呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

小細胞肺がん2次治療、タルラタマブがOS・PFS改善(DeLLPhi-304)/ASCO2025

 2ライン以上の治療歴を有する小細胞肺がん(SCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験「DeLLphi-301試験」において、タルラタマブが良好な成績を示したことを受け、本邦では「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」の適応で2025年4月16日に発売された。また、『肺癌診療ガイドライン2024年版』では、全身状態が良好(PS0~1)な再発SCLCの3次治療以降にタルラタマブを用いることを弱く推奨することが記載されている。より早期におけるタルラタマブの有用性を検討する試験として、SCLCの2次治療におけるタルラタマブの有用性を化学療法との比較により検証する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」が進行中である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Charles M. Rudin氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、本試験の第1回中間解析の結果を報告した。本試験において、タルラタマブは化学療法と比較して全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善することが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された。

末梢肺結節の診断、ナビゲーショナル気管支鏡検査は針生検に非劣性/NEJM

 直径10~30mmの末梢肺結節の悪性・良性を鑑別するための生検において、ナビゲーショナル気管支鏡検査は経胸壁針生検に対し、診断精度に関して非劣性であり、気胸の発生が有意に少ないことが、米国・Vanderbilt University Medical CenterのRobert J. Lentz氏らInterventional Pulmonary Outcomes Groupが実施した「VERITAS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月18日号で報告された。  VERITAS試験は、医師主導型の非盲検無作為化並行群間非劣性試験であり、2020年9月~2023年6月に米国の7施設で参加者を登録した(Medtronicなどの助成を受けた)。  肺がんの事前確率が10%以上で、直径10~30mmの末梢肺結節を有する成人患者を対象とした。被験者を、ナビゲーショナル気管支鏡検査を受ける群または経胸壁針生検を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。  主要アウトカムは診断精度とし、生検で特定の診断(悪性腫瘍または特定の良性病変)を受けた患者のうち、12ヵ月間の臨床的経過観察によりその診断が正確であることが確認された患者の割合と定義した(非劣性マージンは10%ポイント)。副次アウトカムには、気胸の発生などの手技に関連する合併症が含まれた。

コントロール不良の軽症喘息、albuterol/ブデソニド配合薬の頓用が有効/NEJM

 軽症喘息に対する治療を受けているが、喘息がコントロールされていない患者において、albuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる)単独の頓用と比較してalbuterol/ブデソニド配合薬の頓用は、重度の喘息増悪のリスクが低く、経口ステロイド薬(OCS)の年間総投与量も少なく、有害事象の発現は同程度であることが、米国・North Carolina Clinical ResearchのCraig LaForce氏らBATURA Investigatorsが実施した「BATURA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月19日号に掲載された。

全医師が遭遇しうる薬剤性肺障害、診断・治療の手引き改訂/日本呼吸器学会

 がん薬物療法の領域は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場し、目覚ましい進歩を遂げている。しかし、これらのなかには薬剤性肺障害を惹起することが知られる薬剤もあり、薬剤性肺障害が注目を集めている。そのような背景から、2025年4月に『薬剤性肺障害の診断・治療の手引き第3版2025』が発刊された。本手引きは、2018年以来の改訂となる。本手引きの改訂のポイントについて、花岡 正幸氏(信州大学病院長/信州大学学術研究院医学系医学部内科学第一教室 教授)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。

肺サルコイドーシスの1次治療、メトトレキサートvs. prednisone/NEJM

 未治療の肺サルコイドーシス患者おいて、メトトレキサートはprednisoneに対して、ベースラインから24週時までの%FVC(努力肺活量[FVC]の予測値に対する実測値の割合)の変化量に関して非劣性であることが示された。オランダ・エラスムス医療センターのVivienne Kahlmann氏らが同国17施設で実施した無作為化非盲検非劣性試験「PREDMETH試験」の結果を報告した。prednisoneは現在、肺サルコイドーシスの第1選択治療薬として推奨されているが、多くの副作用を伴うことがある。一方、第2選択治療薬として推奨されているメトトレキサートは、prednisoneより副作用は少ないが、作用発現が遅いとされている。肺サルコイドーシスの1次治療として、メトトレキサートの有効性および副作用プロファイルをprednisoneと比較したデータが必要とされていた。著者は、「副作用プロファイルの違いは、医療従事者と患者による治療選択に関する共同意思決定に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2025年5月18日号掲載の報告。

