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統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか

 ホルモンの調節不全は、さまざまな精神障害における自殺の危険因子と関連している。甲状腺ホルモンやプロラクチンは、統合失調症の病態生理に影響を及ぼしている。インド・ジャワハルラール医学教育研究大学院研究所のJancy Jose氏らは、統合失調症患者における甲状腺ホルモンとプロラクチンレベルを分析し、疾患の重症度や自殺リスクとの関連を調査した。Clinica chimica acta; international journal of clinical chemistry誌オンライン版2015年2月10日号の報告。 本研究は、統合失調症群38例とコントロール群38例で実施された。全例で、血清甲状腺ホルモンとプロラクチンを測定した。疾患の重症度はPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)を用い、自殺念慮はC-SSRS(コロンビア自殺評価尺度)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症群では、コントロール群と比較して血清プロラクチン(p=0.004)、遊離T4(p=0.029)が有意に高かった。・血清プロラクチンは、PANSS陰性尺度スコアの高さと有意に関連していた(r=0.418、 p=0.008)。PANSS陽性尺度、総合精神病理尺度のスコアとの関連は認められなかった。・甲状腺ホルモンと疾患重症度との関連は認められなかった。・自殺念慮は、遊離T4の高い統合失調症患者でより多くみられたが、プロラクチンレベルとの関連は認められなかった。関連医療ニュース プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か 日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大

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抗うつ薬の副作用発現を予測するために

 抗うつ薬の代謝において、シトクロムP450酵素は重要な役割を担っている。これら酵素の高度に多様な性質は、抗うつ薬の代謝率の変動と関連しており、P450の遺伝子型判定を利用した推奨治療の決定につながる可能性がある。しかし、P450遺伝子の違いが治療効果に影響を及ぼすかどうかは明らかになっていない。英国のキングス・カレッジ・ロンドンのKaren Hodgson氏らは、P450遺伝子型および抗うつ薬の血清濃度と副作用との関連を検討した。Psychopharmacology誌オンライン版2015年3月12日号の報告。 本研究では、P450遺伝子型と抗うつ薬の血清濃度、副作用との関連および投与中止との関連を調査した。ゲノムワイド遺伝薬理学研究のうつ病プロジェクト(GENDEP)のデータを用い抽出した、エスシタロプラムまたはノルトリプチリンで治療されたうつ病患者868例を対象とした遺伝薬理学的研究。対象患者は、CYP2C19とCYP2D6の遺伝子型を特定し、抗うつ薬と1次代謝物の血清濃度を治療8週間後に測定した。副作用は毎週評価した。 主な結果は以下のとおり。・P450遺伝子型は、すべての副作用発現(ノルトリプチリン:251例、p=0.5638、β=-0.133、SE=0.229;エスシタロプラム:340例、p=0.9627、β=-0.004、SE=0.085)、投与中止(ノルトリプチリン:284例、HR 1.300、p=0.174;エスシタロプラム:376例、HR 0.870、p=0.118)、特定の副作用のいずれも予測しなかった。・抗うつ薬の血清濃度は、少数の特定の副作用(口内乾燥、めまい、下痢)とのみ関連していた。・本試験では、臨床的判断により抗うつ薬の投与量を決定していたため、P450遺伝子型によって抗うつ薬の副作用発現を説明することはできなかった。関連医療ニュース うつ病急性期治療、どの抗うつ薬でも差はない 各種抗うつ薬の長期効果に違いはあるか 抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮

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ペルフェナジン、他の抗精神病薬との違いは

 ペルフェナジンはハロペリドール同様、古典的なフェノチアジン系抗精神病薬で、長年にわたり使用されており、北部ヨーロッパおよび日本での使用頻度が高い。ドイツ・デュッセルドルフ大学のBenno Hartung氏らは、統合失調症患者に昔から使用されているペルフェナジンの有効性と安全性を明らかにするため、これまでの研究をレビューした。その結果、検討した試験はすべて非常に質の低いエビデンスであったが、ペルフェナジンが他の抗精神病薬と同様の有効性と安全性を示すことを報告した。そのうえで、安価で使用頻度の高いペルフェナジンの特性を明確にする、さらなる研究の必要性を指摘した。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年3月6日号の掲載報告。 研究グループは、ペルフェナジンの統合失調症患者および統合失調症様障害患者に対する臨床的効果および安全性を検討した。オリジナル検索をCochrane Schizophrenia Group's register(2013年9月)を用いて、参考文献とともにアップデートし、さらなる試験を得るため製薬会社や包含した試験の著者に問い合わせを行った。試験の選択基準は、統合失調症統合失調症様障害(あるいはその両方)患者に対する治療として、ペルフェナジンを他の治療法と比較検討しているすべての無作為化対照試験とした。ペルフェナジンのデポ剤による治験は除外した。 主な結果は以下のとおり。・31件の研究が選択基準を満たし、対象患者は計4,662例(うち4,522例は研究グループが実施した比較試験に関連する薬剤を使用)であり、少なくとも1つの比較に関する使用可能なデータを提示した。・試験実施機関はヨーロッパ(とくにスカンジナビア)、日本、北アメリカに位置していた。・ペルフェナジンとプラセボとの比較において、主要アウトカムである臨床反応に関して、ペルフェナジン群がより良好の結果を示した。プラセボ群のほうが、全身状態に関して「良好ではない、または増悪した」患者が有意に多かった(RCT 1件、61例、RR:0.32、95%CI:0.13~0.78、エビデンスの質は非常に低い)。・再発はプラセボ群がより多かったが、統計的に有意ではなかった(RCT 1件、48例、RR:0.14、95%CI:0.02~1.07、エビデンスの質は非常に低い)。・ペルフェナジンとプラセボの比較試験において、死亡例の報告はなかった。・ジストニアの発現において、明確な群間差は示されなかった(RCT 1件、48例、RR:1.00、95%CI:0.07~15.08、エビデンスの質は非常に低い)。なお、今回の比較試験では、重篤な有害事象、経済的アウトカム、サービス利用や入院などのアウトカムは報告されていなかった。・ペルフェナジンと他の抗精神病薬との比較において、薬剤間に事実上の有効性の違いは認められなかった。・「良好ではない、または増悪した」と考えられた患者に関して、群間の有意差は認められなかった(RCT 17件、1,879例、RR:1.04、95%CI:0.91~1.17、エビデンスの質は非常に低い)。・精神状態のアウトカムについて、試験薬剤による「効果なし」との判定に関しても群間差は認められなかった(RCT 4件、383例、RR:1.24、95%CI:0.61~2.52、エビデンスの質は非常に低い)。・分析に含んだ試験すべてにおいて、死亡例の報告はなかった。・ペルフェナジンと他の抗精神病薬とにおいて、ジストニア発現率に有意差はなく(RCT 4件、416例、RR:1.36、95%CI:0.23~8.16、非常に質の低いエビデンス)、重篤な有害事象に関しても有意差は認められなかった(RCT 2件、1,760例、RR:0.98、95%CI:0.68~1.41、エビデンスの質は非常に低い)。 レビューの結果を踏まえて著者らは、「50年以上にわたり、ペルフェナジンは無作為化試験の対象薬とされてきたが、試験報告は不十分であり、使用された比較対照薬が多彩で、明確な結論を導けずにいた。今回のレビューにおいて、主要アウトカムに関するデータはすべて非常に質の低いエビデンスであった。したがって言えることは、ペルフェナジンは他の抗精神病薬と同様の有効性と有害事象を示したということだけである。ペルフェナジンは安価で、使用頻度の高い製剤であり、さらなる研究を行い、この古典的な抗精神病薬の特性を明確にする必要がある」とまとめている。関連医療ニュース いま一度、ハロペリドールを評価する スルピリドをいま一度評価する フルフェナジンデポをレビューする  担当者へのご意見箱はこちら

