完する治療オプションであり、適応がある症例の場合、必ず考慮すべきである。4 今後の展望近年、分子病理学的研究やバイオマーカー研究の進展により、パーキンソン病は従来の臨床症候に基づく疾患概念から、αシヌクレイン病理を中核とした生物学的疾患概念へと大きく変容しつつある。とくに、微量な病的αシヌクレインを検出可能とする種増幅アッセイ(seed amplification assay:SAA)は、発症前・前駆期から疾患を同定しうる技術として注目されている。また、脳に蓄積するαシヌクレインを可視化するPET検査も開発されている。これらのバイオマーカーの確立は、早期診断のみならず、疾患の生物学的病期分類や層別化を可能とし、疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)の研究を推進する際に適切な対象集団の選定に直結する。現在までに、αシヌクレイン病理、神経変性、遺伝背景を統合した新たな分類・病期分類の枠組みが提唱されており、今後の臨床試験や治療戦略の基盤となることが期待される。5 主たる診療科脳神経内科脳深部刺激療法を行う場合は脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本神経学会 パーキンソン病診療ガイドライン2018(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター パーキンソン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報) 1) Bloem BR, et al. Lancet. 2021;397:2284-2303. 2) Armstrong MJ, et al. JAMA. 2020;323:548-560. 3) Ben-Shlomo Y, et al. Lancet. 2024;403:283-292. 4) Hatano T, et al. J Mov Disord. 2024;17:127-137. 5) Postuma RB, et al. Mov Disord. 2015;30:1591-1601. 公開履歴初回2026年2月13日

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てんかん重積状態に対するジアゼパム点鼻液の利点

 てんかん重積状態(status epilepticus:SE)においては迅速な対応が予後を左右する。新たに登場したジアゼパム点鼻液(商品名:スピジア)が病院前治療にいかなる変革をもたらすのか、3人の専門家が紹介。迅速な発作終息がもたらす神経学的予後の改善と、患者・家族のQOL向上に向けた新たな可能性が示された。薬剤抵抗性てんかんの危険性 日本のてんかん患者は42万例と推定されるが、文献などによれば100万例にのぼる可能性がある。その中で、抗てんかん薬でも発作をコントロールできない薬剤抵抗性患者は20~30%いるとされる。てんかん発作の中でもSEは、「発作がある程度の長さ以上に続くか、または、短い発作でも反復し、その間の意識の回復がないもの」と定義される。SEの中でも5分以上持続するケースは治療対象となり、30分以上持続するSEでは高次脳機能障害、運動障害など深刻な後遺障害のリスクがきわめて高くなる。小児における重積化阻止と早期終息の重要性 国立精神神経医療センターの中川 栄二氏は、SEへの移行を未然に防ぎ、発作を早期に終息させることが、神経学的予後を改善するための最重要戦略であると述べた。 消防庁の報告では入電から医師への引継ぎまでに30分以上要した例は8割。 SEによる後遺症を回避するうえでも、医療機関に着く前の介入(病院前治療)は必要だ。小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023においても病院前治療の必要性が明記されている。 病院前治療としてのレスキュー薬の現状は満足できるものではない。現在のレスキュー薬はジアゼパム坐剤、ミダゾラム口腔用剤、抱水クロラールの坐剤/注腸である。しかし、発作時すぐに使えないなどの問題があり、使用後に救急搬送が必要になる場合も少なくない。簡便に投与でき、効果発現が早く、副作用が少なく、長時間作用を有するレスキュー薬が求められていた。 そのような背景の中、ジアゼパム点鼻液が承認された。点鼻液という特性から発作時にも投与しやすい。同剤は点鼻投与でありながら97%という生体利用効率を示し、非侵襲的で確実な血中濃度の立ち上がりを実現している。 小児患者における臨床試験では良好な成績も示されている。抗てんかん薬使用中も発作を発症した、あるいはジアゼパムによる発作抑制が必要な患者において、初回投与時の奏効率(発作抑制割合)は62.5%、1週以降24週後までの奏効率は80.2%にのぼった。けいれん発作消失までの時間中央値は1.5分で、5〜10分という坐剤の効果発現を考えると臨床的意義は大きい。ジアゼパム点鼻液の治療患者におけるSEの再発抑制は9割を超えていた。