医療一般|page:1

食事中の飲酒量が多いと片頭痛発生率が低い

 アルコール摂取と片頭痛または重度の頭痛との関係は、これまでの文献において依然として議論の的となっている。アルコールは広く消費されている飲料であるため、アルコールと片頭痛または重度の頭痛との関連を明らかにすることは、患者のマネジメントに役立つと考えられる。中国・安徽医科大学のYi Tang氏らは、アルコール摂取と片頭痛または重度の頭痛との潜在的な関係を調査するため、本研究を実施した。Brain and Behavior誌2025年3月号の報告。  1999年3月〜2004年12月の米国国民健康栄養調査(NHANES)データベースのデータを用いて、閾値効果、平滑化曲線フィッティング、多変量ロジスティック回帰を網羅した分析を行い、アルコール摂取レベルと片頭痛または重度の頭痛との関係を評価した。サブグループ解析と相互作用テストにより、異なる層別集団間におけるこれらの関連の安定性を調査した。

ソーシャルメディアは若者のうつ病の症状を重くする?

 周囲に、InstagramやTikTokなどに感情的に依存しているかのように、ソーシャルメディアのスクロールを止められない人はいないだろうか。このようなソーシャルメディアの依存的な使用は、うつ病や不安、自殺念慮に対するケアを受けている若者のメンタルヘルス症状の悪化と関係している可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。メンタルヘルス問題でケアを受けている若者のうち、ソーシャルメディアの使い方に問題のある人では、使い方に問題がない人と比べて、うつ病の症状や不安、自殺念慮の重症度が高いことが示されたという。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのBetsy Kennard氏らによるこの研究結果は、「Journal of Affective Disorders」4月1日号に掲載された。

円形脱毛症の予後に慢性炎症性疾患の併存が影響

 慢性炎症性疾患(CID)の併存が円形脱毛症(AA)の予後に影響を与えるとするリサーチレターが、「Allergy」に1月8日掲載された。  ボン大学(ドイツ)のAnnika Friedrich氏らは、CIDの併存とAAの予後に関する臨床的特徴との関連性について検討するために、主に中央ヨーロッパ系のAA患者2,657人から取得した自己申告データを使用し、包括的な分析を実施した。全体として、AAコホートの患者のうち53.7%が1つ以上のなんらかのCID併存を報告しており、そのうち44.5%がアトピー性CID、17.4%が非アトピー性CIDであった。

NeuroSAFEを用いた前立腺がん手術が勃起機能温存に有効か

 画期的な技術の導入により、前立腺がんの外科的手術後に勃起機能を温存できる男性の数が2倍近く増える可能性のあることが明らかになった。ロボット支援根治的前立腺全摘除術(RARP)にNeuroSAFEと呼ばれる術中診断技術を導入することで、勃起をコントロールすると考えられている前立腺の外層を通る神経を温存させることができるという。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)病院の泌尿器科顧問であるGreg Shaw氏らによるこの研究結果は、欧州泌尿器科学会年次総会(EAU25、3月21〜24日、スペイン・マドリード)で発表されるとともに、「The Lancet Oncology」4月号に掲載された。

新たな方法を用いた強力なMRIがてんかん病変を検出

 標準的な3T(静磁場強度が3テスラ)MRIの2倍以上の強さの磁場を発生させる7T MRIを用いることで、3T MRIでは検出できなかったてんかんの原因となる病変を検出できることが、新たな研究で明らかにされた。特に、パラレル送信システムを用いた7T MRI(pTx 7T MRI)は病変の描出に優れていたという。英ケンブリッジ大学生物医学画像分野教授のChristopher Rodgers氏らによるこの研究の詳細は、「Epilepsia」に3月20日掲載された。  MRIは、薬剤抵抗性てんかん患者の手術前評価において、脳の構造的病変の検出に重要な役割を果たしている。7Tてんかんタスクフォースの2021年のコンセンサスペーパーでは、薬剤抵抗性てんかん患者に対しては、7T MRIの使用が推奨されている。7T MRIは、従来の3T MRIよりも空間解像度と感度が優れており、3T MRIでは検出できないてんかんの構造的病変を検出できる。しかし、7T MRIには、側頭葉などの脳の重要な領域において信号ドロップアウト(信号が低下した領域が黒く映る)が発生するという欠点がある。