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オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか

 統合失調症患者では、抗精神病薬で誘発される代謝異常の頻度が高い。そして、そのために心血管疾患を生じやすい。このことを念頭に、インド・スリナガル医科大学のRayees Ahmad Wani氏らは、オランザピンでメタボリックシンドロームを発症した安定期統合失調症患者における、アリピプラゾール切り替え後のさまざまな代謝パラメータへの影響を、非盲検試験で調査した。Neuropsychiatric disease and treatment誌オンライン版2015年3月13日号の報告。 対象は、オランザピンで安定しており、NCEP ATP III(National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III)の基準でメタボリックシンドロームを発症した統合失調症患者62例。対象患者は、アリピプラゾール切り替え群とオランザピン継続群に1:1で無作為に割り付けられた。アリピプラゾール切り替え群は、1ヵ月にわたる漸減漸増にて切り替えを行った。代謝パラメータは、ベースラインおよび試験開始8週および24週時点で評価した。有効性は、ベースラインおよび24週目におけるPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)、ベースラインのCGI-S(臨床全般印象・重症度尺度)と24週時点のCGI-I(臨床全般印象・改善度尺度)にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・メタボリックシンドロームのすべてのパラメータ(腹囲、血圧、トリグリセリド値、空腹時血糖値、HDLコレステロール)は、アリピプラゾール切り替え群の継続的な改善と比較して、オランザピン継続群では悪化したままであった。・研究終了時点で、NCEP-ATP-III基準を満たすメタボリックシンドロームを有する患者の割合は、オランザピン継続群100%(26例)、アリピプラゾール切り替え群42.8%(15例)であった。・PANSS総スコアやCGI-Iスコアで示された精神病理学的変化は、両群間で統計学的に有意な差は認められなかった。・本結果から、代謝異常が認められるオランザピン使用中の安定期統合失調症患者では、アリピプラゾールへ漸減漸増で切り替えることにより、有効性を維持したまま、代謝異常を改善できることが示唆された。関連医療ニュース 本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか 抗精神病薬の代謝への影響、男性でとくに注意 オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学

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男性更年期障害、うつ病との関連は

 男性更年期は、中年期の男性における身体的、精神的、情緒的健康の変化を経験する状態である。しかし、男性更年期とうつ病などの精神症状との関連はまだ明らかになっていない。イラン・テヘラン大学のShahla Khosravi氏らは、男性更年期の症状(AMSスケールで評価)とうつ病との関連を検討した。Aging clinical and experimental research誌オンライン版2015年3月12日号の報告。 521人の高齢男性を対象とした横断的研究。データ収集にあたり、うつ病のスクリーニングのためAMS(Aging Males Symptoms Scale)と患者健康質問票(PHQ-2、PHQ-9)を使用し、さらに背景と生殖能力に関する質問を行った。重回帰分析により、男性更年期症状とうつ病との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・本結果とAMSスコアより、対象の51.5%はアンドロゲンによる臨床症状を有しており、3.7%は重度の症状を有していた。・AMSスコアとうつ病には強い相関が認められた。・人口統計や身体測定、喫煙、疾患を変数とした多変量モデルで調整後も、うつ病、糖尿病、喫煙、配偶者の年齢は、有意な関連を示していた。・正の予測因子として、うつ病はAMSと最も強い関連が認められた。 以上、AMSスコアの増加はうつ病の重症度と関連しており、更年期障害の症状とうつ病との間には直接的な関連性が認められた。このことからも、男性更年期の症状を評価するにあたり、うつ病スクリーニングの必要性が示唆された。関連医療ニュース うつ病急性期治療、どの抗うつ薬でも差はない うつ病患者の疲労感を評価する新ツール うつになったら、休むべきか働き続けるべきか  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症へのECT、アジア諸国での実態調査

