腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

サブタイプ別転移乳がん患者の脳転移発生率、HER2低発現の影響は

 約1万8千例を含む大規模な転移乳がん患者コホートを対象に、サブタイプおよび治療ライン別の脳転移の有病率と累積発生率、またHER2低発現が脳転移発生率に及ぼす影響を評価した結果、すべてのサブタイプで治療ラインが進むごとに発生率が上昇し、HER2低発現は従来のサブタイプ分類における発生率に影響を及ぼさないことが示唆された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のSarah L Sammons氏らによるJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版2025年3月31日号への報告。  本研究では、電子カルテに基づく全国規模の匿名化データベースが用いられた。主要評価項目は脳転移の初回診断とし、HER2低発現を含む転移乳がんのサブタイプおよび治療ライン別に、脳転移の有病率および発生率を推定した。全身治療開始時に脳転移を有さなかった患者における脳転移リスクは、累積発症率関数を用いて推定した。すべてのp値は両側検定に基づき、p≦0.05を統計学的有意とした。

間質性肺炎合併肺がん、薬物療法のポイント~ステートメント改訂/日本呼吸器学会

 2017年10月に初版が発行された『間質性肺炎合併肺癌に関するステートメント』について、2025年4月に改訂第2版が発行された。肺がんの薬物療法は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場するなど、目覚ましい進歩を遂げている。そのなかで、間質性肺炎(IP)を合併する肺がんの治療では、IPの急性増悪が問題となる。そこで、近年はIP合併肺がんに関する研究も実施され、エビデンスが蓄積されつつある。これらのエビデンスを含めて、本ステートメントの薬物療法のポイントについて、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。

個々のCDK4/6阻害薬、適した患者像は?(PALMARES-2)

 HR+/HER2-の進行乳がんに対するCDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用療法は、内分泌療法単独よりも無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)を有意に延長したことが報告されている。3剤のCDK4/6阻害薬はそれぞれ薬理作用や安全性が異なるが、有効性を直接比較した大規模な試験は実施されていないため、特定の状況においてどのCDK4/6阻害薬がより効果的であるかは臨床的に重要な課題である。そこで、イタリア・IRCCS財団国立がん研究所のLeonardo Provenzano氏らは、パルボシクリブ、アベマシクリブ、ribociclibを内分泌療法と併用した場合の有効性を比較する多施設共同観察研究「PALMARES-2試験」を実施した。  対象は、2016年1月~2023年9月にイタリアのがんセンター18施設で治療を開始したHR+/HER2-の進行乳がん患者であった。本研究は観察研究であるため、CDK4/6阻害薬および内分泌療法は担当医が選択して処方した。主要評価項目はリアルワールドにおけるPFS(rwPFS)であった。多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、個々のCDK4/6阻害薬とrwPFSの関連性を解析した(データカットオフ:2024年1月31日)。

大腸がん死亡率に対する大腸内視鏡検査と2年ごとの便潜血検査の有用性(解説:上村直実氏)

日本対がん協会の報告によると、2023年の部位別がん死亡数を死因順位別にみると、男性は肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がんの順に多く、女性は大腸がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、胃がんの順となっている。同年の大腸がん罹患者数は14万8,000人で死亡者数が5万3,000人とされており、罹患者のうち3人に1人が死亡する可能性が推測される。このように、大腸がんは肺がんの次にがん死亡者数が多い疾患であるが、早期がんの完治率は90%以上という特徴を有する疾患であり、早期発見、とくに検診が非常に重要である。

未治療CLLへのアカラブルチニブ+オビヌツズマブ、6年PFSの結果(ELEVATE-TN)/Blood

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)に対するアカラブルチニブ単独またはアカラブルチニブとオビヌツズマブ併用の有用性を評価した第III相ELEVATE-TN試験において、追跡期間中央値74.5ヵ月での成績を米国・Willamette Valley Cancer InstituteのJeff P. Sharman氏らが報告した。アカラブルチニブ+オビヌツズマブ群の有効性と安全性は維持され、無増悪生存期間(PFS)は、高リスク患者を含めてchlorambucil+オビヌツズマブ群より延長していた。Blood誌オンライン版2025年4月8日号に掲載。

赤ワインはがん予防につながらない?

