呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:75

間質性肺疾患の緩和ケア、日本の呼吸器専門医の現状を調査

 間質性肺疾患(ILD)は症状が重く、予後不良の進行性の経過を示すことがある。そのため、ILD患者のQOLを維持するためには、最適な緩和ケアが必要であるが、ILDの緩和ケアに関する全国調査はほとんど行われていない。そこで、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医を対象とした調査を実施した。その結果、呼吸器専門医はILD患者に対する緩和ケアの提供に困難を感じていることが明らかになった。本研究結果は、浜松医科大学の藤澤 朋幸氏らによってRespirology誌オンライン版2023年3月22日号で報告された。

重症化リスクの高いコロナ患者、ニルマトレルビルで入院・死亡減/BMJ

 重症化リスクの高いSARS-CoV-2感染者へのニルマトレルビル投与は非投与と比較して、ワクチン非接種者・接種者、ブースター接種者、再感染者において、30日時点の入院または死亡のリスクが低下していたことが明らかにされた。米国・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らが、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを活用し、電子カルテを用いた無作為化ターゲット模倣試験(emulation of a randomized target trial)で明らかにした。ニルマトレルビルの有効性の検証は、オミクロン変異株が優勢となる前、ワクチン非接種のSARS-CoV-2感染者とSARS-CoV-2感染歴のない人々を対象に行われたものであった。BMJ誌2023年4月11日号掲載の報告。

患者集団を対象とした医療からの脱却法は?(解説:後藤信哉氏)

ランダム化比較試験は、患者集団の標準治療の確立に役立った。しかし、新型コロナウイルス感染症などの病名にて患者集団を規定しても、集団を構成している個別症例の病態、予後には不均一性がある。たとえば、新型コロナウイルス感染症の入院例においてヘパリン治療がECMOなどを避けるために有効であることはランダム化比較試験にて示されたが、標準治療が集団を構成する全例に対して有効・安全なわけではない。本研究はヘパリン治療の不均一性を検証するために3つの方法を利用した。(1)は通常のサブグループ解析である。新薬開発の臨床試験では事前に設定した年齢、性別、腎機能などにより分けたサブグループにて不均一性がないことを示している。本研究ではサブグループ解析にて結果の不均一性に注目した。(2)はrisk based model法である。集団からリスクに寄与する因子を抽出して、その因子により個別症例のリスクを事前に予測してグループ分けした。(3)はEffect-Based Approachである。いわゆるrandom forest plotにて効果を予測してグループ分けする方法である。

重症コロナ患者、ACEI/ARBで生存率低下か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症成人患者において、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与は臨床アウトカムを改善せず、むしろ悪化させる可能性が高いことを、カナダ・University Health NetworkのPatrick R. Lawler氏ら「Randomized, Embedded, Multifactorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia trial:REMAP-CAP試験」の研究グループが報告した。レニン-アンジオテンシン系(RAS)の中心的な調節因子であるACE2は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の受容体であることから、RASの過剰活性化がCOVID-19患者の臨床アウトカム不良につながると考えられていた。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。

大気汚染と認知症リスク (解説:岡村毅氏)

黄砂の飛来がニュースになっているが、タイムリーに大気汚染が認知症発症とも関連するかもしれないという報告だ。喫煙等と比べると認知症発症に与える影響は小さいが、何せ逃げることができないリスクなので、人々への影響は大きい。なお本論文では主にPM2.5を扱っているが、これは大気中に浮遊している直径2.5μm以下の小さな粒子を指し、化石燃料をはじめとする工業活動で排出されるものである。黄砂とは中国やモンゴルの乾燥域から偏西風に乗って飛んでくる砂塵であり、その大きさは4μm程度であるからほとんどがPM2.5ではない。

日本人ALK陽性肺がんにおけるロルラチニブの3年追跡の結果(CROWN)/日本臨床腫瘍学会

 ロルラチニブは脳内移行の良い第3世代ALK-TKIである。第III相CROWN試験の3年間の追跡において、日本人集団は全体集団と同様、良好な結果を示した。第10回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、和歌山県立医科大学の寺岡 俊輔氏氏が発表した。  irPはICIの重篤な有害事象(AE)であり、がん治療の経過にも大きく影響する。irPの標準治療は全身性ステロイドの投与だが、前向き試験は行われておらず、投与量・期間は明らかになっていない。そんな中、柄山氏らは、irPに対するプレドニゾロン6週間漸減療法の有効性と安全性を評価する前向き多施設単群第II相試験を行った。

重症コロナ患者へのRAS調節薬、酸素投与日数を短縮せず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院し低酸素症を呈した重症の成人患者において、開発中の「TXA-127」(合成アンジオテンシン1-7)または「TRV-027」(アンジオテンシンII受容体タイプ1に対するβアレスチンバイアス作動薬)投与によるレニン-アンジオテンシン系(RAS)の調節は、プラセボ投与と比較して酸素投与日数を短縮しなかった。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのWesley H. Self氏らが、2つの無作為化試験の結果を報告した。前臨床モデルで、SARS-CoV-2感染によってRASの調節不全(アンジオテンシン1-7に比べてIIの活性が増大)が引き起こされることが示唆され、新型コロナ病態生理の重要な要因である可能性が仮説として示されていた。

肺機能と認知症リスク~43万人超のコホート研究

 脳の認知的な健康に、肺機能が他の因子と独立して影響を及ぼすかはよくわかっていない。中国・青島大学のYa-Hui Ma氏らは、肺機能と脳の認知的な健康の縦断的な関連性を評価し、根底にある生物学的および脳の構造的なメカニズムを明らかにしようと試みた。その結果、認知症発症の生涯リスクに対する個々の肺機能の影響が確認され、著者らは、「最適な肺機能の維持は、健康的な加齢や認知症予防に有用である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌2023年3月号の報告。

医療者の無症候コロナ感染が増加、既感染の割合は?/順大

 本邦では、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されている。しかし、感染の既往を示す抗体の陽性率に関する研究は限られている。そこで順天堂大学では、医療者をはじめとした職員を対象として、2020年から年次健康診断時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査を実施している。2020年、2021年における抗N抗体※陽性率はそれぞれ0.34%、1.59%と低かったが、今回報告された2022年の調査結果では、17.9%に増加していた。また、抗N抗体陽性者のうち、約半数は感染の自覚がなかったことが明らかになった。本研究結果は、順天堂大学の金森 里英氏らによって、Scientific Reports誌2023年3月27日号で報告された。

PM2.5曝露で認知症リスク増加の可能性~メタ解析/BMJ

 直径2.5ミクロン未満の微小粒子状物質(PM2.5)への曝露が認知症リスクの増加と関連する可能性があり、ややデータが少ないものの二酸化窒素と窒素酸化物への曝露にも同様の可能性があることが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のElissa H. Wilker氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年4月5日号に掲載された。  研究グループは、認知症リスクにおける大気汚染物質の役割の調査を目的に、文献の系統的レビューとメタ解析を行った(Harvard Chan National Institute of Environmental Health Sciences Center for Environmental Healthなどの助成を受けた)。