有害事象についても口腔用液で懸念される呼吸抑制のような重篤なものは認められておらず、医療機関外での使用における安全性も示されている。 近年、SE移行リスクのある発作に対する迅速介入の治療概念として「FAST(First Aid Seizure Termination)」が提唱されている。「迅速な効果発現と長時間持続を併せ持つジアゼパム点鼻液は新たなFAST治療薬」と中川氏は期待を寄せる。成人のSEにおけるジアゼパム点鼻液の可能性 獨協医科大学の藤本 礼尚氏は、成人てんかん患者のSE治療においてジアゼパム点鼻液の早期介入の可能性を訴えた。 てんかんは小児だけでなく成人にも多い。SEによる死亡率は成人でも高く、日本では8.5%、米国では20%を超えるという報告もある。前述のように現状の救急搬送は30分を超えており、てんかん治療ガイドラインによる5分以内のSE治療開始は困難だ。この「空白の時間に脳損傷が進行してしまうリスクがある」と藤本氏は警鐘を鳴らす。 成人のSEについても日本のレスキュー薬は十分とは言えない。海外ではSEに対する病院前治療の選択肢は豊富だが、日本の成人に対する保険適用は坐剤のみであった。成人の衣服を脱がせて坐剤を投与することはきわめて困難であり、成人SEに対するレスキュー治療の新たな選択肢が求められていた。 ジアゼパム点鼻液は成人にも使用可能であり、臨床試験でも有望な成績を示す。海外の成人を含む臨床試験の結果、作用発現までの時間は2分、発作停止までの時間は4分(いずれも中央値)であった。患者調査では約8割が2時間以内に普段の状態に戻ったと回答している。 「成人てんかんも救急搬送に頼らないで発作対応を目指すべき。将来は海外と同様に救急救命士がレスキュー薬を使用できることが望まれる」と藤本氏は述べる。患者・家族の視点から見たジアゼパム点鼻液の可能性 ドラベ症候群患者家族会の黒岩 ルビー氏は、ジアゼパム点鼻液による早期の発作終息は、不必要な救急搬送を回避し、患者とその家族のQOLを改善すると期待を示した。 ドラベ症候群は乳幼児期からてんかん重積発作を繰り返す希少・難治性のてんかんである。同家族会のアンケートでは、SEによる救急要請の回数は、11~20回が3割弱、31回以上は2割という結果であった。SE後の急性脳症発症を経験した割合は17%、その72%は後遺症を有している。 「元気だった子が、突然一生残る重度の障害を負うリスクがある」と黒岩氏は懸念する。また、頻繁な救急搬送や夜間発作が家族の慢性的な不安やうつ状態を招いてしまう。 ジアゼパム点鼻液により、てんかん発作の遷延を防ぐことができる。 さらに救急搬送が回避できることで、病院から離れられない生活から解放される可能性がある。とはいえ、発作はいつどこで起きるか予測ができない。家族と離れている保育園、学校、施設などにおいても点鼻薬のような簡便な手段があれば、職員の手で迅速な救護が可能となる。「そういった環境を整備していくことが重要だ」と黒岩氏は訴えた。

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月経血によるHPV検査、子宮頸がん検診に有望/BMJ

 Grade2/3以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2+/CIN3+)の検出において、ミニパッドで採取した月経血を用いたヒトパピローマウイルス(HPV)検査は、医師が採取した子宮頸部検体による検査との比較において同等の診断精度であることが、中国・華中科技大学のXun Tian氏らによる地域住民を対象とした研究で示された。月経血を用いたHPV検査は子宮頸がん検診の非侵襲的な代替手段として有望視されており、パイロット研究では医師が採取した子宮頸部検体とHPV遺伝子型の高い一致率が報告されているが、エビデンスは限定的であった。著者は、「本研究の結果は、月経血検体によるHPV検査を子宮頸がん検診ガイドラインに組み込むことを支持するものである」とまとめている。BMJ誌2026年2月4日号掲載の報告。3つの検体でCIN2+/CIN3+検出の診断精度を比較 研究グループは、2021年9月~2025年1月に、中国・湖北省の7地域(都市部4地域、農村部3地域)において、適格基準を満たした月経周期が規則的な20~54歳の女性3,068例を対象に前向き研究を実施した。 参加者から3種類の検体、すなわち、HPV検査用ミニパッドを用いた月経血検体(3ヵ月以内に参加者自身が採取して中央検査室へ直接郵送)、HPV検査用子宮頸部検体およびThinPrep細胞診用子宮頸部検体(医師採取)を採取した。 いずれかの検体でHPV陽性、または細胞診で意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)以上の判定であった場合はコルポスコピーによる生検を実施し、病理組織学的にCIN2+またはCIN3+を確定させた。 主要評価項目は、CIN2+およびCIN3+検出の診断精度であった。