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非保護左冠動脈主幹部病変のPCI、超音波ガイドvs.造影ガイド/NEJM

 非保護の左冠動脈主幹部病変を有する患者に対する冠動脈血行再建術では、近年、解剖学的な複雑性が軽度~中等度の場合は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が、冠動脈バイパス術(CABG)の許容可能な代替法として確立しているが、ステントの適切な拡張、血管壁への圧着、病変の被覆など長期的な転帰に影響を及ぼす可能性のある技術的な課題が残されているという。イタリア・IRCCS Policlinico San DonatoのLuca Testa氏らは「OPTIMAL試験」において、血管内超音波(IVUS)ガイド下PCIは従来の血管造影ガイド下PCIと比較して、良好な臨床アウトカムをもたらすかについて評価した。NEJM誌オンライン版2026年3月30日号掲載の報告。欧州3ヵ国の研究者主導型無作為化優越性試験 OPTIMAL試験は、イタリア、スペイン、英国の28施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化優越性試験(Philips Image Guided Therapy DevicesとBoston Scientificの助成を受けた)。 2020年7月~2023年6月に、年齢18歳以上、50%以上の狭窄を伴う非保護の左冠動脈主幹部病変を有し、PCIの適応とされ、中等度~重度の虚血とともに、ガイドラインに基づく内科的治療を行っても症状を認める患者を登録した。 被験者を、診断目的の冠動脈血管造影で適格性を確認した後、ガイドワイヤー挿入前に、IVUSガイド下PCIまたは血管造影ガイド下PCIを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、最長の追跡期間における脳卒中、心筋梗塞、血行再建術、全死因死亡から成る患者指向型の複合エンドポイントとした。患者指向型の主要複合エンドポイント、33.7%vs.30.9%で有意差なし 806例(平均[±SD]年齢71.4[±10.7]歳、男性78.4%、糖尿病34.7%)を登録し、IVUSガイド下PCI群に401例、血管造影ガイド下PCI群に405例を割り付けた。原疾患の発生率の内訳は、非ST上昇型心筋梗塞が39.1%、不安定狭心症が10.1%、慢性冠症候群が50.8%であり、平均SYNTAXスコアは29.7(±12.6)点(中等度~高度の解剖学的複雑性)だった。 追跡期間中央値2.9年の時点において、患者指向型複合エンドポイントのイベントは、IVUSガイド下PCI群で135例(33.7%)、血管造影ガイド下PCI群で125例(30.9%)に発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[CI]:0.87~1.42、p=0.40)。 また、デバイス関連複合エンドポイント(心血管死、標的血管心筋梗塞、臨床的に必要と判断された標的病変の再血行再建術)(IVUSガイド下PCI群22.4%vs.血管造影ガイド下PCI群20.5%、HR:1.10、95%CI:0.82~1.49)、血管関連複合エンドポイント(心血管死、標的血管心筋梗塞、標的血管再血行再建術)(24.2%vs.21.5%、1.14、0.85~1.52)、全死因死亡(15.7%vs.15.1%、1.06、0.74~1.50)は、いずれも両群間に有意差がみられなかった。手技関連・安全性イベントにも差はない 心筋梗塞(IVUSガイド下PCI群11.2%vs.血管造影ガイド下PCI群10.9%、HR:1.04、95%CI:0.68~1.57)、再血行再建術(12.0%vs.11.1%、1.10、0.73~1.65)の発生率も両群で同程度であり、ステント血栓症(definite:0.7%vs.0.2%、3.07、0.32~29.53/probable/definite:2.0%vs.0.7%、2.73、0.72~10.27)の頻度にも有意な差はなかった。 手技関連イベントや全般的な安全性イベント、重篤な有害事象の発生についても、両群間に有意差を認めなかった。熟練施術者に血管内画像は不要の可能性 著者は、「1件の先行試験では、IVUSは施術者の経験が少ないほうが有益性は高いことが示されているが、本試験の参加施設の施術者は豊富な専門知識を持ち、左冠動脈主幹部PCI施行中は、もとよりIVUSに基づいて確立された血管造影アルゴリズムを順守するとともに、厳格な手技基準と最新のステントプラットホームを用いたことが、両群間のアウトカムの潜在的な差異を縮小した可能性がある」としている。 また、「本試験の結果は、左冠動脈主幹部の狭窄にPCIを行う際は、常に冠動脈内の画像によるガイドを使用すべきとの要件に異議を唱えるものであり、症例数の多い施設で熟練のIVUS施術者が処置を行う場合は、血管造影単独でも十分に適切である可能性を示唆する」と指摘している。

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中等度慢性腎臓病(CKD)の腎機能の経過の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者が必要(解説:浦信行氏)

 糸球体濾過率(GFR)の正確な評価にはイヌリンクリアランスや125I-イオサラメートクリアランスが必要であるが、日常臨床では方法の煩雑さや放射性同位元素の取り扱いなどで現実的にはほぼ困難である。したがって、クレアチニンやシスタチンCを用いた推算値(eGFR)が算出されるが、結果の即時性からクレアチニンによるeGFRが一般的に用いられている。 英国のバーミンガム大学を中心とした多施設共同研究で、正確な腎機能変化の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者を用いた方法が優れることを3年間の前向き研究で明らかにした。詳細な報告はCareNet.comの2026年4月2日掲載の解説を参照されたい。中等度CKDのクレアチニンとシスタチンCを半年ごとに測定し、Log変換した値を用いてeGFRの3年間のスロープを評価した結果、クレアチニンとシスタチンC各々で評価した値よりは両者を併用した値が、基準値であるイオヘキソールを用いたGFRにより近似していたとの報告である。両者を同時評価することの重要性を示唆している。日本腎臓学会でも、評価方法は異なるが両者を用いたeGFRの同時評価を先行して行ってイヌリンクリアランスと対比し、2012年のCKD診療ガイドラインに両者の平均eGFRの正確度が高いと報告している。しかし、両者の平均値で評価するのも症例によっては限界がある。この研究の対象は58.1~73.6歳で平均67.1歳である。日常臨床で75歳以上の高齢者では自力で元気に外来通院する症例もいるが、一部に自力歩行に難渋するか不可能な症例も少なからずいる。サルコペニアなどによりクレアチニンでのeGFR計算値が極端に高値の場合も珍しくない。両者の併用の意義は理解できるが、症例の病態やADLを考慮した評価も念頭に置く必要があると考える。

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胃がん周術期、デュルバルマブ+FLOTは日本人でも有効性を再現(MATTERHORN)/日本臨床腫瘍学会

 MATTERHORN試験は、切除可能な胃がん/胃食道接合部がん患者を対象に、周術期のデュルバルマブ+FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法の有用性を検討した試験である。昨年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で、デュルバルマブ+FLOT群がプラセボ+FLOT群と比較して無イベント生存期間(EFS)、病理学的完全奏効(pCR)、全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告され、欧米の多くの国ではすでに標準治療となっている。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のPresidential Sessionで愛知県がんセンターの室 圭氏が本試験の日本人集団の結果を報告した。・国際共同二重盲検ランダム化第III相試験・対象:切除可能なStageII~IVA期局所進行胃がん/食道胃接合部がん 948例・試験群:術前FLOT(2サイクル)+デュルバルマブ1500mgを併用、術後FLOT(2サイクル)+デュルバルマブ、その後デュルバルマブ単剤を最大10サイクル(D+FLOT群)474例・対照群:デュルバルマブに代えてプラセボ投与(FLOT群)474例・評価項目:[主要評価項目]EFS[副次評価項目]OS、pCR、安全性など・データカットオフ:2024年12月20日 既報の主要な結果は以下のとおり。・D+FLOT群はFLOT群と比較して、統計学的に有意なEFSの改善を示した(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86)。・EFS中央値はD+FLOT群は未到達(95%CI:40.7~未到達)、FLOT群で32.8ヵ月(95%CI:27.9~未到達)だった。2年EFS率は、D+FLOTでFLOT群よりも高かった(67%対59%)。・OS中央値は、両群とも未到達であった(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.025)。・pCR率はD+FLOT群で19.2%、FLOT群で7.2%だった。・Grade3/4の有害事象の発現率は両群で類似していた。 日本人集団の解析結果は以下のとおり。・全体集団の20%がアジア人で、うち日本人は86例(D+FLOT群:40例、FLOT群:46例)だった。それぞれ38例対42例が手術を完了し、35例対39例がD+FLOT群およびFLOT群で補助療法を開始した。・全体集団同様に、D+FLOT群はFLOT群と比較してEFSを改善(HR:0.32、95%CI:0.13~0.72)し、24ヵ月EFS率はD+FLOT群で84.1%、FLOT群で54.5%であった。EFS改善は年齢、PD-L1発現率などいずれのサブグループでも共通していた。・pCRは、D+FLOT群で17.5%、FLOT群で6.5%であった(オッズ比:2.98、95%CI:0.71~12.43)。・OSも、D+FLOT群がFLOT群に比べて改善した(ハザード比:0.25、95%CI:0.08~0.63)。・Grade3/4の有害事象はD+FLOT群の85%、FLOTの84.8%で報告された。最も頻度の高いのは好中球減少症(好中球数減少含む)であり、両群で発現率は同程度であった(75.0%対73.9%)。 室氏は「日本人患者における有効性および安全性の結果は全体集団と一致していた。D+FLOT群はFLOT群と比較してEFS、pCR、OSを改善し、安全性のプロファイルは各薬剤と一致していた」とまとめた。 本発表のディスカッサントを務めた国立がん研究センター東病院の坂東 英明氏は「現在の日本の『胃癌治療ガイドライン2025年版』では、“切除可能な進行胃がん・食道胃接合部がんに対する術前補助化学療法については明確な推奨ができない”とされており、本レジメンを臨床導入するにあたってはガイドライン改訂の議論が必要になるだろう。日本国内の多くの施設ではFLOT療法に関する経験が限られているが、日本人サブグループ解析の結果はこのレジメンが十分に管理可能であり、有効性もきわめて高いことを示唆している」とした。 これを受けて室氏は「FLOTの毒性について懸念の声が多いが、予防的にG-CSF製剤を使うことで十分に管理可能だと考える。すでに食道がんで使われているDCF療法のほうが毒性の強いレジメンであり、がん診療連携拠点病院であればFLOTは問題なく投与・管理できるはずだ。胃がん術前療法は各国で異なるレジメンが使われているのが問題だったが、今回の結果を基にD-FLOTに統一されていくことが望ましいと考える。私見になるが、日本人集団のEFSの成績が全体集団より良好だったのは、日本の優れた手術と適切な周術期管理が一因だと考える。日本においても胃がん周術期療法が早期に普及することを期待している」とした。

