外科/乳腺外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

HR+/HER2-進行乳がん、ESR1変異検査を行うタイミングは?(PADA-1)/ESMO BREAST 2025

 第III相PADA-1試験では、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対する1次治療としてアロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用療法を受けた患者のうち、疾患進行前に血液中で検出されたESR1変異を有する患者において、フルベストラントとパルボシクリブ併用療法への早期切り替えの臨床的有用性が示されている。フランス・キュリー研究所のFrancois Clement Bidard氏は、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2025、5月15~17日)で同試験の2次解析結果を発表し、血中ESR1変異累積発現率は約40%で、その検出時期は一様でなく、治療開始後6ヵ月以内の検出例は少数であり、3年以降は減少することが確認された。

乳製品摂取と慢性肝疾患・肝がんリスクが関連

 乳製品摂取量と慢性肝疾患死亡率および肝がん発症率との関連性を評価した結果、高脂肪乳製品摂取は慢性肝疾患死亡リスクを高める一方で低脂肪乳製品摂取はリスクを下げ、乳製品全体・高脂肪乳製品・牛乳は肝がんリスクを高めることを、米国・ハーバード大学のXing Liu氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2025年4月28日号掲載の報告。  本研究は、1995~96年の米国国立衛生研究所-AARP 食事・健康研究の参加者を対象とした前向きコホート研究。がんの既往歴のある参加者や過剰なカロリー摂取歴のある参加者は除外された。乳製品の摂取量や摂取頻度などは、検証済みの食品摂取頻度質問票を用いて聴取した。Cox比例ハザードモデルを用いて関連を検討した。

術後の吐き気、アロマセラピーで改善か

 術後の悪心・嘔吐(PONV)は、全身麻酔による手術を受けた患者の約30%で発生する。口腔外科手術では、PONVの発生する割合がさらに上がることが報告されているが、今回、アロマセラピーにより術後悪心(PON)の重症度が軽減されるという研究結果が報告された。北海道大学大学院歯学研究院歯科麻酔学教室の石川恵美氏らの研究によるもので、詳細は「Complementary Therapies in Medicine」に3月26日掲載された。  PONVの管理は、全身麻酔での手術後の予後と患者の治療満足度にとって重要な要素の1つだ。海外のPONVのガイドラインでは、女性や、高リスクの手術、揮発性吸入麻酔薬の使用といった複数のリスク因子を有する患者に対しては、3~4つの対策を講じることが望ましいとされている。しかし、国内では保険適用可能な薬剤の数が限られており、これらの高リスク患者のPONV管理においては、複数の対策を講じるための代替となる新しい手段の検討が必要である。

免疫チェックポイント阻害薬の治療効果、年齢による差は認められず

 人の免疫システムが加齢に伴い衰えていくことはよく知られている。しかし、そのような免疫機能の低下が、がんに対する免疫療法の効果を妨げることはないようだ。がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬による治療は年齢に関わりなく有効であることが、新たな研究で明らかにされた。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部腫瘍学分野のDaniel Zabransky氏らによるこの研究結果は、「Nature Communications」に4月21日掲載された。Zabransky氏は、「高齢患者に対する免疫療法の効果は、若年患者と同等か、場合によってはそれ以上だ」と述べている。

がん診療に携わるすべての人のレベルアップ目指しセミナー開催/TCOG

 東京がん化学療法研究会(TCOG)は、第25回臨床腫瘍夏期セミナーをオンラインで開催する。  同セミナーは、がん診療に携わる医師、薬剤師、看護師、臨床研究関係者、製薬会社、CROなどを対象に、治療の最新情報、臨床研究論文を理解するための医学統計などさまざまな悪性腫瘍の基礎知識から最新情報まで幅広く習得できるよう企画している。 ・日時:2025年7月18日(金)~19日(土) ・開催形式:オンライン(ライブ配信、後日オンデマンド配信を予定) ・定員:500人 ・参加費:15,000円(2日間) ・主催・企画:特定非営利活動法人 東京がん化学療法研究会 ・後援:日本医師会、東京都医師会、東京都病院薬剤師会、日本薬剤師研修センター、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本産科婦人科学会、日本医療薬学会、日本がん看護学会、西日本がん研究機構、North East Japan Study Group ・交付単位(予定):日本薬剤師研修センターによる単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)、日本医療薬学会 認定がん専門薬剤師・がん指導薬剤師認定単位(7/18受講:2単位、7/19受講:2単位)、日本看護協会 認定看護師・専門看護師:「研修プログラムへの参加」(参加証発行)、日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師講習(研修)認定単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)

