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被災地で処方箋なしの医薬品販売が可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第175回

2026年7月28日に熊本を震源とする大地震が発生しました。犠牲者はこれまでに38人に上り、自宅で寝ることができない人も多くいると報道されています。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。医療や医薬品まわりでも、支援などの対応が始まっています。地震発生翌日の7月29日、厚生労働省が「令和8年熊本地震による災害に伴う医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等に係る取扱いについて1)」という事務連絡を発出しました。薬局の仮設店舗での調剤、管理者や勤務薬剤師の変更手続きの省略、処方箋なしでの処方箋医薬品の販売など、医薬品の調剤に関連するさまざまな手続きを省略し、一時的に被災地での医薬品調剤などを確保するための事務連絡です。医療のサポートに入る薬剤師さんはぜひご一読ください。また、熊本県のホームページでは、熊本県内の薬局の開設状況2)について公表されています。薬局から回答があったもののみを掲載しているとのことなので、すべての薬局の状況を反映しているとは限りませんが、随時その状況は明らかになっていくものと思われます。一般の方に向けては、「令和8年熊本地震により、マイナ保険証、資格確認書や公費負担医療の受給者証等を紛失あるいは自宅に残したまま避難されている方等も、医療機関等において、氏名、生年月日、連絡先(電話番号等)、住所等を申し立てることにより、受診できます」と発表されています3)。もし被災地にお知り合いの方がいらっしゃったら、それらがなくても医療機関を受診できることを教えてあげてください。被災地のニーズに合わせた支援物資を私は2011年に発生した東日本大震災の医療ボランティアに参加しました。その先陣を切った薬剤師が、送付された物資の仕分けや管理に時間を要して苦労したと話していました。支援物資が結局廃棄になることもあり、それも現場の負担になったようです。もちろん善意であることは疑いようもないのですが、ありがた迷惑になってはいけません。もし物資を送ろうと思っているのでしたら、受け入れ側が本当に必要としているものであるかどうかを確認してから送ることをお勧めします。2016年の大地震で甚大な被害が生じ、着々と復旧・復興が進んでいるというときに再度大地震が発生し、大きなショックを受けている方は多いと思います。熊本をはじめ、今回の地震で被災した方々が少しでも早く元の生活に戻れるよう、微力ながら応援したいと思います。参考1.令和8年熊本地震による災害に伴う医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等に係る取扱いについて / 厚生労働省 2.薬局の開設状況について(令和8年熊本地震関係情報) / 熊本県ホームページ3.医療機関等を受診される避難者の皆様へ / 熊本県ホームページ

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筋層浸潤性膀胱がん、周術期EV+ペムブロリズマブが有効/NEJM

 シスプラチンベースの化学療法の対象となる筋層浸潤性膀胱がん患者において、周術期(術前・術後)にエンホルツマブ ベドチン(ネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体)+ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)を投与すると、術前補助療法としてシスプラチン+ゲムシタビンを投与した場合と比較して、無イベント生存率(EFS)と全生存率(OS)が有意に改善し、病理学的完全奏効率も有意に良好であり、一方でGrade3以上の有害事象の発現率は高かった。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のMatthew D. Galsky氏らKEYNOTE-B15/EV-304 Investigatorsが、米国、欧州連合、その他の地域(日本を含む)の158施設で実施した非盲検無作為化実薬対照第III相試験「KEYNOTE-B15/EV-304試験」の結果を報告した。研究の成果は、NEJM誌2026年7月23日号で発表された。術前シスプラチン+ゲムシタビンと比較 KEYNOTE-B15/EV-304試験は2021年5月~2023年12月に実施され(Merck Sharp and Dohmeなどの助成を受けた)、年齢18歳以上で、組織学的に筋層浸潤性膀胱がん(臨床病期T2~4aN0M0/T1~4aN1M0)と確認され、シスプラチンベースの化学療法が適応の患者を登録した。 被験者808例を、術前にエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブを投与した後に根治的膀胱全摘除術(+骨盤内リンパ節郭清)を行い、術後にエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブの投与を受ける群(周術期EV-Pembro群:405例、年齢中央値66.0歳、男性80.7%)、または術前にシスプラチン+ゲムシタビンを投与した後に根治的膀胱全摘除術(+骨盤内リンパ節郭清)を受ける群(術前Cis-Gem群:403例、年齢中央値66.0歳、男性81.1%)に無作為に割り付けた。 主要評価項目はEFSとし、重要な副次評価項目としてOSおよび病理学的完全奏効(pT0N0)の評価を行った。2年EFS率は79.4%vs.66.2%、2年OS率、病理学的完全奏効率も良好 無作為化からデータカットオフ日(2025年10月27日)までの期間中央値は33.6ヵ月(範囲:22.5~53.6)であった。周術期EV-Pembro群の86.7%、術前Cis-Gem群の89.6%が膀胱全摘除術を受けた。 2年の時点でのKaplan-Meier法による推定EFS率は、術前Cis-Gem群が66.2%(95%信頼区間[CI]:61.2~70.8)であったのに対し、周術期EV-Pembro群は79.4%(95%CI:74.9~83.1)と有意に優れた(イベントまたは死亡のハザード比[HR]:0.53、95%CI:0.41~0.70、p<0.001)。 また、EFS中央値は、周術期EV-Pembro群が未到達、術前Cis-Gem群は48.5ヵ月(95%CI:43.3~未到達)だった。 2年OS率は、術前Cis-Gem群の81.3%(95%CI:77.1~84.8)に比べ、周術期EV-Pembro群は86.9%(95%CI:83.2~89.8)であり、有意に良好であった(死亡のHR:0.65、95%CI:0.48~0.89、両側p=0.006)。 病理学的完全奏効の達成率も、周術期EV-Pembro群で有意に優れた(226例[55.8%]vs.131例[32.5%]、推定群間差:23.4%ポイント、95%CI:16.7~29.8、p<0.001)。Grade3以上の有害事象は75.7%vs.67.2% あらゆる原因によるGrade3以上の有害事象は、周術期EV-Pembro群で75.7%、術前Cis-Gem群で67.2%に発現し、重篤な有害事象はそれぞれ63.3%および48.0%にみられた。手術期のGrade3以上の有害事象は、それぞれ36.2%および35.4%に認められた。 死亡に至った有害事象は、周術期EV-Pembro群で17例(4.2%:術前治療期7例、手術期2例、術後治療期8例)にみられ、このうち治療関連死は2例(いずれも多臓器不全症候群)であった。同様に、術前Cis-Gem群では11例(2.8%:術前治療期2例、手術期9例)にみられ、治療関連死は1例(肺炎)だった。 Grade3以上の薬剤関連有害事象は、周術期EV-Pembro群で46.4%、術前Cis-Gem群で46.5%に発現し、試験薬の投与中止に至った薬剤関連有害事象はそれぞれ35.2%および11.1%にみられた。また、周術期EV-Pembro群で認められたとくに注目すべき有害事象では、皮膚反応(63.5%)と末梢神経障害(36.0%)の頻度が高かった。 著者は、「本試験とKEYNOTE-905試験(シスプラチン適応外の患者で周術期EV-Pembro群の強力な抗腫瘍効果を確認)の結果を合わせると、シスプラチンの適応の有無を問わず、切除可能な筋層浸潤性膀胱がん患者に対する根治的膀胱全摘除術と周術期エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ療法の併用の有用性を裏付けている」「これらの知見は、この病態における免疫療法および抗体薬物複合体に基づく新たな治療選択肢を提示するものである」と指摘している。

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「令和8年熊本地震復旧・復興応援プログラム」を開始/READYFOR

 大規模災害や突発的な危機が発生した際、被災地域の医療機関が直面する最大の壁の1つが「初動資金の確保」である。設備損壊や緊急用資材の調達など、発災直後から資金のニーズは多発する。一方で、公的補助金や保険金の給付は手続きや審査に時間を要するため、実際に着金するまでタイムラグが生じることが少なくない。 この公的支援が行き届くまでの「時間のギャップ」を埋め、緊急時のつなぎ資金を獲得する選択肢として機能するのが、寄付型クラウドファンディング(以下、CF)である。 こうした中、CFサービスを手掛けるREADYFORは、被災地での復旧・復興活動を行う事業者を対象に、運営手数料を無料(決済手数料5%+税のみ適用)とする「令和8年熊本地震 復旧・復興応援プログラム」の開始を発表。今回の令和8年熊本地震の被災2日後の7月30日からCFで資金調達を開始した済生会熊本病院は、すでに目標金額(1,000万円)を大幅に達成している(寄付募集は10月28日まで)。 CFは行政の支援や融資を代替するものではなく、あくまで災害初期などの局面における「補完的な資金調達手段」となる。CFは災害時だけでなく、平時における医療支援や臨床・研究開発、設備投資など多様なプロジェクトのために立ち上げることができるものである。今回の災害支援プログラムをはじめとするCFの仕組みや手順をあらかじめ把握しておくことは、医療機関の危機管理および医療BCP(事業継続計画)の観点からも有益と言えるのではないだろうか。 「令和8年熊本地震 復旧・復興応援プログラム」の概要は以下のとおり。【プログラム内容】(1)クラウドファンディングサービス「READYFOR」の運営手数料が無料となり、決済手数料(5%)+税のみでサービス利用が可能(2)目標金額への到達の有無に関わらず集まった資金を受け取ることができるALL-IN形式を適用(3)サービスプランは「ベーシックプラン」を適用(4)対象のプロジェクトを特設ページに掲載(プロジェクト公開以降に順次反映)【対象】令和8年熊本地震により大きな被害を受けた地域を対象に、下記いずれかを行うためのクラウドファンディング(1)被災地に所在する事業者、非営利団体、文化施設、病院等の復旧・復興・再建のための活動(2)被災地にて復旧・復興を行う団体の活動(3)同地域に対して物資等の寄贈【プログラム適用期間】・公開期限含む半年・お申し込み期限:2026年11月末日・お申し込み後公開期限:2027年1月末日【プログラム申し込み要件】(1)について:被害のあった施設等の所在地や被害状況、再建方針等について資料のご提出をお願いする場合があります。(2)について:被災地における復旧・復興のための活動の実施については、過去の災害支援の実績・経験を確認できる団体に限ります(個人は適用対象外となります)。(3)について:物資等の寄贈については、寄贈先が特定され、寄贈先の同意がとれていることを確認できる場合に限ります。 このほか、プロジェクトの詳細はこちら

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多発性硬化症の再発を抑制する新規経口薬「ブメリティカプセル231mg」【最新!DI情報】第68回

