循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:77

STEMI-PCIへの長期的有効性、BP-SES vs. DP-EES/Lancet

 初回経皮的冠動脈インターベンション(プライマリPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント(BP-SES)は耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステント(DP-EES)と比較して、5年の時点での標的病変不全の発生が少なく、この差の要因は虚血による標的病変の再血行再建のリスクがBP-SESで数値上は低いためであったことが、スイス・ジュネーブ大学病院のJuan F. Iglesias氏らが実施した「BIOSTEMI ES試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2023年10月25日号で報告された。  BIOSTEMI ES試験は、STEMI患者に対するプライマリPCIにおけるBP-SES(Orsiro、Biotronik製)とDP-EES(Xience Prime/Xpedition、Abbott Vascular製)の有用性を比較した前向き単盲検無作為化優越性試験「BIOSTEMI試験」の、医師主導型延長試験である(Biotronikの助成を受けた)。BIOSTEMI試験では、2016年4月~2018年3月にスイスの10施設で患者の無作為化を行った。

膝下動脈疾患によるCLTI、エベロリムス溶出BVS vs.血管形成術/NEJM

 膝下動脈疾患(infrapopliteal artery disease)に起因する包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia:CLTI)の患者の治療において、エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(Esprit BTK、Abbott Vascular製)は標準的な血管形成術と比較して、1年後の有効性に関する4つの項目(治療対象肢の足首より上部での切断など)の発生がない患者の割合が有意に優れ、6ヵ月後の主要下肢有害事象と周術期死亡は非劣性であることが、オーストラリア・Prince of Wales HospitalのRamon L. Varcoe氏らが実施した「LIFE-BTK試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年10月25日号に掲載された。

世界での血管内イメージングデバイス使用率は、日本に追いつくのか?(解説:山地杏平氏)

OCTOBER試験は、ILUMIEN IV試験と同時に発表された試験で、それぞれOCT (optical coherence tomography、光干渉断層法)を用いたPCI (percutaneous coronary intervention、経皮的冠動脈形成術)と、通常の血管造影のみで行ったPCIとで比較をしています。近年では、長い病変や、慢性完全閉塞といった複雑病変において、IVUS(intravascular ultrasound、血管内超音波)を用いたPCIのほうが、有意に結果が優れていたという報告が複数なされており、これらのランダム化比較試験の結果を受けて、米国では、血管内イメージングデバイスの使用は5%程度の施行率から、15%程度まで増加していると伺っています。OCTは、IVUSに比較して10倍空間分解能に優れていますが、一方で、造影剤もしくは低分子デキストランなどの使用にて赤血球除去が必要であり、それぞれ一長一短があります。この新たな血管内イメージングデバイスであるOCTを用いたPCIと、通常の血管造影のみで行ったPCIとで比較した試験が、米国と欧州が中心となって行われ、それぞれILUMIEN IV試験、OCTOBER試験としてESC(欧州心臓病学会)2023で報告されています。

手術低リスク重症大動脈弁狭窄症、TAVR vs.手術の5年追跡結果/NEJM

 手術リスクの低い症候性重症大動脈弁狭窄症患者を対象に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術を比較した「PARTNER 3試験」の5年追跡解析の結果、全死因死亡、脳卒中および再入院の複合エンドポイントを含む2つの主要エンドポイントについて、いずれも両群に有意差は認められなかったことが示された。米国・Baylor Scott and White HealthのMichael J. Mack氏らが報告した。本試験では、1年時の死亡、脳卒中、再入院の複合エンドポイントの発生率はTAVRのほうが有意に低いことが示されていたが、長期的な予後については不明であった。NEJM誌オンライン版2023年10月24日号掲載の報告。

起立性低血圧の有無で、積極的な降圧治療における心血管疾患発症や総死亡の抑制効果に違いはあるのか?(解説:石川讓治氏)

積極的な降圧が心血管疾患発症抑制に有用であることが、いくつかの大規模無作為割り付け介入試験で報告されている。しかし、これらの研究では起立性低血圧や起立時血圧が低値である患者が除外されていることが多く、これらを有する患者における心血管疾患発症に対する抑制効果に関しては不明であった。本研究は9つの臨床試験の結果の個別参加者データを統合して、起立性低血圧(座位→起立での血圧低下)と起立時低血圧の有無によって、積極的降圧群における心血管疾患発症または総死亡の抑制効果に違いがあるかどうかを検討したメタ解析である。その結果、起立性低血圧や起立時低血圧の有無では、積極的な降圧治療による心血管疾患の発症または総死亡の抑制効果に統計学的有意差は認められなかった。しかし、起立性低血圧を認める患者における積極的な降圧治療は、有意に心血管疾患発症を抑制していたが、総死亡抑制に関しては統計学的有意差が認められなかった。同様に、起立時低血圧を有する患者における積極的降圧治療においても、心血管疾患発症や総死亡低下効果に統計学的有意差は認められなかった。

