呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:33

新型コロナ、感染から完全回復までにかかる期間は?

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の回復期間の評価と、90日以内の回復に関連する要因を特定するため、米国・コロンビア大学Irving Medical CenterのElizabeth C. Oelsner氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)に登録された14のコホートを用いて前向きコホート研究を実施した。その結果、感染から回復までにかかった期間の中央値は20日で、90日以内に回復しなかった人が推定22.5%いたことなどが判明した。JAMA Network Open誌2024年6月17日号に掲載。  この前向きコホート研究では、1971年よりNIHが参加者を登録し追跡してきた進行中の14のコホートにおいて、2020年4月1日~2023年2月28日にSARS-CoV-2感染を自己申告した18歳以上の4,708例(平均年齢61.3歳[SD 13.8]、女性62.7%)に対してアンケートを実施した。アンケートでは回復するまでの日数を聞き、90日以内に回復した群と、90日以上あるいは未回復である場合は、90日時点で未回復の群に分類した。回復までの期間と関連する潜在的要因は各コホートから事前に選択された。90日以内に回復しない確率および平均回復時間は、Kaplan-Meier曲線を用いて推定され、90日以内の回復と多変量調整後の関連性をCox比例ハザード回帰分析にて評価した。

PPIのpantoprazole、侵襲的換気患者の上部消化管出血を予防/NEJM

 集中治療室(ICU)で侵襲的機械換気を受けている患者では、プラセボと比較してプロトンポンプ阻害薬pantoprazoleは、臨床的に重要な上部消化管出血のリスクを有意に低下させ、その一方で死亡率には影響を及ぼさないことが、カナダ・マクマスター大学のDeborah Cook氏らが実施した「REVISE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年6月14日号に掲載された。  REVISE試験は、8ヵ国68施設で実施した医師主導の無作為化試験であり、2019年7月~2023年10月に患者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。

もし過去に戻れたらどの診療科を選ぶ?後輩には勧める?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省が2024年3月19日に公表した「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果では、全国の医師数は34万3,275人で、前回調査(2020年)と比べて1.1%増加した。本調査では、前回調査時と比べて美容外科、アレルギー科、産科、形成外科などの診療科で医師数の増加がみられた。一方、気管食道外科、小児外科、外科、心療内科、耳鼻咽喉科などの診療科では医師数の減少がみられた(詳細は関連記事参照)。この結果には、ワークライフバランスや年収、やりがい、キャリアなどを含めた診療科への満足度が影響している可能性も考えられる。

チルゼパチド、閉塞性睡眠時無呼吸の肥満者の睡眠アウトカムを改善/NEJM

 中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸と肥満のある患者の治療において、プラセボと比較してチルゼパチド(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド[GIP]とグルカゴン様ペプチド1[GLP-1]の受容体作動薬)は、無呼吸低呼吸指数(AHI)の改善とともに体重減少をもたらし、良好な睡眠関連の患者報告アウトカムを示すことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のAtul Malhotra氏らSURMOUNT-OSA Investigatorsが実施した「SURMOUNT-OSA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月21日号で報告された。

肺の中を泳ぐマイクロロボットが抗がん薬を効率的に投与

 肺の中を泳いで進み、抗がん薬をがん細胞に直接投与できる、極めて微小なロボット(マイクロロボット)の開発に関する研究成果が報告された。肺転移のあるメラノーマのマウスを用いた初期の試験で、このマイクロロボットによる治療によりマウスの平均生存期間が延長することを確認できたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)化学・ナノ工学教授のLiangfang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に6月12日掲載された。Zhang氏は、「マイクロロボットは、命に関わるさまざまな肺の病気と闘うために、肺組織全体に治療薬を積極的かつ効率的に送達できるプラットフォーム技術だ」と話している。

日本BDが血培ボトル出荷調整、学会が対応を注意喚起

 日本ベクトン・ディッキンソンは7月3日のリリースにて、「BDバクテック血液培養ボトル」8製品を出荷調整することを発表した。米国本社より、供給元からの同製品の原材料であるプラスチックボトルの供給に3ヵ月程度の遅延が発生したため、今後の製造と出荷が通常時の50%程度に制限される見込みであるとの報告があり、当面の間、世界的にすべての需要を満たすことが困難な状況となった。本報告を受けて、日本臨床微生物学会と日本感染症学会は同日、医療機関側でも出荷調整の数ヵ月間を大きな混乱なく診療ができるように、対応について告知した。

セフトリアキソンとランソプラゾールの併用リスク、日本人では?