多発性硬化症の再発を抑制する新規経口薬「ブメリティカプセル231mg」今回は、多発性硬化症治療薬「ジロキシメルフマラート(商品名:ブメリティカプセル231mg、製造販売元:バイオジェン・ジャパン)」を紹介します。本剤は、既存薬の消化器系副作用を回避するためにアミノエチルエステル化したプロドラッグであり、多発性硬化症の新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>再発寛解型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはジロキシメルフマラートとして1回231mg 1日2回から投与を開始し、1週間後に1回462mg 1日2回に増量します。なお、潮紅、消化器系副作用などが認められた場合には、患者の状態を慎重に観察しながら1ヵ月程度の期間1回231mg 1日2回投与に減量することができます。1回462mg 1日2回投与への再増量に対して忍容性が認められない場合は、本剤の投与を中止します。<安全性>重大な副作用として、リンパ球減少症(10.5%)、白血球減少症(2.6%)、進行性多巣性白質脳症(PML)、感染症、急性腎障害、肝機能障害、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)があります。その他の副作用として、潮紅(31.9%)、下痢(10%以上)、上咽頭炎、上気道感染、尿路感染、好中球減少症、灼熱感、浮動性めまい、頭痛、錯感覚、ほてり、腹部不快感、腹痛、下腹部痛、上腹部痛、便秘、消化不良、鼓腸、胃食道逆流性疾患、悪心、嘔吐(いずれも1~10%未満)、胃腸炎、鼻漏、呼吸困難、胃炎、胃腸障害(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、再発寛解型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制に使用します。体内でフマル酸モノメチルに変換され、細胞の抗酸化に関わるNrf2と呼ばれる経路を活性化することにより免疫の働きを調節し、神経の炎症を抑えます。2.体調が良くなったと自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。指示どおりに飲み続けることが重要です。3.この薬の使用中は定期的にリンパ球を含む血液検査、肝機能検査および腎機能検査が行われます。4.吐き気や嘔吐、下痢が現れた場合は、脱水となって腎臓の働きが悪くなることがあるので、できるだけ早く医師に連絡してください。5.この薬の使用初期に顔のほてりや赤みが現れることがあります。気になる場合は医師または薬剤師に相談してください。6.妊娠する可能性がある人は、この薬を使用している間は適切な避妊を行ってください。【ここがポイント!】多発性硬化症(MS)は、免疫系の異常により神経細胞の軸索を覆うミエリン鞘が脱髄する自己免疫疾患であり、指定難病に指定されています。病変は中枢神経系の広範囲にわたり、脱髄部位に応じて、感覚障害、運動・歩行障害、視力障害、排尿・排便障害などの症状を呈します。MSの病型は、急性増悪(再発)と寛解を繰り返す再発寛解型(RRMS)、当初はRRMSの経過をたどるもののその後は再発の有無にかかわらず身体的障害が進行する二次性進行型(SPMS)、発症時から再発を伴わず機能障害が進行する一次性進行型(PPMS)に分類されます。MS患者の80~90%はRRMSとして発症し、そのうち約半数が発症15~20年でSPMSに移行するとされています。一方、PPMSでMSを発症するのは約5%にとどまります。MSの急性増悪期の治療には、第1選択として高用量のメチルプレドニゾロン静注療法(ステロイドパルス療法)が用いられ、十分な改善が得られない場合は血液浄化療法が考慮されることもあります。再発予防および進行抑制には、疾患修飾薬(DMD)が使用され、インターフェロンβ製剤、グラチラマー酢酸塩、フィンゴリモド、フマル酸ジメチル(DMF)などが代表的な薬剤として挙げられます。とくにDMFはRRMSに対する経口治療薬として広く使用されていますが、10%以上の頻度で消化器症状(下痢、腹痛、嘔気)が副作用として現れ、治療継続が困難となる場合があります。本剤は、有効成分としてジロキシメルフマラートを含むRRMSに対する経口DMDです。本剤は、DMFの主要活性代謝物であるフマル酸モノメチル(MMF)をアミノエチルエステル化した薬剤であり、経口投与後、全身循環に移行する前にエステラーゼ酵素系により速やかに加水分解されてMMFを生成します。MMFの作用機序は十分に解明されていませんが、細胞の抗酸化応答を制御するマスター転写因子であるnuclear factor erythroid-derived 2-like 2(Nrf2)転写経路を活性化することで免疫系を調節し、炎症性メディエーターの発現を抑制し、炎症性傷害に対する細胞保護作用を示すものと考えられています。臨床用量において、本剤から生成されるMMFの曝露量はDMFと同程度となります。RRMS患者を対象とした海外第III相臨床試験(ALK8700-A301試験)において、探索的評価項目である投与96週時までのMS再発患者割合は、全体集団では17.57%、デノボ被験者(本剤またはDMFが初めて投与された患者:サブグループ解析)では17.66%であり、ARRはそれぞれ0.13および0.14でした。また、日本を含む国際共同第III相臨床試験(272MS303試験)において、全体集団では、ベースラインから投与24週時までの調整したARRが0.26(95%信頼区間[CI]:0.14~0.47)、投与24週~48週時の調整したARRが0.09(95%CI:0.03~0.26)、ベースラインから投与48週時までの調整したARRが0.19(95%CI:0.11~0.33)でした(負の二項回帰モデル)。日本人集団(サブグループ解析)では、ベースラインから投与24週時までの調整したARRが0.28(95%CI:0.13~0.60)、投与24週~48週時の調整したARRが0.09(95%CI:0.02~0.39)、ベースラインから投与48週時までの調整したARRが0.18(95%CI:0.09~0.38)でした(負の二項回帰モデル)。

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第306回 無医地区が575地区に増加 医師不足エリア再拡大/厚労省

<先週の動き> 1.無医地区が575地区に増加 医師不足エリア再拡大/厚労省 2.高額療養費、8月から患者負担増 長期療養者には年間上限/厚労省 3.24年度の社会保障給付費138兆円 医療はコロナ費減で1.9%減/社人研 4.ドクターヘリの安定運航へ財政支援 広域搬送網の再設計も/厚労省 5.自由診療の再生医療に行政処分 患者死亡受け改善命令/厚労省 6.移植患者の術後管理置き去り 有償あっせんの元NPO理事長を再逮捕/警視庁 1.無医地区が575地区に増加 医師不足エリア再拡大/厚労省厚生労働省は、2025年10月末時点の「無医地区」が全国で575地区となり、2022年の前回調査から18地区増えたと公表した。無医地区人口も12万2,206人から13万4,753人へ1万2,547人増加した。国による定義では無医地区とは「医療機関がなく、中心地点からおおむね半径4キロ以内に50人以上が居住し、受診に長時間を要するなど医療機関を容易に利用できない地域」を指す。長期的には1984年の1,276地区から徐々に減少してきていたが、今回の調査で増加に転じ、医師不足地域が再び広がり始めた可能性が示された。都道府県別では、大分県が44地区で前回より6地区増え、岩手県、島根県、山口県、沖縄県が各4地区増加した。無医地区人口は大分県で5,852人、沖縄県で3,861人、山口県で1,920人増えるなど、地区数以上に住民への影響が拡大した地域もある。その一方で、福岡県は4地区、富山県と奈良県は各2地区減少した。山形県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、佐賀県には無医地区がなかった。厚労省は、診療所の閉院や高齢医師の引退後に後継者を確保できないことが増加の主因とみている。なお、これとは別に厚労省は7月31日に「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、2028年度以降、医学部臨時定員を全国で削減する方針を示している。厚労省としては医師少数県や全国の医師偏在指標を下回る県には削減幅を緩和する考えだが、定員増は想定していない。このため、医師不足を訴える自治体からは地域偏在が固定化・助長される懸念が出ており、単純な医師養成数だけでなく、地域枠医師の離脱防止、結婚や育児、介護を含む柔軟な勤務、キャリア形成を支える伴走型支援が重要となる。さらに、基幹病院とへき地診療所が医師を融通する地域医療連携推進法人、巡回診療、オンライン診療、搬送体制を組み合わせ、1人の医師に依存しない広域ネットワークへ転換する必要がある。無医地区の拡大は、慢性疾患の継続管理や予防接種だけでなく、救急受診の遅れ、在宅医療・看取りの空白、基幹病院への患者集中にもつながる。医師には、地域の診療所単位ではなく、2次医療圏全体で外来、救急、在宅、訪問看護、薬局をどう維持するかという視点が求められる。 参考 1) 令和7年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します(厚労省) 2) 575地区で医療機関ゼロ 22年比18増、厚労省調査(共同通信) 3) 「無医地区」増加に転じる 25年10月末 18増の計575地区に(CB news) 4) 「全国値」未満は緩和検討 厚労省 医学部臨時定員、28年度は全都道府県で削減へ(同) 2.高額療養費、8月から患者負担増 長期療養者には年間上限/厚労省高額な医療費の患者負担を抑える高額療養費制度が8月1日から見直された。所得区分ごとの月額自己負担上限は、住民税非課税世帯で4~5%、それ以外でおおむね7%引き上げられる。たとえば70歳未満で年収約370~770万円の場合、従来の「8万100円+医療費の一定部分の1%」から「8万5,800円+(総医療費-28万6,000円)×1%」となり、定額部分で5,700円増える。さらに2027年8月には所得区分を細分化し、年収約650~770万円では定額部分が11万400円となるなど、現行制度と比べ最大38%の負担増となる見通し。その一方で、長期療養者への配慮として、8月から年間自己負担上限が新設された。年収約370~770万円では年53万円で、所得に応じ18~168万円に設定される。直近12ヵ月で3回、月額上限に達すると4回目以降の負担が軽減される「多数回該当」の上限額は原則据え置く。これまで月ごとの上限にわずかに届かず、多数回該当の対象にならなかった患者も、年間上限により負担が抑えられる場合がある。ただし年間上限は償還払いとなるため、患者がいったん上限を超える金額を立て替えなければならない可能性がある。厚生労働省は今回の見直しにより、2027年度時点で保険料と公費による医療給付を年間約2,450億円削減できると試算する。このうち約1,070億円は、患者の受診行動の変化による医療費減少を見込んだものだ。厚労省は、長期療養者や低所得者に配慮しており、必要な受診が抑制されるとは想定していないと説明する。しかし、患者団体や医療関係者からは、がんや難病など高額な治療を継続する患者の受診控えや治療断念、生活困窮につながるとの懸念が出ている。また、今回の見直しによる患者側の負担増(所得区分や受療状況によって年間負担は異なる)に対し、保険料の軽減効果は1人当たり年約1,400円(月額約117円)にとどまり、負担増とのアンバランスさを疑問視する指摘もある。今回の見直しでは、高所得者ほど医療利用時の負担を重くする「応能負担」が強化された点も論点となる。保険料や税の段階ですでに所得に応じた負担を求める中、専門家からは給付を受ける際にも負担差を広げることが、国民皆保険を支える連帯を損なうとの意見もある。医療現場では、患者の年齢や所得区分、多数回該当、年間上限、加入する健康保険の付加給付を確認し、治療費の見通しを早期に説明する必要がある。また、マイナ保険証を利用すれば、原則として限度額適用認定証がなくても窓口負担を上限額までに抑えられる。がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーと連携し、経済的理由による治療の中断を防ぐ支援が一層重要となる 参考 1) 高額療養費制度 自己負担の上限額引き上げも 年間上限額を新設(NHK) 2) 高額療養費、負担上限が8月から最大7%増 来夏には最大38%増(朝日新聞) 3) 高額療養費見直し 政府説明をデータでたどると? ロジックに異論(同) 4) 所得高ければ医療費負担も重く…広がる「応能負担」、専門家は問題視(同) 5) 今日から変わる「高額療養費制度」 “年間上限”導入も自己負担増に患者団体「治療断念につながる」懸念(弁護士JPニュース) 3.24年度の社会保障給付費138兆円 医療はコロナ費減で1.9%減/社人研国立社会保障・人口問題研究所は、2024年度の社会保障費用統計を公表した。年金、医療、介護、子育て支援などに充てられた社会保障給付費(ILO基準)は138兆3,019億円で、前年度から2兆6,703億円、2.0%増加した。増加は3年ぶりで、新型コロナウイルス対策に伴う支出が膨らんだ2021年度の138兆7,544億円に次ぐ過去2番目の規模となった。人口1人当たりでは111万7,100円と、前年度より2万6,400円、2.4%増えた。部門別では、年金が57兆8,528億円と最も多く、前年度比1兆4,592億円、2.6%増加した。物価や賃金の動向を反映し、2024年度の年金改定率が+2.7%となったことなどが影響した。介護や子供・子育て、生活保護などを含む「福祉、その他」は35兆6,436億円で、2兆836億円の増加、6.2%増えた。介護報酬の+1.59%改定や児童手当の所得制限撤廃などが押し上げ要因となった。その一方で、医療は44兆8,055億円で、前年度から8,726億円、1.9%減少し、2年連続のマイナスとなった。新型コロナ対策費の縮小が主因で、医療需要そのものの減少を示すものではない。給付費全体に占める構成割合は、年金41.8%、医療32.4%、福祉その他25.8%だった。社会保障給付費の国内総生産(GDP)比は21.53%で、前年度より0.37ポイント低下した。給付費は増えたものの、GDPの伸びがそれを上回ったためで、2021年度の24.07%をピークに低下が続く。社会保障財源(ILO基準)は155兆6,896億円で、年金積立金の運用実績低下に伴う資産収入の減少により21.4%減少した。財源構成は社会保険料53.3%、公費37.5%など。高齢化に加え、物価・賃金、報酬改定、少子化対策が給付費を左右する構造が改めて示された。 参考 1) 令和6(2024)年度 社会保障費用統計の集計を公表します~社会保障給付費、3年ぶりに増加~(社人研) 2) 24年度の社会保障給付費138兆円 高齢化で2番目の水準 厚労省(時事通信) 3) 2024年度の社会保障給付費、過去2番目に多い138兆円 GDP比は低下(日経新聞) 4) 社会保障給付費が3年ぶりに増加 対GDP比は減少続く 24年度(朝日新聞) 5) 24年度の社会保障給付費、「医療」は1.9%減 社人研(MEDIFAX) 4.ドクターヘリの安定運航へ財政支援 広域搬送網の再設計も/厚労省厚生労働省は、整備士不足などで一部地域のドクターヘリが運休している問題を受け、「救急医療搬送体制等のあり方に関する検討会」を開催し、安定運航に向けた議論を始めた。ドクターヘリは、救急医療機器を備え、医師・看護師が同乗して現場や搬送中に診療を行う専用機で、一般的に操縦士、整備士、医師、看護師らが搭乗する。2022年までに京都府を除く46都道府県へ導入されたが、整備士の確保難から東京、大阪、徳島などで運休が発生している。運休地域では、近隣県のドクターヘリ、消防防災ヘリ、ドクターカー、救急車による代替や相互応援が行われ、例外的に整備士を同乗させず操縦士2人で運航する「ツーパイロット制」も検討されている。大阪府は新たにエアロトヨタへ委託し、8月24日から月10日程度の限定運航を再開する予定だが、予備機を利用するため不具合時には再び停止する可能性がある。厚労省によると、2025年度は46都道府県57機で事業を実施した一方で、2026年4月時点で運航を委託できていたのは43都道府県54機にとどまった。年間受諾件数は2024年度に2万8,405件で、救急医療の基盤として定着している。国は今年度の当初予算に100億円を確保し、飛行時間に応じた運航委託費の補助基準額を引き上げた。さらに、機体整備や資機材、整備士確保などを支援する緊急事業として補正予算22億円を計上した。検討会では、短期的には運航事業者への財政支援、共同運航、規制の見直しを進め、9月にも中間取りまとめを行う。中長期的には整備士、操縦士、医療従事者の必要数を推計し、養成・確保策を構築する。今後は、ヘリ単独の維持ではなく、地域の搬送距離や疾病構造を踏まえ、消防防災ヘリやドクターカーを含む広域救急搬送網として再設計する視点が求められる。 参考 1) 救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)の現状について(厚労省) 2) ドクターヘリ安定運用に向けて必要な支援は何か、社会構造変化の中でドクターヘリの役割をどう考えるか-救急医療搬送体制検討会(Gem Med) 3) 大阪府のドクターヘリ、新たな委託先はエアロトヨタ 8月下旬から一部運航再開へ(産経新聞) 5.自由診療の再生医療に行政処分 患者死亡受け改善命令/厚労省厚生労働省は7月31日、自由診療の再生医療を提供していた「ネオポリス診療所銀座クリニック」(東京都中央区)と「大阪ベテスダクリニック」(大阪府泉佐野市)の管理者に対し、再生医療等安全性確保法に基づく改善命令を出した。銀座クリニックでは今年3月、慢性疼痛に対する治療として本人の脂肪由来細胞を投与された外国籍の60代女性が急変し、搬送先で死亡。厚労省は同月13日、治療の一時停止を命じ、その後、提供体制を調査していた。調査では、細胞加工を委託する事業者を介し、韓国の再生医療グループが患者ごとの投与細胞数や投与方法を指定したリストを作成し、クリニックがその内容に従って処置していたことが判明した。医師ではない第三者が実質的に治療内容を決定する体制が常態化し、治療で得た利益の大部分も同グループなどに渡っていたという。さらに、国に届け出た再生医療提供計画から逸脱した治療を行うなど、複数の法令違反が認められた。厚労省は、第三者の影響力を排除し、医療機関が自らの責任で適正な提供体制を構築するよう求めた。大阪ベテスダクリニックでも同様に第三者主導の提供体制が確認され、再生医療後に体調不良で入院を要した患者1人について必要な報告をしていなかったとして改善命令を受けた。銀座クリニックの死亡原因については引き続き調査中である。今回の事案は、患者死亡事故を契機とした立ち入り調査により、外部事業者主導の不適正な運営体制や計画逸脱が発覚し、法に基づく改善命令が出された(因果関係の調査は継続中)。さらに、高額な自由診療として拡大する再生医療で、治療の医学的妥当性だけでなく、指示系統、利益配分、有害事象報告、届け出内容との整合性を含む管理体制の検証が不可欠であることを示した。再生医療等安全性確保法では、医療機関が提供計画を作成し、認定再生医療等委員会の審査を経て国に届け出ることなどを求めている。外部の事業者が治療設計や集患、収益配分まで事実上支配すれば、医師の独立した判断や緊急時対応が損なわれる恐れがある。自由診療の再生医療を提供する医療機関は、委託先との契約関係や治療決定過程を点検し、重篤な有害事象を速やかに報告する体制の再確認が求められる。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく改善命令等について(厚労省) 2) 不適切再生医療で銀座の診療所に改善命令 厚労省 細胞投与で外国籍の患者死亡(産経新聞) 3) 患者死亡の再生医療クリニックなどに改善命令 厚労省(NHK) 4) 「銀座クリニック」の黒幕/「再生医療」謳う自由診療に札付きの輩(FACTA online) 6.移植患者の術後管理置き去り 有償あっせんの元NPO理事長を再逮捕/警視庁警視庁などの合同捜査本部は7月28日、カンボジアでの生体腎移植を別の患者に有償であっせんしたとして、NPO法人「難病患者支援の会」の元理事長で、一般社団法人「国際医療相談室」を実質的に運営していた菊池 仁達容疑者(66)を臓器移植法違反の疑いで再逮捕した。再逮捕容疑は2025年、千葉県内の60代男性にカンボジアでの生体腎移植をあっせんし、医師への謝礼や手数料名目で約850万円を受け取った疑い。男性は渡航後、中国人コーディネーターに現地医療費などとして約13万ドル、当時約1,900万円を支払い、カンボジア人男性とみられるドナーから腎臓移植を受けたとされる。渡航前には、菊池容疑者と協力関係にあった大阪市内の病院で血液検査などを受け、病院長の紹介状が中国人コーディネーターを介して現地の中国人医師団に送られていた。その一方で、男性は「アフターケアも万全」と説明されていたにもかかわらず、帰国後の受け入れ先が確保されておらず、受診を断られるなどして10ヵ所余りの医療機関を転々とした。このため移植後に必要な処置を受けるまで2ヵ月以上かかったというが、現在の容体は安定している。捜査本部は、同法人が設立された2024年3月以降、少なくとも患者5人から計4,500万円以上を受け取り、その一部が菊池容疑者の保釈金調達に伴う借金返済へ充てられたとみている。患者ごとの請求額は約500~900万円と幅があった。菊池容疑者は過去にもベラルーシでの無許可移植あっせんで実刑判決を受けており、保釈中に今回の事業を主導した疑いがある。臓器移植法は、患者とドナーを対価により結び付ける行為や、無許可のあっせんを禁じている。今回の事件は、海外渡航移植の不透明な費用構造に加え、免疫抑制剤の投与や感染対策など、帰国後の国内医療への引き継ぎが整わないまま患者が置き去りにされる危険性も浮き彫りにしたが、海外での移植内容やドナー情報、感染症・免疫抑制療法に関する情報が不十分な場合、国内医療機関で安全な術後管理を引き継ぐことが困難になる問題も浮き彫りとなった。 参考 1) 臓器移植法違反事件 帰国後の男性 受診拒否で医療機関を転々(NHK) 2) 別の男性にも臓器移植手術あっせんか NPO元理事を再逮捕へ(同) 3) 臓器移植あっせん事件、別の患者からも対価か 元NPO理事再逮捕へ(朝日新聞) 4) 臓器有償あっせん、患者から受け取った現金を菊池被告が借金返済に…保釈金1,800万円の調達でできた借金(読売新聞)

