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安静時の島皮質活性によるうつ病と双極性障害の鑑別~メタ解析

 うつ病エピソードが認められる双極性障害とうつ病の両疾患は、鑑別診断および治療選択において問題となることがある。双極性障害では、躁病エピソードよりもうつ病エピソードが頻繁に認められ、とくに診断時にはうつ病エピソードが主であることが診断を難しくする要因であり、やはり唯一信頼できる鑑別マーカーは躁病歴を把握することであると考えられる。安静時fMRIは、非侵襲性でタスクが少なく、忍容性が高い方法であり、自発的な神経活動から得られる診断マーカーを検出できる可能性がある。双極性障害とうつ病の鑑別に焦点を当てたこれまでの安静時fMRIの研究では、サンプル検出力が低く、サンプルの不均一性や分析方法の多様化により、一貫した結果が得られていない。チェコ・カレル大学のMartin Pastrnak氏らは、賦活尤度推定(activation likelihood estimation)メタ解析を用いて、双極性障害とうつ病の安静時活動の違いについて調査を行った。Scientific Reports誌2021年8月20日号の報告。 2000年1月~2020年8月に公表された、うつ病患者とうつ病エピソードの双極性障害患者を比較した全脳安静時fMRI研究を、各種データベース(PubMed、Web of Science、Scopus、Google Scholar)より検索した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者234例、うつ病患者296例を含む10件の研究が分析に含まれた。・メタ解析によると、双極性障害患者と比較し、うつ病患者では左島皮質と隣接領域での活動増加が認められた。 著者らは「島皮質は、安静時の神経活動パターンと関連しており、双極性障害とうつ病を鑑別するバイオマーカーとして利用できる可能性が示唆された」としている。

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ADHD児の睡眠問題と母親のメンタルヘルスとの関連

 小児の注意欠如多動症(ADHD)では、一般の小児と比較し、睡眠障害が多く認められる。また、ADHD児の両親は、メンタルヘルスに問題を抱える割合が高いことが知られている。この関連は横断研究では報告されているものの、縦断研究は実施されていなかった。オーストラリア・ディーキン大学のChristina A. Martin氏らは、ADHD児の睡眠障害と母親のメンタルヘルス問題(全体的なメンタルヘルス、うつ病、不安、ストレス)との潜在的な双方向の関連を12ヵ月間調査した。Journal of Attention Disorders誌2021年9月号の報告。 5~13歳のADHD児379例の母親に対し、子供の睡眠状態(子供の睡眠習慣質問票)および自分自身のメンタルヘルス(うつ病不安ストレススケール)について、12ヵ月間で3度(ベースライン、6ヵ月、12ヵ月)の調査を行った。子供の年齢、性別、ADHD症状の重症度、ADHD治療薬の使用、併存疾患(自閉スペクトラム症、内在化障害、外在化障害)、母親の年齢、社会経済的状況でコントロールし、自己回帰クロスラグパネル分析を用いてデータ分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・子供の睡眠障害と母親のメンタルヘルス問題は、12ヵ月間にわたり非常に安定して認められた。・長期的な関連は明らかであり、6ヵ月時の子供の睡眠障害は、12ヵ月時の母親の全体的なメンタルヘルスおよび不安の予測因子であった。・しかし、6ヵ月時の子供の睡眠障害は、12ヵ月時の母親のうつ病やストレスを予測しなかった。・母親のメンタルヘルス問題が、調査期間を通じて子供の睡眠障害を予測することは、ほとんどなかった。 著者らは「ADHD児の睡眠問題が、その後の母親のメンタルヘルス問題に影響を及ぼすことが示唆された。そのため、子供の睡眠を改善するための介入は、時間とともに母親のメンタルヘルスの改善につながる可能性があると考えられる。そして、睡眠障害を有する子供を持つ母親では、潜在的なメンタルヘルス問題を抱えている可能性があることを認識する必要がある」としている。

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統合失調症患者の早期再発に関連する要因

 統合失調症は、再発を繰り返して進行する慢性的な精神疾患である。再発リスクに影響を及ぼす可能性のある多くの因子を特定することは、再発を予防するうえで重要である。トルコ・Gulhane Training and Research HospitalのIbrahim Gundogmus氏らは、統合失調症患者の早期再発率とそれに関連する可能性のあるリスク因子を特定するため、検討を行った。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2021年8月19日号の報告。 統合失調症患者308例を対象に、自然主義的観察デザインのプロスペクティブ研究を実施した。早期再発のカットオフ値は、1年と定義した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は37.38±12.28歳、男性の割合は66.6%(205例)であった。・早期再発率は、38.3%であった。・早期再発の独立したリスク因子は、以下のとおりであった。 ●35歳未満(ハザード比[HR]:2.313、95%信頼区間[CI]:1.518~3.526、p<0.001) ●向精神薬の使用(HR:2.200、95%CI:1.407~3.440、p=0.001) ●自殺企図の既往歴(HR:1.565、95%CI:1.028~2.384、p=0.037) ●治療アドヒアランス不良(HR:3.102、95%CI:1.358~7.086、p=0.007) ●エピソード数(HR:1.088、95%CI:1.043~1.134) ●臨床全般印象評価尺度(CGI)の有害事象スコア(HR:1.826、95%CI:1.357~2.458、p<0.001)・早期再発リスクの減少と関連が認められた因子は、以下のとおりであった。●長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用(HR:0.534、95%CI:0.351~0.812、p=0.003)●非定型抗精神病薬の併用(HR:0.326、95%CI:0.131~0.807、p=0.015) 著者らは「統合失調症の早期再発に対する変更可能な予測因子として、治療アドヒアランス不良、向精神薬の使用、LAI抗精神病薬の未使用、非定型抗精神病薬を併用しない定型抗精神病薬の使用が挙げられる」としている。

