PMS RegistryにおけるTAVRの1年成績(解説:許 俊鋭 氏)-330 RCTの結果とreal-worldの結果では、新規デバイス治療において患者対象も治療成績も異なる可能性がある。米国でのTAVRの30日生存と1年生存成績を最新のものに更新する目的で、STS/ACC Transcatheter Valve Therapies RegistryとCMS診療報酬請求データをリンクさせ、2011年9月~2013年6月までの米国299病院、1万2,182症例を1年間経過観察した。
PROTECT AF試験:経皮的左心耳閉鎖術~心房細動患者が抗凝固療法を中止できる日は本当に来るのか(解説:矢崎 義直 氏)-329 PROTECT AF試験は、非弁膜症性心房細動に対する経皮的左心耳閉鎖術の有効性および安全性をワルファリン療法と比較した非盲検無作為化試験である。
PROMISE試験:冠動脈疾患に対する解剖的評価と機能評価検査の予後比較(解説:近森 大志郎 氏)-328 安定した胸部症状を主訴とする患者に対する診断アプローチとして、まず非侵襲的検査によって冠動脈疾患を鑑別することが重要である。従来は運動負荷心電図が日常診療で用いられてきたが、その後、負荷心筋シンチグラフィ(SPECT)検査、負荷心エコー図検査が臨床に応用され、近年では冠動脈CT(CTCA)も広く実施されるようになっている。しかしながら、これらの検査の中でいずれを用いればよいか、という検査アプローチを実証する大規模臨床試験は実施されてはいなかった。
末期腎不全の臨床転帰の世界的メタ解析(解説:浦 信行 氏)-327 わが国では末期腎不全の結果、透析導入に至る例が毎年3.8万例あり、昨年末の時点で約32万例が維持透析を受けている。この数はわが国ではここ数年頭打ち傾向となっているが、世界的に見れば大きく増加している。透析と腎移植を合わせたRRT(renal replacement therapy)を、123ヵ国+台湾と香港で検討し、世界人口の93%を包括したメタ解析の結果がLancetに報告された。
COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊 氏)-326 狭心症の患者さんといえば、冠動脈の狭窄を探す。そして、 ・見つかれば、開ける ・開けられなければ、バイパスする ・症状が残っても、それは「狭心症ではないので大丈夫です」 の三段論法で対応されてきた(注.極論です)。
生データによるメタアナリシスの診療ガイドラインへの引用割合(解説:折笠 秀樹 氏)-325 診療ガイドライン策定に当たり、系統的レビューやメタアナリシスがよく引用されるのは周知のとおりである。メタアナリシスとは複数の研究結果を統合する解析法のことであるが、通常は研究論文中に掲載されている数値を基にして結果を併合する。一方、生データを取り寄せ、それらに基づき統合するメタアナリシスも存在する。この方法をIPDメタアナリシス(今後、IPD-MAと略す)と呼んでいる。ちなみに、IPDはIndividual Participant Dataの頭文字を取った。本論文では、診療ガイドラインにIPD-MAがどれくらい引用されているかを調査した。
ドイツでは国家機関が新薬に関する評価を公表している(解説:折笠 秀樹 氏)-324 2011年、ドイツでは新薬を上市する際に特別の書類(dossier)を提出するための法律を制定した。その法律はAMNOG(Act on the reform of the market for medicinal products)と呼ばれ、新薬に関する情報提供を促す法律である。また、その提出書類はIQWiG(ヘルスケアの質と効率に関する研究所)の協力の下に評価され、Federal Joint Committeeという国家機関が評価書類として公表している。なお、IQWiGという組織は2004年頃からあったようである。ちなみに、提出書類は平均446ページに及ぶ膨大な資料のようであり、また、評価書類のほうは平均83ページとみられる。ホームページでいろいろ調べたが、提出書類および評価書類の実物を見ることはできなかった。なお、書類はほとんどドイツ語で書かれているようである。
過剰診断についての情報を含むリーフレットを使うことは乳がん検診のインフォームド・チョイスの支援となるか(解説:山本 精一郎 氏)-323 この論文は、過去2年間、乳がん検診を受けなかった者をランダムに2群に分け、片方にはリーフレットによって検診による死亡率減少効果と偽陽性についての情報を与え、もう片方にはそれに加えて過剰診断についての情報を、やはりリーフレットによって与えることによって、乳がん検診による知識が高まるか、検診を受けるかどうかのインフォームド・チョイスをする割合が高まるかを調べた研究である。結果、知識も上昇し、インフォームド・チョイスも上昇した。知識が上がった部分は、主に過剰診断に関する項目のおかげであり、インフォームド・チョイスによって検診を受けるという意図を持った者は、少し減少したという結果であった。
ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)-322 わが国と同様、世界の先進国は超高齢化社会を迎えている。一方において、各国は主要な疾患に対してガイドラインを制定して、標準的治療の推進を呼びかけているという事実がある。実は、この2つは大きな矛盾も抱えているのである。すなわち超高齢化社会の最大の特徴は多様性であり、画一的な集団での研究から得られた臨床研究の結果であるガイドライン、あるいは標準的治療とは必ずしもそぐわないのである。