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ベンゾジアゼピンの長期使用リスクを低下させる3つのポイントが判明

 ベンゾジアゼピン系薬剤の長期使用は、罹患率および死亡率の上昇と関連していることが示唆されている。より安全な処方実践を通じて長期使用を予防することについては、これまであまり注目されていなかった。カナダ・Campbell Family Mental Health Research InstituteのNikki Bozinoff氏らは、ベンゾジアゼピン系薬剤の初回処方パターンと服用期間との関連を明らかにするため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。PLoS Medicine誌2026年6月18日号の報告。 本研究は、カナダ・オンタリオ州の成人182万808例を対象とした、集団ベースのレトロスペクティブコホート研究である。2013~20年にベンゾジアゼピン系薬剤の初回処方を受けた患者を対象に、2021年12月31日までフォローアップ調査を実施した。主要な曝露因子は、初回処方における薬剤の処方期間(7日以下[参照群]、8~14日、15~30日、30日超)とした。また、副次的な曝露因子は、初回処方されたベンゾジアゼピン系薬剤の作用持続時間(短時間作用型、長時間作用型、またはその両方)、初回処方時のベンゾジアゼピン系薬剤の処方数(1剤または2剤以上)、初回処方における1日平均用量(ジアゼパム換算量[DME])とした。主要アウトカムは、ベンゾジアゼピン系薬剤の服用を中止するまでの期間(日数)とした。多変量モデルでは、年齢、性別、不安症、不眠症、物質使用障害、その他の重要な併存疾患や社会人口統計学的特性について調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・初回処方時の年齢中央値は53歳(四分位範囲[IQR]:38~67)であり、女性が62.6%を占めた。・服用中止までの期間中央値は、女性で16日(IQR:6~29)、男性で19日(IQR:6~29)であった。・初回処方において最も頻繁に処方されたベンゾジアゼピン系薬剤は、ロラゼパム(63.9%)であり、次いでクロナゼパム(17.3%)、ジアゼパム(5.8%)の順であった。・多変量Cox比例ハザードモデルにおいて、指標となる処方期間が長いことは、ベンゾジアゼピン系薬剤の中止率の低下と関連していた。参照群(7日以下)と比較した調整ハザード比(aHR)は、8~14日で0.54(95%信頼区間[CI]:0.54~0.54)、15~30日で0.26(95%CI:0.25~0.26)、30日超で0.14(95%CI:0.14~0.14)であった。・ベンゾジアゼピン系薬剤を1剤ではなく2剤以上処方されることも、中止率の低下と関連していた(aHR:0.59、95%CI:0.57~0.61)。・同様に、短時間作用型のみの処方と比較し、長時間作用型の処方(aHR:0.80、95%CI:0.80~0.80)や短時間作用型と長時間作用型の併用(aHR:0.84、95%CI:0.80~0.88)も、中止率の低下と関連していた。・DMEが5mg以下と比較して、1日平均用量が5mg超~10mg以下(aHR:1.03、95%CI:1.03~1.03)および10mg超~20mg以下(aHR:1.03、95%CI:1.03~1.04)の場合は、中止率の上昇と関連していた。一方、DMEが20mg超の用量では、中止率の低下との関連が認められた(aHR:0.98、95%CI:0.97~0.98)。・なお、本知見は、未測定の交絡因子によるバイアスの影響を受けている可能性がある。 著者らは「大規模な集団ベースのコホート研究により、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期使用率の低下には、ベンゾジアゼピン系薬剤の処方期間を短くすること、単剤で処方すること、短時間作用型薬剤を使用することが関連していることが明らかとなった。これらの知見は、処方慣行を単純に変更するだけでも、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期使用や長期使用に伴う罹患率および死亡率を低減できる可能性を示唆している」としている。

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PSAより正確?前立腺がん検出の新たな血液検査とは

 次世代の血液検査Stockholm3により、前立腺がんの中でも悪性度の高いがんを早期発見できる可能性があることを示した研究結果が、「Annals of Internal Medicine」に6月23日掲載された。この検査は、従来のPSA(前立腺特異抗原)検査よりも多くの臨床的に重要な前立腺がん(clinically significant prostate cancer;csPC)症例を検出した一方、不必要な追加検査を受ける男性の数を増やすことはなかったという。 論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所(スウェーデン)のThorgerdur Palsdottir氏は、「前立腺がん検診における最大の課題は、より多くのがんを見つけることではなく、本当に危険ながんを見極めることだ。今回の結果は、Stockholm3がPSA検査と比べて、不必要な追加検査を増やすことなく、悪性度の高い前立腺がん症例を有意に多く検出できることを示している」と説明した。 Palsdottir氏らは、50~74歳の男性1万2,670人を対象にStockholm3検査と標準的なPSA検査の両方を実施し、その後、2年間にわたり、スウェーデンのがん登録データを用いてcsPCの発症について追跡調査を行った。csPCは、グレード2以上の前立腺がんと定義した。Stockholm3検査では、PSA値に加え、血漿中のタンパク質バイオマーカー、多遺伝子リスクスコア、および年齢や家族歴などの臨床因子を組み合わせてリスクを推定する。本研究では、ベースライン検査では陰性だったが追跡期間中にcsPCと診断された症例を偽陰性、ベースライン検査では陽性だったが追跡期間中にcsPCの診断を受けなかった症例を偽陽性と見なした。 解析の結果、生検実施に関する意思決定の評価において、Stockholm3はPSAよりも純便益(net benefit)が高く、不要な生検が少なく、csPC症例の見逃しも少ないことが示された。偽陰性率はStockholm3で10%(443人中43人)であったのに対し、PSA検査では26%(443人中116人)であり、Stockholm3によりcsPC症例の見逃しが減少したことが示された。一方、偽陽性率はそれぞれ11%(1万2,227人中1,289人)と10%(1万2,227人中1,203人)で、ほぼ同等だった。 Palsdottir氏は、「これらの結果により、前立腺がん検診の実施方法が変わる可能性が示唆される。より精度の高い血液検査によってcsPC症例をより早期に発見できるようになるとともに、不必要な追加検査や処置の件数を減らせる可能性がある」と述べている。 研究グループは、この検査が生存率やその他の患者アウトカムを改善するかどうかを明らかにするには、より長期の追跡調査が必要であるとしている。

9.

