CLEAR!ジャーナル四天王|page:74

乳腺疾患における生検、病理医による診断の精度は?(解説:廣中 愛 氏/吉田 正行 氏)-349

 乳腺疾患の治療方針の決定にあたり、針生検または切除生検の病理組織診断の果たす役割はきわめて大きい。生検で得られた標本には、悪性(浸潤がん、非浸潤がん)から良性病変、ないし正常組織まで含まれ、良性であっても異型を伴うものが存在する。マンモグラフィや検診が普及した今日では、良悪性の鑑別が困難な病変が針生検に提出される機会が増加しており、たとえばlow grade ductal carcinoma in situ(DCIS)とatypical ductal hyperplasia(ADH)では、診断者間での一致率が不良であることはしばしば指摘されている。また、良性病変でも異型を伴う病変の一部は、将来的に乳がん発生のリスクになると考えられるため、適切に診断することが求められている。しかし、これらの診断が、日常の病理診断で現在、どの程度の精度で行われているかは、十分に把握されていなかった。

CABGに内在する新規心筋梗塞発生抑制効果は疑いない(解説:中川 義久 氏)-348

 多枝冠動脈疾患患者における長期成績は、CABGのほうがPCIよりも良好であることが複数の無作為化比較試験および患者登録研究の結果から示されてきた。ここに新たなエビデンスが加わった。Bangalore氏らが米国における膨大な患者登録データから解析したもので、New England Journal of Medicine誌に結果が掲載された。同号にCABGとPCIの無作為化比較試験であるBEST研究の結果も掲載されていることは興味深い。

心房細動においても多職種が介入する疾病管理の概念が重要(解説:小田倉 弘典 氏)-346

 多職種が介入する慢性心不全の疾病管理プログラムは、国内外のガイドラインにおいても推奨度が高く、Class Iに位置付けられている。疾病管理とは、具体的には多職種(医師・看護師・薬剤師・栄養士など)によるチーム医療、退院時指導、フォローアップ計画(病診連携)、ガイドラインに沿った薬物治療、十分な患者教育・カウンセリング、患者モニタリングによる心不全増悪の早期発見などが挙げられる。しかしながら、心房細動においてはいくつかの報告があるものの、レベルの高いエビデンスに乏しかった。

βブロッカーは心房細動合併心不全の予後を改善しない(解説:小田倉 弘典 氏)-345

 収縮能が低下した慢性心不全患者に対するβ遮断薬の有効性は、多数の無作為化比較試験(RCT)により証明されている。代表的なものとして、カルベジロールではUS-Carvedilol試験、ビソプロロールではCIBIS II試験、メトプロロールではMERIT-HF試験において、生命予後の改善が示され、これらを基に国内外のガイドラインでも収縮性心不全に対するβ遮断薬投与は強く推奨されている。

SCOT-HEART試験:冠動脈疾患による狭心症が疑われる症例への冠動脈CT検査(解説:近森 大志郎 氏)-342

 冠動脈CT(CTCA)は外来で非侵襲的に実施できることから、本検査の日常臨床への広がりに伴い、虚血性心疾患が疑われる患者に対する、より良い診断アプローチの中心となることが期待されている。スコットランドの12の胸痛クリニックを中心としたSCOT-HEART試験の研究者たちは、有症状で狭心症が疑われる4,146例を対象にして、クリニックでの初期診療の後に無作為に2群(通常診療群 対 通常診療+CTCA群)に割り付けた。試験のエンドポイントは、冠動脈疾患による狭心症の診断についての確実性という、かなり主観性の強い評価項目である。しかも、Yes、Probable、Unlikely、No、と定義された診断の確実性について、初期診察時の確実性が6週後にどのように修正されたかという医師の認識に関する評価である。

天馬PEGASUSは空を駆けるか?心筋梗塞後長期の抗血小板療法の意味と価値:PEGASUS-TIMI 54試験(解説:後藤 信哉 氏)-340

 1980年代に循環器内科に進んだわれわれ世代の循環器内科医にとって、「心筋梗塞は死に至る病」であった。実際、再灌流療法も、抗血栓療法も標準化していない当時の心筋梗塞は院内死亡率も10%を超えていた。日本以上に冠動脈疾患の有病率の高い欧米では、「心筋梗塞」が日本の「がん」並みに恐ろしい病気と理解されたことは容易に想像できる。1970~80年代には心筋梗塞の原因が「冠動脈血栓」であるとの知識も普及していなかった。筆者ら、血栓症の専門家がAHA、ACCなどの欧米のmajorな学会では1990年代になってもマイノリティーであった。