1日の心拍数を歩数で割った値がCVリスクの評価に有用

 健康増進のためにスマートウォッチを使って毎日の歩数を測定している人は少なくない。しかし、新たな研究によると、スマートウォッチは歩数だけでなく、健康にとって重要な別の指標も測定しており、それら両者のデータを用いることで、より高い精度で健康効果を予測できる可能性があるという。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のZhanlin Chen氏らの研究の結果であり、米国心臓病学会(ACC.25、3月29~31日、シカゴ)で報告された。  一般的に、健康のために1日1万歩歩くことが推奨されている。しかし実際には、研究によって、最適とされる歩数は異なる値が報告されている。一方、Chen氏らの研究結果は、単に歩数を測定するのではなく、1日の心拍数を歩数で割ると、心臓の健康状態をより高精度に評価できるというものだ。同氏は同大学発のリリースの中で、「われわれが開発した方法は、運動そのものではなく、運動に対して心臓がどのように反応するかという点に着目したものだ。身体活動が1日を通して変動する中で、ストレスが加わった時に心臓がそれに適応する能力を把握しようとする、より核心的な課題に迫る意義の高い方法である。われわれの研究は、スマートウォッチというウェアラブルデバイスでそれを捉える初の試みだ」と話している。

健康長寿を目指すなら、この食事がベスト

 高齢になっても健康を維持するためには、中年期にどのような食生活を送れば良いのだろうか。10万5,000人を超える男女を最長で30年間にわたって追跡し、8つのパターンの食事法について調べた研究からは、代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index;AHEI)が明確に優れていることが示された。コペンハーゲン大学(デンマーク)公衆衛生学准教授で、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の栄養学客員准教授でもあるMarta Guasch-Ferre氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に3月24日掲載された。  AHEIは2002年に、米国農務省(USDA)による米国の食事ガイドラインの遵守度の指標である健康食指数(Healthy Eating Index;HEI)の代替指標として、ハーバード大学の研究者らにより作成された。ハーバード大学によると、HEIとAHEIは似ているが、AHEIの方が慢性疾患のリスクを軽減することにより重点を置いた指標になっているという。AHEIの高い食事とは、果物や野菜、全粒穀物、ナッツ類、豆類、健康的な脂肪を豊富に摂取し、赤肉や加工肉、加糖飲料、塩分、精製穀物の摂取は控えた食事である。

ゾルピデムとBZDの使用が認知症リスク増加と関連〜メタ解析

 ガンマアミノ酪酸(GABA)系は、認知機能や記憶プロセスに関連していることが知られている。そして、GABAA受容体およびその他の関連経路の活動は、βアミロイドペプチド(Aβ)の蓄積に影響を及ぼす。そのため、GABAA受容体に影響を及ぼす薬剤の使用とアルツハイマー病および認知症の発症リスクとの関連を調査する研究が進められてきた。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのKimia Vakili氏らは、ベンゾジアゼピン(BZD)、ゾルピデム、トリアゾラム、麻酔薬に焦点を当て、GABAA受容体に影響を及ぼす薬剤とアルツハイマー病および認知症リスクとの関連を明らかにするため、文献レビューおよびメタ解析を実施した。Molecular Neurobiology誌オンライン版2025年3月20日号の報告。

「急性腹症診療ガイドライン2025」、ポイント学習動画など新たな試みも

 2025年3月「急性腹症診療ガイドライン2025 第2版」が刊行された。2015年の初版から10年ぶりの改訂となる。Minds作成マニュアル(以下、マニュアル)に則って作成され、初版の全CQに対して再度のシステマティックレビューを行い、BQ81個、FRQ6個、CQ14個の構成となっている。8学会の合同制作で広範な疾患、検査を網羅する。診療のポイントをシナリオで確認できる動画を作成、システマティックレビューの検索式や結果をWeb上で公開するなど、新たな試みも行われた。改訂出版委員会の主要委員である札幌医科大学・三原 弘氏に、改訂版のポイントや特徴を聞いた。  ガイドライン自体の評価はMindsなどが行っているが、私たちはさらにマニュアルに従ってガイドラインが実臨床や社会に与えた影響を評価しようと考えた。具体的には、初版刊行の前後、2014年と2022年に日本腹部救急医学会と日本プライマリ・ケア連合学会の会員を対象にアンケート調査を行った。ガイドラインの認知度と実臨床の変化を調べ、改訂につなげることが目的だ。