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『大型血管炎診療ガイドライン』改訂、治療のCQ推奨が新設/日本循環器学会

 大血管炎の高安動脈炎(TAK)や巨細胞性動脈炎(GCA)、そしてバージャー病に関する治療エビデンスや診断基準などをまとめた『2026年改訂版 大型血管炎診療ガイドライン』1,2)が8年ぶりに改訂された。第90回日本循環器学会学術集会(3月20~23日)会期中の3月20日に発刊され、本ガイドラインの研究班長を務めた中岡 良和氏(国立循環器病研究センター研究所副所長/血管生理学部長)が本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において、改訂点などを解説した。CHCC 2012における疾患分類と本ガイドラインで扱う疾患 血管炎は血管壁に炎症を認める疾患の総称で、多臓器を障害するため診療科横断的に多くの専門医の関与が必要とされる領域である。疾患分類は「CHCC 2012 血管炎の分類基準」に基づき、大型血管炎(TAKとGCA)、中型血管炎(結節性多発動脈炎[PAN]、川崎病)、小型血管炎(免疫複合体型小型血管炎、IGA血管炎ほか)3)とされる。一方で、バージャー病はこの分類には記載されていないが、「難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究」4)の大型血管炎臨床分科会の調査対象であること、循環器医が関与する疾患であること、そして前版(2017年版)でも対象範囲としていたことから、本書でも大型血管炎の2疾患とともにバージャー病を対象疾患とした。ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨を設定 今回、本書で取り扱う大血管炎(TAK、GCA)の2疾患は、希少疾患であるもののエビデンス収集という難しい局面を乗り越え、治療レジメンに対する全9項目のクリニカルクエスチョン(CQ)とそれに対する推奨がPart1(診療ガイドライン)の項で取り扱われている。TAKとGCAはいずれもステロイド(グルココルチコイド:GC)により一時的な寛解に至るものの、減量過程で半数以上に再燃がみられるため、GC治療抵抗性症例の治療選択肢を明らかにするため、ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨が設定された。中岡氏は、「システマティック・レビュー(SR)チームがTAKとGCAのRCT論文をMindsのGRADEシステムに準拠した最新研究などのSR結果をガイドライン発刊に先駆けて論文報告した5)。そして、近年ではステロイド治療に加えて、IL-6阻害薬トシリズマブなどが汎用されるようになったため、エビデンスの確実性や益と害について各CQと推奨で言及している」と説明した。 なお、中型血管炎であるPANも循環器医が臨床現場で遭遇する可能性があること、『ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023』での記載がないことを踏まえ、本書第6章で取り上げている。また、バージャー病はPart2(各疾患の基礎と臨床)でのみの取り扱いであることには注意したい。 次に、本書を手に取るうえで理解しておきたい各疾患の特徴を以下のように示す。―――――――――――――――――――【高安動脈炎(TAK)】・病名:高安動脈炎に統一(大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などと呼ばれているため)・患者数:4,642例(2022年度難病受給者証所持者数)・男女比:1対8~9と女性が圧倒的に多い・発症年齢:女性は20歳前後にピーク、男性ははっきりしたピークがない・年齢分布:50代が多い・患者背景:HLA-B52陽性患者が多く、陽性者はグルココルチコイド治療抵抗性症例が多い・合併症:潰瘍性大腸炎罹患者が8%前後存在・地域差:アジアに多く、欧米に少ない【巨細胞性動脈炎(GCA)】・病名:以前は側頭動脈炎、Horton病などが使用されていた・患者数:2,850例(2023年度医療費受給者証所持者数)・男女比:1対2~3で女性がやや多い・年齢分布:50歳以上にみられ、70~80代でピーク・合併症:リウマチ性多発筋痛症が約30~40%にみられる・地域差:欧米に多く、アジアに少ない【バージャー病】・病名:閉塞性血栓血管炎とも呼ばれる・患者数:2,259例(2019年度特定医療費[難病]受給者証所持者数)で、近年減少傾向・男女比:若年発症でヘビースモーカーの男性に好発する・原因:作用機序などは不明だが、喫煙との関連が推察される―――――――――――――――――――TAKでのトシリズマブ併用、GCAの大動脈瘤リスク 上記を踏まえ、TAKの治療について、「治療アルゴリズムでは、まず疾患活動性を評価したうえでステロイド治療を開始する。欧米のガイドラインでは初期から免疫抑制薬を併用することが推奨されているが、本書CQ1(TAKの治療ではどのようなレジメンが有用か?)では、GCの早期減量が必要な症例に対し、トシリズマブ併用を選択肢とする推奨を示した」と強調した。 続いてGCAについて、「全身症状に加え、血管分布に応じて症状が出現する。外頸動脈の領域では血管狭窄に伴い、側頭部の痛み(顎跛行、舌跛行など)がみられる。内頚動脈の領域では失明や脳梗塞の原因になるほか、近年では大動脈瘤などを来すため、循環器領域でも注目されている」と指摘。診断基準は、現状、国内では1990年ACR分類基準が利用されているが、2022年ACR/EULARベースに日本語版の策定を進めているため、従来の1990年ACR分類基準と欧米で用いられている2022年ACR/EULAR分類基準が併記されている。さらに、トシリズマブの適応について「(確定診断ならびに疾患活動性の評価後に)トシリズマブを併用することでステロイドが減量できる点は50歳以上の患者でステロイドによる副作用を回避できるメリットがあるため、治療アルゴリズムにおいて、矢印を太字で示した。なお、昨年のNEJM誌において有用性が示されたJAK阻害薬ウパダシチニブは今回のアルゴリズムには反映されておらず、改めて検討される予定となっている」と説明した。 バージャー病については、「早期診断のため、診断基準の改訂を望む意見が多くあったため、2024年に一度改訂を行っている。本疾患として相違ない症状を呈し、血管画像検査所見が本疾患の特徴と合致し、ほかの疾患と鑑別できれば、診断可能」と解説した。「妊娠・出産」に関するコラムを新設 本書はわが国の大型血管炎の診療レベルを標準化し、日本全国どこにおいても患者が同じような治療を受けられるようにすること、患者の生活の質(QOL)と予後を改善させることを目的とし、大型血管炎の診療に関わる医師、医療専門職および大型血管炎の患者を利用者と想定して作成された。 最後に、今回新たに盛り込まれたコラムのうちTAK患者の妊娠・出産の項目を例に挙げ、「TAKの発症は10~20代の若年女性に多く見られるため、患者に妊娠をすること自体がリスクを伴う現実を伝えることも必要と判断されたため、コラムで妊娠・出産にも触れている。TAKを有する患者では妊娠が禁忌とされていたが、妊娠前に炎症をコントロールすることで妊娠・出産が可能であることや管理の軸について記した」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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尿路結石の再発予防、水分摂取への介入は無効/Lancet

 尿路結石再発予防のための水分摂取を促す行動介入プログラムは、ガイドラインベースのケアと比較して、2年間の追跡期間中、症候性の結石再発を減少させず、尿量増加もわずかだった。米国・セントルイス・ワシントン大学のAlana C. Desai氏らUrinary Stone Disease Network Investigatorsが、アドヒアランス介入に関する無作為化試験の結果を報告した。尿路結石の再発リスク減少のために水分摂取量を増やすことが広く推奨されているが、アドヒアランスが課題となっている。水分摂取量を維持するための介入効果について、これまで十分に試験されていなかった。Lancet誌2026年3月21日号掲載の報告。多要素行動介入群vs.ガイドライン準拠ケア群で症候性結石再発を評価 研究グループは、水分摂取量を増やすことを促す多面的な行動介入プログラムが、対照と比較して尿路結石の再発を減らすかどうかを明らかにする検討を行った。米国の6つの大学医療センターで、12歳以上、尿路結石の既往があり、現行ガイドラインに基づく24時間尿量が少ない被験者を登録した。 被験者は、水分摂取量を増やすことを促すようデザインされた多要素行動介入群、またはガイドラインに準拠したケアを受ける対照群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入は、目標水分摂取量の設定、目標水分摂取量を順守するための金銭的インセンティブ、水分摂取量を増やすことに対する障壁を克服するための健康指導、そして患者の選択に基づくアプローチ(水分摂取量増加を維持するためのテキストメッセージなど)で構成された。 無作為化割り付けは、遠隔的にコンピュータで生成され、治験担当医師、治療担当医師、アウトカム評価者、および判定者はグループ割り付けを知らされなかった。 主要アウトカムは、症候性の結石再発(2年間の追跡期間中の結石排出または結石に対する処置介入として定義)で、ITT集団を対象として解析した。副次アウトカムは、24時間尿量の変化、尿路症状、画像上の新規結石形成または既存結石の増大、および症候性の結石再発・新規結石形成・既存結石の増大の複合などであった。安全性エンドポイントとして、入院を要した低ナトリウム血症を評価した。追跡期間中央値738日時点で症候性の結石再発、介入群19%、対照群20% 2017年10月26日~2022年2月18日に、1,658例が介入群(826例)または対照群(832例)に無作為化された。被験者は、年齢中央値44歳(四分位範囲[IQR]:29~59)、女性が946例(57%)であった。 追跡期間中央値738日(IQR:711~778)時点で、症候性の結石再発は、介入群154例(19%)、対照群165例(20%)で発生した(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.77~1.20)。1,658例のうち1,104例(66.6%)が結石再発患者であった。 24時間尿量は、両群ともベースラインから増加したが、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月時点でいずれも、対照群と比較して介入群で尿量が多かった。 頻尿、尿意切迫および夜間頻尿の尿貯留症状は、介入群では対照群と比較して6ヵ月および12ヵ月時点では多かったが、その後の時点では差はなかった。 ベースラインから試験終了時の画像検査までに、既存結石の2mm以上の増大または新規結石形成について両群間で差は認められず、症候性の結石再発・新規結石形成・既存結石の2mm以上の増大の複合アウトカムについても両群間で統計学的有意差は認められなかった。 入院を要した低ナトリウム血症エピソードは報告されなかったが、無症候性の低ナトリウム血症が介入群12例(1%)、対照群2例(<1%)で報告された。