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ポルノ依存症と勃起不全、早漏、性的満足度との関連

 男性がポルノ関連情報に触れる機会は、過去10年間で大きく変化しており、インターネットポルノ(IP)依存症やそれに関連する性機能障害の有症率は増加している。DSM-Vのコンセンサスや正式な認識が欠如していることにより、IP依存症の定義は明らかとなっていない。現在得られているIP依存症や性機能障害に関連するエビデンスの多くは、消費者、ケーススタディ、定性研究からの情報に限られている。経験的な測定が用いられることにより、研究者は、性的反応に関するさまざまなアウトカムを発見したが、これらのデータは、IPの利用と自己認識しているIP依存症との混同、性機能障害の臨床診断による性的反応の正常な変動と関連している可能性がある。そのため、IPの利用や自己認識しているIP依存症の両方が男性の性機能に及ぼす影響を評価するためには、さらなる経験的な解明が求められる。オーストラリア・マッコーリー大学のGeorgina Whelan氏らは、IP依存症と勃起不全、早漏、性的満足度との関連について調査を行った。The Journal of Sexual Medicine誌オンライン版2021年8月13日号の報告。 この研究の目的として、次の3つについて評価を行った。(1)IP単独利用と勃起不全、早漏、性的満足度との関連(2)自己認識しているIP依存症と勃起不全、早漏、性的満足度との関連(3)IPの利用または自己認識しているIP依存症が男性の勃起不全、早漏、性的満足度の予測因子であるか 米国のオンライン掲示板RedditのIPサブグループが行ったオンライン調査に参加した18~44歳の異性愛者男性942人を対象に、相関分析および回帰分析を実施した。主要アウトカムの指標として、Cyber-Pornography Use Inventory(IPの利用尺度)、International Index Erectile Dysfunction(勃起不全の尺度)、The Checklist for Early Ejaculation Symptoms(早漏の尺度)、New Sexual Satisfaction Scale(性的満足度の尺度)、Depression Anxiety Stress Scale-21(うつ病、不安、ストレスの尺度)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・IPの利用と勃起不全、早漏、性的満足度との関連は認められなかった。・自己認識しているIP依存症と勃起不全、早漏、性的満足度との間には、小~中程度の相関が認められた。・自己認識しているIP依存症は、勃起不全、早漏、個人の性的不満の増加に対する独立した予測因子であることが示唆された。・予想に反して、自己認識しているIP依存症は、性的パートナーに対する性的不満を予測しなかった。 著者らは「IPの利用自体が性機能障害を予測するわけではなく、IP依存の増加に対する自己認識が、性的にネガティブな影響と関連していることが示唆された。そのため、IPの利用に対する主観的な解釈が、男性の性的問題の原因であると考えられる。臨床医は、自己認識しているIP依存症が、性機能障害の原因である可能性を考慮する必要がある」としている。

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便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る【Dr.山中の攻める!問診3step】第6回