タバコ規制により米国で400万人近い人が死亡を回避

 喫煙者を減らすための公衆衛生キャンペーンやタバコ税の導入などのさまざまな対策によって、米国では過去50年間で約400万人の肺がんによる死亡が防がれたことが明らかになった。回避された肺がんによる死亡者数は、同期間に回避された全てのがん死の約半数を占めるという。  この研究は、米国がん協会(ACS)のFarhad Islami氏らによるもので、詳細は「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に3月25日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「肺がんによる死亡を回避し得た人の推定数は膨大な数に上っている。これは、喫煙防止のための公衆衛生対策の推進が、肺がんによる早期死亡の低減に大きな効果を発揮してきたことを物語っている」としている。ただし一方で同氏は、「それにもかかわらず、肺がんは依然として米国におけるがん死の主要な原因であり、さらに、喫煙に起因する肺がん以外のがん、および、がん以外の喫煙関連疾患の罹患率や死亡率は依然として高いままだ」と、さらなる改善の必要性を強調している。

糖尿病性腎症の世界疾病負荷、1990~2021年にかけて増大

 糖尿病性腎症の世界疾病負荷は1990~2021年にかけて増大しており、2050年まで増大が続く見込みである、とする研究結果が報告された。成都市第三人民病院(中国)のXiao Ma氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に2月21日掲載された。  慢性腎臓病(CKD)は糖尿病の深刻な合併症であり、その世界的負担は徐々に増加している。 米国では2000~2019年の間に、約80万人の患者が糖尿病を主因とする腎不全により透析または腎移植を受けているという報告もある。糖尿病性腎症の独立したリスク因子としては、遺伝、高血糖、高血圧などが挙げられているものの、CKDを併発した糖尿病の発生率に関する完全な統計はない。そのような背景から、著者らは、世界疾病負荷研究(GBD)に基づき、1990~2021年のデータを使用して、1型および2型の糖尿病に起因するCKDの世界的な負荷の動向および今後の予測について分析した。

ハイテクTシャツで術後患者のバイタルサインをモニタリング/欧州泌尿器科学会

 センサーを搭載したハイテクTシャツが、退院後の患者のバイタルサインを追跡するのに役立つ可能性があるようだ。がんで泌尿器の外科手術を受けて退院した70人の患者を対象にした小規模研究で、退院後にこのTシャツを着用して血圧や心拍数、体温などのバイタルサインのモニタリングを受けた患者は、対照群よりも安全で安心できると感じていたことが示されたという。ローマ・ラ・サピエンツァ大学(イタリア)泌尿器科准教授のAntonio Pastore氏らによるこの研究結果は、欧州泌尿器科学会年次総会(EAU25、3月21〜24日、スペイン・マドリード)で発表された。

熱中症の重症度が尿でわかる?

 昨年、5~9月に熱中症で搬送される人の数は過去最多を記録した。熱中症の重症度は、搬送先施設で血液検査により評価される。しかし、尿中の肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)も熱中症の重症度と相関するという研究結果が報告された。L-FABPは熱中症の生理学的重症度や予後を予測するツールになり得るという。日本医科大学救急医学教室の横堀將司氏、関西医科大学総合医療センター救急医学科の島崎淳也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月12日掲載された。  熱中症は、高温多湿環境下で体内の水分・塩分量のバランスが崩れ、体温調節機能や循環機能が破綻して発症する。熱中症に対する適切な介入と転帰の改善には重症度の迅速な評価が不可欠だが、救急外来(ER)であっても、血液検査では結果の確認に長い時間がかかる。このような背景から、熱中症の重症度の判断には、よりアクセスしやすい簡易迅速検査の開発が待たれていた。

症状のない亜鉛欠乏症に注意、亜鉛欠乏症の診療指針改訂

「亜鉛欠乏症の診療指針2024」が2025年1月に発行された。今回の改訂は7年ぶりで、きわめて重要な8つの改訂点が診療指針の冒頭に明記され、要旨を読めば最低限の理解がカバーできる構成になっている。だが、本指針内容を日常診療へ落とし込む際に注意したいポイントがある。そこで今回、本指針の作成委員長を務めた脇野 修氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 腎臓内科分野 教授)に、亜鉛欠乏症の現状や診断・治療を行う際の注意点などについて話を聞いた。

