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統合失調症の認知機能障害とストレスや免疫系との関連~機械学習に基づく分析

 統合失調症の認知機能障害には、心理的ストレスと免疫系が関連しているといわれている。中国・電子科技大学のQi Zhang氏らは、機械学習アルゴリズムを用いて、慢性期統合失調症の認知機能障害とストレス免疫ネットワークパターンとの関連を調査した。Neuroscience Letters誌オンライン版2021年6月24日号の報告。 慢性期統合失調症患者37例および年齢、性別がマッチした健康対照者35例を対象に、認知機能障害とストレス免疫ネットワークパターンとの関連を明らかにするため、機械学習アルゴリズムを用いて分析を行った。統合失調症患者の心理的ストレスと免疫系に対する機能不全を反映する生化学的指標として、コルチゾール、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-2、IL-6、IL-8を選択した。 主な結果は以下のとおり。・コルチゾール、TNF-α、IL-2、IL-6、IL-8における14種類の相互作用に基づいて、以下の機械学習アルゴリズムを用いて分析を行ったところ、コルチゾール×TNF-α×IL-8が慢性期統合失調症を特定するための最大のリスク因子であることが示唆された。 ●デシジョンツリー(精度:93.1%、感度:97.3%、特異性:88.6%) ●ランダムフォレスト(精度:94.4%、感度:91.9%、特異性:97.1%) ●サポートベクターマシン(精度:98.6%、感度:100.0%、特異性:97.1%)・コルチゾール×TNF-α×IL-8とPANSS認知機能サブスコアとの間に正の相関が認められた。・ステップワイズ線形重回帰分析では、PANSS認知機能サブスコアは、罹病期間およびコルチゾール×TNF-α×IL-8と相関していることが示唆された。 著者らは「慢性期統合失調症の認知機能に対し、糖質コルチコイドと免疫との関連が影響を及ぼしていることが示唆された」としている。

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うつ病に対する抗うつ薬の治療パターンとアウトカム

 米国において、うつ病は重大な問題となっている。うつ病に対するケアは、非常に多様であり、文書化された報告も限られている。米国・スタンフォード大学のMaurice M. Ohayon氏らは、米国の一般集団におけるうつ病の有病率と治療パターンについて調査するため、縦断的研究を実施した。CNS Spectrums誌2021年4月号の報告。 2002~15年の間に2回のWeb調査を実施した。1回目の調査(W1)は、米国8州の18歳以上の一般集団1万2,218人を対象に実施した。2回目の調査(W2)は、W1で3年後の再調査に同意した1万931人を対象に実施した。W1およびW2に回答した1万931人を分析対象とした。うつ病の診断は、DSM-V基準に従った。 主な結果は以下のとおり。・3年間のうつ病発症率は、3.4%(95%CI:3.1~3.7)であった。・うつ病有病率は、W1で5.1%(95%CI:4.7~5.5)、W2で4.2%(95%CI:3.8~4.6)であった。・部分寛解または完全寛解に達した患者の割合は、以下のとおりであった。 【部分寛解】  ●W1:4.4%(95%CI:4.0~4.8)  ●W2:7.9%(95%CI:7.4~8.4) 【完全寛解】  ●W1:3.9%(95%CI:3.5~4.3)  ●W2:4.4%(95%CI:4.0~4.8)・部分寛解および完全寛解に達した患者を含めたうつ病の有病率は、W1で13.4%、W2で16.5%であった。・W1でうつ病と診断された患者のうち、併存疾患を有していた患者の割合は、61.9%であった。・W1でうつ病と診断された患者のうち、W2でも抑うつ症状が報告された患者の割合は、41.8%であった。・W1で部分寛解に達した患者の19.9%および完全寛解に達した患者の5.5%は、W2で寛解に達していなかった。・うつ病患者のうち、抗うつ薬が使用されていた患者の割合は、W1で52.2%、W2で42.9%であった。最も使用されていた薬剤クラスは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、W1で34.7%、W2で28.3%の患者に使用されていた。・抗うつ薬を処方した医師の内訳は、プライマリケア医45.7%、精神科医31.4%、神経内科医2.5%、その他7.9%であった。・平均治療期間は、36.9ヵ月(SE:2.4)であった。・W1において、抗うつ薬を使用していた患者の3分の1以上が抗うつ薬治療に不満を持っており、W2での抗うつ薬の種類の変更につながっていた。 著者らは「米国におけるうつ病有病率は、13.4~16.5%であった。抗うつ薬が使用されていたうつ病患者は、約半数程度(52%)にとどまっており、多くの患者で治療が不十分であることが示唆された。本研究では、うつ病患者の4人に1人以上は、初期の抗うつ薬治療で寛解が得られておらず、うつ病治療の課題が浮き彫りとなった」としている。