第6回 便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る―Key Point―大腸がんを疑うアラームサインに注意しよう薬剤が便秘の原因となっていることは多い下剤を処方する際、「酸化マグネシウム」は腎機能低下時に高マグネシウム血症を起こすので要注意!症例:76歳男性主訴)排便困難現病歴)12日前から便が突然出なくなった。4日前に近医で浣腸をしてもらったが排便なし。酸化マグネシウムと大腸刺激性下剤の処方を受けたが、やはり排便がないため当院を受診した。嘔吐はあるが腹痛はない。既往歴)老人性難聴薬剤歴)定期内服薬なし生活歴)たばこ:10本/日 x 55年間、酒:1合/日身体所見)意識清明、体温36.7℃、血圧120/50mmHg、心拍数92/分、SpO2:95%[室内気]直腸診を施行したところ、肛門から8cm、12時方向にカリフラワー様の約4×4cmの腫瘤を触知し易出血性であった。結局、直腸癌と診断され人工肛門増設のため緊急手術となった。大腸イレウスは珍しいが、穿孔すれば腹膜炎となるので緊急処置が必要となることも念頭に入れておくべき。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!大腸がんを疑うアラームサイン1) ―大腸がんの可能性はないのか鉄欠乏性貧血体重減少便潜血陽性血便便の狭小化高齢者の急性便秘大腸がんの家族歴50歳以上で大腸内視鏡検査を受けたことがない【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】二次性の便秘を考える薬剤は二次性便秘の最大の原因である。薬剤歴の正確な聴取が大切である便秘を起こす薬剤2)3)はこちら降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬)、麻薬抗コリン薬(ブチルスコポラミン、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬)抗ヒスタミン薬、NSAIDs、鉄剤高齢者の鉄欠乏性貧血は消化管の悪性腫瘍をまず考える便の狭小化+腹痛+液状便はS状結腸から直腸にかけての高度狭窄が示唆される症状である。大腸内視鏡の前処置で腸閉塞や腸管穿孔をきたす可能性があるため、腹部レントゲン検査と腹部CT検査を検査前にオーダーする甲状腺機能低下症、自律神経障害を起こす糖尿病やパーキンソン症候群、低カリウム血症、高カルシウム血症、うつ病、妊娠は便秘の原因となる【STEP3】治療1)を検討しよう毎日排便がないのは異常であるというイメージが TVコマーシャルなどによって作られているが、週に3回または1日3回の排便は正常である週3回以上排便があれば、病的ではないことを伝える。水分と食物繊維を十分にとる。朝食後15分間はトイレに座り、力まずに排便するよう指導する。改善がなければ、ポリエチレングリコール(商品名:モビコール)または酸化マグネシウムを処方する。酸化マグネシウムは腎機能低下時に高マグネシウム血症(嘔気・嘔吐、血圧低下、徐脈、筋力低下、意識障害)を起こす。効果が不十分ならルビプロストン(商品名:アミティーザ)を少量から検討する。大腸刺激性薬剤(センノシド、ピコスルファート)は習慣性や依存性が強いので頓用で用いる<参考文献・資料>1)山中 克郎企画. 総合診療 ヤブ化を防ぐ!総合診療基本のき. 医学書院.2019. p.1089-1091.(中野弘康 便秘)2)John P, et al. MKSAP18 Gastroenterology and Hepatology. 2018 .p.35-38.3)日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編. 慢性便秘症診療ガイドライン. 2017.

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安定期統合失調症患者の再発予防に対する適切な抗精神病薬投与量~メタ解析

 統合失調症の再発予防に対し、どの程度の抗精神病薬の投与量が必要かは明らかになっていない。ドイツ・ミュンヘン工科大学のStefan Leucht氏らは、この疑問を解決するため、ランダム化臨床試験のメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2021年8月18日号の報告。 Cochrane Schizophrenia Group's Study-Based Register of Trials(2020年3月9日)、PubMed(2021年1月1日)、過去のレビューを通じて該当研究を特定した。追加情報は、筆頭著者および/または製薬会社に問い合わせ、収集した。2人の独立したレビュアーにより、安定期統合失調症患者の再発予防に対し、固定用量の第2世代抗精神病薬、ハロペリドール、フルフェナジンを比較したランダム化臨床試験を抽出した。PRISMAガイドラインの優先報告項目に従って重複するすべてのパラメータを抽出し、頻度論的(frequentist)用量反応変量効果メタ解析を実施した。主要評価項目は、研究で定義された再発とし、再入院、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)または簡易精神症状評価尺度(BPRS)の合計スコアのベースラインからの減少、すべての原因による中止、有害事象による脱落についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・26件の研究(4,776例)より得られた、72種類の用量群に関するエビデンスを分析した。・有用性については、用量反応曲線は双曲線形状であり、リスペリドン換算5mg/日まで再発率の急激な低下が認められたが(相対再発リスク:0.43[95%CI:0.31~0.57]、PANSS合計スコアの標準化平均差:-0.55[95%CI:-0.68~-0.41])、その後は平板化した。・有害事象による脱落については、対照的に5mg/日を超えるにつれ増加が認められた(5mg/日の相対リスク:1.38[95%CI:0.87~2.55]、15mg/日の相対リスク:2.68[95%CI:1.49~4.62])。・寛解患者におけるサブグループ解析では、約2.5mg/日で早期に安定状態に達していた。 著者らは「安定期統合失調症患者に対する抗精神病薬投与では、リスペリドン換算5mg/日超で再発予防にベネフィットがもたらされる一方、用量を増やし過ぎると有害事象の増加につながる可能性がある。寛解期の患者または強力な第1世代抗精神病薬で治療している患者においては、より低用量の2.5mg/日で十分である可能性が示唆されたが、低用量にし過ぎると有効性の減弱につながる可能性もあり注意が必要である。また、本結果はあくまで観察結果の平均値であり、代謝スピード、年齢、罹病期間、併存疾患、薬物相互作用などさまざまな要因を考慮した用量調節が必要である」としている。

