医療一般|page:148

「日本版CDC」2025年度創設へ、参議院で可決

 今後の感染症流行に備え、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たに「国立健康危機管理研究機構」を設立するための法律が、5月31日の参議院本会議で可決、成立した。米国疾病管理予防センター(CDC)をモデルとして、2025年度に国立健康危機管理研究機構が創設される予定。感染症その他の疾患に関し、調査研究、医療の提供、人材の養成等を行うとともに、国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがある感染症の発生および蔓延時において、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し科学的知見を提供できる体制の強化を図る。

大腸がんを予防するコーヒーの摂取量は?~アンブレラレビュー

 1日5杯以上のコーヒー摂取により、大腸がんのリスクが有意に低減することが、米国・Cleveland Clinic FloridaのSameh Hany Emile氏らのアンブレラレビューによって明らかになった。Techniques in Coloproctology誌オンライン版2023年5月2日掲載の報告。  コーヒーの摂取によって、全死亡リスクおよび心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低減が報告されている。また、大腸がんや一部のがん種を予防する可能性も示唆されている。しかし、コーヒー摂取が大腸がんのリスク低減と関連するエビデンスは十分ではない。

アスリートの睡眠習慣は食事に左右される?

 早寝早起きの生活にしたいのなら、食べ物をアレンジしてみると良いかもしれない。新たに報告された研究によると、何を食べるかによって、睡眠パターンが異なる可能性があるという。米ウエストバージニア大学のLauren Rentz氏らが、大学生アスリートを対象に行った小規模な研究の結果であり、米国生理学会(APS2023、4月20~23日、米国・ロングビーチ)で発表された。  Rentz氏によると、「アスリートの成功にとって、試合時に自分のパフォーマンスを最大化して発揮することだけでなく、試合やトレーニングの後の迅速な回復も重要。良い睡眠習慣が日々の身体的・精神的ストレスからの回復を促し、将来のパフォーマンスに好影響を与える」とのことだ。ただし、「常に強いストレスにさらされているアスリートの回復戦略における、睡眠と栄養素摂取の関係はまだほとんど知られていない」と、同氏は研究の背景を語っている。

抑うつ症状の強い女性には下部尿路症状が多い――国内ネット調査

 日本人女性では、頻尿や尿失禁などの下部尿路症状と抑うつ症状との間に有意な関連のあることが明らかになった。特に若年女性で、より強固な関連が認められたという。横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科の河原崇司氏らが行ったインターネット調査の結果であり、詳細は「Lower Urinary Tract Symptoms」に3月30日掲載された。  頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿後の尿漏れといった下部尿路症状(LUTS)は加齢とともに増え、特に女性では尿失禁や尿漏れが男性に比べて起こりやすい。LUTSは命にかかわるものではないものの、生活の質(QOL)を大きく低下させる。一方、うつ病も女性に多い疾患であり、かつ、うつ病は時に命にかかわることがある。これまで海外からは、女性のLUTSがうつ病リスクに関連していることを示す研究結果が報告されている。ただし、それを否定する研究もあり、また日本人女性対象の研究報告はまだない。河原氏らの研究は以上を背景として行われた。

境界性パーソナリティ障害に有効な治療は~リアルワールドデータより

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者の多くは精神薬理学的治療を受けているが、BPDに関する臨床ガイドラインには、薬物療法の役割についてのコンセンサスはない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、BPDに対する薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、注意欠如多動症(ADHD)の治療薬が、BPD患者の精神科再入院、すべての原因による入院または死亡のリスク低下と関連していることが示唆された。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年4月24日号の報告。

真性多血症治療薬ロペグインターフェロン発売/ファーマエッセンシアジャパン

 ファーマエッセンシアジャパンは、抗悪性腫瘍剤/真性多血症治療薬のロペグインターフェロン アルファ-2b(商品名:ベスレミ)の皮下注250µgシリンジと500µgシリンジを6月1日に発売した(薬価収載は5月24日)。適応は真性多血症で既存治療が効果不十分または不適当な場合に限るとされている。  真性多血症(PV)は、骨髄増殖性腫瘍の一種で、骨髄の造血幹細胞の異常により、赤血球が過剰に産生される血液の希少疾病。PVは、遺伝子変異によって発症すると推定され、ほぼすべてのPV患者で造血幹細胞中のヤヌスキナーゼ2(JAK2)遺伝子に主に「JAK2 V617F」と称される変異が生じ、著しい赤血球の増加を来たす。

抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加

 近年の研究で、抗菌薬によるマイクロバイオーム異常および腸と肺の相互作用が肺がん発症の引き金になる可能性が指摘されている。今回、韓国・ソウル国立大学のMinseo Kim氏らが抗菌薬の長期使用と肺がんリスクの関連を調べたところ、抗菌薬の累積使用日数および種類の数が肺がんリスク増加と関連することが示された。Journal of Infection and Public Health誌2023年7月号に掲載。

抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン使用の世界的な傾向~64ヵ国横断的分析

 米国・ピッツバーグ大学のOrges Alabaku氏らは、高所得国、中所得国、低所得国における抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン(BZD)使用の世界的な傾向を調査した。その結果、高所得国は中・低所得国と比較し向精神薬の治療利用率が高いことを報告した。PLOS ONE誌2023年4月26日号の報告。  IQVIAのMIDASデータベースを用いて、2014年7月~2019年12月までの国別横断的時系列分析を行った。人口で調整された使用率は、人口規模ごとに、薬剤クラス別の薬剤標準単位数で算出した。高所得国、中所得国、低所得国の分類には、国連の「2020年世界経済状況・予測」を用いた。薬剤クラス別の使用率の変化は、2014年7月~2019年7月の期間で算出した。経済状況を予測変数として用い、各国の薬剤クラス別の使用率について、ベースラインからの変化の予測可能性を評価するため線形回帰分析を実施した。

統合失調症患者におけるLAI抗精神病薬の導入成功パターンは

 統合失調症の再発予防に長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は効果的であるが、いまだ十分に利用されているとはいえない。米国・ザッカーヒルサイド病院のJohn M. Kane氏らは、米国の民間保険加入患者を含む大規模データセットを用いて、統合失調症診断後のLAI抗精神病薬治療の成功パターンを特定するため、本検討を行った。その結果、主に民間保険加入患者である本データセットでは、初期段階でのLAI抗精神病薬の使用率は非常に低かったが、正常に同薬剤が導入された患者の多くは、最初の導入で90日以上の治療を達成していた。しかし、初期段階でLAI抗精神病薬が使用された場合でも、多くの患者は過去に経口抗精神病薬治療を受けており、統合失調症の初回治療としてLAI抗精神病薬はいまだ一般的ではないことが示された。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年4月19日号の報告。  ICD-9またはICD-10基準で新たに統合失調症と診断された18~40歳の患者のうち、第2世代のLAI抗精神病薬の導入成功(90日以上の使用と定義)、1つ以上の第2世代の経口抗精神病薬使用のデータを、2012~19年のIBM MarketScan CommercialおよびMedicare Supplementalのデータベースより特定した。アウトカムは、記述的に測定した。 主な結果は以下のとおり。 ・適格基準を満たした患者は、新規に統合失調症と診断された患者4万1,391例のうち、LAI抗精神病薬を1回以上使用した患者1,836例(4%)、1回以上の第2世代経口抗精神病薬治療後にLAI抗精神病薬の導入に成功した患者202例(1%未満)。 ・診断から最初のLAI抗精神病薬開始までの期間(中央値)は289.5日(範囲:0~2,171日)、LAI抗精神病薬開始から導入成功までの期間は90.0日(同:90~1,061日)、導入成功後のLAI抗精神病薬中止までの期間は166.5日(同:91~799日)であった。 ・LAI抗精神病薬開始前、2つ以上の経口抗精神病薬による治療を行っていた患者は58%であった。 ・LAI抗精神病薬の導入が成功した患者の86%は、最初のLAI抗精神病薬で達成が得られていた。

学校でのコロナ感染対策、マスクの効果が明らかに

 本邦では、2023年5月8日に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症法上の分類が5類に引き下げられ、文部科学省は、5類移行後の学校でのマスクの着用や検温報告を原則不要とする方針を、各教育委員会に通知している。しかし、スイスの中学校で実施された研究において、マスク着用の義務化はウイルス感染に重要な役割を果たすとされるエアロゾルの濃度を低下させ、SARS-CoV-2感染リスクを大幅に低減させたことが報告された。本研究結果は、スイス・ベルン大学のNicolas Banholzer氏らによってPLOS Medicine誌2023年5月18日号で報告された。