月経血検体によるHPV検査の感度は94.7%で、医師採取の子宮頸部検体検査と同等 CIN2+検出の感度は、ミニパッド採取検体を用いたHPV検査が94.7%(95%信頼区間[CI]:80.9~99.1)、医師採取検体によるHPV検査が92.1%(77.5~97.9)、細胞診検査が78.9%(62.2~89.9)であり、ミニパッドによるHPV検査は医師採取検体のHPV検査と同等の感度を示し(p=1.00)、統計学的有意差は認められなかったものの細胞診検査よりポイント推定値は高かった(p=0.11)。 CIN2+検出の特異度については、ミニパッドによるHPV検査は医師採取検体のHPV検査より低かったが(89.1%[95%CI:88.0~90.2]vs.90.0%[88.9~91.1]、p=0.001)、陰性的中率は同等であり(99.9%[95%CI:99.7~100.0]vs.99.9%[99.7~100.0]、p=1.00)、陽性的中率(9.9%[95%CI:7.1~13.5]vs.10.4%[7.4~14.3]、p=0.82)およびスクリーニング効率(10.1 vs.9.6、p=0.82)も同等であった。 CIN3+検出に関しても、感度、特異度、陰性予測値、陽性予測値およびスクリーニング効率のいずれもCIN2+検出と同様の結果であった。

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がん患者の急性冠症候群、6ヵ月転帰を予測する新スコア/Lancet

 がんを有する急性冠症候群(ACS)患者の全死因死亡、大出血および虚血性イベントを予測するONCO-ACSスコアが開発され、臨床的に有用で実用的なツールであることが、英国国民保健サービス(NHS)イングランドのFlorian A. Wenzl氏らによる、イングランド、スウェーデンおよびスイスの国民医療データを用いたモデル開発・検証研究の結果で示された。がんを有するACS患者における死亡、出血、およびアテローム血栓症リスクの正確な評価は、新たな個別化治療戦略の策定に役立つ可能性があるが、この目的のために標準化されたツールは存在していなかった。Lancet誌2026年1月31日号掲載の報告。3ヵ国のACS患者約102万例のデータを用いて予測モデルを開発・検証 研究グループは、国民医療データを用いて2004年1月1日~2023年8月8日にACSを呈した101万7,759例のコホートを作成し、ACS発症前5年以内にがんの既往または現病歴を有する患者(がん患者)と、いずれもない患者(非がん患者)に層別化した。解析対象の内訳は、イングランド81万5,170例(うち、がん患者3万6,771例)、スウェーデン19万4,059例(がん患者1万262例)、スイス8,530例(がん患者203例)であった。 まず、イングランドのがんを有するACS患者群(中部地域の患者を除く3万1,193例)のデータを用いてONCO-ACS予測モデル(全死因死亡、大出血、虚血性イベント)を開発した。主要アウトカムは、ACSで入院後6ヵ月時までの、全死因死亡、大出血イベント、および虚血性イベント(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合イベントの初回発生)で、機械学習アルゴリズムのeXtreme Gradient Boosting(XGBoost)を用いて予測モデルを構築した。大出血および虚血性イベントの解析では、それぞれ非出血関連死と非虚血関連死を競合リスクとして扱った。 最終モデル(ONCO-ACSスコア)には、11項目の入院時変数(腫瘍タイプ、がん診断からの期間、転移性疾患、年齢、ヘモグロビン、心拍数、eGFR、BMI、Killip分類、心停止、入院前6ヵ月以内の大出血)を組み込んだ。 続いて、モデル性能を6ヵ月時点の時間依存ROC曲線下面積(tAUC)を用いて評価するとともに、イングランド中部地域(5,578例)、スウェーデン(1万262例)、およびスイス(203例)のがんを有するACS患者群においてモデル性能の外部検証を行った。ONCO-ACSスコアは臨床的に応用可能 がんを有するACS患者は、死亡率(累積発生率27.8%、95%信頼区間[CI]:27.3~28.3)、大出血イベント(7.3%、95%CI:7.0~7.5)、虚血性イベント(16.1%、15.7~16.4)の発生率が高く、明確なリスクプロファイルを有していた。 従来のリスク因子およびがん関連リスク因子を考慮した内部検証において、ONCO-ACSスコアの6ヵ月時のtAUCは、全死因死亡で0.84(95%CI:0.83~0.85)、大出血イベントで0.70(0.68~0.73)、虚血性イベントで0.79(0.78~0.81)であった。 外部検証においても同様の性能が確認され、全死因死亡のtAUCはイングランド中部で0.84(95%CI:0.82~0.85)、スウェーデンで0.80(0.79~0.82)、スイスで0.83(0.76~0.91)、大出血イベントでそれぞれ0.70(0.67~0.74)、0.67(0.65~0.70)、0.74(0.57~0.91)、虚血性イベントで0.76(0.74~0.78)、0.70(0.69~0.72)、0.73(0.61~0.86)であった。 ONCO-ACSは良好なキャリブレーションを示し、決定曲線分析により好ましい臨床的有用性が示唆された。また、ONCO-ACSを現在のガイドラインに適用すると、がんを有するACS患者のほとんどが、侵襲的治療およびクロピドグレルを用いた長期の2剤併用抗血小板療法の対象となることが示唆された。

