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解熱鎮痛薬による頭痛誘発、その原因成分とは

 日本のテレビコマーシャルでお馴染みの解熱鎮痛薬「イブ」に含有されている成分が、韓国では2025年4月に違法薬物に指定されて持ち込み禁止となった。その成分は、日本人医師や薬剤師にはさほど認知度が高くないものの、近年の頭痛外来患者の増加の原因の1つになっている可能性があるという。今回、頭痛専門外来患者の市販薬(OTC医薬品)の服用状況などを研究する佐野 博美氏(京都大学大学院医学研究科 社会医学系専攻健康情報学)と共同研究者の平 憲二氏(プラメドプラス)が、日本社会薬学会第43年会にて「薬剤の使用過多による頭痛(medication-overuse headache:MOH、薬物乱用頭痛)」に関する報告をしたことから、解熱鎮痛薬に含まれる依存性成分や頭痛患者が増える実態について話を聞いた。解熱鎮痛薬に配合されている依存性成分の正体 海外での規制に至った原因成分とは、鎮静催眠成分のアリルイソプロピルアセチル尿素(ア尿素)である。OTC解熱鎮痛薬は、解熱鎮痛成分(アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)、制酸成分(乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウムなど)、生薬成分、無水カフェイン、その他成分、そして鎮静催眠成分(ア尿素、ブロモバレリル尿素[ブ尿素])などで構成される。今回問題とされたア尿素に焦点を当てた場合、イブシリーズでは5製品中4製品に配合されている。もちろんOTC 解熱鎮痛薬の成分として厚生労働省から認可を受けており、その前提で使用されているので国内の規制上は問題ない。 一方で、『頭痛の診療ガイドライン2021』のCQI-13(OTC医薬品による頭痛治療をどのように指導するか)では、OTC医薬品の不適切使用によるMOHを問題視しているものの、その具体的な要因は明らかにされていない1)。患者支持ダントツ、依存性成分が満足度の底上げか そこで佐野氏らは、「頭痛専門外来患者における市販薬の鎮痛薬服用状況:問診票を用いた記述疫学研究」において、片頭痛や緊張型頭痛のような一次性頭痛患者のOTC医薬品の利用率増加と医療機関受診率低下の原因を“OTC医薬品に含まれる依存性成分”と仮定し、3つの依存性成分(カフェイン、ア尿素、ブ尿素)が含まれている解熱鎮痛薬の使用状況を頭痛専門外来2施設で調査、初診患者の市販薬服用状況を明らかにした。 解析対象者は、普段使用している頭痛治療薬の種類を問診票に記載し、適格基準を満たした15歳以上の6,756例で、そのうち市販薬のみを服用し、商品名を明記していた1,128例をサブ解析した。その結果、約6割強がイブシリーズ(イブA錠EX、イブクイック頭痛薬DX、イブA錠、イブクイック頭痛薬、どのシリーズかは不明)を使用していたことが示された。なお、イブシリーズの場合、依存性成分を含まない『イブ』は2023年に販売中止されているため、「イブを使用=依存性成分を摂取」と判断された。使用されていたOTC医薬品の依存性成分の内訳については、カフェイン&ア尿素が最も多く(8割弱)、続いてカフェイン&ブ尿素、依存性3成分なし、カフェインのみ、依存性3成分すべてであった。医療にアクセスするも適正薬剤届かず 本集団の特徴として、佐野氏は「病院にアクセスしづらい働き世代で、とくに40代以上の女性が多かった。驚いたことに、対象者は重症度が高い患者であるにもかかわらず、その約2割が市販薬のみでコントロールしていた。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体製剤などの新薬にたどりつくべき患者がたどり着けずに市販薬を手にしている可能性がある」と片頭痛治療の実際に危機感を抱いた。これについて平氏は、「依存性成分が処方箋医薬品とは異なる配合(比率)で含まれるOTC医薬品に“効果がある”と考えている患者は一定数存在する。患者自身がいろいろ試した結果、効果を実感してOTC医薬品に依存していくのではないか」と指摘し「通院しているが、“治療は市販薬”という患者も少なくない」と現状を説明した。 本調査の限界として、「ロキソニンやバファリンは処方薬との区別ができなかったため、集計結果の信頼性が低い」と説明し、「依存性成分は処方箋医薬品にも含まれているため、実際には本研究結果より多くの患者が依存性成分を摂取している可能性がある。さらに、鎮静作用のある成分とカフェインを同時摂取することは薬理作用が強化され、依存リスクが高まる可能性があるにもかかわらず、本対象者の使用薬剤の約9割にはそれらが一緒に含有されていた」と述べた。「今後は処方箋医薬品も含めた解析を実施していきたい」としながら、「医師・薬剤師をはじめ、医療者にはこのような実態を理解したうえで、患者に接してほしい」ともコメントした。

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年末年始の対応について(ポイント交換停止・カスタマーセンター休業)

年末年始:ポイント・プログラムのポイント交換停止についてポイント・プログラムに関しまして、下記の期間ポイント交換の受付を停止させていただきます。ポイント交換受付停止期間2025年12月25日(木)0時 ~ 2026年 1月2日(金) 0時(1月3日 24時)ケアネットカスタマーセンター年末年始の対応について年末年始におけるケアネットカスタマーセンターの営業に関しまして、下記のとおりご案内申し上げます。休業期間2025年 12月27日(土)~ 2026年 1月4日(日)年末営業終了日時2025年 12月26日(金)14時年始営業開始日時2026年 1月 5日(月)10時なお、休業期間中のお問い合わせフォームやメールでのお問い合わせにつきましては、年始営業開始より順次対応させていただきます。また、お問い合わせ状況により、返信までにお日にちをいただく可能性がございます。あらかじめご了承くださいませ。ご利用中の皆さまにはご不便をお掛けしますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。■お問い合わせ

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SGLT2阻害薬、eGFRやアルブミン尿を問わずCKD進行を抑制/JAMA

 SGLT2阻害薬は、ベースラインの推定糸球体濾過量(eGFR)やアルブミン尿の程度によらず、ステージ4の慢性腎臓病(CKD)患者や微量アルブミン尿患者を含むCKD進行のリスクを低下させたことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBrendon L. Neuen氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C)が行ったメタ解析の結果で報告された。著者は、「2型糖尿病、CKD、または心不全患者において、腎機能のすべての段階で腎アウトカム改善のためにSGLT2阻害薬を日常的に使用することを支持する結果である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年11月7日号掲載の報告。無作為化二重盲検プラセボ対照試験10件についてメタ解析 SMART-Cは、各治療群に少なくとも500例の患者が含まれ、少なくとも6ヵ月の追跡調査が行われて完了している無作為化二重盲検プラセボ対照試験を対象とし、各試験の代表者で構成される学術運営委員会が主導している。 研究グループは、SMART-Cのうち、CKD進行に対する適応を有するSGLT2阻害薬(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)を評価した試験に限定し、メタ解析を行った。解析対象は10試験(EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 58、EMPEROR-Reduced、EMPEROR-Preserved、DAPA-HF、DELIVER、CREDENCE、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)。 主要アウトカムはCKD進行とし、腎不全、eGFRが50%以上低下、または腎不全による死亡と定義した。その他のアウトカムには、eGFRの年間低下率および腎不全などが含まれた。個々の試験における治療効果を、逆分散加重メタ解析を用いて統合した。腎不全単独を含む研究対象となったすべての腎アウトカムのリスクを軽減 解析対象は計7万361例(平均[SD]年齢64.8[8.7]歳、女性2万4,595例[35.0%])で、このうちCKD進行が2,314例(3.3%)、腎不全が988例(1.4%)に認められた。 SGLT2阻害薬は、CKD進行リスクを低下させた(1,000患者年当たりのイベント件数:SGLT2阻害薬群25.4 vs.プラセボ群40.3、ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.57~0.68)。 この効果は、ベースラインのeGFRに関係なく認められた(eGFR≧60mL/分/1.73m2のHR:0.61[95%CI:0.52~0.71]、eGFR45~<60mL/分/1.73m2のHR:0.57[0.47~0.70]、eGFR30~<45mL/分/1.73m2のHR:0.64[0.54~0.75]、eGFR<30mL/分/1.73m2のHR:0.71[0.60~0.83]、傾向のp=0.16)。 また、ベースラインのアルブミン尿の程度にかかわらず効果が認められた(UACR≦30mg/gのHR:0.58、>30~300mg/gのHR:0.74、>300mg/gのHR:0.57、傾向のp=0.49)。 SGLT2阻害薬は、保護効果の程度にはばらつきがあるものの、糖尿病の有無別に解析した場合も含め、すべてのeGFRおよびUACRサブグループにおいて、eGFR年間低下率を改善し、また、腎不全単独のリスクも減少させた(HR:0.66、95%CI:0.58~0.75)。

