精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:352

抗うつ効果に文化的背景は影響するか

 大うつ病性障害(MDD)を有するラテン系アメリカ人は、非ラテン系白人と比べ、薬物療法へのアクセス、薬物治療開始、服用、治療維持など、どの定義においても、抗うつ療法の実施が低調である。こうした差異がみられる理由の1つとして、ラテン系アメリカ人の薬物療法に対する文化的適合性が低い可能性が挙げられる。そこで、南カリフォルニア大学のSylvanna M. Vargas氏らは、ラテン系アメリカ人のうつ病と抗うつ療法に対する認識を明らかにする調査を行った。その結果、うつ病を有していないラテン系アメリカ人には、うつ病およびその治療に対して批判的な意見があること、その一方、うつ病患者は抗うつ療法に関心はあるものの、薬物中毒や薬物依存への懸念があることがわかったという。著者は「ラテン系アメリカ人の抗うつ療法への関わり方を改善するには、処方医がそうした見解や懸念に着目していかなくてはならない」と指摘している。Transcultural Psychiatry誌オンライン版2015年3月3日号の掲載報告。

ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)-322

 わが国と同様、世界の先進国は超高齢化社会を迎えている。一方において、各国は主要な疾患に対してガイドラインを制定して、標準的治療の推進を呼びかけているという事実がある。実は、この2つは大きな矛盾も抱えているのである。すなわち超高齢化社会の最大の特徴は多様性であり、画一的な集団での研究から得られた臨床研究の結果であるガイドライン、あるいは標準的治療とは必ずしもそぐわないのである。

神経難病へのメマンチンの可能性:群馬大

 脊髄小脳変性症1型(SCA1)はSca1遺伝子内にあるCAGリピートの伸長を原因とする進行性の神経変性疾患である。SCA1症状の発症機序は明確になっていないが、ニューロンの異常活性が、この疾患の特徴であるニューロン細胞死の一因となっている可能性が高い。群馬大学の飯塚 朗氏らは、SCA1ノックイン(KI)マウスにN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)のメマンチンを長期経口投与し、SCA1の発症メカニズムについて検討した。その結果、マウスの体重減少抑制と生存期間の延長が認められ、SCA1の発症にNMDAR異常活性が関与している可能性を示唆した。Neuroscience Letters誌オンライン版2015年2月25日号の掲載報告。

臨床ガイドラインは複数疾患併存患者への考慮を/BMJ

 英国・ダンディー大学のSiobhan Dumbreck氏らは、英国立医療技術評価機構(NICE)の12の臨床ガイドラインにおける複数疾患を有する患者に関する潜在的に重篤な薬物-疾患(drug-disease)および薬物間(drug-drug)相互作用の記述について、システマティックレビューを行った。その結果、患者が慢性腎臓病(CKD)を併存している場合を除き薬物-疾患相互作用の記述はまれにしかみられない一方、薬物間相互作用については多くの記述がみられたこと、ただしいずれもガイドラインでは強調されていないことを明らかにした。臨床ガイドラインを、複数疾患を併存する患者についてより考慮したものにすべきとの認識が増している。しかし、研究グループは「多くのガイドラインで薬物療法を推奨しているが、そのような患者を設定した薬物-疾患および薬物間相互作用に関する勧告はあまりみられないと思われる」として本レビューを行った。BMJ誌オンライン版2015年3月11日号掲載の報告より。

アルツハイマー病へのDBS、臨床応用への可能性は

 米国・ペンシルベニア大学のKeyvan Mirsaeedi-Farahani氏らは、アルツハイマー病(AD)に対する脳深部刺激療法(DBS)の費用対効果、臨床効果を標準治療との比較で検討した。その結果、軽度AD患者でDBSの成功率が20%以上であれば費用対効果は高いこと、80%を超えれば臨床効果、費用対効果ともに標準治療より高くなることを報告した。ADは記憶機能の障害を特徴とし、本症状はADの標準治療によりわずかな改善を認める。しかし最近の報告により、DBSが記憶機能を改善する可能性が示唆されていた。Journal of Neurology誌オンライン版2015年3月6日号の掲載報告。

FINGER試験:もしあなたが、本当に認知症を予防したいなら・・・(解説:岡村 毅 氏)-321

 認知症リスクを持つ1,260人の高齢者を、食事療法・運動療法・認知トレーニング・血管リスクのモニタリングという、多領域にわたる介入群と対照群に無作為に振り分けたところ、介入群では認知機能低下を予防したというフィンランドからの報告である。実に当たり前の結果であるが、一流の論文とは当たり前のことをきちんと示すものだと認識しているので、まさに一流の論文だと思う。

自殺リスク評価の無作為化試験は実施可能なのか

 自殺は公衆衛生上の大きな問題であるが、自殺のリスクを有する患者について、自殺念虜の減少を目的として実施された無作為臨床試験はほとんどない。そうした中で現在行われている「Reducing Suicidal Ideation Through Insomnia Treatment:REST-IT」試験について、米国ジョージア・リージェンツ大学のWilliam Vaughn McCall氏らは2年目の状況をまとめ報告した。その結果を受けて著者は、「選択基準および除外基準、ならびに他の安全策を慎重に考えることによって自殺のリスクを有する成人患者を対象とした無作為化試験を安全に行うことができる」との見解を示している。Clinical Trials誌オンライン版2015年3月1日号の掲載報告。