 赤ワインには抗炎症作用と抗酸化作用のあるレスベラトロールが多く含まれているため、がん予防効果があると考えられてきたが、新たな研究から、そのような明確なエビデンスはないという結論が示された。米ブラウン大学のEunyoung Cho氏らの研究の結果であり、詳細は「Nutrients」に1月31日掲載された。  ワイン摂取量とがんリスクとの関連を調査した研究結果はこれまでにも複数発表されており、そのメタ解析の報告もあるが、赤ワインと白ワインを区別して検討した研究は少ない。そこでCho氏らは、2023年12月までに文献データベース(PubMedまたはEMBASE)に収載された論文を対象とするレビューを実施した。

多発性骨髄腫と共に“生きる”選択を―Well-beingから考える

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年4月4日、「多発性骨髄腫患者のWell-being向上も考慮した治療目標を」と題したメディアセミナーを開催した。多発性骨髄腫は、根治が難しいものの、治療の進歩により長期生存が可能となってきている疾患である。本セミナーは、患者が「治療と生活を両立」させるために必要な視点として「Well-being」に焦点を当て、医療者と患者双方の視点からその意義を共有することを目的として開催された。

カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起/日本糖尿病学会

 「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」を適応症として2024年5月に発売された経口AKT阻害薬カピバセルチブについて、日本糖尿病学会では2025年4月15日、高血糖・糖尿病ケトアシドーシス(DKA)発現についての注意喚起を発出した。以下に抜粋するとともに、これを受けて同日発表された日本乳癌学会からの見解についても紹介する。  インスリンシグナル伝達のマスターレギュレーターであるAKTを阻害するカピバセルチブにより、インスリン抵抗性が誘導され高血糖を発現するリスクが想定される。実際に臨床試験(CAPItello-291試験)では有害事象として16.9%に高血糖を認めており、わが国における市販直後調査(2024月5月22日~2024年11月21日)でも高血糖関連事象が33例報告され、そのうち1例がDKAにより死亡している(推定使用患者数約350例)。

通院費増で遺伝子変異に関連した治験への参加率が低下、制度拡充が必要/国立がん研究センター

 がんの臨床試験(治験)では、地域の医療機関が参加条件に該当した患者を治験実施施設に紹介することが一般的だ。患者は自宅から離れた治験実施施設に通わねばならないケースも多く、時間的・経済的負担が生じる。国立がん研究センター中央病院 先端医療科の上原 悠治氏、小山 隆文氏らは、施設までの通院費と治験の参加可能性が関連するかを検討する後ろ向きコホート研究を行った。  2020~22年に、がん遺伝子パネル検査後に国立がん研究センター中央病院に治験目的で紹介された進行固形腫瘍患者1,127例を対象に、通院費と治験参加状況の関連を調査した。主要評価項目は遺伝子変異に関連した治験への参加、副次評価項目は遺伝子変異とは関連しない治験への参加だった。多変量ロジスティック回帰分析により、移動費用と治験参加率との関連を評価した。本研究の結果はESMO Real World Data and Digital Oncology誌オンライン版2025年2月25日号に掲載された。

日本の男性乳がんの生存率、女性乳がんと比較~12府県のがん登録データ

 男性乳がんと女性乳がんの予後を比較した研究の結果は一貫しておらず、わが国において男性乳がんと女性乳がんの予後を大規模集団で比較した研究はほとんどない。今回、愛知県がんセンターのDaisy Sibale Mojoo氏らが12府県のがん登録データを用いて検討した結果、男女の乳がんの純生存率が同程度であることが示された。Cancer Science誌オンライン版2025年3月3日号に掲載。