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分娩様式と産後うつ病との関連~JECS研究

 産後うつ病は、母親の自殺などを含む健康への悪影響と関連している。分娩様式は、産後うつ病のリスク因子といわれているが、この関連を調査した大規模コホート研究は、あまり行われていなかった。大阪大学の馬場 幸子氏らは、出産1ヵ月後および6ヵ月後における分娩様式と産後うつ病リスクとの関連を調査した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年7月31日号の報告。帝王切開は1ヵ月後の産後うつ病リスクとわずかな関連が認められた 単生児出産の母親8万9,954人を対象とした全国調査のデータを用いて、出産方法と産後うつ病との関連を調査した。産後うつ病の評価は、出産1ヵ月後および6ヵ月後にエジンバラ産後うつ病評価尺度(13点以上)を用いて測定した。産後うつ病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、出産前の身体的、社会経済的、精神的要因で調整した後、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 出産方法と産後うつ病との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・産後うつ病の発症率は、出産1ヵ月後で3.7%、6ヵ月後で2.8%であった。・帝王切開は、自然分娩と比較し、1ヵ月後の産後うつ病リスクとわずかな関連が認められたが(調整OR:1.10、95%CI:1.00~1.21)、6ヵ月後の産後うつ病リスクとの関連は認められなかった(調整OR:1.01、95%CI:0.90~1.13)。・1ヵ月後の産後うつ病リスクとの関連は、出産前に心理的苦痛を有する女性において、より顕著であった(調整OR:1.15、95%CI:1.03~1.28)。・乳児に対する授乳方法で調整した後、これらの関連性が弱まることが示唆された。 著者らは「出産前に心理的苦痛が認められ、帝王切開により出産した女性では、産後うつ病のモニタリングを強化する必要がある」としている。

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うつ病リスクに対するシフト勤務の影響

 シフト勤務は、多くの健康問題、とくにメンタルヘルスの問題と関連していることが報告されている。さまざまな人口統計、ライフスタイル、仕事に関連する要因を考慮し、シフト勤務と抑うつ症状との関連を明らかにするため、ドイツ・ルール大学ボーフムのThomas Behrens氏らは、プロスペクティブHeinz Nixdorf Recall Studyを実施した。Chronobiology International誌オンライン版2021年8月12日号の報告。 抑うつ症状は、うつ病自己評価尺度(CES-D)、Patient Health Questionnaire(PHQ)、抗うつ薬の処方状況により評価した。CES-Dのカットオフ値は、高度と評価される17点以上、PHQのカットオフ値は、9点以上とした。シフト勤務の定義は、7:00~18:00以外の勤務時間を含むものとし、夜間勤務の定義は、0:00~5:00の勤務時間を含むものとした。相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を推定するため、フォローアップ時の年齢、日周指向性(クロノタイプ)、世帯収入、教育で調整し、ロバスト標準誤差を有するポアソン回帰分析を用いて検討を行った。性別により層別化し、分析した。結果のロバスト性を評価するため、さまざまな感度分析と層別分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、45~73歳のうつ病歴のない就労者1,500人を調査した。・フォローアップ期間が5年間であった就労者は896人、10年間であった就労者は486人であった。・ほとんどの分析において、統計学的に有意なレベルに達しなかったが、PHQでの評価によると、夜間勤務の女性において抑うつ症状リスクの増加傾向が認められ(RR:1.78、95%CI:0.71~4.45)、とくに20年以上の夜間勤務の場合、この傾向がより顕著であった(RR:2.70、95%CI:0.48~15.4)。・年齢別に層別化した場合、60歳以上の女性では、リスクの増加が認められなかった。・層別化分析では、オーバーコミットメントが女性の抑うつ症状リスクの高さと関連していることが示唆された([CES-D]RR:4.59、95%CI:0.95~22.2、[PHQ]RR:12.7、95%CI:2.89~56.1)。・感度分析を目的としたサブグループの除外により、女性での関連性は上昇したが、男性のシフト勤務就労者におけるうつ病リスクとの関連は、ほとんど消失していた。 著者らは「女性のシフト勤務就労者では、うつ病リスクに対する悪影響が示唆された。男性では、この関連性が一貫して増加することは確認されなかった」としている。

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統合失調症患者におけるCOVID-19罹患率と死亡リスクへの影響

 精神疾患患者は、身体的健康アウトカムが不良であることが知られており、とくに統合失調症スペクトラム障害患者では、大きな問題となっている。最近の研究において、統合失調症患者では、とくにCOVID-19による影響が大きいともいわれている。ギリシャ・テッサリー大学のSokratis E. Karaoulanis氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者におけるCOVID-19のアウトカム不良リスクに関して、システマティックレビューを行った。Psychiatriki誌オンライン版2021年8月5日号の報告。 統合失調症スペクトラム障害患者におけるCOVID-19の罹患および/または死亡率を調査したすべての研究を特定するため、PRISMAガイドラインに従ってPubMed、PsycINFO、Scopusのデータベースを用いて、システマティックレビューを実施した。スクリーニングプロセス実施後、選択基準を満たした研究は7件であった。これらの研究結果は、オッズ比または調整済みオッズ比を用いて報告されていた。 主な結果は以下のとおり。・全体的な結果として、統合失調症患者では中程度ではあるが、より高い感染率に対する統計学的に有意な影響およびより高い死亡率に対する強力な統計学的に有意な影響が認められた。・統合失調症患者は、一般集団と比較し、COVID-19への罹患リスクが高く、死亡率が有意に高いことが示唆された。・しかし、集中治療室の利用頻度など他のアウトカムについては、矛盾した結果が認められた。 著者らは「統合失調症患者は、COVID-19への罹患リスクが高く、死亡率が上昇する可能性があるものの、集中治療室の利用頻度はそれほど高くないことが示唆された。統合失調症患者に対するCOVID-19ワクチン接種プログラムの優先順位の見直しや迅速な集中治療室の利用などヘルスケアへのアクセスを改善する必要がある」としている。