「どういう場合に調剤拒否してよいのか」が明確に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第174回

昨今のカスタマーハラスメント/ペイシェントハラスメントの問題や働き方改革を受け、厚生労働省は2026年7月8日に「薬剤師の調剤応需義務等について」と題した通知を出し、薬局で調剤を拒否できる事例やその理由を明示しました。「薬剤師の調剤応需義務」という言葉は皆さんご存じだと思います。しかしながら、その義務は誰に対しての義務なのか? という点について、もしかしたら正しく解釈していない人もいるかもしれません。薬剤師法第21条では、「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない」と規定されています。これは、医療の公共性、薬剤師による調剤業務の独占、生命・身体の救護という高い倫理観を背景に、薬剤師が国に対して負う公法上の義務であり、患者に対する私法上の義務ではありません。今回の通知ではそこを改めて明確にし、昨今の問題に対して厚労省が切り込んでくれたという印象をもっています。ポイントは、「調剤の求めに応じないことの正当な理由」があるかどうかという点です。そのうえで、調剤の求めを拒否できる正当な理由として考えられる事例として、カスタマーハラスメントかそれ以外かで分けて事例が明示されました。まず、カスタマーハラスメント以外の事例についてです。物理的・身体的理由(病気、近親の不幸、冠婚葬祭等により薬剤師が不在、災害や事故で調剤不能である場合)疑義照会が不可能な場合(処方医と連絡が取れず、疑義が解消されない場合)早急な調剤が必要だが調達に時間を要する場合(早急に調剤薬を交付する必要があるものの、医薬品の調達に時間を要する場合。ただし、速やかに調剤が可能な薬局を紹介すること)流通管理制度に基づく拒否(流通管理が必要な薬剤において、処方医や薬局が事前に登録されたリストに掲載されていない場合)重複投薬等アラート等への対応(重複投薬等を把握して疑義照会を行っても処方変更がなされず、なお薬学的知識により客観的に疑わしいと判断される場合)開局時間外の対応(開局時間外に、緊急性のない処方箋の調剤を断り、翌開局時間内の来局を案内する場合)悪意ある未払い(過去の未払いの継続で再度未払いが発生する蓋然性が極めて高い場合、支払いの意思が明らかに認められない場合)次に、カスハラの事例についてです。暴力・威嚇行為(身体的な暴力、物を投げる、机を叩いて威嚇する、大声での恫喝、または脅迫的言動がある場合)暴言・人格否定(薬剤師に対し侮辱的または人格否定的な発言が繰り返される場合)執拗な謝罪要求・拘束(土下座等の謝罪の強要や、数時間に及ぶ居座り、執拗な電話連絡などの長時間の拘束を強いられる場合)揚げ足取り・不当な追求(調剤内容と無関係なクレームを執拗に繰り返し、説明を尽くしても納得せず、言葉尻を捉えて責め立てる行為が行われる場合)単なる暴言等を超えて、明確に刑法(明治40年法律第45号)上の犯罪行為に該当するような行為今回、これらを判断するに当たっては「付随して安全な薬局の業務運営に支障が生じ得ることから、調剤の基礎となる薬剤師と患者の信頼関係が破壊され、適切な医療提供が困難になったことを基礎づける事情となり得る」とし、調剤の求めの拒否の正当な理由の検討に際して、「調剤ミスの誘発の可能性」や「他の患者の安全確保」を考慮するとされています。現場の気持ちも考えられた通知で少しうれしくなります。なお、「医薬品の在庫がない」「合理的な指摘や改善を求める意見などの正当なもので、手段も社会通念上相当な範囲にとどまる」場合は、調剤拒否の理由にはなりません。薬局薬剤師であれば、患者さんからのハラスメントで嫌な思いをしたことがない人はいないかもしれません。私が管理薬剤師として勤務していたときも、クレームのエスカレーション対応(対応を上司が引き継ぐこと)や、そもそもクレームが多い患者さんの対応は大きな課題の1つでした。一緒に働く薬剤師に管理薬剤師の昇格を打診したところ、「患者対応を解決できる気がしないので嫌です」と断られたこともあります(その後、管理薬剤師になりました)。正当な拒否の事例については読むだけでもぞっとしますが、不当な要求やハラスメントに対しては、薬局として毅然とした対応をしてよいと厚労省が認めたことになります。薬剤師が気持ちよく、長く働くことができる環境になってほしいなと思います。参考サイト薬剤師の調剤応需義務等について / 厚生労働省

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー〔DMD:Duchenne muscular dystrophy〕

1 疾患概要■ 定義デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、機能的ジストロフィンの欠損により、進行性の筋力低下および筋萎縮を来すX染色体潜性遺伝疾患である。小児期に発症する筋ジストロフィーの中で最も頻度が高く、重症型に位置付けられる。■ 疫学男児出生約3,500~5,000人に1人の割合で発症する。人種による発症頻度の明らかな差はない。女性保因者も骨格筋症状や心筋症を呈することがあり、定期的な評価が推奨される。■ 病因X染色体短腕(Xp21.2)に位置し、筋細胞膜直下に存在する細胞骨格タンパク質であるジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)の変異(欠失、重複、微小変異など)が原因である。ジストロフィンは細胞骨格と細胞外基質を連結し、筋収縮時の機械的ストレスから細胞膜を保護する役割を担う。機能的ジストロフィンが欠損することで筋細胞膜の安定性が失われ、筋線維の壊死と再生が繰り返され、最終的に筋組織が脂肪組織や結合組織に置換される。■ 症状乳幼児期から運動発達の遅れ(定頸や歩行開始の遅延など)として認識されることが多い。幼児期には転びやすい、走れない、階段昇降が困難といった症状が顕在化する。床から立ち上がる際に、自身の膝や大腿に手をついて立ち上がる登攀性起立(ガワーズ徴候)や、腓腹筋の仮性肥大が高頻度に見られる。また、認知機能や発達特性(知的障害、注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症など)を合併することがある。筋力低下は体幹および近位筋から始まり、次第に遠位筋へと進行する。従来は10歳前後で歩行を喪失することが多かったが、現在ではステロイド療法などにより歩行可能期間は延長している。歩行喪失後は車椅子の使用が必要となる。病状の進行に伴い、脊柱変形(側弯症)、呼吸筋力低下による呼吸機能障害、および拡張型心筋症に類似した心筋障害を合併する。嚥下機能障害や消化管の蠕動運動低下も生じうる。さらに、長期経過では骨粗鬆症や骨折、肥満なども重要な合併症となる。■ 分類ジストロフィン遺伝子変異に起因する疾患群は「ジストロフィノパチー」と総称される。DMDはジストロフィンがほぼ完全に欠損する重症型である。その一方で、遺伝子変異があるものの、異常なジストロフィンタンパク質が一部産生され、臨床症状がより軽度で歩行機能が長期に維持されるタイプを「ベッカー型筋ジストロフィー」(BMD)と分類する。■ 予後かつては20歳前後で呼吸不全や心不全により死亡することが多かった。しかし、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)などの呼吸管理の進歩、心筋保護薬の早期導入、ステロイド治療の普及、さらに多職種による集学的ケアの確立により、歩行可能期間および生命予後は大きく改善しており、40~50代以上まで生存する患者も増えている。2 診断 (検査、鑑別診断を含む)初めに診断のフローチャートを示す(図)。図 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断フローチャート画像を拡大する血液検査では、筋崩壊を反映してクレアチンキナーゼ(CK)値が著明に上昇する(数千~数万IU/L)。とくに発症初期や無症状の乳幼児期においても異常高値を示すため、スクリーニングとしてきわめて有用である。偶発的な肝酵素(AST、ALT)の上昇を契機に発見されることも多く、肝疾患との鑑別においてCK値の確認が必須である。確定診断には遺伝子検査が行われる。まず、MLPA法などによりDMD遺伝子の欠失・重複変異を検索する。これで変異が同定されない場合は、次世代シークエンサー(NGS)などを用いて点変異や微小欠失・挿入などの塩基配列解析を行う。遺伝子診断で確定できない特殊例では筋生検を考慮する。鑑別診断としては、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性ミオパチー、多発性筋炎などが挙げられる。診断確定後は遺伝カウンセリングを行い、保因者診断や家族への遺伝学的情報提供についても検討する。3 治療現在、疾患を完全に治癒させる根治療法は確立していないが、病状の進行遅延を目的とした薬物療法と、合併症に対する対症療法・集学的ケアが行われる。薬物療法の基本はステロイド薬(プレドニゾロンなど)の投与である。これにより筋力低下の進行を遅らせ、歩行可能期間の延長、呼吸・心機能の低下抑制、側弯の進行防止などの効果が得られる。また、近年、特定の遺伝子変異を対象としたエクソンスキップ療法が実用化されている。これはアンチセンス核酸を用いてmRNAの成熟過程で特定のエクソンを読み飛ばし、機能は不完全ながらも一部機能するジストロフィンタンパク質を産生させる治療である。国内ではエクソン53スキッピング薬であるビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)が承認されている。対症療法として、関節可動域(ROM)維持、装具療法、立位保持、呼吸リハビリテーションを継続的に実施することが重要である。呼吸機能障害に対しては、早期からの呼吸機能評価とNPPVの導入、機械的咳介助が行われる。心筋障害に対しては、ACE阻害薬の早期からの投与が推奨されている。病状の進行や変化に応じて、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エプレレノンなど)の併用などが検討される。4 今後の展望(治験中、研究中の診断法や治療薬剤など)今後の有望な治療法の1つが遺伝子治療である。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、全身投与により骨格筋および心筋へのマイクロジストロフィン遺伝子の導入を図る治療法(デランジストロゲン モキセパルボベク、商品名:エレビジス点滴静注)は、国内でも2026年2月に承認された。本来のジストロフィン遺伝子は巨大でありAAVベクターに全長を搭載できないため、マイクロジストロフィンは筋細胞膜の安定化に不可欠な最重要機能ドメイン(領域)のみを残し、全長の約3分の1に小型化した人工遺伝子である。導入後の長期的な有効性評価に加え、安全性課題として急性肝障害、血小板減少、心筋障害、および重篤な免疫性筋炎への注意とモニタリングが今後の重要な課題となっている。また、筋肉の成長を阻害するミオスタチンを標的とした抗体薬や、炎症・線維化を抑える新たな低分子化合物などの臨床試験が進行しており、病態や進行段階に応じた治療の選択肢がさらに広がることが期待される。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)小児神経科、脳神経内科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、循環器内科、呼吸器内科、臨床遺伝科など※本疾患は進行に伴い全身性の合併症や認知・発達特性を伴うため、スクリーニングで疑われた段階、あるいは確定診断後は、神経筋疾患を専門とする医療機関において、リハビリテーション、循環器、呼吸器、整形外科、栄養、心理、遺伝カウンセリングなど多職種連携による集学的治療が可能な体制へ紹介することが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考となるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報NMDポータルサイト(神経筋疾患ポータルサイト):デュシェンヌ型筋ジストロフィー(国内の神経筋疾患に関する情報を集約した総合サイト。最新の診療ガイドラインやケア、研究動向に関するリソースが網羅的に提供されている)難病情報センター 筋ジストロフィー(指定難病113)(医療費助成の対象疾患であり、公的制度の概要や申請手続きに関する基礎情報が得られる)Remudy(神経筋疾患患者登録システム)(国立精神・神経医療研究センター[NCNP]が運営する患者レジストリ。疫学データと市販後調査を区別して収集・管理しており、適切な情報提供や臨床試験の強力な基盤として機能している)MDクリニカルステーション(筋ジストロフィーの臨床研究班による、医療従事者および患者・家族向けの診療ガイドラインやケアマニュアル等の情報提供サイト)患者会情報一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)(患者や家族への支援、情報提供、交流活動を行う代表的な患者会組織) 1) 日本神経学会ほか監修. デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014. 南江堂:2014. 2) Komaki H, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2020;7:2393-2408. 3) Mendell JR, et al. N Engl J Med. 2023;388:2368-2371. 4) Nakamura H, et al. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:60. 5) 難病情報センター. 筋ジストロフィー(指定難病113). 公開履歴初回2026年7月24日