 セフトリアキソン(CTRX)とランソプラゾールの併用は、心室性不整脈、心停止、院内死亡を増加させることが示唆されるという研究結果が、2023年にカナダの研究グループから報告され、話題となった。そこで、三星 知氏(下越病院)らの研究グループは、医療データベースを用いた後ろ向きコホート研究により、日本人におけるこれらのリスクを検討した。その結果、日本人においてもCTRXとランソプラゾールの併用は、心室性不整脈や心停止のリスクを上昇させることが示唆された。本研究結果は、Journal of Infection誌オンライン版2024年6月17日号で報告された。  本研究は、2014年4月~2022年8月の期間に日本のJMDCデータベースから取得したデータを用いて実施した。対象は、CTRXまたはスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)とプロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用する20歳超100歳未満の患者10万5,301例とした。主要評価項目は、心室性不整脈・心停止の発生率とした

コロナ罹患後症状、中年層や女性に高頻度/NCGM

 国立国際医療研究センターは7月1日付のプレスリリースにて、オミクロン株BA.5流行期の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(Long COVID)の頻度や関連要因について、同センターの射場 在紗氏らの研究グループが、東京都品川区、筑波大学、大阪大学と共同で行った調査の結果を発表した。本結果によると、40~49歳の中年層、女性、基礎疾患のある人、COVID-19の重症度が高かった人で罹患後症状の頻度が高かったが、感染前にワクチンを接種していた人では罹患後症状の頻度が低かったことなどが明らかとなった。罹患後症状がある人において、感染から約半年経過後も8.5%が日常生活に深刻な支障があるという。本結果は、Emerging Infectious Diseases誌2024年7月号に掲載された。

ポスト・パンデミック期:コロナ抗ウイルス薬は無効?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

2023年夏以降、コロナ感染症はポスト・パンデミックの時代に突入した。この時期に注目されているのが間断なく継続しているウイルスの遺伝子変異に対して、オミクロン株以前のパンデッミク期に開発された抗ウイルス薬が、その効果を維持しているかどうかという点である。今回論評するHammond氏らの論文は、2021年8月から2022年7月にかけて、播種しているコロナウイルスがデルタ株からオミクロン株に切り替わりつつある過渡期に集積された症例を対象としたものである。Hammond氏らはこれらの対象をもとに3-キモトリプシン様プロテアーゼ阻害薬ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック、本邦承認:2022年2月10日、5日分の薬価:9万9,000円)に関するEPIC-SR試験(Evaluation of Protease Inhibition for COVID-19 in Standard-Risk Patients trial)の結果を報告した。

2つの変異を持つインフルエンザウイルス、タミフルが効きにくい可能性も

 米国の保健当局が、米国内で2つの変異を併せ持つH1N1インフルエンザウイルスの感染者が2例、確認されたことを報告した。米疾病対策センター(CDC)の研究グループによると、この変異株は、ウイルス表面のタンパク質であるノイラミニダーゼの2カ所に変異(I223VとS247N)を持ち、代表的な抗インフルエンザウイルス薬であるオセルタミビル(商品名タミフル)の効果を減弱させる可能性があるという。このインフルエンザウイルスの二重変異株に関する研究グループの分析結果は、CDCが発行する「Emerging Infectious Diseases」7月号に掲載された。  この最新の分析結果は、2024年3月に香港の研究グループが「The Lancet」に発表した、これら2つの変異がオセルタミビルへの耐性を高めている可能性があることを示した報告書に続くものだ。CDCの研究グループによる実験では、この二重変異株のオセルタミビルに対する感受性は、これまでのいくつかのインフルエンザウイルスの変異株と比べて最大で16倍低いことが示された。