 2001~2009年のアジア人統合失調症患者に対する電気痙攣療法(ECT)の使用について、中国・澳門大学のYu-Tao Xiang氏らは調査を行った。その結果、過去10年間で中国において使用が増大していた一方、その他アジアの国および地域では低調に推移していた実態を報告した。結果について著者は、「アジアにおけるこの使用のばらつきの原因について、さらなる調査を行う必要がある」とまとめている。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2015年2月23日号の掲載報告。 アジア人統合失調症入院患者に対するECTの使用については、ほとんど明らかになっていない。研究グループは、2001~2009年間における使用の傾向と、人口統計学的および臨床的な相関があるか調べた。調査はアジアの9つの国と地域から、1ヵ月間のインタビューもしくはカルテレビューによって6,761例の統合失調症入院患者のデータを集めて行われた。患者の社会-人口統計学的および臨床的特性、処方されていた向精神薬、ECT使用について、標準化プロトコルおよびデータ収集法により記録して分析した。 主な結果は以下のとおり。・ECT使用率は、全サンプル中3.3%であった。・2001年は1.8%、2004年は3.3%、2009年は4.9%と有意に増大していた(p<0.0001)。・しかし、そうした増大傾向は、もっぱら中国におけるECT使用頻度の有意な増大(p<0.0001)と2009年時にサーベイに含まれたインドの使用頻度データの影響によるものであった。・国家間のばらつきが大きく、たとえば2001年は香港0%から中国5.9%、2004年はシンガポール0%から中国11.1%、2009年は香港0%に対し、インド13.8%、中国15.2%であった。・全サンプルの多変量ロジスティックス回帰分析の結果、ECTを受けた患者は非ECT患者と比べて、35~64歳群では少ないこと、直近の入院期間が短く陰性症状が少ないこと、第2世代抗精神病薬治療を受けている人が多い傾向が判明した(R2=0.264、p<0.001)。関連医療ニュース ECTが適応となる統合失調症患者は? 電気けいれん療法での麻酔薬使用、残された課題は? うつ病治療に対する、電気けいれん療法 vs 磁気けいれん療法  担当者へのご意見箱はこちら

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抗うつ効果に文化的背景は影響するか

 大うつ病性障害(MDD)を有するラテン系アメリカ人は、非ラテン系白人と比べ、薬物療法へのアクセス、薬物治療開始、服用、治療維持など、どの定義においても、抗うつ療法の実施が低調である。こうした差異がみられる理由の1つとして、ラテン系アメリカ人の薬物療法に対する文化的適合性が低い可能性が挙げられる。そこで、南カリフォルニア大学のSylvanna M. Vargas氏らは、ラテン系アメリカ人のうつ病と抗うつ療法に対する認識を明らかにする調査を行った。その結果、うつ病を有していないラテン系アメリカ人には、うつ病およびその治療に対して批判的な意見があること、その一方、うつ病患者は抗うつ療法に関心はあるものの、薬物中毒や薬物依存への懸念があることがわかったという。著者は「ラテン系アメリカ人の抗うつ療法への関わり方を改善するには、処方医がそうした見解や懸念に着目していかなくてはならない」と指摘している。Transcultural Psychiatry誌オンライン版2015年3月3日号の掲載報告。 研究グループは、ラテン系アメリカ人のうつ病および抗うつ療法に対する見解を調査した。抗うつ療法を始めようとしているラテン系アメリカ人の外来患者30例に対し、半構造化された治療遵守および維持に関する質問票を用いて、初回治療前に質的インタビューを実施した。ベースラインでのインタビューは、ラテン系アメリカ人のうつ病外来患者の治療参加を高める新たな介入を検証する無作為化対照試験で収集されたデータより、ランダムに選択された。聞き取った内容はグラウンデッド・セオリーに基づくオープン・コーディングおよび反復解析的アプローチを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・患者は、彼らが同じ社会集団に属する非患者から受けるスティグマを気にかけていることが認められた。・大半の被験者はそうした見解に対して、うつ病の経験を説明することで直接的に反論した。・また、抗うつ療法についても明らかにスティグマを意識していたが、被験者はそうした見解に対しては反論しない傾向がみられた。むしろ、抗うつ薬に関する懸念を表出し、精神科医療を求めることへの葛藤が認められた。・一方で被験者は、抗うつ療法に対する懸念に対処するため臨床医と患者が協力する方法があることを示唆した。・薬物中毒や薬物依存への懸念といった文化的見解は、乗り越えられる治療障壁であると思われた。・処方を行う医師は、ラテン系アメリカ人の抗うつ療法への関与を改善するために、文化的見解や懸念に対処する必要があると思われた。関連医療ニュース 治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ うつ病患者とかかりつけ医、認識のギャップが浮き彫りに 呼称変更から10年、統合失調症患者へのスティグマを減らすためには:日医大  担当者へのご意見箱はこちら

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ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)-322

 わが国と同様、世界の先進国は超高齢化社会を迎えている。一方において、各国は主要な疾患に対してガイドラインを制定して、標準的治療の推進を呼びかけているという事実がある。実は、この2つは大きな矛盾も抱えているのである。すなわち超高齢化社会の最大の特徴は多様性であり、画一的な集団での研究から得られた臨床研究の結果であるガイドライン、あるいは標準的治療とは必ずしもそぐわないのである。 NICEガイドラインは、イギリスの国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence)によって策定された治療指針であり、治療法や臨床運用のみでなく、それぞれの医療技術の費用対効果も盛り込むなど、世界的に最も洗練された評価の高いガイドラインである。 超高齢者では腎機能障害を有する例が多いことと、多疾患であることも特徴であり、この点は高齢者で薬物治療を行うに当たって最大の注意を払うべきポイントである。 本論文は、NICEが策定した12のガイドラインのうち、高齢者に多い2型糖尿病、心不全、うつ病の3疾患と、11の一般的症状または併存疾患との関連について、薬剤誘発性疾患あるいは薬物間相互作用を詳細に分析した報告である。 その結果によると、重篤な薬物-疾患相互作用や薬物間作用についての記述は数多く認められてはいるものの、強調されているとはいえないとして、ガイドライン作成者は他疾患を併存する場合を想定した、薬物相互作用あるいは薬物誘発性疾患について系統的アプローチを考慮すべきと結論付けている。 翻ってわが国の、たとえば「高血圧治療ガイドライン2014」をみてみると、薬物相互作用についての記載はごくわずかであり、きわめて一般的なことに限定されており、腎機能障害などとの関連についての記載は非常に乏しい。 とくに最近登場した新規抗凝固薬(NOAC)や、新規糖尿病治療薬による有害事象が頻発しているが、ガイドラインでは、これらの新薬に関して腎機能との関連や薬物相互作用にはもっとページを割くべきであった。

