日本発エビデンス|page:72

日本の認知症者、在院期間短縮のために必要なのは

 多くの深刻なBPSD(認知症の周辺症状)を有する認知症者の治療は、自発性にかかわらず精神科病院で行われている。日本における認知症者の平均在院期間は約2年である。症状が安定すれば退院するのが理想的ではあるものの、わが国ではBPSDが落ち着いた後でも、入院を継続するケースがみられる。神戸学院大学の森川 孝子氏らは、認知症者の精神科病院在院期間を短縮する要因を特定するため検討を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2017年2月10日号の報告。

高齢2型糖尿病、低過ぎるHbA1cは認知症リスク?

 ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病患者のQOL維持のための血糖コントロール改善の重要な指標とされているが、高齢者には低過ぎるHbA1cが害を及ぼす恐れがある。今回、金沢医科大学の森田 卓朗氏らの調査により、地域在住の高齢2型糖尿病患者において、HbA1cと要支援/要介護認定のリスクがJ字型を示すことが報告された。また、高齢の2型糖尿病患者での低過ぎるHbA1cが、認知症による後年の障害リスクに関連する可能性が示唆された。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版2017年2月11日号に掲載。

飲酒行動と喫煙行動、同じ遺伝子多型が影響?

 アルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2;rs671、Glu504Lys)およびアルコールデヒドロゲナーゼ1B(ADH1B;rs1229984、His47Arg)の遺伝子多型は、飲酒行動に強く影響することが知られている。愛知県がんセンターの正岡寛之氏らは、喫煙行動と飲酒行動が関連するというエビデンスから、ALDH2とADH1Bの遺伝子多型が喫煙開始とも関連する可能性を検証するために大規模な横断研究を行った。その結果、飲酒量や頻度のほか、これらの遺伝子多型の組み合わせにより、喫煙開始を予測しうることが示唆された。Drug and alcohol dependence誌オンライン版2017年2月1日号に掲載。

スタチンはがん死亡リスクを下げるか~日本のコホート研究

 スタチンのがん発症やがん死亡に対する予防効果については結論が出ていない。今回、山梨大学の横道洋司氏らがバイオバンク・ジャパン・プロジェクトのデータから脂質異常症患者4万1,930例を調査したところ、スタチン単独療法が全死亡およびがん死亡に対して影響し、とくに大腸がんによる死亡に予防効果を示す可能性が示唆された。Journal of Epidemiology誌オンライン版2017年2月11日号に掲載。

肺炎球菌ワクチン定期接種化で薬剤感受性への影響は?

 肺炎球菌ワクチンは小児および成人の肺炎球菌感染を減少させたが、ワクチンに含まれない血清型(non-vaccine serotype:NVT)の有病率が相対的に増加していることが報告されている。今回、東京医科大学の宮崎治子氏らの調査から、肺炎球菌ワクチンの急速な影響および血清型置換の進行が示唆された。ペニシリン非感受性のNVTによる有病率の増加が懸念され、著者らは「最適な予防戦略を立てるために肺炎球菌血清型と薬剤感受性の継続的なモニタリングが必要」と指摘している。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2017年2月1日号に掲載。

アセタゾラミド術前投与で緑内障眼の白内障術後における眼圧上昇を抑制

 経口アセタゾラミド内服による、緑内障眼の白内障術後の眼圧上昇予防効果は認められるのか。福岡県・林眼科病院の林研氏らが、その有効性と適切な投与時期について無作為化試験にて検討した。その結果、原発開放隅角緑内障(POAG)眼では水晶体超音波乳化吸引術後3~7時間に眼圧上昇が認められ、手術1時間前のアセタゾラミド経口投与は非投与および手術3時間後投与と比較して、眼圧上昇を抑制することを明らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2017年1月19日号掲載の報告。

繰り返す肺炎、危険因子となる薬剤は?

 日本や高齢化が急速に進行する社会において、繰り返す肺炎(recurrent pneumonia:RP)は大きな臨床的問題である。全国成人肺炎研究グループ(APSG-J)は、わが国のRP発症率と潜在的な危険因子を調査するために、成人肺炎の前向き研究を実施した。その結果、RPは肺炎による疾病負荷のかなりの割合を占めることが示唆され、RPの独立した危険因子として、肺炎既往歴、慢性の肺疾患、吸入ステロイドや催眠鎮静薬の使用、緑膿菌の検出が同定された。著者らは、高齢者におけるRPの影響を減らすために薬物使用に関して注意が必要としている。BMC pulmonary medicine誌2017年1月11日号に掲載。

冠動脈疾患患者における心房細動の危険因子は?

