救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:65

院外気管挿管時、ロクロニウムvs.スキサメトニウム/JAMA

 院外救急医療の気管挿管時において、ロクロニウムの使用はsuccinylcholine(本邦ではスキサメトニウム)に対し、初回成功率に関して非劣性を示さなかった。フランス・CHU de la Reunion病院のBertrand Guihard氏らが1,248例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。ロクロニウムおよびsuccinylcholineは迅速導入気管挿管時にしばしば使用されるが、これら薬剤の救急医療での気管挿管成功に関する有効性の比較について臨床試験による評価はされておらず、またsuccinylcholine使用では、ロクロニウム使用では報告されていない有害事象との関連が示されていた。JAMA誌2019年12月17日号掲載の報告。

一般市民によるAED、不成功でも神経学的転帰改善/Lancet

 院外心停止(out-of-hospital cardiac arrest:OHCA)患者への自動体外式除細動器(automated external defibrillator:AED)を用いた一般市民による除細動(public-access defibrillation:PAD)の実施は、AEDを使用しない場合に比べ、その場では自己心拍再開が達成されなかったとしても、その後の神経学的転帰を改善する可能性があることが、国立循環器病研究センターの中島 啓裕氏ら日本循環器学会蘇生科学研究グループの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年12月21日号に掲載された。日本では、ショック適応リズムを伴うOHCA患者へのPADの80%以上は、救急隊(emergency medical service:EMS)の現地到着前に、持続的な自己心拍再開には至らないという。これら患者の神経学的および生存転帰は知られていなかった。

てんかん重積状態が止まらないときの薬剤選択(解説:岡村毅氏)-1162

精神科医をしていると、世界はいまも謎に満ちていると感じる。ほかの科ではどうであろうか? 教科書だけ見ていると、多くのことが既知になり、予測可能になったように思われる。でも臨床現場はいまだにわからないことだらけだ。医師になって17年が過ぎたが、闇の中で意思決定をし続けなければならない臨床医学に、私はいまだに戦慄することがある。精神医学の例を挙げだすと深みにはまるので、神経学の例を挙げよう。たとえば、てんかん重積状態である。ベンゾジアゼピンが効かない場合どうすればよいのだろうか? 日本神経学会のガイドラインでは、ホスフェニトインあるいはフェノバルビタールあるいはミダゾラムあるいはレベチラセタムとある。要するに、どれが優れているかわからないのだ。

院内心停止の生存率を左右する予後因子とは/BMJ

 院内心停止患者では、心停止前に悪性腫瘍や慢性腎臓病がみられたり、心停止から自己心拍再開までの蘇生時間が15分以上を要した患者は生存の確率が低いが、目撃者が存在したり、モニタリングを行った患者は生存の確率が高いことが、カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。院内心停止は生存率が低く、臨床的知識の多くは院外心停止に関する豊富な文献からの推測だという。院内心停止と関連する心停止前および心停止中の予後因子の理解は、重要な研究分野とされる。

てんかん重積、レベチラセタムvs.ホスフェニトインvs.バルプロ酸/NEJM

 ベンゾジアゼピン系薬治療抵抗性の痙攣性てんかん重積状態の患者に対し、静注用抗痙攣薬レベチラセタム、ホスフェニトイン、バルプロ酸は、いずれも効果は同等で、約半数で1時間以内に発作停止と意識レベル改善が認められることが明らかにされた。有害事象の発現頻度も3剤間で同程度だった。米国・バージニア大学のJaideep Kapur氏らが、384例を対象に行った適応的デザイン・無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌2019年11月28日号で発表した。これまで、同患者への薬剤選択について十分な研究は行われていなかった。

遠隔筋肉の虚血を誘導しても、急性心筋梗塞患者の予後は改善しない(解説:佐田政隆氏)-1150

骨髄に多分化能を有した幹細胞が存在して、骨髄細胞を梗塞心筋に注入すると心機能が改善するという動物実験がこの15年位前に次々と報告された。当初は、骨髄細胞が心筋細胞や内皮細胞に分化すると認識されていたが、現在のところは、注入した細胞がさまざまなサイトカインを分泌して、血管新生を促進したり心機能を改善するという説が主流になっている。いずれにせよ、多施設の臨床研究が次々と施行されたが、残念ながら、骨髄細胞の虚血心筋への移植が臨床経過を改善したという、はっきりとしたエビデンスがないのが現状である。