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臨床ガイドラインは複数疾患併存患者への考慮を/BMJ

 英国・ダンディー大学のSiobhan Dumbreck氏らは、英国立医療技術評価機構(NICE)の12の臨床ガイドラインにおける複数疾患を有する患者に関する潜在的に重篤な薬物-疾患(drug-disease)および薬物間(drug-drug)相互作用の記述について、システマティックレビューを行った。その結果、患者が慢性腎臓病(CKD)を併存している場合を除き薬物-疾患相互作用の記述はまれにしかみられない一方、薬物間相互作用については多くの記述がみられたこと、ただしいずれもガイドラインでは強調されていないことを明らかにした。臨床ガイドラインを、複数疾患を併存する患者についてより考慮したものにすべきとの認識が増している。しかし、研究グループは「多くのガイドラインで薬物療法を推奨しているが、そのような患者を設定した薬物-疾患および薬物間相互作用に関する勧告はあまりみられないと思われる」として本レビューを行った。BMJ誌オンライン版2015年3月11日号掲載の報告より。12のNICEガイドラインにおける薬物-疾患および薬物間相互作用をレビュー 研究グループは、臨床ガイドラインのうち、3つの典型的な疾患・症状に関するガイドライン(2型糖尿病、心不全、うつ病)と、複数の症状を対象としたと思われる9つのガイドラインを選択してレビューした。 これらのガイドラインで推奨される薬物について、2型糖尿病、心不全、うつ病(以上3つを評価指標と設定)と、11の併存疾患または症状(2型糖尿病、うつ病、心不全、心筋梗塞、CKD、心房細動、COPD、疼痛障害、リウマチ、認知症、高血圧症)について、重篤な可能性のある薬物-疾患および薬物間相互作用の記述をシステマティックに特定し、定量化と層別化を行った。薬物-疾患相互作用については、CKD併存以外はほとんどない レビューの結果、12のガイドラインで推奨される処方について、潜在的に重篤な薬物作用に至ると思われる記述があった。 具体的に、2型糖尿病に関連したガイドラインでは32件の潜在的に重篤な薬物-疾患相互作用の記述が認められた一方で、うつ病に関連したガイドラインでは6件、心不全に関連したガイドラインでは10件であった。このうち2型糖尿病ガイドラインにおける27件(84%)とうつ病・心不全ガイドラインのすべてが、推奨薬物とCKDとの間の相互作用に関するものであった。 重篤な薬物間作用についての記述は、2型糖尿病ガイドラインでは133件、うつ病ガイドラインでは89件、心不全ガイドラインでは111件が特定された。 しかし、2型糖尿病、心不全、うつ病の3つの評価指標に関するガイドラインで、薬物-疾患または薬物間相互作用に関する強調はほとんどみられなかった。 以上を踏まえて著者は薬物-疾患相互作用について、「患者がCKDを併存していた場合の相互作用の記述以外はほとんどみられなかった。ガイドライン開発者は、そのガイドラインが注視する疾患を有する人々の併存疾患の疫学知見に基づき、より系統的アプローチを考慮すべきである」と述べている。また、薬物間作用について「対照的に、推奨薬とさまざまな疾患・症状との相互作用の記述はよくみられた。臨床医や複数疾患を有する患者が、十分な情報に基づく薬物選択ができるように、ガイドラインの策定と普及が求められ、そのための革新的な双方向性のアプローチが必要である」と述べている。

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自殺リスク評価の無作為化試験は実施可能なのか

 自殺は公衆衛生上の大きな問題であるが、自殺のリスクを有する患者について、自殺念虜の減少を目的として実施された無作為臨床試験はほとんどない。そうした中で現在行われている「Reducing Suicidal Ideation Through Insomnia Treatment:REST-IT」試験について、米国ジョージア・リージェンツ大学のWilliam Vaughn McCall氏らは2年目の状況をまとめ報告した。その結果を受けて著者は、「選択基準および除外基準、ならびに他の安全策を慎重に考えることによって自殺のリスクを有する成人患者を対象とした無作為化試験を安全に行うことができる」との見解を示している。Clinical Trials誌オンライン版2015年3月1日号の掲載報告。 REST-ITは、不眠や自殺念虜を有するうつ病の成人外来患者を対象に、SSRI薬への睡眠導入剤追加併用の臨床効果をプラセボと比較するようデザインされた、多施設ランダム化臨床試験であった。また、2001年に米国国立衛生研究所(NIH)が発表した、自殺ハイリスク患者が参加する介入試験に関するガイドラインに即した安全策が講じられている。試験は4年間の予定で行われており、本稿では登録開始後2年目の成績が報告された。 概要は以下のとおり。・584例が電話によるスクリーニングを受け、67%はスクリーニング段階で失敗した(失敗例の26%は自殺念虜が認められなかったことによる)。・試験開始時の対面評価(ベースライン評価)を受けたのは115例であった。このうち40例が、評価前に、効果のない向精神薬を徐々に減量し完全に中止していた。・115例中74例(64%)は無作為化ができなかった(その大半は臨床的に重要な自殺念虜が認められなかったことによる)。・1例は、試験に参加する代わりに精神科への入院を提案され受け入れた。・これまでのところ40例が無作為化され、このうち88.7%が予定どおり通院している。SSRIのアドヒアランスは93.8%、睡眠導入剤またはプラセボの併用アドヒアランスは91.6%である。・無作為化された40例において、入院を要した患者や自殺企図例は認められていない。関連医療ニュース 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か 日本人統合失調症患者における自殺企図の特徴は?:岩手医科大学 日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症の治療成績にD2/3結合能は影響するか

