CLEAR!ジャーナル四天王|page:71

ピオグリタゾンとがん(解説:吉岡 成人 氏)-397

日本における糖尿病患者の死因の第1位は「がん」であり、糖尿病患者の高齢化と相まって、糖尿病患者の2人に1人はがんになり、3人に1人ががんで死亡する時代となっている。日本人の2型糖尿病患者におけるがん罹患のハザード比は1.20前後であり、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが増加することが、疫学調査によって確認されている。糖尿病によってがんの罹患リスクが上昇するメカニズムとしては、インスリン抵抗性、高インスリン血症の影響が大きいと考えられている。インスリンはインスリン受容体のみならず、インスリン様成長因子(IGF-1)の受容体とも結合することで細胞増殖を促し、がんの発生、増殖にも関連する。

ADVICE試験:心房細動アブレーションにおいてアデノシンによるdormant conductionの確認は必要か?(解説:高月 誠司 氏)-395

 心房細動のトリガーの多くは肺静脈に存在し、肺静脈入口部周囲を焼灼し、肺静脈と左心房との電気伝導をブロックすることで心房細動を予防するというのが、発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションである。これを肺静脈隔離と呼ぶが、肺静脈隔離後にアデノシンを急速静注すると、一時的に肺静脈と左房との伝導が再開することがある。これをdormant conduction (DoC)と呼んでいる。dormantとは休んでいるという意味である。

優れた抗血栓性を目指し、ポンプ本体の内面をすべて生体材料で構成したCARMAT完全植込み完全置換型の開発と世界最初の臨床応用(解説:許 俊鋭 氏)-394

 2008年に、僧帽弁形成手術で世界的に著名な心臓外科医Alain Carpentier氏が、真に心臓移植の代替治療となりうる完全植込み完全置換型(fully implantable artificial heart)の臨床治験を、2011年までに実施する準備ができたと発表した。

急速な経年的1秒量低下はCOPD発症の必須要素か?(解説:小林 英夫 氏)-393

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、1秒量の経年的低下が正常者より急速であるという見解が従来の定説だった。1977年にFletcher氏によって報告され、その後、改変図がさまざまに引用されてきた。筆者もFletcher説を学び、厚労省サイトにも掲載されている。今回のLange論文は定説であったFletcher論文に一石を投じたもので、強い印象を与える。COPD発症には、当初からの1秒量(FEV1)低値も重要であって、急速なFEV1減少だけが必須の特性とは限らないと、コペンハーゲン大学 Peter Lange氏らは結論している。

ピロリ菌に対する経口組み換え型ワクチンに関する第III相試験(解説:上村 直実 氏)-392

 胃潰瘍や十二指腸潰瘍および胃がんの最大要因であることが判明したピロリ菌に対する、経口組換え型ワクチンに関する大規模な第III相試験の結果が、中国から報告された。6~15歳の健康児童4,464例を対象とした、無作為化二重盲検プラセボ対照試験が行われた結果、接種後1年以内における新たなピロリ菌感染は、ワクチン摂取群2,199例中14例(0.63%)がプラセボ群2,204例中50例(2.24%)に比べて有意に低率であった。さらに、接種後3年間のワクチン摂取群の累積感染率(1.36%)もプラセボ群(3.86%)に比べて有意に低率であった。なお、獲得免疫評価に関する検討では、特異的な抗ウレアーゼBサブユニットの血清IgGと唾液中IgAの平均抗体価は、ベースラインでは両群で同等だったが、ワクチン接種後の3年時点までワクチン群が有意に高値であった。

脳卒中は認知症を誘発するのみならず、認知症の進行を促進する(解説:内山 真一郎 氏)-391

 REGARDSに登録された米国住民から、認知障害のない45歳以上の2万3,572例を抽出し、平均6年間追跡調査したところ、515例が脳卒中を発症した。各種認知機能検査の変化を脳卒中発症群と非発症群で比較したところ、脳卒中発症群では非発症群と比較して、急性の認知機能低下と6年間の認知機能低下の促進と持続的低下が生じていた。

