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(第51回日本糖尿病学会年次学術集会から) -2型糖尿病治療の新たな戦略- インクレチン治療(2) DPP-IV阻害薬

 2008年5月21日~24日(土)まで、東京国際フォーラムにおいて、これまでで最多である11,623名が参加した「第51回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:東京大学大学院医学系研究科 門脇 孝氏)」が、開催された。GLP-1の分解を阻害するDPP-IV阻害薬 経口血糖降下薬として利用されたインクレチンGLP-1および現在経口血糖降下薬として研究段階であるGIPは、小腸で栄養素が消化吸収されることにより分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体およびGIP受容体に結合し、インスリン分泌を促進させる。しかし、体内の酵素であるDPP-IVにより、すぐに分解され、失活してしまう(半減期は2、3分)。このDPP-IVの作用を阻害することで、GLP-1およびGIPの効果を持続させるのがDPP-IV阻害薬である。すなわち、DPP-IV阻害薬を投与することにより、インスリン分泌促進作用を持つGLP-1およびGIPの分解が抑制され、間接的にインスリン分泌を促進させることになる。わが国で発売が待たれるDPP-IV阻害薬 現在、わが国では、シダグリプチン(万有製薬・小野薬品/既に欧米で使用中)、ビルダグリプチン(ノバルティスファーマ/米国で承認申請中・欧州で既に使用中)ともに承認申請中であり、近い将来、わが国でも使用できるようになる。GLP-1誘導体?DPP-IV阻害薬? 既に海外で多くの2型糖尿病患者に用いられているGLP-1誘導体は、生理的なインスリン分泌促進作用により血糖を低下させるが、それだけではなく、低血糖をきたしにくく、体重を減少させる作用を持つことも明らかになっている。さらに、同じインスリン分泌促進作用を有するSU薬でしばしば問題となる膵β細胞の疲弊がなく、むしろ膵β細胞を回復させることが示唆されている。DPP-IV阻害薬も、生理的なインスリン分泌促進作用、低血糖をきたしにくいという点については同じであるが、体重については、増加はさせないものの、減少させるという作用は、残念ながらない。またDPP-IV阻害薬は、単独投与よりもむしろ、他剤と併用することにより、他の経口血糖降下薬より優れた効果が望めると報告されている。 安全性については、GLP-1誘導体は嘔気や嘔吐が報告されているが、特に重篤となるものでもない。DPP-IV阻害薬は体内の至るところに存在する酵素であるため、その安全性―これらを阻害することで起こり得る全身に及ぼすさまざまな影響については、今後検討する必要があるということである。しかし、GLP-1誘導体は注射剤であり、DPP-IV阻害薬は経口薬であるため、DPP-IV阻害薬はGLP-1誘導体よりも患者に受け入れられやすいかもしれない。インクレチンは日本人で特に有用 大会最終日に行われたシンポジウム「インクレチン治療の将来展望」で、わが国におけるインクレチン療法の第一人者である清野 裕氏(関西電力病院 院長)は、「インクレチン療法は欧米人より、日本人でより効果がある」と述べた。その理由として、日本人では、インスリン分泌能の低下が主な病態となる2型糖尿病が多いこと、そして、増加しているとはいえ、欧米に比べると日本人では、肥満が少ないことを挙げた。実際に、臨床試験において、日本人でより効果的であることが示唆されるデータも蓄積されており、本大会で報告された。 近い将来、わが国でも多くの2型糖尿病患者に使用できるようになるGLP-1誘導体とDPP-IV阻害薬。最終日のシンポジウムでは、これら2種類のどちらを優先して使用すべきかが話題となっていた。海外で既に多くの2型糖尿病患者に使用されているとはいえ、まだまだ世界でのエビデンスも蓄積されつつある段階で、日本人におけるエビデンスも少なく、実際の臨床でどのように使っていけるのか、検討する余地がある。インクレチンは、糖尿病治療を大きく変えると期待されているが、世界中で、糖尿病患者を増やさない取り組みが積極的にされていても、世界中で肥満が爆発的に増え、糖尿病患者も増加の一途をたどっているという現実がある。

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(第51回日本糖尿病学会年次学術集会から) -2型糖尿病治療の新たな戦略- インクレチン治療(1) GLP-1誘導体

