循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:216

思い込みを正すことは難しい:MRIとペースメーカーの場合(解説:香坂俊氏)-849

あるとき誰かが思った。「MRIは強力な磁場を発生させるから、電子機器であるペースメーカーやICDには当然よくないだろう」。MRIでは磁場を発生させて水素分子の「回転」を計測する。しかし、体内に金属性のペースメーカーがあると、強力な磁場を周囲で発生させて先端のリード部分が熱を持ってしまう。すると「心筋への電気伝導に問題がおきるのではないか?」という危惧は当然出ることになる。また、ペースメーカーやICDのジェネレーターは、実は磁石を上に置くとスイッチオフ(※)できるようになっているので、「ジェネレーター部分のプログラムに異常が発生するのではないか?」という心配もある。

やはり、スタチンはACSの早期の投与が勧められる(解説:平山篤志氏)-846

非ST上昇型急性冠症候群に対して、アトルバスタチン80mgを投与することにより心血管イベントを有意に低減するMIRACL試験の結果は、スタチンの有用性を示すものとして大きなインパクトを与えた。その後の急性冠症候群(ACS)を対象としたスタチンの効果においても、ACSのより早期に投与することの有用性を示したものであった。ただ、PCI前のスタチン投与の有用性を示したARMYDA-ACSも1群85例とごく少数例の検討であり、ACSの有用性を示しても、どの時期に投与を開始すべきかについては、明らかでなかった。

COPD新ガイドライン、第1選択薬など5年ぶり見直し

 2018年4月、大阪で開催された第58回日本呼吸器学会において、同月20日に発刊された『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]』の改訂ポイントについて、久留米大学 呼吸器内科 川山 智隆氏が紹介した。前回の2013年から5年ぶりとなる今回の改訂では、日本人と欧米人の相違が指摘されている点を考慮し、近年の本邦での報告を重視している。

アブレーションはお嫌いですか?(解説:香坂俊氏)-847

あまり知られていないことなのだが、心房細動(AF)のリズムコントロールが「長期的な予後を改善した」という研究結果は「存在しない」。以前であればこうしたことは問題でなく、まぁ理に叶っていて、かつ安全性が担保されていれば(つまり、makes senseでsafety guaranteedなら)そんな治療をやってみてもいいんじゃないかという、かなりおおらかな雰囲気の中医療は行われていた。

糖尿病網膜症の日本人患者への強化スタチン療法:EMPATHY試験

 冠動脈疾患の既往歴のない、糖尿病網膜症合併高コレステロール血症患者に対するスタチン単独によるLDL-C低下療法は、通常治療と強化治療とで心血管イベントまたは心血管関連死に有意差は認められなかった。慶應義塾大学の伊藤 裕氏らが、EMPATHY試験の結果を報告した。著者は、「今回の結果は当初の予想より両群におけるLDL-Cの差が少なかった(36ヵ月時で27.7mg/dL)ため」との見解を示したうえで、「高リスク患者に対するtreat-to-target治療におけるLDL-C<70mg/dL達成のベネフィットについては、さらなる研究が必要である」とまとめている。Diabetes Care誌オンライン版2018年4月6日号掲載の報告。

強化脂質低下療法はベース値が高いほど有益/JAMA

 米国・Inova Heart and Vascular InstituteのEliano P. Navarese氏らは、被験者約27万例を含む34件の無作為化試験のメタ解析において、LDLコレステロール(LDL-C)低下療法の強化は非強化と比べて、ベースラインのLDL-C値がより高い患者で、総死亡(total mortality)および心血管死のリスクを低下させることを明らかにした。また、ベースラインのLDL-C値が100mg/dL未満では、この関連性は確認されず、著者は「LDL-C低下療法で最も大きなベネフィットが得られるのは、ベースラインのLDL-C値が高い患者である可能性が示唆された」とまとめている。JAMA誌2018年4月17日号掲載の報告より。

死亡リスク予測、24時間血圧 vs.診察室血圧/NEJM

 24時間自由行動下収縮期血圧(ABP)は診察室血圧よりも、全死因死亡および心血管死について、より強い予測因子であることが示された。血圧値の1標準偏差(SD)上昇当たりの全死因死亡に関するハザード比は、24時間ABPが1.58だったのに対し、診察室血圧では1.02だったという。また、「仮面高血圧」(診察室血圧は正常値だが24時間ABPは高値)の全死因死亡に関するハザード比は2.83で、持続性高血圧の1.80よりも高かった。また、「白衣高血圧」(診察室血圧が高値で24時間ABPは正常)の同HRも1.79で良性とはいえないことが示されたという。スペイン・マドリード自治大学のJose R. Banegas氏らが、約6万4,000例を対象に行った大規模な前向きコホート試験の結果で、NEJM誌2018年4月19日号で発表した。24時間ABPが予後に与える影響について、これまでに発表されているエビデンスは、主に住民ベース試験や比較的規模の小さい臨床試験に基づくものだったという。

治療抵抗性高血圧に、薬剤師による個別カウンセリングが有効である(解説:石上友章氏)-843

世界の高血圧診療には、神話のような定説がある。その1つとして、『米国の黒人の高血圧は、食塩感受性で治療抵抗性である』という説がある。日本で診療している以上、この説を検証する機会は皆無だろうし、日常的にどうしても解決しなくてはならないClinical Questionとして取り上げられることもないだろう。したがって、日本人の研究者が、このCQを仮説化して臨床研究を行うこともない。しかしながら本論文のように、一流誌といわれる医学ジャーナルに、この仮説を事実として、何らかの介入によって検証する目的の、臨床研究が掲載されることは、決してまれではない。