睡眠時間のばらつきが双極性障害の再発リスクと関連~APPLEコホート研究

 双極性障害でみられる睡眠障害は、気分症状と密接に関連しているといわれている。愛知・桶狭間病院の江崎 悠一氏らは、双極性障害患者のアクチグラフによる睡眠パラメータと気分エピソードの再発との関連を調査した。その結果、双極性障害患者の気分エピソードの再発または再燃を予防するための補助療法として、睡眠時間を一定に保つ治療が有用である可能性が示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年4月24日号の報告。

青少年トランスジェンダーへの医療ケア、どうあるべき?

 米国を中心に、トランスジェンダー(出生時点の身体と自認の性別が一致していない人)をはじめとした性的マイノリティーに対する社会制度・配慮がどうあるべきかという議論が高まっている。トランスジェンダーを肯定した医療や制度整備を進めることを目的に、医学・法学などの専門家で構成される国際的非営利組織「世界トランスジェンダー保健専門家協会(World Professional Association for Transgender Health:WPATH)は、独自に「トランスジェンダーとジェンダー多様な人々の健康のためのケア基準」を作成している。10年ぶりの更新となる第8版(SOC-8)が2022年9月に発表され、JAMA誌2023年5月18日号にそのサマリーが公開された。

コロナ禍の日本人の自殺念慮に最も影響した要因は?/筑波大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時に孤独感を感じていた日本人では、収入減少や社会的孤立などの他の要因に比べ、自殺念慮のリスクが最も高かったことが、筑波大学 医学医療系災害・地域精神医学の太刀川 弘和氏らの研究により明らかになった。BMJ Open誌2023年5月15日号掲載の報告。  日本における自殺者数は、2020年は2万1,081人、2021年は2万1,007人、2022年は2万1,881人で、COVID-19流行前の2019年の2万169人よりも多いままである。自殺の多くは多様かつ複合的な原因および背景を有しているが、新型コロナウイルスへの感染の恐怖や失業などの経済問題に加え、ソーシャルディスタンスなどによる社会的孤立や孤独感の悪化があるとされている。しかし、自殺念慮にはこれらのどれが、どのように影響するかは不明である。そこで、研究グループは、COVID-19流行時の孤独感が自殺念慮に直接的・間接的にどのような影響を与えるかを明らかにするため調査を行った。

コロナ死の要因はウイルスではなく細菌感染?

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染により集中治療室(ICU)で治療を受ける患者は、ICU入室期間や人工呼吸器装着期間が長いことが報告されている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のICU入室期間が長い理由の1つとして、サイトカインストームによる多臓器不全が挙げられている。しかし、米国・ノースウェスタン大学のCatherine A. Gao氏らが機械学習アプローチを用いて実施した研究によると、COVID-19患者におけるICU入室期間の長さは、呼吸不全を特徴とする臨床状態に起因していたことが示された。また、二次的な細菌感染による人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生率が高く、VAPが主な死亡の原因となっていることが示唆された。本研究結果は、Journal of Clinical Investigation誌オンライン版2023年4月27日号に掲載された。

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法

 うつ病患者から報告されたアウトカムは、患者の人生の充足、ウェルビーイング、価値ある活動などを反映している。カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、うつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法による治療がライフ・エンゲージメントに及ぼす短期的および長期的な影響を検討するため、10項目の自己記入式うつ症状尺度(IDS-SR10)を用いて本研究を実施した。その結果、ブレクスピプラゾール補助療法は、抑うつ症状に対する効果だけでなく、患者のライフ・エンゲージメントの改善が期待でき、うつ病患者自身にとって意味のある機能的アウトカムを達成する可能性が示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2023年6月号の報告。

北里大、コロナへのイベルメクチン第III相の論文公表

 北里大学が主導して実施した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象としたイベルメクチンの第III相臨床試験「CORVETTE-01」の結果については、2022年9月に同大学によって、主要評価項目においてプラセボとの統計学的有意差がなく、有効性が認められなかったことが発表されていた。本試験の結果が、Frontiers in Medicine誌2023年5月22日号に掲載された。