2008年5月21日~24日(土)まで、東京国際フォーラムにおいて、これまでで最多である11,623名が参加した「第51回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:東京大学大学院医学系研究科 門脇 孝氏)」が、開催された。数多くのシンポジウムやワークショップ、共催セミナーが開催され、さらには過去最多の一般演題が発表、海外から第一線で活躍する50名以上の先生方が参加した本集会において、最も多くの参加者を集めたのは、「インクレチン治療」をテーマとしたプログラムであった。わが国では現在、インクレチンを利用したいくつかのGLP-1受容体作動薬(皮下注射剤)およびDPPⅣ阻害薬(経口薬)が、申請中、あるいは臨床試験中であり、発売が待たれているが、欧米では、これら薬剤は、既に数年前から、多くの2型糖尿病患者に用いられている。古くて新しい“インクレチン”インクレチンは、小腸から分泌されるホルモンの総称で、栄養素の消化吸収とともに、消化管から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌を促進させる作用を有する。100年くらい前には既に小腸から抽出した因子に、血糖降下作用があることがわかっていたが、その実態については、しばらく明らかにされていなかった。しかし、血中の血糖上昇を同程度になるよう調整したブドウ糖を経静脈により流入させたときと、経口で摂取させたときの血糖降下程度に差があり、後者の方がより低下し、より血中のインスリン濃度が高くなることが明らかになったことから、それら因子は、糖が消化管を通過することで、インスリン分泌を促進させる作用を持つことが示された。その後の研究により、それが小腸から分泌されるいくつかのホルモンであることが明らかとなり、それらは総称して、その働きである「Secreti(o)n of insulin(インスリン分泌)」から、「incretin」と名づけられた。インクレチンの中で、膵β細胞に結合し、インスリン分泌を促進させる作用があることがわかっているのは、小腸上部のK細胞から分泌されるGIP(Gastric inhibitory polypeptide)と、小腸下部のL細胞から分泌されるGLP-1(Glucagon-like peptide-1)であり、GLP-1は、その機能を保ちつつ、体内で分解されにくい構造にしたGLP-1誘導体として、欧米では既に多くの2型糖尿病患者に用いられている。GLP-1は、SU薬とは異なる機序でインスリン分泌を促進元来、インスリン分泌能の低い日本人では、糖尿病を発症すると、インスリン分泌の低下が主体となる病態になることが多いため、インスリン分泌を促進する薬剤は非常に有用となる。現在、インスリン分泌を促進する薬剤としては、スルホニル尿素(SU)薬と速効型インスリン分泌促進薬がある。SU薬は、古くから使われており、確実に血糖を低下させることから、非常に多くの2型糖尿病患者に使われているが、しばしば、膵β細胞の疲弊による効果の減弱(二次無効)や低血糖の発現、体重の増加が問題となる。GLP-1は小腸で栄養素が消化吸収されることにより分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合し、インスリン分泌を促進させる。つまり、投与されたGLP-1誘導体のインスリン分泌促進作用は血中グルカゴン濃度依存性であるため、GLP-1誘導体は、絶え間なく膵臓を刺激し、インスリン分泌を促進し続けるSU薬と異なり、生理的なインスリン分泌促進作用(食後のインスリン分泌作用)を持ち、低血糖を来たしにくいという利点を有する。GLP-1は膵β細胞の機能を回復?GLP-1は膵β細胞のアポトーシスを抑制させる(in vitro)との報告や、糖尿病モデルラットにおいて、膵β細胞の数を増加させたとの報告などから、GLP-1誘導体は膵β細胞の機能を回復させる可能性があることが示唆されている。GLP-1は食欲を抑制し、体重を減少させる-GLP-1の膵外作用-膵外作用として、GLP-1は中枢神経に作用し、食欲を抑制することが、ラットおよびヒトで明らかになっており、実際にGLP-1誘導体を服用した2型糖尿病患者において、体重が減少することが報告されている。強力な血糖低下作用を持つSU薬を服用すると、空腹感から食欲が増し、体重が増加、さらに血糖が悪化するという悪循環に陥ることがあるが、この点からも、GLP-1誘導体が有用であると考えられている。わが国で発売が待たれるGLP-1誘導体現在、わが国では、GLP-1誘導体として、エクセナチド(イーライリリー/既に米国と欧米で使用中)が第2相試験中、リラグルチド(ノボノルディスク/米国と欧米で承認申請中)が第3相試験中である(ともに1日1回投与)。これらについては、本集会においても、海外における数多くのエビデンスが報告され、多くはないが日本人のエビデンスも発表された。生理的なインスリン分泌促進作用を持つGLP-1誘導体。さらに、低血糖が発現しにくく、体重増加がなく、むしろ体重を減少させ、その上、膵β細胞の機能を回復させる可能性が示唆されている。このように非常に期待できる有用な治療薬であり、わが国でもその使用が待たれているが、唯一の弱点は、皮下注射剤であるということである。インスリン注射と同様に、注射剤は、診療する医師にとっても、患者にとっても、なかなか導入が困難であるが、エクセナチドについては、週1回製剤も開発段階にあり、将来的には、週1回の注射のみで、良好な血糖コントロールが可能になる時代も期待できるかもしれない。次回は「(第51回日本糖尿病学会年次学術集会から)-2型糖尿病治療の新たな戦略-インクレチン治療(2) DPP-IV阻害薬」を紹介する。(ケアネット 栗林 千賀)

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自己血糖測定は無益であるばかりか患者のうつ病悪化をもたらす

自己血糖測定は、血糖コントロールに有益な影響を及ぼさないばかりか、うつ病を増幅する――。新規の非インスリン治療の2型糖尿病患者を対象に、セルフモニタリングが、血糖コントロール、および患者の治療に対する姿勢、満足度に及ぼす効果を検討していたMaurice J O’Kane氏らESMON studyグループは、このような調査結果を報告した。BMJ誌2008年5月24日号(オンライン版2008年4月17日号)掲載より。セルフモニタリング群と対照群を1年間追跡ESMON studyは、自己血糖測定を行うよう介入を行った群(セルフモニタリング群)と非介入群(対照群)とを比較するプロスペクティブな無作為化試験である。70歳未満で新規に2型糖尿病と診断された184例(うち男性は111例)が参加。二次性糖尿病患者、インスリン治療対象者、自己血糖測定の経験がある者は除外された。セルフモニタリング群(96例、うち男性55例)と対照群(88例、うち男性56例)に無作為化された参加者は、3ヵ月に1回の間隔で1年間追跡調査が行われた。両群とも、同一内容の教育プログラムを受講した後、セルフモニタリング群にのみ付加的な教育が課せられた。主要評価項目は、HbA1c、心理的指標、経口血糖降下剤服用の有無、BMI、および報告された低血糖の頻度。両群間の基線値はほとんど差がなく、平均年齢はセルフモニタリング群57.7歳(SD:11.0)vs. 対照群60.9歳(11.5)。HbA1cは8.8%(2.1)vs. 8.6%(2.3)。ただしBMIについては、34(7)vs. 32(6.2)でセルフモニタリング群のほうが高かった。追跡期間中いずれに時点でも有意差認められず結果は、追跡調査期間中のいずれの時点でも、両群間に有意差は認められなかった。HbA1c(SD)は6.9%(0.8)vs. 6.9%(1.2)(P=0.69、差異に対する95%信頼区間:0.25%~0.38%)。BMIは33.1(6.4)vs. 31.8(6.0)(基線BMIに対する調整P=0.32)。経口血糖降下薬の使用や低血糖の頻度の報告数にも有意差は認められなかった。ただし、うつ病に関するスコア(well-beingアンケートに基づくサブスケールで測定)がセルフモニタリング群で6%高まっていた(P=0.01)。これらの結果から、「自己血糖測定が、血糖コントロールに有益な影響を及ぼすことはない。かえってうつ病悪化に結びつく」と結論している。