COPDの新たな診断スキーマが有用/JAMA

 呼吸器症状、呼吸器QOL、スパイロメトリーおよびCT画像所見を統合した新たなCOPD診断スキーマによりCOPDと診断された患者は、COPDでないと診断された患者と比較して全死因死亡および呼吸器関連死亡、増悪、急速な肺機能低下のリスクが高いことが、米国・アラバマ大学バーミンガム校のSurya P. Bhatt氏らCOPDGene 2025 Diagnosis Working Group and CanCOLD Investigatorsの研究で明らかとなった。著者は、「この新たなCOPD診断スキーマは、多次元的な評価を統合することで、これまで見逃されてきた呼吸器疾患患者を特定し、呼吸器症状や構造的肺疾患所見のない気流閉塞のみを有する患者を除外できる」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年5月18日号掲載の報告。

COVID-19パンデミック中と、その前後でのICU入室患者の治療と予後(解説:名郷直樹氏)

アメリカの入院医療の26%をカバーする電子データを解析した後ろ向きコホート研究である。ICU入室の成人患者を対象とし、COVID-19パンデミック前、流行期、その後における院内死亡、ICU入室期間、人工呼吸器や昇圧薬など生命維持治療をアウトカムとして検討している。曝露を研究開始時に測定し、同時期にアウトカムを追跡する通常のコホート研究ではなく、観察期間中のCOVID-19の流行の前後でアウトカムを比較した曝露前後コホート研究である。結果は、流行前の院内死亡10%に対する、入院年・月、年齢、性別、カールソンの併存疾患インデックススコア、COVID-19感染状況、疾患重症度で調整後のオッズ比(95%信頼区間[CI])は、パンデミック中のCOVID陰性患者で1.3(1.2~1.3)、陽性患者で4.3(3.8~4.8)、2022年半ばには10%に戻っている。またICU入室期間の中央値は2.1日で、パンデミック期間中で2.2日、その差(95%CI)は0.1日(0.1~0.2)、COVID陰性患者で2.1日、陽性患者で4.1日、その差(95%CI)は2.2日(1.1~4.3)、パンデミック後2.2日、その差(95%CI)は0.1日(0.1~0.1)と報告されている。またICU入室中の昇圧薬治療が14.4%に、侵襲的人工呼吸器が23.7%に行われ、その変化は、昇圧薬使用に関し2014年の7.2%から2023年の21.6%と増加、人工呼吸器について、パンデミック前で23.2%、パンデミック中で25.8%、パンデミック後で22%と大きな変化がないことが報告されている。

EGFR陽性NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブが新たな1次治療の選択肢に/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2025年3月27日にラゼルチニブ(商品名:ライブリバント)について、「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得し、2025年5月21日に販売開始した。ラゼルチニブの販売開始により、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、アミバンタマブ+ラゼルチニブが使用可能となった。そこで、2025年5月22日にメディアセミナーが開催され、アミバンタマブ+ラゼルチニブが1次治療で使用可能となったことの意義や、使用上の注意点などを林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)が解説した。

高額療養費制度見直しががん医療現場に与える影響/日本がんサポーティブケア学会

 2025年5月に開催された第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会において、高額療養費制度の見直しに関するセッションが行われた。同セッションでは、医療者と患者双方のパネリストが登壇し議論が行われている。がん医療における高額療養費制度見直しに対する課題の多さが感じとられた。  帝京大学の渡邊 清高氏は高額療養費制度見直しの背景と、同学会が2月26日に発表した声明について説明があった。制度見直しの目的は社会保障制度の持続可能性の確保であるが、提案された見直し案には高額療養費の上限額引き上げが含まれており、患者ケアに影響を与える可能性が懸念されている。実施は見送られたものの、同学会は見直し案について、さらなる議論が必要であると共に患者と学会の声を聞くことの必要性を指摘した。

モデルナ、プレフィルドシリンジ型コロナワクチンを新発売

 モデルナ・ジャパンは5月26日付のリリースにて、新型コロナウイルスワクチン「スパイクバックス(R)筋注シリンジ」を新たに発売したことを発表した。本ワクチンは、12歳以上を対象とした1回接種用0.5mLを充填したプレフィルドシリンジ製剤で、医療現場での調製時間を短縮し、投与準備を簡便化する。これにより、医療従事者の負担軽減と接種の効率化が期待される。本製剤は、オミクロン株JN.1系統に対応している。  なお、2025年春夏シーズンの任意接種においては、従来からのオミクロン株JN.1系統対応バイアル製剤「スパイクバックス(R)筋注」も引き続き使用可能となっている。