国内初となるジアゼパムの鼻腔内投与製剤の抗けいれん薬であるジアゼパム点鼻薬が2025年12月24日に発売された(製造販売元:アキュリスファーマ、販売情報提供活動:ヴィアトリス製薬)。本剤の効能効果は「てんかん重積状態」の改善であり、2歳以上のてんかん重積状態およびてんかん重積状態に移行する恐れのある発作(遷延性の発作や群発発作)が生じたときに投与する。医療機関外において医療者や介護者による投与が可能なレスキュー薬だが、「2歳以上6歳未満の小児へ投与する場合は、患者の状態を観察することができ、必要時に救急蘇生のための医療機器、薬剤等の使用が可能な医師の監視下においてのみ行うこと」「救急救命士による処置としての投与は認められていない」などの点には注意が必要である。
製造販売元のアキュリスファーマはケアネットの取材*において、「本剤の承認に際し、てんかん関連学会および患者会が求める形を実現することに最も苦慮した。学会などから厚生労働大臣宛に早期承認を求める要望書が2度にわたり提出され、とくに以下の3つが強い要望として挙げられた」とコメントした。
*製造販売承認取得時点
(1)海外と同様に、成人を含む幅広い年齢層で使用可能とすること
(2)既存のレスキュー薬では投与後に救急搬送の手配が必須とされてきた。しかし、発作が速やかに収まり、患者が元の状態に戻った場合には、救急搬送が不要なケースもあるが、本剤はそのようなケースで柔軟な運用が可能であること
(3)本剤はてんかん重積状態になってからの使用ではなく、「てんかん重積状態に移行する恐れのある発作」に対しても使用できるようにすること
同社は厚生労働省やPMDAと慎重に議論を重ね、国内臨床試験は6~17歳を対象としたもののみだったが、海外データの有用性を説明することで、最終的に成人を含む“2歳以上のてんかん重積状態に移行する恐れのある発作”に対して本剤が使用可能になったことを説明し、「このような要望に応える形で承認を実現できたことは、大きな成果であると同時に困難かつ慎重な対応が求められた」とコメントした。このほか、利便性を高めるため「薬剤を室温(1~30℃)で保管できるよう配慮した」とも話した。
本剤の医療関係者向けサイトのQ&Aには「他の点鼻薬を使用している患者への投与」「投与時の適切な体位」などが掲載されているので、処方を行う医師や処置にあたる医療者はぜひ一読されたい。以下には一部抜粋したものを示す。
―――
Q:他の点鼻薬を使用している患者にスピジアを使用してよいですか? そのような場合、効果に差はありますか?
A:季節性アレルギーまたは鼻炎のため点鼻薬で治療を行っているてんかん患者において、Valtoco(スピジアの米国商品名)の鼻腔内投与により、その有効性および安全性に影響を与えないことが報告されました(海外データ)。
Q:投与の際の適切な体位は?
A:発作の際の体位について、食事中の発作や嘔吐やよだれを伴う場合、発作後の嘔吐も考慮し、顔を横に向けて寝かせるなどの対応がよいとされています。投与できる体勢をしっかり確保してから、スピジアを鼻の穴にまっすぐ差し込んで(またはあてて)ください。なお、スピジア投与時の顔の向きに規定はありません。
スピジアの投与方法、投与後の対応に関しては、「スピジア使用ガイド(持ち帰り用患者冊子)」や使い方動画をご確認ください。
―――
てんかん重積状態のこれまでの課題
国内におけるてんかん重積状態の患者数はレセプトデータなどから約2万例と推定される。日本神経学会の『てんかん診療ガイドライン2018』によると、「てんかん重積とは、発作がある程度の長さ以上に続くか、または、短い発作でも反復し、その間の意識の回復がないもの。また、けいれん発作が5分以上持続すれば治療を開始すべきで、30分以上持続すると後遺障害の危険性がある」とされる。しかしながら、これまでは病院到着までにかかる時間が治療の遅れにつながる、成人における病院外で使用可能なレスキュー薬が存在していなかった点などが課題とされていた。
<製品概要>
販売名:スピジア点鼻液 5mg、7.5mg、10mg
一般名:ジアゼパム
効能又は効果:てんかん重積状態
用法及び用量:通常、成人及び2歳以上の小児にはジアゼパムとして、患者の年齢及び体重を考慮し、5~20mgを1回鼻腔内に投与する。効果不十分な場合には4時間以上あけて2回目の投与ができる。ただし、6歳未満の小児の1回量は15mgを超えないこと。
薬価:5mg:0.1mL 8,336.50円/容器、7.5mg:0.1mL 9,337.60円/容器、10mg:0.1mL 1万120.00円/容器
製造販売承認日:2025年6月24日
薬価基準収載日:2025年10月22日
発売日:2025年12月24日
製造販売元:アキュリスファーマ株式会社
販売情報提供活動:ヴィアトリス製薬合同会社
(ケアネット 土井 舞子)