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Challenge DM study発表される! -血糖管理に加えて徹底した血圧管理が心血管系イベントを抑制する重要な戦略-

17,000例を超える糖尿病合併高血圧例の観察研究がお披露目 23日、第51回日本糖尿病学会年次総会において河盛隆造氏(順天堂大学医学部)は、17,000例を超える糖尿病を合併した高血圧症例に関する観察研究『Candesartan antiHypertensive Assessment for Long Life Enrolled by General practitioners - target on hypertension with Diabetes Mellitus (Challenge-DM) study』の結果を初めて公表し、血糖管理に加えて血圧を130/80mmHg未満にコントロールすることで、さらに30%の心血管疾患系イベントの発症を抑制できることを示した。Challenge-DM studyは、糖尿病を合併した高血圧症例17,622例にカンデサルタンをベースとした治療を施行し、平均2年5ヵ月追跡した観察研究である。総イベントは突然死、脳血管系イベント、心血管系イベント、脳・心血管疾患系イベント、重篤な不整脈、重篤な腎障害、その他の血管障害と設定された。130/80mmHg未満にコントロールされていた症例は20%に満たない 『高血圧治療ガイドライン2004年版』(JSH2004)では糖尿病を合併した高血圧症の降圧目標を130/80mmHg未満と設定しているが、Challenge-DM studyにおいてこの目標値に到達した割合は1年後で13.6%、3年後で18.0%に留まった。降圧目標未達例における使用降圧薬数は平均1.9剤、カンデサルタンの平均用量は7.3mg/日と、標準用量の8mgを下回っていた。 一方、血糖管理については『糖尿病治療ガイド2008-2009』では、HbA1c<6.5%を「良」とし、まずは「良」を目指すべき管理目標値として定めているが、この推奨値に到達した割合は1年後で44.8%、3年後で45.4%であった。血圧値、HbA1c値、総コレステロール値、トリグリセリド値の全てがガイドライン推奨値に到達した割合は3年後においてもわずか3.2%に過ぎなかった。血糖管理+血圧管理によって、さらに30%のイベント抑制が可能に 有効性評価対象症例数16,869例中、826例に総イベントが認められ、これは年間1,000人あたり20.7人が発現することになり、この成績について河盛氏は、「10年も前に発表された久山町研究と大きく変化していない」と治療の選択が増えたにも関わらず改善していない状況を問題視した。 これをHbA1c値が6.5%未満に到達した7,651例と、6.5%以上であった9,017例に分けて解析すると、6.5%未満にコントロールすることで総イベント発現率が15%有意に低下することが示された。さらに6.5%未満にコントロールされていた7,651例を血圧値が130/80mmHg未満であった1,391例と130/80mmHg以上であった6,260例に分けて解析すると、降圧目標に達していた130/80mmHg未満群では、達していなかった群に比べて30%有意に軽減できることが明らかにされた。このことは日本人の糖尿病を合併した高血圧症例においてHbA1c値を6.5%未満にコントロールすることの重要性を示した初のエビデンスであるとともに、血圧を130/80mmHg未満に低下させることの意義を示した。 >総イベントの発現率を使用されていた糖尿病治療薬別にみると、インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンが投与されていた群では、非投与群に比べ有意に少なかったという糖尿病を治療する医師の立場にとって非常に興味深い結果が得られたと発表した。 以上、Challenge-DM studyについて発表された内容をまとめてみたが、ここからは既報の糖尿病合併高血圧症に関する知見より、今回発表されたChallenge-DM studyも交えて考察してみる。糖尿病と高血圧は合併しやすく、合併することで危険度が高まる 糖尿病症例では高血圧を併発しやすく、端野・壮瞥町研究によると糖尿病の実に62%が高血圧を伴っている1)。またその逆も然りで、高血圧患者において糖尿病の頻度は2~3倍高い。糖尿病患者は非糖尿病患者に比べ、心血管系疾患が2~3倍高率に発症する。高血圧の合併は心血管系疾患の発症率をさらに2~3倍増加させる。厳格な血圧管理によって心血管系イベントが抑制できることは証明済み このような糖尿病合併高血圧に対し、厳格な血圧管理(平均144/82mmHg)を行った群と、通常の血圧管理(平均154/87mmHg)を行った群を比較した介入試験UK Prospective Diabetes Study Group(UKPDS)試験において、厳格な血圧管理によって心血管系疾患の発症率が有意に少ないことが示された2)。また、最適な降圧目標を検証するために実施されたHypertension Optimal Treatment (HOT)試験では、拡張期血圧80mmHg以下を降圧目標にした群で、85mmHg以下群、90mmHg以下群に比べて心血管系イベントの発現リスクが有意に低かったことが示された3)。これらの試験結果より「糖尿病を合併した高血圧」においては130/80mmHg未満を降圧目標として設定されている。糖尿病患者さんの血圧コントロールは難しい しかし、この降圧目標はReal Worldでは20%も達成されておらず、わが国で2002年に実施された疫学研究によると、糖尿病合併高血圧症例のわずか11.3%しか130/80mmHg未満に達成していない4)。また、降圧薬を服用中の高血圧症例のうち、糖尿病を合併していた症例における解析においては、家庭血圧計において130/80mmHg未満に到達していた割合は18%に過ぎなかったことも報告されている5)。Challenge-DM studyにおいても目標血圧到達率は20%未満であり、目標到達の難しさを支持している。8割以上の医師が「糖尿病患者さんの血圧は130/80mmHg以下に!」と考えている 弊社が高血圧症例を10例/月以上診察しているケアネット会員医師を対象に実施した2007年6月に実施したアンケート調査によると、回答した81%の医師が糖尿病合併高血圧症に対しては130/80mmHg以下を治療目標としており、この点ではガイドラインが推奨する目標値との乖離はそれほど大きくない(ただし、58%の医師が130/80mmHgと回答)。心血管イベント発現抑制のカギは「徹底した血圧管理」 前述のUKPDS試験は収縮期血圧を10mmHg、拡張期血圧を5mmHg低下させることにより、HbA1c値を0.9%低下させるよりも、合併症のリスク低下が大きい傾向が認められ、糖尿病患者における血圧管理の重要性も示した。この結果は、糖尿病患者において血圧のコントロールが血糖のコントロールに勝るとも劣らない効果を有することと、血圧は低ければ低いほどよいことを示した。Challenge-DM studyは、血糖値に加えて血圧値もガイドラインで推奨されている範囲にコントロールできた場合、血糖値だけがコントロールできている場合よりさらにイベントの発現を30%低下させられることを証明した。この研究では血糖値と血圧値が目標レベルに達していたのは8%ほどであったが、とくに達成率が低かった血圧値をより厳格に管理することで心血管系疾患の発症を抑制されることができるのではないだろうか。カンデサルタンとピオグリタゾンの併用に新たな可能性 「HbA1c値を6.5%未満に管理した上で血圧を厳格にコントロールする」、Challenge-DM studyはもう1つイベントの発現を低下させる戦略を示している。ピオグリタゾン投与例では、非投与例に比べ、総イベント発現率が有意に少なかった。 これに関連して、最近、熊本大学 中村・光山氏のグループは、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)においてピオグリタゾンの糖代謝改善作用と独立した心筋における抗炎症作用、線維化抑制作用、血管内皮機能改善作用、心筋・血管に対する抗酸化作用があることをHypertension誌に発表した6)。そしてこれらの作用はカンデサルタンの併用により増強されるというのである。 今回、Challenge-DM studyにおいてピオグリタゾン投与例でイベント発症率が低かったことは、基礎研究の結果が臨床においてその有効性が窺えたと考えられる。今後、無作為化比較試験が実施され、この新しいレジメンの有用性が証明されることを期待したい。1) Iimura O:Hypertens Res.1996;19(Suppl 1):S1-S82) UK Prospective Diabetes Study Group:BMJ.1998;317:703-7133) Hansson L et al:Lancet.1998;351:1755-17624) Mori H et al:Hypertens Res.2006;29:143-1515) Obara T et al:Diabetes Res Clin Pract.2006;73:276-2836) Nakamura T et al:Hypertensio