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AFアブレーション後のDOAC、Apple Watchで服用日数を95%削減/日本循環器学会

 心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション術後において、ガイドラインでは脳梗塞・全身塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア)に基づいて長期的な抗凝固療法の継続が推奨されている1)。しかし、術後にAFが抑制されている患者においても一律に直接経口抗凝固薬(DOAC)を継続することは、出血リスクの増加や医療コストの増大を招く懸念がある。そこで、アブレーション術後の患者において、Apple Watchを用いてAFをリアルタイムで検出することで、必要な時だけDOACを服用する「イベント駆動型」戦略について、安全性と有効性を検証する多施設共同研究「Up to AF Trial」が実施された。その結果、DOACの服用日数を約95%削減しつつ、追跡期間中に脳梗塞や重大な出血イベントは発生しなかったことが示された。3月20〜22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 1にて、大阪大学の須永 晃弘氏が発表した。なお、本結果はCirculation Journal誌オンライン版2026年3月20日号に同時掲載された2)。 本研究は、2023年8月~2024年4月の期間に、関西9施設における前向き単群介入試験として実施された。アブレーション術後3ヵ月以上経過し、洞調律を維持しているCHA2DS2-VAScスコア3以下の患者50例(平均年齢63歳、女性10%)を対象とした。Apple Watchによる30日間の先行モニタリングでAFがないことを確認してDOACを休薬、その後はApple Watchの通知(高心拍または不規則な心拍)や患者自身による心電図(ECG)記録でAFが疑われた場合のみ服用を再開し、7日以内に医師を受診するという「イベント駆動型」プロトコルを採用した。受診の結果、AFが否定されれば再び休薬し、確認されれば試験終了まで服用を継続した。主要評価項目は、追跡期間31~360日目における、従来の継続服用と比較した「DOAC服用日数の削減率」とした。副次評価項目は、全死亡、脳梗塞、全身塞栓症、重大な出血イベント、およびデバイスの不具合とした。 主な結果は以下のとおり。・Apple Watchを用いた心調律モニタリングにより、合計1万5,865人日の観察において、DOAC服用日数は856人日分にとどまり、従来の継続服用群と比較して94.6%(95%信頼区間[CI]:89.8~98.4)削減された。・Apple Watch装着(wear-days)の順守率の中央値は100%(95%CI:99.7~100)に達した。・追跡期間中、死亡、脳梗塞、全身塞栓症、重大な出血イベントは、いずれも発生しなかった。デバイスの不具合によるECG記録不可が1件認められた。・医師の診断を基準としたApple Watch ECGの性能は、感度100%、特異度93.3%、正確度95.8%ときわめて高い値を示した。 本研究の結果、アブレーション術後の低〜中等度リスク患者において、Apple Watchを活用した個別化戦略は、DOACを安全に大幅に削減できる可能性が示された。須永氏は、今回の知見がリスクスコアに基づく静的な管理から、心調律に基づいた「動的な管理」へのパラダイムシフトを促進するものであると指摘した。本研究の限界として、サンプルサイズの少なさや、塞栓症リスクの比較的低い集団を対象としている点に触れ、今後より大規模な無作為化比較試験による検証が必要であると結論付けた。 日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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乳がんオリゴ転移、今わかっていること・いないこと/日本臨床腫瘍学会

 乳がんオリゴ転移については、手術や放射線療法などの局所療法が検討されるが、その有効性についての報告は多くが後方視的検討であり、どのような患者にどの治療を選択すべきかについて明確なコンセンサスは得られていない。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、東京科学大学病院の石場 俊之氏が「乳癌オリゴ転移の今とJCOG2110(OLIGAMI試験)の可能性」と題した講演を行い、近年の研究結果と現在患者登録中のOLIGAMI試験の概要について解説した。オリゴ転移に局所療法を行うべきか? オリゴ転移とは、「転移巣の数が少なく腫瘍径が小さく(5個以下で同一臓器に必ずしも限定しない)、局所療法により完全奏効(CR:Complete Response)となる可能性がある状態」と定義され1)、新規に診断される転移乳がんの1~10%程度と考えられている2)。 オリゴ転移に対する局所療法としては、手術、ラジオ波焼灼療法(RFA)、放射線療法(寡分割照射、体幹部定位放射線治療[SBRT])などが考えられるが、「乳癌診療ガイドライン2022年版」3)では外科的切除は推奨されておらず、SBRTについては「症例を選択したうえで考慮してもよい」という記述となっている。 一方で、2025年のSt. Gallen国際乳がんコンセンサス会議では乳がんオリゴ転移への局所療法介入に対して87.1%の専門家が「同意する」と回答し、日本のJCOG乳がんグループへのアンケートでも81%が「転移が限局していて初期薬物療法に感受性が高い場合に検討する」と答えるなど、実地臨床では局所療法の併用が広く模索されている。 2つの臨床試験結果からみえてきたこと 近年、乳がんオリゴ転移を対象とした前向き無作為化試験が世界中で実施されている。石場氏は2つの試験に着目し、その結果について解説した。4個以下の乳がんオリゴ転移を対象としたNRG-BR002試験では、標準的な全身薬物療法に局所療法(定位照射または手術)を追加しても、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められなかった。この理由として、同氏は、無作為化前の薬剤の規定がなく全身薬物療法の強度に群間差があった可能性、患者選定について「登録時の60日以内のオリゴ転移」との規定のみでPETが必須でなく、もともと多発転移であったinducedオリゴ転移や全身療法中に一部の病変のみが増悪したoligoprogressionの症例が含まれていた可能性を指摘した。 乳がんおよび肺がんのoligoprogressionを対象としたCURB試験では、肺がん患者においてはSBRTによりPFS改善が認められたが、乳がん患者では差がみられなかった。石場氏は、PDとなった症例の約6割で新規の病変が出現している点が、乳がん患者でベネフィットが得られない要因ではないかと述べた。OLIGAMI試験のデザインとその意義 上記のような乳がんオリゴ転移の特徴を踏まえ、現在進行中のJCOG2110(OLIGAMI試験)では、以下の基準が設けられている4)。・対象:3個以下のオリゴ転移、各オリゴ転移の大きさ≦5cm(脳転移≦2cm)※de novoオリゴ転移に限定し、PETを必須とする・12週間の全身薬物療法で、薬物への反応性のある症例のみを無作為化・割付調整因子:施設、オリゴ転移個数、サブタイプ分類、転移時期・試験群:全身薬物療法継続群、根治的局所療法(放射線療法または手術後に全身薬物療法を再開)群・主要評価項目:全生存期間 石場氏は、同試験を実施する意義として、ポジティブな結果が出た場合は、乳がんオリゴ転移に対する局所療法を積極的に推奨することができ、現在統一されていない患者選択基準、局所療法の選択に関するコンセンサスが得られることを挙げた。また、もしネガティブな結果となったとしても、無用な局所療法を避けることができ、特定の集団でのみ有効性が認められた場合はさらなる研究につなげることができるとした。 さらに本試験の大きな特徴として、ctDNA(血中循環腫瘍DNA)を用いた微小残存病変(MRD)解析の附随研究が組み込まれている。局所療法介入前後のctDNA動態をモニタリングすることで、分子レベルでの微小転移の有無と局所療法の効果判定、さらには再発の早期検知に関する有用性が明らかになることが期待される。 同試験は現在も患者登録中で、最後に石場氏は「対象の患者さんがいらっしゃれば、ぜひJCOG参加施設にご連絡いただきたい」として、講演を締めくくった。

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虚血の急性期治療が瘢痕関連VTアブレーション成績に及ぼす影響~TITAN-VT/日本循環器学会

