救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:63

慢性閉塞性肺疾患(COPD)への3剤配合吸入薬治療について(解説:小林英夫氏)-1255

呼吸機能検査において1秒率低下を呈する病態は閉塞性換気障害と分類され、COPD(慢性閉塞性肺疾患)はその中心的疾患で、吸入薬による気道拡張が治療の基本であることはすでに常識となっている。その吸入療法にどのような薬剤が望ましいのか、短時間作用型抗コリン薬(SAMA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)、短時間作用型β2刺激薬(SABA)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)などが登場している。さらに、COPDの一種として気管支喘息要素を合併している病態(ACO)が注目されてからは吸入ステロイド薬(ICS)が追加される場合もある。そして、これら薬剤を個別に使用するより合剤とすることで一層の効果を得ようと配合薬開発も昨今の流れである。

アビガン、ウイルス消失傾向も有意差示せず/多施設無作為化試験

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状および軽症患者に対するファビピラビル(商品名:アビガン)のウイルス量低減効果を検討した多施設非盲検ランダム化臨床試験の最終結果の暫定的な解析から、通常投与群(1日目から投与)は遅延投与群(6日目から投与)に比べて6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたが、統計学的に有意ではなかったことを、7月10日、藤田医科大学が発表した。本研究の詳細なデータを速やかに論文発表できるよう準備を進めるという。

肺炎小児へのアモキシシリン推奨は妥当か/NEJM

 5歳未満の非重症肺炎小児の治療において、治療失敗の頻度はアモキシシリンよりもプラセボのほうが高く、この差はプラセボの非劣性マージンを満たさないことから、現在の世界保健機関(WHO)の推奨は有効であることが、パキスタン・アガカーン大学のFyezah Jehan氏らが実施した「RETAPP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年7月2日号に掲載された。WHOは、頻呼吸を伴う肺炎患者に経口アモキシシリンを推奨している。一方、この病態の治療にアモキシシリンを使用しなくても、使用した場合に対して非劣性である可能性を示唆するデータがあるという。

忘れてはいけない日本の貢献(解説:後藤信哉氏)-1254

欧米列強に追い付け追い越せの明治時代の日本の勢いはすさまじかった。国力の勝負としての戦争は歴史に残る。日露戦争はとても互角とは言えない相手に競り勝ち、大東亜戦争も常識的に勝てるはずのない相手と同じ土俵に乗った。医学の世界でも、北里 柴三郎による破傷風の抗毒素血清療法は画期的であった。細菌学における日本の貢献は、その時の経済力から考えると驚異的である。近年はやりの抗凝固薬、抗血栓薬の開発にも日本は画期的役割を果たした。とくに、「止血のための抗線溶薬」となると世界における日本の貢献は突出している。線溶を担うプラスミンの選択的阻害薬トラネキサム酸を開発したのは日本である。「止血薬」となると世界の第1選択はトラネキサム酸である。消化管出血でも、まず安価なトラネキサム酸にて止血を図ろうとするのが世界の標準医療である。

COVID-19重症例、フサン+アビガンで臨床症状が改善/東大病院

 020年7月6日、東京大学医学部附属病院は医師主導の多施設共同研究である『集中治療室(ICU)での治療を必要とした重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するナファモスタットメシル酸塩(以下、ナファモスタットメシル酸塩[商品名:フサン])とファビピラビル(商品名:アビガン)による治療』の成績について発表した。それによると、治療対象者11例(男性:10例、女性:1例、年齢中央値:68歳)のうち10例で臨床症状の軽快が見られた。また、回復症例は人工呼吸器使用が7例、うち3例がECMOを要したが、16日(中央値)で人工呼吸器が不要となった」ことが明らかになった。