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妊娠糖尿病の治療にはインスリンよりメトホルミンが有利

妊娠糖尿病の女性に対するメトホルミン投与はロジカルな治療だが、その有効性と安全性を評価する無作為試験はない。ニュージーランド・オークランド市National Women's Health, Auckland City HospitalのJanet A. Rowan氏らは、妊娠糖尿病の女性を対象にメトホルミンとインスリンの比較試験を実施。周産期合併症の発生率では両者に差はないが、インスリン注射より経口のメトホルミンによる治療のほうが、患者には好まれると報告している。NEJM誌2008年5月8日号より。妊娠20~33週の女性751例と新生児を調査試験は、妊娠20~33週の妊娠糖尿病の女性751例を、メトホルミン(必要ならインスリンを追加)またはインスリンの治療に無作為に割り付けて行われた非盲検試験。主要転帰は、新生児低血糖、呼吸困難、光線療法の必要性、分娩時外傷、5分後アプガースコアが7点未満、未熟児とする複合転帰とした。副次的転帰は、新生児の身体測定値、母体の血糖コントロール、母体の高血圧合併症、分娩後耐糖能および治療許容性とした。メトホルミン群363例のうち92.6%は分娩までメトホルミン投与を受け続け、46.3%はインスリン追加投与を受けた。周産期合併症に差はなく、妊婦は「次回もメトホルミン」主要複合転帰の発生率はメトホルミン群32.0%、インスリン群32.2%で両者に差はなかった(相対リスク:1.00、95%信頼区間:0.90~1.10)。しかしメトホルミン群はインスリン群より多数の女性が、次の妊娠時にも今回自分たちが割り付けられた治療を選択すると答えた(76.6%対27.2%、P

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2型糖尿病患者の冠動脈硬化症にはグリメピリドよりピオグリタゾン

経口糖尿病治療薬であるインスリン抵抗性改善薬のピオグリタゾン(国内商品名:アクトス)とグリメピリド(SU剤)について、2型糖尿病患者の冠動脈硬化症に対する進行抑制効果を比較した臨床試験「PERISCOPE」の結果が2008年3月31日、米国の心臓学会で発表。クリーブランド・クリニック(米国)のSteven E. Nissen氏らは、「ピオグリタゾンのほうが動脈硬化進展の抑制効果が高い」と報告した。報告は同日のJAMA誌オンライン版で公表された(本誌2008年4月2日収載)。南北アメリカの97施設が協力「PERISCOPE」には、南北アメリカ大陸の大学および地域医療機関97施設が参加。2003年8月から2006年3月の間に登録された冠動脈疾患と2型糖尿病を有する患者543例を対象に、二重盲検無作為多施設共同試験を行った。患者には冠動脈の血管内超音波検査が行われ、18ヵ月にわたってグリメピリド1~4mgまたはピオグリタゾン15~45mgが無作為に投与された。ベースラインからのアテローム量変化率(PAV)を主要評価項目とした結果、研究完了時点で360例にアテローム性動脈硬化症の進行が認められた。PAV、HbA1cとも低下、HDLは上昇PAVは、グリメピリド群が0.73%上昇(95%信頼区間:0.33%~1.12%)したのに対し、ピオグリタゾン群では0.16%低下(95%CI:-0.57%~0.25%)した(P=0.002)。HbA1cのベースライン平均値(SD)は両群とも7.4%(1.0%)で、ピオグリタゾンによる処置の間は平均0.55%(95%信頼区間:-0.68%~-0.42%)低下したが、グリメピリドの場合は同0.36%(-0.48%~-0.24%)低下にとどまった(群間差 P=0.03)。高密度リポ蛋白質(HDL)値も、ピオグリタゾン群が5.7mg/dL(95%信頼区間:4.4~7.0mg/dL、16.0%)で、グリメピリド群の0.9mg/dL(0.3~2.1mg/dL、4.1%)より高かった。逆に中性脂肪は、ピオグリタゾン群では16.3mg/dL(-27.7~-11.0 mg/dL、15.3%)低下したが、グリメピリド群は3.3mg/dL(-10.7~11.7mg/dL、0.6%)上昇した(群間差 P<0.001)。空腹時のインスリン濃度の中央値はピオグリタゾン群で低下、グリメピリド群で上昇した(P<0.001)。低血糖症はグリメピリド群のほうが頻度が高く、浮腫と骨折、ヘモグロビン・レベルの低下は、ピオグリタゾン群でより多く起こった。以上の結果を踏まえNissen氏らは「2型糖尿病患者では、ピオグリタゾンのほうがグリメピリドより、冠動脈硬化症の進展を有意に抑制できる」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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インスリン血性低血糖症治療薬「アログリセムカプセル」や「アクテムラ」関節リウマチの効能追加などを承認