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麻酔を用いた出産と産後うつ病との関連~JECS研究

 産後うつ病は、出産後の女性が経験する最も一般的な精神疾患の1つであり、多くは1年以内に発症する。名古屋市立大学の鈴森 伸宏氏らは、日本において麻酔を用いた分娩が産後うつ病リスクの減少に影響を及ぼすかについて、検討を行った。BMC Pregnancy and Childbirth誌2021年7月23日号の報告。 麻酔を用いた分娩には、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下硬膜外麻酔、傍頸管ブロックを含めた。日本におけるプロスペクティブコホート研究であるJECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に登録された日本全国15地域の胎児記録データ10万4,065件を用いて検討を行った。麻酔の有無にかかわらず分娩様式と出産後1、6、12ヵ月の産後うつ病との関連について調整オッズ比(aOR)を算出するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・麻酔を用いた普通分娩は、麻酔を使わない普通分娩と比較し、出産後6ヵ月間の産後うつ病リスクが高かった(aOR:1.233、95%信頼区間:1.079~1.409)。・しかし、このリスクは出産後1年で低下した。・麻酔を用いた出産を希望した妊婦において、妊娠第1三半期前のうつ病に関連するK6スコアの陽性率は5.1%であり、これは麻酔を使わない普通分娩(3.5%)と比較し、有意に高かった(p<0.001)。 著者らは「麻酔を用いた普通分娩は、出産後6ヵ月間の産後うつ病リスクを上昇させる可能性が示唆された。日本では、麻酔を用いた出産の希望はまれであるが、希望する女性では、根底にある母親の環境状態の影響により産後うつ病を発症する可能性が高まる」としている。

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統合失調症に対する抗精神病薬未使用と死亡リスク

 抗精神病薬の使用が統合失調症患者の死亡率の上昇または低下と関連しているかは、よくわかっていない。大規模登録研究では、抗精神病薬を使用しないと死亡リスクが増加することが示唆されているが、プロスペクティブ研究での報告は十分ではない。ノルウェー・Haukeland University HospitalのMaria Fagerbakke Stromme氏らは、統合失調症の死亡率と抗精神病薬未使用との関連を調査するため、オープンコホート研究を実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年7月21日号の報告。 対象は、ノルウェー・ベルゲンのHaukeland University Hospital精神科急性期病棟に10年間入院し、退院診断を受けた統合失調症患者696例。各患者における抗精神病薬の使用期間と未使用期間での比較を行うため、抗精神病薬の使用を時間依存変数としCox重回帰分析を行った。性別、入院時の年齢、精神科急性期病棟への入院数、アルコールおよび違法薬物の過剰使用、ベンゾジアゼピンおよび抗うつ薬の使用で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ中に68例(9.8%)の死亡が確認された。・死亡患者のうち40例(59%)は自然死、26例(38%)は不自然死であった。・抗精神病薬未使用は、使用と比較し、死亡リスクが2.15倍高かった(p=0.01、信頼区間:1.24~3.72)。・抗精神病薬の使用と未使用との死亡リスクの差は、年齢に依存しており、若年患者においてリスクの差が最も大きかった。 著者らは「統合失調症患者に対する抗精神病薬未使用は、死亡リスクを2倍増加させる可能性が示唆された」としている。

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アルツハイマー病患者の抑うつ症状に対する抗うつ薬治療の有効性~メタ解析

 抑うつ症状は、アルツハイマー病(AD)患者でみられる最も一般的な神経精神症状の1つである。現在の臨床現場では、AD患者の抑うつ症状に対する第1選択治療として、抗うつ薬治療が行われている。中国・Maoming People's HospitalのYanhong He氏らは、AD患者の抑うつ症状の治療における抗うつ薬の有効性に関するエビデンスをシステマティックに調査した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。 ランダム化比較試験のメタ解析を行うため、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed、Embase、CNKIデータベースよりシステマティックに検索した。主要アウトカムは、平均うつ病スコアおよび安全性とし、副次的アウトカムは、認知機能とした。さまざまな治療による順位確率を推定するため、surface under the cumulative ranking curveを用いた。 主な結果は以下のとおり。・14薬剤を含む25件の研究が選択基準を満たした。・ミルタザピン(標準化平均差[SMD]:-1.94、95%信頼区間[CI]:-3.53~-0.36、p<0.05)およびセルトラリン(SMD:-1.16、95%CI:-2.17~-0.15、p<0.05)による治療は、プラセボと比較し、抑うつ症状の治療に対する優れた有効性が認められた。・クロミプラミンは、プラセボよりも有害事象リスクが高かった(オッズ比:3.01、95%CI:1.45~4.57、p<0.05)。・認知機能については、抗うつ薬治療とプラセボとの間に統計学的有意差は認められなかった。 著者らは「全体として短期治療に関するデータではあるものの、AD患者の抑うつ症状の治療では、セルトラリンおよびミルタザピンによる治療を考慮すべきであることが示唆された。今後、大規模サンプルやより長いフォローアップ期間を設定した高品質な試験が求められる」としている。

833.