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気圧の変化は片頭痛の重症度や頻度に関係しているのか?~メタ解析

 片頭痛は、最も一般的な神経疾患の1つであり、悪心・嘔吐、羞明、音恐怖、感覚・視覚障害などの症状を伴う頭痛発作を特徴とする疾患である。気象条件などのさまざまな因子が潜在的な片頭痛の誘発因子であると考えられている。グレナダ・St. George's UniversityのAbduraheem Farah氏らは、気圧変化が片頭痛の重症度、頻度、持続時間に及ぼす影響を調査した既存エビデンスを評価し、統合することを目的として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Cureus誌2025年11月14日号の報告。 本システマティックレビューは、PRISMAガイドラインに準拠し、実施した。適格基準を定め、PubMed、SCOPUS、EMBASE、CINAHLより包括的に検索した。関連研究をスクリーニングし、事前に定義されたスプレッドシートを用いてデータを抽出した。研究の質とバイアスのリスクは、NIHの観察研究、コホート研究、横断研究のための品質評価ツールを用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・特定された研究979件のうち、包含基準を満たした14件(1.4%)の2,696例(11〜70歳)を分析に含めた・対象者の2,372例(87.9%)は女性であった。・多くの研究は成人を対象としており、特定の地域で実施されていた。・すべての研究で主要な曝露として気圧が検討されていた。しかし、気圧変化の測定方法、片頭痛の重症度、時期、データソースは、各研究により大きく異なっていた。・結果の一貫性は認められなかった。しかし、いくつかの研究では、気圧の低下または急激な変動と片頭痛の頻度増加との有意な関連が報告されていた。ただし、重症度との関連を認めた研究は少なく、片頭痛の持続期間との関連を特定した研究はなかった。・既存のエビデンスの全体的な質は、測定方法、対象集団の特性、研究デザインにおける異質性など、方法論的な問題や潜在的なバイアスによって制限されていた。 著者らは「気圧の低下または変動と片頭痛の頻度増加との関連を示唆するエビデンスもいくつかあったが、片頭痛の重症度との関連は依然として不明であり、発作持続時間との関連を裏付けるエビデンスも存在しない。気圧の変化と片頭痛の特徴との関係を明らかにするためには、標準化された評価ツールや、より多様性に富んだ大規模な対象集団を用いた質の高い研究が求められる」としている。

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静脈血栓塞栓症における抗凝固薬の継続は出血リスクの増加はあるが、再発リスクの低下の効果が大きい(Target Trial Emulation:TTEによる検討)(解説:名郷直樹氏)

 誘因のない静脈血栓塞栓症に対する経口抗凝固療法の継続と中止についてのTarget Trial Emulationが、Kueiyu Joshua Linらにより報告された。Target Trial EmulationはTTEと略されるが、経胸壁心エコー(Transthoracic Echocardiography)のことではない。Target Trial Emulationとは、観察データを使って、仮想的なランダム化臨床試験を模倣する方法論である。 まず、『日本循環器学会/日本肺高血圧・肺循環学会合同ガイドライン2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン』ではどうなっているか。「誘因のない中枢型DVT(unprovoked 中枢型DVT)に対し,出血リスクが高くない場合には,中枢型DVTの治療および再発予防のための長期の抗凝固療法として,低用量DOACが使用できるなら可及的長期の抗凝固療法を行うことを考慮してもよい」とクラスIIbで推奨されている。しかし、その根拠となる文献の引用は記載されていない。 では、論文のPECO(Patient、Exposure、Comparison、Outcome)と結果を見てみる。誘因不明の静脈血栓塞栓症があり、初回治療後少なくとも90日間経過した患者において、治療継続群と中止群を比較し、主要アウトカムは、入院を要する再発性VTE、入院を要する大出血である。中止群は、初回90日間の治療後、30日以内に処方がないものと定義された。