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既治療CLL/SLL、ピルトブルチニブ+VRでPFS改善(BRUIN CLL-322)/Lancet

 前治療歴のある慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブは、ベネトクラクス+リツキシマブ療法(VR)との併用により、VRと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、この効果は共有結合型BTK阻害薬の前治療歴のある患者においても一貫しており、新たな安全性シグナルは認められないことが示された。米国・ダナファーバーがん研究所のMatthew S. Davids氏らが、22ヵ国152施設で実施された無作為化非盲検実薬対照第III相試験「BRUIN CLL-322試験」の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2026年7月9日号掲載の報告。VRへのピルトブルチニブ上乗せについて評価 BRUIN CLL-322試験の対象は、18歳以上で、International Workshop on CLL(iwCLL)2018の基準に基づき治療を要するCLL(小リンパ球性リンパ腫[SLL]を含む)と確定診断され、共有結合型BTK阻害薬を含む1レジメン以上の前治療歴を有する患者であった。非共有結合型BTK阻害薬、ベネトクラクスまたはその他のBCL2阻害薬の前治療歴を有する患者は除外された。 研究グループは、17p欠失の有無および共有結合型BTK阻害薬の前治療歴の有無を層別因子として、患者をピルトブルチニブ+VR(PVR)群またはVR群に1対1の割合で無作為に割り付けた。両群ともベネトクラクスを25サイクル、リツキシマブを6サイクル投与し、PVR群では、さらにピルトブルチニブ200mgの1日1回経口投与を1サイクル28日間として28サイクル(ベネトクラクス投与開始前にピルトブルチニブとリツキシマブを併用する3サイクルの導入期間を含む)投与した。 主要評価項目は、iwCLL 2018に基づく盲検下独立評価委員会判定によるPFSで、無作為化されたすべての患者(ITT集団)を解析対象とした。安全性は、ITT集団のうち試験薬を少なくとも1回投与された患者を対象として評価した。 本稿では、事前に計画された中間解析(データカットオフ2026年2月2日)の結果が報告された。ピルトブルチニブ併用群でPFSが有意に改善 2021年10月13日~2024年10月28日に784例がスクリーニングされ、そのうち639例が無作為化された(PVR群321例、VR群318例)。 患者背景は、年齢中央値68.0歳(四分位範囲[IQR]:60.0~74.0)、男性439例(69%)、女性200例(31%)、前治療レジメン数の中央値は2(IQR:1~3)で、510例(80%)に共有結合型BTK阻害薬の前治療歴があり、そのうち362例(71%)は病勢進行により直近の共有結合型BTK阻害薬を中止していた。 追跡期間中央値27.3ヵ月(IQR:19.5~38.7)において、PFSはPVR群でVR群と比較し有意に改善した(ハザード比:0.547、95%信頼区間[CI]:0.400~0.748、層別log-rank検定のp=0.0001[有意水準0.03104])。 PFS中央値はPVR群で未到達(IQR:31.7~推定不能)、VR群で39.7ヵ月(95%CI:21.5~50.0)であり、24ヵ月PFS率は、それぞれ87%(95%CI:82.3~90.4)、72%(95%CI:65.7~77.0)であった。 PVR群の有効性は、共有結合型BTK阻害薬の前治療歴を有する患者集団を含む事前に規定されたサブグループで一貫していた。 有害事象は、全GradeでPVR群100%(315/316例)、VR群98%(305/311例)に認められ、最も発現頻度が高かった有害事象は下痢(それぞれ34%、35%)であった。全Gradeの心房細動または心房粗動の発現は少なかった(両群とも3%)。 Grade3以上の有害事象はPVR群(79%)とVR群(73%)で同程度であったが、Grade3以上の腫瘍崩壊症候群の発現割合は、PVR群(1%)がVR群(4%)と比較して低かった。 試験責任医師によりいずれかの試験薬に関連すると判断された試験治療下における有害事象(TEAE)による治療中止は、両群とも5%で報告された。死亡に至ったTEAEは5例に認められ、内訳はPVR群1例(敗血症性ショック)、VR群4例(敗血症、敗血症性ショック、COVID-19、全身の健康状態悪化が各1例)であった。

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第325回  「地域医療構想策定ガイドライン」やっと公表(前編) 国の人口減少と高齢患者急増に対する強い危機感あらわ、「再編・集約化」の取り組みに最重点

今年春にも公表される予定も、延びに延びて7月にやっと公表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ワールドカップ、終わってしまいましたね。日本でのテレビ観戦は、寝不足との戦いでなかなかハードでしたが、無料で観ることができるのですから贅沢は言えません。商業主義的過ぎるとの批判や、トランプ大統領のFIFAへの異例の介入騒動などもありましたが、サッカー素人の私でもいろいろな意味で楽しめた大会でした。日本経済新聞を購読している方はご存知だとは思いますが、大会期間中、同紙はほぼサッカー専門紙の趣で、下手なスポーツ新聞より詳しいワールドカップの記事を載せていました。同紙は経済紙にもかかわらず、武智 幸徳記者、阿刀田 寛記者という2人の著名なサッカー記者がいます。彼らの記事(戦評)はもはや文芸評論(あるいは文学)の域に達しており、感心しながらも逆に笑ってしまう記事も多々ありました。武智記者は7月11日付の同紙記事で、アルゼンチン対エジプト戦でのエジプトの得点がVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で取り消された件について触れ、「VARという制度が導入されてから、ピッチ上のプレーは区切りをつけた一つひとつの固まりとして分類されるようになった。文章に例えるなら、段落が変わるごとに付箋をつけて文頭と文末を示すようなものである。(中略)文頭に得点をした側の反則があれば文末の得点が取り消されるのはやむを得ない」と独自の解釈を披露。一方の阿刀田記者は、アルゼンチン対イングランド戦を評した7月17日付の同紙記事で、この試合をマラドーナの神話が生まれた1986年の試合と比較、「今回の試合はそれともひと味違う。何しろ彼らは、メッシの美技という美酒に酔っただけではなく、先制した後のイングランドの弱腰を末代まで笑う権利を手にしたのだから」と、文学的過ぎる戦評を書いていました。7月21日付の決勝を報じた記事でも、「牙が折れてもスペインにかみついて歯形を残したアルゼンチンの散りざまは、まことにアルゼンチンらしかった」と最後までアルゼンチン礼賛のトーンは不変でした。ちなみに阿刀田記者は作家・阿刀田 高氏の息子さんです。さて、今回は7月3日に厚生労働省がようやく公表した「地域医療構想策定ガイドライン」について書いてみたいと思います。今年春にも公表される予定でしたが、延びに延びて7月になってしまいました。厚労省は遅れの原因について説明していません。一説には、医政局の担当課が中東情勢に伴う医療資材不足の対応に追われたことが一因と言われています。仮にそれが本当だとしたら、厚労省、人手不足過ぎるのでは、と心配になります。2028年度中に策定、2035年度を目途に一定の成果を確保2025年12月に成立した改正医療法で定められた「新たな地域医療構想」をどう策定するかについては、2026年3月まで開かれた地域医療構想及び医療計画等に関する検討会で議論が続けられてきました。公表された「地域医療構想策定ガイドライン」は、この検討会の「とりまとめ」を基に、基本的な考え方や具体的な策定の手順を厚労省が整理したものです。このガイドラインを基に、各都道府県は2027年度上半期頃までに、地域医療構想調整会議において課題の整理や構想区域の点検・見直しなどを行います。そして2028年度までに、各都道府県において急性期拠点機能を担う医療機関の具体的な医療機関名の決定も含めて「地域医療構想」として策定し、「2040年を見据えた医療提供体制について、2035年度を目途に、一定の成果を確保する」としています。つまり、2029年3月までに新たな地域医療構想を策定し、地域の医療機関の役割分担、棲み分けの方向性を決定、2035年度までに構想を一定程度進め、2040年頃に必要とされる医療提供体制にできるだけ近づけておく、という流れになります。地域医療構想の見直し8つのポイント新たな地域医療構想の概要については、本連載の「第294回 改正医療法やっと成立、医療機関の集約化、統合・再編、病床削減さらに加速へ 『地域医療構想の見直し』 8つのポイント」でも解説しました。そこでも書いた8つのポイントをおさらいしておきましょう。1)病床の機能分化だけでなく、外来・在宅、介護との連携、人材確保等の計画も2)医療法の規定で「地域医療構想」が「医療計画」よりも上位の概念に3)基準病床数は「新たな地域医療構想」における将来(2040年)の病床必要量の範囲内に4)病床機能の区分、「回復期」は「包括期」に名称変更5)新たに「医療機関機能報告」の制度が創設6)人口規模が小さ過ぎる構想区域は合併、大き過ぎる構想区域は分割7)精神医療も地域医療構想で位置付け8)病床数の削減を支援する事業を都道府県が実施できるように人口減少と高齢患者急増に対する国、厚労省の非常に強い危機感以上の8ポイントを念頭にガイドラインを読んでみたのですが、一読して伝わってくるのは、人口減少と高齢患者急増に対する国、厚労省の強い危機感です。ガイドラインは冒頭の「I.地域医療構想の考え方」の「1.2040年に向けた医療提供体制について」中で、「背景」について、我が国においては、今後、人口構造や疾病構造の変化に伴い、医療の需要が量的、質的に大きく変化することが見込まれている。特に、団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降、2040年に向けて、高齢者人口の増加に伴い、高齢者救急や在宅医療の需要が増加する一方、急性期医療の需要が多くの地域で減少することが見込まれる。また、生産年齢人口の減少に伴い、医療機関における医師や看護職員等の担い手の確保がますます困難となることが想定される。このため、地域において必要な医療提供体制を将来にわたり確保していく観点から、2040年頃の医療需要を見据えつつ、医療機関の役割分担や連携のあり方を整理し、地域全体として適切な医療提供体制を構築することを目的として、地域医療構想を推進する必要がある。──と記しています。各地で人口減少が急激に進む中、地域の急性期拠点機能を集約化などによって維持するとともに、急性期拠点機能から“落ちこぼれていく”医療機関を生き長らえさせ、需要が急増する高齢者救急や在宅医療に対応できる医療機関に再編していくことが、地域医療構想の主眼であることがわかります。急性期医療については広域での集約化をそのため、ガイドラインの複数の項目において、「再編・集約化」を強く意識した文言があるのが大きな特徴です。「I.地域医療構想の考え方」の「3.医療機関機能の確保について」の中では、「医療機関の連携・再編・集約化」について、「大都市型の地域においては、医療需要の総量としては大きく減少はしないが、手術等の集学的な医療は相対的に減少し、高齢者救急等の包括期の医療需要や慢性期の需要が相対的に増加していく」ため「それぞれの地域ごとに当該状況に応じた医療機関の連携・再編・集約化の取組が求められる」としています。加えて、「急性期医療については、構想区域ごとに、緊急性の高い疾患や頻度の高い疾患等に対応できる体制の確保が必要となる。がん手術やその他の高度な外科手術については、症例数が多い医療機関ほど、医療の質が高いことが一般的に知られており、こうした高度な手術等については、地域の医療資源に応じて、構想区域よりも広域な単位で集約して実施することを検討する必要がある」と、広域での機能の集約化の検討も要請しています。また、「救急車の受入や手術の実施を行う医療機関の集約化や役割分担、夜間に緊急手術を行う医療機関の集約化等も取組として検討が必要である」と急性期拠点機能や急性期病床の集約化以外の連携・再編・集約化の必要性についても言及しています。市町村には自治体病院の経営は二の次にダウンサイジング、再編・集約化求めるさらに、「I.地域医療構想の考え方」の「2.地域医療構想について」の中の「関係者に期待される役割等」でも再編・集約化の必要性を強調しています。関係者の中で、とくに市町村等に求められる役割について、「病院開設者としては、人口の少ない地域における自治体立病院は、当該地域での唯一の基幹的な医療機関として地域を支えている医療機関でもある一方で、都市部においては、他の医療機関と機能が競合している医療機関もあるなど、地域における役割は様々」とした上で、「自治体立病院の開設者としての観点だけではなく、他の医療機関と同様に、病床数の適正化(ダウンサイズ)や提供する医療内容の見直し等を行い、地域全体の医療提供体制の構築・維持や連携・再編・集約化の取組への協力が求められる」と、自治体病院の経営を優先させるのではなく、周辺医療機関との棲み分けの中でダウンサイジング、再編・集約化に取り組むよう要請しています。同様に公立・公的病院等に対しても、「県立病院や公的病院等、その設置主体である都道府県、日本赤十字社、済生会、厚生連、国立病院機構、労働者健康安全機構等においても、病床数の適正化(ダウンサイズ)や提供する医療内容の見直し等を行い、地域全体の医療提供体制の構築・維持や連携・再編・集約化の取組への協力が求められる」とダウンサイジング、再編・集約化の検討を迫っています。こうした流れを受けて、公立病院を管轄する総務省の公立病院改革は、経営改善というよりも、ダウンサイジング、再編・集約化に軸足を移していくでしょう。その結果、人口減少地域では閉院する医療機関もこれまで以上に増えていくと予想されます。高齢者救急・地域急性期機能と急性期拠点機能については併存できず新たに創設される「医療機関機能報告」は新たな地域医療構想の最大の“肝”と言えますが、「とりまとめ」までの議論では言われていなかった新たなルールが盛り込まれました。以前は、医療機関は複数の機能を報告することもできるとされていましたが、「高齢者救急・地域急性期機能と急性期拠点機能については、医療資源を多く要する医療や高齢者救急の役割分担を明確化するためのものであり、両機能を一つの医療機関が報告することはしない」と明示されたのです。このルールは、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟入院料を持つ急性期病院には、少なからぬ影響が出ると考えられます。(この項続く)