 これまでの統合失調症研究で確認された最も優れた知見の1つが、陽性症状におけるドパミンD2受容体遮断と抗精神病薬効果の関連性である。デンマーク・コペンハーゲン大学のSanne Wulff氏らは、統合失調症初回エピソード未治療患者における線条体D2/3結合能(BPp)と治療アウトカムの相関性について調べた。結果、両者間の相関性を確認し、低BPp患者は高BPp患者と比べて治療反応が良好であること、またドパミン受容体遮断が高レベル時に機能が低下する可能性がある示唆が得られたことを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2015年2月18日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症初回エピソードの抗精神病薬未治療患者集団で、ベースライン時の線条体D2/3受容体BPpと治療アウトカムとの相関性を調べることが目的であった。また、線条体ドパミンD2/3受容体遮断と陰性症状の変化および機能、主観的幸福感との関連についても調べた。線条体D2/3受容体BPpは、123I-IBZM-SPECT法による画像診断にて調べた。被験者は、D2/3受容体拮抗薬アミスルピリドによる6週間の治療の前後に評価を受けた。 主な結果は以下のとおり。・研究には、抗精神病薬未治療の統合失調症患者28例と対照26例が含まれた。・全患者群において、ベースライン時の線条体D2/3受容体BPpと陽性症状改善には負の相関が認められた。・さらに、治療に反応した患者は反応しなかった患者と比べて、ベースライン時のBPpが有意に低かった。・フォローアップ時に患者は、遮断と機能について負の相関を示した。しかし、遮断と陰性症状、主観的幸福感については関連がみられなかった。・以上、統合失調症初回エピソードの抗精神病薬未治療患者において、ドパミンD2/3受容体の線条体BPpと治療反応には相関性があることが認められた。・低BPp患者は高BPp患者と比べて治療反応が良好であった。・結果はさらに、ドパミン受容体遮断の高レベル時に機能が低下する可能性があることを示唆するものであった。関連医療ニュース ドパミンD2受容体占有率が服薬に影響?:慶應義塾大学 統合失調症治療、ドパミンD3の可能性は セロトニン3受容体、統合失調症の陰性症状改善に期待:藤田保健衛生大学  担当者へのご意見箱はこちら

2132.

SSRI中止は離脱症状に注意を

 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は臨床現場で広く用いられている。SSRIは幅広い症状と関連しており、その臨床的意義は十分に理解されているわけではない。イタリア・ボローニャ大学のGiovanni A Fava氏らは、SSRI中止による影響について検討するシステマティックレビューを行った。Psychotherapy and psychosomatics誌オンライン版2015年2月21日号の報告。 文献のシステマティックレビューは、PRISMAガイドラインに準じて実施された。2014年7月に各種データベース(CINAHL、コクランライブラリー、PubMed、Web of Science)から、タイトル、要約、トピックスにおける以下のワードを検索した。検索ワードは、「離脱症状、離脱症候群、中止症候群、中止後症状」および「SSRI、セロトニン、抗うつ薬、パロキセチン、フルオキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム」であった。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化比較試験15件、オープン試験4件、レトロスペクティブ調査研究4件、症例報告38件が抽出された。・SSRI中止後症候群の有病率は変動が大きく、多くの研究でケースの同定が不足していたため推定できなかった。・一般的な症候群は、薬剤中止後数日以内に発生し、数週間継続し、緩やかに漸減した。・しかし、症状発現は多様で、遅発例や症状持続期間の長いものも含まれていた。・症候群は、再発の徴候と誤認されやすい傾向があった。・薬剤中止後の離脱症状を誘発しうる薬剤として、ベンゾジアゼピン系薬やバルビツール酸系薬および他の向精神薬に加え、SSRIを追加するべきである。関連医療ニュース SSRI依存による悪影響を検証 なぜSSRIの投与量は増えてしまうのか 双極性障害ラピッドサイクラーの特徴は  担当者へのご意見箱はこちら

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精神疾患患者の安楽死、どう考える

 精神疾患や認知症の患者、また重篤な疾患はないが人生が嫌になっている患者における安楽死や医師による自殺幇助(EAS)は、非常に大きな論点となっている。このような場合、オランダの安楽死法の管轄に入るが、オランダ人医師はEASに消極的であるように見える。オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのEva Elizabeth Bolt氏らは、オランダ人医師がEASの可能性を拒否しているか否かを調査した。Journal of medical ethics誌オンライン版2015年2月18日号の報告。 がん、その他の身体疾患、精神疾患、認知症または人生が嫌になっている患者におけるEASの要求を医師が受け入れるかどうかの判断、および医師の特性が想像可能性(conceivability)と関連付けられるかを評価した。横断的研究調査は、オランダの一般開業医、高齢者ケア医、臨床専門医2,269人を対象に実施された。 主な結果は以下のとおり。・回答率は64%であった(1,456人)。・ほとんどの医師は、がん(85%)、その他の身体疾患(82%)の患者におけるEAS要求を受け入れると考えていることがわかった。・一方、精神疾患(34%)、早期認知症(40%)、重度認知症(29~33%)、人生が嫌になっている患者(27%)については、EAS要求を受け入れるとした医師は半数以下であった。・一般開業医において、EAS要求の受け入れが最も高かった。関連医療ニュース 統合失調症患者の突然死、その主な原因は 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査  担当者へのご意見箱はこちら

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EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