3月25日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会は高インスリン血性低血糖症治療薬「アログリセムカプセル」などの新薬11成分を承認した。高インスリン血性低血糖症治療薬「アログリセムカプセル」のほか、2番目の腎細胞癌の複数分子標的薬となる「スーテントカプセル」、世界で初めて関節リウマチを効能追加した抗体医薬「アクテムラ」、ムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム」などがある。4月中に承認。なお、「ナグラザイム」は4月中にも緊急薬価収載される。

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武田薬品 ブロプレスと利尿剤の合剤を申請

 3月17日、武田薬品工業はブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)と利尿剤(一般名:ヒドロクロロチアジド)の合剤を厚生労働省に申請したと発表した。武田薬品の配合剤としては、海外ではインスリン抵抗性改善剤であるアクトス(一般名:塩酸ピオグリタゾン)とビグアナイド系血糖降下剤(一般名:メトフォルミン)との合剤や、アクトスとスルフォニル尿素剤(一般名:グリメピリド)との合剤を発売しているが、承認されれば日本市場向け製品の第1号となる見通し。

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テストステロン補充療法がメタボを促進?

男性ホルモンの一種であるテストステロンは、年齢とともに有意に減少することから、テストステロンの補充が老化に対してプラスに働くと考えられている。本論文は、テストステロン濃度が低下した高齢男性に対するテストステロン補充療法の効果に関する臨床試験の報告。運動機能、認知機能、骨密度、体組成、血漿脂質、QOL、安全性が調べられた。JAMA誌2008年1月2日号より。テストステロン160mg/日を60日間投与試験を行ったのはユトレヒト大学医療センター(オランダ)のMarielle H. Emmelot-Vonk氏らの研究グループ。二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、テストステロン濃度が13.7nmol/L未満に低下した60~80歳の健常男性237例を対象に、2004年1月から2005年4月にかけて実施した。対象者は、テストステロン(アンドリオール)を1日2回(80mg/回)投与群とプラセボ投与群にランダムに割り付けられ、6ヵ月間投与を受けた。主要評価項目は、運動機能(スタンフォード式健康評価質問票、timed get up and go test、握力、脚伸筋力)、認知機能、骨密度(股関節と腰椎)、体組成、メタボリック危険因子(空腹時血漿脂質、グルコース、インスリン)、QOL(SFH36とQLSMによる)ならびに安全性指標(血清前立腺特異抗原濃度、前立腺体積、国際排尿症状スコア、血清クレアチニン濃度、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ:AST、アラニンアミノトランスフェラーゼ:ALT、γ-グルタミルトランスフェラーゼ:GGT、ヘモグロビン、ヘマトクリット)。身体機能、認知機能、QOLに有意な変化みられず解析対象となった207例のうち、テストステロン投与群はプラセボ投与群と比較して、体脂肪は減少したが除脂肪体重が増大した。しかし、除脂肪体重増によって運動機能や筋力がアップすることはなく、認知機能と骨密度にも変化はみられなかった。インスリン感受性は向上したが、HDLコレステロールは減少。試験終了時には、テストステロン投与群の47.8%、プラセボ投与群の35.5%にメタボリックシンドロームがみられた(P=0.07)。QOLに関しては、ホルモン関連のQOL指標がアップした以外は変化がなかった。前立腺の安全を脅かす因子は検出されていない。これらから研究グループは、テストステロンが低下した高齢男性へのテストステロン補充療法は、除脂肪体重の増加、代謝面の複合的な影響がみられた以外は、身体機能あるいは認知機能への影響は確認できなかったと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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抗精神病薬副作用の体重増加や代謝異常に有効なのは?

精神病患者の高脂血症、代謝異常などの共存症発症は、抗精神病薬に共通する副作用の体重増加が関連しているといわれる。中国湖南省にある中南大学湘雅第二医院メンタルヘルス部門のRen-Rong Wu氏らは、抗精神病薬による体重増加や代謝異常に対して、生活習慣への介入単独、+メトホルミン投与もしくはメトホルミン単独投与それぞれの有効性について、同院患者を対象に無作為化試験を実施。JAMA誌2008年1月9日号にて報告した。治療前より体重が10%以上増の統合失調症患者128例を対象試験は2004年10月~2006年12月にかけて、湘雅第二医院の統合失調症を有し、投薬治療前と体重が10%以上増加した成人患者128例を対象に行われた。対象者は無作為に4つの治療群(メトホルミン単独投与群、プラセボ単独投与群、生活習慣介入+メトホルミン投与群、生活習慣介入+プラセボ投与群)のいずれかに割り付けられ、12週間にわたり治療が行われた。メトホルミンの投与量は750mg/日。主要評価項目は、BMI指数、腹囲、インスリン濃度、インスリン抵抗性指数(HOMA-R)。生活習慣介入+メトホルミン、メト単独、生活単独の順で有効対象128例の初期統合失調症患者は全員、精神医学的に比較的安定した状態に改善した。生活習慣介入+メトホルミン投与群は、BMI指数平均1.8(95%信頼区間:1.3~2.3)、インスリン抵抗性指数平均3.6(同2.7~4.5)、腹囲平均2.0cm(同1.5~2.4cm)それぞれ減少した。メトホルミン単独投与群は、1.2(同0.9~1.5)、3.5(同CI、2.7~4.4)、1.3cm(同1.1~1.5cm)。生活習慣介入+プラセボ投与群は、0.5(同0.3~0.8)、1.0(同0.5~1.5)。しかしながらプラセボ単独投与群では平均、1.2(同0.9~1.5)、0.4(同0.1~0.7)、2.2cm(同1.7~2.8cm)ずつの増加がみられた。抗精神病薬による体重増加に対しては生活習慣介入、メトホルミン投与、もしくは両者の組み合わせのいずれもが有効であることが示され、なかでも最も有意に優れていたのは、生活習慣介入+メトホルミン投与であり、メトホルミン単独投与、生活習慣単独介入の順であったと研究者らはまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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rosiglitazoneが心血管リスクの増加に関連

