医療一般|page:1

再発/難治性の多発性⾻髄腫治療薬トアルクエタマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年8月14日、再発/難治性の多発性骨髄腫治療薬として、多発性骨髄腫細胞表面に高発現するGPRC5D(Gタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD)およびT細胞表面に発現するCD3を標的とする二重特異性抗体トアルクエタマブ(遺伝子組換え)(商品名:タービー皮下注)を発売したことを発表した。本剤は、2025年6月24日に「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能又は効果として承認され、8月14日に薬価収載された。Johnson & Johnsonとしては、テクリスタマブ(遺伝子組換え)(商品名:テクベイリ皮下注)に続き、再発/難治性の多発性骨髄腫に対する2剤目の二重特異性抗体となる。

進展型小細胞肺がんへの免疫化学療法、日本の実臨床データ

 進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)に対する1次治療として、抗PD-L1抗体とプラチナ製剤を含む化学療法の併用療法(免疫化学療法)が標準治療となっているが、実臨床における報告は限定的である。そこで、平林 太郎氏(信州大学)らの研究グループは、実臨床において免疫化学療法を受けたED-SCLC患者と、化学療法を受けたED-SCLC患者の臨床背景や治療成績などを比較した。その結果、免疫化学療法が選択された患者は、化学療法が選択された患者よりも全生存期間(OS)が良好な傾向にあったが、免疫化学療法が選択された患者は約半数であり、実臨床におけるED-SCLC治療にはさまざまな課題が存在することが示された。本研究結果は、Respiratory Investigation誌2025年9月号に掲載された。  本研究は、日本の11施設が参加した多施設共同後ろ向き研究である。2019年8月~2023年6月に、1次治療として免疫化学療法または化学療法を受けたED-SCLC患者181例を対象とした。対象患者を、免疫化学療法を受けた群(免疫化学療法群、96例)と、プラチナ製剤を含む化学療法のみを受けた群(化学療法群、85例)に分け、患者背景、治療成績、免疫化学療法が選択されなかった理由などを後ろ向きに調べた。

母親の産前、産後うつ病と子供の自閉スペクトラム症との関係〜メタ解析

 母親の産前、産後うつ病や周産期うつ病と子供の自閉スペクトラム症(ASD)との関係については、相反する結果が報告されている。オーストラリア・カーティン大学のBiruk Shalmeno Tusa氏らは、母親の産前、産後うつ病や周産期うつ病と小児および青年期におけるASDリスクとの関連についての既存のエビデンスを検証し、統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BJPsych Open誌2025年6月4日号の報告。  2024年2月21日までに公表された研究を、PubMed、Medline、EMBASE、Scopus、CINAHL、PsycINFOよりシステマティックに検索した。ランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施し、サマリー効果推定値はオッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)として算出した。異質性の評価には、Cochranの Q検定およびI2検定を用いた。対象研究における潜在的な異質性の要因を特定するため、サブグループ解析を行った。出版バイアスの評価には、ファンネルプロットとEggerの回帰検定を用いた。

腰痛の重症度に意外な因子が関連~日本人データ

 主要な生活習慣関連因子と腰痛の重症度・慢性度との関連について、藤田医科大学の川端 走野氏らが日本の成人の全国代表サンプルで調査したところ、脂質異常症が腰痛重症度に関連し、喫煙が腰痛の重症度および慢性度の両方に関連していることが示された。PLoS One誌2025年7月30日号に掲載。  本研究では、無作為に抽出した20~90歳の日本人5,000人を対象に全国横断調査を実施。2,188人から有効回答を得た。現在の腰痛の有無、腰痛の重症度(痛みなし/軽度または中等度/重度)、慢性腰痛の有無により層別解析を行った。主な生活習慣関連因子は、BMI、飲酒、喫煙、運動習慣、併存疾患(脂質異常症、糖尿病、高血圧)、体型に関する自己イメージなどで、多変量ロジスティック回帰分析により各因子との関連の有無を評価した。

救急診療所では不適切な処方が珍しくない

 救急診療所では、抗菌薬、ステロイド薬、オピオイド鎮痛薬(以下、オピオイド)が効かない症状に対してこれらの薬を大量に処方している実態が、新たな研究で示された。研究論文の筆頭著者である米ミシガン大学医学部のShirley Cohen-Mekelburg氏は、「過去の研究では、ウイルス性呼吸器感染症など抗菌薬が適応とならない疾患に対しても抗菌薬が処方され続けており、特に、救急診療所でその傾向が顕著なことが示されている」と述べている。この研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に7月22日掲載された。