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糖尿病治療、継続の鍵は「こころのケア」と「生活支援」

 病気の治療を続けたいと思っていても、気持ちの落ち込みや生活の負担が重なると、通院や服薬をやめてしまうことがある。今回、全国の糖尿病患者を対象にした調査で、心理的苦痛や先延ばし傾向がある人ほど治療を中断しやすいことが明らかになった。その背景として、経済的困難や介護・家事の負担、糖尿病治療への燃え尽き症候群(糖尿病バーンアウト)がみられたという。研究は鳥取大学医学部環境予防医学分野の桑原祐樹氏らによるもので、詳細は9月30日付けで「BMJ Open Diabetes and endocrinology」に掲載された。 世界的に糖尿病の有病率は増加しており、合併症による健康への影響が大きな課題となっている。適切な血糖管理により、多くの合併症は予防または遅らせることが可能である。しかし、治療を継続し、医療機関を受診し続けることは容易ではなく、治療中断やアドヒアランスの低下は血糖管理の不良、合併症の進行、死亡リスク、医療コストの増大につながる。過去の研究では、治療継続に関わる心理・社会的要因(抑うつや薬剤費など)が限定的に検討されてきたが、患者の体験と治療中断の関係については十分に解明されていない。本研究は、心理・社会的要因と患者体験が糖尿病治療の中断にどのように関連するかを明らかにすることを目的とした。 この横断研究では、220万人のパネル会員を持つ楽天リサーチ(現:楽天インサイト)株式会社を通じて、構造化オンラインアンケートを実施した。登録されている糖尿病患者1万8,000人のうち、40〜79歳の1万人を便宜的に抽出した。参加者には「現在、糖尿病の治療を受けていますか?(医療機関での定期的な血液検査や生活指導を含む)」と尋ね、「はい」と答えた者を治療継続群、「いいえ」と回答し、かつ「過去に定期的に治療を受けていたが、現在は医療機関を受診していない」を選択した者を治療中断群に分類した。群分けに続いて、参加者の心理的要因(気分障害・不安障害、自己肯定感、先延ばし傾向)および社会的要因(孤独感、逆境的な幼少期経験:ACE)を測定した。群間の割合の差はカイ二乗検定で評価し、糖尿病治療の中断と心理・社会的要因との関連は、潜在的交絡因子を調整したロジスティック回帰分析で検討した。 適格性を検証後、最終的な解析対象は4,715人(男性86.8%、女性13.2%)となった。69人の参加者が糖尿病治療の中断を報告し、51人が3カ月以上治療を中断していた。 次に、ロジスティック回帰分析により、心理・社会的要因と糖尿病治療中断との関連を検討した。性別、年齢、学歴、世帯収入、糖尿病の型で調整後、心理的苦痛(調整オッズ比〔AOR〕 1.87、95%信頼区間〔CI〕 1.06~3.30、P=0.032)および先延ばし傾向が強いこと(AOR 2.64、95%CI 1.25~5.56、P=0.011)は、治療中断と有意に関連していた。 さらに、治療継続群と治療中断群との患者体験を比較した。全体として、参加者のうち9.7%が経済的困難を訴えていた。また、12.1%が糖尿病バーンアウトを報告していた。経済的困難(9.5%対21.7%、P=0.002)、育児または介護の困難(1.5%対10.0%、P<0.001)、および糖尿病バーンアウト(11.9%対26.7%、P=0.001)を報告した人の割合は、治療継続群に比べて治療中断群で有意に高かった。 著者らは、「潜在的な交絡因子を調整した後も、心理的苦痛および強い先延ばし傾向は治療中断と有意に関連していた。いくつかの心理社会的要因の経験は、治療継続群と比較して治療中断群で有意に多く認められた。医療従事者および医療システムは、糖尿病患者の転帰不良を最小限に抑えるために、これらの要因への対応を優先すべきだ」と述べた。 なお、本研究の限界として、選択バイアスが避けられなかった点、自己申告式の質問票であったため情報バイアスが存在していた可能性がある点などを挙げている。

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物忘れ対策あれこれ【Dr. 中島の 新・徒然草】(608)

六百八の段 物忘れ対策あれこれ寒くなりました。部屋の中でも寒いくらいなので、外はもっと寒い。いつの間にか、日課にしていた散歩もサボってしまっています。とはいえ、患者さんには「運動しましょう、散歩しましょう」などと言っているわけですけどね。さて、脳外科外来で尋ねられる質問の多くに「物忘れがひどい。何を食べたら治るのか?」というものがあります。食べて治すとか、それは無茶というもの。そもそも他人様にアドバイスするどころか、こちらも記憶力が心許なくなっています。さらに聞かれるのは「脳トレをしたらいいのか、数独をやったらいいのか」ということ。そりゃあ、やらないよりはマシだと思いますけど。結局、「公共交通機関を使って1人で外来通院できている間は大丈夫ですよ」とか何とか、適当にお茶を濁しています。実際のところ、年を取るほど覚えておかなくてはならないことが増えるし、一方で記憶力のほうは落ちていくし。いまさら脳を鍛えて記憶力を向上させようというのも無謀な話。なので、私は記憶力に頼らない方法を伝授しています。自分自身が日々実行している工夫の数々。 中島 「何でも覚えようとせずに、文明の利器を使いましょう。たとえば私は出先の広い駐車場に車を停めたときには、必ずスマホで写真を撮っています」 地下3階まである大きな駐車場になると、そもそも何階に停めたかも忘れてしまいがちです。そんなときにはスマホの写真が便利。「地下2階のB-56か」とすぐに確認ができます。 中島 「また何か込み入った話をしたら、その直後にスマホに要点を録音していますよ。たとえば生命保険の説明とか、その場ではわかったつもりになっていても、1週間もしたら忘れてしまっているでしょ」 生命保険に限らず、聞いたときには理解したはずなのに後で「何だったかな?」と思うことなんかたくさんありますよね。でも、直後に自分の声で5分ほどの録音を残しておけば、たとえ半年後であっても再生するだけで「なるほど、そうだったわい」と簡単に思い出すことができます。その他、私自身が実行している物忘れ対策の数々。・役所や職場の書類は、写真を撮ってから提出するiPhoneに元から入っている「メモ」というアプリを長押しすると「書類をスキャン」という機能があるので、それを使うと何枚かの書類を「カチャン、カチャン、カチャン、カチャン」と連続で記録し、写真フォルダに残してくれます。他人様に教えてもらったライフハックですが、人生が変わりました!・物の置き場所を固定する鍵とかフックとか小銭とか、私はいつも同じ場所に置いています。こうしておくと、必要なときはいつでも使用可能。片付けるときも迷わずにすみます。・物を減らす物がたくさんあるから探してばかりいるわけで、そもそも物が少なければ何でもすぐに出てきます。このことを患者さんにお勧めしても抵抗する人が多いのが現実。そんなときは「物を捨てられなくなるのが認知症の初期症状ですよ。認知症になりたくなかったら物を捨てましょう」と因果関係不明の説教をしています。・雑用こそ朝のうちに行う片付けたり掃除したりという雑用は思ったより頭を使うもの。なので、疲れる前に取り掛かるほうが効率的です。・使いかけのノートをメモとして使う掃除していると、その昔に最初の2~3枚だけ使ったノートがたくさん出てきます。そんなときは、使ったページを破り捨てれば残りの部分をメモ用紙として活用可能。私はオンライン英会話の予習復習や買い物メモなどに使っています。小さなメモ用紙だとすぐに使い切ってしまいますが、ノートならそんなことはありません。そもそもが廃物利用なので、殴り書きしようが余白ができようが自由自在。終わりのページまで行ったら、達成感に浸りつつ次のノートに取り掛かることができます。・アラームを利用するスマホを使えば、むこう24時間の予定のアラームを複数設定することができます。出掛ける時刻などに鳴るようにしておくと忘れることがありません。以前、ある会合の途中に抜ける必要があったので、アラームを設定しておきました。ちょうど話が盛り上がっている最中に鳴りだして助かったのですが、もし設定していなかったら忘れていたことでしょう。・エアタグを使う私自身は使った経験はないのですが、記憶障害のある高次脳機能障害の患者さんに、愛用のエアタグを見せてもらいました。これを財布に入れておくと、どこかに置き忘れてもすぐに見つけることができるそうです。使い始めてから、財布をなくすことがすっかりなくなったのだとか。というわけで、自ら実行している物忘れ対策の数々。こういった工夫を楽しむのもまた面白いですね。自分自身の経験を外来患者さんにアドバイスする日々を送っています。最後に1句 冬が来て 頭の中も 寒くなる

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配置が手厚いICUは本当に「コスパ」がよい? 日本の比較研究【論文から学ぶ看護の新常識】第40回

配置が手厚いICUは本当に「コスパ」がよい? 日本の比較研究人員配置が手厚いICU(特定集中治療室管理料1および2)は、死亡率を下げるだけでなく、費用対効果の面でも優れていることが、井汲 沙織氏らの研究で示されている。Journal of intensive care誌2023年12月4日号に掲載の報告を紹介する。集中治療科専門医の配置に関連するICU死亡率と費用対効果:日本全国観察研究研究チームは、集中治療専門医らの配置が手厚い「特定集中治療室管理料1および2(ICU1/2)」と、それ以外の「特定集中治療室管理料3および4(ICU3/4)」において、臨床アウトカムと費用対効果を比較するため、後ろ向き観察研究を行った。日本の全国的な行政データベースを使用し、2020年4月から2021年3月の間にICUに入室した患者を特定し、ICU1/2群とICU3/4群に分類した。ICU死亡率と院内死亡率を算出するとともに、質調整生存年(Quality-adjusted Life Year:QALY)と医療費の差から増分費用対効果比(Incremental cost-effectiveness ratio:ICER)を算出し、比較した。ICERが500万円/QALY未満の場合を費用対効果が高いと判断した。主な結果は以下の通り。ICU1/2群(n=7万1,412、60.7%)は、ICU3/4群(n=4万6,330、39.3%)と比較して、ICU死亡率(2.6%vs. 4.3%、p<0.001)および院内死亡率(6.1%vs. 8.9%、p<0.001)が低かった。患者1人あたりの平均費用は、ICU1/2で224万9,270±195万5,953円、ICU3/4で168万2,546±158万8,928円であり、差額は56万6,724円であった。ICERは71万8,659円/QALYであり、費用対効果の閾値(500万円/QALY)を下回っていた。ICU1/2における治療は、ICU3/4と比較して、死亡率が低かった。また、費用対効果が高く、ICERは500万円/QALY未満であった。専門家やマンパワーが多いICUって良い医療ができそうですよね?でもそれって科学的な事実なのでしょうか?また質が上がるとしても、医療費を無制限に投じてよいのでしょうか。今回はこうした疑問に答える論文を紹介します。研究当時のICUの管理料は、人員配置が手厚い「1および2」と、標準的な「3および4」に分かれていました(2024年診療報酬改定以降は6区分になっています)。「1および2」は専門医や経験豊富な看護師の配置が義務付けられ、質の高い医療環境が整っている分、1日あたりの費用も高く設定されています。研究結果から、実際にICU管理料1・2ではICU内・院内死亡率が低く、質の高い医療が提供できていると考えられます。一方で、質の高い医療を提供するために、多くの人材を雇い、医療費を使いすぎては医療を継続的に提供することはできません。この研究の面白い点は、死亡率だけでなく、費用対効果を評価していることです。ICU管理料1・2とICU管理料3・4の治療成果を、患者の生存期間にQOLを加味した指標「QALY」と、1QALYを上げるためのコストの差「ICER」で比較しました。日本では、ICERの費用対効果の基準として「500万円/QALY未満」が一般的に用いられます(ドルやユーロでは額が異なります)。つまり「1QALYを上げるのに500万円以下なら“コスパがよい”」ということになります。今回の結果(約72万円/QALY)は、この閾値を大きく下回っています。これは、ICU管理料1・2の医療は、コストが増加したとしても、それに見合った、あるいはそれ以上の救命とQOLの改善をもたらしている、すなわち極めて費用対効果が高いことを示しています。看護配置の視点でみると、ICU管理料1・2は認定・専門看護師の配置を要件としており、本研究の知見は、認定看護師のような専門的なスキルを持つ看護師の存在が、死亡率の低減に貢献している可能性を示唆しています。これは、単に看護師の数だけでなく、看護の質の高さが患者アウトカムに直結することを意味し、認定・専門看護師が現場で提供する高度なケアの価値を裏付けるものです(もちろん、看護の力だけでなく、専門医が2名以上勤務していること、院内に臨床工学技士が常駐していること、病室の広さなど複数の項目に違いがありますので、何がどの程度影響しているかは本研究ではわかりません)。今目の前の患者だけでなく、未来の患者を救うために、「Evidence-Based Medicine:EBM(根拠に基づく医療)」だけでなく、継続した医療を提供するための「価値」を測る「Value-Based Medicine:VBM(価値に基づく医療)」の考え方を持つことが、今後の日本の看護・医療により必要になっていくかもしれません。論文はこちらIkumi S, et al. J Intensive Care. 2023;11(1):60.