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帯状疱疹ワクチンは動脈硬化性疾患患者の主要心血管イベントリスク低下と関連

 動脈硬化性疾患(ASCVD)と診断された50歳以上の成人において、帯状疱疹(HZ)ワクチンの接種は、主要心血管イベント(MACE)およびその他の心血管アウトカムのリスク低下と関連するという研究結果が、米国心臓病学会年次総会(ACC.26、3月28~30日、米ニューオーリンズ)で発表された。 米カリフォルニア大学リバーサイド校のRobert Nguyen氏とAditya Desai氏は、米国のTriNetXデータベースを用い、2018年1月1日~2024年1月1日にASCVDと診断された50歳以上の成人を対象とした後ろ向きコホート研究を実施し、この集団において帯状疱疹ワクチン接種が心血管リスクを低減するかどうかを検討した。傾向スコアマッチング後、HZワクチン接種群27万5,304人と非接種群27万5,304人が解析対象となった。 解析の結果、HZワクチン接種は、MACE、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスク低下と有意に関連していた(ハザード比はそれぞれ、0.54、0.39、0.73、0.73)。さらに、HZワクチン接種は、静脈血栓塞栓症、心不全、心房細動または心房粗動のリスク低下とも関連していた(同0.63、0.67、0.70)。 Nguyen氏は、「このワクチンは、心筋梗塞、脳卒中、死亡のリスク低減に対する心血管保護作用を繰り返し示している。既に心血管疾患を有する高リスク集団では、その効果は一般集団よりもさらに大きい可能性がある」と述べている。

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プレハビリテーションが高齢患者の脊椎固定術後の合併症を抑制

 プレハビリテーションは、術後の回復を促進する目的で術前に体力や健康状態を向上させる介入で、近年、外科医を中心とする医師の注目を集めている。こうした中、新たな研究で、脊椎固定術の前に4週間のプレハビリテーションプログラムを受けた75歳以上の患者では、術後90日以内の合併症リスクが18%低かったことが示された。首都医科大学(中国)附属宣武医院整形外科部長のShibao Lu氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に6月16日掲載された。Lu氏は、「本研究は、構造化された多面的プレハビリテーションが、高齢者における脊椎固定術後の合併症を減少させる上で有効な方法となり得ることを示した」と述べている。 脊椎固定術では、不安定性などの問題が生じている椎骨の間に人工骨や患者自身の骨などを移植し、椎骨同士を癒合・固定して安定化させる。米国整形外科学会(AAOS)によれば、この手術は主に椎間板変性症や脊椎内の神経圧迫などによる腰背部痛の治療に用いられる。研究グループは、脊椎固定術自体は比較的リスクの低い手術とされているものの、「75歳以上の患者では、若年患者と比べて術後合併症および退院遅延のリスクがおよそ2倍に増加する」と指摘する。 今回の研究では、中国の3つの病院で脊椎固定術を受ける75歳以上の患者164人を対象に、術前のプレハビリテーションプログラムおよび術後の回復強化プログラムを受ける群と、術後の回復強化プログラムのみを受ける群にランダムに割り付けた。プレハビリテーションプログラムでは、4週間にわたり、筋力トレーニング、バランス訓練、柔軟性向上運動、有酸素運動で構成された運動プログラムと、十分なカロリーおよびタンパク質の摂取を重視した食事指導が行われたほか、睡眠改善、疼痛管理、処方薬の適切な使用、心理的支援に関する介入も実施された。 最終的に159人の患者(平均年齢78.7歳、女性59%)を対象に解析が行われた。その結果、術後90日以内に1つ以上の合併症が生じた患者の割合は、プレハビリテーション群で74.7%、術後回復強化プログラムのみの群で91.2%であり、プレハビリテーション群で有意なリスク低下が認められた(リスク比0.80、95%信頼区間0.67~0.95、リスク差−18.0%、95%信頼区間−27.0~−9.0%)。また、プレハビリテーション群の術後入院期間は平均12日であり、術後回復強化プログラムのみの群の14日より短かった。さらに、プレハビリテーション群では79人中68人が術後24時間以内に離床できたのに対し、術後回復強化プログラムのみの群では80人中55人であった。サブグループ解析では、プレハビリテーションの効果は、男性より女性で、初等教育または高等教育修了者より中等教育修了者で、さらに腰椎固定術のみを受けた患者で、腰椎固定術に加えてその他の手術を受けた患者より顕著な傾向が示された。 ただし研究グループは、「栄養状態や運動習慣のベースラインには国や地域による違いがあり、入院期間や術前待機期間などの医療慣行も異なっている。そのため、本研究結果の適用性や他国での導入には慎重な検討が必要である」と述べている。

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房水産生も抑制する1日1回投与の緑内障・高眼圧症治療薬「ロープレッサ点眼液0.02%」【最新!DI情報】第67回

房水産生も抑制する1日1回投与の緑内障・高眼圧症治療薬「ロープレッサ点眼液0.02%」今回は、緑内障・高眼圧症治療薬「ネタルスジルメシル酸塩(商品名:ロープレッサ点眼液0.02%、製造販売元:参天製薬)」を紹介します。本剤は、既存の緑内障治療薬で効果不十分、または副作用などで使用困難な緑内障・高眼圧症患者を適応とする1日1回の点眼薬であり、新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>緑内障、高眼圧症の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。プロスタグランジン関連薬やβ遮断薬などの他の緑内障治療薬で効果不十分または副作用などで使用できない場合に本剤の使用を検討します。<用法・用量>1回1滴、1日1回点眼します。<安全性>重大な副作用として、角膜上皮浮腫(頻度不明)があります。その他の副作用として、結膜充血(55.9%)、渦巻き角膜(21.7%)、アレルギー性結膜炎(10%以上)、眼刺激、霧視、結膜出血、眼のそう痒感、視力低下、眼瞼炎、流涙増加、点状角膜炎・角膜びらん・角膜炎などの角膜上皮障害、眼痛、結膜炎、眼脂(いずれも1~10%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、緑内障・高眼圧症に用いられる点眼薬です。眼圧を調整する水分の産生を抑制するとともに、排出を促進することにより眼圧を下げます。2.他の緑内障治療薬が効果不十分または使用できない場合に使用します。3.ソフトコンタクトレンズを付けている場合はレンズを外してから点眼し、5~10分間の間隔を空けてからレンズを付けてください。4.点眼後、一時的に目がかすんだりすることがありますので、症状が回復するまでは機械の操作や自動車などの運転は行わないでください。5.この薬の使用時に渦巻き角膜や角膜上皮浮腫が起こることがあります。霧がかかったような見え方や視力の低下などが現れたら受診してください。【ここがポイント!】緑内障は、視神経と視野に特徴的な変化を来し、適切な治療が行われない場合には失明に至る可能性のある疾患です。日本における眼疾患による視覚障害(視力低下や失明)の最大の原因であることから、早期発見・早期治療が極めて重要です。緑内障による視神経障害は進行性であり、眼圧下降療法が有効な治療法となります。治療の第1選択薬としては、プロスタノイドFP受容体作動薬、プロスタノイドEP2受容体作動薬およびプロスタノイドFP受容体+EP3受容体作動薬が推奨されており、その他、アドレナリンβ受容体遮断薬や炭酸脱水酵素阻害薬なども広く使用されています。治療は原則として単剤から開始し、目標眼圧が達成できない場合には、薬剤の切り替え、または作用機序の異なる薬剤の追加併用を行います。しかし、点眼回数の増加は、患者のアドヒアランス低下につながる可能性もあり、1日1回の点眼で強力な眼圧下降作用を発揮する薬剤が望まれていました。本剤は、有効成分としてネタルスジルメシル酸塩を含む眼圧下降点眼薬です。本剤は、Rhoキナーゼ(ROCK)を阻害することで線維柱帯流出路からの房水流出を促進するとともに、ノルエピネフリントランスポーターを阻害することで房水産生を抑制します。また、活性代謝物であるAR-13503にもROCK阻害活性が認められています。本剤の眼圧下降作用には、これらの複数の薬理作用が寄与しています。本剤は、既存の緑内障治療薬で効果不十分な場合、または副作用などで使用困難な緑内障・高眼圧症患者を適応とする1日1回の点眼薬であり、新たな治療選択肢として期待されます。原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした国内第III相臨床試験(AR-13324-CS305)において、主要評価項目である投与後4週における平均日中眼圧について、本剤群で15.79mmHg、リパスジル群で17.77mmHg、投与群間差(本剤群-リパスジル群)は-1.74mmHg(95%信頼区間[CI]:-2.17~-1.31)であり、本剤群はリパスジル群と比較して有意差が認められました(p<0.0001、共分散分析)。群間差の点推定値が事前に規定した0mmHg未満であったため、本剤群のリパスジル群に対する優越性が検証されました。また、ラタノプロスト点眼液で眼圧下降作用が不十分な原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象に、ラタノプロスト点眼液との併用効果について検討した国内第III相臨床試験(101390001LT)において、主要評価項目である投与後4週における平均日中眼圧は、本剤併用群で15.38mmHg、プラセボ併用群で17.51mmHgでした。投与群間差(本剤併用群-プラセボ併用群)は-2.36mmHg(95%CI:-2.83~-1.88)であり、本剤併用群はプラセボ併用群と比較して有意差が認められました(p<0.0001、共分散分析)。群間差の点推定値が事前に規定した0mmHg未満であったため、本剤併用群のプラセボ併用群に対する優越性が検証されました。

