循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:277

アジア人集団におけるTAVRの臨床転帰~国際多施設共同研究

 これまで、アジア人集団で経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の安全性と有効性を十分に評価した無作為化試験や観察研究は報告されていない。アジア人での解剖学的特徴からTAVRの安全性と有効性が懸念されていたが、今回、日本を含むアジアTAVRレジストリで臨床アウトカムを評価したところ、既報の試験や観察研究と比べて良好な結果が得られたことを、韓国・アサン医療センターのSung-Han Yoon氏らが報告した。JACC Cardiovascular interventions誌2016年5月9日号に掲載。

SAPIEN 3のTAVR、intermediate riskの高度AS症例における1年間の治療成績はSAVRに優る(解説:許 俊鋭 氏)-528

外科的AVR(SAVR)がintermediate riskと考えられる症例で、SAPIEN 3を用いたTAVRとSAVRの長期成績を比較した。SAVR症例は、PARTNER 2A試験の背景のpropensity scoreを一致させたSAVR症例と、1年の全死亡、脳卒中合併症率、再手術率、大動脈弁周囲逆流発生率を比較した。primary end pointは、全死亡、脳卒中合併症率、中等度~高度大動脈弁周囲逆流発生率の複合治療成績を比較した。

PCI時の血栓吸引療法は有効か―TOTAL試験サブスタディの結果

 ST上昇心筋梗塞に対するプライマリPCI(経皮的冠動脈形成術)施行の際に行う血栓吸引療法は、遠位部塞栓の予防および微小血管の灌流の改善に有効と考えられてきた。TOTAL試験は、ST上昇心筋梗塞患者をルーチンの手動による血栓吸引療法とPCI単独とに分けた無作為化試験であり、昨年New England Journal of Medicine誌に発表された。血管造影を基に行われた今回のサブスタディは、微小循環が血栓吸引療法によって改善したかどうかを、心筋ブラッシュグレード(myocardial blush grade:MBG)を用いて評価した。European Heart Journal誌オンライン版2016年4月28日号に掲載。

看護師の夜勤シフトと冠動脈疾患リスク/JAMA

 通常勤務(日勤・準夜勤)に加え月3回以上の夜勤シフト(ルーティン夜勤シフト)勤務に従事する女性看護師は、夜勤シフト従事歴のない人と比べて冠動脈性心疾患(CHD)イベントのリスク増大がみられ、同従事歴が長いほど、リスクは高まることが明らかにされた。米国ハーバード・メディカル・スクールのCeline Vetter氏らが、大規模前向きコホート研究「Nurses’ Health Studies」(看護師健康調査:NHS)の結果を分析した結果で、JAMA誌2016年4月26日号で発表した。勤務シフトとCHDの関連を検討した先行前向き研究では、相反する結果が報告されており、また追跡期間も短期のものだった。

PARTNER 2試験:TAVRのintermediate riskの高度AS症例における2年間の治療成績はSAVRと同等(解説:許 俊鋭 氏)-527

第1世代のデバイス(SAPIEN)を用いたTAVRは、手術不能大動脈弁狭窄症(AS)および手術がhigh riskと考えられるASに対する治療として、すでに認知されてきた。その後、術者の習熟度が高まるとともにデバイスの改良がなされ、より治療成績が向上し、TAVRはlow riskあるいはintermediate risk 症例に適応が拡大しつつある。

ixCELL-DCM試験:自己骨髄由来の細胞移植で虚血性心筋症患者の予後が改善(解説:佐田 政隆 氏)-526

高度低左心機能患者の延命、社会復帰のための、現在確立した唯一の治療手段は心臓移植である。しかし、ドナーの数は絶対的に少なく、20年ほど前から心筋再生療法に多くの関心が寄せられている。自己の末梢血中の内皮前駆細胞や骨髄幹細胞、心筋内幹細胞、脂肪組織由来幹細胞などの移植が、動物モデルでは心機能に対して劇的な効果をもたらすことが次々と報告された。

PATHWAY-2試験:治療抵抗性高血圧例の治療に非常に参考になるが、解釈には十分な注意が必要な研究結果(解説:桑島 巖 氏)-525

カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB、サイアザイド系利尿薬の3剤併用しても、降圧不十分な高血圧は治療抵抗性と呼ばれるが、日常診療でもしばしば遭遇し、次に何を追加するべきかに悩むことは少なくない。一般にはα遮断薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬のいずれかを選択することになるが、その優劣に関するRCTによるエビデンスはほとんどなかった。

左室駆出率低下の心不全、年齢・性別問わずβ遮断薬が有効/BMJ

 左室駆出分画(LVEF)が0.45未満の心不全患者に対するβ遮断薬は、年齢や性別を問わず、死亡リスクや心不全による入院リスクをいずれも低下する効果があることが、11の無作為化比較試験を対象に行ったメタ解析の結果、明らかになった。英国・バーミンガム大学のDipak Kotecha氏らが行った試験で明らかにしたもので、BMJ誌オンライン版2016年4月20日号で発表した。同服薬について、現状では高齢や女性の患者において、効果が実証された用量よりも少ない量を服用している場合が少なくないという。結果を踏まえて著者は、「年齢、性別を問わず、低LVEFの心不全患者はβ遮断薬を投与されるべきである」とまとめている。

冠動脈バイパス術が長期生命予後改善効果を有することが22年ぶりに報告された(解説:大野 貴之 氏)-524

虚血性心筋症(EF35%以下の低心機能を伴った安定冠動脈疾患)に対する治療として、薬物治療群(602例)とCABG群(610例)を比較したランダム化試験がSTICH試験である。2011年に追跡期間5年の結果が報告されたが、心臓血管死に関してはぎりぎり有意差を検出したが、全死亡に関して有意差は検出されなかった。今回、追跡10年間の結果が報告された。その結果、全死亡は薬物群66.1%に対してCABG群58.9%(p=0.02)、心臓血管死は49.3%対して40.5%(p=0.006)であった。

TIA後の心血管系イベントリスク、従来より低下/NEJM

 一過性脳虚血発作(TIA)発症後の心血管系イベントリスクは先行研究報告よりも低いことを、フランス・Bichat HospitalのPierre Amarenco氏らTIAregistry.org研究グループが、21ヵ国4,789例の患者を対象とした国際多施設共同前向き観察試験の結果、明らかにした。1997~2003年に行われた研究では、TIAまたは軽症脳卒中の発症後3ヵ月間の脳卒中または急性冠症候群発症のリスクは12~20%と推定されていた。その後、TIA治療は大きく変化したが、最近の患者の予後やリスクスコアシステムの有用性については明らかになっていない。研究グループによるTIAregistry.orgプロジェクトは、脳卒中専門医が緊急性を評価するようになった現行医療体制下で治療を受けた、TIAまたは軽症脳卒中患者の最新のプロファイル、再発等のリスク因子、そしてアウトカムを明らかにするようデザインされた研究であった。NEJM誌2016年4月21日号掲載の報告。