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第2世代抗精神病薬による体重増加と治療中断

 第2世代抗精神病薬(SGA)で治療を行った統合失調症および双極I型障害患者における臨床的に有意な体重増加や治療中断は、死亡リスクに影響を及ぼす可能性のある重大な問題である。米国・AlkermesのMichael J. Doane氏らは、第2世代抗精神病薬による体重増加と治療中断への影響について評価を行った。CNS Spectrums誌2021年4月号の報告。 中~高度の体重増加リスクを有する経口SGAで治療を開始した患者(12ヵ月間、第1世代抗精神病薬での治療なし)を対象に、レセプトデータ(OM1 Data Cloud:2013年1月~2020年2月)を用いて、体重増加および治療中断に関するデータを収集した。臨床的に有意な体重増加は、ベースライン時の体重より7%以上増加と定義した。治療中断は、体重増加リスクの低いSGAや長時間作用型注射剤SGAへ切り替えた場合および30日以上SGAが使用されていなかった場合と定義した。臨床的に有意な体重増加と治療中断が認められた患者の割合およびこれらのアウトカムまでの期間中央値の算出には、記述統計を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の過体重、肥満は、患者の約4分の3で認められた(統合失調症:8,174例、双極I型障害:9,142例)。・SGA開始後3ヵ月以内に、全患者の12%において、臨床的に有意な体重増加が認められた。・SGAによる治療を6ヵ月以上行っている患者の場合、フォローアップ期間中の臨床的に有意な体重増加の発現率は、統合失調症患者で28%、双極I型障害で30%であった。・臨床的に有意な体重増加が発現するまでの期間中央値は、14週間であった。・臨床的に有意な体重増加は、統合失調症と双極I型障害で類似していた。・フォローアップ期間中に治療中断に至った患者は、96%以上であった。治療中断までの期間中央値は、統合失調症で12週間、双極I型障害で13週間であった。・臨床的に有意な体重増加が認められた患者に治療中断を行った場合でも、74%の患者は、ベースライン時の体重に戻らなかった。残りの患者のベースライン時の体重に戻るまでの期間中央値は、統合失調症で38週間、双極I型障害で39週間であった。 著者らは「SGAによる治療で臨床的に有意な体重増加が認められた統合失調症および双極I型障害患者の多くは、中~高度の体重増加リスクを有する経口SGAによる治療を中止した場合でも、ベースライン時の体重に戻すことは簡単ではない」としている。

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固形燃料による家庭内大気汚染がうつ病に及ぼす影響

 家庭内大気汚染は、脳卒中や心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺がんなどを引き起こすことが知られており、世界では毎年数百万人が大気汚染に起因する疾患で早期に死亡している。この長期的な家庭内大気汚染がメンタルヘルスに及ぼす影響を検討したエビデンスは限られている。中国・華中科技大学のChenshuang Li氏らは、固形燃料の使用による長期的な家庭内大気汚染とうつ病との関連を調査するため、中国の代表的なフォローアップデータセットを用いて検討を行った。Environmental Pollution誌2021年8月15日号の報告。 対象は、China Health and Retirement Longitudinal Study(CHARLS)の4つの最新データ(2011、2013、2015、2018年)より抽出した中高年成人7,005人。抑うつ症状の測定には、うつ病自己評価尺度(CES-D 10)を用い、12ポイント超を抑うつ症状ありと定義した。家庭内大気汚染とすべての集団およびサブグループ(社会人口統計学的要因、ライフスタイル行動、慢性疾患、居住環境により層別化)におけるうつ病リスクとの関連を調査するため、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・固形燃料の使用による長期的な家庭内大気汚染は、中国における高齢者のうつ病リスクの上昇との有意な関連が示唆された。●暖房の場合のハザード比(HR):1.27(95%信頼区間[CI]:1.14~1.42)●調理の場合のHR:1.26(95%CI:1.13~1.40)・より長期にわたる家庭内大気汚染および作物廃棄物や木材の使用による家庭内大気汚染は、うつ病リスクがより高かった。 【より長期にわたる家庭内大気汚染】●暖房の場合のHR:1.47(95%CI:1.28~1.68)●調理の場合のHR:1.36(95%CI:1.19~1.56) 【作物廃棄物や木材の使用による家庭内大気汚染】●暖房の場合のHR:1.66(95%CI:1.41~1.94)●調理の場合のHR:1.37(95%CI:1.23~1.53)・サブグループ解析では、固形燃料の使用による家庭内大気汚染がうつ病に及ぼす影響は、さまざまであった。・小さな家や部屋数の少ない家で暮らす高齢者は、クリーンな燃料を使用している人と比較し、暖房や調理に固形燃料を使用すると、うつ病リスクの上昇が認められた。 著者らは「固形燃料の使用による長期的な家庭内大気汚染とうつ病リスクとの関連が示唆された。固形燃料の使用を制限し、家庭内大気汚染を改善することは、中国の高齢者のうつ病を予防し、うつ病に関連する公衆衛生上の負荷を減少させるために役立つであろう」としている。

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統合失調症に対する抗精神病薬の長期継続性

 統合失調症の治療では、抗精神病薬の長期投与が必要となることが少なくない。米国・ザッカーヒルサイド病院のJose M. Rubio氏らは、統合失調症治療における抗精神病薬の継続性、治療中断に関連する因子について、調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2021年6月15日号の報告。 フィンランドの初回エピソード精神疾患患者を対象とした全国コホートを最長18年間フォローアップした。初回治療との比較および本コホートで最も使用頻度の高かったオランザピンと比較した特定の抗精神病薬についての治療中止リスクを評価するため、層別Cox比例ハザード回帰を用いた。調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・平均8年間フォローアップを行った患者3,343例の継続治療エピソード回数の中央値は6回(四分位範囲[IQR]:3~11)、期間中央値は11.4ヵ月(IQR:5.3~25.6)であった。・診断初年度における治療中止の発生率は、30.12イベント/100患者年(95%CI:29.89~30.35)であったが、10年目には8.90イベント/100患者年(95%CI:8.75~9.05)に減少した。・治療中止リスクは、治療エピソード回数が連続するにしたがって徐々に減少した(初回エピソードと比較した15回以降のエピソードのaHR:0.30、95%CI:0.20~0.46)。・抗精神病薬の長時間作用型注射剤は、経口剤と比較し、治療中断リスクが67%低かった(aHR:0.33、95%CI:0.27~0.41)。 著者らは「長期にわたる統合失調症治療では、抗精神病薬の中断と再開が繰り返されることが多いが、これは統合失調症マネジメントガイドラインで推奨されていない。治療のなるべく早い段階で抗精神病薬の長時間作用型注射剤を用いることにより、抗精神病薬の治療継続性が高まる可能性がある」としている。

