妊娠糖尿病の治療にはインスリンよりメトホルミンが有利

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2008/05/21

 

妊娠糖尿病の女性に対するメトホルミン投与はロジカルな治療だが、その有効性と安全性を評価する無作為試験はない。ニュージーランド・オークランド市National Women's Health, Auckland City HospitalのJanet A. Rowan氏らは、妊娠糖尿病の女性を対象にメトホルミンとインスリンの比較試験を実施。周産期合併症の発生率では両者に差はないが、インスリン注射より経口のメトホルミンによる治療のほうが、患者には好まれると報告している。NEJM誌2008年5月8日号より。

妊娠20~33週の女性751例と新生児を調査




試験は、妊娠20~33週の妊娠糖尿病の女性751例を、メトホルミン(必要ならインスリンを追加)またはインスリンの治療に無作為に割り付けて行われた非盲検試験。

主要転帰は、新生児低血糖、呼吸困難、光線療法の必要性、分娩時外傷、5分後アプガースコアが7点未満、未熟児とする複合転帰とした。副次的転帰は、新生児の身体測定値、母体の血糖コントロール、母体の高血圧合併症、分娩後耐糖能および治療許容性とした。メトホルミン群363例のうち92.6%は分娩までメトホルミン投与を受け続け、46.3%はインスリン追加投与を受けた。

周産期合併症に差はなく、妊婦は「次回もメトホルミン」




主要複合転帰の発生率はメトホルミン群32.0%、インスリン群32.2%で両者に差はなかった(相対リスク:1.00、95%信頼区間:0.90~1.10)。しかしメトホルミン群はインスリン群より多数の女性が、次の妊娠時にも今回自分たちが割り付けられた治療を選択すると答えた(76.6%対27.2%、P<0.001)。

他の副次的転帰の発生率は、両群間に有意差がなかった。メトホルミン使用に関連する深刻な有害事象も認められていない。

Rowan氏らは「妊娠糖尿病の女性へのメトホルミン投与(単独またはインスリン追加)は、インスリンだけの投与と比較して、周産期合併症の増加を伴わないうえ、本人たちに好まれている」と結論している。
 
*日本では、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に対するメトホルミンの投与は禁忌です。

(武藤まき:医療ライター)