外科/乳腺外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

オランザピンの制吐薬としての普及率は?ガイドライン発刊後の状況を聞く

 『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂第3版』が発刊され、約2年が経過しようとしている。改訂による大きな変更点の一つは、“高度催吐性リスク抗がん薬に対するオランザピン5mgの使用を強く推奨する“ことであったが、今現在での医師や医療者への改訂点の普及率はどの程度だろうか。前回の取材に応じた青儀 健二郎氏(四国がんセンター乳腺外科 臨床研究推進部長)が、日本癌治療学会のWebアンケート調査「初回調査結果報告書」とケアネットがCareNet.com医師会員を対象に行ったアンケート「ガイドライン発刊から6ヵ月が経過した現在の制吐薬の使用状況について」を踏まえ、実臨床での実態や適正使用の普及に対する課題を語った。

HER2+炎症性乳がん、術前アントラサイクリン上乗せは有用か?

 HER2陽性乳がんの術前療法にアントラサイクリンを追加することによるベネフィットは、無作為化臨床試験において示されなかったが、炎症性乳がんにおける有効性は明らかになっていない。HER2陽性の炎症性乳がんを対象とした後ろ向き研究の結果、術前療法でのアントラサイクリン追加は病理学的完全奏効(pCR)との関連は示されなかったものの、疾患コントロール期間の延長に寄与する可能性が示唆された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの岩瀬 俊明氏らによるBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2025年8月2日号への報告。  2014~21年に、MDアンダーソンがんセンター、IBCネットワーク関連施設、ダナ・ファーバーがん研究所にて術前療法と胸筋温存乳房切除術を受けたHER2陽性原発性炎症性乳がん患者を対象に後方視的な検討が行われた。主要評価項目はpCR率、副次評価項目には、局所・領域再発までの期間(TLRR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が含まれた。単変量解析および多変量解析が、臨床的に関連する交絡因子を調整したうえで実施された。

周術期心停止で緊急手術と待機的手術では差異があるか/浜松医科大

 周術期の心停止は緊急手術でより頻度が多く、死亡リスクを伴うが、その発生率、原因、および転帰を調査した大規模な研究は不足している。そこで、このテーマについて浜松医科大学医学部附属病院集中治療部の姉崎 大樹氏らの研究チームは、全国のICUデータを基にわが国の緊急手術と待機的手術における周術期心停止の疫学を調査した。その結果、緊急手術では待機的手術と比較し、周術期心停止の発生率が高いことが判明した。この結果は、British Journal of Anaesthesia誌オンライン版2025年7月24日号に公開された。  研究グループは、日本集中治療患者データベース(JIPAD)という全国的なICU登録データベースを用い、2015年4月~2023年3月までの間に手術室からICU入院前に心停止を経験した患者を対象に調査を行った。患者は、緊急手術と待機的手術に分類され、発生率、手術手技、原因、臨床転帰に関する群間比較を行う多施設共同後ろ向きコホート研究を実施した。

重度irAE後のICI再治療、名大実臨床データが安全性と有効性を示唆

 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)はがん治療に革命をもたらしたが、重度の免疫関連有害事象(irAE)を引き起こす可能性がある。今回、irAE発現後にICIによる再治療を行った患者でも、良好な安全性プロファイルと有効性が示されたとする研究結果が報告された。研究は、名古屋大学医学部附属病院化学療法部の水野和幸氏、同大学医学部附属病院消化器内科の伊藤隆徳氏らによるもので、詳細は「The Oncologist」に6月14日掲載された。  抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体を含むこれらのICIは、単剤または併用療法として患者の予後を大きく改善してきた。ICIは抑制性シグナル伝達経路を阻害することで抗腫瘍免疫応答を高める一方、重度のirAEを引き起こす可能性がある。irAEは一般的に内分泌腺、肝臓、消化管、皮膚などに発生する。グレード3以上の重度の非内分泌irAEに対しては、現行のガイドラインに基づき、ICIの一時的または恒久的な中止が推奨される。このため、重度のirAE発症後のICI再治療は、効果と再発リスクのバランスが課題となる。過去の報告ではirAE再発率は約30%とされているが、患者背景や重症度の詳細が不十分だった。既存のメタ解析も、研究間の異質性やイベント報告の不備が課題とされている。こうした背景から、著者らは重度のirAE後のICI再治療の安全性と有効性を明らかにすることを目的に、ICI再治療後のirAE発生と患者の転帰に焦点を当てた後ろ向き解析を実施した。