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日本における抗うつ薬とCBT併用療法による費用対効果

 うつ病治療において認知行動療法(CBT)の併用は、最初から行うべきか、薬物治療で寛解が得られない患者に行うべきかについて、慶應義塾大学のYoshihide Yamada氏らは、費用対効果の面から検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年6月17日号の報告。 うつ病治療において、最初からCBTと薬物療法を併用したCOMBファースト戦略と、まずは薬物療法で治療を開始し、寛解が得られない場合にCBTを併用したADファースト戦略において、どちらの治療戦略の費用対効果が高いかを調査した。分析を行うため、マルコフモデルを開発した。主要アウトカムは、104週における質調整生存率(QALY)当たりの増分費用対効果(ICER)とした。臨床パラメータに関連する不確実性と結果に対するCBTコストの影響を調査するため、それぞれ確率的感度分析とシナリオ分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・104週におけるQALY当たりのICERは、中等度のうつ病で59万1,822円(5,725米ドル)、重度のうつ病で49万9,487円(4,832米ドル)であった。・シナリオ分析では、国立保健医療研究所(NICE)が推奨する基準値(2万~3万ポンド)をはるかに下回るCBTコスト1万4,400円(139米ドル、英国のCBT単価96ポンド)に設定した場合、ICERは中等度のうつ病で114万7,518円(1万1,101米ドル)、重度のうつ病で96万8,484円(9,369米ドル)となった。・本研究の限界として、健康保険の観点から実施したモデルベースの分析であり、社会的観点からの分析では、異なる結果が得られる可能性がある。 著者らは「COMBファースト戦略は、ADファースト戦略よりも費用対効果が高いことが示唆された」としている。

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「ジェイゾロフト」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第62回

第62回 「ジェイゾロフト」の名称の由来は?販売名ジェイゾロフト錠25mgジェイゾロフト錠50mgジェイゾロフト錠100mgジェイゾロフトOD錠25mgジェイゾロフトOD錠OD錠50mgジェイゾロフトOD錠OD錠100mg一般名(和名[命名法])セルトラリン塩酸塩(JAN)効能又は効果○うつ病・うつ状態○パニック障害○外傷後ストレス障害用法及び用量通常、成人にはセルトラリンとして1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により1日100mgを超えない範囲で適宜増減する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.MAO阻害剤を投与中あるいは投与中止後14日間以内の患者3.ピモジドを投与中の患者※本内容は2021年7月28日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年6月改訂(第18版)医薬品インタビューフォーム「ジェイゾロフト®錠25mg/錠50mg/錠100mg、ジェイゾロフト®OD錠25mg/OD錠50mg/OD錠100mg」2)Pfizer PROFESSIONALS:製品情報

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抗精神病薬LAIの悪性症候群リスク

 精神疾患に対する抗精神病薬の長時間作用型(LAI)使用は、いくつかの良いアウトカムをもたらすが、重篤な副作用の1つである悪性症候群が発生した場合、LAIの使用がデメリットとなるかはわかっていない。米国・ザッカーヒルサイド病院のDaniel Guinart氏らは、統合失調症および/または統合失調感情障害と診断された患者における悪性症候群の発生率とアウトカムの予測因子について調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2021年5月20日号の報告。 フィンランドのヘルスケアエンカウンタの代表的なデータベースを用いて、1972~2017年に統合失調症および/または統合失調感情障害と診断された患者を対象に、悪性症候群の発生率およびアウトカムの予測因子を調査した。抗精神病薬の剤型(LAIと経口)およびクラス(第1世代[FGA]と第2世代[SGA])による違いを調査するため、ネステッドケースコントロールデザインを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、悪性症候群が認められた患者172例および性別、年齢、診断が一致した対照群1,441例(年齢:58.8±13.1歳、男性の割合:59.9%)。・悪性症候群の発生率は、1.99/1万人年(1.98~2.00)であった。・悪性症候群の発生率は、抗精神病薬の剤型およびクラスで違いが認められなかった。 ●LAI対経口の調整オッズ比[aOR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.59~1.33 ●FGA経口対SGA経口のaOR:1.08、95%CI:0.66~1.76 ●FGA経口対FGA-LAIのaOR:0.89、95%CI:0.52~1.53 ●FGA経口対SGA-LAIのaOR:1.35、95%CI:0.58~3.12・悪性症候群のリスク因子は、以下のとおりであった。 ●抗精神病薬数の増加(オッズ比[OR]:5.00、95%CI:2.56~9.73) ●抗精神病薬数の減少、切り替え(OR:2.43、95%CI:1.19~4.96) ●抗精神病薬の用量の多さ(規定された1日投与量の2倍超のOR:3.15、95%CI:1.61~6.18) ●抗コリン薬の併用(OR:2.26、95%CI:1.57~3.24) ●リチウムの併用(OR:2.16、95%CI:1.30~3.58) ●ベンゾジアゼピンの併用(OR:2.02、95%CI:1.44~3.58) ●心血管疾患の合併(OR:1.73、95%CI:1.22~2.45)・悪性症候群が認められた患者の4.7%は、30日以内に死亡しており、抗精神病薬の剤型間による違いは認められなかった。また、1年以内では15.1%であった。・悪性症候群後に抗精神病薬を再投与した患者119例のうち、5例(4.2%)で再発が認められた。抗精神病薬再投与後の再発までの期間中央値は、795日(範囲:77~839日)であった。 著者らは「悪性症候群は、生命に影響を及ぼす可能性のあるリスクとなりうる。今回の結果は、死亡率を含む悪性症候群の発症またはアウトカムに関連するLAIの安全性に対する懸念を和らげるうえで役立つであろう」としている。

