循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:217

リポ蛋白(a)値とCVDリスクの関連/Lancet

 スタチンによる治療を受けた患者の個々のデータを用いたメタ解析の結果、ベースライン時およびスタチン治療中のリポ蛋白(a)高値は、独立して心血管疾患(CVD)リスクとほぼ線形相関を示すことが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学のPeter Willeit氏らが報告した。リポ蛋白(a)値の上昇は、一般集団を対象とした研究においてCVDの遺伝的リスク因子であることが示されているが、CVD患者またはスタチン治療中の患者における心血管イベントリスクへの寄与度は不明であった。著者は、「リポ蛋白(a)値低下仮説を検証するCVDアウトカム研究を実施する理論的根拠が得られた」とまとめている。Lancet誌2018年10月4日号掲載の報告。

抗血栓薬の「診療ガイドライン」を書くには勇気が必要!(解説:後藤信哉氏)-934

ランダム化比較試験を中心とする「エビデンス」をまとめて診療ガイドラインが作成される。新薬では薬剤開発の第III相試験が唯一の「エビデンス」の場合も多い。しかし、疾病の発症リスクは時代とともに変化する。ある時点のランダム化比較試験に基づいて「診療ガイドライン」を作成しても、数年後には血栓イベントリスクは激減して、抗血栓薬などは不要になるかもしれない。「診療ガイドライン」は、過去のエビデンスに基づいて作成されるが、出血イベント増加が不可避の抗血栓薬では未来の血栓イベントリスクが低下すれば未来の適応は現在よりも限局される。

マダニが媒介するライム病、最適な抗菌薬は?

 早期ライム病(LB)における遊走性紅斑の管理について、抗菌薬の種類や治療法の選択をめぐる論争がある。ドイツ・アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクのGabriel Torbahn氏らは、早期LBへの各種抗菌薬と治療法に対するすべての無作為化試験について、ネットワークメタアナリシス(NMA)を行った。その結果、抗菌薬の種類や治療法は、有効性および薬剤関連有害事象に寄与しないことが明らかになった。著者は、「今回の結果は、LB患者を治療する医師ならびに患者の意思決定にとって重要なものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年10月3日号掲載の報告。

日本の常識、世界の常識(解説:野間重孝氏)-931

2015年にLancet誌(オンライン版)に発表されたSCOT-HEART試験は、安定胸痛患者の管理に冠動脈造影CT(CTA)を利用することにより、診断精度、診断頻度を上げることができることを示したが、フォローアップ期間が短かったこともあり、非致死性・致死性心筋梗塞の発症頻度の低下を証明することはできなかった(低下傾向はみられたが統計学的有意差が得られなかった)。このことから、CTAの利用が非致死性・致死性心筋梗塞の発症を低下させることを示すことを主な目的として、同研究グループが前研究の参加者を対象に5年間(中間値で4.8年)の長期フォローを行ったのが本研究である。

高血圧の発症、黒人成人でなぜ多い?/JAMA

 米国・アラバマ州立大学のGeorge Howard氏らは、白人成人との比較による黒人成人の高血圧症の過剰リスクについて臨床的および社会的要因との関連を調べた。媒介分析法を用いた検討の結果、男女ともに統計的な人種間の差を媒介しているキー要因は、南部型の食事スコア、食事におけるナトリウム値のカリウム値に対する比率、そして教育レベルであることが示されたという。また女性においては、腹囲とBMI値も主要因であった。米国の黒人集団は、高血圧症の有病率の高さが平均余命に格差をもたらす主因となっている。一方で、なぜ黒人成人で高血圧症の発症率が高いのかは明らかにされていなかった。JAMA誌2018年10月2日号掲載の報告。

BVS vs.DES、30日・1年時評価は?/Lancet

 拡大患者集団において、最適化された手技で留置された生体吸収性スキャフォールド(BVS)は金属製薬剤溶出ステント(DES)と比較して、30日時点と1年時点の標的病変不全および狭心症の発生について非劣性であることが示された。米国・コロンビア大学医療センターのGregg W. Stone氏らによる無作為化試験「ABSORB IV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年9月24日号に掲載された。先行研究で、BVSはDESよりも有害事象の発現頻度が多いことが示されていたが、1件の無作為化試験で狭心症の頻度がBVS群で低下したことが報告されていた。しかしながら、それら初期に行われた試験は、マスキングがされておらず、スキャフォールドにとって至適とされるサイズよりも小さい病変が登録された頻度が高く、留置テクニックは未熟であり、さらにBVSがより適しているのではと目されていた心筋梗塞の患者は除外されていた。