 虚血性心筋症(ICM)に伴う瘢痕組織関連心室頻拍(VT)に対するカテーテルアブレーションは、急性心筋梗塞(AMI)発症から5時間以内の早期再灌流により良好な結果をもたらすことが、「TITAN-VT研究」より示唆された。西村 卓郎氏(東京科学大学 循環器内科)が3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて報告した。 AMIに対する早期再灌流は、梗塞サイズを縮小し、左室機能の保存や生存率の向上に寄与するため、最新の『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』ではST上昇型心筋梗塞(STEMI)の発症から90分以内に搬送し、primary PCIを実施することが推奨されている1)。しかし昨今、心筋梗塞から数年後に発症する致死性不整脈である“ICMに伴う瘢痕関連VT”が問題視されている。この瘢痕組織の特徴は急性期虚血治療の影響を受けるが、早期再灌流がVTに対するカテーテルアブレーションの結果に及ぼす影響は依然として不明であった。 そこで同氏らは、虚血の急性期管理と虚血性VTアブレーションの長期転帰との関連を評価するため、多施設共同観察コホート研究を実施。2020~24年に45施設で施行されたICMに伴う瘢痕関連VTアブレーション例を後ろ向きに解析し、多電極カテーテルによる左室心内膜のマッピングにて評価された不整脈基質(瘢痕、遅延電位、伝導ブロックなど)およびVTアブレーションの結果と、虚血の背景(AMI vs.慢性完全閉塞[CTO])、再灌流の有無、実施タイミング(Door-to-Balloon time:DTB、Onset-to-Balloon time:OTB)との関連を検証した。なお、VT再発は持続する単形性心室頻拍、抗頻拍ペーシングやショックなどに対する植込み型除細動器による治療実施と定義付けた。 主な結果は以下のとおり。・対象はICM520例(AMI:392例、CTO:116例)ならびにVTアブレーション術581件*で、平均年齢72歳(範囲:64~77)、男性485例(93%)、平均BMI 23(同:21~26)、平均左室駆出率(LVEF)34%(同:26~42)であった。*複数回の手術経験者は最終手術結果が評価された・VTアブレーションは、AMIもしくはCTOの診断後中央値16年(8~25年)で実施されていた。・使用した3DマッピングシステムはCARTO(60%)、EnSite(35%)、Rhythmia(5%)であった。・追跡期間中、全体の76%にVT再発は認められなかった。・AMI群の392例(75%)では、OTBが5時間未満(p=0.021)およびDTBが90分未満(p=0.031)の早期再灌流は、遅延または再灌流なしと比較し、より良好な結果と関連していた。・不整脈基質としての伝導ブロックはOTBが長い症例ほど高頻度に観察される傾向にあり、再灌流時間が複雑な不整脈基質の形成と関連していることが示唆された。一方で、心表面に対する瘢痕の割合はOTBと強い相関はみられなかった。・心筋虚血診断時の側副血管の有無は、VTアブレーションの結果と関連していなかった(p=0.87)。・CTO群の116例(23%)では、アブレーション前(ベースライン)の12誘導心電図でQ波を有する患者のほうが、より予後良好な結果と関連していた(p=0.014)。 本研究の限界として、日本人のみを対象としていること、マッピングや手術経験などが標準化されていない、冠動脈の解剖学的構造などは評価していない点を挙げるも、同氏は本研究を振り返り「急性心筋梗塞に対する再灌流遅延例では伝導ブロックが増加することで複雑な不整脈基質が形成されていた。よって、VTアブレーション成績は瘢痕量よりも基質構造(とくに伝導ブロック)に依存する。CTOはAMIと異なる基質を持つ可能性がある」とし、「ベースラインのQ波特性はCTOの既往を有する患者のVTアブレーション結果の簡便な予測マーカーとなる可能性がある」と結んだ。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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StageIIIのdMMR大腸がん、術後アテゾリズマブ上乗せでDFS改善(ATOMIC)/NEJM

 DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)のあるStageIII結腸がんの術後補助療法において、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)+mFOLFOX6はmFOLFOX6単独と比較して、無病生存(DFS)率が有意に高く、有害事象は試験薬の既知の安全性プロファイルと一致したことを、米国・Mayo ClinicのFrank A. Sinicrope氏らが「ATOMIC試験」の結果で報告した。StageIII結腸がんは、欧米では標準治療(切除+術後補助療法[フッ化ピリミジン系薬+オキサリプラチン])を行っても約30%が再発するという。研究の成果は、NEJM誌2026年3月26日号に掲載された。米独の無作為化第III相試験 ATOMIC試験は、米国の303施設とドイツの9施設で実施した無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]およびGenentechの助成を受けた)。2017年9月~2023年1月に、年齢18歳以上、完全切除(R0)が成されたStageIII結腸腺がん(N1/2、M0)で、dMMRが確認された患者712例(年齢中央値64歳[四分位範囲:49~72]、女性392例[55.1%])を登録した。 これら患者を、術後10週以内に補助療法として、アテゾリズマブ(840mg、2週ごと、静脈内投与、12サイクル)+mFOLFOXを6ヵ月間投与した後アテゾリズマブ(13サイクル)単剤を6ヵ月間投与する群(アテゾリズマブ群:355例)、またはmFOLFOXを6ヵ月間投与する群(mFOLFOX単独群:357例)に無作為に割り付けた。 mFOLFOXは両群とも、フルオロウラシル(400mg/m2をボーラス投与後、2,400mg/m2を46時間で持続静注投与)+オキサリプラチン(85mg/m2)+ロイコボリン(400mg/m2)を投与した。 主要評価項目はDFS率(無作為化から再発または全死因死亡までの期間)、副次評価項目は全生存(OS)および有害事象プロファイルとした。5年OS率には差がない 684例(96.1%)が米国施設登録患者であった。328例(46.1%)が臨床的に低リスク(Tx~3、N1/1c)、384例(53.9%)が高リスク(T4またはN2、あるいはこれら両方)で、150例(21.1%)がLynch症候群であった。 追跡期間中央値40.9ヵ月の時点で、3年DFS率は、mFOLFOX単独群が76.2%(95%信頼区間[CI]:70.9~80.6)であったのに対し、アテゾリズマブ群は86.3%(81.8~89.8)と有意に高かった(ハザード比[HR]:0.50、95%CI:0.35~0.73、層別log-rank検定のp<0.001)。 5年OS率は、アテゾリズマブ群が89.7%(95%CI:85.2~92.9)、mFOLFOX単独群は87.9%(83.1~91.4)であり、両群間に有意な差を認めなかった(層別HR:0.90、95%CI:0.55~1.47)。Grade3/4の有害事象、アテゾリズマブ群84.1%vs.mFOLFOX単独群71.9% Grade3または4の有害事象は、アテゾリズマブ群で頻度が高かった(84.1%vs.71.9%)。とくに非血液毒性(69.4%vs.54.5%)の差が大きく、なかでも疲労(10.1%vs.3.3%)が高頻度にみられた。Grade3または4の血液毒性もアテゾリズマブ群で多く(46.8%vs.38.6%)、なかでも好中球数の減少(43.6%vs.35.9%)の頻度が高かった。 各施設の担当医判定によるGrade3または4の治療関連有害事象は、アテゾリズマブ群で72.5%、mFOLFOX単独群で61.7%に発現した。Grade5(死亡)の有害事象は、それぞれ6例および2例にみられ、このうち治療関連と判定されたのはアテゾリズマブ群の2例(突然死、敗血症)のみだった。 著者らは、「アテゾリズマブの追加により、化学療法の曝露量が減少することはなく、Grade3/4の免疫関連有害事象の発生率が上昇することもなかった」とし、「本試験の参加施設のほとんどが地域密着型の診療施設であり、患者の年齢にも上限を設けなかったため、得られた知見は一般化が可能と考えられる」と指摘している。 なお、本試験の結果は最新のNCCNガイドラインに組み込まれ、StageIIがんT4bN0にもこれらの知見が適用されているという。

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急性前立腺炎、尿道カテーテル留置はしたほうがいい?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第24回

Q24 急性前立腺炎、尿道カテーテル留置はしたほうがいい?泌尿器科医です。急性前立腺炎における尿道カテーテル留置の適否について、ガイドラインなどの記載はありますか? 他科から相談を受けるものの文献的な裏付けがなくcase-by-case basisで回答しているので。

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統合失調症におけるLAI抗精神病薬の使用までの期間と入院リスクとの関係

 長時間作用型注射(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の初期段階で推奨されることが増加している。韓国・University of Ulsan College of MedicineのSung Woo Joo氏らは、LAI抗精神病薬治療開始時期が初回エピソード統合失調症における治療中止および入院期間にどのような影響を及ぼすかを検討した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2026年2月9日号の報告。 韓国健康保険審査評価院の保険請求データベースを用いて、LAI抗精神病薬による継続治療を受けている初回エピソード統合失調症患者6,380例を特定した。診断からLAI抗精神病薬治療開始までの期間に基づき、6群に分類した(1年未満、1~2年、2~3年、3~4年、4~5年、5年超)。継続的なLAI抗精神病薬使用中の治療中止と精神科入院日数の割合を、Coxモデルと線形回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・初期のLAI抗精神病薬治療は、時間の経過とともに増加した。しかし、継続的治療期間は減少した。・診断後2年超経過してからLAI抗精神病薬治療を開始した患者は、1年以内に開始した患者よりも治療中止リスクが低かった(2~3年:ハザード比[HR]=0.77[0.69~0.87]、3~4年:HR=0.77[0.68~0.86]、4~5年:HR=0.70[0.61~0.79]、5年超:HR=0.66[0.59~0.74])。・LAI抗精神病薬の治療開始時期の遅れは、とくに入院歴のある患者において、精神科入院の増加と関連が認められた(1~2年:β=0.039、p=0.039、3~4年:β=0.057、p=0.010、5年超:β=0.162、p<0.001)。また、5年超経過した患者群では、治療開始時期の遅れが入院日数の増加をさらに引き起こした(β=1.87×10-4、p<0.001)。 著者らは「LAI抗精神病薬の治療開始時期の遅れは、治療順守率の向上と関連していたものの、LAI抗精神病薬の早期使用は入院負担を軽減した。これは、統合失調症におけるLAI抗精神病薬治療の早期導入を推奨するガイドラインを裏付けている」と結論付けている。

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T-DXdが胃がん2次治療に、胃癌学会がガイドライン速報発表

