膠原病・リウマチ科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

シェーグレン病への疾患修飾薬の可能性:中等度から重度のシェーグレン病患者に対するニポカリマブの有効性と安全性(DAHLIAS試験)(解説:萩野昇氏)

シェーグレン“病”は、唾液腺・涙腺を中心とする自己免疫疾患ですが、近年「症候群」から「病(disease)」へ呼称が改められ、疾患としての実体がより明確に位置付けられました。21世紀以降、多くの膠原病・リウマチ性疾患の治療が飛躍的に進歩したのに対し、シェーグレン病は対症療法を行うしかない、いわば“取り残された疾患”でした。本論文(DAHLIAS試験)の新生児Fc受容体阻害薬(anti-FcRn monoclonal antibody)は、その停滞を打ち破る可能性を示しています。本試験には163例の中等度〜重症のシェーグレン病患者が参加し、平均年齢は約48歳、罹病期間は平均約6年でした。抗SS-A(Ro)抗体が陽性で、全身の病勢を示すスコア(ClinESSDAI)が6点以上の“臨床的活動性の高い”患者が対象です。

全身型重症筋無力症の治療薬ニポカリマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2025年11月12日に全身型重症筋無力症の治療薬として、ヒトFcRn阻害モノクローナル抗体ニポカリマブ(商品名:アイマービー)を発売した。  重症筋無力症(MG)は、免疫系が誤って各種の抗体(抗アセチルコリン受容体抗体、抗筋特異的キナーゼ抗体など)を産生する自己抗体疾患。神経筋接合部のタンパク質を標的として、正常な神経筋シグナル伝達を遮断または障害することで、筋収縮を障害もしくは妨げる。MGは全世界で70万人の患者がいると推定され性差、年齢、人種差を問わず発症するが、若い女性と高齢の男性に最も多くみられる。初発症状は眼症状であることが多く、MG患者の85%は、その後、全身型重症筋無力症(gMG)に進行する。gMGの主な症状は、重度の骨格筋の筋力低下、発話困難、嚥下困難であり、わが国には約2万3,000人のgMG患者がいると推定されている。

中等症~重症シェーグレン病、ニポカリマブが有用/Lancet

 中等症~重症の活動期シェーグレン病患者において、ニポカリマブ(本邦では全身型重症筋無力症の適応で承認)の15mg/kgの投与はプラセボと比較して臨床疾患活動性を有意に改善し、安全かつ良好な忍容性が認められた。米国・カンザス大学のGhaith Noaiseh氏らが、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スペイン、台湾および米国の69施設で実施した第II相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「DAHLIAS試験」の結果を報告した。ニポカリマブは、自己抗体を含む循環IgGを減少させる胎児性Fc受容体(FcRn)阻害薬である。シェーグレン病は、粘膜乾燥、疲労、慢性疼痛、全身臓器病変、自己反応性IgG抗体の上昇を特徴とし、これまでに承認された疾患修飾薬はなかった。Lancet誌オンライン版2025年10月24日号掲載の報告。

SGLT2阻害薬、自己免疫性リウマチ性疾患のリスクは?/BMJ

 韓国の大規模な2型糖尿病成人コホートにおいて、SGLT2阻害薬はスルホニル尿素(SU)薬と比較し自己免疫性リウマチ性疾患のリスクを11%低下させることが、韓国・成均館大学校のBin Hong氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で示された。SGLT2阻害薬は、その潜在的な免疫調節能により自己免疫疾患への転用候補の1つと考えられているが、自己免疫病態に関与する発症経路における重要な細胞や分子に対する阻害作用が臨床的に意味を有するかどうかは依然として不明であった。著者は、「今回の結果は、SGLT2阻害薬が自己免疫疾患のリスク低減に寄与する可能性を示唆しているが、潜在的な有益性は、既知の有害事象や忍容性に関する懸念と慎重に比較検討する必要があり、他の集団や状況における再現性の検証、ならびに自己免疫性リウマチ性疾患患者を対象とした研究が求められる」と述べている。BMJ誌2025年10月15日号掲載の報告。