2型糖尿病の治療に用いられるインスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン系薬剤(TZDs)は、一方でうっ血性心不全、あるいは急性心筋梗塞のリスクとの関連が指摘される。本報告は、「コホートレベルで関連を調べた研究は少ない」としてTZDsとリスクの関連について後ろ向きコホート研究を行った、カナダ・オンタリオ州Institute for Clinical Evaluative Sciences のLorraine L. Lipscombe氏らによる研究報告。JAMA誌12月12日号掲載より。66歳以上16万の糖尿病患者コホートを解析TZDと他の経口血糖降下薬治療との比較で、うっ血性心不全との間の関連、急性心筋梗塞と死亡率を調査することを目的とする本研究は、カナダ・オンタリの保健データベースを利用し行われた。解析はネステッド・ケースコントロールにて実施。対象は2002年から2005年にかけて、少なくとも1つの経口血糖降下薬の投与を受けた66歳以上の糖尿病患者(N=159,026)で、2006年3月31日まで追跡した。主要評価項目は、うっ血性心不全による救急来院または入院、副次評価項目は急性心筋梗塞による救急来院と全原因死亡率とした。これらイベントのリスク因子を特定するため、TZDs(rosiglitazoneとピオグリタゾン)単独療法を受けた患者と、他の経口血糖降下薬の併用療法を受けた患者とを調整後に比較した。TZD単独療法は有意に心血管リスクを増加追跡期間中央値3.8年の間に12,491例(7.9%)がうっ血性心不全で病院を受診、12,578例(7.9%)が急性心筋梗塞、30,265例(19%)が死亡した。一般に行われるTZD単独療法は他の経口血糖降下薬併用療法(うっ血性心不全3,478例、急性心筋梗塞3,695例、死亡5,529例)と比較して、うっ血性心不全(78例、調整リスク比:1.60、 95%信頼区間:1.21-2.10、P<0.001)、急性心筋梗塞(65例、同1.40、1.05-1.6、P=0.02)、死亡(102例、同1.29、1.02-1.62、P=0.03)で、有意なリスク増大と関連していた。TZD使用に関連したうっ血性心不全、急性心筋梗塞ならびに死亡率のリスク増はrosiglitazoneだけにみられた。研究者らは、このコホート研究によって、高齢糖尿病患者に対する主にrosiglitazoneによるTZD療法は他の経口血糖降下薬併用療法と比較して、うっ血性心不全、急性心筋梗塞、死亡率のリスク増加と関連していたと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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心血管系リスクは「妊娠中毒症」のリスク

Pre-eclampsia(妊娠高血圧症候群:PIH、旧「妊娠中毒症」)患者における心血管系リスク増悪はこれまでも報告されてきたが、このたび、妊娠前・妊娠時の心血管系リスクがPIHのリスクであるとの報告がなされた。Norwegian University of Science and Technology(ノルウェー)のElisabeth Balstad Magnussen氏らが明らかにしたもので、11月1日付けBMJホームページにて早期公開、同誌11月10日号に掲載された。地域住民女性3,500名で検討検討対象となったのは住民研究Nord Tr〓ndelangヘルス・スタディ(〓:Oの中に/、以下同じ)に参加し、出生届が確認された3,494名。Nord Tr〓ndelangヘルス・スタディには、1995~1997年に20歳以上だった全地域女性に登録を呼びかけていた。出生は22週以降の分娩とし、新生児の体重500g以上で9ヵ月以上生存した場合を検討対象とした。母体の健康状態は、Nord Tr〓ndelangヘルス・スタディにおける問診と出生届記載の情報を参照した。PIH例では代償機転が必要以上に大きく作用?3,494名中、133例(3.8%)がPIHだった。PIH群では背景因子中に心血管系リスクが多く認められた。すなわち、出産時母体年齢、妊娠期間、PIH既往と喫煙で補正後、PIHオッズ比は、収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール値、LDLコレステロール値、非HDLコレステロール値──が上昇するに従い有意に増加していた。また、BMI、腹囲径の上昇もPIHオッズ比を増加させる有意な傾向が認められた。また両親いずれかの既往症との関係では、高血圧と糖尿病がPIHリスクを有意に増加させていたが、虚血性心疾患、また(これまで相関が報告されている)脳卒中とは有意な相関がなかった。Magnussen氏らは「妊娠前・妊娠時の心血管系リスクはPIH発症リスクと相関している」と結論すると同時に、正常な妊婦でもインスリン抵抗性の軽度上昇や軽度の脂質代謝異常は認められるため、PIH例ではこれらの妊娠に対する代償機転が必要以上に大きく作用しているのではないかと考察している。(宇津貴史:医学レポーター)

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インスリン療法の追加はどのタイプが適切なのか?