米国・3人に1人が新型コロナ消毒方法を間違える/CDC

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以来、米国では洗剤や消毒薬曝露に関する毒物センターへの問い合わせが急激に増加している。そこで、米国疾病予防管理センター(CDC)COVID-19 Response TeamのRadhika Gharpure氏らが米国人の消毒薬の使用状況を調査した。その結果、洗剤や消毒薬の安全な準備・使用・保管に関する知識には個人差が見られ、回答者の約3分の1は「食品へ漂白剤を使用」「皮膚に家庭用洗浄剤や消毒薬を使用」「洗剤や消毒薬の吸入または摂取」など、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染を防ぐためには推奨できない方法をとっていたことが明らかになった。研究者らは、手指衛生や手で触れやすい場所の清掃や消毒など、家庭でのSARS-CoV-2感染予防のための根拠に基づく安全な清掃・消毒の実践法について、引き続き強調する必要があるとしている。2020年6月12日CDC・Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)掲載の報告。

トラネキサム酸、消化管出血による死亡を抑制せず/Lancet

 急性期消化管出血の治療において、トラネキサム酸はプラセボに比べ死亡を抑制せず、静脈血栓塞栓症イベント(深部静脈血栓症または肺塞栓症)の発生率が有意に高いことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のIan Roberts氏らが実施した「HALT-IT試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2020年6月20日号に掲載された。トラネキサム酸は、外科手術による出血を低減し、外傷患者の出血による死亡を抑制することが知られている。また、本試験開始前のCochraneの系統的レビューとメタ解析(7試験、1,654例)では、消化管出血による死亡を低下させる可能性が示唆されていた(統合リスク比[RR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.42~0.89、p=0.01)。一方、メタ解析に含まれた試験はいずれも小規模でバイアスのリスクがあるため、大規模臨床試験による確証が求められていた。

医療ミス多いのは?24h以上の長時間勤務 vs.16h以内の2交代制/NEJM

 米国小児科研修医のICUローテーション中のスケジュールについて、24時間以上の長時間勤務のほうが、16時間以内の日中・夜間勤務を繰り返すスケジュールに比べ、研修医による重大な医療ミス発生率が低かったことが示されたという。ただし、実施した施設によるばらつきは大きかった。米国・ボストン小児病院のChristopher P. Landrigan氏らが行った、2パターンの勤務シフトを比較した多施設共同クラスター無作為化クロスオーバー試験の結果で、著者は「仮説に反する試験結果となった」と述べながら、要因として「各研修医が治療するICUの患者数は、長時間勤務でないスケジュール群のほうが多かった」ことに触れている。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。

COVID-19入院患者にバリシチニブ治験へ/リリー

 米国・イーライリリー・アンド・カンパニーは、成人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者を対象に、インサイト(Incyte)社からライセンス供与されている経口JAK1/JAK2阻害剤バリシチニブの有効性および安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験に、最初の患者が組み入れられたことを6月15日に発表した。 ■試験の概要  本試験には400人の患者が組み入れられ、米国、欧州およびラテンアメリカで実施される予定。なお、患者はSARS-CoV-2感染により入院し、試験組み入れ時に、少なくとも1種類の炎症マーカーの上昇があるが侵襲的機械換気(気管挿管による人工呼吸)を必要としない患者が対象となる。

COVID-19重症化リスクのガイドラインを更新/CDC

 6月25日、米国疾病予防管理センター(CDC)はCOVID-19感染時の重症化リスクに関するガイドラインを更新し、サイトで公開した。  CDCは、重症化リスクの高い属性として「高齢者」「基礎疾患を持つ人」の2つを挙げ、それぞれのリスクに関する詳細や感染予防対策を提示している。また、今回からリスクを高める可能性がある要因として、妊娠が追加された。  米国で報告されたCOVID-19に関連する死亡者の8割は65歳以上となっている。 ・他人との接触を避け、やむを得ない場合は手洗い、消毒、マスク着用などの感染予防策をとる。 ・疑い症状が出た場合は、2週間自宅に待機する。 ・イベントは屋外開催を推奨、参加者同士で物品を共有しない。 ・他疾患が進行することを防ぎ、COVID-19を理由に緊急を要する受診を遅らせない。 ・インフルエンザ、肺炎球菌ワクチンを接種する。 ・健康状態、服薬状況、終末期ケアの希望などをまとめた「ケアプラン」を作成する。