サブタイプ別転移乳がん患者の脳転移発生率、HER2低発現の影響は

 約1万8千例を含む大規模な転移乳がん患者コホートを対象に、サブタイプおよび治療ライン別の脳転移の有病率と累積発生率、またHER2低発現が脳転移発生率に及ぼす影響を評価した結果、すべてのサブタイプで治療ラインが進むごとに発生率が上昇し、HER2低発現は従来のサブタイプ分類における発生率に影響を及ぼさないことが示唆された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のSarah L Sammons氏らによるJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版2025年3月31日号への報告。  本研究では、電子カルテに基づく全国規模の匿名化データベースが用いられた。主要評価項目は脳転移の初回診断とし、HER2低発現を含む転移乳がんのサブタイプおよび治療ライン別に、脳転移の有病率および発生率を推定した。全身治療開始時に脳転移を有さなかった患者における脳転移リスクは、累積発症率関数を用いて推定した。すべてのp値は両側検定に基づき、p≦0.05を統計学的有意とした。

2年間のフレマネズマブ治療の有効性および継続性〜国内単一施設観察研究

 フレマネズマブの12週間に1回675mgを皮下投与した場合の長期的なアドヒアランスや有効性に関するリアルワールドデータは、依然として不足している。静岡赤十字病院の吉田 昌平氏らは、反復性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)に対する2年にわたるフレマネズマブ675mgの有効性およびアドヒアランスを評価し、治療中止理由の分析を行った。The Journal of Headache and Pain誌2025年3月11日号の報告。  対象は、静岡赤十字病院の頭痛センターに通院している患者のうち、2021年11月〜2022年6月にフレマネズマブの12週間に1回675mgを皮下投与する治療を行った15歳以上の患者。頭痛の頻度および重症度は、頭痛日誌を用いて記録した。観察期間は、治療開始後24ヵ月間までとした。治療中止理由は、フォローアップ時のカルテ記録より収集した。

遺伝性アルツハイマーへのgantenerumab、発症リスク低下に有効か

 最先端のアルツハイマー病治療薬が、実際にその進行を防ぐ可能性のあることが、小規模な研究で示された。脳内でアミロイドβ(Aβ)が過剰に産生される遺伝的変異を持ち、将来、アルツハイマー病を発症することがほぼ確実とされる試験参加者に、脳からAβを除去する抗Aβ IgG1モノクローナル抗体のガンテネルマブ(gantenerumab)を投与したところ、投与期間が最も長かった参加者ではアルツハイマー病の発症リスクが50%低下したことが示されたという。米ワシントン大学医学部のRandall Bateman氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Neurology」4月号に掲載された。

tenecteplase、脳梗塞治療でアルテプラーゼと同等の効果

 急性期脳梗塞の治療薬として2月28日、米食品医薬品局(FDA)により承認された血栓溶解薬のTNKase(一般名テネクテプラーゼ〔tenecteplase〕)の有効性と安全性は、米国の大多数の病院で使用されている血栓溶解薬のアルテプラーゼと同等であるとする研究結果が報告された。テネクテプラーゼには、アルテプラーゼと比べて投与に要する時間が格段に短いというメリットもある。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのJustin Rousseau氏らによる本研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月12日掲載された。

低ホスファターゼ症の新たな歯科症状が明らかに―全国歯科調査

 子どもの歯は6歳前後で永久歯へと生え変わる。もしそれより早く乳歯が抜け落ちたとしたら、そこに別の病気が隠れているかもしれない。  低ホスファターゼ症(HPP)は、無治療では死に至ることもある遺伝性の骨系統疾患であり、乳歯の早期脱落といった歯科的問題を伴うことが多い。この度、日本人におけるHPPの歯科的所見の調査を目的とした全国調査が行われ、この疾患に関する新たな歯科所見が認められたという。本調査は大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学講座の大川玲奈氏、仲野和彦氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月25日掲載された。

間質性肺炎合併肺がん、薬物療法のポイント~ステートメント改訂/日本呼吸器学会

 2017年10月に初版が発行された『間質性肺炎合併肺癌に関するステートメント』について、2025年4月に改訂第2版が発行された。肺がんの薬物療法は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場するなど、目覚ましい進歩を遂げている。そのなかで、間質性肺炎(IP)を合併する肺がんの治療では、IPの急性増悪が問題となる。そこで、近年はIP合併肺がんに関する研究も実施され、エビデンスが蓄積されつつある。これらのエビデンスを含めて、本ステートメントの薬物療法のポイントについて、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。