メディカル・アフェアーズの役割は医療と製薬産業の橋渡し

 2018年9月29日に開催された第9回日本製薬医学会年次大会において、製薬企業におけるメディカルアフェアーズ(MA)とメディカルサイエンスリエゾン(MSL)の役割や期待に対する葛藤などについて、西村 剛氏(大日本住友製薬)、柴 英幸氏(アストラゼネカ社)、松本 志保氏(武田薬品工業)、向井 陽美氏(アッヴィ合同会社)が発表した。  MAとは、セールスの評価を伴わず、自社製品における適正使用の推進や正しい臨床成績を出すための製薬企業の一部門である。医薬品は製剤情報をはじめ、市販後の情報が追加・付加されることで価値が高まっていく。創出した医学情報は治療の選択肢を増やすことにつながり、医療従事者や患者にとってメリットになる。そのため正しい臨床情報を創出することが重要である。

実臨床下での新型Resolute Onyx vs.Orsiro/Lancet

 プラチナ-イリジウムコア/コバルト合金ワイヤーストラット耐久性ポリマー・zotarolimus溶出ステント(Resolute Onyx)は、超薄型コバルト-クロムストラット生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント(Orsiro)と比較し、追跡期間1年時の安全性および有効性の複合エンドポイントについて非劣性であることが、オランダ・Medisch Spectrum TwenteのClemens von Birgelen氏らによる国際多施設共同無作為化単盲検非劣性試験「BIONYX」の結果、示された。著者は「イベント発現率は両群ともに低く、両ステントが安全であることを示唆しているが、ステント血栓症発症率がResolute Onyx群で非常に低く、さらなる臨床研究が推進される」とまとめている。これまで、実臨床下(all-comers)でResolute Onyxと他の薬剤溶出ステントを比較した研究はなかった。Lancet誌オンライン版2018年9月22日号掲載の報告。

紙巻きタバコのニコチン含量の即時低減は段階的低減や現状維持に比べ減煙達成率は高いが、その一方で禁煙率の改善につながるか不明?(解説:島田俊夫氏)-928

紙巻きタバコの喫煙習慣が健康にとって有害なのは周知されている。しかし、多くの喫煙者が禁煙できないのも現実。タバコには習慣性があり、自力で禁煙に苦しむニコチン中毒患者を禁煙させるのは簡単ではない。喫煙による多種多様の有害物の長期吸入による影響が動脈硬化やがんの発生につながるため、禁煙達成こそゴールとなる。禁煙指導の推進の結果として、日本の喫煙者率は減少傾向にあるのは事実であるが、本来の目標を達成するためには喫煙ゼロを目指すべき。ニコチン含量を減らした紙巻きタバコを使った禁煙/減煙に関する論文は散見されるが、2018年9月4日号のJAMA誌に掲載された米国ミネソタ大学のHatsukami DK氏らの論文は、研究対象も多く、追跡期間も相対的に長く、困難な禁煙に風穴を開ける減煙成功率の高い方法に関する報告であり、禁煙に難渋している喫煙者にとり禁煙への扉を開く可能性を秘めた論文と考え私見をコメントする。

週1回GLP-1受容体作動薬albiglutideの心血管アウトカムは/Lancet

 心血管疾患を有する2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬albiglutideはプラセボと比べて、主要心血管イベント(MACE)を有意に抑制することが示された。米国・デューク大学のAdrian F. Hernandez氏らが、28ヵ国、610の医療機関を通じ、約9,500例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験「Harmony Outcomes」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年10月2日号で発表した。GLP-1受容体作動薬は、化学的構造や作用時間の違いで、臨床的アウトカムへの影響は異なることが知られているが、週1回投与タイプのalbiglutideの、2型糖尿病患者における心血管系への効果についてはこれまで不明であった。今回の結果を受けて著者は、「GLP-1受容体作動薬は、エビデンスベースに基づき、2型糖尿病患者の心血管イベントリスクを低減するための総合的な戦略の一部と見なすべきであろう」と述べている。