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後悔しないがんの病院と名医の探し方

がん患者のための情報サイト「イシュラン」編集長が解説!「病院・医師選びに迷ったら、ランキング本よりも本書を」- 高野 利実先生(がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長)「科学的思考の教科書であり、迷いへの道しるべ」- 勅使川原 真衣氏(がんサバイバー・著述家)すぐに役立つチェックポイント(1)コミュニケーションで名医を見極める、3つのチェックポイント(2)あなたとの“相性”がわかる、医師のコミュニケーション4タイプ(3)がん種別ガイドライン一覧(4)がん種別専門医一覧QRコード名医の本音に迫るインタビューも掲載さらに、全国の患者から信頼を集める4人の「がんの名医」へのインタビューも収録。医師たちが語る「信頼される医者の条件」は、単なる技術や実績だけではなく、患者とのコミュニケーション、相性、説明の姿勢、治療への向き合い方といった“人間性”にも及びます。柏木 伸一郎先生(大阪公立大学附属病院)野口 晋佐先生(医療法人松野敬愛会能代病院院長)藤野 孝介先生(熊本大学病院)木下 貴之先生(国立病院機構東京医療センター)業界インサイダーの専門的な知見とリアルな声著者は医療コンサルタント/医療情報サイト編集者として、長年多くのがん治療医やがん患者・家族と向き合ってきた経験を持ち、最新の治療法にも精通しています。業界のインサイダーだからこそ持てる、医師や病院に関する専門的な知見と、現場のリアルな声が、本書に込められています。「がん診療連携拠点病院」とは何なの?「がんセンター」「大学病院」など、病院の種類と特徴の違いとは?自分のがん種に強い専門医をどう探す?手術件数が多い病院を選ぶべきというのは本当か?Google検索や口コミ情報に頼っても大丈夫?主治医との相性をどう見分ける?標準治療と自由診療、どう考えたら良いの?セカンドオピニオンを申し出ると、主治医の機嫌を損ねるのでは?画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する後悔しないがんの病院と名医の探し方定価2,200円(税込)判型A5判頁数224頁発行2025年8月著者鈴木 英介ご購入はこちらご購入はこちら

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アナフィラキシー、日本の小児で急増している原因食物は

 2010年代後半以降、日本におけるクルミによるアナフィラキシーの発生率は急速に増加しており、とくに初回発症の幼児で顕著であることが明らかになった。世界的にクルミアレルギーの有病率が増加しているものの、クルミによるアナフィラキシーの発生動向や臨床的特徴については明らかになっていない。町田市民病院のYuna Iwashita氏らは、2011年から11年間の日本国内の小児救急外来におけるクルミによるアナフィラキシーの発生率の変化を評価し、患者の特性および症状について検討した。Pediatric Allergy and Immunology誌11月号掲載の報告。 本後ろ向き研究では、2011~21年に、日本国内の3施設の小児救急外来を受診した食物によるアナフィラキシー患者を対象とした。11年間における各原因食物の割合の変化は、コクラン・アーミテージ傾向検定を用いて評価した。患者背景および詳細な症状については、クルミによるアナフィラキシー患者(クルミ群)とその他の食物によるアナフィラキシー患者(他の食物群)で比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・食物によるアナフィラキシーで救急外来を受診した患者は計904例であった。・原因食物の内訳では、クルミによるアナフィラキシーの割合が2011年の3.2%から2021年の26.1%へと増加した(p<0.0001)。・その他の食物では有意な変化は認められなかった。・クルミ群80例と他の食物群824例を比較すると、年齢の中央値は両群とも3.9歳であった(p=0.42)。・原因食物に対するアレルギーの既往診断を受けていた患者の割合は、クルミ群では28.8%と、他の食物群の47.4%よりも低かった(p=0.006)。・消化器症状は、他の食物群(55.9%)と比較してクルミ群(72.5%)でより多く認められた(p=0.004)。

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乳房切除後の胸壁照射、10年OSを改善せず/NEJM

 乳房切除術+現在推奨される補助全身療法を受けた中間リスクの早期乳がん患者において、胸壁照射は胸壁照射を行わない場合と比較し全生存期間(OS)を改善しないことが、第III相多施設共同無作為化試験「Selective Use of Postoperative Radiotherapy after Mastectomy:SUPREMO試験」で示された。英国・エディンバラ大学のIan H. Kunkler氏らが報告した。腋窩リンパ節転移が1~3個のpN1、あるいは病理学的リンパ節陰性のpN0に分類され、かつその他のリスク因子を有する乳がん患者に対する乳房切除術後の胸壁照射がOSに及ぼす影響は、現在推奨される周術期薬物療法下では不明であった。NEJM誌2025年11月6日号掲載の報告。中間リスクの早期乳がん患者が対象、胸壁照射群と非照射群に無作為化 研究グループは、中間リスク(pT1N1、pT2N1、pT3N0、またはpT2N0かつ組織学的Grade3±リンパ管浸潤)の乳がん患者を、胸壁照射(40~50Gy)群または胸壁照射を行わない群(非照射群)に1対1の割合で無作為に割り付け、10年間追跡した。 アントラサイクリン系薬剤を含む術後または術前化学療法が推奨され、トラスツズマブは各施設の方針に従って投与された。エストロゲン受容体陽性患者には、最低5年間の術後内分泌療法が推奨された。 主要評価項目はOS、副次評価項目は胸壁再発、領域再発、無病生存期間(DFS)、無遠隔転移生存期間(DMFS)、乳がんによる死亡、放射線関連有害事象などであった。 2006年8月4日~2013年4月29日に計1,679例が無作為化され、同意撤回等を除いた胸壁照射群808例、非照射群799例がITT解析対象集団に含まれた。10年OS率81.4%vs.81.9%、有意差認められず 追跡期間中央値9.6年において、295例の死亡が確認された(胸壁照射群150例、非照射群145例)。Kaplan-Meier法により推定された10年OS率は、胸壁照射群81.4%、非照射群81.9%で、群間差は認められなかった(死亡のハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.82~1.30、p=0.80)。死亡例の多く(194/295例、65.8%)は乳がんによるものであった。 胸壁再発は29例(胸壁照射群9例[1.1%]、非照射群20例[2.5%])に認められ、群間差は2%未満であった(HR:0.45、95%CI:0.20~0.99)。10年DFS率は胸壁照射群76.2%、非照射群75.5%(再発または死亡のHR:0.97、95%CI:0.79~1.18)、10年DMFS率はそれぞれ78.2%、79.2%(遠隔転移または死亡のHR:1.06、95%CI:0.86~1.31)であった。

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第270回 財政データは語る、日本の医療保険はどこまで持続可能か