医療現場でのコミュニケーションの問題はインシデントの主因

 医療現場でのコミュニケーションの問題は、患者の安全に関わるインシデント(以下、インシデント)の主因であることが、新たな研究で明らかになった。インシデントとは、ニアミスなど患者に実害がなかったものも実害があったものも含めた、標準的な医療から逸脱した行為や事態のことを指す。本研究では、コミュニケーションの問題のみを原因として生じたインシデントは13.2%に上ることが示されたという。英レスター大学医学部のJeremy Howick氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月15日掲載された。

ピロリ除菌後の胃がんリスクを予測するバイオマーカー~日本の前向き研究

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌後においても0.5~1.2%の人に原発性胃がんが発生する可能性がある。このような高リスクの集団を識別する新たなバイオマーカーとして、非悪性組織におけるepimutationの蓄積レベル(epimutation負荷)ががんリスクと関連していることが複数の横断的研究で報告されているが、前向き研究でリスク予測におけるDNAメチル化マーカーの有用性は確認されていない。今回、星薬科大学の山田 晴美氏らの研究により、epimutation負荷のDNAメチル化マーカーであるRIMS1がH. pylori除菌後の健康人における原発性胃がんリスクを正確に予測可能であることが示された。Gut誌オンライン版2025年4月15日号に掲載。

米国がん協会のガイドライン遵守はがんサバイバーの寿命を延ばす

 喫煙習慣のない肥満関連のがんサバイバーは、米国がん協会(ACS)が推奨する食事と身体活動に関するガイドラインを遵守することで死亡リスクが低下する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。ACS疫学研究の主任科学者であるYing Wang氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Cancer Institute」に4月3日掲載された。  Wang氏は、「がんの診断がきっかけで、どうすれば生活習慣をより健康的にできるかを考える人は多い。多くのがんサバイバーは、長生きする可能性を高めるためにできる生活習慣の是正について知りたがっている」とACSのニュースリリースで述べている。

術後二次治癒創の治癒期間、局所陰圧閉鎖療法vs.通常治療/Lancet

 糖尿病などの合併症があり、下肢の術後二次治癒創(SWHSI)を有する患者において、局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)が標準的な被覆材(ドレッシング)と比較して創傷治癒までの期間を短縮するという明らかなエビデンスは確認されなかった。英国・ヨーク大学のCatherine Arundel氏らが、国民保健サービス(NHS)の29施設で実施したプラグマティックな無作為化非盲検並行群間比較試験「SWHSI-2試験」の結果を報告した。SWHSIは治療管理およびコスト面で大きな課題を抱えており、有効性の比較を基にしたエビデンスがないにもかかわらず、治療法としてNPWTが用いられることが増えている。著者は、「本研究の結果は、SWHSIの治癒促進のためにNPWTを使用することを支持しないものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年4月15日号掲載の報告。

黄斑部の厚さが術後せん妄リスクの評価に有効か

 「目は心の窓」と言われるが、目は術後せん妄リスクのある高齢患者を見つけるのにも役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。網膜の中心部にある黄斑部が厚い高齢者は、術後せん妄の発症リスクが約60%高いことが示されたという。同済大学(中国)医学部教授のYuan Shen氏らによるこの研究の詳細は、「General Psychiatry」に4月1日掲載された。Shen氏は、「本研究結果は、黄斑部の厚みを非侵襲的なマーカーとして、麻酔および手術後にせん妄を発症しやすい高齢者を特定できる可能性があることを示唆している」と話している。