まず、結果である。治療継続群を治療中止群と比較して、再発性VTEの発生率が著しく低く信頼区間も狭い(調整ハザード比:0.19、95%信頼区間:0.13~0.29)。大出血発生率の上昇(ハザード比:1.75、95%信頼区間:1.52~2.02)、死亡率の低下(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.69~0.79)が認められた。転倒などの出血リスクが低ければ、継続が妥当かもしれない。 次に、TTEにおける批判的吟味を進める。TTEの想定されるランダム化比較試験を模倣する手順は次の7つである。対象患者抽出の適格基準、比較対照となる治療戦略、割付手順、追跡期間、アウトカム、解析方法(交絡因子の調整、ITT、PPS)、解析計画である。とくに、比較対照となる治療戦略、割付手順、解析方法が問題になる。それぞれ、Immortal time biasへの対応と交絡因子の調整などを確認する必要がある。TTEでは介入開始と追跡期間が不一致となる可能性があり、イベントが調査されない期間が含まれる。その期間が解析に含まれると、介入の効果を過大評価してしまう。それをImmortal time biasと呼ぶ。 この研究では、Immortal time biasを回避するため、治療戦略が割り当てられる時点と追跡開始時点(Time zero)を一致させるように設計されている。Time zeroを中止群は抗凝固薬中止日とし、対応する継続群は同じ暦日を割り当てたと記載がある。Time zeroが明確で、Immortal time biasを回避する対応がなされている。 交絡の調整であるが、プロペンシティスコア・マッチングを行い、背景をそろえているが、貧血や転倒の既往は調整されているものの、直前のHb低下傾向や転倒リスクなどの調整は行われていない。抗凝固薬導入後貧血の進行があれば、抗凝固薬を中止することもある。転倒リスクが高いなどの理由で抗凝固薬を中止することも多い。継続群のDOACの用量やワーファリン使用時の目標INRも不明である。TTEではデータベースにない因子を調整することができないという大きな問題がある。ただこうした未知の交絡因子のリスクはあるが、再発リスクをハザード比の95%信頼区間の上限でも0.29まで少なくするという大きな効果を覆すほどの大きな影響はないかもしれない。また現実の患者に利用する際には、アウトカムが入院を要する患者のみに絞られ、外来治療可能な肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症や軽症出血が除外されている。外来患者など再発リスクが低い対象には適用しにくい面がある。 またリスクとベネフィット、再発予防効果と出血リスクのバランスも重要である。この問題を検討するためにLHHという指標がある。Likelihood of Harm to the Patientといい、治療の「害が生じる可能性」を示す医療統計の用語である。計算式はLHH=(1/NNT)÷(1/NNH)である。LHH>1で治療が推奨される。NNT 39、NNH 209のため、LHHは5.36になり、1を大きく超える。一般的には治療推奨になる。しかし血栓症の再発と大出血では重みが異なる。その重みを考慮すると、LHH=(1/NNT)×S÷(1/NNH)(Sは有害事象の重み)になる。一般的に出血のほうが致死的になることが2倍と仮定すると、さらにLHHは小さくなるがそれでも1より大きい。上記のような批判的吟味のポイントはあったが、続けられない理由がない限り、基本的には抗凝固薬継続がいいのかもしれない。

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コルヒチンによる死亡例発生、適正使用を呼びかけ/PMDA

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は2月6日、「痛風発作の緩解及び予防」および「家族性地中海熱」の効能・効果を有するコルヒチン錠(商品名:コルヒチン錠0.5mg「タカタ」)の適正使用のお願いを、同機構ホームページの「製薬企業からの適正使用等に関するお知らせ」で公開した。 2026年1月31日までに国内において、承認された用法・用量の範囲(1.8mg)を超える高用量を投与後に死亡に至った症例が報告されたことから、改めて添付文書の「効能又は効果」および「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」などの関連項目を確認するとともに、下記の留意点を踏まえ適正に使用するよう呼びかけている。<留意点>――――――――――――――●コルヒチンの1日量1.8mgを超える高用量投与により、重篤な中毒症状(胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害など)をきたし、死亡に至る可能性があります。●1日量1.8mgを超える用量については、臨床上やむを得ない場合を除き投与は避けてください。