うつ状態の変化が喫煙量に及ぼす影響

 韓国の喫煙率は、この10年間さまざまな喫煙コントロール政策が行われてきたにもかかわらず、わずか3%しか減少していない。そのため、喫煙者の心理学的特徴を考慮した政策を考える必要がある。一方、禁煙が失敗する要因として、うつ病との関連が示唆されている。韓国・延世大学校のSoo Hyun Kang氏らは、喫煙者のうつ状態の変化が1日の喫煙量(DCA)に及ぼす影響について、調査を行った。BMC Public Health誌2021年7月3日号の報告。 Korea Welfare Panel Study(KoWePS)のウェーブ3(2008年)~13(2018年)より抽出したサンプルを用いて検討を行った。調査時に1日で喫煙した紙巻きタバコの本数をDCAと定義した。うつ状態の評価には、うつ病自己評価尺度(CESD-11)を用いた。うつ症状の変化がDCAに及ぼす影響を評価するため、一般化推定方程式を用いた。うつ状態の変化により「NO→NO」群、「NO→YES」群、「YES→NO」群、「YES→YES」群に分類し評価した。 主な結果は以下のとおり。・2008年のベースライン時のサンプル数は、1,821人(男性:1,645人、女性:176人)であった。・男性において「YES→NO」群は、「NO→NO」群と比較し、DCAの有意な低下が認められた唯一の群であった(β:-0.631、p=0.0248)。・19歳以前に喫煙を開始した男性において「YES→NO」群は、「NO→NO」群と比較し、DCAの有意な低下が認められた(β:-0.881、p=0.0089)。 著者らは「うつ状態から非うつ状態への変化および非うつ状態からうつ状態への変化は、男性のDCA減少および増加とそれぞれ関連していた。19歳以前に喫煙を開始した喫煙者の場合、うつ状態から非うつ状態へ変化した群では、一般喫煙者と比較し、DCAが非常に低かった。禁煙プログラムに参加した人の治療において、カウンセラーはうつ症状を確認し、うつ病治療を併せて行うことを推奨する必要がある」としている。

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統合失調症と双極性障害を鑑別する多遺伝子リスクスコアと病前知能との関連

 統合失調症と双極性障害は、臨床的および遺伝的に類似している疾患であるにもかかわらず、統合失調症患者の知能障害は、双極性障害患者よりも重篤である。統合失調症と双極性障害を鑑別する遺伝子座(つまり統合失調症に特異的なリスク)は特定されている。統合失調症に特異的なリスクに対する多遺伝子リスクスコア(PRS)は、健康対照者よりも統合失調症患者で高くなるが、知能障害に対する遺伝的リスクの影響は、よくわかってない。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症に特異的なリスクが、統合失調症および健康対照者の知能障害を予測するかについて調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2021年7月23日号の報告。 統合失調症と双極性障害に関する大規模ゲノムワイド関連研究のデータセットの小児期知能(1万2,441例)および成人期知能(28万2,014例)のデータを用いてPRSを算出した。統合失調症患者130例と健康対照者146例についてゲノムワイド関連研究から得られたPRSを算出した。統合失調症患者と健康対照者の病前および現在の知能や知能低下を測定した。PRSと知能との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症に特異的なリスクに対するPRSの高さは、統合失調症患者と健康対照者の病前知能の低さと関連していた(β=-0.17、p=0.00412)。・診断ステータスを調整した後でも、この関連は有意なままであった(β=-0.13、p=0.024)。・統合失調症に特異的なリスクに対するPRSと現在の知能または知能低下との間に有意な関連は認められなかった(p>0.05)。・小児期知能のPRSは、健康対照者よりも統合失調症患者のほうが低かったが、病前および現在の知能や知能低下との有意な関連は認められなかった(p>0.05)。 著者らは「この結果は、統合失調症と双極性障害を鑑別する遺伝的因子が、統合失調症の病因および/または病前の知能障害、すなわち結晶性知能障害を介して、両疾患の病理学的差異に影響を及ぼしている可能性が示唆された。一方、小児期知能の遺伝的因子は、統合失調症の病因に影響を及ぼす可能性はあるが、知能障害を介した影響は認められなかった」としている。