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患者説明に使う資料や情報源は?~がん専門医500人に聞く

 情報過多の現代、医療情報も多種多様なレベルのものが世の中にあふれている。数十年前と比べ医師と患者の立場がフラットになりつつある昨今、患者自身の学習意欲もあいまって、診療時間中のコミュニケーションに費やす時間は増加傾向にある。診療の効率化が求められる中でも、医師にとっては患者に対し、患者自身の疾患に関する正しい知識を端的に提供したいというニーズは根強いのではないだろうか。 患者の視点に立った情報発信については、若尾 文彦氏(国立がん研究センターがん対策情報センター本部)率いる研究班*や「がん情報の均てん化を目指す会」**をはじめとする多くの団体が検証を重ねている。後者の団体が2024年11月5日に公表したディスカッション・ペーパー『がん情報の均てん化に向けて~がん患者がオンライン上でがん情報を入手・活用する際の課題と提言~』では、がん患者がオンライン上で情報を入手・活用する際の課題が示された。とくに注目すべきは、患者が情報を入手・精査する際の相談先として、8割が「主治医」を挙げていた点である。*「厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業 _科学的根拠に基づくがん情報の提供及び均てん化に向けた 体制整備に資する研究」**がん患者が適切なタイミングで適切な情報にアクセスすることで、治療や周辺情報に関する知識を高め、適切に治療を受け、がんと共生できる環境を目指すことを目的に2024年4月に発足 そこでCareNet.comでは、患者から相談を受ける医師側が、日常診療でどのような情報源を案内しているかを明らかにするため、日常診療でがん患者の診察を行っている200床以上の施設に勤務する会員医師501人(呼吸器科、消化器科、外科、乳腺外科、血液内科、泌尿器科、腫瘍科)に対し、「医師のがん患者への情報提供方法」に関するアンケートを実施。患者への情報提供資料やその情報源、および活用理由について調査した。告知時の相談内容と使用媒体 まず、回答者の「勤務先施設の区分」(Q1)について、「地域がん診療連携拠点病院」所属の医師が最も多く、「都道府県がん診療連携拠点病院」「いずれも該当しない」と続いた。また、年代別では30~50代が多く、30~40代では「都道府県がん診療連携拠点病院」、その他の年代では「地域がん診療連携拠点病院」に所属する医師の割合が高かった。 「患者や家族への告知時、またはその後の診察で受けることが多い質問・相談」(Q2)については、「病気に関する情報」「病期と治療の選択肢」「予後・余命」が上位を占め、次いで「副作用や対処法」「検査・診断方法」となった。これらは施設区分による大きな差異はみられなかった。なお、前述のディスカッション・ペーパーにおいても、患者側が「十分な情報があった」と回答した項目とほぼ一致しており、患者自身の検索行動だけでなく、医師からの情報提供が一定の影響を与えている可能性が示唆される。 これらの相談に対し「利用する媒体やツール」(Q3)を尋ねたところ、「製薬企業が作成している患者向け資料説明」「自施設で作成している患者向け説明資料」「各学会発行のガイドライン(患者向け含む)」の利用率が高かった。一方で、回答者の約1/3が「手書きの図やメモ」を用いた説明を行っていると回答し、Web媒体系資料の活用頻度は総じて低い傾向にあった。診療科別では、血液内科において製薬企業作成資料の利用が突出しているほか、外科ではガイドラインの利用率が高いという特徴がみられた。 なお、Q3で「患者向けWeb媒体の資料」と回答した医師が利用するサイト(Q4)については、国立がん研究センターの「がん情報サービス」が最多であり、厚生労働省のホームページ、がん関連学会のサイトがそれに続いた。患者の情報収集への意識、医師による「相談支援センター」の活用実態 「病態や治療内容を調べる方法について患者から尋ねられた経験」(Q5)については、全体の60%が「ある」と回答しており、患者側から能動的に調べ方を問うケースは、やはり一定数存在することが伺える。 一方、無料・匿名で利用できる「がん相談支援センターの認知と活用」(Q6)については、ギャップが生じる結果となった。半数以上の医師が存在を認知しているものの、実際に自ら活用を促したことがある医師は2割弱にとどまった。この傾向は診療科や年代によってばらつきがみられ、とくに若年発症が多くサバイバー層も厚い血液内科において、医師からの利用勧奨が少ない結果となっている。これについては、医師による直接の勧奨ではなく、院内の医療連携を通じて看護師やメディカルソーシャルワーカーらが役割を担っている背景も推測される。また年代別では、20〜30代の若手医師の間で認知が浸透している一方、40代以降ではやや認知度が下がる傾向が確認された。 今回の調査では、このほかに自由記入として「患者への説明時に不安を感じること」「説明時に困っていること」「説明時に意識していること」についても回答を得ている。臨床現場におけるコミュニケーションの標準化やリソースの最適化に向け、示唆に富む具体的な声が集まったため、詳細はぜひアンケート結果のデータを参照されたい。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。がん患者への情報提供方法

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加糖飲料の摂取は肝細胞がん・肝内胆管がんのリスク増加と関連

 11件の長期追跡研究に参加した150万人以上の成人の食事データを解析した研究で、加糖飲料の日常的な摂取は肝細胞がん(HCC)および肝内胆管がん(ICC)のリスク増加と関連することが示された。米国立がん研究所(NCI)のCody Watling氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月10日掲載された。 肝がんは世界で3番目に多いがん死亡の原因である。肝がんの主な組織型で最も多いのはHCCで、肝がん全体の75〜85%を占めている。研究の背景情報によると、HCCの主なリスク因子には、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)の慢性感染、過度の飲酒、喫煙、アフラトキシン類汚染食品の摂取、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、糖尿病、肥満などの代謝性疾患が含まれるが、HCCの35%は既知のリスク因子では説明できないという。肝臓は主要な代謝器官であり、解毒において重要な役割を果たしていることから、食事などの外因性因子による影響を受けやすいと考えられる。 こうした点を踏まえて今回の研究では、がん発症を長期追跡した11件の前向きコホート研究のデータを用いて、人工甘味料入り飲料(ASB)および加糖飲料(SSB)の摂取と、肝がん全体、HCCおよびICCの発症リスクとの関連を検討した。ASBにはダイエットソーダやダイエットコーラ、その他の低カロリー甘味飲料が含まれた。一方、SSBにはコーラ、炭酸飲料、カフェインレス炭酸飲料、ジュース類などが含まれた。 11件のコホート研究のうち、10件は米国のコホート、残る1件はヨーロッパのコホートを対象としたもので、いずれの研究参加者もベースライン時点でがんの既往がなかった。研究参加者は1980~2009年に各コホート研究へ登録され、その後、2000~2019年まで追跡された。追跡期間中央値は11.4~31.4年で、参加者の総計は151万8,411人(平均年齢57.8歳、女性58.2%)に上った。 追跡期間中央値17.8年の間に、2,811人(HCC:1,699人、ICC:444人)が肝がんを発症した。解析の結果、ASBの摂取量が1日1杯増加しても肝がん全体、HCCおよびICCの有意なリスク増加は認められなかった。また、SSB摂取量が1日1杯増加しても肝がん全体のリスクとの関連は認められなかったが、HCC(ハザード比1.10、95%信頼区間1.03~1.18)およびICC(同1.15、1.00~1.32)のリスク増加と関連していた。糖尿病の有無による有意な効果修飾は認められなかった。 ただし研究グループは、この結果はSSBが肝がんの原因であることを証明するものではないと強調している。それでもなお、SSBの摂取が長期的な健康リスクと関連するというこれまでの証拠を補強するものだとの見方を示している。

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トゥレット症候群、当事者の深刻な実態が明らかに

 トゥレット症候群(TS)は、ときに冗談の対象として扱われることもあるが、当事者にとって極めて過酷な状態であることが、米トゥレット協会(TAA)が6月11日に公表した調査(2026 Impact Survey Report)で示唆された。この調査によると、TSまたはその他のチック症を有するティーンおよび成人の4人に1人が、生涯のどこかの時点で自殺を試みたことがあることが明らかになった。また、チック症を理由に差別を受けたと報告した割合も約7割に上った。 TAA会長兼CEOであるIan Lang氏はニュースリリースの中で、「2026年の調査結果は、TSおよびその他のチック症を抱える人が必要とする支援を確実に受けられるようにするために、いかに多くの課題が依然として残されているかを示す行動喚起である」と述べている。 チック症とは、本人の意思とは無関係に、まばたきや肩をすくめるなどの動作が突発的に繰り返される運動チックと、咳払いや発声などを伴う音声チックを特徴とする神経発達症である。TSは、複数の運動チックと1種類以上の音声チックの両方が1年以上にわたり続く場合に診断される。 今回の研究では、2026年のImpact Surveyにおいてオンライン調査を完了した754人(成人455人、小児183人、ティーン116人)の回答が分析された。その結果、TSまたはその他のチック症を有する成人の71%、および小児の69%近くが、チック症を理由に差別を経験したと回答していた。精神面への影響も深刻で、当事者の約4人に1人が生涯のいずれかの時点で自殺を試みた経験があると回答しており、「自分が死ねば、自分も家族も楽になる」と感じた経験を持つ人も、成人で18%、ティーンで20%に上った。 診断までの時間については、成人の84%と小児の76%は「症状の出現から診断まで1年以上を要した」と回答した。また、チックによる身体的負担も大きく、成人の82%、小児の69%が、チックに由来する痛みを経験していることが示された。さらに、家庭や経済面への負担も大きく、保護者の18%が子どものケアのために離職や転職、勤務時間の削減を余儀なくされていることや、28%がカウンセリングや通院、学習支援などの費用負担に困難を抱えていることを回答した。治療面では、ティーンの17%が症状管理のために5種類以上の薬を試した経験があり、成人の41%、ティーンの45%が、現在の治療薬ではチックが十分にコントロールされていないと回答した。 2026年の初めに英国のアカデミー賞(BAFTA賞)授賞式で起きた出来事は、TSがいかに困難で深刻なものであるかを浮き彫りにした。TSの当事者であり、英国のインディペンデント映画『I Swear』の題材にもなったJohn Davidson氏が、壇上でプレゼンターを務めていた黒人俳優のMichael B. Jordan氏とDelroy Lindo氏に対してNワード(人種差別的な侮蔑語)を発したのだ。観客には事前にDavidson氏の症状について説明があったとされ、事後に司会者のAlan Cumming氏は理解を求め、発言によって不快感を与えた可能性について謝罪したとCNNは報じている。Davidson氏自身は、この出来事の後、式典を離れた。同氏は、「自分のチックが周囲に苦痛や困惑を与えていることを認識していたため、式の途中で会場を後にすることにした」と話した。 Lang氏は、「スティグマ(偏見)、差別、経済的困難、そして必要なサービスへの限定的なアクセスが、いまだに非常に多くのTS患者にとっての現実である。人々が必要なケアを受け、当然受けるべき支援を得て、スティグマや差別から解放され、自分が望む人生を生きられるような仕組みを構築する時期はとうに過ぎている」と強調している。

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テストステロン処方前、ガイドラインに沿った診断は12%

 テストステロン製剤を処方された男性の多くが、事前に必要な検査を受けていない可能性があることが、新たな研究で示された。テストステロン製剤の処方前に、ガイドラインに沿った診断検査を受けていたのは12%にとどまっていたという。米ミシガン大学アナーバー校内科学分野のMaria Papaleontiou氏らによるこの研究結果は、米国内分泌学会年次学術集会(ENDO 2026、6月13~16日、米シカゴ)で発表された。 Papaleontiou氏はニュースリリースで、「本研究結果は、患者ケアを改善し、不適切なテストステロン製剤の処方を削減できる機会があることを示している。長期的には、これらの知見が診療の質改善の取り組みや臨床意思決定支援ツールの開発につながり、ガイドラインに沿った一貫性のあるテストステロン製剤処方の促進に寄与する可能性がある」と述べている。 研究チームは、2020~2025年にミシガン大学医療センターで性腺機能低下症と診断され、テストステロンを処方された男性200人(平均年齢52.5歳)をランダムに抽出し、診療記録を分析した。男性での性腺機能低下症は、精巣の機能低下に伴い十分な量のテストステロンを産生できなくなる状態をいう。 対象者に多く認められた併存疾患は、肥満(63%)、高血圧(52%)、うつ病(40%)、糖尿病(28%)、関節炎(28%)であった。テストステロン製剤を処方された患者のうち、午前5~10時の検査で2回、低テストステロン値(総テストステロン値300ng/dL未満、遊離テストステロン70pg/mL未満、または生物学的利用可能テストステロン値の低値)が確認され、LH(黄体形成ホルモン)および/またはFSH(卵胞刺激ホルモン)の測定が行われ、テストステロン療法の禁忌がないことが確認されていた患者は12%にとどまっていた。 また、初回のテストステロン製剤処方前の1年以内に前立腺特異抗原(PSA)検査を受けていた患者は62%、全血球計算(CBC)を受けていた患者は77%であった。さらに、テストステロン製剤処方前の併存疾患として、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が55%、前立腺がんが4%に認められ、1.5%ではPSA値が4ng/mLを超えていた。テストステロン製剤を処方した医師の内訳は、プライマリケア医が45%、泌尿器科医が35.5%、内分泌科医が18%、その他の診療科医が1.5%であった。処方されたテストステロン製剤では、クリームやジェルなどの外用剤(68.5%)が最も多かった。 Papaleontiou氏らは、「テストステロン製剤の処方をガイドラインに沿ったものに改善することで、臨床的にテストステロン療法を必要としない可能性がある患者における回避可能なリスクを防ぐことができる」との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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第322回 薬局への「ポイント付与制限」は誰のなんのため?