国民皆保険制度が迎える転換点現在、中央社会保険医療協議会(中医協)では、2026年度の診療報酬改定に向けた話し合いが行われていますが、これまでの議論からは外来点数の抑制を含む改定が予想され、とくに中小病院・診療所には大きな影響を受けるところも出てくると思われます。病気になったときに、夜間・休日でもすぐに受診できる国民皆保険制度の持続については国民総意で支持すると思われますが、その一方で、医療提供側である医師会や病院団体からはインフレの影響を受け、人件費や物価高騰のため苦境を報じられています。しかし、財政を管理する財務省からは厳しい現状を突きつけられており、かなり厳しい改定内容となる見込みで、リソースが限られる医療機関によっては病床再編のきっかけとなり、従来から行ってきた入院医療や外来診療が困難になることも予想されます。市町村国保・健保組合に広がる財政危機実際にどれほど深刻なのかは、厚生労働省が10月に発表した「令和5年度国民健康保険(市町村国保)の財政状況について」を見てみるとよくわかります。一昨年度のデータでも、2023年度は1,288億円の赤字決算、さらに万が一に備える基金積立金は1兆3,375億円に減少しており、対前年度比4.4%(621億円)減など、厳しい健康保険財政が見て取れます。さらに、健康な働き盛りの会社員が加入する健康保険組合なども影響を受けており、先日、産経新聞が「健康保険組合、存続の危機 高齢者医療費負担増で半数赤字『もう限界に達している』」と報道しているように、高齢者医療への拠出金が年々増加しており、その負担が保険料率の引き上げや赤字の拡大につながっている。結果として、健康保険組合としての存続自体が危ぶまれる状況にあります。(引用:https://www.kenporen.com/include/press/2025/2025092505.pdf)(引用:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202209/1.html)2025年問題:団塊世代が後期高齢者入りする現実「2025年問題」とは、戦後の昭和22~25年の3年の第1次ベビーブーム中に生まれた団塊の世代(出生数平均260万人)が全員75歳以上となる年です。後期高齢者になると、複数の疾病を持つため医療機関に頻回に受診しがちでもあり、そのため医療費が増加します。(引用:https://www.kenporen.com/include/press/2025/2025092505.pdf)経済協力開発機構(OECD)の“Health at a Glance 2023”によれば、OECD加盟国で患者1人当たり年間外来受診は平均6回/年のところ、わが国では11.1回/年と医療機関の受診回数も多い上に、そのたびに医療機関でさまざまな検査や投薬を受けています。これに加えて、高齢者になると医療費は増える傾向があり、わが国の人口1人当たり国民医療費は65歳未満では21万8,000円、65歳以上は79万7,200円、後期高齢者は95万3,800円となっており、高齢化の進行で、75歳以上の割合が今後も増え続け、支える世代である65歳以下の人口が減少していくため、医療費の増加には、ある程度やむを得ない面があります。(引用:https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/publications/reports/2023/11/health-at-a-glance-2023_e04f8239/7a7afb35-en.pdf)財務省が示す“現役世代の限界”こういった中、財務省が11月になって2回の財政制度等審議会の財政制度分科会で出した資料は非常に印象的でした。一部には、開業医の給与水準の高さを強調するなど恣意的と受け取られかねない記述もある一方、現状の振り返りの中では、医療費が雇用者報酬の伸びを上回るペースで増加しており、現役世代1人当たりの高齢者医療支援金は2008年2,980円→2024年5,950円と倍増した現状から、今後も生産年齢人口が年0.7%減る中、負担増をこれ以上続けることは「賃上げ効果を相殺し家計と企業活力を奪う」との危機感が明示されており、“現役世代の限界”が明確化され、負担増ではなく給付抑制・制度改革を最優先する局面に突入したことを示しています。こういった状況で、かかりつけ医機能が弱いままでいると患者さんが大病院に紹介状もないままに直接受診され、無駄な検査が繰り返されれば、医療費は増大し続け、ひいては保険料引き上げにつながりかねません。また、適正な範囲内であれば問題はないのですが、患者さんが求めるままに、ドラッグストアでも市販されている湿布などを大量に処方し続ければ保険財政が厳しいため、保険償還から外されていくように思います。(引用:https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20251105/03.pdf)保険者が示した「ポスト2025」提言のメッセージさて、そういう意味では、医療費の支払い側(保険者)からのメッセージを今回は見てみようと思います。今年の9月に健康保険組合連合会(健保連)が提言を出していました。やや量が多いのですが、目を通すとわかりやすい資料になっています。この中で「2025年以降も危機的な状況が続くものと見込まれます。さらに2040年にかけては、高齢者人口がピークに向かい、少子化により現役世代が減少していくなかで、医療費と現役世代の負担が急激に増大していくと見込まれています。これに備え、全世代で支え合う制度へ転換するための改革を急がなければなりません。そうしなければ、国民の安心の礎である国民皆保険制度を将来世代に引き継ぐことができなくなってしまいます」とあり、提言がまとめられています。そして、まずは国民に向けて、「加入者(国民)の皆さまへの3つのお願い」として、(1)医療費のしくみや国民皆保険制度の厳しい状況についてもっと知ってください(2)自分自身で健康を守る意識をもってください。健診をきちんと受けてください(3)軽度な身体の不調は自分で手当てするセルフメディケーションを心がけてくださいと提言しています。「自己負担が無料で医療が受けられる場合(子供の医療費など)であっても、その医療費の大部分は健康保険の保険料で賄われていることをご理解ください」といった、従来では言われてこなかった内容も含まれており、それらの仕組みについての理解を求めています。さらに、われわれ医療機関への要請としても、「医療提供者に対してお願いすること」として、(1)地域医療構想の着実な推進(2)かかりつけ医機能の充実(3)適切な受診の支援(4)経済性も考慮した医療サービスの提供(5)医療DXの積極的な取り組みと記載しています。厚労省の取り組みに対して協力を保険者側が求めていることが明らかになっています。具体的には「医療機関の機能分化に向けて地域医療構想の実現を着実に推進するとともに、かかりつけ医機能の充実に取り組み、患者の日頃からの予防やセルフメディケーション、適切な受診の支援をお願いします。また、かかりつけ医と健康保険組合との連携についても検討することをお願いします。さらに、費用対効果や経済性も考慮した医療サービスを提供するとともに、医療情報プラットフォームによる患者情報の共有・活用など、スピード感をもって医療DXを進めるため、積極的な医療DXの取り組みもお願いします」とあります。(引用:https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20251105/03.pdf)(引用:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001281024.pdf)医療DXと全国医療情報プラットフォームという現実医療機関側にとって医療DXの促進のためとはいえ、マイナ保険証の導入や電子カルテの導入などコスト増につながり、頭の痛い問題でもありますが、この1~2年で、市中の診療所や調剤薬局など隅々にまでマイナ保険証のリーダーの設置に向けて補助金が投入されたことからわかるように、全国医療情報プラットフォームは国の政策でもあり、参画が求められています。無駄な医療費を削減するには、このプラットフォームを積極的に活用し、医師や薬剤師が患者1人ひとりに意義を説明していく必要があります。国民皆保険制度の価値と、再構築が困難である理由生活インフラでもある医療と介護は、国民皆保険制度によって成り立っています。「国民皆保険制度など破綻すればいい」という意見や「厳格な利用規制」を求める声も上がっていますが、民間保険が主体であるアメリカでは医療費の支払いが破産の主な原因の1つとされているように、保険制度を民間保険などにすべて委ねることは病気がちな貧困層や人々の暮らしに大きな影響が出ます。持続可能な医療のために何をすべきか戦後80年、国民皆保険制度が整備されて64年、諸外国と比較して比較的安価な医療費で、健康長寿が約束されるわが国は、羨望の眼差しで見られています。また、厚労省が新薬を承認すれば、ほぼすべての薬が保険償還で認められるという国はなかなかありません。現行の社会保障制度を廃止して、新たに国民が満足できる制度を再び構築するのは困難です。現行の国民皆保険制度をなんとか持続させることが国民にとってメリットが多いと考えます。もちろん、一部の事業者によって問題となった訪問看護ステーション付きの介護住宅のように頻回な訪問を行って過剰請求をするような逸脱した行為は排除されるべきです。今後、厳しい財源事情が続く中、どういった形で持続可能性を高めていくか、大きな課題となっていると考えます。参考 1) 令和5年度国民健康保険(市町村国保)の財政状況について(厚労省) 2) 『ポスト2025』健康保険組合の提言(健保連) 3) 健康保険組合、存続の危機 高齢者医療費負担増で半数赤字 「もう限界に達している」産経新聞[2025/11/14](産経) 4) Health at a Glance 2023(OECD) 5) かかりつけ医機能報告制度にかかる研修(日本医師会)