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向精神薬が膀胱機能に及ぼす影響~メタ解析

 イタリア・パルマ大学のMargherita Trinchieri氏らは、向精神薬が膀胱機能に及ぼす影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neurourology and Urodynamics誌オンライン版2021年5月18日号の報告。 向精神薬で治療された患者における治療誘発性尿路障害に関するランダム化比較試験を、PubMedおよびEmbaseより検索し、システマティックレビューを実施した。 主な結果は以下のとおり。・52件の研究が抽出された。・抗うつ薬治療では、畜尿症状ではなく、膀胱排尿症状の出現がより頻繁に認められた。・プール分析では、プラセボと比較し、排尿症状のオッズ比(OR)が高かった(OR:3.30、信頼区間[CI]:1.90~5.72、7,856例、p<0.001)。・排尿機能障害の割合は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と比較し、三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のほうが高かった。・抗精神病薬治療では、排尿、畜尿障害を含む不均一な尿障害との関連が認められた。・抗精神病薬治療中の認知症患者の尿失禁のORは、プラセボよりも高く(OR:4.09、CI:1.71~9.79、p=0.002)、抗精神病薬間での差は認められなかった。・排尿障害の割合は、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬との間に差は認められなかったが(OR:1.64、CI:0.79~3.39、p=0.19)、クエチアピンは、他の非定型抗精神病薬よりも排尿機能障害を起こす可能性が高かった(OR:2.14、CI:1.41~3.26、p>0.001)。 著者らは「三環系抗うつ薬またはSNRIで治療中の患者でみられる膀胱排尿障害は、泌尿器系疾患の症状ではなく、向精神薬治療による副作用の可能性がある。これらの薬剤で治療を行った患者では、尿症状の出現を積極的にモニタリングする必要がある。また、抗精神病薬治療による尿関連副作用では、状況に応じた対処が求められる」としている。

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統合失調症患者における持続性注射剤使用と刑事事件遭遇との関連

 統合失調症患者では、アドヒアランスが不良な場合が多い。このことが、再発リスク、健康状態の悪化、入院、治療費の高騰、暴力的および非暴力的な犯罪の発生率上昇に影響を及ぼす。米国・ケント州立大学のMadhav P. Bhatta氏らは、統合失調症または統合失調感情障害患者における持続性注射剤(LAI)抗精神病薬の使用と刑事事件遭遇との関連について、調査を行った。Journal of Health Economics and Outcomes Research誌2021年5月19日号の報告。 2010年1月1日~2016年6月15日にオハイオ州アクロンの地域精神保健センターで統合失調症または統合失調感情障害のために治療を受けた18歳以上の患者を対象に、レトロスペクティブフォローアップ研究を実施した。LAI抗精神病薬開始前後6ヵ月、1年、2年での刑事事件遭遇率を評価した。過去に逮捕歴を有する患者を対象に、サブ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、LAI抗精神病薬治療開始1、2年後に刑事事件に遭遇するリスク比(RR)は、開始前の同一期間と比較し、有意に低かった。 ●1年後のRR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p<0.01 ●2年後のRR:0.74、95%CI:0.62~0.88、p<0.0001・月1回パルミチン酸パリペリドンのコホートにおける刑事事件遭遇率は、治療前よりも治療後に有意な減少が認められた。・過去に逮捕歴を有する患者では、LAI抗精神病薬治療開始6ヵ月、1、2年後の逮捕事例発生率は、開始前の同一期間と比較し、有意に低かった。 ●前後6ヵ月逮捕事例発生率:27件vs.85件 ●前後1年逮捕事例発生率:46件vs.132件 ●前後2年逮捕事例発生率:88件vs.196件 著者らは「LAI抗精神病薬治療を受けた統合失調症または統合失調感情障害患者では、LAI開始前と比較し、刑事事件に遭遇する可能性が有意に低かった」としている。

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精神疾患治療薬と自動車運転能力~システマティックレビュー

 モビリティは、日常生活において重要な機能であるが、薬理学的な治療を行っている精神疾患患者では、交通安全に関する特定の課題を抱えている。ドイツ・kbo-Inn-Salzach-KlinikumのAlexander Brunnauer氏らは、精神疾患治療薬と自動車運転能力との関連を調査した。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2021年5月26日号の報告。 PRISMAガイドラインに従って、PubMedより1970~2020年に公表された文献をシステマティックに検索した。主要評価項目として、交通法規に従って運転するための対象患者の適合性を推定するため、路上教習でのパフォーマンス、ドライビングシミュレータでのパフォーマンス、精神運動、視覚機能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・特定された40件の研究(精神疾患患者数:1,533例、女性の割合:38%、年齢中央値:45歳)のうち、60%以上は横断的および非盲検試験であった。・安定期の治療薬投与下において、運転関連スキルに重度の問題が認められた患者の割合は、以下のとおりであった。 ●抗精神病薬投与中の統合失調症または統合失調感情障害患者:31%(範囲:27~42.5%) ●抗うつ薬投与中の単極性または双極性障害患者:18%(範囲:16~20%)・運転能力に対し、第1世代抗精神病薬より第2世代抗精神病薬、三環系抗うつ薬より新規抗うつ薬のほうが優れることが示唆された。・多くの患者において、非鎮静または鎮静系抗うつ薬治療開始から2~4週以内に、運転スキルの有意な改善または安定が認められた。・ジアゼパムでは、治療開始後最初の3週間に運転能力の有意な悪化が確認されたが、メダゼパム(低用量)、temazepam、ゾルピデムでは、影響が認められなかった。・鎮静系抗うつ薬またはベンゾジアゼピンの長期使用患者では、明らかな路上教習での問題は認められなかった。 著者らは「臨床的に配慮した精神疾患治療薬の長期使用は、運転能力を改善または安定させることが示唆された。治療コンプライアンスを強化するため、運転能力に影響を及ぼす医薬品に関する既存の分類システムに、長期使用の影響に関する情報も盛り込む必要がある」としている。