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倦怠感は日中の過度な眠気と独立して抑うつ症状と関連

 一般集団における倦怠感に対する睡眠障害や併存疾患の影響について、韓国・ソウル大学校病院のJun-Sang Sunwoo氏らが、調査を行った。Sleep & Breathing誌オンライン版2021年7月22日号の報告。 2018年に実施された韓国の横断調査より得られたデータを用いて、分析を行った。倦怠感の評価には、Fatigue Severity Scaleを用いた。就業日の睡眠時間、クロノタイプ、休日の睡眠不足を解消するための睡眠、日中の過度な眠気などの睡眠習慣および抑うつ症状、その他の併存疾患について調査した。倦怠感を従属変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、19~92歳の成人2,493人(男性の割合:50%、平均年齢:47.9±16.4歳)であった。・就業日の平均睡眠時間は、7.1±1.1時間であり、倦怠感の有病率は、31%であった。・潜在的な交絡因子で調整した後、倦怠感は以下の因子との関連が認められた。 ●日中の過度な眠気(オッズ比[OR]:3.751、95%信頼区間[CI]:2.928~4.805) ●抑うつ症状(OR:3.736、95%CI:2.701~5.169) ●睡眠不足の認識(OR:1.516、95%CI:1.249~1.839) ●休日の睡眠不足を解消するための睡眠(OR:1.123、95%CI:1.020~1.235) ●アルコール摂取の少なさ(OR:0.570、95%CI:0.432~0.752) ●運動不足(OR:0.737、95%CI:0.573~0.948)・サブグループ解析では、日中の過度な眠気が認められない人において、倦怠感と就労日の睡眠時間の短さとの関連が認められた(OR:0.899、95%CI:0.810~0.997)。・日中の過度な眠気が認められる人において、倦怠感と関連が認められた因子は、抑うつ症状(OR:2.842、95%CI:1.511~5.343)とアルコール摂取の少なさ(OR:0.476、95%CI:0.247~0.915)であった。 著者らは「日中の過度な眠気と独立して、倦怠感と抑うつ症状の有意な関連が認められた。倦怠感、抑うつ症状、睡眠の病態生理学的関連を明らかにするためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

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医療従事者のバーンアウトとそれに伴う仕事量の変化

 COVID-19感染流行に収束の兆しが見えない中、医療従事者の燃え尽き症候群(バーンアウト)が問題となっている。COVID-19感染流行前に、医師以外の医療従事者(HCW)における燃え尽き症候群(バーンアウト)と組織への満足度が、その後の仕事量の変化と関連するのかを調査した研究結果が、JAMA Network Open誌2021年8月20日号で報告された。 米メイヨー・クリニックのLiselotte N. Dyrbye氏らは、米国の複数の州にある地域密着型病院と医療施設において、2015年~2017年にかけてHCW(看護師、理学療法士、薬剤師、ソーシャルワーカー等)を対象に、バーンアウト及び組織への満足度と、その後24ヵ月間の仕事量の変化との関連を探る縦断的コホート研究を実施した。分析は2020年11月25日に完了した。主要アウトカムは、給与記録に記録されるフルタイム換算(FTE)単位で測定される仕事量の変化だった。バーンアウトの診断はMaslach Burnout Inventory(MBI)による情緒的消耗感と脱人格化の測定、組織への満足度は5段階アンケートで測定した。 主な結果は以下のとおり。・2万6,280例(45~54歳が7293例[27.8%]、女性2万263例[77.1%])が対象となった。勤続期間は5年未満(8,570例[32.6%])と15年以上(8,115例[30.9%])が多く、6,595例(25.1%)が看護師だった。・ベースライン時には、5,695例(21.9%)が「情緒的消耗感が強い」、2,389例(9.2%)が「脱人格化が強い」、6,177例(23.8%)が「バーンアウト状態」を示した。組織への満足度は「非常に満足」(9,125例[35.0%])または「満足」(1万3,339例[51.1%])が大半を占めた。・性別、年齢、雇用期間、職種、ベースライン時のFTEとバーンアウトを調整したところ、ベースライン時のバーンアウト状態(オッズ比[OR]:1.53、95%CI:1.38~1.70、p< 0.001)、情緒的消耗感(OR:1.54、95% CI:1.39~1.71、p

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妊娠前の睡眠時間と産後うつ病~日本での多施設共同研究

 産後うつ病は、世界における主要な公衆衛生上の問題であり、臨床的優先事項として挙げられている。名古屋大学の松尾 聖子氏らは、妊娠前の睡眠時間と産後うつ病との関連について、調査を行った。Archives of Women's Mental Health誌オンライン版2021年7月13日号の報告。 日本の産婦人科病院12施設より収集した2014~18年に出産した女性の臨床データを用いて、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。対象女性1万5,314人を妊娠前の睡眠時間に応じて5群に分類した(6時間未満、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9時間以上)。妊娠前の睡眠時間が産後1ヵ月間のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)のスコアに影響を及ぼすかを判断するため、単変量および多変量回帰分析を行った。また、産後うつ病リスクが、妊娠前の睡眠時間に応じて分類された女性において、以前の出産経験の有無により異なるかについても評価した。 主な結果は以下のとおり。・出産前の睡眠時間が6時間未満および6~7時間の女性における高EPDSスコア(9以上)の調整オッズ比(aOR)は、7~8時間の女性と比較し、以下のとおりであった。 ●6時間未満のaOR:2.08(95%CI:1.60~2.70) ●6~7時間のaOR:1.41(95%CI:1.18~1.68)・高EPDSスコアのリスクは、睡眠時間が1時間増加すると約14%減少した。・睡眠時間の短さと高EPDSスコアとの関連は、初産の女性よりも出産経験のある女性のほうが顕著であった。 著者らは「妊娠前の睡眠時間の短さは、産後うつ病リスクと関連しており、この問題は、初産よりも出産経験のある女性において、より重要であった。産後うつ病リスクが高い女性を特定するためにも、妊娠前の睡眠時間に関する情報を収集する必要がある」としている。