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小児の急性陰嚢症【すぐに使える小児診療のヒント】第8回

小児の急性陰嚢症腹痛を訴えて受診する男児の中には、急性陰嚢症が隠れている可能性があります。発症頻度は高くありませんが、診断や治療の遅れにより精巣機能を失うと将来の精神的・肉体的・妊孕性に及ぼす影響は非常に大きいため、適切な対応が求められます。症例9歳、男児。起床時からの下腹部痛と嘔吐を主訴に受診した。下痢はない。児は「吐きそう、お腹が痛い」と訴えるのみで、陰嚢の症状は問われなければ言及しなかった。診察時に左陰嚢の発赤・腫脹・圧痛を認めた。左陰嚢は挙上し横位で、精巣挙筋反射は消失していた。症状や超音波検査から精巣捻転症が強く疑われ、緊急で外科的介入が行われた。急性陰嚢症は、急性発症の陰嚢の疼痛や腫脹を主訴とする病態の総称であり、精巣捻転症、付属小体捻転症、急性精巣上体炎をはじめ多くの鑑別疾患が挙がります。原因として最も注意すべき精巣捻転症を中心にまとめてみましょう。精巣捻転症精巣捻転症は、急性陰嚢症の中でもとくに診断・治療が遅れると精巣壊死・精巣機能消失に陥る可能性のある緊急疾患です。病因として重要なのは、解剖学的な精巣の懸垂異常(suspension anomaly)です。精巣鞘膜が通常より高い位置で精索に付着していると、精巣が鞘膜腔内でぶら下がっている状態が釣り鐘のように見えるbell-clapper deformityと呼ばれる状態となり、捻転しやすくなります。左:正常、右:鞘膜腔の異常拡大(bell-clapper deformity)思春期にはアンドロゲンによって精巣容積が思春期前の5~6倍に急激に増加するため、より捻転が生じやすくなるとされています。発症は夜間や早朝に多く、寒冷刺激が誘引となるという説もあります。左右で比較すると左側に多く発症すると言われ、これは左側の精索が右側に比べて長いことが関係しているとされています。精巣温存には、発症から6時間(少なくとも12時間)以内の整復が望まれます。特徴的な症状としては、腹腔神経節が刺激されることによる悪心・嘔吐が26~69%に伴います。画像を拡大する診断のポイント「腹痛」「嘔吐」の症例も陰嚢をチェック!症状が「いつから」を明確に!精巣血流の有無だけで判断してはいけない!強く疑われる場合にはためらわず泌尿器科医に相談を!問診突然の発症か? 徐々に増悪してきたか? 朝方か日中か? 痛みが先か腫れが先か? など詳しく聴取しましょう。不完全捻転や捻転の自然解除を繰り返していることがあるため、これまでに同様のエピソードがないかも確認しておきます。また、精巣温存には6時間以内の介入が望ましいとされており、発症がいつなのかはカギになるため、はっきりさせておくことも重要です。診察精巣捻転症は「思春期の男子が陰嚢痛で受診する」と認識されがちですが、前述のとおり腹痛・悪心・嘔吐など非特異的な症状で始まることも少なくなく、初診時に陰嚢痛を訴えない例も多くみられます。とくに小児では「恥ずかしい」「うまく説明できない」ことがあり、医療者が意識的に陰嚢を診なければ見逃されることがあるので注意が必要です。腹痛や嘔吐を主訴に受診したとしても、陰嚢を確認する習慣をつけましょう。診察の手順としては、まず視診、精巣挙筋反射の確認、陰嚢皮膚および内容物の触診の順で行うのが良いとされています。1.視診まず、陰皮膚の色調、腫脹の有無、精巣の位置を確認します。皮膚の所見として、陰嚢の発赤・腫脹は精巣捻転症、付属小体捻転症、急性精巣上体炎のそれぞれにおいて起こり得る所見であり、鑑別に有用ではありません。しかし、発症から12~24時間経過していても陰嚢皮膚が比較的正常である場合には精巣捻転症である確率は低いと言えます。後述しますが、付属小体捻転症の特徴的皮膚所見として、梗塞を起こした精巣付属小体が皮膚を通して青黒い点(blue dot sign)として認める場合もあります。また、位置も重要です。一般的には左精巣は右に比べてやや低位に存在しますが、「横位・挙上」は精巣捻転症の診断において感度83%、特異度90%とともに良好であることが知られています。2.精巣挙筋反射精巣捻転症においては、精巣挙筋反射(大腿内側を刺激すると精巣が上昇する反射)は90~100%欠如するため有用です。精巣挙筋反射が同定されれば精巣捻転は否定的ですが、精巣挙筋反射が消失しているからと言って精巣捻転とは言い切れず、その他の鑑別が必要であることには注意が必要です。3.触診精巣の触診は、親指と人差し指、中指で愛護的に行います。腫脹、疼痛の有無や部位、拳上の有無、方向などを確認します。精巣上体についても腫脹、疼痛、位置を確認しましょう。TWIST(Testicular Workup for Ischemia and Suspected Torsion)スコアは身体所見と病歴のみで精巣捻転症らしさを予測できるという点が魅力です。5点以上なら精巣捻転症を強く疑い、逆に2点以下なら精巣捻転症の可能性は低いと判断されます。これのみで診断することは推奨されませんが、補助的な評価として非常に有用であると考えられます。冒頭の症例は、TWISTスコア7点と高値で、症状のみでもいかに精巣捻転症らしいかを物語っています。超音波検査精巣捻転症の最も有用な検査は超音波検査です。精索から精巣・精巣上体へのつながりを観察して、捻転部の精索がcoilingする、いわゆるwhirlpool signの有無を検索することが最も重要です。カラードプラ超音波検査で精巣血流の有無を評価することも多いですが、血流の温存された精巣捻転症も存在するため、精巣血流の有無だけで判断してはいけません(感度63~90%)。精巣上体の血流が亢進している場合においては、精巣上体炎などが疑わしく、精巣捻転は否定的です。診察時の説明と心理的配慮患者の多くは思春期であり、プライバシーへの配慮は不可欠です。診察室のドアやカーテンを閉め、バスタオルなどを準備しておくといった環境づくりを心がけましょう。保護者が同席している場合も、本人の気持ちを尊重する必要があります。腹痛のみを訴えて受診した患者に対して下着の中を確認するのは、医療者にとっても心理的ハードルが高い場面かもしれません。その際には、診察の意図を率直に伝えることが大切です。「とても大事なことなので、見逃したくないと思っていること」「早い段階では本人も気がついていないことがあること」の説明を添え、本人や保護者の理解を得てから診察を行う姿勢が望まれます。精巣温存のためには、早期診断・早期治療が何より重要です。その実現には、発症直後に受診してもらうための社会的啓発も欠かせません。近年では、学校教育における男子生徒や保護者への啓発、SNSを通じた情報発信も行われつつあります。適切な危機感と正しい知識が広まり、安心して受診できる環境が整うことを願います。今回は、いつも穏やかでいるように心掛けている小児科医たちでもピリッと緊張感が走る疾患の1つである急性陰嚢症についてお話しました。寒さも深まる今日このごろですが、暖かくしてお過ごしください。ひとことメモ:中心となる鑑別疾患■付属小体捻転症精巣垂(ミュラー管由来)や精巣上体垂(ウォルフ管由来)などの付属小体が捻転するもので、学童期や思春期に好発します。長さは1~8mm程度で有茎性のものが捻転を起こしやすく、90%が精巣垂、10%が精巣上体垂の捻転と報告されています。特徴的な皮膚所見として、10~32%でblue dot signとして観察されることがあり、同定された場合には非常に特異度の高い所見であるとされています。思春期に起きやすい理由としては、エストロゲン分泌が亢進してミュラー管由来である精巣垂が増大することなどが挙げられます。付属小体捻転症であれば原則手術の必要はなく、鎮痛薬での対応が可能です。捻転した付属小体が虚血性に壊死すれば症状は消失しますが、数週間以上かかる場合もあり、疼痛や不快感が長期に続く場合には付属小体の外科的切除を行うこともあります。■急性精巣上体炎一般的には尿路からの感染が、射精管から精管を経由して精巣上体に達し発症します。細菌性尿路感染のほかに、無菌尿の射精管への逆流による化学的刺激、ウイルス感染、外傷などの関与が指摘されています。最近の研究では、膿尿や尿培養陽性率は0~4.1%と非常に低いと言われており、検尿異常を認めないものの大半は全身のウイルス感染が先行した後の炎症性変化と考えられています。細菌性尿路感染が原因となっているものでは、乳児ではE.coliやE.faecalisなど、性活動期以降になると淋菌やクラミジアなどが起因菌となることが多く、それらを念頭に置いて治療内容を選択します。ただし繰り返す場合には、異所性尿管、尿道狭窄、後部尿道弁、膀胱尿管逆流、神経因性膀胱などの泌尿生殖器の器質的・機能的異常がないか立ち返って確認することが重要となります。参考資料 1) 急性陰嚢症診療ガイドライン2014年版 2) Pogorelic Z, et al. J Pediatr Urol. 2013;9:793-797. 3) Takeshita H, et al. Int J Urol. 2022;29:42-48. 4) Choudhury P, et al. Pediatr Surg Int. 2023;39:137.

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統合失調症の陰性症状に対する補助的抗うつ薬の有効性~ネットワークメタ解析

 統合失調症の陰性症状に対する治療反応は必ずしも十分ではない。また、陰性症状に対する抗うつ薬の効果については、依然として議論の余地がある。中国・Affiliated Hospital of Southwest Medical UniversityのYuting Li氏らは、厳格な選択基準に基づき、統合失調症の陰性症状に対する補助療法としての抗うつ薬の有効性を評価するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌2025年10月24日号の報告。 2025年4月16日までに公表され、統合失調症の陰性症状に対する補助療法として抗うつ薬とプラセボを比較したランダム化二重盲検比較試験をPubMed、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。主要アウトカムは陰性症状とした。対象研究よりデータを抽出し、標準化平均差(SMD)を用いて全体的なエフェクトサイズを算出した。 主な結果は以下のとおり。・合計15件の研究(655例)を本レビューに含めた。・プラセボと比較し、陰性症状に対して有意に優れた効果を示した抗うつ薬は、ミルタザピン(2研究、48例、SMD:-1.73、95%信頼区間[CI]:-2.60~-0.87)およびデュロキセチン(1研究、64例、SMD:-1.19、95%CI:-2.17~-0.21)であった。・抗うつ薬間での直接比較では、ミルタザピンはreboxetine、エスシタロプラム、bupropionと比較し、統計学的に有意な差が認められたが、その他の抗うつ薬間あるいは抗うつ薬とプラセボの間に有意な差は認められなかった。・有病率に関する出版バイアスは認められなかった。 著者らは「抗精神病薬治療を受ける安定期統合失調症患者において、ミルタザピンまたはデュロキセチンの併用が陰性症状の改善に有効である可能性が示唆された。統合失調症の陰性症状に対する今後の治療計画に抗うつ薬を組み込むことは、さらなる検討に値する有望な戦略と考えられる」としている。

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国試勉強を“未来の武器”づくりだと考える【研修医ケンスケのM6カレンダー】第8回

国試勉強を“未来の武器”づくりだと考えるさて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。今年もあっという間に秋が過ぎ、寒く感じる日が続くようになりましたね。先月より埼玉県和光市内の国立保健医療科学院を中心に、公衆衛生の研修をしています。約1ヵ月経ってみて、改めて公衆衛生に魅了されています。この研修がなければまず初期臨床研修医の時点で行くことはなかったであろう、WHO本部やGavi、Global Fundをはじめ、厚生労働省や千葉県庁、習志野保健所など、さまざまな層の政策立案と現場を視察できて、毎日ワクワクが止まりません。皆さまいかがお過ごしでしょうか。卒業試験で心の余裕が全くない、そんな方でも気軽に読むことができるよう、少し変わったトピックを今月は扱おうと思います。なぜ国試の知識は役に立たないと言われるか?(WHO本部にて「そちらの方」)この記事を読む皆さんには、国試対策に真面目に取り組むことが、合格後の自分を大いに助けてくれるということを知ってほしいです。「国試の知識なんて、役に立たないよ」こんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。実習に出た時に現場のドクターからの質問に答えられなかった時や、研修先の先輩からやる気をそがれるような一言を受けたときに、そう感じたことがあるかもしれません。ですが、あえてポジショントークをするなら、私は「そんなことない」と断言します。医師国家試験対策に真面目に取り組んでいたおかげで、初期臨床研修に出た時にその恩恵を受けたことが何度もあるからです。とはいえ、先ほどの「役に立たない」という発言にも一理あります。きっと「医学」と「医療」の違いが、背景にあるのだと思います。学生時代の座学が、実践の土台となる(スイスといえばチーズフォンデュ!美味しい!けど、物価高いぃ)「医療とは、医学の社会的実践である」これは元日本医師会長である武見太郎先生の言葉で、私が大学の卒業式答辞でも用いた言葉です。初期臨床研修は研修として学ぶ側面を持ちながら、仕事をする訳です。皆さんが持つ医学的知識を活用し診療をするには、さらなる座学の知識と、現場での多職種連携や、社会的側面も考慮した包括的な視点がなければなりません。研修の始めのうちは国家試験以上の知識や実践的なスキルがなく、病院独自のルールや物品の場所もわからないため、仕事ができないと責められることはありません。指導してくれる2年目の先輩が神様のように見えることでしょう。ところが、数ヵ月もすると、ある程度コツが掴めてくるようになります。少しずつ症例をこなすことができるようになります。そして、ここで重要なのは「仕事に慣れる」と「理解してできる」は違う、ということです。できなかった仕事ができる、より効率的にできるようになることは素晴らしいことです。ただここは冷静に、医学的な背景知識を理解して医療を実践できているか、は日々振り返るようにしてください。診療の中でもらったフィードバックや講義内容が実践できたか、そこがポイントです。そして、現場に出てから得た診療技術を根本から支えるのには、やはり学生時代に積み上げた座学の知識が欠かせません。実感が湧かないこともあると思いますが、研修医になってもなお国家試験問題を見ている私はそう思います。試験対策でつけた知識が、現場に出たあなたを支えてくれます。初期臨床研修医向けの本を1冊買う(クラシックな街並みにうっとり)近年の国家試験では、実践的な知識を直接問う問題はさすがに出題されませんが、知っておくと解くのが楽になる問題はあります。特にA・Dブロックの判断力を問う、得点差がつく臨床問題です。「臨床やっている立場からは当たり前に感じるけどな」と評される問題ですね。ところが、実践的な知識やTipsを医師国家試験対策用の教材から学ぶことはやや難しいです(MECのサマライズなど一部例外はありますが)。そこで私からの提案としては、初期臨床研修医向けの入門書を1冊買ってみることです。研修医になって遭遇する主な疾患や症候について概要がまとまっていて、かつ実践的なTipsも載っているので国家試験対策に役立つことはもちろん、社会人・研修医としての心構えについても記載されており、来年度以降の働き方や生活のイメージが膨らむことと思います。いずれ4月頃には1冊手にするようなものなので、肩の力を抜いて気分転換がてら、サクッと読んでみるのもありです。思わぬTipsと巡り合うかもしれませんよ。デジタルで、まとめの土台を作っておくところでみなさんは普段の学習には何を用いているでしょうか、どんなツールを用いているでしょうか。学部学生時代のうちに、研修医以降も使うことができるまとめ、的なものを作っておくと便利です。まとめを作ることが目的で肝心の試験対策が進まないのは本末転倒ですが、学生時代に使っていた教材や成果物が研修医になってすっかり忘れ去られるのはもったいないです。そして研修医になってから、自分なりのまとめがあると、診療や診療後の振り返りに非常に役立ちます。まとめはぜひデジタルデバイスを用いてください。有名どころだと、NotionやEvernote、PowerPointでもWordでも何でも良いです(筆者のおすすめはNotion)。必ずいつでも、どこでも見返す、編集できる形が好ましいです。タイピング操作が必要なまとめ方が良いです。研修医になってから苦労することの1つにカルテ入力があります。電子カルテの表示や操作はメーカーによってそれぞれなので仕方がないところが多いですが、よくよく聞くとタイピングが遅いだけでは?ということがあります。基本的な入力はもちろん、ショートカットキーも使いこなすことができるようにトレーニングしましょう。最後に(ジュネーブのシンボル大噴水とスイス国旗。綺麗で治安のいい街だな)いかがだったでしょうか。今月は卒業試験・国家試験対策に直接関わらない、合格後の生活に向けた、少し背伸びをした内容でした。研修医になってから医師国家試験を解いてみると、「この問題サラッと流していたけど、現場のここにつながるのか!」ということが多々あります。もしこの記事を読んでくださっている研修医の先生がいらっしゃったら、数問ぜひチャレンジしてみてください。試験対策に日々励むことは合格を勝ち取ることはもちろん、未来の診療技術向上に大いに役に立つと信じて、今日もまた頑張ってください!応援しています!