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治療抵抗性統合失調症の遺伝的研究~COMTおよびGAD1遺伝子

 前頭前野におけるドパミン作動性ニューロンからガンマアミノ酪酸(GABA)介在ニューロンへの投射は、統合失調症の病因と関連している。統合失調症の臨床像に対するドパミンシグナルとGABA発現との相互作用の影響は、これまで研究されていなかった。これらの相互作用は、前頭前野の機能と密接に関連している可能性があり、関連分子との特定の対立遺伝子(遺伝的機能の低下または脆弱)を有する患者では、治療抵抗性へ移行する可能性がある。千葉大学の小暮 正信氏らは、治療抵抗性統合失調症に特有の対立遺伝子の組み合わせを調査するため、COMTおよびGAD1遺伝子に焦点を当て、遺伝子関連研究を実施した。Journal of Molecular Neuroscience誌オンライン版2021年6月14日号の報告。 対象は、治療抵抗性統合失調症群171例、非治療抵抗性統合失調症群592例、健康対照群447例。 主な結果は以下のとおり。・COMT遺伝子にrs4680のMet対立遺伝子を有する患者およびGAD1遺伝子にrs3470934のC/Cホモ接合体を有する患者の割合は、治療抵抗性統合失調症群で他の群よりも有意に高かった。・非治療抵抗性統合失調症群と健康対照群との間に、有意な差は認められなかった。・これまでの研究で明らかとなったこれら一塩基多型の機能の方向性を考慮すると、Met/CC対立遺伝子の組み合わせを有する患者は、前頭前野のドパミンレベルが高く、GABA発現の可能性が低いと推測される。 著者らは「治療抵抗性統合失調症患者では、ドパミン作動性シグナルとGABAシグナルの相互作用が、非治療抵抗性統合失調症患者や健康対照者と異なっている可能性が示唆された」としている。

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英国のうつ病診療で使用されている治療法

 うつ病は、経口抗うつ薬で治療可能な慢性的または一時的な精神疾患である。しかし、現在利用可能な治療では、3人に1人は十分な治療反応が得られない。FDAやEMAでは、1度のうつ病エピソードに対し、連続で2つ以上の抗うつ薬治療に反応が得られない場合、治療抵抗性うつ病であるとしている。英国・ヤンセンのTom Denee氏らは、英国のうつ病および治療抵抗性うつ病に対する現在の臨床的マネジメント、治療戦略、メンタルヘルスの2次医療機関への紹介について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌2021年7月号の報告。 プライマリケアにおいて、うつ病と診断された成人(治療抵抗性うつ病を含む)を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。Hospital Episode Statistics and Mental Health Services Data Set dataにリンクした英国の大規模データベース(Clinical Practice Research Datalink GOLD primary care database)を用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病患者4万1,375例(平均年齢:44歳、女性の割合:62%、フォローアップ期間中央値:29ヵ月)、治療抵抗性うつ病患者1,051例(3%)が特定された。・治療抵抗性うつ病の診断までの平均期間は、18ヵ月であった。・99%超の患者は、第1選択抗うつ薬の単剤療法を受けていた。・治療抵抗性うつ病の診断後、単剤療法は、第1選択治療時の70%から第5選択治療時の48%まで比較的維持されていた。・2剤または3剤の抗うつ薬併用は、一定程度認められた(範囲:24~26%)。・抗うつ薬の使用量は、治療抵抗性うつ病の第1選択治療時の7%から第3選択治療時の17%へ増加が認められた。・最低限の非薬理学的介入が行われていた。 著者らは「現在の臨床ガイドラインでは、段階的アプローチが推奨されるにもかかわらず、同様の作用機序と有効性を有する多くの抗うつ薬が、繰り返し使用されていた。このような患者に対し、治療アウトカムを改善する新たな治療法へのアンメットニーズの高さが示唆される」としている。

834.

抗精神病薬の多剤併用と有害事象リスク

 抗精神病薬の多剤併用療法は、精神科入院患者において高頻度に認められており、このことが薬物有害事象のリスク因子であると考えられる。しかし、この関連性は、十分に調査されていない。京都府立医科大学の綾仁 信貴氏らは、日本の精神科入院患者における抗精神病薬の多剤併用と薬物有害事象との関係を明らかにするため、検討を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2021年7・8月号の報告。 薬物有害事象に関する多施設コホート研究Japan Adverse Drug Events study(JADE study)より、精神科入院患者448例(累積入院日数:2万2,733患者日)を対象とし、レトロスペクティブに検討を行った。多剤併用(2剤以上の抗精神病薬の使用)と薬物有害事象との関連を調査した。また、抗精神病薬による薬物有害事象の潜在的なリスク因子との関係を評価した。 主な結果は以下のとおり。・448例のうち、抗精神病薬の多剤併用療法が行われていた患者は106例(24%)であった。・最も使用されていた薬剤はリスペリドン(442例中109例、25%)であり、他の抗精神病薬との併用薬として最も使用されていた薬剤はレボメプロマジン(32例中29例、91%)であった。・多剤併用患者における薬物有害事象の発生数の中央値は、それ以外の患者よりも有意に高かった(p=0.001)。・抗精神病薬の多剤併用は、初回(調整ハザード比:1.54、95%CI:1.15~2.04)および2回目(調整ハザード比:1.99、95%CI:1.40~2.79)の有害事象発生のリスク因子であった。 著者らは「抗精神病薬の多剤併用は、1つまたは複数の有害事象発生のリスク因子であった。抗精神病薬の併用は、控えめかつ最小限にとどめる必要がある」としている。

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慢性片頭痛および併存するうつ病に対するフレマネズマブの効果