糖尿病女性の診察では毎回、妊娠希望の意思確認を

 糖尿病既往のある女性の妊娠に関する、米国内分泌学会と欧州内分泌学会の共同ガイドラインが、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に7月13日掲載された。糖尿病女性患者には、診察の都度、子どもをもうけたいかどうかを尋ねるべきだとしているほか、妊娠前のGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の使用中止などを推奨している。  ガイドラインの筆頭著者である米ミシガン大学アナーバー校のJennifer Wyckoff氏はガイドライン策定の目的を、「生殖年齢の女性の糖尿病有病率が上昇している一方で、適切な妊娠前ケアを受けている糖尿病女性はごくわずかであるため」とした上で、「本ガイドラインは、計画的な妊娠の方法に加え、糖尿病治療テクノロジーの進歩、出産の時期、治療薬、食事・栄養についても言及したものだ」と特色を強調している。

「地域医療、医療DX、医薬品の安定供給」を2026年予算要求に要望/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、8月6日に定例の記者会見を開催した。会見では、「2026年度予算要求の要望事項」、「紙カルテ利用診療所の電子化対応可能性に関する調査」、「マイナ保険証のスマートフォン搭載対応」、「OTC類似薬に係る最近の状況」について説明が行われた。  はじめに松本氏が、「2026(令和8)年度予算要求要望」について内容の説明を行った。今回、概算要求事項として「(1)地域医療への予算確保、(2)医療DXの適切な推進のための予算確保、(3)医薬品の安定供給」の3つを要望していると述べた。具体的な要望内容は以下のとおりである。

日本における認知症予防、社会参加の促進はどの程度効果があるのか

 社会参加は、認知症発症リスクの低下と関連している可能性があり、近年日本において増加傾向にある。この社会参加の促進が、認知症発症率の変化と関連している可能性がある。医療経済研究機構の藤原 聡子氏らは、5つの自治体における2つの高齢者コホートの認知症発症率を比較し、その違いが社会参加と関連しているのか、あるいは社会参加の変数と関連しているかを検討した。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2025年10月号の報告。  日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを分析した。本研究は、要介護認定を受けていない65歳以上の地域在住高齢者を対象とした2つの3年間フォローアップ調査コホート(2013〜16年:2万5,281人、2016〜19年:2万6,284人)で構成された。生存分析を用いて、コホートおよび社会参加を説明変数として認知症のハザード比(HR)を算出した。解析は、年齢別(65〜74歳、75歳以上)に層別化し、人口統計学的因子、社会参加、社会参加に関連する変数について調整した。

循環器病予防に大きく寄与する2つの因子/国立循環器病研究センター

 心血管疾患(CVD)リスク因子については、高血圧や喫煙、体型、栄養などの関連性が指摘されている。では、これらの因子はCVDへの寄与について、どの程度定量化できるのであろうか。このテーマに関して、国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部の尾形 宗士郎氏らの研究グループは、高度なマイクロシミュレーションモデル「IMPACT NCD-JPN」を開発し、2001~19年に起きた循環器病のリスク要因の変化が、全国の循環器病(冠動脈疾患と脳卒中)の発症数、死亡数、医療費、QALYs(質調整生存年)にどのような影響を与えたかを定量的に評価した。その結果、収縮期血圧(SBP)の低下と喫煙率の低下が循環器病発症の軽減に大きく寄与していることがわかった。この結果は、The Lancet Regional Health Western Pacific誌2025年7月8日号に掲載された。

高齢てんかん患者では睡眠不足が全死亡リスクを押し上げる

 睡眠不足が健康に悪影響を及ぼすとするエビデンスの蓄積とともに近年、睡眠衛生は公衆衛生上の主要な課題の一つとなっている。しかし、睡眠不足がてんかん患者に与える長期的な影響は明らかでない。米ウォールデン大学のSrikanta Banerjee氏らは、米国国民健康面接調査(NHIS)と死亡統計データをリンクさせ、高齢てんかん患者の睡眠不足が全死亡リスクに及ぼす影響を検討。結果の詳細が「Healthcare」に4月23日掲載された。  2008~2018年のNHISに参加し、2019年末までの死亡記録を追跡し得た65歳以上の高齢者、1万7,319人を解析対象とした。このうち245人が、医療専門家からてんかんと言われた経験があり、てんかんを有する人(PWE)と定義された。