心筋症を伴うATTRアミロイドーシス、パチシランが機能的能力を維持/NEJM

 心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR心アミロイドーシス)患者において、パチシランは12ヵ月時の機能的能力を維持する。米国・コロンビア大学アービング医療センターのMathew S. Maurer氏らが21ヵ国69施設で実施中の国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「APOLLO-B試験」の結果を報告した。ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチンがアミロイド線維として心臓、神経、消化管、筋骨格組織に沈着することによって引き起こされる疾患で、心臓への沈着により心筋症が進行する。パチシランは、RNA干渉により肝臓におけるトランスサイレチンの産生を抑制し、遺伝性ATTRアミロイドーシス(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)患者における臨床試験において、ATTR心アミロイドーシスに対する有効性が示唆されていた。NEJM誌2023年10月26日号掲載の報告。

急性虚血性脳梗塞に対する早期の降圧治療、発症8日目からの降圧治療開始との比較で90日後の死亡や神経学的後遺症に有意差なし(解説:石川讓治氏)

血栓溶解療法を行わない発症後24~48時間の急性虚血性脳梗塞患者における収縮期血圧140~220mmHgに対して、7日以内に140/90mmHg未満を目指して早期に降圧治療を行った群と、降圧薬を7日間中止後8日目以降に140/90mmHg未満を目指して遅れて降圧治療を開始した群の間で、90日後の死亡や神経学的後遺症のリスクを比較した研究である。早期降圧治療群において7日後の血圧が有意に低かったが、14日後の血圧は両群で有意差は認められず、その結果、90日後の死亡や神経学的後遺症のリスクには有意差はなく、むしろ早期降圧治療群において1.18倍のリスク増加が認められる傾向があった(p=0.08)。

心筋梗塞における完全血行再建はいつ行うべきか?(解説:上田恭敬氏)

血行動態が安定しているST上昇型急性心筋梗塞症例において、非責任病変に対するPCIを急性期に同時に行う群(immediate群)が、19〜45日後にstaged PCIとして行う群(staged群)と比べて非劣性であることを検証する、無作為化非劣性試験(MULTISTARS AMI)の結果が報告された。主要エンドポイントは、1年の時点での、死亡・心筋梗塞・脳卒中・予定外の血行再建・心不全入院の複合エンドポイントである。対象患者はimmediate群418症例とstaged群422症例に割り付けられた。主要エンドポイントの発生頻度は、immediate群で8.5%、staged群で16.3%であり、非劣性のみならず優位性の検定においてもp<0.001と有意であった。心筋梗塞(2.0%対5.3%)、予定外の血行再建(4.1%対9.3%)がstaged群で多くなっている。また、死亡、脳卒中、心不全入院については、群間で差はなさそうである。

100歳超にみられる血液検査の特徴/スウェーデン・AMORISコホート研究

 100歳を超える長寿者(センテナリアン)とそうでない人の違いはどこにあるのだろうか。スウェーデン・カロリンスカ研究所の村田 峻輔氏らの研究グループは、AMORISコホート参加者のバイオマーカー情報を最長35年間追跡調査し、その結果を報告した。センテナリアンは、総コレステロールと鉄の値が高く、グルコース、クレアチニン、尿酸などの値が低いことが判明した。Geroscience誌2023年9月19日号に掲載。   本研究では、1985~1996年に測定された血液ベースのバイオマーカーに関する情報を持つスウェーデン・AMORISコホートの登録データを最長35年間追跡調査した。

患者が油断しがちな健診結果の項目とは

 日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、各領域の専門医と連携し、健康診断で「要精密検査」や「要治療」といった異常所見があった際の二次検査の受診促進の取り組みとして、2023年10月17日に『ニジケンProject』を発足した。また、本プロジェクトの一環として二次検査に関する調査を実施したところ、3人に1人が健康診断の二次検査を「既読スルー」している現状であることが明らかになった。