 カルシトニン遺伝子関連ペプチドを標的とした完全ヒトモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、成人の片頭痛に対する予防薬として承認されている。慢性片頭痛患者は、うつ病の合併率が高いといわれている。米国・アルバート・アインシュタイン医科大学のRichard B. Lipton氏らは、中等度~重度のうつ病を伴う慢性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性を評価した。Headache誌2021年4月号の報告。 12週間の第III相HALO試験を実施した。慢性片頭痛患者をフレマネズマブ四半期ごと投与群(675mg/プラセボ/プラセボ)、フレマネズマブ月1回投与群(675mg/225mg/225mg)、プラセボ群にランダムに割り付けた。事後分析では、中等度~重度のうつ病(ベースライン時のPHQ-9合計スコア10以上)を伴う片頭痛患者に対するフレマネズマブ投与による効果を評価した。評価項目は、1ヵ月当たりの中等度~重度の頭痛日数、1ヵ月当たりの片頭痛日数、Patient Global Impression of Change(PGIC)スコア、6-item Headache Impact Test(HIT-6)スコア、抑うつ症状とした。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に中等度~重度のうつ病を伴う片頭痛患者は、19.5%(1,121例中219例)であった。・フレマネズマブ投与は、プラセボと比較し、1ヵ月当たりの中等度~重度の頭痛日数の有意な減少との関連が認められた(各々、p<0.001)。 ●フレマネズマブ四半期ごと投与の最小二乗平均変化:-5.3±0.77 ●フレマネズマブ月1回投与の最小二乗平均変化:-5.5±0.72 ●プラセボの最小二乗平均変化:-2.2±0.81・フレマネズマブ投与は、プラセボと比較し、中等度~重度の頭痛日数が50%以上減少した患者の割合が高かった(各々、p<0.001)。 ●フレマネズマブ四半期ごと投与:39.7%(78例中31例) ●フレマネズマブ月1回投与:40.6%(96例中39例) ●プラセボ:13.4%(67例中9例)・フレマネズマブ投与は、プラセボと比較し、PGICおよびHIT-6スコアの改善が認められた。 著者らは「フレマネズマブは、慢性片頭痛の予防治療において有効性が示され、併発するうつ病の影響を軽減させることが示唆された」としている。

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小児および青年期のうつ病に対する新規抗うつ薬~ネットワークメタ解析

 小児および青年期のうつ病は、教育や仕事の成果、対人関係、身体的健康、メンタルヘルス、ウェルビーイングなどに重大な影響を及ぼす。また、うつ病は自殺念慮、自殺企図、自殺との関連がある。中等度~重度のうつ病には抗うつ薬が使用されるが、現在さまざまな新規抗うつ薬が使用されている。ニュージーランド・オークランド大学のSarah E. Hetrick氏らは、抑うつ症状、機能、自殺に関連するアウトカム、有害事象の観点から、小児および青年期のうつ病に対する新規抗うつ薬の有効性および安全性を比較するため、ネットワークメタ解析を実施し、年齢、治療期間、ベースライン時の重症度、製薬業界からの資金提供が臨床医によるうつ病評価(CDRS-R)および自殺関連アウトカムに及ぼす影響を調査した。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2021年5月24日号の報告。 2020年3月までに公表された文献をCochrane Common Mental Disorders Specialised Register、Cochrane Library、Ovid Embase、MEDLINE、PsycINFOより検索した。うつ病と診断された6~18歳の男女を対象に、新規抗うつ薬の有効性を他剤またはプラセボと比較したランダム化比較試験を含めた。新規抗うつ薬には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリンドパミン阻害薬、四環系抗うつ薬を含めた。独立した2人のレビュアーが、タイトル、アブストラクト、フルテキストよりスクリーニングし、データ抽出およびバイアスリスク評価を行った。評価アウトカムは、うつ症状の重症度(臨床医による評価)、うつ症状の治療反応または寛解、うつ症状の重症度(自己評価)、機能、自殺関連アウトカム、全体的な有害事象とした。2値データはオッズ比(OR)、連続データは平均差(MD)として分析した。ランダム効果ネットワークメタ解析は、多変量メタ解析を用いて、頻度論的フレームワークで実行した。エビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-analysis)を用いて評価した。結果の解釈や説明を標準化するため、informative statementsを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析には、26件の研究を含めた。・2つの主要アウトカム(臨床医面談によるうつ病の臨床診断、自殺)のデータは十分ではなかったため、副次的アウトカムのみで結果は構成された。・ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、CDRS-Rスケールにおけるうつ症状の「小さく、重要でない」軽減(範囲:17~113)が認められた。 【エビデンスの確実性:高】 ●パロキセチン(MD:-1.43、95%CI:-3.90~1.04) ●vilazodone(MD:-0.84、95%CI:-3.03~1.35) ●desvenlafaxine(MD:-0.07、95%CI:-3.51~3.36) 【エビデンスの確実性:中】 ●セルトラリン(MD:-3.51、95%CI:-6.99~-0.04) ●fluoxetine(MD:-2.84、95%CI:-4.12~-1.56) ●エスシタロプラム(MD:-2.62、95%CI:-5.29~0.04) 【エビデンスの確実性:低】 ●デュロキセチン(MD:-2.70、95%CI:-5.03~-0.37) ●ボルチオキセチン(MD:0.60、95%CI:-2.52~3.72) 【エビデンスの確実性:非常に低】 ●その他の抗うつ薬・うつ症状の軽減効果において、ほとんどの抗うつ薬の間に「小さく、重要でない」違いが認められた(エビデンスの確実性:中~高)。他のアウトカムにおいても同様であった。・ほとんどの研究において、自傷行為または自殺リスクは、研究の除外基準であった。・含まれているほとんどの研究において、自殺関連アウトカムの割合は低く、すべての比較で95%信頼区間は広くなっていた。・自殺関連アウトカムに対する効果については、プラセボと比較し、エビデンスの確実性は非常に低かった。 ●ミルタザピン(OR:0.50、95%CI:0.03~8.04) ●デュロキセチン(OR:1.15、95%CI:0.72~1.82) ●vilazodone(OR:1.01、95%CI:0.68~1.48)●desvenlafaxine(OR:0.94、95%CI:0.59~1.52)●citalopram(OR:1.72、95%CI:0.76~3.87)●ボルチオキセチン(OR:1.58、95%CI:0.29~8.60)・エスシタロプラム(OR:0.89、95%CI:0.43~1.84)は、プラセボと比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」低下させる可能性が示唆された(エビデンスの確実性:低)。・以下の薬剤は、プラセボと比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」増加させる可能性が示唆された。 ●fluoxetine(OR:1.27、95%CI:0.87~1.86) ●パロキセチン(OR:1.81、95%CI:0.85~3.86) ●セルトラリン(OR:3.03、95%CI:0.60~15.22) ●ベンラファキシン(OR:13.84、95%CI:1.79~106.90)・ベンラファキシンは、desvenlafaxine(OR:0.07、95%CI:0.01~0.56)およびエスシタロプラム(OR:0.06、95%CI:0.01~0.56)と比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」増加させる可能性が示唆された(エビデンスの確実性:中)。・抗うつ薬間のその他の比較においては、エビデンスの確実性は非常に低かった。・全体として、ランダム化比較試験の方法論的欠如により、新規抗うつ薬の有効性および安全性に関する調査結果を解釈することは困難であった。 著者らは「ほとんどの新規抗うつ薬は、プラセボと比較し、うつ症状を軽減する可能性が示唆された。また、抗うつ薬間でのわずかな違いも認められた。しかし、本結果は、抗うつ薬の平均的な効果を反映しているため、うつ病は不均一な状態であることを考慮すると、患者ごとに治療反応が大きく異なる可能性がある。したがって、ガイドラインやその他の推奨事項を作成する際、新規抗うつ薬の使用が、状況により一部の患者に正当化される可能性があるかを検討する必要がある」としている。 さらに「自殺リスクを有する可能性のある小児および青年は、試験から除外されるため、その効果については明らかにならなかった。小児および青年への抗うつ薬使用を検討する際には、患者およびその家族と相談する必要がある。そして、新規抗うつ薬間の効果や自殺関連アウトカムの違いを考えると、治療効果および自殺関連アウトカムを注意深くモニタリングすることが重要であろう。さらに、ガイドラインの推奨事項に従い、心理療法、とくに認知行動療法を考慮することが求められる」としている。