●「痛風発作の緩解」の目的で本剤を使用した場合は、疼痛が改善したら速やかに中止してください。●患者が自身の判断で1日量3錠を超える用量を服用しないよう指導してください。――――――――――――――――――― また、本剤の禁忌(肝臓または腎臓に障害のある患者で、肝代謝酵素CYP3A4を強く阻害する薬剤またはP糖蛋白を阻害する薬剤を服用中の患者)についても併せて注意喚起した。添付文書での痛風発作緩解の1日量 添付文書における「痛風発作の緩解」の場合の用法及び用量は「1日3~4mgを6~8回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する」とされているが、用法及び用量に関連する注意において「投与量の増加に伴い、下痢等の胃腸障害の発現が増加するため、1日量は1.8mgまでの投与にとどめることが望ましい」と記載されている。 なお、高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2022年追補版)でも「低用量コルヒチン投与法が推奨される」および「コルヒチンは発症12時間以内に1mg、その1時間後に0.5mgを投与する」と示されている。

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第281回 インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省 5.医療保険改革で高額療養費を見直し加速、負担上限を「2年ごと検証」へ/政府 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省2月6日に厚生労働省は、1月26日~2月1日の第5週に全国約3,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が1医療機関当たり30.03人となり、警報基準(30人)を超えたと発表した。前週比の約1.8倍で4週連続の増加となり、患者総数は11万4,291人に達した。今シーズンは1度警報水準を下回った後に再び増加しており、1季で2度警報レベルに達するのは少なくとも過去10シーズンで初めてとされる。都道府県別では大分県52.48人、鹿児島県49.60人、宮城県49.02人、山梨県46.97人、千葉県46.08人など22県で警報基準を上回った。その一方で、香川県8.61人、鳥取県9.45人、北海道10.33人は比較的低水準だった。ウイルス型はA型56%、B型44%で、年明け以降はB型の検出割合が増加し、流行再拡大の一因とみられている。B型は学校など集団生活で小児を中心に広がりやすく、嘔吐や下痢など消化器症状を伴う例も報告される。重症例として脳症や筋炎後の腎機能障害がまれに生じうるため注意が必要となる。休校・学級閉鎖は約6,200校に増加した。なお、新型コロナウイルス感染症の定点報告も前週比25%増の2.49人と上昇している。厚労省はマスク着用、手指衛生、換気など基本的対策の徹底を呼びかけ、今後1~2週間は患者増加が続く可能性があるとして警戒を促している。 参考 1)インフルエンザ患者数 前週の倍近くに増加 B型 半数近く占める(NHK) 2)全国インフル定点報告 前週の1.8倍に 1月26日-2月1日(CB news) 3)コロナ新規感染者 前週比25%増 1月26日-2月1日(同) 4)インフルエンザ、再び警報水準に 2度の警報は過去10シーズンで初(日経新聞) 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省厚生労働省は2026年度の診療報酬改定で、在宅医療を「量の拡大」から「必要性に見合う質と適正化」へ転換する方針を示した。1月30日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で提示された個別改定項目では、通院可能にもかかわらず頻回の訪問診療を受けるケースや、高齢者住宅に併設・隣接する訪問看護ステーションが同一建物内で短時間に多数利用者を回ることで報酬が膨らむような過度な同一建物対応に歯止めをかける。訪問診療では、在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の高い評価を、末期がんや要介護度の高い患者を一定割合以上診療する医療機関に限定し、医療・介護ニーズの低い患者への頻回訪問を抑制する。24時間往診体制の評価も、自院での実働体制や連携・委託の関与度に応じてメリハリを付ける。看取り実績の高い在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の評価は「在宅医療充実体制加算」へ再編し、地域の24時間体制を面的に支える往診時医療情報連携加算の対象も拡大する。また、訪問看護では、同一建物居住者への評価を細分化し、人数が多い区分は月内訪問日数で段階化、20分未満は算定不可とする。