循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:79

静脈血栓塞栓症での長期投与の安全性、DOAC vs.ワルファリン

 静脈血栓塞栓症(VTE)に対する経口抗凝固薬の投与期間は、海外では初回3~6ヵ月の治療期間からの延長が推奨される場合があるが、直接経口抗凝固薬(DOAC)またはワルファリンの臨床アウトカムの違いは明らかにされていない。そこで、米国・カルフォルニア大学のMargaret C. Fang氏らが急性VTE患者を対象にDOACまたはワルファリンの抗凝固療法の6ヵ月以上の延長による「VTEの再発」「出血による入院」および「全死因死亡の割合」への影響を比較した。その結果、DOAC治療はVTEの再発リスク低下と関連し、臨床アウトカムの観点からVTEの長期治療にDOACの使用を支持すると報告した。JAMA Network Open誌2023年8月1日号掲載の報告。

高血圧への第1選択としての利尿薬vs.他の降圧薬~コクランレビュー

高血圧患者における死亡率、心血管イベントの発生率、有害事象による中止率などについて、第1選択薬としてのサイアザイド系利尿薬と他のクラスの降圧薬を比較したシステマティックレビューの結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMarcia Reinhart氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年7月13日号に報告した。  2021年3月までのCochrane Hypertension Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、および臨床試験登録が検索された。対象は1年以上の無作為化比較試験で、第1選択薬としての利尿薬と他の降圧薬の比較、および死亡率とその他のアウトカム(重篤な有害事象、総心血管系イベント、脳卒中、冠動脈性心疾患[CHD]、うっ血性心不全、有害作用による中止)が明確に定義されているものとした。

悪性リンパ腫のアントラサイクリンによる心機能障害、アトルバスタチンが抑制/JAMA

 アントラサイクリン系薬剤による治療が予定されているリンパ腫患者において、アトルバスタチンの投与はプラセボと比較して、アントラサイクリン系薬剤関連の心機能障害を有意に抑制し、心不全の発生には有意な差がないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のTomas G. Neilan氏らが実施した「STOP-CA試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年8月8日号で報告された。  STOP-CA試験は、米国とカナダの9つの施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験であり、2017年1月~2021年9月の期間に患者を登録し、2022年10月に追跡調査を終了した(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。

HIV感染者の心血管イベント、ピタバスタチンで35%減/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者において、ピタバスタチンはプラセボと比較し、追跡期間中央値5.1年で主要有害心血管イベントのリスクを低下することが示された。米国・マサチューセッツ総合病院のSteven K. Grinspoon氏らが12ヵ国145施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「Randomized Trial to Prevent Vascular Events in HIV:REPRIEVE試験」の結果を報告した。HIV感染者は、一般集団と比較して心血管疾患のリスクが最大2倍高いことが知られており、HIV感染者における1次予防戦略に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年7月23日号掲載の報告。

NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。

成人の胸腺摘出、全死亡・がんリスクが増加/NEJM

 胸腺摘出を受けた患者は摘出を受けなかった対照群よりも、全死因死亡およびがんリスクが高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のKameron A. Kooshesh氏らによる検討で示された。また、術前感染症、がん、自己免疫疾患を有する患者を除外した解析では、胸腺摘出は自己免疫疾患のリスクを増大すると思われる関連性もみられたという。成人における胸腺の機能は明らかになっていないが、さまざまな外科手術でルーチンに摘出が行われている。研究グループは、成人の胸腺は、免疫機能と全般的な健康の維持に必要であるとの仮説を立て、疫学的・臨床的・免疫学的解析評価で検証した。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。

寄せられた疑問に答える、脂質異常症診療ガイド2023発刊/日本動脈硬化学会

 『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』が6月30日に発刊された。本ガイドは2018年版から5年ぶりの改訂となり、塚本 和久氏(帝京大学大学院医学研究科長、内科学講座 教授)が改訂点や本書の新たな取り組みについて、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで解説した。  本診療ガイドは脂質異常症に特化し、非専門医が困ったときに参考となる情報をコンパクトに記載したものである。日本動脈硬化学会では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』をはじめ、『スタチン不耐に関する診療指針2018』『PCSK9阻害薬の継続使用に関する指針』などのさまざまなガイドラインや指針を発刊しており、本GLはそれらの内容を網羅するかたちで作成されている。そのため、主な改訂点も動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版に準じたものになっている。

拡張型心筋症、アフリカ系とヨーロッパ系患者での遺伝的構造/JAMA

 拡張型心筋症(DCM)の遺伝子変異について、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系の患者を対象に調べたところ、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる臨床的に対処可能な変異遺伝子を有する割合が低いことが、米国・オハイオ州立大学のElizabeth Jordan氏らによる検討で明らかにされた。原因として、遺伝子構造が異なる点と、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者の臨床データが不足している点が示唆されたという。黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも、家族歴によるリスクが高くアウトカムが不良である一方、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものである。研究グループは、多様なDCM患者集団において、ゲノム祖先ごとにDCMのまれな変異遺伝子構造を比較した。JAMA誌2023年8月1日号掲載の報告。

スポーツで心臓突然死が起こりやすいのはサッカー

 心臓の病=高齢者のイメージが強いが、心臓突然死に限って言えば若年者も他人ごとではない。心臓突然死では年間約6~8万人が亡くなっており、その発生件数は年齢とともに増加する。ところが、スポーツ関連の突然死の場合は若年層に多く、18歳以下の突然死の約4割はスポーツ関連であるという。ではどんなスポーツで発生しやすいのだろうか。そしてその予防対策や心掛けておくべきことはなんだろうか-。今回、8月10日健康ハートの日を前に行われた第4回健康ハート・シンポジウムにおいて、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)の医学委員を務める林 英守氏(順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学 准教授)が『サッカー×ハート ~今、私たちにできることは?~』と題し、発症リスクの高いスポーツ、試合前の体調管理方法について解説した。

わが国の平均寿命、コロナの影響などで男女とも低下/厚生労働省

 厚生労働省は、7月28日に令和4年の簡易生命表の概況を発表した。これによると男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09歳となり、前年と比較し男性は0.42年、女は0.4年下回ったほか、平均寿命の男女差は6.03年で前年より0.07年縮小した。  平均寿命の前年との差を死因別に分解すると、男性は悪性新生物(腫瘍)などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いていたが、男女とも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、心疾患(高血圧性を除く)、老衰などの死亡率の変化が平均寿命を縮める方向に働いていた。