マイクロシミュレーションモデルを用いた大腸腺腫検出率と大腸がん検診の解析(解説:上村 直実 氏)-389

 住民検診や企業検診および人間ドックにおいて、使用される検査自体の精度管理は非常に重要である。今回、地域における大腸内視鏡を用いた大腸がん検診では、腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)が高いほど、生涯にわたる大腸がんの発症や大腸がん死亡のリスクが抑制されるとともに、費用対効果にも優れていることがオランダから報告された。

STAR AF II:持続性心房細動に対する左房内アブレーションは善か?悪か?(解説:矢崎 義直 氏)-388

 STAR AF IIは持続性心房細動に対し、肺静脈隔離のみ施行した群と、肺静脈隔離に加え左房の線状焼灼またはCFAEアブレーションを追加した群との治療効果を比較したtrialである。持続性心房細動のみを対象とし、無作為割り付けでアブレーション方法を比較した大規模臨床試験はまだ少なく注目を集めていたが、予想外の結果となった。

すべての1型糖尿病患者にインスリンポンプ療法を施行すべきか?(解説:住谷 哲 氏)-387

 1型糖尿病患者は、インスリン分泌が枯渇しているため、インスリン投与が必須となる。現在では基礎インスリンとボーラスインスリンを組み合わせた、インスリン頻回注射療法[MDI [Multiple daily injections]、(BBT [Basal-bolus treatment]ともいう)]を用いたインスリン強化療法が主流である。しかし、生理的インスリン補充のために必要となる基礎インスリンの調節は、MDIにおいては困難である。一方、インスリンポンプ療法(CSII [continuous subcutaneous insulin infusion]ともいう)は、自由に基礎インスリン量を調節できるために、MDIと比較して低血糖の少ない、より変動の少ない血糖コントロールが可能であるとされる。

ERFC試験:心血管代謝疾患の重積と生命予後~糖尿病のリスクは心血管疾患のリスクに匹敵?~(解説:浦 信行 氏)-385

 The Emerging Risk Factors Collaboration(ERFC)は、1960年~2007年に追跡が開始され、2013年4月までに12万8,843例が死亡した、欧州と北米の91コホート、68万9,300例の性と年齢で調整した死亡率とハザード比を算出した。そして、2006年~2010年に49万9,808例の追跡開始がなされ、2013年11月までに7,995例が死亡した、より新しいUK Biobankの成績と対比させた。

いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【2】(解説:後藤 信哉 氏)-383

 ワルファリンは第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、抗トロンビン、抗Xa薬により凝固因子の効果が阻害され続けるので、薬剤が体内から消失するまで止血効果を期待できない。第Xa因子の場合には、血漿中の抗凝固効果以上に、細胞膜上のprothrombinase complexを構成するXaも中和しなければならないので、抗Xa薬中和剤の開発はいっそう困難である。

憎きCOPDの喉元に食らいつく治療法:気管支鏡で肺を“つぶす”?(解説:倉原 優 氏)-382

 COPDの外科治療といえば、肺容量減量手術(Lung volume reduction surgery:LVRS)である。まるで早口言葉のような言い回しだが、これはその名のとおり、肺の容量を減量する手術のことである。病的肺を切除して、健常肺の機能を活かそうというのがその治療原理である。LVRSはリスクの高い手術ではあるが、上葉優位な重度の気腫肺がある患者では、生存期間を延長する効果があるとされている。メタアナリシスでLVRSを積極的に推奨しているわけではないが、症例を選べば妥当な選択肢であるとしている。

いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【1】(解説:後藤 信哉 氏)-380

 長らく使用されてきたワルファリンには、経験的に中和法が確立されている。ワルファリンの抗凝固薬としての作用機序は、経験に基づいて理解されてきた。ワルファリンは、基本的には第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、ダビガトラン存在下では第II因子機能、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン存在下では第Xa活性の速やかな回復は期待できない。第Xa因子は血漿中でプロトロンビンをトロンビンに転換するのみならず、活性化血小板膜上のprothrombinase complexにより、固相でもトロンビンを産生するため、生体におけるXa活性の中和は論理的にも困難である。