米国で肥満関連がんによる死亡が20年で3倍以上に

 米国では過去20年間で、肥満に関連するがんによる死亡が3倍以上に増加したとする研究結果が、米国内分泌学会(ENDO2025、7月12~15日、サンフランシスコ)で発表された。米ハッケンサック・メリディアン・ジャージーショア大学医療センターのFaizan Ahmed氏らが報告した。  Ahmed氏らの研究によって、肥満関連の13種類のがんによる米国での死亡率が、1999年から2020年の間に、100万人当り3.7人から13.5人に増加したことが明らかにされた。主任研究者である同氏は、「肥満は多くのがんの重大な危険因子であり、死亡率の上昇に寄与している」と解説。また、「われわれの研究から、特に農村部や医療サービスが行き届いていない地域で、肥満に関連するがんによる死亡のリスクが高いことも示された」としている。

monarchE適格基準を満たす乳がんの予後、サブグループ間でばらつき

 monarchE試験において、高リスクHR+/HER2-早期乳がんに対する術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加のベネフィットが示されているが、高リスク患者のサブグループごとの再発リスクの差異については不明である。そこで、国立がん研究センター中央病院の星野 舞氏らは自施設の症例を対象に、monarchEコホート1の適格基準(リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個で腫瘍径5cm超または組織学的グレード3)のサブグループ別に予後を解析したところ、ばらつきがあることが示された。Breast Cancer誌オンライン版2025年7月28日号に掲載。  本研究は、2017年1月~2019年8月に国立がん研究センターで手術を受けたHR+/HER2-乳がん患者989例を後ろ向きに解析した。患者を非適格群(monarchEコホート1適格基準を満たさない)、N1+>5cm群(腫瘍径5cm超かつリンパ節転移1~3個)、N1+G3群(組織学的グレード3かつリンパ節転移1~3個)、≧N2群(リンパ節転移4個以上)の4群に分け、無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無病生存期間、全生存期間を含む生存アウトカムを、Kaplan-MeierモデルおよびCox比例ハザードモデルを用いて解析した。

HR+/HER2-進行再発乳がん、CDK4/6i直後のS-1の有用性は?/日本乳癌学会

 HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対して、CDK4/6阻害薬による治療直後の経口フッ化ピリミジン系薬剤(以下「経口5-FU」)は有望な選択肢になり得ることを、九州がんセンターの厚井 裕三子氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。  HR+/HER2-の進行・再発乳がんの標準療法は、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用療法である。乳癌診療ガイドラインにおいて、S-1やカペシタビンなどの経口5-FUは、HR+/HER2-の転移・再発乳がんの1次・2次化学療法として弱く推奨されているが、これらの推奨の根拠となる臨床試験はCDK4/6阻害薬が臨床導入される以前の試験であるため、CDK4/6阻害薬の前治療歴がない患者が対象となっている。そこで研究グループは、HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対するCDK4/6阻害薬治療後の経口5-FUの治療効果を調査した。

乳がんT-DXd直後の抗HER2療法、効果が期待できる患者は?(EN-SEMBLE)/ESMO Open

 再発または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、日本の実臨床下においてトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の中止直後に実施した治療レジメンの分布、有効性、間質性肺疾患(ILD)の発現率を検討したEN-SEMBLE試験の結果を、名古屋市立大学の能澤 一樹氏がESMO Open誌2025年8月号で報告した。その結果、患者の73%がT-DXd中止直後の治療として別の抗HER2療法をベースとした治療を受けており、有害事象(AE)のためにT-DXdを中止した患者や奏効を得られた患者では抗HER2療法を逐次的に行うことで利益を得られる可能性があることを明らかにした。

腋窩リンパ節郭清省略はどこまで進むのか~現状と課題/日本乳癌学会

 乳がん治療においては、近年、術前化学療法(NAC)の高い完全奏効率から手術のde-escalationが期待されるようになり、なかでも腋窩リンパ節郭清(ALND)省略はQOLを改善する。第33回日本乳癌学会学術総会で企画されたパネルディスカッション「腋窩リンパ節郭清省略はどこまで進む?」において、昭和医科大学の林 直輝氏が腋窩リンパ節郭清省略の現状と課題について講演した。  ALNDのde-escalationは、リンパ浮腫などの合併症を減らすメリットと、不十分な局所コントロールが予後を悪化させるリスクがあるため、そのバランスが非常に大事である。その対応は、手術先行かNAC実施か、臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)か陽性(cN+)か、さらにそれが消失したかどうかによって変わるため、非常に複雑である。