2型糖尿病患者で経口糖尿病薬による血糖コントロールが不十分になると、インスリンが追加されることは一般的である。しかし、どのようなインスリン療法が適切なのか、これまで大規模な調査は行われておらずエビデンスに限界があった。 そこでオックスフォード大学(英国)チャーチル病院糖尿病センターのRury R. Holman氏ら4T(Treating to Target in Type 2 Diabetes)研究グループが、多施設共同非盲検対照試験を実施。NEJM誌オンライン版9月21日付、本誌10月25日号で結果が掲載された。「二相性」「食前」「持効型」を比較対照患者は、メトホルミンおよびSU剤の最大許容量投与ではグリコヘモグロビン値が至適とならない(7.0~10.0%)708例で、「二相性インスリン(1日2回投与)」「食前インスリン(1日3回投与)」「持効型インスリンインスリンデテミル:1日1回投与;必要に応じて2回投与)」のいずれかに無作為に割り付けられた。転帰評価項目は1年時点での平均グリコヘモグロビン値、およびグリコヘモグロビン値が6.5%以下になった患者の割合、低血糖発生率、体重増加。その結果、平均グリコヘモグロビン値は、「二相性投与群」と「食前投与群」ではそれぞれ7.3%、7.2%と同等だったが(P=0.08)、「持効型投与群」は7.6%で、より高かった(両群との比較に対するP

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グリタゾン系薬により心不全増加するも心血管系死亡率は不変:メタ解析

AHA・ADAによるコンセンサスガイドライン(2003年)では、「インスリン療法例」と「多リスクファクター例」以外では「心不全発症リスクが極めて低い」とされたグリタゾン系薬剤だが、約20,000例を対象としたメタ解析の結果、プラセボ・他剤に比べ心不全発症リスクの有意な増加が確認された。ただし心血管系死亡の有意な増加は認められていない。Lancet誌9月29日号に米国Lahey Clinic Medical CenterのRodrigo M Lago氏らが報告した。心不全発症は有意に増加対象となったのは前糖尿病・2型糖尿病患者においてグリタゾン系薬剤が検討された無作為化二重盲検試験。7試験、20,191例(rosiglitazone:5試験、14,491例、ピオグリタゾン:2試験、5,700例)で解析が行われた。平均29.7ヵ月の追跡期間中、360例の心不全発症が報告されており、グリタゾン系群における発症リスクは対照群の1.72(95%信頼区間:1.21-2.42)倍と有意に増加していた。Rosiglitazone群、ピオグリタゾン群に分けて解析しても同様で、心不全発症リスクの増加は有意だった。心血管系死亡は減少傾向しかし心血管系死亡のリスクはrosiglitazone、ピオグリタゾン群いずれも、対照群に比べ低下傾向を示していた。このため筆者らは「グリタゾン系により増加する心不全が左室リモデリングを伴う通常の心不全と異なる可能性」を示唆するとともに「心不全から死に至るには追跡期間が短すぎる」点も認めている。なお現在、rosiglitazoneによる心血管系イベントへの影響を検討する大規模試験RECORDが進行中である。(宇津貴史:医学レポーター)

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医療事故309件、今年4月から6月

日本医療機能評価機構の医療事故防止センターによると、今年4~6月に報告された医療事故は309件だった。そのうち、うち死亡事故は27件。 内容は、療養上の世話107件(34.6%)、治療処置105件(34.0%)、医療用具等22件(7.1%)、薬剤19件(6.1%)だった。 薬剤に関連した事故27件をみると、「実施段階」9件  ・薬剤が準備されていた注射器の取り違え2件  ・別の患者の内服薬の誤投与3件 など「指示段階」8件  ・薬剤名の類似による入力間違い1件  ・インスリンの単位間違い1件  ・指示の変更が反映されなかった1件 など「準備段階」8件  ・薬瓶の類似による薬剤間違い2件  ・外観の類似による薬剤間違い1件 など詳細は下記をご覧くださいhttp://jcqhc.or.jp/html/accident.htm#med-safe

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グリタゾン系薬剤は糖尿病合併心不全患者の予後増悪?:体系的レビュー

慢性心不全患者ではHbA1c低値が予後増悪の予知因子と報告されているが、予後を増悪させているのはチアゾリジン誘導体(グリタゾン系薬剤)で、メトホルミンではそのようなおそれが少ないことが示唆された。Institute of Health Economics(カナダ)のDean T. Eurich氏らがBMJ誌8月30日付けHPにて早期公開論文として報告した(その後本誌では9月8日号にて掲載)。メトホルミンでは増悪認めずEurich氏らは、血糖低下薬と死亡・入院の関係を糖尿病合併心不全患者で検討しており、チェックリストにより一定の質が認められた8試験(13論文)のデータを体系的にレビューした。その結果、まずインスリンは心不全患者の総死亡を増加させていた可能性が示唆された。SU剤も同様の可能性が示された。一方メトホルミンは、SU剤などと比較した2試験15,763例をプール解析したところ、「全入院」のリスクが有意に低下していた(オッズ比:0.85、95%信頼区間:0.76~0.95)。一方、グリタゾン系薬剤をSU剤などと比較したプール解析(4試験、22,476例)では、「全入院」のリスクがグリタゾン系薬剤群で有意に増加していた(オッズ比:1.13、95%信頼区間:1.04~1.22)。Eurich氏らは、ロシグリタゾンによる心不全増加が近年示唆されている点などを指摘しながら、「現状では心不全患者の予後を増悪させない唯一の血糖降下薬はメトホルミンである」と結論している。なお、米国医師会雑誌(JAMA)9月12月号に掲載されたWake Forest University(米国)のCurt Furberg氏らによるメタ解析は、当初Cleveland Clinic(米国)のSteven Nissen氏らによるメタ解析が見いだしたロシグリタゾンによる心イベント増加を否定している。Eurich氏らも述べているが、メトホルミンとグリタゾン系薬剤の直接比較が必要であろう。(宇津貴史:医学レポーター)

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インスリン不使用2型糖尿病患者では血糖値自己測定の有用性に疑問符