INDEX薬局を真剣に選ぶとき薬局選択、多くは質ではなく…ポイント規制への拭えぬ違和感年を取ったせいもあってか、私も医療機関・薬局のお世話になることが増えた。より詳細に説明すると、年ゆえにちょっと気になる症状があると、医療機関受診を選択することが増えたというのが正確だ。そのような中、先日処方箋を持って行ったある薬局で、決済にQRコード払いを選択したところ、薬剤師から次のように告げられた。「あっ、7月から現金以外の決済手段は当薬局のポイントが付かなくなったんですよ。すみません」「ははーん」と思った。医療者ならばご存じの先生も多いと思うが、6月23日に厚生労働省保険局医療課が発出した事務連絡「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3の2第1項に規定する経済上の利益の提供による誘引の禁止について」1)の影響であることは明らかだった。通知内容を簡単に要約すると、一部の保険薬局が保険調剤に伴う自己負担支払い時に薬局独自ポイント、あるいはVポイントなどの共通ポイントを付与する際は、決済手段で付与されるポイントと併せて1%超になるのは罷りならんというものである。この法的根拠は、通知内にもあるように保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(療担規則)で「保険薬局は、患者に対して、第四条の規定により受領する費用の額に応じて当該保険薬局における商品の購入に係る対価の額の値引きをすることその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、当該患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引してはならない」となっているからである。要は調剤技術料や薬価は公定であり、そこへのポイント付与は医療保険制度が有する公的な性格上馴染まないこと、また薬局は機能や業務の質によって選択されるべきものであり、その選択を経済的な利益で誘導してはならないという理屈だ。ただし、前出のように保険薬局でクレジットカード払いなどキャッシュレス支払いが可能な場合はそれによるポイント付与があるのはよく知られたこと。ただ、この場合のポイント付与者はあくまで決済事業会社であり、薬局側が経済的利益で誘導をしているものではないので許容されている。もっとも決済ポイントも通知内での「患者の支払いの利便性向上又は保険薬局における事務の効率化の観点から、当面、やむを得ないものとして取り扱ってきたところ」という記述からもわかる通り、「認めたくはないが、仕方がない」というのが厚生労働省のスタンスである。私のケースは、薬局独自ポイント、QRコード決済のポイントがそれぞれ1%なのでこれまでは合計2%であり、厚生労働省の「けしからんライン」を超えてしまう。この薬局で現金払いのみ、今後もポイントが付与されるのは、このラインの中に納まるからだろう。薬局を真剣に選ぶときちなみに私がこの薬局を選択したのは、とあるお薬手帳アプリの使用を開始した際、アプリに登録されている薬局で処方を受け、お薬手帳にQRコードでデータを取り込むと、ポイントが付与される仕組みに乗っかったからである。厚生労働省の見解に沿えば、最もけしからん奴だろうし、読者からもお叱りを受けるかもしれない。ただし、この選択には私なりの理由がある。実は5年ほど前まではまったく別のお薬手帳アプリを使用していたが、これが使いにくかったのである。それはアプリ上でかかりつけにする薬局(調剤報酬上のかかりつけ薬剤師とは無関係)を選ぶ際、アプリ提供企業が各薬局に対して発行していたコード番号を入力しなければならなかったのだ。これを行わないと、処方箋写真の画像送信機能などは使えない仕組みだった。そしてこの制約のために私はヒヤッとさせられたことがあった。ある時、処方箋画像を送信しようとしたところ、なぜか送信不能だった。理由はすぐに判明した。このアプリは、登録したかかりつけ薬局の休業期間と処方箋送信機能が連動しており、私がかかりつけとしていた薬局がこの時、休業中だったのだ。間の悪いことに処方箋は薬局の休業期間中に失効してしまう見込みだった。焦ってアプリでほかの薬局を検索したのだが、アプリ内だけでかかりつけ薬局の変更はできず、そのうえ新たな薬局でそこのコード番号を教えてもらって再登録しなければならなかった。しかも、この時期はあいにくほかの薬局も休業期間中。ただ、近隣の薬局で1ヵ所だけ、私の処方箋の有効期限の最終日に営業を再開するところがあり、この時はその日に朝一番に薬局に赴き、何とか事なきを得たのである。この苦い経験とコロナ禍中に起きたジェネリック医薬品の供給問題もあり、次に中長期的な処方を受ける場合は、薬局とお薬手帳アプリはより真剣に選ぼうと思っていた。たまたま今回選定するに当たって複数の候補の中から当該アプリを選んだのは、前述のようなお薬手帳への処方薬登録でポイントがもらえることも一因だった。ただ、これとて「ポイントもゲット!」などというウキウキしたものではない。医療者の皆さんには申し訳ないが、私だけでなく多くの人はなるべくなら医療機関のお世話になりたくないのが本音だ。しかし、やむを得ずそうなっているネガティブな気分を少しでも緩和できるのが、少なくとも私にとってはポイントだった。そしてそのアプリから現在の薬局を選んだのは、大手ドラッグストアの調剤部門であるため、営業日が多く、供給不安の中でも相応に在庫を確保していると思われたからである(これとて個店薬局の皆さんからは苦々しく思われるかもしれない)。それが冒頭で触れた薬局である。結果としてみれば、私にとってこの選択は当たりだった。詳しくは過去の本連載(第265回)を参考にしていただきたいが、私が椎間板ヘルニアで処方されたプレガバリンの中止後に現れた睡眠障害の副作用を必死に調べて教えてくれたのが、冒頭の薬剤師だったのだ。これ以降、今のところこの薬局・薬剤師に私は満足しており、この薬局では取り寄せが予想される薬の処方箋もすべて集約している。きっかけはポイントだが、ポイントが付与されなくなった今後も薬局・薬剤師を変えるつもりはない。ただ、こうした巡り会わせはやや珍しいかもしれない。薬局選択、多くは質ではなく…たとえば、2021年に内閣府が公表した「薬局の利用に関する世論調査」2)によると、「あなたは、薬局を一つに決め、薬剤師を一人に決めていますか」との問いに「かかりつけ薬剤師・薬局を決めている」あるいは「薬局は一つに決めているが、かかりつけ薬剤師は決めていない」を合わせた回答割合は26.0%に対し、「病院や診療所ごとにその近くにある薬局に行く」が57.7%。要は患者の薬局選択の最大の理由は「立地」である。ほかの同種調査などを見ても結果は同じであり、この点は医療者も多くが納得するだろう。逆に異なる調査結果があったら教えてほしいくらいだ。多くの人は薬局を立地で決める。私の場合はたまたまお薬手帳アプリとそのポイントが一因となった点は違うものの、結局のところ機能や提供される医療の質で薬局を選択している人のほうが少数派と言い切っても言い過ぎとは思わない。さらに言えば、患者にとって医療機関と違い、薬局を選ぶ術は多くはない。医療機関の場合はまず診療科が分かれ、加えて診断と治療方針を決めるという、ほかのどの医療提供施設にもない絶対的な“技術力”が存在する。そのため、受診前に医療機関の情報を調べる患者は多いだろう。この点で薬局はかなりディフェンシブである。薬局はどの医療機関からの処方箋でも原則応需義務があり、結果としてゼネラリストにならざるを得ない。この性格上、患者にとって薬局の差はきわめてわかりにくいのだ。たとえば「当薬局は小児科医院の近くにあるため、小児科の処方で用いられる医薬品を幅広く備蓄しています」という広告は、今の広告規制でも不可能ではないだろうが、これが患者に響くだろうか? そもそも前述のように多くの患者が“距離”で薬局を選択している中で、各薬局がそうした独自の広告・広報をホームページなどで行っても見てもらえるだろうか? それ以前に薬局に行く前にネット上で検索して調べるだろうか? おそらくどれも可能性としては低い。そもそも機能や質で薬局を選べと言われても、多くの患者はどうしていいかわからないだろう。「ならば『医療情報ネット(ナビイ)』3)があるじゃないか」との声も聞こえてきそうだ。確かに、ナビイは市区町村から薬局検索ができ、可能な調剤業務、設備、さらには駐車場・駐輪場の有無まで事細かに条件を設定して薬局を検索できる。優れモノとは言えるかもしれないが、逆に作り込み感があり過ぎるというのが個人的な感想である。患者にとっては各条件に設定されている調剤業務や設備の意味から検索して調べなければならない可能性がある。そしてこの作り込みのせいか、ページが重い。だが、最も残念なことは知名度の低さである。2021年度厚生労働科学研究「医療の質評価と医療情報の提供に関する調査研究」4)によると、一般住民での認知度はわずか11%にとどまる。厚生労働省や都道府県がその認知度向上に向けた取り組みを行っているという話も、私自身は記憶がない。さらに言うと、病院ならば日本医療機能評価機構の病院機能評価という第三者評価があるが、薬局にはない。結局、患者にとって機能や質で薬局を選ぶ方法は事実上あってないようなものなのだ。この状況で、「出る杭は打て」よろしく、ことさらポイントをあげつらうのは、やはり納得がいかないのである。ポイント規制への拭えぬ違和感そもそも患者の自己負担は患者自身の懐から拠出されるものであり、ポイント付与の原資は付与する側が負担するので、医療保険財政には悪影響は及ぼさない。さらに言えば、厚労省が渋々認めている決済事業者によるポイント付与には1.5%を超えるケースもあることは多くの人が知っているだろうし、薬局が独自ポイントや共通ポイントを付与しても1~2%に過ぎない。たかだか5%未満のポイントがそれほど問題なのだろうかと個人的には思ってしまうのだ。“放言”(少なくとも本人はそう思っていない)ついでに言えば、厚労省は決済事業者が付与するポイントも半ば苦々しいと思っているのであろうことは前述したが、にもかかわらずナビイの検索条件にはキャッシュレス決済の検索項目を設定している点にも矛盾を感じざるを得ない。いずれにせよ複数回の改正は経ているとはいえ、1957年という洗濯機の家庭普及率が約20%だった時代の療養担当規則を金科玉条にするのは、やはり時代遅れ感がありすぎる。さてここで厚労省の皆さんや薬局によるポイント付与に極めて否定的な皆さまにお伺いしたい。皆さまはどのような基準で薬局を選んでいますか? もちろんポイントということはないでしょう。まさか「距離」ではないでしょう。そして薬局が距離で選ばれるようになった遠因、つまり病院前の門前薬局はなぜ乱立することになったのでしょうか?参考1)厚生労働省保険局医療課:保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3の2第1項に規定する 経済上の利益の提供による誘引の禁止について(令和8年6月 23日)2)内閣府政府広報室:「薬局の利用に関する世論調査」の概要(令和3年2月)3)医療情報ネット(ナビイ)4)厚生労働科学研究成果データベース:医療の質評価と医療情報の提供に関する調査研究

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