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75歳以上のNSCLC、術前ICI+化学療法は安全に実施可能?(CReGYT-04 Neo-Venus副次解析)/日本肺癌学会

 StageII~IIIの切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ニボルマブ+化学療法による術前補助療法が2023年3月より使用可能となった。そこで、実臨床におけるニボルマブ+プラチナ併用化学療法による術前補助療法の安全性・有効性を検討する多施設共同後ろ向き観察研究「CReGYT-04 Neo-Venus」が実施された。本研究では、第III相試験「CheckMate-816試験」と一貫した安全性が示され、実行可能であることが報告された1)。 ただし、実臨床における肺がん手術例の約半数は75歳以上の高齢者である。また、高齢者を対象に、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法による術前補助療法の安全性・有効性を検討した報告はない。そこでCReGYT-04 Neo-Venusの副次解析として、75歳以上の高齢者における安全性・有効性に関する解析が実施された。本解析結果を松原 太一氏(九州大学病院 呼吸器外科)が、第66回日本肺癌学会学術集会で発表した。 対象は、ニボルマブ+プラチナ併用化学療法による術前補助療法を1サイクル以上受けた切除可能StageII~III NSCLC患者131例。このうち、登録時に術前補助療法を実施中であった1例を除外した130例を解析対象とした。解析対象患者を年齢で2群(75歳以上:28例/75歳未満:102例)に分類し、患者背景や治療成績を比較した。 主な結果は以下のとおり。・患者背景について、75歳以上の高齢群は非高齢群と比較して、男性が少ない(67.9%vs.87.3%)、他がんの既往ありが多い(32.1%vs.11.8%)という特徴があった。糖尿病や冠動脈疾患などの合併症については、2群間で差はみられなかった。臨床的StageやPD-L1発現状況についても2群間で差はみられなかった。・化学療法の種類について、高齢群はカルボプラチンベースのレジメンが多かった(96.4%vs.75.5%)。・術前補助療法の完遂割合は高齢群92.9%、非高齢群84.3%であった。・術前補助療法の奏効割合は高齢群68%、非高齢群66%であり、病勢コントロール割合はそれぞれ100%、96%であった。・術前補助療法におけるGrade3以上の治療関連有害事象は高齢群35.7%、非高齢群27.5%に発現した。全Gradeの免疫関連有害事象は高齢群7.1%、非高齢群25.5%に発現し、高齢群のほうが少なかった(p=0.0393)。・手術実施割合は高齢群92.9%(予定症例3.6%を含む)、非高齢群91.5%(同2.9%を含む)であった。非実施割合はそれぞれ7.1%(病勢進行1例、AE 1例)、8.8%(病勢進行4例、患者拒否2例、AE 1例、その他2例)であった。・手術実施例におけるR0切除割合は高齢群96.0%、非高齢群98.9%であった。・病理学的完全奏効(pCR)割合は高齢群20.8%、非高齢群39.3%であり、病理学的奏効(MPR)割合はそれぞれ54.2%、60.7%であった。 本結果について、松原氏は「pCR、MPR割合は非高齢群と比較するとやや低いものの、臨床試験の結果と比較しても全体的に良好な結果であった」と考察し「高齢者に対するニボルマブ+化学療法による術前補助療法は忍容性があり、病理学的奏効も期待できる治療であると考えられる。今後は長期フォローアップでの有効性の検討や、他の術前・術後補助療法の忍容性・有効性の検討も必要である」とまとめた。

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映画「エクソシスト」【その2】だから憑依は「ある」んだ!-進化精神医学から迫る憑依トランス症の起源

今回のキーワード演技性退行同調性ストックホルム症候群被暗示性祈祷性精神病[目次]1.なんで憑依は「ある」の?2.憑依とは?前回(その1)、憑依するメカニズムを、脳科学の視点から仮説を使って解き明かしました。しかし、暗示の影響程度で特定のニューラルネットワークが分離する根本的な原因については説明していませんでした。つまり、そもそもなぜ憑依は「ある」のかということです。この謎の答えに迫るために、今回も引き続き、映画「エクソシスト」を踏まえて、進化精神医学の視点から、憑依の起源に迫ります。なお、憑依の正式名称は憑依トランス症です。ただ、この記事では、わかりやすさを優先して、そのまま「憑依」で表記します。なんで憑依は「ある」の?ここで、進化精神医学の視点から、3つの心理の進化に注目して、憑依の起源を掘り下げてみましょう。(1)演じる心理-演技性約700万年前に人類が誕生し、約300万年前に部族集団をつくるようになりました。まだ言葉を話せないなか、けがをして動けないから運んでほしいことなどを何とか身振り手振りや表情などの非言語的コミュニケーションで演じて伝えていたでしょう。そして、大げさに演じたほうが、より助けてもらえたでしょう。1つ目は、演じる心理、演技性です。これは、相手にどう見られるかを想像する能力(心の理論)によって、「困ったふり」で生き延びることです。なお、演じる心理の起源の詳細については、関連記事1をご覧ください。この「困ったふり」を無意識に演じるように進化した心理現象としては、いわゆる「幼児返り」「赤ちゃん返り」(退行)、そして拘禁反応(ガンザー症候群)が挙げられます。拘禁反応とは、刑務所の独房や精神科病院の隔離室に長時間閉じ込められたり縛られたりした結果、まるでふざけたように的外れな返事をするようになること(的はずれ応答)です。両方とも小さな子供のように振る舞っており、一見奇妙な現象であると思われますが、この「困ったふり」という解離のメカニズムから説明することができます。ちなみに、「困ったふり」は、米国ドラマ「24」を題材として説明した腰抜け(解離性神経学的症状症の脱力発作)と同じ生存戦略であると考えることができます。この起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)合わせる心理―同調性約300万年前以降、人類は部族集団を維持するために、周りとうまくやっていこうとする心理が進化しました(社会脳)。そのために、周りと同じような見た目や動きをすると、心地良くなるようになったでしょう。また、相手が強ければ従い、弱ければ従えていたでしょう。2つ目は、周りに合わせる心理、同調性です。これは、先ほどの「困ったふり」で生き延びるのとは対照的に、「合わせるふり」で生き延びることです。なお、この同調によって、従う心理が極端になってしまったのがストックホルム症候群とマインドコントロール、従える心理が極端になったのがモラルハラスメントです。ちなみに、ストックホルム症候群とマインドコントロールは、解離症のその他として分類されていますが、モラルハラスメントは解離症を含め精神障害には分類されていません。進化精神医学的に考えれば、ストックホルム症候群やマインドコントロールと相互作用するモラルハラスメントも同じく解離症に分類されても良さそうなのにです。そのわけは、モラルハラスメントを病気として認定してしまうと法的にある程度許容しなければならなくなるからです。いくら病的な要素があっても、病気認定をしてしまうと被害者感情を逆なでしたり、犯罪抑止の観点からは逆効果になる可能性があります。このようなことから病的な要素を考慮しない(考慮するべきではない?)という社会的な「事情」が影響していることがうかがえます。ストックホルム症候群とモラルハラスメントの起源の詳細については、関連記事3をご覧ください。ちなみに、いわゆる「こっくりさん遊び」も、集団で無意識に同じ答えを導いてしまうなどの一見奇妙な現象に思われます。また、いわゆる「後追い自殺」(ウェルテル効果)も、生物としての生存本能に反していて不自然に思われます。しかしこれらも、この「合わせるふり」という解離のメカニズムから説明することができます。(3)なりきる心理―被暗示性約20万年前に、現在の人類(ホモサピエンス)が誕生してから、言葉を話すようになりました。そして、10万年前に、抽象的思考(概念化)ができるようになりました。この時、ようやく神の存在や死後の世界を想像できるようになったでしょう。そして、そのような超越的な存在を説明する人が必要になったでしょう。そんななか、神の声が聞こえる人は崇められたでしょう。これは、統合失調症の起源であると考えられます。この詳細については、関連記事4をご覧ください。統合失調症の人によって原始宗教が誕生したわけですが、統合失調症ほど継続して神の声を聞くことはできなくても、宗教儀式によって一時的にでも神の声を聞いたり、神や死者の霊になりきることができれば、その人も尊ばれたでしょう。しかし同時に、周りの人たちの思い入れや思い込みの影響で、悪魔にもなりきってしまったでしょう。3つ目は、周りが暗示したものになりきる心理、被暗示性です。これは、先ほどの「困ったふり」「合わせるふり」で生き延びるのと同じように、「なりきるふり」で生き延びることです。そして、これが憑依の起源と考えられます。その後、しばらくは、統合失調症と同じく、憑依はシャーマンや霊媒師という宗教的職能者として社会に溶け込んでいたでしょう。一方で、悪魔になってしまう憑依については、まさにこの映画のようなエクソシスト(祈祷師)たちが、悪霊は退散しろという暗示を再びかけて憑依を解くなどして活躍したでしょう。しかし、約200年前の産業革命以降、人格は1つであり変わらないという合理主義や個人主義の価値観が広がり、憑依は非科学的とされ、病気として認識(病理化)されるようになったのでした。なお、現在の精神医学の診断基準(ICD-11)において、「文化、宗教的な体験として受容されるトランス状態には、これらの診断を下すべきではない」「集団的文化や宗教の一部として受容されず、個人や社会にとって著しい苦痛や不利益を生じるときに診断の対象となる」と明記されており、現在でもトラブルを起こさなければ、病気認定しないという配慮がなされています。ちなみに、祈祷などの宗教的な影響(暗示)によって、憑依を含め、神の声を聴く(幻聴)、罰当たりを確信する(被害妄想)などの症状がある場合は、従来から祈祷性精神病と呼ばれていました1)。また、そのような症状がある人の影響(暗示)によって、近しい人が同じ幻聴や被害妄想などの症状が出てくる場合は、従来から感応精神病と呼ばれていました2)。これらは、「なりきるふり」という解離のメカニズムから説明することができます。憑依とは?「困ったふり」(演技性)、「合わせるふり」(同調性)、そして「なりきるふり」(被暗示性)という憑依の心理の進化を俯瞰すると、憑依とは神や死者の霊、時に悪魔になりきることで、周りの人々に超越的な存在を実感させて、まとまって助け合う気持ちを促したでしょう。預言者としてリーダーを担っていた統合失調症ほどではないにしても、憑依は、宗教的職能者の1人としてサブリーダー的な役割があったのではないでしょうか? そして、統合失調症と並んで、憑依は、人類が助け合って生き残るための、壮大なフィクションを演出する機能であったと言えるのではないでしょうか? 1) 祈祷性精神病 憑依研究の成立と展開、p7:大宮司信、日本評論社、2022 2) ICD-10 精神および行動の障害、p114:医学書院、2003 ■関連記事NHKドラマ「心の傷を癒すということ」【その2】地震ごっこは人類進化の産物だったの!? だから楽しむのがいいんだ!-プレイセラピー米国ドラマ「24」【その2】なんで腰抜けや記憶喪失は「ある」の?-進化精神医学から迫る解離症の起源美女と野獣【実はモラハラしていた!?なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その2)【なんで統合失調症は「ある」の?(統合失調症の機能)】