 第一三共は2026年3月23日、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)の添付文書改訂が行われ、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんの2次治療として使用が可能となったことを発表した。今回の改訂は、2025年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)で発表されたDESTINY-Gastric04試験の結果に基づくもの。HER2陽性胃がん/胃食道胃接合部腺がんに対し、T-DXdはそれまでの標準2次治療であるラムシルマブ+パクリタキセル(RAM+PTX)療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長することが示された。これまでHER2陽性胃がんに対するT-DXdは3次治療以降で承認されていたが、より早期での使用が可能となる。 これを受け、日本胃癌学会のガイドライン委員会は3月24日付で速報を出した。――以下の観点から、トラスツズマブ併用1次化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃癌/胃食道接合部癌における二次治療として、T-DXd療法を推奨する。1)日本人を含むDESTINY-Gastric04試験において、RAM+PTX療法と比較してT-DXd療法が有意に長いOSおよびPFSが示されたこと。2)DESTINY-Gastric04試験だけでなく、すでに国内ではT-DXd療法の使用経験が多く、安全性が確認されていること。―― 同時に、胃がんに特徴的な「HER2陰性化」に言及し、再生検や再評価に関連する注意点を挙げている。――・HER2陽性胃癌では抗HER2療法後にHER2発現が低下し、陽性から陰性へ転じること(HER2陰性化)が報告されており、HER2療法後の陽性率は概ね約3割から7割程度とされている。二次治療前にHER2 statusを確認しない場合には、HER2陰性化した症例における抗HER2療法による治療効果の減弱が危惧されるため、可能であれば一次治療の増悪時点で腫瘍検体を採取し、HER2を再評価したうえで治療選択を行うことが望ましい。・再生検でHER2陰性または判定不能となった集団における二次治療としてのT-DXdの有効性は確立していないため、投与は慎重に考慮すべきである。・ただし、原発巣がない場合には再検は侵襲を伴い、原発巣があっても検査に要する時間や病理体制の制約により治療導入が遅れる場合があるため、採取の難易度、病勢の切迫度、一次治療前のHER2所見等を総合して、再生検実施の適否を個別に判断することが求められる。・再生検が困難な症例では、一次治療前のHER2所見、患者背景と病勢、三次治療でのT-DXd使用の可能性、ならびに間質性肺炎等のT-DXdの毒性リスクを踏まえ、T-DXd投与の適応を総合的に検討する。・また、HER2は腫瘍内で発現のばらつき(腫瘍内不均一性)があり、採取部位や採取量によってHER2判定結果が異なる可能性がある。DG-04バイオマーカー解析における中央判定と施設判定の乖離、ならびに中央判定でHER2陰性となる症例が一定数認められた点は、こうした生物学的要因に加えて、検査手技や判定者の違いが判定結果に影響することも示唆しており、二次治療においてT-DXdの適応の決定に際して、再生検の位置づけや検査・判定の標準化は今後の重要な検討課題である。――

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弁疾患と冠動脈疾患の併存、FFRに基づくCABGでアウトカム改善/Lancet

 待機的弁手術が予定されている冠動脈疾患を有する患者において、血管造影によるFFR(冠血流予備量比)に基づく冠動脈バイパス術(CABG)は、冠動脈造影による解剖学的指針に基づくCABGと比較し、周術期複合アウトカムの発生を低下させたことが示された。中国・上海交通大学医学院附属瑞金医院のYunpeng Zhu氏らが、中国の3次医療施設12施設で実施した研究者主導の無作為化三重盲検試験「FAVOR IV-QVAS試験」の結果を報告した。冠動脈疾患を併発している弁手術予定患者に対し、現行ガイドラインでは、冠動脈造影で評価された狭窄の重症度に基づき、解剖学的指針に基づくCABGを行うことが推奨されているが、FFRに基づく戦略がこの患者集団において臨床アウトカムを改善しうるかどうかは検討されていなかった。Lancet誌2026年3月21日号掲載の報告。FFR≦0.80のみCABG実施vs.狭窄率≧50%の血管にCABG実施を評価 FAVOR IV-QVAS試験の対象は、原発性大動脈弁疾患、僧帽弁疾患またはその両方のため待機的弁手術が予定されており、冠動脈造影により直径1.5mm以上で冠動脈バイパス術(CABG)に適した血管において50%以上の狭窄を認める主要冠動脈を1本以上有する18歳以上の成人であった。 研究グループは、適格患者を血管造影によるFFR値が0.80以下の場合のみCABGを実施する群(血管造影FFR群)、または冠動脈造影で狭窄率が50%以上のすべての血管に対してCABGを実施する群(冠動脈造影群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。患者、フォローアップ担当医師およびアウトカム評価者は割り付けについて盲検化された。 主要アウトカムは、術後30日以内の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、予定外の冠動脈再血行再建術および透析を必要とする新規腎不全の複合であった。重要な副次アウトカムは、1年時および3年時における全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、予定外の冠動脈再血行再建術、不安定狭心症による入院または心不全による入院の複合であった。 主要アウトカムおよび重要な副次アウトカムの主要解析は、無作為化され手術を受け、かつ主要アウトカムのデータが入手可能な患者(修正ITT集団)を対象集団とした。なお、主要アウトカムのデータが欠測率2%以下の場合は完全症例解析、2%を超えた場合は多重代入法を用いて解析することが事前に計画された。主要複合アウトカムの発生は、FFR≦0.80のみCABG実施群で有意に低下 2019年8月4日~2024年8月13日に793例が登録され、396例が血管造影FFR群、397例が冠動脈造影群に無作為に割り付けられた。冠動脈造影群の1例は手術を拒否したため、修正ITT集団から除外された。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:59~70)で、221例(28%)が女性、571例(72%)が男性であった。CABGは、血管造影FFR群で223例(56%)、冠動脈造影群で388例(98%)に施行された。 主要複合アウトカムのイベントは、血管造影FFR群で31例(7.8%)、冠動脈造影群で53例(13.4%)に発生した(絶対群間差:-5.6%ポイント[95%信頼区間[CI]:-9.9~-1.3]、リスク比:0.58[95%CI:0.38~0.89]、p=0.011)。30日全死因死亡は、血管造影FFR群で11例(2.8%)、冠動脈造影群で17例(4.3%)に認められた。 追跡期間中央値27ヵ月(血管造影FFR群28ヵ月[IQR:18~44]、冠動脈造影群27ヵ月[18~42])時点において、重要な副次アウトカムは血管造影FFR群で82例(20.7%)、冠動脈造影群で106例(26.8%)に発生した(ハザード比:0.74、95%CI:0.55~0.98、p=0.036)。

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統合失調症、うつ病のガイドライン教育が日本の精神科治療に及ぼす影響は?

 教育的介入は、直接介入を受ける参加者だけでなく、同じ組織内の非参加者にも影響を与える可能性がある。北海道大学の堀之内 徹氏らは、リアルワールドにおける臨床診療ガイドラインの実施において、組織内における教育的スピルオーバー効果が生じるかどうかを検証した。Asian Journal of Psychiatry誌2026年4月号の報告。 2016〜24年に精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDE)プロジェクトに参加した298施設における、統合失調症(2万2,032例)およびうつ病(1万1,207例)の入院患者の退院データを収集した。患者は、精神科医の参加および施設内での参加状況に基づき、グループ1(精神科医:不参加、施設内:不参加)、グループ2(精神科医:不参加、施設内:参加)、グループ3(精神科医:参加、施設内:参加)の3つのグループに分類した。主要アウトカムは、ガイドライン推奨治療の実施率(品質指標:QI)とした。EGUIDEのトレーニング効果は、順序変数(グループ1<グループ2<グループ3)としてモデル化した。年齢、性別、施設の種類を調整したロジスティック回帰分析を用いてオッズ比(OR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者では11のQIのうち9つ、うつ病患者では7つのQIのうち5つで有意な正の関連が認められた(例:QI-S1:治療抵抗性統合失調症の診断評価、調整OR:1.98、p<2.78×10-192)。・ガイドライン順守率は、グループ1からグループ3にかけて順次増加が認められた。 著者らは「本研究は、非ランダム化実臨床において、教育的スピルオーバー効果が参加した精神科医だけでなく同じ施設内の参加していない精神科医にも影響を及ぼすことを実証した初めての研究である。これらの知見は、ガイドライン実施戦略において施設レベルのスピルオーバー効果を活用することの重要性を強調している」と結論付けている。

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(5):Na/K比【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q163

高血圧管理・治療ガイドライン2025(5):Na/K比Q163近年、NaとKの摂取バランスをみる指標として蓄尿・随時尿中Na/K比が提唱され、エビデンスが集積されてきている。健康な日本人における至適目標値と実現可能目標値は?

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生涯を通じた食生活の質が認知機能と関連している

 食生活は、高齢期における認知機能低下や認知症発症のリスク因子である。しかし、食生活の質と認知機能の長期的な関係は、これまであまりよくわかっていなかった。米国・タフツ大学のKelly C. Cara氏らは、食生活の質と認知機能の傾向、そして生涯にわたるこれらの相互関係について調査を行った。Current Developments in Nutrition誌2025年12月20日号の報告。 1946年英国出生コホート(3,059例、男性の割合:50.2%)のデータを用いて、混合軌跡モデリング(group-based trajectory modeling)により、幼少期から成人期後期までの食生活と認知機能の軌跡およびそれらの関連性、また食生活の軌跡とその後の認知症の徴候との関連性を調査した。Healthy Eating Index-2020のスコアは、4歳、36歳、43歳、53歳、60~64歳における食事の回想および日記から算出した。認知機能の全体的パーセンタイル順位は、8歳、11歳、15歳、43歳、53歳、60~64歳、68~69歳における知的能力と認知機能の検査から算出した。68~69歳におけるアデンブルック認知機能検査IIIのスコアに基づき、認知症の可能性を評価した。多項ロジットモデルを用いて、軌跡群の早期予測因子を決定した。 主な結果は以下のとおり。・3つの食生活の質の軌跡および4つの認知機能の軌跡が特定された。・性別、出生地、幼少期の社会階級、余暇活動は、軌跡群の予測因子であった。・結合軌跡モデルでは、認知機能が最も低い群には、主に食生活の質が低いまたは中程度の参加者がそれぞれ58%、35%含まれていた。・一方、認知機能が最も高い群には、食事の質が中程度または高い参加者がそれぞれ57%、36%含まれていた。・68~69歳で認知症の兆候を示した参加者の割合は、食事の質が低い群で、中程度および高い群と比較し、それぞれ3.8%、7.4%高かった。 著者らは「これらの結果は、生涯を通じた食事の質と認知機能との間に関連があること、そして幼少期から成人期にかけて食事の質が低い人は認知症の可能性が高いことを示唆している。食事ガイドラインに沿った食生活を長期にわたって継続することは、生涯を通じて認知機能にプラスの影響を与える可能性がある。しかし、これらの結果を確認するには、より多くの縦断的研究が求められる」としている。