血糖値を自己測定しても血糖コントロールは改善されない可能性が示唆された。イギリス・オックスフォード大学のAndrew Farmer氏らが無作為化オープン試験であるDiGEM(Diabetes Glycemic Education and Monitoring)スタディの結果としてBMJのサイトにて早期公表した(6月25日付オンライン版、本誌掲載は7月21日号)。 血糖値の自己測定を推奨している米国糖尿病学会(ADA)による2007年ガイドラインなどを見直す必要性が示唆された形となった。1週間に2回血糖値を自己測定本スタディでは、インスリンを使用していない2型糖尿病患者を対象に、通常の血糖コントロール(通常治療群:152例)と、1週間に2日、3回/日(空腹時×1、食事2時間前・食後2時間値のいずれか×2)の血糖自己測定がHbA1cに及ぼす影響が比較された。血糖自己測定群はさらに、血糖測定後に低血糖または高血糖が認められた時に医師とコンタクトをとる「単純自己測定群」(150例)と、血糖値に応じた対処法を指導される「積極的自己測定群」(151例)に無作為化されている。対象患者の平均年齢は65.7歳、罹病期間中央値は3年間、HbA1c平均値は7.5%だった。1年後のHbA1cに有意差なし1次評価項目である1年後のHbA1c値は、しかし、3群間に有意差はなく、通常治療群7.49%、単純自己測定群7.28%、積極的自己測定群7.36%という結果だった(p=0.12)。試験開始時からの変化率で比較しても、3群間に有意差はなかった(p=0.38)。本試験の対象のように、すでにかなり良好な血糖コントロールが得られているインスリン不使用の2型糖尿病患者では、コスト等を考えるとルーチンな血糖自己測定は推奨できない──と筆者らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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女性における非空腹時TG値は心血管イベントとの強い関連示す

食後高トリグリセリド(TG)血症はアテローム性動脈硬化症を引き起こす重要な役割を果たす可能性がある、など論争の的になっているTG値と心血管疾患との関連について、アメリカ・ボストンのブリガム&ウーマン病院Sandeep Bansal氏らの研究グループが研究報告を行った。JAMA誌7月18日号の掲載報告から。米国女性26,509例を対象とした前向き研究Bansal氏らが行ったのは、空腹時と非空腹時それぞれのTG値と将来的な心血管イベントリスクとの関連を評価するというもの。Women's Health Studyに健康状態良好で参加登録した米国女性26,509例(1992年11月~1995年7月の間に登録、追跡調査期間中央値11.4年)を対象とした前向き研究で、TG値は、登録時の血液サンプル測定値が用いられた(空腹時群20,118例、非空腹時群6,391例)。主要評価項目は心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的虚血性発作、冠動脈再建または心血管死亡)の発生ハザード比。追跡期間中央値11.4年の間に心血管イベントを経験した参加者は1,001例(非致死的心筋梗塞276例、虚血性発作265例、冠動脈再建628例、心血管死亡163例)で、総発生率は3.46/1,000人年だった。空腹時TG値は独立した関連性を示さない空腹時群および非空腹時群の各TG値からの心血管イベントの予測は、年齢、血圧、および喫煙とホルモン療法について加味した補正後モデルにおいては、いずれも可能だった。しかし、さらに総コレステロール、HDLコレステロール、インスリン抵抗性を加味した補正後モデルでは、空腹時群TG値と心血管イベントとの関連は弱まってしまった。これに対して非空腹時群では強い関連を示し続けた。また2次解析の結果、食後2~4時間での測定TG値が、最もよく心血管イベントとの関連を示し、空腹時間が長くなるほど減少することも明らかとなった。これら結果からBansal氏らは、女性において、非空腹時TG値は、従来の心血管リスク因子や他の脂質レベル、インスリン抵抗性マーカーとは別個の、心血管イベントとの関連を示す強力な因子であると結論づけた。なお同日号で、「男性および女性における非空腹時TG値と心筋梗塞、虚血性心疾患および死亡とのリスク」と題するデンマークからの報告も寄せられており、合わせて読むと知見が深まる。(武藤まき:医療ライター)

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肥満児への体重管理プログラム介入の成果

米国では小児肥満が「蔓延」している状況にあり、2型糖尿病を含む共存症の原因となっている。肥満児の大半は肥満したまま成人になるため、若年で重篤な代謝性疾患を来すことも懸念される。この重大な健康問題に対処するため効果的な小児科学的介入が欠かせなくなっている。 エール大学医学部臨床研究センターのMary Savoye氏らは、肥満児に対する体重管理プログラムの介入を集中的に行った結果、体重、BMI、体脂肪、HOMA-IRなどで改善効果が得られたとする発表を行った。JAMA誌6月27日号からの報告。 体重管理プログラムと臨床的カウンセリングを無作為割り付けMary Savoye氏らは、体重管理プログラム(Bright Bodies)介入が肥満児の体脂肪蓄積と代謝性疾患に及ぼす影響を、対照群と比較しながら無作為化臨床試験を行った。参加者の募集と追跡調査はコネチカット州ニューヘーヴン市にあるエール小児肥満クリニックが担当、運動プログラムには日本製のダンスゲームが使われた。対象は、8歳から16歳までの様々な人種から、年齢・性別でBMI値が 95パーセンタイル値以上の者が選ばれ、体重管理群と対照群に割り付けられた。トータルで135例(60%)が6ヵ月間、119例(53%)が12ヵ月間の介入・追跡調査を受けた。介入は、体重管理群(n=105)は運動、栄養改善と行動変容を目的とした家族ぐるみの集中的なプログラムを、対照群(n=69)は従来型の臨床的体重管理カウンセリングを受けた。最初の6ヵ月は隔週で、その後は隔月に実施された。12ヵ月継続で体成分、インスリン抵抗性など改善の有効性を確認体重管理群と対照群の体重、BMI、体脂肪、HOMA-IRの変化を12ヵ月時点で測定した結果は次の通りで(平均値、[95%信頼区間])、Savoye氏らは、「Bright Bodies体重管理プログラムを12ヵ月継続した肥満児で、体成分やインスリン抵抗性の改善効果が得られた」と報告した。・体重(+0.3kg[-1.4~2.0]対+7.7kg[5.3~10.0])・BMI(-1.7[-2.3~-1.1]対+1.6[0.8~2.3])・体脂肪(-3.7kg[5.4~-2.1]対+5.5kg[3.2~7.8])・HOMA-IR(-1.52[-1.93~-1.01]対+0.90[-0.07~2.05])(朝田哲明:医療ライター)

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