卵は本当にLDL-C値を上げるのか

 朝食の定番である卵は、コレステロール値を上昇させ、心臓病のリスクを高めると一般的に考えられている。しかし、卵に関する新たな研究で、1日に2個の卵と飽和脂肪酸の少ない食事を組み合わせて摂取した人では、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロール(LDL-C)値が低下し、心血管疾患の発症リスクが低下する可能性のあることが示された。その一方で、飽和脂肪酸はLDL-C値を上げる傾向があることも判明した。南オーストラリア大学のJonathan Buckley氏らによるこの研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」7月号で報告された。

硬膜外カテーテル、13%で位置ずれ? 経験豊富な医師でも注意が必要

 硬膜外麻酔時のカテーテル挿入には、高い技量と経験が要求される。しかし、今回、熟練の麻酔科によるカテーテル挿入でも、その先端が適切な位置に届いていないとする研究結果が報告された。カテーテル先端の位置異常が見られた症例では、担当麻酔科の経験年数が有意に長かったという。研究は富山大学医学部麻酔科学講座の松尾光浩氏らによるもので、詳細は「PLOS One」に6月26日掲載された。  硬膜外麻酔は高度な技術を要し、経験豊富な麻酔科医でも約3割の症例で鎮痛が不十分となる。成功率向上の鍵となるのがカテーテル先端の正確な挿入位置だが、その実際の到達部位を客観的に評価した報告は乏しい。本研究では、術後CT画像を用いてカテーテル先端の位置不良の頻度を明らかにするとともに、術者や患者の特性との関連を後ろ向きに検討した。

ファイザー・ビオンテック、LP.8.1対応コロナワクチンの承認取得

 ファイザーおよびビオンテックは8月8日付のプレスリリースにて、オミクロン株JN.1系統の変異株であるLP.8.1に対応した新型コロナウイルスワクチンについて、8月7日に厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表した。承認されたのは「コミナティ筋注シリンジ12歳以上用」「コミナティRTU筋注5~11歳用1人用」「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用3人用」の3製品。これらのワクチンは2025~26年秋冬シーズンで使用される予定。  今回の承認は、両社が開発した新型コロナワクチンの安全性と有効性を示した臨床、非臨床およびリアルワールドデータを含むさまざまなエビデンスに基づいている。申請データには、品質に係るデータに加え、LP.8.1対応ワクチンが、XFG、NB.1.8.1、LF.7、および現在流行している他の変異株に対し、昨年度のJN.1対応ワクチンより優れた免疫反応を示した非臨床試験データなどが含まれている。

乳児期の保湿剤使用でアトピー性皮膚炎の発症率低下、非高リスク集団ほど

 リスクに基づく選別を行っていない乳児集団における、アトピー性皮膚炎の1次予防を目的とした保湿剤(emollient)による介入を評価した研究はほとんどない。今回、リスクに基づく選別のない米国の代表的な乳児集団において、生後9週未満から毎日保湿剤を全身に塗布することで、生後24ヵ月時点におけるアトピー性皮膚炎の累積発症率が低下することが示された。米国・Oregon Health & Science UniversityのEric L Simpson氏らによるJAMA Dermatology誌オンライン版2025年7月23日号掲載の報告。  研究者らは、米国の4州におけるプライマリケア診療ネットワーク(practice-based research networks)に属する25の小児科・家庭医診療所から、1,247組の乳児と保護者を対象に、プラグマティック無作為化分散型臨床試験を実施した。参加者の募集は2018年7月~2021年2月に行い、追跡調査は2023年2月までに完了した。

錐体外路症状の早期発生は予後不良の予測因子か

 抗精神病薬未治療または短期間の治療(準未治療)しかされていない初回エピソード統合失調症患者では、錐体外路症状(EPS)が主な病態として発現する可能性がある。スペイン・Universidad ComplutenseのJoaquin Galvan氏らは、未治療および準未治療の初回エピソード統合失調スペクトラム症におけるEPSの有病率、ベースラインにおける人口統計学的および臨床的相関、フォローアップ期間中の臨床アウトカムとの関連を解析した。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2025年7月12日号の報告。