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「心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン」をフォーカスアップデート/日本循環器学会

 『2026年JCS/JSOGガイドラインフォーカスアップデート版 心血管疾患患者の妊娠・出産の適応と診療』1)が第90回日本循環器学会学術集会(2026年3月20~22日)会期中の3月20日に発刊された。本ガイドラインの研究班長を務めた神谷 千津子氏(国立循環器病研究センター循環器病周産期センター)と桂木 真司氏(宮崎大学産科・婦人科 主任教授)が本学術集会プログラム「ガイドラインを学ぶ2」において、妊娠を避けることを強く望まれる心疾患、妊産婦に注意が必要な循環器用薬を中心に解説した。 本書では、新規薬物治療をはじめとした循環器診療の進歩、思春期以降の男女を対象にしたプレコンセプションケアの取り組み、国内外からの心血管疾患合併妊娠を中心に、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)を支えることも目標として作成され、今回のアップデート版では以下の7項目を主に取り扱う。そこで本稿では、とくに押さえておきたい項目として、「妊娠を避けることを強く推奨する疾患、病態」「妊娠中、授乳中の循環器薬物治療の安全性」にフォーカスする。―――――――――――――――――――・日本の疫学(周産期データベース、妊産婦死亡症例検討)・プレコンセプションケアと妊娠関連ハートチーム(PHT)・妊娠を避けることを強く推奨する疾患、病態・妊娠中、授乳中の循環器薬物治療の安全性・周産期管理:産科(分娩方法の選択、妊娠高血圧症候群)・周産期管理:麻酔科(麻酔方法の選択、硬膜外麻酔)・産後の注意点―――――――――――――――――――周産期の死亡原因として挙がる心大血管疾患とは 日本産婦人科学会の周産期データベースによると、2014~23年に登録された母体約220万人のうち、基礎疾患に何らかの心疾患を有したのは1.2%(2万6,894例)であった。神谷氏は「心疾患を有する母体は基礎内科疾患がない者と比較して、無痛分娩率、帝王切開率、帝王切開時の全身麻酔率、分娩時出血量、転科率、そして母体死亡率が高い傾向にある」と指摘。また、日本産婦人科医会による妊産婦死亡症例登録システムのデータでは、心大血管疾患は間接産科的死亡*1の第1位であり、大動脈解離、周産期心筋症、肺高血圧症などが原因であることが明らかになっている。同氏は「周産期に初めて診断され、産科と内科の連携が不十分な場合もある。これを解消するために循環器医ができることとして、コンサルテーションの閾値を低く、速やかな検査・治療が求められる」と強調した。*1 妊娠前から存在した疾患または妊娠中に発症した疾患により死亡したもの2)妊娠を避けることを強く望まれる心疾患 妊娠の際に厳重な注意を要する、あるいは妊娠を避けることが強く望まれる心疾患は、第2版までは6項目にとどまっていた。今回、大幅にアップデートがなされ、10項目が表13(p.25)に示された。・高度な体心室機能低下(LVEF<30%、体心室RVEF<40%)や心不全(NYHA心機能分類III~IV度)・重症閉塞性肥大型心筋症(HOCM)・周産期心筋症の既往と左心室機能低下の残存・中等度から重度のPAH(アイゼンメンジャー症候群含む)・重症僧帽弁狭窄(MS)・妊娠前から症状を伴う重度流出路狭窄(大動脈弁高度狭窄:平均圧較差≧40mmHg)・マルファン症候群(上行大動脈拡張期径>45mm、高リスク症例では≧40mm)や大動脈二尖弁を伴う大動脈疾患(大動脈径>50mm)・症状、有意な合併症のあるフォンタン術後・未修復の重症大動脈縮窄症・重症チアノーゼ性心疾患(SpO2<85%) 第3章では上記に対する推奨がCQ1~7とFRQ1で示されている*2。主な変更点について「妊娠を避けることを推奨する左室駆出率(LVEF)が以前は35~40%未満であったが、30%未満へと引き下げた(CQ1)。肺高血圧症患者では、血行動態の重症度が中等度~重度の場合は妊娠を避けることを強く推奨するが、状態の安定した軽症例であれば、妊娠を前向きに考えることが可能と、世界に先駆けてリスク分類した(CQ2)。また、機械弁置換後のリスクは抗凝固療法に起因するものであるため、強く妊娠を希望する場合は、周産期の抗凝固療法に習熟した専門施設での妊娠・分娩管理を強く推奨する(CQ3)。ただし、状態の安定した軽症の肺高血圧症患者や機械弁を有する患者が妊娠継続を希望する場合、各専門施設で周産期管理が求められるため、施設要件が合致した場合にのみ前向きに検討が可能である(p.25、表14)点には留意してほしい」と解説した。 続けて、「流出路狭窄がある場合には、妊娠前から症状を伴うような重症例では妊娠を避けることを強く推奨する一方で、平均圧較差が40~50mmHgで無症状の場合は主治医と相談しながら検討していくことが推奨される(CQ4)。さらに、有症状、有意な合併症をもつフォンタン術後の場合は妊娠リスクを避けることが推奨される(CQ6)。周産期心筋症の既往をもつ場合、LVEF50%未満が継続する患者では妊娠を避けることを強く推奨する(CQ7)」と説明した。*2 CQ:クリニカルクエスチョン、FRQ:フューチャーリサーチクエスチョン なお、これらは妊娠についての意思決定を支える推奨であり、医療的「介入」ではないため、推奨強度は付記しない方針とされている点には注意が必要である。妊娠中に選択できる循環器薬、アテノロールは実は危険! 心疾患合併妊娠のリスク因子のなかで、調整可能な因子の1つに薬剤選択が挙げられる。今回アップデートされた薬剤クラスには、抗凝固薬、降圧薬、利尿薬、抗不整脈薬、肺高血圧症や心不全、脂質異常症の治療薬がある。このなかで特筆すべきはβ遮断薬のアテノロールで、これまで妊娠中の禁忌記載がないβ遮断薬であったにもかかわらず、近年ではアテノロールが最も胎児へのリスクが高いと報告された3)ため、「使用可能だが、在胎不当過小児(SGA)のリスクが最も大きく、他剤への変更が推奨される」と変更した(p.58、表23)ことを強調した。 スタチンについては「添付文書上は禁忌であるが、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)患者や2次予防目的について、FDAでは使用を勧告している。本フォーカスアップデートでもその旨を記載した」と述べ、DOACについては、「妊娠中の安全性は未確立だが、リバーロキサバンにおいては授乳安全性が確立されつつある」とコメント。降圧薬のうちCa拮抗薬については、前版よりニフェジピン、アムロジピン、カルベジロール、ビソプロロールが妊娠中禁忌から有益性投与に変更している。ACE阻害薬やARBは妊娠中に禁忌であるが授乳中の安全性は確立しているため、「出産後に速やかに再開処方することは可能」と話した。 続いて桂木氏は、薬剤選択・用量・投与速度が妊娠中や分娩前後で調節が可能であること、循環器・産科・麻酔科で情報共有・管理することが重要である点に触れ、「妊娠中の薬物は禁忌も多いが、一律に禁忌ではなく症例に応じた病態別評価が必要であり、妊娠は循環器治療を止める理由ではない。また、母体へのリスクは即時的で致死的なものが多いため、母体のベネフィットと胎児リスクを比較して代替薬の選択を検討してほしい」とコメントした。さらに、「薬剤管理は母体死亡を減らす鍵となる。そのためには、妊娠中の循環器薬剤は“中止”より“最適化”を目指してほしい。産科薬剤は循環動態に影響するため、投与を慎重に判断し、分娩前から循環器・産科・麻酔科による情報共有を行ってほしい」と強調した。これまでのガイドラインと改訂の経緯 これまで、心血管疾患患者の妊娠中の病態について取り扱ったガイドラインは、2005年に初版が発刊、2018年に第2版となる『心血管疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン』が日本産科婦人科学会と合同で作成されていた。それから8年が経過し、新たなエビデンスが集積したことから、今回は前版の内容に補足するかたちで作成・公表がなされた。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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第288回 患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省