 米国・オークランド小児病院のRhonda P. Patrick氏らは、注意欠如・多動症、双極性障害、統合失調症などセロトニンが関与している脳機能障害患者では、ビタミンDおよび海洋性ω-3脂肪酸すなわちエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)のレベルがいずれも不十分であり、これらを適切に摂取することが脳機能障害の悪化を抑制・調節する可能性を報告した。FASEB Journal誌オンライン版2015年2月24日号の掲載報告。ビタミンDおよびEPAとDHAによる脳機能の調節メカニズムを提示 セロトニンは多岐にわたる脳機能と働きに関わっている。本報告では、セロトニンが実行機能、感覚ゲーティングおよび社会行動を制御していること、そして注意欠如・多動症、双極性障害、統合失調症、衝動的行動のすべてにおいて、これら脳機能の欠陥が共通して認められるというこれまでの知見を概括した。 概要は以下のとおり。・これらの脳障害において、ω-3脂肪酸とビタミンDの補給が認知機能と行動を改善する理由はいまだ解明されていない。・ビタミンDおよび2つの海洋性ω-3脂肪酸すなわちEPAとDHAによる、脳内のセロトニン合成や放出そして脳機能の調節メカニズムを提示する。・脳内セロトニンは、ビタミンDホルモンにより転写活性化される酵素、トリプトファンヒドロキシラーゼ2を介してトリプトファンから合成される。・脳障害患者では、ビタミンD(集団の~70%にみられる)レベルおよびω-3脂肪酸すなわちEPAとDHAレベルが不十分という所見が共通して認められ、これは脳内セロトニンの合成が最適でないことを示唆している。・著者らは、プロスタグランジンE2の減少に伴いEPAがシナプス前ニューロンからのセロトニン放出の増加を促し、シナプス後ニューロンにおける細胞膜透過性増大に伴いDHAがセロトニン受容体活性に影響を与えるというメカニズムを提案した。・発症の重要な過程においてビタミンD、EPA、DHAが不十分であることは、遺伝因子とも相まって、セロトニン活性および機能の障害へとつながり、神経精神疾患やうつ病の発症機序に寄与している可能性があった。・ビタミンDと海洋性ω-3脂肪酸すなわちEPAとDHAを適切に摂取することが脳機能障害の悪化を抑制・調節する可能性を示していた。関連医療ニュースうつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」統合失調症、ビタミンD補充で寛解は期待できるかEPA/DHAはADHD様行動を改善する可能性あり

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双極性障害ラピッドサイクラーの特徴は

 双極性障害のラピッドサイクラーに関連する臨床的要因や抗うつ薬の役割を解明するため、スペイン・バルセロナ大学のMarc Valenti氏らは検討を行った。Bipolar disorders誌オンライン版2014年2月12日号の報告。 本研究は、最大14年間症状や治療が継続された双極性障害患者289例を対象とした、前向き自然主義的コホート研究として実施された。対象患者をラピッドサイクラー群48例、非ラピッドサイクラー群241例に分類し、社会人口統計学的、臨床的、アウトカム変数に関して比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者289例のうち、フォローアップ中にラピッドサイクルが認められた患者は48例(16.6%)であった。・2群間でいくつかの違いがみられたが、Cox回帰分析の結果、非定型うつ症状のみ(p=0.001)、発症年齢(p=0.015)、自殺未遂数(p=0.030)がラピッドサイクラー群と有意に関連していた。・双極性障害患者のラピッドサイクラー化は、慢性化傾向、アウトカム不良、非定型うつ症状に関連していた。また、抗うつ薬の使用率の高さと関連していた。関連医療ニュース 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか 重症うつ病と双極性障害の関係:徳島大 双極性障害、退院後の自殺リスクが高いタイプは  担当者へのご意見箱はこちら

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うつ病にダンスセラピー、その効果は

 英国・リーズ大学のBonnie Meekums氏らは、うつ病に対するダンス・ムーブメントセラピー(DMT)の効果を明らかにするため、3件の無作為化対照試験(RCT)の解析を行った。その結果、DMTのうつ病に対する確実な効果は認められなかったことを報告した。DMTは広範囲の文化的、知的バックグランドを持つ人が活用しているが、その効果は十分にわかっていなかった。Cochrane Database Systematic Reviews2015年2月19日号の掲載報告。 研究グループは、うつ病に対するDMTの効果を調べるため、未治療、標準治療単独、精神療法、薬物治療、その他の身体的介入と比較した。また、異なるDMTアプローチについてもその効果を比較検討した。Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Review Group's Specialised Register (CCDANCTR-Studies and CCDANCTR-References)およびCINAHLを、WHO International Clinical Trials Registry Platform(WHO ICTRP)および ClinicalTrials.govと合わせて検索した(2014年10月2日時点)。さらに、Allied and Complementary Medicine Database(AMED)、Education Resources Information Center(ERIC)、Dissertation Abstractsを検索し(2013年8月まで)、手動による検索で、関連する研究者、教育プログラム、世界的ダンスセラピーの専門家を調査した。 試験適格基準は、少なくとも1群をDMT群として設定し、年齢にかかわらずうつ病患者に対するアウトカムを検討しているRCTとした。DMTの定義としては、精神療法を目的としていることが明確な一般参加型のダンスで、試験実施国において承認されるレベルの訓練を経た個人により進められているものとした。国において承認される訓練を経た個人とは、たとえば米国では、American Dance Therapy Association (ADTA)のトレーナーあるいは資格認定者、英国では、Association for Dance Movement Psychotherapy(ADMP)のトレーナーあるいは認定を受けた者とした。同様の専門機関がヨーロッパには存在するが、このような専門分野がまだ発展途上であるいくつかの国(たとえば中国)では、その質の低さが米国や英国における数十年前の状況だとして、レビュワーは、関連する専門的資格(たとえば看護や精神力動療法)や、Levy 1992、ADMP UK 2015、Meekums 2002、Karkou 2006といった、公表されているガイドラインに準ずる療法であることが明記されていれば組み入れることとした。試験の方法論的な質を評価し、3人のレビュアーのうち2人がデータ抽出フォームを用いてデータを抽出した。残りの1人は判定者としての役割を担った。 主な結果は以下のとおり。・3件の試験の被験者合計147例(成人107例、未成年40例)が包含基準を満たした。DMT療法群74例、対照群は73例であった。・2件の試験は、成人男性と成人女性のうつ病患者を対象としていた。そのうち1試験は外来患者も対象としていたが、もう一方の試験は都市部の病院の入院患者のみを対象としていた。・3件目の試験は、中学校に通う未成年女子を対象とした調査結果を報告していた。・これらの試験はすべて、2種類のうつ病評価基準、すなわち医師によるハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)およびSymptom Checklist-90-R(SCL-90-R)(自己評価スケール)を用いて、継続的なデータ収集が行われていた。・3件の試験の間に統計学的な不均一性が確認された。・DMTのうつ病に対する確実な効果は認められなかった(SMD:-0.67、95%CI:-1.40~0.05、エビデンスの質は非常に低い)。・予定されたサブグループ解析において、2件の試験の成人107例において好ましい効果が示されたが、臨床的有意差を認めるに至らなかった(SMD:-7.33、95%CI:-9.92~-4.73)。・成人を対象とした1件の試験は脱落率を報告しており、そのオッズ比は1.82(95%CI:0.35~9.45)で有意差なしと判断された(エビデンスの質は低い)。・社会的機能を評価した1件の試験において、非常に有効な結果が認められたが(MD:-6.80、95%CI:-11.44~-2.16、エビデンスの質は非常に低い)、結果の正確性に問題があった。・1件の試験において、QOL(同:0.30、-0.60~1.20、エビデンスの質は低い)あるいは自尊感情(1.70、-2.36~5.76、エビデンスの質は低い)に関して好ましい影響、悪影響のいずれもみられなかった。・3件の小規模試験の147例で得られたエビデンスは質が低かったため、うつ病に対するDMTの効果に関して確固たる結論を導くことはできなかった。・うつ病に対するDMTの効果を評価するには、より大規模で方法論的に質の高い試験が必要である。その際には、経済的分析および受容性についても評価し、あらゆる年齢群を対象とすることも必要である。関連医療ニュース ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 高齢者うつ病患者への運動療法は有効  担当者へのご意見箱はこちら

