小児科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:1

後期早産期の出生前ステロイド、6歳以降の神経発達に影響なし/JAMA

 後期早産リスクを有する母親への出生前コルチコステロイド投与は、6歳以上の小児期の神経発達アウトカムに有害な影響を及ぼさない。米国・コロンビア大学のCynthia Gyamfi-Bannerman氏らが、2010~15年に国立小児保健発達研究所Maternal-Fetal Medicine Units(MFMU)ネットワークの17施設で実施された二重盲検プラセボ対照試験「Antenatal Late Preterm Steroids(ALPS)試験」に参加した母親から生まれた児に関する、前向き追跡試験の結果を報告した。ALPS試験は、妊娠34~36週における出生前のベタメタゾン投与が早産児の短期呼吸器合併症の発症率を有意に低下させることを明らかにし、米国における臨床実践を変えた。しかし、ベタメタゾン投与後に新生児低血糖症のリスクが増加することも認められており、長期的な神経発達アウトカムへの影響に関心が寄せられていた。JAMA誌オンライン版2024年4月24日号掲載の報告。

妊婦の抑うつ、不安、オキシトシンが子どもへの情緒的絆に影響

 妊娠中の母親の抑うつや不安、唾液中オキシトシン濃度が、子どもに対する情緒的な絆に影響する可能性を示唆する研究結果が新たに報告された。この研究は大阪大学大学院ウィメンズヘルス科学教室の渡邊浩子氏、金粕仁美氏らによるもので、「Archives of Women's Mental Health」に2月26日掲載された。  子どもに対する情緒的な絆を「ボンディング」という。この情緒的な絆が十分に形成されない状態は、ボンディング障害やボンディング不全と呼ばれる。周産期のメンタルヘルスにおいてボンディング障害は重要な問題であり、産褥期に子どもに対する拒絶や怒りの感情を経験することもある。育児行動にも影響を及ぼすことから、ボンディングの改善は子ども虐待の防止にもつながる。

妊娠中のナッツ摂取が子どもの「仲間関係の問題」を予防?

 約1,200組の母子を対象としたコホート研究の結果から、妊娠中にナッツを摂取すると、生まれた子どもの「仲間関係の問題」を予防できる可能性が示唆された。これは愛媛大学大学院医学系研究科疫学・公衆衛生学講座の三宅吉博氏らによる研究結果であり、「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」に3月7日掲載された。  著者らの研究グループはこれまでに、妊娠中のさまざまな栄養素の摂取が、生まれた子どもの感情・行動の問題と関連することを報告している。食品に着目すると、栄養密度が高いことで知られるナッツは、不飽和脂肪酸、タンパク質、食物繊維、ビタミンやミネラルといった栄養素を豊富に含んでいる。そこで今回の研究では、妊娠中のナッツの摂取と5歳児の行動的問題との関連を調べた。

加糖飲料とフルーツジュースは男子の2型糖尿病リスクを高める

 幼少期から10代前半にかけて、加糖飲料や果汁100%ジュースを多く摂取していた男子は、思春期後期に成長した時点でインスリン抵抗性が亢進し、2型糖尿病の発症リスクが高い状態にあることを示すデータが報告された。米ハーバード大学医学大学院のSoren Harnois-Leblanc氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)の生活習慣科学セッション(EPI-Lifestyle 2024、3月18~21日、シカゴ)で発表された。  この研究は、1999年から米国マサチューセッツ州東部で実施されている、母親とその子どもを対象とする長期コホート研究(Project Viva)のデータを用いて行われた。Project Vivaの研究期間中に出産した妊婦は2,128人で、子どもが幼児期(年齢中央値3.1歳)、小児期(同7.6歳)、および思春期前期(同12.9歳)という三つの時点で、母親に対して食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた子どもの食習慣の調査を実施。この調査に回答し、かつ糖尿病の家族歴のない子どもは972人で、そのうち思春期後期(年齢中央値17.4歳)に血液検査を受けていた455人(女子240人)を解析対象とした。