<先週の動き> 1.患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省 2.新たな地域医療構想、2040年を見据えて急性期集約と外来偏在対策を加速/厚労省 3.人材紹介料が医療経営を圧迫 厚労省に上限規制を要請/日医・四病協 4.紹介状が「全国で閲覧可能」に 医療・介護連携DXを加速/厚労省 5.原油高が医療崩壊リスクに 資材不足と経営悪化で緊急要望/保団連 6.手術中に麻酔科医が不在30分 薬剤抜き取り・自己使用で懲戒免職/川崎市 1.患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省厚生労働省は、3月26日に「小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」を開き、少子化と専門医不足のため、小児医療の提供体制を都道府県単位から広域連携へ転換する方針を明らかにした。小児の集中治療や心臓手術など高度医療は症例減少により各都道府県単独での維持が困難となっており、県外搬送や遠隔相談を前提とした体制整備、財政支援、将来的な集約化を検討する。これらの政策は第9次医療計画への反映が見込まれ、医師不足地域では他科医との連携やオンライン診療、小児科医派遣による維持策も示された。小児がん領域でも体制見直しが進む。高度治療や研究開発を担う拠点病院は集約化しつつ、全都道府県に標準治療を提供する「県拠点病院」を新設、さらに連携医療機関を整備する三層構造へ再編する。症例数減少と分散、ドラッグ・ラグ、アクセス格差が背景にあり、質とアクセスの両立を図る。2027年から新体制が開始される予定。その一方で、人口減少は医療提供体制全体に影響を及ぼす構造問題として顕在化しており、人口減少問題を議論する「未来を選択する会議」の白書では社会保障費増大やインフラ維持への危機感が8割超に達し、出生減少の要因として経済負担や性別役割意識の影響が指摘された。人口減少は、地域差・世代差を伴いながらも全国各地で進行しており、医療政策も広域化・集約化とともに社会制度改革と不可分の課題となっている。 参考 1) 小児がん拠点病院等について(厚労省) 2) 今後の小児がん拠点病院等の指定の考え方について(同) 3) 小児医療、県またぎ連携 厚労省、心臓手術など 少子化や専門医不足で(日経新聞) 4) 小児がん診療体制を大きく見直し、「拠点病院の集約化」とともに「全都道府県に県拠点病院を指定」へ-小児がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 5) 人口減少問題 有識者団体が報告書 “社会経済全般の改革必要”(NHK) 6) 人口減に50歳以上の7割が「危機感」、未来選択会議が初の「人口問題白書」…少子化対策のヒントも(読売新聞) 7) 民間組織「未来を選択する会議」が人口問題白書を発行、人口減見据え(朝日新聞) 8) 人口問題白書2025(未来を選択する会議) 2.新たな地域医療構想、2040年を見据えて急性期集約と外来偏在対策を加速/厚労省厚生労働省は、3月26日に社会保障審議会医療部会を開き、2040年を見据えた新たな地域医療構想のガイドラインを4月中に公表し、都道府県は2026~28年度に新構想を策定することを明らかにした。構想区域は「人口20万人以上」を基本としつつ、地域の実情に応じ柔軟に設定。区域内では医療機関の機能分担や病床再編を協議し、急性期拠点機能は人口20~30万人に1ヵ所を目安に集約化を進める方向である。社会保障審議会での議論では、ガイドラインはあくまで参考とし、地域実情を優先すべきとの意見や、老朽病院の建て替え支援、都道府県への技術的・財政的支援を求める声が相次いだ。あわせて外来医師偏在対策も具体化し、外来医師過多区域で2026年10月以降に新設される無床診療所について、地域で不足する医療機能の提供状況や要請・勧告の有無を「医療情報ネット(ナビイ)」で公表する方針が了承された。スマホ対応マイナ保険証、RSウイルスワクチン、指定難病対応などの情報も追加される。その一方で、「要請・勧告といったネガティブ情報の公開は制度趣旨とずれる」「不公平を生む」との慎重論も出た。医療機関の定期報告率は全国平均72.4%だが、都道府県差が大きく、入力負担軽減と周知徹底が課題とされた。今後、オンライン診療受診施設の広告規制や不適切広告対策の強化も進められ、外来・在宅・介護連携まで含めた医療提供体制の再構築が本格化する。 参考 1) 地域医療構想及び医療計画等に関する検討会とりまとめについて(厚労省) 2) 地域医療構想「人口20万人以上」 40年見据えガイドライン骨子 厚労省(時事通信) 3) 新地域医療構想等のガイドライン、医療部会意見も踏まえて「2026年4月中」に作成・公表、急性期機能等の集約化を地域で推進(Gem Med) 4) 地域医療構想策定ガイドラインは4月に 社保審・医療部会(CB news) 5) 全国の医療機関情報掲載する「ナビイ」に外来医師過多区域での医療機能提供などの情報も公表-医療機能情報提供制度等分科会(Gem Med) 3.人材紹介料が医療経営を圧迫 厚労省に上限規制を要請/日医・四病協3月24日に日本医師会と四病院団体協議会は、医療・介護分野の人材紹介サービスの適正化に向け、紹介手数料の上限規制導入や返戻金制度の義務化を求める要望書を上野 賢一郎厚生労働大臣に提出した。背景には、近年の人材紹介手数料の高騰と早期離職の増加があり、医療機関の経営を圧迫している実態がある。とくに紹介手数料の総額は2023年度に1,000億円を超え、その多くが公的医療保険を原資として支払われている点が問題視されている。医療機関にとっては、診療報酬が公定価格という環境で、採用コストを価格転嫁できず、地方や中小医療機関ほど影響が大きく、地域医療提供体制の持続性にも関わる課題となっている。さらに医療・介護分野では入職後6ヵ月以内の早期離職が多く、採用のたびに高額手数料が発生する構造が経営リスクを増幅させている。要望では、早期離職時の返戻金制度を義務化し、その水準を標準化することで、紹介会社にも一定の責任を負わせる仕組みを提案した。ただし、返戻期間の単純延長では離職の後ろ倒しを招く可能性もあり、実効性ある設計が必要とされる。また、離職実態の可視化として6ヵ月超1年以内の離職データ報告義務化や、求職者が紹介手数料の実額を把握できる仕組みの導入も求めた。加えて、ハローワークやナースセンターなど無料職業紹介の活用促進も提言。民間紹介への依存が進めば人材の都市部集中や地域偏在が加速する懸念がある。これら一連の提言は、単なるコスト問題にとどまらず、人材確保と医療提供体制の持続性に直結する構造課題への対応を求めるもの。厚生労働省では、まず実態把握を進める姿勢を示しており、今後の制度設計が医療経営に与える影響は大きい。 参考 1) 高額な紹介手数料、「原資は公的医療保険」と指摘 日医会長が問題視、緊急対応を要望(CB news) 2) 医療・介護の人材紹介手数料に上限規制を 医師会と病院団体、上野厚労相へ要望書(Joint) 3) 有料職業紹介事業の適正化とハローワークの機能強化に関する要望書(四病院団体協議会・日本医師会) 4) 有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書~医療分野における人材確保と有料職業紹介事業等の適正化に向けた提言~(同) 4.紹介状が「全国で閲覧可能」に 医療・介護連携DXを加速/厚労省厚生労働省は、3月18日に「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療等情報利活用ワーキンググループと介護情報利活用ワーキンググループの合同会議を開催し、医療と介護の情報連携を強化するため、「全国医療情報プラットフォーム(PF)」を活用し、診療情報提供書や訪問看護指示書・計画書・報告書を医療・介護関係者間で共有する方針を示した。これまで医療分野では電子カルテ情報共有サービス、介護分野では介護情報基盤の整備が進められてきたが、両分野をまたぐ情報共有の具体像は整理されていなかった。今回、標準様式が存在する文書から連携を開始し、将来的にはリハビリ計画書や入退院情報などへ拡大する方向で検討を進める。電子カルテ情報共有サービスでは、診療情報提供書や退院時サマリーなどの「3文書6情報」を全国で共有できるものとし、2027年初頭の本格運用が見込まれる。その一方で、介護情報基盤も要介護認定情報やLIFEデータ、ケアプランなどの共有を2026年度から段階的に開始する予定であり、両基盤を接続することで多職種連携の高度化が期待される。背景には、高齢化の進展に伴い医療と介護の複合ニーズを持つ患者が増加している現状がある。情報連携により入退院時の引き継ぎや在宅療養支援の質向上、災害時対応の強化などが見込まれる一方で、同意取得の在り方や情報セキュリティ、介護側のICT環境整備、標準化の難しさなど課題も多い。とくに介護情報は生活背景や主観的評価を含むため、医療情報との整合性確保が重要となる。今後、合同ワーキンググループでは、詳細設計を進め、2026年夏に開発方針を取りまとめる予定。医療・介護の分断を埋める基盤整備は、地域包括ケアの実効性を左右する鍵となる。 参考 1) 「全国医療情報プラットフォーム」における医療介護連携の進め方について(厚労省) 2) 健康・医療・介護情報利活用検討会 第30回医療等情報利活用ワーキンググループ、及び第10回介護情報利活用ワーキンググループ資料について(同) 3) 医療と介護の情報共有、診療情報提供書などから 全国医療情報プラットフォームで 厚労省案(CB news) 4) 医療・介護連携を「情報面」からも進めるため、まず【診療情報提供書】【訪問看護指示書・計画書・報告書】の電子的共有を検討(Gem Med) 5.原油高が医療崩壊リスクに 資材不足と経営悪化で緊急要望/保団連中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の急騰を受け、全国保険医団体連合会(保団連)は政府に対し、医療資材の供給確保と財政支援を求める緊急要望書を提出した。背景には、イランを巡る中東情勢の悪化とホルムズ海峡の機能不全による世界的な原油供給不安があり、医療現場にも直接的な影響が及び始めている。医療用ガウンやグローブ、注射器、点滴バッグ、カテーテルなど、原油由来のプラスチック製品を中心にコスト上昇と供給不安が顕在化しており、基礎的医薬品を含めた医療資材の不足は診療継続そのものに直結するリスクとなる。加えて、在宅医療では燃料費の上昇が訪問コストを押し上げ、結果として患者負担の増加につながる可能性も指摘される。医療機関の経営面でも、光熱費や材料費の高騰が収益を圧迫しており、2026年度診療報酬改定で盛り込まれた物価対応分(+0.76%)は今回の急激な原油高を想定したものではなく、十分な対応とは言えないとの批判がある。さらに改定施行が6月である点も、足元の急激なコスト上昇への対応としては遅いとされる。こうした状況を踏まえ、保団連は医療資材および基礎的医薬品の国内在庫確保と安定供給、診療報酬の期中改定や補助金の拡充による即時的な財政支援を要請した。医療機関が機能不全に陥る前の早期対応を求める内容であり、原油高は単なるコスト問題を超え、地域医療の持続性を揺るがす構造リスクとして顕在化している。今後の政策対応は、医療経営の安定のみならず、患者アクセス維持の観点からも重要な局面を迎えている。 参考 1) 【要望】原油価格高騰に伴う医療資材の不足等への緊急対応を(保団連) 2) 「原油急騰で機能不全に陥る前に…」医師団体が政府に緊急の要望書 医療資材の在庫確保など求める(弁護士JPニュース) 6.手術中に麻酔科医が不在30分 薬剤抜き取り・自己使用で懲戒免職/川崎市川崎市立川崎病院は、麻酔薬を自己使用し患者への投与量を改変したとして、28歳の麻酔科医を懲戒免職とした。医師は不眠に悩み、「麻酔で眠る患者を見て自分も眠りたかった」と供述している。事件は2025年12月、手術中に無断で手術室を離れ、麻酔薬プロポフォールを自己注射したことに始まる。この間、約30分間にわたり麻酔科医不在の状態で手術が継続され、後に別の医師が対応した。さらに2026年1月の復職後、患者に使用予定の麻酔薬から一部を抜き取り、自身の使用目的で持ち去ろうとした上、生理食塩水で希釈した薬剤を患者に投与する不正行為が発覚した。翌日にも同様の行為を試みたが看護師が発見し、事態が明るみになった。患者への健康被害は確認されていないものの、医療安全および倫理の観点から重大な問題と判断され、病院は懲戒免職とともに窃盗容疑で警察に被害届を提出した。この事件により、病院の薬剤管理体制の脆弱性のみならず、医師の健康管理や勤務環境の問題も浮き彫りにした。長時間手術や慢性的な睡眠不足の中で、適切なサポート体制が機能していたかが問われる。医療機関における薬剤管理、職員のメンタルヘルス対策および医療安全体制の再点検が求められる事案といえる。 参考 1) 「不眠に悩み」患者の麻酔薬一部持ち去り自己注射 28歳医師処分(毎日新聞) 2) 不眠に悩む麻酔科医「患者にこんなに効くなら…」抜き取って自分に注射、患者には薄めて 川崎市立病院、懲戒免職(東京新聞) 3) 手術室離れて麻酔薬を自分に注射 「少しでも寝たかった」医師を免職(朝日新聞)