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抗うつ薬の違いによる自殺リスクを検討/BMJ

 うつ病患者の抗うつ薬使用と自殺、自殺企図・自傷行為リスクは、SSRIと三環系薬では有意な差はないことが、英国・ノッティンガム大学のCarol Coupland氏らによるコホート研究の結果、明らかにされた。また、服用開始後28日間および中止後の28日間にリスクが最も高いことも判明し、研究グループは、「同期間は注意深いモニタリングが必要である」と指摘している。うつ病患者における自殺・自殺企図について、これまで抗うつ薬の違いにより発生率にばらつきがあるのかどうかは不明であった。BMJ誌オンライン版2015年2月18日号掲載の報告より。抗うつ薬の違いによる自殺、自殺企図・自傷行為の発生について調査 検討は、英国一般医(GP)が関与するQResearchデータベースに登録され、2000年1月1日~2011年7月31日に初発のうつ病と診断された20~64歳の23万8,963例を対象に行われた。被験者は2012年8月1日まで追跡を受けた。 被験者が処方された抗うつ薬の種類(三環系薬、SSRI、その他)、用量、服用期間および指示投薬量、処方錠剤数を調べ、Cox比例ハザードモデルを用いて潜在的交絡因子で補正後、自殺、自殺企図・自傷行為の発生ハザード比を算出して評価した。 追跡期間中、コホートの87.7%(20万9,476例)が1つ以上の抗うつ薬の処方を受けており、治療期間の中央値は221日(四分位範囲:79~590日)であった。SSRIと三環系薬の有意差みられない 追跡開始5年間で、自殺198件、自殺企図または自傷行為5,243件が発生した。 SSRI使用者との比較において、三環系薬使用者の自殺発生率に有意な差はみられなかった(補正後ハザード比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.47~1.50、p=0.6)。しかし、その他の抗うつ薬使用者では有意な増大が認められた(同:2.64、1.74~3.99、p<0.001)。また自殺発生率は、SSRIのシタロプラムとの比較において、その他抗うつ薬のミルタザピン(レメロン、リフレックス)で有意な増大がみられた(同:3.70、2.00~6.84、p<0.001)。薬剤別にみた1年間の自殺絶対リスクのばらつき範囲は、アミトリプチリン(トリプタノールほか)の0.02%からミルタザピンの0.19%であった。 同様に自殺企図・自傷行為発生率も、SSRI使用者との比較において三環系薬使用者に有意差はみられなかったが(同:0.96、0.87~1.08、p=0.5)、その他の抗うつ薬使用者では有意な増大が認められた(同:1.80、1.61~2.00、p<0.001)。また、SSRIのシタロプラムとの比較において、ベンラファキシン(国内未承認、同:1.85、1.61~2.13、p<0.001)、トラゾドン(レスリンほか、1.73、1.26~2.37、p=0.001)、ミルタザピン(1.70、1.44~2.02、p<0.001)で同発生率の有意な増大が認められた。一方、アミトリプチリンでは有意な減少が認められた(0.71、0.59~0.85、p<0.001)。薬剤別にみた1年間の自殺企図・自傷行為絶対リスクのばらつき範囲は、アミトリプチリンの1.02%からベンラファキシンの2.96%であった。 自殺、自殺企図・自傷行為の発生率は、治療開始後の28日間および治療中止後の28日間で最も高かった。 著者は、「自殺、自殺企図、自傷行為の発生率は、SSRIと三環系薬で同等であった。ミルタザピン、ベンラファキシン、トラゾドンで、同発生との高い関連が示されたが、自殺数はわずかで明言はできるものではなかった。また、本検討は観察研究であり、所見は処方バイアスやうつ病重症度からの残余交絡、処方を受けた患者特性などが反映されている可能性があった」と述べたうえで、「抗うつ薬の開始および中止後の28日間における発生率増大は、この期間は患者のモニタリングを注意深く行う必要性があることを強調するものである」と指摘している。