さらに併設・隣接ステーションが高齢者住まいに頻回提供する場合、利用者数と1日当たり提供時間に応じた「包括型訪問看護療養費(1日定額)」を新設し、同日の回数増で報酬が伸びにくい仕組みとする。その一方で、情報通信技術(ICT)による情報共有を評価する訪問看護医療情報連携加算など質向上策も導入する。背景には同一建物での訪問看護急増や高収益事例への問題意識がある。運営基準では値引き誘引や紹介対価、特定施設への誘導を禁止し、安全管理と記録の正確性を求める。事業継続計画(BCP)策定や残薬管理、電子処方せん活用も要件化される。詳細は告示・通知待ちだが、契約・記録・連携体制の再点検が急務となる。 参考 1)個別改定項目について(厚労省) 2)在宅医療「もうけすぎ」にメス 診療報酬見直し、高齢者囲い込み防止(日経新聞) 3)2026年度診療報酬改定でも、「適切な形の在宅医療」が量・質の双方で拡大することを目指した対応図る(Gem Med) 4)訪問看護ステーションが隣接等の高齢者住まい居住者に行う訪問看護を「1日当たり包括」療養費で評価(同) 5)在宅医療巡り病院・診療所にBCP策定義務化へ…厚労省、災害時の地域連携促す(読売新聞) 6)高齢者住まい等への頻回訪問に包括評価を導入(日経メディカル) 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省2026年度診療報酬改定で、厚生労働省は病院の看護配置基準を「人手不足への救済」と「医療DXによる業務量削減」を前提に柔軟的な設定とする。突発的な欠員で夜勤時間などが一時的に基準から外れても、超過が1割以内で3ヵ月を超えない場合は、入院基本料などの施設基準の変更届を不要とする方向で、感染症対応の特例を人材不足にも広げ、恒久化も視野に入れる。対象は平時からハローワークや都道府県ナースセンターなどの公的紹介を活用し、求人票の提示など採用努力を行う医療機関とし、民間紹介会社の高額手数料による経営圧迫も抑えたい考え。加えて、見守り、記録作成、職員間情報共有などでICT機器を病棟で広く活用し、超過勤務が平均10時間以下で増加傾向がないこと、導入前後の業務量評価・安全配慮、調査への協力など複数の要件を満たす場合、看護要員数や看護師比率等を「基準の9割以上(最大1割減)」でも基準充足と扱い、急性期一般入院料や7対1・10対1、地域包括医療病棟、緩和ケア病棟などに適用する方針。さらに医師事務作業補助者も、生成AIによる退院サマリー・診断書・紹介状などの原案作成、音声入力、RPA、説明動画活用などを条件に、配置要件の見直し(緩和)も検討する。急性期医療機関では救急搬送・全麻手術件数を要件とする新たな入院基本料(A・B)も構想され、看護必要度は項目追加や救急応需状況の反映で基準見直しが議論されている。看護職は全体では増加傾向でも、病院就業者は減少し、求人倍率も高い。算定要件を満たせず収入が落ちる事態を避け、夜勤負担の軽減と地域医療の持続を図る狙い。看護職就業者は2023年時点で約174.6万人、需要推計は2025年約180.1万人とされ、病院就業者は約98.7万人まで減少。日本病院団体協議会は、ICT前提の緩和と一時救済を歓迎している。その一方で、患者安全と効果検証のデータ提出が求められており、今後、医療現場での投資と運用体制が鍵となる。 参考 1)病院の看護職員、必要数を緩和 人手不足の施設の経営安定後押し(日経新聞) 2)ICT利活用・適切な業務遂行等の厳格な要件を前提として「看護職員や医師事務作業補助者の柔軟配置」を認める(Gem Med) 3)ICT利活用により看護師業務負担が減少、この分の看護配置基準柔軟化は病院団体として歓迎-日病協・望月議長・神野副議長(同) 4)救急・手術件数を評価する急性期病院一般入院基本料を新設(日経メディカル) 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省厚生労働省は2月4日、医道審議会医道分科会の答申を受け、刑事事件で有罪判決を受けるなどした医師16人、歯科医師12人の計28人に対する行政処分を決定した。内訳は免許取消5人、業務停止22人(3ヵ月~2年6ヵ月)、戒告1人で、2月18日に発効する。別途10人には行政指導(厳重注意)が行われた。このうち免許取消は、児童へのわいせつ行為や健診時の盗撮、診療報酬詐欺や脱税などの事案で有罪が確定した医師3人と歯科医師2人。業務停止は収賄、詐欺、薬物関連、暴行・傷害、迷惑行為防止条例違反、道路交通法違反など理由は多岐に及ぶ。2025年12月3日の医道審議会の議事要旨では、医師16件中、免許取消1件、停止3年~3ヵ月の各処分、戒告3件とされたほか、歯科医師7件で免許取消3件、停止7~3ヵ月が答申された。また、元医師1人の再免許付与については適当とする答申は出されなかった。処分は医療への信頼確保を目的とし、医療機関には不祥事の予防とガバナンス、コンプライアンス教育の徹底が改めて求められる。さらに、健診や学校現場での診療行為における倫理遵守、金銭・契約関係の透明化、薬物・交通事案を含む私生活上の法令順守も含め、組織的な再発防止策の整備が重要となる。