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第306回 「清潔な国」日本、なぜノロウイルス集団食中毒が起こるのか

INDEXノロウイルスによる大規模集団食中毒が発生食品管理に対する姿勢、日本は甘い?ノロウイルスによる大規模集団食中毒が発生大阪府熊取町で3月17日に小中学校向けの給食で提供されたパンに混入したノロウイルスを原因とする集団食中毒事件が発生した。最新の報道によると、同町教育委員会が3月24日までに把握した体調不良者は633人。原因であるパンを食べてからノロウイルスの潜伏期間内に発症したとみられるのは、うち302人だったという。2025年の食中毒統計(速報値:2026年3月2日までの報告)1)によると、同年の食中毒報告件数は1,176件、総患者数は2万4,854件。このうち発生件数の39.2%に当たる462件、患者数の74.7%に当たる1万8,566例の原因がノロウイルスである。同統計によれば、食中毒件数とそれによる患者数ともに4年連続で増加し、ノロウイルスによる患者割合が最も多い。ちなみに2025年のノロウイルスによる食中毒で最大規模だったのは、同年2月に兵庫県で発生した仕出し弁当を原因とした2,307例もの患者が発生した事例である。今回の熊取町の事例は、給食パンが原因の食中毒と断定される可能性が高く、302例に限定しても、昨年のワースト5に入る規模だ。これだけノロウイルスによる食中毒が多いのは、ご存じのようにこのウイルスが10~100個というごく少量で感染が成立してしまうことに加え、二枚貝を中心とする食品、感染した調理者を介した食品、接触・飛沫を通じたヒト・ヒト感染という感染経路の多様さ、アルコール消毒が効きにくいエンベロープ(脂質膜)を持たないウイルスであることなどが影響しているといわれる。熊取町のケースは、パン製造業者の従業員の便からノロウイルスが検出されていることから、前出の「感染した調理者を介した食品を通じた感染」に当たると考えられる。そして現状、ノロウイルス感染症には特異的な治療薬もワクチンも存在しない。これもノロウイルスの特性が影響している。そもそもこのウイルスは成熟したヒトの腸管上皮細胞でしか増殖しないため、実験室レベルでの培養がきわめて難しく、結果として動物モデルによるデータも乏しい。これではウイルスの増殖機構の解明、薬剤スクリーニング、ワクチン評価のいずれも入口からつまずいてしまうのだ。ここに22種類もの遺伝子型*があることで汎用ワクチンを開発しにくいという特徴も加わる。*遺伝子群GIIの場合結局のところ最大の対策は、汚染された食品を回避するという意味での“予防”となってしまう。しかし、これも実は一般人にとっては対策が事実上困難である。というのも、報告されているノロウイルス食中毒のほとんどは、仕出し屋を含む飲食店や給食施設から提供された飲食物、あるいは今回の熊取町の事例のような製造事業者が提供する食品・食材であるからだ。食品管理に対する姿勢、日本は甘い?こうなると、ノロウイルスによる食中毒を減らすためには、川上の事業者への規制を強化するしか方法がない。日本ならば、食品衛生法に基づく規制となる。実はこの点、日米欧ではかなり基準が異なり、欧米のほうが基準は厳しい。食品などを取り扱う事業者は、自ら食中毒の原因微生物による汚染や異物混入などのリスク要因を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程のリスク要因の除去・低減するため、とくに重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する手法「HACCP(ハサップ)」に基づく衛生管理が求められている。これは米国で開発された国際的な食品衛生管理手法で、日米欧ともに義務付けられている。しかし、法令やそれに基づく実態としての衛生管理は、日本の食品衛生法はかなり曖昧である。たとえば、同法第5条では「食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列及び授受は、清潔で衛生的に行われなければならない」とし、それを受けて通知・ガイドラインで下痢・嘔吐のある従業員を調理に従事させないことや手洗い・消毒の徹底、嘔吐物の適切処理を謳っている。これに対し、EUでは「食品取扱者で疾病・感染の疑いがある者は食品を取り扱ってはならない」旨を事業者の義務として明記している。米国になると、米国食品医薬品局(FDA)の食品規則により、ノロウイルスをはじめ具体的な病原体を明記し、それに伴う症状(ノロウイルスの場合は嘔吐・下痢症状)がある場合は現場からの即時排除とより強力な文言で規定している。また、同規則では該当する病原体の有症状者の復帰基準についても、症状消失後24時間以上(州により48時間)経過とし、さらには、食品施設で誰かが嘔吐または下痢などをした場合のクリーンアップ手順も具体的に定めているほどの念の入れようだ。ちなみにFDAの食品規則は法律ではなく、あくまでモデル規則であるため米国内の各州が採用して初めて法的拘束力を持つものだが、実際にはほぼ全州で採用されているため、事実上の全国標準として法的拘束力を有している。(表)食品衛生規制における日米欧の比較画像を拡大するさらに追加すると、ノロウイルスによる汚染の可能性のある二枚貝の代表格のカキの出荷に対する考え方も日本と欧米では異なる。日本ではスーパーなどの店頭に並ぶカキには「生食用」「加熱用」の2種類があるのはご存じだろう。これは保健所が海域の海水に含まれる大腸菌の量を検査し、生で食べても問題ないとされる海域でとれたカキを生食用、それ以外の海域でとれたカキを加熱用と分類している。これに対し、欧米では同じように大腸菌を指標とした海域検査を行い、海域ごとに出荷可否までも規制している。端的に言えば、日本の加熱用カキに該当するものの一部は、欧米では出荷すら認められない。日本がここまで厳格でないのは、あくまで推測になるが、「従来から日本の法規制などが緩やかな条文による包括規定に行政指導を組み合わせる柔軟運用を軸としているから」だと考えられる。しかしながら、前出のように最近の食中毒統計での件数増加を見る限り、そろそろ欧米型の規制に乗り出すべき時期に差し掛かっているようにも思えるのだが…。参考1)厚生労働省:食中毒統計資料

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認知症患者に対する抗精神病薬使用が死亡リスクに及ぼす影響は

 神経精神症状は、認知症で頻繁にみられ、機能低下、介護者の負担、死亡率の主要な要因となっている。症状が重症化したり、非薬物療法に反応しなくなったりすると、抗精神病薬を使用することが多いが、いまだに安全性への懸念が残っている。とくに、地域社会で生活する神経精神症状を有する患者において抗精神病薬の使用が生存率に及ぼす影響は依然として明らかになっていない。スペイン・Clinica Josefina ArreguiのKevin O'Hara-Veintimilla氏らは、認知症および神経精神症状を有する高齢者における抗精神病薬使用と全死亡率との関連性を検討するため、以前発表したシステマティックレビューおよびメタ解析の2次解析を行った。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2026年2月10日号の報告。 本解析は、PROSPERO(CRD42024621462)に登録、コクランハンドブックに従って実施、PRISMA 2020ガイドラインに準じて報告された。神経精神症状が記録されている65歳以上の地域在住の認知症患者を対象に、抗精神病薬の使用と全死亡率の調整ハザード比(aHR)を報告した研究を適格な観察研究とした。プール推定値は、固定効果モデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・5件の観察コホート研究より抽出された1万4,183例を対象に解析を行った。・抗精神病薬の使用と全死亡率との間に有意な関連は認められなかった(プールされたaHR:1.06、95%信頼区間[CI]:0.97〜1.16、p=0.21、I2=43%)。・サブグループ解析では、定型抗精神病薬ではaHRが0.79(95%CI:0.62〜1.01)、非定型抗精神病薬ではaHRが1.23(95%CI:0.97〜1.56)であり、クラス間で有意差が認められた(p=0.03)。 著者らは「認知症および神経精神症状を有する地域在住高齢者において、抗精神病薬の使用と全死亡率の間に統計的に有意な関連は認められなかった。しかし、利用可能なエビデンスは限定的で不正確であるため、不確実性が大きかった。そのため、これらの知見は慎重に解釈する必要がある」と結論付けている。

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