州による敗血症治療のプロトコール導入は、成人敗血症の院内死亡の減少に寄与したか(解説:吉田敦氏)-1141

12歳の男児が敗血症で死亡したことを受け、ニューヨーク州は2013年に「Rory’s Regulations」を定めた。この規則はすべての急性期病院に対し、敗血症の早期診断と治療開始に関するプロトコールを導入し(たとえば抗菌薬ならば3時間以内に開始)、診療にあたること、ならびにその順守に関して職員の教育を行うとともに、順守割合と臨床的転帰について報告を求めたものである。本研究はプロトコール導入が実際に成人の院内死亡の減少に寄与したかを、本規則が定められていない対照4州と比較して明らかにしようとした。プライマリーアウトカムは30日院内死亡率で、ニューヨーク州では規則導入の前後で26.3%から22.0%であったのに対し、対照4州では該当期間の変化は22.0%が19.1%となっており、ニューヨーク州では患者・病院特性と規則導入前からの傾向を調整しても、対照州に比べその減少幅は有意に大きかった。

欧州のICU終末期医療、延命治療めぐる実態は?/JAMA

 欧州のICUにおける終末期(エンドオブライフ)の方針決定について、16年前の調査時と比べて、延命治療の制限が有意に増大しており、延命治療の制限を受けなかった死亡は有意に減少していたことが判明した。イスラエル・ヘブライ大学のCharles L. Sprung氏らが、1999~2000年に行ったICUにおける終末期医療に関する研究「Ethicus-1」対象の欧州22ヵ所のICUについて、2015~16年に前向き観察研究「Ethicus-2」を行い明らかにし、JAMA誌オンライン版2019年10月2日号で発表した。ICUにおける終末期の方針決定は世界中で日々起きているが、ここ10年間で欧州での終末期医療に関する考え方、法律、勧告・ガイドラインに変化が生じており、ICUでの方針決定が変化している可能性が示唆されていた。

「日本版敗血症治療ガイドライン2020」の改訂ポイントを公開

 2019年10月2~4日に行われた第47回日本救急医学会総会・学術集会において、2020年夏に向け2回目の改訂作業が進む「日本版敗血症治療ガイドライン2020(J-SSCG2020)」の編集方針と改訂ポイントをテーマにしたパネルディスカッションが行われた。  日本版敗血症治療ガイドライン2020改訂のポイント 冒頭に、2016年の日本版敗血症治療ガイドライン(J-SSCG2016)の作成委員会委員長を務めた藤田医科大学教授の西田 修氏が前回改訂を振り返った。「敗血症のガイドラインとしては『敗血症診療国際ガイドライン(SSCG)』があり、2004年に初版が刊行され、2020年には4回目の改訂が予定される同ガイドラインは国際的評価も高い。作成当初はこれを訳せばいいのでは、という声も多かった」と振り返った。敢えて日本版敗血症治療ガイドラインを作成した意義については、「日本独自の視点も大切にしながら、国際ガイドラインに劣らない質を追求し、それを人材育成につなげることを目指した」と述べた。日本版敗血症治療ガイドラインは当初は日本集中治療医学会が作成し、1回目の改訂にあたる日本版敗血症治療ガイドライン2016からは、同学会と日本救急医学会の合同作成となっている。

薬物中毒搬送者、カフェイン致死量摂取が原因/日本救急医学会

 昭和時代には農薬による中毒事故が多発していたが、近年では、手軽に入手できる一般用医薬品(OTC)の過量服用や違法薬物の蔓延などが問題視されている。2019年10月2~4日、第47回日本救急医学会総会・学術集会が開催され、シンポジウム8「不断前進、中毒診療」において、廣瀬 正幸氏(藤田医科大学病院薬剤部 災害・外傷センター)が「急性薬物中毒患者に対する救急常駐薬剤師の活動と役割」について講演。薬物中毒で搬送される患者像や病院薬剤師の病院外での活動について報告した。