今回の一連の処分では、刑事有罪事案が中心であり、医師個人の資質管理に加え、採用時のバックグラウンド確認や通報体制の整備など、医療機関側のリスク管理体制の実効性が問われている。 参考 1)医道審議会医道分科会議事要旨(厚労省) 2)医師、歯科医師28人処分 免許取り消しや業務停止(共同通信) 3)厚労省、医師・歯科医師28人の処分決定 免許取り消しや業務停止(毎日新聞) 5.医療保険改革、高額療養費を「2年ごと検証」へ 患者自己負担増の時代に/政府政府が検討する医療保険改革法案で、高額療養費制度の患者負担上限を「少なくとも2年ごとに検証」する規定が新設される見通しとなった。医療費総額の抑制を目的に、上限額が定期的に引き上げられる可能性がある一方で、決定に当たっては「長期治療患者の家計影響を考慮する」と明記する。昨年末には上限を来年8月までに最大38%引き上げる方針が示され、給付抑制で保険料負担を軽くする狙いだ。併せて、出産費用の無償化(分娩費の全国一律化と保険適用)や、OTC類似薬に薬剤費25%を上乗せする新制度、75歳以上の金融所得の保険料・窓口負担への反映徹底も盛り込む。こうした「負担と給付」の再設計が進む中、がん医療では費用の見える化が始まった。日本肺癌学会は『肺がん診療ガイドライン(Web版)』の付録に薬物療法別の薬剤費一覧(保険適用前)を掲載した。術後補助療法では、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が月56万円×3年で約2,030万円、アレクチニブ(同:アレセンサ)は月168万円×2年で約4,032万円、アテゾリズマブ(同:テセントリク)は総額902万円、再発小細胞肺がんの二重特異性抗体タルラタマブ(同:イムデトラ)は1年で約3,184万円と示している。推奨度の根拠には用いないが、患者から費用を問われた際の説明材料とし、今後の制度変更で自己負担が増え得る現実を共有する狙いがある。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が、臨床研究の医療経済評価を基本方針化するなど、効果・安全性に加え「費用と持続可能性」を臨床判断に組み込む動きが広がっている。高額療養費は、重い疾患ほど利用頻度が高く、上限の見直しは治療継続や就労、家族介護に直結する。こうした高額な医薬品を用いた医療を提供する医師は、治療選択肢の効果・副作用に加え、想定される自己負担の幅(多数回該当、年間上限など)について患者への説明責任が一段と増す。同時に、薬価・給付の議論は選挙の争点化も進むため、現場から実データを発信しつつ、費用対効果と公平性の両立を問う姿勢が求められる。治療内容のみならず、診療費用の自己負担についての情報提供が、今後いっそう重要になる。 参考 1)高額療養自己負担、2年ごと検証(共同通信) 2)医療保険制度を維持するには 医療費削減で患者が負担? 高額療養費制度の見直しで治療を受けられない恐れも(中日新聞) 3)年収700万円の人なら約3万円の負担増!「高額療養費の見直し」再燃で、8月からどう変わる?(ダイヤモンドオンライン) 4)肺がん診療指針に薬剤費の一覧、数千万円の治療も 見える化の狙いは(朝日新聞) 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター千葉県がんセンターは2026年2月6日、60代男性患者に対し、検査結果の取り違えにより不要な前立腺全摘出手術を行った、医療事故を公表し、患者に謝罪した。事故は2025年に発生。男性は前立腺生検の結果、経過観察が妥当とされていたが、検査を担当した医師が、同日に別患者から得られた悪性度の高い前立腺がんの病理結果を、誤って当該患者の電子カルテに貼り付けた。主治医は、この誤った情報を基に高リスク前立腺がんと診断し、約3ヵ月後に前立腺全摘出および骨盤内リンパ節切除を実施した。手術後、摘出組織の病理所見がカルテ記載と大きく異なることに主治医が気付き、調査の結果、検査結果の取り違えが判明した。患者の身体には手術に起因するとみられる影響が出ているが、詳細は公表されていない。病院は賠償について協議中としている。その一方で、検査結果を誤って外された別患者には、主治医が原本確認を行っており、治療への影響はなかった。同センターでは、11年前にも乳がん検査結果の取り違えによる誤切除事故が発生しており、再発防止が課題となっていた。病院は外部委員を含む医療安全調査委員会を設置し、電子カルテへの検査結果貼付時の患者確認、主治医による原本確認の徹底など、原因究明と再発防止策を検討するとしている。 参考 1)千葉県がんセンターにおけるアクシデントの発生について(千葉県) 2)検査結果取り違え前立腺摘出 電子カルテ誤追記、千葉県がんセンター(朝日新聞) 3)千葉県がんセンター 検査結果取り違え不必要手術 患者に謝罪(NHK) 4)千葉県がんセンター、誤って前立腺摘出 60代男性を別患者と取り違え(日経新聞)

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