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意外な所に潜む血栓症のリスク/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月12日、井上 克枝氏(山梨大学 臨床検査医学)、野上 恵嗣氏(奈良県立医科大学 小児科)を座長に、シンポジウム6「意外な所に潜む血栓症のリスク」が行われた。Nan Wang氏(米国・Columbia University Irving Medical Center)、Hanny Al-Samkari氏(米国・The Peggy S. Blitz Endowed Chair in Hematology/Oncology, Massachusetts General Hospital/Harvard Medical School)、長尾 梓氏(関西医科大学附属病院 血液腫瘍内科)、成田 朋子氏(名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学)。JAK2V617Fクローン性造血とアテローム血栓症との関連 JAK2V617F(Jak2VF)クローン性造血は、アテローム血栓性の心血管疾患(CVD)との関連が指摘されている。Wang氏は、本シンポジウムにおいて、Jak2VFクローン性造血が動脈血栓症に及ぼす影響とそのメカニズムを評価した研究結果を報告した。 まず、3つのコホート研究を用いたメタ解析により、Jak2VFとCVD、血小板数、補正平均血小板容積との関連が確認された。また、マウスモデルでは20%または1.5%のJak2VFクローン性造血が動脈血栓症を促進し、血小板活性化を増加させることが示された。 Jak2VFクローン性造血は、前血小板形成および放出を促進し、血栓形成促進性の網状血小板数を増加させると考えられている。Gp1ba-Creを介して血小板におけるJak2VFを発現させたモデル(VFGp1ba)は、血小板数が増加した一方、白血球数には影響が見られなかった。このことから、VFGp1baは、血小板活性化と動脈血栓症を促進する可能性が示唆された。 また、Jak2VFクローン性造血では、変異型血小板と野生型(WT)血小板のいずれもが活性化しており、両者の間にクロストークが存在することが示唆された。Jak2VF血小板では、COX-1およびCOX-2が2~3倍に増加し、cPLA2の活性化とトロンボキサンA2産生の増加が認められた。一方、WT血小板は、活性化Jak2VF血小板由来の培養液に曝されるとさらに活性化し、この反応はトロンボキサン受容体拮抗薬により抑制された。さらに、低用量アスピリンは、VFGp1baマウスおよびJak2VFクローン性造血マウスで頸動脈血栓症を改善したが、WT対照マウスでは改善が見られなかった。 これらの結果を踏まえてWang氏は「Jak2VFクローン性造血によるアテローム性動脈硬化症の進行メカニズムにおいて、網状血小板の増加とトロンボキサンを介したクロストークが重要な役割を果たしており、アスピリンの潜在的な効果が期待される」と結論づけた。ITPにおける血栓症リスクとその管理 続いて、Al-Samkari氏が免疫性血小板減少症(ITP)における血栓症の重要なトピックスを紹介した。 ITPは、血小板破壊の増加と血小板産生の低下により生じる後天性自己免疫疾患である。さまざまな仮説に基づくメカニズムから、ITPは静脈血栓症および動脈血栓症のリスクを上昇させる可能性が指摘されている。実際、ITP患者の静脈血栓塞栓症のリスクは、一般集団の10~30倍と推定されている。また、トロンボポエチン受容体作動薬などの特定のITP治療薬は、血栓塞栓症リスクを上昇させる一方、脾臓チロシンキナーゼ阻害薬などの他の治療薬はリスクを低下させるとされている。 ITPにおける血栓症のリスク因子は、一般的な血栓症リスク因子に加え、年齢、脾臓摘出、複数回のITPの治療歴、免疫グロブリン静脈(IVIG)療法などが挙げられる。脾臓摘出後の生涯静脈血栓症リスクは3〜5倍に増加し、その発症率は7〜12%と報告されている。IVIG治療患者における血栓症リスクは約1%であり、血栓イベントの60%以上が注入後24時間以内に発生すると報告されている。とくに、45歳以上の患者や血栓イベントの既往歴を有する患者では、リスクがより高いと考えられる。 ITPにおける血栓症の治療について、Al-Samkari氏は次のように述べた。「出血がない場合であっても、血小板数が5万/μLを超える患者では抗凝固療法または抗血小板療法が通常適応となる。また、血小板数が3万/μL以上の場合には、年齢やその他のリスク因子を考慮しつつ、治療用量の抗凝固療法と抗血小板薬2剤併用療法を選択する必要がある」。日本人血友病患者のCVD管理のポイント 先天性血友病患者が胸痛を呈し、心エコー検査でST上昇が認められる場合には、緊急冠動脈インターベンションが必要となる。このような症例は、血友病患者の高齢化に伴い今後増加する可能性がある。 先天性血友病は、第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)の欠乏によって引き起こされるX連鎖性出血性疾患であり、その重症度は重症(活性1%未満)、中等症(1~5%)、軽症(5~40%)に分類される。2024年度の日本における血液凝固異常症全国調査によると、血友病Aは5,956例、血友病Bは1,345例であると報告されている。血友病患者は関節内出血などの深部出血を呈し、血友病性関節症の発症やQOL低下につながる可能性があることから、予防的な因子補充療法は依然として治療の基本である。 近年、血友病治療は目覚ましい進歩を遂げており、半減期を延長した凝固因子濃縮製剤、第VIII因子模倣二重特異性抗体、抗凝固経路を標的としたリバランス療法、そして海外でも利用可能となった遺伝子治療など、新たな治療選択肢が登場している。一方、日本では高齢の血友病患者が比較的少なかったことから、CVDなどの血栓性合併症はまれで、その管理のための確立したガイドラインや十分なデータが存在しなかった。しかし、非因子療法の普及や包括的ケアシステムの拡充に伴い、血友病患者の長期予後は改善しつつある。2024年の全国調査では、日本の血友病Aおよび血友病B患者の平均年齢は約40.2歳であり、患者集団の高齢化が進んでいることが明らかにされた。 2019年以降に40歳以上であった血友病患者599例をフォローアップしたADVANCEコホート研究では、5年間で17例の死亡が観察され、死亡時の平均年齢は62.4歳(中央値:58.0歳)であったことが報告されている。70〜90代まで生存した患者も報告されており、血友病患者の寿命が延長していることも示されている。日本人男性の平均寿命(約81歳)との差は依然としてあるものの、日本人血友病患者の平均寿命が延びていることを明確に示す結果となった。 重要なポイントとして、長尾氏は「日本人は欧米人よりも出血傾向が高いと考えられるため、日本人患者に合わせた個別化かつバランスの取れたCVD管理戦略が不可欠である」と指摘した。さらに「血友病患者のCVD管理のための、日本人特有のエビデンスに基づく臨床ガイドラインを早急に策定する必要がある」と述べ、講演を締めくくった。多発性骨髄腫における血栓症リスク がん患者は健康な人と比較して血栓イベントの発生リスクが4~7倍高いことが報告されている。多発性骨髄腫はその中でも血栓イベントの発生率が高い疾患の1つであり、患者の約10%において臨床経過中に血栓イベントが生じるとされている。 血栓イベントのリスク因子は多岐にわたり、患者関連因子、疾患関連因子、治療関連因子の3つに大別される。たとえば治療関連リスクとしては、レナリドミドなどの免疫調節薬とデキサメタゾンの併用が挙げられる。 多発性骨髄腫患者における血栓イベントの発生は、治療に影響を及ぼし、アウトカム不良につながるため、適切な予防と評価が重要となる。成田氏は「診断時および定期的な血栓症のスクリーニングが有益であり、免疫調節薬を併用療法で使用する場合には、血栓症の予防およびモニタリングがとくに重要となる」と指摘した。 現在、日本における多発性骨髄腫患者の血栓症に関する調査が進行中であり、その結果が待ち望まれている。

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コーヒー1日1杯vs.非摂取、心房細動再発が減るのは?/JAMA