839.

慢性疼痛の遺伝的リスクが抗うつ薬の有効性と関連

 慢性疼痛とうつ病は高頻度で併発しており、治療が困難な場合も少なくない。これまでのオーストラリアのうつ病遺伝学研究では、併存疾患がうつ病の重症度の上昇、抗うつ薬治療効果の低下や予後不良と関連していることを報告した。オーストラリア・クイーンズランド大学のAdrian I. Campos氏らは、慢性疼痛の遺伝的リスクがうつ病の遺伝的要因に影響を及ぼし、抗うつ薬の有効性と関連しているかを評価した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年7月16日号の報告。 対象は、オーストラリアのうつ病遺伝学研究の参加者1万2,863人。慢性疼痛とうつ病のゲノムワイド関連研究より、要約統計量を用いて多遺伝子リスクスコア(PRS)を算出した。PRSと10種類の抗うつ薬治療の有効性との関連を評価するため、累積リンク回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・混合ロジスティック回帰では、慢性疼痛患者は、慢性疼痛の遺伝的傾向との有意な関連が認められたが(PainPRSOR:1.17[1.12~1.22])、うつ病の遺伝的傾向との関連は認められなかった(MDPRSOR:1.01[0.98~1.06])。・抗うつ薬治療の有効性の低下と慢性疼痛またはうつ病の遺伝的リスクとの有意な関連が認められた。ただし、完全に調整されたモデルでは、PainPRS(aOR:0.93[0.90~0.96])の影響は、MDPRS(aOR:0.96[0.93~0.99])とは独立していた。・これらの結果の頑健性を評価するため、感度分析を行った。・うつ病の重症度の測定値(発症年齢、うつ病エピソード数、研究参加年齢とうつ病発症年齢の間隔)で調整した後、PainPRSと抗うつ効果が不十分な慢性疼痛患者との有意な関連は、依然として認められた(各々、0.95[0.92~0.98]、0.84[0.78~0.90])。 著者らは「これらの結果は、慢性疼痛の遺伝的リスクは、うつ病の遺伝的リスクとは独立して、抗うつ薬治療の有効性低下と関連していることを示唆しており、他の研究による関連文献と同様に、慢性疼痛を合併したうつ病サブタイプでは、治療が困難であると考えられる。このことからも、鎮痛薬と精神医学における生物学に基づいた疾患分類のフレームワークへの影響に関するさらなる調査が求められる」としている。

840.

初発統合失調症患者における幻聴~10年間の軌跡

 幻聴は、統合失調症の診断において重要な症状であり、非常に頻度が高く、症状悪化に影響を及ぼす精神症状の1つである。しかし、幻聴の長期的な軌跡についてはあまり知られていない。デンマーク・コペンハーゲン大学のOle Kohler-Forsberg氏らは、初発統合失調症における幻聴について、10年間のフォローアップ調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年7月13日号の報告。 対象は、初発統合失調症スペクトラム障害患者496例。幻聴スコアは、0(なし)~5(重度:毎日頻繁に出現)の評価を用いて、ベースライン時および1、2、5、10年後に調査した。幻聴の軌跡の特定には潜在クラス成長分析を用い、予測因子の推定には多項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・幻聴の軌跡は、低減少クラス(77%)、高変動クラス(10%)、高増加クラス(13%)の3つが特定された。・低減少クラスでは、ベースライン時の平均幻聴スコアが最も低かった(平均スコア:2.1)。幻聴スコアの改善は、最初の1年以内に認められ(1年後の平均スコア:0.5)、その後も維持された(10年後の平均スコア:0)。・高変動クラスでは、最初の2年間で平均幻聴スコアが3.0→1.0へ改善が認められたが、5、10年後には増加に転じていた(平均スコア:2.4)。・高増加クラスでは、ベースライン時の平均幻聴スコアが高く(平均スコア:3.5)、1年後にはわずかな減少が確認されたものの(1年後の平均スコア:3.0)、10年後には増加していた(10年後の平均スコア:4.8)。 著者らは「統合失調症スペクトラム障害患者の多くは、10年後までに幻聴の改善が認められるが、4人に1人は症状の変動がみられ、13%の患者は10年後に重度の幻聴を有していることが明らかとなった」としている。

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