IPFに対するnerandomilast、第III相試験のアップデート解析(FIBRONEER-IPF)/ERS2025

 ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬nerandomilastは、特発性肺線維症(IPF)患者を対象とした国際共同第III相試験「FIBRONEER-IPF試験」、進行性肺線維症(PPF)患者を対象とした「FIBRONEER-ILD試験」において、主要評価項目の努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制したことが報告されている。欧州呼吸器学会(ERS Congress 2025)において、FIBRONEER-IPF試験のデータ最終固定時の解析結果をJustin M. Oldham氏(米国・ミシガン大学)が報告した。本解析において、FVCの低下抑制効果は76週時まで維持された。また、主要な副次評価項目に有意差はみられなかったものの、nerandomilast高用量群では死亡リスクの数値的な低下がみられた。

関節リウマチの一因は免疫の早期老化?

 関節リウマチ(RA)は、免疫システムの早期老化が一因で生じる可能性のあることが、新たな研究で示された。この研究では、関節痛や関節炎を有する人において、免疫の老化が進んでいる兆候が認められたという。英バーミンガム大学免疫老化分野のNiharika Duggal氏らによるこの研究の詳細は、「eBioMedicine」に9月3日掲載された。  Duggal氏らは、「これは、免疫の老化がRAの発症に直接的な役割を果たしている可能性があることを示唆している」と述べている。RAは、免疫系が自身の関節を攻撃することで発症する自己免疫疾患の一種である。

医療費適正効果額は1千億円以上、あらためて確認したいバイオシミラーの有効性・安全性

 日本国内で承認されているバイオシミラーは19成分となり、医療費適正化の観点から活用が期待されるが、患者調査における認知度は依然として低く、医療者においても品質に対する理解が十分に定着していない。2025年8月29日、日本バイオシミラー協議会主催のメディアセミナーが開催され、原 文堅氏(愛知県がんセンター乳腺科部)、桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト)が、専門医・患者それぞれの立場からみたバイオシミラーの役割について講演した。  化学合成医薬品の後発品であるジェネリック医薬品で有効成分の「同一性」の証明が求められるのに対し、分子構造が複雑なバイオ医薬品の後続品であるバイオシミラーでは同一性を示すことが困難なために、「同等性/同質性」を示すことが求められる。

免疫介在性炎症性疾患患者のCVDによる死亡率は、男性よりも女性の方が高い

 免疫介在性炎症性疾患(IMID)患者の心血管疾患(CVD)による死亡率は1999年から2020年にかけて低下したが、死亡率の男女差が依然として認められることを示したリサーチレターが、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に5月5日掲載された。  米クリーブランド・クリニックのIssam Motairek氏らは、米疾病対策センター(CDC)が提供している1999~2020年の複合死因(Multiple Cause of Death)データを用い、基礎疾患としてIMIDを有する患者のCVD関連死を特定し、死亡率の男女差を検討した。IMID関連死28万1,355件から、CVD関連死12万7,149件を抽出して分析した。

クローン病へのグセルクマブの静脈内導入療法と皮下維持療法の有効性と安全性:2つの第III相試験(GALAXI-2および3)の48週時点の結果(解説:上村 直実 氏)

指定難病であるクローン病(CD)の患者数は日本でも次第に増加して、近々5万例に達する見込みであるが、潰瘍性大腸炎と違って軽症例は少なく中等症から重症例が多く、内科的治療により寛解不能で外科的手術が必要な患者も多いのが現状である。完全治癒が見込めないCDに対する治療の基本は、病気の活動性のコントロールにより寛解状態を維持し、さらに日常生活に影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症を予防することにあるが、最近は内視鏡的な粘膜治癒を目的とした治療方針が必須となっている。

中等症~重症の活動性クローン病、グセルクマブ導入・維持療法が有効/Lancet

 中等症~重症の活動期クローン病患者において、プラセボおよびウステキヌマブと比較して、グセルクマブ(ヒト型抗ヒトIL-23 p19モノクローナル抗体)の静脈内投与による導入療法後、同薬の皮下投与による維持療法を行うアプローチは、有効性の複合エンドポイントが有意に優れ、忍容性も良好で安全性プロファイルは潰瘍性大腸などでの承認時のデータと一致することが、カナダ・カルガリー大学のRemo PanaccioneらGALAXI 2 & 3 Study Groupが実施した「GALAXI-2およびGALAXI-3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年7月17日号に掲載された。