TTF-1は肺腺がんにおけるICI+化学療法の効果予測因子となるか/日本呼吸器学会

 肺腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の効果予測因子として、TTF‐1(Thyroid transcription factor-1)の可能性が研究されている。  TTF-1は甲状腺・肺・脳で認められる遺伝子調節蛋白である。肺腺がんにおいても、TTF−1との研究が報告されている。  肺腺がんではTTF-1陽性が多く60〜80%を占め、陰性は20〜40%である。TTF-1陽性例に比べ、陰性例は予後不良であるとされる。また、TTF-1の発現の有無は、化学療法薬ペメトレキセドの効果に影響を及ぼすとの報告がある。しかし、肺腺がんにおける、ICIとペメトレキセドを含む化学療法との併用療法とTTF-1発現の関係については十分に研究されていない。第63回日本呼吸器学会学術講演会でも、肺腺がんとTTF-1の関係を検討した研究がいくつか報告された。

大動脈弁狭窄症の死亡率の動向~日本含む高所得国

 カナダ・トロント大学の日尾野 誠氏らが、日本を含む高所得国8ヵ国における2000~20年の大動脈弁狭窄症の死亡率の動向を調査した結果、粗死亡率は8ヵ国とも増加したが、年齢標準化死亡率は3ヵ国(ドイツ、オーストラリア、米国)で減少傾向に転じ、80歳以上では8ヵ国で減少傾向に転じたことがわかった。Heart誌オンライン版2023年5月14日号に掲載。  本研究では、英国、ドイツ、フランス、イタリア、日本、オーストラリア、米国、カナダにおける2000~20年の大動脈弁狭窄症による死亡率の動向を調べるために、WHOのデータベースを用いて10万人当たり粗死亡率および年齢標準化死亡率、3つのグループ(64歳未満、65~79歳、80歳以上)の年齢層別死亡率を算出した。年間変化率は、結合点回帰を用いて分析した。

成人肺炎診療ガイドラインを先取りした肺炎の予防戦略/日本呼吸器学会

 肺炎は日本人の死因の5位に位置する主要な疾患である。高齢になるにつれて発生率、死亡率が高くなり、65歳以上の高齢者が死亡者全体の95%以上を占めている。したがって、高齢者肺炎の予防が重要といえる。本邦において、医療関連肺炎(HCAP)では肺炎球菌に加えて口腔内連鎖球菌、嫌気性菌が多かったという報告もあり、高齢者肺炎の予防戦略は「肺炎球菌ワクチン」と「口腔ケア」が2本柱といえる。改訂中の肺炎診療ガイドラインでは、これに対応して「肺炎の予防に口腔ケアを推奨するか」というCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、システマティックレビュー(SR)が実施された。

統合失調症における抗精神病薬の多剤併用と単剤療法の安全性比較

 東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、抗精神病薬の単剤療法と比較した多剤併用療法の安全性を検討した。その結果、抗精神病薬の単剤療法は、多剤併用療法と比較し、重度の身体的併存症による入院リスクの低下と関連していないことが示唆された。著者らは、安全性の問題に関する既存のエビデンスがない以上は、ガイドラインで抗精神病薬の多剤併用療法の代わりに単剤療法を推奨するべきではないとしている。The American Journal of Psychiatry誌2023年5月1日号の報告。  フィンランドの全国入院患者レジストリより統合失調症患者6万1,889例を特定し、1996~2017年にわたりフォローアップ調査を行った(フォローアップ期間中央値:14.8年[IQR=7.4~22.0])。非精神疾患および心血管系による入院など、重度の身体的併存症リスク(調整ハザード比:aHR)を、抗精神病薬の単剤療法と多剤併用療法における7つの用量カテゴリで比較した。7つの用量カテゴリは、1日当たりの服用量(DDD:defined daily doses)0.4未満、0.4~0.6未満、0.6~0.9未満、0.9~1.1未満、1.1~1.4未満、1.4~1.6未満、1.6以上であった。選択バイアスを除外するため、個別分析(Within-individual analysis)を用いた。