出生前検査、胎児異常例対応に医療者の75%が「葛藤」

 妊娠後に胎児の染色体異常を調べる「出生前検査」は手軽になり、多くの妊婦が受けるようになった一方で、検査を手掛ける医療機関が増え、適切な検査前の説明や遺伝カウンセリングがされないなどの問題が生じていた。これを受け、2022年に日本医学会による新たな「出生前検査認証制度」がスタートし、こども家庭庁は啓発事業によって、正しい知識の啓蒙と認証を得た医療機関での受診を呼びかけている。  この活動の一環として2024年3月に「『出生前検査』シンポジウム」と題したメディアセミナーが開催された。本シンポジウムにおける、聖マリアンナ医科大学・臨床検査医学・遺伝解析学の右田 王介氏と昭和大学・産婦人科の白土 なほ子氏の講演内容を紹介する。

小児期の弱視が成人後の肥満、糖尿病リスクなどと関連

 子ども時代に弱視であった人は成人後の視力も良くないことが多いだけでなく、心血管代謝疾患のリスクが高いことを示すデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)眼科学研究所のSiegfried Wagner氏らの研究によるもので、詳細は、「eClinicalMedicine」に3月7日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「視覚は健康全般の番人としての役割があり、視機能はほかの器官の働きと密接な関係がある」と話している。  視力は出生後に物を見ることで、網膜から脳へつながる神経が刺激されて成長する。視力が急速に成長する幼少期に何かしらの理由で網膜が刺激されない状態では、視力の成長が滞る。また、左右の見え方に少し差がある場合には、脳は良く見えない方の目の情報を無視するような処理をするため、見えにくかった方の目の視力はより育ちにくくなる。子どもに多い斜視も、このような理由で弱視につながりやすい。

RSウイルス感染症予防薬が乳児の入院を90%削減

 RSウイルス感染症から赤ちゃんを守るための予防薬であるベイフォータス(一般名ニルセビマブ)の入院予防効果は90%であることが、リアルワールドデータの分析から明らかになった。これは、在胎35週以上で生まれた乳児を対象にニルセビマブの有効性を検討し、RSウイルス感染による医療処置の必要性を79%、入院の必要性を81%防ぐことを示した第3相臨床試験の結果を上回る。米疾病対策センター(CDC)の研究チームが実施したこの研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」に3月7日掲載された。

新規2型経口生ポリオワクチン(nOPV2)の有効性と安全性(解説:寺田教彦氏)

ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウイルスが中枢神経に感染し、運動神経細胞を不可逆的に障害することで弛緩性麻痺等を生じる感染症で、主に5歳未満の小児に好発するため「小児麻痺」とも呼ばれる感染症である。ウイルスは主に糞口感染で人から人に感染するが、そのほかに汚染された水や食べ物を介して感染することもあり、治療薬は存在しないため、ワクチン接種がポリオの感染対策において重要とされる。ポリオウイルスには、3つの血清型(1、2、3型)があり、1988年に世界保健機関がワクチン接種によるポリオ根絶計画を提唱し、2015年と2019年に野生型ポリオウイルス2型と3型がそれぞれ根絶認定された。残る野生型ポリオウイルス1型が流行しているのはパキスタンとアフガニスタンのみである。

ベイフォータス、新生児および乳幼児のRSウイルス発症抑制・予防にて製造販売承認取得/AZ

 アストラゼネカとサノフィは2024年3月27日付のプレスリリースにて、長時間作用型モノクローナル抗体であるベイフォータス(一般名:ニルセビマブ[遺伝子組換え])が「生後初回または2回目のRS(Respiratory Syncytial)ウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制」ならびに「生後初回のRSウイルス感染流行期の前出以外のすべての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防」を適応として、3月26日に日本における製造販売承認を取得したことを発表した。

早産児の鼠径ヘルニア手術の重篤AE、NICU退室前vs.退室後/JAMA

 早産児の鼠径ヘルニア修復術を、新生児集中治療室(NICU)退室後に行うことで、重篤な有害事象(AE)を発現した乳児が減少したことが示された。米国・テキサス大学健康科学センターのMartin L. Blakely氏らHIP Trial Investigatorsが、同国の39施設で実施した多施設共同無作為化臨床試験の結果を報告した。早産児は鼠径ヘルニアの罹患率が高く、修復術は一般的に行われるが、手術をNICU退室前にすべきか退室後にすべきかについては議論の余地があった。著者は、「今回の結果は、NICUからの初回退室まで鼠径ヘルニア修復術を遅らせることを支持するものである」とまとめている。JAMA誌2024年3月26日号掲載の報告。