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抗精神病薬で治療された統合失調症患者における非アルコール性脂肪性肝疾患リスク

 統合失調症患者のメタボリックシンドローム有病率は、一般集団よりも高いことはよく知られているが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率については、あまり知られていない。下総精神医療センターの是木 明宏氏らは、抗精神病薬で治療された統合失調症患者におけるNAFLDリスクについて、調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2021年6月4日号の報告。 腹部エコー検査を実施した統合失調症および統合失調感情障害患者253例の医療記録を分析した。 主な結果は以下のとおり。・腹部エコー検査でNAFLDが認められた患者は、108例(42.7%)であった。・これらの患者のうち、NAFLDの線維化の徴候が認められた患者は、13例(12.0%)であった。・年齢分布に関しては、NAFLDは若年患者(とくに女性患者)において多かった。・統合失調症患者のNAFLDと有意な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●BMI(p<0.001) ●メタボリックシンドロームリスクを伴う抗精神病薬の総投与量(p=0.049) ●高プロラクチン血症リスクを伴う抗精神病薬の総投与量(p=0.041)・探索的解析では、NAFLDの線維化の徴候は、女性患者においてより関連性が高いことが示唆された(p=0.023)。・この若年女性患者でみられるリスクは、一般集団と比較し、統合失調症患者に特有である可能性が示唆された。

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東洋人のうつ病関連因子~日本での調査

 地域コミュニティにおけるうつ病に対する効果的な対策を検討するうえで、国や文化圏において、うつ病に関連する個人的および社会経済的要因を包括的に特定する必要がある。しかし、日本および東洋諸国の中年住民を対象とした研究は、十分ではない。慶應義塾大学の吹田 晋氏らは、東洋の日本における中年住民のうつ病に関連する要因を特定するため、横断研究を行った。Medicine誌2021年5月14日号の報告。 西日本の地方自治体で生活する40~59歳のすべての地域住民を対象に、アンケート調査を実施した。アンケートには、人口統計学的特徴、心理的要因、健康関連行動、社会経済的要因に関する項目を含めた。まず、うつ病と各因子との関連を分析するため、カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定を行った。次に、うつ病と関連因子の包括的な関連を特定するため、ロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象者数は362人であった(平均年齢:51.5歳、男性:148人)。・カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定では、多くの心理的要因、健康関連行動、社会経済的要因がうつ病と有意に関連していることが示唆された。・ロジスティック回帰分析により、うつ病と有意な関連が認められた因子は以下のとおりであった。 ●男性 ●首尾一貫感覚(sense of coherence)の低さ ●認知ストレスレベルの高さ ●援助要請行動(help-seeking behavior)の少なさ ●睡眠の質の悪さ ●趣味の欠如・Nagelkerke R2は、51%であった。 著者らは「多変量解析により、日本における中年期のうつ病は、主に個人の行動的および心理的要因と関連していることが明らかとなった。この結果は、西洋諸国での調査結果と一致している」とし「本結果は、個人の行動的および心理的要因に焦点を当てた東洋文化におけるうつ病予防対策の促進や評価に貢献できるであろう」としている。