FINGER試験:もしあなたが、本当に認知症を予防したいなら・・・(解説:岡村 毅 氏)-321 認知症リスクを持つ1,260人の高齢者を、食事療法・運動療法・認知トレーニング・血管リスクのモニタリングという、多領域にわたる介入群と対照群に無作為に振り分けたところ、介入群では認知機能低下を予防したというフィンランドからの報告である。実に当たり前の結果であるが、一流の論文とは当たり前のことをきちんと示すものだと認識しているので、まさに一流の論文だと思う。
バレニクリンによる禁煙治療は“優柔不断な喫煙者”の禁煙治療に向いている!(解説:島田 俊夫 氏)-320 最近JAMA誌 2015年2月17日号に報告された、Jon O. Ebbert氏らのバレニクリン(varenicline)禁煙治療に関する無作為臨床試験についてコメントする。
成人の季節性インフルエンザに対するオセルタミビルの効果:ランダム化比較試験のメタ解析(解説:吉田 敦 氏)-319 ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルは、現在世界で最も使用されている抗インフルエンザ薬であり、パンデミックに対する備えとしてもその位置付けは大きい。その効果についてはこれまで多くの臨床試験と経験が蓄積されてきたが、今回あらためてランダム化比較試験のメタ解析が行われ、成人例におけるオセルタミビルの効果と副作用が検証された。Lancet誌オンライン版2015年1月30日号の発表。
REACT試験:ロフルミラストが使用できるようになったら、痩せ型のCOPD患者には注意が必要(解説:倉原 優 氏)-318 ロフルミラストは、COPDに対して効果が期待されている経口ホスホジエステラーゼ-4阻害薬である。標準治療を施行しても増悪のリスクが高いCOPD患者に対する効果はわかっていない。
ワーファリン治療中の頭蓋内血腫増大抑制は、早期のINRコントロールに加えて血圧管理が重要(解説:浦 信行 氏)-316 Joji B. Kuramatsu氏らの研究グループは、ドイツの3次救急施設での多施設共同後ろ向き研究で、ワーファリン使用例での頭蓋内血腫増大抑制には、搬入後4時間以内のINRの1.3未満と収縮期血圧160 mmHg未満での管理が有効であると報告した。
FAST-MAG試験:脳保護作用を有する硫酸マグネシウムの病院到着前投与は無効(解説:中川原 譲二 氏)-315 脳卒中が疑われる患者に対し、病院到着前に神経保護療法として硫酸マグネシウムの投与を行っても、予後は改善されないことが、米国南カリフォルニア大学のJeffrey L Saver氏らが行ったFAST-MAG試験で示された(NEJM誌2015年2月5日号掲載)。硫酸マグネシウムは、脳卒中の前臨床モデルで神経保護作用を有し、ヒトでは発症早期の投与において有効性の徴候および許容可能な安全性プロファイルが確認されている。
「2型糖尿病では降圧薬の種類にかかわらず、厳格な降圧そのものが重要」を裏付けるメタ解析(解説:桑島 巌 氏)-314 糖尿病を合併した高血圧患者における収縮期血圧の降圧目標値に関して、海外では従来よりも緩和する傾向がある。最近発表されたINVEST研究やACCORD研究などを参考にしているが、必ずしも信頼性の高い研究ではなかった。
治療抵抗性高血圧の切り札は、これか?~ROX Couplerの挑戦!(解説:石上 友章 氏)-313 治療抵抗性高血圧に対する切り札的治療は、ひと昔前は「腎動脈交感神経アブレーション」だった。循環器、高血圧関連の学会のセミナーには必ずと言っていいほど、「腎動脈交感神経アブレーション」のセッションがあり、関係者の期待の高さをうかがわせていた。しかし、治療群に加え、腎動脈内にカテーテルを挿入するものの高周波治療を行わないシャムオペレーション群をおいた、初めての無作為化比較試験であるSymplicity HTN-3の結果が発表された(87施設、患者数535例)1)。その結果は、手技の安全性には問題はなかったが、試験実施前に設定された降圧効果を得ることができず、Medtronic社は、本邦で予定されていたHTN-Japanを含むすべての治験を中止し、現時点では治験再開の情報は得られていない。
安易な処方は禁物、リスク・ベネフィットを十分に評価すべき~分化型甲状腺がんに対するLenvatinib~(解説:勝俣 範之 氏)-312 乳頭腺がん、濾胞腺がんは、甲状腺がんの80~90%を占め、分化型甲状腺がんと呼ばれる。一般に分化型甲状腺がんは、転移があっても緩徐な進行を示し、予後が良好とされる。一方、遠隔転移のある分化型甲状腺がんで、高齢者、ヨード治療に抵抗性になった場合には、予後不良となる。その場合、これまではこれといった有効な治療法はなかった。発育がきわめて緩徐であるため、化学療法剤にはほとんど反応せず、化学療法の適応になることはなかった疾患である。
市中肺炎患者に対するステロイド投与は症状が安定するまでの期間を短くすることができるか?(解説:小金丸 博 氏)-311 市中肺炎では過剰な炎症性サイトカインによって肺が障害され、肺機能が低下すると考えられている。そのため、理論的には抗炎症効果を有するステロイドを併用することが有効と考えられ、肺炎の治療に有益かどうか1950年代から議論されてきた。しかしながら、最近報告された2つのランダム化比較試験においても相反する結果が得られており、いまだにステロイド併用の有益性について結論が出ていない)。