成人に対する13価肺炎球菌結合型ワクチンの有効性を示したCAPiTA trial(解説:小金丸 博 氏)-339

 肺炎球菌結合型ワクチンは、小児における肺炎球菌性肺炎、侵襲性肺炎球菌感染症、中耳炎、およびHIV感染症患者における肺炎球菌感染症を予防できることが示されてきた。成人においては、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は23価肺炎球菌多糖ワクチン(PPSV23)と比較し、免疫原性が優れていることは示されていたが、実際に成人の肺炎球菌感染症を予防できるかどうかはわかっていなかった。

歴史的なジギタリスと心房細動:ROCKET-AF試験(解説:後藤 信哉 氏)-338

 筆者の世代の循環器医にとって、ジギタリスはなじみの深い薬物である。学生のころ、ジギタリスは南米の矢毒から分離されたと教わったが、本当であるか否かを確認していない。筆者の世代にとって、心不全治療の唯一の選択ともいえる時代があった。ジギタリスは房室伝導を阻害するので、頻拍性不整脈に対しても広く使用されていた。また心房細動症例に対しても、脈拍コントロールのための主要薬剤であった。

「エドキサバンは日本の薬なのに…」2~エドキサバン減量と出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-337

 EBM(Evidence Based Medicine)を基本原理とする現在の医療において、臨床データベースの保有には圧倒的な意味がある。エドキサバンは日本企業が開発した薬剤である。日本企業には抗トロンビン薬があるがトロンビンの時代から、選択的凝固因子阻害薬の開発力は外資企業に先行していた。残念ながら、分子としての抗Xa薬を介入したときの個人の反応は予測不可能な程度にしか、現在の医学は成熟していない。結果として、エドキサバン介入時の臨床データベースを持っているものが強い。

「エドキサバンは日本の薬なのに…」1~遺伝子型と抗血栓療法下の出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-336~

 エドキサバンは、日本企業が開発した薬剤である。日本が国際共同試験をリードして、日本国内に臨床データベースがあれば、日本の研究者は数多くの興味深い臨床的研究を発表できたはずである。今回Mega博士らが発表した遺伝子型とワルファリンの薬効については、高橋 晴美博士をはじめ、日本人研究者による先行研究がある。ENGAGE AF-TIMI 48試験は科学的にきわめて質の高い研究であり、かつ登録された症例の数が多いので、Mega博士らの本研究は今後も世界にインパクトを持つ。

2型糖尿病発症予防とPrecision Medicine(解説:住谷 哲 氏)-334

 日本ではあまり報道されなかったが、本年1月米国のオバマ大統領は一般教書演説においてPrecision Medicineの推進を宣言した。Precision Medicineとは、簡単に言えば、個々の患者の遺伝情報、環境因子などの情報に基づいた最適な医療、鍵と鍵穴とがぴったりと符合するような医療である。それに近いものは、わが国で個別化医療、オーダーメイド医療、テーラーメイド医療などとさまざまに呼称されているものが含まれる。本論文においては「有益性に基づいたテーラーメイド治療(benefit based tailored treatment)」と名付けられているが、その意義は2型糖尿病発症予防とPrecision Medicineの文脈において理解する必要がある。

ワルファリン出血の急速止血に新たな選択肢?(解説:後藤 信哉 氏)-333

 臨床家は50年にわたり、ワルファリンを使用してきた。新規の経口抗トロンビン薬、抗Xa薬が開発され、使用可能になったとはいっても、真の意味での血栓イベントリスクが高くない非弁膜症性心房細動など、薬剤の必要性が必ずしも高くない症例なので、これらの症例で出血が怖ければ薬剤を使用しないとの選択があった。ワルファリンを使用している症例は、人工弁、血栓性素因など抗凝固薬の必要性が著しく高い症例である。これらの症例でも、ワルファリンコントロールの良否にかかわらず、重篤な出血イベントが起こる場合がある。消化管出血などであれば、開腹、長時間の圧迫止血など、薬剤以外の手段がまったくないわけではない。頭蓋内出血となると、とても困る。時間と共に症状が増悪している頭蓋内出血では、頭蓋内圧増加が止血に寄与しても、ワルファリンの効果が持続している状態では止血は期待し難い。

PMS RegistryにおけるTAVRの1年成績(解説:許 俊鋭 氏)-330

 RCTの結果とreal-worldの結果では、新規デバイス治療において患者対象も治療成績も異なる可能性がある。米国でのTAVRの30日生存と1年生存成績を最新のものに更新する目的で、STS/ACC Transcatheter Valve Therapies RegistryとCMS診療報酬請求データをリンクさせ、2011年9月~2013年6月までの米国299病院、1万2,182症例を1年間経過観察した。