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統合失調症の再発に対する抗精神病薬の減量リスク~メタ解析

 統合失調症の維持療法において抗精神病薬の減量は、副作用発現を最小限にとどめるという点で望ましい方法であると考えられるが、この戦略に対するエビデンスは十分ではない。デンマーク・University of Southern DenmarkのMikkel Hojlund氏らは、抗精神病薬の標準用量での治療と減量によるリスクとベネフィットの比較を行った。The Lancet. Psychiatry誌2021年6月号の報告。 2020年6月17日までの成人の統合失調症または統合失調感情障害患者を対象とした24週以上のランダム化比較試験をEmbase、Medline、PsycINFO、Cochrane Libraryより検索した。ベースライン時に臨床的に安定している患者および同一抗精神病薬を2回以上投与し比較した研究を含めた。初回エピソードまたは治療抵抗性統合失調症を対象とした試験は除外した。標準用量は、国際コンセンサス研究によって推奨されている治療用量の下限よりも高用量と定義した。低用量(標準用量の下限の50~99%)および超低用量(標準用量の下限の50%未満)と標準用量との比較を行った。患者数、治療、性別、年齢、イベント数、精神病理学的スコアの変化に関する文献データは、2人以上の著者により独立して抽出した。不足しているデータを収集するため、研究者またはスポンサーに電子メールで連絡した。共通の主要アウトカムは、再発およびすべての原因による中止とした。研究レベルのデータは、ランダム効果モデルを用いてメタ解析し、二値データではリスク比(RR)、連続データではHedges' gを算出した。プロトコールは、OSF registriesに登録した。 主な結果は以下のとおり。・参考文献は、データベース検索で7,853件、関連研究のマニュアルレビューより1件を特定した。・5,744件のアブストラクトの適格性を評価し、そのうち101件をフルテキストレビューにより評価した。・適格基準を満たした22件(24試験、3,282例)をメタ解析に含めた。・対象患者の年齢中央値は38歳(四分位範囲:36~40歳)、男性患者2,166例(65.9%)、女性患者1,116例(34.0%)であった。・標準用量での治療と比較し、低用量では、再発リスクが44%上昇し(16試験、1,920例、RR:1.44、95%CI:1.10~1.87、p=0.0076、I2=46%)、すべての原因による中止リスクが12%上昇した(16試験、1,932例、RR:1.12、95%CI:1.03~1.22、p=0.0085、I2=0%)。・標準用量での治療と比較し、超低用量では、再発リスクが72%上昇し(13試験、2,058例、RR:1.72、95%CI:1.29~2.29、p=0.0002、I2=70%)、すべての原因による中止リスクが31%上昇した(11試験、1,866例、RR:1.31、95%CI:1.11~1.54、p=0.0011、I2=63%)。・低用量での治療と比較し、超低用量では、再発リスク(5試験、686例、RR:1.31、95%CI:0.96~1.79、p=0.092、I2=51%)およびすべての原因による中止(5試験、686例、RR:1.11、95%CI:0.95~1.30、p=0.18、I2=43%)に有意な差は認められなかった。・二重盲検試験と非盲検試験、第1世代抗精神病薬と第2世代抗精神病薬、経口抗精神病薬と長時間作用型注射用抗精神病薬を比較したサブグループ解析においても、全体的な結果は同様であった。・ほとんどの研究において、主に公的に入手可能な研究登録がないため、バイアスリスクはsome concerns(3段階の2)と分類された。 著者らは「複数エピソードの統合失調症患者の維持療法における抗精神病薬の投与量は、急性期で推奨されている標準用量の範囲を下回るべきではない。このような患者における投与量の減量は、再発やすべての原因による中止リスクを高める可能性がある」としている。

840.

COVID-19に対する政府対応の質がメンタルヘルスに及ぼす影響

 COVID-19のパンデミックは、公衆衛生、経済、メンタルヘルスに深刻なダメージを与えている。カナダ・トロント大学のYena Lee氏らは、ウイルス感染を減少させるための政府の厳格な措置をタイムリーに実施することが、メンタルヘルスにベネフィットをもたらすと仮定し、抑うつ症状発現率の減少に影響するかを調査するためシステマティックレビューを行った。Journal of Affective Disorders誌2021年7月1日号の報告。 政府が実施したCOVID-19に対する対応の厳格さおよびタイムリーさの違いがうつ症状の発症をどの程度緩和するかを調査するため、33ヵ国の研究(114件、64万37例)のシステマティックレビューを実施した。高所得国18ヵ国、上位中所得国9ヵ国、下位中所得国6ヵ国からのデータが含まれた。政府が実施したCOVID-19に対する対応の厳格さおよびタイムリーさの評価には、Oxford COVID-19 Government Response("Stringency")Indexを用いた。うつ病の定義は、PHQ-9スコア10以上またはPHQ-2スコア3以上とした。 主な結果は以下のとおり。・臨床的に有意な抑うつ症状を有する参加者の割合は、21.39%(95%CI:19.37~23.47)であった。・臨床的に有意な抑うつ症状の有症率は、政府が厳格な政策をタイムリーに実施した国で有意に低かった。・政府の対応によるこの効果は、調査開始時のCOVID-19発生率、ヘルスケアへのアクセスと質の指標、研究にCOVID-19患者を含めた場合でも、有意なままであった。・本結果に影響を与える可能性のある因子として、ロックダウン期間の違い、研究参加者およびアウトカム評価者の盲検化の欠如、抑うつ症状の重症度に対するレトロスペクティブ評価などが考えられる。 著者らは「COVID-19の蔓延を封じ込めるために厳格な対応を講じた政府は、国民の身体的な健康だけでなく、メンタルヘルスに対してもベネフィットをもたらした」としている。

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