 コーヒー摂取習慣のある心房細動(AF)または心房粗動患者を対象とした臨床試験において、電気的除細動後にカフェイン入りコーヒーを1日1杯飲む群に割り付けられた被験者のほうが、コーヒーやカフェイン含有製品の摂取を禁止された群に割り付けられた被験者よりも、AFまたは心房粗動の再発率が低いことが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のChristopher X. Wong氏らが無作為化試験「Does Eliminating Coffee Avoid Fibrillation?:DECAF試験」の結果を報告した。世間一般には「カフェイン入りコーヒーは不整脈を誘発する」とされているが、これまでAF患者を対象にカフェイン入りコーヒーの摂取を評価する無作為化試験は行われていなかった。JAMA誌オンライン版2025年11月9日号掲載の報告。コーヒー摂取習慣のある患者を対象に電気的除細動後に無作為化し6ヵ月間追跡 DECAF試験は、研究者主導の前向き非盲検国際多施設共同無作為化試験であり、米国、オーストラリア、カナダの5つの3次医療機関で被験者を募り行われた。対象は、21歳以上、持続性のAF(またはAFの既往歴がある心房粗動)を有し電気的除細動が予定されていた患者で、過去5年間に1日1杯以上のコーヒー摂取、コーヒー摂取をやめる/継続する意思と能力がある、少なくとも6ヵ月の余命を適格条件とした。 電気的除細動に成功した被験者を、定期的にカフェイン入りコーヒーを飲む(コーヒー摂取)群またはコーヒーおよびカフェイン含有製品の摂取を禁止とする(コーヒー禁止)群に、1対1の割合で無作為に割り付け6ヵ月間追跡した。コーヒー摂取群は、カフェイン入りコーヒーを少なくとも1日1杯飲むことが推奨され、コーヒー禁止群は、カフェイン入りおよびカフェインレスのコーヒーいずれもとその他のカフェイン含有製品を完全にやめることが推奨された。 主要エンドポイントは、6ヵ月間に臨床的に検出されたAFまたは心房粗動の再発(time-to-event解析で評価した30秒以上継続例)であった。事前規定の副次エンドポイントは、AFと心房粗動の各再発、有害事象(心筋梗塞、脳卒中、心不全の増悪、救急部門受診、入院、死亡)であった。再発はコーヒー摂取群(47%)がコーヒー禁止群(64%)より少ない 2021年11月~2024年12月に200例が登録された。最終追跡評価日は2025年6月5日。 200例は平均年齢69歳(SD 11)、男性が71%で、ベースラインのコーヒー摂取量は両群とも週に7杯(四分位範囲[IQR]:7~18)であった。 追跡期間中、コーヒー摂取量はコーヒー摂取群が週に7杯(IQR:6~11)、コーヒー禁止群は週に0杯(0~2)で、両群間の差は週に7杯(95%信頼区間[CI]:7~7)であった。 主要解析で、AFまたは心房粗動の再発は、コーヒー摂取群(47%)がコーヒー禁止群(64%)よりも少なく、再発リスクは39%低かった(ハザード比[HR]:0.61、95%CI:0.42~0.89、p=0.01)。コーヒー摂取の有益性は、副次エンドポイントであるAF再発のみにおいても観察された(HR:0.62、95%CI:0.43~0.91、p=0.01)。 有害事象の有意差はみられなかった。

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看護師はAIを受け入れるか?カギは、感情論より有用性の実感【論文から学ぶ看護の新常識】第39回

看護師はAIを受け入れるか?カギは、感情論より有用性の実感注目されている看護現場へのAI導入。最新の研究結果から、看護師の導入意図を左右するのは、AIに対する「不安」よりも、その有用性を理解する「信念」とシステムへの「信頼」である可能性が示された。Guy Pare氏らの研究で、JMIR Nursing誌2025年9月5日号に掲載された。看護師の業務へのAI導入意向:カナダにおける調査研究研究チームは、看護師が自身の業務にAIを取り入れようとする意図に影響を与える主要な要因を特定することを目的に、調査研究を行った。カナダ、ケベック州の看護職団体の会員3,000人を対象にオンライン調査を実施。307人の看護師が全質問票に回答した。データは記述統計と部分的最小二乗構造方程式モデルを用いて分析した。主な結果は以下の通り。看護師のAIの役割に関する信念(AIは有用であるという認知的評価)(パス係数[β]=0.47、p論文はこちらPare G, et al. JMIR Nurs. 2025;8:e76795.

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大規模災害時の心理的支援、非精神科医ができること【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第10回

大規模災害時の心理的支援、非精神科医ができること地震の後の津波で自宅が流され、ご家族を亡くされた避難者が、食事も取らず憔悴しきっています。「私も一緒に死にたかった。誰とも話したくない」と訴えている時、避難所を管理する医師として、何ができるでしょうか?大規模災害時の医療支援では、身体的な疾患への治療が優先されがちですが、被災者が抱える精神的な苦痛も決して見過ごすことはできません。避難所には「死」の情報があふれ、家族や住居を失った人々は、急性ストレス反応、不眠、抑うつなど多彩な心理的症状を呈します。精神科専門医が診察できれば理想的ですが、急性期には非精神科医が心理的ケアを担わざるを得ない場面が少なくありません。本稿では岡山大学病院精神科神経科の協力を得て、「専門家でなくともできるアプローチ」を概説します。特殊な技法より「寄り添う姿勢」災害直後の被災者は強い不安と混乱の中にあり、見知らぬ医療者に心を開くことは容易ではありません。落ち着いた声掛け、丁寧な自己紹介、プライバシーの尊重といった基本的な配慮は大前提です。そのうえで、医師としては「診断」よりも「寄り添い」を重視します。すぐに励ましたり「頑張って」と声を掛けるのではなく、まずは話を聴く姿勢が重要です。「大切な方を亡くされて本当につらいですね」「そのお気持ちは自然なことです」と、感情を否定せず受け止める言葉を心掛けましょう。災害後の心理的反応は時間とともに変化し、約75%は自然回復が期待できます1)。傾聴と共感は非精神科医でも実践可能であり、感情を言語化して受け止めるだけでも、被災者の気持ちは整理されやすいとされています。安全の確保「死にたい」という発言は軽視せず、真剣に受け止める必要があります。一人で抱え込まず、看護師・ボランティア・行政職員などチームで対応し、記録を残して支援を引き継ぎましょう。まず優先すべきは、ご本人の安全と安心の確保です。被災者を一人にせず、落ち着くまで信頼できる人が付き添い、孤立を防ぎます。また、刃物や紐など危険物が周囲にないか確認することも忘れないようにしましょう。身体と精神の休息環境の整備生活リズムの安定は、心理的な安定に直結します。食事・睡眠・休息の確保は心身の回復に不可欠です2)。とくに睡眠障害への対応は重要であり、静かな環境、カフェイン制限、朝の光を浴びることなどの生活指導が有効です。さらに、社会的つながりを整えることも大切です。避難所での役割を持つことや住民同士の交流は、自己肯定感を回復させます。これらは集団精神療法的な効果を持ち、PFA(Psychological First Aid)の「見る」「聞く」「つなぐ」の考え方にも通じます3)。限界を意識し、医療従事者のメンタルヘルスも確保非精神科医の役割は「初期対応」と「つなぎ」です。専門的介入が必要と判断した場合は、速やかに地域の精神保健福祉センターや保健所に連絡しましょう。災害派遣精神医療チーム(DPAT)が活動していれば、専門的な支援や処置を行ってくれます。支援に当たる医療従事者自身も、同僚の喪失や過重労働、燃え尽き、自責感といった心理的問題を抱えることがあります。「自分は大丈夫」と考える人は多いですが、セルフケアには限界があるため、チームでのケアが不可欠です4)。業務ローテーションの導入、役割分担の明確化、ストレスチェックや相談体制の整備、被災現場でのシミュレーション、業務の意義付けなど、組織として体制を整えることが重要です。避難所では、突然の喪失や過酷な環境により、強い悲嘆や自殺念慮を訴える人が現れることがあります。非精神科医による対応には限界がありますが、専門医がすぐに介入できない状況でも、避難所を管理する医師にできることは多くあります。基本的な心理的ケアを理解し、寄り添い、安全を確保し、生活リズムを整えること。それだけでも被災者の重症化を防ぎ、自然回復を促進する大きな支えとなります。被災者に対して意識すべきポイント安全確保・安心感の提供声掛け、自己紹介、プライバシーの確保など傾聴と共感感情の言語化、共感の声掛けなど社会的つながりの整備他者との交流、役割の付与などその他食事、睡眠、休息の確保、リラクゼーションの紹介など 1) Norris FH, et al. Looking for resilience: understanding the longitudinal trajectories of responses to stress. Soc Sci Med. 2009;68:2190- 2198. 2) Liang L, et al. Everyday life experiences for evaluating post-traumatic stress disorder symptoms. Eur J Psychotraumatol. 2023;14:2238584. 3) 世界保健機関、戦争トラウマ財団、ワールド・ビジョン・インターナショナル. 心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)フィールド・ガイド. (2011)世界保健機関:ジュネーブ. (訳:国立精神・神経医療研究センター、ケア・宮城、公益財団法人プラン・ジャパン, 2012). 4) Brooks SK, et al. Social and occupational factors associated with psychological distress and disorder among disaster responders: a systematic review. BMC Psychol. 2016;4:18.

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症候からわかる irAE逆引きマニュアル

症状(+検査)→診断(病名)→治療でirAEを適切に処置!本書は、近年注目を集めている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に伴って起こる副作用「免疫関連有害事象(irAE)」への実践的な対応法をまとめた医療従事者向けの実用書です。ICIの登場によってがん治療は大きく進歩しましたが、その一方で、副作用であるirAEへの理解と適切な対応が求められるようになっています。本書で取り上げている「irAE逆引きマニュアル」は、著者が独自に作成したものです。前半では、症状からirAEの可能性を推定できる構成後半では、主なirAEごとに症状・検査・重症度別の治療や経過観察のポイントを原則1ページに整理しています。症状から疑われる疾患をすぐに確認でき、診断から検査・治療までの流れをひと目で把握できる実用的なツールです。現場での判断力と対応力を支える1冊として、幅広い医療職の方におすすめしたい書籍です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する症候からわかる irAE逆引きマニュアル定価4,950円(税込)判型A5判頁数183頁発行2025年11月著者野口 哲男(市立長浜病院呼吸器内科/呼吸器ドクターN)ご購入はこちらご購入はこちら

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