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統合失調症のカフェイン依存、喫煙との関連に注意

 スペイン・Gallegan Health SystemのManuel Arrojo-Romero氏らは、長期間にわたる精神科病院でのカフェイン消費について調べた。結果、統合失調症とカフェイン使用との明らかな関連性は、その大半を喫煙で説明しうることが明らかになったと報告した。Schizophrenia Research誌オンライン版2015年2月20日号の掲載報告。 検討は、統合失調症とカフェイン使用についてより深く探索するため、すでに発表されているスペインの試験(統合失調症外来患者250例と一般集団290例)と、同じくスペインの長期入院患者試験(同一病院から統合失調症145例、その他の重度精神疾患64例)の対象を統合して行われた。とくに、喫煙などの交絡因子で調整後、統合失調症とカフェインの関連が、統合失調症患者全体で一貫して見られるのか、および異なるカフェイン使用の定義においてはどうかを明確にすることを目的とした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症入院患者におけるカフェイン使用者の割合は、非統合失調症入院患者と比較して有意に高いとはいえなかった(77%[111/145例] vs. 75%[48/64例])。また、対照と比べても高くなかったが、統合失調症外来患者より有意に高かった。・統合失調症入院患者のカフェイン使用者のうち使用頻度が高い人の割合は、非統合失調症入院患者と比較して有意に高いとはいえなかった(45%[50/111例] vs. 52%[25/48例])。また、対照と比べても高くはなかったが、統合失調症外来患者より有意に低かった。・喫煙は、全対象および定義にわたってカフェイン使用と有意に関連していた。・カフェイン中毒(喫煙者で700mg/日超)は、統合失調症入院患者、同外来患者、非統合失調症入院患者で2~3%であった。・また、これらカフェイン中毒の喫煙患者の何人かは、他の誘導物質(とくにオメプラゾール)も摂取していた。・統合失調症とカフェイン使用との間に一貫した関連がみられなかったことは、全解析群(使用者および高使用者)および全対象において喫煙とカフェイン使用との関連が非常に一貫していたことと比較すると驚くべきことであった。・統合失調症とカフェイン使用の明白な関連は、喫煙の交絡的な影響により説明することができる。関連医療ニュース 統合失調症患者の過度なカフェイン摂取、どう対処すべき 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 認知症治療薬ガランタミン、ラット試験で喫煙欲求の軽減効果を確認  担当者へのご意見箱はこちら

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抗精神病薬の切り替えエビデンス、どう評価すべきか

 統合失調症や双極性障害に対する抗精神病薬治療では、効果不十分や持続的な副作用が問題となることが少なくない。そのため、忍容性を改善し安全な長期治療を行う目的で、副作用プロファイルが異なる他の薬剤への切り替えが推奨されている。非定型抗精神病薬のアリピプラゾールは、統合失調症および双極性障害に対する有効性が証明されており、他の非定型抗精神病薬とは異なる薬理学的ならびに副作用プロファイルを持つ。そこで、イタリア・シエナ大学のAndrea Fagiolini氏らイタリア精神科医委員会は、アリピプラゾールへの切り替えに関する現在の戦略について討議し、専門家の意見をまとめた。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌オンライン版2015年2月12日号の掲載報告。 委員会では、統合失調症または双極性障害の治療におけるアリピプラゾールへの切り替えについて詳細なガイダンスを提示する目的で、PubMedを用い「aripiprazole」および「switching」に関する文献を検索、それらの参考文献などについても検討し、討議した。 概要は以下のとおり。・抗精神病薬の切り替えに関する指針や、臨床的に望ましい治療目標を達成するための最良な戦略に関する研究はほとんどない。・抗精神病薬の切り替えに関する研究は、なぜ、いつ、どのように切り替えを実施すべきかを明らかにしなければならない。・研究結果は、抗精神病薬の切り替えの根拠を標準化し、切り替えの最適な時期ならびに最適な方法を評価しなければならない。・抗精神病薬の切り替えは、臨床的および薬理学的要因の両方が考慮されるべきであり、すべての要因に対応した特別なガイドラインが必要である。関連医療ニュース アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 統合失調症の治療目標、急性期と維持期で変更を:京都大学  担当者へのご意見箱はこちら

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うつ病治療の休職期間、日本は平均79日間

 うつ病治療が必要になったら休職すべきか。あるいは職場のサポート制度を活用しながら働き続けるべきか―。 ルンドベック社(本社:デンマーク・コペンハーゲン)が、このたび取りまとめた「職場でのうつ病の影響調査」によると、日本では就労者の10人に1人がうつ病と診断されており、そのうち73%がうつ病による休職経験があることがわかった。平均休職日数は79日に及び、約半数が5日未満だった米国と比べると10倍以上で、調査国の中でも休職日数の長さは群を抜いていた。 また、管理職層に限定して、うつ病になった従業員に対してどのようなサポートが可能かという項目については、「会社としては正式なサポートを行っていない」との回答が31%に上った。さらに、会社が実施しているサポート制度について、とても良い・良い・どちらでもない・悪い・とても悪い・わからない、の5段階で評価する項目については、好意的な評価(とても良い・良い)にした日本人の割合は21%で、調査国の中で最低だった。 さらに、うつ病の同僚がいると知って「自分に何か役に立てることはないかと尋ねた」人の割合は16%で、英国(53%)、米国(48%)などと比べるとかなり低い数値に留まった。一方、「何もしない」人の割合は40%で、調査国の中でも最高値。続く米国やカナダ(共に20%)、ドイツ(18%)などと比べても倍以上の差がついている。こうした結果から、うつ病治療に対する職場のサポート体制が十分に整わず、休職を選択する人が多い日本の現状が浮き彫りになった。 それに対して、休職者の割合が低い国(トルコ、メキシコ、ブラジルなど)では、会社のサポート体制に対する好意的な評価の割合がおおむね高くなっており(同72%、68%、65%)、これらの国では、働きながら治療を進める人が多いことがうかがえる。 慶應義塾大学が2011年に取りまとめた調査によると、2008年の日本のうつ病性障害の疾病費用は3兆901億円と推定され、このうち2兆円超が就業者の生産性低下による損失と、非就業による損失とされている。 今回の調査結果について、日本版の監修を務めた国際医療福祉大学 医療福祉学部の上島国利教授は、「2015年中に労働安全衛生法の一部を改正する法律が施行され、企業のストレスチェック導入義務化に注目が集まっているが、うつ病に関しては、予防から発症後の職場復帰への対応まで、包括的なメンタルヘルス対策を充実させることが求められている」とコメントしている。 この調査は、ルンドベック社が昨年2月、世界16ヵ国で、就労している(または過去12ヵ月間に働いていた)16歳~64歳の男女、約1万6,000人を対象に行った。このうち、日本の回答者数は1,000人。

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