オランザピンの制吐薬としての普及率は?ガイドライン発刊後の状況を聞く

 『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂第3版』が発刊され、約2年が経過しようとしている。改訂による大きな変更点の一つは、“高度催吐性リスク抗がん薬に対するオランザピン5mgの使用を強く推奨する“ことであったが、今現在での医師や医療者への改訂点の普及率はどの程度だろうか。前回の取材に応じた青儀 健二郎氏(四国がんセンター乳腺外科 臨床研究推進部長)が、日本癌治療学会のWebアンケート調査「初回調査結果報告書」とケアネットがCareNet.com医師会員を対象に行ったアンケート「ガイドライン発刊から6ヵ月が経過した現在の制吐薬の使用状況について」を踏まえ、実臨床での実態や適正使用の普及に対する課題を語った。

降圧薬の種類と心血管リスク、ARB vs.CCB vs.利尿薬vs.β遮断薬

 血圧が良好にコントロールされている高齢高血圧患者において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)およびカルシウム拮抗薬(CCB)の長期使用は、サイアザイド系利尿薬やβ遮断薬と比較して、心血管イベントの複合アウトカムに対してより大きなベネフィットをもたらす可能性が示唆された。中国・北京協和医学院のXinyi Peng氏らは、STEP試験の事後解析として、ARB、CCB、サイアザイド系利尿薬、β遮断薬という4つの降圧薬クラスに焦点を当て、それらの長期投与と心血管リスクの関連について評価した。BMC Medicine誌2025年7月1日号掲載の報告より。  本研究は、脳卒中の既往のない60~80歳の中国人高血圧患者を対象としたSTEP試験のデータを用いて実施された。追跡不能となった234例および無作為化後に血圧記録が得られなかった20例を除外し、最終的に8,257例が解析対象となった。各降圧薬クラスについて、相対的曝露期間(薬剤投与期間/イベント発生までの期間)を算出した。

インフルワクチン接種回数と認知症リスクが逆相関~メタ解析

 インフルエンザワクチン接種と認知症リスク低下との関連性については、一貫性のない結果が報告されており、この関連性は明確になっていない。台湾・Keelung Chang Gung Memorial HospitalのWen-Kang Yang氏らは、全人口および慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、血管性疾患などの認知症高リスク患者におけるインフルエンザワクチン接種と認知症リスクとの関連を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Age and Ageing誌2025年7月1日号の報告。  2025年4月6日までに公表された研究をPubMed、Embase、CENTRALよりシステマティックに検索し、ランダム効果メタ解析を実施した。バイアスリスクの評価には、ニューカッスル・オタワ尺度を用いた。

髄外病変を有する多発性骨髄腫、CAR-T細胞vs.二重特異性抗体

 多発性骨髄腫で骨髄外に悪性形質細胞腫瘍がある場合は髄外病変(EMD)と定義され、通常は予後不良である。今回、ドイツ・University Hospital of WurzburgのMaximilian J. Steinhardtらは、再発多発性骨髄腫に有効なCAR-T細胞療法(イデカブタゲン ビクルユーセル[ide-cel]、シルタカブタゲン オートルユーセル[cilta-cel])と二重特異性抗体療法(テクリスタマブ、トアルクエタマブ)のEMDへの効果について後ろ向きに評価した結果、CAR-T細胞療法が意味のあるベネフィットをもたらす可能性が示唆された。Blood Cancer Journal誌2025年7月30日号に掲載。

HER2+炎症性乳がん、術前アントラサイクリン上乗せは有用か?

 HER2陽性乳がんの術前療法にアントラサイクリンを追加することによるベネフィットは、無作為化臨床試験において示されなかったが、炎症性乳がんにおける有効性は明らかになっていない。HER2陽性の炎症性乳がんを対象とした後ろ向き研究の結果、術前療法でのアントラサイクリン追加は病理学的完全奏効(pCR)との関連は示されなかったものの、疾患コントロール期間の延長に寄与する可能性が示唆された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの岩瀬 俊明氏らによるBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2025年8月2日号への報告。  2014~21年に、MDアンダーソンがんセンター、IBCネットワーク関連施設、ダナ・ファーバーがん研究所にて術前療法と胸筋温存乳房切除術を受けたHER2陽性原発性炎症性乳がん患者を対象に後方視的な検討が行われた。主要評価項目はpCR率、副次評価項目には、局所・領域再発までの期間(TLRR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が含まれた。単変量解析および多変量解析が、臨床的に関連する交絡因子を調整したうえで実施された。