 一般集団における心房細動の危険因子は明らかだが、特定の疾患を持つ患者への影響は不明である。今回、札幌医科大学の村上 直人氏らが、冠動脈疾患(CAD)患者と非CAD患者における心房細動の危険因子を調べた結果、CADの有無により心房細動の主要な危険因子が異なることが示唆された。CAD患者では血清尿酸値高値、非CAD患者ではスタチン非使用で心房細動が発症しやすいことが示された。Open heart誌オンライン版2017年1月16日号に掲載。

アルツハイマー病が回復する可能性

 アルツハイマー病では、脳内にアミロイドベータ(Aβ)が蓄積することにより神経細胞に異常が現れると考えられている。最近、Aβの集合体(Aβオリゴマー)がこれらの病態の引き金になることが明らかになってきたが、この引き起こされた神経細胞の障害が回復する可能性について明確な実証はなされていなかった。今回、国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループが、ラット由来の神経細胞モデルを用いて検討した結果、Aβオリゴマーによって引き起こされる神経細胞の障害は、Aβオリゴマーを除去することによって回復可能であることを初めて実証した。Molecular Brain誌オンライン版2017年1月31日号に掲載。

抗精神病薬のスイッチング、一括置換 vs.漸減漸増:慶應義塾大

 抗精神病薬の切り替えは、臨床現場では日常的に行われているが、一括置換法と漸減漸増法のどちらが好ましいスイッチング法であるかは不明である。一括置換法は、リバウンドや離脱症状の出現や増悪と関連しているのに対し、漸減漸増法はクロスオーバーアプローチで用いられる場合、相加的または相乗的な副作用リスクをきたすと考えられる。慶應義塾大学(カナダ・オタワ大学)の竹内 啓善氏らは、抗精神病薬のスイッチング戦略について検討を行った。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2017年1月1日号の報告。

統合失調症患者、悲しい曲を悲しいと認識しているのか:都立松沢病院

 これまでの研究では、統合失調症患者の音楽能力は損なわれていると報告されている。東京都立松沢病院の阿部 大樹氏らは、悲しみをマイナーコードに関連付ける患者の能力を評価するための簡便な音楽ベースの試験法を開発し、さらに音楽的障害と精神症状との相関関係の特性を明らかにした。Schizophrenia research誌オンライン版2016年12月23日号の報告。

LG入りヨーグルトがアスピリン誘発小腸傷害を軽減

 アスピリン誘発小腸傷害に対するプロバイオティクスの効果はまだ十分に検討されていない。今回、東海大学の鈴木孝良氏らが実施したプラセボ対照二重盲検比較試験で、ラクトバチルスガセリOLL2716(LG)が、アスピリン誘発小腸傷害の軽減および消化管症状の緩和に有用であることが示された。Digestion誌2017年1月号に掲載。

各種抗精神病薬のEPS発現を副作用データベースから分析

 定型抗精神病薬は、錐体外路症状(EPS)などの有害事象が多く発現する。一方、非定型抗精神病薬による有害事象発生頻度は低い。そのため、統合失調症治療には非定型抗精神病薬が広く使用されている。しかし、定型、非定型抗精神病薬のEPS発現頻度には、差が認められないとの報告もある。日本大学の小瀬 英司氏らは、日本の医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、定型、非定型抗精神病薬治療におけるEPS発現プロファイルの評価を行った。Yakugaku zasshi誌2017年号の報告。

統合失調症患者の再入院、ベンゾジアゼピンの影響を検証:東医大

 ベンゾジアゼピン(BZP)の高用量投与は、統合失調症患者の認知機能およびQOLに悪影響を及ぼすことが報告されている。しかし、統合失調症の臨床経過におけるBZPの効果は明らかになっていない。東京医科大学の瀧田 千歌氏らは、BZPと統合失調症患者の再入院との関連についてレトロスペクティブ研究を行った。Neuropsychiatric disease and treatment誌2016年12月15日号の報告。

インフルエンザとノロの流行は土壌放射線に関連?

 わが国での最近のインフルエンザとノロウイルス感染症の流行時における定点サーベイランスデータを用いた研究から、これら感染症の流行と土壌放射線が相関していることが報告された。本研究は岡山大学の井内田科子氏らによる探査的研究で、今回の結果から免疫力低下と土壌放射線による照射に潜在的な関連があることが示唆された。Epidemiology and infection誌オンライン版2017年1月16日号に掲載。

日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの効果は

 自閉スペクトラム症を有する小児および青年(6~17歳)における易刺激性の治療に対するアリピプラゾールの有効性、安全性を評価するため、東京都立小児総合医療センターの市川 宏伸氏らは、8週間のプラセボ対照無作為化二重盲検試験を行った。Child psychiatry and human development誌オンライン版2016年12月21日号の報告。